JP5027812B2 - トリプシンの変異体によるインスリン前駆体の切断 - Google Patents

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Description

本発明は、非動物宿主生物において、アルギニン対リジンに対する基質特異性が増大した組換えトリプシンの変異体を産生することに関する。さらに本発明は、組換えトリプシンの変異体及びその産生に関する。また、インスリン前駆体を切断するために組換えブタ膵臓トリプシン変異体を使用すること、及びこのトリプシン変異体を含むキットが提供される。
トリプシンは、塩基性アミノ酸であるアルギニン及びリジンのカルボキシル基でペプチドの加水分解性切断を触媒するセリンプロテアーゼである(Keil B.、(1971)The Enzyme第II巻 第3版、編者Boyer、Acad.Press NY、249〜275頁)。組換えブタ膵臓トリプシンは、およそ23,000ダルトンの分子量を有し、そしてpH8.0で最適な酵素活性を有する。
トリプシンは、インスリン及びインスリンアナログを産生する工業プロセスで使用されている。これらの生体分子の産生は、文献に記載されており、そしていくつかのアプローチが選択されている。経済的な観点から見れば、ヒトインスリン及びインスリンアナログの化学合成は、実行不可能である。従って、インスリン及びインスリンアナログの産生に関して主に2つの方法、すなわち出発物質としてブタインスリンを使用する半合成アプローチ、及び組換えインスリンを発現させるために、遺伝子操作された微生物を使用することが現在存在している。
インスリンは、51アミノ酸のポリペプチドであり、これは、2つのアミノ酸鎖、すなわち21アミノ酸を有するA鎖及び30アミノ酸を有するB鎖に分けられる。これらの鎖は、2つのジスルフィド架橋によって互いに結合されている。インスリン調製物は、長年糖尿病治療に利用されている。この治療では、天然に存在するインスリンだけが使用されるわけではなく、最近ではまた、インスリンの誘導体及びアナログも利用されている。
インスリンアナログは、天然に存在するインスリン、すなわちヒトインスリン又は動物インスリンのアナログであり、これは、少なくとも1つの天然に存在するアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換されるか、そして/又は少なくとも1つのアミノ酸残基が、対応する(そうでなければ同一の)天然に存在するインスリンから付加/除去されることが異なる。この付加及び/又は置換されたアミノ酸残基はまた、天然に存在しないものであり得る。
インスリン誘導体は、天然に存在するインスリン又は化学修飾によって得られるインスリンアナログの誘導体である。この化学修飾は、例えば、1つ又はそれ以上の特定の化学基を1つ又はそれ以上のアミノ酸に付加することからなり得る。
インスリン誘導体の例は、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−ミリストイルヒトインスリン、B29−N−パルミトイルヒトインスリン、B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン、B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29−N−(N−パルミトイル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−(N−リトコリル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−(ω
−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
インスリンアナログは、EP 0 214 826、EP 0 375 437及びEP 0 678 522に記載されている。EP 0 214 826は、とりわけB27及びB28の置換に関連している。EP 0 678 522は、B29位に種々のアミノ酸(好ましくはプロリン)を有するがグルタミン酸は有さないインスリンアナログを記載している。
他のインスリンアナログは、LysB28ProB29ヒトインスリン、B28Aspヒトインスリン、B28位のプロリンが、Asp、Lys、Leu、Val若しくはAlaで置換されており、そしてここでB29位のLysがProで置換され得るヒトインスリン;AlaB26ヒトインスリン;des(B28−B30)ヒトインスリン;des(B27)ヒトインスリン又はdes(B30)ヒトインスリンである。
EP 0 375 437は、B28にリジン又はアルギニンを有するインスリンアナログを含んでおり、これは、場合によりさらにB3及び/又はA21で修飾され得るものである。
EP 0 419 504において、化学修飾に対して保護されるインスリンアナログが開示されており、これにおいて、B3のアスパラギン及びA5、A15、A18又はA21位の少なくとも1つのさらなるアミノ酸が修飾されている。WO 92/00321において、B1〜B6位の少なくとも1つのアミノ酸が、リジン又はアルギニンで置換されているインスリンアナログが記載されている。
本明細書でさらに議論される重要なインスリンアナログは、「インスリングラルギン」(Gly A(21)、Arg B(31)、Arg B(32)ヒトインスリン)及び「インスリングルリジン(glulisine)」(Lys B(3)、Glu B(29)ヒトインスリン)である。
組換えDNA方法により、インスリン又はインスリンアナログの前駆体、特に、ヒトインスリンとは異なるアミノ酸配列及び/又はアミノ酸鎖長を有するヒトプロインスリン又はプロインスリンを、微生物中で調製することが可能である。遺伝子操作されたEscherichia coli細胞から調製されたプロインスリンは、正確に結合したシスチン架橋をまったく有さない。E.coliを用いてヒトインスリンを得る方法(EP 0 055 945)は、以下の方法の工程に基づいている。
微生物の発酵、細胞分離、細胞破壊、インスリン又はインスリンアナログの前駆体の単離、プレプロインスリン(「PPI」)を得るために、それぞれのジスルフィド結合を形成することによって所望の(ネイティブの)3次元構造にリフォールディングすること、それぞれのプレプロインスリンのトリプシン切断(おそらくカルボキシペプチダーゼBの存在下)、基本的な精製、第一のクロマトグラフィー工程、ヒトインスリン又はそれぞれのインスリンアナログを得るための最終的な酵素切断、第二のクロマトグラフィー工程、すなわちHPLCによる最終精製、結晶化及び乾燥。
プレプロインスリンのトリプシン切断は、酵素反応かつ複合反応である。すなわち、それぞれの産物を得るために、プレ配列及びC−ペプチドがこの工程で切り離される。例えば、ヒトインスリン産物の場合、望ましい重要なものは、Arg(B31)、Arg(B32)−インスリン及びArg(B31)−インスリン(DE19821866)である。
しかしトリプシン切断は、望ましくない副反応が生じる結果として、多くの副産物の形成を導く。トリプシンは、C末端でアルギニン(Arg)又はリジン(Lys)残基のペプチド結合を切断するエンドプロテアーゼ(セリンタイプ)である。プレプロインスリン分子のトリプシン切断は、同時に異なる切断部位で生じ得る。特定のプレプロインスリン分子内には多くの切断部位があるので、多くの望ましくない副産物が、トリプシン切断反応の間に形成され得る。図1に見られ得るように、切断反応の間に生成される副産物の多くは、Arg残基の代わりにLysのC末端側でペプチド結合を切断される結果なのである。
すべてのプレプロインスリンに関して、プレ配列とインスリンB鎖との間の切断部位は一塩基である。この接合部で、ただ1つの切断反応が生じ得る。
2つの他の接合部、B−鎖/C−ペプチド及びC−ペプチド/A−鎖において、異なる切断部位が存在している。ヒトインスリン及びインスリングラルギンの場合、B−鎖/C−ペプチドとC−ペプチド/A−鎖との間の切断部位は、両方とも二塩基である(それぞれ、Arg−Arg及びLys−Arg)。さらに、B29−Lysの後の切断は、B30−des−Thr(「des−Thr」)形成を導いている。
ヒトインスリンに関しては、残基B31−Arg及びB32−Argの後のトリプシン切断のみが、B−鎖/C−ペプチド接合部、すなわちB31−Argインスリン(「モノ−Arg」)及びB31−Arg、B32−Argインスリン(「ジ−Arg」)として重要な産物を生じる。これらの産物は、「Arg−インスリン」として要約され得る。B32−Argの後の切断は、ジ−Arg−インスリンのみが使用され得るので、インスリングラルギンの産生方法で重大である。ヒトインスリン及びインスリングラルギンに関しては、B29−Lysの後の切断は、des−Thr形成をもたらす。インスリングルリジンに関しては、この切断部位は一塩基であり、そして可能な産物は、Arg含有種である。
C−ペプチド/A−鎖に関しては、Arg残基の後であり、そしてLys残基の後ではないトリプシン切断は、重要な産物を得るのに重大である。Lysの後での誤った切断は、A0−副産物の形成をもたらす。
当該分野の現状の不都合な点を克服するために、プレプロインスリンの切断プロセスにおいて、例えば図1に示されるように、異なる切断部位に対してArg特異性が増大したトリプシン酵素を用いることが望ましい。トリプシン酵素のArg特異性を増大させることによって、そしてその結果Lys特異性を減少させることによって、副産物、特にdes−Thr及びA0−成分の形成が予想され得る。
