JP2015152660A - 防眩フィルム - Google Patents

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勉 古谷
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Abstract

【課題】低ヘイズであっても広い観察角度において優れた防眩性を有し、画像表示装置に配置したとき、白ちゃけ及びギラツキの発生を十分抑制し得る防眩フィルムを提供する。
【解決手段】透明支持体と、その上に形成された微細な表面凹凸形状を有する防眩層とを備え、全ヘイズが0.1%以上3%以下、表面ヘイズが0.1%以上2%以下であり、表面凹凸形状の粗さ曲線のクルトシスRkuが4.9以下であり、表面凹凸形状の標高と防眩層の屈折率から計算される複素振幅のパワースペクトルの、特定の2つの空間周波数における強度比がそれぞれ所定の範囲内である防眩フィルムが提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は、防眩性に優れた防眩(アンチグレア)フィルムに関する。
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置は、その表示面に外光が映り込むことによる視認性の悪化を避けるために、当該表示面に防眩フィルムが配置されている。
防眩フィルムとしては、表面凹凸形状を備えた透明フィルムが主として検討されている。かかる防眩フィルムは、表面凹凸形状により外光を散乱反射させること(外光散乱光)で映り込みを低減することにより防眩性を発現する。しかしながら、外光散乱光が強い場合には、画像表示装置の表示面全体が白っぽくなったり、表示が濁った色になったりする、いわゆる「白ちゃけ」が発生することがある。また、画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸とが干渉して、輝度分布が発生して見えにくくなる、いわゆる「ギラツキ」も発生することがある。以上のことから、防眩フィルムには、優れた防眩性を確保しつつ、この「白ちゃけ」や「ギラツキ」の発生を十分防止することが要望されている。
かかる防眩フィルムとして、例えば特許文献1には、高精細な画像表示装置に配置した際にもギラツキが発生せず、白ちゃけの発生も十分防止された防眩フィルムとして、透明基材上に微細な表面凹凸形状が形成されており、該表面凹凸形状の任意の断面曲線における平均長さPSmが12μm以下、該断面曲線における算術平均高さPaと平均長さPSmの比Pa/PSmが0.005以上0.012以下、該表面凹凸形状が傾斜角度2°以下である面の割合が50%以下、該傾斜角度6°以下である面の割合が90%以上である防眩フィルムが開示されている。
特許文献1に開示された防眩フィルムは、任意の断面曲線における平均長さPSmを非常に小さくすることで、ギラツキを発生させやすくする50μm付近の周期を持つ表面凹凸形状をなくすことにより、当該ギラツキを効果的に抑制することができる。しかしながら、特許文献1に開示された防眩フィルムはヘイズをより小さくしようとすると(低ヘイズにしようとすると)、この防眩フィルムを配置した画像表示装置の表示面を斜めから観察したときの防眩性が低下する場合があった。したがって、特許文献1に開示された防眩フィルムは、広い観察角度における防眩性の点では改良の余地が残されていた。
特開2007−187952号公報
本発明は、低ヘイズであっても広い観察角度において優れた防眩性を有し、画像表示装置に配置したときに、白ちゃけ及びギラツキの発生を十分に抑制し得る防眩フィルムを提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、透明支持体と、その上に形成された微細な表面凹凸形状を有する防眩層とを備える防眩フィルムであって、
全ヘイズが0.1%以上3%以下であり、
表面ヘイズが0.1%以上2%以下であり、
前記表面凹凸形状は、その粗さ曲線のクルトシスRkuが4.9以下であり、
下記パワースペクトル算出方法により求められる複素振幅のパワースペクトルが、以下の(1)〜(3)の条件をいずれも満たすことを特徴とする防眩フィルムを提供する。
(1)パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度H(0.002)と、パワースペクトルの空間周波数0.01μm−1における強度H(0.01)との比H(0.01)/H(0.002)が0.02以上0.6以下であること;
(2)パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度H(0.002)と、パワースペクトルの空間周波数0.02μm−1における強度H(0.02)との比H(0.02)/H(0.002)が0.005以上0.05以下であること;
(3)パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度H(0.002)と、パワースペクトルの空間周波数0.04μm−1における強度H(0.04)との比H(0.04)/H(0.002)が0.0005以上0.01以下であること。
<パワースペクトル算出方法>
(A)前記表面凹凸形状の標高の平均から仮想的な平面である平均面を定める;
(B)前記表面凹凸形状の標高が最も低い点を含み、前記平均面に平行する仮想的な平面である最低標高面と、前記表面凹凸形状の標高が最も高い点を含み、前記平均面に平行する仮想的な平面である最高標高面とを定める;
(C)前記最低標高面に垂直な主法線方向から入射し、前記最高標高面から出射する波長550nmの平面波について前記表面凹凸形状の標高と防眩層の屈折率から前記最高標高面における複素振幅を計算したときの該複素振幅のパワースペクトルを求める。
さらに本発明の防眩フィルムにおいては、
暗部と明部の幅がそれぞれ、0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである5種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度の和Tcが375%以上であり、
暗部と明部の幅がそれぞれ、0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて光の入射角45°で測定される反射鮮明度の和Rc(45)が180%以下であり、
暗部と明部の幅がそれぞれ、0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて光の入射角60°で測定される反射鮮明度の和Rc(60)が240%以下であることが好ましい。
本発明によれば、低ヘイズであっても広い観察角度において十分な防眩性を有し、画像表示装置に配置したときに、白ちゃけ及びギラツキの発生が十分抑制された防眩フィルムを提供することができる。
防眩フィルムの表面凹凸形状の標高を簡単に説明するための図である。 防眩フィルムの表面凹凸形状の標高と座標(x,y)の関係を簡単に説明するための図である。 防眩フィルムの表面凹凸形状の標高h(x,y)と標高基準面と最高標高面の関係を簡単に説明するための図である。 防眩フィルムの表面凹凸形状の標高が離散的に得られる状態を示す模式図である。 離散関数として得られた表面凹凸形状の標高から計算される複素振幅の二次元パワースペクトルから一次元パワースペクトルを計算する状態を示す模式図である。 防眩フィルムの表面凹凸形状の標高から計算された複素振幅の一次元パワースペクトルH(f)を空間周波数fに対して示した図である。 金型の製造方法(前半部分)の好ましい一例を模式的に示す図である。 金型の製造方法(後半部分)の好ましい一例を模式的に示す図である。 本発明の防眩フィルムの製造方法に用いられる製造装置の好ましい一例を模式的に示す図である。 本発明の防眩フィルムの製造方法において、好適な予備硬化工程を模式的に示す図である。 ギラツキ評価のためのユニットセルを模式的に示す図である。 ギラツキ評価装置を模式的に示す図である。 実施例1で用いたパターンAの一部を表す図である。 実施例2で用いたパターンBの一部を表す図である。 実施例3で用いたパターンCの一部を表す図である。 比較例1で用いたパターンDの一部を表す図である。 比較例2で用いたパターンEの一部を表す図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を必要に応じて図面を参照して説明するが、当該図面に示す寸法などは、見やすさのために任意になっている。
本発明の防眩フィルムは表面凹凸形状の粗さ曲線のクルトシスRkuが4.9以下であり、前記パワースペクトル算出方法により求められるパワースペクトルの空間周波数0.002μm−1の強度と、空間周波数0.01μm−1、0.02μm−1及び0.04μm−1における強度との比のそれぞれが前記の範囲であることを特徴とする。
まずは、本発明の防眩フィルムに関し、粗さ曲線のクルトシスRku及び複素振幅のパワースペクトルの求め方について説明する。
[粗さ曲線のクルトシスRku]
本発明の防眩フィルムは、防眩層の表面凹凸形状が、JIS B 0601の規定に準拠した方法により求められる粗さ曲線のクルトシスRkuが4.9以下である。当該クルトシスRkuが大きいとは、表面凹凸形状の凹凸部が尖っているものが多いこと、すなわち、当該表面凹凸形状が、急峻な傾斜角を有する領域を多く有していることを意味している。当該クルトシスRkuが大きい防眩フィルムを用いて、画像表示装置を得ると、かかる画像表示装置は白ちゃけが発生するものとなる。本発明者は、画像表示装置に防眩フィルムを配置したときの白ちゃけを効果的に抑制するためには、粗さ曲線のクルトシスRkuを4.9以下とした防眩フィルムが有効であることを見出した。一層白ちゃけを抑制した画像表示装置を得るためには、防眩フィルムの粗さ曲線のクルトシスRkuは好ましくは4.5以下であり、より好ましくは4以下である。
粗さ曲線のクルトシスRkuを測定するときの測定条件(カットオフ長,評価長さ)は、JIS B0633により求められる表面粗さRaにより適宜設定できる。すなわち、表面粗さRaが0.006μm超過0.02μm以下の場合には、カットオフ長0.08mm、評価長さ0.4mmであり、表面粗さRaが0.02μm超過0.1μm以下の場合には、カットオフ長0.25mm、評価長さ1.25mmであり、表面粗さRaが0.1μm超過2μm以下の場合には、カットオフ長0.8mmであり、評価長さ4mmであり、表面粗さRaが2μm超過10μm以下の場合には、カットオフ長2.5mm、評価長さ12.5mmである。
前記表面粗さRaはJIS B0601に準拠した方法によって測定し、求めることができる。
[複素振幅のパワースペクトル]
防眩フィルムの表面凹凸形状の標高と防眩層の屈折率から計算される複素振幅のパワースペクトルについて説明する。図1は、本発明の防眩フィルムの表面を模式的に示す断面図である。図1に示されるように、本発明の防眩フィルム1は、透明支持体101とその上に形成された防眩層102とを有し、防眩層102は、透明支持体101と反対側に微細な凹凸2を有する表面凹凸形状を備える。
ここで、本発明でいう「表面凹凸形状の標高」とは、表面凹凸形状上の任意の点Pと、前記最低標高面との、本発明の防眩フィルムの主法線方向5(前記最低標高面における法線方向)における直線距離を意味する。仮想的に定められる最低標高面の任意の点の標高は0μmであり、表面凹凸形状上の任意の点の標高を求めるときの基準であり、図1においては、最低標高面103で示している。
実際には、防眩フィルムは図2に模式的に示したように、二次元平面上に微細な表面凹凸形状を有する防眩層を備えている。よって、表面凹凸形状の標高は図2に示すように、フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示したときには、座標(x,y)の二次元関数h(x,y)と表すことができる。
表面凹凸形状の標高は、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により測定される表面形状の三次元情報から求めることができる。測定機に要求される水平分解能は5μm以下が好ましく、2μm以下がさらに好ましい。また、当該測定機に要求される垂直分解能は0.1μm以下が好ましく、0.01μm以下がさらに好ましい。この測定に好適な非接触三次元表面形状・粗さ測定機としては、New View 5000シリーズ(Zygo Corporation社製)、三次元顕微鏡PLμ2300(Sensofar社製)などを挙げることができる。測定面積は、標高のパワースペクトルの分解能が0.002μm−1以下である必要があるため、少なくとも500μm×500μmとすることが好ましく、750μm×750μm以上とすることがより好ましい。
図3に、表面凹凸形状の標高h(x,y)と、最低標高面103及び最高標高面104との関係を模式的に示した。ここで、最高標高面104の標高をhmax(μm)とする。なお、この図3は本防眩フィルムの最も標高が高い点と、最も標高が低い点とを含むような断面の構成を示すものである。
座標(x,y)における標高基準面103と最高標高面104との間の光路長d(x,y)は、標高に関する二次元関数h(x,y)を用いて式(1)で表すことができる。
Figure 2015152660
ここでnAGは防眩層の屈折率であり、nairは空気の屈折率である。そして、空気の屈折率nairを1で近似すると、式(1)は式(2)のように表すことができる。
Figure 2015152660
次に、主法線方向5(最低標高面に垂直な主法線方向)に伝播する単一波長λの平面波が、透明支持体側(最低標高面103側)から入射し、防眩層側(最高標高面104側)に出射する場合における、該平面波の複素振幅について説明する。複素振幅とは、波動の振幅を複素表示した場合において、時間の要素を含まない部分をいう。単一波長λの平面波の振幅は、一般的に以下の式(3)で複素表示することができる。
Figure 2015152660
