以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態における点火プラグ10の軸線Oを境にした片側断面図であり、図2は一部を拡大した点火プラグ10の片側断面図である。図1及び図2では、紙面下側を点火プラグ10の先端側、紙面上側を点火プラグ10の後端側という(図3及び図4においても同じ)。図2では、点火プラグ10の軸線O方向の後端側の図示が省略されている。
図1及び図2に示すように点火プラグ10は、絶縁体11、中心電極50及び主体金具60を備えている。絶縁体11は、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等により形成される部材である。絶縁体11は、略円筒状の第1絶縁体20、及び、有底円筒状の第2絶縁体40を備えている。
第1絶縁体20は、後端側から先端側へ軸線Oに沿って胴部21、突出部22、大径部23、小径部25の順に連接されており、軸線Oに沿って形成された孔部29、段部30及び軸孔31が中心を貫通する。胴部21は、第1絶縁体20のうち後端側に位置する。胴部21と大径部23との境界から径方向の外側へ突出部22が鍔状に張り出している。突出部22は、胴部21と大径部23との境界の全周に亘って設けられている。
大径部23の先端側に設けられた小径部25の外径は、大径部23の外径よりも小さく、小径部25の外径は小径部25の軸線O方向の全長に亘って略同一である。大径部23の外径と小径部25の外径との差により、先端側を向く係止部24が大径部23の外周に形成される。係止部24は、軸線O方向の先端側へ向かうにつれて縮径している。小径部25は、外周におねじ部26が形成されている。
孔部29は、胴部21から大径部23にかけて形成されている。軸孔31は、大径部23から小径部25にかけて形成されている。孔部29の内径は、軸孔31の内径よりも大きい。孔部29の内径と軸孔31の内径との差により、後端側を向く段部30が大径部23の内周に形成される。段部30は、軸線O方向の先端側へ向かうにつれて縮径している。
第2絶縁体40は、第1絶縁体20の小径部25の周囲を取り囲む部材である。第2絶縁体40は、円筒部41と、第2絶縁体40の先端面43を形成し円筒部41の先端側の開口を塞ぐ底部42と、を備えている。円筒部41の内周には、めねじ部44が形成されている。
めねじ部44は、第1絶縁体20の小径部25の外周に形成されたおねじ部26に係合して、第1絶縁体20に第2絶縁体40を直接接合する。円筒部41の外径は、第1絶縁体20の小径部25の外径より大きい。円筒部41の径方向の肉厚は、円筒部41の軸線O方向の全長に亘って同一である。
中心電極50は、棒状に形成された軸部51と、軸部51の先端に設けられた頭部52と、を備える導電性のある部材である。軸部51は、有底筒状に形成された電極母材の内部に、電極母材よりも熱伝導性に優れる芯材が埋設されている。芯材は銅または銅を主成分とする合金で形成されており、電極母材はニッケル基合金やニッケル等により形成されている。
中心電極50は、軸部51の後端に係合部53が設けられている。係合部53は、軸部51よりも軸線Oと直交する軸直角方向へ広がる部分であり、第1絶縁体20の孔部29に配置され、第1絶縁体20の段部30と係合する。軸部51は、頭部52の最大径よりも内径が小さい第1絶縁体20の軸孔31に配置される。
頭部52は、軸部51よりも軸線Oと直交する軸直角方向へ広がる部分であり、先端面54、側面55及び後端面56を有している。本実施の形態では、頭部52はニッケル基合金やニッケル等により円柱状に形成されており、溶接により軸部51の先端に接合されている。頭部52は、第1絶縁体20の小径部25よりも軸線O方向の先端側に配置される。第2絶縁体40は頭部52を内包する。頭部52の先端面54は第2絶縁体40の底部42に覆われ、頭部52の側面55は第2絶縁体40の円筒部41に覆われる。
端子金具57は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具57の先端側は第1絶縁体20の孔部29内に配置される。端子金具57と中心電極50の係合部53との間に、導電性を有するシール材58が配置される。シール材58は、例えばB2O3−SiO2系等のガラス粒子とCuやFe等の金属粒子とを含む組成物が用いられる。シール材58により中心電極50と端子金具57とは孔部29内で電気的に接続される。
