JP5087846B2 - 遷移金属窒化物、燃料電池用セパレータ、燃料電池スタック、燃料電池車両、遷移金属窒化物の製造方法及び燃料電池用セパレータの製造方法 - Google Patents

遷移金属窒化物、燃料電池用セパレータ、燃料電池スタック、燃料電池車両、遷移金属窒化物の製造方法及び燃料電池用セパレータの製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、遷移金属窒化物、燃料電池用セパレータ、燃料電池スタック、燃料電池車両、遷移金属窒化物の製造方法及び燃料電池用セパレータの製造方法に関し、特にステンレス鋼を用いて形成した固体高分子電解質型の燃料電池用セパレータに関する。
地球環境保護の観点から、燃料電池を自動車の内燃機関に代えて作動するモーターの電源として利用し、このモーターにより自動車を駆動することが検討されている。この燃料電池は、資源の枯渇問題を有する化石燃料を使う必要がないため排気ガス等を発生することがない。また、燃料電池は騒音がほとんど発生せず、更にはエネルギーの回収効率も他のエネルギー機関と比べて高くすることが可能である等の優れた特徴を有している。
燃料電池は、使用される電解質の種類に応じて、固体高分子電解質型、リン酸型、溶融炭酸塩型及び固体酸化物型等がある。そのうちの一つである固体高分子電解質型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)は、電解質として分子中にプロトン交換基を有する高分子電解質膜を使用して、高分子電解質膜を飽和に含水させるとプロトン伝導性電解質として機能することを利用した電池である。固体高分子電解質型燃料電池は比較的低温で作動し、かつ発電効率が高い。更には、固体高分子電解質型燃料電池は他の付帯設備と共に小型で軽量であるため、電気自動車搭載用を始めとする各種の用途が見込まれている。
上記固体高分子電解質型燃料電池は燃料電池スタックを有する。燃料電池スタックは、電気化学反応により発電を行う基本単位となる単セルを複数個積層して両端部をエンドフランジで挟み、締結ボルトにより加圧保持されて一体に構成される。単セルは、高分子電解質膜とその両側に接合されるアノード(水素極)とカソード(酸素極)により構成される。
図9は、燃料電池スタックを形成する単セルの構成を示す断面図である。図9に示すように、単セル70は、固体高分子電解質膜71の両側に酸素極72及び水素極73を接合して一体化した膜電極接合体を有する。酸素極72及び水素極73は、反応膜74及びガス拡散層75(GDL:gas diffusion layer)を備えた2層構造であり、反応膜74は固体高分子電解質膜71に接触している。酸素極72及び水素極73の両側には、積層のために酸素極側セパレータ76及び水素極側セパレータ77が各々設置されている。そして、酸素極側セパレータ76及び水素極側セパレータ77により、酸素ガス流路、水素ガス流路及び冷却水流路が形成されている。
上記構成の単セル70は、固体高分子電解質膜71の両側に酸素極72、水素極73を配置して、通常、ホットプレス法により一体に接合して膜電極接合体を形成し、次に膜電極接合体の両側にセパレータ76、77を配置して製造する。上記単セル70から構成される燃料電池では、水素極73側に、水素、二酸化炭素、窒素、水蒸気の混合ガスを供給し、酸素極72側に空気及び水蒸気を供給すると、主に、固体高分子電解質膜71と反応膜74との間の接触面において電気化学反応が起こる。以下、より具体的な反応について説明する。
上記構成の単セル70において、酸素ガス流路及び水素ガス流路に酸素ガス及び水素ガスが各々供給されると、酸素ガス及び水素ガスが各ガス拡散層75を介して反応膜74側に供給され、各反応膜74において以下に示す反応が起こる。
水素極側:H2 →2H+ +2e- ・・・式(1)
酸素極側:(1/2)O2+2H+ + 2e-→H2O ・・・式(2)
水素極73側に水素ガスが供給されると、式(1)の反応が進行して、H+ とe-とが生成する。H+は、水和状態で固体高分子電解質膜71内を移動して酸素極72側に流れ、e- は負荷78を通って水素極73から酸素極72に流れる。酸素極72側では、H+とe-と供給された酸素ガスとにより、式(2)の反応が進行して、電力が生成する。
上述したように、燃料電池用セパレータは各単セル間を電気的に接続する機能を有するため、電気伝導性が良く、かつガス拡散層等の構成材料との接触抵抗が低いことが要求される。また、固体高分子型電解質膜は、スルホン酸基を多数有する高分子から形成されており、湿潤状態においてスルホン酸基をプロトン交換として用いるため、プロトン伝導性を有する。固体高分子型電解質膜は強酸性であるため、燃料電池用セパレータにはpH2〜3程度の硫酸酸性に対する耐食性が要求される。さらに、燃料電池に供給される各ガスの温度は80〜90[℃]と高温であり、また、水素極ではH+が生じるだけでなく、酸素や空気等が通過する酸素極は、標準水素極電位に対して0.6〜1[VvsSHE]程度の電位が負荷される酸化性環境下にある。このため、酸素極及び水素極と同様に、燃料電池用セパレータには強酸性雰囲気下で耐え得る耐食性が要求される。なお、ここで要求される耐食性とは、燃料電池用セパレータが強酸性の酸化環境下においても電気伝導性能を維持できる耐久性を意味する。つまり、カチオンが加湿水又は式(2)の反応により生成した水に溶け出すことにより、カチオンが本来プロトンの通り道となるべきスルホン酸基と結合してスルホン酸基を占有し、電解質膜の発電特性を劣化させる環境で、耐食性を測定する必要がある。
