JP5076334B2 - 表面に微細な凹凸形状を有する金型、その金型の製造方法及びその金型を用いた防眩フィルムの製造方法 - Google Patents

表面に微細な凹凸形状を有する金型、その金型の製造方法及びその金型を用いた防眩フィルムの製造方法 Download PDF

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本発明は、表面に微細な凹凸形状を有する金型、その金型の製造方法及び、その金型を用いて、低ヘイズでありながら防眩特性に優れた防眩(アンチグレア)フィルムを製造する方法に関するものである。
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の画像表示装置は、その表示面に外光が写り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、反射光を利用して表示を行う携帯電話等においては、従来から画像表示装置の表面に外光の映り込みを防止するフィルム層が設けられていた。このフィルム層は、光学多層膜による干渉を利用した無反射処理が施されたフィルムからなるものと、表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩処理が施されたフィルムからなるものとに大別される。このうち、前者の無反射フィルムは、均一な光学膜厚の多層膜を形成する必要があるため、コスト高になる。これに対して後者の防眩フィルムは、比較的安価に製造することができるため、大型のパーソナルコンピュータやモニタ等の用途に広く用いられている。
このような防眩フィルムは従来から、例えば、フィラーを分散させた樹脂溶液を基材シート上に塗布し、塗布膜厚を調整してフィラーを塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸をシート上に形成する方法などにより製造されている。しかしながら、このようなフィラーを分散させることにより製造された防眩フィルムは、樹脂溶液中のフィラーの分散状態や塗布状態等によって凹凸の配置や形状が左右されてしまうため、意図したとおりの凹凸を得ることが困難であり、ヘイズが低いものでは十分な防眩性能が得られないという問題があった。さらに、このような従来の防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置した場合、散乱光によって表示面全体が白っぽくなり、表示が濁った色になる、いわゆる白ちゃけが発生しやすいという問題があった。また、最近の画像表示装置の高精細化に伴って、画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状が干渉し、結果として輝度分布が発生して見にくくなる、いわゆるギラツキ現象が発生しやすいという問題もあった。
一方、フィラーを含有させずに、透明樹脂層の表面に形成された微細な凹凸だけで防眩性を発現させる試みもある。例えば、特開 2002-189106号公報(特許文献1)には、エンボス鋳型と透明樹脂フィルムとの間に電離放射線硬化性樹脂を挟んだ状態で当該電離放射線硬化性樹脂を硬化させることにより、三次元10点平均粗さ及び、三次元粗さ基準面上における隣接する凸部どうしの平均距離が、それぞれ所定値を満足する微細な凹凸を形成させ、その凹凸が形成された電離放射線硬化性樹脂層を前記透明樹脂フィルム上に設けた形の防眩フィルムが開示されている。
また、表示装置の表示面に配置される防眩フィルムではなく、液晶表示装置の背面側に配置される光拡散層として、表面に微細な凹凸が形成されたフィルムを用いることも、例えば、特開平 6-34961号公報(特許文献2)、特開 2004-45471 号公報(特許文献3)、特開 2004-45472 号公報(特許文献4)などに開示されている。
フィルムの表面に凹凸を形成する手法として、上記特許文献3や特許文献4には、凹凸を反転させた形状を有するエンボスロールに電離放射線硬化性樹脂液を充填し、充填された樹脂にロール凹版の回転方向に同期して走行する透明基材を接触させ、透明基材がロール凹版に接触しているときに、ロール凹版と透明基材との間にある樹脂を硬化させ、硬化と同時に硬化樹脂と透明基材とを密着させた後、硬化後の樹脂と透明基材との積層体をロール凹版から剥離する方法が開示されている。
このような手法では、用いることのできる電離放射線硬化性樹脂液の組成が限られ、また溶媒で希釈して塗布したときのようなレベリングが期待できないことから、膜厚の均一性に課題があることが予想される。さらに、エンボスロール凹版に直接樹脂液を充填する必要があることから、凹凸面の均一性を確保するためには、エンボスロール凹版に高い機械精度が要求され、エンボスロールの作製が難しいという課題があった。
次に、表面に凹凸を有するフィルムの作製に用いられるロールの作製方法として、例えば、前記特許文献2には、金属等を用いて円筒体を作り、その表面に、電子彫刻、エッチング、サンドブラストなどの手法により凹凸を形成する方法が開示されている。また、特開 2004-29240 号公報(特許文献5)には、ビーズショット法によってエンボスロールを作製する方法が開示されており、特開 2004-90187 号公報(特許文献6)には、エンボスロールの表面に金属めっき層を形成する工程、金属めっき層の表面を鏡面研磨する工程、鏡面研磨した金属めっき層面に、セラミックビーズを用いてブラスト処理を施す工程、さらに必要に応じてピーニング処理をする工程を経て、エンボスロールを作製する方法が開示されている。
このようにエンボスロールの表面にブラスト処理を施したままの状態では、ブラスト粒子の粒径分布に起因する凹凸径の分布が生じるとともに、ブラストにより得られるくぼみの深さを制御することが困難であり、防眩機能に優れた凹凸の形状を再現性良く得ることに課題があった。
また、前記特許文献1には、好ましくは鉄の表面にクロムめっきしたローラーを用い、サンドブラスト法やビーズショット法により凹凸型面を形成することが記載されている。さらに、このように凹凸が形成された型面には、使用時の耐久性を向上させる目的で、クロムめっきなどを施してから使用することが好ましく、それにより硬膜化及び腐食防止を図ることができる旨の記載もある。一方、前記特許文献3や特許文献4のそれぞれ実施例には、鉄芯表面にクロムめっきし、#250の液体サンドブラスト処理をした後に、再度クロムめっき処理して、表面に微細な凹凸形状を形成することが記載されている。