主体金具60は、内燃機関(図示せず)に固定される略円筒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼やステンレス鋼等)によって形成されている。主体金具60は、後端側から先端側へと軸線Oに沿って加締め部61、工具係合部62、湾曲部63、座部64、胴部65の順に連接されている。胴部65は外周面にねじ部66が形成されている。
加締め部61及び湾曲部63は、第1絶縁体20を加締めるための部位である。工具係合部62は、ねじ部66を内燃機関のねじ穴(図示せず)に結合するときにレンチ等の工具を係合させる部位である。座部64は、胴部65の後端側に位置し、径方向の外側に環状に突出する部位である。座部64は、胴部65との間に環状のガスケット75が配置される。
胴部65は、径方向の内側へ突出する棚部67が内周に設けられている。棚部67は胴部65の全周に亘って設けられており、軸線O方向の先端側へ向かうにつれて縮径している。胴部65のうち棚部67より先端側の内径は、棚部67の最小内径と同じ大きさにされている。棚部67にはパッキン72が配置される。パッキン72は、軟鋼板等の金属材料で形成される円環状の板材である。
脚部68は、内径が、棚部67の最小内径よりも大きい円筒状の部位である。本実施の形態では、脚部68の内径は、脚部68の軸線O方向の全長に亘って同一である。脚部68は、第2絶縁体40の円筒部41及び第1絶縁体20の小径部25を介して、中心電極50と対向する。第2絶縁体40の外径は、棚部67の最小内径よりも大きい。本実施の形態では、脚部68の先端69は、第2絶縁体40の先端面43よりも後端側(図2上側)に位置する。また、脚部68の先端69は、中心電極50の頭部52の後端面56よりも後端側(図2上側)に位置する。
主体金具60の工具係合部62の内周と第1絶縁体20の胴部21の外周との間に、一対のリング部材73及びリング部材73に挟まれたタルク等の粉末74が配置される。主体金具60の加締め部61を変形させてリング部材73に密着させると、リング部材73、粉末74及び突出部22を介して、係止部24が主体金具60の棚部67へ向けて押圧される。その結果、主体金具60は、パッキン72、リング部材73及び粉末74を介して第1絶縁体20に取り付けられる。パッキン72は棚部67と係止部24との隙間を気密に閉塞する。
点火プラグ10は、例えば、以下のような方法によって製造される。まず、中心電極50の軸部51を第1絶縁体20の軸孔31に挿入し、軸部51の先端に頭部52を溶接する。次に、シール材58の原料粉末を孔部29に充填して、孔部29に端子金具57を圧入し、加熱しながらシール材58の原料粉末を軸方向へ圧縮する。原料粉末を圧縮・焼結させ、シール材58で端子金具57と中心電極50との導通を確保する。次いで、第1絶縁体20のおねじ部26に第2絶縁体40のめねじ部44を結合して、第1絶縁体20に第2絶縁体40を接合する。最後に、第1絶縁体20及び第2絶縁体40の外周に主体金具60を組み付け、点火プラグ10を得る。
点火プラグ10は、主体金具60のねじ部66が内燃機関(図示せず)のねじ穴に取り付けられると、第2絶縁体40が燃焼室(図示せず)に露出する。点火プラグ10は中心電極50と主体金具60とを絶縁体11が隔てる1種のコンデンサなので、端子金具57と主体金具60との間に交流電圧または複数回のパルス電圧が印加されると、中心電極50と主体金具60との間に誘電体バリア放電が生じる。この放電によって点火プラグ10は気体(混合気)を電離し、非平衡プラズマの状態にして混合気に火炎核を発生させる。
端子金具57と主体金具60との間の印加電圧が一定であれば、絶縁体11に蓄えられる電荷の量は、中心電極50と主体金具60との間に介在する絶縁体11の厚さに反比例するので、絶縁体11の厚さが薄いほど第2絶縁体40の表面に生じるプラズマの生成量が増加する。
点火プラグ10は、軸部51の太さよりも外寸が大きい頭部52が先端に設けられた中心電極50を備えるので、絶縁体11の先端側の外径を小さくすることなく(つまり、絶縁体11の先端側の表面積を確保しつつ)、絶縁体11の先端側の肉厚を薄くできる。従って、プラズマの生成量を増やすことができ、着火性を向上できる。
