本発明は、特定の性質を有するデキストリンを含有することを特徴とする加工食品組成物に関する。本発明が対象とする加工食品組成物には、脂肪組織代替物;脂身に代えて当該脂肪組織代替物を用いて調製される食肉加工食品;乳化様食品;乳化食品;チーズ様食品;チーズに代えて当該チーズ様食品を用いて調製される加工食品;砂糖菓子;および飲料が含まれる。なお、上記乳化食品には、乳化調味料;スプレッド;プリン(中性プリン;果汁含有プリン、チーズ含有プリンなどの酸性プリンを含む)、杏仁豆腐,ババロア、フラワーペースト、カスタードクリームおよびムースなどの乳原料又は植物油脂を用いたデザート;ヨーグルト;アイスクリーム,アイスミルク,ラクトアイス、および氷菓などの冷菓;ホイップクリームが含まれる。
従来より、健康志向および成人病予防の観点から、脂肪含有量を低減させた低カロリー食品が求められている。
例えばソーセージ、ハム、ベーコン、サラミ、ミートローフ、ハンバーグステーキ、およびパテなどの脂肪肉を使用した食肉加工食品において、従来より脂肪含量およびコレステロール含量を低減させる試みが行われている。
かかる食肉加工食品の一例として、特許文献1には、肉相とゲル化したミクロ相からなる水性相とが、別個の相または連続相として存在する食肉加工食品が記載されている。ここで水性相は、40℃以上で150℃より低いゲル融解温度を有する少なくとも2つのゲル化剤から調製され、そのゲル化剤の一つとして、ペクチン、アルギン酸塩、カラギナン、または加水分解澱粉などの炭化水素ゲル化剤が、もう一つのゲル化剤として、化工澱粉、架橋澱粉、加水分解澱粉、セルロース、セルロース誘導体、またはDE5未満の脱分枝デキストリン(例えば、「Paselli SA2、N-oil」など)が挙げられている。ここに記載されている脱分枝デキストリン(「Paselli SA2、N-oil」)は、後述する実験例1で示すように(既存品1と2参照)、いずれも青価(a)が1.2を超え、また25℃の蒸留水で調製した30重量%水溶液の5分後の粘度(25℃)が100mPa・sを大きく超えるものである。かかるデキストリンを用いて食肉加工食品を調製すると、デキストリンの溶解時に必要以上に粘性が生じて調製が困難になったり、加熱して喫食する際に溶解したデキストリンが糊感となって自然なジューシー感を得ることができないという問題がある。
また、油脂が水に乳化した乳化食品として、マヨネーズやドレッシングなどが知られている。かかる乳化食品は、独自の滑らかさ、コク、クリーミーさ、およびつや感を持ち、また外観が白濁していることを特徴とする。
かかる乳化食品についても、従来より脂肪含量を低減させる試みが行われている。例えば、特許文献2には、40〜70%の高アミロース含量を有する澱粉を用いてバター、マーガリン、その他、類似する脂肪スプレッドの代用品(脂肪分0〜30重量%)を調製することが記載されている。ここに記載されている澱粉は、そのアミロース含量(40〜70重量%)が、青価(a)に換算すると1.2を超え、この点で本発明で用いるデキストリンと相違するものである。かかる澱粉を用いては油脂特有のコクや滑らかさが得られず、またかかる澱粉を使用して乳化食品を調製すると食感がざらつくなど、脂肪スプレッド等の乳化食品とは異なる食感になるといった問題があった。
特許文献3および4には、脂肪分の全部または一部に代えてデキストリン(タピオカデキストリン)や酸転化澱粉または酵素転化澱粉を用いて、マヨネーズ、ドレッシング、マーガリンおよびアイスクリームなどの乳化食品を調製することが記載されている。しかし、これらの文献には、これらのデキストリンや澱粉を用いて、油脂を使用せずに乳化食品と同様の外観および食感を有する食品を調製することについては記載されていない。
特許文献5〜8には、分岐デキストリンと各種の多糖類を用いて、低カロリーのマヨネーズ、ドレッシング、マーガリンおよびアイスクリームなどの乳化食品を調製することが記載されている。しかしながら、これらの文献にはいずれも本発明の特定の性質を有するデキストリンは記載されていない。
特許文献5および6で使用されている分岐デキストリンは、その製法や特徴から、パインデックスNo.100(松谷化学工業(株)製)(実験例1中の既存品3)と同等のデキストリンと認められる。後述する実験例7や8に示すとおり、当該分岐デキストリンは無脂肪のマヨネーズや低脂肪のマヨネーズの調製に適していない。
特許文献7で使用される分岐デキストリンは、デキストリンにアルケニルコハク酸をエステル結合させたものであり、本発明のデキストリンとは構造が異なる。この文献7に記載されている分岐デキストリンを用いて無脂肪のマヨネーズを調製すると、十分な保形性および脂肪感が得られずマヨネーズの態様を呈さない。また低脂肪のマヨネーズを調製した場合、油脂含量を50重量%以下、更には15重量%以下まで低減すると十分な保形性および脂肪感が得られずマヨネーズの態様を呈さない。
特許文献8記載のデキストリンを用いると、本発明のデキストリンを用いるよりも脂肪感が低く、またザラついた食感になったり糊っぽい食感となる。
また、マヨネーズは、食用油脂を全重量の約65〜80重量%の割合で高濃度含有する乳化物である。このように油分を高濃度含有した乳化物は、油滴が隣接する油滴同士で接触した状態、つまり最密充填状態となっているため、澱粉やガム質等の増粘剤を含有させなくとも粘度が50000mPa・s以上と高粘度を有している。一方、従来より脂肪低減を目的として低脂肪マヨネーズ様調味料が各種検討されてきたが、係る低脂肪マヨネーズ様調味料は、油滴が最密充填状態とならないため、粘度が低下して液状の乳化物となり、マヨネーズ独特の粘度や食感、脂肪感を得ることができないという問題があった。また、マヨネーズ特有の粘度や食感を付与するために、増粘剤の添加量を増加させると、口どけが悪くなる、ぬめりや曳糸性が高くなるなど、マヨネーズと異なる食感になるといった問題を抱えていた。
またチーズに関しても、低カロリー化したチーズが求められるようになっており、低脂肪や無脂肪のチーズ様食品の開発が進められている。
例えば、特許文献9には、チーズ中に存在するカゼイネートが、少なくとも40%重量のアミロース含量を有する予備糊化された高アミロース澱粉、その誘導体、その転化生成物、その転化誘導体化生成物、またはその架橋生成物などによって置換されたイミテーションチーズ製品が開示されている。ここで高アミロース転化澱粉生成物として約50以下の塩化カルシウム水流動性を有するデキストリンが、また予備糊化された高アミロース澱粉として、4より大きなABF値を有するデキストリンが挙げられている。しかしながら、特許文献9に記載の澱粉を用いてチーズ様食品を調製しようとすると、チーズ特有の保形性を得ることができない、チーズ独特のボディ感を得ることができない、また、澱粉特有の糊っぽい食感またはざらついてなめらかさに欠ける食感になるといった問題があった。
また、特許文献10には、0.25〜1.0重量%のマルトデキストリンを食品に配合することでチーズ特有の風味および食感と溶融性が付与できることが記載されている。しかし、当該食品は42〜48%の脱脂乳チーズを併用することを特徴とするものである。また、ここで使用されているデキストリンは「Paselli SA2(実験例1中の既存品1)」であり、前述するように、青価(a)が1.2を超え、また25℃の蒸留水で調製した30重量%水溶液の5分後の粘度(25℃)が100mPa・sを大きく超えるものである点で、本発明で使用するデキストリンと相違する。このため、かかるデキストリンを用いて調製したチーズ様食品は、脂肪の旨味が少なく、チーズ特有のコクを得ることができなかった。
また、デキストリンを添加したチーズとしては、デキストリン2〜15%を含んでなる軟質チーズ類(特許文献11)や、サイクロデキストリンを加えたチーズ(特許文献12)、およびタピオカデキストリンを含むチーズが提案されている(特許文献13)。しかし、特許文献11に記載されるデキストリンはDEが5〜30であり、本発明で使用する好適なデキストリン(DE:3.5〜4.5)と相違する。
また特許文献12に記載されるデキストリンは、本発明のデキストリンとは構造が異なるサイクロデキストリンであるため、チーズ様食品にふさわしい脂肪感のあるゲルを形成することができない。さらに特許文献13に記載されるデキストリンは、自然界には元来存在しない遺伝子修飾により得られる澱粉から調製されるものである点で、本発明で使用するデキストリンと相違する。
このため、これらのデキストリンを用いてチーズ様食品を調製しようとすると、ペースト状となり、チーズ特有の保形性を得ることができないという問題、また保形性を付与させるためにデキストリンを多量添加すると食感がざらついてチーズ様の食感が得られないという問題がある。また固形状のチーズを調製すると、硬くガム様の食感を有し、また時間経過と共にその硬さがより進行してしまうといった問題があった。更に、乳原料の高騰から、チーズ中の乳脂肪を植物油脂などの油脂に代替した食品が検討されている。しかし、チーズ中の乳脂肪含量を低減させると、チーズソース様のペースト状となりチーズ特有の保形性が得られない。また、チーズ特有の濃厚な歯ごたえのある食感も得られない。
一般にチーズは加熱により溶融する性質を有し、この性質がグラタン、ピザ等の調理に利用されているが、特許文献10〜13に記載のデキストリンまたは澱粉を用いた場合は、調製したチーズ様食品を加熱すると、チーズ様食品が溶け出して液状となってしまいチーズ特有の加熱溶融の状態(溶融感、糸引き感)を再現することができない、という問題があった。
プリン、チーズデザート、杏仁豆腐、ババロア、フラワーペースト、カスタードクリームおよびムースなどの乳原料又は植物油脂を用いたデザートにおいても、近年の健康嗜好および乳原料の高騰化に伴い、乳製品中の乳脂肪分や植物油脂などの低減が求められている。しかし、これらデザートに含まれる乳脂肪分や油脂分を低減させると、乳脂肪や油脂特有の滑らかな食感や濃厚感、ボディ感、および保形性が大きく低下する、離水が多くなるなど、デザートの食感、風味および性状に与える影響は大きい。かかるデザートに濃厚感を与える技術としては、例えば杏仁豆腐等のデザートの食感改善に多糖類を用いる技術(特許文献14)が知られている。
具体的には、特許文献14には、多糖類を組み合わせることにより杏仁豆腐などのデザートに緻密な組織と適度な硬さと弾力を与えることが記載されている。しかし、後述する実験例26〜28に示すように、従来公知のデキストリン(既存品)を用いてプリンを調製した場合、濃厚感や脂肪感は得られず、逆に粉っぽさやざらつき感、澱粉臭が生じるなど、デザートの食感や風味の点で問題が生じることがわかった。
同様にして、デザートの一種であるヨーグルトでも低脂肪化および低カロリー化が試みられている。ヨーグルトの低カロリー化には、砂糖などの糖質を高甘味度甘味料や糖アルコールなどの低カロリー原料に代替する等の手法が行われているが、低脂肪化には乳脂肪や油脂の低減が必要である。しかし、乳成分を発酵させて調製されるヨーグルトにおいて、乳脂肪分や油脂分の低減は、食感や風味に与える影響が大きく、ヨーグルト特有の滑らかさや濃厚感が失われ、水っぽい風味を有するヨーグルトとなってしまう。この点、特許文献15では、発酵乳原料ミックス中の溶存酸素濃度を5ppm以下とし、30〜39℃で発酵することにより、通常の方法で製造した発酵乳と同等またはそれ以上の脂肪感を有する発酵乳が得られることが記載されている。また、特許文献16では、低脂肪化を目的として使用される脱脂粉乳によって生じる粉っぽい匂いや薄味を補うために、乳をリパーゼ処理および/又は乳酸菌による発酵処理して得られる処理物を用いる技術が記載されている。
またデキストリンを用いてヨーグルトの脂肪分を低減する技術として、デンプンを加水分解および脱分岐して調製したデキストリンを用いる方法(特許文献17)、部分加水分解澱粉(デキストリン)と乳タンパクを組み合わせて用いる方法(特許文献18)が知られている。
しかし、特許文献15の方法では、不活性ガスによるガス置換処理または脱酸素膜を用いた膜分離処理など特別な工程を経る必要がある。これらは通常のヨーグルト製造ラインにはない工程であり、煩雑で且つ新たな製造ラインを導入する必要があるなど実用性に欠ける。また、特許文献16の方法では、味や香りは改善できるものの、乳特有の濃厚感を得ることはできない。更に、これら文献15および16記載の技術では、いずれもヨーグルトの乳脂肪分が低減するにつれ、離水が顕著に発生するといった問題点もある。また特許文献17に記載のデキストリンは、後述する実験例1に示す既存品1「PASWLLI SA2」(青価1.42)をさらに脱分岐したものであり、脱分岐が進むにつれてより顕著に粉っぽさやざらつき感が生じるという問題がある。また特許文献18に記載のデキストリンは、後述する実験例1に記載する既存品5のデキストリンと近い物性を有していると考えられる。このため、かかるデキストリンを用いても、ヨーグルト中の乳脂肪含量を低減させると、濃厚感が著しく低下し、乳特有の食感や風味を得ることはできない。
アイスクリーム(乳固形分15%以上、乳脂肪分8%以上)、アイスミルク(乳固形分10%以上、乳脂肪分3%以上)、ラクトアイス(乳固形分3%以上)、および氷菓などの冷菓に関しても、近年の健康嗜好に伴い、低脂肪化および低カロリー化が求められるようになっている。
これに関するデキストリンを用いた技術として、特許文献19には、30重量%水溶液の粘度が約8〜35cpで且つ六糖類までの糖類含量が約30重量%以下の澱粉分解物を冷菓中に約15重量%以下の割合で添加する方法が開示されている。また特許文献20には、破砕されたアミロース澱粉加水分解物を用いる方法、特許文献17には澱粉を加水分解および脱分岐して調製されるデキストリンを用いる方法、特許文献3には、5未満のブドウ糖当量(DE)を有し、かつ澱粉固形物10〜50重量%の水性分散液が55℃で約10秒以上の熱フロー粘度を有し、かつ4℃において24時間以内に25g以上の強度を有するゲルを形成する澱粉を用いる方法が開示されている。
しかし、特許文献19のデキストリンは、本発明で用いるデキストリンのように、高濃度で溶解し、冷却した際にゲル化するという性質を有さないし、また冷菓に十分な濃厚感を付与することはできない。特許文献17に開示のデキストリンは、前述するように既存品1のデキストリン「Paselli SA2」(青価1.42)をさらに脱分岐したものであり、冷菓の調製に用いると澱粉臭や粉っぽさやざらつきが生じる。また特許文献3に記載のデキストリンは、実験例1に記載する既存品2「インスタント エヌオイルII」(日本エヌエスシー(株)製)と類似しており、冷菓の油脂や乳脂肪含量を低減させた場合に十分な濃厚感を付与することができない上に、粉っぽさやざらつきなどが生じる。
ホイップクリームは、原料となるクリームを撹拌して解乳化し、クリーム内部に空気を取り込むことによって調製される。しかしながら、ホイップクリームの起泡状態は不安定であり、起泡後、時間の経過とともに離水が生じ、ホイップクリームの本来の食感が失なわれたり、保形性を失いフィリング材としての商品価値が低下するという問題点を有している。特に凍結状態で流通され、使用時に解凍されるホイップクリームは、ホイップクリーム中に含有される水分の凍結解凍により、ホイップクリームの構造の一部を形成している脂肪球が部分的に破壊されるため離水が顕著に生じ、また解凍後に絞り出した際の造花性や口溶けが低下するといった問題点を抱えている。
また、ホイップクリームにおいても、近年の嗜好の多様化や健康志向の高まりから、低カロリー化、ライト化、およびソフト化などが要求されており、油脂含量を低減することが検討されている。しかし、ホイップクリームにおいて、油脂は起泡安定効果の役割を果たしているため、油脂含量を低減させた場合は、油脂特有の濃厚感が低下するだけでなく、前述する保形性が著しく低下し、また離水も発生しやすくなる。
こうしたホイップクリームの離水防止や保形性改良のために、増粘多糖類などを添加することが従来から行われている。例えば、ジェランガム、好ましくはネイティブ型ジェランガム、解乳化剤、および安定乳化剤を添加する方法(特許文献21)、離水防止を目的としてキサンタンガム、グァーガム、またはカルボキシメチルセルロースを配合する方法(特許文献22)などがある。しかし、ジェランガム、キサンタンガム、およびグァーガム等の増粘多糖類を添加した場合であっても、離水防止効果が不十分であったり、またホイップクリームの食感が重くなる、増粘多糖類特有のぬめりが生じる、フレーバーリリースが悪くなるなどの各種の問題があり、離水防止、保形性維持、食感改良といった、全ての課題を解決できる方法はない。
一方、デキストリンをホイップクリームに添加することも試みられている。例えば、デキストリン、ジグセリンモノオレイン酸エステルおよびリゾレシチンを配合して組織持続性を付与した凍結ホイップクリーム(特許文献23)、30重量%水溶液を4℃で3日間保存したときの濁度が0.2以下であって、10糖類以上の糖成分が25重量%以上のものからなる澱粉分解物を配合したホイップクリーム(特許文献24)、DEが3〜42の範囲であり且つ平均分子量が400〜9000の範囲である澱粉分解物を含有する冷凍耐性を有する起泡性水中油型乳化物(特許文献25)、DEが1〜7の澱粉分解物を2〜10重量%含有するホイッピング用サワークリーム組成物(特許文献26)がある。また、特許文献3および4には、脂肪又は油の一部を転化ゲル化澱粉の水性分散液によっておきかえてホイップ製品を調製することが記載されている。
しかし、特許文献23には青価について一切記載も示唆もされておらず、従来のデキストリンではホイップクリームの離水防止や食感改良の効果は得られない。また、本発明で使用するデキストリンは濁度が0.2より大きいのに対し、濁度が0.2以下の特許文献24記載のデキストリンでは離水抑制効果、食感改良効果は不十分である。特許文献25および26に記載されているデキストリンは、DEと平均分子量等の規定より従来既存の「パインデックスNo.100」(松谷化学工業(株)製)(実験例1に示す既存品3)や「Paselli SA2」(AVEBE社製)(実験例1に示す既存品1)と同等のデキストリンであり、また特許文献3および4に開示されているデキストリンはその製法や特徴から従来から存在する「エヌオイル」(日本エヌエスシー(株)製)、「Paselli SA2」(AVEBE社製)、「C☆DELIGHT MD01970」((株)カーギルジャパン製)(実験例1に示す既存品2、1および4)と同等のデキストリンと認められる。しかし、これらのデキストリンを含有させたホイップクリームは後述する実験例1に示すとおり、離水が生じる、食感が低下するなどの問題がある。
ソフトキャンディ、キャラメル、ヌガー、グミキャンディ等の砂糖菓子は、ブドウ糖やショ糖などの糖類を原料とし、これを水に溶解して煮詰めた溶液を成形(充填)、乾燥もしくは冷却することにより製造される。通常、これら砂糖菓子は可溶性固形分が約75〜95度と高いため、通常の食品に使用可能な増粘多糖類やゲル化剤を用いた場合であっても、溶液の粘度が増大して成形や充填が困難となる。また、増粘多糖類、ゲル化剤が溶解するのに必要な水分が充分に確保できず溶解しない、あるいは煮詰めるうちに再析出する、焦げるなどの問題を抱えており、砂糖菓子に適用可能なゲル化剤は数が少ない。今日、砂糖菓子に用いられるゲル化剤としては、ゼラチン、カラギナン、アラビアガム、ペクチン、および寒天等が挙げられるが、例えばゼラチンの場合、融点が低く30℃前後で溶解するため、高温下で保持されると軟化する、べたつきが生じる、ゼラチン特有の臭いが砂糖菓子に影響しやすいなどの問題がある。カラギナンは水分が飛びにくく煮詰めに時間がかかる点や、ゲル化温度が高く成型や充填が困難である、酸性域で使用できないなどの問題がある。また、ペクチンは歯への付着性が大きく、寒天は可溶性固形分が80以上となると不溶化して十分な保形性が得られない、もろくて崩れやすい。更に、砂糖菓子は可溶性固形分が高いことからも、ゲル化剤同士を併用することにより、粘度が増加して作業性が悪くなる、ゲル化を阻害しあうなどといった問題もある。
一方、砂糖菓子中にデキストリンを添加する技術としては、煮詰め後のキャラメル生地に澱粉加水分解粉末を添加してキャラメルを製造する方法(特許文献27)、デキストリンと難消化性デキストリンを用いてグミキャンディを製造する方法(特許文献28)が知られている。更に、特許文献29には親水コロイドとしてマルトデキストリンを添加して砂糖菓子の粘弾性およびガラス転移温度を修正する方法が開示されている。
しかし、特許文献27に開示されている技術は、キャラメルの製造過程に使用するフォンダン(砂糖水飴を煮詰めて微結晶化したもの)の代わりに澱粉加水分解物粉末を加え、甘味を抑えるためにデキストリンを添加する技術であり、また特許文献28においても糖類の代替としてデキストリンが開示されているに過ぎず、デキストリンによって砂糖菓子の物性や性状を改良するものではない。同様に、特許文献29の技術も、本来保形性のある砂糖菓子に対してマルトデキストリンを添加するものであり、デキストリンを用いて砂糖菓子に保形性を付与することについては開示されていない。
また飲料においても、近年の健康志向や乳原料の高騰化に伴い、牛乳や生クリームなどの乳原料やココア中のカカオ脂などを低減させることが検討されている。しかし、水分含量が極めて高い飲料において、乳脂肪やカカオ脂などの脂肪分を低減させると、脂肪特有の濃厚感やボディ感が低減し、薄っぺらい食感や味となり、満足感の得られない飲料となってしまう。更に、最近では飲料においてもトロミや食感を重視した商品が数多く見られるようになっており、特徴的な食感を有する飲料開発が行われている。
デキストリンを含有した飲料に関する技術としては、DE6〜30の澱粉分解物を配合して炭酸飲料のクリーミー性、コク味などの味質を改善する方法(特許文献30)、高カロリー物質の全部または一部を特定の分岐マルトデキストリンで置換する方法(特許文献31)が開示されている。また、特許文献5には多糖類および分岐デキストリンを併用する低カロリー食品の一例としてコーヒー牛乳が挙げられている。
しかし、特許文献30〜31および5に記載されている澱粉分解物はいずれも本発明のデキストリンのように高濃度で水に溶解し、冷却した際にゲル化しないか、またはしたとしても非常にゲル強度の低いものである。このため、これらの澱粉分解物は、本発明のデキストリンと比較して、濃厚感、脂肪感、およびボディ感を飲料に付与する効果が非常に低い。またその効果を上げるために添加量を増加すると、澱粉臭が目立ち、フレーバーリリースが悪化してしまう等の問題がある。更に、飲料にトロミや濃厚感付与を目的として用いられる素材として、増粘多糖類や澱粉が挙げられるが、増粘多糖類や澱粉を用いると、製造工程中で粘度が高くなり作業性が低下したり、糊っぽい食感やざらついた食感となってしまう。更には、増粘多糖類特有の曳糸性が影響し、ぬめり気のある食感となる。また、用いる素材の種類によってはフレーバーリリースが低下するなどの問題もあり、フレーバーリリースに影響を与えることなく、所望な食感を有する飲料が求められていた。
特表平8−502894号公報
特表2000−503208号公報
特公平5−37007号公報
特開平6−105652号公報
特開平5−276898号公報
特開2001−252042号公報
国際公開第2004/045311号パンフレット
特表平10−507356号公報
特公昭61−57号公報
特開平6−217691号公報
特開昭62−14742号公報
特開昭56−75060号公報
特表2003−530127号公報
特開平10−290677号公報
特開2007−104995号公報
特開2003−250482号公報
特表2005−527214号公報
特表平06−506825号公報
特開平07−50994号公報
特表平08−502888号公報
特開2001−245620号公報
特開平06−225720号公報
特開2003−93006号公報
特開2004−337166号公報
特開2004−154092号公報
特開平04−112747号公報
特開平02−154641号公報
特開2000−116343号公報
特表2003−529381号公報
特開2002−330735号公報
特表2004−524849号公報
本発明は特定の性質を有するデキストリンの食品への応用、具体的には当該デキストリンを用いて調製される各種の加工食品組成物を提供することを目的とする。
より具体的には、本発明は、上記の加工食品組成物として、牛脂や豚脂などの食肉の脂身に特有な食感(歯ごたえ感)とジューシー感を有する脂肪組織代替物、および脂身に代えて当該脂肪組織代替物を含有する食肉加工食品を提供することを目的とする。
また本発明は、上記の加工食品組成物として、マヨネーズやマーガリンなどのように油脂を乳化して調製される乳化食品と外観と食感が類似する乳化様食品を提供することを目的とする。より詳細には、本発明は、油脂を含有しない食品であるにも関わらず、油脂の滑らかさやコク、ならびに乳化食品特有の白濁感や表面のつや感を有する乳化様食品を提供することを目的とする。
さらに本発明は、上記の加工食品組成物として、乳化食品を提供することを目的とする。具体的には、当該乳化食品として、通常の油脂量(65〜80重量%)よりも少ない油脂量(0.01〜50重量%)でマヨネーズと外観と食感が類似する乳化調味料、通常の油脂量(30〜50重量%)よりも少ない油脂量(0.01〜25重量%)で乳化型ドレッシングと外観と食感が類似する乳化調味料を提供することを目的とする。
また本発明は、上記乳化食品として、マーガリン、ファットスプレッドおよびバタークリームなどのスプレッド、特に、乳脂肪含量や油脂含量を低減した場合でも、風味に影響せず、乳脂肪や油脂特有の濃厚感やボディ感、更には滑らかな食感を有するスプレッドを提供することを目的とする。また、通常の乳脂肪含量や油脂含量でありながらも、それらの量を増加させたのと同程度の濃厚感や滑らかさを備えたスプレッドを提供することを目的とする。
また本発明は、上記乳化食品として、プリン(中性プリン;果汁含有プリン、チーズ含有プリンなどの酸性プリン)、杏仁豆腐、ババロア、フラワーペースト、カスタードクリームおよびムース等のデザート、特に、乳脂肪含量や油脂含量を低減した場合でも、風味に影響せず、乳脂肪や油脂特有の濃厚感やボディ感、更には滑らかな食感を有するデザートを提供することを目的とする。また、通常の乳脂肪含量や油脂含量でありながらも、それらの量を増加させたのと同程度の濃厚感や滑らかさを備えたデザートを提供することを目的とする。
また本発明は、上記の乳化食品としてヨーグルト、特に乳脂肪分を低減もしくは使用しない場合でも、風味に影響なく、乳脂肪特有の滑らかさや濃厚感を有するヨーグルトを提供することを目的とする。また、本発明は、乳脂肪分の低減や不使用によって生じる離水が抑制され、安定した物性を有するヨーグルトを提供することを目的とする。更に、本発明は、通常の乳脂肪含量でありながらも、生クリームや牛乳などを増量した場合と同程度の滑らかさや濃厚感を備えた高級感のあるヨーグルトを提供することを目的とする。
また本発明は、上記の乳化食品として、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、その他の氷菓などの冷菓、特に乳脂肪や乳固形分を低減させた場合でも、滑らかな組織を有し、冷菓特有の口溶けやボディ感および風味を有する冷菓を提供することを目的とする。
さらに本発明は、上記の乳化食品としてホイップクリーム、特に冷蔵保存後や凍結解凍後における離水が抑制されており、また良好な食感および保形性を有するホイップクリームを提供することを目的とする。更には、油脂含量を低減させた場合であっても、離水の顕著な発生や保形性の低下が抑制され、更には油脂特有の濃厚感を有するホイップクリームを提供することを目的とする。
さらにまた本発明は、上記の加工食品組成物として、チーズ様食品、特に、乳脂肪を低減若しくは乳脂肪を全く含有しなくても、チーズ特有のボディ感、口あたりおよび風味を有するチーズ様食品、およびチーズに代えて当該チーズ様食品を含有する加工食品を提供することを目的とする。チーズ様食品としてより好ましくは、上記するチーズ特有のボディ感、口あたりおよび風味に加えて、良好な保形性および加熱溶融性を有するものである。
本発明は、上記の加工食品組成物として、砂糖菓子を提供することを目的とする。詳細には、可溶性固形分が高い砂糖菓子においても粘度が増大して製造時の作業性が低下することなく、粘弾性や滑らかな食感を有する砂糖菓子を提供することを目的とする。
本発明は、上記の加工食品組成物として飲料を提供することを目的とする。詳細には、脂肪分を低減するかもしくは使用しない場合でも、自然な濃厚感や脂肪感があり、滑らかな口あたりを有する飲料を提供することを目的とする。また、本発明は、従来にない濃厚なピューレ様の食感が増強された果汁飲料、およびキレが良くフレーバーリリースも良好な飲料など、特徴的な食感を有する飲料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題解決を目指して鋭意研究を重ねていたところ、下記の性質(a)を有するデキストリン、好ましくは下記性質(a)、(b)および(c)を有するデキストリン、特により好ましくは下記性質(a)、(b)、(c)および(d)を有するデキストリンを用いることにより、前述する各種の目的に適った加工食品組成物が調製できることを見出した。
(a)青価が0.4〜1.2の範囲である。
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である。
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が、25℃条件下で100mPa・s以下である。
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施態様を包含する:
(I)加工食品組成物
(I-1)下記の性質(a)を有するデキストリンを含有することを特徴とする加工食品組成物;
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(a-1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(a-2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(a-3)上記調製液を遮光した状態で、25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で、反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定し、これを青価とする。
(I-2)デキストリンがさらに下記の性質(b)および(c)を有するものである、(I-1)に記載する加工食品組成物;
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が100mPa・s以下である。
(I-3)デキストリンがさらに下記の性質(d)を有するものである、(I-2)に記載する加工食品組成物;
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
以下(II)〜(XIII)において、上記性質(a)、性質(a)〜(c)、または性質(a)〜(d)を有するデキストリンを「デキストリン(I)」という。
(II)脂肪組織代替物およびその調製方法
(II-1)脂肪組織代替物である(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(II-2)上記脂肪組織代替物がデキストリン(I)を20〜40重量%の割合で含有するものである、(II-1)に記載する加工食品組成物。
(II-3)上記脂肪組織代替物がデキストリン(I)に加えてカラギナンを含有するものである、(II-1)または(II-2)に記載する加工食品組成物。
(II-4)上記カラギナンが下記の(1)〜(3)の少なくとも一つの性質を有するものである、(II-3)に記載する加工食品組成物:
(1)50℃以下の水に溶解する、
(2)その1.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない、
(3)カルシウムイオンを0より多く0.1重量%以下の割合で含有する。
(II-5)デキストリン(I)100重量部に対するカラギナンの含有割合が1〜10重量部である、(II-3)または(II-4)に記載する加工食品組成物。
(II-6)下記性質(a)を有するデキストリン(I)、下記性質(a)〜(c)を有するデキストリン(I)、または下記性質(a)〜(d)を有するデキストリン(I)のいずれかを含有する水溶液を冷却固化する工程を有する、脂肪組織代替物の調製方法:
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(a-1)80℃の蒸留水でデキストリン(I)1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(a-2)デキストリン(I)1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(a-3)上記調製液を遮光した状態で、25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で、反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定し、これを青価とする、
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が100mPa・s以下である、
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
(II-7)上記水溶液がデキストリン(I)を20〜40重量%の割合で含有する水溶液である、(II-6)に記載する脂肪組織代替物の調製方法。
(II-8)上記水溶液が、さらにカラギナンを含有する水溶液である、(II-6)または(II-7)に記載する脂肪組織代替物の調製方法。
(II-9)上記カラギナンが下記の(1)〜(3)の少なくとも一つの性質を有するものである、(II-8)に記載する脂肪組織代替物の調製方法:
(1)50℃以下の水に溶解する、
(2)その1.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない、
(3)カルシウムイオンを0より多く0.1重量%以下の割合で含有する。
(II-10)デキストリン(I)100重量部に対するカラギナンの含有割合が1〜10重量部である、(II-8)または(II-9)に記載する脂肪組織代替物の調製方法。
(III)脂肪組織代替物を含有する加工食品
(III-1)(II-1)乃至(II-5)のいずれかに記載する脂肪組織代替物を、食肉脂身の一部またはすべてに代えて含有する加工食品。
(III-2)ソーセージ、ハム、ベーコン、サラミ、ミートローフ、ハンバーグステーキ、ハンバーグパティ、ミンチカツ、コロッケ、ミートボール、つくね、ギョウザ、シュウマイおよび肉まん(包子)から選択されるいずれかの食肉加工食品である、(III-1)に記載する加工食品。
(IV)乳化様食品およびその調製方法
(IV-1)乳化様食品である(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(IV-2)上記乳化様食品が、デキストリン(I)に加えて、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類、並びに水を含有する非乳化食品である、(IV-1)に記載する加工食品組成物。
(IV-3)上記乳化様食品が、デキストリン(I)を5〜30重量%、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を総量で0.01〜0.5重量%、および水を40〜90重量%の割合で含有する非乳化食品である、(IV-2)に記載する加工食品組成物。
(IV-4)乳化様食品が、更にガティガムおよびアラビアガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を含有する非乳化食品である、(IV-1)乃至(IV-3)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(IV-5)上記乳化様食品が、ガティガムおよびアラビアガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を総量で0.05〜5重量%の割合で含有する非乳化食品である、(IV-4)に記載する加工食品組成物。
(IV-6)上記乳化様食品が、油脂を含まない非乳化食品であって、油脂を乳化させて調製されるマヨネーズ、ドレッシング、ソース、フラワーペースト、マーガリン、ファットスプレッド、バタークリームまたはチーズのいずれかに外観および食感が類似することを特徴とする、(IV-1)乃至(IV-5)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(IV-7)下記性質(a)を有するデキストリン(I)、性質(a)〜(c)を有するデキストリン(I)、または性質(a)〜(d)を有するデキストリン(I)のいずれかを含有する非乳化の水溶液を冷却する工程を有する、(IV-1)乃至(IV-5)のいずれかに記載する乳化様食品の調製方法:
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(a-1)80℃の蒸留水でデキストリン(I)1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(a-2)デキストリン(I)1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(a-3)上記調製液を遮光した状態で、25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で、反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定し、これを青価とする、
