JP5023110B2 - 光変調器モジュール - Google Patents

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本発明は駆動電圧が低く、かつ高速で変調が可能な光変調器モジュールに関する。
リチウムナイオベート(LiNbO)のように電界を印加することにより屈折率が変化する、いわゆる電気光学効果を有する基板(以下、リチウムナイオベート基板をLN基板と略す)に光導波路と進行波電極を形成した進行波電極型リチウムナイオベート光変調器(以下、LN光変調器と略す)は、その優れた伝送特性から1.55μm帯の2.5Gbit/s、10Gbit/sの大容量光伝送システムに適用されている。最近はさらに40Gbit/sの超大容量光伝送システムにも適用が検討されており、キーデバイスとして期待されている。
このLN光変調器にはz−カットLN基板を使用するタイプとx−カットLN基板(あるいはy−カットLN基板)を使用するタイプがある。ここでは、従来技術としてz−カットLN基板と2つの接地導体を有し、基本モードの伝搬に有利なコプレーナウェーブガイド(CPW)進行波電極を使用したz−カットLN光変調器をとり上げる。
実際に光伝送システムにおいて光変調器を使用する場合には、電気的終端をパッケージ(あるいは筐体)の中に実装したモジュールの形態であるので、ここでは光変調器モジュールとして議論する。なお、以下の議論はx−カットLN基板やy−カットLN基板でも同様に成り立つ。
光変調器モジュールの例として、特許文献1に開示されているz−カットLN光変調器モジュールをとり上げ、その模式的な上面図を図8に示す。LN光変調器50が矩形状の筺体であるパッケージ7の内部に配置されている。1はz−カットLN基板である(実際にはこの上にSiOバッファ層とSi導電層を形成するがここでは省略する)。2はz−カットLN基板1にTiを蒸着後、1050℃で約10時間熱拡散して形成した光導波路であり、マッハツェンダ干渉系(あるいは、マッハツェンダ光導波路)を構成している。CPW進行波電極は中心導体3a、接地導体3b、3cからなっている。4は外部回路であるドライバーであり、5は信号源、6はDC成分をカットするコンデンサである。なお、DQPSK型のLN光変調器モジュールでは複数のマッハツェンダ光導波路をネスト状に用いる。
パッケージ7の中にはLN光変調器50の他に電気的終端8も内蔵されている。ここで、9はパッケージ7に設けたバイアス用端子、10は抵抗値Rのバイアス抵抗、11と12は高周波用コンデンサ、13は抵抗値Rの終端抵抗、14はキャパシタンスC14の低周波用コンデンサである。図9に図8に示したz−カットLN光変調器モジュールの等価回路図を示す。15はバイアス電圧Vを出力するバイアス電源であり、通常オペアンプにより構成されている。なお、通常、これらの電気部品はアルミナ基板や窒化アルミなどの誘電体基板の上に搭載されている。
16はz−カットLN光変調器のチップのCPW進行波電極を分布定数表現したものであり、17はインダクタンス、18は電極材料のAuに起因する抵抗、19はキャパシタンス、20はコンダクタンスに対応している。
次に、このように構成されるLN光変調器モジュールの動作について説明する。このLN光変調器モジュールを動作させるには、ドライバー4から中心導体3aと接地導体3b、3c間に高周波電気信号を印加するとともに、電気的終端8からバイアス電圧を印加する。
図10にLN光変調器モジュールの電圧−光出力特性を示す。ここで、Vはその際のバイアス電圧(ここでは、DCバイアス電圧)である。この図10に示すように、通常、バイアス電圧Vは光出力特性の山と底の中点に設定される。バイアスVを適正に印加することはLN光変調器モジュールの特性を有効に引き出すために極めて重要である。
ここで、この従来技術の問題点について考察する。低周波用コンデンサ14の容量は1μF程度である。バイアスVを決めるために、一般に10KHz程度以下の周波数を有する電気信号が使用される。この場合、低周波用コンデンサ14のインピーダンスは、低周波用コンデンサ14のキャパシタンスC14を用いると、1/(ωC14)と表され15.9Ωとなる。なお、ωは角周波数であり、周波数fに対して2πfとして与えられる。
