JP2867043B2 - 炭素繊維系多孔質中空糸膜およびその製法 - Google Patents

炭素繊維系多孔質中空糸膜およびその製法

Info

Publication number
JP2867043B2
JP2867043B2 JP23519989A JP23519989A JP2867043B2 JP 2867043 B2 JP2867043 B2 JP 2867043B2 JP 23519989 A JP23519989 A JP 23519989A JP 23519989 A JP23519989 A JP 23519989A JP 2867043 B2 JP2867043 B2 JP 2867043B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hollow fiber
fiber membrane
acrylonitrile
polymer
porous
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP23519989A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH0398624A (ja
Inventor
弘明 米山
良浩 西原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority to JP23519989A priority Critical patent/JP2867043B2/ja
Publication of JPH0398624A publication Critical patent/JPH0398624A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP2867043B2 publication Critical patent/JP2867043B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、耐熱性に優れた新規な炭素繊維系多孔質中
空糸膜およびその製法に関する。
〔従来の技術〕
吸着分離のための活性炭素繊維は、既に数種のものが
知られている。例えば再生セルロース系繊維、アクリロ
ニトリル系繊維、フエノール系繊維およびピッチ系繊維
を原料とするもの等である。繊維状活性炭は粒状活性炭
に比較して接触面積が著しく大きく、吸着や脱着の速度
が早い等の形態上の利点が多い。さらに中空糸にするこ
とにより、吸着、脱着等の繁雑な工程から解放され、流
体を加圧下で中空糸内部を通過させるだけで、流体から
の分離を可能とし、省エネルギープロセスを可能とす
る。
一方、中空状活性炭素繊維については、特開昭48−87
121号公報に中空率10〜80%で、比表面積400m2/g以上の
炭素材中にボイドを形成した、気体や液体中の微量物質
を吸着する機能を有する、中空繊維が開示されている。
この中空繊維の製法は、フエノールを原料とする繊維の
スキン部分を架橋させ、未架橋のコア部を溶媒で溶出し
て得た中空繊維を炭素化し、さらに水蒸気等の酸化性ガ
スで賦活処理して多孔質化する方法である。そのため細
孔半径も10〜20Åのミクロ孔であり、しかも得られる中
空繊維の中空部は均一性に欠け流体抵抗が大きく、透過
速度も小さいものである。
特開昭58−91826号公報には、ピツチ系中空炭素繊維
が開示されているが、中空内径が10μm以下と小さく、
膜壁への細孔もなく、分離膜を意図したものではない。
また特開昭60−179102号公報および特開昭60−202703
号公報には多層構造の炭素膜が開示されているが、前者
の炭素膜は微多孔質緻密層を少なくとも一層有し、また
少なくとも一層は透過速度を早める為の大きな細孔を有
し、しかも多層構造全体としての配向係数が0.7と小さ
いものである。さらに後者の炭素膜も、分離能を有する
多孔質層と透過速度を早めるための最大孔直径5μm以
上のボイドを有するスポンジ構造の多孔質層とからなる
ものであり、極めて脆弱な膜構造であり実用に耐えない
ものである。
さらに特開昭61−47827号公報には、ポリビニルアル
コール系繊維からの炭素化中空繊維が開示されている
が、脱水剤を表層部のみに浸透させ、乾留工程で不融化
し、脱水剤の浸透しなかつた中心部分を溶融除去して中
空状とするものであり、しかも、水蒸気で賦活処理して
多孔質中空炭素繊維を製造するものである。
また特開昭63−4812号公報には、孔を有する炭素膜の
製法として、予め抽出法で孔を設けて中空糸膜をヒドラ
ジン水溶液で処理してから耐炎化および炭素化すること
