JP4958035B2 - シールドルーフ工法 - Google Patents
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また、近年においては様々な新工法も提案され、たとえば特許文献1には本坑掘削に先立って導坑から人工地山アーチを先行施工するという鯨骨工法(WBR工法)が提案されている。
すなわち、本線トンネルおよびランプトンネルはそれぞれ在来のシールド工法により地山を安定に支保し、また止水性を確保しつつ支障なく施工できるが、分岐合流部では断面を漸次変化させつつ双方のシールドトンネルどうしを接合する必要があることから、分岐合流部の施工に際しては在来のシールド工法をそのまま適用できるものではなく、何らかの補助工法の採用が不可欠である。
なお、以上のことは道路トンネルにおける分岐合流部の施工に際してのみならず、各種用途の大規模な地中空洞を未固結地盤に対して設ける場合全般に共通する課題でもある。
その工法によれば、シールドルーフ先受工による万全の支保効果が得られることはもとより、大規模の地中空洞を効率的かつ合理的に施工できるものではあって、特に大深度・大断面の道路トンネルの分岐合流部の施工に適用して最適なものではあるが、多数のルーフシールドトンネルによるシールドルーフ先受工を効率的に施工するためはより一層の施工性改善を図る必要もあるとされ、その点では改善の余地を残しているものでもあった。
特に、地中発進室を施工するに際しては、その施工予定位置に予めシールド工法による作業用のシールドトンネルを施工し、その周囲を地盤改良したうえで周囲に拡幅して地中発進室を施工すれば、地中発進室自体を効率的にかつ安全にしかも地表からの立坑を必要とせずに施工することが可能である。
さらに、シールドルーフ先受工を構成しているルーフシールドトンネル間を掘削して隣り合うルーフシールドトンネル間に本設覆工壁を施工すると良く、そのためにはルーフシールドトンネルを鋼製フレームに対して鋼板製のスキンプレートを取り付けた鋼製セグメントを用いて施工して、ルーフシールドトンネル間を掘削するに際しては鋼製セグメントにおける鋼製フレームを残して鋼板製のスキンプレートのみを撤去することとすれば、
支保効果を確保しつつ本設覆工壁を効率的に施工することが可能である。
なお、本実施形態では本線シールドトンネル1の直径がたとえば16m程度、ランプシールドトンネル2の直径がたとえば11m程度であることを想定している。また、本実施形態における分岐合流部の全体の断面形状は、図2〜図3に示されるように手前側(図3(a)〜(b)参照)から前方側(図3(c)参照)に向かって漸次縮小するような横長楕円形状とされ、上述のように本実施形態ではそのような分岐合流部の断面形状に合致するシールドルーフ先受工3と本設覆工壁4を内部の掘削に先立って先行施工することとしている。
そして、ランプシールドトンネル2の掘進と並行作業により施工した上下の地中発進室7(図4参照)からルーフシールド機5を順次発進させてそのまま直進させ、あるいは必要に応じて若干の旋回をさせたうえで直進させることにより、分岐合流部の施工予定位置の外側に複数(図示例では16本)のルーフシールドトンネル6を分岐合流部の輪郭に沿って所定間隔で配列した状態で施工し、それら複数のルーフシールドトンネル6の全体によって上記のシールドルーフ先受工3を構成するものである。
それら地中発進室7を施工するに当たっては、図4(b)に示すようにその施工予定位置に作業用のシールドトンネル7aを施工し、その周囲を薬液注入あるいは凍結工法により地盤改良したうえで、そのシールドトンネル7aを周囲に拡幅することによって行うと良い。その際、その作業用シールド機はたとえばランプシールドトンネル2あるいは本線シールドトンネル1から発進させることが考えられ、それにより地中発進室7を効率的にかつ安全にしかも地表からの立坑を必要とせずに施工することが可能である。
なお、図4(a)に示しているように各地中発進室の断面形状は馬蹄形とすることが好ましい。また、図3(a)に示しているように、上段の地中発進室7の両端部を段階的に掘り下げておくことにより、そこからのルーフシールド機5の発進位置を下げて発進後の旋回をより少なくすることができる。勿論、可能であれば下段の地中発進室7の両端部を上段の地中発進室7と対称的に掘り上げておいても良い。
勿論、可能であれば全てのルーフシールドトンネル6をそれぞれ独立のルーフシールド機5によりほぼ同時に施工することでも良い。また、地中発進室7からルーフシールド機5を発進させるための手法としては、在来のシールドトンネルの側壁部からのシールド機の発進手法をそのまま採用可能である。
すなわち、隣り合うルーフシールドトンネル間接合予定位置を含むその周囲に凍結工法による地山改良手段としての凍結管を図5〜図6に示すように設置して凍結ゾーン8を形成する。この地山改良手段としての凍結ゾーン8の具体的な形成時期は、全16本のルーフシールドトンネル6の施工が完了している必要はなく、ルーフシールドトンネル6が隣り合って施工されているところがあれば、その施工がされているところから順次形成していくようにすれば良い。
その具体的な施工方法としては、各ルーフシールドトンネル6の内部からそれに隣り合っているルーフシールドトンネル6の上部および下部に向けてそれぞれ斜め後方(斜め前方でも良い)に長尺の放射凍結管9aをたとえば1m程度の間隔で密に多数打ち込むとともに、各ルーフシールドトンネル6内には埋込凍結管9bを取り付け、それらの凍結管によって周囲地山を凍結させることによって、シールドルーフ先受工3の内外の全体を覆うような凍結ゾーン8を形成する。シールドルーフ先受工3の内外に形成する凍結ゾーン8の厚みは、地山状況やルーフシールドトンネル6間の間隔等を考慮して設定すれば良いが、たとえば1m程度(シールドルーフ先受工3を含めた全体では6m程度)で充分である。
なお、凍結管9aを斜め方向に打設するのは、ルーフシールドトンネル6に対して直交方向に打設する場合に比して1本あたりの打設長さは長くなるが、一方でルーフシールドトンネル6からの打設間隔が大きくなるために打設本数が少なくなるので、結果的に施工効率が良くなりコスト低減が図れるからである。
なお、分岐合流部の前方側(小径側)の妻部に対しては、図5(b)に示したように上記の凍結ゾーン8を本線シールドトンネル1の周囲にも形成することで充分であるが、必要であればそこにも上記と同様に妻部凍結管9cを打ち込んで妻部凍結ゾーン10をさらに形成することでも良い。
また、上記のような凍結工法による凍結ゾーン8を形成することに代えて、薬液注入による地盤改良による改良ゾーンを形成することでも良く、その場合には凍結管に代えて薬液注入管を打ち込めば良い。
そのような覆工体23を全てのルーフシールドトンネル6間に形成していき、ルーフシールドトンネル6間の覆工体23の形成が済んだところから順次、各ルーフシールドトンネル6の内部にも同様に鉄筋20を組み立てるとともに必要に応じて補剛材21を組み立てて覆工コンクリートを打設することによって同様の覆工体23を相互に連結しつつ形成していき、最終的には図10〜図11に示すように各ルーフシールドトンネル6間および各ルーフシールドトンネル6内に、全体として剛に連結されたリング状断面の一連の本設覆工壁4を施工する。
また、ルーフシールドトンネル6間の掘削は、ルーフシールドトンネル6内からその側方を掘削することで行えば良いが、分岐合流部の手前側ではルーフシールドトンネル6間に充分な間隔があるので、図1に示すようにそこでは簡易なルーフシールド35を設置してその内側を小形ロードヘッダー等の掘削機36を用いてオープンシールド工法の手法で掘進することも可能である。
いずれにしても、その掘削に際しては隣り合っているルーフシールドトンネル6自体を作業通路として有効に利用して資材や掘削土の搬送を効率的に行うことができ、ルーフシールドトンネル6内への覆工体23の施工はそのような作業通路としての供用が完了したものから順次行えば良い。
そして、図10に示すようにその内側全体を掘削して大断面の分岐合流部を完成させる。その掘削は、分岐合流部の内側を通過している本線シールドトンネル1のセグメントを解体してその周囲を拡幅していくことで行えば良く、その際には細かな加背割を行う必要はないので、大型重機を支障なく使用して効率的な掘削作業を行うことができる。
なお、分岐合流部を掘削することでその内面側に各ルーフシールドトンネル6のセグメントが露出することになるが、図10に示すようにそのセグメントは撤去して本設覆工壁4の内面を露出させれば良く、それにより分岐合流部の内面を自ずと平坦面とすることができる。ただし、必ずしもそのようにする必要はなく、たとえばインバート部に位置するルーフシールドトンネル6はそのままにインバート部に埋め殺すことでも良く、その場合にはルーフシールドトンネル6内全体に覆工コンクリートを充填してしまえば良い。
そして、最終的に分岐合流部の両端部に対して妻壁となる覆工壁を本設覆工壁4の内側にそれぞれ設け、手前側の妻壁40(図12(c)参照)には本線シールドトンネル1とランプシールドトンネル2とを接合し、前方側の妻壁(図示略)には本線シールドトンネル1を接合すれば、分岐合流部の覆工全体の完成となる。
また、凍結ゾーン8の厚さの範囲内においてルーフシールドトンネル6間を掘削して覆工体23を施工するとともに、ルーフシールドトンネル6内にも同様の覆工体23を一体に連結して施工して、それら一連の覆工体23による本設覆工壁4を先行施工してからその内側を掘削するので、大規模な分岐合流部のような地中大空洞を掘削に際して万全の支保効果と止水効果が得られる。
さらに、本実施形態のトンネル工法は、基本的にはいずれも多くの実績のある在来のシールド工法や凍結工法、掘削工法を有機的に組み合わせるものであるから、安全性や信頼性に優れるばかりでなく、比較的低コストでの施工が可能であり、特に都市圏における大深度・大断面の道路トンネルを施工する際に適用して最適な工法であるといえる。
勿論、上記実施形態のように地中発進室7の施工に際しては、作業用のシールドトンネル7aを周囲に拡幅することで施工することにより、地中発進室7を効率的に施工できるばかりでなく、作業用のシールドトンネル7aを掘削するためのシールド機をランプシールドトンネル2や本線シールドトンネル1から発進させることで地中発進室7を施工するがために地表部から立坑を設けるような必要もなく、したがって立坑を設けることができない場合にも支障なく本工法を適用可能である。但し、立坑を設けることが可能であり、それが許される場合には、地中発進室7を施工するための立坑を設けることでも良い。
たとえば上記実施形態で説明したトンネル工法は未固結地盤の都市圏における大深度・大断面の道路トンネルを施工する場合の適用例であるが、分岐合流部を有する様々な規模、用途、形態のトンネルを施工する場合全般に広く適用できるものであるし、施工対象のトンネルにおける分岐合流部の規模や形態に応じて、また周辺環境等の諸条件を考慮して様々な設計的変更が可能である。
すなわち、ルーフシールドトンネル6の本数やそれによるシールドルーフ先受工3全体の規模や形態は、施工するべき分岐合流部の形態に対応させて所望の先受効果を確保できる範囲で適宜変更して良いし、シールドルーフ先受工3に一体に形成する凍結ゾーン8や妻部凍結ゾーン10の範囲、本設覆工壁4の形態やその施工方法、その他の各工程の細部についても、本発明の要旨を逸脱しない範囲で最適設計すれば良く、必要に応じて適宜の補助工法を採用しても勿論良い。
この場合、地中空洞の空洞形成部の施工予定位置の外側の所望位置に適宜形態の地中発進室7を設け、そこからルーフシールド機5を順次発進させて上記実施形態と同様の複数のルーフシールドトンネル6を所定間隔で配列することによって、地中空洞の空洞形成部の施工予定位置を取り囲む形態でシールドルーフ先受工3を構築すれば良い。勿論、その場合におけるシールドルーフ先受工3は、その内部に設ける地中空洞の規模や形態、地山状況、その他の状況に応じて最適に設計すれば良いことは言うまでもない。
2 ランプシールドトンネル
3 シールドルーフ先受工
4 本設覆工壁
5 ルーフシールド機
6 ルーフシールドトンネル
7 地中発進室
7a 作業用のシールドトンネル
8 凍結ゾーン(改良ゾーン)
9a 放射凍結管
9b 埋込凍結管
9c 妻部凍結管
10 妻部凍結ゾーン(改良ゾーン)
20 鉄筋
21 補剛材
22 型枠
23 覆工体
30 鋼製セグメント
35 ルーフシールド
36 掘削機
40 妻壁
41 シールドトンネル
Claims (4)
- 地中を掘削して地中空洞を施工するに際して、地中空洞の掘削予定位置の外側に、予め複数のルーフシールドトンネルを所定間隔で配列した状態で施工することにより、それらルーフシールドトンネルによって掘削予定位置を取り囲むシールドルーフ先受工を構築するためのシールドルーフ工法であって、
地中空洞の掘削予定位置の周囲の地中に地中発進室を施工するための作業用のシールドトンネルを施工して、該作業用のシールドトンネルの周囲を地盤改良したうえで該作業用のシールドトンネルを周囲に拡幅することにより前記地中発進室を施工し、
該地中発進室から施工予定地の周囲に向けてルーフシールド機を順次発進させて前記シールドルーフ先受工を構築することを特徴とするシールドルーフ工法。 - シールド工法により施工する複数のシールドトンネルどうしの分岐合流部を施工するに際して、施工するべき分岐合流部の外側に、その延長方向に沿う複数のルーフシールドトンネルを分岐合流部の輪郭に沿って所定間隔で配列した状態で施工することにより、それらルーフシールドトンネルによって分岐合流部の施工予定位置を取り囲むシールドルーフ先受工を構築するためのシールドルーフ工法であって、
分岐合流部の掘削予定位置の一端側の地中に、掘削予定位置よりも上方および下方に位置しかつそれぞれが分岐合流部の横断方向に沿って略水平に延在する地中発進室を施工するための作業用のシールドトンネルを施工して、該作業用のシールドトンネルの周囲を地盤改良したうえで該作業用のシールドトンネルを周囲に拡幅することにより前記地中発進室を施工し、
それら地中発進室から施工予定地の周囲に向けてそれぞれルーフシールド機を順次発進させて前記シールドルーフ先受工を構築することを特徴とするシールドルーフ工法。 - 請求項2記載のシールドルーフ工法であって、
地中発進室から分岐合流部の端部に設ける妻壁の施工予定位置に向けてルーフシールド機を発進させて、地中発進室と妻壁との間に妻壁補強用のシールドトンネルを施工することを特徴とするシールドルーフ工法。 - 請求項1,2または3記載のシールドルーフ工法であって、
前記シールドルーフ先受工を構成しているルーフシールドトンネル間を掘削して隣り合うルーフシールドトンネル間に本設覆工壁を施工するべく、前記ルーフシールドトンネルを鋼製フレームに対して鋼板製のスキンプレートを取り付けた鋼製セグメントを用いて施工し、前記ルーフシールドトンネル間を掘削するに際しては前記鋼製セグメントにおける前記鋼製フレームを残して前記鋼板製のスキンプレートのみを撤去することを特徴とするシールドルーフ工法。
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