JP4959915B2 - 新規な4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類に関し、詳しくは、分子の一方の末端のフェニル基にアルコキシル基を置換基としてする新規な4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類と分子の一方の末端のフェニル基にアルコキシル基を置換基として有する新規な4,4”−ジアルコキシ−p−ターフェニル類に関する。このような4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類は、種々の機能性化学品やその原料等として有用である。
従来、分子の一方の末端に置換基を有し、又は有しない4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類は、既に、幾つかが知られている。例えば、4,4”−ジヒドロキシフェニル−p−ターフェニル(特許文献1及び2参照)や、一方の分子の末端のヒドロキシフェニル基にのみ、低級アルキル基を置換基として有する4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類(特許文献3及び4参照)が知られている。
しかし、従来、分子の一方の末端のフェニル基にのみアルコキシル基を置換基として有し、分子の両方の末端のフェニル基に置換オキシ基、詳細には、ヒドロキシル基又はアルコキシル基を有する非対称の4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類は知られていない。このような4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類は、例えば、液晶性や溶剤への溶解性等の点においてすぐれており、種々の用途への利用が期待できる。
特開平1−168632号公報 特開平2−212449号公報 特開2002−308808号公報 特開2002−234856号公報
従って、本発明は、分子の一方の末端のフェニル基にアルコキシル基を有する新規な4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類を提供すること、詳しくは、分子の一方の末端のフェニル基にアルコキシル基を置換基として有する新規な4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類と分子の一方の末端のフェニル基にアルコキシル基を置換基として有する新規な4,4”−ジアルコキシ−p−ターフェニル類を提供することを目的とする。
本発明によれば、一般式(I)
Figure 0004959915
(式中、R1 は水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基を示し、R2 は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表される4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類が提供される。
好ましい態様によれば、本発明によれば、一般式(II)
Figure 0004959915
(式中、R2 は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表される4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類と一般式(III)
Figure 0004959915
(式中、R2 は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、R3 は炭素原子数1〜24のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表される4,4”−ジアルコキシ−p−ターフェニル類が提供される。
本発明による新規な4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類は、分子の一方の末端のヒドロキシフェニル基又はアルコキシフェニル基にのみ、アルコキシル基を置換基として有し、そのような4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類は、耐熱性、液晶性や溶剤への溶解性等の点においてすぐれているので、種々の機能性化学品やその原料等の用途への利用が期待できる。
本発明による新規な4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類は、一般式(I)
Figure 0004959915
(式中、R1 は水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基を示し、R2 は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表される。
上記一般式(I)で表される本発明による4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類において、R1 は水素原子又は炭素原子数1〜24のアルキル基である。このアルキル基は、好ましくは、炭素原子数1〜20のアルキル基であり、より好ましくは、炭素原子数3〜18のアルキル基である。このようなアルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよいが、好ましくは直鎖状であり、また、飽和アルキル基であることが好ましい。
従って、このようなアルキル基R1 の具体例として、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、n−オクチル、n−デシル、n−ドデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシル等を挙げることができる。
また、上記一般式(I)で表される本発明による4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類において、R2 は炭素原子数1〜4のアルキル基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、プロピル基又はブチル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。好ましいアルキル基R2 はメチル基である。また、nは1〜3の整数を示し、好ましくは、1である。
従って、本発明による4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類の具体例として、例えば、次のようなものを挙げることができる。先ず、上記一般式(I)で表される4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類において、R1 が水素原子であるもの、即ち、前記一般式(II)で表される4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類の具体例としては、例えば、