が提案されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながらこれらの従来技術即ち酸化性ガスによる
賦活処理からの多孔質中空炭素繊維は、孔の形態はいず
れも10〜50Åのミクロ孔が多くまた実用見地からは強度
等の物性が不足している。
従来技術による活性炭素繊維および多孔質中空炭素繊
維の細孔の平均半径は、何れも10〜50Åと小さいため、
分子量が比較的小さい物質の気相からの吸着や分離には
適するが、本発明が意図する比較的大きい分子量を有す
る物質の気相や液相からの吸着、分離には適さない。ま
た、これら従来技術による繊維はその伸度が低く、しな
やかさに欠けるものがほとんどである。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、中空糸膜の内壁表面から外壁表面に連続的
につながつた細孔を有し、メタノール等温吸着曲線から
求めた細孔半径の極大値が50Åを越え100Å未満に存在
し、全細孔容積が0.1〜1cm3/gで、屈曲時の曲率半径が
10cm以下であり、かつTGAにより測定した中空糸膜の10
重量%分解する温度が少なくとも約300℃である耐熱性
に優れた炭素繊維系多孔質中空糸膜である。なお本発明
の炭素繊維系多孔質中空糸膜はその単繊維の引張伸度が
少なくとも0.8%であることが好ましい。
本発明におけるメタノール等温吸着曲線から求めた細
孔半径の極大値とは、浦野ら(「表面」vol.13,NO.12,P
738)の方法で求められる細孔半径分布曲線の極大値を
示すものである。また全細孔容積は、吸着容積の累積値
を示すものである。
本発明の炭素繊維系多孔質中空糸膜の最も大きな特色
は前記の中空糸膜の内壁表面から外壁表面に連通した細
孔を有し、しかも細孔容積徴分曲線から求めた細孔半径
の極大値が50Åを越え100Å未満であるため、従来の活
性炭素繊維に比較して大きな細孔半径を有するものであ
り、比較的大きい分子量を有する物質を含有する気相や
液相からの該物質の吸着、分離に好適である。しかも特
に屈曲時の曲率半径が10cm以下であるため柔軟性にも優
れたものである。炭素繊維系多孔質中空糸膜が前記の種
々の物性のいずれか一つでも満たされない場合には、本
発明の目的とする多孔質中空糸膜としての効果を発揮し
にくいため好ましくない。
本発明の炭素繊維系多孔質中空糸膜を製造する好まし
い方法としては、例えばアクリロニトリル単位が90〜10
0モル%であるアクリロニトリル系重合体(A)と600℃
以下の温度で熱分解して低分子量化する熱分解性重合体
(B)および溶剤(C)とを混合した後、紡糸し、延伸
して得たアクリロニトリル系中空繊維を耐炎化処理し、
次いで400℃以上の温度で炭素化処理して多孔質化する
方法が挙げられる。
炭素繊維系多孔質中空糸膜を製造するに際しては、ア
クリロニトリル系重合体(A)の溶解パラメーターδは
一般に15.4付近であり、また熱分解性重合体(B)のそ
れは9〜12.2の範囲のものがほとんどであることが多
く、お互いに相溶性に乏しい場合が多いため、アクリロ
ニトリル系重合体(A)と熱分解性重合体(B)との組
み合わせ如何によつては、さらに任意成分として相溶剤
(D)を混合することによつてお互いの相溶性を向上さ
せることができる。
本発明の実施に際して用いるアクリロニトリル系重合
体(A)とは、アクリロニトリル単位が90〜100モル%
と、アクリロニトリルと共重合可能な単量体0〜10モル
%とから構成されるアクリロニトリル単独重合体または
共重合体である。共重合可能な単量体の具体例として
は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれ
らの誘導体、例えばメチルアクリレート、エチルアクリ
レート、ベンジルアクリレート、メチルメタクリレー
ト、エチルメタクリレート等、またアクリルアミド、メ
タクリルアミド等のアミド誘導体、酢酸ビニル、塩化ビ
ニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化単量体、メタクリ
ルスルホン酸ソーダやスチレンスルホン酸ソーダ等のス
ルホン酸誘導体等が挙げられるが、必ずしもこれらに限
定されるものでない。
アクリロニトリル系重合体(A)としてはポリアクリ
ロニトリル、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合
体、アクリロニトリル−メチルアクリレート−イタコン
酸共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート−
メタクリル酸共重合体等が特に好ましい。アクリロニト
リル系重合体(A)の比粘度で示される重合度として
は、比粘度が0.1〜0.4特に0.2〜0.3の範囲のものが好ま
