JP2004182556A - 水酸化アルミニウムの製造方法、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム含有組成物 - Google Patents

水酸化アルミニウムの製造方法、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム含有組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】プラスチック、ゴム等の難燃フィラー用等として利用される水酸化アルミニウムの製造方法に関し、さらに詳細には、凝集粒子の含有量がきわめて少なく、単粒子状に解砕されており、樹脂充填時、衝撃強度に優れた樹脂組成物を得ることができる水酸化アルミニウムの製造方法、水酸化アルミニウム、及び水酸化アルミニウム含有組成物を提供する。
【解決手段】本発明の水酸化アルミニウムの製造方法は、バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリーを、60℃以下から90℃以上に昇温する工程と、その後、該スラリーに遠心力を加える工程とを含み、昇温前のアルミン酸ナトリウム溶液中のアルミナ濃度A(単位g/リットル)と水酸化ナトリウム濃度C(単位g/リットル)の比率A/Cが、0.40以下であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はプラスチック、ゴム等の難燃フィラー用等として利用される水酸化アルミニウムの製造方法に関し、さらに詳細には、凝集粒子の含有量がきわめて少なく、単粒子状に解砕されており、樹脂充填時、衝撃強度に優れた樹脂組成物を得ることができる水酸化アルミニウムの製造方法、水酸化アルミニウム、及び水酸化アルミニウム含有組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水酸化アルミニウムは、ゴム・プラスチックに充填するフィラー等として幅広く用いられている。例えば熱可塑性樹脂、ゴム、エポキシ樹脂には難燃剤として、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂には調色フィラーとして用いられている。
【0003】
水酸化アルミニウムを難燃剤として用いる場合、水酸化アルミニウムを樹脂等に高い濃度で充填した方が難燃性能は向上するが、充填率が高くなると、成形性が悪化し、また混練トルクが上昇するといった問題が生ずる。また、成形温度が上昇し、水酸化アルミニウムの一部が脱水発泡するといった問題も生ずる。
【0004】
また、フィラーとして用いられる場合、水酸化アルミニウムには補強効果がないので、成形物の強度、特に衝撃強度が低下する。衝撃強度低下を抑制するためには、粒子径をなるべく細かくすることが望まれる。粒子径の細かい水酸化アルミニウムを析出によって得ることも可能であるが、水酸化アルミニウムは、一次粒子が多数凝集した二次凝集粒の形態を有するため、吸油量が非常に大きく、フィラーとして多量に充填することは困難である。
このため、一般的に50〜150μm程度の水酸化アルミニウムをボールミル、その他の粉砕機で、一次粒子程度に粉砕したものが用いられる。
【0005】
しかし、水酸化アルミニウムを粉砕によって所定の粒径まで粉砕するには多大なエネルギーを要する。また、粉砕された水酸化アルミニウムは、その一次粒子が破壊され、表面の荒れ、粒子のチッピング等が発生し、粉体のBET比表面積が大きくなる。結果として樹脂との相溶性が悪くなり、粘度が上昇するので、高充填しにくくなる。また、特に熱硬化性樹脂の場合、硬化時間が長くなる。
【0006】
さらに、粉砕のみで均一な粒子径のものを得ることは難しく、比較的粗大な凝集粒子(未粉砕粒子)が残存することとなる。この未粉砕粒子は樹脂充填時に破壊起点となり、衝撃強度を低下させることがわかっている。未粉砕粒子を除去するために、粉砕の後、風力分級、あるいは篩分けなどで分離する手法が用いられる。しかし、これらの分離操作には多大な設備投資が必要であり、経済的ではない。
【0007】
そこで、均一且つ所定の粒径の水酸化アルミニウムを得るため、各種の方法が提案されている(例えば特許文献1〜3など)。
【0008】
【特許文献1】
特公平5−4336号公報
【特許文献2】
特公昭62−9256号公報
【特許文献3】
特開平9−208740号公報
【0009】
前記特許文献1では、連続式遠心分離機により、大きな遠心力をかけ一次粒子を破壊することなく二次凝集粒を解砕することで、粒子の荒れを抑制することを提唱している。これは水酸化アルミニウムスラリーに遠心力を加えることにより二次凝集粒が互いに強く接触しながら移動し、互いのこすれあいによって、二次凝集粒の解砕効果が発生する。
しかし、この方法では、遠心力をかける対象として用いる水酸化アルミニウムの一次粒子径を1〜4μmに限定し、4μmより大きいと遠心力による解砕効果は二次凝集粒を解砕するのに十分ではないことが報告されており、広範囲に適用できる方法ではなかった。
