JP6488506B2 - 表面凹凸構造を有する金型及びその製造方法、並びに前記金型を用いる防眩性樹脂構造体の製造方法 - Google Patents

表面凹凸構造を有する金型及びその製造方法、並びに前記金型を用いる防眩性樹脂構造体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、液晶表示装置、プラズマデイスプレイ及びエレクトロルミネセンス等の画像表示装置、自動車内の表示パネル、又は屋内外の案内パネル等に用いられる防眩性樹脂構造体を製造するために使用する、表面凹凸構造を有する金型及びその製造方法、並びに前記金型を用いることにより、乱反射に起因する「白ちゃけ」及びモアレ発生で輝度ムラとして現れる「ぎらつき」等のディスプレイ画像の欠陥が大幅に抑えられた防眩性樹脂構造体の製造方法に関する。
静止画像や動画を表示する画像表示装置(ディスプレイ)としては、液晶表示装置、プラズマデイスプレイ及びエレクトロルミネセンス等の様々なものが知られているが、その表示面には観察者の背後にあるものが映ることがあり、特に、室内の照明装置や、屋外光等が有る場合には太陽が写って見え、画像の視認性が著しく損なわれてしまう。画像の視認性の低下は、自動車内等の表示パネルや屋内外の案内パネル等の表示画面でも同様にみられる問題である。
このような外光の映り込みを防止するため、従来から画像表示装置の表面に防眩機能を有するシートやフィルム(防眩シートや防眩フィルム)が設けられている。防眩シートや防眩フィルムは、表面に微細な凹凸形状が形成されており、これにより入射光を散乱させて映り込み象をぼかすことができるものであるが、比較的安価に製造することができる。そのため、テレビ、パーソナルコンピュータ、ビデオカメラ、又はデジタルカメラ、又は携帯電話等だけでなく、自動車等の輸送機器や産業用機器のモニタ等の用途に広く用いられている。
このような防眩シートや防眩フィルムの製造方法としては、従来から様々な方法が提案されている。例えば、フィラを分散させた樹脂溶液を基材シートやフィルムの上に塗布し、塗布膜厚を調整してフィラを塗布表面に露出又は配置させることによりランダムな凹凸形状をシートやフィルムの上に形成することができる。しかしながら、この方法は、基材シートやフィルムの表面に分散するフィラの分散状態を設計値通りに制御できず、「白ちゃけ」及び「ぎらつき」の現象が発生しやすくなり、安定した防眩性能を有するシートやフィルムを製造することが難しいという問題がある。
そのため、凹凸形状の形成をフィラによって行わないで、フィラを含有しない透明樹脂層の表面に微細な凹凸形状を形成し、表面の凹凸面構造によって防眩性を発現させる方法が提案されている。例えば、特許文献1〜6には、表面に微細な凹凸形状を有するロール状の金型を用いて、表面の凹凸形状を透明樹脂に転写する方法、いわゆるエンボス成形法によって製造される防眩性フィルム及びその製造方法が開示されている。
ここで、前記特許文献1に記載のエンボス成形法は、光硬化性樹脂組成物を透明フィルムに塗布し、乾燥した後、該乾燥後のフィルムを金属金型の凹凸面に、前記光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロール等で押付けて密着させ、この状態で透明フィルム側から光照射を行うことにより光硬化性樹脂組成物層を硬化させる方法である。このとき使用する金型の表面形状としては、凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPaが0.01μm以上0.5μm以下であり、その断面曲線における算術高さPaと平均長さPSmとの比Pa/PSmが0.001以上0.012以下であることが記載されている。
また、前記特許文献2に記載の方法は、紫外線硬化性樹脂をエンボスローラーに塗布し、プライマー層を形成した透明プラスチックフィルムをそのプライマー層側が塗布面側を向くようにラミネートし、続いて、フィルム側より紫外線照射を行った後、剥離することにより凹凸層を有する防眩性フィルムを得る方法である。このとき使用する金型は、凹凸型面の逆型形状として三次元10点平均粗さが0.9μm〜3μmであり、三次元基準粗さ面上における隣接する凸部どうしの平均距離が20〜50μmであることが記載されている。
また、前記特許文献3に記載の方法は、ロール金型とこれと対向するように配置されたニップロールとの間に、透明プラスチックの基材を挿入し、このとき、基材とロール金型との間に防眩層を構成する組成物を供給しながらロール金型及びニップロールを回転させる方法である。それにより、ロール金型の表面に形成された凹部内に組成物が充填され、該組成物がロール金型の表面形状に沿ったものとなり、凹凸形状を形成することができる。このとき使用する金型は、平均粒子径が10μm以上45μm以下及び50μm以上200μm以下の研磨材を用いて、それぞれ第一ブラスト加工及び第二ブラスト加工を行うことによって表面凹凸形状を形成することが記載されている。
また、前記特許文献4には、活性エネルギー線重合性組成物を、防眩層形成用金型上に塗工し、プレスロールで圧接して所定の厚さに調製した後、紫外線で硬化し、剥離することで防眩性フィルムを得る方法、並びに前記防眩性フィルムを鋳型用フィルムとして使用し、樹脂板に塗工した活性エネルギー線重合組成物に前記鋳型用フィルムの表面凹凸形状を転写することにより防眩板を作製する方法がそれぞれ記載されている。この方法では、面上に電解ニッケルめっき層が設けられた状態で、微細凹凸構造(B)の平均長さSmが50μm以下で、算術平均高さが0.05μm以上0.2μm未満である防眩層形成用金型が使用されている。
また、特許文献5には、エンボス加工に使用する版の凹凸の算術平均高さを0.05以上2.00μm以下とし、かつ、前記凹凸の平均周期を50μm以下とし、前記版の表面凹凸をフィルム表面に転写することによって製造される防眩性反射防止フィルムの製造方法が記載されている。
さらに、特許文献6には、表面に凹凸形状を有する鋳型と構成樹脂基板との間に耐擦傷性被覆原料を展延させた後に耐擦傷性被覆原料を重合硬化させて耐擦傷性皮膜を形成し、次いで、合成樹脂基材の表面に凹凸形状を有する耐擦傷性皮膜が積層された積層体を鋳型から剥離する防眩フィルターの製造方法が開示されており、前記鋳型としては表面に微細な凹凸が形成されたガラス板を使用することが記載されている。
特開2007−237541号公報 特開2002−189106号公報 特開2013−210567号公報 特開2011−218675号公報 特開2004−29240号公報 特開2011−227148号公報
近年、携帯電話のデイスプレイや自動車を含む輸送機器及び産業機器の表示パネル等においては、柔軟性の付与や軽量化だけでなく、製造工程の簡略化、量産化及び低コスト化の要求が強く、前記特許文献1〜5に記載の方法に代わる新たな方法が強く望まれている。前記特許文献1〜5に記載の方法は、表面に凹凸形状を正確に転写する方法として有効であるものの、ガラスや透明プラスチック等の基板上に防眩性のフィルムやシートを貼りつける必要があり、製造工程が煩雑となるため、前記の要求には十分に応えることができかった。
そのため、従来のエンボス成形法に代わる方法の一つとして、ディスプレイ板や表示板を射出成形法によって製造し、その成形時に前記ディスプレイ板や表示板の表面に防眩性を同時に付与する方法が考えられる。射出成形法を適用する場合は、従来のエンボス金型を用いる方法と同じように、射出成形用の金型表面に微細な凹凸形状を成形することが簡単で、量産性に優れ、低コスト化を図ることができる。しかしながら、射出成形方法は、前記特許文献6に記載されているように、成形時にヒケ欠陥が生じやすく、金型表面に形成された微細な凹凸形状をプラスチック成型品の表面に正確に転写することが非常に難しいというのが従来から知られている。そのため、透明プラスチック等に防眩性の付与を行う場合は、防眩性を有する被膜を挿入する等の別の方法を採用する必要があった。
本発明者らの検討によると、前記特許文献1〜5に記載されている金型をそのまま射出成形方法に適用する場合は、その表面形状を透明プラスチックの表面に転写しても、防眩性の付与だけでなく、「白ちゃけ」及び「ぎらつき」等のディスプレイ画像の欠陥を防止することができず、これらの特性を確実に実現するためには金型そのものの構成及び表面凹凸形状について詳細に検討する必要があることが分かった。さらに、そのような金型は、射出成形に適用するだけではなく、従来のエンボス成形にも使用できるものであることが望まれる。これらの要求を満たす金型を製造し、適用することにより、優れた防眩性を有する防眩性樹脂構造体を製造する際に、製造方法が特定のものに限定されないで、自由に、且つ、低コストで得ることができるため、大きな期待が寄せられている。
本発明は、係る問題を解決するためになされたものであり、防眩性樹脂構造体として使用する樹脂基材を低コストで製造するため、透明プラスチックの射出成形に通常使用される金型の構造と表面凹凸形状について根本から見直しを行い、めっきやエッチング等の表面処理を施さない状態の金型表面に特定の凹凸形状を形成した、表面凹凸構造を有する金型及びその製造方法を提供することを目的とする。さらに、そのようにして製造される金型を、透明プラスチックの射出成形法又は透明のフィルムやシートのエンボス成形法等において使用することにより、優れた防眩性能を有するだけでなく、「白ちゃけ」や「ぎらつき」等によるディスプレイ画像の欠陥を大幅に抑えることができる防眩性樹脂構造体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、特定の表面凹凸構造を有する金型、及びその金型の表面に特定の凹凸形状を形成するための方法を検討し、そのようにして製造される金型を用いて防眩性樹脂構造体の樹脂基材を製造することによって、上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、防眩性樹脂構造体を製造するために使用する金型であって、前記金型は、ロックウエル硬度が30HRC以上で、表面が不規則な高さ及び大きさの複数の凹凸形状がランダムに連続形成された凹凸面構造を有するとともに、前記凹凸面構造を有する表面に表面処理が施されていないものであり、前記凹凸面構造において任意の異なる10箇所の隣接する山と山との間について、山と谷との高低差及び山と山とのピッチ幅をレーザ顕微鏡によって測定するときに、前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下で、前記山と谷との高低差の最大値が2.0μm以下であり、且つ、前記山と山とのピッチ幅の平均値が25μm以上70μm以下であることを特徴とする凹凸表面構造を有する金型を適用する。
