JP5414926B2 - 澱粉分解物および飲食品用味質改善剤ならびにその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、低甘味および低粘度でありかつ食品素材本来の味質を損なわないバランスのとれた甘味を有する澱粉分解物よび飲食品用味質改善剤ならびにその用途に関する。
飲料類、ソース・タレ類、ペースト類、菓子類、ベーカリー類をはじめとする様々な加工食品において、甘味の付与、澱粉の老化防止(保水性向上)、粘度の調整、浸透圧の調整、照り・ツヤ感の付与、ボディ感・コク味の付与、食品の増量、不快味のマスキング等を目的として種々の澱粉分解物が添加されている。澱粉分解物とは澱粉を酸または酵素で加水分解することで得られるα-1,4結合したグルコースポリマーを主鎖としたものであり、そのグルコース重合度組成(糖組成)によりデキストリンとマルトオリゴ糖・水飴に大別される。澱粉分解物の味質・物性はその重合度組成に左右され、重合度の高い澱粉分解物を主成分とするデキストリンは低甘味でありボディ感・コク味の付与効果が高いが、高分子特有のデキストリン臭・糊臭を有しているため食品の風味に悪影響を及ぼす可能性や粘度が高く、作業性や食感に悪影響を及ぼす可能性がある。一方で、重合度の低い澱粉分解物を主成分とするマルトオリゴ糖は高分子に由来する糊臭等の異味・異臭がなく、粘度が低いため作業性に優れるが、甘味度が高いため食品の味質に影響を及ぼす可能性があり、ボディ感・コク味の付与効果もデキストリンと比べると低い。
上記通り澱粉分解物は種々の性質を有し、その性質は重合度組成に大きく依存しているため、数多くの特殊な重合度組成の澱粉分解物が開発されている。特許文献1〜2には重合度3のマルトトリオース(G3)を主成分とする澱粉分解物が開示されている。特許文献3〜4には重合度4のマルトテトラオース(G4)を主成分とする澱粉分解物が開示されている。特許文献5〜6には重合度5のマルトペンタオース(G5)を主成分とする澱粉分解物が開示されている。特許文献7には重合度6のマルトヘキサオース(G6)を主成分とする澱粉分解物が開示されている。特許文献8には重合度6〜7のマルトヘキサオース(G6)およびマルトヘプタオース(G7)を主成分とする澱粉分解物が開示されている。
また、近年、食品に対する嗜好性が多様化しており、低甘味でありボディ感・コク味の付与効果が高くかつ低粘度、後味の良い澱粉分解物が求められる傾向にある。上記目的を達成するために種々の澱粉分解物が開発されており、特許文献9〜11には特定重合度の糖組成物を有し、高分子を減じた澱粉分解物(マルトデキストリン)が開示されている。
上記通り、既存澱粉分解物は食品への添加に関し未だ改善の余地があり、低甘味、コク味付与、低粘度、異味・異臭の無さを満たしさらにバランスのとれたすっきりした甘味を有する新たな澱粉分解物の開発が望まれていた。
特開平03−251173号公報 特開平04−108356号公報 特開昭63−267244号公報 特開昭64−16596号公報 特開平04−45794号公報 特開平08−9988号公報 特開2000-166504号公報 特開平04−210597号公報 特開2009−112212号公報 特開2010−229234号公報 特開2010−226988号公報
しかし、上記特許文献1〜8に記載の澱粉分解物は、いずれも特定重合度のマルトオリゴ糖を高含有した澱粉分解物を製造することを目的とした技術であり、各重合度のマルトオリゴ糖由来の性質・効果は顕著であるが、澱粉分解物全体の糖組成のバランスを考慮したものではないため、食品に添加した場合にその風味に悪影響を及ぼす場合があった。
上記特許文献9〜11に記載の澱粉分解物は、重合度14〜20程度の糖組成物を含んでおり、当該糖組成物由来の異味・異臭を排除することはできず、食品自体の風味をマスキングしてしまうことから、風味の点において依然として問題があった。
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、低甘味、低粘度であり、立ち・切れが早くすっきりした甘味を有し、コク味付与効果があり、異味・雑味の無いバランスのとれた味質を有する新規澱粉分解物およびその用途を提供することを目的とする。
上記問題を解決するために本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、意外にも下記要件を満たす澱粉分解物が所望の効果を有することを発見し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
(A):下記(1)〜(5)を満たす澱粉分解物。
(1)重合度6〜7の糖含量/重合度4〜5の糖含有量=0.75〜1.25、
(2)重合度14以上の糖含量が5重量%以下、
(3)重合度1〜3の糖含量が45重量%以下、
(4)甘味度が25以下、
(5)20℃における固形分70%糖液の粘度が1500mPas以下。
(B):重合度8〜13の糖含量が3〜10重量%である(A)に記載の澱粉分解物。
(C):(A)または(B)記載の澱粉分解物を有効成分とする飲食品用味質改善剤。
(D):(A)または(B)記載の澱粉分解物または(C)記載の味質改善剤を含有することを特徴とする飲食品。
(E):飲食品がペースト類、ジャム類、ソース・タレ類、和菓子類、冷菓類、焼菓子類、飲料から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする(D)記載の飲食品。
本発明によれば、低甘味、低粘度であり、立ち・切れが早くすっきりした甘味を有し、コク味付与効果があり、異味・雑味の無いバランスのとれた味質を有する新規澱粉分解物およびその用途を提供することができる。また、当該澱粉分解物を飲食品に添加することで風味を害することなくすっきりとしたバランスのとれた甘味やコクを付与した飲食品を得る事ができる。
<澱粉分解物>
本発明の澱粉分解物は下記(1)〜(5)を満たすものである。
(1)重合度6〜7の糖(以下、G6−G7と表記することがある)含量と/重合度4〜5の糖(以下、G4−G5と表記することがある)含有量=0.75〜1.25、
(2)重合度14以上の糖(以下、G14以上と表記することがある)含量が5重量%以下、
(3)重合度1〜3の糖(以下、G1−G3と表記することがある)含量が45重量%以下、
(4)甘味度が25以下、
(5)20℃における固形分70%糖液の粘度が1500mPas以下。
上記本発明の「澱粉分解物」における糖組成、甘味度、粘度、及びDEは、実施例に示した方法で測定される。
