JP4954441B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、塗装を省略できる熱可塑性樹脂組成物に関する。
車輌外装部品、例えば、ドアミラー、ピラー、ガーニッシュ、モール、フェンダー、バンパー、フロントグリル、カウル類等においては、高い耐衝撃性と良好な外観を有することから、その材料には、ABS樹脂やASA樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA樹脂)等の熱可塑性樹脂が利用されている。
また、車輌外装部品等の材料として、主鎖に実質的に二重結合を持たないエチレン−α−オレフィンからなるゴム成分に、スチレンおよびアクリロニトリルをグラフト重合したゴム変性熱可塑性樹脂、所謂AES樹脂を利用することもある。このAES樹脂は、共役ジエン系ゴムを用いたABS樹脂に比べ、紫外線、酸素およびオゾンに対する抵抗性が大きく、耐候性に優れるので、車輌外装部品等に適している。
ところで、車輌外装部品では、耐衝撃性、耐候性に優れることだけでなく、高級な製品の意匠性に合わせた高い外観品質が求められ、具体的には、高発色性、特に漆黒の発色性(以下、漆黒の発色性のことを漆黒性という)や高表面平滑性(フィッシュアイ等の凹凸が無きこと)が要求される。
従来、車輌外装部品等では、成形品を塗装して高い外観品質を得ていたが、近年、環境への負荷が大きいこと、工程が煩雑であること、不良率が高いことから、あらかじめ熱可塑性樹脂に着色剤を配合して成形品の塗装を省略することがある。しかしながら、着色剤を配合した場合には、製品の製造または加工時や製品利用の際に表面に傷が付きやすく、製品価値を著しく低下させるので、その利用範囲が限定されていた。そのため、耐傷付き性の改良が望まれていた。
したがって、着色剤を配合した熱可塑性樹脂においては、耐衝撃性、耐候性、漆黒性、表面平滑性、耐傷付き性が、塗装製品並みに優れていることが求められていた。
そこで、着色剤を配合したAES樹脂の耐候性や漆黒性、耐傷付き性を改良する方法として、AESグラフト共重合体に(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を配合する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献8を参照)。
特開昭50−035288号公報 特開昭57−117557号公報 特開昭57−139139号公報 特開昭58−208307号公報 特開昭60−245662号公報 特開昭61−034045号公報 特開昭61−141748号公報 特開平11−001600号公報
しかしながら、特許文献1〜特許文献8で提案されている方法では、耐候性および漆黒性を良好にできるものの、耐衝撃性、表面平滑性、耐傷付き性のいずれか1つ以上の項目が不充分であった。例えば、耐衝撃性を重視すると耐傷付き性が低下し、逆に、耐傷付き性を重視すると耐衝撃性が低下するなど、耐衝撃性と耐傷付き性とのバランスが特に不充分であった。したがって、近年の厳しい要求に応え得るものではなかった。
このように、エチレン−α−オレフィンゴム成分を含むグラフト共重合体と熱可塑性樹脂とを構成成分とするAES樹脂においては、耐衝撃性、耐候性、漆黒性、表面平滑性、耐傷付き性を全て満足させるものが見出されていなかった。そのため、これらを同時に満足するAES樹脂が強く望まれていた。
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、耐衝撃性、耐候性、漆黒性、表面平滑性、耐傷付き性のいずれもが優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、エチレン−α−オレフィン系ゴム状重合体を含むグラフト共重合体とビニル系共重合体とからなる熱可塑性樹脂組成物の成形品の表面平滑性、漆黒性、耐傷付き性と、着色剤との関係について鋭意検討した結果、特定の構成の熱可塑性樹脂組成物に対して特定の有機染料を配合することで、上記課題を全て解決できることを見出し、以下の熱可塑性樹脂組成物を発明した。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)80質量%〜99.9質量%および酸変性低分子量α−オレフィン系重合体20質量%〜0.1質量%からなるオレフィン系ゴム状重合体(G)(合計100質量%)に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物のビニル系単量体単位が乳化グラフト重合したグラフト共重合体(A)10質量部〜60質量部と、
芳香族ビニル化合物単位、シアン化ビニル化合物単位、(メタ)アクリル酸エステル化合物単位からなる群から選ばれた少なくとも一種からなるビニル系共重合体(B)90質量部〜40質量部と、
その他の熱可塑性樹脂(C)0〜50質量部とを含有し、
前記(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計100質量部に対して有機染料(D)が0.1〜5質量部配合された熱可塑性樹脂組成物であって、
