JP2011186386A - 防眩フィルムおよび防眩性偏光板 - Google Patents

防眩フィルムおよび防眩性偏光板 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた防眩性を示し、良好なコントラストを発現しながら、白ちゃけおよびギラツキの発生による視認性の低下を防止することができるとともに、耐湿性に優れ、偏光フィルムの劣化を抑制し得る防眩フィルムならびにこれを用いた防眩性偏光板を提供する。
【解決手段】基材フィルム101と、これに積層される凹凸表面を有する防眩層102とを備え、基材フィルム101がポリエチレンテレフタレートから構成され、空間周波数0.01μm-1における該凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH1 2と空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH2 2との比H1 2/H2 2が1〜20の範囲内であり、空間周波数0.1μm-1におけるエネルギースペクトルH3 2とエネルギースペクトルH2 2との比H3 2/H2 2が0.1以下であり、該凹凸表面は傾斜角度が5°以下である面を95%以上含む防眩フィルムならびにこれを用いた防眩性偏光板である。
【選択図】図1

Description

本発明は、防眩(アンチグレア)フィルムおよびこれを用いた防眩性偏光板に関する。
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置は、その表示面に外光が映り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。従来、このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、および反射光を利用して表示を行なう携帯電話などにおいては、画像表示装置の表面に、外光の映り込みを防止するための防眩フィルムが配置されている。
このような防眩フィルムとして、たとえば、特開2006−53371号公報(特許文献1)には、研磨された金型基材にサンドブラスト加工を施した後、無電解ニッケルめっきを施すことによって、表面に微細な凹凸を有する金型を製造し、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に形成された光硬化性樹脂層を、該金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることにより該金型の凹凸面を光硬化性樹脂層に転写した防眩フィルムが記載されている。
特開2006−53371号公報
防眩フィルムには、防眩性が求められる他、画像表示装置の表面に配置した際に良好なコントラストを発現すること、画像表示装置の表面に配置した際に散乱光によって表示面全体が白っぽくなり、表示が濁った色になる、いわゆる「白ちゃけ」の発生を抑制すること、および、画像表示装置の表面に配置した際に画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状とが干渉し、結果として輝度分布が発生して見えにくくなる、いわゆる「ギラツキ」の発生を抑制することが要望されている。しかしながら、特許文献1に記載された防眩フィルムは、サンドブラスト加工によって凹凸形状を形成した金型を使用して作製されるため、防眩フィルムに付与される凹凸形状の精度の点で充分でなく、特に、50μm以上の周期を持つ比較的大きな凹凸形状を有する場合があるため、「ギラツキ」が発生しやすいという問題があった。また、同文献に記載の防眩フィルムは、耐湿性において充分でなく、該防眩フィルムを偏光フィルムに貼合して使用すると該偏光フィルムが劣化してしまうことがあった。
そこで、本発明の目的は、優れた防眩性を示し、良好なコントラストを発現しながら、「白ちゃけ」および「ギラツキ」の発生による視認性の低下を防止することができるとともに、耐湿性に優れており、偏光フィルムの劣化を抑制し得る防眩フィルム、ならびに、該防眩フィルムと偏光フィルムとの積層体からなる防眩性偏光板であって、該偏光フィルムの劣化が抑制された防眩性偏光板を提供することにある。
本発明は、基材フィルムと、該基材フィルム上に積層される凹凸表面を有する防眩層とを備える防眩フィルムであって、該基材フィルムがポリエチレンテレフタレートから構成され、空間周波数0.01μm-1における該凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH1 2と、空間周波数0.04μm-1における該凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH2 2との比H1 2/H2 2が1〜20の範囲内であり、空間周波数0.1μm-1における該凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH3 2と、空間周波数0.04μm-1における該凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH2 2との比H3 2/H2 2が0.1以下であり、かつ、該凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含む防眩フィルムを提供する。基材フィルムは、好ましくは、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムであり、その厚みは、好ましくは、20μm以上100μm以下である。
本発明の防眩フィルムは、好ましくは透過鮮明度が300%以下である。また、好ましくは、表面ヘイズが0.5%以上10%以下であり、内部ヘイズが5%以上25%以下である。
また本発明は、上記防眩フィルムと、基材フィルムにおける防眩層とは反対側の面に積層される偏光フィルムとを備える防眩性偏光板を提供する。
本発明の防眩フィルムは、優れた防眩性を示し、良好なコントラストを発現しながら、「白ちゃけ」および「ギラツキ」の発生による視認性の低下を効果的に防止できるものである。また、本発明の防眩フィルムは、耐湿性に優れており、これに貼合される偏光フィルムの吸湿による劣化を抑制することができる。かかる防眩フィルムを用いた本発明の防眩性偏光板においては、吸湿による偏光フィルムの劣化が効果的に抑制される。
本発明の防眩フィルムの一例を模式的に示す断面図である。 本発明の防眩フィルムの表面を模式的に示す斜視図である。 標高を表す関数h(x,y)が離散的に得られる状態を示す模式図である。 本発明の防眩フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の標高を二次元の離散関数h(x,y)で表した図である。 図4に示した二次元関数h(x,y)を離散フーリエ変換して得られた標高のエネルギースペクトルH2(fx,fy)を白と黒のグラデーションで示したものである。 図5に示したエネルギースペクトルH2(fx,fy)のfx=0における断面を示す図である。 微細凹凸表面の傾斜角度の測定方法を説明するための模式図である。 防眩フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の傾斜角度分布のヒストグラムの一例を示すグラフである。 本発明の防眩フィルムを作製するために用いることができるパターンである画像データの一部を示す図である。 図9に示した階調の二次元離散関数g(x,y)を離散フーリエ変換して得られたエネルギースペクトルG2(fx,fy)を白と黒のグラデーションで示した図である。 図10に示したエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面を示す図である。 本発明の防眩フィルムの製造に好ましく用いられる金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。 本発明の防眩フィルムの製造に好ましく用いられる金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。 第1エッチング工程によって形成された凹凸面が第2エッチング工程によって鈍る状態を模式的に示す図である。 実施例1の金型作製の際に使用したパターンを示す図である。 図15に示したパターンのエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面を表した図である。 実施例5の金型作製の際に使用したパターンを示す図である。 図17に示したパターンのエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面を表した図である。
<防眩フィルム>
図1は、本発明の防眩フィルムの一例を模式的に示す断面図である。本発明の防眩フィルムは、図1に示される例のように、ポリエチレンテレフタレートから構成される基材フィルム101と、基材フィルム101上に積層された防眩層102とを備える。防眩層102における基材フィルム101とは反対側の表面は、微細な凹凸表面(微細凹凸表面103)からなる。以下、本発明の防眩フィルムについてより詳細に説明する。
(防眩層)
本発明の防眩フィルムが備える防眩層102において、空間周波数0.01μm-1における微細凹凸表面103の標高のエネルギースペクトルH1 2と、空間周波数0.04μm-1における微細凹凸表面103の標高のエネルギースペクトルH2 2との比H1 2/H2 2は、1〜20の範囲内であり、空間周波数0.1μm-1における微細凹凸表面103の標高のエネルギースペクトルH3 2と、空間周波数0.04μm-1における微細凹凸表面103の標高のエネルギースペクトルH2 2との比H3 2/H2 2は、0.1以下である。
従来、防眩フィルムの微細凹凸表面の周期については、JIS B 0601に記載される粗さ曲線要素の平均長さRSm、断面曲線要素の平均長さPSm、およびうねり曲線要素の平均長さWSmなどで評価されていた。しかしながら、このような従来の評価方法では、微細凹凸表面に含まれる複数の周期を正確に評価することができなかった。よって、ギラツキと微細凹凸表面との相関および防眩性と微細凹凸表面との相関についても正確に評価することができず、ギラツキの抑制と十分な防眩性能を兼備する防眩フィルムを作製することが困難であった。
本発明者らは、微細凹凸表面を有する防眩層をポリエチレンテレフタレートから構成される基材フィルム上に積層した防眩フィルムにおいて、その微細凹凸表面が「微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトル」を用いて規定される特定の空間周波数分布を示す、すなわち、標高のエネルギースペクトル比H1 2/H2 2が1〜20の範囲内であり、H3 2/H2 2が0.1以下である防眩フィルムは、優れた防眩性能を示し、かつ、白ちゃけによる視認性の低下を防止することができるとともに、高精細の画像表示装置に適用した場合においても、ギラツキを発生せずに高いコントラストを発現することを見出した。