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が100mPa・s以下である、
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
(IV-8)上記水溶液が、さらにキサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を含有する水溶液である、(IV-7)に記載する調製方法。
(IV-9)上記水溶液が、デキストリン(I)を5〜30重量%、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を総量で0.01〜0.5重量%、および水を40〜90重量%の割合で含有する非乳化水溶液である、(IV-8)に記載する調製方法。
(IV-10)上記水溶液が、更にガティガムおよびアラビアガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を含有する非乳化水溶液である、(IV-7)乃至(IV-9)のいずれかに記載する調製方法。
(IV-11)上記水溶液が、ガティガムおよびアラビアガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を総量で0.05〜5重量%の割合で含有する非乳化水溶液である、(IV-10)に記載する調製方法。
(IV-12)油脂を含まない非乳化食品であって、油脂を乳化させて調製されるマヨネーズ、ドレッシング、ソース、フラワーペースト、マーガリン、ファットスプレッド、バタークリームまたはチーズのいずれかに外観および食感が類似する乳化様食品の調製方法である、(IV-7)乃至(IV-11)のいずれかに記載する調製方法。
(V)乳化食品
(V-1)乳化食品である(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(V-2)乳化食品が、乳化調味料、スプレッド、デザート、ヨーグルト、冷菓、およびホイップクリームからなる群から選択されるいずれかの乳化食品である、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-3)下記の性質(a)を有するデキストリン(I)、性質(a)〜(c)を有するデキストリン(I)、または性質(a)〜(d)を有するデキストリン(I)のいずれかを含有する水溶液を冷却固化する工程を有する、(V-1)に記載する乳化食品を調製する方法;
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(a-1)80℃の蒸留水でデキストリン(I)1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(a-2)デキストリン(I)1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(a-3)上記調製液を遮光した状態で、25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で、反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定し、これを青価とする、
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が100mPa・s以下である、
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン(I)30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
(V-a)乳化調味料
(V-a-1)乳化食品が、デキストリン(I)を0.1〜20重量%の割合で含有する乳化調味料である、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-a-2)乳化食品が、デキストリン(I)に加えて、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する乳化調味料である、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-a-2)乳化食品が、油脂を0.01〜50重量%の割合で含有する乳化調味料である、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-a-3)乳化食品が、油脂を0.01〜50重量%の割合で含有する、マヨネーズに外観および食感が類似したマヨネーズ様の乳化調味料である、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-a-4)乳化食品が、油脂を0.01〜25重量%の割合で含有するドレッシング形態の乳化調味料である、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-b)スプレッド
(V-b-1)乳化食品が、油脂または乳脂肪を総量で10〜60重量%の割合で含有するスプレッドである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-b-2)乳化食品が、デキストリン(I)を5〜30重量%の割合で含有するスプレッドである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-b-3)乳化食品が、デキストリン(I)に加えて、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロース、ガティガムおよびネイティブ型ジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を含有するスプレッドである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-b-4)乳化食品が、上記多糖類を0.01〜5重量%の割合で含有するスプレッドである、(V-b-3)に記載する加工食品組成物。
(V-c)乳原料又は植物油脂を用いて調製されるデザート
(V-c-1)乳化食品が、プリン、杏仁豆腐、ババロア、フラワーペースト、カスタードクリームおよびムースからなる群から選択されるいずれかのデザートである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-c-2)乳化食品が、デキストリン(I)を0.1〜20重量%の割合で含有するデザートである、(V-c-1)に記載する加工食品組成物。
(V-c-3)乳化食品が、デキストリン(I)に加えて、増粘多糖類、ゲル化剤および乳タンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1つを含有するデザートである、(V-c-1)に記載する加工食品組成物。
(V-d)ヨーグルト
(V-d-1)乳化食品が、ヨーグルトである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-d-2)乳化食品が、乳脂肪分が0.5重量%以上3重量%未満の低脂肪ヨーグルトか、または乳脂肪分が0.5重量%未満の無脂肪ヨーグルトである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-d-3)乳化食品が、デキストリン(I)を0.05〜10重量%の割合で含有するヨーグルトである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-d-4)乳化食品が、デキストリン(I)に加えて、ガティガム、アラビアガム、タラガム、タマリンドシードガムおよびグァーガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するヨーグルトである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-d-5)乳化食品が、デキストリン(I)に加えて、ハイメトキシルペクチンを含有するヨーグルトである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-e)冷菓
(V-e-1)乳化食品が、乳原料を用いて調製されるアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、および氷菓からなる群から選択されるいずれかの冷菓である、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-e-2)乳化食品が、デキストリン(I)を0.1〜10重量%の割合で含有する冷菓である、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-e-3)乳化食品が、デキストリン(I)に加えて、グァーガム、タラガム、タマリンドシードガム、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガムおよびネイティブ型ジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する冷菓である、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-f)ホイップクリーム
(V-f-1)乳化食品が、デキストリン(I)を0.5〜10重量%の割合で含有するホイップクリームである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(V-f-2)乳化食品が、デキストリン(I)に加えて、ヨウ素価が10〜45であるポリグリセリン脂肪酸エステル、ヨウ素価が44〜120であるモノグリセリン脂肪酸エステルおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するホイップクリームである、(V-1)に記載する加工食品組成物。
(VI)チーズ様食品およびその調製方法
(VI-1)チーズ様食品である(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(VI-2)上記チーズ様食品がデキストリン(I)を10〜50重量%の割合で含有するものである、(VI-1)に記載する加工食品組成物。
(VI-3)上記チーズ様食品が、デキストリンに加えて、乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、および脱アシル型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである、(VI-1)または(VI-2)に記載する加工食品組成物。
(VI-4)上記チーズ様食品が、乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、および脱アシル型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を、総量で0.01〜10重量%の割合で含有するものである、(VI-3)に記載する加工食品組成物。
(VI-5)上記チーズ様食品が、デキストリン(I)に加えて、さらにカラギナン、キサンタンガム、ガティガムおよびネイティブ型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の多糖類を含有する、(VI-1)〜(VI-4)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(VI-6)上記カラギナンが下記の(1)〜(3)の少なくとも一つの性質を有するものである、(VI-5)に記載する加工食品組成物:
(1)50℃以下の水に溶解する、
(2)その1.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない、
(3)カルシウムイオンを0より多く0.1重量%以下の割合で含有する。
(VI-7)カラギナン、キサンタンガム、ガティガムおよびネイティブ型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の多糖類の含有割合が0.01〜5重量%である、(VI-5)または(VI-6)に記載する加工食品組成物。
(VI-8)上記チーズ様食品が、乳脂肪を含まないかまたは乳脂肪を20重量%以下の割合で含む加工食品であって、乳脂肪を20重量%より多く含有するチーズと外観、風味および食感が類似するものである、(VI-1)乃至(VI-7)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(VI-9)下記性質(a)を有するデキストリン(I)、下記性質(a)〜(c)を有するデキストリン(I)、または性質(a)〜(d)を有するデキストリン(I)のいずれかを含有する水溶液を冷却固化する工程を有する、(VI-1)乃至(VI-8)のいずれかに記載するチーズ様食品の調製方法:
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(a-1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(a-2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(a-3)上記調製液を遮光した状態で、25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で、反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定し、これを青価とする、
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が100mPa・s以下である、
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
(VI-10)上記水溶液がデキストリン(I)を10〜50重量%の割合で含有するものである、(VI-9)に記載する調製方法。
(VI-11)上記水溶液が、デキストリン(I)に加えて、乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、および脱アシル型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである、(VI-9)または(VI-10)に記載する調製方法。
(VI-12)上記水溶液が、乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、および脱アシル型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を、総量で0.01〜10重量%の割合で含有するものである、(VI-11)に記載する調製方法。
(VI-13)上記水溶液が、デキストリンに加えて、さらにカラギナン、キサンタンガム、ガティガムおよびネイティブ型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の多糖類を含有する、(VI-9)乃至(VI-12)のいずれかに記載する調製方法。
(VI-14)上記カラギナンが下記の(1)〜(3)の少なくとも一つの性質を有するものである、(VI-13)に記載する加工食品組成物:
(1)50℃以下の水に溶解する、
(2)その1.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない、
(3)カルシウムイオンを0より多く0.1重量%以下の割合で含有する。
(VI-15)カラギナン、キサンタンガム、ガティガムおよびネイティブ型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種の多糖類の含有割合が0.01〜5重量%である、(VI-13)または(VI-14)に記載する調製方法。
(VI-16)乳脂肪を含まないかまたは乳脂肪を20重量%以下の割合で含む加工食品であって、乳脂肪を20重量%より多く含有するチーズと外観、風味および食感が類似するチーズ様食品の調製方法である、(VI-9)乃至(VI-15)のいずれかに記載する調製方法。
(VII)チーズ様食品をチーズ代替物として含有する加工食品
(VII-1)(VI-1)乃至(VI-8)のいずれかに記載するチーズ様食品を、チーズの一部またはすべてに代えて含有する加工食品。
(VII-2)パン、ケーキ、ムース、ピザ、パイ、グラタン、ラザニア、ドリア、リゾット、ソース、スープ、チーズフォンデュ、ハンバーグ、ハンバーガー、サラダ、トンカツおよびスプレッドから選択されるいずれかである、(VII-1)に記載する加工食品。
(VIII)砂糖菓子
(VIII-1)砂糖菓子である(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(VIII-2)上記砂糖菓子が、下記(1)および(2)のいずれか少なくとも一方の性質を有する砂糖菓子である(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する加工食品組成物:
(1)水分含量が15〜30%である、
(2)可溶性固形分が70〜85%、より好ましくは75〜85%である。
(VIII-3)上記砂糖菓子が、ソフトキャンディ、キャラメル、ヌガーまたはグミキャンディである(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(VIII-4)上記砂糖菓子が、デキストリン(I)を4〜40重量%の割合で含有するものである、(VIII-1)に記載する加工食品組成物。
(VIII-5)上記砂糖菓子が、デキストリン(I)に加えて、サイリウムシードガム、カラギナン、ガティガム、およびタマリンドシードガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものである、(VIII-1)に記載する加工食品組成物。
(IX)飲料
(IX-1)飲料である(I-1)乃至(I-3)のいずれかに記載する加工食品組成物。
(IX-2)上記飲料が、牛乳、乳固形分(無脂乳固形分と乳脂肪分の合計)が3%以上の乳飲料、乳酸菌飲料、ミルクコーヒー、およびココアから選択される乳含有飲料、果汁含有飲料、野菜汁含有飲料、または清涼飲料水である、(IX-1)に記載する加工食品組成物。
(IX-3)上記飲料が、脂肪分が1.5重量%以下の乳含有飲料である、(IX-1)に記載する加工食品組成物。
(IX-4)上記飲料が、デキストリン(I)を0.2〜10重量%の割合で含有するものである、(IX-1)に記載する加工食品組成物。
(IX-5)上記飲料が、デキストリン(I)を0.2〜2重量%の割合で含有する乳含有飲料である、(IX-1)に記載する加工食品組成物。
(IX-6)上記飲料が、デキストリン(I)に加えて、発酵セルロースを含有する、(IX-1)に記載する加工食品組成物。
(X)乳化食品の濃厚感を増強する方法
(X-1)下記の性質(a)を有するデキストリン、性質(a)〜(c)を有するデキストリン、または性質(a)〜(d)を有するデキストリンを乳化食品に配合することを特徴とする、乳化食品の濃厚感を増強する方法:
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(a-1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(a-2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(a-3)上記調製液を遮光した状態で、25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で、反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定し、これを青価とする、
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が100mPa・s以下である、
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
(X-2)乳化食品が、乳化調味料、スプレッド、デザート、ヨーグルト、冷菓、およびホイップクリームからなる群から選択されるいずれかの乳化食品である、(X-1)に記載する方法。
(X-3)乳化食品が、油脂を0.01〜50重量%の割合で含有する、マヨネーズに外観および食感が類似したマヨネーズ様の乳化調味料である、(X-1)に記載する方法。
(X-4)乳化食品が、油脂を0.01〜25重量%の割合で含有するドレッシング形態の乳化調味料である(X-1)に記載する方法。
(X-5)乳化食品が、油脂または乳脂肪を総量で10〜60重量%の割合で含有するスプレッドである、(X-1)に記載する方法。
(X-6)乳化食品が、プリン、杏仁豆腐、ババロア、フラワーペースト、カスタードクリームおよびムースからなる群から選択されるいずれかのデザートである、(X-1)に記載する方法。
(X-7)乳化食品が、乳脂肪分が0.5重量%以上3重量%未満の低脂肪ヨーグルトか、または乳脂肪分が0.5重量%未満の無脂肪ヨーグルトである、(X-1)に記載する方法。
(X-8)乳化食品が、乳原料を用いて調製されるアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスおよび氷菓からなる群から選択されるいずれかの冷菓である、(X-1)に記載する方法。
(XI)乳化食品の離水防止方法
(XI-1)下記の性質(a)を有するデキストリン、性質(a)〜(c)を有するデキストリン、または性質(a)〜(d)を有するデキストリンを、ホイップクリーム、ヨーグルトおよびデザートからなる群から選択される乳化食品に配合することを特徴とする、当該乳化食品の離水防止方法:
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(a-1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(a-2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(a-3)上記調製液を遮光した状態で、25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で、反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定し、これを青価とする、
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が100mPa・s以下である、
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
(XI-2)乳化食品が、プリン、杏仁豆腐、ババロア、フラワーペースト、カスタードクリームおよびムースからなる群から選択されるいずれかのデザートである、(XI-1)に記載する方法。
(XII)飲料の果汁又は野菜汁のコク増強方法
(XII-1)下記の性質(a)を有するデキストリン、性質(a)〜(c)を有するデキストリン、または性質(a)〜(d)を有するデキストリンを、果汁又は野菜汁を含有する飲料に配合することを特徴とする、当該飲料の果汁又は野菜汁のコクを増強する方法:
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(a-1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(a-2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(a-3)上記調製液を遮光した状態で、25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で、反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定し、これを青価とする、
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が100mPa・s以下である、
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
(XIII)砂糖菓子の保形性を向上する方法
(XIII-1)下記の性質(a)を有するデキストリン、性質(a)〜(c)を有するデキストリン、または性質(a)〜(d)を有するデキストリンを、砂糖菓子に配合することを特徴とする、当該砂糖菓子の保形性を向上する方法:
(a)下記条件で測定された青価が0.4〜1.2の範囲である:
(a-1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する、
(a-2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する、
(a-3)上記調製液を遮光した状態で、25℃で30分間振盪した後、25℃条件下で、反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定し、これを青価とする、
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が100mPa・s以下である、
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
(XIII-2)上記砂糖菓子が、下記(1)および(2)のいずれか少なくとも一方の性質を有する砂糖菓子である、(XIII-1)に記載する方法:
(1)水分含量が15〜30%である、
(2)可溶性固形分が70〜85%、より好ましくは75〜85%である。
(XIII-3)上記砂糖菓子が、ソフトキャンディ、キャラメル、ヌガーまたはグミキャンディである、(XIII-1)に記載する方法。
本発明によれば、脂肪の存在感が重視される加工食品、特に食肉加工食品を調製するのに有用な脂肪組織代替物を提供することができる。本発明の脂肪組織代替物によれば、食肉加工食品に、低カロリーで低脂肪でありながらも、脂身特有の食感やジューシー感を十分に付与することができる。すなわち、本発明の脂肪組織代替物を食肉脂身の一部またはすべてに代えて含有する食肉加工食品は、低カロリーで低脂肪でありながらも、脂身特有の食感やジューシー感を備えることができる。
本発明によれば、油脂を含有せずとも、またホモジナイズなどの均質化処理をせずとも、油脂を乳化して調製される乳化食品に類似した外観(乳化物特有の白濁感や表面のつや感)、食感(滑らかさやコク)、および使用感を有する、乳化様食品を提供することができる。当該本発明の乳化様食品は、油脂を含有しないため、低カロリーであることを特徴とする。
本発明によれば、50重量%以下に油脂含量を低減した場合でも、油脂を65〜80重量%の割合で含有する通常のマヨネーズと同様の粘度や脂肪感、滑らかさを有する乳化調味料(乳化食品)を提供することができる。当該本発明の乳化調味料は、油脂含量が少ないにも関わらず、マヨネーズに類似した外観(マヨネーズ特有の白濁感や表面のつや感)、および食感(滑らかさやコク)を有すること、および油脂含量が低いためマヨネーズに比して低カロリーであることを特徴とする。同様にして、本発明によれば25重量%以下に油脂含量を低減した場合でも、油脂を30〜50重量%の割合で含有する通常の乳化型ドレッシングと同様の脂肪感、滑らかさを有する乳化調味料(乳化食品)を提供することができる。当該本発明の乳化調味料は、油脂含量が少ないにも関わらず、乳化型ドレッシングに類似した外観(乳化型ドレッシング特有の白濁感や表面のつや感)、および食感(滑らかさやコク)を有すること、および油脂含量が低いため乳化型ドレッシングに比して低カロリーであることを特徴とする。
本発明によれば、プリン(中性プリン;果汁含有プリン、チーズ含有プリンなどの酸性プリン)、杏仁豆腐、ババロア、フラワーペースト、カスタードクリームおよびムース等のデザートについて、乳脂肪含量や油脂含量を低減した場合でも、風味に影響を与えることなく、乳脂肪や油脂特有の濃厚感やボディ感、更には滑らかな食感を付与することが可能である。また、乳脂肪含量や油脂含量を低減しない場合は、牛乳や生クリーム等の乳脂肪分や精製ヤシ油などの油脂分を増加させることなく、乳脂肪分や油脂分を増加させた場合と同様に十分な濃厚感や滑らかな食感を付与することができ、ミルクリッチな食感および風味を有するデザート(乳化食品)を提供することができる。
本発明によれば、乳化食品の一種であるヨーグルトについて、乳脂肪含量を低減するか、または乳脂肪を使用しない場合でも、風味に影響を与えることなく、乳脂肪特有の滑らかな食感や濃厚感を付与することができる。また、乳脂肪含量を低減しない場合は、生クリームや牛乳等の乳脂肪分を増加させなくても、増加させた場合と同程度の滑らかさや濃厚感を付与することができ、ミルクリッチな食感や風味を有するヨーグルトを提供することができる。更には、乳脂肪分を低減した場合に顕著に発生する離水や保形性の低下を抑制することができる。
本発明によれば、乳を原料とするアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、および氷菓等の冷菓(乳化食品)について、乳脂肪含量や油脂含量を低減するか、または乳脂肪や油脂を使用しない場合でも、風味に影響を与えることなく、乳脂肪や油脂特有の滑らかな食感(口溶け感)や濃厚感を付与することができる。また、乳脂肪含量を低減しない場合は、生クリームや牛乳等の乳脂肪分を増加させなくても、増加させた場合と同程度の滑らかさや濃厚感を付与することができ、ミルクリッチな食感や風味を有する冷菓を提供することができる。
本発明によれば、従来は防止することが困難であったホイップクリームの離水、特に冷蔵保存時や凍結解凍後の離水が顕著に抑制されたホイップクリームを提供することができる。当該ホイップクリームは、離水防止効果と同時に、高い濃厚感と滑らかな食感を有し、保形性に優れている。また本発明によれば、油脂含量を低減させた場合でも、離水が抑制され、しかも保形性を有するなど安定した物性を保ち、また濃厚感や油脂感を有する高級感のあるホイップクリームを提供することができる。
本発明によれば、乳脂肪含量を低減した場合でも、通常のチーズと同様の食感や風味を有するチーズ様食品を提供することができる。当該本発明のチーズ様食品は、乳脂肪含量が少ないにも関わらず、チーズ特有の風味や食感を有する一方で、乳脂肪分が少ないため通常のチーズに比して低カロリーである。
本発明によれば、ソフトキャンディ、キャラメル、ヌガー、グミキャンディなどの可溶性固形分が高い砂糖菓子について、製造時に粘度が増大して作業性が低下するという問題が解消され、また適度な粘弾性、および独特の脂肪様の滑らかな食感を有する砂糖菓子を提供することができる。
また本発明によれば、ぬめりや糊っぽさがなく、自然な濃厚感や脂肪感があり、滑らかな口あたりを有する飲料を提供することができる。また本発明によれば、従来にはない濃厚なピューレ感が増強されつつも、ぬめりや糊っぽさがなくキレの良い食感を有する飲料、また良好なフレーバーリリースを有する飲料を提供することができる。
I.デキストリン
本発明で用いるデキストリンは、下記の性質(a)を有することを特徴とする:
(a)青価(Blue Value)(680nmの吸光度)が0.4〜1.2の範囲である。
青価は、一般に、澱粉のヨウ素反応、具体的には澱粉に含まれるアミロースとヨウ素とが反応して青色を呈することを利用して、澱粉ヨウ素反応液の680nmにおける吸光度として求められる値である。通常、青価は澱粉中のアミロース含量を評価するために用いられるが、本発明では、デキストリン中のアミロース含量を示す指標として用いられる。
本発明においてデキストリンの青価は次の方法に従って算出することができる。以下、本明細書で「青価」とはかかる方法で算出される値をいう。
(1)80℃の蒸留水でデキストリン1w/v%水溶液を調製して、これを25℃に冷却する。
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する。
(3)上記調製液を遮光した状態で、25℃において30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定する。
本発明で使用するデキストリンは、前述するように、青価が0.4〜1.2の範囲であることを特徴とする。好ましくは0.5〜0.9の範囲、より好ましくは0.6〜0.8の範囲である。
従来公知のデキストリンの青価は、0.4未満〔例えば、「パインデックス#100」(松谷化学工業(株)製)(実験例1「既存品3」):0.32、「デキストリンNSD-C」((株)ニッシ製)(実験例1「既存品5」):0.11、「パインデックス#3」(松谷化学工業(株)製)(実験例1「既存品6」):0.04〕、または1.2より大きく〔例えば、「PASELLI SA2」(AVEBE製)(実験例1「既存品1」):1.42、「インスタント エヌオイルII」(日本エヌエスシー(株)製)(実験例1「既存品2」):1.74、「C☆DELIGHT MD01970」((株)カーギルジャパン製)(実験例1「既存品4」:1.54〕、この点において本発明で用いるデキストリンと相違する。
本発明で用いるデキストリンは、さらに下記の性質(b)および(c)を有することが好ましい:
(b)80℃の蒸留水で調製したデキストリンの30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度が4N/cm2以上である、
(c)25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、25℃で5分間静置した時の粘度が100mPa・s以下である。
ゼリー強度(b)は、80℃の蒸留水で調製したデキストリンの30重量%水溶液を5℃で24時間静置して得られたゼリー状物(測定対象物)を、5℃条件下で、直径3mmのプランジャーを用いて、プランジャー速度60mm/minで荷重をかけ、ゼリー状物がプランジャーの力で破断した時の荷重(N/cm2)を測定することによって求めることができる。当該ゼリー強度の測定は、通常レオメーターを用いて行なわれる。以下、本明細書で「ゼリー強度」とはかかる方法で算出される値をいう。なお、測定対象物であるゼリー状物の厚みは、得られるゼリー強度に影響しないため、特に制限されない。
当該ゼリー強度の上限は、制限されないが、通常20N/cm2を挙げることができる。ゼリー強度(b)として、好ましくは5〜20N/cm2、より好ましくは6〜10N/cm2である。
粘度(c)は、25℃の蒸留水で調製したデキストリンの30重量%水溶液を25℃で5分間静置した後、25℃条件下で、BL型回転粘度計(ローターNo.2)を用いて回転数12rpmで1分間測定することによって求めることができる。以下、本明細書で「粘度」とはかかる方法で算出される値をいう。
当該粘度の下限は、制限されないが、通常20mPa・sを挙げることができる。粘度(c)として、好ましくは20〜70mPa・s、より好ましくは30〜65mPa・sである。
本発明で使用するデキストリンは、前述するように、ゼリー強度(b)が4N/cm2以上で、粘度(c)が100mPa・s以下であることが好ましい。従来公知のデキストリンは、ゼリー強度(b)が4N/cm2以上であっても、粘度(c)が100mPa・sより大きいか〔例えば、「PASELLI SA2」(AVEBE製)(実験例1「既存品1」:(b)4.8、(c)235、「インスタント エヌオイルII」(日本エヌエスシー(株)製)(実験例1「既存品2」:(b)4.8、(c)48000、「C☆DELIGHT MD01970」((株)カーギルジャパン製)(実験例1「既存品4」:(b)6.9、(c)220〕、または上記(b)の条件で調製しても液状を呈してゼリー状とならないもの〔例えば、「パインデックス#100」(松谷化学工業(株)製)(実験例1「既存品3」、「デキストリンNSD-C」((株)ニッシ製)(実験例1「既存品5」、および「パインデックス#3」(松谷化学工業(株)製)(実験例1「既存品6」〕である点で、本発明で用いるデキストリンと相違する。
さらに本発明で用いるデキストリンは、上記の性質(a)、(b)および(c)に加えて、下記の性質(d)を有するものであることが好ましい;
(d)下記に示すゼリー強度AとBの比(A/B)が2以下である:
A:80℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)、
B:25℃の蒸留水で調製したデキストリン30重量%水溶液を、5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)。
ゼリー強度AおよびBは、それぞれ80℃および25℃の蒸留水で調製したデキストリンの30重量%水溶液を5℃で24時間静置し、次いで得られたゼリー状物(測定対象物)を5℃条件下で、直径3mmのプランジャーを用いて、プランジャー速度60mm/minで荷重をかけ、ゼリー状物がプランジャーの力で破断した時の荷重(N/cm2)を測定することによって求めることができる。
斯くして得られるゼリー強度の比(A/B)の下限は、制限されないが、通常1を挙げることができる。ゼリー強度の比(A/B)として好ましくは1〜2、より好ましくは1〜1.6、更に好ましくは1.3〜1.6である。
本発明で用いられるデキストリンは、上記性質を有するものであれば、由来する澱粉の種類、DE値(dextrose equivalent:デキストロース当量)、および分子量などは特に限定されない。
例えば、デキストリンの原料となる澱粉としては、馬鈴薯、とうもろこし、甘藷、小麦、米、サゴ、およびタピオカなどの各種澱粉を挙げることができる。好ましくは馬鈴薯澱粉である。
