JP5045286B2 - 内燃機関の点火装置 - Google Patents

Description

本発明は、内燃機関の点火装置に関する。

内燃機関において、点火プラグにより気筒内全体の均質混合気又は気筒内の一部に存在する混合気を確実に着火させなければならない。しかしながら、点火ギャップに火花を発生させる一般的な点火プラグは、混合気の一点を着火させるものであり、それほど高い着火性を有してはいない。

着火性に優れた点火装置として、プラズマジェットを噴射する点火装置が提案されている（例えば、特許文献１参照）。この点火装置は、気筒内開口部と気筒内開口部に対向する底面とを有して軸線方向に延在するチャンバと、気筒内開口部回りの外部電極と、チャンバの底面に配置された中心電極とを具備し、中心電極と外部電極との間に電圧を印加してチャンバ内にプラズマを発生させる。こうして、チャンバの気筒内開口部からプラズマジェットを噴射し、プラズマジェットの断面積に相当する混合気の所定面積を同時に着火させることによって、高い着火性を有している。

特開２００６−２９４２５７

特許文献１に記載の点火装置は、外部電極と一体又は別体の金属製のハウジングを有し、ハウジング及び外部電極に対して中心電極は、絶縁部材により絶縁支持され、それにより、チャンバの周壁は絶縁部材により形成される。ハウジング周囲にはシリンダヘッドへのネジ込みのための螺合ネジが形成され、ガスケットは、この螺合ネジの外側に配置されている。それにより、点火装置のガスケットより内側の螺合ネジを含む比較的長い部分は、気筒内の高温の既燃ガスに晒され、絶縁部材の放熱が不十分となるために、耐熱性を確保するために絶縁部材のチャンバ周壁の厚さは比較的厚くしなければならない。

従って、本発明の目的は、気筒内開口部と気筒内開口部に対向する底面とを有して軸線方向に延在するチャンバと、気筒内開口部回りの外部電極と、チャンバの底面に配置された中心電極とを具備し、中心電極と外部電極との間に電圧を印加してチャンバ内にプラズマを発生させ、チャンバの気筒内開口部からプラズマジェットを噴射する点火装置において、外部電極と中心電極との間のチャンバ周壁の絶縁部材の厚さを従来に比較して薄くすることである。

本発明による請求項１に記載の内燃機関の点火装置は、気筒内開口部と前記気筒内開口部に対向する底面とを有して軸線方向に延在するチャンバと、前記気筒内開口部回りの外部電極と、前記チャンバの前記底面に配置された中心電極とを具備し、前記中心電極と前記外部電極との間に電圧を印加して前記チャンバ内にプラズマを発生させ、前記チャンバの気筒内開口部からプラズマジェットを噴射する点火装置において、前記外部電極と一体又は別体の金属製のハウジングを有し、前記ハウジング及び前記外部電極に対して前記中心電極は、絶縁部材により絶縁支持されて、前記チャンバの周壁は前記絶縁部材により形成され、前記ハウジング周囲にはシリンダヘッドへのネジ込みのための螺合ネジが形成され、前記螺合ネジより気筒内側に気筒内の気密性を維持するガスケットが配置され、背後電極効果をもたらすために、前記チャンバの周壁の前記絶縁部材の径方向厚さは０．５ｍｍとされていることを特徴とする。

本発明による請求項２に記載の内燃機関の点火装置は、請求項１に記載の内燃機関の点火装置において、前記中心電極及び前記外部電極の少なくとも一方には、前記チャンバ内周部近傍に突起部が設けられ、前記中心電極及び前記外部電極の少なくとも一方には、前記チャンバ内中央部に最小距離形成手段が設けられていることを特徴とする。

本発明による請求項３に記載の内燃機関の点火装置は、請求項１に記載の内燃機関の点火装置において、前記中心電極と前記外部電極との間の前記チャンバ内周面には、中間電極が設けられていることを特徴とする。

本発明による請求項４に記載の内燃機関の点火装置は、請求項３に記載の内燃機関の点火装置において、前記中間電極は前記ハウジング方向への延在部を有することを特徴とする。

本発明による請求項５に記載の内燃機関の点火装置は、請求項１に記載の内燃機関の点火装置において、前記チャンバの前記気筒内開口周囲には、接線方向に連通するガス流入溝が形成されていることを特徴とする。