Sichlerら、FEBS Lett.(2002)530:220〜224は、ヒトトリプシンにおいて、190位(Huber,R.及びBode,W.,Acc.Chem.Res.(1978)11:114〜122に従ったキモトリプシノーゲンの番号付け)でのアミノ酸交換の影響を調べた。この位置での野生型セリンから突然変異体アラニンへの交換は、人工基質を用いたときに、アルギニンに対する切断部位選択性の増大、及びリジンに対するこの選択性の減少を引き起こすことが見出された。同時に、この突然変異体の酵素活性は、野生型と比較して、およそ2因子減少することが見出された。プレプロインスリンのプロセシングに関して、組換えヒト野生型トリプシン及びヒトトリプシン突然変異体(190位でのセリンからアラニンへのアミノ酸交換)を試験すると、両方の酵素に対して多量の副産物の形成が生じ、Arg選択性の増大が、プレプロインスリン切断には対応付けされなかったことが明らかにされた(以下の実施例1を参照のこと)。
当該分野の現状を考慮して、解決すべき問題は、タンパク質分解活性を大部分損なわずに、アルギニンに対する切断部位選択性の増大を示すトリプシンの変異体を提供することである。解決すべき別の特定の問題は、例えば図1に示されるように、プレプロインスリンプロセシングの切断部位内のアルギニン残基に対して切断部位選択性が増大したトリプシンの変異体を提供することである。
従って、172位でセリンからアラニンへとアミノ酸が交換したブタトリプシンの変異体を提供することによって問題は解決する。好ましい実施態様において、ブタトリプシンのSer172Ala変異体は、組換え手段によって提供される。驚くべきことに、ブタトリプシンのSer172Ala変異体の酵素活性は、野生型酵素と比較して、プレプロインスリンの切断反応がほぼ等しいことが見出された。
Sichlerら(FEBS Lett.(2002)530:220〜224)によってヒトトリプシンで試験された190位のアミノ酸セリンは、配列番号1で与えられるブタトリプシンの172位のセリンに対応している。両方の位置は、トリプシン様セリンプロテアーゼのいわゆるS1部位の一部である。
従って、本発明の一実施態様は、インスリン、インスリンアナログ又はインスリン誘導体の調製方法において、Ser172Alaブタトリプシンを使用することである。
本発明の別の実施態様は、インスリン、インスリンアナログ又はインスリン誘導体の調製方法であり、ここで、
(a)プレプロインスリン、プレプロインスリンアナログ又はプレプロインスリン誘導体は、Ser172Alaブタトリプシンで切断されるものとし、
(b)この得られる切断産物は、分離され、そして
(aa)この得られる切断産物のうちの1つが、インスリンアナログ若しくはインスリン誘導体である場合、このインスリンアナログ若しくはインスリン誘導体が得られることになり、又は
(bb)インスリン、インスリンアナログ若しくはインスリン誘導体の前駆体であるこれらの切断産物はさらにプロセシングされ、そしてこのようなさらなるプロセシングから得られるインスリン、インスリンアナログ若しくはインスリン誘導体が分離されそして得られることになり;
ここでインスリンは、好ましくはヒトインスリンであり;そしてインスリンアナログは、LysB28ProB29ヒトインスリン、B28Aspヒトインスリン、B28位のプロリンが、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで置換されており、そしてここでB29位のLysが、Proで置換され得るヒトインスリン;AlaB26ヒトインスリン;des(B28−B30)ヒトインスリン; des(B27)ヒトインスリン及びdes(B30)ヒトインスリンを含む群より選択され、そしてインスリン誘導体は、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−ミリストイルヒトインスリン、B29−N−パルミトイルヒトインスリン、B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン、B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29−N−(N−パルミトイル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−(N−リトコリル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンを含む群より選択されるものとする。
本発明の好ましい実施態様において、インスリンアナログは、インスリングルリジン又はインスリングラルギンである。
本発明のさらなる実施態様において、インスリン、インスリンアナログ又はインスリン誘導体の前駆体であるこれらの切断産物の上記のさらなるプロセシングは、インスリングラルギンを除くカルボキシペプチダーゼBでこの産物を切断することを含むものである。
本発明の別の実施態様において、Ser172Alaブタトリプシンでの切断は、7.5〜9.5の範囲のpH値、好ましくは8.3のpH値で、1℃と30℃との間の温度、より好ましくは8℃と15℃との間の温度、最も好ましくは8℃の温度で行われるものであり、そしてこの酵素反応は、サンプルを酸性化させることによって、好ましくは1N又は2N HCl溶液を添加することによって停止されるものである。
本発明の別の実施態様は、配列番号3の配列、すなわちSer172AlaブタトリプシンをコードするDNAによって特徴付けられ、好ましくは配列番号4の配列によって特徴付けられるSer172Alaブタトリプシンである。
本発明の別の実施態様は、配列番号6によって特徴付けられるSer172AlaプレトリプシノーゲンをコードするDNAである。このプレトリプシノーゲンのシグナルペプチドは、Saccharomyces cerevisiaeのα−因子に由来している。
本発明の別の実施態様は、上記のDNAを含むベクターである。
本発明の別の実施態様は、Ser172Alaブタトリプシンを産生する方法であって、次の工程
(a)請求項16に記載のベクターを提供すること、
(b)このベクターで微生物宿主株を形質転換すること、
(c)この形質転換された微生物宿主株を、栄養分を含む増殖培地で培養し、これによってこの微生物宿主株が、Ser172Alaブタトリプシン又はSer172Alaブタトリプシノーゲンを発現すること、
(d)(c)の発現産物が、Ser172Alaブタトリプシノーゲンである場合、成熟Ser172Alaブタ(procine)トリプシンへ転換すること、並びに
(e)微生物宿主株及び/又は増殖培地からSer172Alaブタトリプシンを精製すること、
を含むものであり、特にここで、微生物宿主株は、Hansenula、Pichia、Candida及びTorulopsis種を含む群より選択されるメチロトローフ酵母株であり;好ましくはここで、微生物宿主株は、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、Candida boidinii及びTorulopsis glabrataを含む群より選択されるものとする。
本明細書において、用語「ブタトリプシン変異体」及び「ブタトリプシンの変異体」は、配列番号1の172位でのアミノ酸置換によって生成する、変異体であるタンパク質、すなわち成熟ブタ膵臓トリプシンタンパク質アイソフォームIの対立形質を表している。
本明細書で記載されるブタトリプシン変異体を簡単明瞭に命名することを目的として、数字は、配列番号1で与えられる成熟ブタ膵臓トリプシンのアミノ酸配列に沿ったアミノ酸残基/位置を基準にしている点に注目しなければならない。アミノ酸識別は、アミノ酸の3文字略語、及び1文字アルファベット、すなわちAsp D アスパラギン酸、Ile I イソロイシン、Thr T スレオニン、Leu L ロイシン、Ser S セリン、Tyr Y チロシン、Glu E グルタミン酸、Phe F フェニルアラニン、Pro P プロリン、His H ヒスチジン、Gly G グリシン、Lys K リジン、Ala A アラニン、Arg R アルギニン、Cys C システイン、Trp W トリプトファン、Val V バリン、Gln Q グルタミン、Met M メチオニン、Asn N アスパラギンを用いている。アミノ酸配列中の特定の位置のアミノ酸は、その3文字略語及び数字で与えられる。従って、Ser172は、配列番号1のアミノ酸172位のセリン残基を表している。異なるアミノ酸による置換は、位置を示す数字の後に付加される3文字略語として与えられる。例えば、「Ser172Ala」は、配列番号3の172位のSerがAlaで置換されることを表している。
用語トリプシン変異体の「切断部位選択性の増大」は、加水分解性切断に対する特異性が変化することであって、この変異体にとっては、この変化が、リジンよりもアルギニンのカルボキシル基で好ましく切断されることを導くものであることを表している。
トリプシン活性が定量化されると、本明細書では「単位」(U)を適用する。トリプシン及びその変異体のタンパク質分解活性は、基質としてChromozym TRY、Chromozym TH及びChromozym PL(Roche Diagnostics GmbH)を使用した測光アッセイを用いて定量化される。与えられた調製物の「タンパク質分解比活性」又は「比活性」は、調製物中のタンパク質1mg当たりの単位数として定義され、実施例9に記載される方法によって測定される。