本発明における「澱粉分解物」とは、澱粉を加水分解することにより得られる糖組成物全般のことを指し、重合度4〜5の糖の少なくとも1種及び重合度6〜7の糖の少なくとも1種を含み、さらに、重合度1〜3の糖の少なくとも1種を含むことがあり、重合度14以上の糖を含むことがあり、重合度8〜13の糖の少なくとも1種を含むことがあり、デキストリンやマルトオリゴ糖を含むこともできる。
本発明における澱粉分解物は、上記(1)〜(5)の要件を満たすものであればその製造方法に特に限定はなく、澱粉を酸分解した物でも、酵素分解した物でも良い。澱粉を酵素分解する際の澱粉分解酵素にも特に限定は無いが、α−アミラーゼおよび枝切り酵素を用いるのが好ましく、α−アミラーゼおよびイソアミラーゼを用いるのが特に好ましい。枝切り酵素は、澱粉の分岐点であるα−1,6−グルコシド結合の加水分解反応を触媒する酵素であり、上記イソアミラーゼ以外にプルラナーゼなども挙げることができる。
さらに、本発明における澱粉分解物は、上記に示した通り澱粉の分解により直接本発明の澱粉分解物を得ても良く、澱粉分解物に分画処理等を施すことにより特定重合度の糖組成物を分取・除去することで得ても良く、複数の澱粉分解物を混合することで得ても良いが、その製造効率・コストを考慮すると澱粉の分解により直接製造するのが好ましい。
本発明の澱粉分解物の原料となる澱粉は、食品用に利用可能な澱粉であれば特に制限は無いが、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、片栗澱粉、葛澱粉、蕨澱粉、サゴ澱粉、緑豆澱粉、オオウバユリでん粉などが挙げられる。また、いずれの澱粉においても通常の澱粉に加え、ウルチ種、ワキシー種、ハイアミロース種のように、育種学的手法もしくは遺伝子工学的手法において改良されたものでも良い。さらに、上記澱粉は、酸化処理、エステル化処理、エーテル化処理、架橋処理といった化学加工処理を施したものでも、湿熱処理、油脂加工処理、ボールミル処理、微粉砕処理、加熱処理、温水処理、漂白処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等の物理加工を施したものでも良い。
本発明の澱粉分解物は、より具体的には、澱粉を耐熱性α−アミラーゼで液化した後、α−アミラーゼおよび/または枝切り酵素で加水分解することによって調製する事ができる。例えば、澱粉を15〜35質量%のスラリー(懸濁液)とした後、例えば、アルカリ性カルシウム塩を用いpH5.0〜7.0に調整する。この澱粉スラリーに耐熱性α−アミラーゼを加え、ジェットクッカーやオートクレーブ等の加熱装置を用いて100〜130℃に加熱し、30〜120分間程度加水分解することによって、DE6から10程度、好ましくは7から9程度の液化液を調製する。このときのDEが低すぎれば、得られる澱粉分解物に高分子成分が残存してしまい糊臭や高粘度の原因となり、逆に高過ぎれば甘味度の高いG1〜G3の低分子糖が多く生成され、澱粉分解物の甘味度が高くなってしまう。
次に、糖化反応に用いる酵素の反応可能pHとなるよう、液化液のpHを例えば、塩酸または苛性ソーダを用いて調整し、α−アミラーゼと枝切り酵素を添加して50〜60℃で12〜60時間反応させることができる。各酵素添加量および反応時間は、澱粉分解物の糖組成を確認しながら決定する。酵素添加量、反応時間の不足により加水分解反応が十分に進行しないと、重合度14以上の高分子成分が残存し得られる澱粉分解物の糊臭や高粘度の原因となる場合がある。一方で酵素添加量、反応時間が過剰であり加水分解反応が必要以上に進行すると、甘味度の高いG1〜G3の低分子糖が多く生成され、澱粉分解物の甘味度が高くなり、またコク味が低減してしまう傾向がある。G4−G5含量とG6−G7含量のバランスに関しても、各酵素添加量および反応時間に左右される傾向がある。枝切り酵素の添加量を増やすことでG6−G7含量が増え、α−アミラーゼ添加量を増やすことや反応時間を延ばすことで基質の加水分解が進み、結果としてG6−G7含量が減りG4−G5含量が増える傾向がある。その後、澱粉分解物の白濁を防止するため、例えば、80℃で1時間程度保持し、液化液のヨウ素―澱粉反応の消失を確認する。pHを4とすることで酵素反応を停止する。その後、必要により、活性炭等による脱色ろ過、イオン交換樹脂等に拠る脱塩処理した後、真空濃縮により濃度75%に濃縮して液状の澱粉分解物とすることができる。
さらに、本澱粉分解物をクロマト分離装置や膜分画装置を用いて分画処理を行い、特許請求の範囲を逸脱しない様、低分子成分や高分子成分を分離除去して製造することも可能である。さらに、後述の実施例に示した通り、α−アミラーゼのみを用いて澱粉分解物を製造し、高分子を除去することで本発明の澱粉分解物を得ても良い。また、得られた澱粉分解物に各種市販のマルトオリゴ糖シラップを適宜混合し、本発明の範囲にある澱粉分解物を得る事も当然可能である。
本発明の効果において、本発明の澱粉分解物について示した各物性について説明する。
「低甘味」とは、甘味度が25以下であることを示す。一般的に甘味度とは、砂糖の甘味を100とした時の相対値で表わされる。本発明澱粉分解物の甘味度は25以下であり、砂糖よりかなり低い甘味となっている。
「低粘度」とは、Brix.70、20℃の条件下でB型粘度計(東機産業(株)社製)を用いて測定した糖液の粘度が1500mPas以下であることを示す。従来の低甘味糖(甘味度25以下)は、高分子区分を多く含むことから糖液の粘度が高い。例えば甘味度が25以下の低甘味糖で比較すると、粘度は2000mPasを超えるものが多い中、本発明澱粉分解物は1500mPas以下という低い粘度を有する。
「立ち・切れが早くすっきりした甘味」とは、本発明澱粉分解物を口に含んだときに、最初の早い時点で甘味が感じられ(立ち)、後に引かずに速く無くなる(切れ)という味質の特徴を示しており、甘味が残らないことですっきりした味質であると感じる。
「コク味付与効果」とは、5つの基本味(甘味、塩味、酸味、辛味、苦味)のどれかにのみ関わるものというよりは、それぞれの味の濃度感や充実感につながる感覚であるコク味を付与する効果である。一般的に使用される比較的甘味の高い澱粉分解物は、甘さが強いだけの味質であるが、本発明澱粉分解物はボディ感があり、コク味付与効果を有する。
「異味・雑味の無いバランスのとれた味質」とは、後味にデキストリン臭や雑味が残らず、甘味の立ちが速く、キレも早い特徴を持ちつつ、ボティ感によるコク味を有することから、ある特徴が際立ったり、不足することが無い味質とことを示す。