また、プラズマの生成量を増やすために中心電極50の外径を軸方向の全長に亘って大きくすると、中心電極50と主体金具60との間に介在する絶縁体11の厚さを薄くできるが、その反面、絶縁体11を電流が貫通し易くなるという問題点がある。
これに対し点火プラグ10は、絶縁体11を第1絶縁体20と第2絶縁体40とに分け、軸部51よりも大きい頭部52を先端部に備える中心電極50を絶縁体11の内部に配置するので、中心電極50の軸部51を取り囲む第1絶縁体20(大径部23及び小径部25)を厚く、頭部52を取り囲む第2絶縁体40(円筒部41)を薄くできる。よって、第1絶縁体20の貫通を抑制しながら、第2絶縁体40の外表面に多くのプラズマを発生させることができる。
また、絶縁体11は、第1絶縁体20及び第2絶縁体40の2部材を備えるので、中心電極50の軸部51を第1絶縁体20で覆いながら、軸部51よりも外径の大きい頭部52を第2絶縁体40に内包できる。よって、頭部52を備える中心電極50を絶縁体11へ容易に配置できる。
第1絶縁体20の先端側を第2絶縁体40で覆う構造なので、第1絶縁体20の軸孔31の大きさとは無関係に、第2絶縁体40に覆われる頭部52の外径を大きくできる。その結果、絶縁体11の厚みを確保しつつ、第2絶縁体40の表面積を大きくできるので、第2絶縁体40の外表面に発生するプラズマの量を増やすことができる。
この点火プラグ10は、燃費向上、CO2低減を目的として、小型、高出力および低NOxを達成するために開発が続けられている近年の高効率エンジンに特に適している。高効率エンジンは高過給、高圧縮に加え混合気が希薄で着火性が乏しい場合があるので、燃焼室の広い範囲が電離される、燃焼室内の気体(混合気)を広範囲で活性化させ、その改質ガスによる着火性や燃焼効率の向上が期待されるからである。なお、点火プラグ10はガソリン、軽油、気体燃料等の種々の燃料系に適用可能である。
第2絶縁体40は、先端面43が、主体金具60の先端69よりも先端側(図2下側)に突出しているので、火炎核の成長を主体金具60が阻害しないようにできる。よって、着火性を向上できる。さらに、頭部52の後端面56は、主体金具60の先端69よりも先端側に配置されるので、第2絶縁体40のうち頭部52を取り囲む部分(肉厚の薄い部分)を主体金具60の外側に配置できる。貫通は、絶縁体11のうち主体金具60と中心電極50とに挟まれる部分で生じ易いが、主体金具60の先端69よりも先端側に頭部52を配置することにより、さらに絶縁体11の貫通を生じ難くできる。
第2絶縁体40は、めねじ部44が第1絶縁体20のおねじ部26に結合して第1絶縁体20に接合されるので、ねじの螺合ではなく無機接着剤だけで第2絶縁体40を第1絶縁体20に接合する場合に比べて、接合信頼性を向上できる。
めねじ部44及びおねじ部26を設けることによって、めねじ部44及びおねじ部26を設けない場合に比べて、第2小径部27の外周および円筒部41の内周の沿面距離を長くできる。その結果、第2小径部27と円筒部41との間を経路とする主体金具60と頭部52との間のリークを抑制できる。
主体金具60の棚部67は、全周に亘って大径部23よりも軸直角方向の内側へ突出して、第1絶縁体20の大径部23を支持する。このように絶縁体11は、第1絶縁体20に設けられた大径部23が、主体金具60の棚部67に支持されることで、主体金具60の内周に保持されている。軸部51を覆う第1絶縁体20に大径部23を設けることにより、軸部51よりも軸直角方向に広がる頭部52を覆う第2絶縁体40に大径部23を設ける場合に比べて、大径部23の軸直角方向の厚さを厚くできる。よって、大径部23の機械的強度を確保できる。
点火プラグ10は、第2絶縁体40のうち少なくとも主体金具60よりも先端側(図2下側)の部分の外径が、主体金具60の棚部67の最小内径よりも大きい。そのため、第2絶縁体40のうち主体金具60の先端69よりも先端側に突出する部分の表面積を大きくできる。よって、プラズマの発生量を増やすことができる。
第2絶縁体40のうち主体金具60の先端69よりも先端側に突出する部分の表面積を大きくできることに伴い、第2絶縁体40に内包される頭部52の外径を大きくできる。その結果、軸部51よりも軸直角方向へ広がる頭部52を中心電極50が有しない場合に比べて、絶縁体11の厚さを維持しつつ、第2絶縁体40の表面積を大きくできる。これにより、第2絶縁体40の外表面に発生するプラズマの量を増やすことができる。