[2]本発明は、前記山と山とのピッチ幅の平均値が30μm以上70μm以下であることを特徴とする前記[1]に記載の凹凸表面構造を有する金型を提供する。
[3]本発明は、前記金型の表面に、前記ランダムな凹凸形状とともに、文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかが形成されていることを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の表面凹凸構造を有する金型を提供する。
[4]本発明は、前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の表面凹凸構造を有する金型において、前記ランダムな凹凸形状が、粒径範囲として90μmを超え300μm未満を有する微粒子を乾式又は湿式で衝打させることにより形成されることを特徴とする表面凹凸構造を有する金型の製造方法を提供する。
[5]本発明は、前記微粒子の粒径範囲が100μm以上150μm以下であることを特徴とする前記[4]に記載の表面凹凸構造を有する金型の製造方法を提供する。
[6]本発明は、前記[4]又は[5]に記載の表面凹凸構造を有する金型の製造方法において、前記金型の表面の一部に文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかを形成する場合は、前記金型の表面に前記微粒子を衝打させるとき、前記文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかに相当する部分にマスクを施し、前記金型の表面に対して前記微粒子による衝打を避けることにより、前記文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかの形成を前記ランダムな凹凸形状の形成とともに行うことを特徴とする表面凹凸構造を有する金型の製造方法を提供する。
[7]本発明は、前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の金型を用いて、該金型表面の凹凸面構造を樹脂基材に転写成形することにより、少なくとも片側表面に不規則な高さ及び大きさの複数の凹凸形状がランダムに連続形成された凹凸面構造を有する前記樹脂基材を備える樹脂構造体を製造する方法であって、前記樹脂基材は、前記凹凸面構造において任意の異なる10箇所の隣接する山と山との間について、山と谷との高低差及び山と山とのピッチ幅をレーザ顕微鏡によって測定するときに、前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下で、前記山と谷との高低差の最大値が2.0μm以下で、前記山と山とのピッチ幅の平均値が25μm以上70μm以下であり、且つ、微粒子を含まない樹脂基材であることを特徴とする防眩性樹脂構造体の製造方法を提供する。
[8]本発明は、前記樹脂基材において、前記山と山とのピッチ幅の平均値が30μm以上70μm以下であることを特徴とする前記[7]に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法を提供する。
[9]本発明は、前記樹脂基材において前記凹凸面構造が形成されている表面上にハードコート層を形成することを特徴とする前記[7]又は[8]に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法を提供する。
[10]本発明は、前記樹脂基材と前記凹凸表面構造を有する金型との間に、前記ハードコート層を形成するためのフィルムを挿入する形で前記金型の表面凹凸構造を転写成形することにより、前記樹脂基材と一体で表面凹凸構造を有するハードコート層を形成することを特徴とする前記[9]に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法を提供する。
[11]本発明は、前記樹脂基材が前記凹凸面構造が形成されていない表面を片側に有する場合は、前記凹凸面構造が形成されていない表面上に反射防止膜を形成することを特徴とする前記[7]〜[10]のいずれか一項に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法を提供する。
[12]本発明は、前記樹脂基材の凹凸面構造が形成されていない表面と平坦な金型との間に、前記反射防止膜を形成するためのフィルムを挿入する形で前記平坦な金型の表面を転写成形することにより、前記樹脂基材と一体で前記樹脂基材の凹凸面構造が形成されていない表面上に反射防止膜を形成することを特徴とする前記[11]に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法を提供する。
[13]本発明は、前記樹脂基材又は前記防眩性樹脂構造体が射出成形方法によって製造されることを特徴とする前記[7]〜[12]のいずれか一項に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法を提供する。
[発明の効果]
本発明の金型は、めっきやエッチング等の表面処理を施さない状態の表面に特定の凹凸形状を形成することにより、低コスト大量生産に適する射出成形の金型として使用することができる。そして、射出成形によって製造される樹脂基材を防眩性樹脂構造体又はその一部として用いることにより、優れた防眩性能を有する防眩性樹脂構造体を得ることができる。また、本発明の金型は、射出成形又は射出圧縮成形に使用されるだけでなく、フィルムやシートの表面に凹凸面構造を形成するときに従来から行われているエンボス成形用の金型としても使用することが可能であるため、製造方法に大きな限定を受けないで、自由に、且つ、低コストで防眩性樹脂構造体を製造することができる。さらに、本発明の金型においては、凹凸面構造が形成されている表面の一部に、文字パターン面形状及び平面形状の少なくとも何れかを形成することにより、表示装置のパネル面において防眩性を発現する部分と、文字認識性又は高透過性が求められる部分とを同時に形成することができるため、防眩性樹脂構造体の付加価値を高めることができる。
本発明の金型は、特定の粒径範囲を有する微粒子を使用し、特定の凹凸形状を有するように面構造を形成することにより、めっきやエッチング等の表面処理を施さない状態の表面であっても、優れた防眩性を有する樹脂構造体の樹脂基板を成形するために使用することができる。さらに、このようにして製造される本発明の金型を防眩性樹脂構造体の製造時に使用することにより、防眩性樹脂構造体の防眩性能を大幅に向上できるだけでなく、「白ちゃけ」や「ぎらつき」等によるディスプレイ画像の欠陥を大幅に抑えることができる。また、本発明の防眩性樹脂構造体の製造方法においては、防眩性樹脂構造体の表面に、その表面形状に応じてハードコート層又は反射防止膜を設けることができるため、耐擦傷性又は反射防止の機能が付与され、機能の向上を図ることができる。
本発明の防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材の成形の際に表面凹凸構造を同時に形成することができる射出成形法の例を示す図である。 本発明の防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材を本発明の金型を用いて製造するエンボス成形法の例を示す図である。 樹脂基材とハードコートフィルムとが射出成形法によって一体化された防眩性樹脂構造体の製造方法を示す図である。 樹脂基材と反射防止フィルムとが一体化された防眩性樹脂構造体の製造方法の一例を示す図である。 樹脂基材とハードコートフィルム及び反射防止フィルムとが一体化された防眩性樹脂構造体の製造方法の一例を示す図である。 本発明の実施例1の金型表面をレーザ顕微鏡で測定した画像を示す図である。 本発明の実施例1の樹脂構造体表面をレーザ顕微鏡で測定した画像を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<防眩性樹脂構造体の成形用金型>
本発明における防眩性樹脂構造体の成形用金型は、ロックウエル硬度が30HRC以上で、表面が不規則な高さ及び大きさの複数の凹凸形状がランダムに連続形成された凹凸面構造を有するとともに、前記凹凸面構造を有する表面に表面処理が施されていないものである。そして、前記成形用金型の表面に形成される前記凹凸面構造は、異なる10箇所の隣接する山と山との間について、山と谷との高低差及び山と山とのピッチ幅をレーザ顕微鏡によって測定するときに、前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下で、前記山と谷との高低差の最大値が2.0μm以下であり、且つ、前記山と山とのピッチ幅の平均値が25μm以上70μm以下であることを特徴としている。
本発明の成形用金型は、光学用プラスチック成形用として通常使用される金型の表面に不規則な高さ及び大きさの複数の凹凸形状がランダムで連続的に形成されるものであり、そのような金型素材としては、JIS規格(JIS Z2245)に基づいて測定されるロックウエル硬度が30HRC以上であるプリハーデン鋼に属するSCM系鋼や析出硬化系鋼及び焼入焼戻し鋼に属するステンレス鋼を使用する。これらの金型素材は高い硬度を有するため、めっき等の表面処理を行わなくても高品位の鏡面仕上げが可能であり、本発明において行われるブラスト処理等において所望の表面凹凸構造を高精度に形成できる。一方で、金型の表面に凹凸形状をブラスト処理等で形成した後において、めっき、エッチング又は研削等の付加的な表面処理を行わなくても、形成された表面凹凸構造をそのまま適用することにより、優れた防眩性能を有する防眩性樹脂構造体を成形することができる。それにより、金型の製造工程を大幅に簡略化することが可能になる。さらに、より高品位の鏡面仕上げを行うために、金型の硬度は35HRC以上であることが好ましく、より好ましくは40HRC以上である。本発明で使用する金型は、硬度の上限値が特に規定されないが、ブラスト処理等の作業時間の短縮化を図るために硬度として60RHC以下が実用的である。
本発明において、金型の表面に凹凸形状を形成した後に前記のような表面処理を行わなくても防眩性樹脂構造体を製造できる理由は次の通りである。
