JP6820157B2 - チーズ様食品用油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、チーズ様食品用油脂組成物に関する。
チーズは、公正競争規約上、「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」に分類される。「ナチュラルチーズ」は、乳などを凝固させた凝乳(カード)から乳清(ホエイ)の一部を除去したもの、それを熟成したもの、又はこれらに類するものと定義されている。また、「プロセスチーズ」は、ナチュラルチーズを粉砕し、加熱溶融し、乳化したものと定義されている。
従来より、コストの削減などの観点から、乳脂肪源であるチーズの使用量を減らして、又は全くチーズを使用せずに、チーズに類似した食品(チーズ様食品)を製造することが提案されている。
例えば、特開昭57−159441号公報(特許文献1)には、濃縮大豆蛋白質を60℃の温水に分散し、HLB13のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加して溶解し、この溶液に、パーム油70%、ヤシ油30%の混合油脂をランダムエステル交換反応した精製油に大豆レシチンを溶解したものを混合撹拌し、温度70℃で高圧ホモジナイザーにより処理して大豆乳を得、これにプロメラインを使用し、脱水カードを得、得られた脱水カード、ナトリウムカゼイン、全脂粉乳、食塩、天然チーズフレーバーをバキュームニーダー中に仕込み、85℃、500mmHgの減圧下で10分間加熱混練溶融した後、型詰め冷却することにより、チーズ様食品を得たことが記載されている。しかし、このチーズ様食品は、チーズを全く含有しておらず、天然チーズフレーバーで香り付けされたものであるため、チーズ本来の風味を得ることができない。
また、特開2010−22252号公報(特許文献2)には、原料チーズ類の含有量が10〜50重量%であって、油脂を全体の10〜40重量%、澱粉類を全体の2〜10重量%、ゼラチン類を全体の2〜10重量%含有し、製品硬度が50〜200gfであるチーズ様食品が開示されている。
しかし、これらの特許文献では、植物油脂の種類による機能性の報告はなされていない。
特開昭57−159441号公報 特開2010−22252号公報
本発明者は、チーズ様食品の原料チーズに配合する油脂(原料チーズに含まれる乳脂肪の一部と置き換える油脂)を検討している過程において、例えば、ヤシ油及びパーム油は、その候補となり得るが、ヤシ油では、チーズ様食品の風味は良好であるが、温度変化により硬度変化が生じ、一方、パーム油では、温度変化によりチーズ様食品の硬度変化は起こらないが、風味が損なわれるという、問題が生じることを見出した。
また、特許文献2の実施例で実際に使用されている大豆白絞油のように不飽和脂肪酸が多い液状油脂の使用は、光劣化しやすい傾向にある。大豆硬化油のように硬化を行った油脂は、極度硬化油以外はトランス脂肪酸が生成する為、健康に対する影響が懸念される。
従って、本発明の目的は、風味が良好であり、硬度変化が抑制され、光劣化耐性に優れ、かつトランス脂肪酸含量が少ないチーズ様食品を製造することができる、油脂組成物を提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、原料チーズにラウリン系油脂を含む原料油脂のエステル交換油脂を含む油脂組成物を配合することにより、風味、硬度変化、光劣化耐性及びトランス脂肪酸含量のいずれの点にも優れた、チーズ様食品が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
(1)原料チーズに配合してチーズ様食品を製造するための油脂組成物であって、ラウリン系油脂を含む原料油脂のエステル交換油脂を含む、前記油脂組成物。
(2)前記原料油脂が、ラウリン系油脂を40〜100質量%含む、(1)記載の油脂組成物。
(3)前記原料油脂が、さらに、パーム系油脂及び液状油脂から選択された少なくとも一種の非ラウリン系油脂を含む、(1)又は(2)記載の油脂組成物。
(4)原料チーズと、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の油脂組成物とを含む、チーズ様食品。
なお、本明細書において、「チーズ様食品」とは、例えば、原料チーズ(ナチュラルチーズ、プロセスチーズなど)に植物油脂を配合して得られる、チーズに類似した食品全般を包含する。
また、本明細書において、「ラウリン系油脂」とは、油脂を構成する全脂肪酸に対するラウリン酸の割合が30質量%以上である油脂の総称であり、ヤシ油、パーム核油(アブラヤシの種子由来の油)、ババス油、これらの加工油[例えば、硬化油、分別油、エステル交換油脂(ランダムエステル交換油脂など)]、及びこれら2種以上の混合油を含む概念で用いる。
