JP4172765B2 - 水酸化アルミニウム及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック、ゴム等の難燃フィラー用等として利用される水酸化アルミニウム及びその製造方法に関する。さらに詳細には、凝集粒子の含有量がきわめて少なく、単粒子状に解砕されており、樹脂充填時、衝撃強度に優れた樹脂組成物を得ることができる水酸化アルミニウム、及びその効率的製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水酸化アルミニウムはゴム・プラスチックに充填するフィラーとして幅広く用いられている。例えば熱可塑性樹脂、ゴム、エポキシ樹脂には難燃剤として、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの樹脂には調色フィラーとして用いられている。
【0003】
水酸化アルミニウムを難燃剤として用いる場合、水酸化アルミニウムを樹脂等に高い濃度で充填した方が難燃性能は向上するが、充填率が高くなると、成形性が悪化し、また混練トルクが上昇するといった問題が生ずる。また成形温度が上昇し、水酸化アルミニウムの一部が脱水発泡するといった問題も生ずる。
【0004】
またフィラーとして用いられる場合、水酸化アルミニウムには補強効果がないので、成形物の強度、特に衝撃強度が低下する。衝撃強度低下を抑制するためには、粒子径をなるべく細かくすることが望まれる。粒子径の細かい水酸化アルミニウムを析出によって得ることも可能であるが、水酸化アルミニウムは、一次粒子が多数凝集した二次凝集粒の形態を有するため、二次凝集粒の尺度である吸油量が非常に大きく、フィラーとして多量に充填することは困難である。
このため、一般的に50〜150μm程度の水酸化アルミニウムをボールミル、その他の粉砕機で、一次粒子程度に粉砕したものが用いられる。
【0005】
しかし、粉砕によって所定の粒径まで粉砕するには多大なエネルギーを要する。また粉砕された水酸化アルミニウムは、その一次粒子が破壊され、表面の荒れ、粒子のチッピング等が発生し、粉体のBET比表面積が大きくなる。結果として樹脂との相溶性が悪く粘度が上昇するので、高充填しにくくなる。また熱硬化性樹脂の場合、硬化時間が長くなる。
【0006】
さらに粉砕のみで均一な粒子径のものを得ることは難しく、比較的粗大な凝集粒子が残存することとなる。この未粉砕粒子は樹脂充填時に破壊起点となり、衝撃強度を低下させることがわかっている。未粉砕粒子を除去するために粉砕の後、風力分級、あるいは篩分けなどで分離する手法も用いられる。
しかし、これらの分離操作には多大な設備投資が必要であり経済的ではない。
【0007】
その他従来の方法として、連続式遠心分離機により、大きな遠心力をかけ一次粒子を破壊することなく二次凝集粒を解砕することで、粒子の荒れを抑制することを提唱しているが(特許文献1参照)、特定の原料について限定された方法であり、広範囲に適用できる方法ではなかった。
【0008】
また、温度上昇させたバイヤー抽出液を固体水酸化アルミニウムと接触させることで、単結晶あるいは丸みのある形状を有する水酸化アルミニウムを得ることを提唱しているが(特許文献2参照)、長い接触時間が必要なこと、及び接触時水酸化アルミニウムの溶解が進行するため生産効率が悪くなるという欠点があった。
【0009】
さらに、水酸化アルミニウムを体積粉砕機で粉砕し、次いで磨砕による表面粉砕を行うか、あるいは水酸化アルミニウムを乾式衝撃粉砕機にて二次凝集粒子を粉砕した後、特定のアルカリ濃度のアルミン酸ナトリウム溶液中にスラリー化し温度上昇することで、表面を溶解しBET比表面積を低減する方法を提唱しているが(特許文献3参照)、前者は粉砕と磨砕の工程が必要であり、後者は乾式粉砕するために、一旦水酸化アルミニウムを濾過・乾燥する必要があるため、いずれも工程が長く、製造コストも高くなるという問題がある。
特許文献1 特公平5−4336号公報
特許文献2 特公昭62−9256号公報