そこで、燃料電池用セパレータには、電気伝導性が良く耐食性に優れたステンレス鋼あるいは工業用純チタン等のチタン材を使用する試みがされている。ステンレス鋼は、その表面にクロムを主金属元素とした酸化物、水酸化物又はこれらの水和物等の緻密な不動態皮膜が形成されている。チタンも同様に、その表面に酸化チタン、水酸化チタン又はこれらの水和物等の緻密な不動態皮膜が形成されている。このため、ステンレス鋼やチタンは耐食性が良好である。
しかし、上記した不動態皮膜は、通常ガス拡散層として用いられるカーボンペーパとの間で接触抵抗を生じる。燃料電池内の抵抗分極による過電圧は、定置型用途ではコージェネレーション等により排熱を回収できるため、トータルとしての熱効率が向上する。一方、自動車用用途では、接触抵抗に基づく発熱ロスは冷却水を通してラジエータから外部に捨てるしかないため、接触抵抗が大きくなると発電効率の低下に繋がる。また、発電効率低下は発熱が大きくなることと等価であり、より大きな冷却系を装備する必要性が生じるため、接触抵抗の増大は解決すべき重要な課題となっている。
燃料電池では、単位セル当りの理論的な電圧は1.23[V]となるが、反応分極、ガス拡散分極、抵抗分極により実際に取り出せる電圧が降下し、取り出す電流が大きくなるほど電圧は降下する。また、自動車用用途では、単位体積・重量当りの出力密度を大きくしたいことから、定置用より高電流密度側、例えば、電流密度1[A/cm]で使用される。電流密度が1[A/cm]の時には、セパレータとカーボンペーパ間の接触抵抗が40[mΩ・cm]以下であれば接触抵抗による効率低下がおさえられると考えられている。 そこで、ステンレス鋼をプレス成形した後、電極との接触面に直接金めっき層を形成した燃料電池用セパレータが開示されている(特許文献1参照)。また、ステンレス鋼を成形して燃料電池用セパレータの形状に加工した後、電極との接触により接触抵抗を生じる面の不動態皮膜を除去して、貴金属又は貴金属合金を付着させた燃料電池用セパレータが開示されている(特許文献2参照)。
特開平10−228914号公報(第2頁、第2図) 特開2001−6713号公報(第2頁)
しかしながら、貴金属を燃料電池用セパレータ表面にコーティングすると手間がかかる上、コストの増加につながる。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、第1の発明である遷移金属窒化物は、Feを主成分として、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子によって形成された面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子が配置されたMN型格子構造を有する遷移金属窒化物であって、面心立方格子を形成する金属元素の組成が5.9≦([at%Fe]×6+[at%Cr]×5+[at%Ni]×8+[at%Mo]×5)×0.01≦6.1の関係式を満たし、かつ、遷移金属原子と窒素原子との原子比が4:0.8〜4:1の範囲にあることを要旨とする。
第2の発明である燃料電池用セパレータは、Feを主成分とし、Crと、少なくともNi又はMoのいずれかの元素と、を含有するステンレス鋼から形成された基層と、基層の直接上に形成された上記第1の発明である遷移金属窒化物の窒化層を有することを要旨とする。
第3の発明である遷移金属窒化物の製造方法は、Feを主成分とし、Crと、少なくともNi又はMoのいずれかの元素と、を含有するステンレス鋼材表面に、プラズマ窒化により形成される遷移金属窒化物の製造方法であって、Feを主成分として、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子によって形成された面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子が配置されたMN型格子構造を有する窒化層を形成し、上記プラズマ窒化、窒素ガス及び水素ガスを放電させた低温非平衡プラズマ中で、前記ステンレス鋼材にマイナスのバイアス電圧をかけることにより、400〜500[℃]の温度で前記ステンレス鋼材を窒化するものであり、さらに、プラズマを放電させる時間とプラズマを遮断する時間を1〜1000[μsec]として放電、遮断を繰り返すマイクロパルスプラズマ電源を用いるものであることを要旨とする。
また、第4の発明である燃料電池用セパレータの製造方法は、Feを主成分とし、Crと、少なくともNi又はMoのいずれかの元素と、を含有するステンレス鋼材表面に、プラズマ窒化によりFeを主成分として、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子によって形成された面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子が配置されたMN型格子構造を有する窒化層を形成することを要旨とする。
更に、第5の発明である燃料電池スタックは、上記第2の発明である燃料電池用セパレータを用いたことを要旨とする。
また、第6の発明である燃料電池車輌は、上記第5の発明である燃料電池スタックを搭載し、これを動力源として用いたことを要旨とする。
第1の発明によれば、燃料電池用セパレータとして必要な導電性、セパレータ使用環境下における導電性の機能を維持する化学的安定性及び耐食性を兼ね備えた遷移金属窒化物を提供することができる。