さらに本発明の効果において、本発明の澱粉分解物を添加した飲食品について示した各物性について説明する。
「風味を害することなく」とは、食品自体の味や香りをマスキングしたり、突出させたりすること無く、食品自体の風味がクリアーに感じる事が可能となる。
「すっきりとしたバランスのとれた甘味やコク」とは、甘味が強すぎず、また甘味のきれが良く、後味にデキストリン臭や雑味の無いすっきりとした味質とボティ感のある甘味を示す。
本発明の澱粉分解物の(1)〜(5)のファクターについて説明する。
(1)重合度6〜7の糖(G6−G7)含量/重合度4〜5の糖(G4−G5)含量=0.75〜1.25、
(1)の比率は、「味質のバランス」に関係する。G6−G7含量またはG4−G5含量のどちらかが少なくなることで(1)が0.75〜1.25の範囲を外れると、後述の実施例に示すように、その他物性(甘味の立ち、切れ、コク味等)のバランスが崩れ偏った味質となり、味質のバランスが悪化する。その結果、総合的な風味に悪影響を及ぼす。ただ、必ずしも(1)のファクターだけで味質のバランスが決まるわけではなく、その他ファクターが複合的に組み合わされて味質のバランスは決まる。上記(1)の数値範囲は、味質のバランスの観点から、0.78〜1.22であることが好ましく、0.8〜1.2であることがより好ましい。
G6−G7含量/G4−G5含有量が上記範囲であれば、良好な「味質のバランス」を提供でき、G6−G7含量及びG4−G5含有量のそれぞれについては限定されるものではない。但し、G6−G7含量は、例えば、18〜53重量%の範囲、G4−G5含有量は、例えば、18〜55重量%の範囲とすることが、その他の糖の含有量を考慮すると適当である。また、G4−G5におけるG4含量とG5含量の割合、G6−G7におけるG6含量とG7含量の割合は、特に制限はない。但し、例えば、G4含量:G5含量は、1:99〜99:1の範囲、好ましくは10:90〜90:10の範囲とすることができ、G6含量:G7含量は、1:99〜99:1の範囲、好ましくは10:90〜98:2の範囲とすることができる。
G4−G5含量とG6−G7含量のバランスは、前述のように、各酵素添加量および反応時間に左右される。枝切り酵素の添加量を増やすことでG6−G7含量が増え、α−アミラーゼ添加量を増やすことや反応時間を延ばすことで基質の加水分解が進み、結果としてG6−G7含量が減りG4−G5含量が増える。この性質を利用して、G4−G5含量とG6−G7含量のバランス並びにG4−G5含量及びG6−G7含量を上記範囲に調整することができる。
(2)重合度14以上の糖(G14以上)含量が5重量%以下
(2)のファクターは、「甘味のキレの速さ」、「雑味の無いクリアーな味」、「デキストリン臭」に関係する。G14以上含量が5重量%を超えると、甘味のキレが悪くなり、雑味が増え、高分子由来のデキストリン臭が生じ、食品の風味にも悪影響を与える。G14以上含量は、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1.5重量%以下、最も好ましくは実質的に含まないことである。「実質的に含まない」とは、後述する糖組成分析条件において、検出限界以下であることを意味する。G14以上含量は、澱粉スラリーから液化液を調製する際のDEを、例えば、DE3から10程度、好ましくは7から9程度に調整することや、枝切り酵素添加量を調整することで制御できる。このときのDEが低すぎれば、得られる澱粉分解物に高分子成分が残存してしまい糊臭や高粘度の原因となるG14以上含量が高くなる。枝切り酵素添加量を増やすことで、G14以上含量を低くすることかできる。
(3)重合度1〜3の糖(G1〜G3)含量が45重量%以下
(3)のファクターは、「甘さの好ましさ」、「甘味の立ちの速さ」に影響する。G1〜G3含量が45重量%を超えると、甘味の立ちが速くなるが、甘味が強すぎて甘さの好ましさの評価が低くなる。一方、G1〜G3含量が低くなると、甘味が弱いため甘さの好ましさの評価は高くなるが、甘味の立ちが遅くなる場合がある。このような観点から、G1〜G3含量は、好ましくは42重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下であり、下限は特に制限はないが、例えば、20重量%以上、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上である。
G1〜G3含量は、澱粉スラリーから液化液を調製する際のDEを、例えば、DE6から10程度、好ましくは7から9程度に調整することで制御できる。このときのDEが高過ぎると、甘味度の高いG1〜G3の低分子糖が多く生成され、澱粉分解物の甘味度が高くなる。
(4)甘味度が25以下
(4)のファクターは、「甘味の好ましさ」に影響する。甘味度が25を超えると甘味が強すぎて甘さの好ましさの評価が低くなる。甘味度は、好ましくは24以下である。甘味度の下限は特に制限はないが、例えば、15以上、好ましくは20以上である。甘味度は、甘味度の高いG1〜G3の含量による影響が大きく、主にG1〜G3含量をコントロールすることで、調整できる。但し、他の糖含量による影響もあることから、G4以上の含量も考慮して調整される。
(5)20℃における固形分70%糖液の粘度が1500mPas以下
(5)のファクターは、本発明の澱粉分解物を添加剤等として利用する際の「作業性」や本発明の澱粉分解物を添加した食品の「食感」に影響する。上記粘度が高くなると、作業性は悪化する傾向があり、食品に添加した場合に食品自体の食感(表3および表6のべたつき)に悪影響を及ぼす可能性がある。このような観点から、本発明の澱粉分解物においては、上記粘度を1500mPas以下とする。上記粘度は、好ましくは1200mPas以下、より好ましくは1180mPas以下である。下限は特に制限はないが、例えば、1000mPas以上、好ましくは1050mPas以上である。
上記粘度は、主に、G14以上含量をコントロールすることで調整でき、澱粉スラリーから液化液を調製する際のDEを、例えば、DE6から10程度、好ましくは7から9程度に調整することで制御できる。このときのDEが低すぎれば、得られる澱粉分解物に高分子成分が残存してしまい高粘度の原因となるG14以上含量が高くなる。
