JP4986444B2 - 疎水性無機粉体及びその製造方法 - Google Patents

疎水性無機粉体及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、特に歯科用材料に有用な疎水性無機粉体及びその製造方法に関するものである。
従来、重合性単量体と無機粉体からなるペースト状組成物を重合硬化させて製造する複合材料において、その複合材料の機械的強度やペーストの操作性を向上させるため、無機粉体の表面を有機化合物で疎水化したり、重合基を有するシランカップリング剤で処理する方法が一般に行われる。
無機粉体の表面をシランカップリング剤で処理して疎水性無機粉体を得る方法として、流動させた無機粉体にシランカップリング剤を噴霧する方法,アルコール、トルエンなどの有機溶媒中に無機粉体を加え、さらにシランカップリング剤と水を加えた後、水と有機溶媒をエバポレーターで蒸発乾燥させる方法,及び加水分解させたシランカップリング剤の溶液の中に超微粒子シリカを加え、ホモジナイズした後、噴霧乾燥させる方法等が報告されている(例えば特許文献1)。しかしながら、これらの方法では、得られる疎水性無機粉体は、凝集により粗大粒子を多量に含有したものになり、加えて、上記噴霧乾燥する方法では、粉体に淡い褐色の着色が生じたりして、実用面から十分満足できなかった。
こうしたなか、上記着色等の生じない有用な方法として、無機粉体を、シランカップリング剤を加水分解した溶液に分散させた後、噴霧乾燥し、次いで、真空乾燥する方法が提案されている(特許文献2)。そして、この方法において、無機粉体に対するシランカップリング剤の使用量は、無機粉体100重量部に対して0.1〜15重量部という広い範囲が示され、上記噴霧乾燥の温度としては150〜300℃が示され、さらに、上記真空乾燥の温度としては80〜150℃が示されている。
米国特許明細書第4,482,656号 特開平10−36705号公報
上記噴霧乾燥を応用した改良法によれば、着色がなく、粗大凝集粒子の含有量についても、かなり少ない疎水性無機粉体が得られ好適であるが、それでもこうした凝集粒子を高度に抑制するには至っておらず、粒径が20μm以上の粗大粒子は10体積%を超えて含有されていた。しかして、このように粒径が20μm以上の粗大凝集粒子が有意な量含有されていると、疎水性無機粉体をその主用途であるフィラーとして用いた場合において充填率を低下させ、対象製品の商品価値を低下させていた。例えば、歯科用途における歯科充填修復材料の硬化性のペースト状組成物であれば、フィラー充填率が低下させることにより、歯牙修復材料の機械的強度が十分でなくなったり、ペーストが硬くなり操作性が低下することが引き起こされていた。
また、前記方法により、接触角が90度以上になるような高度に疎水化された疎水化無機粉体を得ようとすると、前記シランカップリング剤の広い範囲の使用量において、どうしても多めに使用しがちになり、その場合、得られる疎水化無機粉体には、シランカップリング剤の未反応の加水分解物またはその縮合物(以下、これらを「シランカップリング剤残留物」とも略する)が多量に(具体的には1.2質量%を超えて)残留していた。このように多量にシランカップリング剤残留物が存在すると、たとえ製造直後には、前記したような粗大凝集粒子はそれほどに多くは含まれていない場合であっても、粉体の保存中、特に、高温下での保存中に凝集が生じ易くなり、やはり使用時には、該粗大凝集粒子はかなりの量含まれる状態に至り、上記問題を引き起こしていた。
こうした背景から、接触角が90度以上になるように高度に疎水化された無機粉体において、着色が無く、20μm以上の粗大凝集粒子の含有量が極めて少なく、さらに、シランカップリング剤の未反応の加水分解物またはその縮合物の含有量も高度に低減されたものを開発することが大きな課題であった。
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を続けてきた。その結果、前記噴霧乾燥を応用した改良法において、20μm以上の粗大凝集粒子の生成を十分に抑制できず、また、シランカップリング剤の未反応の加水分解物またはその縮合物も多量に残留してしまう原因は、次の2点にある可能性が高いことを見出した。すなわち、
1)上記方法では、シランカップリング剤の使用量が無機粉体100重量部に対して0.1〜15重量部であり幅広く、各実施例での使用値を含めその使用量が多い領域では、前記シランカップリング剤残留物が多量に含まれることが避けられず、これが疎水化工程や噴霧乾燥工程中において無機粉体の凝集を促進してしまうことと、
2)噴霧乾燥に続く、真空乾燥では、こうしたシランカップリング剤残留物を除くことが意図されているが、上記シランカップリング剤の使用量が多い場合には、80〜150℃の高温下での該真空乾燥でもこの目的は十分に達成され難く、しかも、該高温下での処理では、むしろ、この工程においても無機粉体の凝集が進行してしまうこと