金型表面にブラスト処理等の噴射加工法で凹凸形状を形成する場合は、表面等にめっき等を施さないと高い被覆性と平滑化作用が得られないため、表面の荒れや細かいクラックが発生しやすい。加えて、凹凸形状が形成された後の金型表面には、ブラスト処理に使用する微粒子によって部分球面上の鋭角的な突起や前記微粒子の細かな圧痕が残存する場合がある。そのため、例えば、前記特許文献1には、そのような鋭角的な突起を鈍らせる目的で、凹凸形状が形成された後の金型表面をエッチング又はめっきにより表面処理する方法が提案されている。
一方、射出成形法によるプラスチック成形では、上記で述べたように、成形時にヒケ欠陥が生じやすく、金型表面に形成された微細な凹凸形状をプラスチック成型品の表面に正確に転写することが非常に難しいという現象が従来から知られている。本発明は、この現象を逆に利用することにより、仮に凹凸形状を形成した後の金型表面に、表面の荒れ、細かいクラック、微小粒子の圧痕及び鋭角的な突起等が残存していたとしても、プラスチック成形品の表面にはそれらに起因する形状が転写されにくいという点に着目してなされたものである。
しかしながら、上記の点を利用したとしても、優れた防眩性の発現と、他の光学特性を向上させるためには、金型に形成される表面凹凸構造に理想的なパターン形状を形成する必要があることが分かった。すなわち、本発明の金型は、表面に形成される凹凸面構造として、異なる10箇所の隣接する山と山との間について、山と谷との高低差及び山と山とのピッチ幅をレーザ顕微鏡によって測定するときに、前記山と谷との高低差の平均値、前記山と谷との高低差の最大値、及び前記山と山とのピッチ幅の平均値を所定の範囲に設定することにより、所望の防眩性樹脂構造体を製造することができる。
本発明の金型表面凹凸構造の測定においては共焦点レーザ顕微鏡を用いることが好ましい。例えば、レーザーテック社の共焦点レーザ顕微鏡を用いて、対物レンズの倍率を20〜50倍として測定することができる。そのようにして測定される画像において、異なる10箇所の隣接する山と山との間について、山と谷との高低差及び山と山とのピッチ幅を測定することによって、山と谷との高低差の平均値、山と谷との高低差の最大値及び山と山とのピッチ幅の平均値を規定する。レーザ顕微鏡の測定において、前記の隣接する山と山との間は、金型表面の測定場所に依存しないで平均的な凹凸形状をより正確に反映できるように、任意に異なる10箇所を選ぶようにする。測定箇所が10箇所未満では測定平均値のバラツキがやや大きくなる傾向にあった。一方、測定箇所として10箇所を超えて選んでも、測定平均値には大きな差異がみられなかった。なお、具体的な測定方法については、後述の実施例1において詳細に説明する。
金型表面凹凸構造の測定は、従来から触針粗さ計を用いてJIS規格(IIS B0601(1994)及びB0031(1994))に従って行われるのが一般的であるが、仮に金型表面に荒れ、細かいクラック、微小粒子の圧痕及び鋭角的な突起等が存在する場合は、それらが測定ノイズとなり、表面凹凸構造の正確な情報を得ることが困難である。したがって、本発明においては、触針粗さ計に代え、レーザ顕微鏡を用いて、異なる10箇所の隣接する山と山との間について、山と谷との高低差及び山と山とのピッチ幅を測定することが実用的である。一方、防眩性樹脂構造体の表面には、金型表面に存在するそのような微小欠陥部分の転写はあまり起きないが、金型表面に形成される表面凹凸構造との対応を同じ測定法によって行うという意味から、防眩性樹脂構造体の表面形状の解析においても同様にレーザ顕微鏡を用いる。
本発明の金型は、平板又であってもよいし、射出成形法で製造される防眩性樹脂構造体の表面形状に沿う形で曲面を有するものであってもよい。また、本発明の金型をエンボス成形法に使用する場合には、円柱状又は円筒状のロールであってもよい。金型表面が円柱状又は円筒状を含め、サンプルに曲りや反りがある場合は高精度の測定が難しいため、その場合はブラスト処理等の条件出しを行った平板金型を用いて、その表面形状を測定したデータによって表面凹凸構造の解析を行う。一方、防眩性樹脂構造体の表面を測定するときは、薄物の板又はフィルム等のように変形が可能なサンプルの場合、反りを防止した状態でレーザ顕微鏡によって測定を行う。サンプルの反りを防止する方法としては、例えば、サンプルを光学的な粘着剤等を用いて凹凸面が表面を向くようにガラス基板に貼合してから測定に供することができる。また、厚物の防眩性樹脂構造体において曲面を有するサンプルの場合は、略同じ厚さのダミー平板を代用し、同じブラスト条件で形成された平板金型の表面凹凸構造を前記ダミー平板に転写し、転写後の前記ダミー平板の表面凹凸形状を測定することにより、実際に製造される防眩性樹脂構造体の表面凹凸構造を模擬した形で推定してもよい。
本発明の金型は、上記の方法にようにレーザ顕微鏡で測定したときの画像において、異なる10箇所の隣接する山と山との間について、前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下で、前記山と谷との高低差の最大値が2.0μm以下であり、且つ、前記山と山とのピッチ幅の平均値が25μm以上70μm以下であることが必要である。さらに、前記山と山とのピッチ幅の平均値が30μm以上70μm以下であることが好ましい。
前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm未満の場合は、金型の表面がほぼ平坦であり所望の表面凹凸構造が得られない。そのため、成形後の樹脂構造体は十分な防眩性を示さなくなる。また、前記山と谷との高低差の平均値が1.2μmを超えると、成形後の防眩性樹脂構造体が白ちゃけたり、ぎらつきが発生しやすく、画像質感の低下が顕著になる。
前記山と谷との高低差の最大値が2.0μmを超えると、仮に、前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下の範囲に含まれる場合であっても、金型の表面凹凸が部分的に粗くなるため、ぎらつきの発生が避けられない。
また、前記山と山とのピッチ幅の平均値が25μm未満である場合は、凹凸形状のピッチが狭いため、光の反射率が高くなり、十分な防眩性を示さなくなる。一方、前記山と山とのピッチ幅の平均値が70μmを超えると、例えば、液晶パターンとの間でモアレ発生し、輝度ムラが起きて画像のぎらつきが顕著になる。さらに、防眩性樹脂構造体の白ちゃけが解消されない。
本発明の金型においては、さらに、前記山と山とのピッチ幅の平均値が30μm以上70μm以下にすることにより、成形後の防眩性樹脂構造体において、より一層の防眩性能の向上と白ちゃけ及びぎらつきによる画像欠陥の大幅な低減を図ることができる。
本発明の金型は、上記のように凹凸面構造が形成されている表面の一部に、文字パターン面形状及び平面形状の少なくとも何れかを形成されるものであってもよい。それにより、表示装置のパネル面において防眩性を発現する部分と、文字認識性又は高透過性が求められる部分とを同時に有する金型を得ることができ、成形後の防眩性樹脂構造体は付加価値を高めることができる。この金型は、例えば、自動車や産業機器の表示パネル等の製造に使用することができる。これらの用途に使用される表示パネルは、画像の表示部分に防眩性を発現させ、それ以外の部分には文字の表示を行ったり、文字等を明確に判別できるように高透過性部分を形成することが求められる場合がある。そのような用途に本発明の金型を使用することにより、防眩性に加えて、様々な特性又は機能を同時に有する表示パネルを一体で成形することができ、高付加価値を有する防眩性樹脂構造体を低コストで製造することができる。
<防眩性樹脂構造体成形用金型の製造方法>
本発明の金型の製造方法を説明する。本発明の金型は、ロックウエル硬度が30HRC以上の基材を用いて、該基材の表面に必要に応じて鏡面加工を施すが、めっき等の表面処理を行わないで表面に直接微粒子をぶつける方法により製造する。めっき処理等の表面処理は凹凸形状の形成後も行わないで、微粒子の衝突により形成された表面凹凸構造を有する金型をそのまま本発明の防眩性樹脂構造体の成形時に使用する。
本発明の金型を微粒子をぶつける方法としては、噴射加工法が好適に用いられる。噴射加工法としては、サンドブラスト法、ショットブラスト法、液体ホーニング法等が挙げられる。これらの加工に使用される微粒子としては、鋭い角があるような形状を使用してもよいが、その形状よりも球形に近い形状であることが好ましい。吹き付ける微粒子としては、スチール又はステンレススチール等の金属微粒子、シリカ、球形ジルコニア又はアルミナ等のセラミックス系微粒子、及びガラス微粒子の何れかを使用する。また、樹脂バインダーにセラミックスや金属の粒子を担持させた微粒子を使用してもよい。本発明の金型の製造方法においては、加工中に破砕されて鋭い角が出ないような硬い材質で、かつ、脆くない微粒子である金属微粒子又はセラミックス微粒子を使用するが好ましい。
金型表面にぶつけるために使用される微粒子は、篩を用いてサイズ分けされており、篩のメッシュサイズにより篩分けされた粒径範囲で表すのが一般的である。そのため、本発明で使用する微粒子の場合も、粒径の規定を粒径範囲で行う。本発明で使用する微粒子としては、粒径範囲が90μmを超え300μm未満であることが必要であり、さらに、90μm以上150μm以下であることが好ましい。それにより、優れた防眩性能を有するだけでなく、白ちゃけやぎらつき等の画像欠陥を大幅に低減できる樹脂構造体を製造することができる。微粒子の粒径範囲が90μm以下又は300μm以上であると、金型の表面凹凸構造において、前記山と谷との高低差の平均値、前記山と谷との高低差の最大値、及び前記山と山とのピッチ幅の平均値を上記に示した所定の範囲に設定することができない。特に、前記の粒径範囲から外れる90μm以下の微粒子を含む場合は、前記山と山とのピッチ幅の平均値が細かくなりすぎる傾向にある。また、前記の粒径範囲から外れる300μmを超える微粒子を含むと、逆に、前記山と山とのピッチ幅の平均値が広くなる傾向にある。粒径範囲として300μmを超える微粒子を用い、前記微粒子をぶつける圧力を高くするか、又はぶつける時間を長くする方法によって前記山と山とのピッチ幅の平均値を狭くすることを試みても、前記山と谷との高低差の平均値が小さくなったり、前記山と山とのピッチ幅の平均値が小さくなるため、十分な防眩性能を得ることができない。本発明の金型を製造するときに使用する微粒子の粒径範囲を、さらに100μm以上150μm以下にすることにより、防眩性能のより一層の向上だけでなく、白ちゃけやぎらつき等の画像欠陥を大幅に低減できる防眩性樹脂構造体を成形できる金型を製造できる。