このようなエンボスロールの作製法では、硬度の高いクロムめっき上にブラストやショットを行うため、凹凸が形成されにくく、しかも形成された凹凸の形状を精密に制御することが困難であった。また、特開 2004-29672 号公報(特許文献7)にも記載されるとおり、クロムめっきは、下地となる材質及びその形状に依存して表面が荒れることが多く、ブラストにより形成された凹凸上にクロムめっきで生じた細かいクラックが形成されるため、どのような凹凸ができるのか設計が難しいという課題があった。さらに、クロムめっきで生じる細かいクラックがあるため、最終的に得られる防眩フィルムの散乱特性が好ましくない方向に変化するという課題もあった。さらには、エンボスロール母材表面の材質とめっき種の組合せにより、仕上がりのロール表面が多種多様に変化するため、必要とする表面凹凸形状を精度良く得るためには、適切なロール表面の材質と適切なめっき種を選択しなければならないという課題もあった。さらにまた、望む表面凹凸形状が得られたとしても、めっき種によっては使用時の耐久性が不十分となることもあった。
特開 2000-284106号公報(特許文献8)には、基材にサンドブラスト加工を施した後、エッチング工程及び/又は薄膜の積層工程を施すことが記載されているが、サンドブラスト工程前に金属めっき層を設けることは記載も示唆もされていない。
特開2002−189106号公報(請求項1〜6、段落0043〜0046) 特開平6−34961号公報(請求項1〜3、段落0024) 特開2004−45471号公報(請求項4、実施例1) 特開2004−45472号公報(請求項4、実施例1) 特開2004−29240号公報(請求項2) 特開2004−90187号公報(請求項1及び2) 特開2004−29672号公報(段落0030) 特開2000−284106号公報(請求項7、段落0006)
本発明は、高い防眩機能を示す防眩フィルムの製作に有用な、表面に微細な凹凸形状を有する金型、及びその金型の製造方法を提供し、さらに、その金型を用いて、優れた防眩機能を示しながら、白ちゃけによる視認性の低下が十分に防止され、高精細の画像表示装置の表面に配置したときにギラツキの発生しない防眩フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。本発明はまた、金型表面へのめっきとして、硬度や表面光沢などに優れるクロムめっきを採用しながら、そのクロムめっき面に荒れを生じさせずに、防眩フィルムの製作に好適な金型を製造し、それを用いて優れた防眩機能を示す防眩フィルムを製造することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、金型となる基材表面に下地めっきとして銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面に微粒子をぶつけることにより凹凸を形成し、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、その凹凸面にクロムめっきを施して金型とすれば、表面に所望の微細な凹凸形状を有する金型が再現性良く得られることを見出した。また、その金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写して得られる凹凸面付き防眩フィルムは、低ヘイズでありながら十分な防眩性能を有し、画像表示装置に適用したときにも、白ちゃけやギラツキなどが発生せず、良好な視認性を示すという、従来品では兼備していなかった性能が発現されることを見出した。本発明は、かかる知見に基づき、さらに種々の検討を加えて完成されたものである。
すなわち本発明によれば、表面に微細な凹凸形状を有し、その凹凸表面はクロムめっき層で構成され、その凹凸は、金属基材の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨し、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、その凹凸面にクロムめっきを施すことによって形成されており、そして、そのクロムめっき表面の硬度がビッカース硬度800以上であり、その凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPa が0.01μm 以上0.5μm 以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSm の比 Pa/PSm が 0.001以上0.012以下である金属金型が提供される。
この金型の作製にあたり、微粒子をぶつけることにより形成された凹凸形状を鈍らせる加工には、エッチング処理又は銅めっきを採用するのが有利である。エッチング処理を採用する場合、エッチング量は1μm 以上50μm 以下、さらには1μm 以上20μm 以下であることが好ましい。また、銅めっきを採用する場合、その厚みは1μm 以上20μm 以下、さらには1μm 以上10μm 以下であることが好ましい。
この金型において、表面のクロムめっき層は、その厚みが1μm 以上20μm 以下、さらには1μm 以上10μm 以下であることが好ましい。金型をロール状のもので構成し、その表面に微細な凹凸形状が形成されたものとすれば、防眩フィルムを連続的な長尺のロール状で製造することができる。
また、本発明によれば、基材表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨し、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、その凹凸面にクロムめっきを施すことにより、表面硬度がビッカース硬度で800以上であり、凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPa が0.01μm以上0.5μm 以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSm の比 Pa/PSmが0.001以上0.012以下である金属金型を製造する方法も提供される。
この方法において、微粒子をぶつけることにより形成された凹凸形状を鈍らせる加工には、エッチング処理又は銅めっきを採用するのが有利である。エッチング処理を採用する場合、エッチング量は1μm 以上50μm 以下、さらには1μm 以上20μm 以下であることが好ましい。また銅めっきを採用する場合、その厚みは、1μm 以上20μm 以下、さらには1μm 以上10μm 以下であることが好ましい。
またこの方法において、クロムめっき後に表面を研磨せず、クロムめっき面をそのまま金型の凹凸面として用いるのが有利である。クロムめっきは、その厚みが1μm 以上20μm 以下、さらには1μm 以上10μm 以下となるようにするのが好ましい。
