本発明の重合体について説明する。
本発明の重合体は、下記式(1−1)で表されるフッ素置換されたナフタレン骨格を有する構成単位(A)を含有する。
本発明の重合体は、フッ素置換されたナフタレン骨格を有する構成単位(A)を含有することが必要である。該構成単位(A)を含有することにより、レジスト組成物として用いた場合にレジスト膜と浸漬液との親和性が低減し、特に浸漬液が純水の場合はレジスト組成物のディフェクトを低減することができる。
さらに本発明では、構成単位(A)は193nmエキシマレーザー光に対する透明性の点から、L1−がナフタレン骨格の2位に結合し、−Yがナフタレン骨格の6位に結合した下記式(1−2)、またはL1−がナフタレン骨格の2位に結合し、−Yがナフタレン骨格の6位に結合した(1−3)であることが好ましい。
なお、式(1−1)から(1−3)において、Fはフッ素原子。R10は水素原子またはメチル基を表す。
Yは、−C(=O)−OH、−CH2−C(=O)−OH、−OH、−C(=O)−OR13、−CH2−C(=O)−OR13、または、−OR13を表し、193nm透過率、感度、矩形性の点から、Yは−CH2−C(=O)−OH、−C(=O)−OR13、−OH、−OR13が好ましく、193nm光の透過率、感度、矩形性の点で−OR13、−OHが特に好ましい。
なお、R
13は炭素数1〜20の直鎖、分岐、または環状の炭化水素基を表し、この炭化水素基はヘテロ原子を有していてもよい。例えば式(3−1)〜(3−30)の構造が挙げられるが、透過率の点で下記式(3−21)〜(3−24)が好ましい。また感度の点で式(3−1)、(3−2)、式(3−13)、(3−14)、式(3−25)〜(3−30)が好ましい。
また、L1は単結合、または炭素数1〜20の直鎖、分岐、環状の炭化水素基を表し、この炭化水素基はヘテロ原子を有していてもよい。ヘテロ原子としては、特に制限されないが、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等が挙げられる。
例えば下記式(2−1)〜(2−39)の構造が挙げられるが、重合体のガラス転移温度、透過率の点から、下記式(2−1)〜(2−7)、(2−13)、(2−16)、(2−19)、(2−20)、(2−22)、(2−23)、(2−24)、(2−27)〜(2−29)で表される構造が好ましい。
また、h11は、水との親和性から1〜6が好ましく、ディフェクト、感度、解像度の点から、1〜3がより好ましい。
なお、式(1−1)で表されるナフタレン骨格を有する構成単位(A)は、1種でも2種以上でも構わない。
構成単位(A)の含有量は、特に制限されないが、ドライエッチング耐性や屈折率の点から、レジスト用重合体の構成単位中、2モル%以上が好ましく、4モル%以上がより好ましい。また、感度および解像度の点から、20モル%以下が好ましく、15モル%以下がより好ましく、10モル%以下がさらに好ましい。
また、構成単位(A)を含むレジスト用重合体は、構成単位(A)が酸脱離性基を有している場合(Yが酸脱離性基である場合)は、酸脱離性基が脱離することによってアルカリに可溶となり、レジストパターン形成を可能とする。また、構成単位(A)が酸脱離性基を有していない場合(Yが−CH2−C(=O)−OH、−C(=O)−OHまたは−OHである場合)には、構成単位(A)自体が酸性基を有するため、構成単位(A)を含むレジスト用重合体は、アルカリに可溶となり、レジストパターン形成を可能とする。
また、構成単位(A)が親水性基を有している場合、レジストパターン矩形性が良好となる傾向にある。
さらに本発明のレジスト用重合体は、必要に応じて、構成単位(A)以外の、ラクトン骨格を有する構成単位(B)、酸脱離性基を有する構成単位(C)、親水性基を有する構成単位(D)等の他の構成単位を含有してもよい。
ラクトン骨格を有する構成単位(B)は、レジスト組成物の基板への密着性を発現させる作用を奏することから、レジスト用重合体の構成成分として用いることが好ましい。
構成単位(B)の含有量は、特に制限されないが、基板への密着性の点から、レジスト用重合体の構成単位中、30モル%以上が好ましく、35モル%以上がより好ましい。また、レジストの感度および解像度の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
また、ラクトン骨格を有する構成単位(B)としては、特に制限されないが、
構成単位(B)が酸の作用により分解または脱離する基を有する場合、より優れた感度を有する傾向にある。また、構成単位(B)が親水性基を有している場合、レジストパターン矩形性が良好となる傾向にある。
ラクトン骨格を有する構成単位(B)は、1種、あるいは、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。
ラクトン骨格を有する構成単位(B)を有する重合体は、ラクトン骨格を有する構成単位(B)を与える単量体(b)を含む単量体を重合することによって製造することができる。
次に、酸脱離性基を有する構成単位(C)について説明する。
ここで、「酸脱離性基」とは、酸の作用により分解または脱離する基をいう。
酸脱離性基を有する構成単位(C)は、酸によってアルカリに可溶となる成分であり、レジストパターン形成を可能とする作用を奏するため、レジスト用重合体の構成成分として用いることが好ましい。
構成単位(C)の含有量は、特に制限されないが、感度および解像度の点から、レジスト用重合体の構成単位中、20モル%以上が好ましく、25モル%以上がより好ましい。また、基板表面等への密着性の点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
酸脱離性基を有する構成単位(C)は、1種、あるいは、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。
酸脱離性基を有する構成単位(C)を有する重合体は、酸脱離性基を有する構成単位(C)を与える単量体(c)を含む単量体を重合することによって製造することができる。
次に、親水性基を有する構成単位(D)について説明する。
ここで「親水性基」とは、−C(CF3)2−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基の少なくとも1種である。