絶縁体11が第1絶縁体20及び第2絶縁体40の2部材に分割されていない場合には、主体金具60の棚部67よりも先端側に、棚部67の最小内径よりも外径が大きい絶縁体(第2絶縁体40)を設けることは難しい。しかし、第2絶縁体40は、係止部24よりも先端側の第1絶縁体20に接合されるので、棚部67の内径に制約を受けることなく、棚部67の内径よりも外径が大きい絶縁体(第2絶縁体40)を、主体金具60の先端側に容易に設けることができる。
第2絶縁体40は、主体金具60の内部に円筒部41及びめねじ部44が存在するので、燃焼室内の燃焼ガスに円筒部41が曝されないようにできる。第2絶縁体40の全部が燃焼ガスに曝される場合に比べて、第2絶縁体40の過熱を抑制できるので、第2絶縁体40の異常過熱による混合気への着火を抑制できる。
主体金具60の外周にねじ部66が存在する胴部65の内部に、第2絶縁体40の円筒部41及びめねじ部44が存在する。よって、第2絶縁体40の熱を、円筒部41、胴部65及びねじ部66を介して内燃機関(図示せず)へ伝達できる。その結果、第2絶縁体40の過熱を抑制できるので、第2絶縁体40の異常過熱による混合気への着火をさらに抑制できる。
図3を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、中心電極50の先端部(頭部52)が第2絶縁体40で覆われる場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、中心電極81の先端近傍にキャビティ99が形成される点火プラグ80について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図3は第2実施の形態における点火プラグ80の軸線Oを境にした片側断面図である。図3では点火プラグ80の後端側の図示が省略されている。
図3に示すように点火プラグ80は、中心電極81と、中心電極81を保持する第1絶縁体84と、第1絶縁体84に接合される第2絶縁体90と、第1絶縁体84を保持する主体金具94と、主体金具94に接合される接地電極95を備えている。
中心電極81は、係合部53が後端部に連接された軸部82と、軸部82の先端に接合されたチップ83とを備えている。軸部82は、有底筒状に形成された電極母材の内部に、電極母材よりも熱伝導性に優れる芯材が埋設されている。チップ83は、貴金属を主成分とする合金または貴金属によって柱状に形成されている。チップ83は、レーザ溶接や抵抗溶接等によって軸部82に接合されている。
第1絶縁体84は、軸線Oに沿って中心に軸孔31が形成されている。第1絶縁体84は、大径部23の先端側に、係止部24を挟んで小径部85が連接されている。小径部85は、第1小径部86と、第1小径部86の先端側に連接された第2小径部87と、を備えている。第1小径部86の外径は、第2小径部87の外径よりも大きく、大径部23の外径より小さい。第2小径部87は、外周におねじ部88が形成されている。
中心電極81は、第1絶縁体84の軸孔31内に軸部82が配置され、第1絶縁体84の段部30に係合部53が配置される。中心電極81は、第1絶縁体84の先端面89よりも先端側に、軸部82の先端側およびチップ83が突出する。
第2絶縁体90は、第1絶縁体84の第2小径部87の外周を取り囲む略円筒状の部材である。第2絶縁体90は、円筒部91と、円筒部91の先端から径方向の内側へ向けて突出する先端部92と、を備えている。円筒部91の内周に形成されためねじ部44は、第1絶縁体84の第2小径部87に形成されたおねじ部88に螺合する。第2絶縁体90の先端部92は、円筒部41の先端から円筒部41の径方向の内側および先端側へ向けて張り出しており、先端部92の中心に開口93が形成されている。開口93の内径は軸孔31の内径よりも大きい。第2絶縁体90は、第1絶縁体84の先端面89よりも先端側に、円筒部41の先端側および先端部92が突出する。
