JP4997534B2 - 電気式動力舵取装置 - Google Patents

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Description

本発明は、操舵輪を介して入力される逆入力を抑制する電気式動力舵取装置に関するものである。
従来より、操舵輪を介して入力される逆入力を抑制する電気式動力舵取装置として、下記特許文献1(第5実施形態)に示す、電動パワーステアリング装置が知られている。この電動パワーステアリング装置は、操舵輪を介して入力される逆入力を抑制するために、操舵トルクの変化速度(操舵トルクの単位時間当たりの変化量)に応じて補正電流を演算する。この補正電流を操舵トルクに基づき設定される基本アシスト電流に加算した後、車速に基づき設定される基本車速ゲインを乗算して目標駆動電流を演算する。そして、この目標駆動電流と、実際の駆動電流との偏差を減少させるようにモータの出力を補正することで、操舵輪を介して入力される逆入力が抑制される。
特開2006−131191号公報
ところで、操舵輪を介して入力される逆入力が大きい場合、この大きな逆入力を抑制するためには上述した補正電流を増加させてアシスト力を増大させる必要がある。しかし、大きな逆入力であっても抑制できるように、常に通常よりもアシスト力を増大させていると、通常の操舵時にふらつき感を感じることとなり運転者の操舵フィーリングに悪影響を及ぼしてしまうという問題がある。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、操舵フィーリングに悪影響を及ぼすことなく操舵輪を介して入力される逆入力を抑制し得る電気式動力舵取装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の電気式動力舵取装置では、車両のステアリングホイール(21)による操舵輪(FR、FL)の操舵を補助可能なアシスト力を発生させるモータ(40)と、前記ステアリングホイールによる操舵トルク(T)を検出するトルクセンサ(24)と、前記操舵トルクの単位時間当たりの変化量(dT/dt)に応じて補正電流値(i)を設定しこの補正電流値に応じて前記モータによるアシスト力の発生を制御する制御手段(30)と、を備えた電気式動力舵取装置(20)であって、前記制御手段は、前記補正電流値を、前記車両が制動中でありかつ操舵中でない場合には、前記車両が制動中でない場合または操舵中である場合の通常の電流値よりも大きな電流値に設定することを技術的特徴とする。
請求項1の発明では、制御手段は、操舵トルクの単位時間当たりの変化量に応じて設定される補正電流値に応じてモータによるアシスト力の発生を制御する際、上記補正電流値を、車両が制動中でありかつ操舵中でない場合には、車両が制動中でない場合または操舵中である場合の通常の電流値よりも大きな電流値に設定してモータを制御する。
これにより、車両が制動中でありかつ操舵中でない場合には、操舵輪を介して入力される逆入力を抑制するための補正電流値を通常よりも大きくすることができるので、大きな逆入力が操舵輪を介して入力されるような場合であってもこの大きな逆入力を十分に抑制することができる。また、車両が制動中でありかつ操舵中でないので、補正電流値を大きくしたことによりアシスト力が通常より増大しても運転者の操舵フィーリングに悪影響を及ぼすこともない。
さらに、車両が制動中でないまたは操舵中である場合には、逆入力を抑制するための補正電流値を大きくすることもないので、上述のように運転者の操舵フィーリングに悪影響を及ぼすこともない。
したがって、操舵フィーリングに悪影響を及ぼすことなく操舵輪を介して入力される逆入力を抑制することができる。
請求項2の発明では、制御手段は、操舵トルクの単位時間当たりの変化量に応じて設定される補正電流値に応じてモータによるアシスト力の発生を制御する際、上記補正電流値を、加速度センサにより検出される前後方向の加速度が制動中であると判断される所定の加速度閾値以下でありかつ操舵トルクの絶対値が操舵中でないと判断される所定のトルク閾値以下である場合には、前後方向の加速度が上記所定の加速度閾値以下でない場合または操舵トルクの絶対値が上記所定のトルク閾値以下でない場合の通常の電流値よりも大きな電流値に設定してモータを制御する。
このように前後方向の加速度および操舵トルクに基づいて車両が制動中でありかつ操舵中でないと判断される場合には、操舵輪を介して入力される逆入力を抑制するための補正電流値を通常よりも大きくすることができるので、大きな逆入力が操舵輪を介して入力されるような場合であってもこの大きな逆入力を十分に抑制することができる。また、車両が制動中でありかつ操舵中でないと判断されているので、補正電流値を大きくしたことによりアシスト力が通常より増大しても運転者の操舵フィーリングに悪影響を及ぼすこともない。