オレフィン系ゴム状重合体(G)が、乳化剤および酸変性低分子量α−オレフィン系重合体の存在下で、塊状もしくはペレット形状のエチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)に機械的剪断力を与え、水中に微細に分散安定化させる機械乳化法により製造されたものであり、
有機染料(D)は、アントラキノン系合成染料、ペリノン系合成染料、アゾ系合成染料、メチン系合成染料、キノリン系合成染料、ペリレン系合成染料からなる群から、少なくともアントラキノン系合成染料、メチン系合成染料のいずれかを含むように選ばれた原色合成染料が、黒色になるように二種以上調合されたものであることを特徴とする。
た、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、ビニル系共重合体(B)が、(メタ)アクリル酸エステル化合物単位を40質量%以上含むことが好ましい。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、他の熱可塑性樹脂(C)が、アクリロニトリル−スチレン−N−置換マレイミド三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸−N−置換マレイミド三元共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、
(1)耐衝撃性、耐候性、漆黒性、表面平滑性、耐傷付き性に優れる。
(2)特に表面平滑性と耐傷付き性とのバランスは、従来知られている熱可塑性樹脂組成物では得られない非常に高いレベルであり、各種工業用材料としての利用価値は極めて高い。
よって、その産業上の利用価値は極めて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)と、ビニル系共重合体(B)と、有機染料(D)とを必須成分として含有し、その他の熱可塑性樹脂(C)を任意成分として含有するものである。
<グラフト共重合体(A)>
グラフト共重合体(A)は、オレフィン系ゴム状重合体(G)にビニル系単量体単位が乳化グラフト重合したものである。
[オレフィン系ゴム状重合体(G)]
グラフト共重合体(A)を構成するオレフィン系ゴム状重合体(G)は、エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)80質量%〜99.9質量%および酸変性低分子量α−オレフィン系重合体20質量%〜0.1質量%からなるものである。
ここで、エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)としては、エチレン−プロピレン共重合体(EPR)もしくはエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)であるが、これらのうち、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより優れることから、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(EPDM)が好ましい。エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体の具体例としては、エチレン単位とプロピレン単位と非共役ジエン単位とを含有するものであって、非共役ジエン単位が、例えば、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン等の一種または二種以上のものが挙げられる。これらの中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や成形外観がより優れることから、ジシクロペンタジエン単位および/またはエチリデンノルボルネン単位を非共役ジエン単位とするエチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体が好ましい。
エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)中のエチレン単位とプロピレン単位とのモル比は、5:1〜3:2の範囲であることが好ましい。この範囲であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより優れる。
エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)中の不飽和基の割合は、上述の非共役ジエン単位の種類や比率に依存するが、沃素価に換算して8〜50の範囲であることが好ましい。この範囲にあると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性および耐候性がより優れる。
また、酸変性低分子量α−オレフィン系重合体は、その分子量が2,000〜6,000、酸価が22mgKOH/g〜30mgKOH/gの範囲にあるものが好ましい。この範囲にあると、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形外観(表面光沢、漆黒性)および耐傷付き性がより優れる。