本発明の澱粉分解物においては、上記(1)〜(5)のファクターに加えて、重合度8〜13の糖(G8〜G13)含量が3〜10重量%であることが好ましい。G8〜G13含量は、「コク味」、「甘味の立ち」に影響する。また、「甘味のキレの速さ」にも若干影響する。重合度8〜13の糖含量が低くなりすぎるとコク味が足りず、高くなりすぎるとコク味は出るが、甘味の立ちが悪くなり、さらに甘味のキレが少し悪くなる傾向がある。G8〜G13含量は、好ましくは3〜8重量%の範囲である。澱粉分解物における重合度8〜13の糖含量は、G4−G5含量、G6−G7含量と同様に、糖化反応における各酵素添加量および反応時間により適宜調整できる。
本発明の澱粉分解物においては、上記(1)〜(5)のファクターに加えて、さらに、DEが25〜35であることが好ましい。DEが上記範囲であることで、低甘味かつ低粘度で雑味やデキストリン臭の無い好ましい澱粉分解物が得られる。DEの好ましい範囲は、例えば、27〜33の範囲である。DEは、G4−G5含量、G6−G7含量と同様に、糖化反応における各酵素添加量および反応時間により適宜調整できる。
<飲食品用味質改善剤>
本発明は、上記本発明の澱粉分解物を有効成分とする飲食品用味質改善剤を包含する。
本発明における飲食品用味質改善剤は、本発明の澱粉分解物をそのまま用いても良く、本発明の効果を損なわない範囲であればその他各種糖質、甘味料、糖類、食物繊維類、油脂類、たん白質、ペプチド、アミノ酸、増粘剤、酵素製剤、乳化剤、有機酸類、無機塩類、保存料、着色料、香料等をさらに配合したものでも良い。飲食品用味質改善剤における本発明の澱粉分解物の含有量は、例えば、0.1〜99.9重量%の範囲であることができ、飲食品用味質改善剤の種類に応じて、含有量は適宜選択できる。飲食品用味質改善剤として用いる本発明の澱粉分解物の形態としては、水溶液(シラップ)の状態でもよく、スプレードライヤー等により粉末化したものでもよい。本発明の味質改善剤を適用し得る飲食品の例は、後述の本発明の飲食品において説明する。
<飲食品>
本発明は、上記本発明の澱粉分解物または味質改善剤を含有することを特徴とする飲食品を包含する。本発明の飲食品に対する本発明の澱粉分解物または味質改善剤の添加量は、飲食品の種類や付与すべき味質等に応じて適宜決定できる。
本発明における飲食品とは一般的な食品であれば特に制限は無いが、具体的には醤油、もろみ、ひしお、マヨネーズ、ドレッシング、三杯酢、天つゆ、麺つゆ、ウスターソース、ケチャップ、焼き鳥のタレ、焼き肉のタレ、漬け込みタレ、ホワイトソース、デミグラスソース、ハンバーグソース、ステーキソースなどのソース・タレ類、粉末醤油、味噌、粉末味噌、フリカケ、食酢、粉末すし酢、カレールウ、中華の素、シチューの素、スープの素、ダシの素、複合調味料、みりん、新みりん、テーブルシュガー、コーヒーシュガーなどの各種調味料類、せんべい、あられ、おこし、求肥、餅類、まんじゅう、大福、ういろう、餡類(例えば、練り餡)、錦玉、ゼリー、カステラ、飴玉などの各種和菓子類、食パン、ロールパン、ブリオッシュ、蒸しパン、あんぱん、クリームパンなどのパン類、ビスケット、クラッカー、クッキー、ワッフル、マフィン(例えば、ココアマフィン)、スポンジケーキ、パイなどの焼菓子類、シュークリーム、ドーナツ、チョコレート、チューインガム、キャラメル、ヌガー、キャンディーなどの各種洋菓子、アイスクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、かき氷、フローズンヨーグルト、ゼリー(例えば、オレンジゼリー)、プリン、ババロア、水羊羹などの冷菓類、果実のシロップ漬、氷蜜などのシロップ類、フラワーペースト、ピーナッツペースト、フルーツペースト、バタークリーム、カスタードクリームなどのペースト類、マーマレード、フルーツソース、ブルーベリージャム、苺ジャムなどのジャム類、福神漬け、べったら漬、千枚漬などの漬物類、たくわん漬の素、白菜漬の素などの漬物の素、ハム、ソーセージなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、カマボコ、チクワ、天ぷらなどの魚肉製品類、ウニ、イカの塩辛、酢コンブ、さきするめ、タラ、タイ、エビなどの田麩などの各種珍味類、海苔、山菜、するめ、小魚、貝などで製造される佃煮類、煮豆、煮魚、ポテトサラダ、コンブ巻などの惣菜食品、乳製品、魚肉、畜肉、果実、野菜などの瓶詰・缶詰類、プリンミックス、ホットケーキミックス、即席ジュース、即席コーヒー、即席汁粉、即席スープなどの即席食品類、冷凍食品類、果汁含有飲料、果汁ジュース、野菜ジュース、炭酸飲料、アイソトニック飲料、アミノ酸飲料、スポーツ飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、乳酸飲料、乳系飲料、栄養ドリンク、ノンアルコールビールなどの非アルコール飲料、ビール、発泡酒、リキュール、チューハイ、清酒、果実酒などのアルコール飲料等が挙げられる。
上記通り本発明における飲食品とは一般的な食品であれば特に制限は無いが、ペースト類、ジャム類、ソース・タレ類、和菓子類、冷菓、焼菓子類および飲料が好ましい。
以下に本発明の実施例により説明するが、本発明は実施例に示した態様に限定されるものではない。以下に記載の「%」は、特記しない限り「W/W%」を示すものとする。
<糖組成分析条件>
本発明における澱粉分解物の糖組成分析は、下記HPLC条件にて実施した。
糖組成の分析は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて以下の方法で行い、全ピーク面積に対する各ピーク面積の割合を百分率として表示した。
カラム:Aminex HPX−42A(BIO−RAD社製)。カラム温度:75℃。移動相:蒸留水。流速:0.5mL/min。検出器:示差屈折計。サンプル注入量:5質量%溶液10μL。
<甘味度測定方法>
甘味度とは砂糖を100とした時の比較値であり、以下の方法で測定した。
甘味度の測定にはPauliの全系列法(澱粉糖技術会報 No.14,p.44)に準じて行った。試料の温度は20℃とし、0.5%間隔の砂糖溶液との飲み比べによって行った。
<粘度測定方法>
本発明における糖液の粘度測定は以下の方法で測定した。
固形分70%の糖液の20℃での粘度をB型粘度計(東機産業(株)社製)で測定した。
<DE測定方法>
「DE」とは、Dextrose Equivalentの略であり、グルコースを100とした場合の糖液の持つ還元力を固形分当りにしたものである。DEは澱粉分解物の分解度合いを示す指標として頻繁に用いられ、澱粉の分解が進行するにつれ澱粉分解物中の還元末端が増加するため、そのDEは上昇する。DEは、以下の方法で測定した。