さらに、車両が制動中でないまたは操舵中であると判断される場合には、逆入力を抑制するための補正電流値を大きくすることもないので、上述のように運転者の操舵フィーリングに悪影響を及ぼすこともない。
したがって、操舵フィーリングに悪影響を及ぼすことなく操舵輪を介して入力される逆入力を抑制することができる。
請求項3の発明では、制御手段は、補正電流値を、操舵輪の回転を制動する制動手段が作動中であると判定される場合であって前後方向の加速度が所定の加速度閾値以下でありかつ操舵トルクの絶対値が所定のトルク閾値以下である場合には、制動手段が作動中でないと判定される場合、前後方向の加速度が上記所定の加速度閾値以下でない場合、または操舵トルクの絶対値が上記所定のトルク閾値以下でない場合の通常の電流値よりも大きな電流値に設定してモータを制御する。
このように、ステアリングホイールによる操舵トルクおよび車両の前後方向の加速度に加えて操舵輪の回転を制動する制動手段の作動の有無を考慮するので、車両が制動中であるか否かを正確に判定することができ、運転者の操舵フィーリングに影響を及ぼすような運転状況の場合にまで補正電流値を増加させてアシスト力を増大させることもない。したがって、操舵フィーリングに悪影響を及ぼすことなく操舵輪を介して入力される逆入力を抑制することができる。
請求項4の発明では、制御手段は、大きな電流値を、通常の電流値の1倍より大きく1.5倍以下に設定してモータを制御する。大きな電流値を通常の電流値の1.5倍より大きくなるように設定しても、逆入力を抑制する効果はほとんど変わらないからである。
これにより、車両が制動中かつ非操舵中であると判断される場合には、逆入力を抑制するための補正電流値を適切に大きく設定することができるので、大きな逆入力が操舵輪を介して入力されるような場合であってもこの大きな逆入力を十分に抑制することができる。
請求項5の発明では、制御手段は、大きな電流値を、前後方向の加速度の増加に伴い通常の電流値から増加させるように設定してモータを制御する。これにより、車両が制動中かつ非操舵中であると判断される場合には、逆入力を抑制するための補正電流値を前後方向の加速度に応じて適切に大きく設定することができるので、大きな逆入力が操舵輪を介して入力されるような場合であってもこの大きな逆入力を適切に抑制することができる。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。まず、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置の構成を図1(A)(B)に基づいて説明する。
図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20の全体構成例を示す構成図である。電気式動力舵取装置20は、主に、ステアリングホイール21、ステアリング軸22、ピニオン入力軸23、トルクセンサ24、減速機27、ラックアンドピニオン28、ロッド29、ECU30、モータ40等から構成されている。
図1(A)に示すように、ステアリングホイール21には、ステアリング軸22の一端側が接続されており、このステアリング軸22の他端側にはトルクセンサ24の入力側が接続されている。またこのトルクセンサ24の出力側には、ラックアンドピニオン28のピニオン入力軸23の一端側が接続されている。トルクセンサ24は、図略のトーションバーとこのトーションバーを挟むようにトーションバーの両端に取り付けられた2つのレゾルバとからなり、トーションバーの一端側を入力、他端側を出力とする入出力間で生じるトーションバーの捻れ量等を当該2つのレゾルバにより検出することで、ステアリングホイール21による操舵トルクTを検出し得るように構成されている。
トルクセンサ24の出力側に接続されるピニオン入力軸23の途中には、減速機27が連結されており、モータ40から出力されるアシスト力をこの減速機27を介してピニオン入力軸23に伝達し得るように構成されている。
即ち、図面には示されていないが、動力伝達機構としての減速機27は、モータ40の出力軸に取り付けられたモータギヤと減速機27の減速ギヤとが互いに噛合可能に構成されており、モータ40の出力軸が回転すると所定の減速比で減速機27の減速ギヤが回転することで、モータ40による駆動力(アシスト力)をピニオン入力軸23に伝達可能にしている。