オレフィン系ゴム状重合体(G)中の酸変性低分子量α−オレフィン系重合体の含有量は、オレフィン系ゴム状重合体(G)100質量%中に0.1質量%〜20質量%、好ましくは3質量%〜15質量%である。この範囲にあると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と耐傷付き性とのバランスに優れるが、0.1質量%未満であった場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐傷付き性が低くなり、20質量%を越えると得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と耐傷付き性とがともに低くなる。
オレフィン系ゴム状重合体(G)の製造方法は、特に限定されるものではなく公知の方法を採用できるが、機械乳化法によりラテックスを得る方法が好ましい。ここで、機械乳化法とは、乳化剤およびワックス状重合体の存在下で、別プロセスで製造された塊状もしくはペレット形状の非架橋オレフィン系ゴム状重合体に機械的剪断力を与え、水中に微細に分散安定化させる方法のことである。機械乳化法により得られたラテックス状のオレフィン系ゴム状重合体(G)をそのままグラフト重合に供してもよいが、そのラテックスに重合開始剤および架橋剤を加え、熱処理することもできる。熱処理したオレフィン系ゴム状重合体(G)を用いた場合、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐傷付き性がより優れる。
ここで、機械乳化の際に用いることができるワックス状重合体としては特に限定されないが、中和可能で、カルボン酸またはその無水物基を含む熱可塑性重合体が好ましい。例えば、低分子量α−オレフィン系重合体にエチレン系不飽和カルボン酸またはその無水物をグラフト重合した、上述の低分子量酸変性α−オレフィン系重合体が挙げられる。
機械乳化法によって得られるオレフィン系ゴム状重合体(G)のラテックスの質量平均粒子径は特に制限されないが、漆黒性、光沢、耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得るためには、制御されていることが望ましい。特に、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性の観点から、オレフィン系ゴム状重合体(G)のラテックスの質量平均粒子径の範囲は、好ましくは200nm〜800nm、より好ましくは250nm〜700nm、さらに好ましくは300nm〜600nmである。
オレフィン系ゴム状重合体(G)のラテックスの質量平均粒子径を制御する方法としては特に制限されず、乳化剤の種類や量、ワックス状重合体の種類や量、そして機械乳化の際の剪断力や温度条件を変更することにより粒子径を適宜調整することが可能である。
機械乳化の際に用いることができる乳化剤としては特に制限されないが、例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の公知のものが用いられる。また、その使用量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱着色性や機械乳化の際の粒子径制御性に優れることから、原料に用いられる非架橋オレフィン系ゴム状重合体100質量部に対して1質量部〜8質量部の範囲であることが好ましい。
また、架橋剤としては特に制限されず、例えば、ジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性単量体が挙げられ、これらは単独で又は二種以上を組み合わせて用いられる。これらの中でも、好ましくはジビニルベンゼンであり、その場合の使用量は非架橋オレフィン系ゴム状重合体100質量部に対し通常0.2質量部〜10質量部の範囲である。
架橋オレフィン系ゴム状重合体のゲル含量は特に限定されないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と成形外観(表面光沢、発色性)とがより優れることから、好ましくは30質量%〜90質量%、より好ましくは40質量%〜80質量%である。
[ビニル系単量体]
オレフィン系ゴム状重合体(G)に乳化グラフト重合したビニル系単量体単位は、芳香族ビニル化合物単位、シアン化ビニル化合物単位、(メタ)アクリル酸エステル化合物単位からなる群から選ばれた少なくとも一種である。
ここで、芳香族ビニル系化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレンなどが挙げられ、シアン化ビニル系化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどが例示される。
[グラフト共重合体(A)の製造方法]
グラフト共重合体(A)は乳化グラフト重合により製造される。乳化グラフト重合としては、例えば、機械乳化法で製造されたオレフィン系ゴム状重合体(G)のラテックスに、少なくとも一種のビニル系単量体およびラジカル重合開始剤を添加し、乳化剤の存在下でグラフト重合する方法が挙げられる。
グラフト重合の際に添加するラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、これらに酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられるが、これらの中でもレドックス系開始剤が好ましい。さらに、過酸化物としてクメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物を組み合わせたレドックス系開始剤が好ましく、特にクメンハイドロパーオキサイド−硫酸第一鉄−ピロリン酸ナトリウム−デキストローズ系レドックス開始剤が好ましい。