【0010】
前記特許文献2では、温度上昇させたバイヤー抽出液を固体水酸化アルミニウムと接触させることで、単結晶あるいは丸みのある形状を有する水酸化アルミニウムを得ることを提唱している。
しかし、この方法には、長い接触時間が必要なこと、及び接触時水酸化アルミニウムの溶解が進行するため生産効率が悪くなるという欠点があった。
【0011】
前記特許文献3では、予め乾式衝撃粉砕機にて水酸化アルミニウムの二次凝集粒子を粉砕した後、特定のアルカリ濃度のアルミン酸ナトリウム溶液中にスラリー化し温度上昇することで、表面を溶解しBET比表面積を低減する方法を提唱している。
しかし、この方法では、予め乾式粉砕するために、一旦水酸化アルミニウムを濾過・乾燥する必要があるため、工程が長く、製造コストも高くなるという問題があった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、凝集粒子の含有量がきわめて少なく、単粒子状に解砕されており、樹脂充填時、衝撃強度に優れた樹脂組成物を効率良く得ることができる水酸化アルミニウムの製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
かかる事情下に鑑み、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアルミン酸ナトリウム溶液中に水酸化アルミニウムを懸濁させたスラリーを、特定の条件で昇温する工程と、その後、スラリーに遠心力をかけ固形分を濃縮するとともに二次凝集粒を解砕する工程とを組み合わせることにより、フィラー用に好適な低比表面積で単粒状の理想的な水酸化アルミニウムを得られることを見出し本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の手段を提供する。
【0014】
[1]バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリーを、60℃以下から90℃以上に昇温する工程と、その後、該スラリーに遠心力を加える工程とを含み、昇温前のアルミン酸ナトリウム溶液中のアルミナ濃度A(単位g/リットル)と水酸化ナトリウム濃度C(単位g/リットル)の比率A/Cが0.40以下であることを特徴とする水酸化アルミニウムの製造方法。
[2]スラリーを60℃以下から90℃以上に昇温する時間が15分以内であることを特徴とする前項1に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
[3]スラリー昇温による水酸化アルミニウムの溶解率が、一般式
【数2】
Figure 2004182556
において、30%未満であることを特徴とする前項1又は2に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
[4]遠心力が、300G以上であることを特徴とする前項1乃至3のいずれか1項に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
[5]遠心力を加える装置が、連続式遠心分離機であることを特徴とする前項1乃至4のいずれか1項に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
[6]昇温工程で使用する昇温装置が、二重管式熱交換器であることを特徴とする前項1乃至5のいずれか1項に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
【0015】
[7]平均粒子径Dが1〜10μm、BET比表面積Sが1.5m/g以下、Sから球近似で算出した粒子径Dbet(ここで、DbetはDbet=6/(S×ρ)で算出される。ρは水酸化アルミニウムの比重である。)とDの比(凝集度)D/Dbetが3未満、20μm以上の粒子の含有量が0.1重量%以下であることを特徴とする水酸化アルミニウム。
【0016】
[8]前項7に記載の水酸化アルミニウムをフィラーとして含んだ水酸化アルミニウム含有組成物。
[9]水酸化アルミニウム含有組成物のマトリックス材料が、ゴムまたはプラスチックである前項8に記載の水酸化アルミニウム含有組成物。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、前記[1]に示すように、バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリーを、60℃以下から90℃以上に昇温する昇温工程と、該スラリーに遠心力を加える遠心力作用工程とを含み、昇温前のアルミン酸ナトリウム溶液中のアルミナ濃度A(単位g/リットル)と水酸化ナトリウム濃度C(単位g/リットル)の比率A/Cが0.40以下であることを特徴とする水酸化アルミニウムの製造方法を提供する。
【0018】