一方、このピニオン入力軸23の他端側には、ラックアンドピニオン28を構成する図略のラック軸のラック溝に噛合可能なピニオンギヤが形成されている。
このラックアンドピニオン28では、ピニオン入力軸23の回転運動をラック軸の直線運動に変換可能にしており、またこのラック軸の両端にはロッド29が連結され、さらにこのロッド29の端部には図略のナックル等を介して操舵輪FR、FLが連結されている。これにより、ピニオン入力軸23が回転すると、ラックアンドピニオン28、ロッド29等を介して操舵輪FR、FLの実舵角を変化させることができるので、ピニオン入力軸23の回転量および回転方向に従った操舵輪FR、FLの操舵を可能にしている。
図1(B)は、ECU30等の構成例を示す回路ブロック図である。ECU30は、主に、A/D変換器等の周辺LSIやメモリ等を備えたMPU(Micro Processor Unit)31、トルクセンサ24等による各種センサ情報等を入出力可能な入出力インタフェイスI/F32、およびMPU31から出力されるモータ電流指令値に基づいてPWM制御によるモータ電流をモータ40に供給可能なモータ駆動回路35から構成されている。なお、図1(B)に示す符号37は、モータ40に実際に流れるモータ電流値iを検出し得る電流センサ37であり、この電流センサ37により検出されたモータ電流値iに関するセンサ情報は、モータ電流信号として入出力インタフェイスI/F32を介してMPU31に入力され得るように構成されている。
また、図1(A)に示すように、ECU30には、加速度センサ70および車速センサ80が電気的に接続されている。加速度センサ70は、車両の前後方向の加速度(前後加速度a)を検出し、その前後加速度aに対応した検出信号をECU30へ出力する。車速センサ80は、車両の走行速度(車速V)を検出し、その車速Vに対応した検出信号をECU30へ出力する。
このように構成することにより、電気式動力舵取装置20では、ステアリングホイール21による操舵トルクTをトルクセンサ24により検出し、その操舵トルクTに対応するアシスト力を発生するようにモータ40をECU30によって制御する。その際、後述するように、そのアシスト力を検出車速Vに応じて変化させ、ステアリングホイール21の操舵トルクTの単位時間当たりの変化量(トルク変化量dT/dt)に応じてモータ40の出力を補正する。
次に、ECU30におけるモータ駆動制御の処理を図2に基づいて説明する。図2は、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30によるモータ40の制御ブロック線図である。
図2に示すように、トルクセンサ24により検出された操舵トルクTは、安定性を高めるために位相補償部31aにより位相補償処理が行われた後、演算部31bに入力される。
演算部31bにおいては、操舵トルクTおよび車速Vと基本アシスト電流値iqとの対応関係が例えばマップや演算式としてMPU31のメモリ等に記憶されており、操舵トルクTおよび車速Vに対応する基本アシスト電流値iqが演算される。ここで、操舵トルクTと基本アシスト電流値iqとの対応関係は、例えば演算部31bに示すように、操舵トルクTが大きくなる程に基本アシスト電流値iqが大きくなるように設定されている(図2参照)。操舵トルクTと基本アシスト電流値iqの正負の符号は、右操舵時と左操舵時とで逆とされる。また、車速Vが大きくなる程に基本アシスト電流値iqが小さくなるように設定されている(図2参照)。
また、トルクセンサ24にて検出された操舵トルクTは、微分器31cにより微分され、操舵トルクTの単位時間当たりの変化量であるトルク変化量dT/dtとして演算部31dに入力される。
演算部31dにおいては、トルク変化量dT/dtと補正基準電流値iaとの対応関係が例えばマップや演算式としてMPU31のメモリ等に記憶されており、トルク変化量dT/dtに対応する補正基準電流値iaが演算される。ここで、トルク変化量dT/dtと補正基準電流値iaとの対応関係は、操舵輪FR、FLから入力される逆入力トルクを抑制するため、例えば演算部31dに示すように、トルク変化量dT/dtが大きくなる程に補正基準電流値iaが大きくなるように設定されている(図2参照)。
判定部31eにおいて、操舵トルクTおよび前後加速度aに基づいて逆入力抑制ゲインGを、1とG(後述する)とのどちらに設定するかについて判定される。この逆入力抑制ゲインGの判定については、後述する図3および図4のフローチャートにて詳細に説明する。なお、判定部31eでは、位相補償部31aにより位相補償処理が行われた操舵トルクTと前後加速度aとに基づいて逆入力抑制ゲインGを、1とG(後述する)とのどちらに設定するかについて判定してもよい。