4,4”−ジヒドロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジヒドロキシ−2”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジヒドロキシ−3”−エトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジヒドロキシ−2”−n−プロポキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジヒドロキシ−3”−イソプロポキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジヒドロキシ−3”−n−プロポキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジヒドロキシ−3”−n−ブチロキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジヒドロキシ−3”−n−イソブチロキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジヒドロキシ−3”−t−ブチロキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジヒドロキシ−3”,6”−ジメトキシ−p−ターフェニル
4,4”−ジヒドロキシ−3”,5”−ジメトキシ−p−ターフェニル
4,4”−ジヒドロキシ−2”,3”,5”−ジメトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジヒドロキシ−2”,3”,6”−ジメトキシ−p−ターフェニル
等を挙げることができる。
また、上記一般式(I)で表される4,4”−置換オキシ−p−ターフェニル類において、R1 が炭素原子数1〜24のアルキル基であるもの、即ち、前記一般式(III) で表される4,4”−ジアルコキシ−p−ターフェニル類の具体例としては、例えば、
4,4”−ジメトキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジエトキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−プロポキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−ブトキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−ペントキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−ヘキシロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−オクチロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−ドデシロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−テトラデシロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−ヘキサデシロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−オクタデシロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−テトラコサロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−ブトキシ−2”−メトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−ブトキシ−3”,5”−ジメトキシ−p−ターフェニル、
4,4”−ジ−n−ブトキシ−3”,6”−ジメトキシ−p−ターフェニル
等を挙げることができる。
前記一般式(II)で表される4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類は、例えば、特開2002−234856号公報に記載の方法と同様の方法によって製造することができる。具体的には、先ず、下記一般式(IV)
Figure 0004959915
(式中、R2 は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表されるアルコキシフェノール類と下記式(V)
Figure 0004959915
で表される4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノンを酸触媒の存在下に反応させることによって、下記一般式(VI)
Figure 0004959915
(式中、R2 は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
で表されるヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類を得る。
上記一般式(IV)で表されるアルコキシフェノール類において、アルキル基R2 は、前記一般式(I)から(III) で表される化合物におけるアルキル基R2 と同じであり、従って、上記アルコキシフェノール類としては、例えば、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、2−n−プロポキシフェノール、2−イソプロポキシフェノール、2−n−ブトキシフェノール、2−イソブトキシフェノール、2−t−ブトキシフェノール、2,6−ジメトキシフェノール、2,5−ジメトキシフェノール、2,3,6−トリメトキシフェノール等を挙げることができる。
上記アルコキシフェノール類と4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノンとの反応において、アルコキシフェノール類は、4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノン1モル部に対して、通常、4〜20モル部の範囲で用いられる。
上記アルコキシフェノール類と4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノンとの反応において、反応溶剤は用いてもよく、また、用いなくてもよい。反応溶剤を用いる場合、例えば、脂肪族アルコール、芳香族炭化水素又はこれらの混合溶剤が用いられる。アルコールとしては、用いる反応原料、得られる生成物の溶解度、反応条件、反応の経済性等を考慮して、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール等を挙げることができる。また、芳香族炭化水素溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クメン等を挙げることができる。