また、微粒子をぶつける際の圧力は、ゲージ圧で0.5MPa以下、好ましくは0.01〜0.5MPaの圧力で行うのが好ましい。圧力が0.5MPaを超えると、金型表面において前記山と谷との高低差の最大値が2.0μmを超える場合があり、成形後に得られる防眩性樹脂構造体において白ちゃけやぎらつきが顕著になる。一方、圧力が0.01MPa未満では、金型表面において前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下を実現することができない。仮に、0.01MPa未満の低圧力で長時間の加工を行っても、前記山と谷との高低差の平均値を0.2μm以上にすることは難しく、加えて、前記山と山とのピッチ幅の平均値を25μm以上にすることができない。
本発明で使用する微粒子の吐出量は、処理される金型の表面積1cmあたり1〜50gの範囲にするのが一般的であるが、使用する微粒子の種類、平均粒径、及び所望の凹凸形状等に応じて、適宜選択することができる。
本発明の金型の製造において微粒子の吹き付ける際には、上記の微粒子を高速の気体とともに吹き付けるが、その際に、適当な液体、例えば、水等を併用した方法を採用してもよい。液体を用いて湿式で微粒子を衝打させる方法は、金型の表面により安定した凹凸形状を形成することができる。
本発明の金型の製造において微粒子の平均粒径及び衝打の際の圧力は、前記特許文献1及び2に開示されているものと範囲が一部重複するが、本発明においては、表面に凹凸形状を形成する前後において、めっき、エッチング及び研磨等の表面処理を行わないでも、防眩性だけでなく、他の特性にも優れる樹脂構造体を製造できる点に大きな特徴を有する。
また、本発明の表面凹凸構造を有する金型の製造方法において、前記金型の表面の一部に文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかを形成する場合は、前記金型の表面に前記微粒子を衝打させるとき、前記文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかに相当する部分にマスクを施し、前記金型の表面に対して前記微粒子による衝打を避けることにより、前記文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかの形成を前記ランダムな凹凸形状の形成とともに行う。マスクの材質としては、紙、プラスチック及び金属の何れも使用できるが、前記微粒子の衝打の際に破損等のダメージを小さくできるという点からプラスチック又は金属が好ましい。これらのマスクは、粘着剤又は接着剤を用いて金型表面に貼りつけてもよいし、金型表面に近接させ、直接貼り付けない状態で設置してから前記微粒子の衝打を行ってもよい。また、金型表面に樹脂をパターン状に直接塗布するか、又は、前記金型表面にパターンマスクを介して露光を行った後、未露光部分を除去する等の方法によって金型表面に樹脂製のマスクパターンを形成することもできる。
<防眩性樹脂構造体及びその製造方法>
本発明の防眩性樹脂構造体は、本発明による金型の表面凹凸構造がそのまま転写された樹脂基材を備えるものであり、前記樹脂基材の表面に凹凸形状を付与するために一般的に使用される有機質又は無機質の微粒子を含まない状態で防眩性を示すことができる。そして、本発明で製造する前記樹脂基材は、その表面をレーザ顕微鏡で測定したときに、任意の異なる10箇所の隣接する山と山との間について、前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下で、前記山と谷との高低差の最大値が2.0μm以下であり、且つ、前記山と山とのピッチ幅の平均値が25μm以上70μm以下であることが必要である。さらに、前記山と山とのピッチ幅の平均値が30μm以上70μm以下であることが好ましい。
前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm未満の場合は、製造される樹脂基材がほぼ平坦であり所望の表面凹凸構造が得られないため、十分な防眩性を示さなくなる。また、前記山と谷との高低差の平均値が1.2μmを超えると、前記樹脂基材が白ちゃけたり、ぎらつきが発生しやすく、画像質感の低下が顕著になる。
前記山と谷との高低差の最大値が2.0μmを超えると、仮に、前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下の範囲に含まれる場合であっても、製造後の樹脂基材は表面の凹凸が部分的に粗くなるため、ぎらつきの発生が避けられない。
また、前記山と山とのピッチ幅の平均値が25μm未満である場合は、凹凸形状のピッチが狭いため、光の反射率が高くなり、十分な防眩性を示さなくなる。一方、前記山と山とのピッチ幅の平均値が70μm未満を超えると、例えば、液晶パターンとの間でモアレ発生し、輝度ムラが起きて画像のぎらつきが顕著になる。さらに、防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材の白ちゃけが解消されない。
本発明による防眩性樹脂構造体に備わる樹脂基材は、さらに、前記山と山とのピッチ幅の平均値が30μm以上70μm以下にすることにより、成形後の樹脂基材において、より一層の防眩性能の向上と白ちゃけ及びぎらつきによる画像欠陥の大幅な低減を図ることができる。
次に、本発明による防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材の製造方法を説明する。本発明による前記樹脂基材は、上記の表面凹凸構造を有する金型を用いて射出成形法またはエンボス成形法によって製造することができる。
図1に、本発明の防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材の成形の際に表面凹凸構造を同時に形成することができる射出成形法の例を示す。図1には、射出成形法として4つのタイプを示している。図4において、(a)〜(c)は基本的な射出成形方法を、(d)〜(g)は射出圧縮成形法を、(h)〜(j)は射出プレス方法を、及び(k)〜(m)は中空射出成形法についてそれぞれ各工程の概略を示す断面模式図である。
本発明の防眩性樹脂構造体の中で、ディスプレイ板や表示板等の比較的肉厚の樹脂構造体として例えば防眩板等を製造する場合は、図1に示す射出成形法の何れかの方法で成形するのが一般的であるが、本発明の金型を使用することにより、少なくともそれらの樹脂構造体の片側表面に凹凸形状を成形と同時に形成することができる。この方法は、防眩性のフィルムやシートの貼り合せ工程が不要になり、前記特許文献4及び6に開示された方法に比べて、製造工程の簡略化及び省力化を図ることができる。加えて、金型のキャビティー内の形状を変えることによって、平板以外にも曲面、L字、コの字等の形状や中空構造等を有する防眩板を成形することが可能であり、形状の自由度を増すことができる。
図1の(a)〜(c)に示す基本的な射出成形法において、まず、油圧によって閉じられた金型1a、1bの内部空間内(キャビティ)に不図示のシリンダー内で加熱溶融された樹脂2がシリンダー先端のノズル3からランナー4を通して射出される。ここで、金型1a、1bとしては、例えば、金型1aのキャビティ側の表面に上記の方法に従って凹凸形状が形成されたものを、他方、金型1bは表面が平坦であるものを使用する(図1の(a))。次いで、金型1a、1bのキャビティに樹脂2が充填され、樹脂2による賦形が行われる(図1の(b))。その後、金型1a、1bが離型され、本発明の防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材5の取り出しを行う(図1の(c))。この射出成形法においては、図に示すように金型1bの押圧面に対して垂直に設けるゲートから溶融樹脂を注入する方法の他にも、金型の押圧面に対して水平方向、すなわちサイドゲートを設けて溶融樹脂の注入を行ってもよい。
図1の(d)〜(g)に示す射出圧縮成形法は、溶融樹脂の充填中、キャビティを一時的にわずかに拡大し、充填を無理なく行った後、型締め機構や金型内に組込まれた油圧シリンダー等を利用して、成形品の一部あるいは全面を加圧、圧縮して所定の形状を付与する成形法である。まず、キャビティをわずかに拡大した状態で金型6a、6bを閉じ、キャビティ内に加熱溶融された樹脂2がノズル3からランナー4を通して射出される。ここで、ここで、金型6a、6bとしては、例えば、金型6aのキャビティ側の表面に上記の方法に従って凹凸形状が形成されたものを、他方、金型6bは表面が平坦であるものを使用する(図1の(d))。次いで、金型6a、6bの内部空間内(キャビティ)に樹脂2が完全に充填され(図1の(e))、その後、型締めを行って樹脂2による賦形が完了する(図1の(f))。次いで、金型6a、6bが離型され、本発明の防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材7の取り出しを行う(図1の(g))。
図1の(h)〜(j)に示す射出プレス成形法は、溶融樹脂のキャビティへの賦形の大部分をプレス機の型締め動作で行う成形法である。あらかじめ圧縮ストローク分だけ開いた状態の金型8a、8bの内部空間内(キャビティ)に、加熱溶融された樹脂2を金型8a、8bに対して水平方向にノズル3からランナー4を通して射出する。ここで、金型8a、8bとしては、例えば、金型8aのキャビティ側の表面に上記の方法に従って凹凸形状が形成されたものを、他方、金型8bは表面が平坦であるものを使用する(図1の(h))。次いで、金型8a、8bのキャビティに樹脂2が充填され、充填完了後に金型8bを閉じ、樹脂2による賦形が行われる(図1の(i))。その後、金型8a、8bが離型され、本発明の防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材9の取り出しを行う(図1の(j))。射出プレス成形法においては、例えば、金型8bのキャビティ側の表面にも凹凸形状が形成されたものを使用してもよい。その場合は、両側表面に凹凸構造を有する樹脂基材を成形することができる。
また、図1の(k)〜(m)の示す中空射出成形法は、ガスアシスト成形法とも呼ばれる方法であり、一般の射出成形機の他にバスボンベ又は高圧ガス発生装置とガス注入装置を必要とし、金型にもガス注入部を設ける。金型10a、10bの内部空間内(キャビティ)に溶融された樹脂2をノズル3からランナー4を通して射出する。ここで、金型10a、10bとしては、例えば、金型10aのキャビティ側の表面に上記の方法に従って凹凸形状が形成されたものを、他方、金型10bとしては表面が平坦であるものを使用する(図1の(k))。次いで、ノズル3やランナー4の一部、又は金型10a、10bのキャビティに直接不活性ガスを注入し(図1の(l))、保圧した状態で冷却を行い中空部分11を形成する。その後、金型10a、10bが型開きによって離型され、本発明の防眩性樹脂構造体を構成する、中空構造の樹脂基材12の取り出しを行う(図1の(m))。