しい。この範囲を外れると、紡糸操作が困難になつた
り、また紡糸して得られる繊維の性能も劣悪なものにな
つたりする傾向があるため好ましくない。
熱分解性重合体(B)とは、600℃以下の温度で熱分
解して低分子量化するものであり、かつアクリロニトリ
ル系重合体(A)の溶剤に溶解し得るものである。この
ような熱分解性重合体の具体例としては、スチレン、α
−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル系
単量体、ビニルクロライド、ビニルアルコール、ビニル
アセテート等の脂肪族ビニル系単量体、メチルメタクリ
レート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレ
ート等のメタクリレート系単量体等の単独重合体もしく
はこれらの単量体単位51モル%以上と、アクリロニトリ
ル以外の他の共重合可能な単量体単位49モル%以下とか
ら構成される共重合体が挙げられる。特にスチレン系重
合体、ビニルクロライド系重合体、またはメチルメタク
リレート系重合体が好ましい。共重合可能な他の単量体
の具体例としてはメチルアクリレート、エチルアクリレ
ート、n−ブチルアクリレート等のアクリレート系単量
体ならびにアクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
熱分解性重合体(B)の比粘度で示される重合度とし
てはアクリロニトリル系重合体(A)と混合分散液とす
るとき粘度の調整を容易にするために上記アクリロニト
リル系重合体(A)の比粘度の測定法と同じ方法で求め
られる比粘度が0.1〜0.4特に0.2〜0.3の範囲のものが好
ましい。
溶剤(C)は、前記アクリロニトリル系重合体(A)
および熱分解性重合体(B)ならびに相溶剤(D)に対
して共通の溶剤となり得るものである。このような溶剤
(C)としてはジメチルアセトアミド、ジメチルホルム
アミドおよびジメチルスルホキシド等が好ましい。
相溶剤(D)は、アクリロニトリル系重合体(A)お
よび熱分解性重合体(B)の両者に対して相溶効果を示
す相溶化剤となり得る重合体である。相溶効果を示すも
のとしてはオリゴマーのような低分子のものから高分子
のものまで種々あるが具体的にはアクリロニトリル系重
合体(A)と相溶性を有するか、あるいは同一の単量体
から構成されるセグメント(a)と、同様に熱分解性重
合体(B)と相溶性を有するか、または同一の単量体か
ら構成されるセグメント(b)とを、同一重合体鎖中に
含む重合体、例えばブロツク共重合体あるいはグラフト
共重合体が好ましく用いられる。このようなブロツク共
重合体或いはグラフト共重合体は公知の方法、例えば特
公昭61−39978号公報に記載のブロツク共重合体或いは
グラフト共重合体の製造例の方法により製造することが
できる。
相溶剤(D)は、アクリロニトリル系重合体(A)と
熱分解性重合体(B)とを溶剤(C)と共に混合する際
にアクリロニトリル系重合体(A)溶液と熱分解性重合
体(B)溶液とを均一な小さな分散粒子とし、得られる
分散溶液を安定な状態にする作用を有するものである。
さらにこの相溶剤(D)は相溶効果を上げるばかりでな
く、島成分となる熱分解性重合体(B)の分散相として
の大きさの制御にも用いられ、このことは最終的に得ら
れる炭素繊維系多孔質中空糸膜の細孔径の基となる熱分
解性重合体(B)のフイブリルの大きさを制御すること
につながる。従つてこの相溶剤(D)の使用量の多少は
最終的に得られる多孔質中空糸膜の細孔半径の大小にも
関係し、その使用量が多くなると細孔の半径を小さく
し、細孔の大きさの分布を小さくし、細孔半径が均一な
分布傾向となる。
相溶剤(D)としてはアクリロニトリル30モル%以
上、熱分解性重合体(B)の構成成分である単量体10モ
ル%以上およびこれらと共重合可能な他の単量体10モル
%以下から構成されるブロツク共重合体やグラフト共重
合体が好ましい。
炭素繊維系多孔質中空糸膜を製造するに際してのアク
リロニトリル径重合体(A)、熱分解性重合体(B)お
よび相溶剤(D)の好ましい混合割合はアクリロニトリ
ル系重合体(A)が10〜90重量%好ましくは20〜80重量
%、熱分解性重合体(B)が10〜90重量%好ましくは20
〜80重量%、相溶剤(D)が0〜10重量%好ましくは5
〜10重量%〔ただし(A)成分、(B)成分および
(D)成分の合計量が100重量%〕である。
熱分解性重合体(B)の混合量が10重量%より少ない
と、最終的に得られる多孔質中空糸膜の内壁表面から外
壁表面に連通する細孔が得られにくいので好ましくな
い。また熱分解性重合体(B)の混合量が多くなるに従