親水性基を有する構成単位(D)は、レジスト組成物のディフェクト低減、パターン矩形性の改善に効果を奏するため、レジスト用重合体の構成単位として用いることが好ましい。
構成単位(D)の含有量は、パターン矩形性の点から、レジスト用重合体の構成単位中、5〜30モル%が好ましく、10〜25モル%がより好ましい。
親水性基を有する構成単位(D)は、1種、あるいは、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。
親水性基を有する構成単位(D)を有する重合体は、親水性基を有する構成単位(D)を与える単量体(d)を含む単量体を重合することによって製造することができる。
本発明のレジスト用重合体は、上述の構成単位(B)〜(D)以外にも、必要に応じてこれらの構成単位以外の構成単位(E)を含有してもよい。
このような構成単位(E)としては、例えば、酸脱離性基および親水性基を有しない脂環式骨格(非極性脂環式骨格)を有する構成単位(E1)を含有することができる。ここで脂環式骨格とは、環状の飽和炭化水素基を1個以上有する骨格である。構成単位(E1)は、1種、あるいは、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。
構成単位(E1)は、レジスト組成物のドライエッチング耐性を発現する作用を奏する傾向にある。
構成単位(E1)および構成単位(E2)の含有量は、特に制限されないが、レジスト用重合体の構成単位中、20モル%以下の範囲が好ましい。
また、本発明のレジスト用重合体の質量平均分子量は、特に限定されないが、ドライエッチング耐性およびレジストパターン形状の点から、2,000以上であることが好ましく、3,000以上であることがより好ましく、4,000以上であることが特に好ましく、5,000以上であることが更に好ましい。また、本発明のレジスト用重合体の質量平均分子量は、レジスト溶液に対する溶解性および解像度の点から、100,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましく、30,000以下である
ことが特に好ましく、20,000以下が更に好ましい。
本発明のレジスト用重合体の分子量分布は、特に限定されないが、レジスト溶液に対する溶解性および解像度の点から、2.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.8以下であることが特に好ましい。
つぎに本発明の重合体の製造方法の一例について示す。
本発明の、式(1−1)で表されるナフタレン骨格を有する構成単位(A)を含有する重合体は、下記式(1−4)で表される単量体を含む単量体を重合することによって製造することができる。
式(1−4)中、F、R10、Y、L1、及びh11は式(1−1)と同義である。
また、式(1−2)、(1−3)で表されるナフタレン骨格を有する構成単位(A)を含有する重合体は、下記式(1−5)、(1−6)で表される単量体を含む単量体を重合することによって製造することができる。
式(1−5)(1−6)中、F、R10、Y、L1、及びh11は、式(1−1)と同義である。
なお、式(1−4)で表される単量体は、特に制限されないが、例えば、下記式(8−1)〜(8−47)で表される単量体が挙げられる。式(8−1)〜(8−47)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
中でも、透過率の点から、上記式(8−3)〜(8−5)、式(8−7)、式(8−9)〜(8−12)、式(8−15)、式(8−18)〜(8−24)、式(8−26)〜式(8−42)、式(8−45)〜(8−47)で表される単量体、ならびにこれらの幾何異性体および光学異性体が好ましく、上記式(8−7)、式(8−9)〜(8−11)、式(8−15)、式(8−18)〜式(8−20)、式(8−27)〜式(8−29)、式(8−32)〜式(8−35)で表される単量体がさらに好ましい。
次に、本発明の重合性モノマーの製造法を、式(8−7)、式(8−10)、式(8−11)を例にとって説明する。
まず、式(8−7)に示す重合性モノマーは、2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニルナフタレン(9−1)の芳香環にフッ素基導入した後、得られた1−フロロ−2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニルナフタレン(9−2)を還元して1−フロロ−2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルナフタレン(9−3)とし、最後にヒドロキシメチル基のアルコールを(メタ)アクリロイルオキシにエステル化することによって得られる。
(Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
式(9−1)に示されるナフタレン化合物のフッ素化に用いる化合物は、特に制限されないが、フッ素ガスや、フロロオキシスルホン酸セシウム、フロロオキシトリフロロ酢酸等のフロロオキシ酸、1−フロロ−2,4,6−トリメチルピリジウム 四フッ化ホウ素塩、1−フロロピリジウム 四フッ化ホウ素塩、2,6−ジクロロ−1−フロロピリジウム 四フッ化ホウ素塩、1−フロロ−2,4,6−トリメチルピリジン トリフロロメタンスルホン酸塩、1−フロロピリジウム トリフロロメタンスルホン酸塩、2,6−ジクロロ−1−フロロピリジウム トリフロロメタンスルホン酸塩、1,1’−ジフロロビスピリジニウム 四フッ化ホウ素塩等の1−フロロピリジン誘導体の塩、1−クロロメチル−4−フロロ−1,4−ジアゾニア−ビシクロ[2,2,2]オクタン ジ四フッ化ホウ素塩、1,4−ジフロロ−1,4−ジアゾニア−ビシクロ[2,2,2]オクタン ジ四フッ化ホウ素塩、1−メチル−4−フロロ−1,4−ジアゾニア−ビシクロ[2,2,2]オクタン トリフロロメタンスルホン酸塩等のN−フロロ化アミン誘導体の塩、N−フロロ−N−(exo−2−ノルボニル)−p−トルエンスルホン酸アミド、N−フロロ−N−tert−ブチル−p−トルエンスルホン酸アミド、N−フロロ−ビスフェニルスルフォニルアミン等のN−フロロ−N−アルキルスルホン酸アミド、などのフッ素化試薬が上げられる。