さらに、本明細書において、「パーム系油脂」とは、パーム油(アブラヤシの果実由来の油)、その加工油[例えば、硬化油、分別油、エステル交換油脂(ランダムエステル交換油脂など)]、及びこれら2種以上の混合油を含む概念で用いる。
本発明の油脂組成物は、ラウリン系油脂を含む原料油脂のエステル交換油脂を含んでいるため、原料チーズの風味を損なわず、チーズ様食品として良好な風味をもたらすことができる。さらに、本発明の油脂組成物により、チーズ様食品の硬度変化を抑制できる。チーズ様食品は、長期間、冷蔵保存されるが、流通時や店頭に陳列する際には、周囲の温度変化を受けるため、一定の温度に保つことが困難である。温度変化を受けると、チーズ様食品の硬度が変化し得る。本発明の油脂組成物を配合したチーズ様食品は、上記のような硬度変化が有意に抑制されており、安定したチーズ様食品を提供できるという点で、極めて優れている。加えて、本発明の油脂組成物により、光劣化(光照射によって、異味、異臭が生じる現象)を抑制でき、かつ、トランス脂肪酸含量を低減することができるため、健康に対する影響を少なくすることができる。
[チーズ様食品用油脂組成物]
本発明の原料チーズに配合してチーズ様食品を製造するための油脂組成物(以下、「チーズ様食品用油脂組成物」と称する場合がある)は、ラウリン系油脂を含む原料油脂のエステル交換油脂(以下、「ラウリン系エステル交換油脂」と称する場合がある)を含んでいる。
ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂に含まれるラウリン系油脂は、例えば、ヤシ油、パーム核油、これらの分別油(パーム核ステアリン、パーム核オレインなど)、これらの硬化油(ヤシ硬化油など)、これら2種以上の混合油などが例示できる。これらのラウリン系油脂のうち、ヤシ油、パーム核油が好ましい。
ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂は、少なくともラウリン系油脂を含んでいればよく、さらにラウリン系油脂以外の油脂(非ラウリン系油脂)を含んでいてもよい。非ラウリン系油脂としては、パーム系油脂、液状油脂、これらの混合油などが例示できる。
ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂に任意に含有されるパーム系油脂はパーム果実由来の油脂であり、例えば、パーム油、パーム分別油(パームステアリン、パームオレイン、パームミッドフラクション、パームダブルオレインなど)、これら2種以上の混合油などが挙げられる。これらのパーム系油脂のうち、パーム油、パームオレイン、パームダブルオレインが好ましい。
ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂に任意に含有される液状油脂としては、室温(15〜25℃程度)で液体の油脂であればよく、例えば、大豆油、菜種油、ハイオレイック菜種油(例えば、オレイン酸含量65質量%以上の菜種油)、ハイエルシン菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、紅花油、ヒマワリ油、ハイオレイックヒマワリ油(例えば、オレイン酸含量65質量%以上のヒマワリ油)、亜麻仁油、胡麻油、これらの硬化油、これら2種以上の混合油などが例示できる。
液状油脂としては、菜種油、ハイオレイック菜種油、ハイエルシン菜種油、ヒマワリ油、ハイオイレイックヒマワリ油が好ましく、光劣化耐性の点から、ハイオレイック菜種油、ハイオイレイックヒマワリ油がより好ましい。
ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂中のラウリン系油脂の含有量は特に制限されない。ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂は、例えば、ラウリン系油脂を40〜100質量%(例えば、45〜99質量%)、好ましくは50〜100質量%(例えば、55〜90質量%)、さらに好ましくは60〜100質量%(例えば、65〜80質量%)、特に70〜100質量%含む。
ラウリン系油脂を含む原料油脂のエステル交換反応は、常法に従って行うことができ、選択的エステル交換反応であってもよいが、ランダムエステル交換反応が好ましい。ランダムエステル交換反応は、通常、アルカリ触媒(水酸化ナトリウム、ナトリウムメチラートなど)の存在下で行う。アルカリ触媒の使用量は、特に制限されず、原料油脂100質量部に対して、通常、0.1〜1質量部である。反応温度は、特に制限されず、通常、50〜150℃である。