第2の発明によれば、MN型格子構造を有する窒化層が化学的安定性を有するため、酸化性環境下におけるセパレータと電極との間の接触抵抗を低い値に維持し、耐食性に優れ、かつ低コスト化を実現した燃料電池用セパレータを提供することができる。
第3の発明によれば、簡便な操作により、化学的安定性及び耐食性を兼ね備えた遷移金属窒化物を得ることができる。
第4の発明によれば、簡便な操作により、酸化性環境下での低抵触抵抗値を維持し、耐食性に優れ、かつ低コスト化を実現した燃料電池用セパレータを得ることができる。
第5の発明によれば、発電性能に優れ、小型化かつ低コスト化した燃料電池スタックを提供することができる。
第6の発明によれば、小型化した燃料電池スタックを搭載することにより、走行距離の長距離化を実現できると共にスタイリングの自由度を確保することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る遷移金属窒化物、燃料電池用セパレータ、燃料電池スタック、燃料電池車両及び燃料電池用セパレータの製造方法について、固体高分子型燃料電池に適用した例を挙げて説明する。
(遷移金属窒化物、燃料電池用セパレータ及び燃料電池スタック)
図1は、本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータを用いて構成した燃料電池スタックの外観を示す斜視図である。図2は、図1に示す燃料電池スタック1の詳細な構成を模式的に示す燃料電池スタック1の展開図である。
図2に示すように、燃料電池スタック1は、電気化学反応により発電を行う基本単位となる単セル2と燃料電池用セパレータ3とを交互に複数個積層して構成される。各単セル2は、固体高分子型電解質膜の両面に各々酸化剤極を有するガス拡散層と燃料極を有するガス拡散層とを形成して膜電極接合体とし、膜電極接合体の両側に燃料電池用セパレータ3を配置して、燃料電池用セパレータ3内部に酸化剤ガス流路と燃料ガス流路とを各々形成している。固体高分子型電解質膜としては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体膜(Nafion1128(登録商標)、デュポン株式会社)等を使用することができる。単セル2と燃料電池用セパレータ3とを積層した後、両端部にエンドフランジ4を配置して、外周部を締結ボルト5により締結して燃料電池スタック1を構成する。また、燃料電池スタック1には、各単セル2に水素ガス等の水素を含有する燃料ガスを供給するための水素供給ラインと、酸化剤ガスとして空気を供給する空気供給ラインと、冷却水を供給する冷却水供給ラインが設けられている。
図2に示した燃料電池用セパレータ3の模式図を図3に示す。図3(a)は、燃料電池用セパレータ3の模式的斜視図、図3(b)は、燃料電池用セパレータ3のIIIb-IIIb線断面図、図3(c)は、燃料電池用セパレータ3のIIIc-IIIc線断面図である。図3(a)に示すように、燃料電池用セパレータ3の上面11には、断面矩形状の燃料又は酸化剤の通路12が刻設されている。燃料電池用セパレータ3は、ステンレス鋼からなる基層13と上記通路12の外面に沿って延在し、基層の直接上に形成された窒化層14とを有する。
基層13は、Feを主成分とし、Crと、少なくともNi又はMoのいずれかの元素と、を含有するステンレス鋼から形成される。このような元素を含有するステンレス鋼として、オーステナイト系、オーステナイト・フェライト系、析出硬化系のステンレス鋼が挙げられる。これらの中でも、基層13は、特にオーステナイト系ステンレス鋼から形成することが好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えば、SUS304、SUS310S、SUS316L、SUS317J1、SUS317J2、SUS321、SUS329J1、SUS836等が挙げられる。
窒化層14は、Feを主成分として、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子によって形成された面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子が配置されたMN型格子構造を有する遷移金属窒化物である。MN型格子構造を図4に示す。図4に示すように、MN型格子構造20は、Feを主成分として、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子21によって形成された面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子22が配置された構造である。そして、この窒化層14の面心立方格子を形成する金属元素の組成が5.9≦([at%Fe]×6+[at%Cr]×5+[at%Ni]×8+[at%Mo]×5)×0.01≦6.1の関係式を満たし、かつ、遷移金属原子と窒素原子との原子比が4:0.8〜4:1の範囲にある。表1に第4周期及び第5周期に属する遷移金属元素の電子配置を示す。上記関係式は各元素の原子百分率に価電子d電子の個数をかけた和に0.01をかけたものである。
Figure 0005087846