これらを用いたフッ素化反応条件は、特に制限されないが、式(9−1)の2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニルナフタレンに100モル部に対し50〜150モル部の範囲が好ましい。50モル部以上であると式(9−2)のフッ化ナフタレン化合物の収率が高くなる傾向があり、また150モル部以下であると反応の選択性が高くなる傾向がある。反応温度としては、反応速度、式(9−2)の収率等の面で−200℃〜が好ましい。また必要に応じ、三フッ化ホウ素、硫酸などの酸、あるいは水素化カリウムなどの塩基を加えて反応を行なっても良い。
式(9−2)に示すフッ化ナフタレン化合物のエステル部位の還元反応は、特に制限されないが、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化アルミニウム、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム等の水素化金属を用いる還元反応、などが上げられる。
反応条件は特に制限されないが、水素化金属の使用量は式(9−2)の1−フロロ−2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルナフタレン100モル部に対して10〜200モル部の範囲が好ましい。10モル部以上であると式(9−3)のアルコールの収率が高くなる傾向があり、また150モル部以下であると回収された前述アルコールの純度が高くなる傾向がある。反応温度としては、反応速度、式(9−3)の収率等の面で−150℃〜100℃が好ましく、−80℃〜50℃がより好ましい。
式(9−3)に示す化合物のヒドロキシメチル基のエステル化の方法は、特に限定されないが、酸、ルイス酸触媒または塩基の存在下、1−フロロ−2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルナフタレンに対して、(メタ)アクリル酸、無水(メタ)アクリル酸、または(メタ)アクリル酸クロリドを反応させる方法が例示できる。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、トシル酸、酢酸、また、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、イッテリビウム等の原子を含むルイス酸等が例示できる。酸触媒の使用量としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−6−ヒドロキシメチルナフタレン100モル部に対して、0.1〜10モル部の範囲が好ましい。酸触媒の使用量が0.1モル部以上の場合に反応速度をあげることができる傾向にあり、また10モル部以下の場合に副生成物の生成を抑制することができる傾向にある。酸触媒の使用量の下限値は0.5モル部以上であることがより好ましく、また上限値は3モル部以下であることがより好ましい。
また、塩基としては、特に制限されないが、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等のアルカリ金属を含む塩基や、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基が上げられる。塩基の使用量は、特に制限されないが、1−フロロ−2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルナフタレン100モル部に対して0.5〜10モル部の範囲が好ましい。塩基の使用量の下限値は、副生成物の点から1〜8モル部の範囲がより好ましい。
また、(メタ)アクリル酸、無水(メタ)アクリル酸の中では、副生成物のジ(メタ)アクリレート体の生成を抑制するといった点で、(メタ)アクリル酸が好ましい。
(メタ)アクリル酸、無水(メタ)アクリル酸の使用量は、特に制限されないが、1−フロロ−2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルナフタレン100モル部に対して50〜500モル部の範囲が好ましい。(メタ)アクリル酸、無水(メタ)アクリル酸の使用量が50モル部以上の場合に、式(8−1)の重合性モノマーを収率良く得ることができる傾向にある。また、この使用量が500モル部以下の場合に、副生成物であるジメタクリレート体の生成を抑制できる。この使用量は、95〜150モル部の範囲が特に好ましい。
反応温度は、特に制限されないが、0℃〜50℃の範囲が好ましい。反応温度が0℃以上の場合に重合性モノマーを収率良く得ることができる傾向にある。また、反応温度が50℃以下の場合副生成物であるジ(メタ)アクリレート体の生成を抑制できる傾向にある。
また、この反応は溶媒をもちいて反応させてもよく、トルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン等が例示できる。2−ヒドロキシ−6−ヒドロキシメチルナフタレンの溶解性の点でトルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリルがさらに好ましい。
(メタ)アクリル酸クロリドの使用量は、特に制限されないが、1−フロロ−2−ヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルナフタレン100モル部に対して50〜500モル部の範囲が好ましい。(メタ)アクリル酸クロリドの使用量が50モル部以上の場合に、式(8−3)の重合性モノマーを収率良く得ることができる傾向にある。また、(メタ)アクリル酸クロリドの使用量が500モル部以下の場合に、ジ(メタ)アクリレート体の生成を抑制できる傾向にある。(メタ)アクリル酸クロリドの使用量は95〜150モル部である。
塩基としては、特に制限されないが、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基が挙げられる。塩基の使用量は、特に制限されないが、(メタ)アクリル酸クロリド100モル部に対して、75〜300モル部の範囲が好ましい。塩基の使用量が、75モル部以上の場合に、収率向上、反応速度を向上させることができる傾向にある。また、塩基の使用量が300モル部以下の場合に、精製後の不純物を少なくすることができる傾向にある。塩基の使用量は、100〜150部が特に好ましい。
