JP6071739B2 - 1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類の製造方法 - Google Patents
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Description
工程(2):1,1,3−トリスフェノール類を分解反応させて下記一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を得る工程
工程(3):ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を水素化して1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を得る工程
工程(4):2−シクロヘキセン−1−オン類又は3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類とフェノール類を触媒の存在下に反応させて下記一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を得る工程
本発明の1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類の製造方法において、目的物である1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類は下記一般式(1)で表される。
上記R1、R2で表されるアルキル基としては、好ましくは炭素原子数1〜12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基、または炭素原子数5〜12のシクロアルキル基を挙げることができる。より好ましいアルキル基は炭素原子数1〜8の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基、または炭素原子数5〜6のシクロアルキル基であり、特に好ましいアルキル基は炭素原子数1〜4の直鎖状、分岐鎖状のアルキル基である。これらの具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。また、上記炭素原子数5〜12のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基等を挙げることができる。
上記R1、R2で表されるアルコキシ基としては、好ましくは炭素原子数1〜12の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、または炭素原子数5〜12のシクロアルコキシ基を挙げることができる。より好ましいアルコキシ基は炭素原子数1〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルコキシ基、または炭素原子数5〜6のシクロアルコキシ基であり、特に好ましいアルコキシ基は炭素原子数1〜4の直鎖状、分岐鎖状のアルコキシ基である。これらの具体例としてはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ等を挙げることができる。また、上記炭素原子数4〜12のシクロアルコキシ基としては、シクロヘキシルオキシ基等を挙げることができる。また、本発明の効果を妨げない範囲において、上記アルコキシ基にハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基等が置換していてもよく、また置換していなくてもよい。具体的には例えば、2−フェニルエトキシ基、メトキシエトキシ基、2−クロロエトキシ基等が挙げられる。
また、上記R1、R2で表される芳香族炭化水素基としては、好ましくは炭素原子数6〜12の芳香族炭化水素基を挙げることができる。また、本発明の効果を妨げない範囲において、上記芳香族炭化水素基にアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が置換していてもよく、また置換していなくてもよい。これらの具体例としては、フェニル基、フェニルオキシ基、1−ナフチル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等を挙げることができる。
上記R1、R2で表されるハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を挙げることができる。
上記R1で表される水酸基としては、水酸基の置換数は1つのヒドロキシフェニル基について0または1が好ましく、置換位置はヒドロキシフェニル基の水酸基に対しオルソ位が好ましい。
また、R1の置換位置としては、ヒドロキシフェニル基の水酸基に対しオルソ位に置換することが好ましい。また、メタ位に置換する場合は、置換基としてはメチル基またはメトキシ基が好ましく、メタ位の少なくとも1つの炭素原子は置換しないことが好ましく、両方共置換しないことがより好ましい。
また、R2の置換位置としては、シクロヘキサン−1,3−ジイル基の4位または/及び5位の炭素原子が好ましい。また、2位の炭素原子には置換しないか又は置換基は一つであることが好ましく、2位及び6位の炭素原子にそれぞれ同時に2つ置換することはなく、ヒドロキシフェニル基の結合している炭素原子には置換しない。
また、nは各々独立して0又は1〜4の整数を示し、mは0又は1〜7の整数を示し、n、mは好ましくは0、1または2であり、より好ましくはnが0または1でありmが0である。R1は各々同一でも異なっていてもよく、mが2以上の場合、R2は各々同一でも異なっていてもよく、同一の炭素原子に2つ置換していてもよい。
一般式(7)において、R3、R4、R5がアルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基又はハロゲン原子である場合の具体例、好ましい範囲及び好ましい例は、R1のそれらと同じである。
また、R3、R4の両置換基が共に3級アルキル基でないことが好ましく、一方が3級アルキル基の場合もう一方は水素原子、1級アルキル基または2級アルキル基であることがより好ましく、R2の置換位置はシクロヘキサン−1,3−ジイル基の4位又は/及び5位が好ましい。
また、工程(1)、工程(2)、工程(3)を順次経た場合は、一般式(7)においてR5が水素原子であるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類が好ましい。一方、工程(4)、工程(3)を順次経た場合は、一般式(7)においてR5が水素原子でないビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類が好ましく、R5がアルキル基、アルコキシ基であることがより好ましく、R5がメチル基、メトキシ基であることがさらに好ましい。
工程(2):1,1,3−トリスフェノール類を分解反応させて下記一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を得る工程