ここで式(3)中のAは平面波の最大振幅、πは円周率、iは虚数単位、zはz軸方向(主法線方向5)の座標(原点からの光路長)、ωは角周波数、tは時間、φは初期の位相である。
式(3)において時間に依存しない項が複素振幅である。したがって、式(3)で表される平面波についての最高標高面104の座標(x,y)における複素振幅ψ(x,y)は、式(3)の時間に依存しない項において、zに上記光路長d(x,y)を代入した以下の式(4)で表すことができる。
Figure 2015152660
さらに、式(4)において平面波の最大振幅A及び初期の位相φ0は座標(x,y)に依存せず、座標(x,y)での表面凹凸形状の分布を規定しようとする本発明においては定数となるため、以下ではA=1及びφ=0とする。また、上記式(2)を代入すると、複素振幅ψ(x,y)は、以下の式(5)で表すことができる。なお、本発明においてはλ=550nmを基準とする。
Figure 2015152660
次に、複素振幅のパワースペクトルを求める方法について説明する。まず、式(5)で表される二次元関数ψ(x,y)より、式(6)で定義される二次元フーリエ変換によって二次元関数Ψ(f,f)を求める。
Figure 2015152660
ここでf及びfは、それぞれx方向及びy方向の周波数であり、長さの逆数の次元を持つ。得られた二次元関数Ψ(f,f)の絶対値を二乗することによって、二次元パワースペクトルH(f,f)を式(7)により求めることができる。
Figure 2015152660
この二次元パワースペクトルH(f,f)は、防眩フィルムの表面凹凸形状の標高から計算される複素振幅の空間周波数分布を表している。防眩フィルムは等方的であるため、複素振幅の二次元パワースペクトルを表す二次元関数H(f,f)は、原点(0,0)からの距離fのみに依存する一次元関数H(f)で表すことができる。次に、二次元関数H(f,f)から一次元関数H(f)を求める方法を示す。まず、複素振幅の二次元パワースペクトルである二次元関数H(f,f)を式(8)に基づいて極座標で表示する。
Figure 2015152660
ここで、θはフーリエ空間中の偏角である。一次元関数H(f)は、極座標表示した二次元関数H(fcosθ,fsinθ)の回転平均を式(9)に基づき計算することにより求めることができる。複素振幅の二次元パワースペクトルである二次元関数H(f,f)の回転平均から求められる一次元関数H(f)を、以下では一次元パワースペクトルH(f)ともいう。
Figure 2015152660
本発明の防眩フィルムは、表面凹凸形状の標高から計算される複素振幅の一次元パワースペクトルH(f)の空間周波数0.002μm−1における強度H(0.002)と空間周波数0.01μm−1における強度H(0.01)との比H(0.01)/H(0.002)、強度H(0.002)と空間周波数0.02μm−1における強度H(0.02)との比H(0.02)/H(0.002)、及び強度H(0.002)と空間周波数0.04μm−1における強度H(0.04)との比H(0.04)/H(0.002)とがいずれも特定の範囲内であることを特徴とするものである。
以下、防眩フィルムが有する表面凹凸形状の標高から計算される複素振幅の二次元パワースペクトルを求める方法を、さらに具体的に説明する。上記の共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡などによって実際に測定される表面形状の三次元情報は、一般的に離散的な値、すなわち、多数の測定点に対応する標高として得られる。図4は、標高を表す関数h(x,y)が離散的に得られる状態を示す模式図である。図4に示すように、フィルム面内の直交座標を(x,y)で表示し、フィルム投影面3上に、x軸方向にΔx毎に分割した線と、y軸方向にΔy毎に分割した線とを破線で示すと、実際の測定では、表面凹凸形状の標高はフィルム投影面3上の各破線で分割された面積Δx×Δy毎の離散的な標高値として得られる。
得られる標高値の数は、測定範囲と、Δx及びΔyによって決まり、図4に示すようにx軸方向の測定範囲をX=MΔxとし、y軸方向の測定範囲をY=NΔyとすると、得られる標高値の数はM×N個である。
図4に示すように、フィルム投影面3上の着目点Aの座標を(mΔx,nΔy)[ここで、mは0以上M−1以下であり、nは0以上N−1以下である]とすると、着目点Aに対応するフィルム面上の点Pの標高はh(mΔx,nΔy)と表すことができる。
ここで、測定間隔Δx及びΔyは、測定機器の水平分解能に依存し、精度良く表面凹凸形状を評価するためには、Δx及びΔyはともに、5μm以下であることが好ましく、2μm以下であることがより好ましい。また、測定範囲X及びYは上述したとおり、ともに500μm以上が好ましく、750μm以上がより好ましい。
このように実際の測定では、表面凹凸形状の標高を表す関数は、M×N個の値を持つ離散関数h(x,y)として得られる。よって、表面凹凸形状の二次元関数h(x,y)から式(5)で求められる複素振幅ψ(x,y)も離散関数として得られ、この複素振幅ψ(x,y)の二次元フーリエ変換によって求められる二次元関数Ψ(f,f)も、式(6)を離散的に計算した離散フーリエ変換によって式(10)のように離散関数として求められる。
Figure 2015152660
ここで、式(10)中のjは−M/2以上M/2以下の整数であり、kは−N/2以上N/2以下の整数である。また、Δf及びΔfはそれぞれ、x方向及びy方向の周波数間隔であり、式(11)及び式(12)により定義される。
Figure 2015152660
Figure 2015152660
二次元パワースペクトルH(f,f)は、式(10)により求められた離散関数Ψ(f,f)の絶対値を二乗することによって式(13)に示すように求められる。
Figure 2015152660
離散関数として得られた二次元パワースペクトルH(f,f)も防眩フィルムが有する表面凹凸形状の標高から計算される複素振幅の空間周波数分布を表している。また、防眩フィルムは等方的であるため、複素振幅の二次元パワースペクトルを表す二次元離散関数H(f,f)も原点(0,0)からの距離fのみに依存する一次元離散関数H(f)で表すことができる。二次元離散関数H(f,f)から一次元離散関数H(f)を求める場合も式(9)と同様に回転平均を計算すればよい。二次元離散関数H(f,f)の離散的な回転平均は式(14)により計算できる。前記パワースペクトル算出方法は、この一次元離散関数H(f)から表される一次元パワースペクトルを算出するものである。
Figure 2015152660
ここで、M≧Nの場合、lは0以上N/2以下の整数であり、M<Nの場合、lは0以上M/2以下の整数である。Δfは、原点からの距離の間隔であり、Δf=(Δf+Δf)/2とした。またΘ(x)は、式(15)で定義されるヘヴィサイド関数である。fjkは、(j,k)における原点からの距離であり、式(16)により計算される。
Figure 2015152660
Figure 2015152660
式(14)に示す計算について図5を用いて説明する。関数Θ(fjk−(l−1/2)Δf)は、fjkが(l−1/2)Δf未満のときは0で、(l−1/2)Δf以上のときは1であり、関数Θ(fjk−(l+1/2)Δf)は、fjkが(l+1/2)Δf未満のときは0で、(l+1/2)Δf以上のときは1であることから、式(14)のΘ(fjk−(l−1/2)Δf)−Θ(fjk−(l+1/2)Δf)は、fjkが(l−1/2)Δf以上(l−1/2)Δf未満のときのみ1となり、それ以外の場合には0となる。ここでfjkは周波数空間において、原点O(f=0,f=0)からの距離であるため、式(14)の分母は原点Oからの距離fjkが、(l−1/2)Δf以上(l+1/2)Δf未満に位置する全ての点(図5中の黒丸の点)の個数を計算していることとなる。また、式(14)の分子は原点Oからの距離fjkが、(l−1/2)Δf以上(l+1/2)Δf未満に位置する全ての点のH(f,f)の合計値(図5中の黒丸の点におけるH(f,f)の合計値)を計算していることとなる。
一般的に、前記した方法によって求められる一次元パワースペクトルは、測定における雑音を含んでいる。ここで一次元パワースペクトルを求めるのに際して、この雑音の影響を除くためには、防眩フィルム上の複数箇所の表面凹凸形状の標高を測定し、それぞれの表面凹凸形状の標高から求められる一次元パワースペクトルの平均値を一次元パワースペクトルH(f)として用いることが好ましい。防眩フィルム上の表面凹凸形状の標高を測定する箇所の数は3箇所以上が好ましく、より好ましくは5箇所以上である。
図6に、このようにして得られた表面凹凸形状の標高から計算される複素振幅の一次元パワースペクトルのH(f)を示す。図6の一次元パワースペクトルH(f)は、防眩フィルム上の5箇所の異なる箇所の表面凹凸形状の標高から求められた一次元パワースペクトルを平均したものである。
本発明の防眩フィルムは、表面凹凸形状の標高から計算される複素振幅の一次元パワースペクトルH(f)の空間周波数0.002μm−1における強度H(0.002)と空間周波数0.01μm−1における強度H(0.01)との比H(0.01)/H(0.002)が0.02以上0.6以下であり、強度H(0.002)と空間周波数0.02μm−1における強度H(0.02)との比H(0.02)/H(0.002)が0.005以上0.05以下であり、強度H(0.002)と空間周波数0.04μm−1における強度H(0.04)との比H(0.04)/H(0.002)が0.0005以上0.01以下であることを特徴とする。ここで一次元パワースペクトルH(f)は、離散関数として得られるため、特定の空間周波数fにおける強度H(f)を求めるには、式(17)に示すように内挿して計算すればよい。
Figure 2015152660
本発明の防眩フィルムは、前記の特定空間周波数における強度比をそれぞれ所定の範囲にすることで、後述のヘイズ及び反射率比との相乗効果により、白ちゃけ及びギラツキの発生を良好に防止しつつ、優れた防眩性を発現する。かかる効果をより有効に発現するためには、比H(0.01)/H(0.002)は、0.02以上0.6以下が好ましく、0.03以上0.3以下がさらに好ましい。同様に、比H(0.02)/H(0.002)は、0.005以上0.05以下が好ましく、0.007以上0.04以下がさらに好ましく、また比H(0.04)/H(0.002)は、0.0005以上0.01以下が好ましく、0.001以上0.005以下がさらに好ましい。
比H(0.01)/H(0.002)が前記範囲を下回る場合には、斜め(30°以上)から防眩フィルムを観察したときの防眩効果に寄与する100μm程度(空間周波数で0.01μm−1に相当)の周期の光学的な変動が小さくなり、防眩性が不十分となる。比H(0.01)/H(0.002)が前記範囲を上回る場合には、100μm程度の周期の光学的な変動が大きくなりすぎ、防眩フィルムの表面凹凸形状が粗くなって、ヘイズが上昇する傾向があるため好ましくない。
比H(0.02)/H(0.002)が前記範囲を下回る場合には、斜め(10°〜30°)から防眩フィルムを観察したときの防眩効果に寄与する50μm程度(空間周波数で0.02μm−1に相当)の周期の光学的な変動が小さくなり、防眩性が不十分となる。比H(0.02)/H(0.002)が前記範囲を上回る場合には、50μm程度の周期の光学的な変動が大きくなりすぎ、ギラツキが発生することとなる。
比H(0.04)/H(0.002)が前記範囲を下回る場合には、正面(0°〜10°)から防眩フィルムを観察したときの防眩効果に寄与する25μm程度(空間周波数で0.04μm−1に相当)の周期の光学的な変動が小さくなり、防眩性が不十分となる。比H(0.04)/H(0.002)が前記範囲を上回る場合には、25μm程度の短周期の光学的な変動による散乱が強くなり、白ちゃけが発生しやすくなる。
[全ヘイズ、表面ヘイズ]
本発明の防眩フィルムは、防眩性を発現し、白ちゃけを防止するために、垂直入射光に対する全ヘイズが0.1%以上3%以下の範囲であり、表面ヘイズが0.1%以上2%以下の範囲のものである。防眩フィルムの全ヘイズは、JIS K7136に示される方法に準拠した方法により測定することができる。全ヘイズ又は表面ヘイズが0.1%を下回る防眩フィルムを配置した画像表示装置は、十分な防眩性を発現しないため、好ましくない。また、全ヘイズが3%を上回る場合、又は表面ヘイズが2%を上回る場合の防眩フィルムは、当該防眩フィルムを配置した画像表示装置が、白ちゃけを発生するものとなるため、好ましくない。かかる画像表示装置はまた、そのコントラストも不十分になるといった不都合もある。
全ヘイズから表面ヘイズを差し引いて求められる内部ヘイズは低いほど好ましい。当該内部ヘイズが2.5%を上回る防眩フィルムを配置した画像表示装置は、そのコントラストが低下する傾向がある。
[透過鮮明度Tc、反射鮮明度Rc(45)、及び反射鮮明度Rc(60)]
本発明の防眩フィルムは、下記する測定条件で求められる透過鮮明度の和Tcが375%以上であることが好ましい。透過鮮明度の和Tcは、JIS K 7105に準拠する方法により所定幅の光学くしを用いて像鮮明度をそれぞれ測定し、その合計を求めることで算出される。具体的には、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである5種類の光学くしを用いて像鮮明度をそれぞれ測定し、その合計を求めて、Tcとする。Tcが375%を下回る防眩フィルムは、より高精細な画像表示装置に配置した場合に、ギラツキが発生しやすくなることがある。Tcの上限は、その最大値である500%以下の範囲で選ばれるが、このTcが高すぎると、正面からの防眩性が低下しやすい画像表示装置が得られるため、例えば450%以下であることが好ましい。