である。そして、この知見に基づいて、無機粉体の疎水化処理におけるシランカップリング剤の使用量を特定の範囲にし、且つ真空乾燥の温度を特定の低温条件に調整することにより、上記の課題が解決でき、20μm以上の粗大凝集粒子の含有量、およびシランカップリング剤残留物の含有量のいずれも極めて少ない新規な疎水性無機粉体を創出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、シランカップリング剤により表面処理された一次粒子の平均粒子径が0.01〜2μmの疎水性無機粉体であって、水に対する接触角が90度以上であり、粒径が20μm以上の粗大凝集粒子の含有量が10体積%以下であり、且つ上記シランカップリング剤の未反応の加水分解物またはその縮合物の含有量が1.2質量%以下であることを特徴とする疎水性無機粉体である。
さらに、本発明は、上記疎水性無機粉体の製造方法として、一次粒子の平均粒径が0.01〜2μmの無機粉体を、シランカップリング剤を加水分解した溶液中に分散させた後、噴霧乾燥し、さらに、真空乾燥することにより表面処理する疎水性無機粉体の製造方法において、シランカップリング剤の使用量が無機粉体の表面積1×10当たり0.4mol〜1.5molであり、噴霧乾燥温度が150〜270℃であり、かつ真空乾燥温度が10〜70℃であることを特徴とする請求項1記載の疎水性無機粉体の製造方法も提供する。
本発明の疎水性無機粉体は、接触角が90度以上になるように高度に疎水化されたものでありながら、着色が無い他、20μm以上の粗大凝集粒子の含有量が極めて少なく、歯科充填修復材料の硬化性のペースト状組成物のフィラーとして用いた場合には、良好なフィラー充填率、且つ優れた操作性のペースト状組成物になる。
また、この疎水性無機粉体は、シランカップリング剤残留物の含有量も極めて少なく、高温下で長期間保存しても、該残留物に起因した粒子の凝集が生じ難く、上記粗大凝集粒子が含まれない状態が良好に維持される。
したがって、こうした性状の本発明の疎水性無機粉体は、上記特性を利用して、歯科充填修復材、歯科歯冠材料、歯科シーラント、歯科セメント、歯科接着剤、歯科補修材等の用途において好適に使用できる。特に、歯科充填修復材料における硬化性のペースト状組成物用のフイラーとして最適である。
本発明の疎水性無機粉体は、シランカップリング剤により表面処理された一次粒子の平均粒子径が0.01〜2μmの疎水性無機粉体であって、水に対する接触角が90度以上であり、粒径が20μm以上の粗大凝集粒子の含有量が10体積%以下であり、且つ上記シランカップリング剤の未反応の加水分解物またはその縮合物の含有量が、1.2質量%以下であることを特徴とする疎水性無機粉体である。
粒子径が20μm以上の粗大凝集粒子の割合はペーストの無機粉体充填率やペースト性状に影響を及ぼし、10質量%を超えると無機粉体の充填率が低下する。また、20μm以上の粗大凝集粒子の割合はフロアブルレジンと呼ばれる歯科用低粘度ペースト状修復材にしたときのペースト性状に顕著に表れ、粗大凝集粒子が10質量%を超えるとペーストの流動性が小さくなり、低粘度ペーストとしての操作性を発揮するに至らない。粒子径が20μm以上の粗大凝集粒子の割合は10質量%以下であれば良いが、好ましくは8質量%以下であり、最も好ましくは7質量%以下である。
本発明において、こうした20μm以上の粗大凝集粒子の含有量は、レーザー回折−散乱法によって測定した値である。
本発明において、シランカップリング剤の未反応の加水分解物またはその縮合物の含有量は、1.2質量%以下である。こうしたシランカップリング剤残留物が1.2質量%を超えて存在している場合、たとえ製造当初は、上記粒子径が20μm以上の粗大凝集粒子の割合が少なくても、保存中に、該シランカップリング剤残留物が介在して、粒子の凝集が徐々に生じ、粗大凝集粒子が発生するようになる。また、このようなシランカップリング剤残留物は親水的であり、これらが多量に含有されることは、無機粉体を高度に疎水化する上でも好ましくない。
後述するが、シランカップリング剤残留物の量はシランカップリング剤の使用量、噴霧乾燥温度、真空乾燥温度のそれぞれと相関がある。特に、シランカップリング剤の使用量と真空乾燥温度に大きく影響される。これらの表面処理条件の最もバランスの取れた点において、シランカップリング剤残留物の含有量が1.2質量%以下となって表れる。
本発明において、シランカップリング剤残留物の含有量は、1.2質量%以下であればよいが、1.1質量%以下であるのがより好ましい。また、後述する製造方法において、水に対する接触角が90度以上になるように高疎水化するに必要量のシランカップリング剤を用いて表面処理した場合、得られる疎水性無機粉体には、通常は、0.4質量%以上、より一般的には0.5質量%以上のシランカップリング剤残留物が含まれるようになるのが普通である。