DE値とは、一般には澱粉の分解程度を示す指標であり、澱粉を加水分解したときに生成するデキストリンおよびぶどう糖や麦芽糖等の還元糖の割合を示すものである。全ての還元糖をぶどう糖(dextrose)の量に換算し、その割合を全体の乾燥固形分に対する重量%で表わしたものである。このDE値が大きい程、還元糖の含有量が多くデキストリンが少なく、逆にDE値が小さい程、還元糖の含有量が少なくデキストリンが多いことを意味する。制限はないが、本発明ではDE値が通常2〜5、好ましくは3〜5、より好ましくは3.5〜4.5のデキストリンが使用される。
このような性質を備えるデキストリンは、原料となる澱粉を加水分解することによって調製することができる。澱粉の分解方法は、特に制限なく、例えば酵素処理による分解、および酸処理による分解などを挙げることができるが、好ましくは酵素処理による分解(酵素分解)である。
デキストリンの調製方法として、具体的には、耐熱性α―アミラーゼを含有させた澱粉、好ましくは馬鈴薯澱粉乳液を、70〜100℃、好ましくは90〜100℃の範囲で加熱したあとその酵素分解の進行度を、前述する青価(680nmの吸光度)を指標として追跡し、青価が所望の0.4〜1.2の範囲、好ましくは0.5〜0.9の範囲になったときに塩酸の添加によって酵素処理を終了する方法を挙げることができる。また、かかる範囲の青価を有するデキストリンについて、ゼリー強度(b)が4N/cm2以上、粘度(c)が100mPa・s以下であるかどうか、またゼリー強度の比(A/B)が2以下であるかどうかは、いずれも前述する方法に従って30重量%水溶液を調製して、測定することができる。
II.加工食品組成物
本発明が対象とする加工食品組成物は、前述(I)する特定の性質を備えたデキストリンを用いて調製される食品である。かかる加工食品には、後述する、脂肪組織代替物および当該脂肪組織代替物を用いて調製される食肉加工食品;油脂を含まない食品でありながらも油脂を含む乳化食品と同様の外観、食感および使用感を有する乳化様食品;乳化食品;乳脂肪を含まないか、または乳脂肪量が少ないにも拘わらず、チーズと同様の外観、食感および使用感を有するチーズ様食品および当該チーズ様食品を用いて調製される加工食品が含まれる。上記乳化食品には、マヨネーズに類似した乳化調味料、通常の乳化型ドレッシングに類似した乳化調味料;スプレッド;乳原料を用いて調製される乳化食品、例えばプリン(中性プリン;果汁含有プリン、チーズ含有プリンなどの酸性プリンを含む)、チーズを含有したチーズデザート、杏仁豆腐、ババロア、フラワーペースト、カスタードクリームまたはムースなどの乳原料または植物油脂を用いたデザート;ヨーグルト;アイスクリーム,アイスミルク,ラクトアイス、および氷菓(乳もしくは油脂を含有する氷菓)などの冷菓;ホイップクリームが含まれる。
また上記加工食品には、氷菓(乳および油脂を含有しない氷菓);ソフトキャンディ、キャラメル、ヌガーまたはヌガーなどの砂糖菓子:飲料;その他生チョコレート様食品、フォアグラ様食品、チルド輸送時にゲル状で、喫食時に加熱することにより液状となるつゆ、スープ、味噌汁等が含まれる。
以下、これらの加工食品について詳細に説明するが、ここでいうデキストリンは、特に言及しないかぎり、いずれも前述(I)する特定の性質を有するデキストリン(かかるデキストリンを単に「デキストリン(I)」ともいう場合がある。)を意味する。
(II-1)脂肪組織代替物
本発明でいう脂肪組織とは、豚肉、牛肉、鶏肉、馬肉、羊肉および鯨肉などの食肉の脂身(豚脂、牛脂、鶏脂、馬脂、羊脂、鯨脂)である。かかる脂身は、通常、常温(25℃)でも、その塊状が溶解せずに保形性を備えている点で、当該温度で液状(流動状)または半流動状を呈する油脂とは相違する。この意味で油脂は、本発明でいう脂肪組織には含まれない。
本発明の脂肪組織代替物は、前述(I)するデキストリンを用いて調製されるものであって、上記食肉の脂身と同様に、常温(25℃)で固形状態である(すなわち、塊が溶解せずに保形性を備えている)ものの、加熱、特に50℃以上で加熱すると半流動状または液状(流動状)になる特徴を備えている。
これに対して、デキストリン(I)に代えて、0.4未満の青価を有するデキストリンを用いた場合、脂身に類似した弾力のある食感を得ることができない、脂身特有のコクのある風味を得ることができないという不具合が生じる。また、デキストリン(I)に代えて1.2よりも大きい青価を有するデキストリンを用いた場合、ざらつき、澱粉由来の臭いによる風味の劣化、ぼろぼろと崩れて、脂身に類似した弾力のある食感を得ることができないという不具合が生じる。
また、デキストリン(I)に代えて4N/cm2未満のゼリー強度を有するデキストリンを用いた場合は、脂身に類似した弾力のある食感が得られ難い場合があり、またミンチにするために脂肪組織代替物をミキサーにかけると微細化してペースト状となり、結果として前述するような脂身に類似した弾力のある食感が得られ難い場合がある。また粘度が100mPa・sを超えるデキストリンを用いる場合は、不快な糊感を呈して脂身に類似した食感が得られ難い場合がある。さらに粘度が20mPa・s未満のデキストリンを用いる場合は、脂身特有のコクのある風味が得られ難い場合がある。
本発明の脂肪組織代替物は、デキストリン(I)を含有する水溶液を調製し、次いでこれを冷却固化することによって調製することができる。当該デキストリン(I)は少なくとも1〜100℃の水中で、好ましくは攪拌することによって溶解するため、上記水溶液はかかる温度で調製することができる。また当該水溶液は、約40℃以下、好ましくは25℃以下、さらに好ましくは10℃以下の条件で静置しておくと固化する性質を有している。溶液が凍結しない範囲内で温度が低いほど固化する際の速度が速くなる。
この場合に使用するデキストリン(I)の量としては、最終脂肪組織代替物100重量%あたり、20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%を挙げることができる。
なお、本発明の脂肪組織代替物は、上記デキストリン(I)に加えて、カラギナン、グァーガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、キサンタンガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガムおよびマンナンから選ばれる1種以上を用いることによっても調製することができる。好ましくは、カラギナンである。
カラギナンとしては、カッパタイプ、ラムダタイプ、およびイオタタイプのカラギナンが知られている。本発明では、これらのいずれのカラギナンを使用してもよいが、中でもイオタタイプのカラギナンを使用することが好ましい。また本発明で使用するカラギナンは、水と混合し、必要により攪拌することにより、水に完全に溶解する性質を有する水溶性のものが好ましい。
水溶性のカラギナンとしては、好適には下記(1)〜(3)の少なくとも一つの性質を有するものを挙げることができる。より好ましくは下記(1)〜(3)の少なくとも二つの性質を有するもの、特に好ましくは(1)〜(3)の全ての性質を有する水溶性のカラギナンである。
(1)50℃以下の水に溶解する。
本発明で使用する好適なカラギナンは、50℃以下の水に完全に溶解する水溶性のカラギナンである。より好ましくは5〜40℃、さらに好ましくは5〜30℃の水に溶解するカラギナンである。従来公知の汎用カラギナンは、通常60℃以上に加温しなければ水に溶解しないものである点で、上記のカラギナンと相違する。水への溶解方法は特に制限されないが、必要により泡立て器などの任意の攪拌手段を用いて攪拌することによって、水に溶解させてもよい。
(2)その1.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない。
本発明で使用する好適なカラギナンは、その1.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない水溶性のカラギナンである。より好ましくは、その1.8重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない水溶性カラギナンであり、さらに好ましくはその2.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない水溶性カラギナンである。従来公知の汎用カラギナンは、その1.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化する特性を有している点で、上記のカラギナンと相違する。
ここでゲル化の有無は、25℃における粘度を測定することによって評価することができる。具体的には、測定対象物(カラギナンの1.5〜2.5重量%水溶液)の粘度を、25℃条件下でBL型回転粘度計(ローターNo.2)((株)トキメック製)を用いて回転数12rpmで1分間測定した場合、粘度が4000mPa・s以下であるか否かで判断することができる。この場合、粘度が4000mPa・s以下である場合はゲル化していないと判断することができ、粘度がこれより大きい場合にはゲル化していると判断される。好ましい水溶性カラギナンは、上記条件で測定したときの粘度が1500mPa・s以下のものである。
(3)カルシウムイオンを含み、その割合が0より多く0.1重量%以下である。
本発明で使用する好適なカラギナンは、カルシウムイオンを含んでおり、その割合が0より多く0.1重量%以下の水溶性カラギナンである。より好ましくは0より多く0.05重量%以下の割合でカルシウムイオンを含む水溶性カラギナンである。
なお、上記(1)〜(3)の性質を有する水溶性のイオタカラギナンは、商業的に入手できるものであり、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ゲルリッチ[商標]No.3」を挙げることができる。
カラギナンは、デキストリン(I)100重量部に対して1〜10重量部、より好ましくは3〜6重量部の割合で用いることが好ましい。ここで、カラギナンがデキストリン(I)100重量部に対して10重量部より極端に多くなると、脂肪組織代替物を調製する際の水溶液の粘度が高くなりすぎ、泡を多く含んでしまうなど、脂肪組織代替物を調製する際の作業性が悪くなる場合がある。
脂肪組織代替物中の、デキストリン(I)およびカラギナンの配合量としては、脂肪組織代替物100重量%あたり、デキストリン(I)20〜40重量%、好ましくは25〜35重量%;カラギナン0.1〜4重量%、好ましくは0.5〜2重量%を例示することができる。
グァーガムは、β−1,4−D−マンナンの主鎖骨格に側鎖としてα−D−ガラクトースが1,6結合した、マメ科植物由来の中性多糖類であり、食品産業界では増粘剤として、ソース類、麺類、アイスクリーム類等に使用されている。グァーガム中のマンノースとガラクトースの比率は約2:1で、工業的に生産されている他のガラクトマンナン類(タラガム、ローカストビーンガム)に比べて側鎖基含量が高く、水への溶解性も高い。なお、グァーガムは精製タイプ、未精製タイプのいずれも使用することができる。商業的に入手可能なグァーガム製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ビストップ[商標]D−20」、「ビストップ[商標]D−2029」などを挙げることができる。
脱アシル型ジェランガムは、Sphingomonas elodeaが産出する発酵多糖類を脱アセチル化したものである。この多糖類は、D−グルコース、D−グルクロン酸、D−グルコースとL−ラムノースの4つの糖の反復ユニットが直鎖状に結合したものである。なお、脱アシル型ジェランガムの商業的に入手可能な製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ゲルアップ[商標]K−S」、ケルコ社製の「ケルコゲル」などを挙げることができる。
ネイティブ型ジェランガムは、D−グルコース2分子、D−グルコン酸1分子およびL−ラムノース1分子を構成単位とする多糖類(分子量約60〜70万)であるジェランガム(特開昭55−79397号)の脱アシル処理前の前駆体として得られる微生物起源の高分子多糖類(融点および固化点:65〜70℃)である。(1→3)結合したD−グルコースのC2位にグリセリル基が、C6位にアセチル基(置換度約50%)がエステル結合している。当該ネイティブ型ジェランガムは、一般に微生物の培養によって生産される。具体的には、Sphingomonas elodea(旧名Pseudomonus elodea:ATCC31461)又はその同等の菌株を、例えばグルコース3%、KH4NO3 0.05%、MgSO4・7H2O 0.01%、NH4NO3 0.09%および窒素源として有機成分を少量含む液体培地に接種し、これを好気的条件下で約30℃、約50時間培養して得られる培養物から菌体表面に生産された粘質物を、脱アシル処理することなくそのまま単離・回収することによって製造する方法が例示される。
ネイティブ型ジェランガムは天然に起源を有するものであるため、用いる産生微生物や精製条件によっては、その構造も変わりうる。従って、本発明で用いられるネイティブ型ジェランガムは、特定の構造式(Sanderson,G.R.,FOODGELS,ed.PeterHarris,ElsevierSciencePublishiersLTD.,England,1990,p.204)に基づいて一義的に限定されることなく、上記方法に従って微生物(ATCC31461)により産生されるネイティブ型ジェランガム相応の性質を有するものであればよい。商業的に入手可能なネイティブ型ジェランガム製品として、ケルコ社製の「ケルコゲルLT 100」、「ケルコゲルHT」、「ケルコゲルHM」などを挙げることができる。
キサンタンガムは、微生物Xanthomonasu campestrisが産生する発酵多糖類であり、β−1,4−D−グルカンの主鎖骨格に、D−マンノース、D−グルクロン酸、D−マンノースからなる側鎖が結合したアニオン性の多糖類である。主鎖に結合したD−マンノースのC6位はアセチル化され、末端のD−マンノースはピルビン酸とアセタールで結合している。かかるキサンタンガムは、商業的に入手可能であり、具体的には三栄源エフ・エフ・アイ(株)製の「サンエース[商標]」、「サンエース[商標]S」、「サンエース[商標]E−S」、「サンエース[商標]C」などを挙げることができる。
タラガムは、Coulterae属のマメ科植物に由来する平均分子量が20〜30万程度の多糖類であり、β−D−マンノースの主鎖がβ−1,4結合、α−D−ガラクトースの側鎖がα−1,6結合した多糖類である。そのマンノースとガラクトースの比率は約3:1である。商業的に入手可能なタラガム製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ビストップ[商標]D−2101」を挙げることができる。
ローカストビーンガムは、β−1,4−D−マンナンの主鎖骨格に側鎖としてD−ガラクトースがα−1,6結合した、マメ科植物由来の中性多糖類である。ローカストビーンガム中のマンノースとガラクトースの比率は約4:1であり、精製タイプ、未精製タイプのいずれもが適応可能である。商業的に入手可能なローカストビーンガム製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ビストップ[商標]D−171」、「ビストップ[商標]D−2050」などを挙げることができる。
タマリンドシードガムは、タマリンドの種子から得られた多糖類を主成分とするものである。商業的に入手可能なタマリンドシードガム製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ビストップ[商標]D−2032」、「ビストップ[商標]D−2033」を挙げることができる。
マンナンは、サトイモ科に属するAmorphophallus konjac K.Kochの塊茎(イモ)に含まれる貯蔵性多糖類であり、D−グルコースとD−マンノースがほぼ2:3の割合でβ−1,4結合している。商業的に入手可能なマンナン製品としては、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ビストップ[商標]D−2131(D)」を例示することができる。
これらグァーガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、キサンタンガム、タラガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガムおよびマンナンからなる群から選ばれる1種以上の、脂肪組織代替物への添加量としては、0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜2重量%を例示することができる。
デキストリン(I)を、カラギナンを始めとする上記多糖類を組み合わせて用いる場合、本発明における脂肪組織代替物は、デキストリン(I)と多糖類を上記の割合で含有する水溶液を調製し、次いでこれを冷却固化することにより調製することができる。水溶液は、特に制限されないが、例えばカラギナンを用いる場合、通常5〜100℃の水中で、好ましくは攪拌することによって溶解するため、かかる温度で調製することができる。また当該水溶液は40℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは10℃以下の温度条件で静置することによって固化する性質を有している。
デキストリン(I)と多糖類を含有する水溶液は、特に制限されないが、例えば下記の方法によって調製することができる:
(1)あらかじめ多糖類とデキストリン(I)を粉末混合したものを水に溶解する方法、
(2)デキストリン(I)を溶解した水溶液に、多糖類を加えて攪拌および混合して溶解する方法、
(3)多糖類を溶解した水溶液に、デキストリン(I)を加えて攪拌および混合して溶解する方法、および
(4)デキストリン(I)および多糖類のそれぞれの水溶液を別途調製した後に、各水溶液を混合する方法。
なかでも好適な方法は(1)の方法であり、かかる方法を用いることにより、作業性よく、しかもより滑らかな脂肪組織代替物を調製することができる。
本発明の脂肪組織代替物には、本発明の効果を妨げない範囲で各種増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、香料、甘味料、色素等を適宜添加することができる。
本発明の脂肪組織代替物は、使用に際して各種任意の形状に加工することができる。具体的には、手動または機械(例えば、フードカッター、サイレントカッターおよびミンサーなど)を用いて脂肪組織代替物を任意の形状にカット、せん断、ミンチまたはらい潰(すり潰し)してもよい。特に制限されないが、脂肪組織代替物をミンチにする場合は、直径が0.5〜10mm、より好ましくは、3〜5mm程度の大きさに調製することが好ましい。かかる大きさにミンチした脂肪組織代替物を、特に粗挽きソーセージやハンバーグなどの食肉加工食品の調製に用いることによって、脂身特有の食感、ジューシー感、および油脂感を付与することができる。
機械を用いてせん断またはミンチ状に加工する場合は、脂肪組織代替物の調製にデキストリン(I)とカラギナンを用いることが好ましい。この場合、処理物が完全にペースト状にならず、裁断された固形状の脂肪組織代替物が混在した状態で得られるため、粗挽きソーセージやハンバーグなどの食肉加工食品に豚脂や牛脂などの脂肪組織(脂身)特有の食感を付与することができる。
斯くして調製される脂肪組織代替物は、前述するように、食肉の脂身と同様に、常温(25℃)で固形状態であるものの、加熱、特に50℃以上で加熱すると半流動状または液状(流動状)になる性質を有する。しかも、これを再び常温(25℃)程度まで冷却すると固化して固形状態に戻る。このため、本発明の脂肪組織代替物は、食肉加工食品に豚脂や牛脂などの脂身の代替物として配合した場合、脂身と同様のジューシー感(肉汁感)や脂身特有の濃厚感や歯触り(食感)を付与することができる。
また、本発明の脂肪組織代替物は、室温以下の温度で調製でき、当該温度で容易に取り扱うことができる。これは、低温で製造され低温で管理される食肉加工食品の原料として使用するうえで大きな利点となる。すなわち、ハムやソーセージなどといった、加熱調理前は、品温が10℃以下の低温で製造され管理される食肉加工品の加工現場には加熱装置がない場合が少なくないが、本発明の脂肪組織代替物は、当該加工現場に加熱装置を新たに設けることなく、従前の設備を用いて製造することができ、そのまま食肉加工食品の製造原料として使用することができる。
(II-2)脂肪組織代替物を用いて調製される加工食品
本発明が対象とする加工食品は、本来配合される食肉の脂身の一部または全部が、前記脂肪組織代替物に代替された加工食品である。
具体的には、ソーセージ、ハム、ベーコン、サラミ、ミートローフ、ハンバーグステーキ、ハンバーグパティ、ミンチカツ、コロッケ、ミートボール、つくね、ギョウザ、シュウマイおよび肉まん(包子)といった食肉加工食品を挙げることができる。なかでも好適な食肉加工食品としては、脂身の存在感(食感)やジューシー感が特に重視されるソーセージ、特に粗挽きソーセージを挙げることができる。ここで、本発明が意図する粗挽きソーセージは、食肉の脂身が固まりとなってソーセージ中に存在するソーセージ一般を指し、使用畜肉の種類やその製法に特に限定はない。
本発明の加工食品は、脂身の代わりに前述する脂肪組織代替物を用いる以外は、通常の材料と通常の手法を用いて調製することができる。例えば、ハンバーグやミートボールなどは、挽肉と各種材料を混合する際に予め調製しておいた本発明の脂肪組織代替物を挽肉と同様にミンチ状にして添加する方法によって調製することができる。またソーセージは、豚脂などの脂身を入れる段階で、当該脂身の一部またはすべてに代えて本発明の脂肪組織代替物を添加する方法によって調製することができる。さらにハムは、ピックル液の中に本発明の脂肪組織代替物を溶解し、これを原料肉に注入するなどといった方法によって調製することができる。
さらにまた粗挽きソーセージも、脂身の代わりに前述する脂肪組織代替物を用いる以外は、通常の材料と通常の手法を用いて調製することができる。調製方法は特に制限されないが、例えば、下記の方法によって調製することができる:
(1)まず、畜肉と本発明の脂肪組織代替物に、食塩、亜硝酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、重合リン酸塩などの塩漬剤を添加混合し、一晩冷蔵庫で静置させる。
(2)その後、当該混合物に氷水、カゼインナトリウム、砂糖、ソルビン酸カリウム、香味料といった各調味料を添加し、ミキシングし、ソーセージ用のケーシングに充填し、加熱処理する。
使用する畜肉としては、牛肉、豚肉、鶏肉、鴨肉、羊肉または馬肉など、食用に適した畜肉(食肉)であれば特には限定されないが、通常、牛肉や豚肉が用いられる。
このように、その食肉加工品の種類に応じて、通常使用する脂身(一部または全部)に代えて、本発明の脂肪組織代替物を用いることにより、脂身が本発明の脂肪組織代替物で代替された加工食品を調製することができる
本発明の加工食品中における脂肪組織代替物の割合は、各加工食品の種類およびそれに本来配合される脂身の量に応じて適宜調節することができる。例えば、加工食品100重量%あたりの脂肪組織代替物の割合として、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%の割合を挙げることができる。粗挽きソーセージの場合も同様に、粗挽きソーセージ100重量%あたりの脂肪組織代替物の割合として、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%の割合を挙げることができる。
上記割合で本発明の脂肪組織代替物を用いることによって、例えば粗挽きソーセージなどの食肉加工食品に、食肉加工食品特有のジューシー感と濃厚感を付与することができる。また本発明の脂肪組織代替物は、前述するように、基本的にデキストリン、またはデキストリン(I)とカラギナンからなるため、脂身に代えて本発明の脂肪組織代替物を使用した食肉加工食品は、上記食肉加工食品特有のジューシー感と濃厚感を有しながらも、低カロリーで低脂肪量であるという特徴を備えている。
なお、本発明の加工食品には、本発明の効果を妨げない範囲で各種の増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、香料、甘味料、または色素等を適宜添加することができる。
(II-3)乳化様食品
本発明が対象とする乳化様食品は、前述(I)するデキストリンを用いて調製されるものであって、油脂を含有しないにも関わらず、油脂を乳化して調製される乳化食品に類似した外観、食感および使用感を有する、非乳化の加工食品である。
なお、上記でいう乳化食品には、ドレッシング、マヨネーズ、ソース、フラワーペースト、スプレッド(バター、マーガリン、ファットスプレッド、バタークリーム)、およびチーズが含まれる。また上記でいう使用感には、スプレッドなどをナイフにとる感触やそれをパン等に塗布する際の感触(塗布感)が含まれる。
なお、上記のドレッシング、マヨネーズ、フラワーペースト、バター、マーガリン、およびファットスプレッドには、表1に記載する日本農林規格(JAS)規定のものが含まれる。
また上記のチーズには、ナチュラルチーズ(非熟成チーズ、熟成チーズ)、プロセスチーズ、およびチーズスプレッドが含まれる。非熟成チーズとは、一般に熟成工程を経ないで製造されるナチュラルチーズであり、クリーム(通常33重量%)、モザレラ(通常44重量%)等が挙げられる(なお、括弧内は規定の乳脂肪量を意味する。以下同じ)。熟成チーズとは、一般に熟成工程を経て製造されるナチュラルチーズであり、チェダー(通常33.8重量%)、ゴーダ(通常29重量%)、エダム(通常25重量%)、エメンタール(通常33.6重量%)、カマンベール(通常24.7重量%)等が挙げられる。
本発明の乳化様食品に対するデキストリン(I)の配合量としては、通常5〜30重量%、好ましくは8〜20重量%、より好ましくは10〜16重量%を挙げることができる。
これに対して、デキストリン(I)に代えて0.4未満の青価を有するデキストリンを用いた場合、乳化食品特有の白濁感や脂肪感を得ることができず、水っぽいものとなる。また、デキストリン(I)に代えて1.2を超える青価を有するデキストリンを用いた場合、ざらつき感が生じたり、澱粉由来の臭いが強くて風味の悪い乳化様食品となる。またデキストリン(I)に代えて4N/cm2未満のゼリー強度を有するデキストリンを用いた場合、乳化様食品の調製に多量のデキストリンが必要になるため、ざらついた食感となりやすく、また使用感に影響を与える可能性も高くなる。またデキストリンが100mPa・sを大きく超える粘度を有するものである場合、調製された乳化様食品の食感や使用感の滑らかさが低下し、不快な糊感を呈する場合がある。さらに当該粘度が20mPa・sを大きく下回る場合は、乳化食品固有のコクや油脂感が得られ難い場合がある。
本発明の乳化様食品は、好ましくはデキストリン(I)に加えて、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類を用いて調製される。より具体的には、本発明の乳化様食品は、デキストリン(I)と上記多糖類の少なくとも1種を含有する水溶液を調製し、これを冷却することによって調製することができる。多糖類として、好ましくはキサンタンガムである。
本発明では、なかでもアセチル基含量が0〜1%のキサンタンガムを使用することが好ましい。かかるキサンタンガムを使用することにより、特にマヨネーズやドレッシングなどの酸性の乳化食品に類似した乳化様食品を調製した場合でも、アセチル基含量が2〜6%程度のキサンタンガムを用いる場合に比べて、経時的な離水や経時的な粘度変化が抑制されて保存安定性の高い乳化様食品を得ることができる。かかるキサンタンガムは、商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンエース[商標]NXG−C」、「サンエース[商標]NXG−S」等を挙げることができる。
ここで発酵セルロースは、工業的に酢酸菌を通気攪拌培養させ、菌体から作られた非常に細かい繊維状のセルロースを分離・回収し得られるものであり、例えば、特開昭61−212295号公報、特開平3−157402号公報、特開平9−121787号公報に記載される方法に従って培養し、得られる発酵セルロースを所望に応じて適宜精製することによって製造することができる。商業的に入手可能な発酵セルロース製品として、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンアーティスト[商標]PX」、「サンアーティスト[商標]PG」などを挙げることができる。
本発明の乳化様食品の調製に用いるデキストリン(I)および上記多糖類の割合は、調製しようとする乳化様食品の種類に応じて適宜調節することができる。制限はされないが、具体的には、乳化様食品100重量%中、デキストリン(I)の割合として5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%を、また多糖類の割合(総量)として0.01〜0.5重量%、好ましくは0.05〜0.2重量%を例示することができる。また乳化様食品100重量%に含まれる水の割合として、例えば40〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%を例示することができる。
本発明の乳化様食品は、基本的にデキストリン(I)と水、好ましくはデキストリン(I)、上記いずれか少なくとも1つの多糖類および水を含有するものであればよく、その製法は特に制限されない。通常、デキストリン(I)と乳化様食品の調製に必要なその他の食品原料、またはデキストリン(I)、上記いずれか少なくとも1つの多糖類および乳化様食品の調製に必要なその他の食品原料を、水に溶解し、冷却することにより調製することができる。デキストリン(I)と上記多糖類を含有する水溶液は、特に制限されないが、例えば下記(1)〜(4)のいずれかの方法によって調製することができる:
(1)あらかじめ多糖類とデキストリン(I)を粉末混合したものを水に溶解する方法、
(2)デキストリン(I)を溶解した水溶液に、多糖類を加えて攪拌および混合して溶解する方法、
(3)多糖類を溶解した水溶液に、デキストリン(I)を加えて攪拌および混合して溶解する方法、および
(4)デキストリン(I)および多糖類のそれぞれの水溶液を別途調製した後に、各水溶液を混合する方法。
なかでも好適な方法は(1)の方法である。これらの方法で調製した水溶液を冷蔵庫(例えば5℃程度)で冷却することにより、油脂を含有せずとも、また均質化処理(乳化処理)を行うことなく、油脂特有の滑らかさやコクのある食感、更には乳化物特有の白濁感や表面のつや感を備えた乳化様食品を得ることができる。
なお、水溶液の調製に使用する水は、水道水、蒸留水、イオン交換水(純水)、ミネラルを含有するミネラル水などの別を問わず、各種の水を用いることができる。
本発明の乳化様食品には、上記デキストリン(I)および多糖類に加えて、さらにガティガムおよびアラビアガムからなる群から選択される少なくとも1種を配合してもよい。ガティガムおよび/又はアラビアガムを用いることにより、乳化様食品に流動性を付与して、乳化様食品がゲル状になるのを抑制することができ、その結果、十分な滑らかさやクリーミーさを兼ね備えた液状、半液状(ペースト状またはクリーム状)および固体状の乳化様食品を調製することができる。
ガティガムは、シクンシ科ガティノキ(Anogeissus Latifolia WALL.)の幹の分泌液を乾燥して得られる、多糖類を主成分とするガム質であり、増粘安定剤(食品添加物)として汎用されている。通常、常温〜加温条件下で、30重量%程度まで水に溶解する水溶性ガム質である。かかるガティガムは、商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ガティフォーリアSD」を挙げることができる。
アラビアガムは、マメ科アカシア属植物の樹液に含まれる水溶性のヘテロ多糖である。アラビアガムの分子構造は明らかにされてはいないが、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、およびグルクロン酸を構成糖とすることが知られており、少量のタンパク質が含まれる。また、平均分子量は200,000〜580,000であると報告されている。食品工業の分野において使用されるアラビアガムとしては、例えばアカシア・セネガル(Acacia senegal)やアカシア・セイアル(Acacia seyal)を起源とするものを挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。商業的に入手可能な製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ガムアラビックSD」を挙げることができる。
本発明の乳化様食品へのガティムおよび/又はアラビアガムの配合量は、調製する乳化様食品の種類や共に用いる原料によって適宜調節することが可能である。通常、乳化様食品100重量%あたり、ガティガムとアラビアガムの総量が0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜1重量%となるような割合で使用することができる。
本発明の乳化様食品は、更に界面活性剤を用いることにより、長期保存によって生じ得るデキスリン(I)の結晶化を有意に抑制することができ、その結果、長期間に渡って滑らかな食感と使用感を維持することができる。ここで界面活性剤としては、通常食用の乳化剤として使用されるものであれば特に限定はなく、例えば、クエン酸、コハク酸または乳酸等の有機酸のモノグリセリド類、有機酸ポリグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、レシチン等などを挙げることができる。好ましくはグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリド、およびコハク酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはクエン酸モノグリセリドおよびコハク酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種である。また、界面活性剤の添加量としては、乳化様食品100重量%あたり、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.05〜0.2重量%を例示することができる。
更に、本発明の乳化様食品には、本発明の効果を妨げない範囲で、増粘剤、ゲル化剤、香料、甘味料、色素等を適宜添加することができる。
本発明が対象とする乳化様食品には、油脂を含まず、またホモジナイズなどの均質化処理を必須工程とすることなく調製される食品が含まれる。当該乳化様食品は、油脂を乳化して調製される乳化食品〔マヨネーズ、ドレッシング、ソース、フラワーペースト、スプレッド(バター、マーガリン、ファットスプレッド、バタークリームなど)など〕に類似した外観(乳化物特有の白濁感や表面のつや感)、食感(油脂の滑らかさやコク)および使用感を有することを特徴とする。また当該乳化様食品は、油脂を含有しないため、低カロリーであることを特徴とする。更に本発明の乳化様食品は、pHが4〜2.8といった、低pHの領域であっても良好な安定性を備えていることを特徴とする。
本発明が対象とする油脂を含まない乳化様食品には、マヨネーズに類似した外観、食感および使用感を有する「マヨネーズ様調味料」、乳化型ドレッシングに類似した外観、食感および使用感を有する「ドレッシング様調味料」が含まれる。当該「マヨネーズ様調味料」、「ドレッシング様調味料」は下記の方法によって調製することができる。
(1)まず、水にデキストリン(I)、必要に応じて、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類、砂糖、ガティガムおよび/又はアラビアガム、並びに乳化剤を適宜加え、70〜90℃で5〜30分間程度加熱しながら溶解する。
(2)得られた混合物に、酢、果汁、塩類などの調味料を適宜添加し、温度を保った状態で容器に充填して密封し(ホットパック充填)、これを冷蔵庫において冷却する。
また本発明が対象とする油脂を含まない乳化様食品には、マーガリンやファットスプレッドなどのマーガリン類に類似した外観、食感および使用感を有する「マーガリン類様食品」が含まれる。当該「マーガリン類様食品」は、下記の方法によって調製することができる。
まず水にデキストリン(I)、必要に応じて、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類、および食塩を適宜加え、70〜90℃で5〜30分間程度加熱しながら溶解し、全量が100重量%になるように水を添加して調整する。そして調製した水溶液を容器にホットパック充填し、室温まで冷却後、冷蔵庫(5℃)にて3日間冷却する。
また本発明が対象とする油脂を含まない乳化様食品には、フラワーペーストに類似した外観、食感および使用感を有する「フラワーペースト様食品」が含まれる。当該「フラワーペースト様食品」は、水にデキストリン(I)、必要に応じて、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類、ガティガムおよび/又はアラビアガム、並びに乳化剤などを加え、これに澱粉、小麦粉、糖質、蛋白性原料などの成分を加えて加熱攪拌し、小麦粉や澱粉を糊化膨潤させることにより調製することができる。