本発明の昇温工程においては、バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリー中の水酸化アルミニウムに熱衝撃を与え、結晶学的に結合力の弱い二次凝集粒の粒界のみを選択的に溶解し、二次凝集粒子を解砕する。また、遠心力作用工程においては、該スラリーに遠心力(好ましくは300G以上)を加えて固形分を濃縮するとともに粒子同士のこすれあいによって、二次凝集粒を解砕する。即ち本発明の水酸化アルミニウムの製造方法は、このような昇温工程と遠心力作用工程とを組み合わせたことを特徴とする方法である。
【0019】
本方法の昇温工程において、昇温前のスラリーの温度は60℃以下、好ましくは55℃以下である。60℃より高いと昇温時、粒界のみを選択的に溶解するのに充分な熱衝撃が与えられず好ましくない。
また、昇温後のスラリー温度は90℃以上、好ましくは95℃以上、より好ましくは97℃以上である。90℃未満であると、粒界のみを選択的に溶解するのに充分な熱衝撃が与えられず、凝集粒子が残存してしまうこと、及び粒子表面があれてしまうため好ましくない。
因みにアルミン酸ナトリウム溶液の沸点は、水酸化ナトリウム濃度によって変化するので限定できないが、バイヤー工程で使用されるアルミン酸ナトリウム溶液の場合104℃程度である。
【0020】
本方法に用いる昇温前のアルミン酸ナトリウム溶液中のアルミナ(Al)濃度A(単位g/リットル)と水酸化ナトリウム(NaOH)濃度C(単位g/リットル)との比率A/Cは前述のように0.40以下であるが、好ましくは0.35以下、より好ましくは0.30以下とすることが望ましい。A/Cが0.40より高いと、粒界をほぐすのに必要なアルミナ分が溶解せず凝集粒子が残存してしまうため好ましくない。
【0021】
また、スラリーを60℃以下から90℃以上に昇温する時間は、前記[2]に示すように、15分以内、好ましくは10分以内、より好ましくは5分以内とすることが望ましい。15分より長いと、粒界のみを選択的に溶解するのに充分な熱衝撃が与えられず、凝集粒子が残存してしまうこと、及び粒子全体の溶解が進行してしまうため好ましくない。
【0022】
本方法における昇温による水酸化アルミニウムの溶解率は、前記[3]に示すように、30%未満、好ましくは25%未満であることが望ましい。溶解率が30%より多いと、水酸化アルミニウムの収率が低くなるので生産効率が悪い。
ここで、昇温による水酸化アルミニウムの溶解率は一般式
【数3】
Figure 2004182556
で規定する。
【0023】
本方法の遠心力作用工程において、スラリーに加える遠心力は、前記[4]に示すように、300G以上、好ましくは500G以上、より好ましくは1000G以上であることが望ましい。300G未満であると二次凝集粒を解砕するのに十分な遠心力が与えられないので好ましくない。
【0024】
また、本方法の遠心力作用工程において、遠心力を加える装置は、前記[5]に示すように、連続式遠心分離機であることが望ましい。遠心分離機により濃縮された固形分を、連続的に遠心分離機外にかき出す際に固形分に加わるせん断力により、二次凝集粒を解砕する効果も併せ持つからである。
なお、連続式遠心分離機には分離板型とデカンター型があり、分離板型には、弁排出型およびノズル排出型がある。またデカンター型にはスクリューデカンタ型がある。本発明に用いる連続式遠心分離機としては、スクリューデカンタ型を用いるのが、遠心分離機で濃縮された固形分にせん断力を加えて二次凝集粒を解砕する上で好ましい。
【0025】
さらに、本方法の昇温工程において、使用する昇温装置は、前記[6]に示すように、二重管式熱交換器であることが望ましい。
【0026】
このような本方法は、バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリーを原材料として用い、昇温工程と遠心力作用工程とを行うことによって、表面を荒らすことなくかつ凝集粒子の残存がきわめて少なく、単粒状の水酸化アルミニウムを得ることができる。
【0027】
このような本方法により、前記[7]に示すように、平均粒子径Dが1〜10μm、窒素吸着法(BET法)で測定された比表面積Sが1.5m/g以下、Sから球近似で算出した粒子径をDbetとしたとき、DbetとDの比、すなわち凝集度D/Dbetが3未満、20μm以上の粒子の含有量が0.1重量%以下であることを特徴とする水酸化アルミニウムを得ることができる。ここでDbet=6/(S×ρ)であり、ρは水酸化アルミニウムの比重である。
【0028】
本方法では、前述のように原材料として、バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリーを用いるが、溶解後所望する粒子径を勘案して、原料スラリー中の二次凝集粒の一次粒子径を選定することで、所望の粒子径でBET比表面積が低く、単粒状の水酸化アルミニウムを得ることができる。
【0029】