このような溶剤は、通常、用いる4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノン100重量部に対して、100〜500重量部の範囲で用いられるが、これに限定されるものではない。
上記酸触媒としては、乾燥塩化水素ガスが好ましく用いられるが、しかし、これに限定されるものではなく、例えば、塩酸、硫酸、無水硫酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸、ギ酸、リン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等も用いられる。このような酸触媒は、例えば、乾燥塩化水素ガスの場合は、好ましくは、反応系内を飽和させる量にて用いられる。反応を促進するために、メルカプタン等(例えば、オクチルメルカプタン)の助触媒を用いることができる。
反応は、通常、20℃から80℃、好ましくは、20〜50℃にて、反応器中の反応混合物に乾燥塩化水素ガスを吹き込みながら、攪拌下、2〜48時間程度、通常、6〜24時間程度行なえばよい。
反応終了後、通常、得られた反応混合物にアルカリを加えて、酸触媒を中和した後、水層に適宜の晶析溶剤を加えるか、又は水層を分離除去し、必要に応じて、得られた有機層を常圧又は減圧下に蒸留した後、これに適宜の晶析溶剤を加えるかして、粗結晶を析出させ、次いで、この粗結晶を濾取し、これを更に適宜の晶析溶剤から晶析させることによって、ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の高純度品を容易に得ることができる。
上記晶析溶剤としては、具体的には、晶析条件、精製効果、経済性等を考慮して、適宜に選ばれるが、芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン、クメン等を挙げることができ、また、脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール等、脂肪族ケトンとしては、例えば、アセトン、イソプロピルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン等、環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を挙げることができる。
次いで、このようにして得られたヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノールを特開2002−234856号公報に記載されている方法と同様にして、熱分解し、かくして得られた反応混合物を脱水素反応に付すことによって目的とする4,4”−ヒドロキシ−p−ターフェニル類を得ることができる。
ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解は、触媒の不存在下に行ってもよいが、好ましくは、アルカリ触媒の存在下に行われる。このアルカリ触媒としては、特に、限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド等のアルカリ金属フェノキシド、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を挙げることができる。これらのなかでは、特に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく用いられる。
このように、熱分解反応において、アルカリ触媒を用いる場合は、このアルカリ触媒は、ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類100重量部に対して、通常、0.01〜30重量部、好ましくは、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。触媒の使用形態は、特に制限はないが、仕込み操作が容易である点から、好ましくは、10〜50重量%の水溶液として用いられる。
上記ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解は、原料であるヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類及び/又はその熱分解による反応生成物の融点が高いので、上記ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解温度において、その液状性の改善を図るため、更には、その熱分解による反応生成物の熱重合を防止するために、好ましくは、反応溶媒の存在下に行われる。
上記反応溶媒としては、熱分解温度において不活性であり、しかも、反応混合物から留出しない溶媒であれば、特に限定されるものではないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール等のポリエチレングリコール類、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等のポリプロピレングリコール類、グリセリン等の多価アルコール類が用いられる。また、市販の有機熱媒体である「サームエス」(新日鉄化学(株)製)や「SK−OIL」(綜研化学(株)製)等も用いられる。
このような溶媒は、用いるヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類100重量部に対して、通常、10〜150重量部、好ましくは、30〜100重量部の範囲で用いられる。
ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解は、通常、150〜300℃の範囲、好ましくは、180〜250℃の範囲の温度で行われる。熱分解温度が低すぎるときは、反応速度が遅すぎ、他方、熱分解温度が高すぎるときは、望ましくない副反応が多くなるからである。また、熱分解の反応圧力は、特に、限定されるものではないが、通常、常圧乃至減圧下の範囲であり、例えば、1〜760mmHgゲージの範囲、好ましくは、30〜50mmHgゲージの範囲である。
このような反応条件において、ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解は、通常、1〜6時間程度で終了する。熱分解反応は、例えば、分解反応によって生成するアルコキシフェノール類の留出がなくなった時点をその終点とすることができる。
この反応生成物は、種々の分析の結果、原料であるヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類に対応して、一般式(VII)
Figure 0004959915
(式中、R2 及びnは前記と同じである。)
で表される1,4−ビス(アルコキシ置換4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン類であると推定される。このようにして、ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解反応にって得られる反応生成物を分離し、必要に応じて、精製した後、これを次工程の脱水素反応に供するのである。