さらに本発明によれば、上記したいずれかの金型を用い、その金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写し、次いで凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がすことにより、防眩フィルムを製造する方法も提供される。基材表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨し、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、その凹凸面に、ビッカース硬度800以上のクロムめっきを施して、その凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPa が0.01μm以上0.5μm以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSm の比Pa/PSmが0.001以上0.012以下である金型とし、その金型を用いて、その凹凸面を透明樹脂フィルムに転写し、次いでその凹凸が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がすようにすれば、優れた防眩性能を有する防眩フィルムを有利に製造できる。
金型の凹凸面を転写する透明樹脂フィルムは、透明基材フィルムの表面に光硬化性樹脂層が形成されたもので構成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることにより、金型の凹凸面を光硬化性樹脂層に転写することができる。
本発明の金属金型は、表面に微細な凹凸形状が形成されていることから、高い防眩機能を示す防眩フィルムの製造に有用なものとなる。また本発明によれば、このような金型を再現性良く製造できる。さらに、本発明の防眩フィルムの製造方法によれば、ヘイズが低く、表示画像の明るさを保ちながら、映り込み防止や反射防止、白ちゃけの抑制、ギラツキ発生防止など、防眩性能に優れた防眩フィルムが、工業的有利に製造できる。
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。本発明では、凹凸を有する金属金型を得るために、基材の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨した後、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、その凹凸面にクロムめっきを施して、金型の表面硬度がビッカース硬度で800以上であり、凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPa が0.01μm以上0.5μm以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSm の比Pa/PSmが0.001以上0.012以下である金型とする。
まず、微粒子をぶつけて凹凸を形成し、さらにクロムめっき層を形成する基材の表面には、銅めっき又はニッケルめっきが施される。このように、金型を構成する基材の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施すことにより、後工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を上げることができる。鉄などの表面にクロムめっきを施した場合、あるいはクロムめっき表面にサンドブラスト法やビーズショット法などで凹凸を形成してから再度クロムめっきを施した場合には、先に背景技術の項で述べた如く、表面が荒れやすく、細かいクラックが生じて、金型の表面の凹凸形状が制御しにくくなる。これに対して、表面に銅めっき又はニッケルめっきを施すことにより、このような不都合がなくなることが見出された。これは、銅めっきやニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金属基材の微小な凹凸や巣などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。これらの銅めっき及びニッケルめっきの特性によって、基材に存在していた微小な凹凸や巣に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきやニッケルめっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減されるものと考えられる。
ここでいう銅又はニッケルは、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、又はニッケルを主体とする合金であってもよい。したがって、本明細書でいう銅は、銅及び銅合金を含む意味であり、またニッケルは、ニッケル及びニッケル合金を含む意味である。銅めっき及びニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行っても無電解めっきで行ってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
金型を構成するのに好適な金属の材質として、コストの観点からアルミニウムや鉄などが挙げられる。さらに取扱いの利便性から、軽量なアルミニウムがより好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウム又は鉄を主体とする合金であってもよい。このような基材の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、さらにその表面を研磨して、より平滑で光沢のある表面を得た後、その表面に微粒子をぶつけて微細な凹凸を形成し、さらにその凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、そこに、ビッカース硬度が800以上となるようにクロムめっきを施して、凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPa が0.01μm以上0.5μm以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSmの比Pa/PSm が0.001以上0.012以下である金型を構成する。
銅めっき又はニッケルめっきを施す際には、めっき層があまり薄いと、下地表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは10μm 以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コスト等とのからみから、一般には500μm 程度までで十分である。
金型の形状は、平板であってもよいし、円柱状又は円筒状のロールであってもよい。ロール状の基材を用いて金型を作製すれば、防眩フィルムを連続的なロール状で製造することができる。