乗算器31fにおいて、演算部31dにて演算された補正基準電流値iaに、判定部31eにて設定された逆入力抑制ゲインGを乗算することで補正電流値iが演算される。
加算器31gにおいて、演算部31bにて演算された基本アシスト電流値iqに、乗算器31fにて演算された補正電流値iが加算されることで、モータ40の目標駆動電流値iqが求められる。この目標駆動電流値iqと電流センサ37にて検出されたモータ電流値iとの偏差を低減するように設定されるモータ電流指令値に基づいてモータ駆動回路35によりモータ40を駆動制御することで、操舵輪FR、FLから入力される逆入力トルクを抑制し得る適正なアシスト力を発生させる。
ところで、上述したように操舵輪FR、FLを介して入力される逆入力が大きい場合であってもその逆入力を抑制できるように、常に通常よりもアシスト力を増大させると、通常の操舵時にふらつき感を感じることとなり運転者の操舵フィーリングに悪影響を及ぼしてしまう。
一方、制動中かつ非操舵中であれば、大きな逆入力を抑制するためにアシスト力を通常よりも増大させたとしても上述のような操舵時のふらつき感を感じるような問題は発生しない。そこで、本第1実施形態においては、車両が制動中かつ非操舵中であると判断される場合のみ、大きな逆入力をも抑制するために大きなアシスト力を発生させるようにモータ40の出力を補正している。
以下、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30によるモータ40の出力を補正する処理について、図3および図4を用いて説明する。図3は、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30によるモータ駆動制御の流れを示すフローチャートであり、図4は、図3中の補正電流値演算処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
まず、図3のステップS101において、各センサにより検出される操舵トルクT、車速V、モータ電流値iおよび前後加速度a等が読み込まれる。次に、ステップS103において、位相補償部31aにより位相補償処理が行われた操舵トルクTに基づいて演算部31bで基本アシスト電流値iqが演算される。
次に、図4の補正電流値演算処理ルーチンS200における処理がなされる。まず、ステップS201にて、微分器31cにより操舵トルクTを微分してトルク変化量dT/dtが演算されると、ステップS203にて、演算部31dによりトルク変化量dT/dtに基づき補正基準電流値iaが設定される。
以下、ステップS205〜ステップS211における処理は判定部31eにおける処理である。
ステップS205において、加速度センサ70により検出される前後加速度aが制動中であると判断される加速度閾値であるa以下であるか否かについて判定される。なお、本第1実施形態において、加速度閾値aは、例えば、−0.6Gに設定されている。ここで、前後加速度aが加速度閾値a以下でなければ(S205でNo)、制動中ではないと判定されて、ステップS209にて逆入力抑制ゲインGが1に設定される。
一方、前後加速度aが加速度閾値a以下であれば(S205でYes)、ステップS207において、操舵トルクTの絶対値が操舵中でないと判断されるトルク閾値であるTb以下であるか否かについて判定される。なお、本第1実施形態において、トルク閾値Tbは、例えば、1.0Nmに設定されている。
ここで、操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下でなければ(S207でNo)、操舵中であると判定されて、ステップS209にて逆入力抑制ゲインGが1に設定される。
一方、操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下であれば(S207でYes)、ステップS211において、逆入力抑制ゲインGは、操舵輪FR、FLを介して入力される逆入力が大きい場合であっても十分に抑制できるように、1よりも大きな値に設定されたゲインであるGに設定される。なお、本第1実施形態において、Gは、1.5に設定されているが、1より大きく1.5より小さくなるように設定されてもよい。
ステップS209またはS211にて逆入力抑制ゲインGが設定されると、ステップS213において、乗算器31fにより補正基準電流値iaに逆入力抑制ゲインGを乗算して補正電流値iが演算される。
上述のように補正電流値演算処理ルーチンS200にて補正電流値iが演算されると、図3のステップS301において、加算器31gにより基本アシスト電流値iqに補正電流値iを加算して目標駆動電流値iqが演算される。