反応温度は、特に制限されないが、0℃〜50℃の範囲が好ましい。反応温度が0℃以上の場合に重合性モノマーを収率良く得ることができる傾向にある。また、反応温度が50℃以下の場合副生成物であるジ(メタ)アクリレート体の生成を抑制できる傾向にある。
また、この反応は溶媒をもちいて反応させてもよく、トルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン等が例示できる。2,6−ジヒドロキシナフタレンの溶解性の点でトルエン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホオキシド、アセトニトリルがさらに好ましい。
また、式(8−10)に示す重合成モノマーは、2−ヒドロキシ−3−メトキシカルボニルナフタレン(9−1)の変わりに2−ヒドロキシ−6−メトキシカルボニルナフタレン(9−4)を用い、(8−7)と同様にフッ素化、還元反応を行なって、最後に(9−6)のヒドロキシメチル基のアルコールを(メタ)アクリロイルオキシにエステル化することによって得られる。
(Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
反応条件は特に制限されないが、例えば前述した式(8−7)で示される重合性モノマーの合成条件と同様の条件で式(8−10)で示される重合性モノマーを得ることができる。
最後に式(8−11)で示される重合性モノマーを示す。2−ヒドロキシ−6−メトキシカルボニルナフタレン(9−4)の芳香環に2つのフッ素を導入した後、以降は(8−10)と同様に還元反応を行い、最後に(9−8)のヒドロキシメチル基のアルコールを(メタ)アクリロイルオキシにエステル化することによって得られる。
(Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
反応条件は特に制限されないが、式(9−4)のナフタレン化合物のフッ素化には、例えば前述した式(8−7)で示される重合性モノマーの合成で用いた化合物を用いることができる。これらを用いたフッ素化反応条件は、特に制限されないが、式(9−4)の2−ヒドロキシ−6−メトキシカルボニルナフタレンに100モル部に対し150〜250モル部の範囲が好ましい。150モル部以上であると式(9−7)のフッ化ナフタレン化合物の収率が高くなる傾向があり、また250モル部以下であると反応の選択性が高くなる傾向がある。
以降の反応条件については、前述した式(8−10)で示される重合性モノマーの合成条件と同様の条件で式(8−11)で示される重合性モノマーを得ることができる。
生成した式(8−7)、(8−10)(8−11)の重合性モノマーを反応液から回収する方法は、特に制限されないが、公知の方法、例えば反応液の溶媒を減圧下溜去する、生成した重合性モノマーを抽出回収する、あるいは晶析によって結晶を回収する等の方法を用いることができる。また必要に応じ、重合性モノマーの純度向上を目的として、蒸留、重合性モノマー溶液の洗浄、イオン交換樹脂または活性炭処理、あるいは再結晶などの公知の精製操作を行ってもよい。
次に、本発明のレジスト用重合体の製造方法について説明する。
本発明のレジスト用重合体を製造する方法は、溶液重合で行われれば特に限定されず、重合方法については、一括重合でも滴下重合でもよい。中でも、組成分布および/または分子量分布の狭い重合体が簡便に得られる点から、単量体を重合容器中に滴下する滴下重合と呼ばれる重合方法が好ましい。滴下する単量体は、単量体のみでも、単量体の有機溶媒溶液であってもよい。
滴下重合法においては、例えば、有機溶媒をあらかじめ重合容器に仕込み(この有機溶媒を「仕込み溶媒」ともいう)、所定の重合温度まで加熱した後、単量体や重合開始剤を、それぞれ独立または任意の組み合わせで、有機溶媒に溶解させた溶液(この有機溶媒を「滴下溶媒」とも言う。)を、仕込み溶媒中に滴下する。また、仕込み溶媒が重合容器内にない状態で単量体あるいは重合開始剤を重合容器中に滴下してもよい。
単量体と重合開始剤は、それぞれ独立した貯槽から所定の重合温度まで加熱された仕込み溶媒へ直接滴下してもよいし、滴下する直前で混合し、前記仕込み溶媒へ滴下してもよい。
さらに、単量体あるいは重合開始剤を、前記仕込み溶媒へ滴下するタイミングは、単量体を先に滴下した後、遅れて重合開始剤を滴下してもよいし、重合開始剤を先に滴下した後、遅れて単量体を滴下してもよいし、単量体と重合開始剤を同じタイミングで滴下してもよい。また、これらの滴下速度は、滴下終了まで一定の速度であってもよいし、単量体や重合開始剤の消費速度に応じて、多段階に速度を変化させる、間欠的に滴下を停止、開始してもよい。
滴下重合法における重合温度は特に限定されないが、通常、50〜150℃の範囲内であることが好ましい。
滴下重合法において用いられる有機溶剤としては、公知の溶媒を使用でき、例えば、エーテル(ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下「PGME」とも言う。)等の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン(以下「THF」とも言う。)、1,4−ジオキサン等の環状エーテルなど)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「PGMEA」とも言う。)など)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン(以下「MEK」とも言う。)、メチルイソブチルケトン(以下「MIBK」とも言う。)など)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素など)、などが挙げられる。また、これらの溶媒は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
有機溶媒中に滴下する単量体溶液の単量体濃度は特に限定されないが、5〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
なお、仕込み溶媒の量は特に限定されず、適宜決めればよい。通常は、共重合に使用する単量体全量100質量部に対して30〜700質量部の範囲内で使用することが好ましい。
