JP5009481B2 - 定方向進化方法 - Google Patents

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Description

【0001】
発明の分野
本発明はin vitroでの分子ライブラリーの進化に用いる方法に関する。特に、本発明は遺伝子産物をコードする核酸を選択する方法に関し、該方法では該核酸及びコードされる遺伝子産物の活性が区画化によって関連付けられる。
【0002】
発明の背景
進化には、遺伝的多様性(核酸における多様性)の発生と、その後の有益な特性をコードする核酸の選択を必要とする。核酸と該核酸がコードする遺伝子産物の活性は生物体内では全体として関連付けられており(核酸はそれが収容される細胞の分子的計画(blue print)をコードしている)、表現型の適応性の変化をもたらすような遺伝子型での変化は、生存率と子孫の増大のような生物体にとっての有益性を生み出す。突然変異と選択が多数回行われると、ある所定の選択条件に対する適応性が増大しつつ生物体(及びそれをコードする遺伝子型)が進行的に濃縮されうる。in vitroで核酸若しくはタンパク質の迅速な進化を起こさせようとする系は、このプロセスを分子レベルで模倣する必要があり、そのような系では、核酸とそれによってコードされる遺伝子産物の活性が相関されており、かつ遺伝子産物の活性は選択可能なものでなければならない。
【0003】
in vitroでの選択の技法は急速に拡大している分野であり、所望の特性を有する生体高分子を得るためには、合理的に設計することよりも効果的なものであることが示されることが多い。過去10年間で、例えばファージディスプレイ若しくはSELEX法などを用いた選択についての実験から多数の新規なポリヌクレオチド及びポリペプチドリガンドが生み出されている。触媒反応についての選択はより困難なものであることが示されている。その手法としては、遷移状態の類似体の結合、自殺阻害剤との共有結合による連結、近接性連関、及び共有結合による産物の連結が含まれる。これらの手法は酵素反応のサイクルのある特定の部分にのみ焦点を当てたものではあるが、ある程度の成功は収めてきた。しかし、究極的には、触媒反応の回転を直接的に選択することが望ましい。確かに、かなり小規模の変異体ライブラリーの触媒反応回転を単純にスクリーニングすることは、種々の選択手法に比べてより成功を収めてきており、著しく触媒反応速度が向上した触媒をいくつか生み出してきた。
【0004】
ポリメラーゼは、分子生物学に特徴的な技法、すなわち、部位特異的突然変異誘発法、cDNAクローニング、特にサンガー配列決定法及びPCRにおいて必要なものであるが、ポリメラーゼは、自然には最適化されなかった機能を実行させられているという事実のために、大きな欠陥を示してしまうことがしばしばある。自然界から得られるポリメラーゼの性質をタンパク質工学によって改良し、特別な用途のためにそれを適合させようとの試みが少数ながら行われてきた。技術的進歩は大多数は周辺的なものであり、そのようなものとしては、より広範な生物体に由来するポリメラーゼの使用、バッファー及び添加物系、並びに酵素のブ混合が含まれる。
【0005】
ポリメラーゼの性質を改良しようとの試みは、伝統的にはタンパク質工学に依存してきた。例えば、Taqポリメラーゼの変異体(例えば、Stoffel断片及びKlentaq)はその5’−3’エキソヌクレアーゼドメインの完全な若しくは部分的な欠失によって作製され、プロセッシビティ(連続移動性)の低減という犠牲はあったが熱安定性と忠実性は改善を示している(Barnes 1992, Gene 112, 29-35; Lawyerら, 1993, PCR Methods and Applications 2, 275)。さらに、タンパク質の高分解能での構造が明らかとなったことで、性質が改良された変異体を合理的に設計できるようになった(例えば、サイクルシークエンシングのためのジデオキシヌクレオチド取込みの特性が改良されたTaq変異体、Liら, 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 9491)。in vivoでの遺伝的手法もまたタンパク質の設計に用いられており、例えばpolA株の相補性により変異型ポリメラーゼの集団から活性を有するポリメラーゼを選択する手法が挙げられる(Suzukiら, 1996, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 9670)。しかし、遺伝的相補性を用いた手法は選択しうる性質に制限がある。
【0006】
分子生物学の最近の進歩によって、いくつかの分子についてはそれらをコードする核酸とともにその性質に従ってin vitroで同時選択が行えるようになった。選択された核酸は、次いで、さらに分析若しくは使用するためにクローニングすることができ、又は変異と選択のラウンドをさらに行うことができる。これらの方法に共通することは、大きな核酸ライブラリーを確立することである。所望の性質(活性)を有する分子を、コードされる遺伝子産物の所望の活性、例えば所望の生化学的若しくは生物学的活性、例えば結合活性などについて選択する選択過程により単離することができる。
【0007】
WO99/02671号は、所望の活性を有する遺伝子産物をコードする1つ以上の遺伝的エレメントを単離する方法について述べている。遺伝的エレメントは、まずマイクロカプセルに区画化し、次いで転写及び/又は翻訳されてそれらのそれぞれの遺伝子産物(RNA又はタンパク質)をそのマイクロカプセル内で産生させる。あるいはまた、それらの遺伝的エレメントを、転写及び/又は遺伝子産物への翻訳(発現)が起こる宿主細胞中に入れ、この宿主細胞を最初にマイクロカプセル中に区画化する。次いで、所望の活性を有する遺伝子産物を産生する遺伝的エレメントが選別される。WO99/02671号に記載の方法は、マイクロカプセル若しくは遺伝子エレメント(又はその双方)を触媒作用で改変する遺伝子産物に依存するものであり、それによって改変されたものを濃縮して所望の活性の選択が可能となる。
【0008】
発明の概要
本発明の第1の態様では、本発明は、核酸加工触媒(NAP)酵素を選択する方法を提供し、その方法は以下のステップを含む:(a)NAP酵素又は該NAP酵素の変異体をコードする核酸メンバーを含む核酸プールを調製するステップ;(b)該核酸プールを区画に分割するステップであって、各区画が、該プールの核酸メンバーと該核酸メンバーによってコードされるNAP酵素又は変異体とを共に含むように分割するステップ;(c)核酸加工触媒を起こさせるステップ;及び(d)該NAP酵素による該核酸メンバーの加工触媒を検出するステップ。
【0009】
本発明の第2の態様において、本発明は、NAP酵素の活性を改変可能な物質を選択する方法であって、その方法は以下のステップを含む:(a)NAP酵素を調製するステップ;(b)1以上の候補物質をコードする核酸メンバーを含む核酸プールを調製するステップ;(c)該核酸プールを区画に分割するステップであって、各区画が、該プールの核酸メンバー、該核酸メンバーによりコードされる物質、及びNAP酵素を含むように分割するステップ;並びに(d)該NAP酵素による該核酸メンバーの加工触媒を検出するステップ。
【0010】
好ましくは、上記物質は、NAP酵素活性のプロモーターである。上記物質は酵素であってもよく、好ましくはキナーゼ若しくはホスホリラーゼであるが、それはNAP酵素の活性を改変するよう該酵素に作用することが可能なものである。上記物質は、NAP酵素の折りたたみ若しくはアセンブリーに関与する、又はレプリカーゼ機能(例えば、テロメラーゼ、HSP90)の維持に必要とされるシャペロンであってもよい。あるいはまた、上記物質は、代謝経路に関与するポリペプチド又はポリヌクレオチドであってもよく、その経路は複製反応に関与する基質を最終生成物として含むものである。さらに上記物質は、NAP酵素の阻害物質(天然若しくは非天然のもの)を、その阻害活性を低減又は失活させるように改変する反応を触媒することのできる何らかの酵素であってもよい。最後に、上記物質は、NAP活性を非触媒経路で促進する、例えばNAP酵素若しくはその基質などと結合することによって促進することができる(例えば、DNAポリメラーゼ(例:T7DNAポリメラーゼ、及びチオレドキシン)の場合にはプロセッシビティ因子(鎖伸長能に関与する因子)。
【0011】
本発明の第3の態様では、本発明は,安定に相互作用することが可能なポリペプチド対の選択方法を提供し、その方法は、以下のステップを含む:(a)第1の核酸及び第2の核酸を調製するステップであって、第1の核酸はNAP酵素の第1サブドメインとそれと融合した第1ポリペプチドを含む第1融合タンパク質をコードし、第2の核酸はNAP酵素の第2サブドメインとそれと融合した第2ポリペプチドを含む第2融合タンパク質をコードし、ここでNAPの第1及び第2サブドメインの安定な相互作用によってNAP酵素活性がもたらされ、また第1及び第2の核酸の少なくとも1つが第1及び/又は第2ポリペプチドの各々の変異体をコードする核酸プールの形態で調製されるものであるステップ;(b)上記単数又は複数の核酸プールを区画に分割するステップであって、各区画が第1の核酸及び第2の核酸と、第1及び第2の核酸によりコードされる各融合タンパク質とを共に含むように分割するステップ;(c)第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを結合させるステップであって、第1及び第2ポリペプチドの結合によって、NAP酵素サブドメインが安定に相互作用し、NAP酵素活性がもたらされるステップ;並びに(d)NAP酵素による第1及び第2の核酸の少なくとも1つの加工触媒を検出するステップ。
【0012】
さらに、上記の(a)のNAP酵素ドメインを、本発明の第2の態様で述べたように、NAP酵素の活性を改変することが可能なポリペプチドのドメイン、及びそのような所望の性質を有するように改変するポリペプチドを選択するために用いられるNAP酵素活性を改変することが可能なポリペプチドのドメインと置換することができる。
【0013】
好ましくは、第1及び第2の核酸は核酸のプールから提供される。
【0014】
好ましくは、第1及び第2の核酸は共有結合で(例えば、同じ鋳型分子の一部として)又は非共有結合(例えば、ビーズなどの上に連結することによって)結合する。
【0015】
NAP酵素は、例えばポリペプチド又はリボ核酸酵素分子とすることができる。非常に好ましい実施形態においては、本発明のNAP酵素はレプリカーゼ酵素、すなわち鋳型から核酸を増幅することの可能な酵素、例えばポリメラーゼ酵素(又はリガーゼ)である。本発明は、特にレプリカーゼに関して以下に説明する。しかし、当業者であれば、本発明が他のNAP酵素、例えばテロメラーゼやヘリカーゼにも同等に適用可能であることが理解され、また以下にさらに記載するとおり、それらの酵素は核酸を加工触媒するものであるが、それは増幅には限定されず、それらの酵素は核酸増幅を検出することによって選択可能なものであり、すなわちそれらは複製を間接的に促進するものである。
【0016】
本発明の好ましい1実施形態においては、核酸の増幅は、1ラウンド以上の核酸複製により起こる。好ましくは、核酸の増幅は指数関数的な増幅である。
【0017】
増幅反応は、好ましくは下記のものから選択される:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ネステッドPCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅系(TAS)、自己持続性配列複製(3SR)、NASBA、転写媒介性増幅反応(TMA)、及び鎖置換増幅(SDA)。
【0018】
非常に好ましい1実施形態においては、核酸メンバーの増幅後のコピー数はレプリカーゼの活性、必要な物質の活性、第1及び第2のポリペプチドの結合親和性と実質的に比例している。
【0019】
核酸の複製は、核酸メンバーのコピー数をアッセイすることによって検出することができる。あるいはまた、若しくはさらに、核酸の複製は、核酸メンバーによりコードされるポリペプチドの活性を測定することによって検出することができる。
【0020】
非常に好ましい1実施形態においては、区画内の条件は、そのような条件下で活性を有するレプリカーゼ若しくは物質、又はそのような条件下で安定に相互作用することが可能なポリペプチド対を選択するために調節される。
【0021】
レプリカーゼは、好ましくは、ポリメラーゼ、逆転写酵素、又はリガーゼの活性を有する。
【0022】
上記ポリペプチドは、in vitroでの転写及び翻訳によって核酸から調製することができる。あるいはまた、ポリペプチドはin vivoで発現宿主中で核酸から調製することができる。
【0023】
好ましい1実施形態においては、上記区画は、W/O型乳液が封入された水性成分から構成される。W/O型乳液は、好ましくは、4.5% v/v Span 80、0.4% v/v Tween 80及び0.1% v/v Triton X100を含むサーファクタント、又はSpan 80、Tween 80、及びTriton X100を実質的に同じ比率で含むサーファクタントの存在下で水相と油相とを乳化することによって調製される。好ましくは、水相:油相の比が1:2であり、この比によって適切な油滴のサイズがもたらされる。このような乳液は、油相がより多い乳液と比較して熱安定性が高い。
【0024】
本発明の第4の態様として、本発明は、前述の方法によって同定されたレプリカーゼ酵素を提供する。好ましくは、該レプリカーゼ酵素は対応する未選択の酵素よりも熱安定性が高い。より好ましくは該レプリカーゼ酵素は、野生型のTaqポリメラーゼと比較して97.5℃での半減期が10倍以上増大したTaqポリメラーゼである。
【0025】
上記レプリカーゼ酵素は、対応する未選択の酵素と比較してヘパリンに対する抵抗性がより大きいものである。好ましくは、レプリカーゼ酵素は、0.083ユニット/μL以上のヘパリン濃度において活性を有するTaqポリメラーゼである。
【0026】
上記レプリカーゼ酵素は、3’ミスマッチを有するプライマーを伸長可能なものでありうる。好ましくは、該3’ミスマッチは3’プリン−プリンミスマッチ又は3’ピリミジン−ピリミジンミスマッチである。より好ましくは、該3’ミスマッチはA−Gミスマッチであるか、又は該3’ミスマッチはC−Cミスマッチである。
【0027】
本発明の第5の態様では、本発明は、以下の変異(アミノ酸置換)を含むTaqポリメラーゼ変異体を提供する:F73S、R205K、K219E、M236T、E434D、及びA608V。
【0028】
第6の態様において、本発明は、以下の変異(アミノ酸置換)を含むTaqポリメラーゼ変異体を提供する:K225E、E388V、K540R、D578G、N583S、及びM747R。
【0029】
第7の態様において、本発明は、以下の変異(アミノ酸置換)を含むTaqポリメラーゼ変異体を提供する:G84A、D144G、K314R、E520G、A608V、及びE742G。
【0030】
第8の態様において、本発明は、以下の変異(アミノ酸置換)を含むTaqポリメラーゼ変異体を提供する:D58G、R74P、A109T、L245R、R343G、G370D、E520G、N583S、E694K、及びA743P。
【0031】
本発明の第9の態様においては、本発明は、4.5% v/v Span 80、0.4% v/v Tween 80及び0.1% v/v Triton X100を含むサーファクタント、若しくはSpan 80、Tween 80、及びTriton X100を実質的に同じ比率で含むサーファクタントの存在下で水相と油相とを乳化することによって得られるW/O型乳液を提供する。好ましくは、水相:油相の比は1:2である。この比率は、より高い温度での区画間のdNTP(及びおそらくはその他の小分子)の拡散が可能となるものと考えられ、それが有益な適用もあれば有益ではない適用もある。拡散は水相:油相の比を1:4に増加させることにより制御することができる。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明の実施は、特に断らない限りは、従来の化学、分子生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の技法を用いて行われ、それらは当業者であれば可能な範囲のものである。そのような技法については文献中に説明されている。例えば、J. Sambrook, E. F. Fritsch, 及びT. Maniatis, 1989 「分子クローニング:実験室マニュアル」"Molecular Cloning:A Laboratory Manual", 第2版、第1〜3巻, Cold Spring Harbor Laboratory Press; B. Roe, J. Crabtree,及びA. Kahn, 1996, 「DNAの単離と配列決定:基本技法」"DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques", John Wiley & Sons; J. M. Polak及びJames O'D. McGee, 1990, 「in situハイブリダイゼーション:原理と実際」"In Situ Hybridization: Principles and Practice", Oxford University Press; M. J. Gait(編), 1984, 「オリゴヌクレオチドの合成:実際的な手法」"Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach", Irl Press; 並びに、D. M. J. Lilley及びJ. E. Dahlberg, 1992, 「酵素学の方法:DNAの構造PartA:DNAの合成と物理的分析」"Methods of Enzymology: DNA Structure PartA: Synthesis and Physical Analysis of DNA", Methods in Enzymology, Academic Pressを参照させたい。これらの総説の各々は本明細書中に参照により組み入れる。
【0033】
区画化された自己複製
本発明は、新規の選択技法について開示するものであり、それを本発明者はCSR(区画化自己複製)と称する。この方法は触媒作用並びに巨大分子相互作用についての一般的な選択系へと拡張できる可能性がある。
【0034】
CSRはその最も単純な形態では、新規の熱安定性W/O型乳液の、個別の空間的に分離された水性区画内での、DNAポリメラーゼをコードし、その産生を指令する遺伝子の分別(分離)を行う。ヌクレオチド三リン酸と適切なフランキングプライマーがあれば、ポリメラーゼはそれ自体の遺伝子のみを複製する。その結果、活性のあるポリメラーゼをコードする遺伝子のみが複製され、一方、不活性な変異体はその遺伝子をコピーできず遺伝子プールから消滅する。生物系と同様に、分化により適応した変異体のうちで最も活性の高い(最もよく適応した)ものが最も多数の「子孫」をもたらし、そのことは選択後のコピー数と酵素回転とを直接相関させるものである。
【0035】
CSRはポリメラーゼに限定されず、「レプリカーゼエンジン」の周囲に構築された広範囲の酵素的転換に適用できる。例えば、ポリメラーゼに「材料を供給する(feeding)」する酵素であって、そのポリメラーゼが次にその酵素の遺伝子を複製することとなるものを選択することができる。レプリカーゼの基質を産生する又はレプリカーゼの阻害物質を消費するかいくつかの酵素が含まれる、より複雑で関連性のある協同反応スキームを考えることができる。
【0036】
ポリメラーゼは、ゲノムの維持、伝達、及び遺伝情報の発現に中心的な役割を果たしている。ポリメラーゼはまた、現代の生物学の核心部分に位置し、突然変異誘発、cDNAライブラリー、配列決定、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの主要技術を可能なものとしている。しかし、一般的に用いられているポリメラーゼでは、自然界で最適化されなかった機能を果たすよう使用しているために、大きな欠陥を示してしまうことがしばしばある。技術的進歩は大多数は周辺的なものであり、そのようなものとしてはより広範な生物に由来するポリメラーゼの使用、バッファー及び添加物系の改良、並びに酵素の混合が含まれる。CSRは、特別な用途のための「デザイナー」ポリメラーゼの単離に理想的に適した新規の選択系である。ポリメラーゼ機能の多数の特徴を「改良」(例えば、プロセッシビティ、基質の選択など)することができる。さらに、CSRは、ポリメラーゼの機能、例えば、不変の領域を探索すること、レプリソームの構成成分を研究すること、などの機能を調べるためのツールともなる。さらに、CSRは、多様で未知の微生物集団から直接ポリメラーゼのショットガン機能クローニングに用いることができる。
【0037】
CSRはポリペプチド集団の選択の新規の原理を示している。これまでの手法は種々の「ディスプレイ」法を特徴としており、それらでは表現型と遺伝子型(ポリペプチドとコードする遺伝子)は「遺伝的パッケージ」の一部として連結されており、そのパッケージはコードする遺伝子を含み、「外側」にポリペプチドをディスプレイしている。選択は親和性による精製ステップを介して行い、そのステップの後に、さらに選択のラウンドを行うために生存しているクローンを細胞中で増殖(増幅)させる(増殖をゆがめるような選択において結果として偏りが生じる)。種々のポリペプチド間のデイスプレイの効率の相違性からさらにゆがみがもたらされる。
【0038】
別の種類の手法では、ポリペプチドとコードする遺伝子の双方が1つの細胞内に「パッケージ」される。選択はin vivoで細胞を改変するポリペプチドを介して行い、そのポリペプチドはその細胞が新たな表現型(例えば抗生物質の存在下でも増殖することなど)を獲得するように改変する。選択圧は全細胞にかかるので、このような手法は偽陽性を生ずる傾向が強くなる。さらに、in vivoでの相補性を利用した方法は、選択条件によって制限され、それゆえに選択可能な表現型を自由に選ぶことはできず、それらはさらに、宿主の生存可能性という限定によって拘束される。
【0039】
CSRでは、ポリペプチドとコードする遺伝子との間に直接的な物理的結合(共有結合若しくは非共有結合)はない。好都合な遺伝子のより多数のコピーが直接的に「増殖」し、in vitroでの選択プロセスの一部分となる。
【0040】
CSRは広範なDNAポリメラーゼ及びRNAポリメラーゼに対して適用可能であり、実際に複製若しくは遺伝子発現に関与する全てのポリペプチド(若しくはポリヌクレオチド)に適用可能である。CSRはまた、オリゴヌクレオチド断片からそれらの遺伝子をアセンブルするDNAリガーゼ及びRNAリガーゼにも適用することができる。
【0041】
CSRは、酵素の回転速度が選択後のそのコードする遺伝子のコピー数と直接相関している唯一の選択系である。
【0042】
塩基に変化のあるもの、糖に変化のあるもの、若しくはさらに骨格に化学的な変化のあるようなポリヌクレオチドポリマーは大いに関心を持たれている。しかし、固相合成では通常は比較的短いポリマーのみが作られ、また天然のポリメラーゼは大多数の類似体をほとんど取り込まないことは驚くにあたらない。CSRは、化学的、生物学的、及びナノテクノロジー(例えばDNAワイヤー)の点で新規の性質を有するポリヌクレオチドポリマーを調製するための、非天然基質に対してより許容性のあるポリメラーゼの選択に理想的に適したものである。
【0043】
最後に、CSR用に開発された熱安定性の乳液はそれ自体に用途がある。10を超える微小区画/mLで、乳液のPCR(ePCR)は、並行PCRができる可能性を示しており、遺伝子連鎖解析から、単一細胞からの直接的なゲノムレパートリー構築に至るまでの、用途の可能性がかつてないスケールで多様に存在する。ePCRはまた、「デジタルPCR」(Vogelstein及びKinzler(1999), PNAS, 96, 9236-9241)のような大規模診断用PCRの用途にも適用できる可能性がある。個々の反応を区画化することは、マルチプレックスPCR若しくはランダムプライマーを用いるPCRのいずれかで増幅される種々の遺伝子部分断片間の競合を避けることができ、より偏りの少ない増幅産物の分布をもたらす。従ってePCRは、全ゲノムDOP−PCR(及び関連する方法論)に代替しうる方法を提供し、又は実際にDOP−PCR(及び関連する方法論)をより効率的にするために用いることができる。
【0044】
本発明の選択系は、区画化系内での自己複製に基づいている。本発明は、活性のあるレプリカーゼは核酸を複製できるが(とりわけそのコード配列を複製する)、不活性なレプリカーゼは複製できないとの事実に依拠している。従って、本発明の方法では、ある区画内のレプリカーゼが実質的にその区画内にある鋳型以外のいかなる鋳型にも作用しえないような区画化された系を提供する。とりわけ、そのレプリカーゼは他のいかなる区画内の鋳型をも複製できないものである。非常に好ましい実施形態においては、区画内の鋳型核酸はレプリカーゼをコードするものである。従って、レプリカーゼはそのコード配列以外のいかなるものも複製できない。従ってレプリカーゼはそのコード配列と「関連付け」られている。その結果、本発明の非常に好ましい実施形態においては、該コード配列の最終濃度(すなわちコピー数)はそれによってコードされる酵素の活性に依存する。
【0045】
本発明の選択系は、レプリカーゼの選択に適用する場合には、その系が触媒反応の回転(kcat/K)を、その触媒をコードする遺伝子の選択後のコピー数と相関させるという利点を有している。従って区画化によって、レプリカーゼ酵素の遺伝子型と表現型を関連付ける可能性が提示され、以下にさらに詳細に説明するとおり、その関連づけは、その系のステップの1つとして該酵素の単数若しくは複数の遺伝子の複製を行う関連する酵素反応によって行われるものである。
【0046】
本発明の方法は、好ましくは核酸ライブラリーを利用するものであり、その性質と構築は以下に詳細に説明する。核酸ラブラリーは、種々の核酸のプールを含み、そのライブラリーのメンバーは特定の物質(選択しようとする物質)の変異体をコードする。従って、例えば、レプリカーゼの選択に用いる場合には、本発明の方法は、該レプリカーゼ若しくは該レプリカーゼの変異体をコードする核酸メンバーを有する核酸ライブラリー若しくはプールを用いる。該ライブラリーの種々のメンバーによってコードされる物質の各々は、異なる性質、例えば熱に対して若しくは阻害性の小分子の存在に対しての耐容性の相違、又は塩基対ミスマッチ(以下にさらに詳細に説明する)に対しての耐容性の相違などを有している。従って核酸変異体の集団は選択の出発材料を提供し、その集団は突然変異によって生じる生物体の天然の集団における変動と多くの点で類似のものである。
【0047】