図1は、平板を用いた場合を例に、金属金型を得るまでの工程を模式的に示した断面図である。図1の(A)は、銅めっき又はニッケルめっきと鏡面研磨を施した後の基板41の断面を示すものであって、その表面はめっき層の研磨面42で形成されている。このような鏡面研磨後の基板表面に微粒子をぶつけることにより、表面に凹凸を形成する。図1の(B)は、微粒子をぶつけた後の基板41の断面模式図であり、微粒子がぶつけられることで、部分球面状の微細な凹面43が形成されている。図1の(C)は、こうして微粒子による凹凸が形成された面に、凹凸形状を鈍らせる加工を施した後の基板41の断面模式図であって、左側は銅めっきにより鈍らせた状態を、また右側はエッチング処理により鈍らされた状態を、それぞれ表している。左側の銅めっきを採用する例では、(B)に示した凹面43上に銅めっき層45が形成され、これによって、部分球面上の鋭角的な突起が鈍らされた形状50aが形成されている。一方、右側のエッチング処理を採用する例では、(B)に示した凹面43と鋭角的な突起が、エッチングにより削られて、部分球面上の鋭角的な突起が鈍らされた形状50bが形成されている。
その後、クロムめっきを施すことによって、表面の凹凸形状をさらに鈍らせる。図1の(D)は、クロムめっきを施した後の断面模式図であって、左側は(C)の左側の状態にクロムめっきが施されたもの、また右側は(C)の右側の状態にクロムめっきが施されたものである。左側の銅めっきを採用する例では、基板41に形成された微細な凹面上に、銅めっき層45が形成され、さらにその上にクロムめっき層44が形成されており、その表面46は、クロムめっきにより、(C)の凹面50aに比べてさらに鈍った状態、換言すれば凹凸形状が緩和された状態になっている。また、右側のエッチング処理を採用する例でも、(C)の右側に示したエッチングにより鈍らされた状態の面50bの上にクロムめっき層44が形成されており、その表面46は、(C)の凹面50bに比べて、クロムめっきによりさらに鈍った状態、換言すれば凹凸形状が緩和された状態になっている。このように、基材表面に微粒子をぶつけて凹凸を形成した後、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した凹面50(50a又は50b)に、クロムめっきを施すことにより、実質的に平坦部がない金属金型を得ることができる。また、そのような金型が、好ましい光学特性を示す防眩フィルムを得るのに好適である。
銅めっき又はニッケルめっきからなる基材表面は、表面が研磨された状態で、微粒子がぶつけられるのであるが、特に、鏡面に近い状態に研磨されていることが好ましい。なぜならば、基材となる金属板や金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っているためである。銅めっき又はニッケルめっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らない。深い加工目などが残った状態では、微粒子をぶつけて基材表面を変形させても、微粒子により形成される凹凸よりも加工目などの凹凸のほうが深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性がある。そのような金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。
めっきが施された基材表面を研磨する方法に特別な制限はなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。研磨後の表面粗度は、中心線平均粗さRa で表して、Ra が0.5μm 以下であることが好ましく、より好ましくはRa が0.1μm 以下である。Ra があまり大きくなると、微粒子をぶつけて金属の表面を変形させても、変形前の表面粗度の影響が残る可能性があるので好ましくない。また、Ra の下限については特に制限されず、加工時間や加工コストの観点から、おのずと限界があるので、特に指定する必要性はない。
基材のめっきが施された表面に微粒子をぶつける方法としては、噴射加工法が好適に用いられる。噴射加工法には、サンドブラスト法、ショットブラスト法、液体ホーニング法などがある。これらの加工に用いられる粒子としては、鋭い角があるような形状よりは、球形に近い形状であるほうが好ましく、また加工中に破砕されて鋭い角が出ないような、硬い材質の粒子が好ましい。これらの条件を満たす粒子として、セラミックス系の粒子では、球形ジルコニアのビーズや、アルミナのビーズが好ましく用いられる。また金属系の粒子では、スチールやステンレススチール製のビーズが好ましい。さらには、樹脂バインダーにセラミックスや金属の粒子を担持させた粒子を用いてもよい。
基材のめっきが施された表面にぶつける微粒子として、平均粒径が10〜200μm のもの、特に球形の微粒子を用いることにより、優れた防眩性能を示す防眩フィルムを作製することができる。微粒子の平均粒径が10μm より小さいと、基材のめっきが施された表面に十分な凹凸を形成することが困難となり、十分な防眩性能が得られにくくなる。一方、微粒子の平均粒径が200μm より大きいと、表面凹凸が粗くなり、ギラツキが発生したり、質感が低下したりする。ここで、平均粒径が15μm 以下の微粒子を用いて加工する際には、粒子が静電気等で凝集しないよう、適当な分散媒に分散させて加工する湿式ブラスト法を採用することが好ましい。
また、微粒子をぶつける際の圧力や微粒子の使用量も、加工後の凹凸形状、延いては防眩フィルムの表面形状に影響するが、一般には、ゲージ圧で0.01〜0.5MPa 程度の圧力、また処理される金属の表面積1cm2 あたり4〜30g程度の微粒子量から、用いる微粒子の種類や粒径、金属の種類、所望の凹凸形状などに応じて、適宜選択すればよい。
基材のめっきが施された表面に微粒子をぶつけることによって形成された凹凸形状は、任意の断面曲線の算術平均高さPaが0.1μm 以上1μm 以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSmの比Pa/PSm が0.01以上0.06以下であることが好ましい。算術平均高さPa が0.1μm より小さいか又は比Pa/PSmが0.01より小さい場合には、クロムめっき加工前に凹凸形状を鈍らせる加工を施した際に、凹凸表面がほぼ平坦面となってしまい、望む表面形状の金型が得られない。また、算術平均高さPaが1μm より大きいか又は比Pa/PSmが0.06より大きい場合には、クロムめっき加工前の凹凸形状を鈍らせる加工を強い条件で行わなければならず、表面形状の制御が困難なものとなる。
このようにして銅めっき又はニッケルめっき表面に凹凸が形成された基材に、凹凸形状を鈍らせる加工を施す。凹凸形状を鈍らせる加工としては、先に図1の(C)及び(D)を参照して説明したように、エッチング処理又は銅めっきが好ましい。エッチング処理を行うことによって、微粒子をぶつけて作製した凹凸形状の鋭利な部分がなくなる。それにより、金型として使用した際に作製される防眩フィルムの光学特性が好ましい方向へと変化する。また、銅めっきは平滑化作用が強いため、クロムめっきより凹凸形状を鈍らせる効果が強い。それにより、金型として使用した際に作製される防眩フィルムの光学特性が好ましい方向へと変化する。