つて連通孔が増加し細孔容積も増加し、その混合量が90
重量%を越えると全細孔容積が大きくなり、その結果最
終的に得られる多孔質中空糸膜の強度が低下するので好
ましくない。
相溶剤(D)はその混合量が増加するに従つて分散粒
子の大きさが小さくなり、この結果、分散溶液の安定性
が増加する。そしてこのことは最終的に得られる多孔質
中空糸膜の細孔の半径を小さくし、細孔の大きさの分布
を小さくするのに寄与するが、その混合量が10重量%を
越えるとその添加効果は飽和するため10重量%までの混
合量で十分である。
混合重合体と溶剤(C)との混合溶液中の重合体濃度
は10〜35重量%、好ましくは15〜30重量%である。混合
は溶解時に同時に行つてもよい。またそれぞれ単独で溶
解し、紡糸直前に公知の駆動部分不要の静的混練素子等
を用いて溶液同志の混合を行つてもよい。この場合相溶
剤(D)は必ずしも必要ではない。混合の効果はエレメ
ントの個数で制御される。即ち、エレメントの数が多く
なると最終的に得られる多孔質中空糸膜の細孔の半径は
小さくなる。
混合溶液中の重合体の濃度が10重量%より少ないと最
終的に得られる多孔質中空糸膜の強度特性が低下するた
め好ましくない。また35重量%を越えると混合溶液の粘
度が高くなり、混合溶液の安定性が欠け、過が困難に
なる等のトラブルの要因となるため好ましくない。
混合分散溶液は、例えば環状スリツト、あるいは鞘芯
型のノズル等を用いて中空状に紡糸する。紡糸方式は湿
式紡糸、乾湿式紡糸、乾式紡糸の何れかで紡糸すること
ができるが、特に乾湿式紡糸が好ましい。
乾湿式紡糸法で紡糸する場合を例にして説明すると、
例えば鞘芯型ノズルから吐出された溶液は、いつたん空
気中を走行した後、凝固浴中に導かれ凝固される。凝固
剤は、比較的凝固力のゆるやかなものが、相分離も穏や
かに進み強靱な膜が得られやすいので好ましい。通常は
溶剤の水溶液が用いられ、溶剤濃度40〜85重量%特に60
〜80重量%、40℃以下特に20℃以下の温度で凝固するこ
とが均質中空繊維を製造する上で好ましい。この範囲を
外れると異方性構造の中空繊維と成りやすい。
一方芯部より吐出する凝固性流体の凝固の強さを調整
することによつてボイド(空孔)を実質的に含まない均
質構造の膜から、ボイドを含む多孔質構造の膜まで自由
に製造出来る。即ち芯部に空気又は窒素等の気体を微圧
で吐出させる場合は中空膜厚さ方向に均質な膜が製造さ
れ易い。芯部に凝固速度の早い水、エチレングリコー
ル、低級アルコール等を用いると、中間内壁はボイドを
含む多孔質構造の膜となり易い。従つて中空繊維内壁と
外壁とを凝固速度の異る凝固剤を用いることにより例え
ば中空内壁はボイドを含む多孔質構造であり外壁はボイ
ドを含まない均質構造の二相からなる非対称構造の中空
繊維膜が製造出来る。尚、ここで述べるボイドとは繊維
中に発生、または存在する大きさ0.5μm以上の空孔を
いう。
このようにして得られた中空繊維は、次いで温水又は
熱水中で洗浄され、延伸される。延伸は二段階以上で施
し、全延伸倍率3倍以上、好ましくは5倍以上に延伸さ
れる。延伸は繊維の構造の破壊が生じない範囲で高いほ
ど好ましいが全延伸倍率の上限は延伸法、延伸媒体によ
り異なるが、延伸破断が生じる延伸倍率の約8割が目安
となる。次いで得られた延伸糸は乾燥されて、主にアク
リロニトリル系重合体(A)と熱分解性重合体(B)と
のアクリロニトリル系ブレンド中空繊維が製造される。
該中空繊維の大きさは、ノズル、溶液吐出量、および
延伸条件等により変更できるが、おおよそ内径20〜1000
μm、膜厚は内径の1/4〜1/10の範囲が製造し易い。次
いで得られた前記重合体のアクリロニトリル系ブレンド
中空繊維は、例えば200〜300℃の温度の酸化性ガス
(O2,O3,S,NO,SO2等を含むガス)雰囲気中、通常は空
気中で処理して耐炎化処理を施す。なお耐炎化処理を施
す際には、中空繊維は長さ方向に収縮が生じないように
制御する。耐炎化工程での過度の収縮は中空繊維の機械
的強度を低下させるので好ましくない。また過度の伸長
は中空繊維の切断の要因になるので好ましくない。従つ
て耐炎化工程での伸張は0〜15%の範囲に制御して耐炎
化処理することが好ましい。
次いで得られた耐炎化処理を施した中空繊維を400〜3
000℃、好ましくは600〜1200℃の温度の不活性ガス
(N2,Ar,He等)雰囲気中でまたは不活性ガスと酸化性ガ
ス(HC1,H2O,CO,O2等)の混合ガス中で、好ましくは不
活性ガス中で、通常は窒素ガス中で張力を制御しつつ炭
素化処理する。この過程で熱分解性重合体(B)の、繊
維軸に配列したフイブリル成分は熱分解、解重合し、単
量体等の低分子に分解し逃散することにより本発明の炭