更に本発明が対象とする油脂を含まない乳化様食品には、チーズに類似した外観、食感を有する「チーズ様食品」が含まれる。当該チーズ様食品は、水にデキストリン(I)、必要に応じてキサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類、ガティガムおよび/又はアラビアガムなどを加えて溶解し、冷却することにより調製することができる。なお、チーズ様食品を調製する際には、乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、および脱アシル型ジェランガムを併用することが好ましい。これらは、デキストリン(I)に加え、上記多糖類と同様にして添加することによりチーズ様食品を調製することができる。
なお、本発明が提供する乳化様食品の技術は、化粧料などの、食品以外の組成物にも応用することができる。すなわち、デキストリン(I)、好ましくはデキストリン(I)に加えて、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類を用いることによって、油脂を用いなくても(また均質化処理を必須工程としなくても)、油脂特有の滑らかさや、乳化物特有の白濁感や表面のつや感を備えた、乳化物に類似した組成物を調製することができる。
具体的には、例えば、油脂成分を配合せずに、乳液に類似した外観および性状を有する化粧料は、水にデキストリン(I)、必要に応じて、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類、ガティガムおよび/又はアラビアガム、並びに乳化剤などを加えて、70〜90℃で5〜30分間加熱しながら溶解し、次いで、これに保存料や色素などの他成分を適宜配合し、脱気処理、濾過処理、冷却処理などを行って、容器に充填することによって調製することができる。
(II-4)乳化食品
本発明は、前述(I)するデキストリンを用いて調製される乳化食品を提供する。本発明が対象とする乳化食品には、乳原料を用いて調製される食品、例えばプリン(中性プリン;果汁含有プリン、チーズ含有プリンなどの酸性プリン),杏仁豆腐,ババロア、フラワーペースト、カスタードクリームおよびムースなどのデザート、ヨーグルト、アイスクリーム,アイスミルク,ラクトアイス,および氷菓などの冷菓、ホイップクリームおよびミルクチョコレート;ならびに油脂を用いて調製される食品、例えばマヨネーズ様調味料、ドレッシング、ソース、およびスプレッド(マーガリン、ファットスプレッド、チーズスプレッド、バタークリームなど)などが含まれる。
デキストリン(I)は、上記各種の乳化食品に通常配合される脂肪分(油脂、乳脂肪)に代替することができる。従って、デキストリン(I)を用いることによって、通常配合される脂肪分(油脂、乳脂肪)よりも少ない量で上記各種の乳化食品を調製することができ、その結果、低カロリーで低脂肪の乳化食品を提供することができる。例えば、本発明が対象とするマヨネーズ様の乳化調味料やスプレッド(マーガリン、ファットスプレッド、チーズスプレッド、バタークリームなど)には、日本農林規格で規定されている通常のマヨネーズやスプレッドよりも少ない量の油脂を用いながらも、通常のマヨネーズやスプレッドと同様の外観と食感(滑らかさやコクなど)を備えた、低カロリーかつ低脂肪の乳化食品である。
これに対して、デキストリン(I)に代えて0.4未満の青価を有するデキストリンを用いた場合、乳化食品特有の脂肪感を得ることができず、水っぽいものとなる。また、デキストリン(I)に代えて1.2を超える青価を有するデキストリンを用いた場合、ざらつき感が生じたり、澱粉由来の臭いが強くて風味の悪い乳化食品となる。またデキストリンが4N/cm2未満のゼリー強度を有するものである場合、乳化食品の調製に多量のデキストリンが必要になるため、ざらついた食感となりやすく、また使用感に影響を与える可能性が高くなる。またデキストリンが100mPa・sを大きく超える粘度を有するものである場合、調製された乳化食品の食感や使用感の滑らかさが低下し、不快な糊感を呈しやすくなる。さらに当該粘度が20mPa・sを大きく下回る場合は、乳化食品固有のコクや油脂感が得られ難い場合がある。
またデキストリン(I)を用いることによって、脂肪分(油脂、乳脂肪)を増量することなく、脂肪分を増量したのと同様の食感(濃厚感、脂肪感、ボディ感および口当たりの滑らかさ)や風味(ミルクリッチな風味など)を有する乳化食品を調製することができる。かかる観点から、本発明は、乳化食品の調製にあたり、デキストリン(I)を用いることによって、当該乳化食品の濃厚感、脂肪感またはボディ感などの食感やミルクリッチな風味を増強する方法を提供するものでもある。
(II-4-1)乳化調味料
本発明が対象とする乳化調味料には、油脂を含むマヨネーズ、ドレッシングおよびソースが含まれる。好ましくは油脂含量の少ないマヨネーズ、ドレッシングおよびソースであり(低脂肪乳化調味料)、より好ましくは油脂含量の少ないマヨネーズ様調味料(低脂肪マヨネーズ様調味料)、油脂含量の少ないドレッシング(低脂肪ドレッシング)である。
通常、マヨネーズ(日本農林規格)は油脂を65〜80重量%の割合で含有しているが、本発明が対象とする低脂肪マヨネーズ様調味料は、油脂含量が50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは15重量%以下であることを特徴とする。なお、油脂含量の下限は特に制限されないが、0.01重量%を例示することができる。当該本発明の低脂肪マヨネーズ様調味料は、前述するように、油脂含量が少ないにもかかわらず、前述(I)のデキストリンを用いることによって、通常のマヨネーズと同様の外観(白濁感や表面のつや感)、食感(滑らかさや口溶け性を含む)、コク(脂肪感)および粘度を備えている。
ここで粘度は、25℃条件下で、ブルックフィールド粘度計を用いて回転数5rpmで1分間測定した場合の粘度を意味する。この条件で、油脂を65〜80重量%の割合で含有する通常のマヨネーズは80000〜180000mPa・sの粘度を有しており、本発明の低脂肪マヨネーズ様調味料は、これと同様の粘度となるように調製することができる。
上記特徴を備えた本発明の低脂肪マヨネーズ様調味料の調製に用いるデキストリン(I)の割合は、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、更に好ましくは1〜8重量%の範囲で、低脂肪マヨネーズ様調味料中の油脂量に応じて適宜調整することができる。低脂肪マヨネーズ様調味料中に配合する油脂量が多ければ、使用するデキストリン(I)の量は少なくても通常のマヨネーズに類似した低脂肪マヨネーズ様調味料を調製することができる。
同様にして、通常、サウザンアイランドなどの乳化型ドレッシングは油脂を30〜50重量%の割合で含有しているが、本発明が対象とする低脂肪ドレッシングは、油脂含量が25重量%以下、好ましくは20重量%以下であることを特徴とする。なお、油脂含量の下限は特に制限されないが、0.01重量%を例示することができる。
当該本発明の低脂肪ドレッシングは、前述するように、油脂含量が少ないにもかかわらず、前述(I)のデキストリンを用いることによって、油脂低減前のドレッシングと同様の外観(白濁感や表面のつや感)、食感(滑らかさや口溶け性を含む)、コク(脂肪感)を備えている。
上記特徴を備えた本発明の低脂肪ドレッシングの調製に用いるデキストリン(I)の割合は、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、更に好ましくは1〜8重量%の範囲で、低脂肪ドレッシング中の油脂量に応じて適宜調整することができる。
一方、油脂含量が30〜50重量%の乳化型ドレッシングにおいても、デキストリン(I)を1〜3重量%程度添加することにより、より濃厚で高級感のあるドレッシングを提供できる。
なお、本発明の低脂肪マヨネーズ様調味料や低脂肪ドレッシングをはじめとした低脂肪乳化調味料は、好ましくは上記添加量のデキストリン(I)を含有することを特徴とするが、低脂肪乳化調味料中に配合する油脂量が少なくなるほど、デキストリン(I)の量を多く配合することが好ましい。またこの場合、上記デキストリン(I)に加えて、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロースおよびネイティブ型ジェランガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類を用いて調製される。より具体的には、本発明の低脂肪乳化調味料は、デキストリン(I)と上記多糖類の少なくとも1種を含有する水溶液を調製し、これを冷却することによって調製することができる。
これら多糖類の低脂肪乳化調味料に対する添加量は特に限定されず、低脂肪乳化調味料のデキストリン(I)や油脂含量に応じて適宜調節することが可能である。好適な添加量として、低脂肪乳化調味料に対し、上記多糖類の総量として0.01〜5重量%、好ましくは0.03〜3重量%、更に好ましくは0.05〜1.5重量%が挙げられる。
多糖類として、好ましくはキサンタンガムを挙げることができる。なかでも、アセチル基含量が0〜1%のキサンタンガムを使用することが好ましい。かかるキサンタンガムを使用することにより、pHが2.8〜3.4といった特にpHの低い乳化調味料を調製した場合でも、アセチル基含量が2〜6%程度のキサンタンガムを用いる場合に比べて、経時的な離水や経時的な粘度変化が抑制されて保存安定性の高い低脂肪乳化調味料を得ることができる。なお、ここで使用するキサンタンガムは、前述(II-3)のキサンタンガムを同様に用いることができる。
さらに、本発明の低脂肪乳化調味料は、ガティガムおよびアラビアガムの少なくとも一種を配合してもよい。ガティガムおよび/又はアラビアガムを用いることにより、低脂肪乳化調味料に流動性を付与してゲル状になるのを抑制することができ、その結果、十分な滑らかさやクリーミーさを兼ね備えた液状または半液状(ペーストまたはクリーム状)の乳化調味料を調製することができる。ここで使用するガティガムおよびアラビアガムは、前述(II-3)のガティガムおよびアラビアガムを同様に用いることができる。
本発明の低脂肪乳化調味料へのガティガムおよび/又はアラビアガムの配合量は、乳化調味料の調製に用いる原料によって適宜調節することが可能である。通常、低脂肪乳化調味料100重量%あたり、ガティガムとアラビアガムの総量が0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜1重量%となるような割合で使用することができる。
本発明の低脂肪乳化調味料は、更に乳化剤を用いることにより、長期保存によって生じ得るデキスリン(I)の結晶化を有意に抑制することができ、その結果、長期間に渡って滑らかな食感と使用感を維持することができる。ここで乳化剤としては、通常食用の乳化剤として使用されるものであれば特に限定はなく、例えば、クエン酸、コハク酸または乳酸等の有機酸のモノグリセリド類、有機酸ポリグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、レシチン等などを挙げることができる。好ましくはグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリド、およびコハク酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはクエン酸モノグリセリド、およびコハク酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種である。また、乳化剤の添加量としては、低脂肪乳化調味料100重量%あたり、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.05〜0.2重量%を例示することができる。
更に、本発明の乳化調味料には、本発明の効果を妨げない範囲で、増粘剤、ゲル化剤、香料、甘味料、色素等を適宜添加することができる。
本発明が対象とする低脂肪マヨネーズ様調味料は、前述するように外観、食感、濃厚感(脂肪感)および粘度において通常のマヨネーズと類似していることに加えて、通常のマヨネーズと同等またはそれよりも良好な保形性を備えていることを特徴とする。このため、本発明の低脂肪マヨネーズ様調味料によれば、容器から絞り出したときの形状を長時間維持することができる(保形性、造形性)。
本発明の低脂肪マヨネーズ様調味料は、制限はされないが、下記の方法によって調製することができる:
水に、デキストリン(I)および砂糖、また必要に応じてさらに多糖類を添加し攪拌した後、25℃まで冷却し、卵黄を混合し、食塩、L−グルタミン酸ナトリウム、および醸造酢を添加して混合する。これに植物油脂を少量ずつ加えて撹拌し、さらにコロイドミルにて乳化する。
同様にして、本発明が対象とする低脂肪ドレッシングは、油脂含量が低減されているにも関わらず、低減前のドレッシングと遜色ない外観、食感、濃厚感(脂肪感)を有することを特徴とする。かかる本発明の低脂肪ドレッシングは、制限はされないが、上記低脂肪マヨネーズ様調味料と同様の方法を用いて調製することができる。
(II-4-2)スプレッド
通常、スプレッドの一種であるバターは乳脂肪を80重量%以上の割合で、またマーガリン(日本農林規格)は油脂を80重量%以上の割合で含有している。本発明が対象とするスプレッドは、好ましくは、油脂および乳脂肪の含量がこれらのスプレッド(バター、マーガリン)よりも少なく、60重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下であることを特徴とする低脂肪スプレッドである。なお、油脂および乳脂肪含量の下限は特に制限されないが、10重量%を例示することができる。当該本発明の低脂肪スプレッドは、前述するように、油脂および乳脂肪含量が通常のスプレッド(バターやマーガリン)よりも少ないにもかかわらず、前述(I)するデキストリンを用いることによって、通常のバターやマーガリンと同様の外観(白濁感や表面のつや感)、食感(滑らかさや口溶け性を含む)、および濃厚感(油脂感)を備えている。
低脂肪スプレッドの調製に用いるデキストリン(I)の割合は、通常5〜30重量%の範囲で、低脂肪スプレッド中の油脂および乳脂肪量に応じて適宜調整することができる。低脂肪スプレッド中に配合する油脂量および乳脂肪が多ければ、使用するデキストリン(I)の量は少なくてもバターやマーガリンに類似したスプレッドを調製することができる。
一方、低脂肪スプレッド中に配合する油脂量および乳脂肪が少なくなるほど、デキストリン(I)の量を多く配合することが好ましい。またこの場合、上記デキストリン(I)に加えて、さらに、キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドシードガム、発酵セルロース、ガティガムおよびネイティブ型ジェランガムから選ばれる少なくとも1種の多糖類を配合してもよい。多糖類として、好ましくはキサンタンガム、グァーガム、ガティガムおよびローカストビーンガムからなる群から選択される少なくとも1種、特に好ましくはキサンタンガムである。ここで使用する多糖類は、前述(II-3)の多糖類を同様に用いることができる。
本発明の低脂肪スプレッドの調製に用いるデキストリン(I)および上記多糖類の割合は、調製しようとする低脂肪スプレッドの種類に応じて適宜調節することができる。制限はされないが、具体的には、低脂肪スプレッド100重量%中、デキストリン(I)の割合として5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%を、また多糖類の割合(総量)として0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%を例示することができる。
本発明の低脂肪スプレッドは、更に乳化剤を用いることにより、長期保存によって生じ得るデキスリン(I)の結晶化を有意に抑制することができ、その結果、長期間に渡って滑らかな食感と使用感を維持することができる。ここで乳化剤としては、通常食用の乳化剤として使用されるものであれば特に限定はなく、例えば、クエン酸、コハク酸または乳酸等の有機酸のモノグリセリド類、有機酸ポリグリセリド類、グリセリン脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、プロピレングリコール脂肪酸エステル類、レシチン等などを挙げることができる。好ましくはグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノグリセリド、およびコハク酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはクエン酸モノグリセリド、およびコハク酸モノグリセリドからなる群から選択される少なくとも1種である。また、乳化剤の添加量としては、低脂肪スプレッド100重量%あたり、好ましくは0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.05〜0.2重量%を例示することができる。
更に、本発明の低脂肪スプレッドには、本発明の効果を妨げない範囲で、増粘剤、ゲル化剤、香料、甘味料、色素等を適宜添加することができる。
本発明の低脂肪スプレッドの調製方法は、制限はされないが、一例を挙げると下記の通りである:
植物油脂に乳化剤、レシチンを溶解したものに、デキストリン(I)、多糖類、食塩および色素を添加し攪拌溶解した水溶液を加え、撹拌混合する。これをホモミキサーにて乳化後、冷却しながら混合し、低脂肪スプレッドを得る。また、本発明の低脂肪スプレッドは、デキストリン(I)、多糖類、食塩および色素を添加し攪拌溶解した水溶液を冷却することで得られる油脂を含有しないスプレッドを、通常のマーガリンと混合することによっても調製することができる。
かくして得られた低脂肪スプレッドは、そのまま乳化食品(スプレッド製品)として提供される他、製菓や製パンの材料として使用することにより、低脂肪、低カロリーの製菓や製パンを提供することが可能である。
(II-4-3)デザート
本発明が対象とするデザートには、通常乳原料または植物油脂を用いて調製されるデザート、例えばプリン(中性プリン;果汁含有プリン、チーズ含有プリンなどの酸性プリン)、杏仁豆腐、ババロア、フラワーペースト、カスタードクリームおよびムースなどが含まれる。
当該デザートは、前述(I)するデキストリンを用いることにより、牛乳や生クリーム、チーズ等の乳脂肪分や精製ヤシ油などの油脂分を減らした場合でも、乳製品特有の風味を有し、また乳脂肪や油脂によって得られる脂肪感、濃厚感、ボディ感、および滑らかな食感を備えている。また、これらのデザートの調製に、デキストリン(I)を用いることにより、乳脂肪や油脂を増量することなく、これらを増量したのと同様に脂肪感、濃厚感およびボディ感が増強され、またより一層滑らかな食感を付与することができ、またミルクリッチな食感を有するデザートを調製することができる。さらに、乳脂肪分を低減することによって顕著に生じる離水もデキストリン(I)を用いることによって抑制することができ、安定した物性を有するデザートを調製することができる。かかる観点から、本発明は、上記デザートの調製にあたり、デキストリン(I)を用いることを特徴とする当該デザートの離水防止方法を提供するものでもある。また、フラワーペーストなどのデザートにデキストリン(I)を用いることにより、適度な保形性を付与することも可能である。
これに対して、デキストリン(I)に代えて0.4以下の青価を有するデキストリンを使用した場合、十分な脂肪感および濃厚感を得ることができない。また、デキストリン(I)に代えて1.2よりも大きい青価を有するデキストリンを使用した場合は、ザラツキや粉っぽさが目立つ、また由来澱粉の澱粉臭が発生して風味が低下する。さらに、デキストリンとして、4N/cm2未満のゼリー強度を有するものを使用した場合は、十分な脂肪感や濃厚感を付与することができない場合がある。またさらに、粘度が100mPa・sを超えるデキストリンを用いる場合は、ざらつきや粉っぽさが目立つ場合があり、また粘度が20mPa・s未満のデキストリンを用いた場合は十分な脂肪感や濃厚感を得ることができない場合がある。
本発明のデザートの調製に用いるデキストリン(I)の割合は、対象となるデザートの種類や求められる食感等によって適宜調整することが可能であるが、通常0.1〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%を挙げることができる。デキストリン(I)の使用量を増すにつれ、その脂肪感・濃厚感付与効果も増大するが、通常は0.1〜5重量%といった少量で所望の脂肪感、濃厚感、およびボディ感を得ることができる。斯くして、乳脂肪含量または油脂含量を1重量%、更には5重量%程度低減させた場合においても、乳脂肪含量または油脂含量を低減させる前と遜色のない脂肪感や濃厚感を有するデザートを調製することができる。また、乳脂肪含量や油脂含量を低減させる場合に限らず、当該デキストリン(I)を添加することにより、乳脂肪分や油脂分を増量することなく、デザートの脂肪感や濃厚感やボディ感を増強することができ、更には滑らかな食感を備えた高級感のあるデザートを調製することができる。
本発明のデザートは、デキストリン(I)に加え、更に、以下に示す増粘多糖類、ゲル化剤、または乳タンパク質を配合することが可能である。
増粘多糖類やゲル化剤としては、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カラギナン、キサンタンガム、発酵セルロース、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガム、マクロホモプシスガム、カードラン、プルラン、ガラクトマンナン(グァーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム等)、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、グルコマンナン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、ペクチン、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース誘導体、加工・化工でん粉、未加工でん粉(生でん粉)、ゼラチン等が挙げられる。かかる増粘多糖類やゲル化剤の添加量としては、デザート100重量%中、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。
乳タンパク質としては、ホエイおよび/又はカゼインを挙げることができる。かかる乳タンパク質の添加量としては、デザート100重量%中、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜3重量%、より好ましくは0.5〜2重量%である。
本発明のデザートは、デキストリン(I)、また必要に応じて上記の増粘多糖類、ゲル化剤、乳タンパク質を配合する以外は、通常の手法を用いて調製することができる。一般的に、プリンは、水に全脂練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳成分や油脂類、およびデキストリン(I)、ならびに必要に応じて卵、タンパク質、ゲル化剤を添加し、加熱溶解後、冷却(未焼成プリンの場合)若しくはオーブンで焼成(焼きプリンの場合)することにより調製される。なお、デキストリン(I)は、例えば、水に乳成分等を添加する段階、若しくは水にゲル化剤を添加する段階で、添加することが好ましい。
また、杏仁豆腐、ババロア、およびムースなども、同様に、乳成分やゲル化剤等を添加する段階で、デキストリン(I)を添加することにより、調製することができる。また、フラワーペーストおよびカスタードクリームは、特に制限されないが、例えば下記に示す方法に従って調製することが可能である。水、全脂練乳、脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳等の乳成分や油脂類、デキストリン(I)ならびに必要に応じて卵、タンパク質、ゲル化剤、澱粉等の混合物を攪拌しながら8000rpmで5分間ホモジナイズ処理を行う。90℃で10分間加熱しながら攪拌して溶解し、水で全量を100%に調整した後、容器に充填して冷却して調製する。
(II-4-4)ヨーグルト
通常、ヨーグルトは3〜5重量%の乳脂肪分を含有する。乳脂肪分が0.5重量%以上3重量%未満のヨーグルトは通常「低脂肪ヨーグルト」と、また乳脂肪分が0.5重量%未満のヨーグルトは通常「無脂肪ヨーグルト」と称される。しかし、かかる乳脂肪分の含有量が3重量%未満、特に1.5重量%以下、更には0.5重量%以下となると、乳脂肪の低減に伴って、ヨーグルト特有の滑らかな食感が損なわれ、また濃厚感もなく水っぽい味や風味となってしまう。その上、乳脂肪含量が低減することにより、顕著に離水が生じる。かかる観点から、本発明は、上記ヨーグルトの調製にあたり、デキストリン(I)を用いることを特徴とする当該ヨーグルトの離水防止方法を提供するものでもある。
これに対して、本発明のヨーグルトは、前述(I)するデキストリンを用いることにより、牛乳や生クリーム等の乳脂肪分を、低脂肪ヨーグルトのように3重量%未満に減らしたり、また無脂肪ヨーグルトのように0.5重量%以下に低減しても、ヨーグルト特有の風味を有し、また濃厚感と滑らかな食感を備えている。また、ヨーグルトの調製に、デキストリン(I)を用いることにより、乳脂肪を増量することなく、増量した場合と同様に濃厚感やボディ感が増強され、ミルクリッチな高級な風味および滑らかな食感を有するヨーグルトを得ることができる。さらに、乳脂肪分を低減することによって顕著に生じる離水も、デキストリン(I)を用いることにより抑制され、安定した物性を有するヨーグルトを提供することができる。
一方、デキストリン(I)に代えて0.4以下の青価を有するデキストリンを使用した場合、十分な脂肪感および濃厚感を付与することができず、ヨーグルト中の脂肪含量を低減させた場合、水っぽい食感となってしまう。また、デキストリン(I)に代えて1.2よりも大きい青価を有するデキストリンを使用した場合は、ザラツキや粉っぽさが目立つ、また由来澱粉の澱粉臭が発生して風味が低下する。さらに、デキストリンとして、4N/cm2未満のゼリー強度を有するものを使用した場合は、十分な脂肪感や濃厚感を付与することができない場合がある。またさらに、粘度が100mPa・sを超えるデキストリンを用いる場合は、ざらつきや粉っぽさが目立つ場合があり、また粘度が20mPa・s未満のデキストリンを用いた場合は十分な脂肪感や濃厚感を得ることができない場合がある。
本発明のヨーグルトの調製に用いるデキストリン(I)の割合は、求められる食感や濃厚感によって適宜調整することが可能であるが、通常0.05〜10重量%、好ましくは0.1〜8重量%、更に好ましくは0.1〜5重量%を挙げることができる。デキストリン(I)の添加量が0.05重量%より少なくなるとその濃厚感付与効果が十分に発揮されなくなる場合があり、添加量が10重量%より多くなると、ヨーグルトが極端に重たい食感となる場合がある。なお、ヨーグルトを調製する際にデキストリン(I)を0.3〜1.5重量%、好ましくは0.5〜1重量%添加すると、乳脂肪分を1重量%低減しても、低減する前とほぼ同程度の脂肪感、濃厚感および滑らかな食感を得ることができる。すなわち、デキストリン(I)0.3〜1.5重量%、好ましくは0.5〜1重量%の配合は、乳脂肪分の1重量%の配合に代替することができる。
本発明では、デキストリン(I)に加え、ガティガム、アラビアガム、タラガム、タマリンドシードガムおよびグァーガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を併用することが好ましい。これにより、ヨーグルトの滑らかさを更に向上させることができる。
上記ガティガム、アラビアガム、タラガム、タマリンドシードガムおよびグァーガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類の添加量としては、ヨーグルトに配合するデキストリン(I)1重量部に対し、0.05〜1重量部、好ましくは0.1〜0.5重量部を挙げることができる。
また、本発明では、デキストリン(I)に加え、HMペクチン(ハイメトキシルペクチン)を併用することにより、更なる保形性の向上、離水抑制、および濃厚感の増大効果を得ることができる。HMペクチンは、エステル化度が50%以上、好ましくは60%以上のものを使用することが好ましい。商業的に入手可能なHMペクチン製品としては、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「SM−666」を挙げることができる。HMペクチンの添加量としては、ヨーグルトに配合するデキストリン1重量部に対し、0.05〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部を挙げることができる。
本発明が対象とするヨーグルトには、原料をタンクなどに入れて発酵した後、製造された発酵乳を容器充填する方法(前発酵方式)によって調製されるソフトヨーグルト(撹拌ヨーグルト)、原料乳と乳酸菌などを混合した混合原料を容器充填し、その容器内で発酵させる方法(後発酵方法)によって調製されるハードヨーグルト(固形ヨーグルト)等の区別なく、乳原料を発酵させて得られるヨーグルトの全てが含まれる。また、本発明のヨーグルトはその形態についても特に限定されず、ドリンクヨーグルトやフローズンヨーグルトなども含まれる。
本発明のヨーグルトの調製にあたり、デキストリン(I)の添加方法は、最終ヨーグルト中に当該デキストリンが含有されていれば特に限定されず、各種方法を用いることができる。通常、ソフトヨーグルトは、原料をタンクなどに入れて発酵した後、製造された発酵乳を容器充填する方法(前発酵方式)によって調製され、ハードヨーグルトは、原料乳と乳酸菌などを混合した混合原料を容器充填し、その容器内で発酵させる方法(後発酵方法)によって調製される。例えば、予めデキストリン(I)を溶解した水溶液を調製しておき、当該水溶液を発酵後の発酵乳に添加して容器充填する方法、または上記水溶液を、原料乳と乳酸菌などの混合液中に添加し、容器内で発酵させる方法を挙げることができる。なお、ヨーグルトの原料乳としては、牛乳、山羊乳および羊乳等の獣乳や、脱脂粉乳、全脂粉乳、全脂加糖練乳、脱脂加糖練乳或いは生クリームなどが好適に用いられる。
(II-4-5)冷菓
本発明が対象とする冷菓は、乳原料を用いて調製される冷菓であり、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、および氷菓(乳脂肪または油脂を含有するもの)が含まれる。
通常、冷菓の油脂含量や乳脂肪含量を低減させると、油脂や乳脂肪特有の脂肪感、濃厚感およびボディ感が低下し、また冷菓自体の組織が荒くなるため、食感の滑らかさが低減する。しかし、低減した油脂や乳脂肪含量を他の代替物で補完しようとすると口溶けや風味が悪化するという問題がある。
これに対して、冷菓の製造に、前述(I)するデキストリンを用いることにより、油脂や乳脂肪含量を減らした場合でも、冷菓が有する口溶けはそのままに、油脂や乳脂肪特有の脂肪感、濃厚感、およびボディ感を得ることができ、また冷菓の組織自体を滑らかに改良することができる。更に、デキストリン(I)は、デキストリン特有の澱粉臭がないため、冷菓の風味を損なうことなく、所望の冷菓を調製することができる。
このため、デキストリン(I)を用いることにより、ラクトアイス(乳脂肪分3%未満)であっても、それよりも乳脂肪分が多いアイスミルク(乳脂肪分3%以上8%未満)やアイスクリーム(乳脂肪分8%以上)と遜色なく、またアイスミルクであっても、それよりも乳脂肪分が多いアイスクリームと遜色のない脂肪感、濃厚感、およびボディ感、ならびに口溶けを有する冷菓を調製することができる。また、アイスクリームに、さらにデキストリン(I)を配合することで、より一層滑らかな食感で脂肪感、濃厚感、およびボディ感を有する、高級感のあるアイスクリームを調製することができる。
これに対して、デキストリン(I)に代えて0.4未満の青価を有するデキストリンを使用すると、濃厚感やボディ感を得ることはできない。またデキストリン(I)に代えて1.2よりも大きい青価を有するデキストリンを用いると、濃厚感やボディ感は付与されるものの、同時にぬめりが生じ、口溶けの悪い食感となってしまう。また、デキストリンが4N/cm2未満のゼリー強度を有するものである場合は、ボディ感(濃厚感)に欠ける組織となる場合がある。同様にして、粘度が100mPa・sより大きいデキストリンを用いた場合はボディ感(濃厚感)は付与されるものの、ぬめりも付与され口溶けの悪い組織となる場合がある。
冷菓に配合するデキストリン(I)の割合は、対象とする冷菓の種類や求められる食感等によって適宜調整することが可能であるが、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜3重量%を挙げることができる。更に、前述(I)するデキストリンは、0.1〜1重量%といった低添加量においても十分な濃厚感を冷菓に付与することが可能である点で極めて優れている。
本発明では、デキストリン(I)に加え、グァーガム、タラガム、タマリンドシードガム、カラギナン、キサンタンガム、ネイティブ型ジェランガムおよびローカストビーンガムからなる群から選ばれる少なくとも1種の多糖類を併用することが好ましい。好ましくはグァーガムおよびタラガムからなる群から選択される少なくとも1種である。デキストリン(I)は特に喫食後半の濃厚感を付与するのに対し、前述する多糖類、特にグァーガムとタラガムは喫食前半の濃厚感を付与する。このため、デキストリン(I)にこれらの多糖類を併用することにより、デキストリン(I)による濃厚感が補強され、より好ましい食感となる。
本発明の冷菓は、デキストリン(I)を配合する以外は、通常の手法を用いて調製することができる。通常、アイスクリーム、アイスミルク、およびラクトアイスは、水に果糖ブドウ糖液糖、脱脂粉乳等の乳成分、砂糖、安定剤、および乳化剤等を加え加熱して攪拌後、精製ヤシ油等の油脂を添加し、適宜均質化、エージング、フリージング工程をとり、容器に充填後冷却することにより調製することができる。本発明の冷菓は、水に果糖ブドウ糖液糖、脱脂粉乳等の乳成分、砂糖、安定剤、乳化剤等を添加する際に、デキストリン(I)を添加することにより調製することができる。
また氷菓は、水に適宜脱脂粉乳、油脂、果糖ブドウ糖液糖、砂糖、安定剤等を加え加熱して攪拌し、エージング工程をとり、容器に充填後冷却することによりアイスキャンデーが調製される。また、エージング工程の後にフリージングを行い容器に充填後冷却することでシャーベットが調製される。本発明では、水に果糖ブドウ糖液糖、砂糖、安定剤等を添加する際に、デキストリン(I)を添加することにより、アイスキャンデーであればきしみが抑制でき、シャーベットであればなめらかさを付与することができる。
(II-4-6)ホイップクリーム
従来のホイップクリームは油脂含量が40〜50重量%のものが多い。かかる油脂は起泡安定効果の役割を果たしていたため、低カロリー化および低脂肪化を目的として油脂含量を35重量%未満にまで低減させると、ホイップクリームの保形性が著しく低下し、また離水が顕著に発生してしまう。
しかし、ホイップクリームの製造に、前述(I)するデキストリンを用いると、油脂含量を低減させて20〜35重量%、更には25重量%以下とした場合であっても、良好な保形性を維持し、冷蔵保存および凍結解凍時の離水を防止することができる。かかる観点から、本発明は、上記ホイップクリームの調製にあたり、デキストリン(I)を用いることを特徴とする当該ホイップクリームの離水防止方法を提供するものでもある。
また、ホイップクリームの製造に、前述(I)するデキストリンを用いると、油脂含量を低減させて20〜35重量%、更には25重量%以下とした場合であっても、油脂特有の濃厚感が付与され、通常の油脂含量(40重量%以上)であるホイップクリームと、濃厚感や食感において遜色のないホイップクリームを調製することが可能である。さらに、通常の油脂含量(40重量%以上)のホイップクリームに対して、デキストリン(I)を配合すると、濃厚感が一層増して高級感のあるホイップクリームを調製することができる。
これに対して、デキストリン(I)に代えて0.4未満の青価を有するデキストリンを使用すると、十分な保形性や濃厚感を得ることができない。一方、1.2よりも大きい青価を有するデキストリンを使用すると、十分に離水を抑制することができなく、またホイップクリームの食感がざらつく。また、デキストリンが4N/cm2未満のゼリー強度を有するものである場合は、十分な保形性や濃厚感を得ることができない場合がある。同様にして、粘度が100mPa・sより大きいデキストリンを用いた場合は、非常に高粘度なクリームとなり、取り扱い難く、また調製されたホイップクリームの保形性が低くなる場合がある。
本発明のホイップクリームに配合するデキストリン(I)の割合は、油脂等のホイップクリーム中の成分やその含量によっても適宜調節することが可能であるが、通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜8重量%、より好ましくは2〜6重量%である。ホイップクリームに対するデキストリンの添加量が0.5重量%より少ないと、満足な保形性、濃厚感が得られない場合があり、10重量%よりもデキストリンの添加量が多くなるとクリームが極めて高粘度となりホイップしにくくなる傾向がある。
本発明のホイップクリームは、デキストリン(I)に加え、ヨウ素価が10〜45であるポリグリセリン脂肪酸エステル、ヨウ素価が44〜120であるモノグリセリン脂肪酸エステルおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。デキストリン(I)に加え、上記ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる1種以上を併用することにより、ホイッピングタイムの短縮や、オーバーランの向上効果が得られる。また、上記併用によりホイップクリーム自体のきめが細かくなり食感が改良され、更にはつやがよくなるという効果もある。さらに、離水が発生しやすい凍結解凍工程を経た場合であってもホイップクリームの離水を顕著に抑制することができる。