DE測定はソモギ変法(澱粉糖関連工業分析法 澱粉糖技術部会編 p11)を用いて測定した。
実施例1
<澱粉分解物の製造>
澱粉分解物である試料1〜試料7、試料17〜試料18の製造方法を以下に示した。
試料1
耐熱性α−アミラーゼを用いた常法によりコーンスターチを液化させ、濃度30%、DE8の液化液を調製した。この液化液に塩酸を添加してpH6に調整し、α−アミラーゼを固形分あたり0.5%と、イソアミラーゼを固形分当り0.05%加え、53℃で24時間酵素反応を行った。この澱粉加水分解液にβ−アミラーゼを固形分あたり0.05%添加し、さらに53℃で24時間酵素反応を行った。その後、80℃で1時間保持し、塩酸を用いてpH4に調整後、さらに80℃で1時間保持し酵素反応を終了した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂に拠り脱塩処理した後、真空濃縮により濃度75%に濃縮して試料1を調製した。
試料2
耐熱性α−アミラーゼを用いた常法によりコーンスターチを液化させ、濃度30%、DE8の液化液を調製した。この液化液に塩酸を添加してpH6に調整し、α−アミラーゼを固形分あたり0.05質量%と、イソアミラーゼを固形分当り0.075質量%と、β−アミラーゼを加え、53℃で24時間酵素反応を行った。その後、80℃で1時間保持し、塩酸を用いてpH4に調整後、さらに80℃で1時間保持し酵素反応を終了した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂に拠り脱塩処理した後、真空濃縮により濃度75%に濃縮して試料2を調製した。
試料3
耐熱性α−アミラーゼを用いた常法によりコーンスターチを液化させ、濃度30%、DE8の液化液を調製した。この液化液に塩酸を添加してpH6に調整し、α−アミラーゼを固形分あたり0.5質量%と、イソアミラーゼを固形分当り0.05質量%加え、53℃で48時間酵素反応を行った。その後、80℃で1時間保持し、塩酸を用いてpH4に調整後、さらに80℃で1時間保持し酵素反応を終了した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂に拠り脱塩処理した後、真空濃縮により濃度75%に濃縮して試料3を調製した。
試料4
耐熱性α−アミラーゼを用いた常法によりコーンスターチを液化させ、濃度30%、DE8の液化液を調製した。この液化液に塩酸を添加してpH6に調整し、α−アミラーゼを固形分あたり0.05質量%と、イソアミラーゼを固形分当り0.1質量%を加え、53℃で48時間酵素反応を行った。その後、80℃で1時間保持し、塩酸を用いてpH4に調整後、さらに80℃で1時間保持し酵素反応を終了した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂に拠り脱塩処理した後、真空濃縮により濃度75%に濃縮して試料4を調製した。
試料5、6
耐熱性α−アミラーゼを用いた常法によりコーンスターチを液化させ、濃度30%、DE8の液化液を調製した。この液化液に塩酸を添加してpH6に調整し、α−アミラーゼを固形分あたり0.5質量%と、イソアミラーゼを固形分当り0.075質量%を加え、53℃で48時間酵素反応を行った。この澱粉加水分解液を二等分し、一方はβ―アミラーゼを固形分あたり0.05質量%添加し、さらに53℃で8時間酵素反応を行った。もう一方は同β−アミラーゼを0.01質量%添加し、さらに53℃で8時間酵素反応を行った。その後、80℃で1時間保持し、塩酸を用いてpH4に調整後、さらに80℃で1時間保持し酵素反応を終了した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂に拠り脱塩処理した後、真空濃縮により濃度75%に濃縮し、前者を試料5、後者を試料6として調製した。
試料7
耐熱性α−アミラーゼを用いた常法によりコーンスターチを液化させ、濃度30%、DE8の液化液を調製した。この液化液に塩酸を添加してpH6に調整し、α−アミラーゼを固形分あたり0.5質量%加え、80℃で24時間酵素反応を行った。その後、塩酸を用いてpH4に調整後、さらに80℃で1時間保持し酵素反応を終了した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂に拠り脱塩処理した。えられた澱粉加水分解物をゲルろ過カラム(TSKgel トヨパール HW−40、東ソー(株))を用いて分画し、重合度14以上の糖質が含まれない画分を回収し、真空濃縮により濃度75%に濃縮して試料7を調製した。
また、試料8〜試料16として以下の市販の澱粉分解物を使用した。試料8:ハイマルトースシラップMC−55(日本食品化工(株)社製)、試料9:フジオリゴ#470(日本食品化工(株)社製)、試料10:フジオリゴ#360(日本食品化工(株)社製)、試料11:フジオリゴ#450(日本食品化工(株)社製)、試料12:フジオリゴG67(日本食品化工(株)社製)、試料13:ブランチオリゴ(日本食品化工(株)社製)、試料14:TK−16(松谷化学工業(株)社製)、試料15:パインデックス#3(松谷化学工業(株)社製)、試料16:パインデックス#4(松谷化学工業(株)社製)。
試料17
耐熱性α−アミラーゼを用いた常法によりコーンスターチを液化させ、濃度30%、DE4の液化液を調製した。この液化液に塩酸を添加してpH6に調整し、α−アミラーゼを固形分あたり0.1質量%と、イソアミラーゼを固形分当り0.05質量%を加え、53℃で48時間酵素反応を行った。その後、80℃で1時間保持し、塩酸を用いてpH4に調整後、さらに80℃で1時間保持し酵素反応を終了した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂に拠り脱塩処理した後、真空濃縮により濃度75%に濃縮して試料17を調製した。
試料18
耐熱性α−アミラーゼを用いた常法によりコーンスターチを液化させ、濃度30%、DE4の液化液を調製した。この液化液に塩酸を添加してpH6に調整し、α−アミラーゼを固形分あたり0.03質量%と、イソアミラーゼを固形分当り0.05質量%を加え、53℃で48時間酵素反応を行った。その後、80℃で1時間保持し、塩酸を用いてpH4に調整後、さらに80℃で1時間保持し酵素反応を終了した。その後、活性炭により脱色ろ過、イオン交換樹脂に拠り脱塩処理した後、真空濃縮により濃度75%に濃縮して試料18を調製した。
<各澱粉分解物の物性・官能試験結果>