工程(3):ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を水素化して1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を得る工程
工程(4):2−シクロヘキセン−1−オン類又は3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類とフェノール類を触媒の存在下に反応させて下記一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を得る工程
また、上記一般式(2)で表される2−シクロヘキセン−1−オン類において、R2で表される置換基は、一般式(1)で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類に対応して、置換位置としては4位、5位が好ましく、また、2位には置換基がないか又は置換基がある場合は1つが好ましく、3位には置換しない。従って、上記2−シクロヘキセン−1−オン類としては、具体的には例えば、2−シクロヘキセン−1−オン、6−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン、6−フルオロ−2−シクロヘキセン−1−オン、2−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン、2−メトキシ−2−シクロヘキセン−1−オン、2−クロロ−2−シクロヘキセン−1−オン、4−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン、4−エチル−2−シクロヘキセン−1−オン、4−イソプロピル−2−シクロヘキセン−1−オン、4−t−ブチル−2−シクロヘキセン−1−オン、4−シクロヘキシル−2−シクロヘキセン−1−オン、4−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オン、4−フェニルメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、5−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン、5−エチル−2−シクロヘキセン−1−オン、5−イソプロピル−2−シクロヘキセン−1−オン、5−t−ブチル−2−シクロヘキセン−1−オン、5−n−ブチル−2−シクロヘキセン−1−オン、5−フェニル−2−シクロヘキセン−1−オン、2,6−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、4,5−ジメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、5−イソプロピル−2−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン、2−イソプロピル−5−メチル−2−シクロヘキセン−1−オン、2,5,6−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン等が挙げられる。このような2−シクロヘキセン−1−オン類は、例えば2−アルキリデンシクロアルカノンを酸触媒、白金触媒の存在下に異性化する方法(特公昭58−42175号公報等)、2−(1−ヒドロキシルアルキル)シクロアルカノンを酸触媒等の存在下に脱水異性化する方法(特開昭56−147740号公報等)、ジカルボニル化合物を環化縮合する方法(特開平10−130192号公報等)等の公知の方法で容易に得ることができる。
このような3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類は、例えば多価ヒドロキシアルキルフェノールを水素化触媒等の存在下に環水素化する方法(特開平11−60534号公報等)等の公知の方法で容易に得ることができる。
上記一般式(4)で表されるフェノール類において、式中、R1、nは、対応する一般式(1)のそれと同じである。
また、R1で表される置換基は、一般式(1)で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類に対応して、置換位置としては水酸基のパラ位には置換しないことが必要である。水酸基のオルソ位が好ましく、また、水酸基のメタ位の少なくとも一つに置換基R1がないことがより好ましく、両方に置換基がないことが特に好ましい。
また、水酸基のメタ位の置換基はメチル基、又はメトキシ基が好ましい。
従って、好ましいフェノール類としては、下記一般式(8)で表される。
上記一般式(8)において、R3、R4、R5は一般式(7)のR3、R4、R5のそれと同じであり、また、R3、R4の両置換基が共に3級アルキル基でないことが好ましく、一方が3級アルキル基の場合もう一方は水素原子、1級アルキル基または2級アルキル基であることがより好ましい。
また、R3、R4が芳香族炭化水素基である場合、R3またはR4のどちらか一方のみが芳香族炭化水素基である方が好ましい。
また、収率の観点から工程(1)の原料とする場合には、R5が水素原子であることが好ましく、工程(4)の原料とする場合には、R5は水素原子でないこと、すなわち、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、ハロゲン原子であることが好ましく、アルキル基、アルコキシ基であることがより好ましく、メチル基、メトキシ基であることが特に好ましい。
従って、フェノール類としては、具体的には例えば、
フェノール、カテコール、o−クレゾール、m−クレゾール、2−エチルフェノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、2−シクロペンチルフェノール、2−フェニルフェノール、2−n−プロピルフェノール、2−イソプロピルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、2−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−6−メチルフェノール、2−sec−ブチルフェノール、2−イソブチルフェノール、2−クロロフェノール、2−メトキシフェノール、5−メチル−2−t−ブチルフェノール、5−メチル−2−シクロへキシルフェノール等が挙げられる。
工程(1):2−シクロヘキセン−1−オン類又は3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類とフェノール類を触媒の存在下に反応させて上記一般式(5)で表される1,1,3−トリスフェノール類を得る工程
工程(2):1,1,3−トリスフェノール類を分解反応させて上記一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を得る工程