本発明による請求項１に記載の内燃機関の点火装置によれば、外部電極と一体又は別体の金属製のハウジングを有し、ハウジング及び外部電極に対して中心電極は、絶縁部材により絶縁支持されて、チャンバの周壁は絶縁部材により形成され、ハウジング周囲にはシリンダヘッドへのネジ込みのための螺合ネジが形成され、螺合ネジより気筒内側に気筒内の気密性を維持するためのガスケットが配置されている。それにより、ハウジング周囲の螺合ネジ部は、気筒内の高温の既燃ガスをシールするガスケットより外側となり、高温の既燃ガスに晒される内側部分から除外され、内側部分は比較的短くなるために、絶縁部材の十分な放熱が確保され、耐熱性のためのチャンバ周壁の絶縁部材の径方向厚さは比較的薄くすることができる。

こうして、チャンバ周壁の絶縁部材の径方向厚さは０．５ｍｍとされ、それにより、点火装置を小型化することができると共に、接地側電極としてのハウジングの存在が十分な背後電極効果（チャンバ内表面において沿面放電を起こり易くする効果）をもたらすために、チャンバ中央部におけるアーク放電によりプラズマを発生させる初期段階として、絶縁部材の沿面放電を低い電圧により発生させることができ、点火装置の初期作動要求電圧を低くすることが可能となる。

本発明による請求項２に記載の内燃機関の点火装置によれば、請求項１に記載の内燃機関の点火装置において、中心電極及び外部電極の少なくとも一方には、チャンバ内周部近傍に突起部が設けられ、中心電極及び外部電極の少なくとも一方には、チャンバ内中央部に最小距離形成手段が設けられている。それにより、中心電極又は外部電極の突起部において電界が集中するために絶縁部材の沿面放電をさらに低い電圧により発生させることができ、点火装置の初期作動要求電圧をより低くすることができる。また、沿面放電後に中心電極と外部電極との間には、最小距離形成手段によってチャンバ内中央部においてアーク放電を発生させることができ、突起部からの放電が持続することはなく突起部を保持することができる。

本発明による請求項３に記載の内燃機関の点火装置によれば、請求項１に記載の内燃機関の点火装置において、中心電極と外部電極との間のチャンバ内周面には、中間電極が設けられている。それにより、中心電極と外部電極との間に電圧を印加すると、中心電極から中間電極までの短い距離の沿面放電によって、容易に中間電極の電位をほぼ印加電圧とすることができ、さらに、中間電極から外部電極までの短い距離の沿面放電を容易に発生させることができ、すなわち、初期作動要求電圧をより低くしても、中心電極と外部電極との間の沿面放電を発生させることができ、その後のチャンバ内中央部のアーク放電を発生させることができる。

本発明による請求項４に記載の内燃機関の点火装置によれば、請求項３に記載の内燃機関の点火装置において、中間電極はハウジング方向への延在部を有するようになっている。それにより、中間電極はさらに接地電位に近づくために、中心電極と外部電極との間の印加電圧をさらに低くしても、中心電極と中間電極との間、及び、中間電極と外部電極との間の沿面放電を確実に発生させることができ、その後のチャンバ内中央部のアーク放電を発生させることができる。

本発明による請求項５に記載の内燃機関の点火装置によれば、請求項１に記載の内燃機関の点火装置において、チャンバの気筒内開口周囲には、接線方向に連通するガス流入溝が形成されている。それにより、気筒内ガスがチャンバ内へ流入する際に、チャンバ内を軸線方向に旋回する旋回流が形成され、アーク放電とチャンバ内のガスとの接触機会が増大するためにチャンバ内のガスのプラズマ化を容易にすることができる。

図１は本発明による内燃機関の点火装置の先端部を示す断面図である。同図において、１は点火装置の軸線方向に延在してプラズマを生成するチャンバであり、気筒内開口部Ａと気筒内開口部に対向する底面Ｂとを有している。気筒内開口部Ａ回りには外部電極２が配置され、底面Ｂには中心電極３が配置されている。

外部電極２及び中心電極３は、耐熱性と高い導電性を有する金属、例えば、ステンレス等の鉄系金属、ニッケル系金属、又は、イリジウム系金属とすることができる。外部電極３は、金属製のハウジング４と別体とされているが、一体としても良い。ハウジング４及び外部電極２に対して、中心電極３は、絶縁部材５により絶縁支持される。絶縁部材５は、セラミックス（例えばアルミナセラミックス）とすることが好ましい。こうして、チャンバ１の軸線方向の周壁は、絶縁部材５により形成される。

ハウジング４の周囲にはシリンダヘッド（図示せず）へのネジ込みのための螺合ネジ４ａが形成される。ハウジング４の螺合ネジ４ａより先端側には細径部４ｂが形成され、細径部４ｂを形成する段部４ｃが、気筒内の気密性を確保するガスケット（図示せず）の当接面となっている。ガスケットがＯリングである場合には、Ｏリング溝を、段部４ｃの相手側のシリンダヘッドに形成しても、段部４ｃに形成するようにしても良い。こうして、螺合ネジ４ａより気筒内側に気筒内の気密性を維持するためのガスケットが配置される。６は中心電極３へ電圧を印加するための導体（例えばニッケル）であり、７は導体６と中心電極３とを電気的に接続するための導電性接着剤である。