このMN型格子構造20において、Mは、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子21を表し、Nは窒素原子22を表す。窒素原子22はMN型格子構造20の単位胞中心の八面体空隙の1/4を占有する。すなわち、MN型格子構造20は、遷移金属原子21の面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子22が侵入した侵入型固溶体であり、立方晶の空間格子で表すと、窒素原子22は各単位胞の格子座標(1/2,1/2,1/2)に位置する。また、このMN型結晶構造20では、遷移金属原子M21はFeを主体としているが、FeがCr、Ni、Moなどの他の遷移金属原子と一部置換した合金も含む。
この遷移金属窒化物は、遷移金属原子間の金属結合を保ったまま遷移金属原子と窒素原子の間で強い共有結合性を示すことにより、窒化物中の各金属原子の酸化に対する反応性が低下する。このため、遷移金属窒化物は、上述したような燃料電池内の酸化性環境下においても化学的安定であり、燃料電池用セパレータとして必要な導電性、セパレータ使用環境下における導電性の機能を維持する化学的安定性及び耐食性を兼ね備えた遷移金属窒化物を提供することができる。また、このような遷移金属窒化物を有する窒化層が基層の直接上に形成されたステンレス鋼板を燃料電池用セパレータとして用いているため、燃料電池スタック内のような酸化性環境下に置かれても、燃料電池として通常使用されるカーボンペーパとの間の接触抵抗を低く維持できる。また、従来のように、電極と接触する面に直接金メッキ層を施さなくても接触抵抗を抑えることができるため、低コスト化を実現することが可能となる。さらに、MN型格子構造を有する窒化層が化学的安定性を有するため、酸化性環境下におけるセパレータと電極との間の接触抵抗を低い値に維持し、耐食性に優れ、かつ低コスト化を実現した燃料電池用セパレータを提供することができる。
なお、燃料電池用セパレータ3において、窒化層14中に含まれるFeに対するCr原子比が高い場合には、窒化層14中に含まれる窒素が窒化層14中のCrと結びついてCrNなどのCr系窒化物、すなわちNaCl型の窒素化合物が主成分となる。このため、窒化層14中にCrの欠乏組織ができ、この欠乏組織により窒化層14の耐食性が低下するため、遷移金属原子21はFeを主体とすることが好ましい。
この遷移金属窒化物では、遷移金属原子と窒素原子との結合が、遷移金属原子の価電子d電子と前記窒素原子の2p電子による共有結合であり、かつ、遷移金属原子の4s電子が自由電子であることが好ましい。この遷移金属窒化物では、遷移金属原子の4s電子が自由電子として存在するため、遷移金属間の金属結合を保ちつつ、遷移金属原子と窒素原子が共有結合する。このため、各原子の自由エネルギーが低下し、各原子が化学的に安定する。
また、Fe、Cr、Niが混合により合金化されることにより、遷移金属原子のdバンド幅が各遷移金属元素単体のdバンド幅よりも広がっており、かつ、遷移金属原子のd電子のエネルギー準位と、窒素原子の2p電子のエネルギー準位が重なることが好ましい。dバンド幅とは、d電子が取りうるエネルギー準位の幅をいう。この遷移金属窒化物では、遷移金属原子のd電子のエネルギー準位と、窒素原子の2p電子のエネルギー準位が重なることにより、遷移金属原子間の金属結合を保ったまま遷移金属原子と窒素原子が共有結合する。このため、この遷移金属窒化物はさらに化学的に安定する。
さらに、遷移金属原子は6配位の立方配置となり、遷移金属原子の価電子d電子のエネルギー準位の結晶場分裂により低下したエネルギー準位と、窒素原子の2p電子のエネルギー準位が重なることが好ましい。結晶場分裂により低下したエネルギー準位と、窒素原子の2p電子のエネルギー準位が重なることにより、遷移金属原子と窒素原子との共有結合が金属伝導性を保ったまま化学的に安定する。
このように、本発明の実施の形態に係る遷移金属窒化物は、Feを主成分として、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子によって形成された面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子が配置されたMN型格子構造を有し、面心立方格子を形成する金属元素の組成が5.9≦([at%Fe]×6+[at%Cr]×5+[at%Ni]×8+[at%Mo]×5)×0.01≦6.1の関係式を満たし、かつ、遷移金属原子と窒素原子との原子比が4:0.8〜4:1の範囲にあるため、燃料電池用セパレータとして必要な導電性、セパレータ使用環境下における導電性の機能を維持する化学的安定性及び耐食性を兼ね備えた遷移金属窒化物を提供することができる。また、本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータは、この遷移金属窒化物を窒化層として有するため、MN型格子構造を有する窒化層が化学的安定性を有し、酸化性環境下におけるセパレータと電極との間の接触抵抗を低い値に維持し、耐食性に優れ、かつ低コスト化を実現することができる。さらに、本発明の実施の形態に係る燃料電池スタックは、本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータを用いたことにより、発電性能を損なうことなく高い発電効率を維持できると共に、小型化及び低コスト化を実現することが可能となる。
(遷移金属窒化物の製造方法及び燃料電池用セパレータの製造方法)