なお、上記グリセリン脂肪酸エステルのヨウ素価は、油脂中の不飽和脂肪酸量を示す値であり、不飽和脂肪酸が多いとヨウ素価は高くなる。詳細には、油脂100gに付加することのできるヨウ素(I2=254)のグラム数で表される。本発明ではヨウ素価が10〜45、好ましくは16〜42であるポリグリセリン脂肪酸エステル、ヨウ素価が44〜120、好ましくは44〜55であるモノグリセリン脂肪酸エステルを用いることが望ましい。
本発明で用いられるヒドロキシプロピルセルロースは、天然に広く存在するセルロース(パルプ)を原料とし、これを水酸化ナトリウムで処理した後、プロピレンオキサイド等のエーテル化剤と反応して得られる非イオン性の水溶性セルロースエーテルである。商業上入手可能なヒドロキシプロピルセルロース製品として、例えば、ハーキュリーズ社製のクルーセル ニュートラ(KLUCEL NUTRA:商標、以下同じ)シリーズ、エアロホイップ(AeroWhip)シリーズを使用することができる。
本発明が対象とするホイップクリームには、生乳や牛乳等の乳由来のクリーム(乳クリーム)、例えば生クリーム等を用いて調製されるホイップクリーム、並びにいわゆる合成クリーム(非乳クリーム)と呼ばれる、乳脂肪以外の脂肪を用いて調製されるホイップクリームの両方が含まれる。
本発明のホイップクリームは、さらに、乳製品、甘味料、油脂、乳化剤、卵黄、増粘多糖類等の安定剤、香料、保存料、酸化防止剤、ビタミン、ミネラル等の添加剤を、本発明の効果に影響を及ぼさない限りにおいて、適宜用いることができる。ここで乳製品としては、牛乳、粉乳、練乳、脱脂乳、チーズ類および発酵乳などをあげることができる。
甘味料としては、砂糖、果糖、ぶどう糖、水飴、還元水飴、はちみつ、異性化糖、転化糖、オリゴ糖(イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、テアンデオリゴ糖、大豆オリゴ糖等)、トレハロース、糖アルコール(マルチトール、エリスリトール、ソルビトール、パラチニット、キシリトール、ラクチトール等)、砂糖結合水飴(カップリングシュガー)、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ステビア抽出物、ステビア末等があげられる。
油脂としては、植物油脂、バター、乳脂肪分、あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂等があり、植物油脂の例としては、マーガリン、ショートニング、ヤシ油、パーム油、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油およびパーム核油等を挙げることができる。
乳化剤として、上記ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル以外のグリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸塩、ユッカ抽出物、サポニン、レシチン、ポリソルベート等を挙げることができる。
安定剤としては、例えば、寒天、ペクチン、カラギナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、タラガム、グァーガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プルラン、大豆多糖類、CMC、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、カードラン、ラムザンガム、ウェランガム、サイリウムシードガム、マクロホモプシスガム、ガティガム、澱粉、加工・化工澱粉等から選ばれる1種以上を選択して用いることができる。好ましくは微結晶セルロースである。
本発明で使用する微結晶セルロースは、微結晶セルロースと分散剤や崩壊剤を特定の割合で含有する複合体とした微結晶セルロース製剤を好適に使用することが出来る。微結晶セルロース製剤の製法としては、例えば、パルプを磨砕して得られた微細セルロースを分散剤や崩壊剤と均一に混合して均質なスラリーとしてこれを乾燥することにより得られる方法を挙げることができるが、具体的には、特公昭40−14174号公報、特公昭62−43661号公報、特開平6−335365号公報などに記載のものが使用できる。分散剤や崩壊剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン、カラヤガム、キサンタンガム、ジェランガム、難消化性デキストリン、ペクチン等を用いることができる。また、微結晶セルロースの結晶粒子の大きさとしては、平均粒径20μm以下、好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。本発明で使用する微結晶セルロース製剤は商業上入手可能であり、例えば、旭化成工業株式会社製のセオラス製品や、FMC社製アビセル製品などを挙げることができる。ホイップクリームへの微結晶セルロースの好ましい添加量は、0.1〜0.5重量%、更に好ましくは0.2〜0.4重量%である。
本発明のホイップクリームは、上述のデキストリン(I)、必要に応じて特定のポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、およびヒドロキシプロピルセルロースからなる群から選ばれる1種以上、必要に応じてレシチン、微結晶セルロースを、あらかじめ水に添加、溶解し油脂または生クリームなどの乳脂肪を加えて乳化する一般的な製法により製造することができる。また、本発明のデキストリン、必要に応じてヒドロキシプロピルセルロースをあらかじめ水に添加、溶解した水相部と、特定のポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルを油脂に溶解した油相部を混合し、乳化して調製することによっても製造できる。本発明のデキストリンは、少なくとも1〜100℃の水中で、好ましくは攪拌することによって溶解するため、上記水溶液はかかる温度で調製することができる。ホイップ方法については従来から用いられている方法で行うことができる。例えば、市販の泡立てることができる機械や工業用機械(例えば、工業用攪拌機、ホイッパー、家庭用ハンドミキサー等)を用いて、ホイッピングを行うことができる。
本発明のホイップクリームは、ホイッピング前のクリームを、エアゾール容器に充填した後、噴射剤ガスを封入して、エアゾールクリームとすることもできる。かかるエアゾールクリームは、例えば、前記ホイップクリームのホイッピング処理前物を、エアゾール容器に充填し、噴射剤ガスとして、炭酸ガス、窒素ガス、笑気ガス、LPGおよびLNG等から選ばれる一種以上を選択して、加圧充填することにより製造することができる。
(II-5)チーズ様食品
本発明のチーズ様食品は、前述(I)するデキストリンを用いて調製されるものである。当該チーズ様食品には、乳脂肪を含有しないか、または20重量%以下の乳脂肪しか含有しないにも関わらず、通常、乳脂肪が20重量%より多いチーズに類似した外観、風味および食感(ボディ感および口あたり)を有する食品が含まれる。ここで本発明が対象とするチーズには、ナチュラルチーズ(非熟成チーズ、熟成チーズ)、プロセスチーズ、およびチーズスプレッドが含まれる。
非熟成チーズとは、一般に熟成工程を経ないで製造されるナチュラルチーズであり、クリーム(通常33重量%)、モザレラ(通常44重量%)等が挙げられる(なお、括弧内は規定の乳脂肪量を意味する。以下同じ)。熟成チーズとは、一般に熟成工程を経て製造されるナチュラルチーズであり、チェダー(通常33.8重量%)、ゴーダ(通常29重量%)、エダム(通常25重量%)、エメンタール(通常33.6重量%)、カマンベール(通常24.7重量%)等が挙げられる。
プロセスチーズとは、一般に一種又はそれ以上のナチュラルチーズに溶融塩などの添加物、香辛料、調味料、食品を添加するか又は添加せずに混合、加熱、溶解、混練して製造され、日本では一般的に食されてきたものである。チーズスプレッドとは、一般に一種又はそれ以上のナチュラルチーズに、水、油脂、味付け素材、溶融塩などの添加物を添加するか又は添加せずに混合、加熱、溶解、混練して製造されるものであり、パン等に塗り易いような硬さに調整されたものである。
本発明のチーズ様食品は、デキストリン(I)を用いて調製することができる。これに対して、デキストリン(I)に代えて青価が0.4未満のデキストリンを用いた場合、硬さが不十分でチーズ特有の食感を得ることができない、コクのある風味を得ることができないという不具合がある。またデキストリン(I)に代えて青価が1.2を超えるデキストリンを用いた場合、ざらついたり、澱粉由来の臭いが強くて風味が悪くなる、ぼろぼろと崩れて結果としてチーズに類似した食感が得られないという不具合がある。
また、用いるデキストリンが4N/cm2未満のゼリー強度を有するものである場合は、チーズ特有の食感が得られ難い場合がある。粘度が100mPa・sを大きく超えるデキストリンを用いる場合は、極めて高粘度となってチーズに類似した食感が得られ難い場合がある。さらに粘度が20mPa・sを大きく下回るデキストリンを用いる場合は、硬さが不十分で、チーズ特有の食感が得られ難い場合がある。
本発明のチーズ様食品は、デキストリン(I)を含有する水溶液を調製し、次いでこれを冷却固化することによって調製することができる。デキストリン(I)は1〜100℃の水中で、好ましくは攪拌することによって溶解するため、上記水溶液はかかる温度で調製することができる。また当該水溶液は約40℃以下、好ましくは25℃以下、より好ましくは10℃以下の温度条件で静置することによって固化する性質を有している。
使用するデキストリン(I)の量としては、最終チーズ様食品100重量%あたり、10〜50重量%、好ましくは15〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%を挙げることができる。
本発明のチーズ様食品は、好ましくはデキストリン(I)に加えて、乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、および脱アシル型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。好ましくはデキストリン(I)に加えて、乳清タンパク質およびカードランより選ばれる少なくとも1種を含有するものであり、より好ましくはデキストリンに加えて乳清タンパク質を含有するものである。これらの成分の少なくとも1種を含有することにより、室温などの非加熱状態では良好な保形性を有すると共に、オーブンなどで熱を加えた際に、チーズ特有の加熱溶融性を示すチーズ様食品を調製することができる。
チーズ様食品に配合される乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、または脱アシル型ジェランガムの配合量は、用いる素材によって適宜調節することが可能であるが、通常、最終チーズ様食品100重量%あたりのこれらの総量として0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%を挙げることができる。具体的には、最終チーズ様食品100重量%あたり、乳清タンパク質の場合は0.5〜5重量%、好ましくは1〜4重量%、より好ましくは2〜3重量%;カードランの場合は0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、より好ましくは1〜2重量%;メチルセルロースの場合は0.01〜3重量%、好ましくは0.02〜2重量%、より好ましくは0.1〜1重量%;脱アシル型ジェランガムの場合は0.01〜2重量%、好ましくは0.02〜1重量%、より好ましくは0.03〜0.5重量%を挙げることができる。
ここで乳清タンパク質は、各種乳清タンパク質を用いることができるが、牛乳由来の乳清を原料としたものが好ましい。より好ましくは、乾物換算で蛋白質含有量が80重量%以上の乳清タンパク質である。かかる乳清タンパク質として、例えば、乳清タンパク質濃縮物(WPC)、および乳清タンパク質単離物(WPI)を挙げることができる。なかでもゲル化力の高い乳清タンパク質を用いることが好ましい。かかる乳清タンパク質としては、具体的には、乳清タンパク質15重量%水溶液を80℃に加熱した後、4℃に冷却した後のゲル強度が、カード値で10N/cm2以上、より好ましくは12N/cm2以上のものを挙げることができる。かかるゲル強度の上限は、制限されないが、通常カード値で50N/cm2、より好ましくは20N/cm2である。
なお、当該性質を有する乳清タンパク質は、商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ミルプロNo.142」を挙げることができる。
また、メチルセルロースは、セルロースの骨格中の水酸基をメトキシル基で置換したものである。かかるメチルセルロースは、セルロースを水酸化ナトリウムでアルカリセルロースにし、次いで塩化メチルと反応させることにより調製することができる。既存のメチルセルロースのメトキシル基による置換度(DS)は通常1.4−2であり、かかるメチルセルロースは10℃程度の冷水に溶解する特性を有している。本発明では、なかでも2%水溶液の粘度が40〜10000mPa・s、好ましくは80〜4000mPa・s、より好ましくは300〜2000mPa・sのメチルセルロースを用いることが好ましい(20℃、B型回転粘度計、60rpmで測定)。当該性質を有するメチルセルロースは、商業的に入手することができ、例えば、信越化学株式会社製の「SM−400」および「SM−1500」を挙げることができる。
カードランは、土壌菌によって産生される微生物多糖類で、加熱すると固まるという性質を有するものである。本多糖類はグルコースがβ―1,3−グルコシド結合した直鎖状のグルカンである。
本発明におけるチーズ様食品は、基本的にデキストリン(I)、好ましくはデキストリン(I)と乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、および脱アシル型ジェランガムからなる群から選択される少なくとも1種を含有するものであればよく、その製法は特に制限されない。例えば、水に、デキストリン(I)、および必要に応じて乳清タンパク質、メチルセルロース、カードラン、および脱アシル型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種、並びに他成分を溶解し、冷却することにより調製することができる。なお、食品衛生上また保存安定のため、冷却前に殺菌処理することが好ましい。
なお、本発明のチーズ様食品は、デキストリン(I)を用いることにより、殺菌工程以外、加熱処理することなくチーズ様食品を調製することができるため、加熱による風味や香味の低下を防止することができる。また加熱工程が不要であるため、本発明のチーズ様食品は簡易でかつ経済的な製造ラインにて製造することができる。
また、本発明のチーズ様食品には、前述するデキストリン(I)に加え、カラギナン、キサンタンガム、ネイティブ型ジェランガム、グァーガム、タラガム、タマリンドシードガム、大豆多糖類、寒天、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、グルコマンナン、カシアガム、サイリウムシードガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、ラムザンガム、ウェランガム、マクロホモプシスガム、プルラン、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび水溶性ヘミセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の多糖類を配合することもできる。好ましい多糖類は、カラギナン、キサンタンガム、ネイティブ型ジェランガム、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガムおよびタマリンドシードガムからなる群より選ばれる少なくとも1種、より好ましくはカラギナン、キサンタンガム、ガティガムおよびネイティブ型ジェランガムからなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの多糖類を配合することによって、硬さや弾力等の食感が経時的に変化せず、保存安定性が高まるという利点がある。
チーズ様食品に対するこれらの多糖類の配合量は、用いる多糖類の種類によって適宜調節することが可能であるが、チーズ様食品100重量%あたり通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%、より好ましくは0.1〜1.5重量%である。
なお、上記カラギナンとしては、カッパタイプ、ラムダタイプ、およびイオタタイプのいずれのカラギナンを使用してもよいが、中でもイオタタイプのカラギナンを使用することが好ましい。また本発明で使用するカラギナンは、水と混合し、必要により攪拌することにより、水に完全に溶解する性質を有する水溶性のものが好ましい。
水溶性のカラギナンとしては、好適には、(II-1)の項にて説明した下記(1)〜(3)の少なくとも一つの性質を有するものを挙げることができる。より好ましくは下記(1)〜(3)の少なくとも二つの性質を有するもの、特に好ましくは(1)〜(3)の全ての性質を有する水溶性のカラギナンである:
(1)50℃以下の水に溶解する。
(2)その1.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない。
(3)カルシウムイオンを含み、その割合が0より多く0.1重量%以下である。
なお、上記(1)〜(3)の性質を有する水可溶性のイオタカラギナンとしては、例えば三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ゲルリッチ[商標]No.3」を挙げることができる。
本発明では、キサンタンガムのなかでも、前述のアセチル基含量が0〜1%のキサンタンガムを使用することが好ましい。かかるキサンタンガムを用いてチーズ様食品を調製することにより、アセチル基含量が2〜6%程度のキサンタンガムを用いる場合に比べて、硬さや弾力等の食感が経時的に変化しにくく、保存安定性の高いチーズ様食品を得ることができる。かかるキサンタンガムも、商業的に入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「サンエース[商標]NXG−C」、「サンエース[商標]NXG−S」等を挙げることができる。
本発明によれば、デキストリン(I)を用いることにより、乳脂肪分を配合しなくても、また規定量以下の乳脂肪分であっても、チーズ特有のボディ感や口あたりを有するチーズ様食品を調製することができる。すなわち、本発明が対象とするチーズ様食品には、脂肪分を全く含有しない食品であって、チーズ特有のボディ感や口あたりを有している食品、並びに脂肪分が20重量%以下、更には5重量%以下と通常のチーズよりも脂肪含量が少ない食品でありながらもチーズ特有のボディ感や口あたりを有している食品が含まれる。このため、本発明のチーズ様食品は、チーズを代替することができ、チーズに代えて本発明のチーズ様食品を用いることにより低カロリーで無脂肪または低脂肪の加工食品を提供することができる。同様にして、デキストリン(I)を用いることにより乳脂肪を代替でき、植物油脂などの低コストの原料を用いてチーズに類似した食感(ボディ感、口あたり)や外観を有するチーズ様食品を提供することができる。
また、本発明のチーズ様食品には、本発明の効果を妨げない範囲で、各種増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、香料、甘味料、色素、および油脂等を適宜添加することができる。
乳化剤としては、前述する乳化剤を同様に用いることができる。
油脂としては、調製されるチーズ様食品によって適宜選択することが可能であるが、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ヤシ油、パーム油等の植物性油脂、牛脂、ラード等の動物性油脂、これらの分別脂、これらのエステル交換脂等を挙げらることができる。これらは単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。また、風味付けの目的で、本発明のチーズ様食品には、牛乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、クリーム、ヨーグルト、練乳、加糖練乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、バターミルク、チーズなどを配合することもできる。
本発明のチーズ様食品には、その形状を特に問わず、固形状、粉末状、およびペースト状のいずれの形状を有するものが含まれる。
(II-6)チーズ様食品を用いて調製される加工食品
本発明が対象とする加工食品は、チーズ含有食品に本来配合されるべきチーズの一部または全部が、前述のチーズ様食品に代替されてなる加工食品である。
上記チーズ含有食品は、チーズを含むかチーズを原料として調製される加工食品であり、例えば、パン、ケーキ、ムース、ピザ、グラタン、ラザニア、ドリア、リゾット、ソース、スープ、チーズフォンデュ、ハンバーグ、ハンバーガー、サラダ、トンカツなどのフライ食品およびスプレッドなどの加工食品が含まれる。
本発明の加工食品は、チーズの代わりに前述するチーズ様食品を用いる以外は、通常の材料と通常の手法を用いて調製することができる。例えば、レアチーズケーキなどは、各種材料を混合する際に、通常のクリームチーズ(乳脂肪量:33重量%)に代えて、チーズ様食品(クリームチーズ様食品)を用いることによって調製することができる。その一例として乳脂肪0%のクリームチーズ様食品の調製方法を挙げると下記の通りである:
85℃の水を攪拌しながら、デキストリン(I)、必要に応じて多糖類を添加して溶解する。次いで、これに食塩を加えて溶解し、クエン酸にてpHを3.8に調整し、色素と香料を添加し、水で全量が100%になるように調整する。そして調製した溶液を容器に充填後85℃まで加熱殺菌し、室温まで冷却する。
次いで斯くして調製した本発明のクリームチーズ様食品100gを、室温(25℃)に戻してやわらかくし、生クリーム100g、砂糖25g、レモン果汁7.5%を順次加え混合する。さらに予め25gの水に3.5gのゼラチンを溶解したものを添加、混合しケーキ型に流し込み3時間以上冷却することによって得られる。
このように、その加工食品の種類に応じて、通常のチーズに代えて、本発明のチーズ様食品を用いることにより、チーズが本発明のチーズ様食品で代替された加工食品を調製することができる。斯くして得られる加工食品は、本物のチーズを用いているのと同様の風味、ボディ感、および口当たり(食感)を有している。
本発明の加工食品中におけるチーズ様食品の割合は、各加工食品の種類およびそれに本来配合されるチーズの量に応じて適宜調節することができる。例えば、加工食品100重量%あたりのチーズ様食品の割合として、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%の割合を挙げることができる。
本発明のチーズ様食品は、前述するように、基本的にデキストリン(I)、またはデキストリンとカラギナン、キサンタンガム、ネイティブ型ジェランガム、グァーガム、タラガム、タマリンドシードガム、大豆多糖類、寒天、ローカストビーンガム、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩類、グルコマンナン、カシアガム、サイリウムシードガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、ガティガム、ラムザンガム、ウェランガム、マクロホモプシスガム、プルラン、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび水溶性ヘミセルロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の多糖類からなり脂肪分を有していないため、チーズに代えて本発明のチーズ様食品を使用した加工食品は、上記チーズ特有の風味、ボディ感および口当たり(食感)を有しながらも、低カロリーで低脂肪量であるという特徴を備えている。
なお、本発明の加工食品には、本発明の効果を妨げない範囲で各種の増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、香料、甘味料、または色素等を適宜添加することができる。
(II-7)砂糖菓子
本発明が対象とする砂糖菓子とは、ブドウ糖やショ糖などの糖類を原料とし、これを水に溶解して煮詰めた溶液を成形(充填)し、乾燥もしくは冷却して固化することにより製造される菓子をいう。具体的には、ソフトキャンディ、キャラメル、ヌガー、グミキャンディなどが挙げられる。好ましくはグミキャンディである。
通常グミキャンディなどの糖度が高い砂糖菓子の調製には、保形性を維持するためにゲル化剤が必須であるが、高糖度下で使用できるゲル化剤は少なく、従来ゼラチン、カラギナン、ペクチンおよび寒天に限られていた。しかし、これらのゲル化剤を使用する場合でも、2種以上を組み合わせて使用したり、他の多糖類を併用すると、粘度が増加し、充填時の作業性が悪くなるという問題があった。
これに対して、前述(I)するデキストリンを用いると、ゲル化剤を使用しなくても保形性を維持することができ、またデキストリン(I)に他の多糖類を併用しても、粘度が増加して充填時の作業性が悪くなるという問題がなく、その結果、様々な食感のグミキャンディを調製することが可能である。
さらに本発明の砂糖菓子は、デキストリン(I)を用いて調製されることにより、以下の利点を奏する。
(1)砂糖菓子の調製時において低粘度を呈するため、作業性が良好である。
(2)デキストリン(I)単独で使用した場合であっても(ゲル化剤を配合しなくても)、保形性を有する砂糖菓子が調製できる。
(3)砂糖菓子に、所望の粘弾性や、独特の脂肪様の滑らかな食感を付与できる。
(4)他のゲル化剤との相互作用が低いため、他のゲル化剤との併用した際の作業性に不都合が生じない。
一方、デキストリン(I)に代えて0.4未満の青価を有するデキストリンを用いた場合は、保形性が生じないため、例えばグミキャンディなどの砂糖菓子を調製することができない。またデキストリン(I)に代えて1.2よりも大きい青価を有するデキストリンを用いた場合、保形性はあるが澱粉独特のざらつき感が発生して滑らかさに欠いたもの、または澱粉特有の臭いを有する砂糖菓子しか得られない。また、デキストリンが4N/cm2未満のゼリー強度を有するものである場合は保形性がなく固化しない場合がある。また、粘度が100mPa・sを超えるデキストリンを用いる場合は、調製時の作業性が低下したり、澱粉独特のざらつきのため滑らかさにかけてしまう場合がある。
本発明の砂糖菓子中に含まれるデキストリンの配合量としては、対象とする砂糖菓子の種類や求められる食感等によって適宜調整することが可能であるが、通常5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%、より好ましくは15〜20重量%を挙げることができる。
デキストリン(I)を用いることにより、従来必須成分であったゼラチン、カラギナン、ペクチンや寒天を用いることなく保形性を有したグミキャンディ等の砂糖菓子を調製することが可能であるが、本発明では、当該デキストリンに加え、他の多糖類を併用することも可能である。斯くして様々な食感のグミキャンディを調製することができる。ここで多糖類としては、サイリウムシードガム、カラギナン、ガティガムおよびタマリンドシードガムからなる群から選ばれる1種以上を好適に挙げることができる。更に好ましくはサイリウムシードガムおよび/またはカラギナンである。
例えば、デキストリン(I)に、サイリウムシードガムを併用することにより、生キャラメル様の食感を有する砂糖菓子を調製することができる。
生キャラメルは、水、糖類を混合溶解して煮詰め、乳製品、硬化油を加え更にフォンダンを添加し混練・起晶することにより調製されるキャラメルの一種であり、柔らかく非常に口溶けの良い食感を有することを特徴とする。この生キャラメルは通常のキャラメルに比較して、チューイング性や付着性が小さく、生チョコの様な柔らかさや、非常に口溶けの良い食感を有する。しかし、生キャラメルはその柔らかく口溶けの良い食感を付与するために、原料の牛乳や生クリームを増量して調製されるため、通常10℃以下での冷蔵保存を要し、保存期間も30日程度と非常に短い。
これに対して本発明によれば、常温保存可能な砂糖菓子の調製に際して、デキストリン(I)に加え、サイリウムシードガムを併用することにより、当該砂糖菓子に、生キャラメル様の食感を付与することができる。具体的には、グミキャンディは弾力性のある食感を有するが、デキストリン(I)とサイリウムシードガムを配合することにより、柔らかく口溶けの良い食感を有し、付着性も小さい生キャラメル様のグミキャンディを調製することができる。更にグミキャンディは、常温流通が可能なため、生キャラメル様の食感を有しつつも常温流通可能な砂糖菓子を提供することができる。
なおサイリウムシードガムは、Planta種(オオバコの一種、Plantaginaceae)植物の中の、主にPlantagoovata Forskal等の種子から採った天然植物ガムのことである。本発明では既存のサイリウムシードガムをいずれも使用可能である。このような製剤は、商業上入手することができ、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ビストップ[商標]D−2074」を挙げることができる。当該サイリウムシードガムは、それ自体では、グミキャンディに保形性を付与することはできないが、デキストリン(I)と組み合わせて使用することで、保形性を付与することが可能になる。
砂糖菓子中のサイリウムシードガムの添加量としては、0.5〜2.0重量%、好ましくは0.8〜1.5重量%、より好ましくは0.8〜1.0重量%を挙げることができる。
また、砂糖菓子の調製に、デキストリン(I)に加えてカラギナンを用いることにより、例えば、当該砂糖菓子にういろうなどの餅様食感を付与することができる。ういろうは米や蕨、小麦粉などの粉に砂糖を加え、蒸すことにより調製される菓子の一種であり、もっちりとした食感が特徴の菓子である。
ここで用いられるカラギナンは、高糖度で使用できるカラギナンであり、好ましくはイオタカラギナン、またはイオタカラギナンとカッパカラギナンの併用タイプである。商業上入手可能なカラギナン製品としては、例えば、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製の「ゲルリッチ[商標]No.1」、「ゲルリッチ[商標]No.3」、「ゲルリッチ[商標]No.4」などを例示することができる。砂糖菓子中のカラギナンの添加量として、0.5〜4.0重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%、更に好ましくは0.8〜1.2重量%を挙げることができる。
本発明の砂糖菓子は、デキストリン(I)を配合する以外、好ましくはデキストリン(I)とサイリウムシードガムまたはカラギナン等の多糖類を配合する以外は、砂糖菓子の通常の製造方法を用いて調製することが可能である。例えば、グミキャンディであれば、デキストリン(I)と砂糖の粉体混合物、水飴、水をあわせて所定の糖度まで煮詰めた後、酸味料、香料、色素等を加えてスターチモールドに充填し、所定水分量まで乾燥する方法を用いて調製することができる。一方、サイリウムシードガムやカラギナン等の多糖類を併用する場合は、水にサイリウムシードガムやカラギナン等の多糖類を分散し、煮沸溶解した後に、デキストリン(I)と砂糖の粉体混合物、水飴を加えて所定の糖度まで煮詰める。次いで、酸味料、香料、色素等を加えスターチモールドに充填し、所定水分量まで乾燥する方法によって調製することができる。
ソフトキャンディの場合、水と水飴を秤量し、デキストリン(I)と砂糖を粉体混合したものを加え完全に溶解し、植物油脂、乳化剤、水等を加えて煮詰め、所定量まで水分を飛ばす。次いで、ゼラチンを加えて横型ニーダーにて十分に混合乳化し、フォンダンを加えて砂糖結晶を出したものに酸、香料、色素等を加えて冷却する方法によって調製することができる。また、多糖類を併用する場合には、例えばカラギナン、水飴を秤量して分散した後、水を加えてカラギナンを煮沸溶解し、デキストリン(I)と砂糖の粉体混合物を加え完全に溶解する。これに植物油脂、乳化剤、水等を加えて煮詰め所定量まで水分を飛ばした後、横型ニーダーにて十分に混合乳化し、フォンダンを加えて砂糖結晶を出したものに酸、香料、色素等を加えて冷却する方法によって調製することができる。
本発明の砂糖菓子は、前述するように、ブドウ糖やショ糖などの糖類を原料とし、これを水に溶解して煮詰めた溶液を成形(充填)、乾燥もしくは冷却して固化させることにより製造される菓子であれば特に限定されないが、下記(1)および(2)のいずれか少なくとも一方の性質を有する砂糖菓子であることが好ましい。
(1)水分含量が15〜30%である、
(2)可溶性固形分が70〜85%、より好ましくは75〜85%である。
デキストリン(I)は、砂糖菓子に、所望の粘弾性や脂肪様の滑らかな食感を付与することができるため、糖分や油脂などの添加量を低減した場合であっても、低減前と遜色のない食感を有する砂糖菓子を提供することができる。
(II-8)飲料
本発明が対象とする飲料には、牛乳、乳固形分(無脂乳固形分と乳脂肪分の合計)が3%以上の乳飲料、乳酸菌飲料、ミルクコーヒー、およびココアなどの乳含有飲料;果汁含有飲料;野菜汁含有飲料;および清涼飲料水が含まれる。
飲料は水分量が極めて高いことから、飲料中の脂肪分や無脂乳固形分を低減させると、これらの成分によって得られていた濃厚感やボディ感が低減し、薄っぺらい食感や味となり、満足感の得られない飲料となってしまう。かかる現象は、特に乳成分を主成分とする、もしくは乳成分を含有する飲料(例えば、牛乳、乳飲料、乳酸菌飲料、ミルクコーヒーやココアなどの乳含有飲料)において、乳脂肪分や無脂乳固形分を低減させた場合に顕著に見られる。
これに対して、上記飲料の調製に、前述(I)するデキストリンを用いることにより、飲料中の脂肪分が1.5重量%以下、更には0.5重量%未満であっても、所望な濃厚感やボディ感を付与することが可能である。また、デキストリン(I)を用いることにより、牛乳(乳脂肪分3重量%以上)と遜色のない濃厚感や脂肪感を有する低脂肪牛乳(乳脂肪分0.5重量%以上1.5重量%以下)を調製することが可能になる。更に、デキストリン(I)を用いることにより、低脂肪牛乳と遜色ない濃厚感と脂肪感を有する無脂肪牛乳(乳脂肪分0.5重量%未満)を調製することが可能である。
また、デキストリン(I)を用いることにより、乳脂肪や無脂乳固形分を増量しなくても、脂肪感や濃厚感を増強し、また滑らかな口あたりが付与することができ、高級感のあるミルクリッチな食感を有する飲料を調製することができる。
また、苺やバナナ等の果物や野菜のピューレを含有した果汁含有飲料または野菜汁含有飲料の調製に、デキストリン(I)を用いることにより、ピューレの食感や風味を増強(果汁や野菜汁のコクを増強)することができ、濃厚なピューレの食感および風味を有する飲料を提供することができる。従来、濃厚なピューレの食感を付与する方法としては、増粘多糖類などを用いて飲料を増粘させる方法が用いられているが、増粘多糖類を用いると、多糖類特有のぬめりや糊っぽさが発生したり、粘度が生じることによりフレーバーリリースが悪くなるなどの問題があった。これに対して、デキストリン(I)を用いて調製された果汁含有飲料または野菜汁含有飲料は、濃厚なピューレ感が増強されつつも、ぬめりや糊っぽさがなくキレの良い食感を有する点、および良好なフレーバーリリースを有する点で極めて優れている。
飲料中のデキストリンの配合量は、飲料の種類や求められる食感や濃厚感に応じて適宜調整することができるが、通常0.2〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、より好ましくは1〜5重量%を挙げることができる。デキストリンの配合量が0.2重量%より少なくなると濃厚感やピューレ感の増強効果が得られにくくなる場合があり、また配合量が10重量%より多くなると、食感が極端に重くなり飲みにくい飲料となる場合がある。
なお、乳成分を主成分とするか、または乳成分を含有する飲料を調製する場合に、デキストリン(I)を0.2〜2重量%、好ましくは0.3〜1重量%添加すると、乳脂肪分を1重量%低減しても、低減する前とほぼ同程度の脂肪感、濃厚感および滑らかな食感を得ることができる。すなわち、デキストリン(I)0.2〜2重量%、好ましくは0.3〜1重量%の配合は、乳脂肪分の1重量%の配合に代替することができる。
本発明の飲料は、前述(I)するデキストリンに加え、発酵セルロースを用いて調製することもでき、かかる発酵セルロースの併用により飲料の安定性を高めることができる。より具体的には、飲料の処方や保存温度、形態によっても異なるが、デキストリン(I)の経時的な沈降傾向を、発酵セルロースを併用することにより抑制することができる。また発酵セルロースを併用することにより、デキストリン(I)単独使用よりも更に飲料に濃厚感を付与することが可能となる。
飲料に対する発酵セルロースの配合量としては、0.005〜0.4重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%を挙げることができる。また、デキストリン(I)に対する発酵セルロースの配合比は、飲料に配合されるデキストリン(I)100重量部に対し、0.1〜100重量部、好ましくは1〜10重量部を挙げることができる。