本発明のレジスト用重合体は、通常、重合開始剤の存在下で、前記式(1)で現されるナフタレン骨格を有する単量体の1種以上を含む単量体組成物を重合して得られる。重合開始剤は、熱により効率的にラジカルを発生するものが好ましい。このような重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNとも言う。)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(以下、DAIBとも言う。)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等のアゾ化合物;2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物などが挙げられる。
また、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィーにおいて使用されるレジスト用重合体を製造する場合、得られるレジスト用重合体の光線透過率(波長193nmの光に対する透過率)をできるだけ低下させない点から、重合開始剤は、分子構造中に芳香環を有しないものが好ましい。さらに、重合時の安全性等を考慮すると、重合開始剤は、10時間半減期温度が60℃以上のものが好ましい。
重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、共重合体の収率を高くさせる点から、共重合に使用する単量体全量100モル部に対して0.3モル部以上が好ましく、1モル部以上がより好ましく、共重合体の分子量分布を狭くさせる点から、共重合に使用する単量体全量100モル部に対して30モル部以下が好ましい。
本発明のレジスト用重合体を製造する際には、レジスト組成物の保存安定性を妨げない範囲で連鎖移動剤(以下、連鎖移動剤という)を使用してもよい。このような連鎖移動剤としては、例えば、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、1−オクタンチオール、1−デカンチオール、1−テトラデカンチオール、シクロヘキサンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−ヒドロキシエチルメルカプタンなどが挙げられる。
ArFエキシマレーザー(波長:193nm)リソグラフィーにおいて使用されるレジスト用重合体を製造する場合、得られるレジスト用重合体の光線透過率(波長193nmの光に対する透過率)をできるだけ低下させない点から、連鎖移動剤は、芳香環を有しないものが好ましい。
溶液重合によって製造された重合体溶液は、必要に応じて、1,4−ジオキサン、アセトン、THF、MEK、MIBK、γ−ブチロラクトン、PGMEA、PGME等の良溶媒で適当な溶液粘度に希釈した後、メタノール、水、ヘキサン、ヘプタン等の多量の貧溶媒中に滴下して重合体を析出させる。この工程は一般に再沈殿と呼ばれ、重合溶液中に残存する未反応の単量体や重合開始剤等を取り除くために非常に有効である。これらの未反応物は、そのまま残存しているとレジスト性能に悪影響を及ぼす可能性があるので、できるだけ取り除くことが好ましい。再沈殿工程は、場合により不要となることもある。その後、その析出物を濾別し、十分に乾燥して本発明の重合体を得る。また、濾別した後、乾燥せずに湿粉のまま使用することもできる。
また、製造された重合体溶液はそのまま、または適当な溶媒で希釈してレジスト組成物として使うこともできる。その際、保存安定剤などの添加剤を適宜添加してもよい。
次に、本発明のレジスト組成物について説明する。
本発明のレジスト組成物は、本発明のレジスト用重合体を溶媒に溶解したものである。また、本発明の化学増幅型レジスト組成物は、本発明のレジスト用重合体および光酸発生剤を溶媒に溶解したものである。本発明のレジスト用重合体は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。なお、溶液重合等によって得られた重合体溶液から重合体を分離することなく、この重合体溶液をそのままレジスト組成物に使用し、または、この重合体溶液を適当な溶媒で希釈して、または濃縮してレジスト組成物に使用することもできる。
溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン等の直鎖もしくは分岐鎖ケトン類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の環状ケトン類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のジエチレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、1−オクタノール等のアルコール類;1,4−ジオキサン、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
溶媒の含有量は、通常、レジスト用重合体100質量部に対して、200〜5000質量部であり、300〜2000質量部であることがより好ましい。
本発明のレジスト用重合体を化学増幅型レジストに使用する場合は、光酸発生剤を用いることが必要である。
本発明の化学増幅型レジスト組成物に含有される光酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物の酸発生剤として使用可能なものの中から任意に選択することができる。光酸発生剤は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
このような光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、キノンジアジド化合物、ジアゾメタン化合物等が挙げられる。光酸発生剤としては、中でも、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩化合物が好ましく、具体的には、トリフェニルスルホニウムトリフレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムナフタレンスルホネート、(ヒドロキシフェニル)ベンジルメチルスルホニウムトルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−メチルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、トリ(tert−ブチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート等が挙げられる。