得られた水酸化アルミニウムは、前記[8]に示すように、各種フィラー用として好適に使用できる。また、当該水酸化アルミニウム含有組成物のマトリックス材料としては、前記[9]に示すように、ゴムまたは熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂等)などのプラスチックを好適に使用することができる。
【0030】
また、本方法で得られた水酸化アルミニウムを樹脂等に充填する際は、単独で用いてもよいし、コンパウンド粘度を低くするため、粒子径の異なる他の数種類の水酸化アルミニウムと混合して使用してもよい。
【0031】
さらに、本方法で得られた水酸化アルミニウムを従来公知の表面処理剤で表面処理して用いてもよい。表面処理剤としては、特に限定されないが、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤等の各種カップリング剤、オレイン酸、ステアリン酸などの脂肪酸、及びそれらの脂肪酸エステル、メチルシリケート、エチルシリケート等のシリケート等が挙げられる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りどのようにでも実施することができる。尚、本発明における物性は以下の方法で測定した。
【0033】
「平均粒子径D」
水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは、レーザー散乱回折法により測定した。
「BET比表面積S」
水酸化アルミニウムの比表面積Sは、窒素吸着法(BET法)で測定した。
「凝集度D/Dbet」
水酸化アルミニウムの凝集度D/Dbetは、BET比表面積Sから球近似で算出した粒子径Dbet(ここで、DbetはDbet=6/(S×ρ)で算出される。ρは水酸化アルミニウムの比重である。)とDの比D/Dbetから計算して見積もった。
「20μm以上の粒子含有量」
試料5gを、1μm以上の固形物が除去可能なフィルターを通過させた後の水道水1.5リットルに分散させ、極微粒分級機(横浜理科社製『PS−80』)にて10分間超音波分散させながら目開き20μmのステンレス製篩網で篩い分け、篩残渣の重量を測定した。篩い前の試料重量に対する篩残渣の重量百分率を20μm以上の粒子含有量として算出した。
「昇温による溶解率)
温度上昇による水酸化アルミニウムの溶解率は、以下の式で算出した。
【数4】
Figure 2004182556
【0034】
〔実施例1〕
バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリー(水酸化アルミニウムの平均粒子径57.6μm、水酸化ナトリウム濃度C158g/リットル,A/C=0.31,スラリー濃度200g/リットル,スラリー温度41℃)を、二重管式熱交換器(内管側容積0.019m,伝熱面積3.2m)の内管側に3m/Hr(熱交換器内滞留時間23秒)で送液しながら、外管に蒸気投入し、96℃まで昇温した後、一部を巴工業社製連続遠心分離機『シャープレス・スーパーデカンタP−660』に、1m/Hrで送液し、1000Gの遠心力を加え、固形分を濃縮した。さらに連続式遠心分離機の装置内壁に取り付けられたスクリューにより濃縮された固形分を連続的に装置外に取り出した。
二重管式熱交換器通過後スラリーのA/Cは0.46、スラリー昇温による水酸化アルミニウムの溶解率は18.1%であった。またデカンタ通過後の水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。
【0035】
得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは8.9μm、BET比表面積Sは0.5m/g、凝集度D/Dbetは1.8、また20μm以上の粒子含有量は0.03重量%であった。
さらにこの水酸化アルミニウム粉200重量部を、ビニルエステル樹脂(『リポキシRF−300シリーズ』昭和高分子社製)100重量部に添加し、硬化剤として『パーキュアWO』(日本油脂社製)2.0部、『パーロイルTCP』(日本油脂社製)0.75部を混合、真空脱泡しながら攪拌した後、ガラス板間に流し込み、60℃1時間及び90℃30分間加熱硬化し成形体を得た。この成形体にてノッチなしの試験片を作製した。試験片のIzod衝撃強度は2.6kJ/mであった。
【0036】
〔実施例2〕
バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリー(水酸化アルミニウムの平均粒子径55.3μm、水酸化ナトリウム濃度C156g/リットル、A/C=0.38、スラリー濃度180g/リットル、スラリー温度43℃)を、実施例1と同様の二重管式熱交換器の内管側に3m/Hr(熱交換器内滞留時間23秒)で送液しながら、外管に蒸気投入し、96℃まで昇温した後、一部を実施例1と同様の連続遠心分離機に、1m/Hrで送液し、1000Gの遠心力を加え、固形分を濃縮した。さらに実施例1と同様の方法で固形分を装置外に取り出した。