工程(3):ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を水素化して1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を得る工程を順次行うか、
又は、工程(4):2−シクロヘキセン−1−オン類又は3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類とフェノール類を触媒の存在下に反応させて上記一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を得る工程と工程(3)を順次行うことにより、目的物である1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を得ることができる。
上記一般式(5)において、R1、R2、n、mは、対応する一般式(1)のそれと同じである。また、R2はヒドロキシフェニル基の置換したシクロヘキサン環の炭素原子には置換しない。
また、式中、結合位置が不確定であるヒドロキシフェニル基(シクロヘキサン環の1位の炭素原子と結合する2つのヒドロキシフェニル基の内の一方)のシクロヘキサン環への結合位置は、フェニル基に置換した水酸基に対してオルソ位又はパラ位である。
結合位置がオルソ位の場合は、他のヒドロキシフェニル基において水酸基のオルソ位の少なくともひとつが無置換である。
また、上記一般式(5)の1,1,3−トリスフェノール類として、全てのヒドロキシフェニル基はヒドロキシ基に対するパラ位の炭素原子がシクロヘキサン環に結合する構造を有することが好ましく、R1の置換位置は水酸基に対してオルソ位であることが好ましい。
例えば、フェノールと2−シクロヘキセン−1−オン又は3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オンとの反応により1,1,3−トリスフェノールを得る反応は下記の反応式(1)で示される。
酸触媒としては例えばプロトン酸触媒、ルイス酸触媒等の気体状、液体状及び固体状酸触媒が挙げられる。
具体的には例えば、塩化水素ガス、塩酸、硫酸、リン酸、無水硫酸等の無機酸、P−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはトリクロロ酢酸等の有機酸、塩化アルミウム、塩化鉄等のハロゲン化金属類またはリンタングステン酸若しくはケイタングステン酸等のヘテロポリ酸または陽イオン交換樹脂等の固体酸等が挙げられる。
前記触媒のうち、特に好ましいのは塩酸及び塩化水素ガスである。
酸触媒の使用量は、特に限定されるものではない。好ましい使用量は触媒により適量が異なるので一概には言えないが、例えば35%塩酸の場合、2−シクロへキセン−1−オン類または3−ヒドロキシシクロへキサン−1−オン類 に対し、好ましくは0.1〜3.0モル倍、より好ましくは0.2〜1.0モル倍、特に好ましくは0.3〜0.6モル倍の範囲で用いられる。
助触媒は使用しなくても反応は進行するものの、反応収率および反応速度の観点から、助触媒を使用する方が好ましい。
助触媒としては、メルカプト基を有する化合物乃至高分子化合物が好ましく、具体的には例えばメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類やメルカプト酢酸、β−メルカプトプロピオン酸等のメルカプタンカルボン酸、メルカプト基を有する陽イオン交換樹脂または有機高分子シロキサン等が挙げられる。
尚、メチルメルカプタンを使用する場合は、ナトリウム塩水溶液として使用しても良い。
助触媒の使用量は、特に限定されるものではなく、反応条件や種類により適量が異なるので一概には言えないが、例えばアルキルメルカプタンを用いる場合、使用量は2−シクロへキセン−1−オン類または3−ヒドロキシシクロへキサン−1−オン類 に対し、好ましくは0.5〜50モル%、より好ましくは2〜30モル%、特に好ましくは4〜20モル%の範囲である。
このような反応条件においては、反応は、原料を全て反応系内に添加した後、好ましくは80時間程度以内で完結する。
反応に際し、反応溶媒は用いてもよく、また用いなくてもよいが、フェノール類の融点が高い等の理由で原料や触媒が十分に混合しない場合には、用いた方が好ましい。
例えば、原料フェノール類が、反応させる際に液状であればそれ自体溶媒となるので、必ずしも他に溶媒を用いなくてもよい。
反応溶媒を用いる場合、本願効果を阻害しない範囲であれば、溶媒の種類及び添加量に特に限定はないが、好ましい反応溶媒としては、具体的には例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノールまたは2−プロパノール等の低級脂肪族アルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキソラン等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素類、またはこれらの混合溶剤が挙げられる。反応溶媒は、2−シクロヘキセン−1−オン類または3−ヒドロキシシクロアルカン−1−オン類に対し、好ましくは0.1〜20モル倍の範囲で用いられる。
好ましい態様によれば、例えば、反応容器に所定量のフェノール類、酸触媒及び必要に応じて、助触媒、反応溶媒を仕込み、窒素気流下に攪拌しながら、所定の反応温度まで昇温した後、そこに2−シクロヘキセン−1−オン類または3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類を逐次添加していく方法が挙げられる。
本発明の製造方法において、反応に際し、原料ケトン類として、3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類を用いた場合、その反応の詳細は不明であるが、例えば3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オンは、酸存在下で2−シクロヘキセン−1−オンを生成するので、反応中、2−シクロアルケン−1−オン類を経由して1,1,3−トリス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類が生成している可能性もあると思われる。
しかしながら1,1,3−トリスフェノール類をある程度の純度で取り出すことが好ましい。その場合、反応終了後、公知の単離乃至精製方法を適用し、中和、水洗等の後処理を行ってもよい。
例えば、反応終了液に水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液等のアルカリ水溶液を加えて、酸触媒を中和する。
前記水層を分離除去して得られた油層は、必要に応じて、再度、水を加え撹拌して水洗した後、水層を分離除去する操作を1回乃至複数回繰り返した後、得られた油層を冷却して晶析または沈殿させた後に、濾過することにより1,1,3−トリスフェノール類の粗製結晶、または固体を得ることもできる。また、前記した水層を分離除去して得られた油層は、これを蒸留して溶媒と未反応フェノール類を留去した後、その残液を適宜の溶媒に溶解させて、得られた溶液を冷却して晶析または沈殿させた後、濾過してもよく、また、1,1,3−トリスフェノール類の結晶化が困難な場合には、蒸留して得られた残渣を冷却して粗製物として得ることもできる。