ステップS303において、目標駆動電流値iqと電流センサ37にて検出されたモータ電流値iとの偏差を低減するように設定されるモータ電流指令値に基づいてモータ駆動回路35によりモータ40が駆動制御される。このように、車両が制動中かつ非操舵中であると判断される場合のみ、大きな逆入力をも抑制するための大きなアシスト力を発生させるようにモータ40の出力を補正している。
しかる後に制御を終了するか否かを、例えば図略のイグニッションスイッチがオンかオフかにより判断し(ステップS305)、制御を終了しない場合は上記ステップS101からの処理を繰り返す。
以上説明したように、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、操舵トルクTの単位時間当たりの変化量であるトルク変化量dT/dtに応じて設定される補正電流値iに応じてモータ40によるアシスト力の発生を制御する際、上記補正電流値iを、前後加速度aが加速度閾値a以下であり(制動中であり)かつ操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下である(操舵中でない)場合には、前後加速度aが加速度閾値a以下でない(制動中でない)場合または操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下でない(操舵中である)場合の通常の電流値(逆入力抑制ゲインG=1)よりも大きな電流値(逆入力抑制ゲインG=G)に設定してモータ40を制御する。
このように前後加速度aおよび操舵トルクTに基づいて車両が制動中でありかつ操舵中でないと判断される場合には、操舵輪FR、FLを介して入力される逆入力を抑制するための補正電流値iを通常(G=1)よりも大きくすることができるので、大きな逆入力が操舵輪FR、FLを介して入力されるような場合であってもこの大きな逆入力を十分に抑制することができる。また、車両が制動中でありかつ操舵中でないと判断されているので、補正電流値iを大きくしたことによりアシスト力が通常より増大しても運転者の操舵フィーリングに悪影響を及ぼすこともない。
さらに、車両が制動中でないまたは操舵中であると判断される場合には、逆入力を抑制するための補正電流値iを大きくすることもないので、上述のように運転者の操舵フィーリングに悪影響を及ぼすこともない。
したがって、操舵フィーリングに悪影響を及ぼすことなく操舵輪FR、FLを介して入力される逆入力を抑制することができる。
また、本第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、車両が制動中かつ非操舵中であると判断される場合には、逆入力抑制ゲインGを、操舵輪FR、FLを介して入力される逆入力が大きい場合であっても十分に抑制できるように1よりも大きな電流値に設定されたゲインであるG(1.5)に設定してモータ40を制御する。
これにより、車両が制動中かつ非操舵中であると判断される場合には、逆入力を抑制するための補正電流値iを適切に大きく設定することができるので、大きな逆入力が操舵輪FR、FLを介して入力されるような場合であってもこの大きな逆入力を十分に抑制することができる。なお、上述したようにGは、1より大きく1.5より小さくなるように設定されてもよい。Gを1.5よりも大きくなるように設定しても、逆入力を抑制する効果はほとんど変わらないからである。
なお、本発明の第1実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、前後加速度aに基づいて車両が制動中であるか否かについて判定し、操舵トルクTに基づいて車両が操舵中であるか否かについて判定することに限らず、車速等の運転状態に基づいて車両が制動中であるか否か、車両が操舵中であるか否かについて判定するようにしてもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る電気式動力舵取装置について図5を参照して説明する。図5は、第2実施形態における補正電流値演算処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
本第2実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、図3中の補正電流値演算処理を図4に示すフローチャートに代えて図5に示すフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る電気式動力舵取装置と異なる。