図9の電気的接続点Aにおける電圧がz−カットLN光変調器モジュールのチップに印加されるバイアス電圧と近似できる。そして、バイアス抵抗10にかかる電圧Vと電気的接続点Aにおける電圧(即ち低周波用コンデンサ14にかかる電圧V)について、
+ V = V (1)
の関係がある。
バイアス電源15から出力されるバイアス電圧の半分以上をz−カットLN光変調器のチップに印加する(V<V)には、バイアス抵抗10の抵抗値RBは低周波用コンデンサ14のインピーダンス15.9Ωの半分以下が望ましい。そのため、バイアス抵抗10の値としては5〜7Ωの小さな値が選択されることになる。
ここで、バイアス抵抗10は2つの重要な役割をしている。一つは低周波用コンデンサ14が壊れてショート状態になった場合にバイアス電源15を保護する保護抵抗としての役目であり、もう一つはバイアス電源15に使用されているオペアンプの発振を防止する役目である。つまり、一般にオペアンプは容量性負荷により、発振し易い。そこで、バイアス抵抗10は低周波用コンデンサ14によるオペアンプの発振を抑圧するためのダンピング抵抗としての役目も果たす。このオペアンプの発振の問題はLN光変調器を使用する上で深刻な問題である。
ところが、バイアス抵抗10の値Rが5〜7Ωと小さいので、低周波用コンデンサ14が壊れた際のバイアス電源15の保護としての効果も、またバイアス電源15内のオペアンプの発振を抑える効果も小さい。
特開2003−295139号公報
以上のように、従来技術ではバイアス電源に電気的に接続されているバイアス抵抗の値が小さかったため、低周波用コンデンサが壊れた際の保護や、実用上極めて重要な問題であるバイアス電源に使用されているオペアンプの発振抑圧について充分な効果を発揮できないという問題があった。これらの問題のどちらか一つでも発生すると、LN光変調器にバイアス電圧を印加できなくなり、変調器としての機能を発揮することが不可能となる。そのため、これらの問題を解決したバイアス電源についての保護とその発振の抑圧が可能な優れた技術の実現が望まれていた。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、バイアス電源について、その保護と発振の抑圧が可能な光変調器モジュールを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の光変調器モジュールは、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光を導波するための光導波路と、前記基板の一方の面側に形成され、前記光の位相を変調する高周波電気信号を印加するための中心導体及び接地導体からなる電極とからなる光変調器と、前記光変調器の前記電極に接続され、当該電極を通過した前記高周波電気信号を終端する電気的終端と、前記光変調器と前記電気的終端とを内部に配置する筐体とをし、バイアス電圧が前記電気的終端を介して前記電極に印加される光変調器モジュールにおいて、前記電気的終端は、前記高周波電気信号を終端するための終端抵抗とコンデンサとを含んでおり、前記終端抵抗は、各々の抵抗値の和が当該終端抵抗の抵抗値となる複数の抵抗で構成され、当該複数の抵抗の間から前記バイアス電圧が印加されることを特徴としている。

また、本発明の請求項の光変調器モジュールは、請求項1に記載の光変調器モジュールにおいて、前記バイアス電圧は、バイアス抵抗を介して印加されることを特徴としている。
また、本発明の請求項の光変調器モジュールは、請求項1または請求項に記載の光変調器モジュールにおいて、前記コンデンサは、高周波用コンデンサおよび低周波用コンデンサであることを特徴としている。
また、本発明の請求項の光変調器モジュールは、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の光変調器モジュールにおいて、前記基板が半導体基板であることを特徴としている。
本発明によれば、バイアス電源から見た等価的なバイアス抵抗を大きくすることができるので、コンデンサが壊れた際にバイアス電源を保護する効果とバイアス電源の中に使用されているオペアンプの発振を抑圧する効果を発揮できる。