本発明の防眩フィルムは、入射角45°の入射光で測定される反射鮮明度Rc(45)が180%以下であることが好ましい。反射鮮明度Rc(45)は、前記Tcと同様に、JIS K 7105に準拠する方法で測定されるものであり、前記5種類の光学くしのうち、その幅が0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度をそれぞれ測定し、その合計を求めて、Rc(45)とする。Rc(45)が180%以下であると、かかる防眩フィルムを配置した画像表示装置は、正面及び斜めから観察したときの防眩性がより良好となるので、好ましい。Rc(45)の下限は特に制限されないが、白ちゃけやギラツキの発生を良好に抑制するためには、例えば80%以上であることが好ましい。
本発明の防眩フィルムは、入射角60°の入射光で測定される反射鮮明度Rc(60)が240%以下であることが好ましい。反射鮮明度Rc(60)は、入射角を変更する以外は、反射鮮明度Rc(45)と同じJIS K 7105に準拠する方法で測定される。Rc(60)が240%以下であると、その防眩フィルムを配置した画像表示装置は、斜めから観察したときの防眩性がより良好となるので、好ましい。Rc(60)の下限は特に制限されないが、白ちゃけやギラツキの発生をより良好に抑制するためには、例えば150%以上であることが好ましい。
[防眩フィルムの製造方法]
本発明の防眩フィルムは、例えば以下のようにして製造される。第1の方法は、所定のパターンに基づいた表面凹凸形状が、成形表面に形成された微細凹凸形成用金型を準備し、当該金型の凹凸面の形状を透明支持体に転写した後、凹凸面の形状が転写された透明支持体を金型から剥がすという方法である。第2の方法は、微粒子、樹脂(バインダー)及び溶剤を含み、かかる微粒子が樹脂溶液に分散した組成物を準備し、当該組成物を透明支持体上に塗布し、必要に応じて乾燥することで形成した塗布膜(微粒子を含む塗布膜)を硬化するという方法である。第2の方法では、塗布膜厚や微粒子の凝集状態を、前記組成物の組成や前記塗布膜の乾燥条件等によって調整することで、微粒子を塗布膜の表面に露出させ、ランダムな凹凸を透明支持体上に形成する。防眩フィルムの生産安定性、生産再現性の観点からは、第1の方法により本発明の防眩フィルムを製造することが好ましい。
ここでは、本発明の防眩フィルムの製造方法として好ましい第1の方法について詳述する。
上述のような特性を有する表面凹凸形状の防眩層を精度よく形成するためには、準備する微細凹凸形成用金型(以下、「金型」と略記することがある)が重要である。より具体的には、金型が有する表面凹凸形状(以下、「金型凹凸表面」ということがある)が所定のパターンに基づいて形成されており、この所定パターンが、その一次元パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.01μm−1における強度Γ(0.01)との比Γ(0.01)/Γ(0.002)が1.5以上6以下であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.02μm−1における強度Γ(0.02)との比Γ(0.02)/Γ(0.002)が0.3以上5以下であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.04μm−1における強度Γ(0.04)との比Γ(0.04)/Γ(0.002)が3以上13以下であると好ましい。ここで「パターン」とは、防眩フィルムが有する防眩層の表面凹凸形状を形成するための画像データや透光部と遮光部を有するマスクなどを意味するものであり、以下、「パターン」と略記することとする。
まずは、本発明の防眩フィルムが有する防眩層の表面凹凸形状を形成するためのパターンを定める方法について説明する。
パターンの二次元パワースペクトルの求め方を、例えば当該パターンが画像データである場合について示す。まず、当該画像データを2階調の二値化画像データに変換した後、その階調を二次元関数g(x,y)で表す。得られた二次元関数g(x,y)を下記式(18)のようにフーリエ変換して二次元関数G(f,f)を計算し、下記式(19)に示すように、得られた二次元関数G(f,f)の絶対値を二乗することによって、二次元パワースペクトルΓ(f,f)を求める。ここで、x及びyは画像データ面内の直交座標を表す。また、f及びfはそれぞれ、x方向及びy方向の周波数を表しており、長さの逆数の次元を持つ。
Figure 2015152660
式(18)中のπは円周率、iは虚数単位である。
Figure 2015152660
この二次元パワースペクトルΓ(f,f)はパターンの空間周波数分布を表している。通常、防眩フィルムは等方的であることが求められるため、本発明の防眩フィルム製造用のパターンも等方的となる。そのため、パターンの二次元パワースペクトルを表す二次元関数Γ(f,f)は、原点(0,0)からの距離fのみに依存する一次元関数Γ(f)で表すことができる。次に、二次元関数Γ(f,f)から一次元関数Γ(f)を求める方法を説明する。まず、パターンの階調の二次元パワースペクトルである二次元関数Γ(f,f)を式(20)のように極座標で表示する。
Figure 2015152660
ここで、θはフーリエ空間中の偏角である。一次元関数Γ(f)は極座標表示した二次元関数Γ(fcosθ,fsinθ)の回転平均を式(21)のように計算することによって求めることができる。パターンの階調の二次元パワースペクトルである二次元関数Γ(f,f)の回転平均から求められる一次元関数Γ(f)を、以下では一次元パワースペクトルΓ(f)ともいう。
Figure 2015152660
本発明の防眩フィルムを精度良く得るためには、パターンの一次元パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.01μm−1における強度Γ(0.01)との比Γ(0.01)/Γ(0.002)が1.5以上6以下であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.02μm−1における強度Γ(0.02)との比Γ(0.02)/Γ(0.002)が0.3以上5以下であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.04μm−1における強度Γ(0.04)との比Γ(0.04)/Γ(0.002)が3以上13以下であることが好ましい。
パターンの二次元パワースペクトルを求める場合には、階調の二次元関数g(x,y)は通常、離散関数として得られる。その場合は、離散フーリエ変換によって、二次元パワースペクトルを計算すればよい。パターンの一次元パワースペクトルは、パターンの二次元パワースペクトルから、同様にして求められる。
防眩フィルムの表面凹凸形状の粗さ曲線のクルトシスRkuを4.9以下として、本発明の防眩フィルムを製造するためには、二次元関数g(x,y)の平均値は、二次元関数g(x,y)の最大値と、二次元関数g(x,y)の最小値との差の35〜65%であることが好ましい。金型凹凸表面をリソグラフィー法により製造する場合には、この二次元関数g(x,y)はパターンの開口率となる。金型凹凸表面をリソグラフィー法により製造する場合に関して、ここでいうパターンの開口率を定義しておく。リソグラフィー法に用いるレジストがポジレジストである場合の開口率は、当該ポジレジストの塗布膜に画像データを描画したとき、当該塗布膜の全表面領域に対する、露光される領域の割合を意味する。一方、リソグラフィー法に用いるレジストがネガレジストである場合の開口率は、当該ネガレジストの塗布膜に画像データを描画するとき、当該塗布膜の全表面領域に対する、露光されない領域の割合を意味する。リソグラフィー法が一括露光である場合の開口率は、透光部と遮光部を有するマスクの透光部の割合を意味する。パターンの開口率が小さすぎたり、大きすぎたりすると、金型上に形成される微細凹凸表面の凸部もしくは凹部が疎なものとなり、結果として得られる防眩フィルムの表面凹凸形状の凹凸が疎になり、クルトシスが増加する傾向がある。本発明者は、パターンの開口率が上記範囲にして得られる金型から、防眩フィルムを製造すれば、粗さ曲線のクルトシスRkuを4.9以下にしやすいことを見出した。
本発明の防眩フィルムは、パターンの一次元パワースペクトルの強度比Γ(0.01)/Γ(0.002)、Γ(0.02)/Γ(0.002)、及び、Γ(0.04)/Γ(0.002)のそれぞれを、前記の範囲として、所望の金型を製造し、当該金型を用いて前記第1の方法により製造することができる。
このような強度比を有する一次元パワースペクトルのパターンを作成するためには、ドットをランダムに配置して作成したパターンや乱数若しくは計算機によって生成された疑似乱数により濃淡を決定したランダムな明度分布を有するパターン(予備パターン)を予め作成し、当該予備パターンから特定の空間周波数範囲の成分を除去する。この特定の空間周波数範囲の成分除去には、前記予備パターンをバンドパスフィルターに通過させればよい。
所定パターンに基づいた表面凹凸形状が形成された防眩層を有する防眩フィルムを製造するため、当該所定パターンに基づいて形成された表面凹凸形状を透明支持体に転写するための金型凹凸表面を有する金型を製造する。かかる金型を用いる前記第1の方法は、防眩層を透明支持体上に作製することを特徴とするエンボス法である。
前記エンボス法としては、光硬化性樹脂を用いる光エンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法などが例示される。中でも、生産性の観点から、光エンボス法が好ましい。
光エンボス法は、透明支持体上(透明支持体の表面)に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の金型凹凸表面に押し付けながら硬化させることで、金型の金型凹凸表面の形状を、光硬化性樹脂層に転写するという方法である。具体的には、透明支持体上に光硬化性樹脂を塗布して形成した光硬化性樹脂層を、金型凹凸表面に密着させた状態で、透明支持体側から光(当該光は光硬化性樹脂が硬化し得るものを用いる)を照射して光硬化性樹脂(光硬化性樹脂層に含まれる光硬化性樹脂)を硬化させ、その後、硬化後の光硬化性樹脂層が形成された透明支持体を金型から剥離する。このような製造方法で得られる防眩フィルムは、硬化後の光硬化性樹脂層が防眩層となる。なお、製造の容易さからみれば、光硬化性樹脂としては紫外線硬化性樹脂が好ましく、当該紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、照射する光は紫外線を用いる(光硬化性樹脂として、紫外線硬化性樹脂を用いるエンボス法を以下、「UVエンボス法」という)。偏光フィルムと一体化した防眩フィルムを製造するためには、透明支持体として偏光フィルムを用い、ここで説明したエンボス法において透明支持体を偏光フィルムに置き換えて実施すればよい。
UVエンボス法に用いる紫外線硬化性樹脂の種類は、特に限定されず、市販樹脂の中から、用いる透明支持体の種類や紫外線の種類に応じて適宜のものを用いることができる。かかる紫外線硬化性樹脂は、紫外線照射により光重合するモノマー(多官能モノマー)、オリゴマー及びポリマー、並びにそれらの混合物を含む概念である。また、紫外線硬化性樹脂の種類に応じて適宜、選択された光開始剤を組み合わせて用いることにより、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂を用いることもできる。この紫外線硬化性樹脂の好適例などの説明は後述する。
UVエンボス法に用いる透明支持体としては、例えばガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していれば使用可能である。具体的には、例えば、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロースアセテート系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などからなる透明樹脂フィルムが挙げられる。これらの透明樹脂フィルムは、溶剤キャストフィルムであっても、押出フィルムであってもよい。
透明支持体の厚みは、例えば10〜500μmであり、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは10〜60μmである。透明支持体の厚みがこの範囲であると、十分な機械強度を有する防眩フィルムが得られる傾向があり、当該防眩フィルムを備えた画像表示装置が、より一層ギラツキを発生しにくいものとなる。
一方、ホットエンボス法は、熱可塑性樹脂で形成された透明樹脂フィルムを、加熱して軟化させた状態で金型凹凸表面に押し付け、当該金型凹凸表面の表面凹凸形状を透明樹脂フィルムに転写する方法である。ホットエンボス法に用いる透明樹脂フィルムも、実質的に光学的に透明なものであればいかなるものであってもよく、具体的には、UVエンボス法に用いる透明樹脂フィルムとして例示したものを挙げることができる。
続いて、エンボス法に用いる金型を製造する方法について説明する。
金型の製造方法については、当該金型の成形面が、上述した所定パターンに基づいて形成された表面凹凸形状を透明支持体上に転写し得る(所定パターンに基づいて形成された表面凹凸形状の防眩層を形成し得る)金型凹凸表面となる範囲で、特に制限されないが、当該表面凹凸形状の防眩層を精度よく、かつ、再現性よく製造するために、リソグラフィー法が好ましい。さらに、当該リソグラフィー法は、〔1〕第1めっき工程と、〔2〕第1研磨工程と、〔3〕感光性樹脂膜形成工程と、〔4〕露光工程と、〔5〕現像工程と、〔6〕第1エッチング工程と、〔7〕感光性樹脂膜剥離工程と、〔8〕第2エッチング工程と、〔9〕第2めっき工程と、〔10〕第2研磨工程とを含むと好ましい。
図7は、金型の製造方法の前半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図7は各工程での金型の断面を模式的に示している。以下、図7を参照しながら、本発明の防眩フィルム製造用の金型の製造方法の各工程について詳細に説明する。
〔1〕第1めっき工程