素繊維系多孔質中空糸膜とすることができる。
本発明の炭素繊維系多孔質中空糸膜の多孔質構造は、
繊維軸に並行な無数の細孔より構成され、しかもこの細
孔が中空糸膜の内壁表面から外壁表面に連続的につなが
つた細孔である。これはX線小角の散乱強度または走査
型電子顕微鏡によつて観測することができる。かかる特
異な多孔質構造は次のような理由により形成されるもの
と考えられる。即ち混合溶液からの紡糸に際して、それ
ぞれの分散粒子は剪断応力や延伸の作用を受けて、繊維
軸に並行に配列し、それぞれの重合体のフイブリルは互
いに相分離し、絡み合い網目構造を形成する。従つて炭
素化での熱分解性重合体(B)の繊維軸に平行に配列し
たフイブリルが熱分解して逃散して無数の細孔が形成さ
れる結果、このような多孔質構造が最終的に得られ多孔
質中空糸膜の強度特性並びに柔軟特性に優れたものとし
ている。アクリロニトリル系重合体(A)のフイブリル
構造よりなる炭素質構造もまた繊維軸に平行に細く連な
つた構造であり、このことが本発明の中空糸膜を強靱な
ものとしている。さらに炭素質であるため耐熱性にも優
れている。
〔実施例〕
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお
以下の記載中「部」は重量部を示す。
1)重合体の比粘度は、重合体0.1gを0.1Nのロダンソー
ダを含むジメチルホルムアミド100mlに溶解し25℃で測
定した。
2)炭素繊維系多孔質中空糸膜の細孔分布構造はメタノ
ール等温吸着曲線を測定し、細孔半径は浦野ら(「表
面」vo1,13,NO.12,P738)の方法で求めた。
3)比表面積はメタノール等温吸着曲線を測定、BETの
式を適用して計算した。
4)単繊維強伸度は、テンシロンUTM−II型(東洋測機
(株)製)を用いて、引張速度100%/分で測定した。
5)屈曲時の曲率半径は、半径Rのシリンダに多孔質中
空糸膜を180°以上巻きつけたとき、折れや切断が生じ
ないとき、その最低の半径を曲率半径とし、柔軟性の目
安とした。
6)耐熱性は、試料を動的熱重量分析(ダイナミツク・
サーモ・グラビメトリツク・アナリシス(TGA))によ
り空気雰囲気中で昇温速度10℃/分で測定したときの、
試料が10重量%分解するときの温度で示した。
7)透水速度は、有効長さ10cm、実効表面積1m2の試作
モジユールの一方から圧力1kg/cm2で中空糸の内壁から
外壁へ通過した水の透過量を測定して求めた。
実施例1 アクリロニトリル(以下ANと略記する)98モル%、メ
タクリル酸(以下MAAと略記する)2モル%から構成さ
れる比粘度0.24のAN/MAA共重合体(A)60部とメチルメ
タクリレート(以下MMAと略記する)99モル%、アクリ
ル酸メチル(以下MAと略記する)1モル%から構成され
る比粘度0.21のMMA/MA共重合体である熱分解性共重合体
(B)40部と、下記の方法にて調製した相溶剤(D1)の
混合量を5〜10部変更して、第1表に示した4種類の混
合溶液を調製した。
なお、溶剤(C)はジメチルホルムアミド(以下DMF
と略記する)を用い、重合体濃度26重量%とし、混合溶
液は温度60℃に保持し脱泡した。
相溶剤(D1)の調製: シクロヘキサノンパーオキシド(パーオキサH、日本
油脂社製)1部を、MMA100部に溶かし、純水800部と乳
化剤としてペレツクスOTP(日本油脂社製)1部を反応
釜に加えて、不活性ガスで十分に置換した後、40℃に保
持し、ロンガリツト0.76部と硫酸水溶液でpH3とした
後、重合を開始した。そのまま撹拌を続け150分で第一
段目の乳化重合を完結させた。次いで第二段目として、
この乳化液にAN72部を加えた後、温度を70℃に昇温し
て、再び150分撹拌を続け、さらに芒硝4部を加え30分
撹拌して重合を完了させた。重合体を取出し、過、水
洗および乾燥して重合率65.7%の比粘度0.19のブロツク
共重合体の相溶剤(D1)を得た。
外形2.0mmφ、内径1.5mmφの鞘部と1.0mmφの心部よ
りなる、鞘芯型ノズルの鞘部より調整した4種類の混合
溶液を1種類毎に、芯部より空気を10mmの水注圧でそれ
ぞれ吐出し、空気中を5cm走行させた後、DMF70重量%水
溶液、2℃の温度の凝固浴に導き紡糸し、凝固させ、次
いで60℃の温水中で洗浄と2.8倍の延伸を施した。次い
で、98℃の熱水中で2倍延伸した。この全延伸倍率5.6
倍の繊維を160℃の熱ロールを通して乾燥して、4種類
の重合体ブレンド系中空繊維を製造した。
これら4種類の中空繊維を、それぞれ長さ50cmのステ
ンレススチール製の枠にセツトして定長で240℃の温
度、空気雰囲気中で3時間処理し耐炎化した。次いで窒
素ガス雰囲気中で常温から600℃まで50分、600℃で20分
