以下に、図面を参照して本発明に係る表面形状計測装置の実施形態について説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明による表面形状計測装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。この表面形状計測装置1Aは、計測光供給部10と、計測光学系20と、サンプルステージ(計測位置制御手段)25と、検出手段30と、参照光生成部40と、計測制御装置50とを備えて構成されている。
本実施形態による表面形状計測装置1Aは、所定の波長幅を有する計測光を試料Sの上面である計測対象面S1に照射し、計測対象面S1からの反射光、及び反射光に対する光路長差が制御可能な参照光を干渉させて、得られる干渉光強度の光路長差についての変化から計測対象面S1の形状を計測するように構成されている。ここで、表面形状計測装置1Aにおける計測光の照射方向となる垂直方向をZ方向、Z方向に直交する水平方向をX方向及びY方向とし、また、紙面をXZ平面とする。
計測対象面S1の形状計測に用いられる計測光は、計測光供給部10によって供給される。計測光供給部10は、X方向に沿った軸Axを光軸とし、電源11によって駆動され白色光を供給する計測光源12と、白色光を平行光とするレンズ13と、波長フィルタであるバンドパスフィルタ14とを有している。計測光源12としては、ハロゲンランプが例示される。この計測光供給部10の構成において、計測光源12からの白色光が所定の透過特性を有するバンドパスフィルタ14を透過することにより、所定の中心波長、及び波長幅を有する計測光が生成される。生成された計測光は、図1に示すように、計測光供給部10からX方向に沿って計測光学系20へと供給される。
計測光学系20は、Z方向に沿った軸Azを光軸とし、対物レンズ21と、ビームスプリッタ22とを有して構成されている。ビームスプリッタ22は、光軸Azに対して45°の角度で傾いて配置されており、計測光の一部を反射し残りの部分を透過することによって計測光を2つに分岐する。ビームスプリッタ22で反射された計測光供給部10からの計測光は、下方に位置するサンプルステージ25上の試料Sの計測対象面S1へと光軸Azに沿って照射される。
ビームスプリッタ22とサンプルステージ25との間には、対物レンズ21が設置されている。この対物レンズ21は、無限遠補正対物レンズであって、ビームスプリッタ22からの計測光を計測対象面S1上の計測位置へと集束させる。対物レンズ21の光学倍率は、測定視野や、水平面内の分解能等によって決定すればよい。なお、対物レンズ21は有限遠補正対物レンズも使用することが可能である。また、対物レンズ21は、試料Sの計測対象面S1で反射された反射光を集光してビームスプリッタ22に向けて出射する。このようにビームスプリッタ22から対物レンズ21に入射されて計測対象面S1に照射された後、反射光として対物レンズ21によって集光されて再度ビームスプリッタ22に到達する光路が計測光路である。
一方、ビームスプリッタ22を透過した計測光は、ビームスプリッタ22に対して計測光供給部10と反対側に配置された参照光生成部40に、図1に示すように、計測光学系20からX方向に沿って入射される。参照光生成部40は、複数(図1では4つ)の参照面41a〜41dを利用して参照光を生成してビームスプリッタ22に戻す。
参照光生成部40は、参照ミラー41と、対物レンズ42とを有しており、参照ミラー41は、スライドステージ43に取り付けられている。
参照ミラー41の構成について、図1及び図2を利用して説明する。図2は、図1に示した参照ミラーの斜視図である。
参照ミラー41は、鏡面側が階段状に構成されており高さ(図1においてX方向の長さ)が異なるミラーである。参照ミラー41が有する各段の面が対物レンズ42から照射される光を反射させて参照光とする参照面41a〜41dである。
図2に示すように、各参照面41a〜41dは、一方向(図2のY方向)に延在している。各参照面41a〜41dの面積は測定視野以上あればよく、参照面41a〜41dの幅(図1及び図2のZ方向の長さ)β1は、数μmから数mmとすることができる。また、隣接する参照面41a〜41d間の段差高さαはλ/(n×2)である。ここで、λは、計測光の中心波長であり、nは1以上の整数であり、例えば4である。なお、後述するように段差高さαは、計測光の波長に基づく微小計測間隔であり参照光と反射光との光路長差を生じさせるためのものであり、上記段差高さαの式に含まれる数字2は、往復の光路長を考慮したものである。この参照ミラー41は、例えば、微細加工技術によって作製される。
参照ミラー41は、図1に示すように、Z方向に移動可能なスライドステージ43上に設けられている。そして、参照ミラー41は、段方向(参照面41a〜41dに略直交する方向)がX方向と一致しており、例えば参照面41cが対物レンズ42の集束位置(焦点位置)になるように配置されている。
対物レンズ42は、対物レンズ21と同様に無限遠補正対物レンズである。なお、対物レンズ21に有限遠補正対物レンズを使用した場合は、対物レンズ42も有限補正のものとする。対物レンズ42は、ビームスプリッタ22に対して対物レンズ21に対応する位置、すなわち、図1の場合では、ビームスプリッタ22から対物レンズ21,42までの距離が同じになるように配置されている。対物レンズ42は、ビームスプリッタ22で分岐された計測光の他方の光を集束して、スライドステージ43上に設けられた参照ミラー41に照射する。この際、対物レンズ42は、隣接する参照面41a〜41dに一度に光が照射されないようにビープスプリッタ22を透過した光を集束するようになっている。
このような参照光生成部40の構成において、計測光学系20から対物レンズ42に入射した光が、集束され参照面41a〜41dで反射した後、参照光として対物レンズ21を通ってビームスプリッタ22に到達する光路が参照光路となっている。この参照光路を通ってビームスプリッタ22に到達した参照光は、計測光路を通った反射光と干渉し、得られた干渉光が光軸Azに沿って対物レンズ21の上方へと出射される。
上述した計測光路の光路長は、試料Sと対物レンズ21との間の距離を変えることによって変化する。また、参照光路の光路長は、参照ミラー41をZ方向に移動させることによって対物レンズ42からの光が照射される参照面41a〜41dを変更することよって変化する。表面形状計測装置1Aでは、上記計測光路及び参照光路の光路長を変化させることで反射光と参照光との光路長差が制御可能となっている。
対物レンズ21及びビームスプリッタ22に対して光軸Azに沿って上方には、検出手段30が設置されている。検出手段30は、ビームスプリッタ22側から順に配置される結像レンズ31と、CCDカメラ32とを有する。対物レンズ21に有限遠補正対物レンズを使用している場合には、結像レンズ31は用いなくてもよい。CCDカメラ32は、計測光学系20において反射光及び参照光が干渉した干渉光の強度(干渉光強度)を検出する。ビームスプリッタ22から上方へと出射された干渉光は、結像レンズ31によって集束されつつCCDカメラ32へと入射し、その干渉光強度がCCDカメラ32によって検出される。