このように構成された本実施形態の点火装置は、導体６及びハウジング４を介して、中心電極３と外部電極２との間に電圧が印加されると、先ずは、中心電極３と外部電極２との間の絶縁部材５の周壁表面において沿面放電が発生する。こうして沿面放電が発生すると、次いで、中心電極３と外部電極２との間において、チャンバ１内中央部を通るアーク放電が発生する。このアーク放電によってチャンバ１内のガスをプラズマ化させると共に熱膨張させるために、チャンバ１の気筒内開口部Ａからは、気筒内へ電子及び正イオン等を含むプラズマジェットが噴射される。プラズマジェットは、ある程度の大きさの断面積を有するために、気筒内全体の均質混合気又は気筒内の一部に位置する可燃混合気の比較的広範囲部分を同時に着火燃焼させることができ、着火性が非常に優れている。

図２は、本点火装置の先端部の正面図であり、先端面において、チャンバ１の気筒内開口Ａ周囲には、接線方向に連通するガス流入溝Ｃが形成されている。本実施形態では四つのガス流入溝が等間隔で形成されているが、このようなガス流入溝Ｃは少なくとも一つ形成されれば良い。それにより、気筒内ガスがチャンバ１内へ流入する際に、チャンバ１内を軸線方向に旋回する旋回流が形成され、アーク放電とチャンバ内のガスとの接触機会が増大するためにチャンバ内のガスのプラズマ化を容易にすることができる。

本実施形態において、螺合ネジ４ａより気筒内側に気筒内の気密性を維持するためのガスケットが配置される。それにより、ハウジング４周囲の螺合ネジ部４ａは、気筒内の高温の既燃ガスをシールするガスケットより外側となり、高温の既燃ガスに晒される内側部分から除外され、内側部分は比較的短くなるために、絶縁部材５のハウジング４を介しての十分な放熱が実施される。それにより、チャンバ１を形成する耐熱性のための絶縁部材５の径方向厚さは比較的薄く、例えば、０．５から１．０ｍｍとすることができる。

一般的な点火装置では、ガスケットの位置は、螺合ネジ４ａより気筒外側の段部４ｄに配置され、螺合ネジ部４ａは気筒内の高温の既燃ガスに晒される内側部分に含まれ、内側部分は比較的長くなるために、絶縁部材５の十分な放熱が実施されず、耐熱性のために絶縁部材５の径方向厚さは比較的厚いものとしなければならない。

こうして、本実施形態のようにチャンバ１を形成する絶縁部材５の径方向厚さが薄くされると、点火装置を小型化することができると共に、接地側電極としてのハウジング４の存在が十分な背後電極効果をもたらすようになるために、チャンバ中央部におけるアーク放電によりプラズマを発生させる初期段階として、絶縁部材５の沿面放電を低い電圧により発生させることができ、点火装置の初期作動要求電圧を低くすることが可能となる。

図３は、中心電極の変形例３’を示している。本中心電極３’は、チャンバ１内周部近傍に突起部３ａ’が設けられている。複数の突起部３ａ’を中心電極３’のチャンバ１内周部近傍全体に設けるようにしても良い。こうして突起部３ａ’が設けられると、突起部３ａ’において電界が集中するために絶縁部材５の沿面放電をさらに低い電圧により発生させることができ、点火装置の初期作動要求電圧をより低くすることができる。また、中心電極３’の中央部３ｂ’は外部電極２側へ隆起しており、外部電極２との間に最小距離を形成する。それにより、沿面放電直後には、この最小距離においてチャンバ１内中央部でアーク放電が発生し、チャンバ１内のガスをプラズマ化する。このようにして、中心電極３’の突起部３ａ’からの放電が持続することはなく突起部３ａ’を保持することができる。

図４は、外部電極の変形例２’を示している。本外部電極２’は、チャンバ１内周部近傍に突起部２ａ’が設けられている。複数の突起部２ａ’を外部電極３’のチャンバ１内周部近傍全体に設けるようにしても良い。こうして突起部２ａ’が設けられると、突起部２ａ’において電界が集中するために絶縁部材５の沿面放電をさらに低い電圧により発生させることができ、点火装置の初期作動要求電圧をより低くすることができる。また、外部電極２’の中央部はＵ字形線材２ｂ’によって中心電極３側へ突出しており、中心電極３との間に最小距離を形成する。それにより、沿面放電直後には、この最小距離においてチャンバ１内中央部でアーク放電が発生し、チャンバ１内のガスをプラズマ化する。このようにして、外部電極２’の突起部２ａ’からの放電が持続することはなく突起部２ａ’を保持することができる。