主体金具94は、略円形状の接地電極95が先端に配置される。接地電極95は、第2絶縁体90の先端部92よりも軸線O方向の先端側に位置する。接地電極95は、主体金具94に外周が接合される円環状の金属製(例えばニッケル基合金製)の電極母材96と、電極母材96の内周に接合されるチップ97とを備えている。チップ97は、貴金属を主成分とする合金または貴金属によって形成される円環状の部材であり、軸線O方向に貫通する穴98が中心に形成されている。主体金具94の先端に接地電極95が配置されることにより、中心電極81の先端に、第1絶縁体84、第2絶縁体90及び接地電極95で周囲が囲まれたキャビティ99が形成される。
点火プラグ80は、例えば、以下のような方法によって製造される。まず、予めチップ83が接合された中心電極81の軸部82を第1絶縁体84の軸孔31に挿入した後、シール材58(図1参照)の原料粉末を孔部29に充填する。次に、孔部29に端子金具57を圧入し、加熱しながらシール材58の原料粉末を軸方向へ圧縮する。原料粉末を圧縮・焼結させ、シール材58で端子金具57と中心電極81との導通を確保する。次いで、第1絶縁体84のおねじ部88に、第2絶縁体90のめねじ部44を螺合する。第1絶縁体84及び第2絶縁体90の外周に主体金具94を組み付けた後、予めチップ97が接合された接地電極95を主体金具94に接合して、点火プラグ80を得る。
点火プラグ80は、端子金具57(図1参照)と主体金具94との間に交流電圧または複数回のパルス電圧が印加されると、中心電極81と接地電極95との間で放電が生じ、キャビティ99内にプラズマが形成される。キャビティ99内のプラズマの圧力が高まると、穴98からフレーム状にプラズマが噴出する。
本実施の形態では、キャビティ99は、第1絶縁体84の先端面89及び第2絶縁体90の円筒部41によって内径の大きな部分と、第2絶縁体90の先端部92によって内径の小さい部分とが設けられている。これにより、中心電極81と接地電極95との間の沿面距離を長くできる。よって、中心電極81と接地電極95との間の短絡を生じ難くできる。その結果、プラズマの生成量を確保できる。
点火プラグ80は、第1絶縁体84に第2絶縁体90を接合してキャビティ99を形成するので、キャビティ99の形状を設計する自由度を高くできる。キャビティ99の複雑な形状を1部材で作成するのは困難だが、第1絶縁体84に第2絶縁体90を接合して第1絶縁体84と第2絶縁体90とを組合せることにより、キャビティ99を複雑な形状にできる。
また、点火プラグ80は、第1絶縁体84及び第2絶縁体90によってキャビティ99を形成するので、キャビティ99を構成する絶縁体の壁面の沿面距離を長くすることができる。その結果、リークの抑制効果を高めることができる。
第2絶縁体90のめねじ部44が第1絶縁体84のおねじ部88に結合して第2絶縁体90が第1絶縁体84に接合されるので、ねじを設けない場合に比べて、第2小径部87の外周および円筒部91の内周の沿面距離を長くできる。その結果、第2小径部87と円筒部91との間を経路とする主体金具94と中心電極81との間の短絡を抑制できる。また、めねじ部44及びおねじ部88によって第1絶縁体84と第2絶縁体90との接触面積を大きくできるので、第1絶縁体84と第2絶縁体90との熱伝達をめねじ部44及びおねじ部88によって向上できる。
めねじ部44及びおねじ部88は、主体金具94のねじ部66の径方向の内側に形成されているので、めねじ部44及びおねじ部88を介して第1絶縁体84から第2絶縁体90へ伝達された熱を、主体金具94のねじ部66からねじ穴(図示せず)を介して内燃機関へ放散させ易くできる。
図4を参照して第3実施の形態について説明する。第3実施の形態では、コロナ放電により大気圧プラズマを発生する点火プラグ100について説明する。なお、第1実施の形態および第2実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図4は第3実施の形態における点火プラグ100の軸線Oを境にした片側断面図である。図4では点火プラグ100の後端側の図示が省略されている。
図4に示すように点火プラグ100は、中心電極101と、中心電極101を保持する第1絶縁体104と、第1絶縁体104に接合される第2絶縁体106と、第1絶縁体104を保持する主体金具110とを備えている。