特許文献3 特開平9−208740号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、凝集粒子の含有量がきわめて少なく、単粒子状に解砕されており、樹脂充填時、衝撃強度に優れた樹脂組成物を得ることができる水酸化アルミニウム、及びその効率的製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる事情下に鑑み、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、アルミン酸ナトリウム溶液中にバイヤー法により得られた水酸化アルミニウムを懸濁させたスラリーを、特定の条件で昇温し、その後特定の条件で保持することで、フィラー用に好適な低比表面積を有する、単粒状の理想的な水酸化アルミニウムを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の各項からなる。
[1]バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリーを、60℃以下から90℃以上にH時間(但しHは15分以内)で昇温し、その後少なくとも(15−H)分間は85℃以上で保持することを特徴とする水酸化アルミニウムの製造方法。
[2]昇温前のアルミン酸ナトリウム溶液のアルミナ濃度A(単位g/リットル)と水酸化ナトリウム濃度C(単位g/リットル)の比率A/Cが、0.40以下であることを特徴とする上記[1]に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
【0013】
[3]スラリー昇温による水酸化アルミニウムの溶解率が、下記式、
溶解率(%)=昇温前C×(昇温後A/C−昇温前A/C)×1.53/昇温前スラリーの水酸化アルミニウム濃度×100
(式中、Aはアルミン酸ナトリウム溶液のアルミナ濃度(単位g/リットル)、Cは水酸化ナトリウム濃度(単位g/リットル)を表す。)において、30%未満であることを特徴とする上記[1]または[2]に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
[4]スラリーの昇温を、二重管式熱交換器で行うことを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
【0014】
[5]平均粒子径Dが1〜10μm、BET比表面積Sが1.5m2/g以下、該比表面積Sから球近似で算出した粒子径Dbet(ここで、DbetはDbet=6/(S×ρ)で算出される。ρは水酸化アルミニウムの比重である。)とDの比(凝集度)、D/Dbetが3未満、20μm以上の粒子の含有量が0.5質量%以下であることを特徴とする水酸化アルミニウム。
[6]上記[1]乃至[4]のいずれかに記載の方法で得られた水酸化アルミニウム。
[7]水酸化アルミニウムが上記[5]に記載のものである上記[6]に記載の水酸化アルミニウム。
[8]上記[5]乃至[7]のいずれかに記載の水酸化アルミニウムをフィラーとして含んだ水酸化アルミニウム含有組成物。
[9]水酸化アルミニウム含有組成物のマトリックス材料が、ゴムまたはプラスチックである上記[8]に記載の水酸化アルミニウム含有組成物。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の水酸化アルミニウムの製造法は、先ずバイヤー法により得られた水酸化アルミニウムを、アルミン酸ナトリウム溶液に添加し、水酸化アルミニウムが懸濁したスラリーを得る。バイヤー法による水酸化アルミニウムは通常一次粒子が凝集した二次粒子を用いることができるが、好ましくは二次粒子径が10〜100μm、一次粒子径が1〜20μmである。
水酸化アルミニウムを添加するアルミン酸ナトリウム溶液は、アルミナ濃度A(単位g/リットル)と水酸化ナトリウム濃度C(単位g/リットル)の比率A/Cが好ましくは0.40以下、さらに好ましくは0.35以下、最も好ましくは0.30以下である。A/Cが0.40より高いと粒界をほぐすのに必要なアルミナ分が溶解せず、凝集粒が残存し易くなる。
【0016】
水酸化アルミニウムを懸濁させたアルミン酸ナトリウム溶液のスラリーは先ず60℃以下、好ましくは55℃以下の温度から90℃以上の温度に15分以内に昇温する。
昇温前のスラリー温度が60℃より高いと昇温時、粒界のみを選択的に溶解するのに充分な熱衝撃が与えられず、凝集粒子が残存してしまうためよくない。60℃以下の下限については特に制限はないが、通常は常温付近でよい。
スラリーは60℃以下の温度から15分以内に90℃以上に昇温する。昇温の際の温度が90℃未満であると、粒界のみを選択的に溶解するのに充分な熱衝撃が与えられず、凝集粒子が残存してしまうこと、及び粒子全体の溶解が進行してしまうためよくない。
【0017】