二重管式熱交換器通過後スラリーのA/Cは0.45、スラリー昇温による水酸化アルミニウムの溶解率は9.3%であった。またデカンタ通過後の水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。
【0037】
得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは7.8μm、BET比表面積Sは0.9m/g、凝集度D/Dbetは2.8、また20μm以上の粒子含有量は0.05重量%であった。
さらにこの水酸化アルミニウム粉を前記実施例1と同様の方法で樹脂に充填して試験片を作製した。作製した試験片のIzod衝撃強度は3.1kJ/mであった。
【0038】
〔実施例3〕
実施例1の二重管式熱交換器通過後スラリーの一部を実施例2と同様の連続遠心分離機に、1m/Hrで送液し、500Gの遠心力を加え、固形分を濃縮した。さらに実施例1と同様の方法で固形分を装置外に取り出した。デカンタ通過後の水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。
【0039】
得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは9.3μm、BET比表面積Sは0.5m/g、凝集度D/Dbetは1.9、また20μm以上の粒子含有量は0.04重量%であった。
さらにこの水酸化アルミニウム粉を前記実施例1と同様の方法で樹脂に充填して作製した。作製した試験片のIzod衝撃強度は、2.7kJ/mであった。
【0040】
〔実施例4〕
実施例1のスラリーを予め47℃に加熱した以外は実施例1と同様の操作を行った。二重管式熱交換器通過後スラリーのA/Cは0.45、溶解率は16.9%であった。またデカンタ通過後の水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。
【0041】
得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは9.5μm、BET比表面積Sは0.4m/g、凝集度D/Dbetは1.5、また20μm以上の粒子含有量は0.08重量%であった。
さらにこの水酸化アルミニウム粉を前記実施例1と同様の方法で樹脂に充填して作製した。作製した試験片のIzod衝撃強度は2.9kJ/mであった。
【0042】
〔実施例5〕
実施例1の二重管式熱交換器通過後スラリーの一部を実施例1と同様の連続遠心分離機に、1m/Hrで送液し、200Gの遠心力を加え、固形分を濃縮した。さらに実施例1と同様の方法で固形分を装置外に取り出した。デカンタ通過後の水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。
【0043】
得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは9.6μm、BET比表面積Sは0.3m/g、凝集度D/Dbetは1.2、また20μm以上の粒子含有量は0.15重量%であった。
さらにこの水酸化アルミニウム粉を前記実施例1と同様の方法で樹脂に充填して作製した。作製した試験片のIzod衝撃強度は2.4kJ/mであった。
【0044】
〔比較例1〕
実施例1と同様の水酸化アルミニウムスラリーを実施例1と同様の二重管式熱交換器の内管側に3m/Hr(熱交換器内滞留時間23秒)で送液しながら、外管に蒸気投入し、87℃まで昇温した後、一部を実施例1と同様の連続遠心分離機巴工業社製連続遠心分離機に、1m/Hrで送液し、1000Gの遠心力を加え、固形分を濃縮した。さらに実施例1と同様の方法で固形分を装置外に取り出した。
二重管式熱交換器通過後スラリーのA/Cは0.40、スラリー昇温による水酸化アルミニウムの溶解率は10.9%であった。またデカンタ通過後の水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。
【0045】
得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは14.0μm、BET比表面積Sは0.3m/g、凝集度D/Dbetは1.7、また20μm以上の粒子含有量は0.73重量%であった。
さらにこの水酸化アルミニウム粉を前記実施例1と同様の方法で樹脂に充填して作製した。作製した試験片のIzod衝撃強度は1.9kJ/mであった。
【0046】
〔比較例2〕
バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムスラリー(水酸化アルミニウムの平均粒子径56.5μm、水酸化ナトリウム濃度C159g/リットル、A/C=0.45、スラリー濃度200g/リットル、スラリー温度45℃)を実施例1と同様の二重管式熱交換器の内管側に3m/Hr(熱交換器内滞留時間23秒)で送液しながら、外管に蒸気投入し、96℃まで昇温した後、一部を実施例1と同様の連続遠心分離機に、1m/Hrで送液し、1000Gの遠心力を加え、固形分を濃縮した。さらに実施例1と同様の方法で固形分を装置外に取り出した。