また、乳化剤は、前述のオレフィン系ゴム状重合体(G)製造の際に用いた乳化剤をそのまま利用してグラフト重合の際に全く添加しなくてもよいし、必要に応じて添加してもよい。グラフト重合の際に添加する乳化剤としては特に制限はなく、前述のものを利用できる。
また、グラフト重合時には、グラフト率およびグラフト成分の分子量を制御するための各種公知の連鎖移動剤を添加することができる。
乳化グラフト重合した後には、グラフト共重合体(A)ラテックスが得られる。グラフト共重合体(A)ラテックスからグラフト共重合体(A)を回収する方法としては、グラフト共重合体(A)ラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入してスラリー状態に凝析することによって回収する方法(湿式法)、グラフト共重合体(A)ラテックスを加熱雰囲気中に噴霧することにより、半直接的にグラフト共重合体(A)を回収する方法(スプレードライ法)が挙げられる。
湿式法で用いられる凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸や、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられる。凝固剤は重合で用いた乳化剤の種類に応じて選定される。例えば、乳化剤として脂肪酸石鹸やロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみが使用されていた場合にはどのような凝固剤を用いても回収可能であるが、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤が含まれている場合には、上記無機酸では不十分であり金属塩を用いる必要がある。
上記湿式法により得たスラリー状のグラフト共重合体(A)から乾燥状態のグラフト共重合体(A)を得る方法としては、まず残存する乳化剤残渣を水中に溶出させ、洗浄した後に、スラリーを遠心もしくはプレス脱水機で脱水し、さらに気流乾燥機等で乾燥する方法、スラリーを圧搾脱水機や押出機等に通して脱水と乾燥とを同時に実施する方法などが挙げられる。このようなプロセスを経た後に、乾燥した粉体または粒子状のグラフト共重合体(A)を得ることができる。なお、スラリーを圧搾脱水機や押出機に通す方法では、圧搾脱水機や押出機から排出されたものを直接、熱可塑性樹脂組成物を製造する押出機や成形機に送って成形品にすることが可能である。
このようにして得られたグラフト共重合体(A)中のオレフィン系ゴム状重合体(G)含有量は特に限定されないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と漆黒性とがより優れることから、通常20質量%〜80質量%(ビニル系単量体単位80質量%〜20質量%)、好ましくは30質量%〜75質量%(ビニル系単量体単位70質量%〜25質量%)、より好ましくは40質量%〜70質量%(ビニル系単量体単位60〜30質量%)である(オレフィン系ゴム状重合体(G)とビニル系単量体単位との合計は100質量%)。
<ビニル系共重合体(B)>
ビニル系共重合体(B)は、ビニル系単量体単位で構成されるものであれば特に制限されないが、機械的特性に優れることから、好ましくは芳香族ビニル化合物単位、シアン化ビニル化合物単位、(メタ)アクリル酸エステル化合物単位からなる群から選ばれた少なくとも1つからなる(共)重合体である。ここで、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル化合物については、グラフト共重合体(A)に用いたものと同様のものを使用できる。
好ましいビニル系共重合体(B)の具体例としては、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(SAN樹脂)、アクリロニトリル−αメチルスチレン共重合体(αSAN樹脂)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA樹脂)、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−スチレン−αメチルスチレン三元共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体等、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル三元共重合体、アクリロニトリル−スチレン−αメチルスチレン−メタクリル酸メチル四元共重合体等が挙げられる。
耐候性と漆黒性とが共に優れる点から、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物単位を40質量%以上含む(共)重合体であり、具体的には、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA樹脂)、メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル三元共重合体等が挙げられる。これらは単独で、または2つ以上を併用することができる。