まず、金型製造に用いる基材(金型用基材)を準備し、当該金型用基材の表面に、銅めっきを施す。このように、金型用基材の表面に銅めっきを施すことにより、後述の第2めっき工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を向上させることができる。銅めっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いことから、金型用基材の微小な凹凸や鬆などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成することができる。そのため、このようにして銅めっきを金型用基材表面に施すことで、後述する第2めっき工程においてクロムめっきを施したとしても、基材に存在していた微小な凹凸や鬆に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消される。したがって、所定パターンに基づいた表面凹凸形状(微細凹凸表面形状)を金型用基材成形面に形成したとしても、微小な凹凸や鬆等の下地(金型用基材)表面の影響によるずれを十分防止することができる。
第1めっき工程の銅めっきに用いられる銅としては、銅の純金属を用いても、銅を主成分とする合金(銅合金)を用いてもよい。したがって、銅めっきに用いられる「銅」は、銅及び銅合金を含む概念である。銅めっきは、電解めっきであっても、無電解めっきであってもよいが、第1めっき工程の銅めっきは、電解めっきを用いることが好ましい。さらに、第1めっき工程における好ましいめっき層は、銅めっき層からなるもののみならず、銅めっき層と、銅以外の金属からなるめっき層とが積層されたものであってもよい。
金型用基材の表面上に銅めっきを施して形成されるめっき層は余り薄いと、下地表面の影響(微小な凹凸や鬆、クラック等)が排除しきれないことから、その厚みは50μm以上であることが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コストなどを考慮した場合には、500μm程度以下であると好ましい。
金型用基材は金属材料からなる基材が好ましい。さらに、コストの観点からは当該金属材料の材質としては、アルミニウム、鉄などが好ましい。さらに金型用基材の取扱いの利便性からみれば、軽量なアルミニウムからなる基材が金型用基材として特に好ましい。なお、ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属である必要はなく、アルミニウム又は鉄を主成分とする合金であってもよい。
金型用基材の形状は、本発明の防眩フィルムの製造方法に応じて適宜の形状のものであればよい。具体的には、平板状基材、円柱状基材又は円筒状(ロール形状)基材などから選択される。本発明の防眩フィルムを連続的に製造する場合には、金型はロール形状であると好ましい。このような金型はロール形状の金型用基材から製造される。
〔2〕第1研磨工程
続く第1研磨工程では、上述した第1めっき工程にて銅めっきが施された金型用基材の表面(めっき層)を研磨する。本発明の防眩フィルムの製造方法に用いる金型の製造方法では、当該第1研磨工程を経て、金型用基材表面を、鏡面に近い状態にまで研磨することが好ましい。金型用基材として用いる平板状基材やロール形状基材の市販品は、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより金型用基材表面には微細な加工目が残っている。そのため、第1めっき工程によりめっき(好ましくは、銅めっき)層を形成したとしても、前記加工目が残ることがある。また、第1めっき工程におけるめっきを施したとしても、金型用基材の表面が完全に平滑になるとは限らない。すなわち、このような深い加工目などが残った表面がある金型用基材に対して、後述する〔3〕〜〔10〕の工程を施したとしても、得られる金型表面の表面凹凸形状が所定パターンに基づく表面凹凸形状とは異なることがあったり、加工目などに由来する凹凸が含まれることがあったりする。加工目などの影響が残っている金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、目的とする防眩性などの光学特性が十分発現できず、予期できない影響を及ぼすおそれがある。
第1研磨工程において適用する研磨方法は特に制限されるものではなく、研磨対象となる金型用基材の形状・性状に応じた研磨方法が選択される。第1研磨工程に適用できる研磨方法を具体的に例示すると、機械研磨法、電解研磨法及び化学研磨法などが挙げられる。これらのうち、機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などのいずれも使用できる。また、研磨工程において切削工具を用いて鏡面切削することによって、金型用基材の表面を鏡面としてもよい。この場合の切削工具の材質・形状は金型用基材の材質(金属材料)の種類に応じて、超硬バイト、CBNバイト、セラミックバイト、ダイヤモンドバイトなどを使用することができるが、加工精度の観点からはダイヤモンドバイトを用いることが好ましい。研磨後の表面粗度は、JIS B 0601に準拠した中心線平均粗さRaで表して、0.1μm以下であることが好ましく、0.05μm以下であることがより好ましい。研磨後の中心線平均粗さRaが0.1μmより大きいと、最終的に得られる金型の金型凹凸表面に、かかる表面粗度の影響が残るおそれがある。また、中心線平均粗さRaの下限については特に制限されない。したがって、第1研磨工程における加工時間(研磨時間)や加工コストの観点から、下限を定めればよい。
〔3〕感光性樹脂膜形成工程
続いて、感光性樹脂膜形成工程を、図7を参照して説明する。
感光性樹脂膜形成工程では、上述した第1研磨工程によって得られた鏡面研磨を施した金型用基材40の表面41に、感光性樹脂を溶媒に溶解した溶液(感光性樹脂溶液)を塗布し、加熱・乾燥することにより、感光性樹脂膜(レジスト膜)を形成する。図7では、金型用基材40の表面41に感光性樹脂膜50が形成された状態を模式的に示している(図7(b))。
感光性樹脂としては従来公知の感光性樹脂を用いることができるし、すでにレジストとして市販されているものをそのまま、又は必要に応じてろ過等で精製してから用いることもできる。例えば、感光部分が硬化する性質をもったネガ型の感光性樹脂としては、分子中にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの単量体やプレポリマー、ビスアジドとジエンゴムとの混合物、ポリビニルシンナマート系化合物などを用いることができる。また、現像により感光部分が溶出し、未感光部分だけが残る性質をもったポジ型の感光性樹脂としてはフェノール樹脂系やノボラック樹脂系などを用いることができる。このようなポジ型又はネガ型の感光性樹脂は、ポジレジストやネガレジストとして市場から容易に入手することもできる。また、感光性樹脂溶液は、必要に応じて、増感剤、現像促進剤、密着性改質剤、塗布性改良剤などの各種添加剤が配合されていてもよく、このような添加剤を市販のレジストに混合したものを感光性樹脂溶液として用いることもできる。
これらの感光性樹脂溶液を金型用基材40の表面41に塗布するためには、より平滑な感光性樹脂膜を形成するうえで最適な溶剤を選択し、かかる溶剤に感光性樹脂を溶解・希釈して得られる感光性樹脂溶液を用いると好ましい。このような溶剤は感光性樹脂の種類及びその溶解性によって選択される。具体的には、例えば、セロソルブ系溶剤、プロピレングリコール系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、高極性溶剤などから選択される。市販のレジストを用いる場合、当該レジストに含まれる溶剤の種類に応じて、又は、適当な予備実験を行って、最適なレジストを選択し、感光性樹脂溶液として用いてもよい。
金型用基材の鏡面研磨された表面に感光性樹脂溶液を塗布する方法は、メニスカスコート、ファウンティンコート、ディップコート、回転塗布、ロール塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、リングコートなどの公知の方法のなかから、当該金型用基材の形状などに応じて選択される。塗布後の感光性樹脂膜の厚さは、乾燥後の厚さで1〜10μmの範囲とすることが好ましく、6〜9μmの範囲とすることがより好ましい。
〔4〕露光工程
続く露光工程は、目的とするパターンを、上述した感光性樹脂膜形成工程で形成された感光性樹脂膜50を露光することで、当該感光性樹脂膜50に転写する工程である。露光工程に用いる光源は、感光性樹脂膜に含まれる感光性樹脂の感光波長や感度等に合わせて適宜選択すればよく、例えば、高圧水銀灯のg線(波長:436nm)、h線(波長:405nm)、又はi線(波長:365nm)、半導体レーザ(波長:830nm、532nm、488nm、405nmなど)、YAGレーザ(波長:1064nm)、KrFエキシマレーザ(波長:248nm)、ArFエキシマレーザ(波長:193nm)、F2エキシマレーザ(波長:157nm)などを用いることができる。露光方式は、目的とするパターンに対応したマスクを用いて一括露光する方式でもよいし、描画方式でもよい。なお、目的とするパターンとはすでに説明したとおり、一次元パワースペクトルの空間周波数の強度比Γ(0.01)/Γ(0.002)、Γ(0.02)/Γ(0.002)、及びΓ(0.04)/Γ(0.002)をそれぞれ所定の好ましい範囲とする。
金型の製造方法において、当該金型の表面凹凸形状をより精度良く形成するためには、目的とするパターンを感光性樹脂膜上に、精密に制御された状態で露光することが好ましい。このような状態で露光するためには、コンピュータ上で目的のパターンを画像データとして作成し、その画像データに基づいたパターンを、コンピュータ制御されたレーザヘッドから発するレーザ光によって感光性樹脂膜上に描画(レーザ描画)することが好ましい。レーザ描画を行うに際しては、例えば印刷版作製などで汎用のレーザ描画装置を使用することができる。このようなレーザ描画装置の市販品としては、例えば、Laser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)などが挙げられる。
図7(c)は、感光性樹脂膜50にパターンが露光された状態を模式的に示している。感光性樹脂膜50にネガ型の感光性樹脂が含まれる場合(例えば、感光性樹脂溶液としてネガレジストを用いた場合)には、露光された領域51は、露光エネルギーを受けて感光性樹脂の架橋反応が進行し、後述する現像液に対する溶解性が低下する。よって、現像工程において露光されていない領域52が現像液によって溶解され、露光された領域51のみ基材表面上に残り、マスク60となる。一方、感光性樹脂膜50にポジ型の感光性樹脂が含まれる場合(例えば、感光性樹脂溶液としてポジレジストを用いた場合)には、露光された領域51では、露光エネルギーを受けて、感光性樹脂の結合が切断されるなどにより、後述する現像液に溶解されやすくなる。よって、現像工程において露光された領域51が現像液によって溶解され、露光されていない領域52のみ基材表面上に残り、マスク60となる。
〔5〕現像工程
現像工程においては、感光性樹脂膜50にネガ型の感光性樹脂が含まれる場合には、露光されていない領域52は現像液によって溶解され、露光された領域51が金型用基材上に残存しマスク60となる。一方、感光性樹脂膜50にポジ型の感光性樹脂が含まれる場合には、露光された領域51のみ現像液によって溶解され、露光されていない領域52が、金型用基材上に残存しマスク60となる。所定のパターンを感光性樹脂膜として形成せしめた金型用基材は、第1エッチング工程において、金型用基材上に残存する感光性樹脂膜が、後述の第1エッチング工程におけるマスクとして作用する。
現像工程に用いる現像液については従来公知のもののなかから、用いた感光性樹脂の種類に応じて適切なものを選択することができる。例えば、当該現像液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水の如き無機アルカリ類;エチルアミン、n−プロピルアミンの如き第一アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミンの如き第二アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミンの如き第三アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンの如きアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシドの如き第四級アンモニウム化合物;ピロール、ピヘリジンの如き環状アミン類などが溶解されているアルカリ性水溶液;キシレン、トルエンの如き有機溶剤などが挙げられる。
現像工程における現像方法については特に制限されず、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像などを用いることができる。
図7(d)には、感光性樹脂としてネガ型のものを用い、現像工程を行った後の状態を模式的に示している。図7(d)において露光されていない領域52が現像液によって溶解され、露光された領域51のみ基材表面上に残り、この領域の感光性樹脂膜がマスク60となる。図7(e)には、感光性樹脂としてポジ型のものを用い、現像工程を行った後の状態を模式的に示している。図7(e)において露光された領域51が現像液によって溶解され、露光されていない領域52のみ基材表面上に残り、この領域の感光性樹脂膜がマスク60となる。
〔6〕第1エッチング工程
第1エッチング工程は、上述した現像工程後に金型用基材表面上に残存した感光性樹脂膜をマスクとして用い、金型用基材表面のうち、主にマスクのない領域にあるめっき層をエッチングする工程である。
図8は、金型の製造方法の後半部分の好ましい一例を模式的に示す図である。図8(a)には、エッチング工程によって、主にマスクのない領域のめっき層がエッチングされた後の状態を模式的に示している。マスク60の下部のめっき層は感光性樹脂膜がマスク60として働くことでエッチングされないが、エッチングの進行とともにマスクのない領域45からのエッチングが進行する。よって、マスク60のある領域と、マスクのない領域45の境界付近では、マスク60の下部にあるめっき層もエッチングされることになる。このように、マスク60のある領域と、マスクのない領域45の境界付近において、マスク60の下部のめっき層もエッチングされることをサイドエッチングと呼ぶ。
