JP5035693B2 - 起毛経編布帛 - Google Patents
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Description
従って、織地では、針先の回転方向に交叉する緯糸の繊維が起毛毛羽を形成することになる。
その起毛毛羽が発生し易くするために、起毛処理を施す被起毛織地は、緯糸が数本の経糸を越えて長く浮き出る織組織をもって織成される。
そのような配慮は、起毛処理を施す被起毛経編地にもなされ、経編地に対する起毛処理は、編目が針先の回転方向に平行になるウェール方向Wに直線状に並んで出来るニードルループ面に対してではなく、編目が稍斜めではあるがウェール間を結んでコース方向Cに並んでジグザグになっているシンカーループ面に対して施されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、シンカーループは、ガイド筬がスイングするウェールWの数に応じて長く浮き上がらせることが出来、而も、シンカーループの表面に現れる繊維の長さ方向はコース方向Cに略平行で針先の回転方向に略直交するので、織地の緯糸と同様に起毛することが出来る。
とは言え、ウェール間を結んでコース方向Cに並んでジグザグに続くシンカーループは、元々経編地からループ状に浮き出ており、それを起毛するときは、そのシンカーループを形成している編糸の少なからず一部の繊維が引き千切られることなくループ状になったまま残され、その結果、その起毛されたシンカーループ面に雄型フックの面ファスナーが触れると、その雄型フックにループ状のまま残された繊維が引っ掻き出され毛羽立ち、ピリングが発生し易く、摩耗し易くなる。
又、パイル層の形成されているシンカーループ面に加熱エンボスロールを当ててニードルループ面に至る凹凸模様を描出しようとする場合、その大きく毛羽立った厚いパイル層が断熱作用をなすので、加熱エンボスロールの熱がシンカーループ面側からニードルループ面側へと伝わり難く、シンカーループ面に付形される凹部の谷底がニードルループ面に達する程度に深く、その凹部の型際が鮮明な凹凸模様をシンカーループ面に描出することは困難である。
そのようなことは、起毛経編布帛を原布としてそのシンカーループ面に粘性のある樹脂組成物を塗布して人工皮革を得ようとする場合も同様であり、樹脂組成物が僅かにパイル層の毛羽先に接着するだけで深く浸透せず、その樹脂組成物の皮膜が剥離したり亀裂し易く、耐摩耗性のある人工皮革は得難い。
このことは、シンカーループ面に接着剤を塗布して表皮を貼り合わせて合成皮革を得ようとする場合も同様である。
そのようにすると、バック編糸のニードルループは、フロント編糸のニードルループよりもニードルループ面の最表面に露出しているので、その下側に位置するフロント編糸のニードルループよりも起毛針に触れ易く、バック編糸の繊維が極細で太いフロント編糸の繊維よりも起毛針に引っ掻けられ易く、バック編糸の振り(スイング)がフロント編糸の振りよりも多く、編み込まれたバック編糸の糸足(実質長さ)がフロント編糸の糸足よりも長いのでニードルループ面に引っ掻き出し易く、バック編糸のニードルループの起毛が可能になると言う訳である。
このため、極細繊維を使用した起毛経編布帛を椅子張地や衣料生地等として使用する場合、その使用中に擦れ合った部分にだけ細かいピリング(毛玉・凹凸)が発生してバックスキン調の観を呈し、その擦れ合わない他の部分との外観上の差異によって使い古されたかの如き観を呈するようになる。
そのため、起毛前処理後のニードルループ面の起毛処理においては、フロント編糸のシンカーループに比して緊張状態にあって糸足の短いバック編糸のニードルループは、その相対的に糸足が長く弛緩状態にあるフロント編糸のニードルループに比して起毛され難くなる。
その結果、起毛処理の施されたニードルループ面は、その起毛し易いフロント編糸のニードルループの起毛毛羽に覆われたパイル面となる。
そして、そのダメージ(損傷)のないバック編糸の構成する一針振りのベース編地のニードルループ面が、フロント編糸の起毛毛羽に覆われた起毛経編布帛が得られることになる。
そして、起毛し易くなったニードルループ面では、往々にして編糸の少なからず一部の繊維が引き千切られることなくループ状になったまま残され、ループ状のまま残された繊維が面ファスナーの雄型フックに引っ掻き出され毛羽立ち、ピリングが発生し易く、摩耗し易くなる。
その結果、ニードルループ面の起毛処理に先立って必要とされたシンカーループ面での予備起毛処理が不要になる。