エッチング処理は通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2) などを用い、表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した後の凹凸のなまり具合は、下地金属の種類、ブラストなどの手法により得られた凹凸のサイズと深さなどによって異なるため、一概には言えないが、なまり具合を制御するうえで最も大きな因子は、エッチング量である。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚さである。エッチング量が小さいと、ブラストなどの手法により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルムに転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、エッチング量が大きすぎると、凹凸形状がほとんどなくなってしまい、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、エッチング量は1μm 以上50μm 以下となるようにするのが好ましく、さらには20μm 以下であるのがより好ましい。
鈍らせる加工として銅めっきを採用する場合、凹凸のなまり具合は、下地金属の種類、ブラストなどの手法により得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概には言えないが、なまり具合を制御するうえで最も大きな因子はめっき厚みである。銅めっき層の厚みが薄いと、ブラストなどの手法により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルムに転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方でめっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなるうえ、凹凸形状がほとんどなくなってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、銅めっきの厚みは1μm 以上20μm 以下となるようにするのが好ましく、さらには10μm 以下であるのがより好ましい。
このようにして銅めっき又はニッケルめっき表面に凹凸が形成された基材の表面形状を鈍らせた後、さらにクロムめっきを施すことにより、凹凸の表面をより一層鈍らせるとともに、その表面硬度を高めた金属版を作る。この際の凹凸のなまり具合も、下地金属の種類、ブラストなどの手法により得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概には言えないが、なまり具合を制御するうえで最も大きな因子は、やはりめっき厚みである。クロムめっき層の厚みが薄いと、クロムめっき加工前に得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルムに転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなるうえに、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまう。そこで、クロムめっきの厚みは1μm 以上20μm 以下となるようにするのが好ましく、さらには10μm 以下であるのがより好ましい。
クロムめっきを施した後の金属版表面の凹凸形状は、任意の断面曲線における算術平均高さPa が0.01μm以上0.5μm以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSmの比Pa/PSm が0.001以上0.012以下であることが好ましい。算術平均高さPa が0.01μmより小さいか又は比Pa/PSm が0.001より小さい場合には、この金型を使用して作製した防眩フィルムの表面形状がほぼ平坦なものとなり、十分な防眩性能を示さなくなる。また、算術平均高さPa が0.5μmよい大きいか又は比Pa/PSm が0.012より大きい場合には、この金型を使用して作製した防眩フィルムが白ちゃけたり、ギラツキが発生したり、質感が低下したりする。
本発明では、平板やロールなどの表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与えうるクロムめっきを採用する。クロムめっきの種類は特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行われ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3 )と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
金型表面に施すクロムめっきのビッカース硬度は800以上であることが好ましく、より好ましくは1000以上である。ビッカース硬度が低いと、金型使用時の耐久性が低下するうえに、クロムめっきで硬度が低下することはめっき処理時にめっき浴組成、電解条件等に異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高い。
背景技術の項で掲げた特許文献1、特許文献4、特許文献6などには、クロムめっきを採用することが開示されているが、金型のめっき前の下地とクロムめっきの種類によっては、めっき後に表面が荒れたり、クロムめっきによる微小なクラックが多数発生したりすることが多く、その結果、作製される防眩フィルムの光学特性が好ましくない方向へと進む。めっき表面が荒れた状態のものは、防眩フィルム用の金属金型に向いていない。なぜならば、一般的にざらつきを消すためにクロムめっき後にめっき表面を研磨することが行われているが、後述するように、本発明ではめっき後の表面の研磨が好ましくないからである。本発明では、下地金属に銅めっき又はニッケルめっきを施すことにより、クロムめっきで生じやすいこのような不都合を解消している。
クロムめっきを施す前に凹凸形状を鈍らせる加工を施さない場合には、微粒子をぶつけて作製した凹凸形状の鋭利な部分を十分に鈍らせるために、クロムめっきを厚くしなくてはならない。しかしながら、クロムめっきの厚みを厚くしすぎると、ノジュールが発生しやすくなるので、好ましくない。また、クロムめっきの厚みを薄くした場合には、微粒子をぶつけて作製した凹凸形状を十分に鈍らせることができず、望む表面形状の金型が得られないことから、その金型を用いて作製した防眩フィルムも優れた防眩性能を示さない。