かくして、ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類を熱分解し、得られた反応混合物を脱水素反応に付することによって、目的とする4,4"−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類を得ることができる。
より詳細には、本発明によれば、ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解によって得られた反応混合物は、通常、脱水素触媒の存在下に、これを脱水素処理する。この脱水素触媒としては、従来より知られている脱水素触媒を用いることができる。従って、例えば、ラネーニッケル、還元ニッケル、ニッケル担持触媒等のニッケル触媒、ラネーコバルト、還元コバルト、コバルト担持触媒等のコバルト触媒、ラネー銅等の銅触媒、酸化パラジウム、パラジウム黒、パラジウム/カーボン等のパラジウム触媒、プラチナ黒、プラチナ/カーボン等のプラチナ触媒、ロジウム触媒、クロム触媒、銅クロム触媒等が用いられる。これらのなかでは、特に、パラジウム等の白金族触媒が好ましく、特に、パラジウム触媒が好ましく用いられる。
このような脱水素触媒は、ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解によって得られた反応混合物100重量部に対して、通常、0.1〜20重量部、好ましくは、0.2〜10重量部の範囲で用いられる。
この脱水素処理においては、水素受容体を共存させても、させなくてもよいが、より高収率にて目的物を得るためには、水素受容体を共存させることが好ましい。このような水素受容体としては、特に、限定されるものではないが、例えば、α−メチルスチレン等のスチレン類、ニトロベンゼン、メチルイソブチルケトン、フェノール等が好ましく用いられる。また、脱水素反応の反応温度は、通常、100〜250℃の範囲であり、好ましくは、130〜200℃の範囲である。
ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解によって得られた反応混合物の脱水素処理は、気相においても行うことができるが、操作性の点から、好ましくは、溶液状態で行うのが好ましく、その際、反応溶媒を用いるのが好ましい。この反応溶媒としては、工程の簡略化の観点から、前記ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスフェノール類の熱分解反応において用いた溶媒をそのまま用いることが好ましい。また、反応は、好ましくは、常圧下で行われる。このような反応条件において、ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解によって得られた反応混合物の脱水素処理は、通常、3〜6時間程度で終了する。
このようにして、ヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスアルコキシフェノール類の熱分解によって得られた反応混合物を脱水素反応に付し、その反応終了後、得られた反応混合物から、常法に従って、触媒を分離した後、晶析濾過等の方法にて、本発明の目的物である4、4”−ジヒドロキシターフェニル類の粗製品を得ることができ、これを、更に必要に応じて、再度、晶析濾過等の方法にて精製すれば、高純度品を得ることができる。
更に、このようにして得られた4,4”−ヒドロキシ−p−ターフェニル類にアルカリの存在下、一般式(VIII)
Figure 0004959915
(式中、R3 は炭素原子数1〜24のアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
で表されるハロゲン化アルキルを反応させることによって、前記一般式(III) で表される4,4”−アルコキシ−p−ターフェニル類を得ることができる。
上記ハロゲン化アルキルは、目的とする4,4”−ジアルコキシ−ターフェニル類に対応して用いられる。従って、上記ハロゲン化アルキルにおいて、R3 は、前記一般式(VII) で表される4,4”−ジアルコキシ−p−ターフェニル類の有するR3 と同じであり、ハロゲン原子Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、好ましくは、塩素原子である。
従って、上記ハロゲン化アルキルの具体例として、例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、塩化n−ブチル、塩化t−ブチル、塩化n−ペンチル、塩化イソペンチル、塩化ネオペンチル、塩化t−ペンチル、塩化n−ヘキシル、塩化1−メチルペンチル、塩化2−メチルペンチル、塩化n−オクチル、塩化n−デシル、塩化n−ドデシル、塩化n−テトラデシル、塩化n−ヘキサデシル、塩化n−オクタデシル等を挙げることができる。
4,4”−ジヒドロキシターフェニル類とハロゲン化アルキルとの反応は、好ましくは、反応溶剤中、ハロゲン化アルキル/4、4“−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類モル比を1〜20、好ましくは、2〜5の範囲として、アルカリの存在下に行われる。
上記アルカリとしては、4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類のヒドロキシル基とハロゲン化アルキルのハロゲン原子の反応を促進するものであれば、特に制限はなく、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物、ブチルリチウム等の有機金属化合物、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の有機塩基性化合物等を挙げることができる。これらのなかでは、特に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく用いられる。
このようなアルカリは、4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類1モル部に対して、通常、1〜20モル部の範囲、好ましくは、2〜5モル部の範囲で用いられる。アルカリは、どのような形態で用いられてもよいが、反応に際して、仕込み操作が容易である点から、好ましくは、10〜60重量%の水溶液として用いられる。