「メチロトローフ酵母」は、メタノールを炭素源として利用し得る酵母として定義される。この用語はまた、その実験株も含んでいる。メチロトローフ酵母株が栄養要求性であり、そしてこのため、例えば、メチロトローフ酵母株がこのアミノ酸を十分な量合成できない場合には、例えばヒスチジンのような補助的な(auxillary)炭素含有物質の補充が必要であり、この補助物質は栄養分とみなされ、炭素源とはみなされない。
「ベクター」は、本発明のDNAフラグメントを含み得る、すなわち保有及び維持し得るDNAとして定義され、例えばファージ及びプラスミドが挙げられる。これらの用語は、遺伝子工学分野の当業者に理解されている。用語「発現カセット」は、プロモーター及びターミネーターに作動可能に連結した、プレタンパク質をコードするヌクレオチド配列を表している。発現カセットを含むベクターに関しては、用語「ベクター」及び「発現ベクター」は、同義語として使用される。
用語「オリゴヌクレオチド」は、100未満のヌクレオチド長の核酸分子、DNA(又はRNA)に対して使用される。
「形質転換」は、DNAを生物、すなわち宿主生物に導入して、その結果このDNAが、染色体外エレメントとして、又は染色体への組込みのいずれかによって複製可能なことを意味している。
用語「発現」及び動詞「発現する」は、プレタンパク質をもたらす宿主生物中でのDNA配列の転写及び/又は転写されたmRNAの翻訳を表すものであり、すなわち翻訳後プロセスは含まれない。
核酸又はそのその相補体の少なくとも一部分が直接翻訳されて、ペプチド若しくはタンパク質のアミノ酸配列をもたらし得るか、又はこの単離核酸が、単独若しくは発現ベクターの一部として使用されて、インビトロ、原核生物宿主細胞内若しくは真核生物宿主細胞内でこのペプチド若しくはタンパク質を発現し得るときに、ヌクレオチド配列は、ペプチド又はタンパク質を「コードしている」。
「プロモーター」は、転写を刺激する調節ヌクレオチド配列である。これらの用語は、遺伝子工学分野の当業者に理解されている。プロモーターと同様に、「プロモーターエレメント」は、転写を刺激するが、より長いプロモーター配列のサブフラグメントを構成される。
用語「作動可能に連結した」は、一方の機能が他方によって影響を受けるように、1つのベクターに対して2つ又はそれ以上の核酸フラグメントが結合することをいう。例えば、プロモーターが、このコード配列、すなわちこのコード配列が、プロモーターの転写制御下にあるとき、に影響を及ぼし得るとき、コード配列に、すなわちタンパク質又はプレタンパク質をコードするヌクレオチド配列プロモーターは、作動可能に連結されている。
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、ペプチド結合によって結合した90を超えるアミノ酸モノマーから成るポリマーを表している。用語「ペプチド」は、ペプチド結合によって結合した90以下のアミノ酸モノマーから成るオリゴマーを表している。「ペプチド結合」は、一方のアミノ酸のα−アミノ基が他方のアミノ酸のα−カルボキシル基に結合した2つのアミノ酸間の共有結合である。
用語「プロタンパク質」、「プロタンパク質形態」、「チモーゲン」、「トリプシノーゲン」、「プレタンパク質」又は「プレプロタンパク質」は、成熟タンパク質の前駆体である一次翻訳産物を表しており、すなわちこの場合、タンパク質は、プレタンパク質の翻訳後プロセシングから得られる。
用語「翻訳後プロセシング」は、細胞区画又は細胞外区画に成熟タンパク質を生じさせるために、プレタンパク質又はプレプロタンパク質が受ける修飾工程を表している。
「シグナルペプチド」は、分泌タンパク質のプレタンパク質形態又はプレプロタンパク質形態で存在しているアミノ酸の切断可能なシグナル配列である。細胞膜を横切って輸送される、すなわち「分泌される」タンパク質は、代表的には、疎水性アミノ酸が豊富なN末端配列を有しており、代表的には、およそ15〜30アミノ酸長である。膜を通過するプロセスの間のある時に、このシグナル配列は、シグナルペプチダーゼによって切断される(Alberts,B.、Johnson,A.、Lewis,J.、Raff,M.、Roberts,K.、Walter,P.(編)、Molecular Biology of the Cell、第4版、2002、Garland Science Publishing)。シグナルペプチドの多くの供給源は、当業者に周知であり、そして例えば、Saccharomyces cerevisiae由来のα−因子シグナルペプチドのアミノ酸配列などが挙げられ得る。別の例は、配列番号5の1〜16位のネイティブブタ膵臓トリプシノーゲンプレタンパク質のブタシグナルペプチドである。一般に、本質的にどのような分泌タンパク質のプレタンパク質のN末端でも、本発明の使用に好適なシグナルペプチドの可能性のある供給源なのである。シグナルペプチドはまた、二分性(bipartite)であり得るものであり、プレタンパク質を第一の細胞区画及び第二の細胞区画に導く2つのシグナルペプチドを含んでいる。二分性のシグナルペプチドは、分泌経路の経過の間に、段階的に切り離される。従って特定の例は、Saccharomyces cerevisiae由来のα−因子のプレプロペプチドである(Watersら、J.Biol.Chem.263(1988)6209〜14)。
N末端シグナルペプチドを有するプレタンパク質は、「分泌経路」に入るように導かれている。この分泌経路は、翻訳後プロセシングのプロセスを含んでおり、そして最終的に、タンパク質の分泌をもたらす。グリコシル化及びジスルフィド結合の形成は、分泌される前の分泌経路の一部であるプロセスである。本明細書において、メチロトローフ酵母株によって分泌されるタンパク質は、この分泌経路を通ることを理解すべきである。
すべてのトリプシン様セリンプロテアーゼは、塩基性残基であるリジン又はアルギニンに対する基質優先性を共有している。ヒト膵臓トリプシンの190位に対応するセリンでのアミノ酸交換突然変異は、人工基質に関しては特異性を望ましく変化させるが、タンパク質分解活性は、結果として減少する。
さらに、ヒトトリプシン突然変異体の評価は、人工基質を用いたアルギニン残基に対する観察された特異性の変化が、プレプロインスリンプロセシングに対応付けられなかったことを明らかにした。実施例1は、ヒトセリン190アラニントリプシン突然変異体を用いたプレプロインスリンの転換を例示している。多量の副産物、主にB30−des−Thr−及びA0−成分が、反応の間に形成されている。
どの程度この効果がすべてのトリプシン様セリンプロテアーゼに等しく適用されるかは示されていない。この疑問を明らかにする一つの方法は、Ser−Ala交換突然変異を、他の哺乳動物トリプシン種のアミノ酸配列に、ヒト膵臓トリプシンアイソタイプIの190位に対応するそれぞれのポリペプチド配列内の部位に導入することである。これを行うことにより、本発明者らは、驚くべきことに、ブタ膵臓トリプシンでのこのような交換突然変異が、プレプロインスリンプロセシングにおいてアルギニンに対する切断部位選択性を増大させ、そして同時に、より高いレベルのタンパク質分解活性を維持することを見出した。
当業者は、タンパク質中で1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を置換する方法を熟知している。実施例2は、アミノ酸交換突然変異体をコードDNA配列レベルで操作し得る方法を例示している。しかし、他の方法が可能である。本発明において、配列番号4で与えられるブタ膵臓トリプシンのSer172Ala突然変異体をコードする合成ヌクレオチド配列を、微生物宿主生物中で発現させた。
このトリプシン変異体は、好ましくは、微生物宿主生物、例えば細菌及び真菌中で異種タンパク質として産生されるものである。当業者は、種々の原核生物宿主、例えばいくつか挙げると、E.coli、Bacillus及びStaphylococcus種として存在する細菌発現系を熟知している。なおより好ましい微生物宿主生物は真菌である。好ましい真菌属の例は、Aspergillusである。しかしなおより好ましくは、酵母種、例えばSaccharomyces又はSchizosaccharomyces属の種である。しかしなおより好ましくは、メチロトローフ酵母種の株である。
メチロトローフ酵母は、メタノール利用に必要な生化学的経路を有しており、そして細胞形態及び増殖特性に基づいて4つの属、すなわちHansenula、Pichia、Candida及びTorulopsisに分類されている。最も高度に発生したメチロトローフ宿主系は、Pichia pastoris(Komagataella pastoris)及びHansenula polymorpha(Pichia angusta)を利用する。
酵母での異種タンパク質の発現は、US 5,618,676、US 5,854,018、US 5,856,123及びUS 5,919,651に記載されている。
酵母生物は、細胞内で合成されるが、細胞外で機能を有する多くのタンパク質を産生する。これらの細胞外タンパク質は、分泌タンパク質といわれる。最初にこの分泌タンパク質は、発現された産物が小胞体の膜を横切って細胞の分泌経路に有効に向かうことを確実にするN末端シグナルペプチドを含む前駆体、プレタンパク質又はプレプロタンパク質の形態で細胞内で発現される。このシグナルペプチドは、一般に、トランスロケーションの間に所望の産物から切り離される。切断は、シグナルペプチダーゼによるタンパク質分解によって行われる。シグナルペプチドのアミノ酸の特定のサブ配列が認識され、そしてシグナルペプチダーゼによって切断される。このサブ配列は、シグナルペプチダーゼ切断部位といわれる。一旦分泌経路に入ると、タンパク質は、ゴルジ装置に輸送される。ゴルジ装置から、タンパク質は、細胞膜、リソソーム及び分泌小胞に分配される。