本発明では、核酸ライブラリー若しくはプールの種々のメンバーが多数の区画又はマイクロカプセル中にソート又は区画化される。好ましい実施形態においては、各区画は核酸プールの核酸メンバーを実質的に1つ含んでいる(1若しくは複数のコピーで含む)。さらに、区画はまた、その核酸メンバーによりコードされるポリペプチド若しくはポリヌクレオチド(1若しくは好ましくは複数のコピー)を含む(以下に述べるとおり、それはレプリカーゼ、ある種の物質、ポリペプチドなどである)。これらの区画の性質は、異なる区画間で巨大分子(核酸及びポリペプチドなど)の交換が最小限であるか又は実質的に交換が起こらないようなものである。以下にさらに詳細に説明するとおり、本発明の非常に好ましい実施形態では、W/O型乳液中の水性区画を利用する。上述したとおり、区画内に存在するいかなるレプリカーゼ活性(レプリカーゼによって示されるもの、ある種の物質によって改変されるもの、又はポリペプチドが別のポリペプチドと関連して作用することによって示されるもののいずれであっても)もその区画内の鋳型にのみ作用することができる。
【0048】
区画内の条件は、それらの条件下で活性を示すポリペプチドを選択するために、変えることができる。例えば、レプリカーゼを選択する場合には、より高い熱安定性を有するレプリカーゼを選択するために該区画は温度を高くすることができる。さらに、本明細書に記載の選択方法を、熱安定性レプリカーゼ及び目的タンパク質を含む融合タンパク質について用いると、熱安定性のタンパク質の選択ができることとなる。
【0049】
不安定な商業的に重要なタンパク質中に熱安定性を取り込むための方法は、大規模生産及び販売の点から望ましいものである。緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合体としてタンパク質を発現させることによりタンパク質の折りたたみを改良するためのレポーター系が報告されている(Waldoら, (1999), Nat. Biotechnol. 17:691-695)。GFPの機能は、GFPの折りたたみ及び/又は機能性に影響を与える融合したタンパク質の効果的な折りたたみに関与し、折りたたみと発現が改良された変異体の定方向への進化を可能とする。本発明のこの態様では、タンパク質は熱安定性レプリカーゼ(若しくはレプリカーゼ活性を促進する物質)と融合させ、熱安定性及び/若しくは溶解性の増大しているタンパク質へ進化させるための方法として乳液中で活性のある融合体の選択を行う。融合パートナーの不安定な変異体は、熱サイクルの前又はその間に凝集し沈殿するものと考えられ、この結果、それぞれの区画内でレプリカーゼ活性が低下する。生存可能な融合体は乳液中で自己増幅することができ、その増幅では回転率が融合パートナーの安定性と関連している。
【0050】
関連する手法においては、シャペロンのライブラリーをポリメラーゼ−ポリペプチド融合タンパク質と共に共発現させることによって進化させてシャペロニン活性を新たに得る又は増大させることができるが、その融合タンパク質中ではタンパク質部分は誤っておりたたまれている(その選択条件下において)。シャペロニンをコードする遺伝子の複製は、シャペロニン活性が、該ポリメラーゼ−ポリペプチド融合タンパク質中のポリメラーゼ活性を救出した後にはじめて進行することができる。
【0051】
ある酵素の熱安定性は、当業界では既知の従来法で測定することができる。例えば、天然酵素の触媒活性はある一定の温度でアッセイして基準値とすることができる。酵素アッセイ法は当業界ではよく知られており、標準的なアッセイ法は多年にわたって確立されてきた。例えば、ポリメラーゼによるヌクレオチドの取込みは、例えば、放射性標識したdNTP(dATPなど)の使用、及び当業界では既知のフィルター結合アッセイなどで測定される。熱安定性をアッセイしようとする酵素は高温でプレインキュベートし、次いで保持されている活性(例えば、ポリメラーゼの場合にはポリメラーゼ活性)をより低いその酵素に最適の温度で測定し、基準値と比較する。Taqポリメラーゼの場合には、その高温とは97.5℃であり、最適温度とは72℃である。熱安定性はその高温における半減期の形で表される(すなわち、その高温条件で、ポリメラーゼがその活性を50%失うまでに要したインキュベーション時間)。例えば、本発明で選択された熱安定性レプリカーゼ、融合タンパク質、又は物質は、天然酵素と比較して、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、又はそれ以上の半減期を有しうる。最も好ましくは、熱安定性レプリカーゼなどは、このように比較した場合に11倍以上の半減期を有しているものである。好ましくは、選択したポリメラーゼを、95℃以上、97.5℃以上、100℃以上、105℃以上、又は110℃以上でプレインキュベートする。本発明の非常に好ましい1実施形態においては、97.5℃での半減期が、対応する野生型(天然)の酵素と比較して11倍以上である熱安定性が増大されたポリメラーゼを提供する。
【0052】
阻害物質、例えばポリメラーゼの場合にはヘパリンなどに対する抵抗性も上記のようにアッセイし測定することができる。阻害に対する抵抗性は阻害因子の濃度を用いて表すことができる。例えば、本発明の好ましい実施形態においては、ヘパリンの濃度が0.083ユニット/μLから0.33ユニット/μLの間に至るまで活性を有するヘパリン抵抗性のポリメラーゼを提供する。比較のために、本発明のアッセイでは、天然(野生型)のTaqポリメラーゼを阻害するヘパリンの濃度は0.0005から0.0026ユニット/μLの範囲である。
【0053】
抵抗性は、阻害物質の濃度を用いて表すことが好都合であり、その濃度とは、天然の酵素を阻害するとみとめられた濃度と比較して、選択されたレプリカーゼ、融合タンパク質又は物質の活性を阻害するとみとめられる濃度である。本発明で選択される抵抗性のレプリカーゼ、融合タンパク質又は物質は、天然の酵素と比較して、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、110倍、120倍、130倍、140倍、150倍、160倍、170倍、180倍、190倍、200倍、又はそれ以上の抵抗性を有しうる。最も好ましくは、抵抗性レプリカーゼなどは、この方法で比較した場合に130倍以上の抵抗性の増大を示すものである。選択されるレプリカーゼなどは、好ましくはその阻害因子の濃度で、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上又はさらに100%の活性を有しているものである。さらに、上記区画はヘパリンなどの阻害物質をある量で含有させることができ、そのような条件下で活性を有するレプリカーゼが選択される。
【0054】
以下に説明するとおり、本発明の方法は、相互作用するポリペプチド対を選択するために用いることができ、区画内の条件はそのような条件下で作用することが可能なポリペプチドを選択するために変更することができる(例えば、高塩濃度、若しくは高温その他)。本発明の方法はまた、これらの条件下(例えば、高塩濃度、若しくは高温、カオトロピック剤その他)で作用する融合ポリペプチドの折りたたみ、安定性、及び/又は溶解性について選択するために用いることができる。
【0055】
本発明の選択方法は、種々の複製に関係する活性、例えばポリメラーゼ活性についての選択に用いることができる。ここではレプリカーゼはポリメラーゼであり、触媒作用はポリメラーゼによるそれ自体の遺伝子の複製である。従って不完全なポリメラーゼ若しくはその反応を行う条件下(選択条件)では不活性なポリメラーゼは、それら自体の遺伝子を増幅することができない。同様にして、活性がより低いポリメラーゼは、それらの入っている区画内のいいてそれらをコードする配列の複製をより緩慢に行うこととなる。従って、これらの遺伝子は遺伝子プールで検出未満となるか、そのプールから消失するまでになる。
【0056】
他方、活性のあるポリメラーゼは、それら自体の遺伝子を複製することができ、その結果得られるそれらの遺伝子のコピー数は増加することとなる。本発明の好ましい1実施形態においては、該プール内の遺伝子のコピー数は、反応が行われる条件下でコードされるポリペプチドの活性と直接相関を示す。この好ましい実施形態においては、最も活性の高いポリメラーゼがそのプールの最終状態で最も多く現れていることとなる(すなわち、そのプール内のその遺伝子のコピー数が最多である)。このことから理解しうるとおり、これによって活性のあるポリメラーゼを不活性のポリメラーゼから分けてクローニングすることが容易に行えるようになる。従って、本発明の方法は、酵素の回転速度を、この方法で得られるその酵素をコードしている遺伝子のコピー数と直接相関させることができるものである。
【0057】
例として、本発明の方法は、好熱性生物からの活性のあるポリメラーゼ(DNA−、RNA−ポリメラーゼ及び逆転写酵素)の単離に適用することができる。簡潔に述べれば、熱安定性のポリメラーゼは細菌細胞の細胞内で発現されるが、それらの細胞を適切なバッファー中で適切な量のdNTP及びオリゴヌクレオチドと共に区画化するが(例えばW/O型乳液中で)、そのオリゴヌクレオチドは該ポリメラーゼ遺伝子のどちらかの末端又は該ポリメラーゼ遺伝子に隣接するプラスミド配列上にプライミング(結合)するものである。ポリメラーゼとその遺伝子は、細胞を溶解しその宿主細胞に伴う酵素活性を破壊するような温度ステップによって、細胞から放出される。常温を好む生物から得たポリメラーゼ(すなわち熱安定性がより低いポリメラーゼ)は類似の方法で発現させることができるが、ただし細胞の溶解を常温で進めるか(例えば、溶解性タンパク質(例えば溶解性バクテリオファージ由来のもの)を発現させることによって、若しくは界面活性剤(例えば、BugbusterTM、市販品)を用いた溶解によって行う)、又は溶解をポリメラーゼ安定化剤(例えば、クレノウの場合には高濃度のプロリン(実施例27参照)、若しくはRTの場合にはトレハロース)の存在下で高温で進めるかの、いずれかを行わなければなければならない。そのような場合には、宿主株のバックグラウンドのポリメラーゼ活性が選択を妨害する可能性があり、変異株(例えばpolA)を利用することが好ましいこともある。
【0058】
あるいはまた、ポリメラーゼ遺伝子(プラスミドとして、又は線状断片として)を上記のように区画化し、該ポリメラーゼをin vitro転写翻訳(ivt)を用いて区画内でin situで発現させた後、温度ステップでin vitro翻訳抽出物に伴う酵素活性を破壊することができる。常温を好む生物から得たポリメラーゼ(すなわち熱安定性がより低いポリメラーゼ)はin situで類似の方法で発現させることができるが、ただしin vitro翻訳抽出物に伴う酵素活性を避けるために、PUREシステム(Simizuら, (2001) Nat. Biotech., 19:751)のようなよく確立された精製成分から再構成された翻訳抽出物を用いることが好ましいこともある。
【0059】
PCRの熱サイクルにより、次いで、ポリメラーゼ遺伝子がコードするポリペプチドによる該遺伝子の増幅、すなわち活性のあるポリメラーゼ若しくは選択された条件下で活性のあるポリメラーゼをコードする遺伝子のみの増幅が行われる。さらに、自己増幅後のあるポリメラーゼ遺伝子Xのコピー数はその遺伝子がコードするポリメラーゼXの触媒活性に直接比例することとなる(図1A及び1Bを参照)。
【0060】
区画内の選択条件を変えることによって、所望の性質を有するポリメラーゼ若しくはその他のレプリカーゼを本発明の方法を用いて選択することができる。このように、ポリメラーゼ遺伝子の集団(標的特異的な若しくはランダムな突然変異によって多様化したもの)に自己複製を起こさせることにより、また自己複製が起こりうる条件を変えることにより、本発明の系は、変更を加えた、増強させた、若しくは新規の性質を有するポリメラーゼを単離し操作するために用いることができる。そのような増強される性質としては、熱安定性の増大、プロセッシビティの増大、正確性の向上(より良好なプルーフリーディング)、本来は好ましくない基質の取込み(例えば、リボヌクレオチド、5’−ニトロインドールなどの色素で修飾した一般的な塩基、若しくはピレンヌクレオチド(Matray及びKool, (1999), Nature 399, 704-708)(図3)などの通常にはないその他の基質)、又は阻害物質(例えば、臨床検査用サンプル中に含まれるヘパリンなど)に対する抵抗性が含まれる。新規の性質としては、非天然基質(例えばリボヌクレオチド)の取込み、損傷を受けた部位(例えば塩基のない部位(Paz-Elizur T.ら, (1997) Biochemistry, 36, 1766)、チミジンダイマー(Wood, R.D., (1999) Nature, 399, 639)、ヒダントイン塩基(Duarte, V.ら, (1999) Nucleic Acids Res. 27, 496)を回避した読みとり、及び新規の化学的性質(例えば、PNA(Nielsen, P.E., Curr. Opin. Biotechnol. 1999; 10(1):71-5)若しくはスルホン(Benner, S.A.ら, Pure Appl. Chem. 1998, Feb; 70(2):263-6)などの新規の骨格、又は糖の化学的性質を変更(A.Eschenmoser, Science 284, 2118-24(1999))も含まれる。本発明の系はまた、プロセッシビティ因子などのポリメラーゼ機能を増強若しくは改変する因子(T7 DNAポリメラーゼの場合のチオレドキシン(Doublie, S.ら, (1998) Nature 391, 251))の単離若しくは進化のためにも用いることができる。
【0061】
しかし、レプリカーゼ以外の酵素、例えばテロメラーゼ、ヘリカーゼその他なども、本発明に従って選択することができる。テロメラーゼはin situで(区画内で)、例えばテロメラーゼ−RNAと共に(外から添加するか若しくはin situで転写させる。例えば、Bachandら, (2000) RNA 6:778-784)、in vitro翻訳により発現される。
【0062】
区画はまた、Taq Pol及びdNTP並びにテロメア特異的プライマーも含有している。低温ではTaqは不活性であるが、活性のあるテロメラーゼはテロメアをそれ自体をコードする遺伝子(適切な末端を有する線状DNA断片)に付加する。テロメラーゼ反応の後には、熱サイクルでは活性を有するテロメラーゼをコードする遺伝子のみが増幅される。テロメラーゼ遺伝子若しくはRNA(又はその双方)に多様性を導入することができ、その多様性は標的特異的若しくはランダムなものとしうる。ヘリカーゼの選択に適用する場合には、その選択方法は本質的にはテロメラーゼについて述べたものと同じであるが、ヘリカーゼは熱変性ではなく鎖の巻き戻しに用いられる。
【0063】
本発明の方法はまた、DNA修復酵素若しくは大腸菌のPol IV及びPol Vなどの損傷を越えて合成する(translesion)ポリメラーゼの選択のためにも用いることができる。この方法では、損傷をプライマー中に導入するか(標的特異的な化学的方法)若しくは変異原(例えば、UV、変異原性化学物質その他)での処理によってランダムに導入する。このことによって複製に必要なプライマー、若しくは自身の遺伝子配列を修復することのできる(情報の修繕)酵素の選択ができ、又は遺伝子治療用の改良された「修復酵素(repairase)」その他が得られる。
【0064】
本発明の方法はその種々の実施形態において、レプリカーゼ活性を直接的若しくは間接的に改変可能な物質を選択するために用いることができる。さらに、本発明は、相互作用することが可能なポリペプチド対の選択、若しくは触媒作用のあるRNA(リボザイム)などの触媒作用のある核酸の選択に用いることができる。これら及びその他の実施形態は以下にさらに詳細に説明する。
【0065】
核酸加工触媒酵素
本明細書で用いる核酸加工触媒酵素とは、タンパク質酵素若しくは核酸酵素であって、核酸を改変、伸長(少なくとも1個のヌクレオチド分)、増幅、若しくはそれ以外の何らかの影響を及ぼして、本発明に従って増幅させることによってその核酸を選択可能なものとするいかなる酵素をも意味する。従って、そのような酵素は、例えば、核酸の増幅、安定化、不安定化、ハイブリダイゼーション若しくは変性、複製、保護若しくは脱保護をもたらすような活性、又は、ある核酸が増幅によって選択しうることを基礎とする何らかの他の活性を有している。例としてはヘリカーゼ、テロメラーゼ、リガーゼ、リコンビナーゼ、インテグラーゼ、及びレプリカーゼが含まれる。レプリカーゼが好ましい。
【0066】
レプリカーゼ/複製
本明細書で用いる「複製」という用語は、鋳型依存性の核酸配列のコピーを意味している。核酸については下記に論じ、例示している。一般的には、複製の産物は別の核酸であり、同一種のものであるか又は異なる種のものである。従って、DNAを複製してDNAを産生させる複製、DNAを複製してRNAを産生させる複製、RNAを複製してDNAを産生させる複製、RNAを複製してRNAを産生させる複製が含まれる。従って「複製」という用語は、DNA複製、重合、オリゴヌクレオチド若しくはポリヌクレオチドの連結(例えば、トリヌクレオチド(トリプレット)5’トリホスファターゼ)により長い配列を形成すること、転写、逆転写などをも包含する。
【0067】
「レプリカーゼ」という用語は、ヌクレオチドビルディングブロックを結合させて核酸配列を形成させることが可能な触媒活性を有している酵素を意味することを意図している。そのようなヌクレオチドビルディングブロックとしては、限定はされないが、ヌクレオシド、ヌクレオシド三リン酸、デオキシヌクレオシド、デオキシヌクレオシド三リン酸、ヌクレオチド(アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、その他などの窒素含有塩基、5炭糖、及び1つ以上のリン酸基を含む)、ヌクレオチド三リン酸、デオキシヌクレオチド(デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシシチジン、デオキシウリジン、デオキシグアニジンなど)、デオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、並びにこれらの合成の若しくは人工の類似体が含まれる。ビルディングブロックとしてはまた、上記のいずれかのオリゴマー若しくはポリマー、例えば、トリヌクレオチド(トリプレット)、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドが含まれる。
【0068】
このように、レプリカーゼはヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドを取り込むことにより既にある核酸配列(プライマー)を伸長することができる。このような活性は当業界では「重合」として知られ、これを行う酵素は、「ポリメラーゼ」として知られている。そのようなポリメラーゼの例として、レプリカーゼはDNAポリメラーゼであり、DNAを複製することができる。プライマーはおそらく伸長される配列と化学的に同じであるか若しくは異なるものである(例えば、哺乳動物のDNAポリメラーゼはRNAプライマーからDNA配列を伸長させることが知られている)。レプリカーゼという用語はまた、核酸配列(ポリマー若しくはオリゴマーのいずれか)を結合させてより長い核酸配列を形成させる酵素をも含んでいる。そのような活性はDNA若しくはRNAの小片を連結するリガーゼによって示される。
【0069】
レプリカーゼは、レプリカーゼ配列の全てから構成されるものとすることができ、又はレプリカーゼは異種のポリペプチド若しくはある物質などの他の分子と、化学的な方法で、若しくは融合タンパク質の形で、若しくは2種以上の構成部分からアセンブルして連結されたレプリカーゼ配列を含むものとすることができる。
【0070】
好ましくは、本発明のレプリカーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、DNAリガーゼ、若しくはRNAリガーゼである。
【0071】
好ましくは、レプリカーゼは熱安定性のレプリカーゼである。本明細書中で用いる「熱安定性」レプリカーゼとは、高温、典型的には体温(37℃)より高い温度での熱変性に対して著しい抵抗性を示すレプリカーゼである。好ましくは、そのような温度は42℃から160℃の範囲であり、より好ましくは60から100℃であり、最も好ましくは90℃を超える温度である。熱安定性でないレプリカーゼと比較すると、熱安定性レプリカーゼは著しく長い半減期(高温条件でその活性を50%失うまでに要したインキュベーション時間)を示す。好ましくは、熱安定性レプリカーゼは高温でのインキュベーション後に30%以上の活性を保持し、より好ましくは活性の保持が40%、50%、60%、70%、若しくは80%以上である。さらにより好ましくは、該レプリカーゼは80%の活性の保持を示す。最も好ましくは、活性の保持は90%、95%以上、100%にまでなる。熱安定性でないレプリカーゼは高温での同様のインキュベーションを行った後には活性はほとんど若しくは全く保持されない。
【0072】
ポリメラーゼ
レプリカーゼの例はDNAポリメラーゼである。DNAポリメラーゼ酵素は天然に存在する細胞内酵素であり、細胞に利用されて鋳型分子を用いた核酸鎖の複製を行い、相補的な核酸鎖を生成する。DNAポリメラーゼ活性を有する酵素は、核酸プライマーの伸長しつつある末端の3’ヒドロキシル基とヌクレオチド三リン酸の5’リン酸基との間の結合の形成を触媒する。これらのヌクレオチド三リン酸は、通常は、デオキシアデノシン三リン酸(A)、デオキシチミジン三リン酸(T)、デオキシシチジン三リン酸(C)、及びデオキシグアノシン三リン酸(G)から選択される。しかし、DNAポリメラーゼはこれらのヌクレオチドの改変形態をも取り込みうる。ヌクレオチドが付加される順番は、DNA鋳型鎖に対しての塩基対合によって決定される。そのような塩基対合は「規則的な(canonical)」水素結合を介して形成されている(向かい合っているDNA鎖のA及びTヌクレオチド間並びにC及びGヌクレオチド間の水素結合)が、規則的ではない塩基対号、例えばG−U塩基対合なども当業界では知られている。例えば、Adamsら, 「核酸の生化学」"The Biochemistry of the Nucleic Acids" 14-32(第11版, 1992)を参照のこと。DNAポリメラーゼ活性を有する酵素のin vitroでの使用は、種々の生化学的用途において最近では以前より一般的に行われており、そのような用途としては、cDNA合成及びDNAの配列決定反応(Sambrookら, (第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)を参照すればよくこれは本明細書中に参照により組み入れる)、及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの方法による核酸の増幅(Mullisら, 米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、及び第4,800,159号、これらは本明細書中に参照により組み入れる)、並びにRNA転写を利用する増幅方法(例えば、Kacianら, PCT公開第WO91/01384号)が含まれる。
【0073】
PCRなどの方法は、DNAポリメラーゼ活性を利用したプライマーの伸長を行い、その後、プライマーのアニーリングと伸長をもう1ラウンド行うための新しい鋳型を生成するために、得られた二本鎖核酸を熱変性するサイクルを利用している。鎖の変性に必要な高温において多数のDNAポリメラーゼの不可逆的な不活化がもたらされてしまうので、約37℃から42℃を超える温度で活性を維持可能なDNAポリメラーゼ(熱安定性DNAポリメラーゼ酵素)を発見しそれを使用すればコスト及び労力の点で有利である。熱安定性DNAポリメラーゼはこれまでに多数の好熱性生物中で発見されており、そのようなものとしては、限定はされないが、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、及びバシラス(Bacillus)、サーモコッカス(Thermococcus)、スルホロバス(Sulfolobus)、ピロコッカス(Pyrococcus)属に属するいくつかの種が含まれる。DNAポリメラーゼはこれらの好熱性生物から直接的に精製することができる。しかし、まず最初にその酵素をコードする遺伝子を多重コピー発現ベクター中に組換えDNA技法によってクローニングし、そのベクターを、該酵素を発現しうる宿主細胞株中に挿入し、ベクターを含有している宿主細胞を培養し、次いで該DNAポリメラーゼを、それを発現した宿主細胞株から抽出することによって、DNAポリメラーゼの収率を大きく向上させることができる。
【0074】
現在までに特性決定されている細菌由来のDNAポリメラーゼは、ある一定のパターンの類似点と相異点があり、そのことによってこれらの酵素を2つの群に分ける考え方がある。その群とは、その遺伝子がイントロン/インテインを含んでいるもの(クラスB DNAポリメラーゼ)、及びそのDNAポリメラーゼ遺伝子が大腸菌のDNAポリメラーゼIの遺伝子とほぼ類似していてイントロンを含まないもの(クラスA DNAポリメラーゼ)である。
【0075】
