JP5000345B2 - 新規なテトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物 - Google Patents

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本発明は、新規なテトラキスフェノール類に関し、詳しくはビスシクロヘキシルアルカン乃至ビシクロヘキシルを中心骨格とし、両末端に各々2つのsec−ブチル置換フェノール基が結合したテトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物に関する。このようなテトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物は極めて低いガラス転移点または融点を持ち、しかも種々の溶剤への溶解性に優れているので、感光性レジスト、感光性ポリイミド等の原料として有用である。
従来、テトラキスフェノール類としては、各種の化合物が知られ、それらの内、ビスシクロヘキシルアルカン類乃至ビシクロヘキシルに種々のヒドロキシフェニル類が結合したテトラキスフェノール化合物類は、例えば特開昭49−250号公報、特開2001−199920号公報、特開2000−34248号公報等において、その製造方法と共に知られている。
従来、このようなヒドロキシフェニル基乃至アルキル置換ヒドロキシフェニル基を有するビスシクロヘキシルアルカン類乃至ビシクロヘキシル類は、何れも高い融点を持ち、また、溶剤への溶解性に制限があるものであった。例えば、特開昭49−250号公報には、ビスシクロへキシルアルカンを中心骨格とするテトラキスフェノール類が記載されているが、いずれも融点が160〜180℃と高く、更に溶媒への溶解性が劣るため、これらの化合物を製造乃至使用する場合、取り扱いが困難であった。例えば、上記化合物又はそれを原料とする誘導体を精製乃至製造する際は、多量の溶媒が必要で容積効率が悪く、また溶解に時間が掛かる、或いは、感光性レジストに用いる場合、溶解性が低いため溶解濃度が制限されたり、溶解安定性が劣り析出してくる場合もあるなどの不都合がある。
また、特開2001−199920号公報には、溶媒への溶解性を改良したテトラキシフェノール類が記載されているが、融点は260℃を超えている。更に、特開2000−34248号公報には、ビシクロへキシルを中心骨格とするテトラキスフェノール類が記載されているが融点は290〜360℃と極めて高いものである。
特開昭49−000250号公報には、t−ブチル基を有するテトラキスフェノール類が記載されているが、フェノール類水酸基のo−位に結合したt−ブチル基は、酸性条件下では、t−ブチル基の脱離や分子内または分子間での転位反応がおきやすく、不安定である。
特開昭49−250号公報 特開2001−199920号公報 特開2000−34248号
本発明者らは、このようなテトラキスフェノール類の合成を鋭意検討していた処、中心骨格がビスシクロヘキシルアルカン乃至ビシクロヘキシルであるテトラキスフェノール類において、4−ヒドロキシフェニル基の隣接位置にsec−ブチル基が置換したテトラキスフェノール類が、意外にも著しく低いガラス転移温度または融点を示すことを見出し、また、溶媒への溶解性にも優れていることを見いだし、本発明を完成した。
従って、本発明は、低いガラス転移温度または融点を持ち、しかも種々の溶剤への溶解性に優れたテトラキスフェノール類を提供することを目的とする。
本発明によれば、一般式(1)
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは単結合又は下記一般式(2)のアルキ
リデン基を示す。)
一般式(2)
(式中、R、Rは、各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
で表される新規なテトラキスフェノール化合物が提供される。
本発明のテトラキスフェノール化合物は、多核フェノール化合物であるにも係らず、融点が極めて低く、また、溶媒に対する高い溶解性を有しており、更に、嵩高いsec−ブチル基により疎水性や吸湿性の向上も期待できる。
本発明のテトラキスフェノール化合物は低ガラス転移点または低融点と高い溶媒溶解性を持ち、また、得られた化合物も容易に高純度化できるため工業的製造が容易である。また、本発明の化合物を反応原料として直接に用いる場合、或いは、誘導体にして用いる場合も、前記同様に反応・精製が容易である。例えば、感光性レジスト等の組成物に使用した場合に溶解しやすく、組成物からの結晶析出も抑制できる効果が期待できる。従って、本発明のテトラキスフェノール化合物は、感光性レジストの材料、感光性ポリイミド材料、感光性透明樹脂絶縁膜材料、フェノール樹脂、エポキシ樹脂の原料や硬化剤、感熱記録材料に用いられる顕色剤や退色防止剤等の成分として、或いは反応原料として有利に用いることができる。
本発明によるテトラキスフェノール化合物は、上記一般式(1)で表され、上記一般式(1)において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは単結合又は上記一般式(2)のアルキリデン基を示す。上記一般式(2)のアルキリデン基において、式中、R、Rは、各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、炭素数3以上のアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。好ましくは、水素原子、1級または2級のアルキル基であり、さらに好ましくは、水素原子または炭素原子数1〜3のアルキル基である。従って、一般式(2)のアルキリデン基としては、具体的には、例えば、メチレン基、2,2−プロピリデン基、4−メチルペンタン−2−イリデン基、ブタン−2−イリデン基、ペンタン−2−イリデン基、3−メチルブタン−2−イリデン基、2,4−ジメチルペンタン−3−イリデン基、プロパン−1−イリデン基等を挙げることができる。
従って、本発明によるテトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物類の好ましい具体例としては、例えば、
ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]メタン
1,1−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]エタン
1,1−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン
2,2−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン
2,2−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]ブタン
2,2−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]3−メチルブタン
3,3−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]n−ヘキサン
2,2−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]n−ペンタン
3,3−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]2,4−ジメチル−n−ペンタン
2,2−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]4−メチル−n−ペンタン
ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]メタン
2,2−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン
4,4,4’4’-テトラキス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチルフェニル)[ビシクロヘキサン]
4,4,4’4’-テトラキス(4−ヒドロキシ−3−sec−ブチル−5−メチルフェニル)[ビシクロヘキサン]
等を挙げることができる。
本発明のこのようなテトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物類が、同様の他のアルキル置換を持つテトラキスフェノール基化合物と異なり、特異的に極めて低いガラス転移温度または融点を持ち、また溶媒への溶解性に優れている理由は不明であるが、分子末端に結合するヒドロキシフェニル基の3位に結合したsec−ブチル基が分子の結晶構造を乱すためではないかと思われる。
本発明によれば、前記一般式(1)で表されるテトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物類は、その製造方法は特に制限されず、公知の方法を用いて製造することができるが、例えば、下記一般式(3)で表されるsec−ブチル基置換フェノール類を有機溶媒中、酸触媒の存在下に下記一般式(4)で表されるビスシクロヘキサノン類又はビシクロヘキサノンと脱水縮合させることにより得ることができる。
例えば、本発明の2,2−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパンを2−sec−ブチルフェノールと2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパンを原料として製造する場合の反応式を下記に示す。
反応式
上記テトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物の原料である、下記一般式(3)で表されるsec−ブチル基置換フェノール類において、R1 は水素原子、又はメチル基あり、従って具体的化合物としては、2−sec−ブチルフェノール、2−sec−ブチル−6−メチルフェノールである。
一般式(3)
(式中、Rは一般式(1)のそれと同じである。)
また本発明のテトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物のもう一方の原料であるビスシクロヘキサノン類又はビシクロヘキサノンは下記一般式(4)で表される。
一般式(4)
(式中、Xは一般式(1)のそれと同じである。)
上記一般式(4)で表されるビスシクロヘキサノン類又はビシクロヘキサノンにおいて、Xは一般式(1)のそれと同じであり、従ってXが一般式(2)のアルキリデン基の場合は上記一般式(4)は下記一般式(5)で表される。
一般式(5)
(式中、R2 及びR3は一般式(2)のそれと同じである)
また、Xが単結合で表される場合は、下記式で表される。
このようなビスシクロヘキサン類又はビシクロヘキサノンの具体例とし、例えば、ビス(4−オキソシクロヘキシル)メタン、1,1−ビス(4−オキソシクロヘキシル)エタン、1,1−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)−1,1−ジメチル−プロパン、3,3−ビス(4−オキソシクロヘキシル)ペンタン、3,3−ビス(4−オキソシクロヘキシル)−1,1-−ジメチル−ヘキサン、2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)4−メチルペンタン、4,4’−ビシクロヘキサンジオン
等が挙げられる。
このようなsec−ブチル置換フェノール類とビスシクロヘキサノン類又はビシクロヘキサノンの縮合反応に際して用いられる酸触媒としては、例えば、塩化水素ガス、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、P−トルエンスルホン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸等の有機酸を挙げることができる。これらの酸触媒は、原料ビスシクロヘキサノン類又はビシクロヘキサノンに対し通常5〜100wt%の範囲、好ましくは30〜70wt%で用いられる。これらのなかでは、特に反応速度などの理由により塩酸、塩化水素ガスが好ましく用いられる。塩化水素ガスの場合は、反応系内を塩化水素ガスで置換し、飽和させる量程度で用いられることが好ましい。
上記触媒と共に適当な助触媒、例えばメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類を添加して反応を促進させることができる。これらの助触媒は、原料ビスシクロヘキサノン類又はビシクロヘキサノン類に対し通常1〜10wt%の範囲、好ましくは2〜6wt%で用いられる。
上記反応に際し、有機溶媒は用いなくてもよいが、原料及び触媒を均一に溶解させる為、或いは、反応粘度が高く攪拌を容易にする為など必要に応じて用いてもよい。用いる有機溶媒としては、反応原料、得られる生成物の溶解度、反応条件に適合した沸点、反応の経済性等の理由により例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ペンタン等の飽和炭化水素、メタノール、t−ブタノール等のアルコール類などを適宣単独であるいは混合して使用される。溶媒の量としては原料のsec−ブチル置換フェノール類に対し0.01〜10重量倍の範囲、好ましく0.1〜2重量倍の範囲で用いられる。
また、反応温度は、特に制限はないが、反応温度が低すぎるときは反応速度が実用上遅すぎ、他方、高すぎるときは、望ましくない副反応が起こって、目的とするテトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物の収率が低下する。従って、反応は通常0〜60℃の範囲、好ましくは10〜40℃の範囲である。反応方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いることができるが、例えば、sec−ブチル置換フェノールが存在していても良い酸触媒溶液に、ビスシクロヘキサノン類又はビシクロヘキサノン類とsec−ブチル置換フェノールの混合溶液を滴下するのが好ましい。このようにして、反応は攪拌下、1〜10時間、通常1〜5時間程度行えばよい。反応終了後、得られた反応混合物から目的物を精製するには、例えば、反応混合物に水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を加えて酸触媒を中和した後、水層を分離除去し油層を得る。この際、必要に応じて、トルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン等の水と分離可能な溶媒を加えて分離除去しても良い。
得られた油層から水層を分離すると共に水洗し、常圧又は減圧下に蒸留し、溶媒、未反応原料等、低沸成分を留去させ粗製品を得ることができる。また必要に応じて、この粗製品を適当な溶媒を用いて洗浄ないし溶解析出精製し、これを濾過、乾燥することによって目的とする、テトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物を結晶質又は非晶質の高純度品として得ることができる。
(実施例)
実施例1
<2,2−ビス[4,4−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパンの合成>
攪拌機、温度計、冷却管を備えた1L容量の四つ口フラスコにメタノール36.0g、ドデシルメルカプタン2.8gを仕込み、容器内を塩酸ガスで置換後、飽和するまで塩酸ガスを吸収させた。その後、反応液を温度20℃に保持し、攪拌しながら2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパン(以下4HBPAと略称する。)47.2g(0.20モル) とo−sec−ブチルフェノール360.0g(2.40モル)の混合液を1.5時間かけて滴下し、滴下終了後、更に1時間反応をおこなった。反応終了後、得られた反応液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した後、水層を分液除去し、得られたオイル層にトルエン160g及び水100gを加えて攪拌し、水層を除去した。次いでこのようにして得られたオイル層から溶媒を留去した後、o−sec−ブチルフェノールを減圧蒸留することにより回収し、残った残溜液にトルエン160g及びn−ヘプタン70gを添加して溶解、冷却し、固体を析出させた。この液を室温まで冷却した後、析出した固体を濾別した。次いで、攪拌機、温度計、冷却管を備えた1L容量の四つ口フラスコに得られた固体166g、トルエン320g、イオン交換水32gを仕込み、攪拌下80℃に昇温して溶解した後、水層を分離除去した。得られた油層に水100gを加えて、80℃で攪拌後、水層を分離除去し、同様の水洗操作を2回行った。その後得られた油層を蒸留して、トルエン160gを除去し、蒸留残液にn−ヘプタン70gを加えて固体を析出させた。この液を室温まで冷却した後、析出した固体を濾過、乾燥して、純度99.5%(高速液体クロマトグラフィーによる)の白色固体粉末141.0g( 4HBPAに対する 収率86.6モル%)を得た。
この固体の融点は測定できなかったが、ガラス転移温度は86℃(示差走査熱量測定)であった。
また、質量分析及びプロトンNMR分析により目的物であることが確認できた。
分子量(液体クロマトグラフィー質量分析法/大気圧化学イオン化法)
:800(M−H)
プロトンNMR分析(400MHz、溶媒:DMSO-d6、基準物質:テトラメチルシラン)
0.43(6H,s) 0.67-0.75(12H,m) 1.01(8H,d,J=8.0Hz) 1.11(8H,d,J=8.0Hz) 1.35-1.73
(18H,m) 2.58(4H,d,J=12Hz) 2.84-3.00(4H,m) 6.55(2H,d,J=8.0Hz) 6.66-6.85(8H,m) 7.04(2H,s) 8.80(2H,s) 8.86(2H,s)
(比較例)
公知化合物の2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン(化合物A)、2,2−ビス[4,4−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン(化合物B)及び2,2−ビス[4,4−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル]プロパン(化合物C)について、示差走査熱量測定(DSC)によって融点及びガラス転移温度を測定した。
(ガラス転移温度の測定方法)
サンプル200〜300mgを量り取り、示差走査熱量計にセットして一度、サンプルの融点+20℃まで温度を上げる(10℃/min)。その後30℃まで冷却して再び温度を上げ(10℃/min)、得られた熱量ピークをガラス転移温度とした。
さらにメタノール、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ヘプタン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチルの各溶媒について室温での上記化合物の溶解度を測定した。
溶解度は、化合物重量/(溶媒重量+化合物重量)×100(%)が1%、5%、10%、20%、30%、40%及び50%になるように溶媒に化合物を加えて、撹拌し、完全に溶解するかどうか確認した。各化合物について溶媒毎に完全に溶解した最も高い重量濃度を下記表にまとめた。

Claims (1)

  1. 下記一般式(1)、
    (式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは単結合又は下記一般式(2)のアルキリデン基を示す。)
    一般式(2)
    (式中、R、Rは、各々独立して水素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基を示す。)
    で表されるテトラキス(sec−ブチルフェノール)化合物。
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