二重管式熱交換器通過後スラリーのA/Cは0.47、スラリー昇温による水酸化アルミニウムの溶解率は2.4%であった。またデカンタ通過後の水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。
【0047】
得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは30.4μm、BET比表面積Sは0.2m/g、凝集度D/Dbetは2.5、また20μm以上の粒子含有量は1.26重量%であった。
さらにこの水酸化アルミニウム粉を前記実施例1と同様の方法で樹脂に充填して作製した。作製した試験片のIzod衝撃強度は1.8kJ/mであった。
【0048】
〔比較例3〕
実施例1のスラリーを予め65℃に加熱した以外は実施例1と同様の操作を行った。二重管式熱交換器通過後スラリーのA/Cは0.46、溶解率は18.1%であった。またデカンタ通過後の水酸化アルミニウムを洗浄、濾別した後、乾燥した。
【0049】
得られた水酸化アルミニウムの平均粒子径Dは10.6μm、BET比表面積Sは0.5m/g、凝集度D/Dbetは2.1、また20μm以上の粒子含有量は0.22重量%であった。
さらにこの水酸化アルミニウム粉を前記実施例1と同様の方法で樹脂に充填して作製した。作製した試験片のIzod衝撃強度は2.2kJ/mであった。
【0050】
以上、実施例1〜5及び比較例1〜3の結果の概要を表1にまとめる。
【0051】
【表1】
Figure 2004182556
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の水酸化アルミニウムの製造方法においては、スラリー中の水酸化アルミニウムに熱衝撃を与え、結晶学的に結合力の弱い二次凝集粒の粒界のみを選択的に溶解し、かつ遠心力を加え、二次凝集粒を互いに強く接触させることにより二次凝集粒を解砕する効果がある。
また、上述したように本発明の水酸化アルミニウムの製造方法は、従来行われてきたメディア間の衝突による物理的衝撃力を利用した粉砕法やレイモンドミル等の摩砕粉砕や、ジェットミル等の粒子間衝突を利用した粉砕法に、乾式篩や風力分級を組み組み合わせた製造方法などとは異なり、残存凝集粒子が極めて少なく、単粒状の水酸化アルミニウムを得ることができるという点で画期的な製造方法であり、その工業的価値は頗る大である。
さらに、上述の方法により得られた本発明の水酸化アルミニウムは、ゴム・プラスチックなどに充填するフィラー等として幅広く用いることができ、従来の水酸化アルミニウムフィラーのように衝撃強度を低下させたりすることがなく、衝撃強度の高い成形体を得ることができる。

Claims (9)

  1. バイヤー法により得られた水酸化アルミニウムをアルミン酸ナトリウム溶液中に懸濁させたスラリーを、60℃以下から90℃以上に昇温する工程と、その後、該スラリーに遠心力を加える工程とを含み、昇温前のアルミン酸ナトリウム溶液中のアルミナ濃度A(単位g/リットル)と水酸化ナトリウム濃度C(単位g/リットル)の比率A/Cが、0.40以下であることを特徴とする水酸化アルミニウムの製造方法。
  2. スラリーを60℃以下から90℃以上に昇温する時間が15分以内であることを特徴とする請求項1に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
  3. スラリー昇温による水酸化アルミニウムの溶解率が、一般式
    Figure 2004182556
    において、30%未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
  4. 遠心力が、300G以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
  5. 遠心力を加える装置が、連続式遠心分離機であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
  6. 昇温工程で使用する昇温装置が、二重管式熱交換器であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
  7. 平均粒子径Dが1〜10μm、BET比表面積Sが1.5m/g以下、Sから球近似で算出した粒子径Dbet(ここで、DbetはDbet=6/(S×ρ)で算出される。ρは水酸化アルミニウムの比重である。)とDの比、すなわち凝集度D/Dbetが3未満、20μm以上の粒子の含有量が0.1重量%以下であることを特徴とする水酸化アルミニウム。
  8. 請求項7に記載の水酸化アルミニウムをフィラーとして含んだ水酸化アルミニウム含有組成物。
  9. 水酸化アルミニウム含有組成物のマトリックス材料が、ゴムまたはプラスチックである請求項8に記載の水酸化アルミニウム含有組成物。
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