上記晶析工程においては、1,1,3−トリスフェノール類によっては使用する溶媒や原料フェノール類との付加物結晶(アダクト結晶)として得られる場合もある。また、得られた結晶、固体又は粗製物は必要に応じて晶析等の公知の精製方法を用いて高純度化し、これを次工程の原料に使用することができる。
次工程(2)の原料としては、前記粗製結晶、高純度結晶、固体、アダクト結晶または蒸留残渣のいずれも用いることができるが、晶析または沈殿させた後、濾別して得られた1,1,3−トリスフェノール類を用いるのが好ましい。
上記一般式(11)または一般式(12)において、R1、R2、n、mは、各々独立して対応する一般式(1)のそれと同じである。
また、R1の好ましい置換位置は一般式(4)のそれと同じであり、R2の好ましい置換位置は、中心の1−シクロヘキセン−1,3−ジイル基の4位、5位または1−シクロヘキセン−1,5−ジイル基の3位、4位である。好ましい1,3−又は1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類としては、下記一般式(13)または一般式(14)で表される。
下記に反応式(2)で例示する。この反応では生成する前記一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類は通常、上記一般式(11)で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類及び一般式(12)で表される1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類の異性体混合物として得られる。
上記1,1,3−トリスフェノール類の分解反応は、上記原料である1,1,3−トリスフェノール類や生成物であるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類の融点が高い等の理由により、分解反応温度において反応容器内の原料や触媒の均一性が損なわれる場合、その改善を図るため、更には、生成した目的物の熱重合を防止するために、好ましくは、反応溶媒の存在下に行われる。
このような溶媒は、用いる1,1,3−トリスフェノール類100重量部に対して、好ましくは、5〜150重量部、より好ましくは、20〜100重量部の範囲で用いられる。
好ましい態様によれば、1,1,3−トリスフェノール類の分解反応は、例えば、反応容器に1,1,3−トリスフェノール類とアルカリ触媒とテトラエチレングリコール等の溶媒を仕込み、不活性雰囲気中、温度160〜200℃、圧力1〜10kPaで3〜6時間程度、分解反応によって生成したフェノール類を留去しながら、撹拌することによって行われる。
このようにして、1,1,3−トリスフェノール類を分解反応させることによって、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を、好ましい条件であれば、90%程度の反応収率にて得ることができる。
例えば、上記含水油状の混合物にメチルイソブチルケトン等の水と分離する有機溶媒と水を加え撹拌し、上記中和によって生成した塩と分解反応に用いた溶媒(例えば、テトラエチレングリコール)とを水層に抽出して水層とともに分離除去し、得られた油層を必要に応じて1回乃至複数回水洗する。その後、得られた油層から、上記有機溶媒(例えば、メチルイソブチルケトン)や分解生成したフェノール類等の低沸点物を蒸留等にて留去する。この後、このようにして得られた蒸留残渣を、次工程(3)の水素化反応の原料に用いてもよく、更に晶析溶媒を加えて、晶析させ、精製した精製品としてから、次工程(3)の水素化反応の原料に使用してもよい。前記晶析溶媒としては、好ましくは例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族飽和炭化水素溶媒、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン溶媒、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂環式飽和炭化水素溶媒、又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。
得られる異性体混合物のモル比としては、原料の1,1,3−トリスフェノール類や反応条件などによりその比率は特定のものに限定されるものではないが、例えばシクロヘキセン−1−オンの2位や6位に置換基がなければ、通常、1,3−置換体と1,5−置換体の異性体モル比は1前後又は0.6〜1.5程度の範囲で得られる。
また、得られた前記一般式(11)で表される1,3−置換体や一般式(12)で表される1,5−置換体は不斉炭素原子を有しているので、それぞれに鏡像異性体等の光学異性体が存在し、通常光学異性体の混合物であり、どちらも工程(3)の有効な原料として用いられる。
下記に反応式(4)で例示する。
反応式(4)
工程(4)の反応において、原料のモル比、反応温度、触媒、触媒の使用量、助触媒、助触媒の使用量、反応溶媒、反応溶媒の使用量、原料の仕込み方法等の具体例、好ましい範囲や好ましい量については、工程(1)で説明したそれらと同じである。
また、反応終了後の反応液の処理方法、化合物の単離方法及び精製方法も公知の方法でよく、工程(1)で説明したそれらと同じである。
工程(3)においては、工程(2)又は工程(4)で得られたビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を、水素化反応に付す。シクロヘキセン環を水素化し、シクロヘキサン環とする方法は特に制限されず従来公知の反応方法を適宜用いることができる。
例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類は水素分子を用いずに不均化反応させることにより水素化反応が起こり、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を生成することもできる。しかし不均化反応で1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を生成させると、4,4”−ジヒドロキシ−m−ターフェニル類も副生するため、この反応では高純度品を得たい場合には、水素分子(水素ガス)を使用する、などの方法が例示できる。
このような本発明の製造方法において得られた1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類は中央のシクロヘキサン骨格において、下記立体異性体(シス体・トランス体)が存在する。