上記の射出成形法で成形を行う場合、例えば、次のような成形条件を選ぶことができる。透明樹脂としてアクリル樹脂系を使用する場合は、シリンダー温度が200〜260℃、射出成形圧力60〜140MPa、金型温度が60〜85℃の条件が実用的である。また、ポリカーボネート樹脂系を使用する場合は、シリンダー温度が260〜300℃、射出成形圧力50〜150MPa、金型温度が70〜100℃の条件である。本発明の製造方法においては、これらの成形条件に限定されず、使用する樹脂の種類、分子量、及び物性(軟化点等)に応じて最適な条件を選ぶことができる。
次に、本発明の防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材を、本発明の金型を用いて製造するエンボス成形法の例について図2を用いて説明する。図2の(a)〜(c)は、基材に防眩性のフィルムやシートを貼り合せるときに適用するエンボス成形法として代表的な3つの従来例を示す図である。また、図2の(d)は、基材を使用しないで防眩性のフィルムやシートの単独で製造するときのエンボス成形法の例を示す図である。図2の(a)〜(d)に示すローラ状のエンボス金型15としては、表面に上記で説明したような凹凸形状を有する本発明の金型を使用する。
図2の(a)に示すエンボス成形法においては、紫外線等で硬化する光硬化性樹脂組成物を透明フィルムの基材13に塗布し、乾燥を行った後、光硬化性樹脂組成物の層14をローラ形状のエンボス金型15の凹凸面に、前記光硬化性樹脂組成物の層14がエンボス金型15の側となるようにゴム製のニップローラ16で押付けて密着させ、この状態で基材13から紫外線光源17を用いて光照射を行うことにより光硬化性樹脂組成物の層14を硬化させ、離形ローラ18を用いて基材13と貼り合せた防眩性のフィルム又はシートを製造する。
図2の(b)に示すエンボス成形法においては、コーティングヘッド19を用いて紫外線等で硬化する光硬化性樹脂組成物20をロール状のエンボス金型15に塗布し、プライマー層を形成した透明プラスチックフィルムの基材13をそのプライマー層側が塗布面側を向くようにニップローラ16を用いてラミネートし、続いて、基材13の側より紫外線光源17から紫外線照射を行った後、剥離ローラ18によって剥離することにより凹凸層を有する防眩性フィルムが基材13との貼り合せの状態で得られる。
また、図2の(c)に示すエンボス成形法は、ロール状のエンボス金型15とこれと対向するように配置されたニップローラ16との間に、透明プラスチックの基材13を挿入し、このとき、基材13とエンボス金型15との間に防眩層を構成する光硬化性樹脂組成物20を供給しながらエンボス金型15及びニップローラ16を回転させる方法である。それにより、エンボス金型15の表面に形成された凹部内に光硬化性樹脂組成物20が充填され、充填された光硬化性樹脂組成物20に対し、紫外線光源17を用いて光照射を行うことにより、該組成物20がエンボス金型15の表面形状に沿ったものとなり、凹凸形状を形成する。また、図2の(c)に示すエンボス成形法においては、光硬化性樹脂組成物20に代えて、熱可塑性のプラスチックを用いて溶融状態にした状態で基材13とエンボス金型15との間に供給してもよい。
さらに、また、図2の(d)に示すエンボス成形法は、加熱溶融状態の樹脂基材21をヒートノズル22からニップローラ16の上に投入し、ヘラや刷毛等の厚さ調整用治具23によって所定の厚さに調製された樹脂を、ロール状のエンボス金型15及びニップローラ16との間に供給しながら両者のロールを回転させることにより、エンボス金型15の表面に形成された凹凸形状を転写する方法である。このとき、ニップローラ16は、溶融状態の樹脂21が容易に離形できるように、表面を離形処理したものを使用することが好ましい。例えば、フッ素樹脂製ニップローラ又は表面にフッ素樹脂層を有するニップローラを使用することができる。また、エンボス金型15及びニップロール16の温度は、射出成形方法で設定する金型温度と同じ60〜100℃の範囲で樹脂21の種類と物性に応じて調整する。その場合、エンボス金型15及びニップロール16は同じ温度に設定する必要はなく、エンボス金型15の温度を相対的にやや高めに設定してもよい。このようにして製造される防眩性樹脂基材は、エンボス金型15の表面凹凸構造が表面に転写された樹脂基材を単独で得ることができるため、図2の(c)に示す方法と比べて、材料費の低減を図ることができる。
図2に示すエンボス成形法においては、エンボス金型の表面に鋭角的な突起又は衝打のときの微小粒子の圧痕が残存した場合のことを考慮し、それらを上記樹脂基材に転写させないために、例えば、次のような方法を採用することができる。第1に、光硬化性樹脂組成物20又は加熱溶融状態の樹脂基材21をエンボス金型に供給するときの粘度をやや高めにするため、高粘度の材料を使用するか又はエンボス金型の温度を下げる目的で金型内に低温冷却水を循環させる方法、第2にニップローラによってニップするときの圧力をやや低めに設定する方法、第3に基材13の転写処理速度をやや速くして転写時間を従来よりも短くする方法等である。これらの方法は、エンボス金型の表面凹凸構造が防眩性樹脂構造体の樹脂基材へ転写されるときの表面状態を見極めながら、必要に応じて組合わせて採用することができる。
<ハードコート層の形成>
本発明による防眩性樹脂構造体は、擦傷性を向上させるため、上記凹凸構造が形成されている表面上にハードコート層を形成することが好ましい。このハードコート層は、本発明の樹脂基材の表面凹凸構造に倣って連続的な凹凸形状を形成する表面を有することにより、防眩性を併せて付与することができる。ここで、前記ハードコート層の表面に形成される凹部及び凸部の位置は、それぞれ上記樹脂基材の表面に形成された凹部及び凸部の位置と対応している。したがって、ハードコート層の表面凹凸形状は、防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材の表面と同じように、レーザ顕微鏡で測定したときの画像において、異なる10箇所の隣接する山と山との間について、前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下で、前記山と谷との高低差の最大値が2.0μm以下であり、且つ、前記山と山とのピッチ幅の平均値が25μm以上70μm以下であることが必要である。さらに、前記山と山とのピッチ幅の平均値が30μm以上70μm以下であることが好ましい。
ハードコート層に使用されるバインダー樹脂としては、ハード性能を有し、透明性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する光硬化性樹脂等が挙げられる。本発明において形成されるハードコート層は、JIS規格(JISK5400)で示される鉛筆硬度試験においてH以上の硬度を有することが好ましい。
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミンーフェノール共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を使用することができる。
上記光硬化性樹脂としては、アクリレート又はメタアクリレートの官能基を有する樹脂を使用することができ、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂や多価アルコール等の多官能化合物のアクリレート又はメタクリレート等のオリゴマー又はプレポリマー等を使用することができる。
上記ハードコート層を形成するためのハードコート塗料としては、上記バインダー樹脂の原料、熱重合開示剤又は光重合開始剤、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化錫等の無機酸化物フィラ、粘度調整剤及び溶剤を混合したものを使用する。これら以外にも、必要に応じて、防汚添加剤、光又は熱の各種安定剤、帯電防止剤、難燃剤及び酸化防止剤等を添加することもできる。ハードコート塗料が光硬化性の場合は紫外線吸収剤を添加してもよい。本発明においては、製造の容易性の点から、光又は電子線等により硬化する光硬化性樹脂が好ましく、さらに、簡単な装置構成を採用することができる紫外線硬化性樹脂がより好ましい。
上記ハードコート層は、例えば、次のようにして形成する。第1の方法は、本発明の金型を用いて表面凹凸構造が形成された後の樹脂基材の上に、ハードコート塗料を塗工し、溶剤等を乾燥し、熱又は光により硬化する方法である。このとき、ハードコート塗料の塗布厚は、溶剤等の揮発後の厚さが2〜25μmの範囲になるように適宜調整する。塗工されたハードコート塗料の液面はレベリングされるが、前記基材表面の凹凸形状に応じた厚みで分布し、溶剤の乾燥及び樹脂の硬化後は前記基材表面の凹凸形状に対応してやや小さい表面凹凸量を有するハードコート層が形成される。塗工方法としては、例えば、公知のマイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スピンコート法等が挙げられる。
上記ハードコート層の第2の形成方法としては、フィルム状の透明支持体の片側に上記ハードコート塗料を用いてハードコート層を形成したものをハードコートフィルムとして用い、前記凹凸形状を表面に形成しようとする樹脂基材と前記凹凸表面構造を有する金型との間に、前記ハードコートフィルムを挿入する形で前記金型の表面凹凸構造を転写成形することにより、前記樹脂基材と一体で表面凹凸構造を有するハードコート層を形成する。その方法の一例を図3に示す。図3は、図1の(a)〜(c)に示す射出成形法を利用することにより、前記樹脂基材と前記ハードコートフィルムとが一体化された防眩性樹脂構造体の製造方法を示す図である。図3に示す方法は、インモールド成形方法と呼ばれることもある。
図3の(a)に示すように、フィルム状の透明支持体24の片面にハードコート層25を有するハードコートフィルム26を用いて、金型1aの凹凸形状が形成された面にハードコート層25が接するように配置し、油圧によって金型1bを閉じる。ここで、ハードコートフィルム26は、吸気通路27を介して真空引き操作が行われ、金型1aの凹凸形状が形成された面に装着される。また、ハードコートフィルム26を置くだけで装着が簡単にできる場合には吸気通路27を設けなくてもよい。次いで、閉じられた金型1a、1bの内部空間内(キャビティ)に不図示のシリンダー内で加熱溶融された樹脂2がシリンダー先端のノズル3からランナー4を通して射出される(図3の(b))。金型1a、1bのキャビティに樹脂2が充填された後、樹脂2による賦形が行われる(図3の(c))。その後、金型1a、1bが型開きによって離型され、ハードコート層25を有するハードコートフィルム26と一体化された樹脂基材28の取り出しを行う(図3の(c))。このようにして、表面凹凸構造を有するハードコート層25を片面に有する樹脂基材28とからなる本発明の防眩性樹脂構造体が得られる。