本発明においてシランカップリング剤残留物の定量方法は、加水分解されたシランカップリング剤は熱に対する安定性が高くないため、高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCとも略す)による定量方法により実施する。また、縮合物は種々の分子量の混合物であるが、HPLCに感度を有するメタクリロイルオキシ基は縮合前後で変化しないので、縮合前の加水分解物と同じ感度として計算し測定できる。
定量方法としては、予め加水分解したシランカップリング剤を用いて検量線を作成しておき、表面処理後の無機粉体より溶出してきた残存表面処理剤のHPLC面積を調べることで計算する。残存表面処理剤の溶出には、シランカップリング剤の加水分解物を溶解する溶媒であれば公知の溶媒が使用できるが、好ましくはテトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル、アセトン、エタノール等の極性溶媒が挙げられ、通常はアセトニトリルが使用される。また、溶出方法としては、シランカップリング剤の種類に応じて上記の溶媒から溶解性に優れるものを選択し、その充分な量に無機粉体を分散させた後、シランカップリング剤残留物の実質的全てが溶出するまで浸漬させれば良い。数分〜数日間静置する方法、無機粉体を溶媒に浸漬した後数分〜数時間超音波を当てる方法、およびこれらを組み合わせた方法が挙げられるが、通常は、無機粉体1gをアセトニトリル4gに浸漬し、15分間超音波を当てた後に室温で7日間静置して行うことにより実施される。
本発明の疎水性無機粉体の水に対する接触角は90度以上である。このように高度に疎水化された無機粉体において、上記したように粗大凝集粒子の含有量が極めて少なく、且つシランカップリング剤残留物の含有量も極めて少ない粉体は本発明により、初めて提供されるものである。ここで、疎水性無機粉体の水に対する接触角は100〜120度であるのがより好ましい。
上記特徴的な本発明の疎水性無機粉体を構成する無機粉体は、公知のものが特に制限なく使用でき、具体的には、非晶質シリカ、シリカ−ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−チタニア−酸化バリウム、シリカ−チタニア−ジルコニア、石英、アルミナ、ガラス等の球形状粒子あるいは不定形状粒子を挙げることができる。歯科歯冠材料用、歯科充填修復材料用としてはシリカとジルコニア、シリカとチタニア、またはシリカと酸化バリウムとを主な構成成分とする複合酸化物の球形状の無機粒子が、X線造影性を有し、耐摩耗性、表面滑沢性により優れた複合組成物の硬化体が得られることから、特に好適に用いられる。
こうした無機粉体の一次粒子の平均粒子径は、0.01〜2μmである。一次粒子の平均粒子径が0.01μm未満の場合、後述する製造方法によっても粗大凝集粒子の生成を抑制することが困難になり、また、一次粒子の平均粒子径が2μmを超える場合、粒子の分散性が低下し、後述する製造方法において、シランカップリング剤を加水分解した溶液に混合した際に無機粉体が沈降しやすくなり、安定した分散液を得ることが困難になる。
無機粉体の一次粒子の平均粒子径は、特に0.03〜0.6μmの範囲であることが好ましい。この場合、全ての粒子の粒子径が0.03〜0.6μmの範囲である必要はないが、粒子径が0.03〜0.6μmの範囲にある粒子が60質量%以上存在しているのが好ましい。また、0.03μmより小さい粒子の含有量は30質量%以下であるのが好ましく、0.6μmより大きな粒子の含有量は20質量%以下であるのが好ましい。
上記無機粉体の製造方法については、特に限定されず前記粒子径を有するものであれば、如何なる製法によって得られたものでもよい。一般に工業的には金属アルコキシドの加水分解によって製造する方法が好適に採用される。また、粒子の表面安定性を保持するために表面のOH基を減ずるのが好ましい。そのためには、無機粉体を乾燥後、更に500〜1000℃の温度で焼成する手段がしばしば好適に採用される。
こうした無機粉体を疎水化するために表面処理されるシランカップリング剤は、従来公知のものが何ら制限なく使用される。好適なシランカップリング剤を例示すれば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルートリス(β―メトキシエトキシ)シラン、γ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、κ−メタクリロイルオキシドデシルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル−トリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル−トリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピル−トリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、このうちビニルトリエトキシシランやγ―メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランに代表されるラジカル重合性基を有するシランカップリング剤や、メチルトリメトキシシランに代表される低級アルコキシシランにおいて、本発明の効果が顕著に発揮され好ましい。
以上説明した本発明の疎水性無機粉体は、前述の性状を満足したものであれば如何なる方法により製造しても良い。好適な製造方法としては、一次粒子の平均粒径が0.01〜2μmの無機粉体を、シランカップリング剤を加水分解した溶液中に分散させた後、噴霧乾燥し、さらに、真空乾燥することにより表面処理する疎水性無機粉体の製造方法において、シランカップリング剤の使用量が無機粉体の表面積1×10当たり0.4mol〜1.5molであり、噴霧乾燥温度が150〜270℃であり、かつ真空乾燥温度が10〜70℃であることを特徴とする方法が挙げられる。以下、この製造方法について詳述する。
無機粉体を分散させる溶媒としては、公知のものが特に制限なく使用可能である。水は疎水化前の無機粉体を分散させるために非常に好適であり、好適には、水、または少量の水を溶解して含む有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン等、またはこれらの混合溶媒等の極性溶媒を挙げることができる。
ここで、無機粉体が溶媒に分散した状態とは、液を静置して、無機粒子が1時間の静値で実質的に沈殿しない状態が望ましい。このような分散液とすることにより、後工程の噴霧乾燥の段階で均一な表面処理が行われ易くなり、得られる疎水化無機粉体の接触角にバラツキが生じ難くなる。無機粉体を分散させるためには、一般に公知のホモジナイザーが用いられる。ホモジナイザーを具体的に例示すれば、球形状のセラミックスボールを入れた円筒状の容器内に撹拌棒で撹拌しながら解砕、分散させる構造の装置、球形状のセラミックスボールを入れた円筒状のロータを高速回転させながら解砕、分散させる構造の装置、超高圧衝撃型乳化分散装置、チョッパーで解砕、分散させる構造の装置等が挙げられる。
上記分散は、特に制限された温度で行う必要はなく、溶媒が揮発しない、または凝固しない範囲で行えばよい。一般に室温前後、例えば10〜60℃の範囲で行えばよい。
無機粒子と溶媒との混合割合は、混合物がスラリーとなる範囲であれば良い。一般に無機粒子100質量部に対して溶媒は100〜1000質量部の範囲で使用される。
こうした無機粉体の分散液中には、シランカップリング剤の加水分解物を存在させる。本発明の疎水性無機粉体を製造する上で重要な点は、その配合量が無機粉体の表面積1×10当たり0.4mol〜1.5molとした点にある。すなわち、前記噴霧乾燥を応用した改良法の従来技術では、シランカップリング剤の使用量は、無機粉体100重量部に対して0.1〜15重量部の範囲であり、これを例えば、シランカップリング剤としてγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを用い、無機粉体として、シリカ−ジルコニア等の複合酸化物を用いた場合で表すと、これらの無機粉体の表面積は一般に、無機粉体1g当たり1〜400mの範囲にあるため、無機粉体の表面積1×10当たり0.001mol〜400molの極めて広範な範囲に換算される。そして、この従来技術が示される特許文献2の各実施例において、実際に使用されている、無機粉体に対する該シランカップリング剤の使用量を、上記無機粉体の表面積に対する量で示してみると、上記広範な範囲の中にあって、いずれも無機粉体の表面積1×10当たり2.5mol程度と相当に多めの値に計算される。
しかして、このようにシランカップリング剤の使用量が多いと、その後の噴霧乾燥や真空乾燥などの工程で粗大凝集粒子の生成が激しくなり、また、製造される疎水性無機粉体に混存するシランカップリング剤残留物の量も前記特定値に低減することが難しくなる。これに対して、上記本発明での方法では、無機粉体に対する該シランカップリング剤の使用量を前記無機粉体の表面積を基準にした狭い特定域に規定することにより、得られる疎水性無機粉体において、高度な疎水化を維持しつつ、これら粗大凝集粒子の生成やシランカップリング剤残留物の含有の問題を大幅に低減させることが可能になる。
なお、シランカップリング剤の使用量が、無機粉体の表面積1×10当たり0.4mol未満の時は無機粉体表面が充分に疎水化されなくなる。本発明におけるシランカップリング剤のより好ましい使用量は、無機粉体の比表面積1×10/g当たり0.5mol〜1.2molである。
無機粉体の分散液中において、シランカップリング剤は加水分解されて用いられる。シランカップリング剤の加水分解は、一般に、水または水を溶解して含む有機溶媒中で、加水分解助剤を存在させることにより進行する。この加水分解は、無機粉体の分散液にシランカップリング剤を添加して該分散液中で行っても良いが、通常は、予め、シランカップリング剤を上記溶液として該加水分解を行い、得られたシランカップリング剤の加水分解溶液と上記無機粉体の分散液とを混合することにより実施するのが好ましい。
この際使用する有機溶媒は少量の水と相溶するものであれば、公知のものが特に制限なく使用可能である。一般に好適に使用される溶媒を例示すれば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン等およびこれらの混合溶媒が挙げられる。加水分解助剤は溶媒のpH値を3〜5.5の範囲にするために用いられ、公知のものが制限なく用いられる。この加水分解に使用される加水分解助剤を具体的に例示すれば、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸等のカルボン酸が挙げられる。これらの酸の中で、カルボン酸は後の工程での噴霧乾燥において無機粒子に残存し難いので、特に好適に用いられる。
この加水分解は、一般に室温前後の温度で、例えば10〜60℃の範囲で行えばよい。シランカップリング剤は溶媒100重量部に対して1〜10重量部の割合で混合し、溶液のpHが3〜5.5になるように加水分解助剤の添加量を調整する。
シランカップリング剤の加水分解溶液と上記無機粉体の分散液との混合は、無機粉体の分散液を、シランカップリング剤の加水分解溶液に加えても良いし、逆に分散液に該溶液を加えても良い。この混合により、無機粉体の表面に対してシランカップリング剤の加水分解物は吸着される。均一な溶液になるよう攪拌下で混合するのが好ましく、混合後、数分〜数時間熟成しても良いが、速やかに次工程の噴霧乾燥に供することが好ましい。
こうして得られた上記シランカップリング剤の加水分解物が含まれる無機粉体の分散液は、噴霧乾燥される。このときの噴霧乾燥温度は150〜270℃の範囲で選択される。150℃より低い場合は無機粉体表面の疎水化が充分進行しない。また、270℃を超える場合は粗大凝集粒子の割合が多くなる。より好ましい噴霧乾燥温度の範囲は170〜250℃である。
なお、本発明において、上記噴霧乾燥の温度とは、噴霧乾燥機内において、熱風の吹き出し口の温度をいう。
噴霧乾燥に用いられる噴霧乾燥機には、一般的に公知の方法が採用される。噴霧する方式には、細孔を持ったノズルから噴霧する方法、または高速回転体に上記混合物を滴下して噴霧するアトマイザー方式採用される。
本発明の疎水性無機粉体を得るためには、上記噴霧乾燥により得られる疎水性無機粉体を、さらに真空乾燥する。真空乾燥は、疎水性無機粉体に含まれるシランカップリング剤残留物を除去する作用を有するものであるが、前記したとおりシランカップリング剤残留物の含有量が多量の場合には該残留物が凝縮するのか、たとえ高温下で長時間の乾燥を行ってもこれらを十分に低減させることは難しくなる。本発明の方法では、シランカップリング剤の使用量は必要適切量に抑えられているため、この残留物の含有量が少なく、以下説明する比較的低温下での真空乾燥でも、充分な乾燥時間を設けることによりこれらを効率的に除去できる。
本発明の疎水性無機粉体の製造方法において極めて重要な点は、この真空乾燥の温度が10〜70℃と低く設定されていることにある。このように真空乾燥の温度が低いことにより、通常、この工程でも進行してしまう粗大凝集粒子の生成が高度に抑制される。また、上記の如くにシランカップリング剤残留物の含有量が少ない状態では、該温度下での真空乾燥でも充分な乾燥時間を設けることにより、これらは効率的に除去できる。
これに対して、この真空乾燥の温度が70℃を超えると平均粒径が20μm以上の粗大凝集粒子の割合が増え、ペースト中の疎水性無機粉体の充填率の低下や低粘度ペーストにしたときの流動性の低下などが生じる。本発明における、真空乾燥のより好ましい温度は20〜65℃である。
ここで、真空乾燥とは、10ヘクトパスカル以下、5ヘクトパスカル以下の気圧下での乾燥をいう。また、上記真空乾燥の温度とは、真空乾燥器内の無機粉体の周辺の雰囲気の温度をいう。
上記真空乾燥の時間は、疎水性無機粉体に含まれるシランカップリング剤残留物の含有量が前記範囲まで低減されるまで時間であり、通常は、1〜72時間であるのが好ましい。
かくして、上記方法では、シランカップリング剤の使用量、噴霧乾燥温度、真空乾燥温度のそれぞれ要件が相関し、特に、シランカップリング剤の使用量と真空乾燥温度の要件が相乗的に作用しあうことにより、該製造工程中に無機粉体に含有されるシランカップリング剤残留物の量を大きく低減し、且つ、粗大凝集粒子の生成量も大幅に低減させ、前記これらの含有量が共に高度に抑制された疎水性無機粉体の製造を可能にするものである。
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例に示したペースト調製方法、曲げ強度、摩耗深さ、接触角の測定は以下の方法に従った。また、実施例で用いた無機粉体、シランカップリング剤、重合性単量体、重合触媒等の化合物の略称を以下に示す。
(1)略称・略号
・F−1:平均一次粒径0.4μmの球状のシリカ−ジルコニア(比表面積7m/g)
・F−2:平均一次粒径0.2μmの球状のシリカ−ジルコニア(比表面積20m/g)
・F−3:平均一次粒径0.07μmのシリカ−ジルコニア(比表面積50m/g)
・SC−1:γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
・SC−2:メチルトリメトキシシラン
・CQ:カンファーキノン
・DMBE:N,N−ジメチルp−安息香酸エチル
・3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
・UDMA:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)トリメチルヘキサン
・D2.6E:下記式で示される化合物
Figure 0004986444
*(l+l)の平均が2.6の混合物
また、疎水性無機粉体の特性(接触角、シランカップリング剤残留物量、粗大凝集粒子の割合)、ペースト状組成物の調製方法、曲げ強度、流動性の測定は以下の方法を用いた。
(1)接触角の測定方法
表面処理された無機粒子を直径10mm、深さ1mmの孔を有する金属リングに入れ、50MPaの荷重を5分間加え、ペレットを作成し、このペレットの上に注射器で水滴を落とし、その接触角を測定した。
(2)シランカップリング剤の未反応の加水分解物またはその縮合物の定量方法
表面処理後の無機粉体1gをアセトニトリル4gに浸漬し、15分間超音波を当てた後に室温で7日間静置した。浸漬液をHPLC(JASCO製2000シリーズ、溶媒:アセトニトリル、カラム:YMC製Pack Polymer C18、検出波長:210nm)に打ち込み、ピーク面積を求めた。一方、加水分解されたシランカップリング剤の0.01gをアセトニトリル4gに溶解し、HPLCのピーク面積を求めた。両者のピーク面積を比較することで、無機粉体中のシランカップリング剤残留物の量を求めた。
(3)粗大凝集粒子の測定方法
疎水性無機粉体0.01gをアセトニトリル20mlに分散させ、超音波を5分照射した。粒度分布計(ベックマンコールター社製LS230)を用い、レーザー回折−光散乱法により測定した。
(4)保存後の粗大凝集粒子の測定方法
表面処理された無機粒子を37℃で3ヶ月保存した後、(3)と同じ方法により測定した。
(5)ペースト状組成物の調製方法
下記に配合比を示した重合性単量体、光重合開始剤よりなる有機マトリックスE1に、所定量の疎水性無機粉体を配合し、赤色光下にて乳鉢を用いて均一に攪拌、脱泡して調製した。
D2.6E 70質量部
3G 20質量部
UDMA 10質量部
CQ 0.3質量部
DMBE 0.5質量部
(6)曲げ強度の測定方法
ステンレス製型枠に硬化性組成物を充填し、ポリプロピレンで圧接した状態で、可視光線照射器パワーライト(トクヤマ社製)を用いて一方の面から30秒×3回、全体に光が当たるように場所を変えてポリプロピレンに密着させて光照射を行なった。ついで、反対の面からも同様にポリプロピレンに密着させて30秒×3回光照射を行ない硬化体を得た。#800の耐水研磨紙にて、硬化体を2×2×25mmの角柱状に整え、この試料片を試験機(島津製作所製、オートグラフAG5000D)に装着し、支点間距離20mm、クロスヘッドスピード1mm/分で3点曲げ破壊強度を測定した。試験片5個について評価し、その平均値を曲げ強度とした。
(7)ペースト状組成物の流動性
ガラスプレート上にペースト状組成物約0.1gを載せ、ガラスプレートを水平に保ったまま37℃で2分間自然に展開した。このときのペースト状組成物の長径と短径の平均値を流動性とした。
実施例1
平均一次粒径0.4μmのシリカ−ジルコニア(比表面積7m/g)70gと平均一次粒径0.07μmのシリカ−ジルコニア(比表面積50m/g)30gの混合物(混合物の平均粒径は0.3μm、平均の比表面積は19.9m/g)を200gの水に入れ、循環型粉砕機SCミルを用いて無機粉体を分散させた分散液を得た。この分散液中に20μm以上の凝集粒子は観察されなかった。
ついで、4g(0.016mol)のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと0.003gの酢酸を80gの水に加え、1時間30分撹拌し、pH4の均一な溶液を得た。この溶液を上記分散液に添加し、均一に混合した。その後、軽く混合しながら溶液を噴霧乾燥機(坂本技研(株)製スプレードライヤーTSR−2W)を用いて、空気の温度を200℃とし噴霧乾燥した。その後、噴霧乾燥した無機粉体を60℃、1ヘクトパスカルの条件で18時間真空乾燥した。
上記表面処理によって得られた疎水性無機粉体は全く着色がなく、接触角は100度であった。また、該無機粉体の20μm以上の粗大凝集粒子の割合は4.1体積%であり、シランカップリング剤残留物は0.8質量%であった。また、保存後の粗大凝集粒子の割合は4.6体積%であった。
上記疎水性無機粉体71質量部と有機マトリックスE1の29質量部を用いてペーストを作成し、曲げ強度を測定した。その結果、平均曲げ強度は130MPa、標準偏差は12MPaであり、ペーストの流動性は6.5mmであった。また、保存後の疎水性無機粉体を用いて同様にペーストを作製して流動性を評価した結果、6.5mmであった。以上の結果を表1および表2に示した。
実施例2
無機粉体として100gの球形状シリカ−ジルコニア無機粉体(平均一次粒子径0.2μm、比表面積20m/g)を用い、シランカップリング剤として4g(0.016mol)のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様の方法で表面処理を行った。
上記表面処理によって得られた疎水性無機粉体は全く着色がなく、接触角は110度であった。また、該無機粉体の20μm以上の粗大凝集粒子の割合は6体積%であり、シランカップリング剤残留物は0.7質量%であった。また、保存後の粗大凝集粒子の割合は6.8体積%であった。
上記疎水性無機粉体65質量部とE1の35質量部を用いてペーストを作成し、曲げ強度を測定した。その結果、平均曲げ強度は120MPa、標準偏差は15MPaであり、ペーストの流動性は6.0mmであった。また、保存後の疎水性無機粉体を用いて同様にペーストを作製して流動性を評価した結果、6.0mmであった。以上の結果を表1および表2に示した。
実施例3
シランカップリング剤を4g(0.016mol)のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランと0.4g(0.003mol)のメチルトリメトキシシランの混合物にした以外は実施例1と同様の方法で表面処理を行った。
上記表面処理によって得られた疎水性無機粉体は全く着色がなく、接触角は115度であった。また、該無機粉体の20μm以上の粗大凝集粒子の割合は3.9体積%であり、シランカップリング剤残留物は1.0質量%であった。また、保存後の粗大凝集粒子の割合は5.4体積%であった。
上記疎水性無機粉体71質量部とE1の29質量部を用いてペーストを作成し、曲げ強度を測定した。その結果、平均曲げ強度は135MPa、標準偏差は10MPaであり、ペーストの流動性は7.0mmであった。また、保存後の疎水性無機粉体を用いて同様にペーストを作製して流動性を評価した結果、6.5mmであった。以上の結果を表1および表2に示した。
実施例4
γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランの使用量を3g(0.012mol)にした以外は実施例1と同様の方法で表面処理を行った。
上記表面処理によって得られた疎水性無機粉体は全く着色がなく、接触角は100度であった。また、該無機粉体の20μm以上の粗大凝集粒子の割合は2体積%であり、シランカップリング剤残留物は0.3質量%であった。また、保存後の粗大凝集粒子の割合は2.1体積%であった。
上記疎水性無機粉体71質量部とE1の29質量部を用いてペーストを作成し、曲げ強度を測定した。その結果、平均曲げ強度は115MPa、標準偏差は20MPaであり、ペーストの流動性は6.0mmであった。また、保存後の疎水性無機粉体を用いて同様にペーストを作製して流動性を評価した結果、6.0mmであった。以上の結果を表1および表2に示した。
実施例5
噴霧乾燥温度を230℃にした以外は実施例1と同様の方法で表面処理を行った。
上記表面処理によって得られた疎水性無機粉体は全く着色がなく、接触角は120度であった。また、該無機粉体の20μm以上の粗大凝集粒子の割合は7.0体積%であり、シランカップリング剤残留物は0.2質量%であった。また、保存後の粗大凝集粒子の割合は7.0体積%であった。
上記疎水性無機粉体71質量部とE1の29質量部を用いてペーストを作成し、曲げ強度を測定した。その結果、平均曲げ強度は130MPa、標準偏差は10MPaであり、ペーストの流動性は5.5mmであった。また、保存後の疎水性無機粉体を用いて同様にペーストを作製して流動性を評価した結果、5.5mmであった。以上の結果を表1および表2に示した。
実施例6
噴霧乾燥後の真空乾燥温度を68℃にした以外は実施例1と同様の方法で表面処理を行った。
上記表面処理によって得られた疎水性無機粉体は全く着色がなく、接触角は120度であった。また、該無機粉体の20μm以上の粗大凝集粒子の割合は7.5体積%であり、シランカップリング剤残留物は0.4質量%であった。また、保存後の粗大凝集粒子の割合は7.7体積%であった。
上記疎水性無機粉体71質量部とE1の29質量部を用いてペーストを作成し、曲げ強度を測定した。その結果、平均曲げ強度は135MPa、標準偏差は13MPaであり、ペーストの流動性は5.5mmであった。また、保存後の疎水性無機粉体を用いて同様にペーストを作製して流動性を評価した結果、5.5mmであった。以上の結果を表1および表2に示した。
比較例1
実施例1と同様の無機粉体、シランカップリング剤、方法で噴霧乾燥まで実施した後、90℃、1ヘクトパスカルの条件で18時間真空乾燥した。
上記表面処理によって得られた疎水性無機粉体は全く着色がなく、接触角は120度であった。また、該無機粉体の20μm以上の粗大凝集粒子の割合は13.0体積%であり、シランカップリング剤残留物は0.2質量%であった。また、保存後の粗大凝集粒子の割合は13.0体積%であった。
上記疎水性無機粉体を用いて実施例1と同様にペーストを作成し、曲げ強度を測定した。その結果、平均曲げ強度は130MPa、標準偏差は15MPaであり、ペーストの流動性は4.5mmであった。また、保存後の疎水性無機粉体を用いて同様にペーストを作製して流動性を評価した結果、4.5mmであった。以上の結果を表1および表2に示した。この結果から、比較例1は実施例1と比較してペーストの流動性が小さいことが分かる。
比較例2
シランカップリング剤として8g(0.032mol)のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は実施例1と同様の方法を実施して無機粉体の表面処理を行った。
上記表面処理によって得られた疎水性無機粉体は全く着色がなく、接触角は60度であった。
上記疎水性無機粉体を用いて実施例1と同様にペーストを作成し、曲げ強度を測定した。その結果、平均曲げ強度は95MPa、標準偏差は25MPaであり、ペーストの流動性は12mmであった。また、保存後の疎水性無機粉体を用いて同様にペーストを作製して流動性を評価した結果、4.5mmであった。以上の結果を表1および表2に示した。この結果から、比較例2は実施例1と比較して曲げ強度が小さく、またペーストの流動性が大きすぎることが分かる。さらに、疎水性無機粉体を保存することによって粗大凝集粒子の割合が増え、作製したペーストの流動性が大きく変化する。
比較例3
シランカップリング剤として8g(0.032mol)のγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを用い、真空乾燥温度を80℃にした以外は実施例1と同様の方法を実施して無機粉体の表面処理を行った。
上記表面処理によって得られた疎水性無機粉体は全く着色がなく、接触角は90度であった。また、該無機粉体の20μm以上の粗大凝集粒子の割合は11.0体積%であり、シランカップリング剤残留物は1.5質量%であった。また、保存後の粗大凝集粒子の割合は15.0体積%であった。
上記疎水性無機粉体を用いて実施例1と同様にペーストを作成し、曲げ強度を測定した。その結果、平均曲げ強度は130MPa、標準偏差は10MPaであり、ペーストの流動性は5.0mmであった。また、保存後の疎水性無機粉体を用いて同様にペーストを作製して流動性を評価した結果、4.0mmであった。以上の結果を表1および表2に示した。この結果から、比較例3は実施例1と比較してペースト流動性が小さく、さらに無機粉体を保存することによりさらにペーストの流動性が小さくなることが分かる。
Figure 0004986444
Figure 0004986444

Claims (2)

  1. シランカップリング剤により表面処理された一次粒子の平均粒子径が0.01〜2μmの疎水性無機粉体であって、水に対する接触角が90度以上であり、粒径が20μm以上の粗大凝集粒子の含有量が10体積%以下であり、且つ上記シランカップリング剤の未反応の加水分解物またはその縮合物の含有量が1.2質量%以下であることを特徴とする疎水性無機粉体。
  2. 一次粒子の平均粒径が0.01〜2μmの無機粉体を、シランカップリング剤を加水分解した溶液中に分散させた後、噴霧乾燥し、さらに、真空乾燥することにより表面処理する疎水性無機粉体の製造方法において、シランカップリング剤の使用量が無機粉体の表面積1×10当たり0.4mol〜1.5molであり、噴霧乾燥温度が150〜270℃であり、かつ真空乾燥温度が10〜70℃であることを特徴とする請求項1記載の疎水性無機粉体の製造方法。
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