次に、本発明に係る遷移金属窒化物の製造方法及び燃料電池用セパレータの製造方法の実施の形態について説明する。遷移金属窒化物の製造方法及び燃料電池用セパレータの製造方法は、Feを主成分とし、Crと、少なくともNi又はMoのいずれかの元素と、を含有するステンレス鋼材表面に、プラズマ窒化によりFeを主成分として、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子によって形成された面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子が配置されたMN型格子構造を有する窒化層を形成することを特徴とする。
プラズマ窒化処理は、被処理物を陰極とし、直流電圧を印加してグロー放電、すなわち、低温非平衡プラズマを発生させてガス成分の一部をイオン化し、この非平衡プラズマ中のイオン化したガス成分が被処理物表面へ高速加速衝突することで被処理物表面を窒化する方法である。図5は、本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法に用いる窒化装置30の側面模式図、図6は、窒化装置30のシステム図である。
窒化装置30は、バッチ式の窒化炉31と、この窒化炉31に雰囲気ガスを供給するガス供給装置32と、窒化炉31内でプラズマを発生させるプラズマ電極33a、33b及びこれらの電極33a、33bに直流電圧を供給する直流電源33と、窒化炉31内のガスを排出するポンプ34と、窒化炉31内の温度を検知する温度センサ37とを含んでいる。窒化炉31は内壁31a及び外壁31bを有し、内壁31aの天井部31cには燃料電池用セパレータの形状に加工したステンレス鋼箔44を吊下するステンレス製のハンガ36が設けられる。ガス供給装置32は、ガス室38とガス供給管路39とを有し、ガス室38には開口32a、32b、32c及び32dが設けられている。開口32a、32b及び32cは、それぞれガス供給弁V1、ガス供給弁V2及びガス供給弁V3を備えるHガス供給ライン32e、Nガス供給ライン32f、Arガス供給ライン32gと連通する。ガス供給装置32は、ガス供給管路39の一端と連通する開口32dを有する。窒化炉31の天井部31cには、ガス供給管路39の他端と連通する開口31dを有する。ガス供給管路39にはガス供給弁V4が設けられる。窒化炉31内のガス圧は、窒化炉31の底部31eに設けられたガス圧センサ40によって検知される。窒化炉31には冷却水流路(不図示)が設けられ、冷却水は窒化炉31の外壁31bに設けられた開口31fから冷却水流路に流入し、開口31gから流出する。開口31fには冷却水供給弁V5が設けられ、冷却水の流量を調節する。ポンプ34は、上記底部31eに設けられた開口31hと連通する排出管路41と接続される。温度センサ37は、窒化炉31の外壁31bに設けられた設置口31iに設置される。
窒化装置30には、グロー放電のために操作盤43から制御される直流電源33の他に、バイアス用のポテンショメータ35が設けられている。直流電源33は陽(+)極33aが窒化炉31の内壁31aに接続され、陰(−)極33bが接地されている。ポテンショメータ35は、バイアス用直流電源端子35cと接地回路35dとの間の電位差を、可動接触子35eにより0[V]からバイアス電圧の範囲で分圧し、それにより得た電圧をバイアス回路35aを介して各ステンレス鋼箔44に供給する。直流電源33は制御盤43からの制御信号によりオン、オフされる。ポテンショメータ45は、制御盤33からバイアス制御回路35bを介してバイアス制御信号が供給され、この制御信号に応じて可動接触子35eが摺動する。従って、各ステンレス鋼箔44は、内壁31aに対し、直流電源33の端子間電圧と、可動接触子35eを介して供給されるバイアス電圧とを加えた電圧差を有する。なお、ガス供給装置32及びガス圧センサ40も、操作盤43によって制御すされる。
本発明の実施の形態で用いたプラズマ窒化法についてより詳細に説明する。まず、窒化炉内に被処理物であるステンレス鋼箔からなる基材を配置し、1[Torr](=133[Pa])以下の真空に炉内を排気する。次に、窒化炉内に水素ガスとアルゴンガスの混合ガスを導入した後、数[Torr]〜十数[Torr](665[Pa]〜2128[Pa])の真空度で、ステンレス鋼箔からなる基材を陰極、炉壁を陽極として、電圧を印加する。この場合、陰極である基材上にグロー放電が発生し、このグロー放電により基材を加熱及び窒化する。
本発明の実施の形態に係る合金の窒化物、燃料電池用セパレータの製造方法として、第一の工程として、ステンレス鋼箔からなる基材表面の不導態皮膜を除去するスパッタークリーニングを実施する。このスパッタークリーニングの際、導入ガスがイオン化した水素イオン、アルゴンイオンなどが試料表面に衝突することで、ステンレス鋼箔表面のCrを主体とした酸化皮膜を除去することができる。
第2の工程として、スパッタークリーニングの後、水素ガスと窒素ガスの混合ガスを窒化炉内に導入し、電圧を印加して陰極である基材上にグロー放電を発生させる。この際、イオン化した窒素が基材表面に衝突、侵入及び拡散することにより、基材表面にMN型結晶構造を有する連続した窒化層が形成される。窒化層の形成と同時に、イオン化した水素と基材表面の酸素が反応する還元反応により、基材表面に形成された酸化膜が除去される。
なお、このプラズマ窒化法では、上述の通り、基材表面での反応は平衡反応ではなく非平衡反応であるため、基材表面から深さ方向に高窒素濃度のMN型結晶構造を含む遷移金属窒化物が迅速に得られ、この窒化物は導電性と耐食性に富む。
これに対し、大気圧でかつ平衡反応により窒化が進行する窒化法、例えば、ガス窒化法などを用いた場合、基材表面の不導態皮膜を除去するのが難しく、かつ平衡反応のため、基材表面に、MN型結晶構造を得るようにするには長時間を要し、かつ、所望の窒素濃度が得られ難くなる。このため、基材表面に酸化皮膜が存在するため導電性が悪化し、化学的安定性に欠けるため、この窒化法により得られた窒化物及び窒化層では強酸性雰囲気での導電性維持が困難となる。