飲料へのデキストリン(I)の添加方法は、最終飲料に当該デキストリンが含有されていれば特に限定されず、各種方法を用いることが可能である。例えば、デキストリン(I)を溶解した溶液を飲料中に添加する方法、粉末状のデキストリン(I)を飲料中に乳化剤や増粘剤などと共に添加し、溶解する方法などが挙げられる。
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例を用いて具体的に説明する。但し、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは「重量部」、「%」は「重量%」を意味するものとする。文中「*」印の製品は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品であること、文中「‡」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
調製例1〜3 デキストリンの調製
馬鈴薯澱粉を70℃の水に投入し撹拌して懸濁液とした。これに耐熱性α−アミラーゼを添加して混合後、70〜100℃で反応させ、青価(680nmの吸光度)を指標として分解程度を評価した。
なお青価は次の方法に従って求めた。
(1)濃度が1w/v%となるようにデキストリン含有水溶液を調製して、これを25℃に冷却する。
(2)上記デキストリン1w/v%水溶液(25℃)10mlを、ヨウ素20mgおよびヨウ化カリウム200mgを含む水溶液10mlと混合して、蒸留水で100mlとなるように調整する。
(3)上記調製液を遮光した状態で、25℃において30分間振盪した後、25℃条件下で反応液の680nmにおける吸光度を、分光光度計を用いて測定する。
このとき、かかる青価(680nmの吸光度)が所望の0.4〜1.2の範囲、好ましくは0.5〜0.9の範囲になったときに塩酸を添加し、これを90℃まで加熱することにより酵素(耐熱性α−アミラーゼ)を失活させて上記反応を停止した。
斯くして、青価が0.66、0.60、および0.83であるデキストリン溶液を各々調製した。これらの各デキストリン溶液は、上記酵素反応後、活性炭およびパーライトを用いて脱色ろ過し、スプレードライを行って粉末化して、以下の実験に使用した。以下、青価が0.66、0.60および0.83であるデキストリン(粉末)を、各々調製例1〜3のデキストリンという。
実験例1 各種デキストリンの性質
調製例1〜3で調製したデキストリンについて、下記の性質(a)〜(d)を測定した。また比較のため、既存のデキストリン〔既存品1:「PASELLI SA2」(AVEBE社製)、既存品2:「インスタント エヌオイルII」(日本エヌエスシー(株)製)、既存品3:パインデックス#100」(松谷化学工業(株)製)、既存品4:「C☆DELIGHT MD01970」((株)カーギルジャパン製)、既存品5:「デキストリンNSD-C」((株)ニッシ製)、既存品6:「パインデックス#3」(松谷化学工業(株)製)〕についても同様にして、性質(a)〜(d)を測定した。
(a)青価(Blue Value):
下記の方法で、反応液の吸光度(680nm)を測定する
(1)80℃の蒸留水を用いてデキストリン1w/v%水溶液を調製し、これを25℃まで冷却する。
(2)上記水溶液10mlに、20mgのヨウ素と200mgのヨウ化カリウムを含む水溶液10ml(0.2w/v%のヨウ素、2w/v%のヨウ化カリウム)を添加して、蒸留水を加えて100mlに調整する。
(3)上記水溶液を遮光条件下で25℃において30分間振盪した後、25℃で波長680nmにおける吸光度を測定する。
(b)ゼリー強度(N/cm 2 ):
80℃の蒸留水でデキストリン30重量%水溶液を調製し、これを5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)を、下記の方法に従って測定する。
5℃条件下で、直径3mmのプランジャーを用いて、プランジャー速度60mm/minで荷重をかけ、測定対象物が破断した時の荷重(N/cm2)を測定する。
(c)粘度(mPa・s):
25℃の蒸留水でデキストリン30重量%水溶液を調製し、これを25℃で5分間静置した時の粘度(mPa・s)を、25℃条件下で、BL型回転粘度計(ローターNo.1〜4)を用いて回転数12rpmで1分間測定することによって測定する。なお、この条件で測定できる粘度範囲は、ローターNo.1:0〜500mPa・s、ローターNo.2:0〜2500mPa・s、ローターNo.3:0〜10000mPa・s、ローターNo.4:0〜50000mPa・sである。
(d)ゼリー強度の比(A/B)
下記の条件で測定したゼリー強度AとBとの比(A/B)を求める。なお、ゼリー強度は上記(b)に記載する方法に従って測定する。
A:80℃の蒸留水でデキストリン30重量%水溶液を調製し、これを5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)を測定する
B:25℃の蒸留水でデキストリン30重量%水溶液を調製し、これを5℃で24時間静置した時のゼリー強度(N/cm2)を測定する。
結果を表2に示す。
実験例2 脂肪組織代替物の調製(1)
表2に示す各種のデキストリン(調製例1、既存品1〜5)を用いて脂肪組織代替物が調製できるか検討した。
詳細には、表2に示すデキストリン(調製例1、既存品1〜5)を、それぞれ70℃の水に添加し、攪拌溶解して35%のデキストリン含有水溶液を調製し、次いで、調製したデキストリン含有水溶液を容器に入れて、冷蔵庫(5℃)にて24時間冷却した。斯くして得られた物について、脂肪組織代替物としての適性を外観、性状、ミンチ加工性、および味や臭いの点から評価した。
調製例1のデキストリンを使用して調製した物(実施例2-1)は、脂肪組織(脂身)様の白色の外見を有し、室温(25℃)でも液状または半液状とならずに適度な固さを有しており、またミンチなど、機械を用いて加工した際の作業性にも優れていた。また、デキストリン特有の澱粉臭や不快な味もなく、食用の脂肪組織代替物として適していた。
一方、既存品3および5のデキストリンを使用して調製した物(比較例2-3、比較例2-5)は、いずれも1℃まで冷却しても液状であり、脂肪組織(脂身)の代替物とすることができなかった。また、既存品1、2および4のデキストリンを使用して調製した脂肪組織代替物(比較例2-1、比較例2-2及び比較例2-4)は、いずれも、室温(25℃)で固形状を有しているものの、(i)粘性が高いため調製時の作業性が悪い、(ii)ざらつきがあって、滑らかな食感とならない、(iii)外観がうす茶色であるため、脂肪組織(脂身)様の外観にならない、(iv)機械的作業によってミンチをした場合に形状が崩れてぼろぼろになるなど、脂肪組織代替物として適していなかった。また、既存品1〜3のデキストリンを使用して調製した物は、澱粉特有の臭いが強く食用として適したものではなかった。
実験例3 脂肪組織代替物の調製(2)
調製例1または既存品1〜5のデキストリンにカラギナンを併用して、脂肪組織代替物が調製できるか検討した。詳細には、まず、デキストリン33部とカラギナン1.7部を粉体混合し、全量が100部となるように50℃の水に添加し、10分間攪拌してデキストリン及びカラギナンを含有する水溶液を調製した。そして、調製した水溶液を容器に入れて、冷蔵庫(5℃)にて24時間冷却した(実施例3-1、比較例3-1〜3-5)。また、比較対照として、デキストリンを使用せず、その代わりにブドウ糖を使用(全固形分の調整)し、それ以外は上記と同様にして、カラギナン含有水溶液を調製し、冷蔵庫(5℃)にて24時間冷却した(比較例3-0、デキストリン未使用)。
なお、上記カラギナンとして、下記の(1)〜(3)の性質を満たすカラギナン(ゲルリッチ‡No.3*)を用いた:
(1)50℃以下の水に溶解する、
(2)1.5重量%水溶液が25℃条件下でゲル化しない、
(3)カルシウムイオンを0より多く0.1%以下の割合で含有する。
上記により得られた物(調製物)について、脂肪組織代替物としての適性を、(i)脂肪感・濃厚感、(ii)ミンチ加工性、(iii)風味、および(iv)総合評価を評価した。なお、(i)脂肪感・濃厚感、および(ii)ミンチの作業性は下記の基準に従って評価した。また、総合評価は、(i)〜(iii)から総合的に判断して、全調製物のうち、脂肪組織代替物として最も適しているものを10(良)、最も適していないものを1(悪)として、評価した。
(1) 脂肪感・濃厚感
各調製物を食した際に、全調製物のうち、脂身を使用した場合の食感に最も近いものを10(良)、脂身を使用した場合の食感との違いが最も大きいものを1(悪)として、10段階で評価する。
(2)ミンチ加工性
各調製物をミンチに加工した際、全調製物のうち、最も均一にきれいな粒状に加工できたものを10(良)、ボロボロと崩れたり装置への付着が多く、最も不均一になったものを1(悪)として、10段階で評価する。
結果を表3に示す。
上記に示すように、調製例1のデキストリンに、カラギナンを併用して調製した物(実施例3-1)は、白色で脂肪組織(脂身)様の外観を有すると共に、室温(25℃)でも液状または半液状とならずに適度な固さを有しており、またミンチなど、機械を用いて加工した際の作業性にも優れていた。また、デキストリン特有の澱粉臭もなく、食用の脂肪組織代替物として適していた。
実験例4 脂肪が代替された粗挽きソーセージ
豚脂に代えて実験例3で調製された脂肪組織代替物(実施例3-1)を用いて、粗挽きソーセージを調製した。具体的には、表4に示す処方に従って、脂肪組織代替物(実施例3-1)と豚肉に食塩、重合リン酸塩、亜硝酸ナトリウム、およびL−アスコルビン酸ナトリウムを加えて混合し、一晩冷蔵庫下(5℃)で静置した。次にこの混合物に氷水、カゼインナトリウム、香辛料、砂糖およびソルビン酸カリウムを加えてミキシングした後、得られた調製物を、常法に従って羊の腸皮に充填し、加熱することにより粗挽きソーセージを調製した(実施例4-1)。また比較のため、上記脂肪組織代替物(実施例3-1)10kgに代えて、豚脂10kgを用いて同様にして粗挽きソーセージを調製した(対照例)。
調製した粗挽きソーセージ(実施例4-1、対照例)を、80℃のお湯で5分間ゆでた後に食した。実施例4-1の粗挽きソーセージを食べたところ、口の中で脂肪組織代替物が肉汁とともに溶け出し、豚脂を用いて調製した通常の粗挽きソーセージ(対照例)と遜色なく、粗挽きソーセージ特有の脂身の濃厚感およびジューシー感を有していることが確認された。このことからも、実施例3-1の調製物が、脂肪組織代替物として適していることが確認された。
実験例5 脂肪が代替されたコーン味チキンソーセージの調製
(1)スイートコーン味脂肪組織代替物(実施例5-1)の調製
表5に示す処方に従ってスイートコーン味脂肪組織代替物(実施例5-1)を調製した。詳細には、調製例1のデキストリン、およびカラギナン(ゲルリッチ‡No.3*)の混合物を水に加え、攪拌溶解した後に、豆乳パウダー、スーパースイートコーンパウダー(クノールトレーディング(株)製)、スイートコーンフレーバー(香料)、および色素を加えて攪拌しながら溶解した。得られた水溶液を容器に入れて、冷蔵庫(5℃)で冷却し、スイートコーン味の脂肪組織代替物(実施例5-1)を得た。
(2)脂肪が代替されたコーン味チキンソーセージ(実施例5-2)の調製
上記で得られたスイートコーン味脂肪組織代替物(実施例5-1)を用いて表6の処方に従ってコーン味チキンソーセージ(実施例5-2)を調製した。詳細には、鶏ムネ肉、氷水、食塩、重合リン酸塩、亜硝酸ナトリウム、L−アスコルビン酸ナトリウム、砂糖、および香辛料を順次加え、カッティングし、次いで(1)で調製したスイートコーン味脂肪組織代替物を加え、さらに軽くカッティングした。これに表6記載の処方からなるホイップ組成物を加え、次いで軽くカッティングし、練り上げた。これを常法に従って羊腸に充填し、加熱して、コーン味チキンソーセージを調製した。なお、ホイップ組成物は、水に乳清タンパク質とカラギナンの混合物を加え、ハンドミキサーにてホイップしたものに、加工澱粉を加え、再度ホイップすることによって調製した。
比較のため、上記スイートコーン味脂肪組織代替物(実施例5-1)15kgに代えて、下記処方からなる組成物を常温で混合して調製した脂肪加工品15kgを用いて同様にしてコーン味チキンソーセージを調製した(対照例)。
<脂肪加工品(kg)処方>
豚脂(5mmミンチ) 94.65(%)
豆乳パウダー 2.00
スーパースイートコーンパウダー 3.00
スイートコーンフレーバー 0.30
色素 0.05
合 計 100.00 %。
調製したコーン味チキンソーセージ(実施例5-2)をボイルして食べたところ、口の中で脂肪組織代替物(実施例5-1)が肉汁とともに溶け出し、豚脂を用いて調製したコーン味チキンソーセージ(対照例)と遜色なく、脂肪の濃厚感やジューシー感を有したコーン味チキンソーセージであることが確認された。更に、脂肪組織代替物として、実施例5-1の脂肪組織代替物のように、スイートコーン味を予めつけておいたものを用いることで、コーン味の調味料をソーセージ中に単に混合した場合と比較して、コーンの味が濃厚に付与されたソーセージが調製できることが確認できた。
実験例6 脂肪が代替されたハンバーグ
下記処方に従って脂肪が代替されたハンバーグを調製した。詳細には、水を攪拌しながらデキストリン(調製例3)、カラギナン及びグァーガムを徐々に加え、70℃で10分間撹拌溶解した。容器に充填後、冷蔵庫で24時間白く固化するまで放置して脂肪組織代替物を調製した(実施例6-1)。
<脂肪組織代替物処方>
デキストリン(調製例3) 37.0 (kg)
カラギナン 1.5
グァーガム 1.2
水 残 部
合 計 100.0 kg。
次いで得られた脂肪組織代替物(実施例6-1)を用いてハンバーグを調製した。詳細には、下記処方の材料を混合し、90gに成形後、ホットプレートにて180℃で片面1分ずつ焼成した。次いで中心温度75℃までスチームクックし、脂肪が代替されたハンバーグを調製した(実施例6-2)。一方、比較対照のために脂肪組織代替物の代わりに豚脂を用いてハンバーグを調製した(対照例)。
上記処方により調製されたハンバーグ(実施例6-2)は、対照例のハンバーグと比較してカロリーがおよそ40%も低いものの、そのジューシーな食感は対照例のハンバーグと比較して大差がなかった。このことから、脂肪組織代替物(実施例6-1)を用いることにより、食味や食感を損ねることなく低脂肪ハンバーグが調製できることが確認できた。
実験例7 油脂を含まない乳化様組成物の調製(1)
油脂を用いずに、調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、マヨネーズなどの乳化食品と同様の性状や食感を有する乳化様組成物が調製できるかどうか検討した。
詳細には、各デキストリン(調製例1または既存品1〜5)15%を80℃の水に添加し、撹拌してデキストリン含有水溶液を調製し、全量補正後調製した水溶液を容器に入れ、冷蔵庫(5℃)にて3日間冷却することにより、白濁したペースト状の組成物を調製した(実施例7-1、比較例7-1〜7-5)。調製した組成物について、外観及び食感を評価し、また組成物中に生成したデキストリンの結晶微粒子の粒度分布を測定し、そこから粒子径(メディアン径、平均粒子径)及び標準偏差を求めた。結果を表8に示す。
なお、粒度分布はレーザー回折式粒度分布測定装置(島津(株)製SALD−2100使用、測定吸光度範囲0.01〜0.2、屈折率1.70-0.20i)を用いて測定した。また、比較対照のため、市販のマヨネーズ(キユーピー社製)(対照例)の油脂の粒子径及び粒度分布を測定した。
調製例1のデキストリンを用いて調製した組成物(実施例7-1)は、油脂を含有しないにも関わらず乳化食品特有の白濁感を有し、その食感も滑らかであった。また、その結晶粒子もメジアン径、平均粒子径共に2〜3μm前後であった。これは、油脂を含み滑らかな食感を呈するマヨネーズの乳化粒子に近似した粒径であり、係る粒子径の結晶粒子が加工食品組成物に滑らかな食感と油脂感を付与しているものと考えられる。更には、調製例1のデキストリンを用いて調製した実施例7-1の組成物は、その結晶粒子の標準偏差も0.30と小さかった。このことから、調製例1のデキストリンを用いることにより、油脂を用いなくても乳化食品特有の性状と食感を有する乳化様組成物が調製できることが確認できた。
一方、既存品1及び2のデキストリンを用いて調製した組成物は、メジアン径、平均粒子径共に200〜400μm程度と大きく、ざらつきのある組成物(比較例7-1、比較例7-2)となってしまった。更には、その標準偏差も0.47及び0.63と大きかった。既存品4のデキストリンを用いて調製した組成物(比較例7-4)は、メジアン径や平均粒子径は3〜4μm程度と小さかったものの、その標準偏差は0.70と結晶粒子の分布が広く、ざらつきを生じさせる大きい結晶粒子や、一方で油脂感を付与できないほどの小さい結晶粒子が混在しており、十分な滑らかさや油脂感を得ることはできなかった。また、既存品3及び5のデキストリンを用いた組成物(比較例7-3、比較例7-5)は、3日間冷却後も組成物自体が半透明のままで、デキストリンの粒子径を測定すること自体できなかった。
実験例8 油脂を含まない乳化様組成物の調製(2)
油脂を用いず、調製例1または既存品1〜3のデキストリンに、キサンタンガムを併用することで、乳化食品と同様の性状や食感を有する乳化様組成物が調製できるか検討した。詳細には、まず各デキストリン(調製例1,既存品1〜3)15%とキサンタンガム(サンエース‡NXG−S*)0.1%を80℃の水に添加し、攪拌してデキストリンとキサンタンガムを含有する水溶液を調製した。そして、調製した水溶液を容器に入れて、冷蔵庫(5℃)にて冷却することにより白濁した液状の組成物を調製した。また比較対照のため、乳化剤0.2%、キサンタンガム(サンエース‡NXG−S*)0.4%および水64.4%を混合した後、攪拌しながら少量ずつサラダ油35%を添加したものをコロイドミルにて均質化して白濁した液状の乳化組成物を調製した(対照例、デキストリン未使用)。
これらの、油脂を用いず調製例1または既存品1〜3のデキストリンを用いて調製した組成物(実施例8-1、比較例8-1〜8-3)、およびデキストリンを用いず油脂を用いて調製した乳化組成物(対照例)について、(1)滑らかさ、(2)濃厚感、油脂感、(3)白濁感、(4)つや感、および(5)食味を評価した。なお、これらの評価は、比較対照品の評価を10として、評価の高い順に10、9、8・・・1の10段階で評価を行った。
結果を表9に示す。
この結果、調製例1のデキストリンを用いて調製した組成物(実施例8-1)は、乳化物特有の滑らかさ、濃厚感や油脂感、白濁感、およびつや感を、比較対照品の乳化組成物と遜色なく備えており、油脂を含まないにもかかわらず、乳化組成物と類似した性状を備えていた(乳化様組成物)。更に味や匂いについても、実施例8-1の組成物は、デキストリン特有の澱粉臭がなく良好であり、食用の乳化様組成物として使用できることが確認された。これに対して、既存品3のデキストリンを使用して調製した組成物は透明であり、乳化物特有の白濁感を有していなかった。また、既存品1〜3のデキストリンを使用して調製した組成物は、乳化組成物特有の濃厚感やつや感がなく、その他、食感がざらついている(比較例8-1〜8-3)、デキストリン特有の澱粉臭が強い(比較例8-1)などといった問題があり、このことから、既存品のデキストリンでは乳化組成物と類似した性状を備えた組成物を調製することはできないことが確認された。
実験例9 油脂を含まない非乳化マヨネーズ様調味料の調製(1)
油脂を用いず、調製例1〜3のデキストリンを用いてノンオイル調味料を調製した(実施例9-1〜9-5)。詳細には、表10に示す各成分を80℃の水に添加し、10分間加熱溶解した。次いで、これに、酢(酸度10%の醸造酢換算で)3.5%、レモンストレート果汁2%、食塩2.5%、およびL−グルタミン酸ナトリウム0.3%を加えて2分間攪拌した後、全量を100%となるように水を配合して容量を調整した。そして調製した水溶液を容器にホットパック充填し、室温まで冷却した後、冷蔵庫(5℃)にて冷却した。
一方、比較のために、調製例1のデキストリンの代わりに、既存品3のデキストリン(パインデックス♯100(松谷化学工業(株)製))をそれぞれ使用して、他は同様にして調味料を調製した(比較例9-3)。
調製例1〜3のデキストリンを用いて調製した調味料は、油脂や卵黄を含有しないにもかかわらず、白濁感、滑らかさ、油脂感、そして食品に塗った際の付着性を全て兼ね備えており、性状、風味および食感がマヨネーズに類似した調味料(マヨネーズ様調味料)であった(実施例9-1〜9-5)。なかでも、調製例1のデキストリンに加えて、キサンタンガムおよびガティガムを用いて調製した調味料(実施例9-4)は、更に滑らかな食感を有していた。また、調製例1のデキストリン、キサンタンガムおよびガティガムに、さらに乳化剤(コハク酸モノグリセリド)を用いて調製した調味料(実施例9-5)は、長期間の保存によっても固化や粘度の上昇が見られず、長期間にわたって滑らかな食感を有する保存安定性に優れたマヨネーズ類似の調味料(マヨネーズ様調味料)であった。この結果は、調製例1のデキストリンを用いることにより、油脂や卵黄を使用しないでも、マヨネーズと外観、風味および食感が類似したマヨネーズ様調味料が調製できることを意味する。すなわち本発明によれば、卵などのアレルギー源を含まないアレルギーフリーで、しかも低カロリーで低脂肪のマヨネーズ様調味料を提供することができる。
一方、調製例1のデキストリンに代えて既存品3のデキストリンを用いた場合には、マヨネーズ特有の白濁した溶液を得ることができず、マヨネーズに類似した調味料を調製することができなかった(比較例9-3)。
実験例10 油脂を含まない非乳化マヨネーズ様調味料の調製(2)
油脂を用いず、調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従ってノンオイル調味料を調製した(実施例10-1、比較例10-1〜10-5)。また比較のため、デキストリン14%に代えてブドウ糖(全固形分の調整)を14%用いて同様にして調味料を調製した(比較例10-0:デキストリン未使用)。
<ノンオイル調味料処方>
デキストリン 14.0(%)
砂糖 7.0
リンゴ酢 7.0
醸造酢 4.5
レモン果汁 2.0
食塩 4.0
ガディガム 0.3
キサンタンガム 0.1
L−グルタミン酸ナトリウム 0.2
カロチン色素 0.1
水 残 部
合 計 100.0 %。
詳細には、水を攪拌しながら、砂糖、キサンタンガム(サンエース‡NXG−S*)、ガディガム(ガティガムSD*)およびデキストリンを添加し、これを80℃で10分間加熱しながら攪拌し溶解した。次いで、これに、リンゴ酢、醸造酢、レモン果汁、食塩、およびL−グルタミン酸ナトリウムおよびカロチン色素を添加し、水で全量が100%になるように調整した。そして調製した溶液を容器にホットパック充填し、室温まで冷却した後、冷蔵庫(5℃)にて冷却した。
得られた各調味料について、(1)濃厚感・油脂感、(2)外観、(3)食感、(4)風味、および(5)総合評価を評価した。なお、(1)濃厚感・油脂感と(5)総合評価は、それぞれ10段階で評価した。具体的には、(1)濃厚感・油脂感については、得られた各調味料のうち、最も濃厚なペーストで濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、また(5)総合評価については、得られた各調味料のうち、総合的に判断して、最もマヨネーズに類似したものを10(良)、最もマヨネーズに類似していないものを1(悪)として、10段階評価を行った。結果を表11に示す。
また外観を図1に示す。図1中、(1)は調製例1のデキストリン、(3)は既存品1のデキストリン、(4)は既存品2のデキストリン、(5)は既存品3のデキストリン、(6)は既存品4のデキストリン、(7)は既存品5のデキストリンを、それぞれ使用して調製したノンオイル調味料(実施例10-1、比較例10-1〜10-5)を、また(2)はデキストリン未使用で調製したノンオイル調味料(比較例10-0)を示す。
これからわかるように、調製例1のデキストリンを用いて調製したノンオイル調味料(実施例10-1)は、均一に白濁してマヨネーズと類似した外観を有するだけでなく、滑らかなマヨネーズに類似した食感を有しており、性状、外観および食感の面からマヨネーズに類似した調味料(マヨネーズ様調味料)であった。一方、その他のデキストリン(既存品1〜5)を用いた場合は、外観が白濁しないか、凝集および分離し、少なくとも外観においてマヨネーズとは相違しており、マヨネーズに類似した調味料を調製することはできなかった(比較例10-1〜10-5)。
実験例11 油脂を含まない乳化様ドレッシングの調製(1)
調製例1のデキストリンを用いてノンオイルドレッシングを調製した(実施例11-1)。詳細には、まず調製例1のデキストリン10%、キサンタンガム(サンエース‡NXG−S*)0.12%、および砂糖3%を80℃の水に添加し、10分間加熱溶解した。次に、これに、酢(酸度10%の醸造酢換算で)10%、および食塩2.5%を加え2分間攪拌した後、全量が100%になるように水を添加して調整した。そして調製した溶液を容器にホットパック充填し、室温まで冷却した後、冷蔵庫(5℃)にて3日間冷却した。
得られたドレッシングは、油脂を含んでいないにもかかわらず、乳化タイプの油脂含有ドレッシングと、濃厚感・油脂感、白濁感、およびつや感においていずれも類似したドレッシング(乳化様ドレッシング)であった。
実験例12 油脂を含まない乳化様ドレッシングの調製(2)
調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従ってノンオイルドレッシングを調製した(実施例12-1、比較例12-1〜12-5)。また比較のため、デキストリン8%に代えてブドウ糖8%を用いて(全固形分の調整)、同様にしてノンオイルドレッシングを調製した(比較例12-0:デキストリン未使用)。
<ノンオイルドレッシング処方>
デキストリン 8.0(%)
砂糖 6.0
醸造酢 10.0
食塩 3.0
キサンタンガム 0.1
L−グルタミン酸ナトリウム 0.5
サンアーティスト‡PX* 0.8
香料 0.1
水 残 部
合 計 100.0 %。
詳細には、水を攪拌しながら、砂糖、サンアーティスト‡PX*(発酵セルロース含有製剤)、キサンタンガム(サンエース‡NXG−S*)およびデキストリン(調製例1、既存品1〜5)を添加し、これを室温で10分間攪拌しながら溶解した。次いで、これに、醸造酢、食塩、L−グルタミン酸ナトリウムおよび香料を添加し、水で全量が100%になるように調整した。そして調製した溶液を90℃まで加熱した後、容器にホットパック充填し、室温まで冷却した後、冷蔵庫(5℃)にて冷却した。
得られた各ドレッシングについて、(1)濃厚感・油脂感、(2)外観、(3)食感、(4)風味、および(5)総合評価について評価した。なお、(1)濃厚感・油脂感と(5)総合評価は、それぞれ10段階で評価した。具体的には、(1)濃厚感・油脂感については、得られた各ドレッシングのうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、また(5)総合評価については、得られた各ドレッシングのうち、総合的に判断して、本物の乳化タイプドレッシングに最も類似しているものを10(良)、本物の乳化タイプドレッシングに最も類似していないものを1(悪)として、10段階評価を行った。
結果を表12に示す。
実験例13 油脂を含まないファットスプレッド様食品の調製(1)
油脂を使用せず、調製例1のデキストリンを用いてファットスプレッド様食品を調製した(実施例13-1)。詳細には、まず調製例1のデキストリン20%、グァーガム0.5%、および食塩4%を80℃の水に添加し、10分間加熱溶解して、全量が100%になるように水を添加して調整した。そして調製した水溶液を容器にホットパック充填し、室温まで冷却後、冷蔵庫(5℃)にて3日間冷却した。斯くして調製された食品(実施例13-1)は、油脂を含有しない食品であるにも拘わらず、濃厚感・油脂感、白濁感、およびつや感において、油脂を50%の割合で含有するファットスプレッドに類似したファットスプレッド様食品であった。
実験例14 油脂を含まないファットスプレッド様食品の調製(2)
油脂を使用せず、調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従って食品を調製した(実施例14-1、比較例14-1〜14-5)。また比較のため、デキストリン20%に代えてブドウ糖を20%用いて(全固形分の調整)、同様にして食品を調製した(比較例14-0、デキストリン未使用)。
<ファットスプレッド様食品処方>
デキストリン 20.0(%)
食塩 4.0
グァーガム 0.5
カロチン色素 0.1
香料 0.1
水 残 部
合 計 100.0 %。
詳細には、水を攪拌しながら、砂糖、グァーガムおよび各デキストリン(調製例1、既存品1〜5)を添加し、これを80℃で10分間攪拌しながら溶解した。次いで、これに、食塩、カロチン色素および香料を添加し、水で全量が100%になるように調整した。そして調製した溶液を90℃まで加熱後、容器にホットパック充填し、室温まで冷却した。
得られた各食品について、(1)濃厚感・油脂感、(2)外観、(3)食感、(4)風味、および(5)総合評価について評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各食品のうち、最も濃厚なペーストで濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、また(5)総合評価については、得られた各食品のうち、総合的に判断して、最もファットスプレッドに類似したものを10(良)、最もファットスプレッドに類似していないものを1(悪)として、10段階評価を行った。
結果を表13に示す。
調製例1のデキストリンを用いて調製されたファットスプレッド(実施例14-1)は、油脂を含有しない食品であるにも拘わらず、濃厚感・油脂感、白濁感、およびつや感において、油脂を含有する乳化食品であるファットスプレッドに類似していた(ファットスプレッド様食品)。一方、既存品のデキストリン(既存品1〜5)を用いて調製された食品(比較例14-1〜14-5)は、ファットスプレッドの保形性すら再現することができず(比較例14-3、比較例14-5)、また調製例1のデキストリンを用いた場合に比べて、油脂感を付与することはできなかった(比較例14-1〜14-5)。更には、既存品のデキストリン(既存品1〜5)を用いて調製された食品は糊っぽい、口溶けが悪いなど重い食感の食品であった。
実験例15 油脂を含まないファットスプレッド様食品の調製(3)
油脂を使用せず、調製例3のデキストリンを用いてファットスプレッド様食品を調製した。詳細には、水にデキストリン、砂糖を加え、80℃で10分間加熱撹拌溶解した。次いで食塩、乳清タンパク質、キサンタンガム、グァーガム、香料、色素を加え、撹拌混合した。50%クエン酸水溶液を加えてpHを3.7に調整し、容器に充填後、85℃で30分ボイル殺菌した。72時間冷蔵庫にて冷却して油脂を含まないファットスプレッド様食品(クリームチーズ風味ファットスプレッド様食品)を調製した(実施例15-1)。
<ファットスプレッド様食品処方>
デキストリン(調製例3) 18.0 (kg)
砂糖 7.5
食塩 0.5
乳清タンパク質 0.7
キサンタンガム 0.06
グァーガム 0.04
香料 0.2
色素 0.1
50%クエン酸水溶液 適 量
水 残 部
合 計 100.0kg。
得られたクリームチーズ風味ファットスプレッド様食品(実施例15-1)は、油脂を配合しないにも関わらず、脂肪感および濃厚感に優れ、更にクラッカーなどを塗る際にも塗り伸ばしやすい物性を有していた。
実験例16 油脂を低含量含む低脂肪マヨネーズ様調味料
調製例1のデキストリンを用いて、下記処方に従って低脂肪マヨネーズ様調味料を調製した(実施例16-1〜16-4)。また比較のため、デキストリンを用いないで、下記の処方に従って同様にして調味料を調製した(比較例16-1〜16-7)(表14参照)。また、比較のため、調製例1のデキストリンに代えて、実験例1に記載する既存品1(PASELLI SA2、AVEBE社製)または既存品3(パインデックス#100、松谷化学工業(株)製)のデキストリンを用いて同様にして調味料を調製した(比較例16-8〜16-16)(表15参照)。
<調製方法>
1)水に、デキストリンおよび砂糖を添加し、80℃で10分間攪拌して溶解する。
2)これを25℃まで冷却し、卵黄を混合した後、食塩、砂糖、L-グルタミン酸ナトリウム、および醸造酢を添加して混合する。
3)これに植物油脂を少量ずつ加えて撹拌する。
4)これをコロイドミルにて乳化する。
5)上記で調製した乳化物を3日間、5℃で冷蔵する。
得られた各乳化調味料について、(1)濃厚感・油脂感、(2)風味、(3)造形性、および(4)粘度を評価した。なお、(1) 濃厚感・油脂感および(3)造形性は、油脂含量が75%の比較例1の調味料(通常のマヨネーズ)を基準(10)として、10段階で評価した。(4)粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて25℃条件下で、5rpmで1分間測定した。結果を表16に示す。
実験例17 油脂を低含量含む低脂肪ドレッシングの調製
調製例3のデキストリンを用いて低脂肪ドレッシングを調製した。詳細には水に砂糖、デキストリン、ガティガム、タマリンドシードガム、キサンタンガムを添加して、常温で10分間撹拌した。食塩、醸造酢、L−グルタミン酸Naを加えて5分間撹拌した。更に卵黄を加えて1分間撹拌後、ホモミキサー(9000rpm)で撹拌しながら、油をゆっくり加えて5分間撹拌した。脱気後、容器に充填して低脂肪ドレッシングを調製した(実施例17-1)。一方、比較対照のため油を35%含有したドレッシング(対照例)を調製した。
実施例17-1のドレッシングは、油を35%含むドレッシング(対照例)よりも脂肪分が15%少ない低脂肪ドレッシングであるにも係わらず、対照例と同等の脂肪感およびボディ感を有していた。
実験例18 チーズ様食品の調製(1)
調製例1または既存品1〜3のデキストリンを用いて、表18の処方に従って食品を調製した。詳細には、表18の処方のうち、脱脂粉乳を水に溶解した脱脂粉乳含有水溶液に、各デキストリン(調製例1、既存品1〜3)を添加して溶解した。次いで、これにチーズパウダー、食塩、色素、および香料を添加し混合して容器に充填し、85℃で1時間殺菌したのち、冷却して食品を調製した。
調製例1のデキストリンを用いて調製した食品(実施例18-1)は、脂肪分を含有していないにも関わらず、チーズ特有のボディ感や油脂感、および口あたりを有し、またチーズ特有の風味を備えており、チーズに類似した食品(チーズ様食品)であった。これに対して、既存のデキストリン(既存品1〜3)を用いて調製した食品(比較例18-1〜18-3)は、デキストリン特有の澱粉臭が強くてチーズの風味が著しく損なわれていたり、食感がざらついてチーズに類似した食感を有していないといった不具合(比較例18-1)、デキストリンの粘度が高くチーズに類似した食感を有する食品を調製することができないといった不具合(比較例18-2)、ペースト状となりチーズ特有の保型性を備えていない、およびチーズ特有の油脂感や口あたりを有していないといった不具合(比較例18-3)があり、チーズに類似した食品にはならなかった。
実験例19 チーズ様食品の調製(2)
下記表19に従って食品を調製した。詳細には、表19の処方のうち、脱脂粉乳を水に溶解して調製した脱脂粉乳含有水溶液に、調製例1のデキストリン、および乳清タンパク質(ミルプロ‡NO.142*)を添加して溶解した。これに、チーズパウダー、食塩、色素、香料、スクラロース含有製剤、および調味料を添加して混合し、容器に充填した後、85℃で1時間殺菌したのち、冷却し、5℃にて72時間静置して食品を調製した(実施例19-1)。
調製された食品(実施例19-1)は、脂肪を含有せず、またチーズ含有量が5%と少ないにも関わらず、チーズ特有のボディ感および良好な口あたりを有する、チーズに類似した食品(チーズ様食品)であった。また当該チーズ様食品は、常温では良好なチーズ特有の保型性を有しつつも、オーブントースターにて3分間加熱を行うことによりとろけて、チーズ特有の溶融感や糸引き感を兼ね備えていた。
実験例20 チーズ様食品の調製(3)
表20に従って食品を調製した。詳細には、表20の処方のうち、水に、調製例1のデキストリン、メチルセルロース、キサンタンガム、およびカラギナンを添加し、溶解した。更にこれに、食塩、色素、香料、スクラロース含有製剤、調味料を添加、混合して容器に充填した後、85℃で1時間殺菌したのち、冷却して食品を調製した(実施例20-1)。
調製された食品(実施例20-1)は、チーズ及び脂肪を含有しないにも関わらず、チーズ特有のボディ感および良好な口あたり、更には良好なチーズの風味を有するソフトタイプのチーズ様食品であった。更に、調製したチーズ様食品を、3ヶ月冷蔵で保存した後、食したところ、チーズ特有の風味や滑らかな口あたりを維持していた。
実験例21 チーズ様食品の調製(4)
調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方および方法に従って食品(実施例21-1、比較例21-1〜21-5)を調製し、(1)濃厚感・油脂感、(2)外観、(3)食感、および(4)風味の点から、チーズに類似しているかどうかを検討した。また比較のため、デキストリン30%に代えて、ブドウ糖を30%用いて(全固形分の調整)、同様にして食品を調製した(比較例21-0、デキストリン未使用)。
<チーズ様食品(イミテーションチーズ)処方>
デキストリン 30.0(%)
脱脂粉乳 5.0
チーズパウダー 5.0
食塩 1.3
カロチン色素 0.1
香料 0.2