以下、本第2実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30によるモータ40の出力を補正する処理について、図3および図5を用いて説明する。
第1実施形態と同様に、ステップS101にて各センサにより検出される操舵トルクT、車速V、モータ電流値iおよび前後加速度a等が読み込まれると、ステップS103にて基本アシスト電流値iqが演算される。そして、図5の補正電流値演算処理ルーチンS200のステップS201にて、トルク変化量dT/dtが演算されると、ステップS203にて、補正基準電流値iaが設定される。
そして、前後加速度aが加速度閾値a以下でない場合(S205でNo)、または、操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下でない場合(S207でNo)には、ステップS209にて逆入力抑制ゲインGが1に設定される。
一方、前後加速度aが加速度閾値a以下である場合(S205でYes)、かつ、操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下である場合(S207でYes)には、操舵輪FR、FLを介して入力される逆入力が大きい場合であっても車両の制動状況に応じて当該逆入力を適切に抑制できるように、ステップS212において、逆入力抑制ゲインGは、前後加速度aの増加に伴い、1から1.5まで直線的に増加するように設定される。
ステップS209にて逆入力抑制ゲインGが1に設定されるか、ステップS212にて逆入力抑制ゲインGが前後加速度aに応じて設定されると、ステップS213にて補正電流値iが演算される。
そして、図3のステップS301で補正電流値iに基づいて目標駆動電流値iqが演算されて、ステップS303でこの目標駆動電流値iqに応じて設定されるモータ電流指令値に基づいてモータ駆動回路35によりモータ40が駆動制御される。
以上説明したように、本第2実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、ECU30は、操舵トルクTの単位時間当たりの変化量であるトルク変化量dT/dtに応じて設定される補正電流値iに応じてモータ40によるアシスト力の発生を制御する際、上記補正電流値iを、前後加速度aが加速度閾値a以下であり(制動中であり)かつ操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下である(操舵中でない)場合には、前後加速度aの増加に伴い、前後加速度aが加速度閾値a以下でない(制動中でない)場合または操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下でない(操舵中である)場合の通常の電流値(逆入力抑制ゲインG=1)から増加させるように設定してモータ40を制御する。
これにより、車両が制動中かつ非操舵中であると判断される場合には、逆入力を抑制するための補正電流値iを前後加速度aに応じて適切に大きく設定することができるので、大きな逆入力が操舵輪FR、FLを介して入力されるような場合であってもこの大きな逆入力を適切に抑制することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る電気式動力舵取装置について図6〜図8を参照して説明する。図6は、第3実施形態に係る電気式動力舵取装置20の全体構成例を示す構成図である。図7は、第3実施形態に係る電気式動力舵取装置のECUによるモータの制御ブロック線図である。図8は、第3実施形態における補正電流値演算処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
本第3実施形態に係る電気式動力舵取装置20は、運転者が操舵輪FR、FL等の回転を制動するときに踏み込まれるブレーキペダルBPの踏み込み量を検出しその踏み込み量に対応した検出信号(ブレーキ信号Sbk)をECU30へ出力するブレーキペダルセンサ90を採用するとともに(図6および図7参照)、図3中の補正電流値演算処理を図4に示すフローチャートに代えて図8に示すフローチャートに基づいて演算処理している点が、上記第1実施形態に係る電気式動力舵取装置と異なる。
本第3実施形態においては、図7に示すように、判定部31eにおいて、操舵トルクTおよび前後加速度aに加えて、ブレーキ信号Sbkに基づいて逆入力抑制ゲインGを、1とGとのどちらに設定するかについて判定される。
以下、本第3実施形態に係る電気式動力舵取装置20のECU30によるモータ40の出力を補正する処理について、図3および図8を用いて説明する。