好熱性生物由来のクラスA及びクラスBの熱安定性DNAポリメラーゼのいくつかはクローニングされ発現されている。クラスAの酵素のうちでは、Lawyerら, J. Biol. Chem. 264:6427-6437(1989)及びGelfundら, 米国特許第5,079,352号は、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(Taq)由来の熱安定性DNAポリメラーゼの完全長のもののクローニングと発現を報告している。Lawyerら, PCR Methods and Applications, 2:275-287(1993)、及びBarnes, PCT公開No.WO92/06188(1992)は、同じTaqDNAポリメラーゼの末端切断型のクローニングと発現を開示しており、一方、Sullivan, EPO公開No. 0482714A1(1992)は、TaqDNAポリメラーゼの変異型のクローニングを報告している。Asakuraら, J. Ferment. Bioeng.(Japan), 74:265-269(1993)は、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来のDNAポリメラーゼのクローニングと発現を報告している。Gelfundら, PCT公開No.WO92/06202(1992)は、サーモシホ・アフリカナス(Thermosipho africanus)由来の精製熱安定性DNAポリメラーゼを開示している。サーマス・フラバス(Thermus flavus)由来の熱安定性DNAポリメラーゼについてはAkhmetzjanov及びVakhitov, Nucleic Acids Res., 20:5839(1992)が報告している。Uemoriら, J. Biochem. 113:401-410(1993)及びEPO公開No.0517418A2(1992)は好熱性細菌であるバシラス・カルドテナクス(Bacillus caldotenax)由来のDNAポリメラーゼのクローニング及び発現を報告している。Ishinoら, 日本特許出願平4[1992]-131400号(公開日1993年11月19日)は、バシラス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)由来のDNAポリメラーゼのクローニングを報告している。クラスBの酵素では、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)由来の組換え熱安定性DNAポリメラーゼが、Combら, EPO公開No.0455430A3(1991)、Combら, EPO公開No.0547920A2(1993)、及びPerlerら, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 89:5577-5581(1992)によって報告されている。スルホロバス・ソロファタリウス(Sulfolobus solofatarius)由来のクローニングされた熱安定性DNAポリメラーゼはPisaniら, Nucleic Acids Res., 20:2711-2716(1992)及びPCT公開No.WO93/25691(1993)中に開示されている。ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)の熱安定性酵素はUemoriら, Nucleic Acids Res., 21:259-265(1993)に開示されており、一方、ピロコッカス・エスピー(Pyrococcus sp.)由来の組換えDNAポリメラーゼはCombら, EPO公開No.0547359A1(1993)に開示されている。
【0076】
多くの熱安定性DNAポリメラーゼはDNAポリメラーゼ活性以外の活性を有している。そのような活性としては、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性及び/若しくは3’−5’エキソヌクレアーゼ活性が含まれる。5’−3’及び3’−5’エキソヌクレアーゼの活性は当業者には周知である。3’−5’エキソヌクレアーゼ活性は新たに合成された鎖の正確性を、取り込まれた可能性のある正しくない塩基を除去することによって改善する。そのような活性が低いか若しくは活性を持たないDNAポリメラーゼとしては、TaqDNAポリメラーゼが含まれることが報告されているが(Lawyerら, J. Biol. Chem. 264:6427-6437)、そのようなDNAポリメラーゼでは、伸長するプライマー鎖中へのヌクレオチド残基の取込みの誤り率が高い。プライマー伸長サイクルのサイクル数に関してDNAの複製が等比級数的であることが多い核酸増幅方法などに適用する場合には、そのような誤りは、核酸増幅産物(アンプリコン)の配列の不均質性などの深刻な人為的な問題を引き起こす可能性がある。従って、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性はそのような目的に用いる熱安定性DNAポリメラーゼの特性として望ましいものである。
【0077】
これに対して、DNAポリメラーゼ酵素中にしばしば存在する5’−3’エキソヌクレアーゼ活性は、保護されていない5’末端を有する核酸(プライマーを含む)を消化することができるので、特定の用途には望ましくないことが多い。従って、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性が減弱した、若しくはそのような活性がない熱安定性DNAポリメラーゼも生化学的用途にとって望ましい特性の酵素である。DNAポリメラーゼに改変を導入した種々のDNAポリメラーゼ酵素が報告されており、それはこの目的を達成している。例えば、大腸菌のDNAポリメラーゼIのクレノウ断片は、5’−3’エキソヌクレアーゼ活性を制御しているタンパク質のドメインが除去されたホロ酵素のタンパク質分解断片として産生される。そのクレノウ断片は依然としてポリメラーゼ活性と3’−5’エキソヌクレアーゼ活性とを保持している。Barnes(上述の文献)、及びGelfundら, 米国特許第5,079,352号は、5’−3’エキソヌクレアーゼの欠損した、組換えTaqDNAポリメラーゼを作製した。Ishinoら, EPO公開No.0517418A2は、バシラス・カルドテナクス(Bacillus cardotenax)由来の、5’−3’エキソヌクレアーゼ欠損のDNAポリメラーゼを作製した。他方、5’−3’エキソヌクレアーゼドメインを欠損するポリメラーゼはプロセッシビティの低下がよく見られる。
【0078】
リガーゼ
複製、修復、及び組換えの際にDNA鎖の切断やギャップが生ずる。哺乳動物細胞の核では、そのような鎖の切断の再結合はいくつかの種のDNAポリメラーゼ及びDNAリガーゼ酵素に依存している。DNAリガーゼ酵素によるDNA鎖の中断の結合機作は様々に報告されている。その反応は、共有結合による酵素−アデニル酸複合体の形成によって開始される。哺乳動物とウイルスのDNAリガーゼ酵素は補因子としてATPを用いるが、細菌のDNAリガーゼ酵素はアデニリル基をもたらすためにNADを用いる。ATPを利用するリガーゼの場合には、そのATPは切断されてAMPとピロリン酸となり、アデニリル残基はタンパク質の活性部位にある特定のリジン残基のε−アミノ基とホスホロアミダイト結合によって結合する(Gumport, R.I.ら, PNAS, 68:2559-63(1971))。DNAリガーゼ−アデニル酸中間体の再活性化されたAMP残基は二本鎖DNA中の一本鎖切断部分の5’リン酸末端に転移され5’−5’無水リン酸結合を持つ共有結合DNA−AMP複合体が生ずる。この反応中間体は微生物及び哺乳動物DNAリガーゼ酵素についても単離されてはいるが、アデニリル化酵素よりも寿命が短い。DNAの連結の最終ステップでは、ホスホジエステル結合の生成に必要なアデニリル化されていないDNAリガーゼ酵素がアデニリル化部位上の近接する3’−ヒドロキシル基による攻撃を通じてAMP残基の排除を触媒する。
【0079】
3種類の異なるDNAリガーゼ酵素、すなわちDNAリガーゼI、II、及びIIIについては精製された酵素の特徴を生化学的及び免疫学的に調べることによってこれまでに確立されている(Tomkinson, A.E.ら, J. Biol. Chem., 266:21728-21735(1991)、及びRoberts, E.ら, J. Biol. Chem., 269:3789-3792(1994))。
【0080】
増幅
本発明の方法は、所望の核酸の鋳型を用いた増幅を行う。「増幅」とは、ある特定の核酸断片(若しくはその一部分)のコピー数の増加を意味し、それは酵素的連鎖反応(ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応、若しくは自己持続性配列複製など)、又はその断片がクローニングされたベクターの全体若しくは一部の複製のいずれかによってもたらされるものである。好ましくは、本発明において行う増幅は、例えばポリメラーゼ連鎖反応によって示されるような、指数関数的な増幅である。
【0081】
文献中には多数の標的増幅法及びシグナル増幅法が報告されており、例えば、それらの方法の総説は、Landegren, U.ら, Science 242:229-237(1988)及びLewis, R., Genetic Engineering News 10:1, 54-55(1990)中に述べられている。これらの増幅法を本発明の方法に用いることができ、そのようなものとしては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、in situ PCR、リガーゼ増幅反応(LAS)、リガーゼハイブリダイゼーション、Qバクテリオファージレプリカーゼ、転写に基づく増幅系(TAS)、転写物の配列決定を伴うゲノム増幅(GAWTS)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、及びin situハイブリダイゼーションが含まれる。
【0082】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
PCRは、特に米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号に記載されている増幅方法である。PCRはDNAポリメラーゼによって行われるプライマー伸長反応の反復サイクルからなっている。標的DNAを熱変性させ、2つのオリゴヌクレオチド(増幅されることとなるDNAの向かい合った鎖上の標的配列を挟む配列)とハイブリダイズさせる。これらのオリゴヌクレオチドはDNAポリメラーゼを用いるためのプライマーとなる。このDNAはプライマーの伸長によってコピーされて双方の鎖の第2のコピーができる。熱変性、プライマーハイブリダイゼーション、及び伸長のサイクルを繰り返すことによって、標的DNAを約2から4時間のうちに100万倍以上に増幅することができる。PCRは分子生物学のツールであり、増幅の結果を調べるための検出技法と共に用いなければならない。PCRの利点は、標的DNAの量を増幅することによって約4時間のうちに100万倍から1000万倍感度を増大させることである。
【0083】
このポリメラーゼ連鎖反応は、本発明の選択方法で次のとおり用いることができる。例えば、PCRはポリメラーゼ活性を有するTaqポリメラーゼの変異体を選択するために用いることができる。より詳細に上述したとおり、核酸のライブラリーであって、それぞれがレプリカーゼ若しくはそのレプリカーゼの変異体(例えばTaqポリメラーゼ)をコードしているようなライブラリーを作製し、さらに区画に分割する。各区画は、実質的には、ライブラリーのメンバーの1つとそのメンバーによってコードされるレプリカーゼ若しくはその変異体を含むものである。
【0084】
該ポリメラーゼ若しくはその変異体は、形質転換された細菌若しくはその他の適当な発現宿主、例えば酵母又は昆虫若しくは哺乳動物細胞内でin vivoで発現され、その発現宿主はある区画内に封入されたものである。熱若しくはその他の適切な方法を適用してその宿主を破壊してその区画内にあるポリメラーゼ変異体及びそれをコードする核酸を放出させる。細菌宿主の場合には、溶解タンパク質の時間を定めた発現、例えばΦX174からのプロテインE、若しくは誘導可能なλ溶菌ファージを、細菌の破壊のために用いることができる。
【0085】
ポリメラーゼ若しくはその他の酵素がその宿主内で発現される異種タンパク質である必要はない(例えば、プラスミド)ことは明らかであろうが、宿主ゲノムの遺伝子形成部分から発現させることができる。従って、ポリメラーゼは、例えば内因性若しくは細菌がもともと持っているポリメラーゼとすることができる。本発明者は、ヌクレオチド二リン酸キナーゼ(ndk)の場合には、ndkの内因性の(誘導されたものでない)発現は、それ自体の複製のためのdNTPを生成するには十分であることを示した。従って本発明の選択方法は、多様な(及び未知の)微生物集団からのポリメラーゼ及びその他の酵素の直接的機能性クローニングに用いることができる。
【0086】
あるいはまた、核酸ライブラリーは、in vitro転写/翻訳系(本明細書でさらに詳細に説明する)の構成要素、及びその区画内でin vitroで発現されるポリメラーゼ変異体と共に区画化することができる。
【0087】
各区画はまた、PCR反応の構成要素、例えばヌクレオチド三リン酸(dNTP)、バッファー、マグネシウム、及びオリゴヌクレオチドプライマーなどを含んでもよい。オリゴヌクレオチドプライマーはポリメラーゼ遺伝子に隣接する(すなわち、ゲノムDNA若しくはベクターDNA内の)配列、又はポリメラーゼ遺伝子内の配列に対応する配列を有しているものとすることができる。次いで、PCRの熱サイクルを開始し、ポリメラーゼ活性を有しているポリメラーゼ変異体がその核酸配列を増幅することができるようにする。
【0088】
活性のあるポリメラーゼは対応する核酸配列を増幅するが、一方で、活性の弱い若しくは不活性のポリメラーゼをコードする核酸配列は複製が少ないか若しくは全く複製されない。一般的には、核酸ライブラリーの各メンバーの最終的なコピー数は、それによってコードされるポリメラーゼ変異体の活性レベルに比例することとなると考えられる。活性のあるポリメラーゼをコードする核酸は多量に検出され、不活性若しくは活性の弱いポリメラーゼをコードする核酸は検出できない程度に少ない。この結果得られる増幅された配列は、次いでクローニングされ、配列決定などが行われ、各メンバーの複製能がアッセイされる。
【0089】
他の箇所で詳細に説明したとおり、各区画内の条件を変えて、その条件下で活性を有するポリメラーゼの選択を行うことができる。例えば、反応混液中にヘパリンを添加してヘパリンに抵抗性のポリメラーゼを選択することができる。PCRを行う温度を上げてポリメラーゼの熱抵抗性変異体を選択することができる。さらに、3’末端が改変されているプライマーなどのDNA配列、又はプライマー配列の改変部分を伸長することのできるポリメラーゼを選択することができる。改変された3’末端、若しくはその他の改変としては、非天然塩基(改変された糖若しくは塩基部分)、改変された塩基(例えば、ブロックされた3’末端)、又は骨格の化学的性質に変更を加えられたプライマー(例えば、PNAプライマー)などが挙げられる。
【0090】
逆転写酵素−PCR
RT−PCRはRNA標的を増幅するために用いられる。このプロセスでは、逆転写酵素はRNAを相補的DNA(cDNA)に変換するために用いられ、次いでPCRを用いてこの相補的DNAが増幅される。この方法はRNAウイルスの検出に有用であることが証明されている。
【0091】
本発明の方法ではRT−PCRを用いることができる。レプリカーゼ若しくはその変異体をコードしている核酸のプールはRNAライブラリーの形で提供することができる。このライブラリーは、in vivoで区画化された細菌、哺乳動物細胞、酵母などで作製することができ、又は区画化されたDNAのin vitroでの転写によって作製することもできる。RNAは、in vivoで発現された(及び乳液中に下記に開示する方法によってRNAと共に放出された)、若しくはin vitroで発現された、同じ区画に入れられたレプリカーゼ(例えば、逆転写酵素若しくはポリメラーゼ)をコードしうる。増幅に必要なその他の構成成分(ポリメラーゼ及び/若しくは逆転写酵素、dNTP、プライマー)も区画化される。ある与えられた選択圧下では逆転写反応のcDNA産物はPCR増幅の鋳型となる。他の複製反応(特に実施例中のndk)と同様に、RNAは、この反応に材料を供給する一連の酵素をコードするものであってもよい。
【0092】
自己持続性配列複製(3SR)
自己持続性配列複製(3SR)はTASの変法であり、その方法では、酵素カクテル及び適切なオリゴヌクレオチドプライマーによって媒介される、逆転写酵素(RT)、ポリメラーゼ、及びヌクレアーゼの活性の連続的なラウンドによる核酸鋳型の等温増幅を行う(Guatelliら, (1990), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:1874)。RNA/DNAヘテロ二本鎖のRNAの酵素的分解を、熱変性の替わりに用いる。RNAaseH及びその他の酵素の全ては反応液中に添加され、全てのステップは同一温度で、さらに試薬を添加することなく行われる。このプロセスの後、42℃で1時間で10から10の増幅が達成されている。
【0093】
従って本発明の方法は、PCRの熱サイクルに替えて3SR等温増幅(Guatelliら, (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:7797; Compton(1991) Nature 7; 350:91-92)を用いる常温を好む生物に由来するポリメラーゼ若しくはレプリカーゼの選択へ拡張することができる。上述のとおり、3SRには2種類の酵素の協調作用が関与している。すなわち、RNAポリメラーゼと逆転写酵素は転写と逆転写の連動した反応において協同して作用し、RNAとDNAの同時増幅をもたらす。この系においては、自己増幅を、関与している2種類の酵素のいずれかに適用でき、又はそれらの双方に同時に適用できることは明らかである。この系はまた、RNaseH活性を逆転写酵素(例えば、HIV−1 RT)の一部として若しくはそれ自体が持つようなものの進化をも含んでいる。
【0094】
3SR及び関連する方法を定義づけている種々の酵素の活性は、その全てが本発明の方法を用いた選択の標的となるものである。T7 RNAポリメラーゼ、逆転写酵素(RT)、若しくはRNAseHの変異体は乳液の水性区画内に提供することができ、その他の点では制限を付するような条件下で選択される。これらの変異体は大腸菌の「遺伝子ペレット」により導入することができ(すなわち、ポリペプチドを発現する細菌)、又は本明細書の他の箇所に述べた他の方法をにより導入することができる。乳液中の最初の放出は酵素的に(例えばλ溶菌ファージ)、若しくは熱による溶解、又はその他の本明細書に記載の方法によって行われる。熱による溶解の場合には、一時的に高く設定した温度で酵素活性を安定化させる物質を用いることが必要であろう。例えば、逆転写酵素などの熱感受性の酵素の安定化を行うためには当業界では既知のプロリン、グリセロール、トレハロース、若しくはその他の安定化剤を適量で含むことがおそらく必要であろう。さらに、そのような物質の段階的除去を行うことによって、熱感受性酵素の安定性の増大について選択することができる。
【0095】
あるいはまた、及び他の箇所で開示されているとおり、変異体は連動した転写と翻訳を介して産生させることができ、発現された産物が3SRサイクル中へ送り込まれる。
【0096】
また、逆転写酵素を熱安定性のTth DNAポリメラーゼと置換することが可能であることも理解されよう。Tth DNAポリメラーゼは逆転写酵素活性を有することが知られており、RNA鋳型はこの酵素を用いて効率的に逆転写されてDNA鋳型となる。従ってこの酵素の有用な変異体を、例えば細菌で発現されたT7 RNAポリメラーゼ変異体を乳液中に入れ、この実験以外では許されない温度でプレインキュベーションを行って、選択することができる。
【0097】
下記の実施例18は、本発明の方法が、自己持続性配列複製(3SR)を用いたレプリカーゼの選択に適用できる1方法を示している。
【0098】
ライゲーション増幅(LAR/LAS)
ライゲーション増幅反応若しくはライゲーション増幅系は、DNAリガーゼと標的鎖あたり2個で合計4個のオリゴヌクレオチドを用いる。この技法については、Wu, D.Y.及びWallace, R.B., (1989) Genomics 4:560に述べられている。これらのオリゴヌクレオチドは標的DNA上の隣接する配列にハイブリダイズし、リガーゼによって結合される。この反応は熱変性とサイクルを反復するものである。
【0099】
ポリメラーゼへの適用の場合と同様に、本発明の方法は、リガーゼ、特に好熱性生物由来のリガーゼに適用することができる。リガーゼ遺伝子配列の一方の鎖に対して相補的なオリゴヌクレオチドを合成する(完全に一致したものとするか、又は、標的特異的な若しくはランダムな多様性を含んだものとする)。2個の末端オリゴはベクター若しくはリガーゼ遺伝子の非翻訳領域と重複する部分を有している。リガーゼ遺伝子は、適切な宿主中での発現のためにクローニングされ、該オリゴヌクレオチド及び適切なエネルギー源(通常はATP(若しくはNADPH))と共に区画化される。必要があれば、上述のように細菌中で発現させたリガーゼを熱溶解によって細胞から放出させる。区画には、適切なバッファーと共に適切な量の適切なエネルギー源(ATP若しくはNADPH)及び該リガーゼの遺伝子全体をコードしているオリゴヌクレオチド、並びにクローニングに必要なフランキング配列が含まれる。オリゴヌクレオチドによって、活性のリガーゼにより完全長のリガーゼ遺伝子がアセンブリ(構築)される(発現プラスミド上のリガーゼ遺伝子を鋳型として起こる)。不活性なリガーゼを含んでいる区画では、アセンブリは起こらない。ポリメラーゼの場合と同様に、リガーゼ遺伝子Xのセルフライゲーション後のコピー数は、好ましくはその遺伝子がコードするリガーゼXの選択条件下での触媒活性と比例することとなる。
【0100】
細胞の溶解後、熱サイクルによって該オリゴヌクレオチドのリガーゼ遺伝子へのアニーリングが起こる。しかし、該オリゴのライゲーション及び完全長リガーゼ遺伝子のアセンブリーは同一区画内に活性のあるリガーゼが存在するか否かに依存している。従って、活性のあるリガーゼをコードする遺伝子のみがそこに存在するオリゴヌクレオチドからそれら自体のコード遺伝子をアセンブリすることとなる。次いでそのアセンブリされた遺伝子を必要に応じてもう一度選択のラウンドにかけるために、増幅、多様化、及び再クローニングしてもよい。従って、本発明の方法は、ライゲーションをより迅速に又は効率的に行うリガーゼの選択に適したものである。
【0101】
他の箇所で述べたとおり、リガーゼは、in situで適切な細菌若しくはその他の宿主から発現させるか、又はin vitro翻訳により産生させることができる。リガーゼは、利用可能な断片からそれ自体の配列をアセンブリするオリゴヌクレオチドの(例えば、リボザイム若しくはデオキシリボザイム)リガーゼとすることができ、又はリガーゼは従来の(ポリペプチド)リガーゼとすることができる。オリゴヌクレオチドの長さは個々の反応によって異なるが、必要に応じて、非常に短いもの(例えばトリプレット)とすることができる。他の箇所で述べたとおり、本発明の方法はリガーゼ活性を直接的若しくは間接的に改変可能な物質を選択するために用いることができる。例えば、進化させようとする遺伝子を、リガーゼの基質を作る別の若しくは複数の酵素(例えばNADH)又は阻害物質を消費する酵素のものとすることができる。
【0102】
オリゴヌクレオチド間のライゲーション反応には別の化学的反応、例えばアミド結合を組み入れることができる。この化学結合がレプリカーゼ(例えば逆転写酵素)の対向する鎖の鋳型をもとにしたコピー作成を妨害しない限りは、多様な化学的結合反応及びそれを触媒するリガーゼを進化させることができる。
【0103】
Qβレプリカーゼ
この技法では、バクテリオファージQβのRNAレプリカーゼを標的DNAの増幅に用いるもので、この酵素は一本鎖RNAを複製する。この技法についてはLizardら, (1988) Bio. Technology 6:1197に述べられているとおりである。まず最初に標的DNAを、T7プロモーター及びQβ5’配列領域を含むプライマーとハイブリダイズさせる。逆転写酵素はこのプライマーを用いて、そのプロセスにおいて該プライマーをその5’末端に連結したcDNAを生成する。これらの2つのステップはTASのプロトコールと類似のものである。この結果得られるヘテロ二本鎖を熱変性させる。次いで、Qβ3’配列領域を含む第2のプライマーを第2ラウンドのcDNA合成を開始するために用いる。この結果Qβバクテリオファージの5’と3’末端の双方と活性のあるT7 RNAポリメラーゼ結合部位とを含む二本鎖DNAがもたらされる。次いでT7 RNAポリメラーゼはその二本鎖DNAを新たなRNAに転写するが、それはQβを模倣したものである。十分に洗ってハイブリダイズしていないプローブを除去した後、その新たなRNAを標的から溶出し、Qβレプリカーゼで複製する。後者の反応では約20分間で10倍の増幅が行われる。上記反応の間に非特異的に保持されるプローブRNAのごく少量によって有意な量のバックグラウンドが形成されることもある。
【0104】
上述のQβレプリカーゼを用いる反応は、本発明の別の1実施形態において、連続的選択反応を構築するために用いることができる。
【0105】
例えば、Qβレプリカーゼの遺伝子(適切な5’及び3’領域を有する)をin vitroで翻訳反応液中に添加し区画化する。区画内ではレプリカーゼが発現され、それ自身の遺伝子の複製が直ちに開始される。活性のあるレプリカーゼをコードしている遺伝子のみがそれ自体を複製する。複製はNTPが尽きるまで進行する。しかし、NTPは乳液全体に拡散するようになっているので(実施例中のndkの説明を参照せよ)、複製反応は外部から材料を与えられずっと長く進行させて、その区画内にさらに複製する余地が本質的に残っていない状態となるまで進めることができる。この反応をさらに、該混合乳液を新鮮な油相に連続希釈し、NTPを含有する新鮮な水相を添加後再度乳化することによって拡大することができる。Qβレプリカーゼは非常に変異を起こしやすいものとして知られているので、複製のみでは多数のランダムな多様性が導入されてしまう(これは望ましいこともある)。上述の方法では、より特異的な(例えばプライマー依存性の)Qβレプリカーゼの形態への進化が可能である。他の複製反応と同様に(特に実施例中のndk)、この反応に材料を与える広範な酵素を進化させることができる。
【0106】
その他の増幅技法
本発明では別の増幅技法も用いることができる。例えば、ローリングサークル増幅法(Lizardiら, (1998) Nat. Genet. 19:225)は市販されている増幅技法であり(RCATTM)、その方法はDNAポリメラーゼで駆動され環状オリゴヌクレオチドプローブを等温条件下で直線的若しくは幾何級数的に増加するような反応速度で複製することができる。
【0107】
2個の適切に設計されたプライマーの存在下で幾何級数的増幅がDNA鎖の置換及び高度の分枝を介して起こり、1時間で各環の1012個以上のコピーが生成される。
【0108】
単一のプライマーを用いた場合には、RCATは2、3分後には標的と共有結合で連結された標的のDNAコピーが数千個縦につながって結合された直鎖を生成する。
【0109】
さらに別の技法として、鎖置換増幅(SDA;Walkerら, (1992) PNAS(USA) 80:392)は特定の標的に対して特有の、特異的に規定された配列を用いて開始する。しかし熱サイクルに依存している他の技法とは異なり、SDAは一連のプライマー、DNAポリメラーゼ、及び制限酵素を用いてその特有の核酸配列を指数関数的に増幅する等温プロセスである。
【0110】
SDAは標的生成段階と指数関数的増幅段階の双方を含む。
【0111】
標的生成では、二本鎖DNAを熱変性させて2本の一本鎖コピーを作る。特別に製造された一組のプライマーをDNAポリメラーゼと組み合わせて(基礎となっている配列をコピーするための増幅プライマー、及び新たに作られた鎖の置換のためのバンパープライマー)、指数関数的増幅が可能な改変された標的を形成させる。
【0112】
指数関数的増幅プロセスは標的生成段階からの改変標的(制限酵素認識部位を有する一本鎖の部分DNA鎖)を用いて開始される。
【0113】
増幅プライマーを各鎖のそのプライマーと相補的なDNA配列の位置で結合させる。次いでDNAポリメラーゼはそのプライマーを用いて、そのプライマーをその3’末端から、改変標的を個々のヌクレオチドを付加するための鋳型として用いて伸長させる位置を決定する。その伸長されたプライマーは各鎖の末端に完全な形の制限酵素認識部位を含む二本鎖DNAの部分断片を形成する。
【0114】
次いで制限酵素をその二本鎖DNA部分断片にその認識部位で結合させる。制限酵素は、その認識部位で両側の部分断片の一方の鎖のみを切断してニックを形成した後にその部位から解離する。DNAポリメラーゼはそのニックを認識し、その部位から鎖を伸長させて、その前に作られていた鎖と置換される。このように認識部位は繰り返しニックが挿入され、制限酵素及びDNAポリメラーゼによる、標的部分断片を含むDNA鎖の連続的な置換を用いて修復される。
【0115】
次いで置換された鎖の各々を上述のとおり増幅プライマーとアニーリングすることができる。このプロセスは、ニック挿入、伸長、及び新しいDNA鎖の置換を繰り返すことによって継続され、もとのDNA標的の指数関数的増幅をもたらす。
【0116】
触媒RNAの選択
既知のin vitro進化方法は、触媒作用としての多様な範囲の活性を有するRNA分子(リボザイム)の生成のために用いられてきた。しかし、それらの方法は自己改変による選択を含むものであり、それは近傍の触媒作用に依存し、トランスの活性の低減を示す変異体を本質的に単離する。
【0117】
区画化を行えば、基質を共有結合で若しくは水素結合(すなわち塩基対合)の相互作用でリボザイムに繋いでおく必要のない、多重回転が可能な真にトランス作用性のリボザイムを選択するための方法が可能となる。
【0118】
最も単純な場合には、リボザイムをコードする遺伝子を乳液中に導入し容易に転写することができるが、それはTaqポリメラーゼをコードするRNAのin situでの転写と3SR増幅によって示すことができ、それは次のとおりである:Taqポリメラーゼ遺伝子をまず乳液中で転写する。80mM HEPES−KOH(pH7.5)、24mM MgCl、2mMスペルミジン、40mM DTT、rNTP(30mM)、50ng T7−Taq鋳型(実施例18 自己持続性配列複製(3SR)を用いた選択、を参照せよ)、60ユニットのT7 RNAポリメラーゼ(USB)、40ユニットのRNAsin(Promega)を含む100μLの反応混液を標準プロトコールを用いて乳化する。乳液を37℃で6時間までインキュベートし、反応産物をゲル電気泳動により分析したところ、RNA産生のレベルは乳化しなかった対照のレベルと同等であることが示された。
【0119】
乳化した遺伝子の5’末端に突出末端を作ることによって(例えば、DNA若しくはRNAアダプターのいずれかのライゲーションによって行う)、鋳型によって指令される逐次的dNTPの付加をトランスの形で行うことのできる能力(すなわちポリメラーゼ活性、図6を参照せよ)についてRNA変異体が選択される。「充填」された遺伝子は、その遺伝子の一本鎖領域(すなわち、リボザイムが充填する前には一本鎖となっている領域)と相補的なプライマーを用いるか、又は取り込んだビオチン(若しくはその他のもの)修飾ヌクレオチドを捕捉しその後PCRを行うことによって回収することができる。触媒としてのRNA活性のない区画では、この領域は一本鎖のままであり、PCRでは鋳型を増幅できないこととなる(あるいはまた、ヌクレオチドは取り込まれず、鋳型は捕捉されずに洗い流される)。
【0120】
選択されることとなる酵素活性の範囲をさらに拡張するために連動する手法を用いることができる。例えば、DNAポリメラーゼと上述の遺伝子(5’突出末端)との同時乳化を、他の点では不適切なNTP基質をポリメラーゼによって利用しうるものに変換するようなリボザイムを選択するために、用いることができる。前述のとおり、「充填」された遺伝子はPCRによって回収することができる。上述の手法は類似の鋳型(すなわち3’突出末端を有するもの)からin situで産生されたタンパク質ポリメラーゼ酵素の選択にも用いることができる。触媒活性を有するRNAの選択を示す図は、図6に示している。
【0121】
レプリカーゼ活性を改変可能な物質の選択
別の実施形態においては、本発明はレプリカーゼの活性を改変可能な物質の選択に用いられる。この実施形態においては、核酸プールを、1種以上の候補物質をコードするメンバーを含むように調製する。核酸ライブラリーのメンバーはレプリカーゼと共に区画化される(上で説明したとおり、このレプリカーゼはその物質をコードする核酸に対してのみ作用する)。
【0122】
候補物質はお互いが機能的に若しくは化学的に独立したものであるか、又は、それらはレプリカーゼ活性の改変能があることが既に知られているか若しくはそのように考えられている物質の変異体とすることができる。次いでプールのメンバーを、それらによってコードされるポリペプチド若しくはポリヌクレオチドと共に区画に分割し、好ましくは各区画が該プールの単一のメンバーとその同一の起源によってコードされたポリペプチドを含むようにする。各区画は、1種以上のレプリカーゼ分子をも含む。従って、コードされたポリペプチド物質はレプリカーゼの活性を調節することができ、区画化された核酸(すなわち、その物質をコードする核酸)の複製を妨げるか若しくは増強する。この方法でポリペプチド物質はレプリカーゼを介してその物質をコードしている核酸の分子数を増大若しくは低減させることができる。本発明の非常に好ましい1実施形態においては、該物質はレプリカーゼ活性の増強能を有し、その物質をコードする核酸を検出することによってその物質の検出若しくは選択が可能となる。
【0123】
調節物質(modulating agent, modulator)は、レプリカーゼに直接的若しくは間接的に作用することができる。例えば、調節物質は、レプリカーゼ分子に、例えばレプリカーゼの翻訳後修飾によって作用して該レプリカーゼを活性化若しくは不活化するような活性を含む酵素とすることができる。この物質は、レプリカーゼ分子からリガンドを取り去るか若しくはリガンドを置くことによって作用することができる。ポリメラーゼ及びリガーゼなどの多数のレプリカーゼがリン酸化によって調節されていることが知られているので、好ましい実施形態では、本発明の該物質はキナーゼ若しくはホスホリラーゼである。調節物質はまた、直接的にレプリカーゼと相互作用してその性質を改変するものであってもよい(例えば、チオレドキシンとT7−DNAポリメラーゼ、レプリソームのメンバー、例えばクランプ(clamp)、ヘリカーゼその他、とDNAポリメラーゼIIIとの相互作用)。
【0124】
あるいはまた、調節物質は、間接的にレプリカーゼに対し作用を示すものであってもよい。例えば、レプリカーゼ活性の調節は第3のものを介して行うことができ、その第3のものは調節物質(例えば上述したもの)によって改変される。
【0125】
さらに、調節物質は、最終産物としてレプリカーゼの基質を産生するような経路の一部を形成する酵素とすることができる。この実施形態においては、調節物質はその経路の中間体(若しくは最終産物)の合成に関与する。従って、複製速度(及びその物質をコードする核酸の量)は調節物質の活性に依存する。
【0126】
例えば、調節物質は、塩基、デオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド(dAMP、dCMP、dGMP、及びdTMPなど)、デオキシリボヌクレオシド二リン酸(dADP、dCDP、dGDP、及びdTDPなど)、デオキシリボヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dGTP、若しくはdTTP)、ヌクレオシド、ヌクレオチド(AMP、CMP、GMP、及びUMPなど)、ヌクレオシド二リン酸(ADP、CDP、GDP、及びUDP)、ヌクレオシド三リン酸(ATP、CTP、GTP、もしくはUTPなど)などの生合成に関与するキナーゼとすることができる。調節物質は、ヌクレオチドの生合成の他の中間体(報告がなされており、また生化学の教科書、例えばStryer若しくはLehningerなどでよく知られている)、例えば、IMP、5−ホスホ−α−D−リボース−1−ピロリン酸、5−ホスホ−β−D−リボシルアミン、5−ホスホリボシル−グリシンアミド、5−ホスホリボシル−N−ホルミルグリシンアミド、その他などの合成に関与するものとすることができる。従って該物質は、リボースリン酸ピロホスホキナーゼ、ホスホリボシルグリシンアミドシンテターゼその他の酵素を含むものとすることができる。そのような物質の他の例については当業者であれば理解できる。本発明の方法はそのような物質で触媒活性の改良されたものの選択を可能とする。
【0127】
また別の実施形態においては、調節物質は、複製カクテル(プライマー、dNTP、レプリカーゼその他)の構成成分の「障害を取り除く(unblock)」ように機能する。障害のある構成成分の例としては、CSRサイクル中に用いられるレプリカーゼを阻害する化学的部分を付加したプライマー若しくはdNTPである。あるいはまた、用いられるプライマー対は連結剤によって共有結合で繋ぐことができ、この薬剤が調節物質により開裂されて、補充されたレプリカーゼの存在下で双方のプライマーがその遺伝子を増幅することを可能にする。連結剤の例としてはペプチド核酸(PNA)が挙げられる。さらに、標的のヌクレオチド配列が間に入るプライマー配列対をコードする大きなオリゴヌクレオチドを設計することによって、新規の部位特異的制限酵素を進化させうる。前述のとおり、複製速度(及びその物質をコードしている核酸の量)は該調節物質の活性に依存する。あるいはまた、調節物質はプライマーの5’末端を改変するものであってもよく、その結果、プライマーを取り込んでいる増幅産物が適切な物質(例えば抗体)によって捕捉されうるようになり、その量が増加し再増幅されることとなる。
【0128】
さらに別の実施形態においては、CSRの範囲をさらに拡大して、必ずしも熱安定性ではない物質の選択も行えるようにすることができる。分泌可能な形態の調節物質/対象のレプリカーゼをコードする発現構築物を含んでいる送達ビヒクル(例えば大腸菌)が区画化される。水相に誘導剤を含ませて許容しうる温度(例えば37℃)でインキュベートするとその調節物質/レプリカーゼが該区画において発現・分泌される。次いでその調節物質には、その後それをコードする遺伝子の増幅を促進するための前述した方法により作用する(例えば、複製の阻害物質を消費する)ために十分な時間がある。この増幅プロセスの間に起こる温度変化は宿主細胞の酵素活性(これはこの時点までは水相から隔てられていたものである)を有する区画を排除し、増幅のためにコードしている遺伝子を放出する。
【0129】
従って、本発明の1実施形態では、本発明者は、最終生成物として複製反応に関与する基質を含む経路において機能するポリペプチド(「経路ポリペプチド」)を選択する方法を提供し、その方法は次のステップを含む:(a)レプリカーゼを調製するステップ;(b)経路ポリペプチド若しくは経路ポリペプチドの変異体を各々コードするメンバーを含む核酸プールを調製するステップ;(c)核酸プールを区画に分割するステップであって、各区画が、該プールの核酸メンバー、その核酸メンバーによりコードされる経路ポリペプチド若しくは変異体、該レプリカーゼ、及び経路のその他の成分を含むように分割するステップ;(d)該核酸メンバーの該レプリカーゼによる増幅を検出するステップ。
【0130】
実施例(特に実施例19及びそれ以降の実施例)はヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDPキナーゼ)の選択における本発明の使用を示しており、そのNDPキナーゼはリン酸基をATPからデオキシヌクレオシド二リン酸へと転移させてデオキシヌクレオシド三リン酸を生成する触媒反応を有する。
【0131】
また別の実施形態においては、調節物質はレプリカーゼ活性の阻害物質を消費するものである。例えば、ヘパリンはレプリカーゼ(ポリメラーゼ)活性の阻害物質であることが知られている。本発明の方法を用いれば、ヘパリナーゼ若しくはこの酵素の変異体をコードする核酸ライブラリーの区画化をヘパリン及びポリメラーゼの存在下で行うことによって、活性の増強されたヘパリナーゼの選択が可能となる。活性の増強されたヘパリナーゼ変異体はヘパリンをより強度に若しくはより迅速に分解することができ、従って該区画内のレプリカーゼ活性の阻害を除去し、該区画内の核酸(すなわち、そのヘパリナーゼ変異体をコードする核酸)の複製が可能となる。
【0132】
相互作用するポリペプチドの選択
タンパク質−タンパク質相互作用の選択のための最も重要な系はin vivo法であり、最も重要かつ最もよく開発されているものは酵母の2ハイブリッド系である(Field及びSong, Nature (1989) 340, 245-246)。この系及び関連の手法では2種のハイブリッドタンパク質が生成される。すなわち、DNA結合ドメインと融合させたタンパク質Xを含む餌の(bait)ハイブリッド及び転写活性化ドメインに融合させたタンパク質Yを含む補足する(prey)ハイブリッドの2種であり、XとYの同種の相互作用で転写活性化因子が再構成される。酵素のポリペプチド鎖が2つのタンパク質XとYと2つの部分で融合されて発現され、同種のX−Y相互作用は酵素の機能を再構成するという、2つの他のin vivo系が提唱されており(Karimova (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 5752-6; Pelletier (1999) Nat. Biotechnol. 17 683-690)、その系では細胞に選択可能な表現型を付与する。
【0133】
最近、Taqポリメラーゼが類似の方法で分割しうることが示された(Vainshteinら, (1996) Protein Science 5,1785)。従って、本発明は、Taqポリメラーゼまたはポリメラーゼ反応を補助する何らかの酵素若しくは因子を分割することによって安定な相互作用を行うことが可能なポリペプチド対の選択方法を提供する。
【0134】
この方法はいくつかのステップを含む。第1ステップは、第1の核酸と第2の核酸を提供する。第1の核酸は第1の融合タンパク質をコードし、そのタンパク質は第1のポリペプチドと融合させたレプリカーゼ(若しくはその他のもの、上記参照)酵素の第1のサブドメインを含み、一方、第2の核酸は第2の融合タンパク質をコードし、そのタンパク質は第2のポリペプチドと融合させたレプリカーゼ(若しくはその他のもの、上記参照)酵素の第2のサブドメインを含む。これらの2つの融合タンパク質は、第1及び第2のレプリカーゼ(若しくはその他のもの、上記参照)サブドメインの安定な相互作用によってレプリカーゼ活性(直接的に若しくは間接的に)がもたらされる。第1及び第2の核酸のうちの少なくとも1つ(好ましくは双方)は、第1及び/又は第2ポリペプチドの各々の変異体をコードする核酸プールの形態で提供される。
【0135】
次いでその単数若しくは複数の核酸プールを区画に分割し、その区画の各々が第1核酸及び第2の核酸を、第1及び第2の核酸によってコードされるそれぞれの融合タンパク質と共に含むようにする。次いで第1ポリペプチドを第2ポリペプチドと結合させて、第1及び第2ポリペプチドの結合によってレプリカーゼサブドメインが安定に相互作用し、レプリカーゼ活性がもたらされるようにする。最後に、第1及び第2の核酸のうちの少なくとも1つのレプリカーゼによる増幅を検出する。
【0136】
従って本発明は、2つのポリペプチドリガンドの同種の会合でその2つのリガンドの遺伝子の増幅と連結が駆動されることを介してレプリカーゼ機能の再構成が起こる、in vitroの選択系を包含するものである。このようなin vitroの2ハイブリッド系は、高温でのタンパク質−タンパク質相互作用の研究に特に適しており、そのような研究としては例えば、好熱性生物のプロテオームの研究若しくは高度に安定な相互作用を作り出す研究が挙げられる。
【0137】
この系はまた、同種の相互作用を促進する分子化合物のスクリーニング及び単離にも適用できる。例えば、化合物をプライマー若しくはdNTPと化学的に結合させることができ、それにより化合物は、会合を促進させた場合にアンプリコン中に取り込まれるであろう。交叉反応を防止するためには、このような化合物は区画化が行われた後、例えばマイクロビーズへの固定若しくは溶解可能なミクロスフェア中へ含有させた後にはじめて放出されるようになっていなければならない。
【0138】
単一ステップ及び多重ステップ選択
適切な封入条件を選択することが望ましい。スクリーニングしようとするライブラリーの複雑度とサイズの如何によって、1つのマイクロカプセル若しくは区画あたり1つ以下の核酸が封入されることとなるように封入工程を定めることが有益であろう。このことによってより高い分解能がもたらされることとなる。しかし該ライブラリーがより大きい及び/若しくはより複雑である場合には、この方法は実用できではない。従って、いくつかの核酸を一緒に封入若しくは区画化し、本発明の方法を繰り返し適用して所望の活性を選別することに頼ることが好ましい。封入技法の組み合わせは所望の濃縮化を達成するために用いることができる。
【0139】
理論的研究では、作り出される核酸変異体の数が多くなればなるほど、所望の性質を有する分子が作り出される可能性がより高くなることが示されている(この方法を抗体レパートリーに適用する方法についての説明はPerelson及びOster, 1979 J. Theor. Biol., 81, 64570を参照)。最近、より大きなファージ−抗体レパートリーはより小さなレパートリーよりも、良好な結合アフィニティーを有する抗体をより多く生じさせることが実際に確認された(Griffithsら, (1994) Embo J., 13,3245-60)。まれな変異体が作製されてもそれを選択できるようにするために、大きなライブラリーサイズが望ましい。従って最適な小マイクロカプセルの使用が有益である。
【0140】
上述の核酸に加えて、本発明のマイクロカプセル若しくは区画は、複製反応が起こるために必要な成分をさらに含むことができる。該系の他の成分としては、例えば、核酸の転写及び/若しくは翻訳に必要な成分を含む。それらの成分はある特定の系に必要なものを以下から選択する。適切なバッファー、必要な成分を全て含んでいるin vitro転写/複製系及び/又はin vitro翻訳系、酵素及び補因子、RNAポリメラーゼ、ヌクレオチド、核酸(天然のもの若しくは合成)、トランスファーRNA、リボソーム及びアミノ酸、並びに改変された遺伝子産物の選択が可能となるようにするための目的の反応の基質。
【0141】
バッファー
適切なバッファーとは生物学的系の所望の構成成分の全てが活性を有し、それ故に特異的反応系の各々の要件に応じて変更する。生物学的及び/若しくは化学的反応に適したバッファーは当業界では既知であり、その調製法は種々の実験教科書中に述べられている(Sambrookら, (1989) 「分子クローニング:実験室マニュアル」"Molecular cloning:a laboratory manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)。
【0142】
In vitroでの翻訳
レプリカーゼは、他の箇所に記載したとおり、適切な宿主からの発現によって提供することができるし、又は当業界で既知のとおり適切な系におけるin vitro転写/翻訳によって産生させることもできる。
【0143】
in vitro翻訳系は、通常は、細胞抽出物、典型的には細菌抽出物(Zubay, 1973, Annu. Rev. Genet., 7, 267-87; Zubay, 1980, Methods Enzymol., 65, 856-77; Lesleyら, 1991, J. Biol. Chem. 266(4), 2632-8; Lesley, 1995, Methods Mol. Biol., 37, 265-78)、ウサギ網赤血球(Pelham及びJackson, 1976, Eur. J. Biochem., 67, 247-56)、若しくはコムギ胚芽(Andersonら, 1983, Methods Enzymol., 101, 635-44)を含む。多数の適切な系が市販されており(例えばPromega社から)、そのようなものとしては連動された転写/翻訳のできるもの(細菌系の全て及びPromega社の網赤血球とコムギ胚芽TNTTM抽出系)が含まれる。用いるアミノ酸の混合物には、該ライブラリー中で産生されるタンパク質の数及び多様性を増大するように所望により合成のアミノ酸を含めることができる。このことはtRNAに人工のアミノ酸を組み込み、そのようなtRNAを、選択しようとするタンパク質のin vitroでの翻訳に用いることによって達成することができる(Ellmanら, 1991, Methods Enzymol., 202, 301-36; Benner, 1994, Trends Biotechnol., 12, 158-63; Mendelら, 1995, Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct., 24, 435-62)。特に望ましいのは、PUREシステム(Shimizuら, (2001) Nat. Biotech., 19, 751) のような、精製された成分から再構成されたin vitro翻訳系の使用であろう。
【0144】
各選択ラウンド後に、核酸プールにおける対象の分子をコードする核酸の濃縮度を、区画化しないin vitro転写/複製反応、又は連動された転写−翻訳反応によってアッセイすることができる。その選択されたプールは適切なプラスミドベクター中にクローニングし、RNA若しくは組換えタンパク質がその個々のクローンから産生されてさらに精製及びアッセイされる。
【0145】
本発明はさらに、ある遺伝子産物をコードする核酸が本発明の方法で選択された後の、その遺伝子産物を産生させるための方法に関する。核酸自体を従来法によって直接的に発現させてこの遺伝子産物を産生させることができることは明らかである。しかし、当業者には明白なとおり、それに替わる技法を用いることもできる。例えば、該遺伝子産物に組み込まれている遺伝情報を適切な発現ベクター中に組み込んでそこから発現させることができる。
【0146】
区画
本明細書で用いる「区画」という用語は、「マイクロカプセル」と同義であり、これらの用語は相互に交換可能な形で用いられる。区画の機能は核酸とその核酸によってコードされる対応するポリペプチドとを同じ場所に局在化できることである。この局在化は、好ましくは鋳型と産物である鎖の他の区画への拡散を実質的に制限する区画の能力によって達成される。従ってポリペプチドのどのようなレプリカーゼ活性もある区画の範囲内の核酸に対してのみ作用するように制限され、他の区画内の他の核酸には働かない。区画の別の機能は、化学若しくは酵素反応中で生成される、複製反応に材料を与える又はその反応における障害を除く分子の拡散を制限することである。
【0147】
従って本発明の区画には、本発明を実施可能とする適切な物理的性質が必要とされる。
【0148】
第1に、核酸とポリペプチドが区画間で拡散しないことを確保するために、各区画の内容物は周囲の区画の内容物から隔離されていて、該核酸とポリペプチドの区画間の交換がかなりの時間にわたり全く若しくはほとんど起きないようにしなければならない。
【0149】
第2に、本発明の方法では1区画あたりには限定された数の核酸しか存在せず、ある単一の区画内のメンバーは全て単一クローン性(すなわち同一のもの)であることが必要である。このことによって個々の核酸によってコードされ、それに対応するポリペプチドが他の異なる核酸とは隔離されることとなる。従って、核酸とそれの対応するポリペプチドとの間の関連性は非常に特異的なものとなる。濃縮の因子は1区画あたり平均で1個以下の核酸のクローン種の時に最大となり、個々の核酸によってコードされるポリペプチドはその他の全ての核酸の産物から隔離されることとなるので、核酸とそれによってコードされるポリペプチドの活性との間の関連性は可能な限り密接なものとなる。しかし、理論的に最適な状況である1区画あたり核酸が平均して1個以下の状態を用いなくとも、大きなライブラリーからの選択において1区画あたりの核酸の比率が5、10、50、100、若しくは1000個以上のものでもおそらく有益であろう。その後の選択ラウンド、それには核酸の分布が異なる新たな区画化を含むが、それによって核酸のより厳密な選択が可能となろう。平均して1区画あたり1個以下の核酸クローン種が存在することが好ましい。
【0150】
さらに、各区画は1個の核酸を含有している。このことはいくつかの区画は空のままである一方、各区画が核酸を少なくとも1個、好ましくは1個のみを、統計学的に含有していることとなるように条件を調整することを意味している。
【0151】
第3に、該区画の形成と組成は核酸の発現のための装置の機能とポリペプチドの活性とを失わせるようなものであってはならない。
【0152】
この結果、採用する区画化系は全て、これらの3つの要件を満足するものでなければならない。適切な系とは、当業者であれば明らかであろうが、本発明の各適用における要件の性質が正確にはどのようなものであるかによって変わりうるものである。
【0153】
区画化には種々の技法が利用でき、そのような技法としては例えば、気体区別化(gas aphrons;Juaregi及びVarley, 1998, Biotechnol Bioeng 59, 471)及び作成済みの(prefabricated) ナノウエル(Huang及びSchreiber, 1997, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 25)が挙げられる。以下にさらに詳細に論じるように、異なる適用に対しては異なる区画サイズと区画表面の化学的性質が望ましい。例えば、ゲル若しくはアルギン酸塩(Dragetら, 1997, Int. J. Macromol. 21, 47)又はゼオライトタイプの物質のような拡散を制限する有孔物質を用いることで十分であろう。さらに、in situ PCR若しくは細胞内PCRを行う場合には、細胞を架橋固定剤で処理して有孔性の区画を形成させ、dNTP、酵素、及びプライマーの拡散が可能なようにすることができる。
【0154】