まず、防眩層が有する微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルについて説明する。図2は、本発明の防眩フィルムの表面を模式的に示す斜視図である。図2に示されるように、本発明の防眩フィルム1は、微細な凹凸2から構成される微細凹凸表面を有する防眩層を備える。ここで、本発明でいう「微細凹凸表面の標高」とは、防眩フィルム1表面の任意の点Pにおける、微細凹凸表面の最低点の高さにおいて当該高さを有する仮想的な平面(標高は基準として0μm)からの防眩フィルムの主法線方向5(上記仮想的な平面における法線方向)における直線距離を意味する。図2に示すように、防眩フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示した際には、微細凹凸表面の標高は座標(x,y)の二次元関数h(x,y)で表すことができる。図2には、防眩フィルム全体の面を投影面3で表示している。
微細凹凸表面の標高は、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により測定される表面形状の三次元情報から求めることができる。測定機に要求される水平分解能は、少なくとも5μm以下、好ましくは2μm以下であり、また垂直分解能は、少なくとも0.1μm以下、好ましくは0.01μm以下である。この測定に好適な非接触三次元表面形状・粗さ測定機としては、New View 5000シリーズ(Zygo Corporation社製、日本ではザイゴ(株)から入手可能)、三次元顕微鏡PLμ2300(Sensofar社製)などを挙げることができる。測定面積は、標高のエネルギースペクトルの分解能が0.01μm-1以下である必要があるため、少なくとも200μm×200μm以上とするのが好ましく、より好ましくは、500μm×500μm以上である。
次に、二次元関数h(x,y)より標高のエネルギースペクトルを求める方法について説明する。まず、二次元関数h(x,y)より、下記式(1)で定義される二次元フーリエ変換によって二次元関数H(fx,fy)を求める。
ここで、fxおよびfyは、それぞれx方向およびy方向の空間周波数であり、長さの逆数の次元を持つ。また、式(1)中のπは円周率、iは虚数単位である。得られた二次元関数H(fx,fy)を二乗することによって、標高のエネルギースペクトルH2(fx,fy)を求めることができる。このエネルギースペクトルH2(fx,fy)は、防眩層の微細凹凸表面の空間周波数分布を表している。
以下、防眩層の微細凹凸表面のエネルギースペクトルを求める方法をさらに具体的に説明する。上記の共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡などによって実際に測定される表面形状の三次元情報は、一般的に離散的な値、すなわち、多数の測定点に対応する標高として得られる。図3は、標高を表す関数h(x,y)が離散的に得られる状態を示す模式図である。図3に示すように、防眩フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示し、防眩フィルムの投影面3上にx軸方向にΔx毎に分割した線およびy軸方向にΔy毎に分割した線を破線で示すと、実際の測定では微細凹凸表面の標高は、防眩フィルムの投影面3上の各破線の交点毎の離散的な標高値として得られる。
得られる標高値の数は、測定範囲とΔxおよびΔyによって決まり、図3に示すようにx軸方向の測定範囲をX=MΔxとし、y軸方向の測定範囲をY=NΔyとすると、得られる標高値の数は(M+1)×(N+1)個である。
図3に示すように、防眩フィルムの投影面3上の着目点Aの座標を(jΔx,kΔy)(ここで、jは0以上M以下であり、kは0以上N以下である。)とすると、着目点Aに対応する防眩フィルム表面上の点Pの標高は、h(jΔx,kΔy)と表すことができる。
ここで、測定間隔ΔxおよびΔyは、測定機器の水平分解能に依存し、精度良く微細凹凸表面を評価するためには、上述したとおりΔxおよびΔyともに5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。また、測定範囲XおよびYは上述したとおり、ともに200μm以上が好ましく、ともに500μm以上がより好ましい。
このように、実際の測定では微細凹凸表面の標高を表す関数は(M+1)×(N+1)個の値を持つ離散関数h(x,y)として得られる。したがって、測定によって得られた離散関数h(x,y)と下記式(2)で定義される離散フーリエ変換によって離散関数H(fx,fy)が求まり、離散関数H(fx,fy)を二乗することによってエネルギースペクトルの離散関数H2(fx,fy)が求められる。式(2)中のlは−(M+1)/2以上(M+1)/2以下の整数であり、mは−(N+1)/2以上(N+1)/2以下の整数である。また、ΔfxおよびΔfyは、それぞれx方向およびy方向の空間周波数間隔であり、式(3)および式(4)で定義される。ΔfxおよびΔfyは、標高のエネルギースペクトルの水平分解能に相当する。
図4は、本発明の防眩フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の標高を二次元の離散関数h(x,y)で表した図の一例である。図4において標高は白と黒のグラデーションで示している。図4に示した離散関数h(x,y)は、512×512個の値を持ち、水平分解能ΔxおよびΔyは1.66μmである。
また、図5は、図4に示した二次元関数h(x,y)を離散フーリエ変換して得られた標高のエネルギースペクトルH2(fx,fy)を白と黒のグラデーションで示したものである。図5に示した標高のエネルギースペクトルH2(fx,fy)も512×512個の値を持つ離散関数であり、標高のエネルギースペクトルの水平分解能ΔfxおよびΔfyは0.0012μm-1である。
図4に示される例のように、本発明の防眩フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面は、ランダムに形成された凹凸からなるため、標高のエネルギースペクトルは、図5に示されるように、原点を中心に対称となる。よって、空間周波数0.01μm-1における標高のエネルギースペクトルH1 2、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH2 2および空間周波数0.1μm-1における標高のエネルギースペクトルH3 2は、二次元関数であるエネルギースペクトルH2(fx,fy)の原点を通る断面より求めることができる。図6に、図5に示したエネルギースペクトルH2(fx,fy)のfx=0における断面を示した。図6より、空間周波数0.01μm-1における標高のエネルギースペクトルH1 2は4.4、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH2 2は0.35、空間周波数0.1μm-1における標高のエネルギースペクトルH3 2は0.00076であることがわかり、比H1 2/H2 2は14、比H3 2/H2 2は0.0022と算出される。
上述したように、本発明に係る防眩層において、空間周波数0.01μm-1における微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH1 2と、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH2 2との比H1 2/H2 2は、1〜20の範囲内とされる。標高のエネルギースペクトルの比H1 2/H2 2が1を下回ることは、防眩層の微細凹凸表面に含まれる100μm以上の長周期の凹凸形状が少なく、25μm未満の短周期の凹凸形状が多いことを示している。そのような場合には外光の映り込みを効果的に防止することができず、十分な防眩性能が得られない。また、これに対して、標高のエネルギースペクトルの比H1 2/H2 2が20を上回ることは、微細凹凸表面に含まれる100μm以上の長周期の凹凸形状が多く、25μm未満の短周期の凹凸形状が少ないことを示している。そのような場合には、防眩フィルムを高精細の画像表示装置に配置した際にギラツキを発生させる傾向にある。より優れた防眩性能を示しつつ、ギラツキをより効果的に抑制するためには、標高のエネルギースペクトルの比H1 2/H2 2は、1〜11の範囲内であることが好ましく、1〜6の範囲内であることがより好ましい。
また、本発明に係る防眩層において、空間周波数0.1μm-1における微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH3 2と、空間周波数0.04μm-1における標高のエネルギースペクトルH2 2との比H3 2/H2 2は、0.1以下とされ、好ましくは0.01以下とされる。比H3 2/H2 2が0.1以下であることは、微細凹凸表面に含まれる10μm未満の短周期成分が十分に低減されていることを示しており、これにより白ちゃけの発生を効果的に抑制することができる。微細凹凸表面に含まれる10μm未満の短周期成分は、防眩性に効果的に寄与しない一方、微細凹凸表面に入射した光を散乱させて白ちゃけの原因となるものである。
本発明者らはまた、防眩層の微細凹凸表面が特定の傾斜角度分布を示すようにすることが、優れた防眩性能を示しつつ、白ちゃけを効果的に防止する上で一層有効であることを見出した。すなわち、本発明の防眩フィルムにおいて、防眩層の微細凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含む。傾斜角度が5°以下である面の割合が95%を下回ると、凹凸表面の傾斜角度が急峻になって、周囲からの光を集光し、表示面が全体的に白くなる白ちゃけが発生しやすくなる。このような集光効果を抑制し、白ちゃけを防止するためには、微細凹凸表面の傾斜角度が5°以下である面の割合が高ければ高いほどよく、97%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
ここで、本発明でいう「微細凹凸表面の傾斜角度」とは、図2を参照して、防眩フィルム1表面の任意の点Pにおいて、防眩フィルムの主法線方向5に対する、そこでの凹凸を加味した局所的な法線6のなす角度(表面傾斜角度)ψを意味する。微細凹凸表面の傾斜角度についても標高と同様に、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により測定される表面形状の三次元情報から求めることができる。
ここで、図7は、微細凹凸表面の傾斜角度の測定方法を説明するための模式図である。具体的な傾斜角度の決定方法を説明すると、図7に示すように、点線で示される仮想的な平面FGHI上の着目点Aを決定し、そこを通るx軸上の着目点Aの近傍に、点Aに対してほぼ対称に点BおよびDを、また点Aを通るy軸上の着目点Aの近傍に、点Aに対してほぼ対称に点CおよびEをとり、これらの点B,C,D,Eに対応する防眩フィルム面上の点Q,R,S,Tを決定する。なお図7では、防眩フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示し、防眩フィルム厚み方向の座標をzで表示している。平面FGHIは、y軸上の点Cを通るx軸に平行な直線、および同じくy軸上の点Eを通るx軸に平行な直線と、x軸上の点Bを通るy軸に平行な直線、および同じくx軸上の点Dを通るy軸に平行な直線とのそれぞれの交点F,G,H,Iによって形成される面である。また図7では、平面FGHIに対して、実際の防眩フィルム面の位置が上方にくるように描かれているが、着目点Aのとる位置によって当然ながら、実際の防眩フィルム面の位置が平面FGHIの上方にくることもあるし、下方にくることもある。