起毛処理によって掻き出される多針振り編糸11よりもニードルループ面側に位置し、ニードルループ面の表面を構成しているバック編糸12は、1針振りで編み込まれるので、そのバック編糸12だけでも定形性のあるベース編地を構成しており、ベース編地を構成するバック編糸12が、そのバック編糸12を抱き込むように掻き出された多針振り編糸11の起毛毛羽に覆われているので、そのバック編糸12の構成するベース編地が擦られ難く、耐摩耗性に優れ、椅子張地や衣料生地等に適した起毛経編布帛が得られる。
そして、本発明(第1の特徴)では、起毛処理による毛羽立ちが少なくなるとしても、その起毛処理を施すニードルループ面は、ニードルループが一直線状に並んだ鎖編目列を形成していてシンカーループ面に比して見映えがよいので、従来シンカーループ面に施していたように強い起毛処理を必要とせず、ニードルループ面が僅かに毛羽立つ程度の起毛処理でもよく、その僅かな多針振り編糸11の毛羽立ちによって滑らかで手触りのよいパイル面となる。
その毛羽立ちが僅かであれば、その起毛毛羽によってエンボス加工が妨げられることはなく、捺染インクや樹脂組成物が起毛毛羽に弾かれることなく塗着し易くなり、捺染インク浸透性に優れ、接着剤も塗着し易くなる。
このように、本発明(第1の特徴)によると、捺染インク浸透性に優れ、凹凸模様や捺染模様を型際鮮明に描出することが出来、耐摩耗性に優れ、面ファスナー抵抗値が少なく、ピリングの発生がなく、又、耐塗膜剥離性に優れ、人工皮革や合成皮革の原布にも適した起毛経編布帛が得られる。
多針振り編糸11と1針振りのバック編糸12が熱可塑性合成繊維マルチフィラメント糸であれば、ニードルループ面への加熱エンボス加工が容易になる。
そして、経編地のパイル密度(M)が2000個/(25.4mm)2 以上であり、パイル/デシテックス換算密度(ρ)が400000dtex/(25.4mm)2以上であれば、ニードルループ面が緻密で平滑なパイル面となり、椅子張地、衣料生地、袋物生地、敷布、敷物、合成皮革原布、人工皮革原布等に適した起毛経編布帛が得られる。
しかし、パイル層の厚みが1.5mm以下のパイル布帛、特に、シンカーループ面からニードルループ面に至る総厚みが1.5mm以下となる起毛経編布帛では、そのパイル層を構成している起毛毛羽の全てを刈り取ることは極めて困難なことである。
加えて、本発明では、シンカーループ面に比して起毛が困難なニードルループ面において、バック編糸ニードルループ22の下側に位置して起毛が不可能視される多針振り編糸のニードルループ21を種々の工夫を凝らして起毛し、そのバック編糸ニードルループ22の下から掻き出される多針振り編糸11の起毛毛羽によってニードルループ面にパイル層を形成している関係上、多針振り編糸11の全ての繊維が掻き出されているとは言い難い。
そこで、本発明では、パイル密度の2倍(2M)とパイル糸である多針振り編糸11の総繊度(D)(dtex)との積(2M×D)で示されるパイル/デシテックス換算密度(ρ)をもってパイル層の嵩比重に代用している。
ここに、パイル/デシテックス換算密度(ρ)とは、パイル布帛の単位面積([25.4mm]2 )に含まれる全ての起毛毛羽(パイル繊維)を太い一本の繊維に集約した場合の当該一本の仮想繊維の繊度、即ち、パイル布帛の単位面積内([25.4mm]2)に植設されていると仮想することの出来る太い一本の仮想パイル繊維の繊度を意味する。
しかし、本発明では、上記の通り、多針振り編糸11のニードルループ21の全繊維が掻き出されているとは言い難い一方、多針振り編糸のニードルループ21の全繊維の中の何本かの繊維が掻き出されずに残存するのかを知ることも殆ど不可能である。
そこで、本発明では、多針振り編糸のニードルループ21の全繊維が掻き出されていると仮定した上で、多針振り編糸の繊維フィラメントの総本数から算定される多針振り編糸の繊維フィラメントに構成されるパイル繊維を太い一本の仮想繊維に集約した場合の当該一本の仮想繊維の繊度、即ち、パイル布帛の単位面積内([25.4mm]2)に植設されていると仮想することの出来る太い一本の仮想パイル繊維の繊度によってパイル/デシテックス換算密度(ρ)を算定している。
そのパイル層の緻密度を知る手掛りであるパイル/デシテックス換算密度(ρ)の算定において、パイル密度を2倍(2M)とするのは、パイル糸である多針振り編糸がU字状を成してベース編地に係止され、そのベース編地に係止されてU字状を成す多針振り編糸が沈糸部分(シンカーループ31)の両端からそれぞれ1本(合計2本)のパイルが一番(つがい)になって突き出ていることによる。