様々な区画化若しくはマイクロカプセル封入のための方法が利用でき(Benita, S.編, (1996), 「マイクロカプセル封入:方法と工業での応用」"Microencapsulation:methods and industrial applications", Drug and pharmaceutical sciences, Swarbrick, J.編, New York: Marcel Dekker)、本発明で用いられる区画を作るために用いることができる。文献中では200種類以上のマイクロカプセル封入法若しくは区画化法が確認されている(Finch, C.A., (1993) 「封入化と制御された放出」"Encapsulation and controlled release", Spec. Publ.-R. Soc. Chem., 138,35)。
【0155】
それらの方法には、脂質小胞(リポソーム)などの膜に封入された水性小胞(New, R. R. C.編, (1990), 「リポソーム:実際的な手法」"Liposomes: a practical approach", The practical approach series, Rickwood, D.及びHames, B.D.編, Oxford: Oxford University Press)、及び非イオン性サーファクタント小胞(van Hal, D. A., Bouwstra, J. A.及びJunginger, H. E.(1996), 「局所適用のためのエストラジオール含有の非イオン性サーファクタント小胞」"Nonionic surfactant containing estradiol for topical application", Microencapsulation: methods and industrial applications(Benita, S.編), pp329-347, Marcel Dekker, New York)が含まれる。これらは非共有結合で構築された分子の単一若しくは複数の二重層の閉鎖膜カプセルで、各二重層はその近傍から水性の区画によって分離されている。リポソームの場合には、その膜は脂質分子からできており、それらの脂質分子は通常はリン脂質であるがコレステロールなどのステロール類も膜内に組み込むことができる(New, R. R. C.編, (1990), 「リポソーム:実際的な手法」"Liposomes: a practical approach", The practical approach series, Rickwood, D.とHames, B.D.編, Oxford: Oxford University Press)。リポソーム内ではRNA及びDNAの重合を含む、酵素が触媒する様々な反応を行うことができる(Chakrabarti, J. Mol. Evol. (1994), 39, 555-9; Oberholzer, Biochem. Biophys. Res. Commun, (1995), 207, 250-7; Oberholzer, Chem. Biol. (1995), 2, 677-82; Walde, Biotechnol. Bioeng.(1998), 57, 216-219; Wick及びLuisi, Chem. Biol. (1996), 3, 277-85)。
【0156】
膜に封入された水性小胞系では、水相の多くは小胞の外側にあり、従って区画化されない。この連続的な水相は除去すべきであり、除去しないのならば、該反応を区画化されたマイクロカプセルに限定するために、その連続的な水相中の生物学的系を阻害若しくは破壊する(例えば、DNase若しくはRNaseを用いた核酸の消化により行う)(Luisiら, Methods Enzymol. 1987, 136, 188-216)。
【0157】
酵素で触媒される生化学的反応もまた、他の種々の方法によって作製されるマイクロカプセル区画内で行われてきた。AOT−イソオクタン−水系(Menger, F. M.及びYamada, K. (1979), J. Am. Chem. Soc. 101, 6731-6734)などの逆転ミセル溶液中で多数の酵素が活性を示す(Bru及びWalde, Euro. J. Biochem. 1991, 199, 95-103; Bru及びWalde, Biochem. Mol. Bio. Int. 1993, 31,685-92; Creaghら, Enzyme Microb. Technol. 1993, 15, 383-92; Haberら, 1993 発見できず; Kumarら, Biophys. J. 1989, 55, 789-792; Luisi, P. L. 及びB., S.-H. (1987), 「逆転ミセル溶液中の酵素の活性とコンフォメーション」"Activity and conformation of enzymes in reverse micellar solutions", Methods Enzymol. 136(188), 188-216; MaoとWalde, Biochem. Biophys. Res. Commun. 1991, 178, 1105-1112; Mao, Q.とWalde, P., (1991), 「逆転ミセル中のα−キモトリプシンの酵素活性に及ぼす基質の影響」, "Substrate effects on the enzymatic activity of alpha-chymotrypsin in reverse micelles", Biochem. Biophys. Res. Commun. 178(3), 1105-1112; Mao, Eur. J. Biochem. 1992, 208, 165-70; Perez, G. M., Sanchez, F. A.及びGarcia, C.F., (1992), 「逆転ミセル中のリポキシゲナーゼの反応速度分析への活性相プロットの応用」, "Application of active-phase plot to the kinetic analysis of lipoxygenase in reverse micelles", Biochem. J. ; Walde, P., Goto, A., Monnard, P.-A., Wessicken, M.及びLuisi, P. L., (1994), 「オパーリン反応の再来:ミセル中及び自己再生小胞中でのポリアデニル酸の酵素的合成」, "Oparin's reactions revisited: enzymatic synthesis of poly(adenilic acid) in micelles and self-reproducing vesicles", J. Am. Soc. 116, 7541-7547; Walde, P., Han, D.及びLuisi, P. L., (1993), 「逆転ミセル中に溶解したリパーゼの分光学的及び反応速度論的研究」, "Spectroscopic and kinetic studies of lipase solubilized in reverse micelles", Biochemistry, 32, 4029-34; Walde, Eur. J. Biochem. 1988, 173, 401-9)。
【0158】
区画は、界面重合及び界面錯化によって作製することもできる(Whateley, T. L. (1996) 「マイクロカプセル:界面重合と界面錯化による調製とその応用」, "Microcapsules: preparation by interfacial polymerisation and interfacial complexation and their applications", 「マイクロカプセル封入:方法と工業での応用」"Microencapsulation:methods and industrial applications"中の記載, (Benita, S.編), pp.349-375, Marcel Dekker, New York)。この種のもののマイクロカプセル区画は、堅く非透過性の膜、若しくは半透過性の膜を有している。ニトロセルロース膜、ポリアミド膜、及び脂質−ポリアミド膜によって協会形成される半透過性のマイクロカプセルは全て、多酵素系を含む生化学的反応をサポートすることができる(Chang, Methods Enzymol. 1987, 136, 67-82; Chang, Artif. Organs, 1992, 16, 71-4; Lim, Appl. Biochem. Biotechnol. 1984, 10:81-5)。アルギン酸塩/ポリリジン区画(LimとSun, Science (1980), 210, 908-10)は非常に穏和な条件下で形成され、また、例えば、生きている細胞及び組織を封入する効果的な方法を用いれば、非常に良好な生体適合性を示す(Chang, Artif. Organs, 1992, 16, 71-4; Sun ASAIO J. (1992), 38, 125-7)。
【0159】
乳液などのコロイド系中の水性環境の相分配に基づく、膜を使わない区画化系も用いることができる。
【0160】
好ましくは、本発明の区画は、乳液から形成される。2つの混和しない液相を有する不均質系で、2つの相のうちの1つはもう一方の相に顕微鏡的若しくはコロイド状のサイズの液滴として分散させている(Becher, P. (1957) 「乳液:理論と実際」"Emulsions: theory and practice", Reinhold, New York; Sherman, P. (1968) Emulsion science, Academic Press, London; Lissant, K. J.編, 「乳液と乳液技術」, "Emulsions and emulsion science", Surfactant Science, New York, Marcel Dekker, 1974; Lissant, K. J.編, 「乳液と乳液技術」, "Emulsions and emulsion science", Surfactant Science, New York, Marcel Dekker, 1984)。
【0161】
乳液は混和しない液体の何らかの適切な組み合わせから作製することができる。好ましくは、本発明の乳液は、水(その中に生化学的成分を含有している)を微細に分割された液滴の形態で存在する相とし(散乱した、内部の、若しくは不連続な相)、疎水性の混和しない液体(「油」)をその中に上記液滴が懸濁されているマトリックス(非散乱、連続的、若しくは外部の相)としている。このような乳液を「油中水滴型」(W/O)と呼ぶ。これは、生化学的成分を含有している水相の全体が個別の液滴中に区画化されている(内部相)という利点がある。外部相、すなわち疎水性の油であるが、その相は通常は生化学的成分を含まず、従って不活性である。
【0162】
乳液は、1種以上のサーファクタント(サーファクタント)の添加によって安定化することができる。それらのサーファクタントは、乳化剤と呼ばれ、水/油の界面に作用して2つの相の分離を防止(若しくは少なくとも遅延)する。W/O型乳液の作製には多種の油と多種の乳化剤を用いることができる。最近の資料では、16000種以上のサーファクタントが挙げられており、その多くは乳化剤として用いることができる(Ash, M.及びAsh, I. (1993), Handbook of industrial surfactants, Gower, Aldershot)。適切な油としては軽質白色鉱油、及びモノオレイン酸ソルビタン(SpanTM 80;ICI)及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(TweenTM 80;ICI)若しくはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)などの非イオン性サーファクタント(Schick, 1966, 発見できず)が含まれる。
【0163】
アニオン性サーファクタントの使用も有益である。適切なサーファクタントとしては、コール酸ナトリウム及びタウロコール酸ナトリウムが含まれる。特に好ましいのはデオキシコール酸ナトリウムであり、好ましくは0.5% w/v以下の濃度のものである。そのようなサーファクタントを含めると、場合によっては、核酸の発現及び/若しくはポリペプチドの活性を増加させることができる。乳化していない反応混液にアニオン性サーファクタントを添加すると翻訳が完全に行われなくなる。しかし、乳化の際には、サーファクタントは水相から界面に移動し活性が復活する。乳化しようとする混合液にアニオン性サーファクタントを添加すると、反応は区画化した後にのみ進行することが確保される。
【0164】
乳剤の調製には通常は2つの相を一緒にする力を与えるために機械的なエネルギーをかけることが必要である。それを行うには様々なやり方があり、それらは様々な機械装置を用いるが、そのようなものとしてはスターラー(マグネティックスターラー、噴射機、及びタービンスターラー、撹拌用棒(paddle device)、泡立て器など)、ホモジナイザー(ローター−ステーターホモジナイザー、高圧バルブホモジナイザー、及びジェットホモジナイザーを含む)、コロイドミル、超音波、及び「膜乳化」装置が含まれる(Becher, P. (1957) 「乳液:理論と実際」"Emulsions: theory and practice", Reinhold, New York; Dickinson, E. (1994), Wedlock, D.J.編, 「乳液と液滴のサイズの制御」"Emulsions and droplet size control", Butterworth-Heine-mann, Oxford, Vol. pp.191-257)。
【0165】
W/O型乳液中に形成される水性の区画は、通常は安定で、区画間ではポリペプチド若しくは核酸の交換はあるとしてもごくわずかである。さらに、乳液の区画内でいくつかの生化学反応が進行することが知られている。その上、複雑な生化学的プロセス、とりわけ遺伝子の転写と翻訳も乳液のマイクロカプセル中で起こる。何千リットルもの工業的規模にまで容積を増やした乳液を作製する技術も存在する(Becher, P. (1957) 「乳液:理論と実際」"Emulsions: theory and practice", Reinhold, New York; Sherman, P. (1968) Emulsion science, Academic Press, London; Lissant, K. J.編, 「乳液と乳液技術」, "Emulsions and emulsion science", Surfactant Science, New York, Marcel Dekker, 1974; Lissant, K. J.編, 「乳液と乳液技術」, "Emulsions and emulsion science", Surfactant Science, New York, Marcel Dekker, 1984)。
【0166】
好ましい区画のサイズは、本発明に従って行おうとする個々の選択プロセスの厳密な要件の如何によって変わることとなる。いずれにしても、遺伝子ライブラリーのサイズ、必要とされる濃縮度と、ポリペプチドの効率的な発現と反応性を達成するための個々の区画内での必要とされる構成成分の濃度との最適なバランスがあるであろう。
【0167】
発現のプロセスは個々のマイクロカプセルの各々の中でin situで起こるか、又は細胞(例えば細菌)内で外因性に起こるか、又は他の適切な小区画化の形態で起こる。DNAの濃度がナノモル/L未満ではin vitroでの転写と連動された転写−翻訳は双方とも効率が低くなる。各区画内に存在するDNA分子は限定された数しか必要とされないので、そのことによって、in vitroでの転写が用いられる場合には、区画の取りうるサイズの実際的な上限が定められる。好ましくは、in vitroでの転写及び/若しくは翻訳を用いたin situ発現では区画の平均容積は5.2×10−16であり、これは1μm未満の直径の球状の区画に相当する。
【0168】
別法としては、発現と区画化の分離を、例えば、細胞性宿主を用いて行うことである。細胞を含めると(とりわけ真核細胞)、平均の区画直径としては10μmを超えるものがおそらく好ましい。
【0169】
実施例に示すとおり、同一乳液区画内のポリメラーゼ遺伝子及びコードされるタンパク質を同時に局在させるために、本発明者はTaqポリメラーゼを過剰発現している細菌(大腸菌)を「送達ビヒクル」として用いた。大腸菌細胞(直径1−5μm)は、本発明の乳液区画内にヌクレオチド三リン酸及びプライマーなどのPCR試薬の十分量を入れる余地を残しつつ、容易に収まる(図2に示すとおり)。PCRの第1サイクルの変性ステップは、細菌細胞を破裂させ、発現したポリメラーゼとそれをコードする遺伝子とを区画内に放出して、バックグラウンドの細菌の酵素活性を破壊しつつ同時に自己複製を進めることができる。さらに、ホットスタートを用いる方法と同様に、この細胞性の「小区画化」は常温でのポリメラーゼ活性及び結果として生じてくる非特異的増幅産物の放出を防止する。
【0170】
区画内での効果的なDNA濃度若しくはRNA濃度は、当業者にはよく知られている種々の方法を用いて人工的に増加させることができる。そのような方法としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などの容積排除化学物質の添加、及び種々の遺伝子増幅技法が含まれ、その遺伝子増幅技法には、大腸菌などの細菌由来のRNAポリメラーゼを用いた転写(Roberts, 1969, Nature 224, 1168-74; BlattnerとDahlberg, 1972 Nat. New Biol. 237, 227-32; Robertsら, 1975, J. Biol. Chem. 250, 5530-41; Rosenbergら, 1975, J. Biol. Chem. 250, 4755-4764)、真核生物由来の由来のRNAポリメラーゼを用いた転写(Weilら, 1979 J. Biol. Chem. 254, 6163-6173; Manleyら, 1983 Methods Enzymol. 101, 568-82)、及びT7、T3、及びSP6などのバクテリオファージ由来の由来のRNAポリメラーゼを用いた転写(Meltonら, 1984 Nucleic Acids Res. 12, 7035-56);ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Saikiら, 1988 Science 239, 487-91);QBレプリカーゼ増幅(Mieleら, 1983 J. Mol. Biol. 171, 281-95; Cahillら, 1991 Clin. Chem. 37, 1482-5; ChetverinとSpirin, 1995 Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol. 51, 225-70; katanaevら, 1995 FEBS Lett., 359, 89-92);リガーゼ連鎖反応(LCR)(Landegrenら, 1988, Science, 241, 1077-80; Brany, 1991, PCR Methods Appl. 1, 5-16);並びに自己持続性配列複製系(Fahyら, 1991 PCR Methods Appl. 1, 25-33)及び鎖置換増幅(Walkerら, 1992 Nucleic Acids Res. 20, 1691-6)が含まれる。PCR及びLCRなどの熱サイクルを必要とする遺伝子増幅技法は、乳液及びin vitroの転写若しくは連動された転写−翻訳系が熱安定性の場合でも(例えば、連動された転写−翻訳系がサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)などの熱安定性の生物から調製される)、用いることができる。
【0171】
局在している核酸の有効濃度を増加させるとより大きな区画を効率的に用いることができるようになる。
【0172】
区画の大きさはその区画内で生じさせる必要のある生化学的反応に必要な構成成分の全てを収めるために十分なサイズのものでなければならない。例えば、in vitroでは、転写反応及び連動された転写−翻訳反応の双方とも約2mMの総ヌクレオシド三リン酸濃度を必要とする。
【0173】
例えば、ある遺伝子を500塩基長の短い一本鎖RNA分子に転写するためには、1区画あたり最低500個のヌクレオシド三リン酸分子を必要とする(8.33×10−22モル)。2mMの溶液を構成させるためには、この数の分子が4.17×10−19リットル(4.17×10−22m、これは球状のものとすれば直径が93nmのものである)の容積の区画内に入れられていなければならない。従って、マイクロカプセルの大きさの下限として好ましいのは直径が約0.1μm(100nm)である。
【0174】
送達ビヒクルとして発現宿主を用いる場合には、区画のサイズに関しての要件の厳密性ははるかに少ないものとなる。基本的には、区画は発現宿主並びに必要とされる反応を行うのに十分な量の試薬を収めるために十分なサイズを有するものでなければならない。従って、この場合には10μmを超える大きな区画サイズが好ましい。宿主中での発現に用いるベクターを適切に選択し、区画内の鋳型の濃度をベクターの起源及び結果として得られるコピー数(例えば大腸菌colE(pUC):>100、p15:30〜50、pSC101:1〜4)によって制御することができる。同様にして、遺伝子産物の濃度を、発現プロモーター及び発現プロトコール(例えば発現の完全な誘発とプロモーターの損失)の選択によって遺伝子産物の量で制御することができる。遺伝子産物の濃度は可能な限り高いことが好ましい。
【0175】
さらに、材料を供給する区画の使用によって外部からの基質の供給が可能となる(Ghadessyら, (2001), PNAS, 98, 4522:01を参照せよ)。乳液反応に対して外部から材料を供給することによって、リボザイムの選択には0.1μm未満の直径の区画を用いることが可能となるが、それは該区画内に試薬類の全てを収めておく必要がないからである。
【0176】
乳液マイクロカプセルもしくは区画のサイズは、選択系の要件に従って乳液を形成するために用いられる乳化条件を変更することによって簡単に変えることができる。区画サイズが大きくなればなるほど、ある与えられた核酸ライブラリーを封入するために必要な容積は大きくなるが、その究極的な限定因子は、区画のサイズ、従ってユニット容積あたりに収めることが可能なマイクロカプセル区画の数であるからである。
【0177】
区画のサイズは、複製系の要件を考慮するのみならず、該核酸について用いられる選択系の要件をも考慮して選択される。従って、選択系、例えば化学修飾系などの構成成分は、複製のためには最適ではないような反応のための容積及び/若しくは試薬濃度を必要とする。本明細書で述べるとおり、このような要件は二次的再封入ステップによって解決することができ、さらに、複製と選択を全体として最大限とするための区画サイズを選択することによっても解決することができる。例えば本明細書に述べているように、経験的に最適な区画容積及び試薬濃度を決定することが好ましい。
【0178】
本発明の非常に好ましい実施形態においては、乳液はW/O型乳液である。W/O型乳液は、鉱油中に、4.5%(v/v)Span 80、約0.4%(v/v)Tween 80、及び約0.05〜0.1%(v/v)Triton X100を含むサーファクタントの存在下で、好ましくは油相:水相の比が2:1若しくは3:1となるように油相に水相を滴下して添加することによって作製される。3種類のサーファクタントの比率は乳液が有利な性質を持つようにするために重要であると考えられ、従って本発明はサーファクタントの量を増加させたW/O型乳液をも包含するが、それはSpan 80、Tween 80、及びTriton X100の比が実質的に同じである乳液である。好ましい実施形態においては、該サーファクタントは4.5%(v/v)Span 80、0.4%(v/v)Tween 80、及び0.05%(v/v)Triton X100を含む。
【0179】
W/O型乳液は、好ましくは2mLの丸底の生体試料凍結用バイアル瓶中で水相を完全に添加した後、さらに4若しくは5分間にわたり1000rpmで一定に撹拌して形成される。添加速度は12滴/分(1滴が約10μL)までとすることができる。水相は水のみを含むものとすることができるし、又は核酸、ヌクレオチド三リン酸などの他の成分を含有したバッファー溶液を含むものとすることができる。好ましい実施形態においては、水相は本明細書中に開示したようなPCR反応混合物、並びに核酸及びポリメラーゼを含むものとすることができる。W/O型乳液は200μLの水相(例えばPCR反応混合物)及び400μLの油相から上述のとおり形成することができる。
【0180】
本発明のW/O型乳液は熱安定性が増大しているという有利な性質を有している。従って、20サイクルのPCRを行った後に、レーザー光回折及び光学顕微鏡で調べても区画サイズ若しくは区画の合体を示す証拠は観察されない。このことは図2に示している。さらに、ポリメラーゼ連鎖反応はこのW/O型組成の区画内で効率的に進行し、その速度は溶液中でのPCRで観察される速度に近いものである。本発明でのW/O型乳液中の平均的な水性区画は、平均サイズが15μmである。本発明の乳液の区画はいったん形成されるとDNA及びタンパク質のような巨大分子の交換は、有意な程度には起こらない(図3Aに示すとおり)。このことはおそらく、巨大分子は分子量が大きく荷電性質を有し、たとえ高温条件となっても疎水性のサーファクタントの殻を横切って拡散することが妨げられるためと考えられる。
【0181】
核酸
本発明での核酸とは上述のとおりである。好ましくは、核酸は、DNA分子、RNA分子、全てが合成の塩基若しくは天然の塩基と合成の塩基の混合物からなる部分的に若しくは完全に人工的な核酸分子、ポリペプチドに連結された前記のもののうちのいずれか1つ、並びに他の分子群若しくは構築物に連結された前記のもののうちのいずれか1つからなる群から選択された分子若しくは構築物である。他の分子群若しくは構築物は、核酸、ポリマー物質、特にビーズ(例えばポリスチレンビーズ、磁性ビーズなどの磁性物質)、フルオロフォア(蛍光体)若しくはアイソトープ標識などの標識、化学試薬、大環状高分子などの結合剤などからなる群から選択することが有利である。
【0182】
核酸は、遺伝子産物の効率的な発現に必要とされる、例えば、プロモーター、エンハンサー、翻訳開始配列、ポリアデニル化配列、スプライス部位などの適切な調節配列を含むものとすることができる。
【0183】
「単離」「ソート(選別)」及び「選択」という用語、並びにそれらの変化したものが本明細書中で用いられている。本発明での単離とは、異種が含まれている集団、例えば混合物からある物質を分離するプロセスであってその単離プロセスを行う前にはその物質が共存していたもののうち少なくとも1つの物質は含まれないようにすることを意味する。好ましい1実施形態においては、単離とは、ある物質を精製して実質的に均質となるようにすることを意味する。ある物質をソート(選別)する、とは、所望の物質を所望ではない物質から優先的に単離するプロセスを意味する。このことが所望の物質を単離に関連する限りは、「単離」及び「ソート」という用語は同等である。本発明の方法は、所望の核酸を含有している核酸のプール(ライブラリー若しくは集団)から所望の核酸をソートすることができる。「選択」とは、ある物質をそれの持つ特定の性質に従って単離するプロセス(ソートプロセスを含む)を意味するものとして用いる。