本発明の実施の形態では、電源としてマイクロパルスプラズマ電源を用いる。プラズマ窒化法に用いる電源としては、直流電圧を印加し、この放電電流を電流検出器により検出し、所定の電流となるようサイリスタにより制御する直流波形を有する直流電源を用いるのが一般的である。この場合、グロー放電は連続的に継続され、基材温度を放射温度計により測定すると、±30[℃]程度の範囲で変化する。これに対し、マイクロパルスプラズマ電源は、直流電圧とサイリスタによる高周波遮断回路から構成されており、この回路により直流電源波形は、グロー放電がONとOFFを繰り返すパルス波形となる。この場合、プラズマを放電させる時間とプラズマを遮断する時間を1〜1000[μsec]として放電、遮断を繰り返すマイクロパルスプラズマ電源を用いたプラズマ窒化を行うことで、基材温度を放射温度計により測定すると、±5[℃]程度の範囲になる。高窒素濃度を有する遷移金属窒化物を得るためには、基材温度の精密温度制御が要求されることから、基材温度の変化の小さいマイクロパルスプラズマ電源を用い、プラズマを放電させる時間とプラズマを遮断する時間をそれぞれ1〜1000[μsec]として放電、遮断を繰り返すことが好ましい。
プラズマ窒化には窒素ガス及び水素ガスを使用し、窒素ガス及び水素ガスを放電させた低温非平衡プラズマ中においてステンレス鋼材にマイナスのバイアス電圧をかけることにより、ステンレス鋼材を400〜500[℃]の温度で窒化を行うことが好ましい。プラズマ窒化処理では、イオン衝撃によるスパッタリング作用により金属材料表面の不動態皮膜を容易に除去できる。一方、通常使用されるガス窒化や塩浴窒化を用いて窒化処理を行った場合には、窒化層の数〜数十[nm]オーダの最表層では酸化が起きて絶縁性酸化物が形成されるため、燃料電池のガス拡散層として通常使用されるカーボンペーパとの間の接触抵抗が増大する。これに対し、本発明のようにプラズマ窒化の手法を用いた窒化処理では、金属材料表面の酸素を除去しながら窒化反応を進めることができるため、窒化後の金属材料の最表層の酸素レベルを十分に低く抑えることが可能となる。さらに、カーボンペーパとの間の接触抵抗を、燃料電池として好適となるように低い値に維持することが可能となる。
このように、本発明の実施の形態に係る遷移金属窒化物の製造方法によれば、Feを主成分として、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子によって形成された面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子が配置されたMN型格子構造を有する遷移金属窒化物であって、面心立方格子を形成する金属元素の組成が5.9≦([at%Fe]×6+[at%Cr]×5+[at%Ni]×8+[at%Mo]×5)×0.01≦6.1の関係式を満たし、かつ、前記遷移金属原子と前記窒素原子との原子比が4:0.8〜4:1の範囲にある遷移金属窒化物が簡便な操作により得られ、この遷移金属窒化物は化学的安定性及び耐食性を兼ね備える。
また、本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法によれば、Feを主成分とし、Crと、少なくともNi又はMoのいずれかの元素と、を含有するステンレス鋼から形成された基層と、基層の直接上に形成された遷移金属窒化物の窒化層を有するため、簡便な操作により、酸化性環境下での低抵触抵抗値を維持し、耐食性に優れ、かつ低コスト化を実現した燃料電池用セパレータ製造することが可能となる。
(燃料電池車両)
本発明の実施の形態に係る燃料電池車両の一例として、前述した本発明の実施の形態に係る燃料電池スタックを動力源とした燃料電池電気自動車を挙げて説明する。
図7は、燃料電池スタック1を搭載した燃料電池電気自動車の外観を示す図である。図7(a)は燃料電池電気自動車50の側面図、図7(b)は燃料電池電気自動車50の上面図である。図7(b)に示すように、車体51前方には、左右のフロントサイドメンバとフードリッジのほか、フロントサイドメンバを含む左右のフードリッジ同士を互いに連結するダッシュロア部材をそれぞれ組み合わせて溶接接合したエンジンコンパートメント部52を形成している。図7(a)及び(b)に示す燃料電池電気自動車70では、エンジンコンパートメント部52内に燃料電池スタック1を搭載している。
本発明の実施の形態に係る燃料電池セパレータを適用した発電効率の高い燃料電池スタック1を自動車等の移動体車両に搭載することにより、燃料電池電気自動車の燃費向上を図ることができる。また、小型化した軽量の燃料電池スタック1を車両に搭載することにより、車両重量を低減して省燃費化を図ることができ、走行距離の長距離化を図ることができる。さらに、小型化した燃料電池を移動体車両等に搭載することにより、車室内空間をより広く活用することができ、スタイリングの自由度を高めることができる。
なお、燃料電池車両の一例として電気自動車を挙げたが、本発明は電気自動車等の車両に限定されるものではなく、電気エネルギが要求される航空機その他の機関にも適用することが可能である。