試料1〜試料18の固形分30.0%水溶液を調製し、8人のパネラーにより「甘味の好ましさ」、「甘味の立ち」、「甘味のキレ(スッキリ感)」、「雑味」、「コク味」、「デキストリン臭」、「味質のバランス」の7項目に関し官能評価を行った。さらに、上記官能試験の得点を合計し、合計点が10〜20点:×、20〜30点:△、30点〜:○として総合評価した(35点満点)。それぞれの採点基準を以下に示す。
「甘さの好ましさ」の評価は、甘さが弱くて好ましい:5点、甘さがやや弱くて好ましい:4点、甘さが弱過ぎて好ましくない:3点、甘さが強く好ましくない:2点、甘さが強すぎて好ましくない:1点、として評点し、平均値で示した。
「甘味の立ち」については、「立ち」が非常に速い:5点、速い:4点、やや速い:3点、やや遅い:3点、遅い:2点、非常に遅い:1点、として評点し、平均値で示した。
「甘味のキレ」については、「キレ」がとても速い:5点、速い:4点、やや速い:3点、やや遅い:3点、遅い:2点、非常に遅い:1点、として評点し、平均値で示した。
「雑味」については、「雑味」が全く感じられない:5点、殆ど感じられない:4点、やや感じられる:3点、感じられる:2点、強く感じられる:1点、として評点し、平均値で示した。
「コク味」については、「コク味」が強い:5点、やや強い:4点、コク味がある:3点、コク味が少ない:2点、全く無い:1点、として評点し、平均値で示した。
「デキストリン臭」については、「デキストリン臭」が全く感じられない:5点、殆ど感じられない:4点、やや感じられる:3点、感じられる:2点、強く感じる:1点として評点し、平均値で示した。
「味質のバランス」については、「味質のバランス」が非常に良く美味しい:5点、「味質のバランス」が良く美味しい:4点、「味質のバランス」が少し悪い:3点、「味質のバランス」が悪くやや美味しくない:2点、「味質のバランス」がひどく悪く美味しくない:1点、として評点し、平均値で示した。
各澱粉分解物試料の糖組成分析、甘味度測定、粘度測定、DE測定結果を表1に纏めた。なお、糖組成分析結果は、グルコース重合度nをGnで示した。即ち、グルコース重合度5を「G5」と示した。
各澱粉分解物試料の官能試験結果を表2に纏めた。
表1および表2に示された通り、(1)重合度6〜7の糖含量/重合度4〜5の糖含有量=0.75〜1.25、(2)重合度14以上の糖含量が5重量%以下、(3)重合度1〜3の糖含量が45重量%以下、(4)甘味度が25以下、(5)20℃における固形分70%糖液の粘度が1500mPas以下、の全ての要件を満たす試料4、試料7、試料17および試料18が、甘さが好ましく、甘味の立ち・キレ共に優れ、雑味やデキストリン臭は無いがコク味を有しており、味質のトータルバランスに優れていることが明らかとなった。
上記(2)〜(5)の要件は満たすが(1)の条件を満たさない試料3は、甘味のキレ、雑味、デキストリン臭に関して良好な結果であったが、甘さの好ましさ、甘味の立ち、コク味に関し試料4、試料7、試料17および試料18と比べ劣っており、風味のバランスを欠くものであったため、総合評価も悪かった。上記結果より、澱粉分解物の「甘味のキレや異味・異臭のなさ」と「甘さの好ましさ(適度な甘さ)やコク味」を両立させて風味のバランスを維持するには重合度6〜7の糖含量(G6−G7)と重合度4〜5の糖含有量(G4−G5)のバランスを保つことが極めて重要であることがわかった。
一方で、(1)の要件を満たすが(5)の要件を満たさない試料13は、甘さの好ましさや甘味のキレは比較的良好であったが、その他の項目が試料4、試料7、試料17および試料18に比べ劣っており、また糖液の粘度も高かった。これは、重合度8〜13の糖含量(G8−G13)が30%以上と著しく高かったことに起因すると考えられる。(1)の要件を満たすが(2)(5)を満たさない試料15および試料16は、甘さの好ましさ以外はいずれも劣っており、総合評価も大幅に劣るものであった。さらに、糖液の粘度も高かった。
また上記結果より、本発明の澱粉分解物と果汁、香料、着色料等を適宜混合することにより、好ましい飲料が得られることが明らかとなった。
実施例2
<澱粉分解物の食品(フラワーペスト)への利用>
表1に記載の澱粉分解物を用いて、以下の通りフラワーペーストを調製した。鍋に37.82gの水を量りとり、脱脂粉乳4.01g、全脂粉乳2.55g、乳性蛋白1.5gを加えて撹拌溶解した。さらに食塩0.03g、クエン酸0.11g、増粘多糖類0.04g、砂糖13.84gを入れて撹拌溶解した後、加糖卵黄1.1gと卵白3.6gを加えた。以上の工程を30℃程度で実施した。火を少し強めて50℃達温にて原料の溶解を完了し、火を止め、表1に示した各種澱粉分解物17.4g、澱粉5.5g、菜種油12.5gを入れホモジナイザーにて5000rpm 5分間撹拌した。鍋にホモジナイズした液を戻し入れ、歩留まり90%まで煮上げた。バニラエッセンスを加えフラワーペーストを得た。
調製したフラワーペーストを8人のパネラーで試食し、「甘味の強さ」、「甘味の喉残り感」、「コク味」、「風味」「べたつき」の項目および各項目を総合したトータルのバランスを「美味しさ」として官能評価を実施し、表3に官能評価結果を示した。上記官能試験の得点を合計し、総合評価とした(30点満点)。
「甘味の強さ」の評価方法は、殆ど甘くない:5点、やや甘い:4点、甘い:3点、かなり甘い:2点、非常に甘い:1点として評点し、平均値で示した。
「甘味の喉残り」の評価方法は、甘さが速く切れる場合を「喉残り」が無いと評価した。評価方法は、フラワーペーストを食べた後に「喉残り」が非常に少ない:5点、かなり少ない:4点、少ない:3点、やや残る:2点、かなり残る:1点、として評点し、平均値で示した。
「コク味」の評価方法は、「コク味」が非常に強い:5点、かなり強い:4点、ややコク味がある:3点、コク味が少ない:2点、かなり少ない:1点、として評点し、平均値で示した。
「風味」の評価は、フラワーペーストの風味が非常に良い:5点、かなり良い:4点、良い:3点、やや悪い:2点、かなり悪い:1点として評点し、平均値で示した。
「べたつき」の評価方法は、べたついて口溶けが悪い:1点、ややべたついて口溶けが悪い:2点、べたつきは無い:3点、べたつきが無く口溶けが良い:4点、べたつきが無く非常に口溶けが良い:5点、として評点し、平均値で示した。
「美味しさ」の評価方法は、甘味・風味のバランスを総合的に加味して、味質バランスが非常に良く美味しい:5点、味質バランスがとても良く美味しい:4点、味質バランスが良く美味しい:3点、味質に偏りがありあまり美味しくない:2点、味質に大きく偏りがあり美味しくない:1点、として評点し、平均値で示した。