ラウリン系エステル交換油脂の含有量は、特に制限されないが、例えば、チーズ様食品用油脂組成物の合計質量に対して、40質量%以上(例えば、45質量%以上)の範囲から選択でき、例えば、50質量%以上(例えば、55〜99質量%)、好ましくは60質量%以上(例えば、65〜95質量%)、さらに好ましくは70質量%以上である。
本発明のチーズ様食品用油脂組成物は、チーズ様食品の風味などの点から、さらに、ラウリン系エステル交換油脂以外のラウリン系油脂(ラウリン系非エステル交換油脂)を含んでいてもよい。ラウリン系非エステル交換油脂としては、ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂の項で記載したラウリン系油脂と同様の成分が挙げられ、好ましい成分も同様である。
ラウリン系非エステル交換油脂の割合は、チーズ様食品油脂組成物100質量%に対して、例えば、30質量%未満(例えば、1〜20質量%)、好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。ラウリン系非エステル交換油脂の含有量が多すぎると、チーズ様食品が硬度変化する恐れがある。
ラウリン系油脂の含有量(ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂中のラウリン系油脂と、ラウリン系非エステル交換油脂の総量)は、チーズ様食品用油脂組成物の合計質量に対して、例えば、20質量%以上(例えば、20〜99質量%)、好ましくは25質量%以上(例えば、25〜95質量%)、さらに好ましくは30質量%以上である。
本発明のチーズ様食品用油脂組成物は、チーズ様食品の食感調整(例えば、口溶け)などの点から、さらにパーム系油脂を含んでいてもよい。パーム系油脂としては、ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂の項で記載した成分と同様の成分が挙げられ、好ましい成分も同様である。なかでも、口溶けの点から、パームオレイン、パームダブルオレインが好ましく、パームダブルオレインが最も好ましい。
パーム系油脂の含有量(ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂中のパーム系油脂と、それ以外のパーム系油脂との総量)は、チーズ様食品用油脂組成物の合計質量に対して、例えば、70質量%以下、好ましくは65質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下(例えば、1〜60質量%)である。パーム系油脂の含有量が多すぎると、風味が低下する恐れがある。
本発明のチーズ様食品用油脂組成物は、チーズ様食品の風味、食感調整(例えば、口溶け)などの点から、さらに液状油脂を含んでいてもよい。液状油脂としては、ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂の項で記載した成分と同様の成分が挙げられ、好ましい成分も同様である。
液状油脂の含有量(ラウリン系エステル交換油脂の原料油脂中の液状油脂と、それ以外の液状油脂との総量)は、チーズ様食品用油脂組成物の合計質量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下(例えば、1〜20質量%)である。液状油脂の含有量が多すぎると、光劣化する恐れがある。
本発明のチーズ様食品用油脂組成物は、種々の添加剤、例えば、乳化剤、安定剤(酸化防止剤など)、保存料、香料などを含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
本発明のチーズ様食品用油脂組成物において、トランス脂肪酸含量を低減することができる。トランス脂肪酸含量は、チーズ様食品用油脂組成物の合計質量に対して、例えば、5質量%以下(例えば、0.1〜4.5質量%)、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
本発明のチーズ様食品用油脂組成物は、酸化難易度が低く、酸化難易度は、例えば、200以下、好ましくは150以下であり、光劣化耐性に優れている。
本発明のチーズ様食品用油脂組成物は、チーズ様食品の硬度変化(例えば、硬化)を抑制、特に、温度変化(例えば、ヒートショック)による硬度変化(例えば、硬化)を抑制するために好適に使用できる。
[チーズ様食品]