傾斜角度は、着目点Aに対応する実際の防眩フィルム面上の点Pと、その近傍にとられた4点B,C,D,Eに対応する実際の防眩フィルム面上の点Q,R,S,Tの合計5点により張られるポリゴン4平面、すなわち、四つの三角形PQR,PRS,PST,PTQの各法線ベクトル6a,6b,6c,6dを平均して得られる平均法線ベクトル(平均法線ベクトルは、図2に示される凹凸を加味した局所的な法線6と同義である)の極角を、測定された表面形状の三次元情報から求めることにより得ることができる。各測定点について傾斜角度を求めた後、ヒストグラムが計算される。
図8は、防眩フィルムが備える防眩層の微細凹凸表面の傾斜角度分布のヒストグラムの一例を示すグラフである。図8に示すグラフにおいて、横軸は傾斜角度であって、0.5°刻みで分割してある。たとえば、一番左の縦棒は、傾斜角度が0〜0.5°の範囲にある集合の分布を示し、以下、右へ行くにつれて角度が0.5°ずつ大きくなっている。図8では、横軸の2目盛毎に値の下限値を表示しており、たとえば、横軸で「1」とある部分は、傾斜角度が1〜1.5°の範囲にある集合の分布を示す。また、縦軸は傾斜角度の分布を表し、合計すれば1(100%)になる値である。この例では、傾斜角度が5°以下である面の割合は略100%である。
本発明において防眩層は、光硬化型樹脂等の硬化型樹脂の硬化物または熱可塑性樹脂などから構成することができ、なかでも光硬化型樹脂の硬化物から構成されることが好ましい。また、後で詳述するように、本発明の防眩フィルムは所定範囲(5〜25%)の内部ヘイズを示すことが好ましく、そのために、防眩層には、硬化型樹脂の硬化物または熱可塑性樹脂と異なる屈折率を有する微粒子を分散させることが好ましい。また、微粒子は、防眩層表面に突出していない、すなわち、微粒子は完全に防眩層中に埋没されていることが好ましい。
防眩層に上記微粒子を分散させる場合、微粒子の平均粒径は、5μm以上であることが好ましく、6μm以上であることがより好ましい。また、微粒子の平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましい。平均粒径が5μmを下回る場合には、微粒子による広角側の散乱光強度が上昇し、画像表示装置に適用したときにコントラストを低下させる傾向にある。また、平均粒径が10μmを超える場合には、微粒子を防眩層中に完全に埋没させるために必要とする膜厚が厚くなり、その結果、硬化型樹脂または熱可塑性樹脂および微粒子を含む塗工液を基材フィルムに塗工する際、基材フィルムにカールが生じたり、微粒子の凝集が生じるなどの不具合が起こりやすくなる。
また、微粒子の屈折率nbと硬化型樹脂の硬化物または熱可塑性樹脂の屈折率nrとの比nb/nrは、0.93以上0.98以下もしくは1.01以上1.04以下であることが好ましく、0.97以上0.98以下もしくは1.01以上1.03以下であることがより好ましい。屈折率比nb/nrが0.93を下回る場合もしくは1.04を上回る場合には、硬化型樹脂の硬化物または熱可塑性樹脂と微粒子との界面における反射率が増大し、結果として後方散乱が上昇し、全光線透過率が低下する傾向にある。また、屈折率比nb/nrが0.98超過1.01未満である場合には、微粒子による内部散乱効果が小さくなることから、所定の内部ヘイズを防眩層に与えて色ムラを効果的に解消するためには、大量の微粒子を添加する必要があり、このことは、微粒子を完全に防眩層中に埋没させるという観点から好ましくない。
微粒子を構成する材料は、上記好ましい屈折率比を満たすものであることが好ましい。後述するように、本発明においては防眩層の形成にUVエンボス法が好ましく用いられ、UVエンボス法においては、紫外線硬化型樹脂が好ましく用いられる。この場合、紫外線硬化型樹脂の硬化物は1.50前後の屈折率を示すことが多いので、微粒子としては、その屈折率が1.40〜1.60程度のものから、防眩フィルムの設計に合わせて適宜選択することができる。微粒子としては、樹脂ビーズ、それもほぼ球形のものが好ましく用いられる。かかる好適な樹脂ビーズの例を以下に掲げる。
メラミンビーズ(屈折率1.57)、
ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、
メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、
ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、
ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、
ポリスチレンビーズ(屈折率1.6)、
ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、
シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)など。
微粒子の含有量は、硬化型樹脂または熱可塑性樹脂100重量部に対し、通常50重量部以下であり、好ましくは40重量部以下である。また、微粒子の含有量は、10重量部以上であることが好ましく、15重量部以上であることがより好ましい。微粒子の含有量が10重量部未満である場合には、十分な内部ヘイズを付与できない場合がある。
上述のように、微粒子は防眩層表面に突出していない、すなわち、微粒子は完全に防眩層中に埋没されることが好ましい。これは、微粒子が表面に突出している場合には、微粒子の形状によって表面凹凸形状が変化し、上述したような空間周波数分布が適切に設定された微細凹凸表面に影響を及ぼすようになるからである。このように、微粒子を防眩層表面に突出させないように防眩フィルムを製造するためには、後述するエンボス法(なかでもUVエンボス法)によって防眩フィルムを製造することが好ましい。防眩層の厚みは、微粒子の平均粒径の1.1倍以上2倍以下であることが好ましい。防眩層の厚みが微粒子の平均粒径の1.1倍を下回る場合には、微粒子が防眩層表面に突出する傾向があるため好ましくない。また、防眩層の厚みが平均粒径の2倍を上回る場合には、硬化型樹脂または熱可塑性樹脂および微粒子を含む塗工液を基材フィルムに塗工する際、基材フィルムにカールが生じるなどの不具合が起こりやすくなる。
(基材フィルム)
本発明の防眩フィルムに用いられる基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレートから構成される。基材フィルムは、一軸延伸もしくは二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい(このように一軸延伸もしくは二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを、以下、単に「延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」とも記す)。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、機械的性質、耐湿性、耐溶剤性、耐スクラッチ性、コストなどに優れたフィルムであり、このようなポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた防眩フィルムは、機械的強度、耐湿性などに優れるとともに、厚みの低減を図ることができる。
ここで、本発明において、基材フィルムを構成するポリエチレンテレフタレートとは、繰り返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂を意味し、他の共重合成分に由来する構成単位を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、4,4’−ジカルボキシジフェニール、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、1,4−ジカルボキシシクロヘキサン等のジカルボン酸成分;プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分が挙げられる。これらのジカルボン酸成分やジオール成分は、必要により2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、上記カルボン酸成分やジオール成分と共に、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸を併用することも可能である。他の共重合成分として、少量のアミド結合、ウレタン結合、エーテル結合、カーボネート結合等を含有するジカルボン酸成分および/またはジオール成分が用いられていてもよい。すなわち、本発明においては、このような他の共重合成分を含む場合であっても、ポリエチレンテレフタレートと称するものとする。
ポリエチレンテレフタレートの製造法としては、テレフタル酸とエチレングリコール(ならびに必要に応じて他のジカルボン酸および/または他のジオール)を直接反応させるいわゆる直接重合法、テレフタル酸のジメチルエステルとエチレングリコール(ならびに必要に応じて他のジカルボン酸のジメチルエステルおよび/または他のジオール)とをエステル交換反応させる、いわゆるエステル交換反応法等の任意の製造法を適用することができる。また、ポリエチレンテレフタレートは、必要に応じて公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては、たとえば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃性改良剤などを挙げることができる。ただし、防眩フィルムの基材フィルムとして透明性が必要とされるため、添加剤の添加量は最小限にとどめておくことが好ましい。
上記のような製造法で製造される原料樹脂をフィルム状に成形し、一軸延伸処理もしくは二軸延伸処理を施すことにより、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムを作製することができる。延伸処理を行なうことにより、機械的強度の高いポリエチレンテレフタレートフィルムを得ることができる。延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムの作製方法は任意であり、特に限定されるものではないが、たとえば、一軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの作製方法としては、上記原料樹脂を溶融し、シート状に押出成形された無配向フィルムを、ガラス転移温度以上の温度においてテンターで横延伸後、熱固定処理を施す方法を挙げることができる。また、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムでは、上記原料樹脂を溶融し、シート状に押出成形された無配向フィルムを、ガラス転移温度以上の温度においてテンターで縦延伸後、熱固定処理を施し、次いで横延伸後、熱固定処理を施す方法を挙げることができる。これらの場合において、延伸温度は80〜130℃、好ましくは90〜120℃であり、延伸倍率は2.5〜6倍、好ましくは3〜5.5倍である。延伸倍率が低いと、ポリエチレンテレフタレートフィルムが十分な透明性を示さない傾向にある。