本発明において、図3の(a)に示すフィルム状の透明支持体24としては、防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材を成形するときの樹脂2と同じような物性と光学的性質を有する樹脂を使用することが好ましい。それにより、ハードコートフィルム26と樹脂基材28との間で剥離等が起きず両者の一体化を確実に行うことができる。加えて、両者を一体化して得られる防眩性樹脂構造体は、機械的にも光学的性にも均質性を保つことができる。また、本発明において使用するハードコートフィルムは、ハードコート層として真空蒸着法、プラズマCVD法、スパッタリング法又はイオンプレーティング法によって形成される無機蒸着膜を有するものであってもよいし、ハードコート層を有しなくても耐擦傷性を有するフィルムをそのままハードコートフィルムとして使用してもよい。
本発明の防眩性生樹脂構造体がハードコート層を有する場合は、製造工程中にハードコート塗料を塗布する湿式の形成方法よりも、図3に示すように、前記樹脂基材と一体で表面凹凸構造を有するハードコート層を形成する方法が好ましい。前記樹脂基材と一体で表面凹凸構造を有するハードコート層を形成する方法は、防眩性樹脂構造体の製造工程を簡略化できるだけでなく、ハードコート層にも金型の表面凹凸構造と同じか、それに近い凹凸形状を転写できるため、優れた防眩性能を有し、かつ、白ちゃけ及びぎらつき等によるディスプレイ画像の欠陥を大幅に抑えることができるために好適である。
<反射防止膜の形成>
本発明による防眩性樹脂構造体は、光の干渉を利用して反射光を軽減させるため反射防止膜(アンチリフレクションコーティング膜:AR膜)を設けることが好ましい。この反射防止膜は、表面凹凸構造を有する樹脂基材において、凹凸形状が形成された表面側及びそれとは反対の平坦な表面側の少なくとも一方に配置することで、ニュートンリングの発生を抑制する、若しくは気にならない程度までニュートンリングの発生を低減することができる。
上記反射防止膜は、無機材料を用いた無機蒸着膜の単層又は2層以上であってもよいし、樹脂組成物を用いて湿式成膜法によって形成する有機膜の単層又は2層以上であってもよい。必要に応じて、無機蒸着膜と湿式成膜法によって形成する有機膜とを組合せた2層以上の反射防止膜を形成することもできる。反射率が低く、かつ、広帯域の反射防止膜を成形する場合には、屈折率が異なる複数の層を組合わせた2層以上の多層膜にするのが一般的である。
上記無機蒸着膜としては、例えば、LiF、MgF、3NaF・Al、AlF、SiOx(x:1.8<x<2.2)等が挙げられ、真空蒸着法、プラズマCVD法、スパッタリング法又はイオンプレーティング法等の気相法で形成される。
また、近年では、反射防止膜の形成が容易で、成膜材料の選択幅が広がるという観点から湿式成膜材料による有機反射膜の開発が行われており、より低屈折率層の実現が図られている。前記有機反射膜を形成するための組成物としては、例えば、フッ素系化合物やシラン系化合物が使用することができる。その形成法としては、例えば、シラン系化合物を有機溶剤で希釈し、必要に応じて水又は薄い塩酸、酢酸等を添加して加水分解を行い、さらに、シリカ系微粒子を有機溶媒中にコロイド状に分散したゾルを添加した後、必要に応じて界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を展開、十分に撹拌したものをコーティング液として使用することができる。また、反射防止膜の低屈折率を実現するため、空気を膜中に取り込む目的で、中空微粒子を有する樹脂組成物をコーティング液として使用して反射防止膜の成膜をおこなってもよい。
本発明の防眩性樹脂構造体に反射防止膜を形成する場合は、表面凹凸構造を有する樹脂基材の凹凸形状を有する表面又は平坦な表面の少なくとも一方の上に上記コーティング液を塗工することにより形成することができる。上記コーティング液の塗工方法としては、例えば、公知のマイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スピンコート法等が挙げられる。
また、上記反射防止膜の別の形成方法としては、フィルム状の透明支持体の片側に上記コーティング液を用いて反射防止層を形成したものを反射防止フィルムとして用い、表面凹凸構造を形成するための樹脂基材と前記凹凸表面構造を有する金型又は平板な金型のどちらかとの間に、前記反射防止フィルムを挿入する形で前記金型の凹凸形状又は平坦面のどちらかを転写成形することにより、前記樹脂基材と一体で反射防止層を形成することができる。
本発明の防眩性樹脂構造体においては、特に、凹凸形状が形成された表面とは反対側の平坦な表面の上に反射防止膜を形成することが好ましい。仮に、反射防止膜を凹凸形状が形成された表面に形成する場合は、前記反射防止膜の厚さが凹凸形状に沿って変化するため、十分な反射防止機能を示すような反射防止膜の構造設計、及び反射防止膜の形成方法の最適化が難しくなる。特に、反射防止膜の広帯域化に対応するため多層の反射防止膜を成形する場合には大きな困難を伴うため、適用の範囲が制約される。
上記反射防止フィルムを用いてインモールド成形方法により、前記樹脂基材と前記反射防止フィルムとが一体化された防眩性樹脂構造体の製造方法の一例を図4に示す。図4は、図1の(h)〜(j)に示す射出プレス成形法を利用し、上記反射防止フィルムを、表面凹凸構造を形成するための樹脂基材とキャビティ内表面に平坦な面を有する金型との間に挿入した形で射出成形を行うことにより、前記樹脂基材の平坦な表面に反射防止膜を形成した防眩性樹脂構造体の製造方法を示す図である。
図4の(a)に示すように、フィルム状の透明支持体29の片面に反射防止膜30を有する反射防止フィルム31を用いて、金型8a、8bで構成される内部空間内(キャビティ)を向いた金型8bの平坦な表面に反射防止膜30が接するように配置し、油圧によって金型8bを閉じる。ここで、反射防止フィルム31は、吸気通路27を介して真空引き操作が行われ、金型8bの平坦な表面に固定される。次いで、閉じられた金型8a、8bのキャビティに不図示のシリンダー内で加熱溶融された樹脂2がシリンダー先端のノズル3からランナー4を通して射出される(図4の(b))。金型8a、8bのキャビティに樹脂2が充填された後、樹脂2による賦形が行われる(図4の(c))。その後、金型8a、8bが型開きによって離型され、反射防止膜30を有する反射防止フィルム31と一体化された樹脂基材32の取り出しを行う(図4の(d))。このようにして、反射防止膜30を片面に有し、その反対側には表面凹凸構造が形成された樹脂基材32からなる本発明の防眩性樹脂構造体が得られる。このようにして製造される本発明の防眩性樹脂構造体は、表面凹凸構造を有する樹脂基材による十分な防眩性性能と、反射防膜による反射光の軽減効果とが同時に得られる。
本発明においては、前記ハードコート層及び前記反射防止膜を同時に有する防眩性樹脂構造体を製造することができる。その一例を図5に示す。図5は、前記ハードコートフィルム及び前記反射防止フィルムを用いて、図1の(h)〜(j)に示す射出プレス成形法を利用したインモールド成形方法により、前記樹脂基材と前記ハードコートフィルム及び前記反射防止フィルムとが一体化された防眩性樹脂構造体の製造方法の一例を示す図である。図5において、前記ハードコートフィルムは前記樹脂基材の凹凸形状が形成されている表面側に、他方、前記反射防止フィルムはそれとは反対側の平坦な表面側にそれぞれ成形される。
図5の(a)に示すように、透明支持体フィルム24の片面にハードコート層25を有するハードコートフィルム26と、フィルム状の透明支持体体29の片面に反射防止膜30を有する反射防止フィルム31とを用い、金型8a、8bで構成される内部空間内(キャビティ)を向いた金型8aの表面にはハードコート層25が、他方、金型8bの平坦な表面には反射防止膜30が、それぞれの金型表面に接するように装着される(図5の(a))。ここで、ハードコートフィルム26及び反射防止フィルム31は、金型8a、8bに備わる各吸気通路27を介して真空引き操作が行われ、金型8a及び8bの各表面に装着されて固定される。次いで、油圧によって閉じられた金型8a、8bのキャビティに不図示のシリンダー内で加熱溶融された樹脂2がシリンダー先端のノズル3からランナー4を通して射出される(図5の(b))。金型8a、8bのキャビティに樹脂2が充填された後、樹脂2による賦形が行われる(図5の(c))。その後、金型8a、8bが型開きによって離型され、ハードコート層25を有するハードコートフィルム26及び反射防止膜30を有する反射防止フィルム31とが一体化された樹脂基材33の取り出しを行う(図5の(d))。このようにして、片面に反射防止膜30と、その反対側には表面凹凸構造が形成されたハードコート層25とを有し、両者の層がフィルム状の透明支持体29、24を介して一体化された樹脂基材33からなる本発明の防眩性樹脂構造体が得られる。このようにして製造される本発明の防眩性樹脂構造体は、表面凹凸構造を有する樹脂基材とハードコート層による十分な防眩性能を有するだけでなく、反射防膜による反射光の軽減効果、及びハードコート層による表面凹凸構造部分の耐擦傷性の向上という両者の効果を同時に得ることができる。
本発明を実施例によって説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
熱処理したマルテンサイト系ステンレス(ロックウエル硬度が50〜60HRC)の金属板の表面を鏡面に研磨したものを金型として用い、金型表面から200mmの距離にブラストノズルを配置し、該金属板に対して垂直に粒径範囲が100〜150μmであるセラミックス微粒子を吐出圧0.25MPaで金属板の全面に吹きかけて表面凹凸構造を有する金型を作製した。このようにして作製された金型の表面凹凸形状は次のようにして測定した。
<金型の表面凹凸構造の測定>
レーザーテック社製のレーザ顕微鏡用いて、上記の方法で作製された金型の表面凹凸形状を測定した。レーザ顕微鏡で測定した金型表面の画像を図6に示す。図6にはセラミックス微粒子の衝打による微小の圧痕が観測されており、金型表面に圧痕が残存していることが分かる(図6において矢印で示すXの部分)。