第1エッチング工程におけるエッチング処理は、通常、塩化第二鉄(FeCl)液、塩化第二銅(CuCl)液、アルカリエッチング液(Cu(NHCl)などのエッチング液を用いて、金型用基材表面のうち、主としてマスク60のない領域のめっき層(金属表面)を腐食させることによって行われる。当該エッチング処理としては、塩酸や硫酸などの強酸をエッチング液として用いることもできるし、当該めっき層を電解めっきにより形成した場合には、電解めっきの時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いてエッチング処理することもできる。エッチング処理を施した際の金型用基材に形成される表面凹凸形状は、金型用基材の構成材料(金属材料)又はめっき層の種類、感光性樹脂膜の種類及び、エッチング工程におけるエッチング処理の種類などによって異なるため、一概にはいえないが、エッチング量が10μm以下である場合には、エッチング液に接触する金型用基材表面から略等方的にエッチングされる。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られるめっき層の厚みである。
第1エッチング工程におけるエッチング量は好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは3〜10μmであり、さらに好ましくは5〜8μmである。エッチング量が1μm未満である場合には、金型に表面凹凸形状がほとんど形成されず、ほぼ平坦な表面を有するものとなるため、当該金型を用いて防眩フィルムを製造しても、かかる防眩フィルムは表面凹凸形状をほとんど有さないものとなる。このような防眩フィルムを配置した画像表示装置では、十分な防眩性を示さなくなってしまう。また、エッチング量が大きすぎる場合には、最終的に得られる金型凹凸表面が、凹凸の高低差が大きいものとなりやすい。当該金型を用いて防眩フィルムを製造しても、当該防眩フィルムを備えた画像表示装置では、白ちゃけの発生を十分防止できないことがある。エッチング工程におけるエッチング処理は1回のエッチング処理によって行ってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行ってもよい。ここでエッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が1〜20μmであることが好ましい。
〔7〕感光性樹脂膜剥離工程
続く感光性樹脂膜剥離工程では、第1エッチング工程でマスク60として作用し、金型用基材上に残存した感光性樹脂膜を除去する工程であり、当該工程により、金型用基材上に残存した感光性樹脂膜を完全に除去することが好ましい。感光性樹脂膜剥離工程では剥離液を用いて感光性樹脂膜を溶解することが好ましい。剥離液としては、現像液として例示したものを、その濃度やpHなどを変更することで調製したものを用いることができる。又は、現像工程で用いた現像液と同じものを用い、現像工程とは、温度や浸漬時間などを変えることで感光性樹脂膜を剥離することもできる。感光性樹脂膜剥離工程において、剥離液と金型用基材との接触方法(剥離方法)については特に制限されず、浸漬剥離、スプレー剥離、ブラシ剥離、超音波剥離などを用いることができる。
図8(b)は、感光性樹脂膜剥離工程によって、第1エッチング工程でマスク60として使用した感光性樹脂膜を完全に溶解し除去した状態を模式的に示している。感光性樹脂膜によるマスク60と、エッチング処理とによって、第1の表面凹凸形状46が金型用基材表面に形成される。
〔8〕第2エッチング工程
第2エッチング工程では、第1エッチング工程によって形成された第1の表面凹凸形状46を、さらなるエッチング処理(第2エッチング処理)によって鈍らせるための工程である。この第2エッチング処理によって、第1エッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状46において、表面傾斜が急峻な部分がなくなる(以下、このように表面凹凸形状のなかで、表面傾斜が急峻な部分を鈍らせることを「形状鈍化」という)。図8(c)には、第2エッチング処理によって、金型用基材40の第1の表面凹凸形状46を形状鈍化させることで、表面傾斜が急峻な部分が鈍らされ、緩やかな表面傾斜を有する第2の表面凹凸形状47が形成された状態が示されている。このようにして第2エッチング処理を行って得られる金型は、当該金型を用いて製造される本発明の防眩フィルムの光学特性がより好ましくなるという効果がある。
第2エッチング工程の第2エッチング処理も、第1エッチング工程と同様のエッチング液を用いるエッチング処理や逆電解エッチングを用いることができる。第2エッチング処理後の形状鈍化の度合い(第1エッチング工程後の表面凹凸形状における表面傾斜が急峻な部分の消失度合い)は、金型用基材の材質、第2エッチング処理の手段、及び第1エッチング工程により得られた表面凹凸形状にある凹凸のサイズと深さなどによって異なるため、一概にはいえないが、鈍り具合(形状鈍化の度合い)を制御する上で最も大きな因子は、第2エッチング処理におけるエッチング量である。ここでいうエッチング量も、第1エッチング工程の場合と同様に、第2エッチング処理により削られる基材の厚みで表す。第2エッチング処理のエッチング量が小さいと、第1エッチング工程により得られた表面凹凸形状の形状鈍化に関する効果が不十分となる。したがって、形状鈍化が不十分な金型を用いて製造される防眩フィルムは、白ちゃけが発生することがある。一方で、第2エッチング処理におけるエッチング量が大きすぎると、第1エッチング工程により形成された表面凹凸形状の凹凸がほとんどなくなってしまい、ほぼ平坦な表面を有する金型となってしまうことがある。このようなほぼ平坦な表面を有する金型を用いて製造される防眩フィルムは、防眩性が不十分となることがある。そこで、第2エッチング処理のエッチング量は1〜50μmの範囲内であることが好ましく、6〜21μmの範囲内であることがより好ましく、12〜15μmの範囲内であることがさらに好ましい。第2エッチング処理についても、第1エッチング工程と同様に、1回のエッチング処理によって行ってもよいし、エッチング処理を2回以上に分けて行ってもよい。ここでエッチング処理を2回以上に分けて行う場合には、2回以上のエッチング処理におけるエッチング量の合計が1〜50μmであることが好ましい。
〔9〕第2めっき工程
第2めっき工程では、前記〔6〕及び〔7〕の工程を経た金型用基材、好ましくは前記〔6〕〜〔8〕の工程を経た金型用基材の表面にめっき(好ましくは、後述のクロムめっき)を施す。第2めっき工程を行うことにより、金型用基材の表面凹凸形状47を鈍らせるとともに、当該めっきによって金型表面を保護することができる。図8(d)には、上述したように第2エッチング処理によって形成された第2の表面凹凸形状47上にクロムめっき層71を形成することで、表面凹凸形状が形状鈍化(金型凹凸表面70)した状態を示している。
第2めっき工程により形成するめっき層としては、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与え得るという点でクロムめっきが好ましい。クロムめっきのなかでも、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきが特に好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行われるが、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO)と少量の硫酸を含む水溶液がめっき液として用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっき層の厚みを制御することができる。
第2エッチング処理後の金型用基材表面にある表面凹凸形状に、クロムめっきを施すことにより、形状鈍化ができるとともに、その表面硬度が高められた金型が得られる。この場合の形状鈍化の度合いを制御するうえで最も大きな因子は、クロムめっき層の厚みである。当該厚みが薄いと、形状鈍化の度合いが不十分となり、このような金型を用いて得られる防眩フィルムは、白ちゃけが発生することがある。一方、クロムめっき層の厚みが厚すぎると、防眩性が不十分となる。本発明者らは、白ちゃけの発生を十分防止し、優れた防眩性を有する画像表示装置の得るための防眩フィルムは、クロムめっき層の厚みが所定の範囲となるように金型を製造することが有効であることを見出している。すなわち、クロムめっき層の厚みは2〜10μmの範囲内であると好ましく、5〜10μmの範囲内であるとより好ましい。
第2めっき工程で形成されるクロムめっき層は、ビッカース硬度が800以上となるように形成されていることが好ましく、1000以上となるように形成されていることがより好ましい。クロムめっき層のビッカース硬度が800未満である場合には、金型を使用して防眩フィルムを製造する際、当該金型の耐久性が低下する傾向がある。
〔10〕第2研磨工程
金型製造の最後の段階は、上述した第2めっき工程にてクロムめっきが施された金型用基材の表面(クロムめっき層)を研磨する第2研磨工程である。クロムめっきは光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を有するが、クロムめっき層を形成する際の高い内部応力のために表面にマイクロクラックが生じる。本発明の防眩フィルムの製造方法に用いる金型の製造方法では、当該第2研磨工程を経て、クロムめっきのマイクロクラックによるわずかな表面形状の荒れを解消することが好ましい。クロムめっきのマイクロクラックによる表面形状の荒れが残っている金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、表面での散乱が強くなり白ちゃけが発生する虞がある。また、マイクロクラックの発生密度に分布がある場合には、当該金型を用いて製造された防眩フィルムに散乱が強い箇所と弱い箇所が発生し、ムラが発生することがある。
第2研磨工程において適用する研磨方法は、第2めっき工程にて形成された金型凹凸表面70に影響を略影響を与えず、マイクロクラックによる表面形状の荒れのみを選択的に研磨する方法が好ましい。このような研磨方法を具体的に例示すると、ラッピング、流体研磨法、ブラスト研磨法などが挙げられる。第2研磨工程においてクロムめっき層が削られる量である研磨量は0.03μm以上0.2μm以下であることが好ましい。研磨量が0.03μmを下回る場合にはマイクロクラックによる表面形状の荒れを解消する効果が不十分となる。一方、研磨量が0.2μmを上回る場合には、金型凹凸表面70に平坦な領域が発生することとなる。平坦な領域が発生した金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、防眩性が不十分となる虞がある。
以下では、本発明の防眩フィルムを製造するための方法として好ましい前記光エンボス法について説明する。すでに述べたとおり、UVエンボス法が光エンボス法として特に好ましいが、ここでは活性エネルギー線硬化性樹脂を用いるエンボス法について具体的に説明する。
本発明の防眩フィルムを連続的に製造するために、本発明の防眩フィルムを光エンボス法によって製造する場合は、下記工程:
〔P1〕連続して搬送される透明支持体上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する塗工液を塗工して、塗工層を形成する塗工工程、
〔P2〕塗工層の表面に、金型の表面を押し当てた状態で、透明支持体側から活性エネルギー線を照射する本硬化工程、
を含むことが好ましい。
また、本発明の防眩フィルムを光エンボス法によって製造する場合は、
〔P3〕塗工工程〔P1〕の後であって、硬化工程〔P2〕の前に、塗工層の幅方向の両方の端部領域に活性エネルギー線を照射する予備硬化工程を含むことがより好ましい。
以下、図面を参照しながら、各工程について詳細に説明する。図9は、本発明の防眩フィルムの製造方法に用いられる製造装置の好ましい一例を模式的に示す図である。図9中の矢印は、フィルムの搬送方向又はロールの回転方向を示す。
〔P1〕塗工工程
塗布工程では、透明支持体上に、活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する塗工液を塗工して、塗工層を形成する。塗工工程は、例えば図9に示されるように、送り出しロール80から繰り出される透明支持体81に対し、塗工ゾーン83で活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を含有する塗工液が塗布される。
塗工液の透明支持体81上への塗工は、例えば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、キスコート法、ダイコート法などによって行うことができる。
(透明支持体)
透明支持体81は透光性のものであればよく、例えばガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していればよい。具体的には、すでにUVエンボス法に用いる透明支持体として例示したものがいずれも使用可能であり、さらに光エンボス法により連続的に本発明の防眩フィルムを製造するために、適度な可とう性を有するものが選択される。
塗工液の塗工性の改良、透明支持体と塗工層との接着性の改良を目的として、透明支持体81の表面(塗工層側表面)には、各種表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、酸表面処理、アルカリ表面処理、紫外線照射処理などが挙げられる。また、透明支持体81上に、例えばプライマー層等の他の層を形成し、この他の層の上に、塗工液を塗工するようにしてもよい。