上記4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類と上記ハロゲン化アルキルとの反応生成物は融点が高い。そこで、本発明によれば、その液状性の改善を図り、更には、反応における熱重合を防止するために、前述したように、好ましくは、反応溶剤の存在下に行われる。この反応溶剤としては、上記目的に適うものであれば特に制限はないが、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等を挙げることができ、なかでも、ジメチルスルホキシドが好ましく用いられる。特に、限定されるものではないが、このような反応溶剤は、原料4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類100重量部に対して、通常、10〜2000重量部、好ましくは、100〜1000重量部の範囲で用いられる。
上記4,4”−ジヒドロキシ−p−ターフェニル類と上記ハロゲン化アルキルとの反応は、通常、0〜150℃、好ましくは、40〜100℃の範囲で行われる。また、反応圧力は、特に限定されるものではないが、通常、常圧乃至加圧下で行われる。このような反応条件において、反応は、通常、1〜10時間程度で完結する。
目的とする4,4”−ジアルコキシ−p−ターフェニル類は、このようにして得られた反応混合物から、常法によって分離し、必要に応じて、精製することができる。例えば、得られた反応混合物に、トルエン等の希釈溶媒を加え、冷却して、目的物を析出させた後、更に、リン酸等の酸の水溶液を加えて、これを中和し、析出した結晶を濾過し、かくして、目的物の粗結晶を得ることができる。このようにして得られた粗結晶を、更に必要に応じて、再度、晶析濾過等の方法にて精製すれば、高純度品を得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、それら実施例により何ら限定されるものではない。
実施例1
(4,4”−ジヒドロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニルの合成)
(原料1−(4−ヒドロキシフェニル)−4,4−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの合成)
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた200mL容量の四つ口フラスコにo−メトキシフェノール50g(0.401モル)とメタノール12.7gを仕込み、温度40℃において、攪拌下に塩化水素ガスを導入した。塩化水素ガスを飽和させた後、これに4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノン粉末12.7g(0.0668モル)を1時間かけて、逐次添加した。添加終了後、更に同じ温度で、7時間反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物に8%水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pH6に中和した。この後、水層を分液により除去して、目的物を含む油層を得た。
(熱分解)
次いで、得られた油層に48%水酸化ナトリウム水溶液0.7gとテトラエチレングリコール12.7gを加え、減圧下に留出物を留出させながら、温度120℃から200℃に6時間加熱して、赤褐色油状物を得た。得られた油状物に酢酸0.5gを加えて中和し、更に、純水とメチルイソプロピルケトンを加えて攪拌した後、水層を除去し、この操作を再度繰り返した後、析出した結晶を濾別して、湿潤した(未乾燥の)結晶を得た。
(脱水素)
次いで、上記で得られた湿潤した結晶の全量とα−メチルスチレン31.5gと5%パラジウム/カーボン0.6gとテトラエチレングリコール25.4gを200mL容量の四つ口フラスコに仕込み、窒素置換した後、150℃において6時間反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物にジメチルホルムアミド38.1gを加えて溶解し、触媒を濾別し、その後、ジメチルホルムアミドを留去して、油状物を得た。これにメチルイソプロピルケトンと水を加え、水層を分液除去し、更に、水を加えて、析出した結晶を濾過、乾燥して、純度94.3%(高速液体クロマトグラフィー分析による。)の4,4”−ジヒドロキシ−3’−メトキシ−p−ターフェニル4.4g(0.0142モル)を白色結晶として得た。原料4−(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサノンに対する収率は21.3モル%であった。
分子量:(測定できず)
融点(示差熱分析法):228℃
プロトンNMR分析(400MHz、DMSO−d溶媒):
Figure 0004959915
Figure 0004959915
実施例2
(4,4”−ジデシロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニルの合成)
攪拌装置、温度計、滴下漏斗及び還流冷却器を備えた200mL容量の四つ口フラスコに4,4”−ジヒドロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル4.4g(0.0142g)と48%水酸化ナトリウム水溶液2.5gとジメチルスルホキシド30.8gを仕込み、窒素置換した後、常圧下に温度70℃において塩化n−デシル6.3g(0.0356モル)を攪拌下に約15分かけて滴下した。滴下終了後、同じ温度において、更に8時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物にメタノールを加え結晶を析出させた後、これにリン酸水溶液を加えて中和した。その後、結晶を濾別した。得られた粗結晶にトルエンを加え、加熱溶解し、その後、水を加えて水洗した後、水層を分液除去し、得られた油層にアセトンを加えて晶析、濾過、乾燥して、目的とする4,4”−ジデシロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル4.0gを白色結晶として得た。純度は98.6%(高速液体クロマトグラフィーによる。)であった。原料4,4”−ジヒドロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニルに対する収率は49モル%であった。
相転移温度(示差熱分析法):81.4℃、110.2℃、151.6℃
プロトンNMR分析(400MHz、重クロロホルム溶媒):
Figure 0004959915
Figure 0004959915

Claims (3)

  1. 一般式(III)
    Figure 0004959915
    (式中、R2 は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、R3 は炭素原子数8〜20のアルキル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
    で表される4,4”−ジアルコキシ−p−ターフェニル類。
  2. 3 が直鎖状のアルキル基である請求項1に記載の4,4”−ジアルコキシ−p−ターフェニル類。
  3. 4,4”−ジデシロキシ−3”−メトキシ−p−ターフェニル。
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