従って、本発明の製造方法で得られた1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類は下記一般式(15)又は一般式(16)で表される立体異性体の混合物であってもよいし、晶析等により一方の立体異性体のみに分離したものであってもよい。
また、上記のようにして得られた本願化合物について、その用途やフェノール性水酸基を置換する等の公知の方法によって得られる誘導体についても具体的に説明する。
例えば、本願化合物とエピクロロヒドリンを反応させることにより、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)シクロヘキサン等、あるいはそれらの立体異性体混合物等が得られ、これらを原料にエポキシ樹脂を得ることができる。
本願化合物と2−(3−オキセタニル)ブチルトシレートを反応させることにより、1,3−ビス{4−[2−(3−オキセタニル)]ブトキシフェニル}シクロヘキサン等、あるいはそれらの立体異性体混合物等が得られ、これらを原料にオキセタン樹脂を得ることができる。
本願化合物と1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸クロリドを反応させることにより、1,3−ビス{4−[(6−ジアゾ−5−オキソナフチル)スルホニルオキシ]フェニル}シクロヘキサン等、あるいはそれらの立体異性体混合物等が得られ、これらは感光性組成物に用いることができる。
本願化合物とアクリル酸(又はメタクリル酸)を反応させることで1,3−ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)シクロヘキサン等、あるいはそれらの立体異性体混合物等を得ることができ、これらを原料に樹脂とすることができる。
本願化合物とメチルアミン及びホルムアルデヒドを反応させることにより1,3−ビス(3−メチル(2H,4H−ベンゾ[3,4−e]1,3−オキサジン−6−イル))シクロヘキサン等、あるいはそれらの立体異性体混合物等が得られ、これらを原料に樹脂とすることができる。
本願化合物とホルムアルデヒドを反応させることにより1,3−ビス(3,5−ジヒドロキシメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等、あるいはそれらの立体異性体混合物等を得ることができる。またこれらのメチロール化合物をメタノールと反応させることで1,3−ビス(3,5−ジメトキシメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等、あるいはそれらの立体異性体混合物等を得ることができ、各種用途で架橋剤として用いることができる。
その他用途として本願化合物は、フェノール性水酸基を複数有しているので、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン(またはポリサルフォン、ポリフェニルサルフォン)、ノボラック、レゾール等の樹脂原料、その他、エポキシ樹脂用硬化剤、i線レジスト添加剤、顕色剤、酸化防止剤としての利用も期待できる。
実施例1
[1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの合成]
(工程(1):1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの合成)
フェノール1412g、35%塩酸78.2g、ドデシルメルカプタン15.2g、メタノール144gを3リットル容量4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下で、液温を30〜35℃に保ちながら、2−シクロヘキセン−1−オン144gを10時間で滴下し、滴下終了後、30℃で46時間撹拌した。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を加え中和した後、昇温してメタノールを留去した。次いで、水層を分離除去後、油層に水とメチルイソブチルケトンを加えて撹拌して水洗し、水層を分離除去して得られた油層からメチルイソブチルケトンと未反応のフェノールを減圧下で留出させ、除去した。残渣にトルエンを加えて析出した結晶を室温で濾別し、乾燥して、純度95%(高速液体クロマトグラフィー分析法)の1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの粗製結晶を得た。
この粗製結晶をメチルイソブチルケトンに溶解し、水を加えて水洗後、水層を分離した。得られた油層を濃縮後、残渣にトルエンを加えて析出した結晶を室温で濾別し、乾燥して、純度99.4%(高速液体クロマトグラフィー分析法)の1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン223.2gを得た。
収率: 42%(2−シクロヘキセン−1−オンに対する収率)
分子量: 359 (M−H)-(液体クロマトグラフィー質量分析法)
融点: 202℃( 示差走査熱量測定法 )
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO−d6)表1参照
温度計、冷却器及び撹拌翼を取り付けた四つ口フラスコに、工程(1)で得られた1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン18.0gとテトラエチレングリコール9.0g、16%水酸化ナトリウム水溶液1.3gを仕込み、10kPaに減圧しながら撹拌下に170℃まで昇温した後、攪拌下に減圧下で生成したフェノールを留出させながら、同温度でさらに9時間分解反応を行った。反応中、フェノールを主成分とする液が留出した。
反応終了後、100℃に冷却してから酢酸を加えて中和した。さらにメチルイソブチルケトンと水を加えて撹拌した後、水層を分離した。得られた油層に水を加えて撹拌し、水層を分離する水洗操作を3回実施した。その後、水洗された油層から溶媒を蒸留して除去した後、トルエン18gを加えて晶析、濾過して、乾燥し、純度91%(高速液体クロマトグラフィー分析法)の1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン及び1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンの混合物6g(高速液体クロマトグラフィー分析法による異性体比:A/B=49/51)を得た。
この混合物の一部を液体クロマトグラフィーにて分取して精製し、純度98%(高速液体クロマトグラフィー法)の1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン(A)及び1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン(B)の混合物(高速液体クロマトグラフィー分析法による異性体比:A/B=50/50)を得て、これについて1H−NMR、分子量、融点を測定した。
融点:159℃( 示差走査熱量測定法 )
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒:CD3OD):表2参照