図５は、チャンバ１の周壁を形成する絶縁部材の変形例５’を示している。本絶縁部材５’の内周面には、中心電極３と外部電極２との間において、中間電極８が設けられている。本実施形態において、三つの中間電極８が中心電極３と外部電極２との間の沿面距離において等間隔で配置されている。しかしながら、少なくとも一つの中間電極８が設けられれば良い。中間電極８は、Ｃリング形状を有しており、絶縁部材５’の内周面に形成された溝に嵌合される。

このような構成において、中心電極３と外部電極２との間に電圧を印加すると、中心電極３から中心電極３に最も近い中間電極８までの短い距離の沿面放電によって、容易に、この中間電極８の電位をほぼ印加電圧とすることができ、さらに、この中間電極８から次の中間電極８までの短い距離の沿面放電が容易に発生し、次の中間電極８の電位をほぼ印加電圧とすることができ、さらに、この中間電極８から次の中間電極８までの短い距離の沿面放電が容易に発生し、次の中間電極８の電位をほぼ印加電圧とすることができ、さらに、この中間電極８から外部電極２までの短い距離の沿面放電を容易に発生させることができる。すなわち、初期作動要求電圧をより低くしても、中心電極３と外部電極２との間の沿面放電を発生させることができ、その後のチャンバ内中央部のアーク放電を発生させることができる。

図６は、チャンバ１の周壁を形成する絶縁部材のもう一つの変形例５”を示している。本絶縁部材５”の内周面には、中心電極３と外部電極２との間において、中間電極９が設けられている。本実施形態において、三つの中間電極９が中心電極３と外部電極２との間の沿面距離において等間隔で配置されている。しかしながら、少なくとも一つの中間電極９が設けられれば良い。中間電極９はハウジング４方向への延在部を有しており、絶縁部材５”を射出成形する際に鋳込まれる。

このような構成において、中間電極９はさらに接地電位に近づくために、中心電極３と外部電極２との間の印加電圧をさらに低くしても、中心電極３と中間電極９との間、二つの中間電極９の間、及び、中間電極９と外部電極２との間の沿面放電を確実に発生させることができ、その後のチャンバ内中央部のアーク放電を発生させることができる。本実施形態において、中間電極９を接地電位に近づけるための延在部の形状は、例えばＬ字形のような任意の形状とすることができる。

本発明による内燃機関の点火装置の先端部を示す断面図である。 図１の点火装置の先端部の正面図である。 中心電極の変形例を示す図である。 外部電極の変形例を示す図である。 絶縁部材の変形例を示す図である。 絶縁部材のもう一つの変形例を示す図である。

符号の説明

１ チャンバ
２ 外部電極
３ 中心電極
４ ハウジング
４ａ 螺合ネジ
５ 絶縁部材

Claims (5)

1. 気筒内開口部と前記気筒内開口部に対向する底面とを有して軸線方向に延在するチャンバと、前記気筒内開口部回りの外部電極と、前記チャンバの前記底面に配置された中心電極とを具備し、前記中心電極と前記外部電極との間に電圧を印加して前記チャンバ内にプラズマを発生させ、前記チャンバの気筒内開口部からプラズマジェットを噴射する点火装置において、前記外部電極と一体又は別体の金属製のハウジングを有し、前記ハウジング及び前記外部電極に対して前記中心電極は、絶縁部材により絶縁支持されて、前記チャンバの周壁は前記絶縁部材により形成され、前記ハウジング周囲にはシリンダヘッドへのネジ込みのための螺合ネジが形成され、前記螺合ネジより気筒内側に気筒内の気密性を維持するガスケットが配置され、背後電極効果をもたらすために、前記チャンバの周壁の前記絶縁部材の径方向厚さは０．５ｍｍとされていることを特徴とする内燃機関の点火装置。
2. 前記中心電極及び前記外部電極の少なくとも一方には、前記チャンバ内周部近傍に突起部が設けられ、前記中心電極及び前記外部電極の少なくとも一方には、前記チャンバ内中央部に最小距離形成手段が設けられていることを特徴とする請求項１に記載の内燃機関の点火装置。
3. 前記中心電極と前記外部電極との間の前記チャンバ内周面には、中間電極が設けられていることを特徴とする請求項１に記載の内燃機関の点火装置。
4. 前記中間電極は前記ハウジング方向への延在部を有することを特徴とする請求項３に記載の内燃機関の点火装置。
5. 前記チャンバの前記気筒内開口周囲には、接線方向に連通するガス流入溝が形成されていることを特徴とする請求項１に記載の内燃機関の点火装置。

Images