また、配向主軸の歪みを低減するために、延伸後熱固定処理を行なう前に、ポリエチレンテレフタレートフィルムを弛緩処理することが望ましい。弛緩処理時の温度は90〜200℃、好ましくは120〜180℃である。弛緩量は、延伸条件によって異なり、弛緩処理後のポリエチレンテレフタレートフィルムの、150℃における熱収縮率が2%以下になるように弛緩量および弛緩処理時の温度を設定することが好ましい。
熱固定処理温度は180〜250℃とすることができ、好ましくは200〜245℃である。熱固定処理においては、まず定長で熱固定処理を行なった後、配向主軸の歪みが低減され、耐熱性等の強度を向上させるために、さらに幅方向の弛緩処理を行なうことが好ましい。この場合の弛緩量は、弛緩処理後のポリエチレンテレフタレートフィルムの、150℃における熱収縮率が1〜10%となるように調整されることが好ましく、より好ましくは2〜5%である。
このような延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みは、20μm以上100μm以下とすることが好ましく、30μm以上50μm以下とすることがより好ましい。延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚みが20μm未満であると、ハンドリングしにくい傾向にあり、厚みが100μmを上回ることは最近の画像表示装置の薄型化への要求およびコスト等の観点から好ましくない。
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、ヘイズが付与されていてもよい。ヘイズを付与する方法としては、特に制限されず、たとえば上記原料樹脂中に無機微粒子または有機微粒子を混合する方法などが挙げられる。無機微粒子としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機粒子、およびこれら無機粒子に脂肪酸等で表面処理を施したものなどを代表的なものとして挙げることができる。また、有機微粒子としては、メラミンビーズ(屈折率1.57)、ポリメタクリル酸メチルビーズ(屈折率1.49)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズ(屈折率1.50〜1.59)、ポリカーボネートビーズ(屈折率1.55)、ポリエチレンビーズ(屈折率1.53)、ポリ塩化ビニルビーズ(屈折率1.46)、シリコーン樹脂ビーズ(屈折率1.46)などの樹脂粒子を用いることができる。
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムにおける、一方の面もしくは両面には各種の易接着処理が施されていてもよい。易接着処理は特に限定されるものではなく、従来公知の処理、たとえば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、プライマー処理、溶剤処理などが挙げられる。
なお、基材フィルムとして、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、延伸されたポリエチレンナフタレートフィルムを用いることもでき、この場合にも上記と同様の効果を得ることができる。
次に、本発明の防眩フィルムの透過鮮明度およびヘイズ(表面ヘイズおよび内部ヘイズ)について説明する。本発明の防眩フィルムの透過鮮明度は、300%以下であることが好ましい。透過鮮明度が300%を上回る場合には、防眩フィルムを画像表示装置に配置した際に、ポリエチレンテレフタレートから構成される基材フィルムの位相差に起因する色ムラが観察されるようになる虞がある。この色ムラを好適に抑えるためには、防眩フィルムの透過鮮明度は200%以下であることがより好ましい。透過鮮明度の下限については特に制限されないが、液晶表示装置の視認性の観点から、100%以上であることが好ましい。
本発明において、透過鮮明度は次のようにして測定される。すなわち、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム上に、微細な凹凸形状を有する防眩層を形成し、この防眩層が形成されていない方の面が接合面となるように、該防眩フィルムとガラス基板とを、透明粘着剤を用いて貼合し、JIS K 7105に規定される方法で測定する。この規格では、像鮮明度の測定に用いる光学くしとして、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類が規定されている。本発明においては、これら4種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度の和をもって透過鮮明度と呼ぶことにする。この定義による場合の透過鮮明度の最大値は400%である。
また、本発明の防眩フィルムの表面ヘイズは0.5%以上10%以下であることが好ましく、内部ヘイズは5%以上25%以下であることが好ましい。ここで、防眩フィルムの表面ヘイズおよび内部ヘイズは、次のようにして測定される。すなわち、まず、防眩層をポリエチレンテレフタレートから構成される基材フィルム上に形成した後、防眩層が形成されていない側が接合面となるように、該防眩フィルムとガラス基板とを、透明粘着剤を用いて貼合し、JIS K 7136に準拠してヘイズを測定する。このようにして測定されるヘイズは、防眩フィルムの全ヘイズに相当する。次に、防眩層の微細な凹凸形状の表面に、ヘイズがほぼ0であるトリアセチルセルロースフィルムを、グリセリンを用いて貼合し、再度JIS K 7136に準拠してヘイズを測定する。当該ヘイズは、この微細な凹凸形状に起因する表面ヘイズがこの表面凹凸上に貼合されたトリアセチルセルロースフィルムによってほぼ打ち消されていることから、防眩フィルムの「内部ヘイズ」とみなすことができる。したがって、防眩フィルムの「表面ヘイズ」は、下記式(I):
表面ヘイズ=全ヘイズ−内部ヘイズ (I)
より求められる。
防眩フィルムの表面ヘイズは、白ちゃけを抑制する観点から、10%以下とされ、より効果的に白ちゃけを抑えるためには5%以下であることが好ましい。ただし、0.5%未満となる場合には十分な防眩性を示さないことから好ましくない。また、防眩フィルムの内部ヘイズが25%を超えると、画像表示装置に適用したときに、結果として画面が暗くなり、視認性が損なわれる傾向にある。また、内部ヘイズが5%未満となる場合には、上記した透過鮮明度が300%以下であっても、防眩フィルムを画像表示装置に配置した際に、ポリエチレンテレフタレートから構成される基材フィルムの位相差に起因する色ムラが観察されるようになる虞がある。内部ヘイズのより好ましい範囲は、10%以上20%以下である。防眩フィルムの表面ヘイズは、たとえば上述した微細凹凸表面の傾斜角度分布を制御することにより制御することが可能であり、また、内部ヘイズは、たとえば、防眩層に分散させる微粒子の含有量や屈折率(防眩層を構成する硬化型樹脂の硬化物または熱可塑性樹脂との屈折率比)の調整により制御することができる。
<防眩フィルムの製造方法>
上記本発明の防眩フィルムは、下記工程(A)および(B)を含む方法によって好適に製造することができる。
(A)0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内に極大値を持たないエネルギースペクトルを示すパターンを用いて、凹凸面を有する金型を作製する工程、および、
(B)基材フィルム上に形成された、光硬化型樹脂等の硬化型樹脂または熱可塑性樹脂などを含む樹脂層の表面に、金型の凹凸面を転写する工程。
0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内に極大値を持たないエネルギースペクトルを示すパターンを用いることにより、上記した特定の空間周波数分布を持つ微細凹凸表面を精度よく形成することが可能となる。また、当該パターンを用いて凹凸面を有する金型を作製し、当該金型の凹凸面を、基材フィルム上に形成された樹脂層の表面に転写する方法(エンボス法)により、微細凹凸表面を有する防眩層を精度よく、かつ再現性よく得ることが可能となる。ここで、「パターン」とは、典型的には、防眩フィルムの微細凹凸表面を形成するために用いられる、計算機によって作成された2階調(たとえば、白と黒とに二値化された画像データ)または3階調以上のグラデーションからなる画像データを意味するが、当該画像データへ一義的に変換可能なデータ(行列データなど)も含み得る。画像データへ一義的に変換可能なデータとしては、各画素の座標および階調のみが保存されたデータなどが挙げられる。
上記工程(A)で用いられるパターンのエネルギースペクトルは、たとえば画像データであれば、画像データを2階調の二値化画像データに変換した後、画像データの階調を二次元関数g(x,y)で表し、得られた二次元関数g(x,y)をフーリエ変換して二次元関数G(fx,fy)を計算し、得られた二次元関数G(fx,fy)を二乗することによって求められる。ここで、xおよびyは、画像データ面内の直交座標を表し、fxおよびfyはそれぞれ、x方向の空間周波数およびy方向の空間周波数を表す。
微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルを求める場合と同様に、パターンのエネルギースペクトルを求める場合についても、階調の二次元関数g(x,y)は離散関数として得られる場合が一般的である。その場合は、微細凹凸表面の標高のエネルギースペクトルを求める場合と同様に、離散フーリエ変換によって、エネルギースペクトルが計算される。具体的には、式(5)で定義される離散フーリエ変換によって離散関数G(fx,fy)を計算し、離散関数G(fx,fy)を二乗することによってエネルギースペクトルが求められる。ここで、式(5)中のπは円周率、iは虚数単位である。また、Mはx方向の画素数であり、Nはy方向の画素数であり、lは−M/2以上M/2以下の整数であり、mは−N/2以上N/2以下の整数である。さらに、ΔfxおよびΔfyはそれぞれx方向およびy方向の空間周波数間隔であり、式(6)および式(7)で定義される。式(5)および式(6)中のΔxおよびΔyはそれぞれ、x軸方向、y軸方向における水平分解能である。なお、パターンが画像データである場合には、ΔxおよびΔyは、それぞれ1画素のx軸方向の長さおよびy軸方向の長さと等しい。すなわち、6400dpiの画像データとしてパターンを作成した場合には、Δx=Δy=4μmであり、12800dpiの画像データとしてパターンを作成した場合には、Δx=Δy=2μmである。
図9は、本発明の防眩フィルムを作製するために用いることができるパターンである画像データの一部を示す図であり、階調の二次元離散関数g(x,y)で表したものである。図9に示したパターンである画像データは2mm×2mmの大きさで、12800dpiで作成した。