第1実施形態と同様に、ステップS101にて各センサにより検出される操舵トルクT、車速V、モータ電流値iおよび前後加速度a等が読み込まれると、ステップS103にて基本アシスト電流値iqが演算される。そして、図8の補正電流値演算処理ルーチンS200のステップS201にて、トルク変化量dT/dtが演算されると、ステップS203にて、補正基準電流値iaが設定される。
次に、ステップS205において、前後加速度aが加速度閾値a以下であれば(S205でYes)、ステップS206において、ブレーキ作動中か否かについて判定される。ここで、運転者がブレーキペダルBPを踏み込んでおらずブレーキ信号SbkがECU30に入力されていなければ、ブレーキ作動中ではないと判定されて(S206でNo)、ステップS209にて逆入力抑制ゲインGが1に設定される。なお、ステップS206における処理は、特許請求の範囲に記載の「判定手段」に相当するものである。
一方、ブレーキ信号SbkがECU30に入力されており、ブレーキ作動中であると判定されると(S206でYes)、ステップS207にて操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下であるか否かについて判定される。
ステップS205、S206、S207のいずれか1つにてNoと判定されてステップS209にて逆入力抑制ゲインGが1に設定されるか、ステップS205、S206、S207にて全てYesと判定されてS211にて逆入力抑制ゲインGがGに設定されると、ステップS213にて補正電流値iが演算される。
そして、図3のステップS301で補正電流値iに基づいて目標駆動電流値iqが演算されて、ステップS303でこの目標駆動電流値iqに応じて設定されるモータ電流指令値に基づいてモータ駆動回路35によりモータ40が駆動制御される。
以上説明したように、本第3実施形態に係る電気式動力舵取装置20では、補正電流値iを、ブレーキペダルBPの踏み込み量に対応したブレーキ信号SbkがECU30に入力されてブレーキ作動中であると判定される場合であって前後加速度aが加速度閾値a以下でありかつ操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下である場合には、ブレーキ作動中でないと判定される場合、前後加速度aが加速度閾値a以下でない場合、または操舵トルクTの絶対値がトルク閾値Tb以下でない場合の通常の電流値(逆入力抑制ゲインG=1)よりも大きな電流値(逆入力抑制ゲインG=G)に設定してモータ40を制御する。
このように、ステアリングホイール21による操舵トルクTおよび車両の前後加速度aに加えて操舵輪FR、FLの回転を制動するブレーキの作動の有無を考慮するので、車両が制動中であるか否かを正確に判定することができ、運転者の操舵フィーリングに影響を及ぼすような運転状況の場合にまで補正電流値iを増加させてアシスト力を増大させることもない。したがって、操舵フィーリングに悪影響を及ぼすことなく操舵輪FR、FLを介して入力される逆入力を抑制することができる。
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記各実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)上記第2実施形態において、図5のステップS212にて設定される逆入力抑制ゲインGは、前後加速度aの増加に伴い1から1.5まで直線的に増加するように設定されることに限らず、運転状況や車両の重量等に応じて1から1.5まで変化するように設定されてもよい。
(2)上記第2実施形態において、図5のステップS212にて設定される逆入力抑制ゲインGは、前後加速度aの増加に伴い1から1.5まで直線的に増加するように設定されることに限らず、前後加速度aの増加に伴い1から1.5よりも小さな所定の電流値まで直線的に増加するように設定されてもよい。
また、図5のステップS212にて設定される逆入力抑制ゲインGは、前後加速度aの増加に伴い1から1.5または1.5よりも小さな所定の電流値まで、曲線状に増加するように設定されてもよいし、ステップ状に増加するように設定されてもよい。
(3)上記第3実施形態において、図8のステップS211にて設定される逆入力抑制ゲインGは、Gに設定されることに限らず、上記第2実施形態にて述べたように前後加速度aの増加に伴い増加するように設定されてもよい。