本発明の第1の実施形態に係るLN光変調器モジュールの模式的な上面図 本発明の第1の実施形態に係る光変調器モジュールの等価回路図 本発明の第2の実施形態に係るLN光変調器モジュールの模式的な上面図 本発明の第2の実施形態に係る光変調器モジュールの等価回路図 本発明の第1の実施形態に係る光変調器モジュールの終端抵抗の斜視図 本発明の第2の実施形態に係る光変調器モジュールの終端抵抗の斜視図 本発明の第2の実施形態に係る光変調器モジュールの他の終端抵抗の斜視図 従来技術に係る光変調器モジュールの模式的な上面図 従来技術に係る光変調器モジュールの等価回路図 従来技術に係る光変調器モジュールの動作を説明する図
以下、本発明の実施形態について説明するが、図8および図9に示した従来の実施形態と同一番号は同一機能部に対応しているため、ここでは同一番号を持つ機能部の説明を省略する。
[第1の実施形態]
図1に本発明における第1の実施形態のLN光変調器モジュールについてその模式的な上面図を示す。ここで、21が本発明において重要な役割をする電気的終端である。図1のLN光変調器モジュールについてその詳しい等価回路を図2に示す。図9に示した抵抗値Rの終端抵抗13は本実施形態では各々抵抗値がRL1とRL2の終端抵抗22と23に分割される。さらに、バイアス電源15からのバイアス抵抗10を終端抵抗22と23の間の電気的接続点Bに電気的に接続する。本実施形態ではz−カットLN光変調器モジュールに印加されるバイアス電圧は電気的接続点Bの電圧で決定される。
図2からわかるように、低周波用コンデンサ14にとっての抵抗は図9に示した従来技術における抵抗値Rのバイアス抵抗10の他に分割された抵抗値RL2の終端抵抗23が加算されることになる。そのため、低周波用コンデンサ14が壊れてショート状態になった場合におけるバイアス電源15の保護抵抗としては、バイアス抵抗10の5〜7Ωと小さな抵抗値Rの他に終端抵抗23の抵抗値RL2が加算され、R+RL2となる。
一般に、中心導体3a、接地導体3b、3cからなるCPW進行波電極の終端抵抗は50Ω程度であるので、終端抵抗23の抵抗値RL2としては50Ω以下の数十Ωを選択することが可能となる。その結果、バイアス電源15の保護抵抗R+RL2は10〜60Ω程度を選択することができる。これらの値はバイアス電源15の保護抵抗として充分な値となる。
一方、バイアス電源15を構成する部品の一つであるオペアンプは低周波用コンデンサ14のような大きなキャパシタンスがあると、これが容量性負荷として見えるために発振し易いことを述べた。この問題についても、終端抵抗23が加算されることによりダンピング抵抗がR+RL2として大きくなるので発振を効果的に抑圧することが可能となる。なお、実数の値RL2を有する終端抵抗23が加算されることにより、オペアンプへの位相回りの影響を改善することができるとも解釈することができる。
なお、RL2が充分大きな値となる場合にはバイアス抵抗Rを省略することが可能となる。また、ここでは終端抵抗22と23の2つに分割する(複数にする)としたが、3つ以上に分割しても良いことは言うまでもない。ここで、終端抵抗23の抵抗値RL2とバイアス抵抗10の抵抗値Rの大小関係について述べておく。本発明のポイントはバイアス電源15から低周波用コンデンサ14を見た際の合成抵抗の値を大きくすることである。つまり、終端抵抗23の抵抗値RL2とバイアス抵抗10の抵抗値RとのRL2+Rの和が重要となる。従って、終端抵抗23の抵抗値RL2はバイアス抵抗10の抵抗値Rよりも大きくても小さくてもよいし、等しくても良い。そして以上のことは本発明の全ての実施形態について当てはまる。
図5に本実施形態における終端抵抗の具体的な一例を示す。この終端抵抗はシート抵抗で構成されている。中央部を横断して電極パッド29が形成されており、終端抵抗を22と23に実質的に分割する役割も有している。30は電気的接続点Bからバイアス電圧を供給するためのワイヤである。
[第2の実施形態]
本発明における第2の実施形態のLN光変調器モジュールについて、その模式的な上面図を図3に示し、等価回路図を図4に示す。ここで、24が第2の実施形態の電気的終端である。
なお、本発明の第1の実施形態では終端抵抗を各々抵抗値がRL1とRL2の2つの終端抵抗22と23に分けると述べた。終端抵抗を第1の実施形態のように完全に分けても良いが、実際には分けない構成としても良い。つまり、これらは図8や図9に示した終端抵抗13と同様に一体であっても良い。