まず、図6において、隣接する山(凸部)と山(凸部)を異なる10箇所で任意に選択し、その間隔をそれぞれ山と山とのピッチ幅(A1、A2・・・A10)として測定を行う。また、A1〜A10の各間隔の中間には凹部に相当する谷が存在しており、各測定箇所についてそれぞれ山と谷との高低差(B1、B2、・・・B10)の測定を行う。ここで、A1〜A10の各間隔内には山と谷とが2つ存在するため、両者の高低差として2つの値が測定できるが、2つの測定値には大きな差異がみられないことから、どちらか一方の測定値を任意に選択することができる。そして、前記山と谷との高低差の平均値は、B1、B2・・・・B10の各測定値の平均値として算出される。さらに、B1、B2、・・・B10の測定値の中で最も大きな高低差を、前記山と谷との高低差の最大値として求める。また、前記山と山とのピッチ幅の平均値は、A1、A2・・・・A10の各測定値の平均値として算出する。
金型の表面について、以上のようにして求めた山と谷との高低差の平均値、山と谷との高低差の最大値、及び山と山とのピッチ幅の平均値を下記の表1に示す。
次に、図6に示す表面凹凸構造を有する金型と同じ製造方法に従って、図1の(h)〜(j)に示す射出成形法で使用する金型1aの平坦部分をブラスト加工を行い、その金型1aと別の金型1bを用いて射出成形法により本実施例の防眩性樹脂構造体の成形を行った。金型1a、1bは、両者とも表面凹凸形状を成形後、めっき、研磨及びエッチング等の表面処理を行わない状態で使用した。次いで、図1において、金型温度1a及び1bを80〜100℃に設定した状態で、樹脂2としてポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量21000)をノズル3からランナー4を通して射出した。樹脂2が金型1a、1bのキャビティに充填された後、型開きによる離型を行い、表面に凹凸形状が形成された樹脂構造体を取出した。
以上のようにして製造される樹脂構造体について、図6に示す金型の場合と同じ方法で表面凹凸構造の測定を行った。図7は、レーザ顕微鏡で測定した樹脂構造体表面の画像を示す図である。図7から分かるように、金型表面の凹凸形状が転写された樹脂構造体の表面は、金型表面とは異なり、より滑らかな面を示しており、表面の荒れ、細かいクラック及び鋭角的な突起がほとんど見られず、セラミックス微粒子の衝打による微小の圧痕がわずかに観測されるだけである。そこで、図7に示す画像から、図6の場合と同じ手順に従って隣接する山(凸部)と山(凸部)を異なる10箇所で選び、樹脂構造体表面の山と谷との高低差の平均値、山と谷との高低差の最大値、及び山と山とのピッチ幅の平均値を求めた。測定結果を、金型の表面凹凸形状の測定結果と合わせて下記の表1に示す。
Figure 0006488506
表1に示すように、樹脂の射出成形によって成形される樹脂構造体の表面は、金型表面に形成された凹凸形状に沿って、ほぼ同じ凹凸形状を有する状態で転写されていることが確認された。以上のようにして製造された本実施例の樹脂構造体について、防眩性能を反映する特性として、映りこみ、白ちゃけ及びギラツキを下記の方法で評価した。
<映りこみ及び色ちゃけの目視測定>
防眩性樹脂構造体の裏面からの反射を防止するため、防眩性樹脂構造体の凹凸形状を形成した面が表面となるように防眩性樹脂構造体の裏側をやすりで荒らした後、黒色スプレー塗装を施し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無及び白ちゃけの程度を目視で評価した。映り込み、白ちゃけともに、1〜3の3段階で次の基準に従って評価した。
映り込み 1:映り込みが観察されない、
2:蛍光灯の輪郭がぼやけるなどの映り込みが少し観察される、
3:映り込みが明瞭に観察される。
白ちゃけ 1:白ちゃけが観察されない、
2:白ちゃけが少し観察される、
3:白ちゃけが明瞭に観察される。
<ぎらつきの評価>
画素ピッチ200μmの液晶に対して水を垂らした上に防眩性樹脂構造体を載置し、液晶ディスプレイと防眩性樹脂構造体間の間隔を埋めた上で、緑色の画像を表示されたときのぎらつきを法線方向から目視で次の基準に従って評価した。
ぎらつき 1:ぎらつきが観察されない、
2:ぎらつきが少し観察される、
3:ぎらつきが観察される。
本実施例の樹脂構造体について評価した映りこみ、白ちゃけ及びぎらつきの評価結果を、金型表面及び樹脂構造体の表面凹凸構造と合わせて下記の表2に示す。
[実施例2及び3]
実施例1の金型作製において、セラミックス微粒子の吐出圧の条件を0.25MPaに代えて、0.20MPa及び0.15MPaにそれぞれ変更することを除いて、他の製造条件は実施例1と同じにして実施例2及び3の金型を作製した。次に、実施例1と同じ成形方法と成形条件を用いて射出成形を行い、表面に凹凸形状が形成された実施例2及び3の防眩性樹脂構造体を製造した。
このようにして製造された実施例2及び3の樹脂構造体について映りこみ、白ちゃけ及びぎらつきを評価した。それらの評価結果は、金型表面及び樹脂構造体の表面凹凸構造と合わせて下記の表2に示す。なお、金型表面及び樹脂構造体の表面凹凸構造は、山と谷との高低差の平均値、山と谷との高低差の最大値、及び山と山とのピッチ幅の平均値を表した。これらの値は、実施例1と同じように、異なる10箇所の隣接する山と山との間で、山と谷との高低差及び山と山とのピッチ幅をそれぞれ測定した値から算出することができる。
[比較例1〜3]
実施例1の金型製造において、セラミックス微粒子を粒径範囲が100〜150μmであるものに代えて、45〜90μmであるものに変更し、吐出圧の条件を0.35〜0.15MPaの範囲で変えた状態で実施例1と同じにして比較例1〜3の金型を作製した。次に、実施例1を同じ成形方法と成形条件を用いて射出成形を行い、表面に凹凸形状が形成された比較例1〜3の防眩性樹脂構造体を製造した。
[比較例4]
実施例1の金型製造において、粒径範囲が100〜150μmであるセラミックス微粒子を吐出圧0.25MPaで金属板の全面に吹きかけるときの時間を、実施例1の場合よりも1/3と短くする以外は、実施例1と同じ方法で表面凹凸構造を有する金型を作製した。この金型の表面をレーザ顕微鏡を用いて測定した結果、この製造条件ではブラスト時間が短いため金型表面全体に凹凸形状が形成されず、部分的に微小な平坦部分が残存しており、結果的に山と山とのピッチ幅の平均値が実施例1よりも大きくなっていることが分かった。次に、実施例1を同じ成形方法と成形条件を用いて射出成形を行い、表面に凹凸形状が形成された比較例4の防眩性樹脂構造体を製造した。この金型表面には凹凸形状が均一に形成されなかった。
[比較例5]
実施例1の金型製造において、セラミック微粒子として粒径範囲が100〜150μmであるものに代えて、300〜425μmであるものを用いて、吐出圧の条件を0.25MPaで実施例1と同じにして比較例5の金型を作製した。次に、実施例1と同じ成形方法と成形条件を用いて射出成形を行い、表面に凹凸形状が形成された比較例5の防眩性樹脂構造体を製造した。
[比較例6及び7]
実施例1の金型製造において、セラミック微粒子として粒径範囲が100〜150μmであるものに代えて、425〜600μmであるものを用いて、吐出圧の条件を0.45MPa及び0.25MPaにして、実施例1と同じにしてそれぞれ比較例6及び7の金型を作製した。次に、実施例1と同じ成形方法と成形条件を用いて射出成形を行い、表面に凹凸形状が形成された比較例6及び7の防眩性樹脂構造体を製造した。
以上のようにして製造された比較例1〜7の各樹脂構造体について映りこみ、白ちゃけ及びぎらつきを評価した。それらの評価結果は、金型表面及び樹脂構造体の表面凹凸構造と合わせて下記の表2に示す。なお、金型表面及び樹脂構造体の表面凹凸構造は、山と谷との高低差の平均値、山と谷との高低差の最大値、及び山と山とのピッチ幅の平均値を表した。これらの値は、実施例1と同じように、異なる10箇所の隣接する山と山との間で、山と谷との高低差及び山と山とのピッチ幅をそれぞれ測定した値から算出することができる。
Figure 0006488506
表2に示すように、実施例1〜3及び比較例1〜7において樹脂の射出成形によって成形される樹脂構造体の表面は、金型表面に形成された凹凸形状に沿ってほぼ同じ凹凸形状が転写されることが確認された。しかしながら、金型及び樹脂構造体の表面凹凸形状において、山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下で、山と谷との高低差の最大値が2.0μm以下であり、且つ、山と山とのピッチ幅の平均値が25μm以上70μm以下であるときに、樹脂構造体の防眩性能を向上できるだけでなく、白ちゃけやぎらつきによるディスプレイ画像の欠陥を大幅に抑えることができることが分かる。実施例1〜3の樹脂構造体は山と山とのピッチ幅の平均値が25μm以上70μm以下であるのに対して、比較例1〜7の樹脂構造体はこの範囲外であるため、十分な防眩性を示すことができない。特に、比較例5〜7の樹脂構造体は、山と山とのピッチ幅の平均値が100μmを超え、25μm以上70μm以下の範囲から大きく外れているため、ギラツキが顕著になる。したがって、本発明の金型及び樹脂構造体の諸特性に大きな影響を与える表面凹凸構造としては、山と山とのピッチ幅の平均値を25μm以上70μm以下の範囲に規定することが必要である。
また、表2において実施例1〜3の間で諸特性を対比すると、前記山と山とのピッチ幅の平均値が30μm以上70μm以下の範囲にするときに防眩性能及び白ちゃけ現象の抑制だけでなく、ギラツキ現象を大幅に抑制することができる。一方、山と山とのピッチ幅の平均値以外の物性値パラメータである山と谷との高低差の平均値及び山と谷との高低差の最大値については、それぞれ0.2μm以上1.2μm以下及び2.0μm以下に規定することにより本発明の効果を奏することができる。
[実施例4]
防眩性樹脂構造体において凹凸形状を有する表面の上にハードコート層を形成する方法を本実施例によって説明する。
シリコン系熱硬化型ハードコート層を設けた、全体厚み0.2mmのポリカーボネート樹脂フィルム(フィルム中のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量:28000)を切り出した。このとき、ポリカーボネート樹脂フィルムは、図3に示す射出成形法において、金型1aの凹凸形状が形成されている表面と略同じにした形状でハードコートフィルム26として使用し、ハードコート層25が金型1aの凹凸形状が形成されている表面と接触するように装着した。ここで、ハードコートフィルム26は、吸気通路27を介して真空引き操作を行い、金型1aの凹凸形状が形成された面に装着するのが実用的であるが、装着が簡単であれば必ずしも真空引きを行う必要はない。