分泌タンパク質は、細胞内タンパク質とは対照的に、異なる環境状態に直面する。分泌経路のプロセスの一部は、成熟した細胞外タンパク質を安定化することである。従って、酵母の分泌経路を通るプレタンパク質は、特定の翻訳後プロセシングを受ける。例えば、プロセシングは、分子内架橋を形成するジスルフィド結合の生成を含み得る。さらに、タンパク質の特定のアミノ酸は、グリコシル化され得る。
酵母とは異種のタンパク質を酵母中で発現及び分泌させるいくつかのアプローチが提案されている。EP 0 116 201は、酵母とは異種のタンパク質が、所望のタンパク質、シグナルペプチド及びシグナルペプチダーゼ切断部位として作用するペプチドをコードするDNAを内部に有する発現ベクターによって形質転換されるプロセスを記載している。形質転換された生物の培養物が調製及び増殖され、そしてこのタンパク質が、培養基から回収される。酵母細胞での使用に好適なシグナルペプチドは、Saccharomyces cerevisiae由来のα−因子シグナルペプチドであることが見出されている(US 4,870,008)。
酵母酵素KEX−2は、分泌の間にプレタンパク質のリジン−アルギニン配列をその切断部位として認識するシグナルペプチダーゼである。KEX−2は、接合部で所望のタンパク質の配列に切断する。結果として、この所望の遺伝子産物が放出され、リーダー部分、すなわちプレタンパク質のシグナルペプチドは含まれないのである。KEX−2エンドプロテアーゼを、Saccharomyces酵母で最初に特徴付けし、ここでこの酵素は、接合型α−因子及びキラー因子の前駆体を特異的にプロセシングしている(Julius,D.ら、Cell 37(1984)1075〜1089)。メチロトローフ酵母種、例えばPichia pastorisは、Saccharomyces cerevisiaeとKEX−2型プロテアーゼ(類似の役割及び機能)を共有している(Werten,M.W.ら、Yeast 15(1999)1087〜1096)。
高レベルの組換えタンパク質発現のための宿主として例示的に記載される確立したメチロトローフ酵母種は、Pichia pastorisである(US 4,683,293、US 4,808,537、US 4,812,405、US 4,818,700、US 4,837,148、US 4,855,231、US 4,857,467、US 4,879,231、US 4,882,279、US 4,885,242、US 4,895,800、US 4,929,555、US 5,002,876、US 5,004,688、US
5,032,516、US 5,122,465、US 5,135,868、US 5,166,329、WO 00/56903)。グルコースが存在しないとき、Pichia pastorisは、炭素源としてメタノールを用いており、これは同時に、メチロトローフ生物の特徴である。配列番号7で与えられるアルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターは、アルコールオキシダーゼの発現を制御しており、これは、メタノール代謝の最初の工程を触媒している。代表的には、メタノール誘導性細胞の可溶性タンパク質全体の30%が、アルコールオキシダーゼである。いくつかのPichia発現ベクターは、AOX1プロモーターを保有し、そしてメタノールを使用して、所望の異種タンパク質の高レベル発現を誘導している。発現構築物はまた、Pichia pastorisゲノムに組み込まれて、形質転換され、そして遺伝的に安定な宿主を生成する。
シグナルペプチドすなわちシグナルペプチダーゼ切断部位を有するシグナルペプチド及び所望のタンパク質を含む異種プレタンパク質をコードする発現ベクターを用いて、メチロトローフ酵母株、例えばPichia pastoris株は、増殖培地に所望の産物を分泌するように操作され得るものであり、この培地から分泌タンパク質が精製され得る。
実質的に異なるコドン使用頻度を有するプレタンパク質をコードするヌクレオチド配列を産生することが有利であり得る。コドンは、特定のコドンが宿主に利用される頻度に従って、プレタンパク質の発現が特定の酵母発現宿主内で生じる割合を増大させるように選択され得る。コードアミノ酸配列を改変せずに、プレタンパク質をコードするヌクレオチド配列を実質的に改変する他の理由としては、天然に存在する配列から産生される転写産物よりも望ましい性質、例えばより長い半減期を有するRNA転写産物を産生するためであることが挙げられる。
実施例3は、トリプシン変異体をコードする発現ベクターを得るためのクローニング工程を例示している。発現能力のある(例えばプロモーター又はプロモーターエレメント、及びターミネーター又はターミネーターエレメント、並びに効率的な翻訳に不可欠な配列に作動可能に連結した)プレタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを用いて、宿主生物はこのベクターで形質転換され、そして形質転換体が選択される。
一方発現収率は、シグナルペプチド、例えばSaccharomyces cerevisiae由来のα−因子シグナルペプチド又はネイティブブタ膵臓トリプシノーゲンのブタシグナルペプチドによって、所望の産物を例えば分泌経路に適切に向けることに左右される。実施例4は、形質転換された微生物宿主を与え、そして実施例5は、トリプシン変異体の発現を達成し得る方法を示している。従って、一次翻訳産物は、ポリペプチドを分泌経路に導くシグナルペプチドを含んでいる。実施例6は、形質転換されたメチロトローフ酵母の上清のトリプシン活性の測定を例示している。
一方発現収率は、所望の産物をコードする遺伝子の用量を増大させることによって増大され得る。従って、宿主生物中の発現構築物のコピー数、すなわち発現ベクター又は発現カセットが増幅されるのである。これを達成する一つの方法は、所望の産物をコードする発現ベクターを多重形質転換することによる。別の方法は、第一及び第二の発現ベクターを用いて、宿主生物に所望の産物をコードする遺伝子を導入することであり、ここで第二の発現ベクターは、第一の発現ベクターに使用される選択可能なマーカーとは異なる選択可能なマーカーに基づくものである。同じ所望の産物をコードする第二の発現ベクターは、宿主生物が第一の発現ベクターの複数のコピーをすでに保有しているときでさえも導入され得る(US 5,324,639;Thill,G.P.ら、Positive and Negative Effects of Multi−Copy Integrated Expression in Pichia pastoris、International Symposium on the Genentics of Microorganisms 2(1990)477〜490頁;Vedvick,T.ら、J.Ind.Microbiol.7(1991)197〜201;Werten,M.W.ら、Yeast 15(1999)1087〜1096)。実施例7は、トリプシン変異体の発現収率が、工業規模での産生として酵母クローンを与えるために増大され得る方法を記載している。
形質転換体は、増殖培地に分泌される組換えタンパク質の収率を基準にして繰り返し分析される。酵素的に活性な組換えタンパク質を最も多量に分泌する形質転換体が選択される。
増殖培地へのブタトリプシン変異体の分泌は、増殖培地中に拡散する細胞質外空間に成熟組換えタンパク質を導くことである。液体培養液中で増殖した形質転換されたメチロトローフ酵母は、組換えブタ膵臓トリプシン変異体を液体増殖培地、すなわち液体培養基に分泌する。これにより、例えば濾過技術を用いて、酵母バイオマスと組換えタンパク質とを極めて効率的に分離し得る。結果として、この供給源から精製された組換えブタトリプシン変異体は、他の酵素活性、例えばリボヌクレアーゼ活性又は他の(非トリプシン)プロテアーゼ活性と極めて効率的に分けられる。
従って、本発明の第一に好ましい実施態様は、ブタ膵臓トリプシンアイソタイプIのアミノ酸置換による変異体であり、ここで、配列番号1のブタ膵臓トリプシンアイソタイプIのN末端から数えて172位のアミノ酸セリンは、アミノ酸残基アラニンで置換されて、トリプシン活性を有するブタ膵臓トリプシン変異体を形成する。
好ましくは、ブタ膵臓トリプシンの変異体は、アミノ酸リジンのカルボキシル基での加水分解性切断よりも、アミノ酸アルギニンのカルボキシル基での加水分解性切断に対する切断部位選択性が増大している。
より好ましくは、この単離された変異体は、インスリン前駆体ポリペプチド又はそのアナログが基質として使用されるときに、この選択性の増大を示すものである。
本発明のなお別の好ましい実施態様において、ブタトリプシン変異体の特異的なタンパク質分解活性は、野生型ブタ膵臓トリプシンと比較して100%である。従って、等しい条件下で産生及び精製されるとき、この組換えブタ膵臓トリプシン変異体の特異的なトリプシン活性は、元のままのブタ膵臓トリプシン、すなわち野生型形態と比較して100%である。