計測光学系20による試料Sの計測対象面S1の計測条件は、試料Sを載置するサンプルステージ25、及び、参照ミラー41を載置するスライドステージ43によって設定または変更される。サンプルステージ25は、水平方向(X方向、Y方向)及び鉛直方向(Z方向)に駆動可能な電動ステージであり、試料Sの計測対象面S1における計測位置を設定するために用いられる。スライドステージ43は、一軸方向(図1では、Z方向)に駆動可能な電動ステージであり、対物レンズ42で集束される光が照射される参照面41a〜41dを選択するためのものである。
サンプルステージ25及びスライドステージ43の駆動は、それぞれサンプルステージコントローラ60、及びスライドステージコントローラ65によって制御されている。上記サンプルステージ25及びスライドステージ43の移動分解能は例えばサブμm単位でよい。
これらの計測光供給部10、計測光学系20、検出手段30、サンプルステージ25、及びスライドステージ43に対し、コンピュータなどからなる計測制御装置50が設けられている。この計測制御装置50には、CCDカメラ32、サンプルステージコントローラ60、及びスライドステージコントローラ65が接続されている。計測制御装置50は、表面形状計測装置1Aの上記各部の動作を制御することにより、試料Sの計測対象面S1の形状計測を制御する。
計測制御装置50は、光路長差制御部51と、表面形状導出部52とを有している。光路長差制御部51は、試料Sの表面形状の計測において、計測光学系20での反射光と参照光との光路長差などの計測条件を制御する。また、表面形状導出部52は、CCDカメラ32によって検出された反射光と参照光との干渉光強度の光路長差についての変化から計測対象面S1の形状を導出する。光路長差制御部51及び表面形状導出部52の機能については、表面形状の計測方法を説明するときに詳述する。
次に、図1に示した表面形状計測装置1Aを用いた表面形状計測方法の一例として、所定の波長幅を有する計測光を用いた表面形状計測方法(垂直走査白色干渉法)について、図3を参照して説明する。図3は、計測対象面S1からの反射光と、参照ミラー41からの参照光との干渉信号を示すグラフであり、横軸は、サンプルステージ25に対する対物レンズ21の相対的な位置(以下、単に、「対物レンズの位置」という)を、縦軸は干渉光強度を示している。
このような計測光を用いた形状計測では、計測光が波長幅に応じた短いコヒーレント長を有する。このため、図3のグラフFに示すように、得られる干渉信号は反射光と参照光との光路長が一致して光路長差=0となる対物レンズ21の位置において干渉強さ(干渉信号の振幅)が最大となり、その付近の一定範囲で干渉が発生している信号となる。したがって、光路長差を変化させて干渉光強度の変化を計測し、その干渉強さが最大となる位置を求めることにより、そのときの反射光及び参照光の光路長から、計測対象面S1の水平面内での計測を実施した場所での計測対象面S1の垂直方向(計測光の照射方向)の高さを導出することができる。
また、図3のグラフGは干渉信号Fの包絡線を示している。このような包絡線Gは光路長差に対する干渉強さの変化に対応しており、したがって、包絡線Gのピーク位置が計測対象面S1の垂直方向の高さに対応している。
以下においては、反射光と参照光とが干渉可能な対物レンズ21の位置(光路長差)の範囲を可干渉距離として、図3に示す通り定義することとする。この可干渉距離(コヒーレンス長)は、計測光の波長幅によって決まるものである。また、この光路長差の制御は、図1に示した表面形状計測装置1Aにおいては試料SをZ方向に駆動すること及び参照ミラー41をZ方向に駆動することによって行われる。
干渉光強度の光路長差についての変化における上記したピーク位置の決定、及びそれによる計測対象面S1の垂直方向の高さの導出は、図3に示した干渉信号Fの波形全体を一定の計測間隔で取得することによって実行することができる。この場合、干渉信号Fの計測間隔は、計測光の波長等を考慮してある程度以上の細かい間隔とする必要がある。
そこで、表面形状計測装置1Aを利用した表面形状計測方法では、図3のグラフ中に模式的に示すように、反射光と参照光との光路長差について、微小計測間隔、及び微小計測間隔よりも大きい広域計測間隔を利用して、干渉信号の計測を行う。
これらの計測間隔のうち、微小計測間隔は、特定の光路長差の近傍における局所的な干渉信号、及びそのピーク値を求めるための計測間隔であり、表面形状計測装置1Aでは、隣接する参照面41a〜41d間の段差高さαとして設定されている。一方、広域計測間隔は、可干渉範囲における上記局所的な干渉信号(干渉カーブ)、及びそのピーク位置を求めるための計測間隔であり、好ましくは、計測光の波長幅(コヒーレンス長)等に基づいて設定される。この広域計測間隔は、サンプルステージ25を駆動して試料SをZ方向に移動させることで試料Sと対物レンズ21との間の距離を変えることで調整される。
微小計測間隔及び広域計測間隔を利用した計測方法では、計測対象面S1におけるある計測位置(第1の計測位置)において所定の微小計測間隔に対応する光路長差で参照光の光路長を所定回数変化させながら干渉光強度を計測する。そして、第1の計測位置から広域計測間隔分だけ鉛直方向に移動した計測対象面S1における次の計測位置(第2の計測位置)において、第1の計測位置の場合と同様にして所定回数分の干渉光強度を計測する。これらを繰り返しながら、鉛直方向に互いに広域計測間隔離れた複数の計測位置での局所的な計測を実施する。そして、それらの計測結果と、干渉信号が正弦波信号で近似可能であることとを利用して、表面形状導出部52が計測対象面S1の垂直方向の高さを導出する。
表面形状導出部52による計測対象面S1の垂直方向の高さを導出する方法について説明する。
前述したように干渉信号は正弦波信号で近似可能である。よって、各計測位置において検出された微小計測間隔での干渉光強度を、正弦波近似計算にて補完し、その計測位置での局所的な干渉信号を算出する。次いで、各計測位置での干渉信号及びそのピーク強度から更に図3に示した包絡線Gを算出し、次いで、その包絡線Gのピーク位置を特定して、計測対象面S1の高さを算出する。
ところで、正弦波信号は以下の式で表される。
ここで、Iは干渉信号の強度、Aは振幅、Bはオフセット、φは位相、φ
0は初期位相である。
微小な変位量は位相の変位量としてφで表されるので、式(1)において未知数は3個となる。よって、最低3点で計測を行えば、上記した干渉光強度Iの式は一意に決まることになる。従って、正弦波信号近似を利用して表面形状を導出する場合、参照ミラー41が有する複数の参照面の数は3つ以上が好ましく、図1では、4つの参照面41a〜41dとしている。これにより、参照ミラー41をZ方向に移動させることで、微小計測間隔での計測を3回以上可能である。また、広域計測間隔は可干渉距離の1/4以下が好ましい。これにより、必ず可干渉距離内に3ヶ所以上干渉光強度が存在する場所を測定でき、結果として、包絡線Gを算出できるからである。
なお、ここでは、局所的な干渉信号のピーク値を、正弦波信号近似を利用するとしたが、標準偏差計算によってそのピーク値を算出してもよい。標準偏差計算でピーク値を算出する場合には、微小計測間隔での計測は4回以上必要であり、参照ミラー41が有する複数の参照面の数は、4つ以上必要となる。
以下、図4を利用して上記表面形状計測についてより具体的に説明する。図4は、表面形状計測装置を利用した表面形状計測の一例のフローチャートである。
先ず、計測制御装置50の光路長差制御部51において、計測対象となる試料Sの種類、計測光供給部10から供給される計測光の中心波長λ、波長幅、及び、参照ミラー41で実現されている段差高さ(微小計測間隔)α等の諸条件を考慮して、広域計測間隔を設定する(S101)。
また、微小計測間隔及び広域計測間隔を参照し、試料Sの計測対象面S1上で設定された計測位置に対する計測条件を設定する(S102)。ここで設定される計測条件としては、例えば、干渉強さの垂直方向での広域計測点数、その広域計測点数によって決まる各計測位置において実施する微小計測間隔での局所的な計測点数、などがある。
なお、ステップS101及びS102において設定される広域計測間隔及び計測条件については、光路長差制御部51において計測毎に設定してもよく、あるいはあらかじめ設定されたものを光路長差制御部51に記憶させておいてもよい。また、広域計測間隔及び計測条件の設定は、自動で、または操作者の入力等によって手動で行うことができる。
計測条件の設定が終了したら、設定した各計測位置における計測対象面S1の垂直方向の高さの計測を実行する。このとき、光路長差制御部51は、設定された計測条件にしたがってサンプルステージコントローラ60を制御することでサンプルステージ25を駆動し、これによって反射光と参照光との光路長差を制御する。まず、サンプルステージ25によって試料SをZ方向に移動させて、試料Sをサンプルステージ25によって設定された第1の計測位置に移動させる(S103)。
続いて、微小計測間隔での局所的な干渉光強度の変化を計測する(S104)。具体的には、光路長差制御部51はスライドステージコントローラ65を制御することでスライドステージ43を駆動して、参照面41a〜41dに順に光を照射させる。そして、各参照面41a〜41dに光が照射されて順に生成される参照光と、反射光との干渉光強度をCCDカメラ32が検出する。なお、参照面41a〜41dの数より、微小計測間隔での設定された計測回数が少ない場合は、その計測回数に対応する数だけ、参照面41a〜41dに光を照射するようにすればよい。
次いで、所定の計測位置での全計測が終了したかどうか確認する(S105)。そして、計測が終了していなければ、更にサンプルステージ25を駆動して試料の位置を変化させて次の計測位置に設定し(S106)、上記同様にして微小計測間隔での計測を実施する。
例えば、現時点での計測位置が第1の計測位置であれば、試料SをZ方向に広域計測間隔だけ移動させて設定される第2の計測位置において計測を行う。
所定の計測範囲での全計測が終了したら各計測位置でそれぞれに対して得られる局所的な干渉強度を正弦波近似計算にて補完して各計測位置での局所的な干渉信号及びそのピーク強度を求める。次いで、包絡線Gを表す干渉信号を最初に求めた局所的な干渉信号及びピーク強度より算出する。最後に包絡線Gを表す干渉信号のピーク位置を特定して、計測対象面の高さを求める(S107)。これをCCDカメラ32の受光面が有する画素毎に実施することで表面形状を計測できる。
また、更に水平面内における計測対象面S1の複数の位置で垂直方向の高さを計測する必要がある場合には、対物レンズ21に対する計測対象面S1の位置を水平面内で変えて繰り返して上記の計測を行う。以上により、計測対象面S1の表面形状が計測される。
ここでは、全計測位置での全計測が終了したのちに、各計測位置での局所的な干渉信号を求めて計測対象面の高さを算出しているが、1つの計測位置での計測が終了したときに、その計測位置での干渉信号を求めてから次の計測位置での計測に移るようにしてもよい。
図5は、上記のようにして実際に算出した干渉信号、及び包絡線の干渉信号を示す図である。図5の横軸は、サンプルステージ25に対する対物レンズ21の相対的な位置を示しており、縦軸は、干渉光強度を示している。計測において微小計測間隔α、すなわち、参照ミラー41の段差高さαは、75nmとした。また、参照面41a〜41dは、図1に示すように、4つとしている。図5に示した結果を得るための表面形状計測では、バンドパスフィルタとして、中心波長が約600nmで波長幅が約40nmのものを使用した。また、広域計測間隔は、約2.5μmとして、3つの計測位置で計測している。試料Sとしては、平面基板とした。
図5に示すように、3つの計測位置において、それぞれ微小計測間隔αに対応する光路長差において4つの干渉光強度を計測することによって、確かに全体の干渉信号、及び包絡線の干渉信号が算出できている。
図1に示した表面形状計測装置1Aにおいては、試料Sの位置を広域計測間隔で垂直方向に走査しながら、各計測位置において、計測光路長を固定した状態で、参照光路を微小計測間隔に対応する光路長差で変化させて計測を実施している。各計測によって得られた干渉光強度に基づいて、各計測位置での局所的な干渉信号を算出し、互いに広域計測間隔離れた各計測位置での局所的な干渉信号から全体の干渉信号及び包絡線Gを求めて、計測対象面S1の垂直方向の高さの導出を行っている。
このように、微小計測間隔及び広域計測間隔の2種類の計測間隔を設定して計測光による走査を行うことにより、広域計測間隔をある程度広くとって全体としての計測点数を大幅に減らすことができる。したがって、短い計測時間で高速に計測対象面S1の形状を計測することが可能となる。
表面形状計測装置1Aでは、上記微小計測間隔での計測に複数の参照面41a〜41dを有する参照ミラー41を採用していることが重要である。
参照面41a〜41dは段差高さαで複数段に配置されており、その段差高さαは微小計測間隔に対応するように設定されている。従って、X方向に沿った光の照射方向に略直交する方向(図1では、Z方向)に参照ミラー41を参照面41a〜41dの幅に対応する長さで移動することで、参照光路に微小計測間隔に対応する光路長の変化を生じせしめることができている。
この場合、参照面41a〜41dの幅β1は特に限定されないため、参照ミラー41を微小計測間隔より長く(例えば、数μm程度)移動させても微小計測間隔での計測が実施できる。これにより、試料Sや参照ミラー41をピエゾステージ等の微小移動ステージを利用して実際に微小計測間隔で移動させながら計測する場合に比べて高い精度で微小計測間隔に対応する光路長差を制御できる。その結果、表面形状計測の精度が向上している。
また、サンプルステージ25及びスライドステージ43として、ピエゾステージより移動分解能の粗い電動ステージを利用できるので、表面形状計測装置1Aの製造コストの低減が図れている。
ところで、上記説明での第1及び第2の計測位置等の各計測位置での局所的な複数の干渉光強度の結果から得られる2つの正弦波信号(局所的な干渉信号)は理論的には連続する。この計測結果から算出される正弦波信号に不一致が生じるのは、サンプルステージ25の移動誤差に起因しており、これは、上記2つの正弦波信号の初期位相差として表される。
そこで、初期位相差を利用してサンプルステージ25の移動誤差を補正しながら表面形状を導出することが好適である。これは、次のように実施すればよい。
すなわち、例えば第1及び第2の計測位置各々での局所的な干渉信号を算出した後に、それらの初期位相差を算出する。そして、サンプルステージ25の想定移動量を、算出した初期位相差で補正してサンプルステージ25の真の移動量を求める。この補正を全てのサンプルステージ25の移動量に対して行って計測位置を補正した後、全体の干渉信号F及び包絡線Gを求め、計測対象面S1の高さを算出する。この場合、計測位置が補正されて実際の値に近づいているので、表面形状を高精度に算出することができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態として、図1に示した表面形状計測装置1Aが有するサンプルステージが、少なくともZ方向の移動にピエゾステージを利用している場合について説明する。装置構成は、前述したようサンプルステージが微小移動ステージを利用している点以外は、第1の実施形態と同様である。
そこで、サンプルステージ25が上記のようにピエゾステージを利用している場合の測定方法について説明する。先ず、干渉信号の算出に正弦波信号近似を利用する場合について説明する。
この場合、光路長差制御部51が広域計測間隔を、参照ミラー41が例えば4段の場合、λ/2として、サンプルステージ25を順次移動させる。なお、λは計測光の中心波長である。次いで、各移動位置(計測位置)において、参照ミラー41を利用して微小計測間隔での計測のために設定した計測点数(3点以上)分だけの干渉光強度を計測する。そして、表面形状導出部52が、サンプルステージ25の移動位置での局所的な干渉信号を正弦波信号近似を利用して算出する。
干渉信号の一周期は計測光の中心波長λに相当する。そして、光路は往復であるため、実際の光路長はサンプルステージ25の移動距離の2倍である。よって、上記のようにサンプルステージ25をλ/2ずつ移動させることで、干渉信号の次の周期に移動することになる。そのため、上記のように広域計測間隔(この場合、λ/2)離れた各移動位置で局所的な干渉光強度を計測した後、それらによって局所的な干渉信号を算出することで、結果として、全体の干渉信号F及び包絡線Gを求めることが可能である。よって、第1の実施形態の場合と同様に、計測対象面S1の高さ及び計測対象面S1の形状が得られる。
この場合、例えば、参照ミラー41が段差を有していない従来の装置のように、ピエゾステージを実際に微小計測間隔(例えば、5ナノメートル)で移動させながら計測を実施していく場合に比べて、ピエゾステージの移動回数を大幅に低減できる。その結果、測定時間の短縮が可能である。更に、ピエゾステージの移動量が微小計測間隔より長いため、ピエゾステージの移動誤差を低減できる。その結果、計測精度の悪化が低減されて、高精度な表面形状計測が可能となっている。
図6は、上記のようにサンプルステージにピエゾステージを利用して上記のようにして実際に算出した干渉信号を示す図である。図6の横軸及び縦軸は、図5の横軸及び縦軸と同様である。また、計測においてピエゾステージを利用して、ピエゾステージを、約300nmで移動させている点以外は、図5の場合と同様にして計測した。なお、図7では、代表的な計測位置での4つの局所的な計測点を示している。図6に示すように、この場合でも、全体の干渉信号が確かに算出できていることがわかる。
以上説明したように、サンプルステージ25がピエゾステージであって解析に正弦波信号近似を利用する場合、第1の実施形態で説明したように、各計測位置で算出した干渉信号の初期位相差からピエゾステージの移動量を補正しながら高さを算出することも可能である。この場合には、第1の実施形態の場合と同様に、表面形状をより高い精度で計測できる。
更に、サンプルステージ25がピエゾステージを利用している場合には、正弦波信号近似を適用せずに表面形状を計測することも可能である。この場合には、サンプルステージ25を広域計測間隔として(λ/n×参照面の数)で移動する。すなわち、参照ミラー41で調整可能な参照光路の光路長差分だけ参照ミラー41を移動させながら計測し、その光路長差の和に相当する次の光路長差の位置にサンプルステージ25を移動して計測する。そして、これを繰り返す。
この場合も、サンプルステージ25を微小計測間隔で移動する場合より、ピエゾステージを有するサンプルステージ25の例えば鉛直方向の移動回数を低減できる。その結果、測定時間の短縮が可能である。更に、ピエゾステージの移動量が微小計測間隔より長いため、ピエゾステージの移動誤差が低減できる。これにより、計測精度の悪化が低減され、より高精度に表面形状を計測できる。この場合には、正弦波近似を利用しないため、参照ミラー41の参照面数は、2つ以上であればよい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態として、図1に示した表面形状計測装置1Aによる位相シフト法を適用した表面形状計測方法について説明する。
図1に示した表面形状計測装置1Aは、試料Sとして面精度が高いもの(例えば、ハードディスクや光学部品等)の表面形状を計測するときには、いわゆる位相シフト法を利用して表面形状を計測することも可能である。位相シフト法を適用する場合には、参照ミラー41として、4ステップ段差以上、すなわち、4つ以上参照面を有するものを利用する。
位相シフト法を適用した場合の表面形状計測方法について説明する。すなわち、先ず、光路長差制御部51がサンプルステージコントローラ60を通してサンプルステージ25を駆動して、試料Sを移動させながらフォーカス調整を行う。その位置にて、光路長差制御部51は、スライドステージ43を駆動して、対物レンズ42からの光の照射方向に対して略直交する方向(図1では、Z方向)に参照面41a〜41dを順に移動させて参照面41a〜41dに順番に光を照射する。これにより、参照面数分(図1の参照ミラー41の場合は、4つ)の干渉光強度を測定する。
表面形状導出部52は、得られた4つの干渉光強度から以下の式に基づいて干渉光量を計算する。
ここで、φ(x,y)は、計測対象面の位相である。φ(t)は、位相シフト量である。I
mはm回目の干渉光強度である。
次に、表面形状導出部52は、次式に基づいてその測定位置での高さH(x,y)を算出する。
この場合、サンプルステージ25としてピエゾステージを利用しなくても良いので、表面形状計測装置1Aの製造コストの低減を図ることが可能である。更に、垂直分解能として例えば0.1nmが実現可能であるため、試料Sとしてウエハやハードディスク、フィルムなどの表面形状に好適に利用可能である。
(第4の実施形態)
図7は、本発明に係る表面形状計測装置の第4の実施形態の構成を示すブロック図である。
表面形状計測装置1Bの構成は、参照光生成部70がコリメートレンズ71と、参照面選択部72とを有する点で、表面形状計測装置1Aの構成と主に相違する。この点を中心にして表面形状計測装置1Bについて説明する。
参照光生成部70は、対物レンズ42と、コリメートレンズ(集光光学系)71と、スライドステージ43に取り付けられた参照面選択部72と、参照ミラー41とを有する。参照光生成部70が有する対物レンズ42は、対物レンズ21と同様に無限遠補正対物レンズであれば、計測光学系20によって分岐された計測光の他方の光を集束できればよい。参照ミラー41及びスライドステージ43の構成は、第1の実施形態の表面形状計測装置1Aの場合と同様である。なお、対物レンズ21が有限遠補正対物レンズである場合には、対物レンズ42も有限遠補正のものにすることは第1の実施形態の場合と同様である。
コリメートレンズ71は、対物レンズ42によって集束された光を再度平行光にするためのものである。コリメートレンズ71は、生成する平行光が参照ミラー41の鏡面側の全面を照射可能な大きさになるように選択され配置されている。
上記コリメートレンズ71で生成された平行光に対して、光の照射される各参照面41a〜41dを選択するために参照面選択部72がコリメートレンズ71と参照ミラー41との間に設けられている。参照面選択部72は、光を遮蔽する材質からなる平板状の基体73に参照面41a〜41dとほぼ同じ形状のスリット(通光部)74が形成されて構成されており、コリメートレンズ71と参照ミラー41との間に配置されている。参照面選択部72の基体73はスライドステージ43に取り付けられており、Z方向に移動可能となっている。ここでは、通光部をスリット74としたが、コリメートレンズ71からの光を通せば特に限定されず、例えば、上記平行光の波長に対して透明な材質から形成されていてもよい。
この構成では、スライドステージ43を駆動して基体73をZ方向に移動することによって、スリット74を通して参照面41a〜41dに順番に光が照射される。その結果、参照光路の光路長が変化することになる。
表面形状計測装置1Bを利用した表面形状計測方法は、上記のように参照面選択部72を平行光の伝播方向に略直交する方向(図7ではZ方向)に移動させることで、計測光学系20から参照光生成部70に入力される光を照射する参照面41a〜41dを選択している点以外は、第1の実施形態の場合と同様である。すなわち、ステップS104において、スライドステージ43を駆動することでスリット74を移動させて、参照面41a〜41dに順に光を照射させて、参照光路の光路長を微小計測間隔に対応する光路長差で変更しながら干渉光強度を計測する。そして、ステップS107において、各計測位置での局所的な干渉光強度を利用して、表面形状導出部52が計測対象面S1の垂直方向の高さを算出する。
この場合も、広域計測間隔及び微小計測間隔を利用して計測対象面の垂直方向の高さを算出しているので、図1に示した表面形状計測装置1Aの場合と同様に、計測時間を大幅に短縮できている。
また、複数段の参照面41a〜41dを有する参照ミラー41を利用して局所的な微小計測間隔での計測を実施していることの効果も表面形状計測装置1Aの場合と同様である。すなわち、試料Sや参照ミラー41をピエゾステージ等の微小移動ステージを利用して実際に微小計測間隔で移動させながら計測する場合より高い精度で微小計測間隔に対応する光路長差を制御できる。その結果、表面形状計測の精度が向上している。また、サンプルステージ25及びスライドステージ43として、ピエゾステージより移動分解能の粗い電動ステージを利用できるので、表面形状計測装置1Aの製造コストの低減が図れている。
上記表面形状計測装置1Bを利用した表面形状計測方法においても、表面形状計測装置1Aの場合と同様に、各計測位置(例えば、第1及び第2の計測位置)での局所的な干渉信号を算出した後に、それらの初期位相差を算出し、計測位置を補正しながら計測対象面S1の垂直方向の高さ算出することもできる。この場合、より高精度に表面形状を計測することが可能である。
また、表面形状計測装置1Bにおいても、第2の実施形態で説明したように、サンプルステージ25として、少なくともZ方向の移動にピエゾステージ(微小移動ステージ)を利用したものとすることも可能である。更に、第3の実施形態で説明したように、位相シフト法を利用した表面形状計測を実施することも可能である。このようにピエゾステージを利用して表面形状計測を実施する場合や、位相シフト法を利用して表面形状計測を実施する場合の計測方法は、参照光路の光路長差を、前述したように、参照面選択部72を移動させて光が照射される参照面41a〜41dを選択することによって変更している点、以外は、第2及び第3の実施形態と同様である。
(第5の実施形態)
図8は、本発明に係る表面形状計測装置の第5の実施形態の構成を示すブロック図である。
表面形状計測装置1Cの構成は、参照光生成部80が、複数(図8では3つ)のビームスプリッタ(分岐手段)81A〜81Cと、ビームスプリッタ81A〜81Cで分岐された光の光路上に配置された複数(図8では4つ)の参照ミラー82〜85と、参照ミラー82〜85の数と同数のシャッタ86A〜86Dとを有する点で、表面形状計測装置1Aの構成と主に相違する。この点を中心にして表面形状計測装置1Cについて説明する。
参照光生成部80は、対物レンズ(集束光学系)42と、複数のビームスプリッタ81A〜81Cと、参照ミラー82〜85と、シャッタ86A〜86Dとを有する。対物レンズ42は、図1に示した表面形状計測装置1Aと同様の構成である。
ビームスプリッタ81A〜81Cは、対物レンズ42の光軸Axに45°傾けて配置されており、対物レンズ42によって集束される光の一部を反射させて、他の部分を透過させることよって、対物レンズ42から入射される光を分岐する。ビームスプリッタ81A,81Bで反射された光は上方(図8中において、Z方向)に向けて伝播され、その光路上には参照ミラー82〜84が配置されている。また、各ビームスプリッタ81A〜81Cを透過した光はX方向に伝播し、その光路上には参照ミラー85が配置されている。このような配置であるため、複数のビームスプリッタの数は、参照光生成部80が有する複数の参照ミラーの数より1つ少ない数でよい。
各参照ミラー82〜85で反射した光は、各参照ミラー82〜85に入射する光路と同様の光路を逆に伝播して参照光としてビームスプリッタ22に入射された後、試料Sからの反射光と干渉する。そして、その干渉光強度が、CCDカメラ32で検出される。
参照ミラー82〜85は、例えば平板状であり、各参照ミラー82,83,84,85が有する鏡面82a,82b,82c,82dが、照射される光を反射させて参照光を生成する参照面である。参照ミラー82〜85は、隣接する参照ミラー82〜85間において微小計測間隔αに対応する光路長差が発生するように配置されている。
より具体的に、参照ミラー82〜85の配置について、参照ミラー85が対物レンズ42の焦点位置(集束位置)に配置されているとし、その参照ミラー85の鏡面85aの位置を基準として説明する。
この場合、参照ミラー84は、その鏡面84aがビームスプリッタ81Cに対して鏡面85aに対応する位置、すなわち、ビームスプリッタ81Cで反射された光のZ方向における集束位置から微小計測間隔αだけ更に上方に位置するように配置されている。また、参照ミラー83は、その鏡面83aがビームスプリッタ81Bに対して鏡面85aに対応する位置から微小計測間隔αの2倍の長さ2αだけ更に上方に位置するように配置されており、参照ミラー82は、その鏡面82aがビームスプリッタ81Aに対して鏡面85aに対応する位置から微小計測間隔αの3倍の長さ3αだけ更に上方に位置するように配置されている。これにより、隣接する鏡面82a〜82dで生成される参照光の微小計測間隔αに対応する光路長差が生じることになる。
上記参照ミラー82〜85とビームスプリッタ81A〜81Cとの間には、シャッタ86A〜86Dが配置されている。シャッタ86A〜86Dは、光路長差制御部51によって制御されるシャッタコントローラ90によって駆動される。
この構成では、光路長差制御部51がシャッタコントローラ90を利用してシャッタ86A〜86Dを所定の順番で開閉することによって、シャッタ86A〜86Dに対応する参照ミラー82〜85への光の照射が制御される。隣接する参照ミラー82〜85は、それらによって生成される参照光間に微小計測間隔αに対応した光路長差が生じるように配置されているので、上記のように参照ミラー82〜85への光の照射が変更されることによって、参照光路の光路長差が制御されることになる。
表面形状計測装置1Cを利用した表面形状計測方法は、シャッタ86A〜86Dの開閉により光を照射する参照ミラー82〜85を選択して参照光路の光路長を変化させる点以外は、第1の実施形態の表面形状計測装置1Aを利用した表面形状計測方法と同様である。
すなわち、ステップS104において、光路長差制御部51が、シャッタ86A〜86Dを駆動して、例えば、シャッタ86D側からシャッタ86A側に向かって順番に開く。この際、開いているシャッタ以外は閉じた状態にする。このようにして、参照ミラー82〜85に順に光を照射させて、参照光路の光路長を微小計測間隔αに対応する光路長差で変化させながら干渉光強度を検出する。そして、ステップS107において、各計測位置での局所的な干渉光強度を利用して、表面形状導出部52が計測対象面S1の垂直方向の高さを算出する。
この場合も、広域計測間隔及び微小計測間隔を利用して計測対象面S1の垂直方向の高さを算出しているので、図1に示した表面形状計測装置1Aの場合と同様に、計測時間を大幅に短縮できている。
また、微小計測間隔αに基づいて配置された参照ミラー82〜85への光の照射を制御することによって、局所的な微小計測間隔での計測を実施していることの効果も表面形状計測装置1Aの場合と同様である。すなわち、試料S又は参照ミラー41をピエゾステージ等の微小移動ステージを利用して実際に微小計測間隔で移動させながら計測する場合より高い精度で微小計測間隔に対応する光路長差を変化させることが可能である。その結果、表面形状計測の精度が向上している。また、サンプルステージ25として、ピエゾステージより移動分解能の粗い電動ステージを利用できるので、表面形状計測装置1Cの製造コストの低減が図れている。
また、表面形状計測装置1Cにおいても、第2の実施形態で説明したように、サンプルステージとして、少なくともZ方向の移動にピエゾステージ(微小移動ステージ)を利用したものとすることも可能である。更に、第3の実施形態で説明したように、位相シフト法を利用した表面形状計測を実施することも可能である。このようにピエゾステージを利用して表面形状計測を実施する場合や、位相シフト法を利用して表面形状計測を実施する場合の計測方法は、参照光路の光路長差を、前述したように、複数のシャッタ86A〜86Dの開閉を制御して光が照射される参照ミラー82〜85を選択することによって変更している点以外は、第2及び第3の実施形態と同様である。
(第6の実施形態)
図9は、本発明に係る表面形状計測装置の第6の実施形態の構成を示すブロック図である。
図9に示すように、表面形状計測装置1Dの構成は、参照光生成部100が、図10及び図11に示す参照ミラー110を有する点で、第1の実施形態の表面形状計測装置1Aの構成と相違する。図10は、図9に示した参照ミラーの平面図である。図11は、図10のXI―XI線に沿った断面図である。
図10及び図11に示すように、参照ミラー110は、一方向(図10ではY方向)に延在した複数(図10及び図11では3つ)の参照面101s,101t,101uを有する参照面群101が参照面101s,101t,101uの配列方向(図10ではZ方向)に複数(図10及び図11では3つ)配列されたものである。
各参照面群101が有する参照面101s,101t,101uは、参照ミラー110の厚さ方向(図11のX方向、段方向)に微小計測間隔αを段差高さとして階段状に設けられている。すなわち、参照ミラー110における各参照面群101の領域は、微小計測間隔αを段差高さとして階段状に形成されたミラーに対応しており、参照ミラー110は、この階段状ミラーを一組として複数組み合わされたものに対応する。参照面101s,101t,101uの幅(参照面群101の配列方向の長さ)β2は、例えば、β2=CCDカメラの画素サイズ/対物レンズの倍率として、0.75μmである。この参照ミラー110は、例えば、微細加工技術を利用して高精度に作製されており、いわゆる微細構造製品(MEMS)である。
図12は、CCDカメラの受光面の平面図である。図12に示すように、受光面33は、複数の画素(受光領域)34が2次元状に配列されたものである。また、受光面33は、複数の画素34を有する画素列(一方向に延在する受光領域)35が、各画素列35の延在方向と直交する方向に複数配列されたものでもある。ここでは、画素34は略正方形としている。
表面形状計測装置1Dが有する対物レンズ42は、複数の参照面群101に一度に光を照射可能に計測光学系20からの光を集束する。この対物レンズ42の光学倍率は、各参照面101s,101t,101uの幅β2が図12に示すCCDカメラ32の受光面33の画素34の一辺(幅)γの整数倍になるように決定されている。ここでは、参照面101s,101t,101uの幅β2と受光面33の画素34の幅γとが同じになるように対物レンズ42の倍率が決定されているものとする。
そして、参照ミラー110は、各参照面101s,101t,101uがCCDカメラ32の受光面33の各画素列35に正確に投影されるように配置されている。より詳細に説明すると、参照ミラー110は、図12に示す複数の画素列35のうち画素列35の配列方向(図12中、Y方向)に並んだ3つの画素列35,35,35にそれぞれ各参照面101s,101t,101uによって生成される参照光と、計測対象面S1からの反射光との干渉光の強度が検出されるように配置されている。
具体的には、例えば、図12で示すように、「s」、「t」、「u」と付された画素34からなる各画素列35に、それぞれ参照面101s、参照面101t、参照面101uからの参照光と、反射光との干渉光の干渉光強度が検出されるように配置されている。なお、この対応関係は、表面形状計測装置1Dにおける参照ミラー110と他の光学系との配置関係に基づいて表面形状導出部52が割り当てればよい。
なお、図12の各画素34に付した「s」、「t」、「u」は、上記のように、画素列(又は画素)と参照ミラー110が有する複数の参照面101s,101t,101uとの対応関係の説明のために便宜的に付したものである。以下の説明では、参照面101s,101t,101uに対応する各画素列35,35,35をそれぞれ画素列35s,35t,35uとも称す。
上述したように、画素列35の配列方向に並んだ3つの画素列35,35,35間の干渉光強度には、参照ミラー110の各参照面101s,101t,101uの段差高さ(微小計測間隔)αに起因した参照光路の光路長差による変化が生じている。そのため、各画素列35s,35t,35uで検出される干渉光強度を利用して、ある計測位置での局所的な干渉信号が算出される。この場合、微小計測間隔αに対応する光路長差が変化した複数の干渉光強度を一度に取得できる。
表面形状導出部52は、画素列35s,35t,35uと、段差高さαの差との対応関係と、各画素列35s,35t,35uでの検出結果とから正弦波信号近似を利用して局所的な干渉信号を算出し、それらを利用して表面形状を導出する。上記画素列35s,35t,35uと、段差高さαの差との対応関係は、例えば、画素列35s,35t,35u、参照面101s,101t,101u及び参照面101s,101t,101u間の段差高さ(微小計測間隔)αとの対応関係をテーブル等にして予め表面形状導出部52に記憶させておけばよい。
表面形状導出部52が局所的な干渉光強度を算出する際、上記のように画素列35s〜35t毎の検出結果を利用してもよいが、この場合、一定方向に順に並んだ3つの画素列35,35,35に対して1つの局所的な干渉信号のピーク値が算出されることになる。そこで、参照ミラー110における参照面群101の配列方向の分解能を向上する観点から、次のような移動平均を利用することが好ましい。
すなわち、表面形状導出部52は、ある3つの画素列35s,35t,35uを一組として、その組に含まれる各画素列35s,35t,35uで検出される干渉光強度から計算された値である局所的な干渉信号のピーク値を、その組に含まれる画素列35tのデータとする。このような処理を「平均をとる」とも称す。また、上記の一組に対して画素列35s,35t,35uの配列方向に対して一画素列分ずらした次の3つの画素列35t,35u,35sの組で検出される干渉光強度から計算された値をその組が有する画素列35uのデータとする。そして、このように一画素列35ずつずらしながら、画素列35の配列方向に並んだ3つの画素列35,35,35の検出結果に対して平均をとり、3つの画素列35のうちの1つに割り当てることを順に実施することによって、各画素列35で検出された検出結果に対して移動平均をとる。
そして、各画素列35に新しく割り当てられたデータを利用して計測対象面S1での垂直方向の高さを算出することによって計測対象面S1の形状を導出する。
この場合、上記のように移動平均を取って新しく各画素列35に割り当てられたデータでは、画素列35分のデータを表面形状の導出に使用できるので、参照面群101の配列方向の分解能の向上を図ることが可能である。
表面形状計測装置1Dを利用した表面形状計測方法では、ステップS104において参照ミラー110に計測光学系20からの光を照射することで、所定数の微小計測間隔の計測を一度に実施する点、及び、ステップS107において局所的な干渉信号を前述したように画素列35s,35t,35u間の検出結果を利用して実施する点以外は、第1の実施形態の表面形状計測装置1Aを利用した表面形状計測方法と同様である。
この場合も、広域計測間隔及び微小計測間隔を利用して計測対象面の垂直方向の高さを算出しているので、図1に示した表面形状計測装置1Aの場合と同様に、計測時間を大幅に短縮できている。また、参照ミラー110を利用している場合、参照ミラー110に光を照射することによって微小計測間隔に対応する光路長差を有する複数の参照光が一度に生成され、結果として、微小計測間隔離れた複数の計測点を一度に計測できることになる。そのため、更に計測時間を短くできている。また、参照ミラー110が、微細加工技術を利用して作製されているので、微細計測間隔を精度よく設定できている。そして、更に、微小計測間隔で計測するときに、ステージの移動を伴わないので、より高精度な計測が実現できている。また、サンプルステージ25として、ピエゾステージより移動分解能の粗い電動ステージを利用できるので、表面形状計測装置1Dの製造コストの低減が図れている。
上記表面形状計測装置1Dを利用した表面形状計測方法においても、表面形状計測装置1Aの場合と同様に、各計測位置(例えば、第1及び第2の計測位置)での局所的な干渉信号を算出した後に、それらの初期位相差を算出し、計測位置を補正しながら計測対象面S1の垂直方向の高さ算出することもできる。この場合、より高精度に表面形状を計測することが可能である。
また、表面形状計測装置1Dにおいても、第2の実施形態で説明したように、サンプルステージ25として、少なくともZ方向の移動にピエゾステージを利用したものとすることも可能である。更に、第3の実施形態で説明したように、位相シフト法を利用した表面形状計測を実施することも可能である。なお、位相シフト法を利用する場合は、参照ミラー110が有する参照面の数を4つ以上としておく。このようにピエゾステージを利用して表面形状計測を実施する場合や、位相シフト法を利用して表面形状計測を実施する場合の計測方法は、参照光路の光路長差を、前述したように、参照ミラー110が有する複数の参照面101s,101t,101u間で生じせしめている点以外は、第2及び第3の実施形態と同様である。
表面形状計測装置1Dの参照光生成部100が有する参照ミラーとしては、図13及び図14に示すような参照ミラー120とすることもできる。図13は、参照ミラーの他の例の平面図である。図14は、図13のXIV−XIV線に沿った断面図である。
参照ミラー120は、複数(図13では3つ)の参照面121s,121t,121uを有する参照面群121を複数有している。各参照面121s〜121uの形状は、CCDカメラ32の受光面33が有する画素34と相似形であって、図13では略正方形としている。なお、図13に示すハッチングは、同じ参照面121s〜121uを示すために便宜上付しているものである。
参照面121s,121t,121uは、図14に示すように、段違いに配置されており、参照面121s,121t間の段差高さ、及び、参照面121t,121u間の段差高さは、それぞれ微小計測間隔αである。
参照ミラー120を利用する場合も、対物レンズ42は、複数の参照面群121に一度に光を照射可能に計測光学系20からの光を集束している。また、対物レンズ42の光学倍率は、参照面121s(121t,121u)の縦横幅(一辺の長さ)β3とも受光面33の画素34の一辺の長さ(幅)γの整数倍になるように決定しておく。ここでは、前述したように、参照面121s(121t,121u)の一辺の長さβ3と受光面33の画素34の一辺の長さ(幅)γとが同じになるように対物レンズ42の倍率が決定されているものとする。そして、各参照面121s〜121uが、CCDカメラ32が有する受光面33の各画素34上に正確に投影されるように配置する。
図15は、図13に示した各参照面と画素との対応関係の一例を示すための受光面の平面図である。図15において、各画素34に付している「s」、「t」、「u」は、参照ミラー110の場合と同様に参照面131s,131t,131uとの対応関係を示すためのものである。以下の説明では、参照面121s,121t,121uに対応する各画素34、34、34をそれぞれ画素34s,34t,34uとも称す。
この場合、画素34s,34t,34uが参照面121s,121t,121uに対応するので、画素34s,34t,34u毎に微小計測間隔αに対応する光路長差を有する干渉光強度を検出できることになる。そして、参照ミラー110において画素列35を利用した解析を2次元に拡張することによって表面形状を計測することが可能である。そして、参照ミラー120を利用することによって、縦方向(図13中、Y方向)と横方向(図13中、Z方向)との分解能を揃えることができる。
また、表面形状導出部52による表面形状の導出においては、参照ミラー110の場合と同様に、分解能向上のために移動平均を利用することも好適である。この場合には、例えば、図15に示すように、略L字形の領域(図15中、一点鎖線で囲まれる領域)内の3つの画素34s,34t,34uで検出される干渉光強度に対して正弦波信号近似等を実施して、局所的な干渉信号のピーク値を計算する。次いで、その計算結果を、例えば、上記略L字形の例えば角部に位置する画素34tの値とする。そして、この略L字形の領域を所定の規則で移動させながら、図15に示した各画素34s,34t,34uに新しいデータを割り当て、それらを利用して表面形状を導出する。
また、図15に一緒に示しているように、十字(クロス)型に配置される領域(図15中の点線で囲まれる領域)内の横3つの画素34s,34u,34t及び縦3つの画素34t,34u,34sを利用して縦方向及び横方向それぞれの各画素34s〜34tで検出される干渉光強度に対して正弦波信号近似等を実施して、それぞれの方向の局所的な干渉信号のピーク値を算出し、更にそれらを平均する。次いで、その平均値(新しいデータ)を、上記十字型の領域内の例えば中央に位置する画素34uに割り当てる。そして、この十字型の領域を所定の規則に則って移動させながら同様の処理を実施して、各画素34s〜34uに新しいデータを割り当て、それらを利用して表面形状を導出する。
また、画素34と相似形の参照面を利用する場合には、図16及び図17に示す参照ミラー130を利用することも好ましい。図16は、参照ミラーの更に他の例の平面図である。図17は、図16のXVII−XVII線に沿った断面図である。
参照ミラー130は、複数(図16では4つ)の参照面131s,131t,131u,131vを有する参照面群131が2次元的に配置されたものである。各参照面131s〜131uの形状は、CCDカメラ32の受光面33が有する画素34と相似形であって、図16では略正方形としている。なお、図16に示すハッチングは、同じ参照面131s〜131vを示すために便宜上付しているものである。
各参照面群131が有する参照面131s,131t,131u,131vは、図17に示すように、段違いになっており、参照面131s,131t間の段差高さ、参照面131t,131u間の段差高さ、及び、参照面131u,131v間の段差高さはそれぞれ微小計測間隔αである。
表面形状計測装置1Dにおいて、参照ミラー41の配置は、参照ミラー120の場合と同様に受光面32との対応関係に基づいて配置されている。図18は、図16に示した各参照面131s,131t,131u,131vと画素との対応関係の一例を示すための受光面の平面図である。図17において、各画素34に付している「s」、「t」、「u」、「v」は、参照ミラー110,120の場合と同様に参照面131s,131t,131u,131vとの対応関係を示すためのものである。以下の説明では、参照面131s,131t,131u,131vに対応する各画素34,34,34,34をそれぞれ画素34s,34t,34u,34vとも称す。
表面形状導出手段52による表面形状の算出は、各画素34s,34t,34u,34vの干渉光強度を利用して参照ミラー110及び参照ミラー120の場合と同様に実施する。なお、高さの異なる参照面131s,131t,131u,131vが4つあるので、解析に最小二乗法を利用することでより高精度に表面形状を算出することができる。参照ミラー130を利用する場合であって試料Sの面精度が高い場合には、前述したように位相シフト法を利用して表面形状を算出してもよい。
以上、本発明に係る表面形状計測装置の実施形態について説明したが、本発明に係る方面形状計測装置は、上記実施形態に限定されない。
検出手段30は、CCDカメラ32としたが、受光面33に画素が配置されてなる検出器であって、画素毎に干渉光強度を計測できるものであれば特に限定されない。ただし、第6の実施形態の場合については、受光面が有する複数の受光領域(例えば、画素自体や、画素列)と、参照ミラーが有する参照面との対応関係を構築できるものであることが必要である。
参照ミラー41では、参照面41a〜41dは、参照面41aから参照面41dに向けて段差高さαずつ低くなるとしたが、隣接する参照面41a〜41d間の段差高さは、微小計測間隔αの1以上の整数倍であればよく、必ずしも隣接する参照面間の段差高さは複数の参照面間で一定でなくてもよい。これは、第6の実施形態の表面形状計測装置1Bの複数の参照ミラー82〜85の配置に関しても同様である。更に、第7の実施形態で説明した参照ミラー110,120,130が有する各参照面群を構成する複数の参照面に関しても同様である。
また、第4の実施形態では、コリメートレンズ(集光光学系)は、複数の参照面の2つ以上の参照面に一度に光を照射できるように略平行光を生成可能に選択され配置されていればよい。また、第6の実施形態においては、対物レンズ(集束光学系)42は、複数の参照面の2つ以上の参照面に一度に光を照射できるように計測光学系から入射される光を集束可能に選択され配置されていればよい。
更に、第2〜第6の実施形態においては、微小計測間隔に対応する光路長差で検出された干渉強度信号に基づいた局所的な干渉信号のピーク値の算出は、正弦波信号近似を利用しているが、第1の実施形態で説明したように、標準偏差計算を利用して上記局所的な干渉信号のピーク値を算出することも可能である。この場合は、微小計測間隔に対応する光路長差での計測は4回以上必要であるため、参照光生成部70,80,100が有する複数の参照面も4つ以上必要となる。
更にまた、計測光供給手段10が有する計測光源としてハロゲンランプを例示したが、計測光源としては、特定波長中心のLEDを使用することも可能である。この場合は、バンドパスフィルタ14は用いなくても良い。
また、以上の説明では、表面形状計測装置1A(1B〜1D)が有する複数の参照面の数として、4つ又は3つとしているが、前述したように、位相シフト法を利用して表面形状を導出する場合には、4つ以上あればよい。また、正弦波信号近似を利用して表面形状を導出する場合には、3つ以上あればよい。更に、第2の実施形態で説明したようにサンプルステージがピエゾステージ等の微小移動ステージを利用しており、更に、解析に正弦波信号近似を利用しない場合には、複数の参照面は2つ以上であればよい。
1A,1B,1C,1D…表面形状計測装置、10…計測光供給部、20…計測光学系、25…サンプルステージ(計測位置制御手段)、30…検出手段、33…受光面、34,34s,34t,34u,34v…画素(受光領域)、35,35s,35t,35u…画素列(一方向に延在する受光領域)、40…参照光生成部、41…参照ミラー、41a,41b,41c,41d…参照面、42…対物レンズ(集束光学系)、51…光路長差制御部(光路長差制御手段)、52…表面形状導出部(表面形状導出手段)、70…参照光生成部、71…コリメートレンズ(集光光学系)、72…参照面選択部、73…基体、74…スリット(通光部)、80…参照光生成部、81A,81B,81C…ビームスプリッタ(分岐手段)、82a,82b,82c,82d…鏡面(参照面)、86A,86B,86C,86D…シャッタ、100…参照光生成部、101s,101t,101u…参照面、110,120,130…参照ミラー、121s,121t,121u…参照面、131s,131t,131u,131v…参照面。