特に好ましくは(メタ)アクリル酸エステル化合物単位を80質量%以上含む(共)重合体である。
ビニル系共重合体(B)の分子量は特に制限されないが、流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得る目的から、ポリスチレン換算質量平均分子量が、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜300,000、さらに好ましくは20,000〜150,000である。
グラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B)との比率は、グラフト共重合体(A)1質量部〜99質量部、ビニル系共重合体(B)99質量部〜1質量部であり、好ましくは、グラフト共重合体(A)5質量部〜80質量部、ビニル系共重合体(B)95質量部〜20質量部であり、さらに好ましくは、グラフト共重合体(A)10質量部〜60質量部、ビニル系共重合体(B)90質量部〜40質量部である。
このような比率であることで、耐衝撃性、耐候性、漆黒性、表面平滑性のバランスが優れるようになる。
<その他の熱可塑性樹脂(C)>
その他の熱可塑性樹脂(C)としては特に制限はなく、例えば、ポリメタクリル酸メチル、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−N−置換マレイミド三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−N−置換マレイミド三元共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種オレフィン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、PPS樹脂、PES樹脂、PEEK樹脂、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂(ナイロン)等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性などの機能性が高くなることから、アクリロニトリル−スチレン−N−置換マレイミド三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸−N−置換マレイミド三元共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、ポリアミド樹脂(ナイロン)が好ましい。
また、漆黒性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得るという観点からは、メタクリル酸メチル単位を50質量%以上含む共重合体が好ましい。
その他の熱可塑性樹脂(C)の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計100質量部中の0〜80質量部であることが好ましく、0〜50質量部であることがより好ましい。
<有機染料(D)>
有機染料(D)は、原色合成染料が、黒色になるように二種以上調合されたものである。
ここで、原色合成染料とは、アントラキノン系合成染料、ペリノン系合成染料、アゾ系合成染料、メチン系合成染料、キノリン系合成染料、ペリレン系合成染料から選ばれたものである。
原色合成染料の具体例としては、Solvent Blue 35、Solvent Green 3、Solvent Red 111、Solvent Red 168、Solvent Red 207、Disperse Red 22、Solvent Red 52、Disperse Red 60、Disperse Violet 31、Solvent Blue 36、Solvent Blue 83、Solvent Blue 78、Solvent Blue 94、Solvent Blue 63、Solvent Blue 87、Solvent Green 20、Solvent Violet 13、Disperse Violet 28、Solvent Violet 36、Solvent Red 149、Solvent Red 150等のカラーインデックスで市販されているアントラキノン系合成染料、Solvent Orange 60、Solvent Red 135、Solvent Red 179のカラーインデックスで市販されているペリノン系合成染料、Solvent Yellow 14、Solvent Yellow 16、Solvent Red 23、Solvent Red 24、Solvent Red 27のカラーインデックスで市販されているアゾ系合成染料、Solvent Orange 80、Solvent Yellow 93のカラーインデックスで市販されているメチン系合成染料、Solvent Yellow 33、Solvent Yellow 157、Disperse Yellow 54、Disperse Yellow 160のカラーインデックスで市販されているキノリン系合成染料、Solvent Green 5、Solvent Orange 55のカラーインデックスで市販されているペリレン系合成染料等が挙げられる。