因みにアルミン酸ナトリウム溶液の沸点は、水酸化ナトリウム濃度によって変化するので限定できないが、バイヤー工程で使用されるアルミン酸ナトリウム溶液の場合104℃程度である。したがって90℃以上の上限は104℃程度である。、
この温度までの昇温時間は15分以内である。15分より長いと粒界のみを選択的に溶解するのに充分な熱衝撃が与えられず、凝集粒子が残存してしまうこと、及び粒子全体の溶解が進行してしまうためよくない。
スラリーを60℃以下から90℃以上に昇温する方法は特に限定はない。直線的に昇温してもよく、あるいは初め緩やかに終わりの方を急に昇温したり、またその逆にすることもできる。昇温時間の下限は特に制限なく、二重管式熱交換器等により急激に昇温してもよい。
【0018】
上記の温度に昇温後、スラリーは特定条件下で保持されるが、その条件は昇温時間に依存する。昇温時間15分の範囲内において、昇温時間が短くなるにつれて保持時間が長くなる。本発明の方法では昇温時間を15分以内のH分間とすると、保持時間は少なくとも(15−H)分間である。したがって昇温時間が15分の時は保持の工程は設けても設けなくてもよい。昇温後の保持温度は85℃以上、好ましくは90℃以上である。保持温度が85℃未満であると解砕された粒子が再度凝集を起こす為、よくない。保持温度の上限は一般的にはアルミン酸ナトリウム溶液の沸点である。
【0019】
スラリーの昇温後の水酸化アルミニウムの溶解率は、30%未満、好ましくは25%未満である。溶解率が30%より多いと、水酸化アルミニウムの収率が低くなるので生産効率が悪い。この溶解率において昇温後とは昇温、保持後のことを意味する。
ここで、昇温による水酸化アルミニウムの溶解率は、下記一般式、
溶解率(%)=昇温前C×(昇温後A/C−昇温前A/C)×1.53/昇温前スラリーの水酸化アルミニウム濃度×100
(式中、Aはアルミン酸ナトリウム溶液のアルミナ濃度(単位g/リットル)、Cは水酸化ナトリウム濃度(単位g/リットル)を表す。)で算出される。
【0020】
本発明の水酸化アルミニウムは平均粒子径Dが1〜10μm、窒素吸着法(BET法)で測定された比表面積Sが1.5m2/g以下、Sから球近似で算出した粒子径をDbetとしたとき、DbetとDの比(凝集度)D/Dbetが3未満、20μm以上の粒子の含有量が0.5質量%以下である。ここでDbet=6/(S×ρ)であり、ρは水酸化アルミニウムの比重である。
この水酸化アルミニウムは上記の方法により製造することができるが、他の方法で製造されたものであってもよい。
【0021】
本発明において、溶解後所望する粒子径を勘案して、出発原料となる二次凝集粒の一次粒子径を選定することで、所望の粒子径でBET比表面積が低く、単粒状の樹脂フィラー用水酸化アルミニウムを得ることができる。
本発明において製造される水酸化アルミニウムは、各種フィラー用として好適である。例えば、フィラーとして含んだ水酸化アルミニウム含有組成物のマトリックス材料としては、ゴムまたは熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等)などのプラスチックが好適に使用できる。
【0022】
また、本方法で得られた水酸化アルミニムを樹脂等に充填する際は、単独で用いても良いし、コンパウンド粘度を低くするため、粒子径の異なる他の数種類の水酸化アルミニウムと混合して使用してもよい。
さらに、本方法で得られた水酸化アルミニウムを従来公知の表面処理剤で表面処理して用いてもよい。表面処理剤としては、特に限定されないが、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の各種カップリング剤、オレイン酸、ステアリン酸などの脂肪酸、及びそれらの脂肪酸エステル、メチルシリケート、エチルシリケート等のシリケート等が挙げられる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。尚、本発明における物性は以下の方法で測定した。
(平均粒子径D)
水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは、レーザー散乱回折法により測定した。
(BET比表面積S)
水酸化アルミニウムの比表面積Sは、窒素吸着法(BET法)で測定した。
(凝集度D/Dbet)