本発明の別の好ましい実施態様は、ブタ膵臓トリプシンの変異体を産生する方法であり、以下の工程(a)ブタ膵臓トリプシンの変異体をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを提供すること、(b)このベクターで微生物宿主株を形質転換すること、(c)栄養分を含む増殖培地中で、形質転換された微生物宿主株を培養し、これによって、この微生物宿主株に、組換えブタ膵臓トリプシンの変異体を発現させること、並びに(d)微生物宿主株及び/又は増殖培地から、この組換えブタ膵臓トリプシンの変異体を精製することを含むものである。
異種タンパク質の翻訳効率は、宿主生物の好ましいコドンに従って、異種タンパク質をコードするヌクレオチド配列のコドンを適応させることによって改善され得る。従って、本発明の好ましい実施態様において、組換えブタ膵臓トリプシンの変異体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4である。
本発明のなおより好ましい実施態様において、(a)ベクターは、配列番号6で与えられるように、組換えブタ膵臓トリプシノーゲン及びシグナルペプチドからなるプレタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含んでおり、(b)微生物宿主株は、メチロトローフ酵母株であり、(c)増殖培地は、炭素源としてメタノールを含んでおり、(d)メチロトローフ酵母株は、組換えブタ膵臓トリプシンの変異体を発現及び分泌するものであり、そして(e)ブタ膵臓トリプシンの変異体は、増殖培地から精製されるものである。
特に言及されない限り、酵母由来の及び非酵母由来の真核生物シグナルペプチドは、同じ目的で使用され得る。シグナルペプチドは、シグナルペプチダーゼによって切断可能ではないかもしれないが、シグナルペプチダーゼ切断ペプチドは、プレタンパク質のアミノ酸配列、すなわちシグナルペプチドのアミノ酸配列と変異体の組換えブタ膵臓トリプシンポリペプチドのアミノ酸配列との間に挿入され得る。従って、本発明のなお別の極めてより好ましい実施態様において、シグナルペプチドは、組換えブタ膵臓トリプシノーゲンの最初(N末端)のアミノ酸に隣接して位置するシグナルペプチダーゼ切断部位を含んでいる。
本発明の別の好ましい実施態様において、プレタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、プロモーター又はプロモーターエレメントに作動可能に連結される。ベクターは、メチロトローフ酵母株内のエピソームとして複製され得るプラスミドであることが好ましい。メチロトローフ酵母株内で複製され得る人工染色体がベクターを含むことがさらに好ましい。しかし、メチロトローフ酵母株の染色体が、組込み体(integrate)としてベクターを含むことが最も好ましい。
従って、メチロトローフ酵母株及び特にPichia pastoris株を用いる好ましい方法において、ベクターは、分泌経路に入るブタ膵臓トリプシノーゲンプレタンパク質の変異体のアミノ酸配列をコードしている。
本発明のさらに好ましい実施態様において、メチロトローフ酵母株は、Hansenula、Pichia、Candida又はTorulopsis種である。メチロトローフ酵母株が、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、Candida boidinii及びTorulopsis glabrataからなる群より選択されることが極めて好ましい。メチロトローフ酵母株が、アメリカンタイプカルチャーコレクション受託番号76273のPichia pastoris株又はその誘導体であることがなおより好ましい。
本発明の別の好ましい実施態様は、配列番号7のPichia pastoris AOX1プロモーター又はそのプロモーターエレメントと作動可能に連結した、組換えブタ膵臓トリプシンの変異体及びシグナルペプチドからなるプレタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むベクターを含んだ染色体を有するPichia pastoris株である。
当業者は、増殖培地、例えば液体増殖培地から得られ得る分泌異種タンパク質、例えばブタ膵臓トリプシンの変異体の収率は、この異種タンパク質が発現及び分泌されるプレタンパク質をコードするヌクレオチド配列のコピー数が増大されると増大され得るという事実を認識している。従って、増殖培地から得られ得る分泌異種タンパク質の収率は、メチロトローフ酵母株のゲノム中のベクターのコピー数が増大されると増大され得るのである。例えば、ベクターのコピー数は、ベクターに含まれる選択マーカーが耐性を与える選択因子の濃度増大を用いて、ベクターを繰り返し形質転換し、そして繰り返し選択するというラウンドにメチロトローフ酵母株を供することによって増大され得る(US 5,324,639;Thill,G.P.ら、Positive and Negative Effects of Multi−Copy Integrated Expression in Pichia pastoris、International Symposium on the Genentics of Microorganisms 2(1990)、477〜490頁;Vedvick,T.ら、J.Ind.Microbiol.7(1991)197〜201)。
選択マーカーの例は、Sh ble遺伝子、すなわちZeocin(登録商標)耐性遺伝子である(Drocourt,D.ら、Nucleic Acids Res.18(1990)4009;Carmels,T.ら、Curr.Genet.20(1991)309〜314)。Sh ble遺伝子によってコードされるタンパク質は、Zeocin(登録商標)に化学量論的かつ高い親和性で結合する。Zeocin(登録商標)の結合は、有毒な活性を阻害し、それによってSh ble遺伝子を含む形質転換体を選択するのである。培地中の選択因子としてZeocin(登録商標)の濃度を増大させることにより、Sh ble遺伝子を発現するベクターのコピー数の増大を選択することを当業者なら知っているはずである。従って、多コピーのベクターを含むメチロトローフ酵母株の多重形質転換体を繰り返し形質転換することによって生成される選択可能なマーカーとしてSh ble遺伝子を有するベクターを用いることが有利なのである。形質転換さ
れたメチロトローフ酵母株に対して、Zeocin(登録商標)に対する耐性レベルのさらなる増大がこれ以上得られないか、又は選択培地中のZeocin(登録商標)濃度のさらなる増大がこれ以上は不可能になるまで、形質転換を反復し、そしてなおより耐性の形質転換体の選択を反復することがさらに有利である。
当業者は、組換え発現され、そして分泌されたブタ膵臓トリプシンをクロマトグラフィーによって精製することに精通している(Funakoshi,A.ら、J.Biochem.(Tokyo)88(1980)1113〜1138;Paudel,H.K.及びLiao,T.H.、J.Biol Chem.261(1986)16006〜16011;Nefsky,B.及びBretscher,A.、Eur.J.Biochem.179(1989)215〜219)。増殖培地中のブタ膵臓トリプシノーゲンの変異体が、イオン交換クロマトグラフィーを用いて精製されることが好ましい。精製産物に導く後処理プロセスの工程は、実施例8に記載されている。野生型ブタ膵臓トリプシンアイソフォームIの産生を、野生型コード配列を発現ベクターを構築するために使用することを除いては同様に行った。
しかし、本発明の別の好ましい実施態様は、上記の方法のうちの1つによるブタ膵臓トリプシンアイソタイプIの変異体である。本発明の別の実施態様は、プレプロインスリンプロセシングのためにブタ膵臓トリプシンの変異体を使用することである。異なるプレプロインスリンを酵素切断するために、ブタトリプシンのSer172Ala変異体を使用する利点は、実施例10〜12に記載されている。以下の実施例、参考文献、配列表及び図は、本発明の理解を助けるために提供され、本発明の正確な範囲は、添付の特許請求の範囲に示されている。この示された方法において、本発明の趣旨を逸脱することなく変更が行われ得ることが理解されるべきである。
一般に、以下の実施例において、Invitrogenマニュアル「Pichia Expression Kit」バージョンM 011102 25−0043、「pPICZA、B及びC」バージョンD 110801 25−0148、「pPICZαA、B及びC」バージョンE 010302 25−0150、及び「pPIC9K」バージョンE 030402 25−0106に提案及び記載されている方法を適用した。このマニュアルで言及されるさらなるベクター、酵母株及び培地に対する参照もまた行われる。Sambrook,Fritsch&Maniatis、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第3版、CSHL Press、2001に記載されるような分子生物学の基本的方法を適用した。
HPLC方法:
固定相:Nucleosil 120−5 C18、Macherey&Nagel、250×4mm;移動相A:45mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH2.5)、315mM NaCl、25%(v/v)アセトニトリル;移動相B:45mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH2.5)、55mM NaCl、65%(v/v)アセトニトリル;勾配:30分以内で6%相B〜10%相Bの直線。
以下の実施例は、本発明を限定することなく本発明を例示することが意図される。