また、本発明の防眩フィルムとして、偏光フィルムと一体化したものを製造する場合には、透明支持体と偏光フィルムとの接着性を向上させるために、透明支持体の表面(塗工層とは反対側の表面)を各種表面処理によって親水化しておくことが好ましい。この表面処理は、防眩フィルムの製造後に行ってもよい。
(塗工液)
塗工液は、活性エネルギー線硬化性樹脂を含有し、通常は、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)をさらに含む。必要に応じて、透光性微粒子、有機溶剤等の溶剤、レベリング剤、分散剤、帯電防止剤、防汚剤、界面活性剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するものを好ましく用いることができる。多官能(メタ)アクリレート化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2′−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのような2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンのような3価以上のアルコールが挙げられる。
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物として、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に複数個のイソシアネート基を有するイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体のウレタン化反応物を挙げることができる。1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート、それら有機イソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性した1分子中に3個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート等が挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートが挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレート化合物として好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコールとしては前述した化合物と同様のものが例示できる。また、多価アルコール以外にも、フェノール類としてビスフェノールA等が挙げられる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸等が挙げられる。複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物としては、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、テレフタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
以上のような多官能(メタ)アクリレート化合物の中でも、その硬化物の強度向上や入手の容易性の点から、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエステル化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;アダクト変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;及びビウレット変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体が好ましい。さらに、これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を併用することができる。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記の多官能(メタ)アクリレート化合物のほかに、単官能(メタ)アクリレート化合物を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アセチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらの化合物はそれぞれ単独で又は2種類以上を併用することができる。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂は重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、硬化物の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーは、例えば、前記多官能(メタ)アクリレート化合物、すなわち、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ(メタ)アクリレート等の2量体、3量体などのようなオリゴマーであることができる。
その他の重合性オリゴマーとしては、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネートの重合物等が挙げられ、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、多価アルコールとして、例えば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等であるものが挙げられる。この少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールは、多価アルコールのアルコール性水酸基の一部が(メタ)アクリル酸とエステル化反応しているとともに、アルコール性水酸基が分子中に残存するものである。
さらに、その他の重合性オリゴマーの例として、複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物と、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物としては、前記多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレートで記載したものと同様のものが例示できる。また、少なくとも1個の(メタ)アクリロイオキシ基を有する多価アルコールとしては、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものと同様のものが例示できる。
以上のような重合性オリゴマーに加えて、さらにウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの例として、水酸基含有ポリエステル、水酸基含有ポリエーテル又は水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基にイソシアネート類を反応させて得られる化合物が挙げられる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコールや、複数のカルボキシル基を有する化合物及び/又はその無水物としては、それぞれ、多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレート化合物で記載したものと同様のものが例示できる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエーテルは、多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド及び/又はε−カプロラクトンを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルである。多価アルコールは、前記水酸基含有ポリエステルに使用できるものと同じものであってよい。好ましく用いられる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、重合性オリゴマーのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものと同様のものが例示できる。イソシアネート類としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
これらの重合性オリゴマー化合物は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
(2)光重合開始剤
光重合開始剤は、本発明の防眩フィルム製造に適用する活性エネルギー線の種類に応じて適宜選択できる。また、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には、光重合開始剤を含有しない塗工液を本発明の防眩フィルム製造に用いることもある。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、オキサジアゾール系光重合開始剤などが用いられる。また、光重合開始剤として、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′,5,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等も用いることができる。光重合開始剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。
塗工液は、透明支持体に対する塗工性を改良するために、有機溶剤等の溶剤を含むこともある。有機溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類などから、粘度等を考慮して選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。塗工後は、上記有機溶剤を蒸発させる必要がある。そのため、沸点は60℃〜160℃の範囲であることが望ましい。また、20℃における飽和蒸気圧は0.1kPa〜20kPaの範囲であることが好ましい。
塗工液が溶剤を含む場合、上記塗工工程の後、第1硬化工程の前に、溶剤を蒸発させて乾燥を行う乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は、例えば図9に示される例のように、塗工層を備える透明支持体81を、乾燥ゾーン84内を通過させることによって行うことができる。乾燥温度は、使用する溶剤や透明支持体の種類により適宜選択される。一般に20℃〜120℃の範囲であるが、これに限定されない。また、乾燥炉が複数ある場合は、乾燥炉毎に温度を変えてもよい。乾燥後の塗工層の厚みは、1〜30μmであることが好ましい。
かくして、透明支持体と塗工層とが積層した積層体が形成される。
〔P2〕硬化工程
本工程は、塗工層の表面に、所望の表面凹凸形状を有する金型凹凸表面(成形面)を押し当てた状態で、透明支持体側から活性エネルギー線を照射し、塗工層を硬化させることにより、透明支持体上に硬化された樹脂層を形成する工程である。これにより、塗工層が硬化されるとともに、金型凹凸表面の表面凹凸形状が塗工層表面に転写される。ここで用いる金型はロール形状のものであり、すでに説明した金型製造方法においてロール形状の金型用基材を用いることで製造されたものである。
本工程は、例えば図9に示されるように、例えば、塗工ゾーン83(乾燥を行う場合には、乾燥ゾーン84、後述する予備硬化工程を行う場合にはさらに活性エネルギー線照射装置86による照射がなされる予備硬化ゾーン)を通過した塗工層を有する積層体に対して、透明支持体81側に配置された紫外線照射装置等の活性エネルギー線照射装置86を用いて、活性エネルギー線を照射することにより行うことができる。
まず、硬化工程を経た積層体の塗工層の表面に、ニップロール88等の圧着装置を用いて、ロール形状の金型87を押し当て、この状態で活性エネルギー線照射装置86を用いて、透明支持体81側から活性エネルギー線を照射して塗工層82を硬化させる。ここで、「塗工層を硬化させる」とは、当該塗工層に含まれる活性エネルギー線硬化性樹脂が活性エネルギー線のエネルギーを受けて硬化反応を生じさせることをいう。ニップロールの使用は、積層体の塗工層と金型との間への気泡の混入を防止するうえで有効である。活性エネルギー線照射装置は、1機若しくは複数機を使用することができる。
活性エネルギー線の照射後、積層体は、出口側のニップロール89を支点として金型87から剥離される。得られた透明支持体と硬化した塗工層は、当該硬化した塗工層が防眩層となって本発明の防眩フィルムが得られる。得られた防眩フィルムは通常、フィルム巻き取り装置90によって巻き取られる。この際、防眩層を保護する目的で、再剥離性を有した粘着剤層を介して、防眩層表面にポリエチレンテレフタレートやポリエチレン等からなる保護フィルムを貼着しながら巻き取ってもよい。なお、ここでは用いる金型はロール形状のものの場合を説明したが、ロール形状以外の金型を用いることもできる。また、金型から剥離された後に、追加の活性エネルギー線照射を行ってもよい。
本工程で用いる活性エネルギー線としては、塗工液に含まれる活性エネルギー線硬化性樹脂の種類に応じて紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、これらの中で紫外線及び電子線が好ましく、取り扱いが簡便で高エネルギーが得られることから紫外線が特に好ましい(上述のとおり、光エンボス法としては、UVエンボス法が好ましい)。
紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等も用いることができる。これらの中でも、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、無電極ランプ、キセノンアークランプ、メタルハライドランプが好ましく用いられる。