その場合、ニードルループ面側に位置する第1筬(バック筬)に通されたバック編糸12を、隣り合うニードルループ列(ウェール)とニードルループ列(ウェール)の間で第1筬と共にシフト(移動)させ、コース方向Cにおいて隣り合うニードルループ列(41・42・43)を超えることなくウェール方向Wにジグザグに続く1針振りのシンカーループ32を形成して編み込む。
コース方向Cにおいて隣り合うニードルループ列(41・42・43)を超えて複数のウェール間でシフト(移動)して2針振り以上の多針振りのシンカーループ31を形成する多針振り編糸11は、何れかのミドル筬に通されたものであってもよいし、又、フロント筬に通されたものであってもよい。
しかし、多針振り編糸11は、それを起毛処理してニードルループ面に掻き出し、それによる起毛毛羽をニードルループ面に発生させてパイル層を形成するものであるから、他の何れの編糸によっても経編地に押さえ付けられず、シンカーループ面において解放されてフリーの浮出状態になっていることが望ましい。
従って、バック筬とフロント筬と共にミドル筬を使用して起毛経編布帛を編成する場合には、シンカーループ面に浮き出たシンカーループ31を形成することになるフロント筬にだけではなく、ミドル筬にも多針振り編糸11を通す。
そうすると、フロント筬に通した多針振り編糸11だけではなく、ミドル筬に通した多針振り編糸11も掻き出されてニードルループ面の起毛毛羽が緻密になり、一層滑らかで手触りのよい起毛経編布帛が得られる。
従って、多針振り編糸11をシフト(移動)して超えるウェール間隔の数は2(2針振り)乃至5(5針振り)にするとよい。
図1と図2は、第1筬(バック筬)に通されたバック編糸12を、コース方向Cにおいて隣り合うニードルループ列(41・42・43)を超えることなくウェール方向Wにジグザグに続く1針振りとし、第2筬(フロント筬)に通されたフロント編糸11を、コース方向Cにおいて隣り合う2列のニードルループ列(41・42・43)を超えつつウェール方向Wにジグザグに続く3針振りとして編成された経編布帛を図示する。
スクリーン捺染機に通して起毛経編布帛のパイル面に捺染インキを印捺し、そのインキ塗膜の耐剥離性を試験する。
耐塗膜剥離性試験には、JIS−K−6404(ゴム引布・プラスチック引布試験方法−第6部:もみ試験)に準じ、JIS−L−1096に規定のスコット型もみ試験機を用い、起毛経編布帛から幅25mm・長さ150mmの試験片をタテ・ヨコ方向に4枚ずつ採取する。
タテ・ヨコの方向が同じの試験片を2枚1組として各試験片を、つかみ間隔を30mmとして治具でつかみ、各組2枚の試験片のパイル面を向かい合わせにしてもみ試験機にセットする。
もみ試験機にセットした2枚の試験片のパイル面を触れ合わせ、その重なり合った状態で9.8Nの荷重を掛け、つかみ治具を往復移動して2枚の試験片を2000回揉む。
つかみ治具の往復移動距離は50mmとし、つかみ治具の往復移動速度は1分間に120回とする。
もみ試験機から取り外した試験片のパイル面を観察し、その耐塗膜剥離性を次の等級をもって評価する。
5級;インキ塗膜に剥離・亀裂・損傷が全く認められない。
4級;インキ塗膜に剥離・損傷が認められるが、塗膜の亀裂は認められない。
3級;インキ塗膜に剥離・亀裂・損傷が僅かに認められるが、目立つ程ではない。
2級;インキ塗膜に剥離・損傷が認められるが、塗膜の亀裂は目立つ程ではない。
1級;インキ塗膜に剥離・亀裂・損傷が著しく認められる。
起毛経編布帛から直径120mmの試験片を1枚採取し、試験片の中心に直径約6mmの孔を開け、JIS−L−1096に規定のテーバー摩耗試験機にセットする。
試験機における摩耗輪をCS−10摩耗輪として試験片のパイル面に当て、摩耗輪に荷重9.8Nを掛け、回転速度を70rpmとして1000回試験片を回転する。
摩耗試験機から取り外した試験片のパイル面を観察し、その耐摩耗性を次の等級をもって評価する。
5級;パイル面に状態変化が認められない。
4級;パイル面に状態が変化しているが、摩耗は殆ど認められない。
3級;パイル面の摩耗が目立ち、毛倒れやパイル切れが認められる。
2級;パイル面が摩耗して地糸がパイル面に露顕しているのが認められる。
1級;パイル面に著しい損傷が認められる。
スクリーン捺染機に通して起毛経編布帛のパイル面に捺染インキを印捺し、そのインキ塗膜によって捺染インクの浸透度合を試験する。