水酸化アルミニウムの凝集度は、Sから球近似で算出した粒子径Dbet(ここで、DbetはDbet=6/(S×ρ)で算出される。ρは水酸化アルミニウムの比重である。)とDの比D/Dbetから計算して見積もった。
(20μm以上の粒子含有量)
試料5gを、1μm以上の固形物が除去可能なフィルターを通過させた後の水道水1.5リットルに分散させ、極微粒分級機(横浜理科株式会社製PS−80)にて10分間超音波分散させながら目開き20μmのステンレス製篩網で篩い分け、篩残渣の重量を測定した。篩い前の試料重量に対する篩残渣の重量百分率を20μ以上の粒子含有量として算出した。
【0024】
(衝撃強度)
ビニルエステル樹脂(リポキシRF−300シリーズ、昭和高分子(株)製)100重量部に、水酸化アルミニウム200重量部、硬化剤としてパーキュアWO(日本油脂製)2.0部、パーロイルTCP(日本油脂製)0.75部を混合、真空脱泡しながら攪拌した後、ガラス板間に流し込み、60℃1時間及び90℃30分間加熱硬化し成形体を得た。この成形体にてノッチなしの試験片を作製し、 Izod衝撃強度を測定した。
【0025】
(水酸化アルミニウムの溶解率)
温度上昇による水酸化アルミニウムの溶解率は、以下の式で算出した。
溶解率(%)=昇温前C×(昇温保持後A/C−昇温前A/C)×1.53/昇温前スラリーの水酸化アルミニウム濃度×100
(式中、Aはアルミン酸ナトリウム溶液のアルミナ濃度(単位g/リットル)、Cは水酸化ナトリウム濃度(単位g/リットル)を表す。以下同じ。)
【0026】
(実施例1)
バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリー(水酸化アルミニウムの平均粒子径57.6μm、水酸化ナトリウム濃度158g/リットル、A/C=0.31、スラリーの水酸化アルミニウム濃度200g/リットル、スラリー温度41℃)を二重管式熱交換器(内管側容積0.019m3、伝熱面積3.2m2)の内管側に3m3/Hr(熱交換器内滞留時間23秒)で送液し、外管に蒸気投入し、96℃まで昇温した後、スラリーを85℃で15分間保持した。スラリーのA/Cは0.49、溶解率は21.8%であった
該スラリーから固体水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは8.2μm、BET比表面積Sは0.5m2/g、凝集度は1.7、また20μm以上の粒子含有量は0.23質量%であった。さらにこの粉を樹脂に充填して作製した試験片のIzod衝撃強度は2.2kJ/m2であった。
【0027】
(実施例2)
実施例1と同様の水酸化アルミニウム懸濁スラリーを、容積1m3のSUS製タンクに投入し、攪拌しながらタンク温度を15分で90℃に上昇させた。スラリーのA/Cは0.47、溶解率は19.3%であった。該スラリーから固体水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは8.8μm、BET比表面積Sは0.5m2/g、凝集度は1.8、また20μm以上の粒子含有量は0.35質量%であった。さらにこの粉を樹脂に充填して作製した試験片のIzod衝撃強度は2.1kJ/m2であった。
【0028】
(実施例3)
バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液に懸濁させたスラリー(水酸化アルミニウムの平均粒子径55.3μm、水酸化ナトリウム濃度156g/リットル、A/C=0.38、スラリーの水酸化アルミニウム濃度180g/リットル、スラリー温度43℃)を実施例2と同様のSUS製タンクに投入し、攪拌しながらタンク温度を15分で90℃に上昇させた。スラリーのA/Cは0.48、溶解率は13.3%であった。該スラリーから固体水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは9.1μm、BET比表面積Sは0.4m2/g、凝集度は1.5、また20μm以上の粒子含有量は0.41質量%であった。さらにこの粉を樹脂に充填して作製した試験片のIzod衝撃強度は2.0kJ/m2であった。
【0029】
(実施例4)
実施例1と同様の水酸化アルミニウム懸濁スラリーを予め47℃に加熱した以外は実施例2と同様の操作を行った。昇温後のスラリーのA/Cは0.49、溶解率は21.8%であった。該スラリーから固体水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。得られた水酸化アルミニウム平均粒子径Dは9.7μm、BET比表面積Sは0.4m2/g、凝集度は1.6、また20μm以上の粒子含有量は0.40質量%であった。さらにこの粉を樹脂に充填して作製した試験片のIzod衝撃強度は2.0kJ/m2であった。