本発明のチーズ様食品は、原料チーズと、上記のチーズ様食品用油脂組成物とを含んでいる。原料チーズは、ナチュラルチーズ及びプロセスチーズのいずれであってもよい。ナチュラルチーズとしては、軟質チーズ(例えば、モッツァレラ、マスカルポーネなどの非熟成タイプ、カマンベールなどの熟成タイプ)、半硬質チーズ(例えば、ゴルゴンゾーラ、ゴーダなどの熟成タイプ)、硬質チーズ(例えば、エメンタール、チェダーなどの熟成タイプ)、超硬質チーズ(例えば、パルミジャーノ・レッジャーノなどの熟成タイプ)が例示できる。プロセスチーズとしては、前記例示の1種又は2種以上のナチュラルチーズを加熱溶融して乳化したものが挙げられる。これらの原料チーズは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
原料チーズの割合は、特に制限されないが、チーズ様食品100質量部に対して、例えば、10〜99質量部の範囲から適宜選択できる。チーズ様食品用油脂組成物の割合は、チーズ様食品100質量部に対して、例えば、1〜50質量部、好ましくは1〜40質量部、さらに好ましくは5〜40質量部、さらにより好ましくは10〜35質量部である。チーズ様食品用油脂組成物の割合が多すぎると、植物油脂の風味が強くなり過ぎる。
本発明のチーズ様食品は、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、溶融塩、乳化剤、乳タンパク(カゼインナトリウムなど)、安定剤、香料、着色料、糖類、これらの組み合わせなどが挙げられる。
溶融塩としては、リン酸塩(例えば、Na塩)、クエン酸塩(例えば、Na塩)、これらの組み合わせなどが例示できる。乳化剤としては、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、酢酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリドなどの有機酸モノグリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン(例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン)、酵素分解レシチン、これらの組み合わせなどが例示できる。
[チーズ様食品の製造方法]
本発明のチーズ様食品は、例えば、(i)原料チーズを溶解する工程、(ii)工程(i)で得られた溶液に、少なくとも本発明のチーズ様食品用油脂組成物を添加して混合する工程、及び、(iii)工程(ii)で得られた溶液を冷却する工程を含む方法により、製造できる。
工程(i)では、通常、原料チーズと水と溶融塩とを混合することにより、原料チーズを溶解する。水の使用量は、原料チーズの溶解性に応じて適宜選択され、例えば、チーズ様食品100質量部に対して、15〜80質量部の割合(含水率)となるような範囲で水を使用してもよい。溶融塩としては、「チーズ様食品」の項で例示した成分と同様であり、好ましくはクエン酸塩(特に、クエン酸ナトリム塩)である。溶融塩は、例えば、チーズ様食品100質量部に対して、0.1〜5質量部となるような範囲で使用してもよい。
工程(ii)では、通常、工程(i)で得られた溶液と、チーズ様食品用油脂組成物と、添加剤(乳タンパク、乳化剤など)とを混合する。チーズ様食品用油脂組成物の使用量は、「チーズ様食品」の項で例示した割合と同様であり、例えば、チーズ様食品100質量部に対して、1〜50質量部となるような範囲で使用してもよい。添加剤は、例えば、チーズ様食品100質量部に対して、0.1〜20質量部となるような範囲で使用してもよい。工程(ii)の混合温度は、例えば、60〜100℃である。
工程(iii)では、通常、工程(ii)で得られた溶液を1〜10℃程度に冷却する。
本発明のチーズ様食品は、上記の工程(i)〜(iii)を含む方法により、製造することができる。本発明では、乳脂肪源であるチーズの使用量を減らすことができ、コストの削減などの点からも優れている。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断わりのない限り、「部」は質量基準である。
[チーズ様食品の評価方法]
(1)硬度変化
硬度変化は、式:(ヒートショック後の硬度)−(初期硬度) により算出した。
ここで、初期硬度とは、チーズ様食品を製造した後5℃で保存し、製造日の翌日に測定した硬度である。ヒートショック後の硬度とは、15℃で12時間処理した後、5℃で12時間処理するサイクルを1サイクルとし、2サイクル実施し、各サイクルの終点での硬度である。
硬度は、レオメータ((株)島津製作所製、EZTest)を用いて、球型ブランジャー(直径10mm)で20mm/分の速度で10秒間押したときの応力(gf)を測定することにより算出した。
硬度変化が良好か否かは、以下の基準により判定した。
◎:硬度変化の絶対値が30gf未満
○:硬度変化の絶対値が30gf以上60gf未満
△:硬度変化の絶対値が60gf以上90gf未満
×:硬度変化の絶対値が90gf以上
(2)光劣化耐性