表3に示した通り、試料4、試料7、試料17および試料18を用いたフラワーペーストはいずれの評価項目も高い点数であり、総合評価も高かった。特に試料4は、甘味と風味のバランスを総合的に評価した美味しさの評価が高いものであった。以上より、近年の低甘味ニーズのフラワーペーストに好ましいのは試料4、試料7、試料17および試料18の澱粉分解物であることが明らかとなった。
実施例3
<澱粉分解物の食品(ブルーベリージャム)への利用>
表4に記載の澱粉分解物を用いて、以下の通りジャムを調製した。ブルーベリー800gと砂糖480gと各種澱粉分解物120gを鍋に入れ、中火にかけた。沸騰したところで、あくをすくい取り、火を弱めて20分煮詰めた。さらに、レモン汁45gを加えて20分煮詰めてジャムを調製した。
調製したブルーベリージャムを8名のパネラーで試食し、「甘味の好ましさ」、「甘味の立ち」、「甘味のキレ」、「ブルーベリーの風味」、「酸味」、「味質のバランス」の項目について官能検査を実施し、表4に官能評価結果を示した。上記官能評価の得点を合計し、総合評価とした。
「甘味の好ましさ」の評価方法は、適度な甘さで非常に好ましい:5点、適度な甘さで好ましい:4点、やや好ましい:3点、甘味に偏りがありあまり好ましくない:2点、甘味におおきな偏りがあり、好ましくない:1点として評点し、平均値で示した。
「甘味の立ち」の評価方法は、「甘さの立ち」が非常に速い:5点、速い:4点、やや速い:3点、やや遅い:3点、遅い:2点、非常に遅い:1点、として評点し、平均値で示した。
「甘味のキレ」については、「甘さのキレ」がとても速い:5点、速い:4点、やや速い:3点、やや遅い:3点、遅い:2点、非常に遅い:1点、として評点し、平均値で示した。
「ブルーベリーの風味」の評価は、ブルーベリーの風味が非常に良い:5点、かなり良い:4点、良い:3点、やや悪い:2点、かなり悪い:1点として評点し、平均値で示した。
「酸味」の評価方法は、適度な酸味で非常に好ましい:1点、適度な酸味で好ましい:2点、やや好ましい:3点、酸味に偏りがあり好ましくない:4点、酸味に大きな偏りがあり好ましく無い:5点、として評点し、平均値で示した。
「味質のバランス」の評価方法は、甘味・風味のバランスを総合的に加味して、味質バランスが非常に良く美味しい:5点、味質バランスがとても良く美味しい:4点、味質バランスが良く美味しい:3点、味質に偏りがありあまり美味しくない:2点、味質に大きく偏りがあり美味しくない:1点、として評点し、平均値で示した。
表4に示した通り、試料4および試料7を用いたブルーベリージャムは、いずれの評価項目も高い点数であり、総合評価も高かった。特に試料4は、適度な甘味で、甘味の立ちやキレが良好であることから、味質のバランスの評価が非常に高い結果であった。
実施例4
<澱粉分解物の食品(ハンバーグソース)への利用>
表5に記載の澱粉分解物を用いて以下の通りハンバーグソースを調製した。鍋に水505gを計りとり、醤油120g、料理酒60g、砂糖16g、各種澱粉分解物14g、調味料(ビーフエキス13g、蛋白加水分解物10g、グルタミン酸ナトリウム4g)、おろしにんにく10g、おろし生姜4gを加えてよく撹拌した。加工澱粉マプス#306(日本食品化工製)を32g加えて分散させ、火にかけた。90℃以上4分間持続させ、歩留まり95%まで煮上げてハンバーグソースを調製した。
調製したハンバーグソースを8名のパネラーで試食し、「醤油の風味」、「コク味」、「味質のバランス」の項目について官能検査を実施し、表5に官能評価結果を示した。上記官能評価の得点を合計し、総合評価とした。
「醤油の風味」の評価方法は、「醤油の風味」が強い:5点、やや強い:4点、醤油風味がある:3点、醤油風味が少ない:2点、全く無い:1点、として評点し、平均値で示した。
「コク味」については、「コク味」が強い:5点、やや強い:4点、ややコク味がある:3点、コク味が少ない:2点、かなり少ない:1点、として評点し、平均値で示した。
「味質のバランス」の評価方法は、甘味と塩味のバランスを総合的に加味して、味質バランスが非常に良く美味しい:5点、味質バランスがとても良く美味しい:4点、味質バランスが良く美味しい:3点、味質に偏りがありあまり美味しくない:2点、味質に大きく偏りがあり美味しくない:1点、として評点し、平均値で示した。
表5に示した通り、試料4および試料7を用いたハンバーグソースは、いずれの評価項目も高い点数であり、総合評価も高かった。特に試料4は、甘味が付き過ぎず、コク味があることから、味質のバランスの評価が高い結果であった。
実施例5
<澱粉分解物の食品(練り餡)への利用>
表6に記載の澱粉分解物を用いて以下の通り練り餡を調製した。製餡機に水1000g、砂糖560g、各種澱粉分解物140gを入れ、ガス内外ともに全開で約3分加熱し、砂糖を溶解させた。沸騰したら生餡1000gを添加し、ガスの内火を消して外火を半開にし、火力を調整した。最終Bx.を55とし、練りあがりまで約20分間加熱して練り餡を得た。
調製した練り餡を8名のパネラーで試食し、「甘味の好ましさ」、「甘味の立ち」、「喉残り感」、「小豆の風味」、「べたつき」、「味質のバランス」の項目について官能検査を実施し、表6に官能評価結果を示した。上記官能評価の得点を合計し、総合評価とした。
「甘味の好ましさ」の評価方法は、適度な甘さで非常に好ましい:5点、適度な甘さで好ましい:4点、適度な甘さでやや好ましい:3点、甘味に偏りが有り、あまり好ましくない:2点、甘味に偏りが有り好ましくない:1点として評点し、平均値で示した。
「甘味の立ち」の評価方法は、「甘味の立ち」については、「立ち」が非常に速い:5点、速い:4点、やや速い:3点、やや遅い:3点、遅い:2点、非常に遅い:1点、として評点し、平均値で示した。
「甘味の喉残り感」の評価方法は、甘さが速く切れる場合を「喉残り」が無いと評価した。評価方法は、練り餡を食べた後に「喉残り」が非常に少ない:5点、かなり少ない:4点、少ない:3点、やや残る:2点、かなり残る:1点、として評点し、平均値で示した。
「小豆の風味」の評価は、小豆の風味が非常に良い:5点、かなり良い:4点、良い:3点、やや悪い:2点、かなり悪い:1点として評点し、平均値で示した。
「べたつき」の評価方法は、べたつきが無く非常に口溶けが良い:5点、べたつきが無く口溶けが良い:4点、べたつきは無い:3点、ややべたついて口溶けが悪い:2点、べたついて口溶けが悪い:1点、として評点し、平均値で示した。
