JP5057259B2 - コイルフィルタ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器の回路基板に表面実装されて、直流電源又は信号等に重畳されて伝播する電磁波や高次調波或いは高周波信号を阻止するコイルフィルタ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年の電子機器は、軽薄短小という言葉に象徴されるように、製品の小型化に伴い、部品の小型化及び小型部品の自動実装等が進み、インダクタ部品においても表面実装に対応した様々なチップ型のインダクタが考案され用いられている。
チップ型インダクタとしては、セラミックやフェライトを材料としたグリーンシートに厚膜導体を形成して積層構造にして成形・焼成したもの、セラミックやフェライトを材料とした基板に厚膜や薄膜導体形成技術を用いて渦巻き状のコイルとして電極を形成したもの、チップ形の母材に導体をメタライズしレーザーなどで切削してコイル状に形成したもの、或いはフェライトやセラミック等からなる絶縁体に被膜銅線を巻回し角型のチップ状に成形したリードレスのインダクタ等がある。
【0003】
しかし、上記のような構造ではパッケージの影響や構造上の浮遊容量、寄生容量等のため使用周波数域に制限が生ずることや、導体抵抗が大きいことによる電流容量の不足、或いは磁気飽和、Q値や挿入損失の問題等が発生する。
そこで、低損失を要求される送信部やアンテナのマッチング、電流の大きな電源等にインダクタを用いる場合には、導体線を巻回した単純な構造の巻線コイルが要求され使用されることがある。このような導体線を巻回したコイルには、用途に応じてフェライト等の磁性体やセラミック材を芯材としたものや、空芯のコイルなどが使用されている。
【0004】
ところで、電子機器の回路基板の電源やデジタル信号等に高(次)調波が重畳することや、電源やデジタル信号等から電磁波が漏洩するいわゆるEMI(Electro−Magnetic Interference)と呼ばれるノイズ(電磁気干渉)対策のために抵抗の挿入やコンデンサによる接地等の対策は一般に行われており、コイルもその特性から、電圧低下やDCレベルの変動に対する要求が厳しい場合には、よく用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、通常のコイルは分布容量のため共振点が存在し、一般的には共振点がインダクタとしての使用限界周波数になる。またコイルはアンテナにもなり得るので、特定の周波数においてはEMI対策には逆効果になることもある。特にデジタル機器のように広帯域に渡って高次調波が発生する場合には使用上注意が必要である。さらに磁束の影響によるコイル間の結合や基板アース面にも注意する必要があり、実装上はその向きや極性、近接するパターンを避けるなどの考慮が大切になる。
【0006】
また、単純に導体線を巻回した構造のコイルでは回路接続のための端子(電極)として用いるコイルの両端部の半田付け部分の形状と処理が問題になる。自動実装機での取扱い易さの追求のため、なるべくコイル両端部の半田付け部分を多くしてほぼ一周する部分を半田処理したり、基板に接する端子部分を水平になるように加工したりと様々な工夫が見られるが、プラスチックのエンボス部分に収めたテープアンドリール品では、コイルの両端子部分の、導体線の切断面の角がプラスチックエンボスの内側面に引掛かり実装歩留まりが悪いという問題も起きている。
【0007】
以上のような問題を解決するために本発明では、自動実装機による電子機器の回路基板への表面実装搭載に適し、部品どうしの配置を考慮する必要が少ない、直流電源又は信号等に重畳されて伝播する電磁波や高次調波或いは高周波信号等を阻止するための高周波特性の優れた広帯域のアイソレーションを実現するコイル形状のコイルフィルタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のコイルフィルタは、電子回路基板等の電子機器の直流電源又は信号等に重畳されて伝播する電磁波或いは高周波信号を阻止するためのフィルタであって、隣接する導体線間が電気的に絶縁された導体線をコイル状に巻回した中間部の両側に、一回転以上巻回した導体線部分がリング状に導通するショートリングを構成するようにコイル端部の導体線間を半田付け又は溶接により予め電気的に接合させ、前記ショートリングを構成する電極部を含むコイル状に巻回した導体線の外形を、電子回路基板への実装が容易になるように円筒形に形成すると共に、自動実装機による実装率の向上のため該導体線の端部がコイル形状の端面及び最外周部よりも内側に入るように形成し、前記コイル端部のショートリング部分を一回転以上最大巻数未満の任意の巻数とすることで所望の特性が得られるように構成したことを特徴としている。