このような原色合成染料が、黒色なるように調合された有機染料(D)は、例えば、三菱化学(株)より「ダイヤレジン ブラックB」、オリエント化学工業(株)より「オプラスブラック838」、住化ファインケム(株)「スミプラスト ブラック3BA−2」として市販されている。
有機染料(D)の含有量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の漆黒性が優れることから、(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計100質量部に対して0.001質量部〜10質量部の範囲であり、好ましくは0.1〜5質量部の範囲である。有機染料(D)の含有量が0.001部未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の漆黒性が不足し、10部を超えると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性や耐候性が低下する上に、有機染料(D)が成形品から脱離し易くなる傾向にある。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
熱可塑性樹脂組成物は、公知の混合混練方法で製造される。混合混練方法としては、例えば、粉末、ビーズ、またはペレット状態のグラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B)と有機染料(D)と、必要に応じて、その他の熱可塑性樹脂(C)、その他の染料や顔料、各種安定剤、滑剤、補強剤、充填材、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤、UV吸収剤等の添加剤とを所定量秤量して混合し、得られた混合物を溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練する際には、押出機またはバンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いることができる。
<成形方法>
この熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等の各種成形方法の原料に使用することができる。そして、上記成形方法によって各種成形品を得ることができる。
以上説明した熱可塑性樹脂組成物にあっては、グラフト共重合体(A)とビニル系共重合体(B)とその他の熱可塑性樹脂(C)と有機染料(D)とが特定の含有量で含まれているので、優れた耐衝撃性、耐候性、漆黒性、表面平滑性を有し、しかも耐傷付き性にも優れている。
次に、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。
なお、以下の各例中の「%」および「部」は明記しない限りは質量基準である。
[製造例1] オレフィン系ゴム状重合体(G−1)の製造
EPDMゴム(エチレン含量70%、プロピレン含量27%、ジエン成分として5−エチリデンノルボルネンを3%含有)87部、乳化剤としてオレイン酸カリウム2.6部、低分子量酸変性α−オレフィン系重合体(三井化学(株)製、ハイワックス2203A)13部を、同方向回転噛合型二軸押出機(池貝鉄工製、PCM−30型、L/D=40)に、ホッパーを介して4kg/時間の速度で供給した。それと同時に、同押出機のベント部に設けた供給口より水酸化カリウム20%水溶液を110g/時間で連続的に供給した。そして、加熱温度(シリンダー温度)190℃、スクリュー回転数250rpmで各成分を混合するとともに、同押出機先端に取り付けた冷却用一軸押出機に連続的に供給し、90℃まで冷却し取り出した。取り出した固体を、温めた脱イオン水に連続的に溶解、拡散させて、質量平均粒子径が390nmの非架橋オレフィン系ゴム状重合体ラテックスを得た。
続いて、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機、温度計および攪拌装置を備えたステンレス製オートクレーブ内に、上記非架橋オレフィン系ゴム状重合体ラテックス100部(固形分)、ジビニルベンゼン3部、重合開始剤(日本油脂(株)製、商品名「パーヘキサ3M」)1.5部を仕込み、攪拌下に80℃に昇温し、30分間保持した。その後、さらに120℃に昇温し、攪拌下で2時間反応させて架橋したオレフィン系ゴム状重合体(G−1)ラテックス(ゲル分66%、質量平均粒子径390nm)を得た。
なお、ラテックスの平均粒子径は、マイクロトラック社製UPA150型粒径分布測定装置により求めた。
[製造例2] オレフィン系ゴム状重合体(G−2)の製造
EPDMゴム(製造例1と同じ)100部、オレイン酸4.5部をn−ヘキサン500部に完全に溶解して重合体溶液を調製した。
一方、脱イオン水640部に水酸化カリウム0.8部を溶解した水溶液に、エチレングリコール0.5部を加えて60℃に保ち、これに先に調製した上記重合体溶液を徐々に加えて乳化した後、ホモミキサーで攪拌した。次いで、n−ヘキサン溶剤と水の一部とを水蒸気蒸留にて留去して、粒径420nmの酸変性低分子量α−オレフィン系重合体を含まない非架橋オレフィン系ゴム状重合体ラテックスを得た。このラテックスを製造例1と同様にして架橋反応させて、架橋したオレフィン系ゴム状重合体(G−2)ラテックス(ゲル分75%、質量平均粒子径430nm)を得た。