実施例1:組換えヒト野生型トリプシン及びセリン190アラニンヒトトリプシン変異体を用いた、プレプロインスリングラルギンの切断
これらの実験を、8℃及びpH値8.3(緩衝化溶液)で行い、そして50mLスケールまでで行った。
PPI溶液を、適切なサーモスタット反応容器に満たし、そして酵素調製物を添加することにより反応を開始させた。一定の時間間隔後にサンプルを採取した。1N又は2N
HCl溶液によってサンプル溶液を酸性化することにより、酵素反応を直ちに停止させた。それぞれの産物の濃度を、HPLCによって測定した。
実施例2:ブタ膵臓トリプシノーゲンをコードする合成ヌクレオチド配列の突然変異誘発
一般に、Sambrook,Fritsch&Maniatis、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第3版、CSHL Press、2001に記載されるような分子生物学の標準的方法を適用した。以下に説明される方法は、「部位特異的突然変異誘発」としてまた公知の極めて一般的な方法の具体的な適用である。
突然変異を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて部位特異的様式で生成した。所望のコドン、すなわち塩基トリプレットを突然変異させるために、ブタ膵臓トリプシノーゲンをコードする合成ヌクレオチド配列の変異体部分を表す相補的な一本鎖DNAオリゴヌクレオチド対を設計及び合成した。この一本鎖DNAオリゴヌクレオチドは、突然変異されるトリプレット配列を除いては、配列番号2で与えられる配列と同一又は相補的であった。代表的には、DNAオリゴヌクレオチドは、およそ20〜45のヌクレオチド長を有し、突然変異されるトリプレット配列又はその相補体は、それを含むDNAオリゴヌクレオチドの中央部分に位置し、そして両側がおよそ10〜12ヌクレオチド隣接していた。このDNAオリゴヌクレオチドを、「野生型」組換えブタ膵臓トリプシノーゲンDNA(配列番号2)とのDNAオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが、中央のミスマッチとのハイブリッドをもたらすが、このミスマッチの側面のインタクトな塩基対合(各DNAオリゴヌクレオチドの5’末端及び3’末端を含む)とはハイブリッドを生じないように設計した。
さらに、第一のプライマーは、配列番号2の5’末端の9ヌクレオチドを含む「5’トリプシン」(配列番号8)と命名され、そして第二のプライマーは、配列番号2の3’末端の12ヌクレオチドに相補的な配列を含む「3’トリプシン」(配列番号9)と命名された2つの一本鎖DNAオリゴヌクレオチドプライマーを提供した。この2つのプライマーを、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含むように設計した。従って、第一及び第二のプライマーを伸長し、そして配列番号2の合成ヌクレオチド配列の側面に位置した隣接配列を含めた。「5’トリプシン」は、EcoRI及び3’Xba I部位を含んだ。
野生型成熟ブタ膵臓トリプシンタンパク質のアミノ酸置換による変異体をコードするヌクレオチド配列を、いくつかのPCRに基づいた工程によって合成した。
第一及び第二のPCRを、ベクター中の挿入物として存在した配列番号2のヌクレオチド配列を含む二本鎖DNAを鋳型として用いて行った。この挿入物に隣接するベクター配列は、従って、PCRの間に、アニーリングされると完全にマッチするプライマー「5’トリプシン」及び「3’トリプシン」であった。第一のPCRを、「5’トリプシン」プライマー及び突然変異した、すなわち変異体トリプレット配列を含む第一の一本鎖DNAオリゴヌクレオチドからなるプライマー対を用いて行い、これによってこの2つのプライマーは、反対の鋳型DNA鎖にアニーリングした。従って第二のPCRを、「3’トリプシン」プライマー及び第一の一本鎖DNAオリゴヌクレオチドに相補的な第二の一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを用いて行った。結果として、第一及び第二のPCRは、次の2つの中間産物を生成した:すなわち、組換えブタ膵臓トリプシンの変異体をコードするヌクレオチド配列の5’及び3’部分であって、これにより、5’部分は、その3’末端に突然変異した配列を保有し、そして逆に、3’部分は、その5’末端に突然変異した配列を保有した。
得られる2つの中間増幅産物を、アガロースゲル電気泳動によって分析し、所望のフラグメントを切り出し、そして「QIAquick Gel Extraction Kit」(Qiagen、カタログ番号28704)を用いて、アガロースブロックからDNAを単離した。
続いて第三のPCRを、2つの部分を融合するために行った。この目的のために、2つの部分を1回のPCRで結合させ、そしていかなる上流及び下流のプライマーをもさらに添加せずに5回のPCRサイクルを行った。これらのサイクルの間、いくつかの全長産物が形成され、これによって、使用したアニーリング温度を、5’部分及び3’部分の重複配列について計算した。その後、プライマー「5’トリプシン」及び「3’トリプシン」を添加し、そして25回以上のPCRサイクルを行い、ここで使用したアニーリング温度は、添加されたプライマーに対応しており、より低い融点を有した。
続いて、突然変異した全長DNAフラグメントを、「PCRクローニングキット−平滑末端」(Roche Diagnostics GmbH、Mannheim;カタログ番号1 939 645)を用いてクローニングベクターに挿入した。このDNAフラグメントを、制限酵素分析及び配列決定によって確認した。次いで、確認したDNAフラグメントを、Xho I及びNot Iでの切断によって切り出し、そして同じ制限酵素で切断したPichia pastoris発現ベクターに挿入した(実施例3及び実施例5を参照のこと)。
Ser172Ala:配列番号2の528〜531位に見出される塩基トリプレット「TCT」を、「GCT」で置換した。この目的のために、第一のPCRにおいて、DNAオリゴヌクレオチド「5’−Try−Ser172Ala」(配列番号10)を、「3’−トリプシン」と組み合わせてプライマーとして使用し、そして第二のPCRにおいて、「3’−Try−Ser172Ala」(配列番号11)を、「5’−トリプシン」と組み合わせてプライマーとして使用した。続いて、全長産物を生成するために、単離された中間フラグメントを第三のPCRに使用した。
実施例3:pPICZαA由来の発現ベクター中での変異体組換えブタ膵臓トリプシノーゲンをコードする人工DNAのクローニング
PCRフラグメントから生成された変異体組換えブタ膵臓トリプシノーゲンをコードするDNAフラグメント(実施例2を参照のこと)を、EcoRI及びXbaII(Roche Diagnostics GmbH)で切り出した。このフラグメントを、「QIAquick Gel Extraction Kit」を用いて、製造業者の指示書に従って単離した。
このフラグメントを、pPICZαAベクターに連結し、それによって、変異体組換えブタ膵臓トリプシノーゲンをコードするヌクレオチド配列を、Saccharomyces cerevisiae由来のα−因子シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列に融合させた。連結反応の前に、ベクターをEcoRI及びXbaIで同様に切断し、そして単離した。
このクローニング方法により、Saccharomyces cerevisiae由来のα−因子シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列の後に、直接及びインフレームで、変異体組換えブタ膵臓トリプシノーゲンをコードするヌクレオチド配列を挿入した。
配列番号6で与えられる組換えプレプロタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、例えば、Pichia pastorisにおいては、メタノールにより誘導性のP.pastoris AOX−1プロモーター(配列番号7)の制御下に置いた。
製造業者の指示書に従って、線状化ベクターフラグメント20ng(1μl容量)、切断PCRフラグメント100ng(3μl)を総量10μlで結合し、そしてT4 DNAリガーゼ(Roche Diagnostics GmbH)の存在下16℃で一晩インキュベートすることにより、構築を達成した。その後、連結調製物5μlを用いて、総量205μlでコンピテントなE.coli XL1Blue細胞(Stratagene)を形質転換した。氷上で30分間のインキュベーション後、細胞を、42℃で90秒間熱ショックさせた。その後、細胞をLB培地1mlに移し、そして37℃で1時間インキュベートして、選択マーカーを発現させた。その後、アリコートを、100μg/ml Zeocinを含むLBプレート上にプレーティングし、そして37℃で15時間インキュベートした。耐性クローンを選び、プラスミドを単離し(Sambrook,Fritsch&Maniatis、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第3版、CSHL Press、2001)そして制限分析及び配列分析によって試験した。エラー及びクローニングアーチファクトを含まないことが確認された構築クローンを選択した。Saccharomyces cerevisiae由来のα−因子シグナルペプチドとともに変異体組換えブタ膵臓トリプシンを内部に有する発現ベクターを、pTry−Ser172Alaと命名した。