光劣化耐性は、油脂組成物の脂肪酸組成を測定し、該脂肪酸組成から算出した酸化難易度を指標として評価した。具体的には、脂肪酸組成は、基準油脂分析法(2.4.2.3-2013 脂肪酸組成 キャピラリーガスクロマトグラフ法)に準拠し、ガスクロマトグラフィー装置(島津製作所(株)製「GC-2010型」、カラム:SUPELCO社製、SP-2560)を用いて測定した。
また、酸化難易度は、油脂組成物の不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、リノレン酸)含量にそれぞれ特定の係数(オレイン酸…0.89、リノール酸…21、リノレン酸…39)を掛けた数値の和をその油脂組成物の酸化難易度とした(参考文献:福沢健治、寺尾純二、脂質過酸化実験法、廣川書店)。
光劣化耐性は、油脂組成物の酸化難易度を指標として、以下の基準により判定した。
◎:酸化難易度が150以下である
○:酸化難易度が150を超えて200以下である
△:酸化難易度が200を超えて250以下である
×:酸化難易度が250を超える
(3)風味
パネラー5名により、チーズ様食品を試食し、風味を以下の基準で評価した。
◎:良好なチーズ風味である
○:良好なチーズ風味であるが、植物油脂の風味がやや感じられる
△:チーズ風味がやや弱く、植物油脂の風味が感じられる
×:チーズ風味が弱く、植物油脂の風味を強く感じる
(4)トランス脂肪酸含量
トランス脂肪酸含量は、日本油化学会編「基準油脂試験分析法」(2007年)に記載の「トランス脂肪酸含量(キャピラリーガスクロマトグラフ法)」により決定し、以下の基準により判定した。
○:トランス脂肪酸含量が5質量%以下である
×:トランス脂肪酸含量が5質量%を超える
[チーズ様食品の調製]
実施例及び比較例のチーズ様食品は、以下の方法により調製した。
(エステル交換油脂の調製)
表1に示す原料油脂を表1に示す質量割合でエステル交換反応容器に仕込み、0.05MPaまで減圧し、110℃まで加熱し、油脂に残存する水分を除去した。その後、90℃まで冷却し、減圧解除と同時に窒素を吹き込み、油脂と空気とが触れないようにしながらアルカリ触媒(ナトリウムメトキシド)を油脂に対して0.12質量%添加してエステル交換反応を開始した。反応開始から30分後、油脂と同量の水を加えてエステル交換反応を停止した。水洗後、反応生成物から減圧乾燥により水分を除去し、エステル交換油脂を得た。
Figure 0006820157
(チーズ様食品用油脂組成物の調製)
表2に示す油脂を表2に示す割合で配合することにより、チーズ様食品用油脂組成物を得た。
(チーズ様食品の調製)
10Lミキサー(株式会社イズミフードマシナリ製)に、プロセスチーズ(脂質29.2質量%、たんぱく質20.8質量%、炭水化物2.4質量%、灰分5質量%、水分42.6質量%)60部、クエン酸三ナトリウム0.2部、水9.8部を入れ、加熱混合し、プロセスチーズを溶解した。溶解したプロセスチーズに、チーズ様食品用油脂組成物25部、カゼインナトリウム5部を加え、80℃まで加熱し、混合した。140mLのプラスチック溶液に分注し、5℃の冷蔵庫で1晩冷却することにより、チーズ様食品を得た。
[チーズ様食品の評価結果]
チーズ様食品の評価結果を、以下の表2に示す。
Figure 0006820157
表2の結果から明らかなように、実施例のチーズ様食品は、比較例のチーズ様食品と比べて、風味が優れており、ヒートショックによる硬度変化及び光劣化が有意に抑制されており、かつトランス脂肪酸含量が少なく健康に対する影響もない。
本発明の油脂組成物は、原料チーズに配合することにより、風味、硬度変化、光劣化耐性及びトランス脂肪酸含量のいずれの点にも優れたチーズ様食品を製造することができるため、チーズ様食品用の油脂組成物として好適に使用できる。

Claims (3)

  1. 原料チーズに配合してチーズ様食品を製造するための油脂組成物であって、
    前記油脂組成物質量に対して40〜100質量%のエステル交換油脂と、残部としてラウリン系非エステル交換油脂、パーム系油脂、及び液状油脂から選択される少なくとも一種の油脂とを含み、
    前記エステル交換油脂が、原料油脂質量に対して40〜100質量%のラウリン系油脂と、残部としてパーム系油脂及び液状油脂から選択される少なくとも一種の非ラウリン系油脂とを含む原料油脂のエステル交換油脂であり、
    炭素数6〜10である脂肪酸のみが結合したトリアシルグリセロールを含まない、前記油脂組成物。
  2. トランス脂肪酸含量が5質量%以下である、請求項1記載の油脂組成物。
  3. 原料チーズと、請求項1または2に記載の油脂組成物とを含む、チーズ様食品。
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