工程(2)で得られた1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン及び1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンの混合物2.6gとイソプロピルアルコール13.0g、5%パラジウムカーボン(以下、5%Pdカーボンと称呼する。)0.3gをオートクレーブに仕込み、系内を水素ガス置換した後、40℃で反応容器内の水素圧が140kPa(ゲージ圧)になるように調整しながら1時間撹拌した。反応終了後、反応液にイソプロピルアルコール26gを加えて析出している結晶を溶解後、5%Pdカーボンを濾別し、濾液を濃縮して1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(立体異性体混合物)2.6gを得た。
収率: 44%(対1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン)
純度: 92%(高速液体クロマトグラフィー法)
シス/トランス比:65/35(高速液体クロマトグラフィー法)
1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(立体異性体混合物)
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO−d6):表3参照
[1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの異性体分離精製]
実施例1で得られた1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(立体異性体混合物)2.6gを酢酸エチル13g中で、60℃で1時間撹拌した後、室温まで冷却して、析出した結晶を濾過、乾燥させてcis−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン0.7gを得た。
回収率: 27%
シス体回収率: 41%
純度: 99%(立体異性体混合物,高速液体クロマトグラフィー法)
純度: 98% (シス体,高速液体クロマトグラフィー法)
分子量:267(M−H)-(液体クロマトグラフィー質量分析法)
融点: 236℃(示差走査熱量測定法)
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO−d6):表4参照
[1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの合成]
(工程(1):1,1,3−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの合成)
オルソクレゾール1513.4g、35%塩酸73g、ドデシルメルカプタン14.2g、メタノール134.4gを3リットル容量の4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下で液温を30〜32℃に保ちながら、2−シクロヘキセン−1−オン134.5gを3.5時間で滴下した。滴下終了後、30〜32℃で22時間攪拌した。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を加え、中和した後、昇温してメタノールを留去した。その後、水層を分離除去して得られた油層にメチルイソブチルケトンと水を加えて撹拌して水洗し水層を分離除去した。得られた油層からメチルイソブチルケトンと未反応のオルソクレゾールを減圧下で留出させ、除去した。
残渣を1−オクタノールに溶解後、シクロヘキサンを加えて晶析し、析出したアダクト結晶を室温で濾別し、乾燥して1,1,3−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのアダクト結晶522.5gを得た。この結晶は、ガスクロマトグラフィー分析による溶媒量が16%であり、高速液体クロマトグラフィー分析による純度が99.2%(溶媒除く)であった。
収率:77.9%(2−シクロヘキセン−1−オンに対する収率)
分子量:401 (M−H)-(液体クロマトグラフィー質量分析法)
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):表5参照
工程(1)で得られた1,1,3−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのアダクト結晶236.8g、テトラエチレングリコール50.3g、16%水酸化ナトリウム水溶液12.5gを温度計、冷却器及び撹拌翼を取り付けた1リットル容量の4つ口フラスコに仕込み、液温を190℃まで昇温した後、減圧下で生成するオルソクレゾールを反応系外に留出させながら分解反応を2時間行った。反応終了後、冷却してから酢酸を加えて中和し、メチルイソブチルケトンと水を加えて撹拌した後、水層を分離除去した。得られた油層からメチルイソブチルケトンを留去させ、その蒸留残渣として純度86.8%(高速液体クロマトグラフィー法)の1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン(C)及び1,5−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン(D)の混合物(高速液体クロマトグラフィー分析法による比率:C/D=56/44)132.3gを得た。
この混合物の一部を液体クロマトグラフィーにて分取して精製し、純度96.8%(高速液体クロマトグラフィー法)の1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン(C)及び1,5−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン(D)の混合物(高速液体クロマトグラフィー分析法による比率:C/D=59/41)を得た。
分子量:293(M−H)-(液体クロマトグラフィー質量分析法)
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):表6参照
工程(2)で得られた純度86.8%の1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン及び1,5−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンの混合物13.2g、2−プロパノール66g、5%Pdカーボン1.4gをオートクレーブに仕込み、系内を水素ガス置換した後、水素圧220kPa(ゲージ圧)、液温40〜43℃で4時間反応した。反応終了液から5%Pdカーボンを濾別後、濾液を蒸留して濃縮した。得られた蒸留残渣は、純度84.5%、シス/トランス比=67/33(いずれも高速液体クロマトグラフィー法)の粗製1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン11.6gであった。この残渣1.0gに1−オクタノール0.5gを加え溶解後、シクロヘキサン3.0gを加えて晶析し、析出した結晶を濾別、乾燥して86.4%、シス/トランス比=95/5(いずれも高速液体クロマトグラフィー分析法)の1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの結晶0.8gを得た。さらに、この結晶を1−オクタノール/シクロヘキサンから同様に再結晶して精製し、純度87.2%、シス/トランス比=99.7/0.3(いずれも高速液体クロマトグラフィー法)の結晶得た。この結晶を液体クロマトグラフィーで分取して精製し、純度99.1%(高速液体クロマトグラフィー法)の1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(シス体)を得た。
分子量:295(M−H)-(液体クロマトグラフィー質量分析法)
融点:132.7℃(示差走査熱量測定法)
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO−d6):表7参照
[1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの合成]
実施例3の工程(2)で得られた純度86.8%の1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン及び1,5−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンの混合物13.2g、2-プロパノール66g、5%Pdカーボン1.4gをオートクレーブに仕込み、系内を水素ガス置換した後、水素圧220kPa(ゲージ圧)、液温40〜43℃で4時間反応した。反応終了液から5%Pdカーボンを濾別後、濾液を濃縮した。得られた蒸留残渣は、純度84.5%、シス/トランス比=67/33(いずれも高速液体クロマトグラフィー法)の1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン11.6gであった。この残渣を液体クロマトグラフィーにより分取して精製を行ない、純度98.5%、シス/トランス比=82/18(いずれも高速液体クロマトグラフィー法)の1,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを得た。
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO−d6):表8参照
[1,3−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの合成]
(工程(1):1,1,3‐トリス(3‐フェニル‐4‐ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの合成)
2−フェニルフェノール177g、ドデシルメルカプタン0.5g、メタノール17.7gを1リットル容量の4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下で液温を42℃まで昇温した後、系内が塩化水素ガスで飽和するまで吹き込んだ。内温を39〜41℃に維持しつつ、これに2−シクロヘキセン−1−オン10.1gを2時間で滴下し、滴下終了後、塩化水素ガスを吹き込みながら39〜40℃で25時間攪拌した。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を加え中和した後、トルエンを加えて水層を分離除去した。その後、水を加え撹拌して水洗し、水層を分離して得られた油層からトルエンと未反応の2−フェニルフェノールを減圧下で留出させて除去し、純度77.0%( 高速液体クロマトグラフィー法 )の1,1,3−トリス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン93.6gを得た。
一部を液体クロマトグラフィーにて分取して精製し、得られた純度高純度品をプロトンNMR分析及び分子量測定を行ない、目的物であることを確認した。
分子量:587(M−H)-(液体クロマトグラフィー質量分析法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO‐d6):表9参照
温度計、冷却器及び撹拌翼を取り付けた200ml4つ口フラスコに、工程(1)で得られた純度77.0%( 高速液体クロマトグラフィー法 )の1,1,3−トリス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン31.0g、テトラエチレングリコール6.1g、16%水酸化ナトリウム水溶液1.0gを仕込み、液温を200℃まで昇温した後、減圧下で2−フェニルフェノールを反応系外に留出させながら分解反応を3時間行なった。反応終了後、冷却してから酢酸を加えて中和し、メチルイソブチルケトンと水を加えて撹拌して溶解させ、水層を分離除去した。得られた油層からメチルイソブチルケトンを留去し、純度64.6%( 高速液体クロマトグラフィー法 )の1,3−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン(E)と1,5−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン(F)の混合物21.3gを蒸留残渣として得た。
この混合物の一部を液体クロマトグラフィーにて分取して精製を行ない、純度94.2%( 高速液体クロマトグラフィー法 )の1,3−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンと1,5−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン混合物を得た(1H‐NMR分析における水素積分値による比率:E/F=51/49)。
分子量:417(M−H)-(液体クロマトグラフィー質量分析法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:CDCl3):表10参照
工程(2)で得られた純度64.6%( 高速液体クロマトグラフィー法 )の1,3−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン及び1,5−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンの混合物10.6g、2−ブタノール63.6g、5%パラジウムカーボン6.58gをオートクレーブに仕込み、系内を水素ガス置換した後、水素加圧下(ゲージ圧;0.6MPa)、液温60〜72℃で7.5時間反応した。反応終了液からパラジウムカーボンを除去後、濃縮し、得られた蒸留残渣は純度67.6%、シス/トランス比=72/28(いずれも高速液体クロマトグラフィー法)の粗製1,3−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン8.9gであった。