特許文献1には鉄の表面にクロムめっきしたローラーにサンドブラスト法やビーズショット法により凹凸型面を形成した後、クロムめっきを施すことが記載され、特許文献2には金属表面にエッチング、サンドブラストなどの手法によって凹凸を形成することが記載され、特許文献5、特許文献6にはロール表面にビーズショット法やブラスト処理を施すことが記載されている。しかし、本発明に示した方法のように微粒子をぶつけて凹凸形状を形成した後に、表面形状を積極的に鈍らせる加工を施したうえで、クロムめっき加工を施して表面凹凸形状を鈍らせる方法について言及したものはなく、本発明者らの検討によれば、本発明に示した方法のように積極的に表面形状を鈍らせる加工を施さなければ、優れた防眩性能を示す防眩フィルムを製造することはできなかった。
なお、凹凸をつけた金属表面にクロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。なぜなら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、フィルム上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
前記特許文献6などに開示されているような、めっき後の表面を研磨することも、やはり本発明では好ましくない。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、形状の制御因子が増えるため、再現性の良い形状制御が困難になることなどの理由からである。図2は、微粒子をぶつけて得られた凹凸面に凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、クロムめっきを施した面を研磨した場合に、平坦面が生じた金属板の断面模式図であり、具体的には、図1(D)の状態から、そのクロムめっき層44の表面を研磨した状態に相当する。研磨により、金属41の表面に形成されたクロムめっき層44の表面凹凸46のうち、一部の凸が削られて、平坦面48が生じている。
次に、このようにして得られる金属金型を用いて、防眩フィルムを製造する工程について説明する。上で説明したような方法で得られる金属金型の形状を透明樹脂フィルムに転写することにより、防眩フィルムが得られる。金型形状のフィルムへの転写は、エンボスにより行うことが好ましい。エンボスとしては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示される。
UVエンボス法では、透明基材フィルムの表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が光硬化性樹脂層に転写される。具体的には、透明な基材フィルム上に紫外線硬化型樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化型樹脂を金属金型に密着させた状態で、透明基材フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、その後金属金型から、硬化後の紫外線硬化型樹脂層が形成された透明基材フィルムを剥離することにより、金属金型の形状を紫外線硬化型樹脂に転写する。紫外線硬化型樹脂の種類は特に制限されない。また、紫外線硬化型樹脂という表現をしているが、光開始剤を適宜選定することにより、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂とすることもできる。すなわち、ここでいう紫外線硬化型樹脂とは、このような可視光硬化型の樹脂も含めた総称である。一方、ホットエンボス法では、透明な熱可塑性樹脂フィルムを加熱状態で金属金型に押し付け、金型の表面形状を熱可塑性樹脂フィルムに転写する。これらのエンボス法の中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。
防眩フィルムの作製に用いることのできる透明基材フィルムは、実質的に光学的に透明であればよく、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
紫外線硬化型樹脂としては、市販されているものを用いることができる。例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリレートをそれぞれ単独で、あるいはそれら2種以上を混合して用い、それと、“イルガキュアー 907”、“イルガキュアー 184”(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、“ルシリン TPO”(BASF社製)等の光重合開始剤とを混合したものを、紫外線硬化型樹脂とすることができる。
ホットエンボス法に用いる熱可塑性の透明樹脂フィルムとしては、実質的に透明なものであればいかなるものであってもよく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどを用いることができる。これらの透明樹脂フィルムはまた、上で説明したUVエンボス法を採用する場合の透明基材フィルムともなりうる。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下の例において、金属金型又は防眩フィルムの評価方法は、次のとおりである。
(ビッカース硬度の測定)
Krautkramer 社製の超音波硬度計“MIC10”を用いて、 JIS Z 2244 に準拠した方法でビッカース硬度を測定した。測定は、金型自体の表面にて行った。
(断面曲線における算術平均高さPa 及び平均長さPSm の測定)
ロール状の金型を作製したので、その表面形状を直接測定することは難しい。そこで、その金型を用いて、後述する実施例1と同様の方法で防眩フィルムを作製し、その防眩フィルムの表面形状を以下の方法で測定して、各金型の表面形状とした。防眩フィルム上の断面曲線は、金型上の断面曲線の上下が反転したものになるが、算術平均高さPa 及び平均長さPSm は両者で同じになる。表面形状の測定にあたっては、 Sensofar 社製の共焦点顕微鏡“PLμ2300”を用いた。そして、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は50倍とした。測定データをもとに、 JIS B 0601 に準拠した方法で計算することにより、算術平均高さPa 及び平均長さPSm を求めた。
(ヘイズの測定)
防眩フィルムのヘイズは、 JIS K 7136 に規定される方法で測定した。具体的には、この規格に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター“HM-150”型を用いてヘイズを測定した。この場合も、サンプル(防眩フィルム)の反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。一般的にヘイズが大きくなると、画像表示装置に適用したときに画像が暗くなり、その結果、正面コントラストが低下しやすくなる。それゆえに、ヘイズは低い方が好ましい。