図10は、図9に示した階調の二次元離散関数g(x,y)を離散フーリエ変換して得られたエネルギースペクトルG2(fx,fy)を白と黒のグラデーションで示した図である。図9に示されるパターンは、ドットをランダムに配置したものであるため、そのエネルギースペクトルは、図10に示されるように、原点を中心に対称となる。よって、パターンのエネルギースペクトルの極大値を示す空間周波数はエネルギースペクトルの原点を通る断面より求めることができる。図11は、図10に示したエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面を示す図である。これより図9に示したパターンは、空間周波数0.045μm-1に極大値を持つが、0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内には極大値を持たないことがわかる。
防眩フィルムを作製するためのパターンのエネルギースペクトルが0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内に極大値を持つ場合には、得られる防眩フィルムの微細凹凸表面が上記した特定の空間周波数分布を示さなくなるため、ギラツキの解消と十分な防眩性を兼備することができない。
エネルギースペクトルが0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内に極大値を持たないパターンは、たとえば図9に示されるパターンのように、20μm未満の平均ドット径(全ドットの直径の平均値)を有する多数のドットをランダムかつ均一に配置することにより作成することができる。ランダムに配置するドット径は1種類でもよいし、複数種類でもよい。また、このような多数のドットをランダムに配置して作成したパターンから、より効果的に空間周波数0.04μm-1以下の空間周波数成分を除去するために、0.04μm-1以下の空間周波数成分を除去するハイパスフィルターを通過させて得られたパターンを、防眩フィルム作製用のパターンとしてもよい。さらに、多数のドットをランダムに配置して作成したパターンから、より効果的に空間周波数0.04μm-1以下の空間周波数成分を除去するために、0.04μm-1以下の低空間周波数成分と特定の空間周波数以上の高空間周波数成分を除去するバンドパスフィルターを通過させて得られたパターンを、防眩フィルム作製用のパターンとしてもよい。
以上のようにして得られるパターンを用いて金型を作製する方法の詳細については後述する。
上記工程(B)は、エンボス法により、微細凹凸表面を有する防眩層を基材フィルム上に形成する工程である。エンボス法としては、光硬化型樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示され、なかでも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。UVエンボス法においては、基材フィルムの表面に光硬化型樹脂層を形成し、その光硬化型樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が光硬化型樹脂層表面に転写される。より具体的には、基材フィルム上に光硬化型樹脂を含む塗工液を塗工し、塗工した光硬化型樹脂を金型の凹凸面に密着させた状態で、基材フィルム側から紫外線等の光を照射して光硬化型樹脂を硬化させ、その後金型から、硬化後の光硬化型樹脂層が形成された基材フィルムを剥離することにより、金型の凹凸形状が硬化後の光硬化型樹脂層(防眩層)に転写された防眩フィルムが得られる。
UVエンボス法を用いる場合における光硬化型樹脂としては、紫外線により硬化する紫外線硬化型樹脂が好ましく用いられるが、紫外線硬化型樹脂に適宜選択された光開始剤を組み合わせて、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることも可能である。紫外線硬化型樹脂の種類は特に限定されず、市販の適宜のものを用いることができる。紫外線硬化型樹脂の好適な例は、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレートの1種または2種以上と、イルガキュアー907(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、イルガキュアー184(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、ルシリンTPO(BASF社製)などの光重合開始剤とを混合した樹脂組成物である。これらの紫外線硬化型樹脂に必要に応じて微粒子や溶媒などを添加し、上記塗工液が調製される。
<防眩フィルム製造用の金型の製造方法>
以下では、本発明の防眩フィルムの製造に用いる金型を製造する方法について説明する。本発明の防眩フィルムの製造に用いる金型の製造方法については、上述したパターンを用いた所定の表面形状が得られる方法であれば、特に制限されないが、微細凹凸表面を精度よく、かつ、再現性よく製造するために、〔1〕第1めっき工程と、〔2〕研磨工程と、〔3〕感光性樹脂膜形成工程と、〔4〕露光工程と、〔5〕現像工程と、〔6〕第1エッチング工程と、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と、〔8〕第2めっき工程とを基本的に含むことが好ましい。図12は、金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図12には、各工程での金型の断面を模式的に示している。以下、図12を参照しながら、上記各工程について詳細に説明する。
〔1〕第1めっき工程
本工程では、金型に用いる基材の表面に、銅めっきまたはニッケルめっきを施す。このように、金型用基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施すことにより、後の第2めっき工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を向上させることができる。これは、銅めっきまたはニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や鬆などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。これらの銅めっきまたはニッケルめっきの特性によって、後述する第2めっき工程においてクロムめっきを施したとしても、基材に存在していた微小な凹凸や鬆に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきまたはニッケルめっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減される。
第1めっき工程において用いられる銅またはニッケルとしては、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、またはニッケルを主体とする合金であってもよく、したがって、本明細書でいう「銅」は、銅および銅合金を含む意味であり、また「ニッケル」は、ニッケルおよびニッケル合金を含む意味である。銅めっきおよびニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行なっても無電解めっきで行なってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
銅めっきまたはニッケルめっきを施す際には、めっき層が余り薄いと、下地表面の影響が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コストなどに鑑み、500μm程度までとすることが好ましい。
金型用基材を構成する金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄などが挙げられる。さらに取扱いの利便性を考慮すると、軽量なアルミニウムを用いることが好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウムまたは鉄を主体とする合金であってもよい。
また、金型用基材の形状は、当該分野において従来採用されている適宜の形状であってよく、たとえば、平板状のほか、円柱状または円筒状のロールであってもよい。ロール状の基材を用いて金型を作製すれば、防眩フィルムを連続的なロール状で製造することができるという利点がある。
〔2〕研磨工程
続く研磨工程では、上述した第1めっき工程にて銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する。当該工程を経て、基材表面は、鏡面に近い状態に研磨されることが好ましい。これは、基材となる金属板や金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っており、銅めっきまたはニッケルめっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らないためである。すなわち、このような深い加工目などが残った表面に後述する工程を施したとしても、各工程を施した後に形成される凹凸よりも加工目などの凹凸の方が深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性があり、そのような金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。図12(a)には、平板状の金型用基材7が、第1めっき工程において銅めっきまたはニッケルめっきをその表面に施され(当該工程で形成した銅めっきまたはニッケルめっきの層については図示せず)、さらに研磨工程によって鏡面研磨された表面8を有するようにされた状態を模式的に示している。
銅めっきまたはニッケルめっきが施された基材表面を研磨する方法については特に制限されるものではなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。また、切削工具を用いて鏡面切削することによって、金型用基材表面7を鏡面としてもよい。その際の切削工具の材質や形状などは特に制限されるものではなく、超硬バイト、CBNバイト、セラミックバイト、ダイヤモンドバイトなどを使用することができるが、加工精度の観点からダイヤモンドバイトを用いることが好ましい。
研磨後の表面粗度は、JIS B 0601の規定に準拠した中心線平均粗さRaが0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的な金型表面の凹凸形状に研磨後の表面粗度の影響が残る可能性がある。また、中心線平均粗さRaの下限については特に制限されず、加工時間や加工コストなどを考慮して適宜決定される。
〔3〕感光性樹脂膜形成工程
続く感光性樹脂膜形成工程では、上述した研磨工程によって鏡面研磨を施した金型用基材7の研磨された表面8に、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液として塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜を形成する。図12(b)には、金型用基材7の研磨された表面8に感光性樹脂膜9が形成された状態を模式的に示している。
感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができる。感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては、たとえば、分子中にアクリル基またはメタアクリル基を有するアクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物等を用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としては、たとえば、フェノール樹脂系やノボラック樹脂系等を用いることができる。また、感光性樹脂には、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤等の各種添加剤を配合してもよい。