実施例4:pPICZαA由来のpTry−Ser172Ala発現ベクターでのPichia pastorisの形質転換
用いた宿主株は、Pichia pastorisX−33、GS115、KM71H及びSMD1168(Invitrogen)であった。好ましい株は、X−33及びKM71Hであった。宿主生物のゲノムに発現構築物を安定に組込むことが形質転換の目的であった。最初に、YPD培地(YPD=酵母ペプトンデキストロース;Invitrogen)5mlを、P.pastorisコロニーで接種し、そして30℃で一晩、シェーカーで前培養した。形質転換コンピテントな細胞を調製するために、前培養物100μlを新鮮なYPD培地200mlに接種材料として添加し、そしてOD600nmが1.3と1.5との間に達するまで増殖させた。細胞を、1,500×gで5分間遠心分離し、そして氷冷(0℃)滅菌水200mlに再懸濁した。細胞を再び1,500×gで5分間遠心分離し、そして氷冷滅菌水100mlに再懸濁した。細胞をもう一度1,500×gで5分間遠心分離し、そして氷冷1Mソルビトール(ICN)10mlに再懸濁した。このように調製された細胞を氷上に置き、そして直ちに形質転換に使用した。
形質転換に使用されるpPICZαA由来のpTrySer172Ala発現ベクターを、SacI制限エンドヌクレアーゼ(Roche Diagnostics GmbH)を用いて線状化し、沈殿させ、そして水に再懸濁した。「Gene Pulser II(登録商標)」(BioRad)を用いたエレクトロポレーションによって形質転換を達成した。形質転換の設定のために、1Mソルビトール溶液中のP.pastoris細胞80μlを、線状化発現ベクターDNA1μgと穏やかに混合し、そして氷冷キュベットに移し、次いで氷上に5分間保持した。その後、キュベットをGene Pulserに移した。エレクトロポレーションパラメータは、1kV、1kΩ及び25μFであった。エレクトロポレーションの後、1Mソルビトール溶液1mlを、細胞懸濁液に添加し、その後100μg/ml Zeocin(登録商標)(Invitrogen)を含むYPDSプレート(YPDS=酵母ペプトンデキストロースソルビトール;Invitrogen)にプレーティングし、細胞懸濁液100〜150μlを、1つのプレートに広げた。YPDSプレートを、30℃で2〜4日間インキュベートした。酵母クローンを、グリッド入りの最小デキストロースプレートに移した。これらのプレートからコロニーを選び、そして別々に滅菌水に再懸濁した。細胞を、30℃で1時間、リチカーゼ(lyticase)(Roche Diagnostics GmbH)17.5単位で消化し、そしてその後、−80℃で10分間凍結させた。PCRによって、それぞれのpPICZαA由来のpTrySer172Ala発現ベクターの発現カセットの存在を確認した。用語「発現カセット」は、AOX1プロモーター及びAOX1ターミネーターに作動可能に連結した変異体組換えブタ膵臓トリプシンプレタンパク質をコードするヌクレオチド配列を表しており、ここでこの発現カセットは、形質転換に使用されるそれぞれのpPICZαA−ベクターに由来している。発現カセットを含むベクターに関しては、用語「ベクター」及び「発現ベクター」は、同義語である。
ポジティブクローン、すなわちゲノムに安定に組込まれた完全な発現カセットの存在に対してポジティブであると試験されたクローンを、変異体組換えブタ膵臓トリプシン発現のさらなる特徴付けに使用した。
さらに、コントロールの形質転換を、オリジナルのpPICZαAベクターを用いてレシピエントのPichia pastorisKM71H株で行った。ポジティブクローンを得て、同様の様式で確認した。
実施例5:変異体組換えブタ膵臓トリプシノーゲンの発現及び分泌
pPICZαA−pTrySer172Ala発現ベクターで形質転換された一連のポジティブクローン(20〜30)を、各々BMGY培地(BMGY=緩衝化グリセロール複合培地;Invitrogen)3ml中で振盪培養として一晩増殖させた。その後、培養物のOD600nm値を、各々pH3のBMMY培地(Invitrogen)10mlを含む振盪フラスコに継代する前に測定した。前培養を接種材料として使用して、各々OD600nmが1になった。この培養物を、シェーカー上30℃に維持した。同時に、ポジティブコントロールクローンを、同じ条件下で培養した。
BMMY(BMMY=緩衝液メタノール複合培地)培地は、変異体組換えブタ膵臓トリプシノーゲンをコードするヌクレオチド配列の転写を制御するAOX−1プロモーターの誘導物質であるメタノール(Mallinckrodt Baker B.V.)を含んだ。
サンプル500μlを、計72時間にわたって24時間間隔で振盪フラスコから採取した。サンプルアリコートを取り出すとき、この培養物にまた、0.5%メタノールを与えた。上清増殖培地のサンプルを、トリプシン酵素活性について試験した。
実施例6:変異体ブタ膵臓トリプシンの発現分析
実施例5に記載されるように得られたサンプルアリコートのOD600nmを最初に測定した。その後、細胞を遠心分離によってペレット化し、そして上清は残しておいた。トリプシン活性を、上清を希釈せずに、そして1:10希釈で測定した。
pPICZαAベクターで形質転換されたコントロールクローンは、培地中でいかなる測定可能なトリプシン活性も導かなかったが、pPICZαA−pTrySer172Ala発現ベクターで形質転換されたPichia株は、増殖培地、すなわち培養基に分泌された組換えブタ膵臓トリプシンのそれぞれの変異体に起因したトリプシン活性を示した。従って、この場合、Saccharomyces cerevisiae由来のα−因子シグナルペプチドを含む組換えプレタンパク質の発現は、タンパク質分解活性を有する活性な酵素の分泌を可能にすると結論付けられ得る。
実施例7:多重形質転換及びZeocin(登録商標)濃度の増大による発現収率の増大
上清培地中で最も高いトリプシン活性を生じることが見出されたpPICZαA−及びpPICZA−由来のpDNM発現ベクターで形質転換された酵母クローンを、以前と同じ発現ベクターを用いて繰り返しエレクトロポレーションを行った。エレクトロポレーション条件は、YPDSプレートが、Zeocin(登録商標)を高い濃度で、すなわち1,000μg/mlと2,000μg/mlとの間で含むこと以外は実施例4に記載される通りであった。それぞれの発現ベクターの多コピーがゲノムに組込まれた形質転換体を選択するために、抗生物質濃度を増大した。抗生物質に対する耐性が増大した酵母クローンを、グリッド入り最小デキストロースプレートに移した。すでに実施例5に記載される通り、前培養を個々の酵母クローンから行い、そして実施例6に記載される通りに、増殖培地に分泌されたトリプシン酵素活性を測定することによって発現を測定した。トリプシン活性量の増大を生じた個々のクローンを見出した。平均して、それぞれのpPICZαA−pTry−Ser172Ala発現ベクターで繰り返し形質転換されたPichia株の上清で測定されたトリプシン活性は、1回の形質転換しか受けなかったそれぞれの前駆体株と比較して、2倍〜3倍高かった。
実施例8:液体培養物の上清からのブタ膵臓トリプシノーゲンの変異体の精製及びトリプシン変異体を形成するための活性化
完全発酵ブロスを、5〜30mM塩化カルシウム、pH3.5を含む酢酸アンモニウム緩衝液(5〜20mM)で、およそ1:2〜1:4の比で希釈した。トリプシノーゲン変異体を、陽イオン交換体(例えば、Streamline(登録商標)SP、XL)を用いた膨張層クロマトグラフィー(McCornick(1993);EP 0 699 687)により精製した。クロマトグラフィーを、酵母細胞を事前に分離せずに行った。さらなる精製を、充填層カラム(例えば、SP−Sepharose(登録商標)XL、ff)を用いて行った。自己触媒的活性化を、20mM CaCl2の存在下でpHを7〜8に再緩衝化することによって開始させた。pHを2〜4の範囲に戻すことによって、活性化を終結させた。精製トリプシンを、自己タンパク質分解を避けるためにpH1.5〜3で保管した。
実施例9:精製した変異体組換えブタ膵臓トリプシンのトリプシン比活性を測定するアッセイ
トリプシンの活性を、100mM Tris pH8.0、20mM CaCl2中25℃で、Chromozym TRY(Roche Diagnostics GmbH)を用いて測定した。光度測定を、405nmで行った。アルギニン対リジン間の基質特異性を区別するために、Chromozym TH(アルギニン/Roche Diagnostics GmbHを含む)及びChromozym PL(リジン/Roche Diagnostics GmbHを含む)を使用した。
実施例10:プレプロヒトインスリンの切断
すべての実験を、8℃及びpH値8.3(緩衝化溶液又はNaOHの投与で制御)で行い、そして20mL〜3.5Lスケールで行った。いくつかの実験において、プレプロインスリンをまた、両方の酵素を直接比較するために、ネイティブの組換えブタトリプシンを用いて切断した。
PPI溶液を、適切なサーモスタット反応溶液に満たし、そして酵素調製物を添加することによって反応を開始させた。一定の時間間隔後にサンプルを採取した。1N又は2N HCl溶液によってサンプル溶液を酸性化することにより、酵素反応を直ちに停止させた。それぞれの産物の濃度を、HPLCによって測定した。
表1は、一実験の例示的な結果を示している。