この第2の実施形態においては、図3や図4のようにバイアス電源15からの電気的接続点Bを実際には一体で構成される終端抵抗25の所定の位置に、直接もしくは抵抗を介して電気的に接続する。このように構成することで、実質的に第1の実施形態と同様の作用効果を有する。
図6に本実施形態における終端抵抗の具体的な一例を示す。この終端抵抗はシート抵抗で構成されている。31は電極パッドであり、30は電気的接続点Bからバイアス電圧を供給するためのワイヤである。終端抵抗25に流れている電流は、終端抵抗25に流れる電流に垂直な方向の淵で高くなるので、電流が少ない領域に電極パッド31を設けている。
図7に本実施形態における終端抵抗の他の例を示す。この終端抵抗も図6と同様、シート抵抗で構成されている。32は電極パッドであり、30は電気的接続点Bからバイアス電圧を供給するためのワイヤである。この例では、終端抵抗25に流れている電流に与える擾乱が小さくなるように電極パッド32を設けている。
[各種実施形態]
以上においては、進行波電極としてはCPW電極を例にとり説明したが、非対称コプレーナストリップ(ACPS)や対称コプレーナストリップ(CPS)などの各種進行波電極、あるいは集中定数型の電極でも良いことは言うまでもない。そしてDQPSK型の光変調器などマッハツェンダ型光導波路をネスト状に組み合わせた構造や、シングル電極、あるいはDual電極などについても本発明は勿論有効である。また、光導波路としてはマッハツェンダ型光導波路の他に、方向性結合器や直線など、その他の光導波路でも良いことは言うまでもない。
さらに、以上の実施形態はx−カット、y−カットもしくはz−カットの面方位、即ち、基板表面(カット面)に対して垂直な方向に結晶のx軸、y軸もしくはz軸を持つ基板にも適用可能であるし、以上に述べた各実施形態での面方位を主たる面方位とし、これらに他の面方位が副たる面方位として混在しても良い。また、基板が半導体の場合についても本発明を適用できる。
以上のように、本発明に係る光変調器モジュールは、安価で、歩留まりが良い光変調器モジュールとして有用である。
1:z−カットLN基板(基板、LN基板)
2:光導波路
3a:中心導体
3b、3c:接地導体
4:ドライバー
5:信号源
6:コンデンサ
7:パッケージ
8、21、24:電気的終端
9:バイアス用端子
10:バイアス抵抗
11、12:高周波用コンデンサ
13、22、23、25:終端抵抗
14:低周波用コンデンサ
15:バイアス電源
16:CPW進行波電極の分布定数表現
17:インダクタンス
18:抵抗
19:キャパシタンス
20:コンダクタンス
29、31、32:電極パッド
30:ワイヤ
50:LN光変調器
A、B:電気的接続点

Claims (4)

  1. 電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光を導波するための光導波路と、前記基板の一方の面側に形成され、前記光の位相を変調する高周波電気信号を印加するための中心導体及び接地導体からなる電極とからなる光変調器と、
    前記光変調器の前記電極に接続され、当該電極を通過した前記高周波電気信号を終端する電気的終端と、
    前記光変調器と前記電気的終端とを内部に配置する筐体とをし、バイアス電圧が前記電気的終端を介して前記電極に印加される光変調器モジュールにおいて、
    前記電気的終端は、前記高周波電気信号を終端するための終端抵抗とコンデンサとを含んでおり、
    前記終端抵抗は、各々の抵抗値の和が当該終端抵抗の抵抗値となる複数の抵抗で構成され、当該複数の抵抗の間から前記バイアス電圧が印加されることを特徴とする光変調器モジュール。
  2. 前記バイアス電圧は、バイアス抵抗を介して印加されることを特徴とする請求項1に記載の光変調器モジュール。
  3. 前記コンデンサは、高周波用コンデンサおよび低周波用コンデンサであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光変調器モジュール。
  4. 前記基板が半導体基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光変調器モジュール。
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