これらの感光性樹脂を金型用基材7の研磨された表面8に塗布する際には、良好な塗膜を形成するために、適当な溶媒に希釈して塗布することが好ましい。溶媒としては、セロソルブ系溶媒、プロピレングリコール系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、高極性溶媒等を使用することができる。
感光性樹脂溶液を塗布する方法としては、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、およびカーテン塗布等の公知の方法を用いることができる。塗布膜の厚さは乾燥後で1〜6μmの範囲とすることが好ましい。
〔4〕露光工程
続く露光工程では、上記エネルギースペクトルが0μm-1より大きく0.04μm-1以下の範囲内に極大値を持たないパターンを、上述した感光性樹脂膜形成工程で形成された感光性樹脂膜9上に露光する。露光工程に用いる光源は、塗布された感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、たとえば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、高圧水銀灯のh線(波長:405nm)、高圧水銀灯のi線(波長:365nm)、半導体レーザ(波長:830nm、532nm、488nm、405nm等)、YAGレーザ(波長:1064nm)、KrFエキシマーレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマーレーザ(波長:193nm)、F2エキシマーレーザ(波長:157nm)等を用いることができる。
金型の表面凹凸形状、ひいては防眩層の表面凹凸形状を精度良く形成するためには、露光工程において、上記パターンを感光性樹脂膜上に精密に制御された状態で露光することが好ましく、具体的には、コンピュータ上でパターンを画像データとして作成し、その画像データに基づいたパターンを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって描画することが好ましい。レーザ描画を行なうに際しては印刷版作成用のレーザ描画装置を使用することができる。このようなレーザ描画装置としては、たとえばLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)等が挙げられる。
図12(c)には、感光性樹脂膜9にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜をネガ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域10は露光によって樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、現像工程において露光されていない領域11が現像液によって溶解され、露光された領域10のみ基材表面上に残りマスクとなる。一方、感光性樹脂膜をポジ型の感光性樹脂で形成した場合には、露光された領域10は露光によって樹脂の結合が切断され、後述する現像液に対する溶解性が増加する。よって、現像工程において露光された領域10が現像液によって溶解され、露光されていない領域11のみ基材表面上に残りマスクとなる。
〔5〕現像工程
続く現像工程においては、感光性樹脂膜9にネガ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光されていない領域11は現像液によって溶解され、露光された領域10のみ金型用基材上に残存し、続く第1エッチング工程においてマスクとして作用する。一方、感光性樹脂膜9にポジ型の感光性樹脂を用いた場合には、露光された領域10のみ現像液によって溶解され、露光されていない領域11が金型用基材上に残存して、続く第1エッチング工程におけるマスクとして作用する。
現像工程に用いる現像液については従来公知のものを使用することができる。たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液;および、キシレン、トルエン等の有機溶剤等を挙げることができる。
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
図12(d)には、感光性樹脂膜9にネガ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行なった状態を模式的に示している。図12(c)において露光されていない領域11が現像液によって溶解され、露光された領域10のみ基材表面上に残りマスク12となる。図12(e)には、感光性樹脂膜9にポジ型の感光性樹脂を用いて、現像処理を行なった状態を模式的に示している。図12(c)において露光された領域10が現像液によって溶解され、露光されていない領域11のみ基材表面上に残りマスク12となる。
〔6〕第1エッチング工程
続く第1エッチング工程では、上述した現像工程後に金型用基材表面上に残存した感光性樹脂膜をマスクとして用いて、主にマスクの無い箇所の金型用基材をエッチングし、研磨されためっき面に凹凸を形成する。図13は、金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図13(a)には第1エッチング工程によって、主にマスクの無い箇所13の金型用基材7がエッチングされる状態を模式的に示している。マスク12の下部の金型用基材7は金型用基材表面からはエッチングされないが、エッチングの進行とともにマスクの無い箇所13からのエッチングが進行する。よって、マスク12とマスクの無い箇所13との境界付近では、マスク12の下部の金型用基材7もエッチングされる。このようなマスク12とマスクの無い箇所13との境界付近において、マスク12の下部の金型用基材7もエッチングされることをサイドエッチングと呼ぶ。
第1エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH34Cl2)等を用いて、金属表面を腐食させることによって行なわれるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した際の金型用基材に形成される凹形状は、下地金属の種類、感光性樹脂膜の種類およびエッチング手法等によって異なるため、一概にはいえないが、エッチング量が10μm以下である場合には、エッチング液に触れている金属表面から略等方的にエッチングされる。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材の厚みである。
第1エッチング工程におけるエッチング量は好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは2〜10μmである。エッチング量が1μm未満である場合には、金属表面に凹凸形状がほとんど形成されずに、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。また、エッチング量が50μmを超える場合には、金属表面に形成される凹凸形状の高低差が大きくなり、得られた金型を使用して作製した防眩フィルムを適用した画像表示装置において白ちゃけが生じる虞がある。傾斜角度が5°以下である面を95%以上含む微細凹凸表面を有する防眩フィルムを得るためには、第1エッチング工程におけるエッチング量は、2〜8μmであることがより好ましい。第1エッチング工程におけるエッチング処理は1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行なう場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が上記範囲内とされることが好ましい。
〔7〕感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程では、第1エッチング工程でマスクとして使用した残存する感光性樹脂膜を完全に溶解し除去する。感光性樹脂膜剥離工程では剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解する。剥離液としては、上述した現像液と同様のものを用いることができる。剥離液のpH、温度、濃度および浸漬時間等を変化させることによって、ネガ型の感光性樹脂膜を用いた場合には露光部の、ポジ型の感光性樹脂膜を用いた場合には非露光部の感光性樹脂膜を完全に溶解して除去する。感光性樹脂膜剥離工程における剥離方法についても特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の方法を用いることができる。
図13(b)は、感光性樹脂膜剥離工程によって、第1エッチング工程でマスク12として使用した感光性樹脂膜を完全に溶解し除去した状態を模式的に示している。感光性樹脂膜からなるマスク12を利用したエッチングによって、第1の表面凹凸形状15が金型用基材表面に形成されている。
〔8〕第2めっき工程
続いて、形成された凹凸面(第1の表面凹凸形状15)にクロムめっきを施すことによって、表面の凹凸形状を鈍らせる。図13(c)には、第1エッチング工程のエッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状15にクロムめっき層16を形成することにより、第1の表面凹凸形状15よりも凹凸が鈍った表面(クロムめっきの表面17)が形成されている状態が示されている。
クロムめっきとしては、平板やロールなどの表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与え得るクロムめっきを採用することが好ましい。このようなクロムめっきとしては特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行なわれ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3)と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
なお、第2めっき工程において、クロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。何故なら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、防眩フィルム上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
また、めっき後の表面研磨も好ましくない。すなわち、第2のめっき工程後に表面を研磨する工程を設けることなく、クロムめっきが施された凹凸面を、そのまま基材フィルム上の樹脂層表面に転写される金型の凹凸面として用いることが好ましい。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、また、形状の制御因子が増えるため、再現性のよい形状制御が困難になることなどの理由による。