捺染インキを印捺した起毛経編布帛から幅200mm・長さ100mmの試験片をタテ・ヨコ方向に各1枚(合計2枚)採取する。
ヨコ方向に採取した試験片には両端幅方向(幅200mm)に、タテ方向に採取した試験片には両端長さ方向(幅100mm)に、それぞれ両端に質量300gの治具を取り付け、水平に支架して二等辺山形断面形状を成すL形アングル(フランジ・ウエブサイズ40mmのL形鋼)に引っ掛けて両端を吊り下ろす。
両端の治具からの荷重によって緊張された試験片のインキ塗膜を観察し、捺染インキが浸透していないインキ塗膜の下のパイル繊維の無着色生地の色が、そのパイル面のインキ塗膜の表面に露顕するか否かによって、捺染インク浸透性を次の等級をもって評価する。
5級;無着色生地色がインキ塗膜の表面に全く認められない。
4級;無着色生地色がインキ塗膜の表面に微かに認められるが、殆ど目立たない。
3級;無着色生地色がインキ塗膜の表面に認められるが、目立ちが少ない。
2級;無着色生地色がインキ塗膜の表面に明らかに認められ、稍々目立つ。
1級;無着色生地色がインキ塗膜の表面に明らかに認められ、著しく目立つ。
起毛経編布帛から幅100mm・長さ150mmの試験片をタテ・ヨコ方向に各6枚ずつ採取し、その試験片をそれぞれ長さ方向を傾斜方向に向けて水平に支持された傾斜板(東洋精機製作所製AN型)に載せ、その試験片に、縦横寸法が100mm×50mmであり、質量が500gであり、底面(全面)に面ファスナーを取り付けた摩擦子を、その底面の面ファスナーを試験片に向けて載せ、毎秒2.7度の速さで傾斜板を傾け、摩擦子が滑降し始めた時点での傾斜板の傾斜角度θからtanθの値を算出する。
その各試験片のtanθの平均値をもって面ファスナーに対する起毛経編布帛のパイル面の抵抗値とする。
傾斜板には、摩擦子を載せる際に摩擦子がズレ移動しないように仮止めするストッパーを付設しておく。
面ファスナーには、クイックロンR・スタンダードタイプ・フックA面・ノーマルタイプの面ファスナー(YKK株式会社製品)を使用する。
前記の面ファスナー抵抗値測定試験1法における操作において、クイックロンR・スタンダードタイプ・フックA面・ノーマルタイプの面ファスナー(YKK株式会社製品)に代えて、クイックロンR・マッシュルームタイプ・フックA面・マッシュルームフックタイプの面ファスナー(YKK株式会社製品)を摩擦子の底面(全面)に取り付けて試験操作する。
バック筬とフロント筬との2枚筬を具備するトリコット経編機のバック筬に単繊維繊度5.6dtex・総繊度84dtexの高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を1針振り編糸として通し、フロント筬に単繊維繊度0.46dtex・総繊度200dtexの低熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を多針振り編糸として通し、バック筬を編組織パターン/1−0/1−2/………の順に操作し、フロント筬を編組織パターン/1−0/2−3/………の順に操作して編成した経編布帛を沸騰水にて処理して高熱収縮性ポリエステル繊維に熱収縮を顕現させ、ニードルループ面を起毛し、ウェール密度35W/25.4mm、コース密度68C/25.4mm、パイル密度2380個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度952000dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.3mmの起毛経編布帛に仕上げた。
バック筬とミドル筬とフロント筬との3枚筬を具備するトリコット経編機のバック筬に単繊維繊度5.6dtex・総繊度84dtexの高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を1針振り編糸として通し、ミドル筬に単繊維繊度0.58dtex・総繊度84dtexの低熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を多針振り編糸として通し、フロント筬に単繊維繊度0.58dtex・総繊度84dtexの低熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を多針振り編糸として通し、バック筬を編組織パターン/1−0/1−2/………の順に操作し、ミドル筬を編組織パターン/1−0/2−3/………