中心電極101は、係合部53が後端部に連接された軸部102と、軸部102の先端に接合されたチップ103とを備えている。軸部102は、有底筒状に形成された電極母材の内部に、電極母材よりも熱伝導性に優れる芯材が埋設されている。チップ103は、貴金属を主成分とする合金または貴金属によって柱状に形成されている。チップ103は、レーザ溶接や抵抗溶接等によって軸部102に接合されている。
第1絶縁体104は、軸線Oに沿って中心に軸孔31が形成されている。中心電極101は、第1絶縁体104の軸孔31内に軸部102が配置され、第1絶縁体104の段部30に係合部53が配置される。
第2絶縁体106は、第1絶縁体104の第2小径部87の外周を取り囲む円筒部107と、円筒部107の先端に連接された略円板状の先端部108と、を備える有底円筒状の部材である。先端部108の外径は、主体金具110の棚部67の最小内径よりも大きい。先端部108は、第1絶縁体104の先端面105及び主体金具110の先端面111よりも先端側に配置される。先端部108は、主体金具110の先端面111に当接している。
先端部108は、中心を軸線O方向(厚さ方向)に貫通する開口109が形成されている。開口109は軸孔31と連通し、開口109内に中心電極101の軸部102が配置される。中心電極101は、第2絶縁体106の先端部108よりも先端側に、軸部102の先端側およびチップ103が突出する。
円筒部107の内周に形成されためねじ部44は、第1絶縁体104の第2小径部87に形成されたおねじ部88に螺合する。点火プラグ100は、めねじ部44とおねじ部88との隙間に、充填材112が充填されている。充填材112は、耐熱性および絶縁性を有し、めねじ部44及びおねじ部88の少なくとも一部に密着し、めねじ部44及びおねじ部88を接着する。充填材112は、例えば無機接着剤(所謂セメント)、B2O3−SiO2系等のガラス粒子を含む組成物等が用いられる。
点火プラグ100は、例えば、以下のような方法によって製造される。まず、予めチップ103が接合された中心電極101の軸部102を第1絶縁体104の軸孔31に挿入した後、シール材58により端子金具57と中心電極101との導通を確保する。第1絶縁体104の外周に主体金具110を組み付けた後、めねじ部44に充填材112が塗布された第2絶縁体106を、第1絶縁体104のおねじ部88に螺合する。充填材112を硬化させて点火プラグ100を得る。点火プラグ100は、端子金具57(図1参照)と主体金具110との間に交流電圧または複数回のパルス電圧が印加されると、中心電極101の先端にコロナ放電が生じる。
点火プラグ100は、第1絶縁体104に第2絶縁体106を接合して、主体金具110の先端面111の先端側に第2絶縁体106の先端部108を配置するので、主体金具110と中心電極101との間の短絡を抑制できる。その結果、気中放電を生じ易くできるので、気中放電によるプラズマの生成量を確保できる。
また、主体金具110と中心電極101との間に第2絶縁体106の円筒部107が介在し、円筒部107のめねじ部44と第1絶縁体104のおねじ部88とが螺合しているので、めねじ部44及びおねじ部88が無い場合に比べて、その部分の沿面距離を長くすることができる。よって、第1絶縁体104の外周と第2絶縁体106の内周との間を導電経路とする短絡の抑制効果を高めることができる。
点火プラグ100は、絶縁体が、棚部67で支持される係止部24を有する第1絶縁体104と、先端部108を有する第2絶縁体106と、を備えている。絶縁体が第1絶縁体104及び第2絶縁体106の2部材に分割されていない場合には、主体金具110の先端側に、棚部67の最小内径よりも外径が大きい先端部108を設けることは難しい。しかし、第2絶縁体106は、係止部24よりも先端側の第1絶縁体104に螺合されるので、棚部67の内径に制約を受けることなく、棚部67の内径よりも外径が大きい先端部108を容易に設けることができる。
また、絶縁性を有する充填材112が、めねじ部44とおねじ部88との隙間に配置され、めねじ部44及びおねじ部88の少なくとも一部に密着するので、めねじ部44とおねじ部88との間に生じる放電を抑制できる。その結果、めねじ部44とおねじ部88との間を導電経路とする短絡の抑制効果を向上できる。
また、充填材112が、めねじ部44及びおねじ部88に密着するので、充填材112の熱伝導率にもよるが、めねじ部44及びおねじ部88間の熱伝導性を向上させることができ、第2絶縁体90から第1絶縁体84への熱放散を良くすることができる。