このように、微細表面凹凸形状が形成された表面にクロムめっきを施すことにより、凹凸形状が鈍らせられるとともに、その表面硬度が高められた金型が得られる。この際の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、第1エッチング工程より得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、やはりめっき厚みである。クロムめっきの厚みが薄いと、クロムめっき加工前に得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなる上に、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまうため好ましくない。そこで、クロムめっきの厚みは1〜10μmの範囲内であるのが好ましく、3〜6μmの範囲内であるのがより好ましい。
当該第2めっき工程で形成されるクロムめっき層は、ビッカース硬度が800以上となるように形成されていることが好ましく、1000以上となるように形成されていることがより好ましい。クロムめっき層のビッカース硬度が800未満である場合には、金型使用時の耐久性が低下する上に、クロムめっきで硬度が低下することはめっき処理時にめっき浴組成、電解条件などに異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高いためである。
また、本発明の防眩フィルムを作製するための金型の製造方法においては、上述した〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と〔8〕第2めっき工程との間に、第1エッチング工程によって形成された凹凸面をエッチング処理によって鈍らせる第2エッチング工程を含むことが好ましい。第2エッチング工程では、感光性樹脂膜をマスクとして用いた第1エッチング工程によって形成された第1の表面凹凸形状15を、エッチング処理によって鈍らせる。この第2エッチング処理によって、第1エッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状15における表面傾斜が急峻な部分がなくなり、得られた金型を用いて製造された防眩フィルムの光学特性が好ましい方向へと変化する。図14には、第2エッチング処理によって、金型用基材7の第1の表面凹凸形状15が鈍化し、表面傾斜が急峻な部分が鈍らされ、緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状18が形成された状態が示されている。
第2エッチング工程のエッチング処理も、第1エッチング工程と同様に、通常、塩化第二鉄(FeCl3)液、塩化第二銅(CuCl2)液、アルカリエッチング液(Cu(NH34Cl2)などを用い、表面を腐食させることによって行なわれるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した後の凹凸の鈍り具合は、下地金属の種類、エッチング手法、および第1エッチング工程により得られた凹凸のサイズと深さなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合を制御する上で最も大きな因子は、エッチング量である。ここでいうエッチング量も、第1エッチング工程と同様に、エッチングにより削られる基材の厚みである。エッチング量が小さいと、第1エッチング工程により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、エッチング量が大きすぎると、凹凸形状がほとんどなくなってしまい、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、エッチング量は1〜50μmの範囲内とすることが好ましく、また、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含む微細凹凸表面を有する防眩フィルムを得るために、4〜20μmの範囲内とすることがより好ましい。第2エッチング工程におけるエッチング処理についても、第1エッチング工程と同様に、1回のエッチング処理によって行なってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行なってもよい。エッチング処理を2回以上に分けて行なう場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が上記範囲内とされることが好ましい。
<防眩性偏光板>
本発明の防眩フィルムは、優れた防眩性を示し、良好なコントラストを発現しながら、「白ちゃけ」および「ギラツキ」の発生による視認性の低下を効果的に防止できるため、画像表示装置に装着したときに視認性に優れたものとなる。画像表示装置が液晶ディスプレイである場合には、この防眩フィルムを偏光板に適用することができる。すなわち、偏光板は一般に、ヨウ素または二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された形態のものが多いが、その一方の保護フィルムを本発明の防眩フィルムで構成する。偏光フィルムと、本発明の防眩フィルムとを、その防眩フィルムの基材フィルム側で貼り合わせることにより、防眩性偏光板とすることができる。この場合、偏光フィルムの他方の面は、何も積層されていない状態でもよいし、保護フィルムまたは他の光学フィルムが積層されていてもよいし、また液晶セルに貼合するための粘着剤層が積層されていてもよい。また、偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された偏光板の当該保護フィルム上に、本発明の防眩フィルムをその基材フィルム側で貼合して、防眩性偏光板とすることもできる。さらに、偏光フィルムの少なくとも片面に保護フィルムが貼合された偏光板において、当該保護フィルムとして上記基材フィルムを偏光フィルムに貼合した後、この基材フィルム上に防眩層を形成することにより、防眩性偏光板とすることもできる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下の例における防眩フィルムおよび防眩フィルム製造用のパターンの評価方法は、次のとおりである。
〔1〕防眩フィルムの表面形状の測定
三次元顕微鏡「PLμ2300」(Sensofar社製)を用いて、防眩フィルムの表面形状を測定した。サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は10倍とした。水平分解能ΔxおよびΔyはともに1.66μmであり、測定面積は850μm×850μmであった。
(標高のエネルギースペクトルの比H1 2/H2 2およびH3 2/H2 2
上で得られた測定データから、防眩フィルムの微細凹凸表面の標高を二次元関数h(x,y)として求め、得られた二次元関数h(x,y)を離散フーリエ変換して二次元関数H(fx,fy)を求めた。二次元関数H(fx,fy)を二乗してエネルギースペクトルの二次元関数H2(fx,fy)を計算し、fx=0の断面曲線であるH2(0,fy)より、空間周波数0.01μm-1におけるエネルギースペクトルH1 2および空間周波数0.04μm-1におけるエネルギースペクトルH2 2を求め、エネルギースペクトルの比H1 2/H2 2を計算した。また、空間周波数0.1μm-1におけるエネルギースペクトルH3 2を求め、エネルギースペクトルの比H3 2/H2 2についても計算した。
(微細凹凸表面の傾斜角度)
上で得られた測定データをもとに、前述のアルゴリズムに基づいて計算し、凹凸面の傾斜角度のヒストグラムを作成し、そこから傾斜角度毎の分布を求め、傾斜角度が5°以下である面の割合を計算した。
〔2〕防眩フィルムの光学特性の測定
(ヘイズ)
防眩フィルムの全ヘイズは、防眩フィルムを光学的に透明な粘着剤を用いて防眩層形成面とは反対側の面でガラス基板に貼合し、該ガラス基板に貼合された防眩フィルムについて、JIS K 7136に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメータ「HM−150」型を用いて測定した。次に、防眩層の凹凸表面に、ヘイズがほぼ0であるトリアセチルセルロースフィルムをグリセリンを用いて貼合し、再度JIS K 7136に準拠してヘイズを測定し、これを内部ヘイズとした。表面ヘイズは、上記式(I)に基づいて算出した。
(透過鮮明度)
JIS K 7105に準拠したスガ試験機(株)製の写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの透過鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて防眩層の微細な凹凸形状面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。この状態でガラス側から光を入射させ、測定を行なった。ここでの測定値は、暗部と明部との幅がそれぞれ0.125mm、0.5mm、1.0mmおよび2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の透過鮮明度の最大値は400%となる。
〔3〕防眩フィルムの透湿度の測定
防眩フィルムの透湿度は、JIS Z0208に規定される方法で、温度40℃、相対湿度90%の条件下で測定した。
〔4〕防眩フィルムの防眩性能の評価
(映り込み、白ちゃけの目視評価)
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無、白ちゃけの程度を目視で評価した。映り込みおよび白ちゃけは、それぞれ1から3の3段階で次の基準により評価した。
映り込み 1:映り込みが観察されない、
2:映り込みが少し観察される、
3:映り込みが明瞭に観察される。
白ちゃけ 1:白ちゃけが観察されない、
2:白ちゃけが少し観察される、
3:白ちゃけが明瞭に観察される。
(ギラツキおよび色ムラの評価)
ギラツキおよび色ムラは次の手順で評価した。まず、市販の液晶テレビ(シャープ(株)製の「LC−32GH3」)から背面側および表示面側の偏光板を剥離し、それらオリジナルの偏光板の代わりに、背面側に住友化学(株)製の偏光板「スミカラン SRD341E」を、表示面側には富士フィルム(株)製のTACフィルム「フジタック」、ポリビニルアルコール系偏光子(偏光フィルム)、防眩フィルム(本発明に係るものと比較例としてのもの)がこの順で積層された偏光板を、それぞれの吸収軸がオリジナルの偏光板の吸収軸と一致するように粘着剤を介して貼合した。この状態で、サンプルから約30cm離れた位置から、目視観察することにより、ギラツキの程度および色ムラの程度を、それぞれ1から3の3段階で次の基準により評価した。
ギラツキ 1:ギラツキが観察されない、
2:ギラツキが少し観察される、
3:ギラツキが明瞭に観察される。
色ムラ 1:色ムラが観察されない、
2:色ムラが少し観察される、
3:色ムラが明瞭に観察される。
〔5〕防眩フィルム製造用のパターンの評価