以下、本発明に係る燃料電池用セパレータの実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5について説明する。これらの実施例は、本発明に係る燃料電池用セパレータの有効性を調べたもので、異なる原料に対して、異なる条件下で処理を施すことによって生成した燃料電池用セパレータの例を示したものである。
<試料の調製>
各実施例では、JISにて規定されるSUS316L、SUS310S、SUS317L、SUS317J1、SUS317J2材について、厚さ0.1[mm]の真空焼鈍材を脱脂洗浄後、両面にプラズマ窒化処理を施した。表2に、用いた鋼種とその化学組成(wt%)及び原子百分率(at%)、価電子d電子の個数、及びMにおけるXの個数を示す。価電子d電子の個数は、Fe、Cr、Ni及びMoの各元素の原子百分率に価電子d電子のの個数をかけた和に0.01をかけたものである。実施例1〜実施例5ではマイクロパルスプラズマ電源を用いてプラズマ窒化処理を行った。プラズマ窒化処理は、処理温度450〜500[℃]、処理時間60[分]、ガス混合比N:H=1:1、処理圧力4[Torr](=532[Pa])で行い、表3に示す実施例1〜実施例5の試料を得た。なお、比較例1〜比較例5は、プラズマ窒化を行っていない。
Figure 0005087846
Figure 0005087846
ここで、各試料は、以下の方法によって評価された。
<窒化層の同定>
上記方法によって得られた試料の窒化層の同定は、窒化処理を施した表面のX線回折測定を行うことにより同定した。装置は、マックサイエンス社製 X線回折装置(XRD)を用いた。測定は、線源はCuKα線、回折角20〜100[゜]、スキャン速度2[゜/min]の条件で行った。
<窒化層の厚さの測定>
窒化化合物層の厚さは、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡を用いて断面観察することにより測定した。
<窒素量の定量>
窒化層の窒素量、すなわち、窒化層の化学式をMで表現した場合のXの値は、オージェ電子分光分析の深さ方向プロファイルにより、深さ100〜200[nm]間の測定値を平均した。装置は、PHI社製 MODEL4300を用いた。測定は、電子線加速電圧5[kV]、測定領域20[μm]×16[μm]、イオン銃加速電圧3[kV]、スパッタリングレート10[nm/min](SiO換算値)の条件で行った。
<接触抵抗値の測定>
上記実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5で得られた試料を30[mm]×30[mm]の大きさに切り出して接触抵抗を測定した。装置は、アルバック理工製 圧力負荷接触電気抵抗測定装置 TRS-2000SS型を用いた。そして、図8(a)に示すように、電極61とサンプル62との間にカーボンペーパ63を介在させて、図8(b)に示すように、電極61a/カーボンペーパ63a/サンプル62/カーボンペーパ63b/電極61bの構成とした。そして、測定面圧1.0[MPa]にて1[A/cm]の電流を流した際の電気抵抗を2回測定し、各電気抵抗の平均値を求めて接触抵抗値とした。なお、接触抵抗値は、後述する耐食試験の前後で2回測定を行い、耐食試験後の接触抵抗値は、燃料電池スタック内で燃料電池用セパレータが曝される環境を模擬して、酸化性環境下での耐食性を評価したものである。カーボンペーパは、カーボンブラックで担持した白金触媒を塗布したカーボンペーパ(東レ(株)製カーボンペーパ TGP-H-090 厚さ0.26[mm]、かさ密度0.49[g/cm]、空隙率73[%]、厚さ方向体積抵抗率0.07[Ω・cm])を用いた。電極は、直径φ20のCu製電極を用いた。
<耐食性の評価>
上記実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5で得られた試料を30[mm]×30[mm]の大きさに切り出して、電気化学的な手法である定電位電解試験を行った後、腐食電流密度を測定し、耐食性の低下の度合いを評価した。燃料電池では、水素極側に比較して酸素極側に最大で1[V]vsSHE程度の電位がかかる。また、固体高分子電解質膜は、分子中にスルホン酸基などのプロトン交換基を有する高分子電解質膜を飽和に含水させてプロトン伝導性を利用するものであり、強酸性を示す。このため、電位をかけた状態で一定時間保持した後の腐食電流密度測定して耐食性を評価した。なお、定電位電解試験の条件は、pH2の硫酸水溶液で、温度80[℃]、電位1[V]vsSHE電位を印加し、保持する一定時間を100[時間]とした。
上記実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例5の耐食試験前後での接触抵抗値及び腐食電流密度を下表4に示す。
Figure 0005087846