めねじ部44及びおねじ部88を充填材112が接着するので、おねじ部88に対するめねじ部44の緩みを防止できる。めねじ部44及びおねじ部88並びに充填材112によって第2絶縁体90が第1絶縁体84に接合されるので、第2絶縁体90の接合信頼性を向上できる。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
第3実施の形態で説明した点火プラグ100と同じ構造の実施例1におけるサンプルを作成した。実施例1におけるサンプルは、中心電極101の軸部102の外径を1.5mm、第2絶縁体106の先端部108の厚さ(軸線O方向の長さ)を4.0mm、先端部108の外径を12.0mmとした。第1絶縁体104のおねじ部88と第2絶縁体106のめねじ部44とを螺合して、第1絶縁体104に第2絶縁体106を接合した。
(実施例2)
第1絶縁体104のおねじ部88と第2絶縁体106のめねじ部44とを螺合しつつ、アルミナを主体とする充填材112(絶縁性の耐熱接着剤)を用いておねじ部88とめねじ部44とを接着した以外は、実施例1と同様にして実施例2におけるサンプルを作成した。
(比較例)
第1絶縁体104のおねじ部88、及び、第2絶縁体106のめねじ部44を無くし、第2絶縁体106に第1絶縁体104を嵌合した以外は、実施例1と同様にして比較例におけるサンプルを作成した。
誘導性素子に蓄積したエネルギーを放出する誘導エネルギー蓄積型(IES:Inductive Energy Storage)の電源を用いて、各サンプルの端子金具57に大気中で直流パルス電圧を入力した。中心電極101の先端から主体金具110へのリークが生じるか否かを、入力する電圧を次第に上げながら目視観察し、リークが生じたときの電圧(以下「リーク電圧」と称す)を測定した。その結果、比較例のリーク電圧は30.2kV、実施例1のリーク電圧は32.8kV、実施例2のリーク電圧は35.8kVであった。
この実施例によれば、第1絶縁体104の外周面に第2絶縁体106の内周面を螺合した実施例1及び2におけるサンプルは、第2絶縁体106に第1絶縁体104を嵌めた比較例におけるサンプルに比べて、リーク電圧を高くできることがわかった。この理由は、ネジにより沿面距離を長くできたからであると推察される。
さらに、おねじ部88とめねじ部44とを充填材112で接着した実施例2におけるサンプルは、おねじ部88とめねじ部44とを螺合したが接着していない実施例1におけるサンプルに比べて、リーク電圧を高くできることが明らかになった。この理由は、ネジ間に充填された充填材112(耐熱接着剤)が、めねじ部44とおねじ部88との間を導電経路とするリークの抑制効果を高めたからであると推察される。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記実施の形態では、誘電体バリア放電やコロナ放電により大気圧プラズマを発生する点火プラグ10,100やプラズマジェット方式の点火プラグ80について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。中心電極と接地電極との間に火花放電を生じる点火プラグに、各実施形態のように、第1絶縁体20,84,104の外周に第2絶縁体40,90,106を螺合して接合した絶縁体を適用することは当然可能である。
各実施の形態では説明を省略したが、おねじ部26,88及びめねじ部44は連続的に設けても良いし、断続的に設けても良い。
第1実施の形態および第2実施の形態では、おねじ部26,88とめねじ部44との間に充填材112を設けない場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、おねじ部26,88とめねじ部44との間に充填材112を設けることは当然可能である。同様に第3実施の形態において、充填材112を省略することは当然可能である。