また、前記中間部の隣接する導体線それぞれには絶縁皮膜が施され、前記ショートリングを構成するコイル端部は所望の実装基板に対応した半田又は金属によるメッキ処理が施されていることを特徴としている。
また、前記コイル状に巻回した導体線の内側に磁性体からなるコア材又は棒状の芯材が配設され、該コア材又は芯材はコイル両端部に構成されたショートリング部分の内側に配設されていることを特徴としている。
また、前記コイル状に巻回した導体線の内側に配設した前記コア材又は芯材が抜け落ちないように、該導体線の端部がコイル形状の端面及び最外周部よりも内側に入るように形成したことを特徴としている。
【0009】
また、本発明のコイルフィルタの製造方法は、上記記載のコイルフィルタにおいて、導体線をコイル状に巻回した後に、該コイル内径と同一又は該コイル内径より小さい外形の磁性体からなるコア材又は棒状の芯材を挿入するようにしたことを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明にかかるコイルフィルタの、実施の形態の具体例を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明における第1の実施の形態によるコイルフィルタの形状を示す概略図である。
図1(a)は正面図、図1(b)は側面図を示しており、用途に応じた適当な太さの導体線を、隣接する導体線1a間が電気的に絶縁されるように一定間隔の疎巻状態にして中間部をコイル状に巻回し、両端部1bを電気的に接合することでコイルの磁束を遮るショートリングを構成している。ここで、導体線の端部1cはコイル形状の端面の最外周部よりも内側に入るように加工され、図示していないが導体線の端部1cはスポット溶接やレーザー半田等による接合処理が施され実装する前から電気的な接続が確保され確実にショートリングを構成するようになっている。
【0011】
このように導体線の端部1cをコイル形状の端面の最外周部よりも内側に入れることで、自動実装機に用いられるプラスチックのエンボスキャリアの内側面に引っ掛かる可能性のあった従来の単純に導体線をカットした形状の場合の基板実装に比べ、実装率の低下が大幅に改善される。
【0012】
また、ショートリングを構成することで、マッチングや共振回路としての用途のインダクタ本来の特性からは離れるが、フェライトビーズインダクタ等に代表されるEMI除去フィルタとしての効果は向上する。一般のインダクタは部品相互の磁束により向き配置の他、GND(接地)パターンによる影響等や場合によっては極性も考慮する必要があるが、ショートリングを構成している本発明によるコイルフィルタでは閉磁路型のインダクタと同様に漏洩磁束による影響を考慮する必要が殆どないため部品配置の自由度が大きい。従って、より大きなアイソレーションを必要とする場合は多段接続構成にすることで所望の特性を得ることが可能になる。
【0013】
スポット溶接は、安価で簡便であるため電子部品の組立てにおいて多用されており、2つの電極で複数の被溶接材を挟みパルス上の電圧を印加して被溶接材の接触部の電気抵抗による発熱を利用して被溶接材を接合するものである。上述したように導体線端部1cをコイル形状の最外周部よりも内側にいれることで、スポット溶接用の電極の配置及び溶接加工も容易になる。
【0014】
電気的に接続する方法として半田付けを行う方法もある。最近は環境を考慮して鉛フリー半田が用いられるようになり様々な半田が登場しているが、材料の選定によっては溶融点も高くなるので、半田の種類を特定できない多種の実装基板に対応するためには部品単体としては高温耐熱の絶縁被膜を施した銅導体細線に高融点の半田を使用する必要がある。なお、実装する電子回路基板側の理由等によりコイルフィルタ側の電極(端子)に使用する半田を特定できない場合は、金メッキ処理を施すことも可能である。勿論、半田濡れ性向上のためフラックス処理することも可能である。
【0015】
ところで、1608、1005等と称されるチップ実装に用いられる部品は長さや幅がほぼ決められており、本発明のコイルフィルタも例外ではない。しかし、本発明によるコイルフィルタは、通常の巻線インダクタが1ターン単位でしか設定できないのに対し、長さ或いは巻数が一定だとしてもショートリング部分を最低1ターン〜決められた最大巻数までの任意の長さ或いは巻数に設定できるので、リニアに近い特性の変化をさせることができ、所望の特性のコイルフィルタを得ることができる。