表2に示すように、遷移金属窒化物の面心立方格子を形成する金属元素の組成が5.9≦([at%Fe]×6+[at%Cr]×5+[at%Ni]×8+[at%Mo]×5)×0.01≦6.1の関係式を満たし、かつ、遷移金属原子と窒素原子との原子比が4:0.8〜4:1の範囲にある金属材料を、400〜500[℃]の温度でプラズマ窒化した場合には、基層の直接上にMN型格子構造の遷移金属窒化物の窒化層が形成される。そして、この窒化層では、遷移金属原子間の金属結合を保ったまま、遷移金属原子と窒素原子の間で強い共有結合性を示すことにより、窒化層中の各金属原子を化学的に安定しているため、実施例1〜実施例5では電解試験前後とも接触抵抗が40[mΩ・cm]以下であり、電解試験後であっても低い接触抵抗を示した。比較例1〜比較例5は、窒化処理を施しておらず、ステンレス鋼表面に不動態皮膜が形成されている。このため、腐食電流密度が低く、耐食性に優れていることが示されたが、電解試験前後ともに接触抵抗が高かった。これに対し、実施例1〜実施例5では、不動態皮膜ではなく窒化層が形成されており、この窒化層が化学的に安定であるため、腐食電流密度が低く、耐食性にも優れていることが示された。このように、実施例1〜実施例5では、酸化性環境下におけるセパレータと電極との間の接触抵抗を低い値に維持し、かつ耐食性に優れていることが分かった。また、プラズマ窒化という簡便な操作により窒化処理ができることから、簡便で低コスト化を実現した簡便な操作により、酸化性環境下での低抵触抵抗値を維持し、耐食性に優れ、かつ低コスト化を実現した燃料電池用セパレータを得ることができることがわかった。さらに、実施例1〜実施例5では、接触抵抗値が低いため、単位セル当りの起電力が高く、起電力の高い燃料電池スタックを形成することが可能となることがわかった。
本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータを用いて構成する燃料電池スタックの外観を示す斜視図である。 本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータを用いて構成する燃料電池スタックの展開図である。 (a)燃料電池用セパレータの模式的な斜視図である。(b)燃料電池用セパレータのIIIb-IIIb線断面図である。(c)燃料電池用セパレータのIIIc-IIIc線断面図である。 本発明の実施の形態に係る遷移金属窒化物に含まれるMN型格子構造を示す模式図である。 本発明の実施の形態に係る燃料電池用セパレータの製造方法に用いる窒化装置の側面模式図である。 窒化装置のシステム図である。 本発明の実施の形態に係る燃料電池スタックを搭載した電気自動車の外観を示す図であり、(a)は電気自動車の側面図、(b)は電気自動車の上面図である。 (a)各実施例で得られた試料の接触抵抗の測定方法を説明する模式図である。(b)接触抵抗の測定に使用する装置を説明する模式図である。 燃料電池スタックを形成する単セルの構成を示す断面図である。
符号の説明
1 燃料電池スタック
2 単セル
3 燃料電池用セパレータ
4 エンドフランジ
5 締結ボルト
13 基層
14 窒化層
20 MN型格子構造
21 遷移金属原子
22 窒素原子

Claims (7)

  1. Feを主成分として、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子によって形成された面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子が配置されたMN型格子構造を有する遷移金属窒化物であって、前記面心立方格子を形成する金属元素の組成が5.9≦([at%Fe]×6+[at%Cr]×5+[at%Ni]×8+[at%Mo]×5)×0.01≦6.1の関係式を満たし、かつ、前記遷移金属原子と前記窒素原子との原子比が4:0.8〜4:1の範囲にあることを特徴とする遷移金属窒化物。
  2. 前記遷移金属原子と前記窒素原子との結合が、前記遷移金属原子の価電子d電子と前記窒素原子の2p電子による共有結合であり、かつ、前記遷移金属原子の4s電子が自由電子であることを特徴とする請求項1に記載の遷移金属窒化物。
  3. 前記Fe、Cr、Niが混合により合金化されることにより、前記遷移金属原子のdバンド幅が各遷移金属元素単体のdバンド幅よりも広がっており、かつ、前記遷移金属原子のd電子のエネルギー準位と、前記窒素原子の2p電子のエネルギー準位が重なることを特徴とする請求項2に記載の遷移金属窒化物。
  4. 前記遷移金属原子は6配位の立方配置となり、前記遷移金属原子の価電子d電子のエネルギー準位の結晶場分裂により低下したエネルギー準位と、前記窒素原子の2p電子のエネルギー準位が重なることを特徴とする請求項3に記載の遷移金属窒化物。
  5. Feを主成分とし、Crと、少なくともNi又はMoのいずれかの元素と、を含有するステンレス鋼から形成された基層と、
    前記基層の直接上に形成された請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の遷移金属窒化物の窒化層を有することを特徴とする燃料電池用セパレータ。
  6. Feを主成分とし、Crと、少なくともNi又はMoのいずれかの元素と、を含有するステンレス鋼材表面に、プラズマ窒化により形成される遷移金属窒化物の製造方法であって、
    Feを主成分として、Fe、Cr、Ni及びMoの中から選択される遷移金属原子によって形成された面心立方格子の単位胞中心の八面体空隙に窒素原子が配置されたMN型格子構造を有する窒化層を形成し、
    前記プラズマ窒化、窒素ガス及び水素ガスを放電させた低温非平衡プラズマ中で、前記ステンレス鋼材にマイナスのバイアス電圧をかけることにより、400〜500[℃]の温度で前記ステンレス鋼材を窒化するものであり、さらに、プラズマを放電させる時間とプラズマを遮断する時間を1〜1000[μsec]として放電、遮断を繰り返すマイクロパルスプラズマ電源を用いるものであることを特徴とする遷移金属窒化物の製造方法。
  7. 請求項5に記載された燃料電池用セパレータを用いたことを特徴とする燃料電池スタック。
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