また、電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
活性エネルギー線が紫外線である場合、紫外線のUVAにおける積算光量は、好ましくは100mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下であり、より好ましくは200mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下である。また、透明支持体が短波長側の紫外線を吸収する場合もあるため、当該吸収を抑制する目的で可視光を含む波長領域の紫外線UVV(395〜445nm)の積算光量が好ましくなるようにして照射量を調整することもある。かかるUVVにおける積算光量は、100mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下であることが好ましく、200mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下であることがより好ましい。積算光量が100mJ/cm2未満である場合、塗工層の硬化が不十分となり、得られる防眩層の硬度が低くなったり、未硬化の樹脂がガイドロール等に付着し、工程汚染の原因となったりする傾向がある。また、積算光量が3000mJ/cm2を超える場合、紫外線照射装置から放射される熱により、透明支持体が収縮して皺の原因になることがある。
〔P3〕予備硬化工程
本工程は、前記硬化工程に先立って、塗工層の透明支持体の幅方向の両方の端部領域に活性エネルギー線を照射して、この両端部領域を予備硬化させる工程である。図10は、予備硬化工程を模式的に示す断面図である。図10において、塗工層の幅方向(搬送方向と直交する方向)の端部領域82bは、塗工層の端部を含み端部から所定の幅の領域である。
予備硬化工程において、端部領域を予め硬化させておくことにより、端部領域において、透明支持体81との密着性を一段と高めて、硬化工程後の工程で、硬化樹脂の一部が剥がれて落下し、工程が汚染されるのを防止することができる。端部領域82bは、塗工層82の端部から、例えば、5mm以上50mm以下の領域とすることができる。
塗工層の端部領域への活性エネルギー線の照射は、図9及び図10を参照して、例えば、塗工ゾーン83(乾燥を行う場合には、乾燥ゾーン84)を通過した塗工層82を有する透明支持体81に対して、塗工層82側の両端部近傍にそれぞれ設置された紫外線照射装置等の活性エネルギー線照射装置85を用いて、活性エネルギー線を照射することにより行うことができる。活性エネルギー線照射装置85は、塗工層82の端部領域82bに活性エネルギー線を照射できるものであればよく、透明支持体81側に設置されていてもよい。
活性エネルギー線の種類及び光源については本硬化工程と同様である。活性エネルギー線が紫外線である場合、紫外線のUVAにおける積算光量は、10mJ/cm2以上400mJ/cm2以下であることが好ましく、50mJ/cm2以上400mJ/cm2以下であることがより好ましい。50mJ/cm2以上となるように照射することにより、本硬化工程にける変形をより効果的に防止することができる。なお、400mJ/cm2を超えると、硬化反応が過度に進行する結果、硬化部分と未硬化部分との境界において、膜厚差や内部応力の歪みに起因して樹脂剥がれが生じる場合がある。
[本発明の防眩フィルムの用途]
以上のようにして得られる本発明の防眩フィルムは画像表示装置などに用いられるものであり、通常、視認側偏光板の視認側保護フィルムとして偏光フィルムに貼合して用いられる(すなわち、画像表示装置の表面に配置される。)。また、すでに述べたとおり、透明支持体として偏光フィルムを用いた場合には、偏光フィルム一体型の防眩フィルムが得られるため、かかる偏光フィルム一体型の防眩フィルムを画像表示装置に用いることもできる。本発明の防眩フィルムを備えた画像表示装置は、広い観察角度において十分な防眩性を有し、さらに白ちゃけ及びギラツキの発生をともに良好に防止することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。例中、含有量ないし使用量を表す「%」及び「部」は、特記ない限り重量基準である。以下の例における金型又は防眩フィルムの評価方法は、次のとおりである。
〔1〕防眩フィルムの表面形状の測定
(表面凹凸形状の表面粗さパラメータ)
JIS B 0601に準拠した(株)ミツトヨ製の表面粗さ測定機サーフテストSJ−301を用いて、防眩フィルムの表面粗さパラメータを測定した。サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。
(表面凹凸形状の標高から計算される複素振幅のパワースペクトル)
三次元顕微鏡PLμ2300(Sensofar社製)を用いて、測定サンプルである防眩フィルムの防眩層の表面凹凸形状の標高を測定した。サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて、測定サンプルの防眩層とは反対側の面をガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は10倍として測定を行った。水平分解能Δx及びΔyはともに1.66μmであり、測定面積は1270μm×950μmであった。得られた測定データの中央部から512個×512個(測定面積で850μm×850μm)のデータをサンプリングし、防眩フィルムが有する表面凹凸形状(防眩層の表面凹凸形状)の標高を二次元関数h(x,y)として求めた。次いで、二次元関数h(x,y)より複素振幅を二次元関数ψ(x,y)を計算した。複素振幅を計算する際の波長λは550nmとした。この二次元関数ψ(x,y)を離散フーリエ変換して二次元関数Ψ(f,f)を求めた。二次元関数Ψ(f,f)の絶対値を二乗して二次元パワースペクトルの二次元関数H(f,f)を計算し、原点からの距離fの関数である一次元パワースペクトルの一次元関数H(f)を計算した。各サンプルにつき5箇所の表面凹凸形状について標高を測定し、それらのデータから計算される一次元パワースペクトルの一次元関数H(f)の平均値を各サンプルの一次元パワースペクトルの一次元関数H(f)とした。
〔2〕防眩フィルムの光学特性の測定
(ヘイズ)
防眩フィルムの全ヘイズは、防眩フィルムを光学的に透明な粘着剤を用い、測定サンプルの防眩層とは反対側の面をガラス基板に貼合し、該ガラス基板に貼合された防眩フィルムについて、ガラス基板側から光を入射させ、JIS K 7136に準拠した方法により、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150」型を用いて、測定した。表面ヘイズは、防眩フィルムの内部ヘイズを求め、次式
表面ヘイズ=全ヘイズ−内部ヘイズ
によって全ヘイズから内部ヘイズを差し引くことで求めた。内部ヘイズは、全ヘイズを測定した後の測定サンプルの防眩層面にヘイズがほぼ0のトリアセチルセルロースフィルムをグリセリンで貼り付けた後、全ヘイズと同様にして測定した。
(透過鮮明度)
JIS K 7105に準拠した方法により、スガ試験機(株)製の写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの透過鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて、測定サンプルの防眩層とは反対側の面をガラス基板に貼合してから、測定に供した。この状態でガラス基板側から光を入射させ、測定を行った。ここでの測定値は、暗部と明部の幅がそれぞれ0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである5種類の光学くしを用いて、それぞれ測定された値の合計値である。
(光の入射角45°で測定される反射鮮明度)
JIS K 7105に準拠した方法により、スガ試験機(株)製の写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの反射鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて、測定サンプルの防眩層とは反対側の面を黒色アクリル基板に貼合してから、測定に供した。この状態で防眩層面側から光を45°で入射させ、測定を行った。ここでの測定値は、暗部と明部の幅がそれぞれ0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて、それぞれ測定された値の合計値である。
(光の入射角60°で測定される反射鮮明度)
JIS K 7105に準拠した方法により、スガ試験機(株)製の写像性測定器「ICM−1DP」を用いて、防眩フィルムの反射鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて、測定サンプルの防眩層とは反対側の面を黒色アクリル基板に貼合してから、測定に供した。この状態で防眩層面側から光を60°で入射させ、測定を行った。ここでの測定値は、暗部と明部の幅がそれぞれ0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて、それぞれ測定された値の合計値である。
〔3〕防眩フィルムの防眩性能の評価
(映り込み、白ちゃけの目視評価)
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、測定サンプルの防眩層とは反対側の面を黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で防眩層側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの程度、白ちゃけの程度を目視で評価した。映り込みに関しては、防眩フィルムを正面から観察したときの映り込みの程度と斜め30°から観察したときの映り込みの程度をそれぞれ評価した。映り込み及び白ちゃけは、それぞれ1から3の3段階で次の基準により評価した。
映り込み 1:映り込みが観察されない。
2:映り込みが少し観察される。
3:映り込みが明瞭に観察される。
白ちゃけ 1:白ちゃけが観察されない。
2:白ちゃけが少し観察される。
3:白ちゃけが明瞭に観察される。
(ギラツキの評価)
ギラツキは次の手順で評価した。すなわち、まず図11に平面図で示すようなユニットセルのパターンを有するフォトマスクを用意した。この図において、ユニットセル100は、透明な基板上に、線幅10μmでカギ形のクロム遮光パターン101が形成され、そのクロム遮光パターン101の形成されていない部分が開口部102となっている。ここでは、ユニットセルの寸法が211μm×70μm(図の縦×横)、したがって開口部の寸法が201μm×60μm(図の縦×横)のものを用いた。図示するユニットセルが縦横に多数並んで、フォトマスクを形成する。
そして、図12に模式的な断面図で示すように、フォトマスク113のクロム遮光パターン111を上にしてライトボックス115に置き、ガラス板117に粘着剤で防眩フィルム110をその防眩層が表面となるように貼合したサンプルをフォトマスク113上に置く。ライトボックス115の中には、光源116が配置されている。この状態で、サンプルから約30cm離れた位置119で目視観察することにより、ギラツキの程度を7段階で官能評価した。レベル1はギラツキが全く認められない状態、レベル7はひどくギラツキが観察される状態に該当し、レベル4はごくわずかにギラツキが観察される状態である。
(コントラストの評価)
市販の液晶テレビ〔ソニー(株)製の“KDL-32EX550”〕 から表裏両面の偏光板を剥離した。それらオリジナル偏光板の代わりに、背面側及び表示面側とも、住友化学(株)製の偏光板“スミカラン SRDB831E” を、それぞれの吸収軸がオリジナルの偏光板の吸収軸と一致するように粘着剤を介して貼合し、さらに表示面側偏光板の上には、以下の各例に示す防眩フィルムを凹凸面が表面となるように粘着剤を介して貼合した。こうして得られた液晶テレビを暗室内で起動し、(株)トプコン製の輝度計“BM5A”型を用いて、黒表示状態及び白表示状態における輝度を測定し、コントラストを算出した。ここでコントラストは、黒表示状態の輝度に対する白表示状態の輝度の比で表される。結果は防眩フィルムを貼合した状態で測定されたコントラストを、防眩フィルムを貼合しない状態で測定したコントラストの比で示した。
〔4〕防眩フィルム製造用のパターンの評価
作成したパターンデータを2階調の二値化画像データとし、階調を二次元の離散関数g(x,y)で表した。離散関数g(x,y)の水平分解能Δx及びΔyはともに、2μmとした。得られた二次元関数g(x,y)を離散フーリエ変換して、二次元関数G(f,f)を求めた。二次元関数G(f,f)の絶対値を二乗して二次元パワースペクトルの二次元関数Γ(f,f)を計算し、原点からの距離fの関数である一次元パワースペクトルの一次元関数Γ(f)を計算した。
<実施例1>
(防眩フィルム製造用の金型の作製)
直径300mmのアルミロール(JISによるA6063)の表面に銅バラードめっきが施されたものを準備した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚みは、約200μmとなるように設定した。その銅めっき表面を鏡面研磨し、研磨された銅めっき表面に感光性樹脂を塗布、乾燥して感光性樹脂膜を形成した。ついで、図13に示すパターンAを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光し、現像した。レーザ光による露光、及び現像はLaser Stream FX((株)シンク・ラボラトリー製)を用いて行った。感光性樹脂膜としてはポジ型の感光性樹脂を含むものを使用した。ここで、パターンAはランダムな明度分布を有するパターンから、複数のガウス関数型のバンドパスフィルターを通過させて作成したものであり、開口率は45%であり、一次元パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.01μm−1における強度Γ(0.01)との比Γ(0.01)/Γ(0.002)は4.8であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.02μm−1における強度Γ(0.02)との比Γ(0.02)/Γ(0.002)は0.4であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.04μm−1における強度Γ(0.04)との比Γ(0.04)/Γ(0.002)は5.5である。