第1実施の形態では、係合部53が設けられた中心電極50の軸部51を軸孔31に挿入した後、頭部52を軸部51に接合する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。頭部52が設けられた軸部51を軸孔31に挿入した後、ねじ等によって係合部53を軸部51に接合することは当然可能である。また、係合部53及びシール材58を省略する代わりに、端子金具57及び軸部51を長いものに代えて、軸部51を端子金具57にねじ等を用いて接合することは当然可能である。
第3実施の形態では、円筒部41に先端部108が連接された第2絶縁体106を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。先端部108を省略して、第2絶縁体106を円筒状にすることは当然可能である。先端部108を省略した場合も、第1絶縁体104の径方向の外側に円筒状の第2絶縁体が配置されるので、第2絶縁体(円筒部41)の厚さの分だけ、主体金具110と中心電極101との沿面距離を長くできる。その結果、第2絶縁体を設けることによって、リーク電圧を高くできる。
第1実施の形態では、第2絶縁体40の先端面43が、主体金具60の先端69より先端側に位置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2絶縁体40の先端面43を、主体金具60の先端69より後端側に存在させる(第2絶縁体40を主体金具60の内側に存在させる)ことは当然可能である。この場合も中心電極50の頭部52の表面積を大きくできるので、第2絶縁体40の外表面のプラズマの生成量を増やすことができるからである。
第1実施の形態では、第2絶縁体40の外径が、第2絶縁体40の軸線O方向の全長に亘って同一である場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。即ち、点火プラグ10の製造工程において、第1絶縁体20の外周に主体金具60を組み付けた後、主体金具60の先端69側から第1絶縁体20に第2絶縁体40を接合できる。従って、第2絶縁体40のうち主体金具60よりも先端側に配置される部分の外径を、主体金具60の先端69の内径や、棚部67の最小内径よりも大きくできる。
第1実施の形態では、中心電極50の頭部52が円柱状に形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、頭部52の形状は適宜設定できる。頭部52の他の形状としては、例えば、円板状、球状、六角柱などの多角柱状などが挙げられる。
第1実施の形態および第2実施の形態では第1絶縁体20,84に第2絶縁体40,90を直接接合し、第3実施の形態では充填材112を介して第1絶縁体104に第2絶縁体106を接合する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1絶縁体20,84,104と第2絶縁体40,90,106との間に、おねじ及びめねじが形成された円環状の中間材(図示せず)を介在させ、中間材(他部材)を介して第1絶縁体20,84,104と第2絶縁体40,90,106とを接合することは当然可能である。
第3実施の形態では、第2絶縁体106の先端部108が主体金具110の先端面111に当接する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。締め付けの軸力を確保するため、主体金具110の代わりに、第2絶縁体106の先端部108を第1絶縁体104の先端に当接させることは当然可能である。なお、めねじ部44及びおねじ部88を充填材112が接着するので、第2絶縁体106を第1絶縁体104や主体金具110に当接させて締付軸力を確保しなくても良い。
上記各実施の形態では、リング部材73及び粉末74を介して主体金具60,94,110を第1絶縁体20,84,104に加締める場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。リング部材73及び粉末74を省略して、主体金具60,94,110を加締めることは当然可能である。
上記実施の形態では、第1絶縁体20,84,104及び第2絶縁体40,90,106が、いずれもアルミナ等の同じ材質で形成される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、点火プラグの要求特性に応じて、第1絶縁体20,84,104及び第2絶縁体40,90,106の材質を異ならせることは当然可能である。