作成したパターンデータの階調を二次元の離散関数g(x,y)で表した。離散関数g(x,y)の水平分解能ΔxおよびΔyはともに2μmとした。得られた二次元関数g(x,y)を離散フーリエ変換して、二次元関数G(fx,fy)を求めた。二次元関数G(fx,fy)を二乗してエネルギースペクトルの二次元関数G2(fx,fy)を計算し、fx=0の断面曲線であるG2(0,fy)より、0μm-1より大きく0.04μm-1以下の空間周波数範囲内における極大値の有無を評価した。
<実施例1>
(防眩フィルム製造用の金型の作製)
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面に感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。ついで、図15に示される画像データからなるパターンの複数を連続して繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光し、現像した。レーザ光による露光、および現像は「Laser Stream FX」((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行なった。感光性樹脂膜にはポジ型の感光性樹脂を使用した。図15に示されるパターンは、ドット径が12μmであるドットを多数ランダムに配置したパターンに対して、空間周波数が0.035μm-1以下の低空間周波数成分と0.135μm-1以上の高空間周波数成分とを除去するバンドパスフィルターを適用して作成したものである。
その後、塩化第二銅液で第1のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は5μmとなるように設定した。第1のエッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度、塩化第二銅液で第2のエッチング処理を行なった。その際のエッチング量は10μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行ない、金型Aを作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μmとなるように設定した。
(防眩層の形成)
以下の各成分が酢酸エチルに溶解された固形分濃度60%の樹脂組成物であって、硬化後に1.53の屈折率を示す紫外線硬化性樹脂組成物Aを入手した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60重量部、
多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物) 40重量部、
レベリング剤 あり。
この紫外線硬化性樹脂組成物Aを、厚み38μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(内部ヘイズ3.1%)上に、乾燥後の塗布厚みが6μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に得られた金型Aの凹凸面に、紫外線硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でPETフィルム側より、強度20mW/cm2の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2となるように照射して、紫外線硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、PETフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂(防眩層)とポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層体からなる、透明な防眩フィルムAを作製した。
<実施例2>
第2のエッチング処理のエッチング量を8μmとなるように設定したこと以外は実施例1と同様にして金型Bを作製し、金型Bを使用したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムBを作製した。
<実施例3>
第2のエッチング処理のエッチング量を12μmとなるように設定したこと以外は実施例1と同様にして金型Cを作製し、金型Cを使用したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムCを作製した。
<実施例4>
紫外線硬化性樹脂組成物Aに、平均粒径が8μmで屈折率が1.565のメタクリル酸メチル/スチレン共重合体樹脂ビーズを、上記紫外線硬化性樹脂100重量部あたり15重量部添加した後、固形分(樹脂ビーズを含む)の濃度が60%となるように酢酸エチルを添加して紫外線硬化性樹脂組成物Bを調製した。紫外線硬化性樹脂組成物Bを使用し、乾燥後の塗布厚みが10μmとなるように塗布したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムDを作製した。
<実施例5>
露光工程において、図17に示される画像データからなるパターンの複数を連続して繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光し、第2のエッチング処理のエッチング量を12μmとなるように設定したこと以外は実施例1と同様にして金型Eを作製した。得られた金型Eを使用したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムEを作製した。図17に示されるパターンは、ドット径が16μmであるドットを多数ランダムに配置して作成したものである。
<実施例6>
第1のエッチング処理のエッチング量を3μmとなるように設定し、第2のエッチング処理のエッチング量を10μmとなるように設定したこと以外は実施例5と同様にして金型Fを作製した。得られた金型Fを使用したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムFを作製した。
<比較例1>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(内部ヘイズ0%)を使用したこと以外は実施例1と同様にして防眩フィルムGを作製した。
<比較例2>
直径300mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面を鏡面研磨し、研磨されたアルミ面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、ジルコニアビーズTZ−SX−17(東ソー(株)製、平均粒径:20μm)を、ブラスト圧力0.1MPa(ゲージ圧)、ビーズ使用量8g/cm2(ロールの表面積1cm2あたりの使用量)でブラストし、表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つきアルミロールに対し、無電解ニッケルめっき加工を行ない、金型Dを作製した。このとき、無電解ニッケルめっき厚みが10μmとなるように設定した。得られた金型Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防眩フィルムHを作製した。
得られた防眩フィルムA〜Hについての上記〔1〕〜〔4〕の測定・評価結果を表1にまとめた。また、図16、図18にそれぞれ、金型A〜C、金型E〜Fの作製に使用したパターンより得られたエネルギースペクトルG2(fx,fy)のfx=0における断面を示した。図16および図18より、これらのパターンのエネルギースペクトルは、空間周波数が0μm-1より大きく0.04μm-1以下の空間周波数範囲に極大値を示さないことがわかる。
表1に示す結果から、本発明の要件を全て満たす防眩フィルムA〜Fは、ギラツキが全く発生せず、十分な防眩性を示し、白ちゃけも発生しなかった。また、ヘイズも低いため、画像表示装置に配置した際にもコントラストの低下を引き起こすことが無い。さらに、透湿度も低く、高い耐湿性を有している。ただし、防眩フィルムA、C、EおよびFにおいては、内部ヘイズが3.1%と低く、透過鮮明度が高いために、画像表示装置に配置した際にわずかに色ムラが観察された。一方、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いなかった防眩フィルムGは優れた防眩性能を示したが、透湿度が高く、耐湿性に劣っていた。また、所定のパターンを用いずに作成した防眩フィルムHは、エネルギースペクトルの比H1 2/H2 2が本発明の要件を満たさないため、ギラツキが発生していた。
1 防眩フィルム、2 微細凹凸表面を構成する凹凸、3 防眩フィルムの投影面、5 防眩フィルムの主法線方向、6 凹凸を加味した局所的な法線、6a,6b,6c,6d ポリゴン面の法線ベクトル、ψ 表面傾斜角度、7 金型用基材、8 研磨工程によって研磨された基材の表面、9 感光性樹脂膜、10 露光工程において露光された感光性樹脂膜、11 露光工程において露光されない感光性樹脂膜、12 マスク、13 マスクの無い箇所、15 第1エッチング工程後の基材表面(第1の表面凹凸形状)、16 クロムめっき層、17 クロムめっきの表面、18 第2エッチング工程後の基材表面(第2の表面凹凸形状)、101 基材フィルム、102 防眩層、103 微細凹凸表面。

Claims (5)

  1. 基材フィルムと、前記基材フィルム上に積層される凹凸表面を有する防眩層とを備える防眩フィルムであって、
    前記基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレートから構成され、
    空間周波数0.01μm-1における前記凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH1 2と、空間周波数0.04μm-1における前記凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH2 2との比H1 2/H2 2が1〜20の範囲内であり、
    空間周波数0.1μm-1における前記凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH3 2と、空間周波数0.04μm-1における前記凹凸表面の標高のエネルギースペクトルH2 2との比H3 2/H2 2が0.1以下であり、かつ、
    前記凹凸表面は、傾斜角度が5°以下である面を95%以上含む、防眩フィルム。
  2. 前記基材フィルムは、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムであり、その厚みが20μm以上100μm以下である、請求項1に記載の防眩フィルム。
  3. 透過鮮明度が300%以下である請求項1または2に記載の防眩フィルム。
  4. 表面ヘイズが0.5%以上10%以下であり、内部ヘイズが5%以上25%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の防眩フィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の防眩フィルムと、前記基材フィルムにおける前記防眩層とは反対側の面に積層される偏光フィルムとを備える防眩性偏光板。
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