JP4943368B2 - 易割繊性アクリル系複合繊維の製造方法 - Google Patents
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本発明の割繊性アクリル系複合繊維を構成するアクリロニトリル系ポリマーは、アクリロニトリルを50質量%以上含有するポリマーであり、アクリロニトリルのホモポリマーであっても、またコポリマーであってもよい。アクリロニトリルの含有量が50質量%未満の場合は、割繊性アクリル複合繊維がアクリル繊維としての本来の特性を失ったものとなり好ましくない。また、アクリロニトリル系ポリマーがコポリマーである場合は、アクリロニトリルを50質量%以上含有する範囲で、アクリロニトリルと共重合可能な不飽和モノマーとして、次のモノマーがあげられる。
また、本発明におけるアクリロニトリル系ポリマーの分子量は、特に限定されないが、5万〜100万の分子量のポリマーが望ましい。分子量が5万未満では、紡糸性が低下すると同時に繊維の糸質も悪化する傾向にあり、他方、分子量が100万を超えると、紡糸原液の最適粘度を与えるポリマー濃度が低くなり、生産性が低下する傾向がある。
メチルメタクリレート系ポリマーは、アクリロニトリル系ポリマーとアクリロニトリル系ポリマーに非相溶のポリマーの相溶化を進めるポリマーであって、非相溶のポリマー粒子径を最小化することで、紡糸時の凝固浴での糸形成の際にミクロ相分離化を促進して繊維中に筋状相分離構造を形成する。
アクリロニトリル系ポリマーと共存する非相溶ポリマーが30質量%未満では、筋状相分離構造が微小で割繊性が不十分であり、繊維が不均一となるとともに、60質量%を超えると、紡糸時における糸切れが多発し繊維を得ること自体が困難となるだけでなく、アクリル繊維としての繊維物性が著しく損なわれる。またメチルメタクリレート系ポリマーが3質量%未満では、ミクロ相分離化が進まずに十分な極細化を成し得ず、7質量%を超えると、満足な割繊性が得られず、繊維が不均一になるとともに、紡糸時における糸切れが多発する。
紡糸原液の溶剤としては、アクリロニトリル系ポリマーと添加ポリマーとの共通溶剤であればどの様なものでも用いることができる。かかる溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。紡糸原液は、アクリロニトリル系ポリマー33質量%以上と添加ポリマー60〜30質量%と相溶化剤3〜7質量%の合計ポリマー濃度で好ましくは12〜30質量%に調整する。
[参考例]メチルメタクリレート系ポリマーの製造
乳化剤ラムテルE−118Bを24g、ロンガリット7.2g、硫酸第一鉄0.0018gを含む脱イオン水2400gを反応容器に入れ、次いで温度を40℃に保持し十分に窒素置換を行った。これにメタクリル酸メチル(MMA)480g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)120gにシクロヘキサノンパーオキシド9gを溶解した溶液とラテムルE−118Bを含む水溶液600gを別々に90分かけて滴下し、重合を行った。さらに40℃で90分攪拌しながら重合を続行した。次いで第2段目として、得られた乳化液にアクリろニトリル(AN)550g、酢酸ビニル(AV)52gと脱イオン水4200gを加え、温度を70℃に上げて30分かけて滴下し、重合を行った。さらに70℃で180分攪拌しながら重合を続行した。得られた重合液を濾過し、水洗、乾燥することによりメチルメタクリレート系ポリマーを得た。
ホバート型ミキサー中のジメチルアセトアミド800gに、水系懸濁重合法によるアクリロニトリル/酢酸ビニル=91/9(重量比)の組成を有する分子量120000のアクリロニトリル系ポリマー100gと塩化ビニル(信越化学工業(株)製、TK−1000)90gおよび参考例記載のメチルメタクリレート系ポリマー10gを入れ、常温で60分間攪拌した後、液温が80℃になるように温水ジャケットで昇温させて、80℃になってから60分間攪拌した。
次いで得られた紡糸原液を80℃に保ったまま、ギヤポンプを用いてノズル部へ定量供給した。このときノズル直前のドープを採取して、走査型電子顕微鏡で観察したところポリマー粒径の平均値は13ミクロンであった。
得られた繊維を5mm長にカットし、水を加えて繊維濃度1重量%とした後、ディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製、KRK高濃度ディスクリファイナー:ディスククリアランス0.3mm、回転数5000rpm、)で叩解処理した。得られたスラリーを用い目付90g/m2 で一辺が25cmの正方形に抄紙し、130℃のドラム式乾燥機(ハシマ(株)製、HP−124AP)により接触時間3分間乾燥し、シートを形成した。得られたシートを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、割繊された部分の形態はフィブリル状であり、任意に100本選択して測定した繊維径の平均値は0.80ミクロン、繊維径の標準偏差は0.18であった。
ホバート型ミキサー中のジメチルアセトアミド800gに、実施例1で用いたと同じポリマー組成のアクリロニトリル系ポリマー100gとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製、301F)90gと参考例記載のメチルメタクリレート系ポリマー10gを入れた。常温で60分間攪拌した後、液温が80℃になるように温水ジャケットで昇温させて、80℃になってから60分間攪拌した。
次いで得られた紡糸原液を80℃に保ったまま、ギヤポンプを用いてノズル部へ定量供給した。このときノズル直前のドープを採取して、走査型電子顕微鏡で観察したところポリマー粒径の平均値は11ミクロンであった。