【0030】
(比較例1)
実施例1と同様の水酸化アルミニウム懸濁スラリーを実施例2と同様のSUS製タンクに投入し、攪拌しながらタンク温度を15分で83℃に上昇させた。スラリーのA/Cは0.44、溶解率は15.7%であった。該スラリーから固体水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは27.2μm、BET比表面積Sは0.2m2/g、凝集度は2.2、また20μm以上の粒子含有量は1.09質量%であった。さらにこの粉を樹脂に充填して作製した試験片のIzod衝撃強度は1.9kJ/m2であった。
【0031】
(比較例2)
実施例1と同様の水酸化アルミニウム懸濁スラリーを実施例2と同様のSUS製タンクに投入し、攪拌しながらタンク温度を30分で90℃に上昇させた。スラリーのA/Cは0.50、溶解率は23.0%であった。該スラリーから固体水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは12.3μm、BET比表面積Sは0.4m2/g、凝集度は2.0、また20μm以上の粒子含有量は0.74質量%であった。さらにこの粉を樹脂に充填して作製した試験片のIzod衝撃強度は1.8kJ/m2であった。であった。
【0032】
(比較例3)
実施例1と同様の水酸化アルミニウム懸濁スラリーを予め68℃に加熱した以外は実施例2と同様の操作を行った。昇温後のスラリーのA/Cは0.49、溶解率は21.8%であった。該スラリーから固体水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。得られた水酸化アルミニウム平均粒子径Dは14.5μm、BET比表面積Sは0.4m2/g、凝集度は2.3、また20μm以上の粒子含有量は0.63質量%であった。さらにこの粉を樹脂に充填して作製した試験片のIzod衝撃強度は1.8kJ/m2であった。
以上、実施例及び比較例の結果の概要を表1にまとめる
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
本発明の製造方法においては、水酸化アルミニウムに熱衝撃を与え、結晶学的に結合力の弱い二次凝集粒の粒界のみを選択的に溶解し、かつその後の再凝集等の粒径変化を抑制することにより、二次凝集粒子を解砕する効果がある。
上述したように本発明は、従来行われてきたメディア間の衝突による衝撃力を利用した粉砕法やレイモンドミル等の摩砕粉砕や、ジェットミル等の粒子間衝突を利用した粉砕法に、乾式篩や風力分級を組み組み合わせた製造方法とは異なり、残存凝集粒子を極めて少ない、単粒状の水酸化アルミニウムを得られるという点で画期的であり、その工業的価値は頗る大である。
Claims (4)
- バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリーを、60℃以下から90℃以上にH時間(但しHは15分以内)で昇温し、その後少なくとも(15−H)分間は85℃以上で保持することを特徴とする水酸化アルミニウムの製造方法。
- 昇温前のアルミン酸ナトリウム溶液のアルミナ濃度A(単位g/リットル)と水酸化ナトリウム濃度C(単位g/リットル)の比率A/Cが、0.40以下であることを特徴とする請求項1に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
- スラリー昇温による水酸化アルミニウムの溶解率が、下記式、
溶解率(%)=昇温前C×(昇温後A/C−昇温前A/C)×
1.53/昇温前スラリーの水酸化アルミニウム濃度×100
(式中、Aはアルミン酸ナトリウム溶液のアルミナ濃度(単位g/リットル)、Cは水酸化ナトリウム濃度(単位g/リットル)を表す。)において、30%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。 - スラリーの昇温を、二重管式熱交換器で行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
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