「味質のバランス」の評価方法は、甘味・風味のバランスを総合的に加味して、味質バランスが非常に良く美味しい:5点、味質バランスがとても良く美味しい:4点、味質バランスが良く美味しい:3点、味質に偏りがありあまり美味しくない:2点、味質に大きく偏りがあり美味しくない:1点、として評点し、平均値で示した。
表6に示した通り、試料4および試料7を用いた練り餡は、いずれの評価項目も高い点数であり、特に試料4は、適度な甘味で、小豆の風味が感じられる味質であった。また、甘味の喉残り感が少ないことから、総合的に高い評価であった。
実施例6
<澱粉分解物の食品(オレンジゼリー)への利用>
表7に記載の澱粉分解物を用いて、以下の通りオレンジゼリーを調製した。ゲル化剤2.5%、グラニュー糖10.0%、クエン酸ナトリウム0.1%を予め混合しておき、鍋に計りとった水に分散させた。さらに各種澱粉分解物10.0%を加えて鍋を火にかけ、加熱して溶解させた。溶解後、水分補正を行った。その後、オレンジ濃縮果汁3.5%、クエン酸0.17%、色素0.05%、香料0.1%を加えて撹拌した。ゼリーカップに充填した後、殺菌を行って常温ゼリーを調製した。
調製した常温オレンジゼリーを8名のパネラーで試食し、「甘味の好ましさ」、「甘味の立ち」、「甘味のキレ(スッキリ感)」、「オレンジ風味」、「酸味の好ましさ」「味質のバランス」の項目を官能検査し、表7に官能評価結果を示した。上記官能評価の得点を合計し、総合評価とした。
「甘味の好ましさ」の評価方法は、適度な甘さで非常に好ましい:5点、適度な甘さで好ましい:4点、適度な甘さでやや好ましい:3点、甘味に偏りがありあまり好ましくない:2点、甘味におおきな偏りがあり、好ましくない:1点として評点し、平均値で示した。
「甘味の立ち」の評価方法は、「立ち」が非常に速い:5点、速い:4点、やや速い:3点、やや遅い:3点、遅い:2点、非常に遅い:1点、として評点し、平均値で示した。
「甘味のキレ」については、「キレ」がとても速い:5点、速い:4点、やや速い:3点、やや遅い:3点、遅い:2点、非常に遅い:1点、として評点し、平均値で示した。
「オレンジ風味」の評価は、オレンジの風味が非常に良い:5点、かなり良い:4点、良い:3点、やや悪い:2点、かなり悪い:1点として評点し、平均値で示した。
「酸味の好ましさ」の評価方法は、適度な酸味で非常に好ましい:5点、適度な酸味で好ましい:4点、適度な酸味でやや好ましい:3点、酸味に偏りがあり好ましくない。:2点、酸味に偏りがありとても好ましくない:1点、として評点し、平均値で示した。
「味質のバランス」の評価方法は、甘味・風味のバランスを総合的に加味して、味質バランスが非常に良く美味しい:5点、味質バランスがとても良く美味しい:4点、味質バランスが良く美味しい:3点、味質に偏りがありあまり美味しくない:2点、味質に大きく偏りがあり美味しくない:1点、として評点し、平均値で示した。
表7に示した通り、試料4および試料7を用いたオレンジゼリーは、いずれの評価項目も高い点数であり、総合評価も高かった。適度な甘味と酸味でオレンジ風味を付与し、味質のバランスが良好であった。
実施例7
<澱粉分解物の食品(ココアマフィン)への利用>
表8に記載の澱粉分解物を用いて、以下の通りココアマフィンを調製した。卵240gを割り解し、水200g、砂糖70g、各種澱粉分解物120g、キサンタンガム0.3g、食塩2g を加え、ミキサーを使用して目標生地比重が0.6になるまで撹拌した。さらに小麦粉380g、ココアパウダー20g、ベーキングパウダー16g、脱脂粉乳40gを加えてゆっくり混合し、目標生地比重を1.0に調整した。マフィン用カップに充填し、上下185℃のオーブン中で20分焼成した。
調製したマフィンを8名のパネラーで試食し、「甘味の好ましさ」、「ココア風味」、「「コクの強さ」、「味質のバランス」の項目について官能検査を実施し、表8に官能評価結果を示した。上記官能評価の得点を合計し、総合評価とした。
「甘味の好ましさ」の評価方法は、適度な甘さで非常に好ましい:5点、適度な甘さで好ましい:4点、適度な甘さでやや好ましい:3点、甘味に偏りが有り、あまり好ましくない:2点、甘味に偏りが有り好ましくない:1点として評点し、平均値で示した。
「ココアの風味」の評価は、ココアの風味が非常に良い:5点、かなり良い:4点、良い:3点、やや悪い:2点、かなり悪い:1点として評点し、平均値で示した。
「コク味」については、「コク味」が強い:5点、やや強い:4点、ややコク味がある:3点、コク味が少ない:2点、かなり少ない:1点、として評点し、平均値で示した。
「味質のバランス」の評価方法は、甘味とココア風味のバランスを総合的に加味して、味質バランスが非常に良く美味しい:5点、味質バランスがとても良く美味しい:4点、味質バランスが良く美味しい:3点、味質に偏りがありあまり美味しくない:2点、味質に大きく偏りがあり美味しくない:1点、として評点し、平均値で示した。
表8示した通り、試料4および試料7を用いたココアマフィンは、甘味の好ましさが良好で、ココア風味やコク味が付与されることから、味質のバランスが高評価であった。

Claims (5)

  1. 下記(1)〜(6)を満たす澱粉分解物。
    (1)重合度6〜7のマルトオリゴ糖含量/重合度4〜5のマルトオリゴ糖含有量=0.75〜1.25、
    (2)重合度14以上のマルトオリゴ糖含量が5重量%以下、
    (3)重合度1〜3のマルトオリゴ糖含量が45重量%以下、
    (4)甘味度が25以下、
    (5)20℃における固形分70%糖液の粘度が1500mPas以下、
    (6)重合度8〜13のマルトオリゴ糖含量が0〜10重量%。
  2. 重合度8〜13のマルトオリゴ糖含量が3〜10重量%である請求項1に記載の澱粉分解物。
  3. 請求項1または2記載の澱粉分解物を有効成分とする飲食品用味質改善剤。
  4. 請求項1または2記載の澱粉分解物または請求項3記載の味質改善剤を含有することを特徴とする飲食品。
  5. 飲食品がペースト類、ジャム類、ソース・タレ類、和菓子類、冷菓類、焼菓子類、飲料から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項4記載の飲食品。
JP2013107151A 2012-05-31 2013-05-21 澱粉分解物および飲食品用味質改善剤ならびにその用途 Active JP5414926B2 (ja)

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