Figure 0005027812
表1に見られ得るように、S172Aトリプシン変異体の使用により、望ましくない副産物、des−Thr及びA0−化合物の形成が減少し、そして結果として、重要なArg−インスリン(Arg−Ins)量及びそれぞれの切断収率が増大した。
図5は、ネイティブの組換えブタトリプシンを用いたプレプロインスリンの転換を示しており、図6は、S172A変異体トリプシンを用いたPPIの転換を示している。
実施例11:プレプロインスリングラルギンの切断
実施例10の実験条件を用いた。プレプロインスリンをまた、両方の酵素を直接比較するためにネイティブの組換えブタトリプシンを用いて切断した。
HPLC方法:記載の通り。
表2は、行った実験の例示的な結果を示している。示される値は、最大産物形成点を表している。
Figure 0005027812
表2に見られ得るように、S172Aトリプシン変異体の使用により、望ましくない副産物、des−Thr及びA0−化合物の形成が減少し、そして結果として、インスリングラルギン量が増大した。
実施例12:プレプロインスリングルリジンの切断
実施例10の実験条件を用いた。プレプロインスリンをまた、両方の酵素を直接比較するためにネイティブの組換えブタトリプシンを用いて切断した。表3は、実験の例示的な結果を示している。示される値は、最大産物形成点を表している。
Figure 0005027812
表3に見られ得るように、S172Aトリプシン変異体の使用により、望ましくないA0−化合物の形成が減少し、そして結果として、インスリングルリジン量が増大した。
ヒトインスリン、インスリングラルギン及びインスリングルリジンのプレプロインスリンの主要なトリプシン切断部位の模式図である。黒三角は、産物を得る切断部位を表しており、白三角は、副産物を得る切断部位を表している。プレプロ(pre−pre)インスリンのジスルフィド結合は示していない。 組換え野生型ヒトトリプシンでのプレプロインスリングラルギンの切断である(実施例1)。 組換えセリン190アラニンヒトトリプシン変異体でのプレプロインスリングラルギンの切断である(実施例1)。 Zeocin(登録商標)に対する耐性を与える市販のプラスミドpPICZαA(Invitrogen)の誘導体であるプラスミドpTry−Ser172Alaのマップである。TrySer172Alaで表される挿入物は、Ser172Alaアミノ酸置換を保有する組換えブタ分泌性トリプシノーゲンの変異体をコードする合成DNA配列であり、そしてこれは、Saccharomyces cerevisiae由来のα−因子シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列に融合されている。「AOX1−Prom」は、Pichia pastorisAOX1プロモーターを表しており、「Term」は、Pichia pastorisAOX1ターミネーターを表している。 ネイティブの組換えブタトリプシンでのプレプロインスリン(ヒトインスリン)切断を示している(実施例10、表1)。 S172A変異体ブタトリプシンでのプレプロインスリン(ヒトインスリン)切断を示している(実施例10、表1)。

Claims (19)

  1. インスリン、インスリンアナログ又はインスリン誘導体の調製方法におけるSer172Alaブタトリプシン変異体の使用であって、Ser172Alaは、配列番号1の172位に対応する位置のセリン残基がアラニン残基で置換されていることを表す、使用。
  2. インスリン、インスリンアナログ又はインスリン誘導体の調製方法であって、
    (a)プレプロインスリン、プレプロインスリンアナログ又はプレプロインスリン誘導体は、Ser172Alaブタトリプシンで切断されるものとし、ここで、Ser172Alaは、配列番号1の172位に対応する位置のセリン残基がアラニン残基で置換されていることを表し、
    (b)この得られる切断産物は、分離され、そして
    (aa)この得られる切断産物のうちの1つが、インスリンアナログ若しくはインスリン誘導体である場合、このインスリンアナログ若しくはインスリン誘導体が得られることになり、又は
    (cc)インスリン、インスリンアナログ若しくはインスリン誘導体の前駆体であるこれらの切断産物はさらにプロセシングされ、そしてこのようなさらなるプロセシングから得られるインスリン、インスリンアナログ若しくはインスリン誘導体が分離されそして得られることになる、
    上記方法。
  3. インスリンがヒトインスリンである、請求項2に記載の方法。
  4. インスリンアナログが、LysB28ProB29ヒトインスリン、B28Aspヒトインスリン、B28位のプロリンが、Asp、Lys、Leu、Val若しくはAlaで置換されており、そしてここでB29位のLysがProで置換され得るヒトインスリン;AlaB26ヒトインスリン;des(B28−B30)ヒトインスリン;des(B27)
    ヒトインスリン及びdes(B30)ヒトインスリンを含む群より選択される、請求項2に記載の方法。
  5. インスリンアナログがインスリングルリジンである、請求項2に記載の方法。
  6. インスリンアナログがインスリングラルギンである、請求項2に記載の方法。
  7. インスリン誘導体が、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−ミリストイルヒトインスリン、B29−N−パルミトイルヒトインスリン、B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン、B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン、B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン、B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン、B29−N−(N−パルミトイル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−(N−リトコリル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン、B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンを含む群より選択される、請求項2に記載の方法。
  8. インスリン、インスリンアナログ又はインスリン誘導体の前駆体であるこれらの切断産物のさらなるプロセシングが、カルボキシペプチダーゼBでのこの産物の切断を含むものである、請求項2〜5及び7のいずれか1項に記載の方法。
  9. Ser172Alaブタトリプシンでの切断が、7.5〜9.5の範囲のpH値;1℃と30℃との間の温度で行われ、そして酵素反応が、サンプルを酸性化することにより停止されるものである、請求項2〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 切断が、8.3のpH値;8℃と12℃との間の温度で行われ、そして酸性化が、1N
    又は2N HCl溶液の添加によって引き起こされるものである、請求項9に記載の方法。
  11. 配列番号3の配列を有するSer172Alaブタトリプシン。
  12. Ser172AlaブタトリプシンをコードするDNAであって、Ser172Alaは、配列番号1の172位に対応する位置のセリン残基がアラニン残基で置換されていることを表す、DNA。
  13. 配列番号4の配列を有する、請求項12に記載のDNA。
  14. Ser172AlaブタトリプシノーゲンをコードするDNAであって、Ser172Alaは、配列番号1の172位に対応する位置のセリン残基がアラニン残基で置換されていることを表す、DNA。
  15. 配列番号6の配列を有する、請求項14に記載のDNA。
  16. 請求項12、13、14又は15のいずれか1項に記載のDNAを含むベクター。
  17. Ser172Alaブタトリプシンを産生する方法であって、以下の工程
    (a)請求項16に記載のベクターを提供すること、
    (b)このベクターで微生物宿主株を形質転換すること、
    (c)この形質転換された微生物宿主株を、栄養分を含む増殖培地で培養し、これによってこの微生物宿主株が、Ser172Alaブタトリプシン又はSer172Alaブタトリプシノーゲンを発現すること、
    (d)(c)の発現産物が、Ser172Alaブタトリプシノーゲンである場合、成熟Ser172Alaブタトリプシンへ転換すること、並びに
    (e)微生物宿主株及び/又は増殖培地からSer172Alaブタトリプシンを精製すること、
    を含むものであり、Ser172Alaは、配列番号1の172位に対応する位置のセリン残基がアラニン残基で置換されていることを表す、方法。
  18. 微生物宿主株が、Hansenula、Pichia、Candida及びTorulopsis種を含む群から選択されるメチロトローフ酵母株である、請求項17に記載の方法。
  19. 微生物宿主株が、Pichia pastoris、Hansenula polymorpha、Candida boidinii及びTorulopsis glabrataを含む群から選択される、請求項18に記載の方法。
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