【0016】
図2は、図1に示すコイルフィルタにコア材を挿入した概略図である。
図2(a)は正面図、図2(b)は側面図を示しており、図1と同様に用途に応じた適当な太さの導体線を、隣接する導体線1a間が電気的に絶縁されるように一定間隔の疎巻状態にして中間部をコイル状に巻回し、両端部1bを電気的に接合することでコイルの磁束を遮るショートリングを構成している。
【0017】
図1の空芯コイルに対し、図2ではフェライトを用いた磁性体から成るコア材1dがコイルの内側に挿入されている。コア材を挿入後、導体線の端部1cをコイル形状の端面の最外周部よりも内側に入るように加工し、図示していないが導体線の端部1cをスポット溶接やレーザー半田等による接合処理を施すことで電気的な接続を確実なものとしている。また、導体線の端部1cをコイル形状の外周部の内側に入るように加工することによって挿入したコア材1dが抜け落ちることもなくなり、従来の巻線コイルのようにコイルの内径とコア材の外形が同じか、コア材の外形を少し大きくして無理やり挿入することで抜け落ちないようにする等の特別な工夫を必要としない。
【0018】
温度変化に対するコイル形状の変化に着目すると、コイル状に巻回した導体線は線膨張が支配的であるため、スプリングバックして硬性を保っているコイルに対して温度を変化させても、そのコイル内径は殆ど変らない。
従来の、フェライトコア等に直接導体線を巻回したものや、導体線を巻回したコイルにコア材が抜け落ちないようにコイル内径よりも大きな外形のコア材を無理に挿入したものは、体膨張をするコア材の影響を受けコイル径が変化して特性も変化してしまう。
このことから、導体線をコイル状に巻回した後に、そのコイル内径と同一もしくはそのコイル内径より小さい外形を有するフェライトコア等のコア材を挿入し、挿入したコア材が抜け落ちないように導体線の端部をコイル形状の外周部の内側に入るように加工する製造方法を用いることで、温度変化に対する特性変化の少ないコイルフィルタを作ることが可能になる。
【0019】
フェライトコアをコイル内に挿入する場合はコイル両端のショートリング部分の内側に収まるようにすることで磁束を遮るショートリングとしての効果が発揮される。コア材がショートリングの外側にはみ出している場合は、コア材を通じて磁束が外に漏れるのでフィルタとしての効果が薄れるだけでなく、周辺に配置された部品に対する影響を与え、また実装する基板の配線パターンや周辺部品からの影響を受けて特性が変化することになる。
【0020】
また、コイル形状の内側に挿入する磁性体から成るコア材に代わり、ガラス棒、プラスチック棒、セラミック棒、或いは抵抗体(メルフ型抵抗器)やその他の金属材料をそれぞれの用途に応じて用いることも可能である。例えば、本発明によるコイルフィルタを複数個組合せてプラスチックパッケージに入れた一体型のフィルタを形成する場合に、パッケージと同一種類のプラスチックを棒状の芯材として用いることでパッケージ化した前後の特性の変化が少なくなり、単体部品として予め既知の特性のコイルフィルタを組合せることができ、一体型にした後も特性の変化が少ないフィルタを得ることができる。
【0021】
ところで、従来からEMIフィルタとして使用されているフェライトビーズインダクタは、フェライトコアに貫通端子を通すというシンプルな構造にすることで浮遊容量を減らし、フェライトの材質を選ぶことでノイズを熱に変換して吸収するようにし、高周波域ではフィルタ内部に抵抗成分を持たせ低周波域ではインダクタンス成分主体になるようにしたものである。表面実装に対応したチップ型のフェライトビーズインダクタには、フェライトに導体パターンをコイル状或いはストレートに形成した積層型のものや、金属板外部電極と内部導体部分を一体に形成しフェライトで挟み込んだもの等がある。
【0022】
本発明によるコイルフィルタは、このフェライトビーズインダクタに代わるもので、さらに、挿入するコア材の磁性体材料とコイルの線径、巻数、巻線の間隔等の組合せにより、目的・用途に応じた広帯域のアイソレーション特性、或いは必要なアイソレーション特性を得ることが可能になり、直流抵抗が少ないことから電源用途のフィルタには最適である。
【0023】
図3は、本発明における第2の実施の形態によるコイルフィルタの形状を示す概略図である。