(反射鮮明度の測定)
反射鮮明度は、 JIS K 7105 に規定される方法で測定した。具体的には、この規格に準拠したスガ試験機(株)製の写像性測定器“ICM-1DP” を用いて、防眩フィルムの反射鮮明度を測定した。この規格では、像鮮明度測定に用いる光学くしとして、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類が規定されている。このうち、幅0.125mm の光学くしを用いた場合、本発明で規定する防眩フィルムにおいては、その測定値の誤差が大きくなることから、幅0.125mm の光学くしを用いた場合の測定値は和に加えないこととし、幅が0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度の和をもって反射鮮明度と呼ぶことにする。この定義による場合の反射鮮明度の最大値は300%である。この定義による反射鮮明度があまり大きくなると、光源などの像が映り込んで、防眩性が低下する傾向になりやすいため、100%以下であることが好ましく、50%以下であることがさらに好ましい。評価の際には、サンプルの反りを防止するため、及び裏面からの反射を防止するために、光学的に透明な粘着剤を用いて、防眩フィルムの凹凸面が表面となるように2mm厚みの黒色アクリル樹脂板に貼合してから、測定に供した。この状態でサンプル(防眩フィルム)側から光を入射させ、測定を行った。
(60度光沢度の測定)
60度光沢度は、 JIS Z 8741 に規定される方法で測定した。具体的には、この規格に準拠した日本電色工業(株)製の光沢計“PG-1M” を用いて、防眩フィルムの光沢度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、及び裏面からの反射を防止するために、防眩フィルムを光学的に透明な粘着剤を用いて、凹凸面が表面となるように2mm厚みの黒色アクリル樹脂板に貼合ししてから、測定に供した。この状態でサンプル(防眩フィルム)側から光を入射させ、測定を行った。一般的に60度光沢度が小さいことは、サンプル表面が曇っていることを意味し、その結果、白ちゃけが発生しやすくなる。それゆえに、光沢度は高い方が好ましいが、光沢度が高すぎると映り込みが生じ、防眩性が低下するため、30〜90%程度の値が好ましい。
(映り込み及び白ちゃけの目視評価)
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無及び白ちゃけの程度を目視で評価した。映り込み、白ちゃけともに、1から3の3段階で次の基準により評価した。
映り込み 1:映り込みが観察されない、
2:映り込みが少し観察される、
3:映り込みが明瞭に観察される。
白ちゃけ 1:白ちゃけが観察されない、
2:白ちゃけが少し観察される、
3:白ちゃけが明瞭に観察される。
(ギラツキの評価)
ギラツキは、以下の方法で評価した。まず、図3に平面図で示すようなユニットセルのパターンを有するフォトマスクを用意した。この図において、ユニットセル60は、透明な基板上に、線幅10μm でカギ形のクロム遮光パターン61が形成され、そのクロム遮光パターン61の形成されていない部分が開口部62となっている。
次に、このフォトマスクを図4に示すように、フォトマスク63のクロム遮光パターン61を上にしてライトボックス65に置き、1.1mm厚のガラス板67に20μm厚みの粘着剤で防眩フィルム70を貼合したサンプルをフォトマスク63上に置き、サンプルから約30cm離れた場所39から目視観察することにより、ギラツキの程度を7段階で官能評価した。ライトボックス65の中には光源66が配置されている。官能評価の7段階のうち、レベル1はギラツキが全く認められない状態、レベル7はひどくギラツキが観察される状態に該当し、レベル3はごくわずかにギラツキが観察される状態である。なお、フォトマスクのユニットセルは、図3におけるユニットセル縦×ユニットセル横が282μm ×94μm 、したがって同図における開口部縦×開口部横が272μm ×84μm のものを用いた。このセルは90ppi(pixel per inch)の画素密度に相当する。
[実施例1]
直径200mmの鉄ロール(JIS による STKM13A)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚さは、約200μm であった。その銅めっき表面を鏡面研磨し、さらにその研磨面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、東ソー(株)製のジルコニアビーズ“TZ-B125”(商品名、平均粒径125μm)を、ブラスト圧力0.05MPa(ゲージ圧、以下同じ)、ビーズ使用量8g/cm2(ロールの表面積1cm2あたりの使用量、以下同じ)でブラストし、表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つき銅めっき鉄ロールに対し、塩化第二銅液でエッチング処理を行った。その際のエッチング量は2μm となるように設定した。その後、クロムめっき加工を行い、金属金型を作製した。このとき、クロムめっき厚みが6μm となるように設定した。
別途、大日本インキ化学工業(株)製の光硬化性樹脂組成物“GRANDIC 806T”(商品名)を酢酸エチルに溶解して、50重量%濃度の溶液とし、さらに、光重合開始剤である“ルシリン TPO”(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を、硬化性樹脂成分100重量部あたり5重量部添加して塗布液を調製した。厚さ80μm のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが5μm となるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、上で作製した金属金型の凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2 の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2 となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを得た。
得られた防眩フィルムの光学特性及び防眩性能を上記した手法により評価した。金型の作製条件とその表面性状(ビッカース硬度と、ブラスト直後及びクロムめっき後の表面形状)を表1に、また、防眩フィルムの光学特性と防眩性能を表2に、それぞれ示した。なお、表2中の反射鮮明度の内訳は、次のとおりである。