得られた繊維を5mm長にカットし、水を加えて繊維濃度1重量%とした後、ディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製、KRK高濃度ディスクリファイナー:ディスククリアランス0.3mm、回転数5000rpm、)で叩解処理した。得られたスラリーを用い目付90g/m2 で一辺が25cmの正方形に抄紙し、130℃のドラム式乾燥機(ハシマ(株)製、HP−124AP)で接触時間3分間乾燥し、シートを形成した。得られたシートを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、割繊された部分の形態はフィブリル状であり、任意に100本選択して測定した繊維径の平均値は0.74ミクロン、繊維径の標準偏差は0.15であった。
ホバート型ミキサー中のジメチルアセトアミド800gに、実施例1で用いたと同じポリマー組成のアクリロニトリル系ポリマー100gとポリ乳酸(三井化学(株)製、H400)90g及びメチルメタクリレート系ポリマー10gを入れた。常温で60分間攪拌した後、液温が80℃になるように温水ジャケットで昇温させて、80℃になってからさらに60分間攪拌した。次いで得られた紡糸原液を80℃に保ったまま、ギヤポンプを用いてノズル部へ定量供給した。このときノズル直前のドープを採取して、走査型電子顕微鏡で観察したところポリマー粒径の平均値は14ミクロンであった。
紡糸原液をノズル口金よりジメチルアセトアミドと水からなる凝固浴に吐出し凝固させる湿式紡糸方法より総延伸倍率が2.0倍になるように紡糸し、単繊維繊度1.7dtex(繊維径14ミクロン)の繊維を得た。
ホバート型ミキサー中のジメチルアセトアミド800gに、実施例1で用いたと同じポリマー組成のアクリロニトリル系ポリマー100gと塩化ビニル100gを入れた。常温で60分間攪拌した後、液温が80℃になるように温水ジャケットで昇温させて、80℃になってから60分間攪拌した。次いで得られた紡糸原液を80℃に保ったまま、ギヤポンプを用いてノズル部へ定量供給した。このときノズル直前のドープを採取して、走査型電子顕微鏡で観察したところポリマー粒径の平均値は25ミクロンであった。
紡糸原液をノズル口金よりジメチルアセトアミドと水からなる凝固浴に吐出し凝固させる湿式紡糸方法より総延伸倍率が2.0倍になるように紡糸し、単繊維繊度1.7dtex(繊維径14ミクロン)の繊維を得た。
ホバート型ミキサー中のジメチルアセトアミド800gに、実施例1で用いたと同じポリマー組成のアクリロニトリル系ポリマー100gと塩化ビニル(信越化学工業(株)製、TK−1000)80gと参考例記載のメチルメタクリレート系ポリマー20gを入れた。常温で60分間攪拌した後、液温が80℃になるように温水ジャケットで昇温させて、80℃になってから30分間攪拌した。次いで得られた紡糸原液を80℃に保ったまま、ギヤポンプを用いてノズル部へ定量供給した。このときノズル直前のドープを採取して、走査型電子顕微鏡で観察したところポリマー粒径の平均値は12ミクロンであった。
得られた繊維を5mm長にカットし、水を加えて繊維濃度1重量%とした後、ディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製、KRK高濃度ディスクリファイナー:ディスククリアランス0.3mm、回転数5000rpm、)で叩解処理した。得られたスラリーを用い目付90g/m2 で一辺が25cmの正方形に抄紙し、130℃のドラム式乾燥機(ハシマ(株)製、HP−124AP)で接触時間3分間乾燥し、シートを形成した。得られたシートを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、割繊された部分の形態はフィブリル状であり、任意に100本選択して測定した繊維径の平均値は1.02ミクロン、繊維径の標準偏差は0.36であった。
ホバート型ミキサー中のジメチルアセトアミド800gに、実施例1で用いたと同じポリマー組成のアクリロニトリル系ポリマー100gとポリフッ化ビニリデン(呉羽化学(株)製、301F)90g及び参考例記載のメチルメタクリレート系ポリマー10gを入れた。常温で60分間攪拌した後、液温が80℃になるように温水ジャケットで昇温させて、80℃になってから60分間攪拌した。次いで得られた紡糸原液を80℃に保ったまま、ギヤポンプを用いてノズル部へ定量供給した。このときノズル直前のドープを採取して、走査型電子顕微鏡で観察したところポリマー粒径の平均値は11ミクロンであった。
得られた繊維を5mm長にカットし、水を加えて繊維濃度1重量%とした後、ディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製、KRK高濃度ディスクリファイナー:ディスククリアランス0.3mm、回転数5000rpm、)で叩解処理した。得られたスラリーを用い目付90g/m2 で一辺が25cmの正方形に抄紙し、130℃のドラム式乾燥機(ハシマ(株)製、HP−124AP)で接触時間3分間乾燥し、シートを形成した。得られたシートを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、割繊された部分の形態はフィブリル状であり、任意に100本選択して測定した繊維径の平均値は0.95ミクロン、繊維径の標準偏差は0.26であった。
紡糸原液をノズル口金よりジメチルアセトアミドと水からなる凝固浴に吐出し凝固させる湿式紡糸方法より総延伸倍率が2.0倍になるように紡糸し、単繊維繊度0.9dtex(繊維径10ミクロン)の繊維を得た。
以上、実施例及び比較例において使用したポリマー、その使用割合、得られた繊維の延伸倍率、および割繊後の繊維径の平均値等について、下記表1に纏めて示す。
Claims (2)
- アクリロニトリル系ポリマー33質量%以上と、アクリロニトリル系ポリマーと非相溶のポリマー60〜30質量%と、メチルメタクリレート系ポリマー3〜7質量%からなる混合物を湿式法によりアクリル系繊維を製造するに際し、紡糸口金から凝固浴へ吐出せしめる湿式紡糸法において全延伸倍率を1.5〜4.0倍とすることを特徴とする易割繊性アクリル系複合繊維の製造方法。
- 上記非相溶のポリマーが、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリ乳酸からなる群から選ばれる1種または2種以上のポリマーである請求項1記載の易割繊性アクリル系複合繊維の製造方法。
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