の順に操作し、フロント筬を編組織パターン/3−2/0−1/………の順に操作して編成した経編布帛を沸騰水にて処理して高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維に熱収縮を顕現させ、ニードルループ面を起毛し、ウェール密度40W/25.4mm、コース密度64C/25.4mm、パイル密度2560個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度860160dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.0mmの起毛経編布帛に仕上げた。
バック筬とミドル筬とフロント筬との3枚筬を具備するトリコット経編機のバック筬に単繊維繊度5.6dtex・総繊度84dtexの高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を1針振り編糸として通し、ミドル筬に単繊維繊度0.58dtex・総繊度84dtexの低熱収縮性ポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸を多針振り編糸として通し、フロント筬に単繊維繊度0.58dtex・総繊度84dtexの低熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を多針振り編糸として通し、バック筬を編組織パターン/1−0/1−2/………の順に操作し、ミドル筬を編組織パターン/1−0/2−3/………の順に操作し、フロント筬を編組織パターン/3−2/0−1/………の順に操作して編成した経編布帛を沸騰水にて処理して高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維に熱収縮を顕現させ、ニードルループ面を起毛し、ウェール密度40W/25.4mm、コース密度66C/25.4mm、パイル密度2640個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度887040dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.2mmの起毛経編布帛に仕上げた。
バック筬とミドル筬とフロント筬との3枚筬を具備するトリコット経編機のバック筬に単繊維繊度5.6dtex・総繊度84dtexの高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を1針振り編糸として通し、ミドル筬とフロント筬に単繊維繊度0.58dtex・総繊度84dtexの低熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を多針振り編糸として通し、バック筬を編組織パターン/1−0/1−2/………の順に操作し、ミドル筬を編組織パターン/1−0/2−3/………の順に操作し、フロント筬を編組織パターン/1−0/2−3/………の順に操作して編成した経編布帛を沸騰水にて処理して高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維に熱収縮を顕現させ、ニードルループ面を起毛し、ウェール密度39W/25.4mm、コース密度70C/25.4mm、パイル密度2730個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度917280dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.1mmの起毛経編布帛に仕上げた。
バック筬とミドル筬とフロント筬との3枚筬を具備するトリコット経編機のバック筬に単繊維繊度5.6dtex・総繊度84dtexの高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を1針振り編糸として通し、ミドル筬に単繊維繊度0.58dtex・総繊度84dtexの低熱収縮性ポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸を多針振り編糸として通し、フロント筬に単繊維繊度0.58dtex・総繊度84dtexの低熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を多針振り編糸として通し、バック筬を編組織パターン/1−0/1−2/………の順に操作し、ミドル筬を編組織パターン/1−0/2−3/………の順に操作し、フロント筬を編組織パターン/1−0/2−3/………の順に操作して編成した経編布帛を沸騰水にて処理して高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維に熱収縮を顕現させ、ニードルループ面を起毛し、ウェール密度38W/25.4mm、コース密度69C/25.4mm、パイル密度2622個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度880992dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.2mmの起毛経編布帛に仕上げた。
バック筬とフロント筬との2枚筬を具備するトリコット経編機のバック筬に単繊維繊度2.4dtex・総繊度84dtexの低熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を1針振り編糸として通し、フロント筬に単繊維繊度0.36dtex・総繊度62dtexの低熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸と単繊維繊度2.8dtex・総繊度33dtexの高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を混繊した合計繊度95dtexの複合マルチフィラメント糸を多針振り編糸として通し、バック筬を編組織パターン/1−0/1−2/………の順に操作し、フロント筬を編組織パターン/1−0/5−6/………の順に操作して編成した経編布帛を沸騰水にて処理して高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維に熱収縮を顕現させ、シンカーループ面を起毛し、ウェール密度44W/25.4mm、コース密度80C/25.4mm、パイル密度3520個/(25.4mm)2、パイル/デシテックス換算密度668800dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.6mmの起毛経編布帛に仕上げた。
バック筬とミドル筬とフロント筬との3枚筬を具備するトリコット経編機のバック筬に単繊維繊度0.24dtex・総繊度84dtexの低熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸と単繊維繊度5.6dtex・総繊度33dtexの高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を混繊した合計繊度117dtexの複合マルチフィラメント糸を多針振り編糸として通し、ミドル筬に単繊維繊度5.6dtex・総繊度84dtexの高熱収縮性ポリエステル捲縮繊維マルチフィラメント糸を1針振り編糸として通し、フロント筬に単繊維繊度3.5dtex・総繊度84dtexの低熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維マルチフィラメント糸を1針振り編糸として通し、バック筬を編組織パターン/1−0/3−4/………の順に操作し、ミドル筬を編組織パターン/0−1/2−1/………の順に操作し、フロント筬を編組織パターン/2−1/0−1/………の順に操作して編成した経編布帛を沸騰水にて処理して高熱収縮性ポリエステル無捲縮繊維に熱収縮を顕現させ、ニードルループ面を起毛し、ウェール密度39W/25.4mm、コース密度59C/25.4mm、パイル密度2301個/(25.4mm)2 、パイル/デシテックス換算密度538434dtex/(25.4mm)2 、総厚み1.4mmの起毛経編布帛に仕上げた。
上記[表1]の品質特性試験データが示すように、実施例4と5の起毛経編布帛では、毛羽立ちが少なく、布帛の総厚みが薄くても起毛面が滑らかで耐摩耗性に優れ、面ファスナーに触れて毛羽立つことがなく、捺染インク浸透性と耐塗膜剥離性に優れ、インキ塗膜が亀裂したり、インキ塗膜の表面に起毛パイル繊維の無着色生地の色が露顕することがなく、型際が先鋭で鮮明な捺染模様が描出された。
これに対し、比較例1・2の起毛経編布帛では、毛羽立ちが多く、分厚く、ピリングが発生しているかの如き観を呈し、耐摩耗性に劣り、耐摩耗性試験後の起毛パイル面には毛羽立ちとピリングによる摩耗輪の跡をハッキリ看取され、捺染インク浸透性と耐塗膜剥離性を欠き、特に比較例1の起毛経編布帛では、捺染インクの印捺された細線が無着色生地色に細かく分断された破線の如き観を呈していた。