その後、塩化第二銅液で第1エッチング処理を行った。その際のエッチング量は5μmとなるように設定した。第1エッチング処理後のロールから感光性樹脂膜を除去し、再度、塩化第二銅液で第2エッチング処理を行った。その際のエッチング量は12μmとなるように設定した。その後、クロムめっき加工を行った。このとき、クロムめっき厚みが6μmとなるように設定した。クロムめっきが施されたロールを以下の条件でラッピング研磨し、金型Aを作製した。
研磨材:マイクロポリッシュ(粒度0.05μmの酸化アルミナ研磨材)(ムサシノ電子株式会社製)
研磨布:クロス(レッド)(ムサシノ電子株式会社製)
ロール回転速度:60rpm
押し付け圧:1.1kPa
(防眩フィルムの作製)
以下の各成分が酢酸エチルに固形分濃度60%で溶解されており、硬化後に1.53の屈折率を示す膜を形成し得る紫外線硬化性樹脂組成物Aを準備した。
ペンタエリスリトールトリアクリレート 60部
多官能ウレタン化アクリレート 40部
(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)
ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキシド 5部
この紫外線硬化性樹脂組成物Aを厚み60μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、乾燥後の塗布層の厚みが5μmとなるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、先に得られた金型Aの成形面(表面凹凸形状を有する面)に、乾燥後の塗工層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cmの高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cmとなるように照射して、塗工層を硬化させることで防眩フィルムを製造した。この後、得られた防眩フィルムを金型から剥離して、TACフィルム上に防眩層を備えた透明な防眩フィルムAを作製した。
<実施例2>
図14に示すパターンBを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光したこと以外は実施例1の金型A作製と同様にして金型Bを作製し、金型Aを金型Bに置き換えた以外は実施例1と同様にして防眩フィルムを作製した。この防眩フィルムを防眩フィルムBとする。ここで、パターンBはランダムな明度分布を有するパターンから、複数のガウス関数型のバンドパスフィルターを通過させて作成したものであり、開口率は40%であり、一次元パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.01μm−1における強度Γ(0.01)との比Γ(0.01)/Γ(0.002)は3.7であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.02μm−1における強度Γ(0.02)との比Γ(0.02)/Γ(0.002)は0.3であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.04μm−1における強度Γ(0.04)との比Γ(0.04)/Γ(0.002)は4.6である。
<実施例3>
図15に示すパターンCを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光したこと以外は実施例1の金型A作製と同様にして金型Cを作製し、金型Aを金型Cに置き換えた以外は実施例1と同様にして防眩フィルムを作製した。この防眩フィルムを防眩フィルムCとする。ここで、パターンCはランダムな明度分布を有するパターンから、複数のガウス関数型のバンドパスフィルターを通過させて作成したものであり、開口率が45%であり、一次元パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.01μm−1における強度Γ(0.01)との比Γ(0.01)/Γ(0.002)は3.5であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.02μm−1における強度Γ(0.02)との比Γ(0.02)/Γ(0.002)は0.42であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.04μm−1における強度Γ(0.04)との比Γ(0.04)/Γ(0.002)は5.5である。
<比較例1>
図16に示すパターンDを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光したこと以外は実施例1の金型A作製と同様にして金型Dを作製し、金型Aを金型Dに置き換えた以外は実施例1と同様にして防眩フィルムを作製した。この防眩フィルムを防眩フィルムDとする。ここで、パターンDはランダムな明度分布を有するパターンから、複数のガウス関数型のバンドパスフィルターを通過させて作成したものであり、開口率が35%であり、一次元パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.01μm−1における強度Γ(0.01)との比Γ(0.01)/Γ(0.002)は4.8であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.02μm−1における強度Γ(0.02)との比Γ(0.02)/Γ(0.002)は0.5であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.04μm−1における強度Γ(0.04)との比Γ(0.04)/Γ(0.002)は6.9である。
<比較例2>
直径200mmのアルミロール(JISによるA6063)を使用し、図17に示すパターンEを繰り返し並べたパターンを感光性樹脂膜上にレーザ光によって露光したこと以外は実施例1の金型A作製と同様にして金型Eを作製し、金型Aを金型Eに置き換えた以外は実施例1と同様にして防眩フィルムを作製した。この防眩フィルムを防眩フィルムEとする。ここで、パターンEはランダムな明度分布を有するパターンから、複数のガウス関数型のバンドパスフィルターを通過させて作成したものであり、開口率が45.0%であり、一次元パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.01μm−1における強度Γ(0.01)との比Γ(0.01)/Γ(0.002)は4.2であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.02μm−1における強度Γ(0.02)との比Γ(0.02)/Γ(0.002)は14であり、空間周波数0.002μm−1における強度Γ(0.002)と空間周波数0.04μm−1における強度Γ(0.04)との比Γ(0.04)/Γ(0.002)は208である。
<比較例3>
直径300mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面を鏡面研磨し、研磨されたアルミ面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、ジルコニアビーズTZ−SX−17(東ソー(株)製、平均粒径:20μm)を、ブラスト圧力0.1MPa(ゲージ圧、以下同じ)、ビーズ使用量8g/cm(ロールの表面積1cmあたりの使用量、以下同じ)でブラストし、アルミロール表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つきアルミロールに対し、無電解ニッケルめっき加工を行い、金型Fを作製した。このとき、無電解ニッケルめっき厚みが15μmとなるように設定した。金型Aを金型Fに置き換えた以外は、実施例1と同様にして防眩フィルムを作製した。この防眩フィルムを防眩フィルムFとする。
<比較例4>
直径200mmのアルミロール(JISによるA5056)の表面に銅バラードめっきが施されたものを準備した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚さは、約200μmであった。その銅めっき表面を鏡面研磨し、さらにその研磨面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、ジルコニアビーズ“TZ−SX−17”(東ソー(株)製、平均粒径:20μm)を、ブラスト圧力0.05MPa(ゲージ圧、以下同じ)、ビーズ使用量6g/cmでブラストし、アルミロール表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つき銅めっきアルミロールにクロムめっき加工を行い、金型Gを作製した。このとき、クロムめっき厚みが6μmとなるように設定した。金型Aを金型Gに置き換えた以外は、実施例1と同様にして防眩フィルムを作製した。この防眩フィルムを防眩フィルムGとする。
[評価結果]
以上の実施例及び比較例で得られた防眩フィルムについて、評価結果を表1に示す。
Figure 2015152660
本発明の要件を満たす防眩フィルムA〜C(実施例1〜3)は低ヘイズであるにも拘わらず、観察角度が正面であっても斜めであっても優れた防眩性を有し、白ちゃけ及びギラツキの抑制効果も十分なものであった。一方、防眩フィルムD(比較例1)は白ちゃけが発生するものであった。防眩フィルムE(比較例2)は、斜めから観察した際の防眩性が不十分であった。防眩フィルムF(比較例3)はギラツキが発生しやすいものであった。防眩フィルムG(比較例4)は、斜めから観察したときの防眩性が不十分であった。
40 金型用基材,
41 第1めっき工程及び研磨工程を経た金型用基材表面(めっき層),
46 第1エッチング処理によって形成された第1の表面凹凸形状,
47 第2エッチング処理によって形状鈍化した表面凹凸形状,
50 感光性樹脂膜, 60 マスク,
70 クロムめっき後の表面凹凸形状が形状鈍化した表面,
71 クロムめっき層,
80 送り出しロール, 81 透明支持体, 83 塗工ゾーン,
86 活性エネルギー線照射装置, 87 ロール形状の金型,
88,89 ニップロール, 90 フィルム巻き取り装置
103 最低標高面, 104 最高標高面。
本発明の防眩フィルムは、液晶ディスプレイなどの画像表示装置に有用である。

Claims (2)

  1. 透明支持体と、その上に形成された微細な表面凹凸形状を有する防眩層とを備える防眩フィルムであって、
    全ヘイズが0.1%以上3%以下であり、
    表面ヘイズが0.1%以上2%以下であり、
    前記表面凹凸形状の粗さ曲線のクルトシスRkuが4.9以下であり、
    下記パワースペクトル算出方法により求められる複素振幅のパワースペクトルが、以下の(1)〜(3)の条件:
    (1)パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度H(0.002)と、パワースペクトルの空間周波数0.01μm−1における強度H(0.01)との比H(0.01)/H(0.002)が0.02以上0.6以下であること;
    (2)パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度H(0.002)と、パワースペクトルの空間周波数0.02μm−1における強度H(0.02)との比H(0.02)/H(0.002)が0.005以上0.05以下であること;及び
    (3)パワースペクトルの空間周波数0.002μm−1における強度H(0.002)と、パワースペクトルの空間周波数0.04μm−1における強度H(0.04)との比H(0.04)/H(0.002)が0.0005以上0.01以下であること
    をいずれも満たすことを特徴とする防眩フィルム。
    <パワースペクトル算出方法>
    (A)前記表面凹凸形状の標高の平均から仮想的な平面である平均面を定める;
    (B)前記表面凹凸形状の標高が最も低い点を含み、前記平均面に平行する仮想的な平面である最低標高面と、前記表面凹凸形状の標高が最も高い点を含み、前記平均面に平行する仮想的な平面である最高標高面とを定める;
    (C)前記最低標高面に垂直な主法線方向から入射し、前記最高標高面から出射する波長550nmの平面波について前記表面凹凸形状の標高と防眩層の屈折率から前記最高標高面における複素振幅を計算したときの該複素振幅のパワースペクトルを求める。
  2. 暗部と明部の幅が0.125mm、0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである5種類の光学くしを用いて測定される透過鮮明度の和Tcが375%以上であり、
    暗部と明部の幅が0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて光の入射角45°で測定される反射鮮明度の和Rc(45)が180%以下であり、
    暗部と明部の幅が0.25mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類の光学くしを用いて光の入射角60°で測定される反射鮮明度の和Rc(60)が240%以下であることを特徴とする請求項1に記載の防眩フィルム。
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