次いで、油圧によって金型1bを閉じる。その後、閉じられた金型1a、1bの内部空間内(キャビティ)に不図示のシリンダー内で加熱溶融されたポリカーボネート樹脂2(粘度平均分子量:21000)がシリンダー先端のノズル3からランナー4を通して射出され(図3の(b))、金型1a、1bのキャビティにポリカーボネート樹脂2が充填された後に賦形が行われる(図3の(c))。最後に、金型1a、1bを開いてハードコート層24を有するハードコートフィルム25と一体化されたポリカーボネート樹脂からなる樹脂基材28の取り出しを行う(図3の(d))。このようにして、表面凹凸構造を有するハードコート層24を片面に有する樹脂基材26とからなる本実施例の防眩性樹脂構造体28が得られる。
本実施例の防眩性樹脂構造体についてハードコートフィルム26の密着性とハードコート層の硬度を評価した。その結果、ハードコートフィルム26と樹脂基材とは良好な密着性を示し、鉛筆硬度が3Hの硬いハードコート層面を有することが確認された。
なお、本発明の金型は、上記実施例で説明した射出成形法に使用されるだけでなく、フィルムやシートの表面に凹凸面構造を形成するときに従来から行われているエンボス成形用の金型としても使用することが可能である。そのため、製造方法に大きな限定を受けないで、自由に、且つ、低コストで防眩性樹脂構造体を製造することができる。
[実施例5]
ブラスト工法を用いた文字、平面等パターンの形成方法の一例を本実施例によって説明する。
まず、アルカリ現像型フィルムレジスト(50μm)を真空ラミネーターを用いて、温度60℃及び圧力1kPaで金型基材に貼り付ける。次いで、文字又は平面等のパターンが形成されたフォトマスクを通して、UV光(波長365nm、出力150mJ/cm2、露光時間25sec)を基材に貼り付けたフィルムレジストに照射し、フォトマスク透過部分のみの露光を行いパターン形成を行う。このようにしてパターン形成された金型基材を、現像液(1%NaCo水溶液)に浸漬し、現像(30℃60sec)を行った後、、UV照射によって現像された部分のみを純水にて洗い流す。その後、150℃で40分間のポストベークを行うことにより、レジストを硬化させるともに、基材との密着力を上げる。
引き続き、パターニングされたレジストをブラスト処理におけるマスクとして用いて、ショットブラストメディアを吹き付ける。この際、レジストにてマスクされたエリアは、メディアの衝撃をレジストが吸収するため、表面形状に変化はなく、直接メディアが衝突した部分のみ凹凸面が形成される。表面に文字又は平面等がパターニングされた金型基材は、レジスト除去液(1%NaOH水溶液)に25℃の温度で10分間浸漬することによってレジストの除去を行った後、純水にて水洗して乾燥を行う。乾燥後の金型基材は、直接メディアが衝突した部分の凹凸形状とともに、文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかが形成された表面を有することが確認された。
このように、本発明の金型は、微粒子の衝打によって凹凸形状を形成する際、前記凹凸面形状が形成される表面の一部にマスク等を用いて文字パターン面形状及び平面形状の少なくとも何れかを形成することにより、表示装置のパネル面において防眩性を発現する部分と、文字認識性又は高透過性が求められる部分とを同時に形成することができる。それにより、画像の表示部分に防眩性を発現させ、それ以外の部分には文字の表示を行ったり、文字等を明確に判別できるように高透過性部分を形成することができるため、防眩性樹脂構造体の付加価値が高められる。
以上のように、本発明の金型は、めっきやエッチング等の表面処理を施さない状態の表面に特定の凹凸形状を形成することにより、低コスト大量生産に適する射出成形の金型として使用することができる。そして、射出成形によって製造される樹脂基材を防眩性樹脂構造体又はその一部として用いることにより、優れた防眩性を有する防眩性樹脂構造体を得ることができる。また、本発明の金型を使用して製造する防眩性樹脂構造体は、防眩性を大幅に向上できるだけでなく、「白ちゃけ」及び「ぎらつき」等によるディスプレイ画像の欠陥を大幅に抑えることができる。また、本発明の防眩性樹脂構造体の製造方法においては、防眩性樹脂構造体の表面に、その表面形状に応じてハードコート層又は反射防止膜を設けることができるため、耐擦傷性又は反射防止の機能が付与され、機能の向上を図ることができる。
1a、1b、6a、6b、8a、8b、10a、10b・・・金型
2・・・加熱溶融された樹脂
3・・・ノズル
4・・・ランナ
5、7、9、12、28、32、33・・・防眩性樹脂構造体を構成する樹脂基材
11・・・中空部分
13・・・基材
14・・・光硬化性樹脂組成物の層
15・・・エンボス金型
16・・・ニップローラ
17・・・紫外線光原
18・・・離形ローラ
19・・・コーティングヘッド
20・・・紫外線硬化性樹脂
21・・・加熱溶融状態の樹脂基材
22・・・ヒータノズル
23・・・厚さ調整用治具
24、29・・・透明支持体
25・・・ハードコート層
26・・・ハードコートフィルム
27・・・吸気通路
30・・・反射防止膜
31・・・反射防止フィルム

Claims (13)

  1. 防眩性樹脂構造体を製造するために使用する金型であって、
    前記金型は、ロックウエル硬度が30HRC以上で、表面が不規則な高さ及び大きさの複数の凹凸形状がランダムに連続形成された凹凸面構造を有するとともに、前記凹凸面構造を有する表面に表面処理が施されていないものであり、
    前記凹凸面構造において任意の異なる10箇所の隣接する山と山との間について、山と谷との高低差及び山と山とのピッチ幅をレーザ顕微鏡によって測定するときに、前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下で、前記山と谷との高低差の最大値が2.0μm以下であり、且つ、前記山と山とのピッチ幅の平均値が25μm以上70μm以下であることを特徴とする凹凸表面構造を有する金型。
  2. 前記山と山とのピッチ幅の平均値が30μm以上70μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の凹凸表面構造を有する金型。
  3. 前記金型の表面に、前記ランダムな凹凸形状とともに、文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面凹凸構造を有する金型。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の表面凹凸構造を有する金型において、前記ランダムな凹凸形状が、粒径範囲として90μmを超え300μm未満を有する微粒子を乾式又は湿式で衝打させることにより形成されることを特徴とする表面凹凸構造を有する金型の製造方法。
  5. 前記微粒子の粒径範囲が100μm以上150μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の表面凹凸構造を有する金型の製造方法。
  6. 請求項4又は5に記載の表面凹凸構造を有する金型の製造方法において、前記金型の表面の一部に文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかを形成する場合は、
    前記金型の表面に前記微粒子を衝打させるとき、前記文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかに相当する部分にマスクを施し、前記金型の表面に対して前記微粒子による衝打を避けることにより、前記文字パターン面形状及び平坦面形状の少なくとも何れかの形成を前記ランダムな凹凸形状の形成とともに行うことを特徴とする表面凹凸構造を有する金型の製造方法。
  7. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の金型を用いて、該金型表面の凹凸面構造を樹脂基材に転写成形することにより、少なくとも片側表面に不規則な高さ及び大きさの複数の凹凸形状がランダムに連続形成された凹凸面構造を有する前記樹脂基材を備える樹脂構造体を製造する方法であって、
    前記樹脂基材は、前記凹凸面構造において任意の異なる10箇所の隣接する山と山との間について、山と谷との高低差及び山と山とのピッチ幅をレーザ顕微鏡によって測定するときに、前記山と谷との高低差の平均値が0.2μm以上1.2μm以下で、前記山と谷との高低差の最大値が2.0μm以下で、前記山と山とのピッチ幅の平均値が25μm以上70μm以下であり、且つ、微粒子を含まない樹脂基材であることを特徴とする防眩性樹脂構造体の製造方法。
  8. 前記樹脂基材は、前記山と山とのピッチ幅の平均値が30μm以上70μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法。
  9. 前記樹脂基材において前記凹凸面構造が形成されている表面上にハードコート層を形成することを特徴とする請求項7又は8に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法。
  10. 前記樹脂基材と前記凹凸表面構造を有する金型との間に、前記ハードコート層を形成するためのフィルムを挿入する形で前記金型の表面凹凸構造を転写成形することにより、前記樹脂基材と一体で表面凹凸構造を有するハードコート層を形成することを特徴とする請求項9に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法。
  11. 前記樹脂基材が前記凹凸面構造が形成されていない表面を片側に有する場合は、前記凹凸面構造が形成されていない表面上に反射防止膜を形成することを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法。
  12. 前記樹脂基材の凹凸面構造が形成されていない表面と平坦な金型との間に、前記反射防止膜を形成するためのフィルムを挿入する形で前記平坦な金型の表面を転写成形することにより、前記樹脂基材と一体で前記樹脂基材の凹凸面構造が形成されていない表面上に反射防止膜を形成することを特徴とする請求項11に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法。
  13. 前記樹脂基材又は前記防眩性樹脂構造体が射出成形方法によって製造されることを特徴とする請求項7〜12のいずれか一項に記載の防眩性樹脂構造体の製造方法。
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