尚、上記[表1]において、実施例1と2と3の起毛経編布帛の品質特性試験は省略されている。
12:バック編糸
21:フロント編糸ニードルループ
22:バック編糸ニードルループ
31:フロント編糸シンカーループ
32:バック編糸シンカーループ
41:ニードルループ列
42:ニードルループ列
43:ニードルループ列
C :コース方向
W :ウェール方向
Claims (7)
- (a) 編成される経編地のニードルループ面側に位置するバック筬を第1筬とし、バック筬よりも経編地のシンカーループ面側に位置するバック筬以外の何れかの他の筬との少なくとも2枚の筬で編成され、
(b) 第1筬であるバック筬に通されたバック編糸(12)が、1針振りのシンカーループ(32)を形成して編み込まれ、
(c) バック筬以外の何れかの他の筬に通された何れかの編糸(11)が2針振り以上の多針振りのシンカーループ(31)を形成して編み込まれており、
(d) 1針振りのシンカーループ(32)を形成しているバック編糸(12)が、経編地の編成後に熱収縮しており、
(e) その1針振りのバック編糸(12)の熱収縮率が、バック筬以外の何れかの他の筬に通されて多針振りのシンカーループを形成している多針振り編糸(11)の熱収縮率よりも大きく、
(f) 経編地のニードルループ面に起毛処理が施されており、
(g) 経編地のニードルループ面が、バック筬以外の何れかの他の筬に通されて多針振りのシンカーループを形成している多針振り編糸(11)の起毛毛羽に覆われたパイル面を構成している起毛経編布帛。 - (h) ニードルループ面の起毛毛羽を構成している多針振り編糸(11)が、単繊維繊度1.2dtex以下の細手繊維によって構成されている前掲請求項1に記載の起毛経編布帛。
- (i) シンカーループ面からパイル面に至る経編地の総厚みが1.5mm以下である前掲請求項1と請求項2の何れかに記載の起毛経編布帛。
- (j) ニードルループ面の起毛毛羽を構成している多針振り編糸(11)が、経編地のシンカーループ面側に位置するフロント筬によって編み込まれたフロント編糸であり、
そのニードルループ面の起毛毛羽を構成している多針振り編糸(11)が、経編地のニードルループ面に表裏するシンカーループ面の表面に浮き出た多針振りのシンカーループ(31)を構成している前掲請求項1と請求項2と請求項3の何れかに記載の起毛経編布帛。 - (k) 1針振りのシンカーループを形成しているバック編糸(12)が、無捲縮繊維に成るマルチフィラメント糸である前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4の何れかに記載の起毛経編布帛。
- (l) 経編地のウエール密度(単位:ウエール/25.4mm)とコース密度(単位:コース/25.4mm)との積で表されるパイル密度(M)が、2000個/(25.4mm)2 以上であり、
(m) そのパイル密度の2倍(2M)と多針振り編糸(11)の総繊度(D)(dtex)との積(2M×D)で示されるパイル/デシテックス換算密度(ρ)が、400000dtex/(25.4mm)2 以上であり、
(n) ニードルループ面の起毛毛羽を構成している多針振り編糸(11)と、1針振りのシンカーループを形成しているバック編糸(12)が、熱可塑性合成繊維マルチフィラメント糸であり、
(o) そのバック編糸(12)の単繊維繊度が、その多針振り編糸(11)の単繊維繊度よりも太い太手繊維を含んでいる前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5の何れかに記載の起毛経編布帛。 - (p) 多針振り編糸(11)の単繊維繊度がバック編糸(12)の単繊維繊度の3分の1以下であり、
(q) バック筬以外の何れかの他の筬に通されて多針振りのシンカーループを形成している多針振り編糸(11)の細手繊維が、ニードルループ面においてバック編糸(12)のニードルループ(22)の隙間から掻き出されており、
(r) その掻き出された多針振り編糸(11)の繊維毛羽が、バック編糸(12)のニードルループ(22)の隙間を埋めてニードルループ面にパイル面を構成している前掲請求項1と請求項2と請求項3と請求項4と請求項5と請求項6の何れかに記載の起毛経編布帛。
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