反射鮮明度
0.5mm 光学くし : 11.1%
1.0mm 光学くし : 12.5%
2.0mm 光学くし : 30.2%
合計 53.8%
[実施例2〜5]
金型作製条件を表1のように変更し、その他は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する金属金型を作製した。その金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製した。金型の作製条件とその表面性状を表1に、また、得られた防眩フィルムの光学特性と防眩性能を表2に、それぞれ示した。
比較例2(旧実施例6)
ブラスト加工によって形成された凹凸形状を鈍らせる加工として銅めっきを行い、その他は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する金属金型を作製した。なお、ブラスト加工後の凹凸形状を鈍らせる際の銅めっきのめっき厚みは2μmに設定した。その金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製した。金型の作製条件とその表面性状を表1に、また、得られた防眩フィルムの光学特性と防眩性能を表2に、それぞれ示した。
[比較例1]
ブラスト加工によって形成された凹凸形状を鈍らせる加工を行わず、その他は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する金属金型を作製した。その金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製した。金型の作製条件とその表面性状を表1に、また、得られた防眩フィルムの光学特性と防眩性能を表2に、それぞれ示した。
Figure 0005076334
Figure 0005076334
本発明の金型を用いて作製した防眩フィルムは、表2に示すように、低ヘイズで、しかも、映り込み防止、白ちゃけ防止、ギラツキ防止という性能を兼備していた。一方、比較例1のように、表面形状を鈍らせる加工を施さなかった場合には、本発明の方法により得られるものに比べて、高ヘイズであり、また白ちゃけが明瞭に観察される状態であった。これは、クロムめっき加工のみでは、表面凹凸形状を鈍らせる効果が十分に発揮されないためである。このことは、比較例1の金型におけるクロムめっき後の Pa/PSm の値が0.015 で、実施例のものに比べて大きくなっていることにも現れている。
本発明に係る金型の製造方法を工程毎に示す断面模式図である。 クロムめっき後に表面を研磨した状態を示す断面模式図である。 ギラツキ評価用パターンのユニットセルを示す平面図である。 ギラツキ評価の状態を示す断面模式図である。
符号の説明
41……金属基板、
42……研磨面、
43……微粒子をぶつけて形成される凹面、
44……クロムめっき層、
45……銅めっき層、
46……めっき後に残る凹凸面、
48……めっき後の表面を研磨したときに発生する平坦面、
50a……微粒子をぶつけて形成された凹面を銅めっきによって鈍らせた面、
50b……微粒子をぶつけて形成された凹面をエッチングによって鈍らせた面、
60……フォトマスクのユニットセル、
61……フォトマスクのクロム遮光パターン、
62……フォトマスクの開口部、
63……フォトマスク、
65……ライトボックス、
66……光源、
67……ガラス板、
69……ギラツキの観察場所、
70……防眩フィルム。

Claims (11)

  1. 表面に微細な凹凸形状を有する金属金型を用い、該金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写し、次いで凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす防眩フィルムの製造に使用される金属金型の製造方法であって、
    基材表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨し、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸形状をエッチング処理により鈍らせた後、その凹凸面にクロムめっきを施す防眩フィルム製造用金属金型の製造方法。
  2. めっきが施された基材表面に微粒子をぶつけることによって形成された凹凸形状が、任意の断面曲線の算術平均高さPaが0.1μm以上1μm以下であり、その断面曲線における算術平均高さPaと平均長さPSmの比Pa/PSmが0.01以上0.06以下である請求項1に記載の防眩フィルム製造用金型の製造方法。
  3. エッチング量が1μm以上50μm以下である請求項1又は2に記載の防眩フィルム製造用金属金型の製造方法
  4. エッチング量が1μm以上20μm以下である請求項1又は2に記載の防眩フィルム製造用金属金型の製造方法
  5. クロムめっきを施した後、表面を研磨せず、そのままクロムめっき面を金型の凹凸面として用いる請求項1〜4のいずれかに記載の防眩フィルム製造用金属金型の製造方法
  6. クロムめっきは、その厚みが1μm以上20μm以下となるように行われる請求項1〜5のいずれかに記載の防眩フィルム製造用金属金型の製造方法
  7. クロムめっきは、その厚みが1μm以上10μm以下となるように行われる請求項1〜5のいずれかに記載の防眩フィルム製造用金属金型の製造方法
  8. 金属金型がロール状である請求項1〜7のいずれかに記載の防眩フィルム製造用金属金型の製造方法
  9. 請求項1〜8のいずれかの製造方法により得られる防眩フィルム製造用金属金型であって、そのクロムめっき表面の硬度がビッカース硬度800以上であり、その凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPaが0.01μm以上0.5μm以下であり、その断面曲線における算術平均高さPaと平均長さPSmの比Pa/PSmが0.001以上0.012以下である防眩フィルム製造用金属金型。
  10. 請求項1〜8のいずれかの方法により防眩フィルム製造用金属金型を製造し、次いで該金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写した後、凹凸面から透明樹脂フィルムを金型から剥す防眩フィルムの製造方法。
  11. 請求項9に記載の防眩フィルム製造用金属金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写した後、凹凸面から透明樹脂フィルムを金型から剥す防眩フィルムの製造方法。
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