(4)上記各実施形態では、図1または図6に示すように、モータ40から出力されるアシスト力を減速機27を介してピニオン入力軸23に伝達し得る、いわゆるコラム式の電気式動力舵取装置20を例示して説明したが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、ラックアンドピニオン28にモータおよび減速機を内蔵し、このモータから出力されるアシスト力を減速機を介してラック機構に伝達し得る、いわゆるラック式の電気式動力舵取装置に適用してもよい。
また、ラック軸とモータとを平行に配置したいわゆるラックパラレル式の電気式動力舵取装置、ピニオン入力軸23を有するピニオン部にモータを配置したいわゆるピニオン式の電気式動力舵取装置、または、いわゆるデュアルピニオン式の電気式動力舵取装置等に適用してもよい。
図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る電気式動力舵取装置の全体構成例を示す構成図で、図1(B)は、ECU等の構成例を示す回路ブロック図である。 第1実施形態に係る電気式動力舵取装置のECUによるモータの制御ブロック線図である。 第1実施形態に係る電気式動力舵取装置のECUによるモータ駆動制御の流れを示すフローチャートである。 図3中の補正電流値演算処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 第2実施形態における補正電流値演算処理のサブルーチンを示すフローチャートである。 第3実施形態に係る電気式動力舵取装置の全体構成例を示す構成図である。 第3実施形態に係る電気式動力舵取装置のECUによるモータの制御ブロック線図である。 第3実施形態における補正電流値演算処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
符号の説明
20…電気式動力舵取装置
21…ステアリングホイール
24…トルクセンサ
30…ECU(制御手段)
31…MPU
40…モータ
70…加速度センサ
90…ブレーキペダルセンサ
a…前後加速度(車両の前後方向の加速度)
…加速度閾値(所定の加速度閾値)
dT/dt…トルク変化量(操舵トルクの単位時間当たりの変化量)
FR、FL…操舵輪
G、G…逆入力抑制ゲイン
i…モータ電流
ia…補正基準電流値
iq…基本アシスト電流値
iq…目標駆動電流値
…補正電流値
Sbk…ブレーキ信号
T…操舵トルク
Tb…トルク閾値(所定のトルク閾値)

Claims (5)

  1. 車両のステアリングホイールによる操舵輪の操舵を補助可能なアシスト力を発生させるモータと、
    前記ステアリングホイールによる操舵トルクを検出するトルクセンサと、
    前記操舵トルクの単位時間当たりの変化量に応じて補正電流値を設定しこの補正電流値に応じて前記モータによるアシスト力の発生を制御する制御手段と、
    を備えた電気式動力舵取装置であって、
    前記制御手段は、前記補正電流値を、前記車両が制動中でありかつ操舵中でない場合には、前記車両が制動中でない場合または操舵中である場合の通常の電流値よりも大きな電流値に設定することを特徴とする電気式動力舵取装置。
  2. 前記車両の前後方向の加速度を検出する加速度センサを備え、
    前記制御手段は、前記補正電流値を、前記前後方向の加速度が制動中であると判断される所定の加速度閾値以下でありかつ前記操舵トルクの絶対値が操舵中でないと判断される所定のトルク閾値以下である場合には、前記前後方向の加速度が所定の加速度閾値以下でない場合または前記操舵トルクの絶対値が所定のトルク閾値以下でない場合の通常の電流値よりも大きな電流値に設定することを特徴とする請求項1記載の電気式動力舵取装置。
  3. 前記操舵輪の回転を制動する制動手段が作動中であるか否かを判定する判定手段を備え、
    前記制御手段は、前記補正電流値を、前記制動手段が作動中であると判定される場合であって前記前後方向の加速度が前記所定の加速度閾値以下でありかつ前記操舵トルクの絶対値が前記所定のトルク閾値以下である場合には、前記制動手段が作動中でないと判定される場合、前記前後方向の加速度が所定の加速度閾値以下でない場合、または前記操舵トルクの絶対値が所定のトルク閾値以下でない場合の通常の電流値よりも大きな電流値に設定することを特徴とする請求項2記載の電気式動力舵取装置。
  4. 前記制御手段は、前記大きな電流値を、前記通常の電流値の1倍より大きく1.5倍以下に設定することを特徴とする請求項2または3記載の電気式動力舵取装置。
  5. 前記制御手段は、前記大きな電流値を、前記前後方向の加速度の増加に伴い前記通常の電流値から増加させるように設定することを特徴とする請求項2または3記載の電気式動力舵取装置。
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