さらに、分取液体クロマトグラフィーを用いて精製を行ない、純度98.6%、シス/トランス比=85/15(いずれも高速液体クロマトグラフィー法)の1,3−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンを得た。
分子量:419(M−H)-(液体クロマトグラフィー質量分析法)
融点:確認できず(示差走査熱量測定法)
ガラス転移温度(Tg):51.1℃
[1,3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの合成]
(工程(4):1,3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン又は1,5−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセンの合成)
2,5−キシレノール114.7g、ドデシルメルカプタン0.5g、メタノール51.0gを500ml容量の4つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下で液温を39℃まで昇温した後、系内が塩化水素ガスで飽和するまで吹き込んだ。内温を39〜40℃に維持しつつ、これに2‐シクロヘキセン‐1‐オン10.0g、2,5−キシレノール12.8g、メタノール12.8gの混合液を2時間で滴下し、滴下終了後、塩化水素ガスを吹き込みながら39℃で24時間攪拌した。反応途中で反応液の一部を採取して高速液体クロマトグラフ質量分析計で分析した結果、保持時間がほとんど同じところに目的物と同じ分子量のピークが2つ検出された。反応終了後、水酸化ナトリウム水溶液を加え中和した。これにメチルイソブチルケトンを加え撹拌後、これを濾過して結晶を取得した。結晶は、前記2つの検出された目的物と同じ分子量ピーク成分の内、保持時間が僅かに長い方のピーク成分が主成分であった。得られた結晶にメチルイソブチルケトンと水を加え撹拌して溶解させ静置した後、水層を分離除去し、得られた油層に水を加え撹拌し静置した後、水層を分離除去した。得られた油層を冷却して析出した結晶を濾別し乾燥することで純度99.7%(高速液体クロマトグラフィー法)の1,5−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン9.4gを得た。
分子量:323(M+H)+(液体クロマトグラフィー質量分析法)
融点:247℃(示差走査熱量測定法)
1H‐NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO−d6):表12参照
分子量:323(M+H)+(液体クロマトグラフィー質量分析法)
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒;DMSO−d6):表13参照
工程(4)で得られた純度99.7%の1,5−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−シクロヘキセン2.5g、アセトン25g、5%Pdカーボン0.3gを0.19L容量オートクレーブに仕込み、系内を水素ガスで置換した後、水素圧が500kPa(ゲージ圧)、液温50℃で1時間反応した。この反応液から5%Pdカーボンを濾別した後、濾液を蒸留して濃縮した。得られた蒸留残渣は、純度99.5%(高速液体クロマトグラフィー法)の1,3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(立体異性体混合物)2.4gを得た。
分子量:323(M−H)-(液体クロマトグラフィー質量分析法)
融点:179.5℃(示差走査熱量測定法)
1H−NMR(400MHz)測定(溶媒:DMSO−d6):表14参照
上記の実施例における工程(1)の工程として、以下の工程を採用することも可能である。
[ 1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの合成 ]
フェノール41.6g、35%塩酸3.2gとドデシルメルカプタン0.5gを200ml四つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下で40℃に昇温した後、3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン10.7gを3時間で滴下し、滴下終了後、40℃で79時間、撹拌して反応させた。反応終了液を高速液体クロマトグラフィーで分析した結果、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの組成値(面積百分率/フェノールを除く)は61%であった。なお、この組成値から計算した収率は59%(対 3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン)となる。
実施例1と同じ方法で後処理後、NMR及び液体クロマトグラフィー質量分析法により分析した結果、目的物の1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)シクロへキサンであることが確認できた。
Claims (1)
- 下記一般式(1)で表される1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を製造する方法であって、下記一般式(2)で表される2−シクロヘキセン−1−オン類又は下記一般式(3)で表される3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類と下記一般式(4)で表されるフェノール類を原料とし、下記の工程(1)、工程(2)、工程(3)を順次行うか、又は下記の工程(4)、工程(3)を順次行う ことを特徴とする製造方法。
工程(1):2−シクロヘキセン−1−オン類又は3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類とフェノール類を触媒の存在下に反応させて下記一般式(5)で表される1,1,3−トリスフェノール類を得る工程
工程(2):1,1,3−トリスフェノール類を分解反応させて下記一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を得る工程
工程(3):ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を水素化して1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン類を得る工程
工程(4):2−シクロヘキセン−1−オン類又は3−ヒドロキシシクロヘキサン−1−オン類とフェノール類を触媒の存在下に反応させて下記一般式(6)で表されるビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキセン類を得る工程
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