[製造例3] オレフィン系ゴム状重合体(G−3)の製造
EPDMを75部、低分子量酸変性α−オレフィン系重合体を25部に変更した以外は同様にして実施例2と同様に処理を行い、架橋したオレフィン系ゴム状重合体(G−3)ラテックス(ゲル分65%、質量平均粒子径380nm)を得た。
[製造例4] グラフト共重合体(A−1)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機、温度計および攪拌装置を備えたステンレス製重合槽に、オレフィン系ゴム状重合体(G−1)ラテックス70部(固形分)、脱イオン水170部((G−1)ラテックス中の水を含む)、水酸化ナトリウム0.01部、無水ピロリン酸ナトリウム0.45部、硫酸第一鉄七水塩0.01部、デキストローズ0.57部を仕込み、攪拌下で内温を80℃とした。それから、重合槽内に、アクリロニトリル9部、スチレン21部、クメンヒドロパーオキサイド1.0部からなる混合物を150分間かけて滴下供給しつつ、無水ピロリン酸ナトリウム0.45部、硫酸第一鉄七水塩0.01部、デキストローズ0.56部、オレイン酸ナトリウム1.0部、脱イオン水30部からなる水溶液を別の注入口から180分間で連続的に添加して重合させた。そして、滴下終了後、内温80℃で30分間保持してから冷却してグラフト重合体(A−1)ラテックスを得た。
グラフト共重合体(A−1)ラテックスに酸化防止剤を添加し、硫酸にて凝固処理を行い、さらに洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、乳白色粉末状のグラフト共重合体(A−1)を得た。
[製造例5〜6] グラフト共重合体(A−2),(A−3)の製造
オレフィン系ゴム状重合体(G−1)ラテックスを、オレフィン系ゴム状重合体(G−2)、(G−3)にそれぞれ変更した以外は製造例4と同様にしてグラフト重合と凝固回収を行い、グラフト共重合体(A−2),(A−3)を得た。
[製造例7] ビニル系共重合体(B−1)の製造
アクリロニトリル25部、スチレン25部、メタクリル酸メチル50部からなり、 N,N−ジメチルホルムアミド溶液にして測定した際の25℃での還元粘度が0.59dl/gのアクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル三元共重合体(B−1)を公知の懸濁重合により製造した。
[製造例8] ビニル系共重合体(B−2)の製造
メタクリル酸メチル99部およびアクリル酸メチル1部からなり、 N,N−ジメチルホルムアミド溶液にして測定した際の25℃での還元粘度が0.25dl/gのアクリル樹脂(F−1)を公知の懸濁重合により製造した。
[製造例9] ビニル系共重合体(B−3)の製造
アクリロニトリル29部及びスチレン71部からなり、N,N−ジメチルホルムアミド溶液にして測定した際の25℃での還元粘度が0.60dl/gのアクリロニトリル−スチレン共重合体を公知の懸濁重合により製造した。
有機染料
(D−1); 住化ファインケム(株) スミプラスト ブラック3BA−2
(D−2); オリエント化学工業(株)オプラスブラック838
(D−3); 三菱化学(株)ダイヤレジン ブラックB
(d−4); 三菱化学(株) 三菱カーボン#2600(カーボンブラック)
(実施例1〜8および比較例1〜5)
グラフト共重合体(A−1)〜(A−3)、ビニル系共重合体(B−1)〜(B−3)、有機染料(D−1)〜(D−3),(d−4)を表1に示す割合でそれぞれ混合し、滑剤としてエチレンビスステアリルアミドを0.4部添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて十分混合した。これらをバレル温度260℃に設定した二軸押出機で賦形し、ペレットを作製した。
Figure 0004954441
得られたペレットをシリンダー温度230℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって100mm×100mm×3mmの平板を成形した。この成形板を用いて、耐候性評価を行った。また、別にシャルピー衝撃強度測定用試験片を射出成形法により作製し、これを用いて以下のようにシャルピー衝撃強度の測定を行った。
さらに、以下のようにして漆黒性、表面平滑性、耐傷付き性について評価した。これらの結果を表2に示す。
(i) シャルピー衝撃強度の測定
シリンダー温度250℃に設定された2オンス射出成型機で成形した試片を用い、ISO179に準拠して測定した。
(ii)耐候性
上記平板をサンシャインウエザーメーター(スガ試験機(株)製、ブラックパネル温度63℃、降雨あり)で1,000時間処理し、処理前と処理後の変色の度合い(ΔE)を色差計で測定して評価した。
(iii)漆黒性
上記平板の表面の色相をJIS Z8729に準拠して測定し、L*の値で評価した。
(iv)表面平滑性
上記平板の表面を光学顕微鏡(ニコン(株)製)にて1mmあたりの凹凸状のブツ個数を目視にてカウントした。
(v)耐傷付き性