水 58.4
合 計 100.0 %。
詳細には、水を攪拌しながら、脱脂粉乳を添加して溶解した。次いで、これにデキストリンを加えて溶解し、次いで、チーズパウダー、食塩、カロチン色素および香料を添加し、水で全量が100%になるように調整した。そして調製した溶液を容器に充填後、85℃で1時間加熱殺菌した後、室温まで冷却した。
得られた各食品について、(1)濃厚感・油脂感、(2)外観、(3)食感、(4)風味、および(5)総合評価について評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各食品のうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、また(5)総合評価については、得られた各食品のうち、総合的に判断して、チーズに最も類似したものを10(良)、チーズに最も類似していないものを1(悪)として、10段階評価を行った。結果を表21に示す。
調製例1のデキストリンを用いて調製した食品(実施例21-1)は、脂肪を含有しないにも関わらず、チーズ特有のボディ感および良好な口あたり、更には良好なチーズの風味を有するチーズ様食品であった。
実験例22 チーズ様食品(5)
調製例2のデキストリンを用いて下記処方に従ってチーズ様食品(実施例22-2)を調製した。詳細には、ゴーダチーズ、パーム油及び水の混合物に脱脂粉乳、澱粉、クエン酸三ナトリウム、調味料を加え、85℃で10分間加熱撹拌溶解した。次いで食塩、デキストリン(調製例2)、ガティガム、キサンタンガム及び香料を加え、溶解した。全量が100kgとなるように水で補正後、脱気・成型し、冷却することによりチーズ様食品(実施例22-2)を調製した。
<チーズ様食品処方>
ゴーダチーズ 30.0 (kg)
パーム油 5.0
脱脂粉乳 7.0
食塩 0.5
澱粉 4.0
クエン酸三ナトリウム 2.0
調味料 0.3
デキストリン(調製例2) 10.5
キサンタンガム 0.1
ガティガム 2.0
香料 0.07
水 38.53
合計 100.0 kg。
上記で調製したチーズ様食品(実施例22-2)と市販品のとろけるスライスチーズを用いて、下記の実験を行った。
(1)伸び試験(その1)
1.アルミホイル上に、チーズ様食品(実施例22-2)および市販品のスライスチーズをそれぞれ10g計りとり、5mm×2cm程度の大きさに刻んだ。
2.これを1000Wのオーブントースターで3分間加熱した。
3.オーブントースターからチーズ様食品またはチーズを載せたアルミホイルを取り出し、L字型に曲げたスパーテルで上に吊り上げチーズの伸びを評価した。
上記評価を各5回くりかえし、その平均の伸び(cm)を求めたところ、チーズ様食品(実施例22-2)は20.6cm、市販品のチーズは23.4cmとほぼ違いはなかった。
(2)伸び試験(その2)
1.食パンの上に、チーズ様食品(実施例22-2)および市販品のスライスチーズを載せた。
2.これを1000Wのオーブントースターで3分間加熱した。
3.オーブントースターから食パンを取り出し、あらかじめ切っておいた切れ目部分で左右に引っ張り、伸び方を比較した。
チーズ様食品(実施例22-2)の結果を図2、市販品のスライスチーズの結果を図3に示す。これからわかるように、実施例22-2のチーズ様食品は、加熱すると良好にとろける物性を有し、その伸び性は市販品のとろけるスライスチーズと同じく優れていた。
実験例23 クリームチーズ様食品
下記表22に従ってクリームチーズ様食品を調製した(実施例23-1)。詳細には、表22の処方のうち、85℃の水にデキストリン(調製例1)、キサンタンガム、ネイティブ型ジェランガム、脱アシル型ジェランガムおよびクエン酸三ナトリウムを添加、溶解した。更に、これに食塩を添加した後、クエン酸にてpHを3.8に調整し、色素および香料を添加し混合した。これを容器に充填した後、85℃で1時間殺菌したのち冷却した。
調製された食品(実施例23-1)は、チーズ及び脂肪分を含有しないにも関わらず、クリームチーズ特有のボディ感および良好な口溶けと風味、ならびにスプレッド性を有していた。また、この食品は、3ヶ月冷蔵保存した後もクリームチーズに類似した、クリームチーズ特有の風味や滑らかな口あたりを維持していた(クリームチーズ様食品)。当該食品は、レアチーズケーキやデザート用のクリームチーズソースの材料として、クリームチーズに代えて用いることができる。
実験例24 チーズ様食品を含有する加工食品(レアチーズケーキ)
実験例23で調製したクリームチーズ様食品(実施例23-1)を用いて、表23に示す処方に従って、ケーキを調製した(実施例24-1)。なお、表23に示す処方のうち、ゼラチンは、あらかじめ水に入れ電子レンジを用いて溶解したものを用意しておいた。次に、クリームチーズ様食品(実施例23-1)を室温下に2時間静置して柔らかくし、これにグラニュー糖、生クリーム、レモン果汁、および上記ゼラチンの溶解液を順次添加し混合した。次いで、これを容器に充填して冷蔵庫にて3時間冷却した。
調製されたケーキ(実施例24-1)は、チーズを含有せず、さらに脂肪の含有量が少ないにも関わらず、レアチーズケーキに類似した風味、コク、および滑らかな食感を有していた。また、実験例23で調製したクリームチーズ様食品(実施例23-1)は、室温に戻すと、クリームチーズと同様に組織が柔らかくなり、攪拌・混合といった作業性も良好で、取り扱いが容易であった。更には、ここで調製したケーキは、通常のクリームチーズ(脂質33%、たん白8.2%、炭水化物2.3%、灰分1%、水分55.5%、カロリー346kcal)を用いて調製したレアチーズケーキと比べて、カロリーが約30%低く、またコレステロールが約45%低かった。
実験例25 クリームチーズ様食品の調製(2)
調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方および方法に従って食品を調製し(実施例25-1、比較例25-1〜25-5)、(1)濃厚感・油脂感、(2)外観、(3)食感、および(4)風味の点から、クリームチーズに類似しているかどうかを検討した。また比較のため、デキストリン25%に代えてブドウ糖を25%用いて(全固形分の調整)、同様にして食品を調製した(比較例25-0、デキストリン未使用)。
<処方>
デキストリン 25.00(%)
ネイティブ型ジェランガム 0.10
キサンタンガム 0.10
脱アシル型ジェランガム 0.04
食塩 0.70
クエン酸三ナトリウム 0.01
クエン酸 適 量
カロチン色素 0.05
香料 0.20
水 残 部
合 計 100.00%。
詳細には、85℃の水を攪拌しながら、デキストリン(調製例1または既存品1〜5)、ネイティブ型ジェランガム、キサンタンガム、脱アシル型ジェランガム、およびクエン酸三ナトリウムを添加して溶解した。次いで、これに食品を加えて溶解し、クエン酸にてpHを3.8に調整し。色素と香料を添加し、水で全量が100%になるように調整した。そして調製した溶液を容器に充填後85℃で30分間加熱殺菌し、室温まで冷却した。
得られた各食品(実施例25-1、比較例25-1〜25-5)について、(1)濃厚感・油脂感、(2)外観、(3)食感、(4)風味、および(5)総合評価について評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各食品のうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、また(5)総合評価については、得られた各食品のうち、総合的に判断して、クリームチーズに最も類似したものを10(良)、クリームチーズに最も類似していないものを1(悪)として、10段階評価を行った。結果を表24に示す。
調製例1のデキストリンを用いて調製された食品は、チーズ及び脂肪分を含有しないにも関わらず、クリームチーズ特有のボディ感および良好な口溶けと風味、ならびにスプレッド性を有していた(クリームチーズ様食品)(実施例25-1)。当該食品は、レアチーズケーキやデザート用のクリームチーズソースの材料として、クリームチーズに代えて用いることができる。
実験例26 クリームチーズ様食品の調製(3)
調製例3のデキストリンを用いて、下記処方に従ってクリームチーズ様食品を調製した(実施例26-3)。詳細には、水に脱脂粉乳、乳清タンパク質を添加し、5分間撹拌溶解した。更に食塩、デキストリン(調製例3)、キサンタンガム及びガティガムを添加し、5分間撹拌溶解した。調製した溶液を40℃まで加熱撹拌しながら香料と、予め40℃に加熱したパーム油をゆっくりと添加し、5分間撹拌混合した。50w/w%乳酸水溶液を添加し、90℃まで加熱撹拌後、容器に充填し、冷却することによりクリームチーズ様食品(実施例26-3)を調製した。得られたクリームチーズ様食品は、本物のクリームチーズと同等の滑らかさ、スプレッド性を有し、更にベイクドチーズケーキなど焼成工程が含まれるケーキ、菓子類へも応用可能なクリームチーズとなった。
<クリームチーズ様食品処方>
パーム油 30.0 (kg)
脱脂粉乳 5.0
乳清タンパク質 6.0
食塩 0.7
デキストリン(調製例3) 14.5
キサンタンガム 1.0
ガティガム 0.3
香料 0.1
50w/w%乳酸水溶液 0.55
水 41.85
合 計 100.00 kg。
実験例27 チョコレートプリン(中性デザート)の調製
調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従ってチョコレートプリンを調製した(実施例27-1、比較例27-1〜27-5)。また比較のため、デキストリン4%に代えてブドウ糖を4%用いて(全固形分の調整)、同様にしてチョコレートプリンを調製した(比較例27-0、デキストリン未使用)。
詳細には、水に生クリームとチョコレートを攪拌しながら、香料以外の成分を添加し、80℃に加熱し10分間攪拌しながら溶解した。香料を添加後、水で全量が100%になるように調製した。これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)し、容器に充填した後冷却した。なお、上記成分のうち、ゲル化剤(ゲルアップ‡PI-2069*)はローカストビーンガム、ペクチン、寒天およびメタリン酸ナトリウムの混合物(以下、同じ)であり、乳化剤(ホモゲン‡DM*)はグリセリン脂肪酸エステルである。
得られた各チョコレートプリンについて、(1)濃厚感・油脂感、(2)食感、(3)風味、および(5)総合評価について評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各プリンのうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、また(5)総合評価については、得られた各プリンのうち、(1)〜(3)を総合的に評価して、最も優れているものを10(良)、最も悪いものを1(悪)として、10段階評価を行った。結果を表25に示す。
調製例1のデキストリンを用いて調製されたチョコレートプリン(実施例27-1)は、卵黄および脂肪分を含有しないにも関わらず、プリン特有の風味および良好な滑らかな口溶け感を有していた。
実験例28 焼きプリン(中性デザート)の調製
調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従って焼きプリンを調製した(実施例28-1、比較例28-1〜28-5)。また比較のため、デキストリン2%に代えてブドウ糖を2%用いて(全固形分の調整)、同様にして焼きプリンを調製した(比較例28-0、デキストリン未使用)。
<焼きプリン処方>
デキストリン 2.0(%)
牛乳 30.0
生クリーム 5.0
砂糖 10.0
全脂粉乳 2.0
加糖凍結全卵 12.0
加糖凍結卵黄 12.0
水 残 部
合 計 100.0 %。
詳細には、水、牛乳、および生クリームを攪拌しながら、砂糖、全脂粉乳およびデキストリン(調製例1、既存品1〜5)を添加し、80℃に加熱して攪拌しながら溶解した。これを50℃まで冷却し、次いで加糖凍結全卵と加糖凍結卵黄を加えて十分に混合した。次いで、これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)し、これを容器に充填した後、155℃のオーブンで50分間焼成した。
得られた各焼成プリン(実施例28-1、比較例28-1〜28-5、比較例28-0)について、(1)濃厚感、(2)食感、(3)風味、および(4)総合評価について評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各プリンのうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、また(5)総合評価については、(1)〜(3)を総合的に判断して、最も優れているものを10(良)、最も悪いものを1(悪)として、10段階評価を行った。結果を表26に示す。
調製例1のデキストリンを用いて調製された焼成プリン(実施例28-1)は、卵黄を含有しないにも関わらず、プリン特有のこくと風味、および良好な滑らかな口溶け感を有していた。
実験例29 プリン(中性デザート)(2)
調製例2または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従ってプリンを調製した。詳細には、水に生クリーム、バナナピューレを攪拌しながら砂糖、脱脂粉乳、ゲル化剤、乳化剤、デキストリン(調製例2,既存品1〜5)の混合物を加え、80℃で10分間加熱攪拌溶解した。次いで色素、香料を添加後、水で全量が100%になるように調整し、150kgf/cm2にて均質化を行い、容器に充填して冷却することによりプリンを調製した(実施例29-2、比較例29-1〜29-5)。なお、下記処方のうち、ゲルアップ‡PI−954(D)*は、カラギナン、ローカストビーンガム及びジェランガムを主成分としたゲル化剤である。また比較対照のため、デキストリンを使用せず、生クリームを倍増して、同様にプリンを調製した(対照例)。
<プリン処方>
砂糖 10.0(%)
生クリーム 表27
脱脂粉乳 6.0
バナナピューレ 1.0
ゲル化剤(ゲルアップ‡PI-954(D)*) 0.8
乳化剤 0.1
デキストリン 表27
色素 0.01
香料 0.1
水 残 部
合 計 100.0%。
得られたプリンについて、(1)濃厚感・脂肪感、(2)食感、(3)風味、(4)保形性、(5)離水性、および(6)総合評価について評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各プリンのうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として;(3)保形性については、得られたプリンのうち、最も保形性が高いものを10(良)、最も悪いものを1(悪)として;さらに(5)離水についても、得られたプリンのうち、最も離水が少ないものを10(良)、最も多いものを1(悪)として、10段階評価した。また(6)総合評価については、得られた各プリンのうち、(1)〜(5)を総合的に判断して、最も優れているものを10(良)、最も悪いものを1(悪)として、10段階評価を行った。結果を表27に示す。
上記表より、従来のデキストリン(既存品1〜5)を用いた場合は、生クリームを比較例29-1で使用する量の半分にすると、当該プリンと比べて、著しく濃厚感が低下した上に、食感がざらつく、糊っぽく口溶けが悪くなるなど、食感にも大きな影響が生じた。更には、その保形性も低減し、離水も防止することができなかった(比較例29-1〜29-5)。一方、本発明のデキストリン(調製例2)を用いることにより、生クリームの添加量を対照例の半分とした場合でも、風味に影響が生じず、対照例のプリンと遜色のない濃厚感を有するプリンを調製することができた(実施例29-1)。更に、そのプリンは、その食感も滑らかである上、離水も顕著に防止されていた。
実験例30 マンゴープリンの調製(中性デザート)
調製例3のデキストリンを用いて下記処方に従ってマンゴープリン(中性デザート)を調製した(実施例30-3)。詳細には、水と牛乳、生クリームを撹拌しながら、砂糖、脱脂粉乳、ココナッツミルクパウダー、ゲル化剤(ゲルアップ‡PI-983(F) *)、並びにデキストリン、グァーガム及びタラガムの粉体混合物を添加し、80℃で10分間撹拌溶解した。マンゴーピューレ、色素、香料を添加し、水にて全量が100%となるように補正後、容器に充填、冷却することによりマンゴープリンを調製した。なお、ゲル化剤(ゲルアップ‡ PI−983(F) *)は、ローカストビーンガム、キサンタンガム及び脱アシル型ジェランガム含有製剤である。また、対照例として、デキストリン、グァーガム及びタラガムを使用せずに生クリームを使用して、また比較例としてデキストリン、グァーガム及びタラガムも生クリームも使用せずに、同様にしてマンゴープリンを調製した。
<マンゴープリン処方>
生クリームを5%使用した対照例のプリンに対し、生クリームを使用しなかった比較例のプリンは非常にあっさりとしてコクや濃厚感に乏しい食感となったが、生クリームの代わりにデキストリン、グァーガムおよびタラガムを使用した実施例30-3は、対照例のプリンとほぼ同等の食感となった。
実験例31 杏仁豆腐の調製
調製例3のデキストリンを用いて、下記処方に従って杏仁豆腐を調製した(実施例31-3-1〜31-3-3)。また比較のため、デキストリンを用いずに同様にして杏仁豆腐を調製した(比較例31-0-1〜31-0-2、デキストリン未使用)。
詳細には、水、牛乳、生クリームを撹拌しながら砂糖、脱脂粉乳、杏仁霜、ゲル化剤、乳化剤、デキストリンを添加し、90℃で10分間撹拌溶解した。香料を加え水で全量が100%となるように調整後、150kgf/cm2にて均質化を行い、容器に充填冷却することにより杏仁豆腐を調製した。なお、下記処方のうち、ゲルアップ‡PI−983(F)*は、ゼラチンと寒天を主成分とした製剤である。
<杏仁豆腐処方>
牛乳 表29参照
生クリーム 10.0(%)
砂糖 10.0
脱脂粉乳 4.0
杏仁霜 1.0
ゲル化剤(ゲルアップ‡PI−983(F)*) 0.8
乳化剤 0.1
香料 0.1
デキストリン(調製例3) 表29参照
ブドウ糖 表29参照
水 残 部
合 計 100.0%。
得られた杏仁豆腐について、(1)濃厚感・脂肪感、(2)食感、および(3)総合評価について評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各杏仁豆腐のうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、また(3)総合評価については、得られた各杏仁豆腐のうち、(1)と(2)を総合的に判断して、比較例31-2の杏仁豆腐に最も類似し、美味しいものを10(良)、比較例31-1の杏仁豆腐に最も類似し不味いものを1(悪)として、10段階評価を行った。
上記表より、調製例3のデキストリンを用いることにより、0.2〜1%といった少量にもかかわらず、牛乳を50%配合して定法に従って調製する杏仁豆腐(比較例31-0-2)と遜色ない濃厚感を有する杏仁豆腐が調製できた(実施例31-3-1〜31-3-3)。更に、調製された実施例31-3-1〜31-3-3の杏仁豆腐は、滑らかで口溶けも良好であり、低脂肪にも関わらず、商品価値の高い杏仁豆腐であった。
実験例32 チーズ含有デザート(酸性デザート)の調製
調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従ってチーズ含有デザートを調製した(実施例32-1、比較例32-1〜32-5)。また比較のため、デキストリン4.5%に代えてブドウ糖を4.5%用いて(全固形分の調整)、同様にしてチーズ含有デザートを調製した(比較例32-0、デキストリン未使用)。なお、処方中、「シンプレス100」は、乳清タンパク質を部分的に熱変性した微粒子状のタンパク質である。乳清タンパク質を、高剪断をかけながらタンパク質の変性温度以上に加熱することによって得ることができる(以下、同じ)。
詳細には、水を攪拌しながら、砂糖、ゲル化剤、乳化剤、デキストリンおよびスクラロースを添加し、さらにクリームチーズ、シンプレス100*および植物油脂を加えて、40℃に加熱して10分間攪拌しながら溶解した。これにクエン酸を添加して、90℃で10分間加熱した後、香料を添加し、水で全量を100%に調整した。次いで、これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)し、これを容器に充填した後、冷却した。
得られたデザートについて、(1)濃厚感・油脂感、(2)食感、および(3)風味について評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各デザートのうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、10段階評価を行った。結果を表30に示す。
その結果、調製例1のデキストリンを用いることにより、濃厚で風味がよく、また食感も滑らかなデザートが調製できた(実施例32-1)。
実験例33 チーズ含有デザート(酸性デザート)の調製(2)
調製例3のデキストリンを用いて下記処方に従ってチーズ含有デザートを調製した(実施例33-3)。詳細には、水とクリーム、クリームチーズを撹拌しながら、砂糖、脱脂粉乳、ゲル化剤、乳化剤並びにデキストリン(調製例3)、ペクチン、ローカストビーンガム、グァーガム及び寒天の粉体混合物を添加し、80℃で10分間撹拌溶解した。これにクエン酸、香料を添加し、水にて全量が100%となるように補正後、14700kPa(150kgf/cm2)にて均質化し、容器に充填、冷却することによりチーズ含有デザートを調製した。なお、ゲル化剤(ゲルアップ‡J−4021*)は、ペクチン、ローカストビーンガム及びグァーガム含有製剤である。また、比較対照のため、デキストリン(調製例3)、ペクチン、ローカストビーンガム、グァーガム及び寒天を使用せずに、クリームチーズの量を倍増して、同様にしてチーズ含有デザートを調製した(対照例)。
実施例33-3のチーズ含有デザートは、クリームチーズが5%にもかかわらず、クリームチーズを10%使用した対照例のチーズ含有デザートと同等の脂肪感、濃厚感を有していた。
実験例34 低脂肪ヨーグルトの調製(1)
デキストリンの違いによるヨーグルトの物性を評価するため、各種デキストリン(調製例1及び既存品1〜5)を用いて、下記処方に従ってヨーグルトを調製した。
詳細には、水と牛乳に脱脂粉乳、全脂粉乳、砂糖、ゲル化剤及び各種デキストリンを投入し70℃にて溶解後、均質化(150kgf/cm2)し、90℃にて10分間殺菌した後、40℃まで冷却した。次いで、スターター(ビヒダスヨーグルトBB536、森永乳業(株)製)を全量の3%となるように添加後、容器に充填し、40℃の恒温室でpH4.5まで発酵させ、低脂肪ヨーグルトを調製した。なお、下記処方のうち、ゲルアップ‡YO−H(F)*は、寒天とゼラチンを含むゲル化剤である。
また対照例として、全脂粉乳を用いて通常のヨーグルトを調製した。
<低脂肪ヨーグルト処方>
牛乳 28.0 (%)
脱脂粉乳 表32参照
全脂粉乳 表32参照
砂糖 5.0
ゲル化剤(ゲルアップ‡YO-H(F)*) 0.6
デキストリン 表32参照
水 残 部
合計 100.0 %。
調製した各ヨーグルトについて、(1)濃厚感・脂肪感、(2)食感、(3)風味、(4)離水、及び(5)総合評価について評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各ヨーグルトのうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、10段階評価を行った。また(4)離水については、カップに入ったヨーグルトを30°傾けて1週間冷蔵保存し、出てきた水分の量から、離水が最も少ないものを10(良)、最も多いものを1(悪)として10段階評価した。さらに(5)総合評価については、(1)〜(4)を総合的に判断して、得られた各ヨーグルトのうち、乳脂肪分が2%の対照例のヨーグルトに最も類似しているものを10(良)、対照例のヨーグルトに最も類似していないものを1(悪)として、10段階評価を行った。結果を表32に示す。
ヨーグルトは乳を主原料とすることから、その乳脂肪分含量を1%も低減させるとその食感に大きな影響が生じ、水っぽい食感となってしまう。しかし、調製例1のデキストリンを用いて調製したヨーグルト(実施例34-1)は、通常のヨーグルト(対照例)の乳脂肪含量を1%以上も低減させても、当該通常のヨーグルト(対照例)と遜色ない濃厚感および脂肪感を有するものであった。また、調製例1のデキストリンを用いて調製したヨーグルト(実施例34-1)は、風味も良好で、ヨーグルト特有の滑らかな食感を有していた。一方、既存のデキストリン(既存品1〜5)を用いて調製した低脂肪ヨーグルト(比較例34-1〜34-5)は、濃厚感・脂肪感が十分に得られず、食感や風味も澱粉特有の糊っぽさやざらつき、澱粉臭が目立つものであった。
また、乳脂肪分の量を低減させたヨーグルトは顕著に離水が発生するが、既存のデキストリン(既存品1〜5)ではこの離水を防止することはできなかった。しかし、調製例1のデキストリンを用いることにより、乳脂肪分の量を低減させても離水が顕著に防止された、低脂肪ヨーグルトを調製することができた。
実験例35 低脂肪ヨーグルトの調製(2)
下記の処方に従って低脂肪ヨーグルトを調製した。
<低脂肪ヨーグルト処方>
生クリーム 4.0 (%)
牛乳 5.0
脱脂粉乳 表33参照
全脂粉乳 表33参照
砂糖 5.0
ゲル化剤(ゲルアップ‡YO-H(F)*) 0.5
デキストリン(調製例2) 表32参照
水 残 部
全 量 100.0 %。
詳細には、水と牛乳に生クリーム、脱脂粉乳、全脂粉乳、砂糖、ゲル化剤、及びデキストリン(調製例2)を投入し70℃にて溶解後、均質化(150kgf/cm2)し、90℃で10分間殺菌した後、40℃まで冷却した。次いで、スターター(ビヒダスヨーグルトBB536、森永乳業(株)製)を全量の3%となるように添加した後、40℃の恒温室でpH4.5になるまで発酵させ、低脂肪ヨーグルトを調製した(実施例35-2-1〜35-2-5)。また対照例として、全脂粉乳を用いて通常のヨーグルトを調製した。さらに比較例として、デキストリンも全脂粉乳も使用せずにヨーグルトを調製した(比較例35-0-1〜35-0-3)。
調製したヨーグルトについて、(1)濃厚感・脂肪感、及び(2)滑らかさ・口溶けについて評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各ヨーグルトのうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、また(2) 滑らかさ・口溶けについては、得られた各ヨーグルトのうち、食感が最も滑らかで口溶けのよいものを10(良)、食感が最も滑らかでなく、口溶けが悪いものを1(悪)として、10段階評価を行った。
結果を表33に示す。
乳脂肪分を2%とすることにより、濃厚感は著しく低減し、またその滑らかな食感も失われ、乳脂肪分が3%の通常のヨーグルト(対照例)とは食感が大きく変化してしまった(比較例35-0-3)。しかし、調製例2のデキストリンを用いることにより、乳脂肪分を2%に低減したにも関わらず、乳脂肪分3%の通常のヨーグルト(対照例)と遜色のない濃厚感・脂肪感が得られ、その食感も滑らかであった(実施例35-2-1)。さらに、調製例2のデキストリンに加え、ガティガム、アラビアガム、タラガム又はグァーガムをそれぞれ併用することにより、濃厚感・脂肪感も増強するとともに、食感がより滑らかで良好な口溶けを有する低脂肪ヨーグルトを調製することができた(実施例35-2-2〜35-2-5)。一方、アラビアガムまたはタラガムを、デキストリンと併用せず、ブドウ糖と併用して調製された低脂肪ヨーグルト(比較例35-0-1、35-0-2)は、アラビアガムもタラガムも配合しない低脂肪ヨーグルト(35-0-3)よりは滑らかな食感となるものの、その効果は不十分であった。
実験例36 無脂肪ヨーグルトの調製(3)
下記の処方に従って無脂肪ヨーグルトを調製した。詳細には、水と牛乳に脱脂粉乳、全脂粉乳、砂糖、ゲル化剤及びデキストリン(調製例3)を投入し70℃にて溶解後、均質化(150kgf/cm2)し、90℃に10分間殺菌後40℃まで冷却した。次いで、スターター(ビヒダスヨーグルトBB536、森永乳業(株)製)を全量の3%となるように添加後、40℃の恒温室でpH4.5になるまで発酵させたものを、撹拌機で撹拌しながら20℃まで冷却した。それらを容器に充填して無脂肪ヨーグルトを調製した(実施例36-3-1〜36-3-4)。また対照例として、全脂粉乳を用いて通常のヨーグルトを調製した。さらに比較例として、デキストリンも全脂粉乳も使用せずにヨーグルトを調製した(比較例36-0)。
調製したヨーグルトについて、(1)濃厚感・脂肪感、(2)食感、(3)保形性、(4)離水性、及び(5)総合評価について評価した。 (1) 濃厚感・油脂感と(4)離水性は実験例34に記載する基準に従って10段階評価した。また(3)保形性は、直径3cm、高さ1cmの筒を水平面に置き、そこにヨーグルトをすり切れまで入れ、その筒を真上に引き上げて抜いたあと室温で1時間経過後に観察した際、最もヨーグルトが広がっていないものが保形性のあるヨーグルトとして評価し、最も保形性が高かったものを10(良)、最も低かったものを1(悪)として10段階評価した。(5)総合評価については、総合的に判断して、得られた各ヨーグルトのうち、乳脂肪2%の対照例のヨーグルトと最も類似したものを10(良)、乳脂肪2%の対照例のヨーグルトと最も類似していないものを1(悪)として、10段階評価を行った。
結果を表34に示す。
<無脂肪ヨーグルト処方>
牛乳 表34参照 (%)
脱脂粉乳 表34参照
全脂粉乳 表34参照
砂糖 5.0
ゲル化剤(ゲルアップ‡YO-H(F)*) 0.5
デキストリン(調製例3) 表34参照
水 残 部
全 量 100.0 %。
従来の製法で調製された、乳脂肪分0.1%のヨーグルト(比較例36-0)は、濃厚感がなく水っぽい食感であった。更にはその保形性も低い上に、スプーンを入れるとそこから離水が顕著に発生した。一方、調製例3のデキストリンを用いることにより、乳脂肪分が0.1%と少なくても、十分な濃厚感が得られ、また食感も滑らかで口溶けの良好なヨーグルトを調製することができた(実施例36-3-1)。さらに、デキストリンの添加量を増加することにより、濃厚感・脂肪感および食感を向上させることが可能であった(実施例36-3-2〜36-3-4)。かかる本発明のヨーグルト(実施例36-3-2〜36-3-4)は、乳脂肪分2%の低脂肪ヨーグルト(対照例)と同等もしくはそれ以上の濃厚感・脂肪感、保形性、および滑らかな食感を有していた。
実験例37 無脂肪ヨーグルトの調製(2)
下記の処方に従って無脂肪ヨーグルトを調製した。詳細には、水に脱脂粉乳、砂糖、ゲル化剤、HMペクチン及び調製例1のデキストリンを投入し、70℃にて溶解後、均質化(150kgf/cm2)し、90℃に10分間殺菌後、40℃まで冷却した。次いでスターター(ビヒダスヨーグルトBB536、森永乳業(株))を全量の3%となるように添加後、容器に充填し、40℃の恒温室でpH4.5になるまで発酵させ、無脂肪ヨーグルトを調製した(実施例37-1)。このヨーグルトは無脂肪にも関わらず十分な濃厚感を有しており、その食感も滑らかで口溶けも良好であった。
<無脂肪ヨーグルト処方>
脱脂粉乳 12.0(%)
砂糖 8.0
ゲル化剤(ゲルアップ‡YO-H*) 0.5
HMペクチン 0.2
デキストリン(調製例1) 2.0
水 残 部
全 量 100.0%。
実験例38 ラクトアイスの調製(1)
調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従ってラクトアイスを調製した(実施例38-1、比較例38-1〜38-5)。また比較のため、デキストリン5%に代えてブドウ糖を5%用いて(全固形分の調整)、同様にしてラクトアイスを調製した(比較例38-0、デキストリン未使用)。
<ラクトアイス処方>
デキストリン 5.0 (%)
脱脂粉乳 8.0
砂糖 8.0
果糖ブドウ糖液糖 7.0
精製ヤシ油 5.0
安定剤(サンベスト‡NN-303*) 0.2
乳化剤(ホモゲン‡DM*) 0.2
ワニラフレーバーNO.93-I 0.1
水 残 部
合 計 100.0 %。
詳細には、水を攪拌しながら、果糖ブドウ糖液糖、脱脂粉乳、砂糖、安定剤、乳化剤、およびデキストリン(調製例1、既存品1〜5)を加えて加熱して攪拌した。80℃になった後、精製やし油を添加し、このまま80℃で10分間加熱攪拌溶解し、水で全量を100%に調整した。次いで、これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)した後、5℃まで冷却し、一晩エージングを行った。エージング後、フリージングし容器に充填、冷却することによりラクトアイスを調製した。なお、安定剤(サンベスト‡NN-303*)は、グァーガム、タマリンド種子多糖類、ローカストビーンガム、およびカラギナンの混合製剤である。
得られたラクトアイスについて、(1)組織(荒い1→10滑らか)、(2)ボディ感(弱い1→10強い)、(3)口溶け(悪1→10良)、(4)風味(悪1→10良)、および(5)総合評価(悪1→10良)について評価した。なお、評価は、各特性(1)〜(5)に関して、得られたラクトアイスのうち最もよいものを10(良)、最も悪いものを1(悪)として、10段階で評価した。結果を表35に示す。
実験例39 アイスミルクの調製(1)
下記処方に従い、調製例2のデキストリンを用いてアイスミルクを調製した(実施例39-2)。また比較のため、デキストリンの代わりに砂糖を用いて全固形分を合わせたアイスミルク(比較例39-0)、およびデキストリンを用いずに生クリームを増量してアイスミルク(対照例)を調製した。
詳細には、水を攪拌しながら、全脂加糖練乳、生クリーム、脱脂粉乳、水飴、加糖凍結卵黄、砂糖、デキストリン、安定剤、乳化剤を加えて加熱して攪拌した。80℃になった後、精製ヤシ油を添加し、このまま80℃で10分間加熱して攪拌溶解し、水で全量を100%に調整した。これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)した後、5℃まで冷却し、一晩エージングを行った。次いで香料を加えてフリージングし、容器に充填、冷却することにより各種のアイスミルクを調製した(実施例39-2、比較例39-0、対照例)。なお、安定剤サンベスト(サンベスト‡NN-582*)は、タマリンドシードガム、ローカストビーンガムの混合物である。
試食したところ、デキストリン(調製例2)を使用して調製したアイスミルク(生クリーム量8.5%)(実施例39-2)は、デキストリンの添加量が0.1%と少ないにも関わらず、同じ生クリーム量を含むデキストリン不使用(砂糖代替)のアイスミルク(生クリーム量8.5%)(比較例39-0)に比べて濃厚感が強く感じられ、更には生クリーム量が多い対照例のアイスミルク(生クリーム9%)と、遜色ない濃厚感を有していた。なお、デキストリン(調製例2)を用いないアイスミルク(生クリーム量8.5%)(比較例39-0)は、生クリーム量が9.0%のアイスミルク(対照例)に比べて、濃厚感が著しく低かった。
実験例40 ラクトアイスの調製(2)
下記処方に従い、調製例3のデキストリンを用いたラクトアイス(実施例40-3-1)および、調製例3のデキストリンにグァーガムとタラガムを併用したラクトアイスを調製した(実施例40-3-2)。また比較のため、デキストリンの代わりに砂糖で全固形分を合わせたラクトアイス(比較例40-0)、およびデキストリンを用いずに精製ヤシ油を増量したラクトアイス(対照例)を調製した。
詳細には、水を攪拌しながら、砂糖、果糖ブドウ糖液糖、水飴、脱脂粉乳、デキストリン、グァーガム、タラガム、安定剤、乳化剤を加えて加熱して攪拌した。80℃になった後、精製ヤシ油を添加し、このまま80℃で10分間加熱して攪拌溶解し、水で全量を100%に調整した。これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)した後、5℃まで冷却し、一晩エージングを行った。次いで香料を加えてフリージングし、容器に充填、冷却することにより実施例40-3-1および40-3-2、対照例及び比較例40-0のラクトアイスを調製した。
試食したところ、デキストリンの代わりに砂糖を用いて調製された比較例40-0のラクトアイス(精製ヤシ油5%)は、精製ヤシ油の含有量が7.5%のラクトアイス(対照例)に比べて、油脂特有の濃厚感が大きく低下してしまった。一方、調製例3のデキストリンを使用した実施例40-3-1および40-3-2は、デキストリンを使用しない比較例40-0より濃厚感が十分に強く感じられ、その食感は精製ヤシ油含量の多い対照例のラクトアイスに近いものであった。このことから、調製例3のデキストリンを用いることにより、濃厚感を損なうことなく、精製ヤシ油などの油脂分を代替することが可能であることがわかる。また、デキストリンに加え、グァーガムとタラガムを併用したラクトアイス(実施例40-3-2)は、実施例40-3-1のラクトアイスよりも更に濃厚感が、対照例のラクトアイスに近づいていた。
この結果から、本発明で用いたデキストリンは特に喫食後半の濃厚感を付与するのに対し、グァーガムとタラガムは喫食前半の濃厚感を付与し、これらを併用することでより油脂に近い濃厚感を付与することができることが判明した。更に調製された実施例40-3-1および40-3-2のラクトアイスはフレーバーリリースも良好な上、組織も滑らかであり、良好な口溶けを有するラクトアイスであった。
実験例41 アイスミルクの調製(2)
下記処方に従い、調製例2のデキストリンを用いたアイスミルク(実施例40-2-1)および、調製例2のデキストリンにグァーガムを併用したアイスミルク(実施例40-2-2)、調製例2のデキストリンにタラガムを併用したアイスミルク(実施例40-2-3)を調製した。また比較のため、デキストリンを用いず、生クリーム量を増量したアイスミルク(対照例)を調製した。