【0184】
「オリゴヌクレオチド」とは、2個以上の、好ましくは3個以上のデオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドを含む分子を意味する。オリゴヌクレオチドの正確なサイズはそのオリゴヌクレオチドの究極的な機能若しくはその用途に依存する。オリゴヌクレオチドは合成のもの若しくはクローニングによるものとすることができる。
【0185】
本発明に従って選択された核酸は、さらに操作を加えることができる。例えば、選択されたレプリカーゼ若しくは相互作用性ポリペプチドをコードする核酸をベクター中に組み入れ、適切な宿主細胞中に導入して、該遺伝子産物を発現する形質転換された細胞系統を作成する。次いで、この結果得られた細胞系統を、遺伝子産物の機能に影響を及ぼしうる薬剤の効果の再現可能な定性的及び/若しくは定量的分析を行うために増殖させる。従って遺伝子産物を発現している細胞は、遺伝子産物の機能を調節する化合物、特に小分子量の化合物の同定に用いることができる。従って、遺伝子産物を発現している宿主細胞は、薬剤のスクリーニングに有用であり、遺伝子産物の活性を調節する化合物を同定するための方法を提供することは本発明の別の1目的であって、該方法は、遺伝子産物をコードしている異種DNAを含有している細胞(機能を有する遺伝子産物を産生する)を、測定しようとする遺伝子産物の活性を調節する能力のある少なくとも1つの化合物、若しくは化合物の混合物、又はシグナルに暴露させ、その後、その調節によって生ずる変化についてその細胞をモニターすることを含む。そのようなアッセイによって、アゴニスト、アンタゴニスト、及びアロステリックな調節物質などの遺伝子産物の調節物質の同定が可能となる。本明細書で用いる遺伝子産物の活性を調節させる化合物若しくはシグナルとは、その遺伝子産物の活性が該化合物若しくはシグナルの存在下では異なるものとなるように(該化合物若しくはシグナルが存在しないときと比較した場合)、その遺伝子産物の活性を改変する化合物を意味する。
【0186】
細胞をベースとしたスクリーニングアッセイ法は、リポータータンパク質、すなわちβ−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などの容易にアッセイしうるタンパク質の発現が遺伝子産物に依存しているような細胞系統を構築することによって設計することができる。そのようなアッセイによって、遺伝子産物と拮抗する化合物、又は遺伝子産物の活性に必要なその他の細胞性機能を阻害する若しくは増強する化合物などの、遺伝子産物の機能を直接的に調節させる化合物の検出が可能となる。
本発明はまた、細胞内で起こる、遺伝子産物依存性のプロセスに外因的に影響を及ぼす方法をも提供する。組換え遺伝子産物を産生する宿主細胞、例えば哺乳動物細胞を、供試化合物と接触させ、次いでその化合物の調節効果を、その供試化合物の存在する条件と不在の条件での該遺伝子産物が媒介する応答を比較すること、又は供試細胞若しくは対照の細胞(すなわち、遺伝子産物を発現していない細胞)の遺伝子産物が媒介する応答を該化合物の存在と関連づけることによって評価することができる。
【0187】
核酸ライブラリー
本発明の方法は、核酸のライブラリーのソートに有用である。本明細書では、「ライブラリー」「集団(レパートリー)」及び「プール」という用語は、当業界で通常用いられている意味で用いており、核酸のライブラリーは遺伝子産物の集団をコードするというように用いる。一般的には、ライブラリーは核酸のプールから構築され、ソートを促進するような性質を有している。本発明を用いた核酸のライブラリーからの核酸の最初の選択では、大多数の場合、多数の核酸変異体のスクリーニングを必要とする。核酸のライブラリーは様々な方法で作ることができるが、そのようなものとしては下記のものが含まれる。
【0188】
天然の核酸のプールはゲノムDNA若しくはcDNAからクローニングすることができる(Sambrookら, (1989) 「分子クローニング:実験室マニュアル」"Molecular cloning:a laboratory manual", Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York);例えば、免疫した若しくは免疫していないドナーから得た抗体遺伝子のPCR増幅レパートリーによって作られたファージ抗体ライブラリーは、機能性抗体フラグメントの供与源として非常に有効なものであることが証明されている(Winterら, 1994, Annu. Rev. Immunol. 12, 433-55;Hoogenboom, H. R. (1997) 「高アフィニティー抗体を作成するためのライブラリー選択の方法の設計と最適化」"Designing and optimizing library selection strategies for generating high-affinity antibodies", Trends Biotechnol., 15, 62-70)。遺伝子のライブラリーはまた、遺伝子の全て(例えば、Smith, G. P. (1985) Science, 228, 1315-7; Parmley, S. F.及びSmith, G. P., (1988) Gene, 73, 305-18を参照せよ)若しくは一部(例えば、Lowmanら, (1991) Biochemistry, 30, 10832-8を参照せよ)、又は遺伝子のプール(例えば、Nissim, A., Hoogenboomら, (1994) Embo J., 13, 692-8を参照せよ)を、ランダム化した若しくはドープ(doped)合成オリゴヌクレオチドによってコードすることにより構築することもできる。ライブラリーはまた、ある核酸若しくは核酸のプール中に種々のin vivoの技法を用いてランダムに突然変異を導入することによって作ることもでき、そのような技法としては、大腸菌mutD5などの細菌の「突然変異導入株」を用いること(Liaoら, (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 576-80; Yamagishiら, (1990) Protein Eng., 3, 713-9; Lowら, (1996) J. Mol. Biol., 260, 359-68);Bリンパ球の抗体高度突然変異系を用いること(Yelamosら, (1995) Nature, 376, 225-9)が含まれる。ランダムな突然変異もin vivo及びin vitroの双方で化学的突然変異誘発物質、イオン化、若しくはUV照射によって(Friedbergら, 1995, 「DNA修復と突然変異導入」"DNA repair and mutagenesis", ASM Press, Washington D.C.を参照せよ)、又は突然変異導入性の塩基類似体の組み入れによって(Freese, 1959, J. Mol. Biol., 1, 87; Zaccoloら, (1996), J. Mol. Biol., 255, 589-603)、導入することができる。「ランダムな」突然変異はまた、in vitroでの重合の際、例えば変異性ポリメラーゼを用いることによって遺伝子内に導入することができる(Leungら, (1989) Technique, 1, 11-15)。
【0189】
さらに相同組換えをin vivoで(Kowalczykowskiら, (1994) Microbial Rev., 58,401-65)若しくはin vitroで(Stemmer, (1994) Nature, 370, 389-9; Stemmer, (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 10747-51)用いることによって多様性を導入することができる。
【0190】
物質
本明細書で用いる「物質」という用語は、限定はされないが、原子若しくは分子を含むものであり、その分子は無機若しくは有機のもの、生物学的エフェクター分子及び/又は生物学的エフェクター分子などの物質をコードしている核酸、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、ペプチド核酸(PNA)、ウイルス、ウイルス様粒子、ヌクレオチド、リボヌクレオチド、ヌクレオチドの合成類似体、リボヌクレオチドの合成類似体、修飾ヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、アミノ酸、アミノ酸類似体、修飾アミノ酸、修飾アミノ酸類似体、ステロイド、プロテオグリカン、脂質、脂肪酸、及び炭水化物とすることができる。ある物質は、溶液中若しくは懸濁液中(例えば、結晶、コロイド状、若しくはその他の粒子状)に存在させることができる。物質は、モノマー、ダイマー、オリゴマーなど、若しくは複合体の形態を取ることができる。
【0191】
ポリペプチド
本明細書で用いる「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、ポリマーであって、そのモノマーはアミノ酸であり、モノマー同士がペプチド若しくはジスルフィド結合を介して結合しているものを意味する。「ポリペプチド」とは、天然のアミノ酸鎖の完全長のもの、若しくは「その断片」、若しくは「ペプチド」を意味し、例えば、別のタンパク質、ペプチド、若しくはポリペプチドと、あるリガンドによって調節可能な様式で結合しているポリペプチドの選択された領域などを意味するか、又は、部分的に若しくはその全てが非天然であるようなアミノ酸ポリマー、又はその断片若しくはペプチドを意味する。従って「その断片」とは、完全長のポリペプチドの一部分、約8個から500個の長さのアミノ酸、好ましくは約8個から300個、より好ましくは約8個から200個、さらにいっそう好ましくは約10個から約50若しくは100個のアミノ酸の長さのものを意味する。「ペプチド」とは、10〜40個のアミノ酸の長さ、好ましくは10〜35個のアミノ酸の長さの短いアミノ酸配列を意味する。さらに、非天然アミノ酸、例えば、β−アラニン、フェニルグリシン、及びホモアルギニンを含むことができる。一般的に見かけるアミノ酸、それらは遺伝子によってコードされるものではないが、そのようなアミノ酸も本発明で用いることができる。本発明で用いられているアミノ酸はその全てがD−若しくはL−光学異性体のいずれかとすることができる。L−異性体が好ましい。さらに、その他のペプチド疑似体も、例えば本発明のポリペプチドのリンカー配列中などに有用である(Spatola, (1983), 「アミノ酸、ペプチド、及びタンパク質の化学と生化学」"Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins"中の記載, Weinstein編, Marcel Dekker, New York, p.267)。「ポリペプチド結合分子」とは、1つの分子、好ましくはポリペプチド、タンパク質、若しくはペプチドで、それは別のポリペプチドであって、タンパク質、若しくはペプチドと結合する能力があるものである。好ましくは、この結合能はリガンドによって調節可能なものである。
【0192】
本明細書で用いる「合成」という用語は、記載されたプロセス若しくは物質が自然界では通常は起こらないものを意味する。好ましくは、合成物質はin vitroの合成若しくは操作によって産生される物質と定義される。
【0193】
本明細書で用いる「分子」という用語は、原子、イオン、分子、巨大分子(例えばポリペプチド)、若しくはそのような物質の組み合わせのいずれかを意味する。「リガンド」という用語は「分子」という用語と相互に交換可能な形で用いることができる。本発明における分子は、溶液中で遊離の形とすることができ、又は部分的に若しくは完全に固定化することができる。分子は個別の物質として存在しているものとしてもよいし、又は他の分子と複合体化したものとすることができる。好ましくは、本発明の分子は、バクテリオファージ粒子の表面上にディスプレイされるポリペプチドを含んでいる。より好ましくは、本発明の分子には、バクテリオファージ粒子の外表面上のエンベロープタンパク質の必須部分として提示されているポリペプチドのライブラリーを含んでいる。ランダム化されたポリペプチドをコードするライブラリーの作製方法は当業界では既知であり、本発明に適用することができる。ランダム化は全体的若しくは部分的なものとすることができる。部分的ランダム化の場合には、選択されたコドンは好ましくはアミノ酸をコードするものであって停止コドンをコードするものではない。
【0194】
実施例
実施例1 Taqポリメラーゼ発現プラスミドの構築
TaqポリメラーゼのオープンリーディングフレームをPCRでサーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)ゲノムDNAからプライマー1及び2を用いて増幅し、XbaIとSalIで切断し、XbaIとSalIで切断したpASK75中に連結する(Skerra, A. 1994, Gene, 151, 131)。pASK75は、tetAプロモーター/オペレーターの転写制御のもとで大腸菌(E.coli)中での外来タンパク質の合成を指令する発現ベクターである。
【0195】
プライマー3、4を用いてインサートのあるクローンをスクリーニングし、活性のあるTaqポリメラーゼ(Taq pol)(下記参照)の発現をアッセイする。不活性なTaq pol変異体であるD785H/E786VはQuickchange突然変異誘発(Stratagene)を用いて構築する。変異が導入された残基は活性に決定的に重要なものである(Doublie, S.ら, 1998, Nature 391, 251; Kiefer, J. R.ら, 1998, Nature 391, 304)。この結果得られるクローンをプライマー3、5を用いたPCRスクリーニングで変異のあるものをスクリーニングし、その産物をPmlIで消化して調べる。変異のあるクローンを活性Taq polの発現についてアッセイする(下記参照)。
【0196】
実施例2 タンパク質の発現及び活性のアッセイ
形質転換したTG1細胞を2×TY 0.1mg/mLアンピシリン中で増殖させる。発現のために一晩培養した培養物を新鮮な2×TY培地中に1/100に希釈し、37℃でOD600=0.5となるまで増殖させる。タンパク質の発現は無水テトラサイクリンを終濃度が0.2μg/mLとなるように添加することによって誘導する。37℃でさらに4時間インキュベートした後、細胞を遠心して集め、一度洗い、同量の1×SuperTaqポリメラーゼバッファー(50mM KCl、10mM Tris−HCl(pH9.0)、0.1% Triton X−100、1.5mM MgCl)(HT Biotechnology Ltd., Cambridge, UK)に再懸濁する。
【0197】
洗浄した細胞をPCR反応混液に直接添加(30μLの反応混液あたり2μL)するが、その反応混液は、鋳型のプラスミド(20μg)、プライマー4及び5(各1μM)、dNTP(0.25mM)、1×SuperTaqポリメラーゼバッファーを含み、それに鉱物油を重層したものである。反応液を94℃で10分間インキュベートしてTaq polを細胞から放出させ、次いで熱サイクルを94℃(1分間)、55℃(1分間)、72℃(2分間)を1サイクルとして30サイクル行った。
【0198】
実施例3 増幅産物の乳化
反応液の乳化は下記のとおり行う。200μLのPCR反応混液(Taq発現プラスミド(200ng)、プライマー3及び4(各1μM)、dNTP(0.25mM)、Taqポリメラーゼ(10ユニット))を、2mL容の丸底生体試料凍結用バイアル瓶(biofreeze vial:Costar, Cambridge, MA)中に入れた油相(鉱物油(Sigma))に、4.5%(v/v)Span 80(Fluka)、0.4%(v/v)Tween 80(Sigma)、及び0.05%(v/v)Triton X−100の存在下で定速で撹拌(1000rpm)しつつ滴下した(12滴/分)。水相を完全に添加した後、撹拌をさらに4分間続ける。次いで乳化した混合物を0.5mL容の薄壁PCR用試験管に移し(100μL/管)、PCRを開始時に94℃で5分間インキュベートした後、94℃(1分間)、60℃(1分間)、72℃(3分間)を1サイクルとして25サイクル行う。反応混液は、2倍量のエーテルを添加し、ボルテックスにかけ、2分間遠心した後、エーテル相を除去することにより回収する。増幅産物はアガロースゲルでのゲル電気泳動を標準的な方法を用いて行うことによって可視化する(例えば、J. Sambrook, E. F. Fritsch, 及びT. Maniatis, 1989 「分子クローニング:実験室マニュアル」"Molecular Cloning: A Laboratory Manual", 第2版、第1−3巻, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照せよ)。
【0199】
Taqポリメラーゼを発現している細胞の全体を乳化するために、プロトコールを次のように改変する:反応混液中にTaq発現プラスミド及びTaqポリメラーゼを入れず、その替わりに5×10の誘導された大腸菌TG1細胞(発現されたTaqポリメラーゼ並びに発現プラスミドを含んでいる)を、添加剤のテトラメチル塩化アンモニウム(50μM)、及びRNAase(0.05% w/v,Roche, UK)と共に添加する。PCRのサイクル数も20に減らす。
【0200】
実施例4 完全長の野生型Taq遺伝子の自己複製
自己複製の間の遺伝子型−表現型の関連性を調べるために、野生型Taqポリメラーゼ(wtTaq)又は活性がほとんどない(このバッファーの条件下においての活性)Stoffel断片(sfTaq)(F. C. Lawyerら, PCR Methods Appl. 2, 275-87 (1993))を発現する細胞を1:1の比で混合し、次いでそれらを溶液中若しくは乳液中でのCSRにかけた。溶液中では、より小さなsfTaqが優先的に増幅される。しかし、乳液中では、ほぼ全てにおいて完全長wtTaq遺伝子の自己複製が起こる(図3B)。細菌の細胞数は乳液区画の大多数が細胞を1個のみ含有しているように調整する。しかし、細胞は各区画にランダムに分布しているので、区画のうちの少数のものが2個以上の細胞を含有してしまうことは避けられない。区画が鋳型DNA(図3A)を交換するとは考えられないので、乳液中の少量のsfTaq増幅はおそらくこれらの区画からのものであろう。これらの存在量は低いことは明らかなので、選択に影響を及ぼすとは考えない。事実、試験的に行った選択では、wtTaqクローンを10倍過剰の不活性Taq変異体から単離するには1ラウンドのCSRで十分である。
【0201】
変異性(エラーを起こしやすい)PCRを用いてランダムなTaq変異体の2つのレパートリーを調製した(L1(J. P. Vartanian, M. Henry, S. Wain-Hobson, Nucleic Acid Res. 24, 2627-2631, 1996))及びL2(M. Zaccolo, E. Gherardi, J. Mol. Biol. 285, 775-83, 1999)。PCRで調べるとL1若しくはL2クローンのうちわずかに1〜5%に活性があるにすぎないが、標準的PCR条件下でポリメラーゼ活性についてCSRでの選択を1ラウンド行うと、活性のあるクローンの比率は81%(L1*)及び77%(L2*)に増加する。
【0202】
実施例5 突然変異誘発PCR
Taqポリメラーゼ遺伝子の変異体を、変異性PCRを用いた2種類の異なる方法で構築する。
【0203】
第1の方法はヌクレオシド類似体であるdPTP及びdLTPを利用する(Zaccoloら, (1996) J. Mol. Biol. 255, 589-603)。簡潔に記せば、50mM KCl、10mM Tris−HCl(pH9.0)、0.1% Triton X−100, 2mM MgCl、dNTP(500μM)、dPTP(500μM)、dLTP(500μM)、1pM 鋳型DNA、プライマー8及び9(各1μM)、Taqポリメラーゼ(2.5ユニット)を含む総液量50μLの反応液で3サイクルのPCR反応を行い、その熱サイクルは、94℃(1分間)、55℃(1分間)、72℃(5分間)とする。次いで2μLのアリコートを、50mM KCl、10mM Tris−HCl(pH9.0)、0.1% Triton X−100, 1.5mM MgCl、dNTP(250μM)、プライマー6及び7(各1μM)、Taqポリメラーゼ(2.5ユニット)を含む100μLの標準PCR反応液中に移す。この反応液を94℃(30秒間)、55℃(30秒間)、72℃(4分間)を1サイクルとして30サイクル行う。増幅産物をゲルで精製し、上述のとおりpASK75中にクローニングしライブラリーL2を作る。
【0204】
第2の方法は、PCR中に変異(エラー)を導入するために偏りのあるdNTPとMnClの組み合わせを利用する。反応混液は50mM KCl、10mM Tris−HCl(pH9.0)、0.1% Triton X−100, 2.5mM MgCl、0.3mM MnCl、1pM 鋳型DNA、dTTP、dCTP、dGTP(全て1mM)、dATP(100μM)、プライマー8及び9(各1μM)、及びTaqポリメラーゼ(2.5ユニット)を含む。この反応は94℃(30秒間)、55℃(30秒間)、72℃(4分間)を1サイクルとして30サイクル行い、増幅産物は上述のとおりクローニングしてライブラリーL1を作る。
【0205】
実施例6 選択プロトコール
活性を有するポリメラーゼを選択するために、上述のとおり乳液中でPCR反応を行うが、プライマーは8、9を用いる。熱安定性の増大した変異体の選択には、乳液を上述のとおりサイクルにかける前に99℃で7分間までプレインキュベートする。阻害物質のヘパリンの存在下で活性の増大を示す変異体の選択には、ヘパリンを0.08及び0.16ユニット/μLの濃度となるように添加し、上述のとおりサイクルを行う。詳細なプロトコールは下記の実施例で示す。
【0206】
活性のあるポリメラーゼを含有している区画から得た増幅産物を、前述のとおり乳液からエーテルで抽出し、次いで標準的なフェノール−クロロホルム抽出で精製する。次いで0.5倍量のPEG/MgCl溶液(30% v/v PEG800、30μM MgCl)を添加し、混合後、13,000RPMで10分間、室温で遠心する。その上清(取り込まれていないプライマーとdNTPを含有している)を廃棄し、ペレットをTE中に再懸濁する。次いで、増幅産物をさらにスピンカラム(Qiagen)で精製してプライマーを完全に除去する。次いでこれらの産物をプライマー6、7(これらはプライマー8及び9の外側に配置させたもの)を用いて標準的なPCR反応で再増幅するが、サイクル数は例外で、20サイクルのみとする。再増幅産物をゲルで精製しpASK75中に上述のとおり再度クローニングする。形質転換体をプレートに蒔き、コロニーを下記のとおりスクリーニングする。その残りを書き取り2×TY/0.1mg/mLのアンピシリン中に入れ、OD600=0.1となるまで希釈し、選択プロトコールを反復して行うために上述のとおり増殖/誘導を行う。
【0207】
実施例7 コロニースクリーニングプロトコール
コロニーを取り96ウエルの培養ディッシュ(Costar)中に入れ、上述のとおり発現させるために増殖と誘導を行う。スクリーニングには、細胞2μLを30μLのPCR反応液中に入れ、プライマー4及び5を用いて96ウエルのPCRプレート(Costar)中で上述のとおり活性を試験する。熱安定性の増大した選択体のスクリーニングのために温度勾配によるブロックを用いる。反応液を94.5〜99℃の範囲の温度で5分間プレインキュベートした後、プライマー4及び5、又はプライマー3及び4を用いて上述のとおり標準的なサイクルを行う。ヘパリンと共存しうるポリメラーゼのスクリーニングには、96ウエルのフォーマットのコロニーPCRスクリーニングの際にヘパリンを0.1ユニット/30μL添加する。次いで、活性のあるポリメラーゼをヘパリン濃度0.007〜3.75ユニット/30μLの範囲でアッセイし、野生型と比較する。
【0208】
実施例8 ポリメラーゼの触媒活性のアッセイ
cat及びK(dTTP)をホモポリマーの基質を用いて測定する(Poleskyら, (1990) J. Biol. Chem. 265:14579-91)。反応混液(25μL)の最終組成は、1×SuperTaqバッファー(HT Biotech)、poly(dA).オリゴdT(500nM、Pharmacia)、及び様々な濃度の[α−32P]dTTP(約0.01Ci/ミリモル)を含む。反応は1×SuperTaqバッファー中の5μLの酵素を添加することによって開始し、酵素の最終濃度は1−5nMの間とする。反応液を72℃で4分間インキュベートし、実施例14のとおりEDTAで反応停止し、24mmのDE−81フィルターにアプライする。フィルターを洗い、活性を実施例14のとおり測定する。速度論的パラメーターは標準的なLineweaver−Burkeプロットを用いて決定する。ホモポリマー基質を50%減らした実験ではポリメラーゼによるdTTPの取込みに大きな差は見られず、このことは、基質が十分過剰に存在しておりここで用いる速度論的分析プロトコールが有効であることを示している。
【0209】
実施例9 乳液中の水性区画内での標準的なPCR
乳液中に存在する水性区画内での条件が触媒作用を許容する条件であるか確認するために、標準的な反応混液を乳化しPCRを行う。このことによって鋳型となるプラスミド中に存在する正しいサイズのTaqポリメラーゼ遺伝子が増幅され、その収率は標準的なアガロースゲル電気泳動を行って可視化するには十分である。
【0210】
実施例10 Taqポリメラーゼを発現する大腸菌の乳化と、その後のポリメラーゼ遺伝子増幅のためのPCR
Taqポリメラーゼを発現する大腸菌細胞を乳化し、発現ベクター中のポリメラーゼカセットに隣接するプライマーを用いてPCRを行う。5×10個までの細胞(600μLの総容量あたり)の乳化は、アガロースゲル電気泳動で調べたときに認識しうる産物の形成をもたらす。従って、細胞は、発現されたTaqポリメラーゼによるポリメラーゼ遺伝子の自己増幅に適した条件を有する水性区画内に隔離(分割)される。類似の乳液は1mLあたり約1×1010個の区画を含むものと推定される(Tawfik, D.及びGriffiths, A.D. (1998) Nature Biotech., 16, 652)。乳化しうる細胞数がこのように多数であることによって、ランダム化したタンパク質の多様なレパートリーからの選択が可能となる。