自動車の前頭部に上記プレートを設置し、ナイロン製ブラシを装備する洗車機にて5分間の洗車を10回繰り返した後、プレートの外観変化を目視にて観察し、次の評価基準で判定した。
傷がわからない;○、僅かに傷が目立つ;△、傷が目立つ;×
Figure 0004954441
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
(1)実施例1〜実施例8の熱可塑性樹脂組成物は、本願請求項1の範囲を満たすものであったので、シャルピー衝撃強度が高く、耐候性と漆黒性、表面平滑性にも優れ、なおかつ高いレベルの耐傷付き性を有していた。この様な熱可塑性樹脂組成物は自動車外装などへの使用に適していて工業的利用価値が高い。
(2)比較例1の熱可塑性樹脂組成物では、オレフィン系ゴム状重合体中に酸変性低分子量α−オレフィン共重合体を含まないグラフト共重合体(A−2)を使用したので、耐傷付き性が低かった。このような熱可塑性樹脂組成物は、例えば自動車外装等の高い耐傷付き性を要求される用途に使用できないため、工業的利用価値が低い。
(3)比較例2の熱可塑性樹脂組成物では、オレフィン系ゴム状重合体中に酸変性低分子量α−オレフィン共重合体を25質量%含むグラフト共重合体(A−3)を使用したので、耐傷付き性は良好であるものの、シャルピー衝撃強度が低かった。このように耐衝撃性に劣る樹脂材料は、例えば自動車外装等の高いレベルの耐衝撃性を必要とする用途に使用できず、工業的利用価値が低い。
(4)比較例3の熱可塑性樹脂組成物では、有機染料(D)の代わりに、顔料(カーボンブラック)を含有したので、漆黒性と表面平滑性が低かった。このような材料は工業的利用価値が低い。
(5)比較例4の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)を含まなかったので、シャルピー衝撃強度が低かった。このような材料は工業的利用価値が低い。
(6)比較例5の熱可塑性樹脂組成物は、ビニル系共重合体(B)を含まなかったので、耐傷付き性が低かった。このような材料は工業的利用価値が低い。
(7)実施例1、実施例3、実施例4の比較により、ビニル系共重合体(B)を構成する(メタ)アクリル酸エステルが多くなると、熱可塑性樹脂組成物の耐候性と漆黒性とが高くなることがわかった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、表面の意匠性が重要であり、製品組立時や製品そのものの耐久性が要求される自動車外装や建材等の用途に適している。特に、車輌外装部品のドアミラー、ピラー、ガーニッシュ、モール、フェンダー、バンパー、フロントグリル、カウル類等に好適である。

Claims (3)

  1. エチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)80質量%〜99.9質量%および酸変性低分子量α−オレフィン系重合体20質量%〜0.1質量%からなるオレフィン系ゴム状重合体(G)(合計100質量%)に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物のビニル系単量体単位が乳化グラフト重合したグラフト共重合体(A)10質量部〜60質量部と、
    芳香族ビニル化合物単位、シアン化ビニル化合物単位、(メタ)アクリル酸エステル化合物単位からなる群から選ばれた少なくとも一種からなるビニル系共重合体(B)90質量部〜40質量部と、
    その他の熱可塑性樹脂(C)0〜50質量部とを含有し、
    前記(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計100質量部に対して有機染料(D)が0.1〜5質量部配合された熱可塑性樹脂組成物であって、
    オレフィン系ゴム状重合体(G)が、乳化剤および酸変性低分子量α−オレフィン系重合体の存在下で、塊状もしくはペレット形状のエチレン−プロピレン系ゴム状重合体(E)に機械的剪断力を与え、水中に微細に分散安定化させる機械乳化法により製造されたものであり、
    有機染料(D)は、アントラキノン系合成染料、ペリノン系合成染料、アゾ系合成染料、メチン系合成染料、キノリン系合成染料、ペリレン系合成染料からなる群から、少なくともアントラキノン系合成染料、メチン系合成染料のいずれかを含むように選ばれた原色合成染料が、黒色になるように二種以上調合されたものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. ビニル系共重合体(B)が、(メタ)アクリル酸エステル化合物単位を40質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 他の熱可塑性樹脂(C)が、アクリロニトリル−スチレン−N−置換マレイミド三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸−N−置換マレイミド三元共重合体、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、ポリアミド樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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