詳細には、水を攪拌しながら、生クリーム、脱脂粉乳、水飴、砂糖、デキストリン(調製例2)、グァーガム、タラガム、安定剤、乳化剤を加えて加熱して攪拌した。80℃になった後、精製ヤシ油を添加し、このまま80℃で10分間加熱して攪拌溶解し、水で全量を100%に調整した。これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)した後、5℃まで冷却し、一晩エージングを行った。次いで香料を加えてフリージングし、容器に充填、冷却することにより実施例41-2-1〜41-2-3及び対照例のアイスミルクを調製した。
試食による評価を行ったところ、デキストリンを使用して調製したアイスミルク(実施例41-2-1)は、生クリーム含量が多く、アイスクリームに分類される対照例と近い濃厚感を有していた。この濃厚感は、デキストリンに加えて、グァーガムあるいはタラガムを併用することにより(実施例41-2-2、41-2-3)、いっそう強まり、対照例のアイスミルクと極めて近い濃厚感を有していた。更に、実施例41-2-1〜41-2-3のアイスミルクはフレーバーリリースも良好な上、組織も滑らかであり、良好な口溶けを有するアイスミルクであった。
実験例42 ラクトアイスの調製(3)
調製例1のデキストリンを用いて、下記処方に従ってラクトアイスを調製した(実施例42-1-1〜42-1-3)。また比較のため、デキストリンを用いないか、または既存品1のデキストリンを用いて、下記の処方に従って同様にしてラクトアイスを調製した(比較例42-0-1〜42-0-3、比較例42-1-1〜42-1-2)(以上、表39参照)。
詳細には、水を攪拌しながら、全脂加糖練乳、脱脂粉乳、水飴、果糖ブドウ糖液糖、砂糖、デキストリン(調製例1)、安定剤、乳化剤を加えて加熱して攪拌した。80℃になった後、精製ヤシ油を添加し、このまま80℃で10分間加熱して攪拌溶解し、水で全量を100%に調整した。これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)した後、5℃まで冷却し、一晩エージングを行った。次いで香料を加えてフリージングし、容器に充填、冷却することにより実施例42-1-1〜42-1-3、比較例42-0-1〜42-0-3および比較例42-1-1〜42-1-2のラクトアイスを調製した。
乳固形分および乳脂肪分含量を低減させたラクトアイスは、風味は良好であるものの濃厚感に著しく欠けるものであったが(比較例42-0-1)、調製例1のデキストリンを配合することにより、乳固形分および乳脂肪分含量を低減させたラクトアイスにおいても、十分な濃厚感やボディ感を有する濃厚な冷菓が得られた(実施例42-1-1〜42-1-3)。これに対して、調製例1のデキストリンに代えて既存品1(青価1.42)を用いた場合は、濃厚感は付与できるものの、食感がざらつく上に、特有の澱粉臭がし、風味が大きく損なわれた(比較例42-1-1〜42-1-2)。また、デキストリンを用いずに、タマリンド種子多糖類およびローカストビーンガムの混合物である安定剤を配合したラクトアイス(比較例42-0-1〜42-0-3)は、安定剤を増加するに従って濃厚感が増すものの、その効果は不十分であり、また、安定剤の増量により風味が低下してしまった。
調製例1のデキストリンを用いて調製されたラクトアイス(実施例41-1-1〜41-1-3)は、組織が滑らかで良好な口溶けを有する上に、フレーバーリリースも良好であり、極めて優れたラクトアイスであった。更に、当該ラクトアイス(実施例41-1-1〜41-1-3)は、ラクトアイスにも関わらず、乳固形分が10%以上、乳脂肪分3%以上であるアイスミルクと遜色ない濃厚感やボディ感を有していた。
実験例43 アイスクリームの調製
下記処方に従い、調製例2のデキストリンを用いたアイスクリーム(実施例43-2)を調製した。
詳細には、水を攪拌しながら、砂糖、水飴、脱脂濃縮乳、生クリーム、加糖凍結卵黄、デキストリンを加えて加熱して攪拌した。80℃になった後、80℃で10分間加熱して攪拌溶解し、水で全量を100%に調整した。これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)した後、5℃まで冷却し、一晩エージングを行った。次いで香料を加えてフリージングし、容器に充填、冷却することによりアイスクリームを調製した(実施例43-2)。試食による評価を行ったところ、調製されたアイスクリームは十分な濃厚感を有していた。更にはフレーバーリリースも良好な上、組織も滑らかであり、良好な口溶けを有する高級感あふれるアイスクリームであった。
実験例44 ホイップクリームの調製(1)
調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従ってホイップクリームを調製した(実施例44-1、比較例44-1〜44-5)。また比較のため、デキストリン5%に代えてブドウ糖を5%用いて(全固形分の調整)、同様にしてホイップクリームを調製した(比較例44-0、デキストリン未使用)。
<ホイップクリーム処方>
デキストリン 5.0(%)
ヤシ油 30.0
脱脂粉乳 4.0
砂糖 8.0
グリシン 1.0
乳化安定剤(ホモゲン‡No.2875*) 1.0
水 残 部
合 計 100.0 %。
詳細には、水を攪拌しながら、ヤシ油以外の成分を添加し、80℃まで加熱して10分間攪拌しながら溶解した。これにヤシ油をゆっくり添加して、80℃まで再加熱し5分間攪拌した。水で全量を100%に調整し、これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)し、これを93℃で殺菌した。これを一晩エージングして、冷蔵状態でコシがでるまでホイップした。次いでこれを絞り袋に充填し、冷凍した後、自然解凍(室温で1時間)させた。なお、乳化安定剤(ホモゲン‡No.2875*)は、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム及びショ糖脂肪酸エステルを含有する製剤である。
得られたホイップクリーム(冷凍後解凍したもの)について、(1)濃厚感・油脂感、(2)食感、(3)風味、(4)冷凍解凍時の離水抑制効果、および(5)総合評価について評価した。(1)濃厚感・油脂感については、得られた各ホイップクリームのうち、最も濃厚感・油脂感が高いものを10(良)、最も濃厚感・油脂感が低いものを1(悪)として、10段階で評価した。また(4)冷凍解凍時の離水抑制効果は、ホイップクリームを解凍した後に絞り袋から花形に絞り出して、その状態で1時間室温に放置した後の離水の有無を、10段階で評価した(最も離水の多いものを1(悪)、最も離水の少ないものを10(良)として10段階評価)。また(5)総合評価は、各特性(1)〜(4)に関して、得られたホイップクリームのうち最もよいものを10(良)、最も悪いものを1(悪)として、10段階で評価した。結果を表41に示す。
上記結果から、調製例1のデキストリンを用いることにより、濃厚で風味も良好で、しかも冷凍解凍後も良好な保形性を有し、離水も顕著に抑制されたホイップクリーム(実施例44-1)が調製できることが分かった。これにより、調製例1のデキストリンは脂肪感、濃厚感付与効果だけでなく、冷凍によって食感やホイップクリーム組織が大きく変化することを抑制(冷凍変性を抑制)し、優れた冷凍解凍耐性を有することが分かった。
実験例45 ホイップクリームの調製(2)
調製例1〜3のデキストリン(調製例1:5.0%、調製例2:1.0%、調製例3:8.0%)、既存品1〜6のデキストリン(既存品1〜6:5.0%)、またはデキストリンに代えてネイティブジェランガム(0.02%)若しくはサイリウムシードガム(0.3%)を、ホイップクリーム用安定剤として用いて、下記組成からなるホイップクリームを、実験例44の方法に従って調製した(自然解凍1時間)。なお、上記括弧内の濃度は、ホイップクリーム中の最終濃度を意味する。また比較のため、ホイップクリーム用安定剤を用いずに、同様にしてホイップクリームを調製した(比較例44-0)。
<ホイップクリーム処方>
ヤシ油 30.0
脱脂粉乳 4.0
砂糖 8.0
ホイップクリーム用安定剤 表42参照
乳化安定剤(ホモゲン‡No.2875*) 1.0
水 残 部
合 計 100.0 %。
得られたホイップクリーム(凍結後解凍したもの)について、(1)濃厚感・油脂感、(2)食感、(3)風味、(4)冷凍解凍時の離水抑制効果、(5)保形性、および(6)総合評価を、実験例44と同様にして評価した。なお、(5)保形性は、ホイップクリームを絞り袋から花形に絞り出して、これを室温で1時間放置した場合に、花形が最も維持されているものを10(良)、花形が最も崩れているものを1(悪)として10段階で評価した。(4)冷凍解凍時の離水抑制効果は、ホイップクリームを絞り袋から花形に絞り出して、これを室温で1時間放置した場合の離水量から評価した。結果を表42に示す。
図4〜10に、実施例45-1、比較例45-3、比較例45-5、比較例45-6、比較例45-7、比較例45-8、および比較例45-0のホイップクリーム(冷凍解凍後)を絞り袋から花形に絞り出した直後の画像と、これを室温で1時間放置した後の画像を示す。
これらの結果から、本発明のデキストリン(調製例1〜3)を用いることにより、冷凍解凍後も良好な保形性を有し、離水も顕著に抑制されたホイップクリームを調製することができることが分かった(実施例45-1〜45-3、図4参照)。一方、従来のデキストリン(既存品1〜6)を用いてホイップクリームを調製した場合は、冷凍後解凍した時点で既に保形性を失ってしまったり(比較例45-3)、また離水が顕著に発生してしまう(比較例45-3、45-5、45-6、図5〜7)などの問題が生じた。その上、従来のデキストリンを用いて調製されたホイップクリームは、食感がざらついたり、粉っぽさがあり、また澱粉特有の澱粉臭がするなど、ホイップクリーム自体の味に影響を与えてしまうという問題があった。またデキストリンに代えて、ネイティブジェランガムやサイリウムシードガムを用いた場合も、冷凍解凍後の離水を抑制することができず、ただ口溶けが悪く食感が重いホイップクリームとなってしまった。
一方、本発明のデキストリン(調製例1〜3)を用いて調製したホイップクリーム(実施例45-1〜45-3)は、冷凍解凍後花形に絞り出して1時間放置した後においても、花形のエッジ部分も明確であり(保形性)、離水も顕著に抑制されており、絞り出し直後と変わらない状態を維持していた(図4)。更に、本発明のデキストリンは、ホイップクリームの風味や食感に悪影響を与えることなく、ホイップクリームに濃厚感や油脂感を付与することができ、その結果、高級感のあるホイップクリームを調製することができた。
実験例46 低カロリーホイップクリームの調製
下記表に示す処方に従ってホイップクリームを調製した(実施例46-1-1〜46-1-2、比較例46-0-1〜46-0-2、対照例)。まず、水にヤシ油以外の成分を添加し、80℃まで加熱し10分間撹拌して溶解した。これにヤシ油をゆっくり添加し、80℃まで再加熱し5分間撹拌した。水で全量を100%に調整した後、これを均質機にかけてホモジナイズ(150kgf/cm2)し、93℃で殺菌した。一晩エージングした後、冷蔵状態でコシがでるまでホイップして、ホイップクリームを調製した。
得られたホイップクリームについて、冷凍解凍時の離水抑制効果、及び濃厚感・油脂感について評価した。冷凍解凍時の離水抑制効果は、調製したホイップクリームを凍ったまま絞り袋に充填して花形に絞り出し、室温で1時間放置した時の離水状況から判断した。結果を表44に示す。冷凍解凍時の離水抑制効果及び濃厚感・油脂感はいずれも10段階で評価した(悪1→10良)。具体的には、離水抑制効果については、最も離水が抑制されたものを10(良)、最も離水していたものを1(悪)として、また濃厚感・油脂感は、最も濃厚感・油脂感があるものを10(良)、濃厚感・油脂感が最もないものを1(悪)として、10段階評価した。結果を下表に示す。
上記表からわかるように、ヤシ油含有量が25%以下となることによって極端にホイップクリームの濃厚感、油脂感が低下した(比較例46-0-1〜46-0-2)。それに対して、本発明のデキストリン(調製例1)を用いると、かかる低カロリーのホイップクリームに対しても十分な濃厚感や油脂感を付与することができた(実施例45-1-1〜45-1-2)。これにより、濃厚感や油脂感を損なうことなく脂肪を低減し風味の良好なホイップクリームを調製することができる。更に、ヤシ油含有量が25%以下となることによって冷凍解凍時の離水が顕著に発生したが(比較例46-0-1〜46-0-2)、本発明のデキストリンを用いることにより、油脂含量の低減に伴う離水においても、顕著な離水防止効果を示した(実施例46-1-1〜46-1-2)。
実験例47 ホイップクリームの調製(3)
下記表に示す処方に従ってホイップクリームを調製した。まず、水に、ヤシ油以外の成分を全て添加し、80℃まで加熱し10分間撹拌溶解した。これにヤシ油をゆっくり添加し、80℃まで再加熱し5分間撹拌した。水で全量を100%に調整した後、これを均質機にかけてホモジナイズ(50kgf/cm2)し、UHT殺菌機にて142℃、6秒間殺菌し、再度、均質機にかけてホモジナイズ(200kgf/cm2)した。一晩エージングした後、冷蔵状態でコシがでるまでホイップし、ホイップ後のオーバーラン及びホイッピングタイムを測定した。
なお、オーバーランは、下式で求められる値であり、ホイップクリームがどの程度の空気を抱き込んで膨らんでいるかの判断指標になる値である。
またホイッピングタイムは、エージングした後のクリームを、冷蔵状態でホイップし始めてから、オーバーラン値が最もピークに達するまでに要する時間を意味する。
次いで、調製したホイップクリームを、絞り袋に充填して冷凍した後、自然解凍(室温で1時間)した。自然解凍したホイップクリームを絞り袋から花形に絞り出し、(1)冷凍解凍時の離水抑制効果、(2)保形性を評価した。なお、冷凍解凍時の離水抑制効果は、ホイップクリームを絞り出した後1時間の評価である。結果を、オーバーラン(%)とホイッピングタイムと併せて、表46に示す。(1)離水、(2)保形性に関しては、10段階で評価した(1悪→良10)。
先述するように、本発明のデキストリンを用いて調製したホイップクリームは、冷凍解凍後も良好な保形性を有し、離水も顕著に抑制されていた(実施例47-1-1)。デキストリンに加え、グリセリン脂肪酸エステルとして、ヨウ素価44〜120のモノグリセリン脂肪酸エステルまたはヨウ素価16〜42のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて調製した実施例47-1-2〜47-1-14のホイップクリームは、冷凍解凍後1時間経過後においても、花形のエッジ部分も明確であり(保形性)、離水も顕著に抑制され、絞り出し直後と変わらない形状を維持するだけでなく、ホイッピングタイムが顕著に短縮でき、またオーバーランの向上が認められた。さらに、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を併用することによりホイッピングタイムの短縮、オーバーランの更なる向上が認められた(実施例47-1-8〜47-1-11、47-1-14〜47-1-15)。一方、グリセリン脂肪酸エステルを用いても本発明のデキストリンを用いないで調製したホイップクリームは、保形性がなく、また離水を防止することもできなかった(比較例47-0-1〜47-0-4)。
実験例48 グミキャンディの調製(1)
調製例1のデキストリンを用いて、下記処方に従ってグミキャンディを調製した(実施例48-1)。
<処方1>
砂糖 31.0(kg)
水飴 26.0
ソルビトール 7.4
デキストリン(調製例1) 20.0
水 30.0。
<処方2>
マンゴピューレ 2.0(%)
クエン酸(無水) 1.0
スクラロース(20%水溶液) 0.2
色素 0.05
香料 0.2
水 0.55。
詳細には、まず、処方1に従って、各材料を計量して手鍋に入れ、加熱して沸騰させながら、全量が最終グミキャンディ100%中96%になるまで煮詰めた。これに処方2に従ってマンゴピューレ等の成分をすべていれて混合し(全量100%)、これを型容器に充填して冷却した。斯くして得られた食品は、滑らかで口溶けのよいグミ様の食感を有していた(実施例48-1:グミキャンディ)。
実験例49 グミキャンディの調製(2)
デキストリン(調製例1、既存品1〜5)を用いて、下記の処方に従ってグミキャンディを調製した(実施例49-1、比較例49-1〜49-5)。詳細には、鍋に水飴、ソルビトール、水を秤量し、砂糖及びデキストリンの粉体混合物を添加した。次いで、煮沸溶解し、全量が100kgとなるまで煮詰めた。そこへクエン酸を加え、スターチモールドに充填し、約24時間乾燥することにより、グミキャンディを調製した(可溶性固形分約77%)。なお、調製した各グミキャンディ(実施例49-1、比較例49-1〜49-5)について、調製時の作業性(充填粘度)、保形性、外観(色)、歯への付着性、風味、および食感について各々評価した。結果を表47に示す。
<グミキャンディ処方>
砂糖 30.0 (kg)
水飴 27.0
ソルビトール 8.0
デキストリン 20.0
クエン酸(無水)中粒 1.0
水 30.0
上記表に記載する評価は、以下の基準に従って行った。
充填時の作業性:スターチモールドへの充填粘度が低く、作業性に優れるものから−>±>+>++>+++の5段階で評価した。
保形性:保形性が良好なものから、+++>++>+>±>−の5段階で評価した。
なお、表中「NA」は調製不能により、評価ができなかった項目を示す。
既存品1のデキストリンを用いた場合は、調製例1のデキストリンを用いた場合に比べて、充填時の粘度が高く、やや作業性に劣っていた。また既存品1のデキストリンを用いて調製したグミキャンディ(比較例49-1)は、十分な保形性を有しておらず褐変色をしており、また澱粉臭やざらつき感があった。更に既存品1のデキストリンを用いて調製したグミキャンディ(比較例49-1)は、水飴様の食感をしており、調製例1のデキストリンを用いて調製されたグミキャンディ(実施例49-1)に比べて歯への付着性も大きかった。既存品2のデキストリンを用いた場合は、作業時の粘度が著しく高く、グミキャンディを調製すること自体が困難であった(比較例49-2)。既存品3および5のデキストリンを用いた場合は、いずれも充填時の粘度は良好で作業性に優れていたが、保形性がなく、グミキャンディを調製することができなかった(比較例49-3、49-5)。既存品4のデキストリンを用いた場合は、調製時に糸引きがあり煮詰めることが難しく、出来上がったグミキャンディも褐変色であり、澱粉臭がしていた。更には、水飴っぽい食感であり、歯への付着性も大きく、噛み切れずに伸びてしまった(比較例49-4)。一方、調製例1のデキストリンを用いることにより、調製時及び充填時の粘度も低く(サラサラであり)、十分な保形性を有するグミキャンディを調製することができた(実施例49-1)。調製されたグミキャンディは、澱粉臭もなく良好な風味、白色の外観及び脂肪様の滑らかな食感を有する上、比較例49-1〜49-5のグミキャンディと比較して歯への付着性も小さく、極めて商品価値の高いグミキャンディであった。
実験例50 ソフトキャンディの調製
調製例2のデキストリンを用いてソフトキャンディを調製した(実施例50-2)。詳細には、水と水飴を秤量し、砂糖及びデキストリンの粉体混合物を加え完全に溶解するまで煮詰め、硬化油脂、乳化剤を加えて所定量まで水分を飛ばした後、予め水に添加して膨潤させたゼラチンを加えて横型ニーダーにて十分に乳化した。これにフォンダンベース(水20%と砂糖80%からなり、結晶化した砂糖からなるペースト)を加えて砂糖結晶を出したものに、酸味料を加えて冷却し、ソフトキャンディを調製した(実施例50-2)。調製されたソフトキャンディは、硬く噛みごたえ(粘弾性)のある食感を有するソフトキャンディであり、更に歯付きも少なかった。
<ソフトキャンディ処方>
砂糖 34.6(kg)
水飴 36.0
デキストリン(調製例2) 10.0
水 50.0
硬化油脂 7.5
乳化剤 0.5
ゼラチン 1.5
水 3.0
フォンダンベース 10.0
酸味料 1.0
実験例51 生キャラメル様グミキャンディ
デキストリン及びサイリウムシードガムを用いて表48の処方に従い生キャラメル様グミキャンディを調製した。詳細には、水飴にサイリウムを分散し、水を加えて煮沸溶解した。次いで粉体混合した砂糖、デキストリン、乳化剤及びソルビトールを加えて約87kgまで煮詰め、生クリーム、無塩バター、食塩、カラメル色素、香料を加え混合後、スターチモールドに充填して室温で水分量が20〜25%となるまで乾燥させた。最後に光沢剤を表面に薄く皮膜させて表面処理を行い、生キャラメル様グミキャンディを調製した。一方、サイリウムシードガムを使用せず、20%のデキストリン(調製例3)を用いる、又はサイリウムシードガム単独で用いる(デキストリン不使用)以外は上記と同様の製法にてグミキャンディを調製した。
実験例52 ういろう様(もち様)グミキャンディ
下記処方に従ってういろう様(もち様)グミキャンディを調製した(実施例52-3-1〜52-3-2、比較例52-0)。詳細には、水飴にカラギナンを分散して水を加えて煮沸溶解した溶液に、調製例3のデキストリンと砂糖の粉体混合物、ソルビトールを加えて約80kgまで煮詰めた。次いで、こしあん、香料、色素等を加えスターチモールドに充填し、室温で水分量が20〜25%となるまで乾燥させた。最後に光沢剤を表面に薄く皮膜させて表面処理を行い、ういろう様グミキャンディを調製した。一方、カラギナンを使用せず、20%のデキストリン(調製例3)を用いる、又はカラギナン単独で用いる(デキストリン不使用)以外は上記と同様の製法にてグミキャンディを調製した。
実験例53 低脂肪乳飲料の調製
デキストリンの違いによる飲料の物性を評価するため、上記に示す各種デキストリン(調製例1及び既存品1〜5)を用いて低脂肪の乳飲料を調製した(実施例53-1、比較例53-1〜53-5)。詳細には、20℃の水にデキストリンを加えて溶解し、脱脂濃縮乳と混合後、150kgf/cm2にて均質化し、容器に充填後、85℃で30分間殺菌することにより低脂肪の乳飲料を調製した。また対照例として、デキストリンを使用せずに乳脂肪分を増量して、市販の低脂肪牛乳と同様に乳脂肪分が1.5%である乳飲料を調製した。
<低脂肪乳飲料 処方>
脱脂濃縮乳 30(%)
デキストリン 1
水 69
合 計 100%。
従来のデキストリン(既存品1〜5)を用いて調製した比較例53-1〜53-5の乳飲料は、低脂肪を目的として乳脂肪分が0.5%と低いため、乳脂肪分が1.5%である対照例の低脂肪牛乳に比べて著しく濃厚感や脂肪感が低下していた。更に、既存品1、2及び4を用いて調製された乳飲料(比較例53-1、53-2および53-4)は澱粉臭があり、飲料のフレーバーリリースや風味に悪影響があった。一方、本発明のデキストリン(調製例1)を用いることにより、乳脂肪分が1.5%である乳飲料(対照例)と遜色のない濃厚感・脂肪感を有する低脂肪の乳飲料を調製することができた(実施例53-1)。更に、実施例53-1の低脂肪の乳飲料は、ぬめりや糊っぽさがなく、滑らかな口溶けを有していた。
実験例54 乳酸菌飲料の調製
下記の処方により乳酸菌飲料を調製した。詳細には、水に表50に示す割合で脱脂粉乳、全脂粉乳を添加し、撹拌しながら93℃で10分間殺菌した後、150kgf/cm2にて均質化し、40℃まで冷却した。次いでスターターを全量の3%添加し、pH4.6になるまで発酵させた(発酵乳)。この発酵乳(全量の40%)に予め20℃の水に溶解した砂糖、デキストリン(調製例2、既存品1)、ペクチン及びブドウ糖を加え、乳酸でpHを4.2に調整したのち均質化し、(150kgf/cm2)、容器に充填することにより各種乳酸菌飲料を調製した(実施例54-2、比較例54-1)。また対照例として、デキストリンを用いず、全脂粉乳を用いて同様にして乳酸菌飲料を調製した。また比較のため、デキストリンも全脂粉乳も用いずに同様にして乳酸菌飲料を調製した(比較例54-0)。
<乳酸菌飲料処方>
発酵乳(処方別記) 40.0(%)
砂糖 7.0
乳酸 適量(pH4.2調整)
デキストリン 表51参照
ブドウ糖 表51参照
ペクチン 0.4
水 残 部
合 計 100.0。
本発明のデキストリン(調製例2)を用いることにより、乳脂肪分を0.1%まで低減させた場合であっても、乳脂肪分が1.5%である乳酸菌飲料(対照例)と遜色ない濃厚感及び滑らかな口あたりを有する低脂肪の乳酸菌飲料を調製することができた(実施例54-1)。一方、本発明のデキストリンの代わりに既存品1のデキストリンを用いて調製した乳酸菌飲料は(比較例54-1)、デキストリン非添加の乳酸菌飲料(比較例54-0)よりは濃厚感があったものの、その食感は粉っぽく、商品価値の低いものであった。
実験例55 ピューレ入り果汁飲料
以下の処方によりピューレ入り果汁飲料を調製した。詳細には、水と果糖ブドウ糖液糖にネイティブジェランガム、およびデキストリン(調製例3)を加え、80℃で10分間溶解した。次いで白桃ピューレ、5倍濃縮白桃果汁、クエン酸、色素を加え全量が100%となるように水で補正した。93℃達温殺菌を行い、香料を添加後、容器に充填することによりピューレ入り果汁飲料を調製した(実施例55-3)。一方、比較のため、調製例3のデキストリンの代わりに既存品1のデキストリンまたはブドウ糖をそれぞれ用いる以外は、実施例55-3と同様にして比較例55-1および比較例55-0のピューレ入り果汁飲料を調製した。
<ピューレ入り果汁飲料処方>
果糖ブドウ糖液糖 12.8(%)
白桃ピューレ 4.0
5倍濃縮白桃果汁 5.0
ネイティブジェランガム(ケルコゲルHT*) 0.02
デキストリンもしくはブドウ糖 7.0
色素 0.01
クエン酸 0.17
香料 0.1
水 残 部
合計 100.00。
調製例3のデキストリンを使用した場合、ピューレ感(果実感)に富み、また風味がよく非常にリッチな食感の白桃ピューレ入り飲料が調製できた(実施例55-3)。一方で、デキストリンの代わりにブドウ糖を用いた場合は、ピューレ感や風味の向上に全く効果がなく(比較例55-0)、また既存品1を用いた場合は澱粉の異臭が目立ち好ましくなかった(比較例55-1)。
実験例56 ピューレ入り乳飲料
以下の処方によりバナナオレを調製した。詳細には、水に全脂粉乳を加え、60℃にて溶解後、冷却した(溶液A)。一方で、水に砂糖、デキストリン及び発酵セルロースの混合物を加え、80℃にて10分間溶解した(溶液B)。溶液Bに溶液A、牛乳、バナナピューレ、香料を加え、70℃にて均質化した(150kgf/cm2)。90℃経温殺菌を行い、容器に充填、冷却することによりバナナオレ(ピューレ入り乳飲料)を調製した。
本発明のデキストリン(調製例1)を使用することにより、ピューレ感、濃厚感に富んだ乳飲料が得られた(実施例56-1-1〜56-1-2)。通常、濃厚感付与を目的として増粘多糖類を用いた場合、飲料によっては増粘多糖類特有のぬめりが食味に影響を与えることが多いが、本発明では、ぬめりを与えずにキレが良く、リッチな濃厚感と良好なフレーバーリリースを有するバナナオレ(乳飲料)を調製することができた(実施例56-1-1)。さらに、発酵セルロース製剤を併用することにより、デキストリンが沈殿することなく均一に分散し、さらに膨潤した発酵セルロース自身の網目構造が飲料中に形成されることから、デキストリンと相乗的に濃厚感を付与することが可能となり、安定性が向上し、更なる濃厚感が付与されたバナナオレを調製することができた(実施例55-1-2)。
実験例57 酸性乳飲料
下記処方に従って酸性乳飲料を調製した。詳細には、水および果糖ぶどう糖液糖に、砂糖と水溶性大豆多糖類、並びにデキストリン、タマリンドシードガム及び発酵セルロースの粉体混合物を添加し、80℃で10分間撹拌溶解した後、冷却した(溶液A)。一方、水に脱脂粉乳を添加し、60℃で10分間撹拌溶解した後、冷却した(溶液B)。調製した溶液Aに溶液B及び果汁を加え、50%W/Vクエン酸(無水)溶液にてpH4.0に調整後、少量のお湯に溶解した色素を添加した。次いで80℃まで加熱後、全量が100%となるように水で補正し、均質化処理を行った(14700kPa=150kgf/cm2)。93℃まで加熱し、香料を添加した後ホットパック充填して酸性乳飲料を調製した(実施例57-1)。得られた酸性乳飲料(実施例57-1)は、キレのいい飲み口でありながらこくみを感じる、従来には無い飲料となった。
<酸性乳飲料処方>
脱脂粉乳 1.1(%)
砂糖 2.0
果糖ぶどう糖液糖 8.0
ピーチ5倍濃縮透明果汁 0.8
水溶性大豆多糖類(SM-1200*) 0.3
デキストリン(調製例1) 0.95
タマリンドシードガム 0.02
発酵セルロース 0.006
色素 0.02
クエン酸 適 量
香料 0.12
水にて合計 100.00%。
実験例58 フラワーペーストの調製
調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従ってフラワーペーストを調製した(実施例58-1、比較例58-1〜58-5)。また比較のため、デキストリン5%を使用しない代わりに生クリームを5%増やしたものと(比較例58-0-1)、デキストリン5%を使用しない代わりに水を5%増やしたものとを(比較例58-0-2)、同様にしてフラワーペースト(デキストリン未使用)を調製した。なお、ゲルアップ‡PI* はローカストビーンガム及びカラギナン含有製剤、ゲルアップ‡K-S*は脱アシル型ジェランガム含有製剤である。
<フラワーペースト処方>
デキストリン 5.0(%)
生クリーム 10.0
脱脂粉乳 3.0
砂糖 20.0
加工澱粉(ファリネックスVA-70C)4) 1.0
薄力粉 1.0
20%加糖凍結卵黄 1.5
ゲル化剤(ゲルアップ‡PI*) 0.2
ゲル化剤(ゲルアップ‡K-S*) 0.1
乳清タンパク質(ミルプロ‡L-1*) 1.0
グリシン 2.0
香料 0.1
色素 0.1
水 残 部
合 計 100.0 %
4)松谷化学工業(株)製
詳細には、水、生クリームおよび加糖凍結卵黄の混合物を攪拌しながら、香料と色素以外の成分を加え、8000rpmで5分間ホモジナイズ処理を行った。これを90℃で10分間加熱しながら攪拌して溶解し、香料と色素を添加した。水で全量を100%に調整し、容器に充填して冷却した。
得られたフラワーペーストについて、(1)濃厚感・油脂感(1無→有10)、(2)食感、(3)風味、(4)離水の有無、および(5)総合評価を評価した。結果を表53に示す。
実験例59 フォアグラ風味食品の調製
調製例1または既存品1〜5のデキストリンを用いて、下記処方に従ってフォアグラの風味をつけた食品を調製した(実施例59-1、比較例59-1〜59-5)。また比較のため、デキストリン20%を使用しない代わりに水を20%増やしたものを、同様にしてフォアグラの風味をつけた食品を調製した(比較例59-0)。
<フォアグラ風味食品処方>
デキストリン 20.0(%)
鶏レバーペースト 5.0
コーンサラダ油 25.0
乳清タンパク質(ミルプロ‡LG*) 4.0
チーズパウダー 1.8
チキンパウダー 0.5
食塩 0.7
砂糖 0.3
洋酒 0.5
調味料(アミノベースNAG*) 0.1
甘味料(ソーマチン:ネオサンマルク‡AG*) 0.1
香辛料 0.1
水 残 部
合 計 100.0 %。
詳細には、まず、水、レバーペーストおよび洋酒を混合攪拌し、ストレーナーに通し、これにその他の原料を加えて、6000rpmで5分間ホモジナイズ処理を行った。これを容器に充填して121℃で20分間レトルト殺菌を行った。
得られた食品について、(1)食感、(2)離水の有無、(3)レトルト殺菌による褐変の有無、および(4)総合評価を評価した。結果を表54に示す。
実験例60 生チョコレート様食品の調製
調製例1のデキストリンを用いて、下記処方に従って生チョコレートの食感を有する食品を調製した(実施例60-1)。
<生チョコレート様食品処方>
脱脂ココアパウダー 15.0(%)
デキストリン(調製例1) 12.0
ゼラチン 0.2
ローカストビーンガム 0.2
スクラロース 0.003
香料 0.1
水 残 部
合 計 100.0%。
詳細には、まず、水に脱脂ココアパウダー以外の成分を添加し、加熱攪拌溶解し、これに脱脂ココアパウダーを添加混合して攪拌した。これを容器に充填して121℃で20分間レトルト殺菌を行った。斯くして得られた食品(実施例60-1)は、脂質含量0%でありながらも、生チョコレートと同様の食感と風味を有していた。
実験例61 アンチョビペーストの調製
調製例1のデキストリンを用いて、下記処方に従ってアンチョビペーストを調製した(実施例61-1)。
<アンチョビペースト処方>
アンチョビソース(塩分15-20%) 70.0(部)
デキストリン(調製例1) 30.0 。
詳細には、まず、アンチョビソースを攪拌しながら70℃まで加熱し、これにデキストリンをいれて加熱攪拌溶解した。これを容器に充填して一晩冷蔵した。斯くして塩分濃度が高い液体食品であるアンチョビソースを、ペースト状の食品にすることができた。
実験例62 和風めんつゆ
調製例1のデキストリンを用いて、下記処方に従って和風めんつゆを調製した(実施例62-1)。
<和風めんつゆ処方>
和風めんつゆ3倍濃縮品 33.0(%)
デキストリン(調製例1) 15.0
水 52.0
合計 100.0%。
詳細には、まず、80℃のお湯にデキストリンを添加して10分間撹拌溶解した。次に市販の和風めんつゆ3倍濃縮品を加えて更に5分撹拌し、5℃で冷却して3日間保存した。また比較のため、デキストリン15%に代えてゼラチンを15%用いて同様にして和風めんつゆを調製した(比較例62-0)。
調製された和風めんつゆはいずれも冷蔵状態、すなわち温度1〜15℃でゲル状であり、チルド輸送でゲル状のまま簡便に輸送することが可能である。また、当該和風めんつゆは、喫食時に電子レンジで加熱することにより容易に液状になる。かかる和風めんつゆを喫食したところ、ゼラチンを使用して調製した和風めんつゆ(比較例62-0)は、加熱した場合の食感がもったりしており、また香り立ちも弱かった。一方、調製例1のデキストリンを使用して調製した和風めんつゆ(実施例62-1)はもったり感がなく、また香り立ちも良かった。
実験例63 うどんスープ
調製例1のデキストリンを用いて、下記処方に従ってうどんスープを調製した(実施例63-1)。
<うどんスープ処方>
うどんスープ3倍濃縮品 33.0(%)
デキストリン(調製例1) 15.0
水 52.0
合計 100.0%。
詳細には、まず、80℃のお湯にデキストリンを添加して10分間撹拌溶解した。次に市販のうどんスープ3倍濃縮品を加えて更に5分撹拌し、5℃で冷却して3日間保存した。また比較のため、デキストリン15%に代えてゼラチンを15%用いて同様にしてうどんスープを調製した(比較例63-0)。
調製されたうどんスープは、いずれも冷蔵した0〜15℃でゲル状であり、チルド輸送でゲル状のまま簡便に輸送することが可能である。また、喫食時に電子レンジで加熱することにより、容易に液状のうどんスープとなる。かかるうどんスープを喫食したところ、比較例のうどんスープは食感がもったりしていて香り立ちが弱いのに対し、調製例1のデキストリンを使用して調製したうどんスープ(実施例63-1)はもったり感がなく、また香り立ちも良かった。
実験例64 味噌汁
調製例1のデキストリンを用いて、下記処方に従って味噌汁を調製した(実施例64-1)。
<味噌汁処方>
みそ 11.0(%)
デキストリン(調製例1) 15.0
水 74.0
合計 100.0%
詳細には、まず、80℃のお湯にデキストリンを添加して10分間撹拌溶解した。次にみそを溶いて更に5分撹拌し、5℃で冷却して3日間保存した。また比較のため、デキストリン15%に代えてゼラチンを15%用いて同様にして味噌汁を調製した(比較例64-0)。
斯くして調製した味噌汁は、いずれもチルド輸送時にゲル状で、喫食時に加熱することによって液状になるという特長を有している。また調製された調製例1のデキストリンを用いて調製した味噌汁(実施例64-1)はゼラチンを使用して調製した味噌汁(比較例64-0)に比べ、その食感も香り立ちも良好であった。
実験例10で調製した非乳化マヨネーズ様調味料の外観を示す図である。図中、(1)調製例1、(3)既存品1、(4) 既存品2、(5)既存品3、(6)既存品4、(7)既存品5のデキストリンを使用して調製した調味料を、また(2)デキストリン未使用で調製した調味料を示す。
実験例22で調製したチーズ様食品(実施例22-2)と市販品のとろけるスライスチーズを用いて、加熱後の伸び度合いを試験した結果を示す。
市販品のとろけるスライスチーズを用いて、加熱後の伸び度合いを試験した結果を示す(実験例22)。
実施例45-1のホイップクリーム(冷凍解凍後)を絞り袋から花形に絞り出した直後の画像(左)と、これを室温で1時間放置した後の画像(右)を示す。
比較例45-3のホイップクリーム(冷凍解凍後)を絞り袋から花形に絞り出した直後の画像(左)と、これを室温で1時間放置した後の画像(右)を示す。
比較例45-5のホイップクリーム(冷凍解凍後)を絞り袋から花形に絞り出した直後の画像(左)と、これを室温で1時間放置した後の画像(右)を示す。
比較例45-6のホイップクリーム(冷凍解凍後)を絞り袋から花形に絞り出した直後の画像(左)と、これを室温で1時間放置した後の画像(右)を示す。
比較例45-7のホイップクリーム(冷凍解凍後)を絞り袋から花形に絞り出した直後の画像(左)と、これを室温で1時間放置した後の画像(右)を示す。
比較例45-8のホイップクリーム(冷凍解凍後)を絞り袋から花形に絞り出した直後の画像(左)と、これを室温で1時間放置した後の画像(右)を示す。
比較例45-0のホイップクリーム(冷凍解凍後)を絞り袋から花形に絞り出した直後の画像(左)と、これを室温で1時間放置した後の画像(右)を示す。