【0211】
実施例11 乳液中での遺伝子型−表現型関連性の維持
選択法が有効となるためには、乳液中の水性区画の大多数は1個の細胞のみを有するものとすべきであり、熱サイクルの間に区画の状態が完全に保たれるようにすべきである。このことは、その乳液中に、競合する鋳型(サイズの小ささによって識別しうるものとする)を有する細胞を含めることによって調べる。
【0212】
Taqポリメラーゼを発現する大腸菌をStoffel断片を発現する大腸菌と1対1の比率で一緒に乳化する。このStoffel断片は乳液中で用いられている条件下ではほとんど活性を持たず、従ってTaqの自己増幅に用いたものと同じプライマー対によるその断片の発現カセットの増幅は、活性のあるTaqポリメラーゼを発現する1つの細胞での同時区画化がなされた結果であるか、又は区画間のTaqポリメラーゼの漏出の結果である。PCRの後大多数の産物が活性Taqポリメラーゼ遺伝子に対応したものとわかれば、1つの耐久性の区画あたり1個の細胞があるという前提が確認されること意味する(図2参照、Ghadessyら, (2001), PNAS, 98, 4552)。
【0213】
実施例12 不活性なTaqポリメラーゼに対して活性なものの試験的選択
上記の方法がほとんど存在しないと考えられる変異体を選択しうることを示すために、活性型を発現している細胞に対して不活性なポリメラーゼを発現している細胞を10倍過剰で用いて一緒に乳化する。PCR及び増幅産物のクローニングの後、96ウエルのフォーマットを用いて単一発現スクリーニングを行うと、活性ポリメラーゼを発現している細胞は10倍の濃縮が認められる。
【0214】
実施例13 熱安定性の増大したTaqポリメラーゼ変異体の定方向進化
熱安定性の増大したポリメラーゼは利用上重要である可能性があり、すなわち熱サイクルの間の活性の喪失が低減され、GCに富む鋳型の増幅を行う際に変性温度をより高く設定できる。従って、本発明者はまず、本発明の選択方法を熱安定性の増大したTaq変異体を得るための定方向進化に用い、あらかじめ選択したライブラリー(L1*、L2*)から開始し、次第に温度と最初の熱変性の時間を増加させた。3ラウンドの選択の後、本発明者はT8(表1)を単離したが、これは野生型Taq酵素で既に熱安定性であるもの(表2)と比較して97.5℃で11倍長い半減期を有するTaqクローンであり、T8はPol Iファミリーのうち記録されている限り最も熱安定性の高いメンバーとなった(クローンはPCRアッセイでスクリーニングし著しいものを選択した。簡潔に記せば、誘導した細胞の2μLを30μLのPCR反応混液中に添加し、0.4kbの断片の増幅を選択条件下(例えばヘパリン量の増加)でアッセイする。精製したHisを、標識した野生型及び変異型Taqクローンの熱安定性及びヘパリンに対する抵抗性について、活性化したサケ精子DNA及び規準化した酵素濃度を用いて文献(Lawyerら, PCR Methods Appl. 2, 275-287(1993); Lawyerら, J. Biol. Chem. 264, 6427-37(1989))に示されているとおり測定する)。T8(及びより熱安定性の低い変異体の大多数)に熱安定性を付与する変異は、5’−3’エキソヌクレアーゼドメイン中にまとまって存在する(表1)。事実、該エキソヌクレアーゼドメインを欠損するTaqポリメラーゼの末端切断型変異体(F. C. Lawyerら, (1993) PCR Methods Appl. 2, 275-287; W. M. Barnes, (1992) Gene, 112, 29-35)は熱安定性の改善を示し、このことはこの変異体が主なポリメラーゼドメインよりも熱安定性が低いことを示唆している。T8における安定化変異によってエキソヌクレアーゼ活性が低減する(約5分の1に低減)ので、エキソヌクレアーゼドメインの熱安定性がより低いことにはおそらく機能的な重要性があると考えられる例えば、より大きな自由度(フレキシビリティ)の必要性を反映している、など)(5’−3’エキソヌクレアーゼ活性は、1xTaqバッファー中で0.25mM dNTP及び5’末端をCy5(Amersham)で標識した22量体オリゴヌクレオチドを用いること以外は、基本的には(Y. Xuら, J. Mol. Biol. 268, 284-302 (1997))に記載の方法で測定する。定常状態の速度論の解析はホモポリマー基質であるポリ(dA)200(Pharmacia)及びオリゴ(dT)40プライマーを50℃で(少なくとも低温で)用いて、(A. H. Polesky, T. A. Steitz, N. D. Grindley, C. M. Joyce, J. Biol. Chem. 265, 14579-91(1990))に記載のとおり行った)。
【0215】
【表1】
Figure 0005009481
【0216】
変異性PCRを用いてTaqポリメラーゼ変異体の2つのライブラリーを作製し、大腸菌(E.coli)中で発現させ(ライブラリーL1、8x10クローン、ライブラリーL2、2x10クローン;実施例5を参照せよ)、前述のとおり乳化する。第1ラウンドのPCRは上述の標準的なTaqポリメラーゼ熱サイクルプロフィールを用いて活性のある変異体が濃縮されるように行う。濃縮化された増幅産物を精製し、再クローニングして活性を有する変異体を含むライブラリーを作製する(L1*、L2*;各ライブラリーは約10個のクローンを含む)。L1*とL2*ライブラリーのスクリーニングでは、ランダムに選択したクローンのうち、それぞれ81%と77%が活性を有するものとしてスクリーニングされた。
【0217】
L1*とL2*ライブラリーを次のラウンドのPCRの際に通常のPCRサイクルの前に99℃で6若しくは7分間プレインキュベートして選択圧をかける。これらの条件下では、野生型Taqポリメラーゼはその活性を全て失う。増幅産物を上述のとおり濃縮及びクローニングし、96ウエルの発現スクリーニングを用いて正常なPCR条件下で活性を有する変異体を選択する。これによってL2*ライブラリーから7クローン、L1*ライブラリーから10クローンが得られた。次いでこれらを、標準的なサイクルにかける前に94.5〜99℃で5分間プレインキュベートし、温度勾配PCRブロックを用いて熱安定性の増大したものをスクリーニングする。ゲル電気泳動で判定すると、各ライブラリーの5個のクローンが野生型と比較して熱安定性の増大を示す。これらの変異体は99℃で5分間のプレインキュベーションを行った後でも320bpの標的を効率的に増幅することができる。野生型の酵素は97℃を超える温度で5分間以上プレインキュベートすると活性が認められなくなる。
【0218】
実施例14 ポリメラーゼの熱安定性のアッセイ
野生型及び精製His標識ポリメラーゼの熱不活化アッセイを標準的な50μLのPCR混合液中で行い、その混合液は1×SuperTaqバッファー(HT Biotech)、0.5ngプラスミドDNA鋳型、各200μMのdATP、dTTP、及びdGTP、プライマー3及び4(10μM)、並びにポリメラーゼ(約5nM)を含む。反応混液に油を重層し97.5℃でインキュベートし、5μLのアリコートを取り、一定時間後氷上で保管する。これらのアリコートを50μLの活性反応バッファー中でアッセイするが、そのバッファーは25mM N−トリス[ヒドロキシメチル]−3−アミノ−プロパンスルホン酸(TAPS)(pH9.5)、1mM β−メルカプトエタノール、2mM MgCl、各200μMのdATP、dTTP、及びdGTP、100μM[α−32P]dCTP(0.05Ci/ミリモル)、並びに250μg/mL活性化サケ精子DNA鋳型を含む。反応液を72℃で10分間インキュベートし、EDTA(最終濃度25mM)を添加して反応を停止させる。反応液量を溶液S(2mM EDTA、50μg/mLの切断されたサケ精子DNA)を用いて500μLとし、500μLの20%TCA(v/v)/2%ピロリン酸ナトリウム(v/v)を添加する。氷上で20分間インキュベートした後、反応液を24mmのGF/Cフィルター(Whatman)にアプライする。取り込まれなかったヌクレオチドを、5%TCA(v/v)、2% ピロリン酸ナトリウム(v/v)で3回洗った後、96%エタノール(v/v)で2回洗う。フィルターを乾燥させて、Ecoscint A(National Diagnostics)を含有するシンチレーションバイアル瓶に入れてカウントする。このアッセイは既知量の標識dCTP溶液を用いて(洗浄過程は省いて)較正する。
【0219】
実施例15 阻害物質であるヘパリンの存在下で活性の増大を示すTaqポリメラーゼ変異体の定方向進化
上述のとおり、本発明の方法はまた、酵素活性の阻害物質に対する抵抗性を進化させるために用いることもできる。ヘパリンは広く用いられている抗凝固剤であるが、ポリメラーゼ活性の強力な阻害物質でもあり、臨床の場で採取された血液サンプルからPCR増幅を行うことが困難になる(J. Satsangi, D. P. Jewell, K. Welsh, M. Bunce, J. I. Bell, Lancet 343, 1509-10 (1994))。 ヘパリンは血液サンプルから種々の方法で除去することはできるが、それらの方法は高価でかつ時間がかかるものである。従って、ヘパリンと共存しうるポリメラーゼが利用できれば、治療上有意義なアンプリコンの特徴の検討が大いに改善され、コストがかかりすぎると考えられる、サンプルのヘパリナーゼ処理(Taylor, A. C. (1997) Mol. Ecol. 6, 383)が不要なものとなるであろう。
【0220】
L1*及びL2*ライブラリーを合わせ、1μLあたり0.16ユニットまでのヘパリンが存在しても活性のあるポリメラーゼを乳液中で選択する。1回のラウンドの後、0.1ユニット/30μL版応益を取り込んだ96ウエルのPCRスクリーニングで5個のクローンが活性を示すのに対し、野生型では活性を示さない。力価測定を行うとこれらのクローンのうち4個は野生型を阻害するヘパリンの量の4倍までのヘパリンの量が存在しても活性を示す(0.06ユニット/30μL 対 0.015ユニット/30μL)。残りの1個のクローンでは野生型を阻害するヘパリンの量の8倍までの量が存在しても活性を示す(0.12ユニット/30μL 対 0.015ユニット/30μL)。
【0221】
ヘパリンの存在量を増加させつつ選択を行って、本発明者はH15というクローンを単離したが、これはヘパリンの阻害濃度の130倍までの濃度においてもPCRにおいて機能を有するTaq変異体であった(表2)。興味深いことに、ヘパリン抵抗性の付与されるような変異もまとまって存在し、この場合にはポリメラーゼのフィンガー(finger)サブドメイン及びサム(thumb)サブドメインの基部で、2本鎖DNA結合に関与する領域である。事実、最近の高分解能Taq−DNA複合体構造解析(Y. Li, S. Korolev, G. Waksman, EMBO J. 17, 7514-25 (1998))から判断すると、H15中で変異している6個の残基のうちの4個(K540、D578、N583、M747)は、鋳型若しくは産物の鎖のいずれかと直接接触している(図7に示すとおりである)。H15の変異は2本鎖DNAに対する親和性に関する限りは、中性(すなわち相互に補い合う)ものと考えられる(一方おそらくヘパリンに対する親和性は低下しているであろう)(表2)(DNAのKはBIAcoreを用いて測定する。簡潔に記せば、(M. Astatke, N. D. Grindley, C. M. Joyce, J. Biol. Chem. 270, 1945-54 (1995))で用いられている68量体を5’末端の位置でビオチニル化し、SAセンサーチップに固定し、ポリメラーゼの結合を1×Taqバッファー(上記参照)中で20℃で測定する。相対的K値は鋳型の量を低減させつつPCRランキングアッセイで推定する)。ヘパリンによる阻害の分子的原理の詳細は未知であるが、本発明者の結果はポリメラーゼの活性部位中でのDNAとヘパリンの結合部位の重複(及びおそらくは相互排除)を強く示唆するものであり、このことは、ヘパリンが、活性部位への結合に対して2本鎖DNAを模倣し競合することによってその阻害作用を現すという考え方を支持するものである。鋳型DNAが過剰である条件下ではヘパリンによる阻害が顕著に低減されるとの本発明者の観察結果は、この仮説と一致していると考えられる(次の事項を参照せよ(クローンはPCRアッセイでスクリーニングし分類・評価する(ランク付けする)。簡潔に記せば、誘導した細胞の2μLを30μLのPCR混液中に添加し、0.4kbの断片の増幅を選択条件下(例えばヘパリン量の増加)でアッセイする。精製したHis標識した野生型及び変異型Taqクローンの熱安定性及びヘパリンに対する抵抗性について、活性化したサケ精子DNA及び規準化した酵素濃度を用いて文献(F.C. Lawyerら, PCR Methods Appl. 2, 275-287(1993); F.C. Lawyerら, J. Biol. Chem. 264, 6427-37(1989))に示されているとおり測定する。表2)。
【0222】
【表2】
Figure 0005009481
【0223】
実施例16 乳液中での選択による鋳型の進化
in vitro複製実験における古典的な結論は、鋳型配列のより迅速な複製への適応である(S. Spiegelman, Q. Rev. Biophys. 4, 213-253 (1971))。事実、本発明者もサイレント変異による鋳型の進化を観察している。コード配列の変異(ATからGC対GCからAT/29対16)とは異なり、非コード配列の変異はGC含量の減少に対する驚くべき偏り(ATからGC対GCからAT/0対42)を示し、一般的にはこれは鎖の分離を起こりやすくし、2次構造を不安定化させることによってより効率的な複製を促進するものと考えられている。適応しているものを選択することの他に、本発明の方法は適応能についての選択も行うことができる。すなわち、ポリメラーゼは、最適でおそらくはより高率の、自己突然変異の方向へと進化する可能性がある(M. Eigen, Naturwissenschaften 58, 465-523 (1971))。事実、突然変異誘発遺伝子は無性の細菌集団中で適応ストレス下で自発的に生じうる(F. Taddeiら, Nature 387, 700-2 (1997); P. D. Sniegowski, P. J. Gerrish, R. E. Lenski, Nature 387, 703-5 (1997))。これと類似しているため、本発明の方法は、より変異を起こしやすく従ってより早い適応進化を起こしうるポリメラーゼ変異体に都合のよいものと主張可能である。しかし、選択されたポリメラーゼのいずれもが変異率の増大は示さなかった(表2)。本発明の方法のサイクルの際に組換えの排除と突然変異の負荷(load)の低減を行うと、より変異を起こしやすい酵素に対する選択圧を増大させることができる。
【0224】
実施例17 ポリメラーゼのヘパリン抵抗性についてのアッセイ
ポリメラーゼのヘパリン抵抗性は熱安定性についてのアッセイと類似の方法を用いてアッセイする。ヘパリンを活性バッファー中に連続希釈し(0−320ユニット/45μL)、上述の標準的なPCR混液中に5μLの酵素を添加する。反応液をインキュベートし、取込みは上述のとおりアッセイする。
【0225】
実施例18 3’のミスマッチの塩基からの伸長能が増大しているTaq変異体の選択
用いるプライマーはプライマー9(LMB388ba5WA)及びプライマー10(8fo2WC)である。このプライマーの組み合わせは3’プリン−プリンミスマッチ(A−G)、及び3’ピリミジン−ピリミジンミスマッチ(C−C)を有するポリメラーゼ変異体を提供する。これらはTaqポリメラーゼで最も抵抗性の低いミスマッチであり(Huangら, 1992, Nucleic Acids Res. 20(17):4567-73)、伸長も乏しいものである。
【0226】
選択プロトコールは、乳液中でこれら2つのプライマーが用いられること以外は本質的には前述のものと同じである。伸長時間も8分間に延長される。選択のラウンドを2回行った後、PCRランキングアッセイによって判定するときミスマッチのところからの伸長が最大16倍で増大を示す7個のクローンを単離し(実施例2を参照せよ:プライマー5及び11使用)、通常のプライマー対を用いて活性を標準化する。次いでこれらのクローンをシャフリングして元のL1*とL2*ライブラリーに野生型Taqと共に戻し、CSR反応の際のサイクル数をより少数(10)とし、選択プロセスを反復する。この選択のラウンドによって多数のクローンが得られ、そのうちで最良のものはミスマッチからの伸長においてプライマー5及び11を用いてのPCR(実施例2参照)で判定するとき32倍までの増大が示された。
【0227】
Taqポリメラーゼによる正しくない塩基対の取込みは、ある種のミスマッチ(上記参照)がTaqによる伸長がうまく行われないので、DNA合成のプロセスを失速させる。従って、Taqポリメラーゼはそれ自体単独では大きな(>6Kb)鋳型の増幅には用いることができない(Barnes)。この問題点はTaqに3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ(例えばPfuポリメラーゼ)を補うことによって克服することができる。このポリメラーゼは不正確に取り込まれた塩基を除去しTaqによるDNA合成を続行させるものである。従って、上述のクローンをλDNA鋳型からの大きなDNA断片(長距離PCR)の増幅能について調べ、不正確な塩基の取込みが起こってもDNA合成の失速は起こらないことが予測される。プライマー12(LBA23)及び13(LFO46)(各1μM)を、3ngのλDNA(New England Biolabs)、dNTP(0.2mM)、1×PCRバッファー(HT Biotech)を含有するPCR反応液50μL中で用い、クローンM1は2ステップの増幅サイクル(94℃15秒間;68℃25秒間)を20回反復して用いて23Kb断片を増幅することができる。野生型ポリメラーゼは同じ反応バッファーを用いた場合には13Kbから先へ産物を伸長させることができない。市販のTaq(Perkin Elmer)はその製造者が供給しているバッファーを用いると6Kbより先に伸長できなかった。
【0228】
実施例19 自己持続性配列複製を用いる選択(3SR)
3SRの乳液中内での実施可能性を証明するために、Taqポリメラーゼ遺伝子をまず親のプラスミドから、T7 RNAポリメラーゼプロモーターをPCR産物中に取り込むように設計されたフォワードプライマーを用いて、PCRで増幅させる(実施例1参照)。3SR反応混液(改変されたTaq遺伝子(50mg)、180ユニットのT7 DNAポリメラーゼ(USB)、63ユニットの逆転写酵素(HT Biotech)、rNTP(12.5mM)、dNTP(1mM)、MgCl(10mM)、プライマーTaqba2T7(プライマー12:125ピコモル)、プライマー88fo2(プライマー4;125ピコモル)、25mM Tris−HCl(pH8.3)、50mM KCl、及び2.0mM DTTを含む)250μLを調製する。これの200μLを標準的なプロトコールを用いて乳化する。室温で長時間インキュベーションを行った後、標準的なゲル電気泳動で判定した場合に、乳液中でのTaq遺伝子(モデルとなる遺伝子サイズを示している)の増幅が起こっていることが認められる。
【0229】
本発明の方法の範囲をさらに拡大するために、この3SR反応をin vitro転写/翻訳抽出物(EcoPro、Novagen)中で行う。不活性なTaq遺伝子(実施例1参照)をプライマー2(TaqfoSal)及び12(Taqba2T7)を用いて親のプラスミドから増幅する。100ng(約1×1010コピー)を添加して水相を100μLとするが、この水相は、EcoPro抽出物(70μL)、メチオニン(4μL)、逆転写酵素(84ユニット、HT Biotech)、プライマー12(Taqba2T7、2μM)、プライマー13(TaqfoLMB2、2μM)、dNTP(250μM)を含む。その水相を400μLの油相中に標準的なプロトコールを用いて乳化する。37℃で一晩インキュベートした後その乳液を標準的なプロトコールを用いて抽出し、水相をさらにPCR精製カラム(Qiagen)を用いて精製する。カラムの溶出液5μLを2μLのExoZap試薬(Stratagene)で処理してプライマーを完全に除去する。3SRによって乳液中に産生されたDNAは、2μLの処理済みのカラム溶出液を用いて回収(rescue)するが、そのこと以外は標準的な50μLPCR反応を20サイクルの増幅及びプライマー6(LMB、ref2)及び12(Taqba2T7)を用いて行う。産物をアガロースゲル電気泳動を用いて可視化すると、バックグラウンド(逆転写酵素を乳液中での3SR反応から省いた対照の反応)と比較して、正しいサイズのバンドがより濃く認められる。従って、この3SR反応を転写/翻訳抽出物で進めることができ、それによって水性区画内で発現される物質の定方向進化が可能となる。
【0230】
WT Taqポリメラーゼは逆転写酵素の活性を制限する(Perlerら, (1996) Adv. Protein Chem. 48, 377-435)。また、逆転写酵素(例えばHIV逆転写酵素、これは逆転写酵素とポリメラーゼの双方の活性を有する)は、その他のポリメラーゼよりもかなり変異を起こしやすい。このことは、より変化を起こしやすいポリメラーゼ(同種のものでない基質に対する許容性が増大していることが明らかな場合)は、逆転写酵素活性の増大を示すのではないかという可能性を提示する。Taq変異体M1、M4、並びに不活性の変異体を親のプラスミドからプライマー12(Taqba2T7)及び2(TaqfoSal)を用いて増幅し、3SR反応を転写/翻訳抽出物(Novagen)中で、逆転写酵素を外部から添加しなかったことを除いては上述のとおり行う。対照の反応では、反応混液からメチオニンを省く。37℃で3時間インキュベートした後、その反応液を上述のとおり処理し、PCRをプライマー6と12のプライマー対を用いて行って3SR反応の間に合成された産物を回収する。産物をアガロースゲル電気泳動で可視化すると、対照の反応と比較して、試験したクローンのうち、クローンM4は、正しいサイズのバンドをより濃く示した。従って、クローンM4はある程度の逆転写酵素活性を持つものと考えられる。この結果は、in vitroで機能的な活性を示すレプリカーゼを発現することができることを示している。区画化による選択と組み合わせた場合には、新規のレプリカーゼを進化させて得ることができると考えられる。
【0231】
レプリカーゼ活性を改変する物質の選択
実施例19及び下記の実施例は、最終産物がレプリカーゼの基質であるような代謝経路に関与する酵素の選択に、本発明の方法をどのように用いることができるかを説明したものである。これらの実施例は、ヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDPキナーゼ)の選択方法を示しており、この酵素はATPからデオキシヌクレオシド二リン酸へリン酸基を転移させてデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)を生成する反応を触媒する。ここではこの選択可能な酵素(NDK)は、Taqポリメラーゼの基質を提供してそれをコードしている遺伝子を増幅する。この選択方法は、区画化されたレプリカーゼの自己複製(CSR、Ghadessy及びHolliger)とは異なり、その複製は関連したプロセスであり、レプリカーゼ自体ではない酵素(核酸及びタンパク質)の選択を可能にする。NDKを発現する(及び発現ベクター上にその遺伝子を含んでいる)細菌をその基質(この場合、dNDP及びATP)並びにその増幅を促進するために必要なその他の試薬(Taqポリメラーゼ、ndk遺伝子に特異的なプライマー、及びバッファー)と共に一緒に乳化する。W/O型乳液中での区画化によって個々のライブラリーの変異体の弁別が行われる。活性のあるクローンは、Taqポリメラーゼがndk遺伝子の増幅に必要とするdNTPを供給する。活性の増大した変異体は、それ自体の増幅のためにより多量の基質を供給するので、選択後のコピー数は、ポリメラーゼ活性の制約の範囲内で酵素活性と相関する。ポリメラーゼ活性に必要なdNTPの最小必要量からさらに選択圧が生じるので、触媒活性の増大したクローンは活性がほとんどない変異体を犠牲にして優先的に増幅される(選択はkcat並びにKmに関して行われる)。
【0232】
ポリメラーゼ反応に材料を与えるような産物をもたらす酵素を進化させうることを本発明者が示すことによって、やがては、1つの酵素の産物が次の酵素の基質であるような経路を通じて関連性のある多数の酵素を同時に進化させうることが期待される。多様性は2個以上の遺伝子に導入しうるであろうし、両方の遺伝子を同じ発現宿主中でプラスミド又はファージ上で共形質転換させうるであろう。非天然の基質の合成及びその後のそれらのDNA中への取込みについての選択を可能とする、協調的酵素系を開発することが望まれる。
【0233】
実施例20 細菌細胞中でのNDPキナーゼの発現の誘導
EcoRI/HindIII制限酵素切断断片とミクソコッカス・キサンタス(Myxococcus Xanthus)から得たヌクレオシド二リン酸キナーゼのオープンリーディングフレームとを含むpUC19発現プラスミドをクローニングする。プラスミドは一晩培養することによって調製し、大腸菌QL1387のndk−、pykA−、pykF−株中に形質転換する。QL1387/pUC19ndkの一晩培養物を、クロラムフェニコール(終濃度10μg/mL)、アンピシリン(終濃度100μg/mL)、及びブドウ糖(2%)の存在下で14−18時間増殖させる。この一晩培養した培養物を、(2×TY,10μg/mLクロラムフェニコール、100μg/mLアンピシリン、及び0.1%ブドウ糖)中に1:100に希釈する。細胞をO.D.(600nm)が0.4となるまで増殖させ、IPTG(終濃度1mM)を用いて37℃で4時間誘導させる。タンパク質を誘導させた後、細胞をSuperTaqバッファー(10mM tris−HCl pH9,50mM KCl,0.1% TritonX−100,1.5mM MgCl,HT Biotechnology)で1回洗い、同じバッファーの1/10容量に再懸濁する。細胞数は、分光学的分析でO.D.600が0.1である場合に1×10細胞/mLとする近似値で定量する。
【0234】
実施例21 乳液中の水性区画内でのリン酸基転移反応
Taqバッファー中でデオキシヌクレオシド二リン酸がNDPキナーゼによってリン酸化されうるか確認するために、標準的なPCR反応をdNTPの替わりにdNDP及びリン酸分子ドナーのATPを用いて行う。前の実施例で述べたようにヌクレオシド二リン酸キナーゼは大腸菌QL1387(大腸菌のndk及びピルビン酸キナーゼ欠損株)から発現される。細胞をPCR反応混液と混合する。
【0235】
洗浄した細胞を、SuperTaqバッファー、0.5μMプライマー、各100μMのdNDP、400μMのATP、SuperTaqポリメラーゼ(終濃度0.1ユニット/μL、HT Biotechnology)を含有するPCR反応混液に添加する(終濃度 約8e5細胞/μL)。
【0236】
65℃で10分間処理して細胞を破裂させた後、反応混液を37℃で10分間インキュベートし、熱サイクルをかけ(94℃15秒間、55℃30秒間、72℃1分30秒間を1サイクルとして15サイクル)、増幅産物を標準的な1.5%アガロース/TBEゲルを臭化エチジウム(Sambrook)で染色して可視化する。この実験の結果は、発現されたNDPキナーゼがdNTPをリン酸化してTaqポリメラーゼにndk遺伝子のPCR増幅のための基質を提供できることを示している。
【0237】
この実験を、上述のように鉱油及び界面活性剤と共にこの反応混液を乳化するステップをさらに行って繰り返す。NDPキナーゼが乳液の水性区画内で活性を有することを確認する。
【0238】
実施例22 乳化によるNDK変異体の区画化
オリジナルの乳液混合物は、小分子を熱サイクルの間に区画間に拡散させることができた。しかし、水と油の比率を調整し、熱サイクル変化の程度を最小限のものとすることによって、区画間の産物と基質の交換は最小限となり、遺伝子型と表現型のより緊密な連関がもたらされる。拡散速度は乳液混合物を改変することによって制御できるので、バッファー条件を乳化後に調整することがおそらく可能であり、それによって選択条件のより大きな制御が可能となろう(すなわち、酸若しくは塩基を添加してpHを調整する、又は基質若しくは阻害剤を添加して反応を開始/停止させる)。
【0239】
150μLのPCR反応混液(SuperTaqバッファー、各0.5μMのプライマー、各100μMのdNDP、400μMのATP、0.1ユニット/μLのTaqポリメラーゼ、8x10細胞/μLのQL1387/ndk)を、2mLの丸底生体試料凍結用バイアル瓶(Corning)中で一定に撹拌しつつ、4.5% v/v Span 80、0.4% v/v Tween 80及び0.05% v/v TritonX−100の存在下で、450μLの油相(鉱油)に滴下(1滴/5秒)して添加する。水相を添加した後、撹拌をさらに5分間続ける。乳液の反応液のアリコート(100μL)を薄壁PCR試験管中に入れ、熱サイクルを上述のとおり行った。
【0240】
乳化後、増幅産物の回収を次のとおり行う。熱サイクルをかけた後、産物を2倍量のジエチルエーテルで抽出することによって回収し、ボルテックスにかけ、卓上微量遠心機で10分間遠心する。増幅産物は前述のとおり分析する。
【0241】
実施例23 バックグラウンドのキナーゼ活性の最小化
バックグラウンドのキナーゼ活性レベルは、上述のとおりTaqバッファー中で基質と共に大腸菌TG1細胞を乳化することによって測定する。大腸菌由来の天然のヌクレオシド二リン酸キナーゼは最初の変性の後でも十分な活性を保持しており、本発明者のアッセイでは著しいキナーゼ活性を示すことが見出されている。ndk遺伝子を含むpUC19発現プラスミドを大腸菌QL1387のndk欠損株中に形質転換する。mx ndk(H117A)の触媒作用をノックアウトした変異体と比較すると、ndkをそのノックアウト株から発現させた場合に、本発明者のアッセイではバックグラウンドのキナーゼ活性は無視できる程度のものである(増幅産物はアガロースゲル電気泳動では可視化できなかった)。
【0242】
実施例24 乳液中での遺伝子型−表現型連関性の維持
NDPキナーゼの触媒作用をノックアウトした変異体(NDK H117A)を野生型のNDPキナーゼと等量で一緒に乳化する。ndkの不活性な変異体は増幅産物がより少ないことから区別されるが、それは、プライミング部位から下流のORFに隣接している5’領域及び3’領域がノックアウト変異体の構築の際に除去されているためである。本発明の乳化方法は、アガロースゲル電気泳動で測定した場合に、活性キナーゼの増幅の方に完全に偏った結果をもたらす。
【0243】
実施例25 異種の細胞集団での並行遺伝子型分析方法
この手法では、対象の細胞、PCR試薬その他、及びポリメラーゼの乳液中での区画化(WO93/03151号を参照)を行う。しかし、1つの細胞由来の遺伝子をPCRアセンブリーにより連結する替わりに、1つの(若しくは複数の)ビオチニル化プライマーをストレプトアビジンで被覆したポリスチレンビーズ(若しくはプライマーをビーズ上に固定するその他の何らかの適切な方法)と共に用いる。このようにして、1つの細胞からのPCR断片が1個のビーズ上に移される。ビーズをプールし、特定の変異若しくは対立遺伝子の存在を、蛍光標識したプローブで調べ(「デジタルPCR」と呼ばれている)、FACSで計数する。マルチプレックスPCRによって10種若しくはおそらくそれ以上のマーカーを同時に調べることが可能である。単一のビーズはまた配列決定のために選別することができる。
【0244】
用途としては、例えば、無症候性腫瘍の診断が含まれ、この診断は正常細胞が大過剰の状態で非常に少数の変異細胞の検出が可能か否かにかかっている。細胞染色に対してのこの方法の利点は処理能力である。おそらく10−10個の細胞を同時に調べることができるであろう。
【0245】
実施例26 ショートパッチCSR
本実施例は触媒活性若しくはプロセッシビティが低いポリメラーゼの選択に関する。区画化自己複製(CSR)は、上述したとおり、明確に定められた選択条件への適応性の増大したポリメラーゼ変異体を選択する方法である。触媒活性の増大した変異体は、その選択条件下でより活性の低いものに対して選択上の利点を有する。しかし、多数の選択目的について(例えば、変化した基質特異性など)、新しい表現型への進化の経路の途中にある中間体は触媒活性が低下していることも起こりうる。例えば、大腸菌DNAポリメラーゼIの速度論の研究から、E710Aなどの突然変異は、野生型基質(デオキシリボヌクレオチド)に対しての触媒速度の低下と親和性の低下を犠牲にして、リボヌクレオチドの親和性と取込みが増大したものであった(F. B. Perler, S. Kumar, H. Kong, Adv. in Prot. Chem. 48, 377-430 (1996))。これに対応するTaqDNAポリメラーゼIの変異体であるE615Aは、野生型ポリメラーゼよりも効率的にリボヌクレオチドをPCR産物中に取り込むことができる。しかし、野生型基質を用いると、アガロースゲル電気泳動で分析した場合にこの変異体は短い断片を合成できるにすぎず、完全長のTaq遺伝子は合成できない。従って、このような突然変異をCSRで選択することは困難であろう。別の選択実験は、β−グルクロニダーゼを進化させてβ−ガラクトシダーゼとするものであり、この実験では、所望の表現型は数ラウンドの選択後に得られるが、触媒活性は犠牲になっている。また、最初の何ラウンドかの選択で選択された変異体は、親の酵素のいずれでも利用できないようないくつかの異なる基質の変換を触媒することができるが、その触媒速度ははるかに低いことが見出されている(T. A. Steitz, J. Biol. Chem. 274, 17395-8 (1999))。
【0246】
所望の表現型に至る進化の道筋で生ずる可能性のあるものなどの、低い触媒活性とプロセッシビティを有するポリメラーゼ変異体を選択することが可能であるか、という問題に対処するために、CSRの変法(調べようとしている遺伝子の小さな領域(「パッチ」)のみをランダム化して複製する)を用いる。この技法は「ショートパッチCSR」(spCSR)と呼ばれる。spCSRを用いれば、活性若しくはプロセッシビティのより低いポリメラーゼでも、選択のラウンドの間に、活性若しくはプロセッシビティの高い変異体に対して与えられる選択上の有利性を低減させることによって、濃縮することができる。この方法は前述の区画化自己複製法に拡張しうるが、遺伝子全体が複製されないので、このショートパッチ法は、例えばあるタンパク質の特定のドメインをそのタンパク質の残りの部分とは独立に調べるためにも有用である。
【0247】
ある遺伝子中に局部的に多様性を導入するためには多数の方法があり、そのようなものとしては、変異性PCR(上述のTaqポリメラーゼライブラリーについて述べたのと同様に、マンガン若しくは合成塩基を用いる)、PCRシャフリング(C. A. Brautigam, T. A. Steitz, Curr. Opin. Struct. Biol. 8, 54-63 (1998); Y. Li, S. Korolev, G. Waksman, EMBO J. 17, 7514-25 (1998))、カセット突然変異誘発(E. Bedford, S. Tabor, C. C. Richardson, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94,479-84 (1997))、及び縮重オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発(Y. Li, V. Mitaxov, G. Waksman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 9491-6 (1999); M. Suzuki, D. Baskin, L. Hood, L. A. Loeb, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 9670-5 (1996))とその変法、例えば突出末端(sticky feet)突然変異誘発(J. L. Jestin, P. Kristensen, G. Winter, Angew. Chem. Int. Ed. 38, 1124-1127 (1999))、並びにプラスミド全体の増幅によるランダムな突然変異誘発(T. Oberholzer, M. Albrizio, P. L. Luisi, Chem. Biol. 2, 677-82 (1995))がある。コンビナトリアルアラニンスキャンニング(A. T. Haase, E. F. Retzel, K. A. Staskus, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 4971-5 (1990))は、どのアミノ酸残基が機能的に重要であるかを決定するための変異体のライブラリーを作製するために用いることができる。
【0248】
DNAポリメラーゼIに関する研究から得られた構造データ(M. J. Embleton, G. Gorochov, P. T. Jones, G. Winter, Nucleic Acids Res. 20, 3831-7 (1992))、配列アラインメント(D. S. Tawfik, A. D. Griffiths, Nat. Biotechnol. 16, 652-656 (1998))、及び生化学的データからは、ヌクレオチド結合と触媒作用に関与する遺伝子の領域が明らかになっている。標的とされうるいくつかの領域としては、領域1から6があり、それは(D. S. Tawfik, A. D. Griffiths, Nat. Biotechnol. 16, 652-656 (1998))中に述べられているとおりである(領域3、4及び5はまたそれぞれTaqDNAポリメラーゼIのモチーフA、B及びCと呼ばれている)。その他の標的となりうる領域はいくつかの異なった種を通じて保存されている領域であり、それらは構造データによって、ヌクレオチド基質との接触に関連している、又は触媒作用に関与している、又は活性部位に近接している、あるいはポリメラーゼ機能若しくは基質結合に重要なその他の領域であると関係づけられた領域である。
【0249】
1ラウンドの選択の間に、各ライブラリーの変異体は多様性のある領域のみの複製が必要とされる。このことは、PCR反応において多様化される領域に隣接するプライマー(フランキングプライマー)を用いることによって容易に達成しうる。CSRでの選択は本質的には既に述べたとおり行われる。CSR選択の後、多様化され複製された短い領域が、今度は、適切に場所を定めた制限酵素切断部位、又はPCRシャフリング若しくはQuickchange突然変異誘発などのPCR組換え法のいずれかを用いて、最初の遺伝子中(又は別の遺伝的フレームワーク、例えば親の遺伝子の変異体のライブラリー、関連遺伝子、その他)に再導入される。spCSRのサイクルは多数回反復することができ、多重領域をフランキングプライマーを用いて同時に若しくは反復的に標的として、個々の領域を別々に若しくはまとめて増幅しうる。
【0250】
後半のステージでの選択においてストリンジェンシーを増加させるために、spCSRを、フランキングプライマーによって定められる複製配列の長さを完全長CSRまで増大させることによって簡単に調整することができる。事実、プロセッシビティのないものを選択するためには、複製される部分配列を、コード遺伝子を超えてベクター全体まで、iPCR(逆PCR)と類似の方法を用いて伸長させることが有益であろう。
【0251】
spCSRは活性若しくはプロセッシビティが低いポリメラーゼ変異体を求める場合のみならず、タンパク質の別々の領域を、その変異能についてどのアミノ酸残基が機能的に重要であるかを決定するために、例えばコンビナトリアルアラニンスキャンニング(A. T. Haase, E. F. Retzel, K. A. Staskus, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 4971-5 (1990))と併せてマッピングする際にも、完全長CSRに比べて有利である。このような情報は、おそらく後の段階で行う半合理的な(semirational)手法、すなわち、核となるポリメラーゼ活性に関与しない残基/領域に多様性をもたらす標的とするために有用であろう。さらにspCSRは、ポリメラーゼ間にポリペプチド部分配列を移植するために用いることができる(免疫グロブリンにCDRを移植するのと同様である)。部分配列同士を単純に交換した場合、立体構造の衝突によって活性があるポリメラーゼから乏しいものへ変化するが、この場合に部分配列を機能を有するように組み込むには「再構成(reshaping)」が必要であろう。再構成は完全長のCSR(例えば、既にあるランダムな変異体のライブラリーに由来するもの)又は二次領域(抗体中の「補助的領域(vernier zone」)を標的としたspCSRのいずれかを用いて行うことができる。
【0252】
ショートパッチはまた、既にあるポリメラーゼ遺伝子への伸長としてN末端若しくはC末端のいずれかに、又はその遺伝子の内部挿入として配置させることができる。このような表現型を改変する伸長及び挿入の先例は自然界に存在する。例えば、T5 DNA polのC末端の伸長及びT7 DNA pol中へのチオレドキシン結合性の挿入はこれらの酵素のプロセッシビティに決定的に重要であり、それらの酵素が大きな(>30kb)Tファージゲノムを効率的に複製することを可能としている。N末端若しくはC末端の伸長は他の酵素でも活性の増強が見られている。
【0253】
実施例27 クレノウ断片を用いる低温CSR
クレノウ断片を大腸菌ゲノムDNAから発現ベクターpASK75中にクローニングし(Taqと同様に行う)、大腸菌DH5αZ1株中で発現させた(Lutz, R.及びBujard, H. (1997), Nucleic Acids Res. 25, 1203)。細胞を洗い、10mM Tris pH7.5中に再懸濁した。再懸濁した細胞2×10個(20μL)を200μLの低温PCRバッファー(LTP)(Iakobashvili, R.及びLapidot, A. (1999), Nucleic Acids Res., 27, 1566)中に添加し、既に報告されているとおり乳化した(Ghadessyら, (2001), PNAS, 98, 4552)。LTPは10mM Tris(pH7.5)、5.5M L−プロリン、15% w/v グリセロール、15mM MgCl+適切なプライマー(プロリンは融解温度を低下させるのでプライマーは40量体以上の長さである必要がある)、及びdNTPであり、報告されているとおり乳化した。低温PCRサイクルは70℃10分間の後、70℃30秒間、37℃12分間を1サイクルとして50サイクル行った。水相を報告されているとおり抽出し、精製した選択産物を報告されているとおり再増幅した(Ghadessyら, (2001), PNAS, 98, 4552)。
【0254】
上述の明細書中で言及した刊行物は全て本明細書中に参照により組み入れる。当業者であれば、本発明の範囲と精神から逸脱することなく、本明細書中で説明した方法及び系に種々の改変と変化を加えうることは理解できると考えられる。本発明は特定の好ましい実施形態との関連で説明されてはいるが、特許請求の範囲に記載されている本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきものではないことは理解されるべきである。事実、分子生物学の分野若しくは関連分野の当業者であれば明白な、本発明を実施するための説明した方法の種々の改変は、特許請求の範囲内にあるものとする。
【0255】
【表3】
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【0256】
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【図面の簡単な説明】
【図1】 図1Aは、本発明の方法の1実施形態を示したもので、自己進化型のポリメラーゼの選択に適用した場合、その方法では遺伝子のコピー数は酵素回転と関連している。
図1Bは、区画化された自己複製(CSR)の一般的スキームを示したものであり、1)様々なポリメラーゼ遺伝子の集団をクローニングし、大腸菌(E.coli)中で発現させる。球は活性のあるポリメラーゼ分子を示す。2)ポリメラーゼ及びコードしている遺伝子を含む細菌細胞をフランキングプライマー及びヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含有する反応バッファー中に懸濁し、水性の区画内に分離(分割)させる。3)該ポリメラーゼ酵素及びコードしている遺伝子は細胞から放出され自己増幅を進めることが可能となる。活性がほとんどないポリメラーゼ(白の6角形)ではコードしている遺伝子の複製を行うことができない。4)「子孫」のポリメラーゼ遺伝子が放出され、再度多様化されて別のCSRのサイクルのために再クローニングされる。
【図2】 図2は、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現している大腸菌を含有する熱安定性乳液の水性区画を、熱サイクルの前(A、B)及び後(C)の光学顕微鏡像で示したものである。(A,B)は同一フレームである。(A)はGFP蛍光を535nmで画像化したものであり(B)は区画内の細菌細胞を可視光で可視化したものである。(A)での蛍光を発する細菌のぼけは露光中のブラウン運動によるものである。レーザー光の回折によって測定した区画の平均の大きさは下部に示している。
【図3】 図3Aは、乳液区画間の交叉を示している。2種類の標準的なPCR反応、それらは鋳型のサイズ(PCR1(0.9kb)、PCR2(0.3kb))及びTaqの存在(PCR1:+Taq、PCR2:酵素なし)の相違があるものであるが、それらを単独で又は組み合わせて増幅を行う。溶液中で組み合わせる場合には、双方の鋳型が増幅される。混合する前に別々に乳化した場合には、PCR1のみが増幅される。M:ΦX174HaeIIIマーカー
図3Bは、乳液区画間の交叉を示している。野生型Taqポリメラーゼ(2.7kb)若しくはTaqポリメラーゼStoffel断片(該バッファー条件下では活性がほとんどない)(1.8kb)を発現する細菌細胞を乳化前に1:1で混合する。溶液中では、短いStoffel断片は優先的に増幅される。乳液中では、野生型Taq遺伝子が主として増幅され、Stoffel断片(矢印)の増幅は弱いものにすぎない。M:λHindIIIマーカー
【図4】 図4は、自己進化型ポリメラーゼの選択に適用した場合の本発明の方法の1実施形態の詳細を示したものである。
【図5】 図5は、新規の又は正常ではない基質の取込みについて選択するための本発明の方法の1実施形態の詳細を示したものである。
【図6】 図6は、本発明の方法を用いた、(分子間)触媒活性を有するRNAの選択を示している。
【図7】 図7はTaq−DNA複合体のモデルを示している。
【図8】 A:共同的CSR反応の全体図。
ヌクレオシド二リン酸キナーゼ(ndk)はプラスミドから発現され、デオキシヌクレオシド二リン酸(Taqポリメラーゼの基質ではない)をデオキシヌクレオシド三リン酸に変換する。ndkが十分な量の基質を産生させると直ちにTaqはndk遺伝子を複製することができる。
B:野生型ndk(0.8kb)若しくは不活性な末端切断断片(0.5kb)を発現している細菌細胞を乳化前に1:1で混合する。溶液中では、より短い末端切断断片が優先的に増幅される。乳液中では、野生型ndk遺伝子が主として増幅され、末端切断断片(矢印)の増幅は弱いものにすぎず、このことは、乳液中では、基質を産生している、活性のあるndk遺伝子のみが増幅されることを示している。M:HaeIIIΦX174マーカー

Claims (22)

  1. 鋳型から核酸を増幅することが可能な酵素を選択する方法であって、以下のステップ:
    (a)鋳型から核酸を増幅することが可能な酵素をコードする核酸メンバーを含む核酸プールを調製するステップ;
    (b)上記核酸プールを区画に分割するステップであって、各区画が、該プールの核酸メンバーと該核酸メンバーによりコードされる上記酵素とを共に含むように分割する、上記ステップ;
    (c)核酸加工触媒を起こさせるステップ;及び
    (d)上記酵素による上記核酸メンバーの加工触媒を検出するステップ
    を含むものである、上記方法。
  2. 鋳型から核酸を増幅することが可能な酵素の活性を改変可能な物質を選択する方法であって、以下のステップ:
    (a)鋳型から核酸を増幅することが可能な酵素を調製するステップ;
    (b)1以上の候補物質をコードする核酸メンバーを含む核酸プールを調製するステップ;
    (c)上記核酸プールを区画に分割するステップであって、各区画が、該プールの核酸メンバー、該核酸メンバーによりコードされる物質、及び上記酵素を含むように分割する、上記ステップ;並びに
    (d)上記酵素による上記核酸メンバーの加工触媒を検出するステップ
    を含むものである、上記方法。
  3. 物質が酵素活性の促進物質である、請求項2記載の方法。
  4. 物質が、上記酵素の活性を改変するよう該酵素に作用することが可能な酵素である、請求項2又は3記載の方法。
  5. 上記酵素の活性を改変するよう該酵素に作用することが可能な酵素がキナーゼ又はホスホリラーゼである、請求項4記載の方法。
  6. 物質が、最終生成物として核酸複製反応に関与する基質を含む代謝経路において機能するポリペプチドである、請求項2又は3記載の方法。
  7. 物質が、核酸複製反応における基質の産生能又は阻害物質の消費能を有するポリペプチドである、請求項2又は3記載の方法。
  8. 物質が、核酸加工触媒反応において使用されるヌクレオチドプライマー又はヌクレオシド三リン酸基質を改変可能なポリペプチドであり、その結果、
    a)その3'末端が伸長可能となる、又は
    b)該ヌクレオチドプライマー若しくはヌクレオシド三リン酸に付加される基質部分が、取り込まれたヌクレオチドプライマー若しくはヌクレオシド三リン酸の生成物の付加部分を検出若しくは捕捉できるように改変される、
    請求項2又は3記載の方法。
  9. 核酸メンバーの加工触媒が該メンバーの全体又は断片の複製を含むものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 核酸メンバーの加工触媒が、該メンバーに付加された5'突出末端の充填反応又は該メンバーの3'末端の伸長を含むものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 核酸の増幅が、1ラウンド以上の核酸複製により起こるものである、請求項1記載の方法。
  12. 核酸の増幅が指数関数的な増幅である、請求項11記載の方法。
  13. 増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、ネステッドPCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写に基づく増幅系(TAS)、自己持続性配列複製(3SR)、NASBA、転写媒介性増幅反応(TMA)、又は鎖置換増幅(SDA)である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 複製後の核酸メンバーのコピー数が上記酵素の活性と比例するものである、請求項1記載の方法。
  15. 複製後の核酸メンバーのコピー数が物質の活性と比例するものである、請求項2記載の方法。
  16. 核酸の複製が、核酸メンバーのコピー数をアッセイすることにより検出される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 核酸の複製が、核酸メンバーの断片のコピー数をアッセイすることにより検出される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  18. 核酸の複製が、核酸メンバーの標識付加の存在をアッセイすることにより検出される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  19. 核酸の複製が、核酸メンバーによりコードされるポリペプチドの活性を測定することにより検出される、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  20. ポリペプチドが核酸からin vitro転写及び翻訳により調製されるものである、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 区画が、W/O型乳液の水性区画を含むものである、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. W/O型乳液が、水相と、油相並びに4.5%v/v Span80、0.4%v/v Tween80及び0.1%v/v TritonX100を含むサーファクタント又はSpan80、Tween80及びTritonX100を実質的に同じ比率で含むサーファクタントとを乳化することにより調製されるものである、請求項21記載の方法。
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