炭素化処理して孔化して、本発明の炭素繊維系多孔質中
空糸膜を製造した。
これら4種類の中空糸膜はそれぞれ内径が380±10μ
m、膜厚が50±5μmであつた。
これら中空糸膜の単繊維強伸度、比表面積、細孔半径
極大値、全細孔容積、屈曲時の曲率半径、透水速度およ
び耐熱性を測定した結果を第1表に示した。
第1表より、相溶剤(D1)である(AN/MMA)ブロツク
共重合体の混合量が多くなるに従つて細孔半径極大値が
小さくなることがわかる。
なお、第1図にこれら4種類の中空糸膜(実験No.1〜
4)の細孔容積微分曲線を示す。
実施例2 AN95モル%、MA4モル%、イタコン酸(以下IAと略記
する)1モル%から構成される比粘度0.21のAN/MA/IA共
重合体(A)とMMA87モル%、MA13モル%から構成され
る比粘度0.19のMMA/MA共重合体である熱分解性重合体
(B)および下記の方法で調製したAN30モル%、MMA65
モル%、酢酸ビニル(以下VAcと略記する)5モル%か
ら構成される比粘度0.18のブロツク重合体である相溶剤
(D2)とを、第2表に示した混合比で、溶剤(C)であ
るジメチルアセトアミド(以下DMAcと略記する)に、重
合体濃度24重量%で溶解した。
相溶剤(D2)の調製: シクロヘキサノンパーオキシド(パーオキサH、日本
油脂社製)1部をMMA100部に溶かし、純水800部と乳化
剤としてペレツクスOTP(日本油脂社製)1部を反応釜
に加えて不活性ガスで十分に置換した後、40℃に保持
し、ロンガリツト0.76部と硫酸水溶液でpH3とした後、
重合を開始した。そのまま撹拌を続け120分で第一段目
の乳化重合を完結させた。次いで第二段目としてこの乳
化液にAN60部、VAc10部を加えた後、温度を70℃に昇温
して、再び150分撹拌を続け、さらに芒硝4部を加え30
分撹拌して重合を完了させた。重合体を取出し、過、
水洗および乾燥して重合率65%の比粘度0.18、組成AN30
モル%/MMA65モル%/VAc5モル%のブロツク重合体の相
溶剤(D2)を得た。
実施例1と同様のノズルを用いて実施例1と同様に吐
出し、空気中を5cm走行させた後、DMAc72重量%水溶
液、温度7℃の凝固浴中に導き紡糸し、凝固させた。次
いで60℃の温水中で洗浄し、2倍の延伸を施した。さら
に98℃の熱水中で3.2倍延伸した。一方、比較試料(実
験No.9)として、熱水中で延伸せず、定長で通過させる
以外は全て同じ条件で処理し、それぞれ乾燥させて5種
類の重合体ブレンド系中空糸を製造した。実施例1と同
じ方法により、これら5種類の中空繊維を金枠にセツト
して、240℃の温度の空気雰囲気中で3時間耐炎化処理
した。
次いで窒素雰囲気中900℃の温度で10分間炭素化処理
して、炭素繊維系多孔質中空糸膜を製造した。第2表に
得られた5種類の中空糸膜の各種性能を示す。
第2表より、熱分解性重合体のブレンド量が多くなる
と、全細孔容積が増加することがわかる。比較試料の実
験No.5は閉孔で連通孔のないものであつた。比較試料で
ある実験No.9のものは柔軟性に劣るため使用に耐えない
ものであつた。
なお第2図にこれら5種類の中空糸膜(実験No.5〜
9)の細孔容積累積分布曲線を示す。
実施例3 実施例2の実験No.7で製造されたアクリル系中空糸を
用いて、240/250/260/270℃の4段階の温度分布の空気
雰囲気中を、20m/Hrの速度で耐炎化処理した。次いで第
3表に示した窒素雰囲気の炭素化温度中を20m/Hrの速度
で多孔質化処理して、本発明の多孔質中空糸膜を製造し
た。これらの繊維の各種性能を第3表に示す。
また、第3図にこれら4種類の中空糸膜(実験No.10
〜13)の細孔容積累積分布曲線を示す。
第3表より、炭素化温度が高くなるに従つて、細孔半
径極大値は小さく、全細孔容積も小さくなるが、耐熱性
は高くなることがわかる。
〔発明の効果〕
本発明の炭素繊維系多孔質中空糸膜の特徴は、メタノ
ール等温吸着曲線から求めた細孔半径の孔径分布が非常
にシヤープであるため、高い分離性能を示し、全細孔容
積が大きく単位膜厚当りの孔数が多く透水速度を高いも
のにしている。また本発明の炭素膜は化学的な安定性も
高く、あらゆるpH領域及びほとんどの薬液に対して強い
抵抗力を示す。
本発明の炭素繊維系多孔質中空糸膜は空気中での重量
減少が10%に達する温度は300℃から650℃の範囲でより
高い温度で使用可能なモジユールを提供することが可能
である。このように優れた性質を有するため、種々の用
途例えば薬品工業分野におけるパイロジエン、高分子物
質等の分離および精製、化学工業分野におけるガス分
離、特に有機ガスの分離および有機薬品の精製等、食料
品工業分野における酒類、清涼飲料水、醤油、酢等の清