図3(a)は正面図、図3(b)は側面図を示しており、用途に応じた適当な太さの導体線を、隣接する導体線1a間が電気的に絶縁されるように絶縁被膜で覆われた導体線を密巻状態にして中間部をコイル状に巻回し、両端部1bの被膜部を剥離して半田或いは金メッキ処理等を施し電気的に接合することでコイルの磁束を遮るショートリングを構成している。導体線の端部1cは、図1と同様コイル形状の端面の最外周部より内側に入るように加工され、図示していないが導体線の端部1cはスポット溶接やレーザー半田等による接合処理が施され実装する前から電気的な接続が確保され確実にショートリングを構成するようになっている。
【0024】
密着巻にした場合は、ショートリング間にできる容量に加え線間にできる容量のため使用周波数領域は下がるが、図1に示した疎巻のコイルに比べインダクタンスを大きくでき、またLとCの複合作用により使用周波数帯でのアイソレーション特性を大きくすることも可能である。さらに、中間部の導体線を多重或いは多層のコイル状に巻回してインダクタンス値を大きくし、より低い周波数領域で使用できるフィルタにすることもできる。
【0025】
図4は、図3に示すコイルフィルタにコア材を挿入した概略図である。
図4(a)は正面図、図4(b)は側面図を示しており、図3と同様に用途に応じた適当な太さの導体線を、隣接する導体線1a間が電気的に絶縁されるように絶縁被膜で覆われた導体線を密巻状態にして中間部をコイル状に巻回し、両端部1bの被膜部を剥離して半田或いは金メッキ処理等を施し電気的に接合することでコイルの磁束を遮るショートリングを構成している。
【0026】
図3の空芯コイルに対し、図4ではフェライトを用いた磁性体から成るコア材1dがコイルの内側に挿入されている。図2と同様にコア材1dを挿入後、導体線の端部1cをコイル形状の端面の最外周部より内側に入るように加工し、導体線の端部1cをスポット溶接やレーザー半田等による接合処理を施すことで電気的な接続を確実なものとしている。導体線の端部1cをコイル形状の外周部の内側に入るように加工することによって挿入したコア材1dが抜け落ちることもなくなる。
【0027】
図2で説明したように、挿入するコア材の磁性体材料とコイルの巻数等の組合せにより、目的・用途に応じた広帯域のアイソレーション特性、或いは必要なアイソレーション特性を得ることが可能になる。また導体線として導体細線を撚り合わせたリッツ線を用いた場合はアイソレーション特性が改善される。特に、フェライトを挿入した場合はフェライトの効果が発揮できる周波数帯における改善が大きい。
【0028】
リッツ線のショートリングを作るには、撚り合わせた複数本の絶縁被膜銅線全てをショートさせるのが難しいので、図示していないが、フェライトコア材の両端に導体リングを形成し、この導体リングに複数箇所でスポット溶接する。リッツ線は撚ってあるため複数の銅線の、どこかの被膜が必ず破られ、結果として全ての線が導体リングにより形成されたショートリングに接続される。
【0029】
図5は、従来の空芯型の巻線コイルによるインダクタの形状を示す概略図である。
図5(a)は正面図、図5(b)は側面図を示しており、適当な太さの導体線を、隣接する導体線2a間が電気的に絶縁されるように絶縁被膜で覆われた導体線を密巻状態にして中間部をコイル状に巻回し、両端部2bの被膜部を剥離して半田処理等を施したインダクタである。
【0030】
図5のような導体線の端部2cを単純に切断した従来の形状のインダクタの場合には、自動実装機におけるプラスチックによるエンボステープを用いた場合、テープアンドリール品の輸送等の際にコイルの両端子部分の、導体線の切断面の角がプラスチックエンボスの内側面に引掛かり、実装率を下げるという問題があった。
【0031】
図6は、従来のコア材を挿入した巻線コイルによるインダクタの形状を示す概略図である。
図6(a)は正面図、図6(b)は側面図を示しており、図5と同様に適当な太さの導体線を、隣接する導体線2a間が電気的に絶縁されるように絶縁被膜で覆われた導体線を密巻状態にして中間部をコイル状に巻回し、両端部2bの被膜部を剥離して半田処理等を施し、フェライトを用いた磁性体から成るコア材2dをコイルの内側に挿入したものである。
【0032】
図7は、インダクタのインピーダンス特性を示す概略図である。
図7(a)は一般のフェライトビーズインダクタのインピーダンス特性、図7(b)は一般的に用いられる高周波フィルタ回路用の空芯コイルのインピーダンス特性を示しており、図7(a)の場合はR(抵抗)成分が主体で損失が大きいことがわかる。また図7(b)の場合はR(抵抗)成分が少なく損失も少ないのでQ値が高くなっている。
【0033】
本発明のコイルフィルタは、図7(a)のフェライトビーズインダクタに代わるもので、コイルの線径、巻数、巻線間隔、ショートリングの長さや挿入する磁性体のコア材の選定等により、希望する周波数帯域で効果のあるアイソレーション特性を得ることが可能になっている。
【0034】
図8は、コイルフィルタ及びインダクタの減衰特性を示す概略図である。
図8(a)は本発明のコイルフィルタのアイソレーション(減衰値)特性、図8(b)は一般の巻線コイルインダクタのアイソレーション特性を示しており、それぞれ(A)が単一使用での特性、(B)が2個直列に近接接続した特性を示している。
このように図8(b)に示す一般の巻線コイルインダクタでは磁気的結合により直列に近接接続した場合(B)は、線間容量等から生じる自己共振周波数ポイントが下がるが、アイソレーション効果は殆ど改善されない。
図8(a)に示す本発明のコイルフィルタはショートリングによりQ値は下がるが、広帯域にわたる高アイソレーションが保たれる。直列接続の場合もショートリングにより磁気的結合度が低下しているので、共振周波数も殆ど下がらず、さらに高いアイソレーションを得ることができる。
【0035】
図9は、自動実装用エンボスキャリアの形状を示す概略図である。
図9(b)はテープアンドリール品の正面図、図9(a)は側面断面図で、部品1、2が装着された状態を示している。3はテープ、3aは部品を装着する窪み(エンボス部)、3bはテープを送るための丸穴で、エンボス部3aの部品1、2が落ちないようにフィルム状のシート3c貼られており、部品実装の際に剥がされて部品が実装される。
【0036】
本発明のコイルフィルタは導体線の端部がコイル形状の端面の最外周部よりも内側に入るように加工されているので、自動実装機にエンボスキャリアによるテープを用いても導体線の切断面の角がプラスチックエンボスの内側面に引掛かることがなく、実装率が改善される。
【0037】
従来のテープアンドリール品に変って近年はバルク実装が登場している。図示していないが、バルク実装は、バラ状のチップ部品をチップ装着機にバルクフィーダー等を用いて整列させて供給し実装するもので、紙テープなどや包装材料等が使用される従来のものに代わり、地球資源及び環境の保護の面からも今後の流れになると思われる。またバルク実装は、保管スペースを少なくすることができ輸送エネルギーの削減にもつながる。
ところで、従来の巻線型のコイルインダクタは、端子(電極)を全周に配置することはできないので、角型に近い形に変形させて表裏などの向きを固定させる方法などや、角型のボビンに巻回すなどにより自動実装に対応させているという現実があるが、本発明によるコイルフィルタは、表裏や極性がなく突起箇所の無い円筒形にすることができるので、バルク実装の面でも適しているといえる。
円筒形にした場合は、モーター等を必要としない重力落下を利用したバルクフィーダを使用することができるという利点もある。
【0038】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明によれば、電子回路基板等の電子機器の直流電源又は信号等に重畳されて伝播する電磁波或いは高周波信号を阻止するためのフィルタであって、隣接する導体線間が電気的に絶縁された導体線をコイル状に巻回した中間部の両側に、一回転以上巻回した導体線部分がリング状に導通するショートリングを構成するようにコイル端部の導体線間を電気的に接合させ、導体線の端部がコイル形状の端面の最外周部よりも内側に入るように形成したので、ショートリングにより広帯域でのアイソレーション効果や部品相互の影響が少ないフィルタが実現でき、導体線端部がコイル端面の内側にあることで部品実装機による実装歩留まりが改善される効果がある。
また、前記中間部の導体線を多重または多層のコイル状に巻回すことによって、同一外形寸法でありながら、より低い周波数領域で使用出来る特性のフィルタを得ることができる。
また、コイル端部の導体線部分は、半田付け又は溶接により導体線間を電気的に接合したショートリングを構成しているので、ショートリングによる特性が確実に維持できる。
また、中間部の隣接する導体線間の導体線には絶縁皮膜が施され、ショートリングを構成するコイル端部は半田または金属によるメッキ処理が施されているので、密着巻きによりインダクタンス値を大きくでき、半田処理や金属メッキにより基板への実装が容易になる。
また、コイル端部のショートリング部分を一回転以上最大巻数未満の任意の巻数とすることで所望の特性が得られるように構成したので、搭載する電子回路に合わせたコイルフィルタを選択することができる。
また、ショートリングを構成する電極部を含むコイル状に巻回した導体線の外形を、電子回路基板等への実装が容易になるように円筒形に形成したので、バルク実装が可能になる。
【0039】
また、コイル状に巻回した導体線の内側に磁性体からなるコア材または棒状の芯材が配設されているので、芯材の選定により搭載する電子回路に合わせた周波数帯域でのアイソレーション特性を選択できる。
また、コイル状に巻回した導体線の内側に配設した磁性体からなるコア材または棒状の芯材が抜け落ちないように、導体線の端部がコイル形状の外周部の内側に入るように形成したので、コイル形状や芯材に特別な細工を必要とせず、さらにフィルタとしての初期特性を維持できる。
また、磁性体からなるコア材をコイル両端部に構成されたショートリング部分の内側に配設することで、磁束を外に出しにくくし、隣接する部品や基板等によるフィルタ特性への影響を抑える効果がある。
また、コイル状に巻回した導体線として複数本の絶縁被膜で覆われた導体線を撚り合わせたリッツ線を用いた場合には、アイソレーション特性が改善される効果がある。
また、リッツ線によるコイル形状の内側に磁性体からなるコア材または棒状の芯材を配設し、芯材の両端部に形成した導体リングにリッツ線の端部を複数箇所で溶接することでショートリングを構成する場合は、リッツ線の全ての線がショートリングに接続されるという効果がある。
また、請求項6または請求項7に記載のコイルフィルタおいて、導体線をコイル状に巻回した後に、コイル内径と同一またはコイル内径より小さい外形の磁性体からなるコア材または棒状の芯材を挿入するようにしたので、温度変化の影響が少ないフィルタ特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、第1の実施の形態によるコイルフィルタの形状を示す概略図である。
【図2】図1に示すコイルフィルタにコア材を挿入した概略図である。
【図3】本発明の、第2の実施の形態によるコイルフィルタの形状を示す概略図である。
【図4】図3に示すコイルフィルタにコア材を挿入した概略図である。
【図5】従来の空芯型の巻線コイルによるインダクタの形状を示す概略図である。
【図6】従来のコア材を挿入した巻線コイルによるインダクタの形状を示す概略図である。
【図7】インダクタのインピーダンス特性を示す概略図である。
【図8】コイルフィルタ及びインダクタの減衰特性を示す概略図である。
【図9】自動実装用エンボスキャリアの形状を示す概略図である。
【符号の説明】
1 コイルフィルタ
2 インダクタコイル
3 エンボスキャリア
Claims (5)
- 電子回路基板等の電子機器の直流電源又は信号に重畳されて伝播する電磁波或いは高周波信号を阻止するためのフィルタであって、
隣接する導体線間が電気的に絶縁された導体線をコイル状に巻回した中間部の両側に、一回転以上巻回した導体線部分がリング状に導通するショートリングを構成するようにコイル端部の導体線間を半田付け又は溶接により予め電気的に接合させ、
前記ショートリングを構成する電極部を含むコイル状に巻回した導体線の外形を、電子回路基板への実装が容易になるように円筒形に形成すると共に、自動実装機による実装率の向上のため該導体線の端部がコイル形状の端面及び最外周部よりも内側に入るように形成し、
前記コイル端部のショートリング部分を一回転以上最大巻数未満の任意の巻数とすることで所望の特性が得られるように構成したことを特徴とするコイルフィルタ。 - 前記中間部の隣接する導体線それぞれには絶縁皮膜が施され、前記ショートリングを構成するコイル端部は所望の実装基板に対応した半田又は金属によるメッキ処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載のコイルフィルタ。
- 前記コイル状に巻回した導体線の内側に磁性体からなるコア材又は棒状の芯材が配設され、該コア材又は芯材はコイル両端部に構成されたショートリング部分の内側に配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコイルフィルタ。
- 前記コイル状に巻回した導体線の内側に配設した前記コア材又は芯材が抜け落ちないように、該導体線の端部がコイル形状の端面及び最外周部よりも内側に入るように形成したことを特徴とする請求項3に記載のコイルフィルタ。
- 請求項3に記載のコイルフィルタにおいて、導体線をコイル状に巻回した後に、該コイル内径と同一又は該コイル内径より小さい外形の磁性体からなるコア材又は棒状の芯材を挿入するようにしたことを特徴とするコイルフィルタの製造方法。
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