光酸発生剤の含有量は、選択された光酸発生剤の種類により適宜決められるが、通常、レジスト用重合体100質量部に対して0.1質量部以上であり、0.5質量部以上であることがより好ましい。光酸発生剤の含有量をこの範囲にすることにより、露光により発生した酸の触媒作用による化学反応を十分に生起させることができる。また、光酸発生剤の含有量は、通常、レジスト用重合体100質量部に対して20質量部以下であり、10質量部以下であることがより好ましい。光酸発生剤の含有量をこの範囲にすることにより、レジスト組成物の安定性が向上し、組成物を塗布する際の塗布むらや現像時のスカム等の発生が十分に少なくなる。
さらに、本発明の化学増幅型レジスト組成物には、含窒素化合物を配合することもできる。含窒素化合物を含有させることにより、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などがさらに向上する。つまり、レジストパターンの断面形状が矩形により近くなり、また、レジスト膜を露光し、露光後ベーク(PEB)して、次の現像処理までの間に数時間放置されることが半導体の量産ラインではあるが、そのような放置(経時)したときにレジストパターンの断面形状の劣化の発生がより抑制される。
含窒素化合物は、公知のものいずれも使用可能であるが、アミンが好ましく、中でも、第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンがより好ましい。
ここで「低級脂肪族アミン」とは、炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンのことをいう。
第2級低級脂肪族アミン、第3級低級脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。含窒素化合物としては、中でも、トリエタノールアミンなどの第3級アルカノールアミンがより好ましい。
含窒素化合物は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
含窒素化合物の含有量は、選択された含窒素化合物の種類などにより適宜決められるが、通常、レジスト用重合体100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましい。含窒素化合物の含有量をこの範囲にすることにより、レジストパターン形状をより矩形にすることができる。また、含窒素化合物の含有量は、通常、レジスト用重合体100質量部に対して2質量部以下であることが好ましい。含窒素化合物の含有量をこの範囲にすることにより、感度の劣化を小さくすることができる。
また、本発明の化学増幅型レジスト組成物には、有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体を配合することもできる。これらの化合物を含有させることにより、含窒素化合物の配合による感度劣化を防止することができ、また、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などがさらに向上する。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好ましい。
リンのオキソ酸、または、その誘導体としては、例えば、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステル等のリン酸およびそれらのエステルのような誘導体;ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステル等のホスホン酸およびそれらのエステルのような誘導体;ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸等のホスフィン酸およびそれらのエステルのような誘導体などが挙げられ、中でも、ホスホン酸が好ましい。
これらの化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体)は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体)の含有量は、選択された化合物の種類などにより適宜決められるが、通常、レジスト用重合体100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましい。これらの化合物の含有量をこの範囲にすることにより、レジストパターン形状をより矩形にすることができる。また、これらの化合物(有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体)の含有量は、通常、レジスト用重合体100質量部に対して5質量部以下であることが好ましい。これらの化合物の含有量をこの範囲にすることにより、レジストパターンの膜減りを小さくすることができる。
なお、含窒素化合物と有機カルボン酸、リンのオキソ酸、または、その誘導体との両方を本発明の化学増幅型レジスト組成物に含有させることもできるし、いずれか片方のみを含有させることもできる。
さらに、本発明のレジスト組成物には、必要に応じて、界面活性剤、その他のクエンチャー、増感剤、ハレーション防止剤、保存安定剤、消泡剤等の各種添加剤を配合することもできる。これらの添加剤は、当該分野で公知のものであればいずれも使用可能である。また、これらの添加剤の配合量は特に限定されず、適宜決めればよい。
本発明のレジスト用重合体は、金属エッチング用、フォトファブリケーション用、製版用、ホログラム用、カラーフィルター用、位相差フィルム用等のレジスト組成物として使用してもよい。
次に、本発明のパターンが形成された基板の製造方法の一例について説明する。
最初に、パターンを形成するシリコンウエハー等の被加工基板の表面に、本発明のレジスト組成物をスピンコート等により塗布する。そして、このレジスト組成物が塗布された被加工基板は、ベーキング処理(プリベーク)等で乾燥し、基板上にレジスト膜を製造する。
次いで、このようにして得られたレジスト膜に、フォトマスクを介して、光を照射する(露光)。露光に用いる光は、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、またはEUVエキシマレーザーであることが好ましく、特にArFエキシマレーザーであることが好ましい。また、電子線で露光することも好ましい。
一方で、該レジスト膜と露光装置の最終レンズとの間に、純水やパーフルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランやパーフルオロトリアルキルアミンなどの高屈折率液体を介在させた状態で露光する液浸露光を行ってもよい。
露光後、適宜熱処理(露光後ベーク、PEB)し、基板をアルカリ現像液に浸漬し、露光部分を現像液に溶解除去する(現像)。アルカリ現像液は公知のものいずれを用いてもよい。そして、現像後、基板を純水等で適宜リンス処理する。このようにして被加工基板上にレジストパターンが製造される。
そして、レジストパターンが製造された被加工基板は、適宜熱処理(ポストベーク)してレジストを強化し、レジストのない部分を選択的にエッチングする。エッチングを行った後、レジストを剥離剤によって除去することによって、パターンが形成された基板が得られる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例、比較例中「部」とあるのは、特に断りのない限り「質量部」を示す。
また、以下のようにして、レジスト用重合体の共重合性、レジスト用重合体およびレジスト組成物を評価した。
1.レジスト用重合体の評価
<各構成単位の含有量>
レジスト用重合体の各構成単位の含有量は、1H−NMR測定で求めることができる場合には1H−NMR測定により求め、プロトンピークの重なり等により1H−NMR測定で求めることができない場合には、13C−NMR測定により求めた。
1H−NMRの測定は、日本電子(株)製、JNM−GX270型FT−NMR(商品名)を用いて、約5質量%のレジスト用重合体試料の溶液(重水素化クロロホルム溶液または重水素化ジメチルスルホキシド溶液)を直径5mmφの試験管に入れ、観測周波数270MHz、シングルパルスモードにて、64回の積算で行った。なお、測定温度は、重水素化クロロホルムを溶媒とした場合は40℃、重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とした場合は60℃で行った。
13C−NMR測定の場合は、バリアンテクノロジーズ社製、UNITY−INOVA型FT−NMR(商品名)を用いて、約20質量%のレジスト用重合体試料の重水素化ジメチルスルホキシドの溶液を直径5mmφの試験管に入れ、測定温度60℃、観測周波数125MHz、核オーバーハウザー効果(NOE)が除去されたプロトン完全デカップリング法にて、50000回の積算を行う。
<質量平均分子量>
約20mgのレジスト用重合体を5mLのTHFに溶解し、0.5μmメンブレンフィルターで濾過して試料溶液を調製し、この試料溶液を東ソー製ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。この測定は、分離カラムは昭和電工製、Shodex GPC K−805L(商品名)を3本直列にしたものを用い、溶媒はTHF、流量1.0mL/min、検出器は示差屈折計、測定温度40℃、注入量0.1mLで、標準ポリマーとしてポリスチレンを使用して測定した。
<光線透過率>
製造したレジスト用重合体5部と、溶媒であるPGMEA45部とを混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブレンフィルターで濾過し、重合体組成物溶液を調製した。
調製した重合体組成物溶液を石英ウエハー上にスピンコートし、ホットプレートを用いて120℃、60秒間プリベークを行い、膜厚1μmのレジスト膜を製造した。
石英ウエハー上に製造された重合体薄膜を試料側に、未処理の石英ウエハーを参照側にそれぞれ設置し、島津製作所製紫外・可視吸光光度計UV−3100(商品名)を用いて、波長範囲を192〜194nm、スキャンスピードを中速、サンプリングピッチを自動、スリット幅を2.0にそれぞれ設定して測定を行い、193nmにおける光線透過率を求めた。
2.レジスト組成物の評価
製造した重合体を用い、以下のようにしてレジスト組成物を調製して、その性能を評価した。
<レジスト組成物の調製>
製造したレジスト用重合体100部と、光酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムトリフレート2部と、溶媒であるPGMEA720部および乳酸エチル180部を混合して均一溶液とした後、孔径0.1μmのメンブレンフィルターで濾過し、レジスト組成物溶液を調製した。
<感度>
調製したレジスト組成物の溶液をシリコンウエハー上にスピンコートし、ホットプレートを用いて120℃で60秒間プリベークを行い、膜厚0.3μmのレジスト膜を製造した。次いで、ArFエキシマレーザー露光機(波長:193nm)により、ライン・アンド・スペースパターンのマスクを使用し、液浸液として純水を用いて露光を行なった(液浸露光)。露光後ホットプレートを用いて110℃で60秒間露光後ベークを行った。次いで、2.38%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて室温で現像し、純水で洗浄し、乾燥してレジストパターンを作成した。
この際、0.16μmのマスクパターンが0.16μmのレジスト線幅に転写される露光量(mJ/cm2)を感度として測定した。
<ディフェクト量>
上記で得られたレジストのパターンについて、KLAテンコール社製表面欠陥観察装置KLA2132(商品名)を用いて現像欠陥数を測定し、ディフェクト量とした。
<実施例1>
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、および温度計を備えたフラスコに、室温にて乳酸エチルを71.2部入れた後、ボールフィルターを用いて30分間乳酸エチル内に窒素を吹き込んだ。その後、窒素雰囲気下で攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
下記式(51)で表されるα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(以下、GBLMAと言う。)26.5部、
下記式(52)で表される2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(以下、MAdMAと言う。)32.8部、
下記式(53)で表される1−メタクリロイルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタン(以下、HAdMAと言う。)9.4部、
下記式(54)で表される2−メタクリロイルオキシメチル−3−ヒドロキシ−4−フロロナフタレン(以下、OHFMAと言う。)16.7部、
乳酸エチルを128.1部およびジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート(以下、DAIBと言う。)2.21部を混合した単量体溶液の入った滴下装置から、該単量体溶液を一定速度で4時間かけてフラスコ中へ滴下した。その後、80℃の温度を3時間保持した。
次いで、得られた反応溶液を約10倍量のメタノール/水=90容量%/10容量%の混合溶剤中に攪拌しながら滴下し、白色の析出物(レジスト用重合体A−1)の沈殿を得た。得られた沈殿を濾別し、再度、前記反応溶液に対して約10倍量のメタノールへ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、減圧下60℃で約40時間乾燥した。得られたレジスト用重合体A−1の分子特性、および重合体A−1を用いたレジスト組成物を評価した結果を表1に示した。
<実施例2>
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、および温度計を備えたフラスコに、室温にて乳酸エチルを71.6部入れた後、ボールフィルターを用いて30分間乳酸エチル内に窒素を吹き込んだ。その後、窒素雰囲気下で攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
下記式(55)で表される8−または9−アクリロイルオキシ−4−オキサトリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−3−オン(以下、OTDAと言う。)28.4部、
下記式(56)で表されるエチルシクロヘキシルメタクリレート(以下、ECHMAと言う。)32.1部、
下記式(57)で表される2−および3−シアノ−5−ノルボルニルメタクリレート(以下、CNNMAと言う。)13.1部、
下記式(58)で表される2−メタクリロイルオキシメチル−5,7−ジフロロ−6−ヒドロキシナフタレン(以下、HDFMAと言う。)12.2部、
乳酸エチルを128.9部およびDAIBを1.8部混合した単量体溶液の入った滴下装置から、該単量体溶液を一定速度で4時間かけてフラスコ中へ滴下した。その後、80℃の温度を3時間保持した。
以降の操作は重合体の析出溶剤をメタノール/水=90容量%/10容量%からメタノールへ変更した以外は実施例1と同様の操作で、レジスト用重合体A−2を得た。得られたレジスト用重合体A−2の分子特性、および重合体A−2を用いたレジスト組成物を評価した結果を表1に示した。
<実施例3>
OHFMAを下記式(59)で表される2−メタクリロイルオキシメチル−5−フロロ−6−ヒドロキシナフタレン(以下、PHFMAと言う。)16.7部
へ変更した以外は実施例1と同様の操作で、レジスト用重合体A−3を得た。得られたレジスト用重合体A−3の分子特性、および重合体A−3を用いたレジスト組成物を評価した結果を表1に示した。
<比較例1>
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、および温度計を備えたフラスコに、室温にて乳酸エチルを68.9部入れた後、ボールフィルターを用いて30分間乳酸エチル内に窒素を吹き込んだ。その後、窒素雰囲気下で攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
GBLMAを29.2部、MAdMAを39.3部、HAdMAを14.2部、乳酸エチルを124.1部およびDAIBを2.58部混合した単量体溶液の入った滴下装置から、該単量体溶液を一定速度で4時間かけてフラスコ中へ滴下した。その後、80℃の温度を3時間保持した。
次いで、得られた反応溶液を約10倍量のメタノール/水=80容量%/20容量%の混合溶剤中に攪拌しながら滴下し、白色の析出物(レジスト用重合体B−1)の沈殿を得た。得られた沈殿を濾別し、再度、前記反応溶液に対して約10倍量のメタノール/水=90容量%/10容量%の混合溶剤へ投入し、撹拌しながら沈殿の洗浄を行った。そして、洗浄後の沈殿を濾別し、減圧下60℃で約40時間乾燥した。得られたレジスト用重合体B−1の分子特性、および重合体B−1を用いたレジスト組成物を評価した結果を表1に示した。
<比較例2>
窒素導入口、攪拌機、コンデンサー、および温度計を備えたフラスコに、室温にて乳酸エチルを69.5部入れた後、ボールフィルターを用いて30分間乳酸エチル内に窒素を吹き込んだ。その後、窒素雰囲気下で攪拌しながら湯浴の温度を80℃に上げた。
下記式(75)で表される2−ビニル−6−ヒドロキシナフタレン(以下、HVNと言う。)6.8部、
GBLMAを27.2部、MAdMAを37.4部、HAdMAを9.4部、乳酸エチルを125.0部およびDAIBを2.76部混合した単量体溶液の入った滴下装置から、該単量体溶液を一定速度で4時間かけてフラスコ中へ滴下した。その後、80℃の温度を3時間保持した。
以降の操作は、実施例2と同様の操作で、レジスト用重合体B−2を得た。得られたレジスト用重合体B−2の分子特性、および重合体B−2を用いたレジスト組成物を評価した結果を表1に示した。
本発明のレジスト用重合体(実施例1〜3)は、構成単位(A)とは異なるナフタレン骨格を有する構成単位を含有する比較例2、のレジスト用重合体と比較して、露光波長における光線透過率に優れていた。
さらに、本発明のレジスト用重合体を用いたレジスト組成物(実施例1〜3)は、構成単位(A)を含有しない比較例1のレジスト用重合体を用いたレジスト組成物と比較して、十分な解像度を備えており、ディフェクトも少なく、ドライエッチング耐性にも優れていた。