澄に効果的に用いることができる。さらにはバイオ工業
分野における酵素からの生成物の精製、蛋白質や酵素等
の分類等、メデイカル分野における蛋白質やウイルス、
菌等の分離や高温度での滅菌、殺菌を必要とする分野で
特に有用である。耐熱性を必要とする分野例えば発電所
の復水タービンヒータードレイン用過膜としても使用
できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、実施例1の実験No.1〜4で得られた中空糸膜
の細孔容積微分曲線、第2図は実施例2の実験No.5〜9
で得られた中空糸膜の細孔容積累積積分布曲線、第3図
は実施例3の実験No.10〜13で得られた中空糸膜の細孔
容積累積分布曲線である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) B01D 71/02 D01F 9/22 D01F 6/18 B01D 69/08

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】中空糸膜の内壁表面から外壁表面に連続的
    につながつた細孔を有し、メタノール等温吸着曲線から
    求めた細孔半径の極大値が50Åを越え100Å未満に存在
    し、全細孔容積が0.1〜1cm3/gで、屈曲時の曲率半径が
    10cm以下であり、かつTGAにより測定した中空糸膜の10
    重量%分解する温度が少なくとも約300℃である耐熱性
    に優れた炭素繊維系多孔質中空糸膜。
  2. 【請求項2】引張伸度が少なくとも0.8%である第1項
    記載の中空糸膜。
  3. 【請求項3】アクリロニトリル単位が90〜100モル%で
    あるアクリロニトリル系重合体(A)と600℃以下の温
    度で熱分解して低分子量化する熱分解性重合体(B)お
    よび溶剤(C)とを混合した後、紡糸し、延伸して得た
    アクリロニトリル系中空繊維を耐炎化処理し、次いで40
    0℃以上の温度で炭素化処理して多孔質化することを特
    徴とする第1項記載の中空糸膜の製法。
  4. 【請求項4】アクリロニトリル系重合体(A)、熱分解
    性重合体(B)および溶剤(C)に、さらに相溶剤
    (D)を混合することを特徴とする第3項記載の製法。
  5. 【請求項5】アクリロニトリル系中空繊維が実質的にボ
    イドを含まない均質構造であることを特徴とする第3項
    または第4項記載の中空糸膜の製法。
  6. 【請求項6】アクリロニトリル系中空繊維がボイドを含
    む多孔質構造層と薄い均質構造層とからなる非対称構造
    であることを特徴とする第3項または第4項記載の中空
    糸膜の製法。
JP23519989A 1989-09-11 1989-09-11 炭素繊維系多孔質中空糸膜およびその製法 Expired - Fee Related JP2867043B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23519989A JP2867043B2 (ja) 1989-09-11 1989-09-11 炭素繊維系多孔質中空糸膜およびその製法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP23519989A JP2867043B2 (ja) 1989-09-11 1989-09-11 炭素繊維系多孔質中空糸膜およびその製法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH0398624A JPH0398624A (ja) 1991-04-24
JP2867043B2 true JP2867043B2 (ja) 1999-03-08

Family

ID=16982544

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP23519989A Expired - Fee Related JP2867043B2 (ja) 1989-09-11 1989-09-11 炭素繊維系多孔質中空糸膜およびその製法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2867043B2 (ja)

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1328425C (zh) * 2005-10-14 2007-07-25 东华大学 具有中空形态结构的活性炭纤维和制备方法
EA034212B1 (ru) * 2014-02-26 2020-01-17 Торэй Индастриз, Инк. Пористый углеродистый материал, композитный материал, армированный углеродистым материалом, предшественник пористого углеродистого материала, способ получения предшественника пористого углеродистого материала и способ получения пористого углеродистого материала
CN106470940A (zh) * 2014-06-23 2017-03-01 东丽株式会社 多孔质碳材料
JP6623758B2 (ja) * 2014-08-08 2019-12-25 東レ株式会社 耐溶剤性分離膜
US10399856B2 (en) 2014-09-18 2019-09-03 Toray Industries, Inc. Particulate porous carbon material, particulate carbon material aggregate, and production method for particulate porous carbon material
JP7073748B2 (ja) * 2017-02-08 2022-05-24 東レ株式会社 流体分離用炭素膜の製造方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0274615A (ja) * 1988-03-15 1990-03-14 Mitsubishi Rayon Co Ltd 炭素繊維系多孔質中空糸膜およびその製法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH0398624A (ja) 1991-04-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5089135A (en) Carbon based porous hollow fiber membrane and method for producing same
JP2867043B2 (ja) 炭素繊維系多孔質中空糸膜およびその製法
KR102157184B1 (ko) 아크릴로니트릴계 섬유의 제조방법
JP2003336130A (ja) 炭素繊維、それから得られるカーボンナノファイバー及びその炭素繊維の製造方法並びにその前駆体繊維
JPH0274615A (ja) 炭素繊維系多孔質中空糸膜およびその製法
JPH02160924A (ja) 多孔質炭素繊維及びその製造法
EP0394449A1 (en) Porous hollow carbon fiber film and method of manufacturing the same
JP6145960B2 (ja) アクリロニトリル系重合体溶液の製造方法と炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法
JPS5932562B2 (ja) 中空繊維状膜及びその製造法
JPH04277023A (ja) 耐熱性多孔質中空糸膜の製造方法
US5344711A (en) Acrylic synthetic fiber and process for preparation thereof
JPH0583642B2 (ja)
JPH02221404A (ja) 多孔質中空繊維及びその製法
JPH02160923A (ja) 多孔質炭素繊維及びその製造方法
JPS6320339A (ja) 多孔質膜の製造方法
JPS60181323A (ja) 炭素繊維の製造方法
JP2550543B2 (ja) ポリアクリロニトリル系中空糸膜およびその製造法
JPH0398625A (ja) 炭素繊維系多孔質中空糸膜の製法
JPS6317929B2 (ja)
JPH10130963A (ja) 炭素繊維、炭素繊維用プリカーサーおよびその製造方法
JPH0491230A (ja) プレカーサーの製造方法
JP6232814B2 (ja) アクリル繊維の製造方法
JP2920313B2 (ja) 超極細繊維の製造法
JP2000080521A (ja) 割繊性アクリル繊維及び割繊アクリル繊維並びにシート状物
EP0376625A2 (en) Acrylic synthetic fiber and process for preparation thereof

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees