JP7073748B2 - 流体分離用炭素膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主としてガス分離に使用される流体分離用炭素膜の製造方法に関する。
流体分離用炭素膜は、サブナノメートルサイズの分子篩効果を持つ膜として、主にガス分離用途へ展開が考えられ、実用化に向け様々な研究、開発がなされている。
従来の流体分離用炭素膜、特に中空糸状の流体分離用炭素膜は、種々のガスを分離する膜として応用が考えられているが、耐圧性が低い、脆性が高いことが課題であり、実用化に向けて改善が試みられてきた。
流体分離用炭素膜の製造方法としては、従来、まず中空糸を紡糸して、その後に炭化を行う方法が用いられてきた(例えば、特許文献1)。
特開平3-241005号公報
しかし従来の中空糸状の流体分離用炭素膜の製造方法では、中空部の形状を自由に設計することが難しい、中空糸に張力をかけた際に断面が変形してしまい想定通りの形状とならない、中空部と鞘部との界面が荒れる場合があるなど、耐圧性や脆性が不十分であった。そのため、特に不純物や高圧かつ圧力変動の影響を強く受ける天然ガス精製用途への適用ができなかった。
本発明は、断面形状の設計自由度が高く、耐圧性及び脆性を改善することができる流体分離用炭素膜の製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するための本発明は、中空糸状の流体分離用炭素膜の製造方法であって、後に選択的に消失させることが可能な消失樹脂Aから本質的になる芯部と、炭化処理により炭化する炭化可能樹脂を含む鞘部とからなる芯鞘構造を有する前駆体繊維を紡糸し、その後、炭化処理と同時かまたはその前後に消失樹脂Aを消失させて中空糸状にすることを特徴とする流体分離用炭素膜の製造方法である。
本発明により、断面形状の設計自由度が高く、耐圧性及び脆性が改善された流体分離用炭素膜を提供できる。
実施例1で作製した炭素膜の鞘部に存在する連続多孔構造を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したものである。
<前駆体繊維の製造方法>
本発明の流体分離用炭素膜(以下、単に「炭素膜」ということがある)の製造方法においては、まず、後に選択的に消失させることが可能な消失樹脂Aから本質的になる芯部と、炭化処理により炭化する炭化可能樹脂と後に選択的に消失させることが可能な消失樹脂Bを含む鞘部とからなる芯鞘構造を有する前駆体繊維を紡糸する。なお、本明細書において繊維とは、繊維断面積を円に換算した際の平均直径に対して平均長さが100倍以上である構造体を指すものとする。
炭化可能樹脂とは、焼成により炭化し、炭素材料として残存する樹脂であり、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の双方を用いることができる。熱可塑性樹脂の場合、加熱や高エネルギー線照射などの簡便なプロセスで不融化処理を実施可能な樹脂を選択することが好ましい。熱可塑性樹脂の例としては、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、フェノール樹脂、全芳香族ポリエステルが挙げられる。また、熱硬化性樹脂の場合、不融化処理が不要の場合が多く、こちらも好適な材料として挙げられる。熱硬化性樹脂の例としては、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、リグニン樹脂、ウレタン樹脂などを列挙することができる。これらは単独で用いても、混合された状態で用いても構わないが、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂それぞれのうちで混合することも成形加工の容易さから好ましい態様である。またこれらのうち、炭素膜を成形する容易さ及び経済性の観点から、事前に重合された樹脂であることが好ましく、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、全芳香族ポリエステルを好適な例として挙げることができる。
炭化可能樹脂としては、炭化収率が10%以上の樹脂を用いることが好ましい。10%以上の炭化収率があると、強度や耐圧性などの品質に優れた流体分離用炭素膜が得られる。炭化可能樹脂の炭化収率は高いほど好ましいため、炭化収率が20%以上の樹脂がより好ましく、30%以上の樹脂がさらに好ましい。
消失樹脂とは、後に選択的に消失させることが可能な樹脂である。消失樹脂を消失させる方法は特に限定されるものではなく、薬品を用いて解重合するなどして化学的に除去する方法、消失樹脂を溶解する溶媒を添加して溶解除去する方法、加熱して熱分解によって消失樹脂を低分子量化して除去する方法などが好適に用いられる。これらの手法は単独で、もしくは組み合わせて使用することができ、組み合わせて実施する場合にはそれぞれを同時に実施しても別々に実施しても良い。
化学的に除去する方法としては、酸またはアルカリを用いて加水分解する方法が経済性や取り扱い性の観点から好ましい。酸またはアルカリによる加水分解を受けやすい樹脂としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
樹脂を溶解する溶媒を添加して除去する方法としては、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂に対して、連続して溶媒を供給して消失樹脂を溶解、除去する方法や、バッチ式で混合して消失樹脂を溶解、除去する方法などが好適な例として挙げられる。溶媒を添加して除去する方法に適した消失樹脂の具体的な例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルなどが挙げられる。中でも溶媒への溶解性から非晶性の樹脂であることがより好ましく、その例としてはポリスチレン、メタクリル樹脂、ポリカーボネートが挙げられる。
熱分解によって消失樹脂を低分子量化して除去する方法としては、混合された炭化可能樹脂と消失樹脂をバッチ式で加熱して熱分解する方法や、連続して混合された炭化可能樹脂と消失樹脂を加熱源中へ連続的に供給しつつ加熱して熱分解する方法が挙げられる。熱分解によって低分子量化して除去される消失樹脂の例としては、炭化温度未満の温度で低分子量化する樹脂であれば特に限定されない。具体的には、ポリオレフィン、脂肪族ポリエステル、ポリエーテルなどを例示することができる。中でも炭化工程前に消失樹脂を除去することを選択した場合には、低分子量化して80%以上が重量減少する温度が300℃未満の樹脂を選択することが好ましい。低分子量化して80%以上の重量減少を確認する方法としては、従来公知の方法を選択でき、中でもTG-DTAを用いて空気雰囲気で熱処理を行うことで重量減少を評価することが好ましい。
消失樹脂は、これらのなかでも、後述する炭化処理において炭化可能樹脂を焼成する際に熱分解により消失する樹脂であることが好ましく、さらに、後述する炭化可能樹脂の不融化処理の際に大きな化学変化を起さず、かつ焼成後の炭化収率が10%未満となる熱可塑性樹脂であることが好ましい。このような消失樹脂の具体的な例としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミド、ポリカーボネートなどを列挙することができ、これらは、単独で用いても、混合された状態で用いても構わない。
本発明の製造方法においては、消失樹脂Aから本質的になる芯部と、炭化処理により炭化する炭化可能樹脂と消失樹脂Bを含む鞘部とからなる芯鞘構造を有する前駆体繊維を紡糸する。なお、好ましい態様として後述する鞘部に含まれる消失樹脂に関する記載と区別するため、本明細書においては芯部に含まれる消失樹脂を消失樹脂A、鞘部に好ましく含まれる消失樹脂を消失樹脂Bと記述する。
紡糸方法としては従来公知の方法を適宜選択することができるが、前駆体繊維としての構造を固定化する方法に応じて選択することができる。
気体又は液体を用いた冷却により前駆体繊維としての構造を固定化する場合には溶融紡糸法を選択することが好ましい。溶融紡糸法を選択した場合には、炭化可能樹脂及び消失樹脂に加熱により可塑化する熱可塑性樹脂を選択すると、加熱のみで炭化可能樹脂及び消失樹脂を成形することが可能になるため好ましい。また熱による可塑化を助ける目的で、炭化可能樹脂または消失樹脂の特性を損なわない範囲で、溶媒、可塑剤などの添加剤を少量添加することもできる。これら添加剤の添加量は特に限定されないが、前記した目的を達成する観点から20重量%以下であることが好ましい。
また、気体または液体を用いて相分離により構造を固定化する場合には、溶液紡糸法を選択することが好ましい。溶液紡糸法を選択した場合には、炭化可能樹脂と消失樹脂を、それぞれが独立あるいは双方共に溶解する溶媒にそれぞれの樹脂を溶解、可塑化しておく。このとき、炭化可能樹脂と消失樹脂が共に溶解する溶媒を使用すると、界面での接着性に優れることから、前駆体繊維の芯部と鞘部を形成する界面が剥離せず、品質に優れる炭素膜が得られるため好ましい。
前駆体繊維の芯部は消失樹脂Aから本質的になる。消失樹脂Aから本質的になる、とは、典型的には消失樹脂Aのみからなることが好ましいが、本発明における消失樹脂の機能、すなわち後に除去できるという性質の利用が妨げられない範囲において、消失樹脂A以外の樹脂や添加剤等が含まれていてもよいことを意味する。
芯部の消失樹脂Aの含有率は、80重量%以上であることが好ましい。芯部を形成する消失樹脂Aが80重量%以上であれば、消失した後の中空部を想定した形状のまま保持しやすくなるほか、鞘部との界面を平滑にすることが可能になる。特に界面を平滑に保つことは、力学的な欠陥となる界面曲率が高い部分が形成される確率を大幅に低減できるため好ましい。芯部を構成する消失樹脂Aの割合は、高いほど前記した効果を発現しやすいため好ましく、98重量%以上であることがより好ましい。
前駆体繊維の芯部は、一本でも、複数本形成されていても構わない。芯部が一本形成されている場合には、ガス流路を一点にまとめることが可能であり、モジュール化した際のシールが容易である点で好ましく、また芯部が複数形成されている場合は、分離膜としての耐圧性を高める効果が期待できるため好ましい。芯部の数は、炭素膜の用途に応じて適宜決定することができる。
前駆体繊維の芯部の断面形状は特に限定されず、円形、多葉、S字、十字、井形、多角形、扁平などとすることができる。中でも円形断面は、中空炭素膜として耐圧性を高く保つことが可能であるため好ましい。また多角形断面の場合は、芯部の断面形状を五角形や六角形として、いわゆるハニカム構造のように芯部が近接して複数設けられている形態であると、耐圧性、ガス透過抵抗を低減できる観点から好ましい。
前駆体繊維の平均直径は、小さいほど流体分離用炭素膜とした場合の耐圧性を高めることができ、また柔軟性を付与できるため好ましく、大きいほど流体の透過抵抗を低減し、大量の流体を処理することができるため好ましい。これらの観点から、前駆体繊維の平均直径は、10~10000μmの範囲とすることが好ましく、20~2000μmの範囲とすることがより好ましい。平均直径は、前駆体繊維の断面積を顕微鏡画像等から求め、当該断面が円形であると仮定した場合の当該円の直径を繊維の任意箇所から10箇所以上求めて得られた平均値として算出する。
また前駆体繊維の外形は、特に限定されず、円形、多葉、S字、十字、井形、多角形、扁平などとすることができる。中でも円形断面は、中空炭素膜として耐圧性を高く保つことが可能であるため好ましい。また多角形断面の場合は、円形断面と比較して多数の分離膜を体積効率良く充填することができる観点から好ましい。
また、前駆体繊維の鞘部に、炭化可能樹脂とともに消失樹脂Bを含ませるので、後に消失樹脂Bを除去することにより炭素膜に流体分離用の多孔構造を形成しやすい。炭素膜が多孔構造を有すると、分離流体の透過抵抗を低減することができる。
消失樹脂Bとしては、消失樹脂として前述したものを用いることができ、前駆体繊維の芯部に使われる消失樹脂Aと同じものを用いても、異なるものを用いても良い。芯部と同じ消失樹脂を使用すると、鞘部と芯部の界面平滑性を向上させる効果に加え、芯部と鞘部の密着性が向上し、工程中で芯部と鞘部の剥離を抑制できることから品質が向上する効果があるため好ましい。また、炭素膜の要求特性に応じて消失樹脂に安価なものを任意に採用したい場合等には、消失樹脂Aと別の樹脂を用いることも好ましい。
前駆体繊維の鞘部における炭化可能樹脂の割合は、低いほど中空炭素膜の密度を低減し、流体透過性を向上することができ、また高いほど力学的強度を保ちやすい。これらのバランスを考慮して、前駆体繊維の鞘部における炭化可能樹脂の含有率は20~100重量%であることが好ましく、30~95重量%であることがより好ましく、40~70重量%であることが更に好ましい。また、炭化可能樹脂以外の成分は、全てが消失樹脂Bであることが好ましいが、前述の消失樹脂の機能が妨げられない範囲において、他の樹脂や添加剤等が含まれていてもよい。
ここで前駆体繊維の鞘部を形成する炭化可能樹脂と消失樹脂Bが相溶しない場合は、いわゆる海島状態となるため、炭化可能樹脂を海成分となるように、炭化可能樹脂と消失樹脂Bとを適宜選択した上で、両者の混合割合を調製することが好ましい。一般的に割合の多い成分または粘度の低い成分が海成分を形成しやすい。このことから炭化可能樹脂と消失樹脂Bを同一条件で軟化させた場合に、炭化可能樹脂の粘度が高ければ炭化可能樹脂の比率を消失樹脂Bよりも高めることが好ましい。これらの調製は、前記した海島構造を達成するために選択された炭化可能樹脂と消失樹脂Bとに合せ、適宜決定される。また本発明で言う海島構造とは、いわゆる海成分となる炭化可能樹脂と島成分となる消失樹脂Bとの単純な組み合わせだけでなく、島成分である消失樹脂内に炭化可能樹脂が島成分として入り込む、いわゆるサラミ構造であっても構わない。
更に、消失樹脂Bと炭化可能樹脂とは、特定の条件において相溶状態となる組み合わせであることが好ましい。ここでいう「相溶状態」とは、温度および/または溶媒の条件を適切に選択することにより、光学顕微鏡で消失樹脂Bと炭化可能樹脂との相分離構造が観察されない状態を作り出すことをいう。相溶状態にある消失樹脂Bと炭化可能樹脂とは、スピノーダル分解型相分離を誘起しやすく、後述する消失樹脂Bと炭化可能樹脂の共連続構造を形成させることが容易になる。
消失樹脂Bと炭化可能樹脂は、ポリマー同士のみの混合により相溶させてもよいし、さらに溶媒を加えることにより相溶させてもよい。
複数のポリマーが相溶する系としては、低温では相分離状態にあるが高温では1相となる上限臨界共溶温度(UCST)型の相図を示す系や、逆に、高温では相分離状態にあるが低温では1相となる下限臨界共溶温度(LCST)型の相図を示す系などが挙げられる。また特に親水性ポリマーBとポリマーCの少なくとも一方が溶媒に溶解した系である場合には、非溶媒の浸透によって後述する相分離が誘発されるものも好適な例として挙げられる。
前駆体繊維の鞘部には、炭化可能樹脂と消失樹脂Bとの相分離構造が少なくとも一部に形成されていることが好ましく、特に、共連続相分離構造が少なくとも形成されていることが好ましい。炭化可能樹脂と消失樹脂Bが共連続相分離構造を形成していると、消失樹脂を除去して炭素膜とした場合に鞘部に共連続多孔構造を形成させることができる。
前駆体繊維の鞘部における共連続相分離構造とは、超薄切片を作成し、必要に応じて電子染色を施した後に透過型電子顕微鏡で三次元構造を観察した際、またはX線CT、FIBによるスライスアンドビュー法など、三次元構造を観察した際に、消失樹脂Bと炭化可能樹脂とがそれぞれ連続していることが確認できる構造を指す。この際、観察領域の端部に存在する欠損箇所については、これを含めない。欠損箇所は、観察領域の端部に存在するため、見かけ上粒子等のように観察される場合がある。また三次元構造を観察する際、コンピュータ上で消失樹脂Bまたは炭化可能樹脂のいずれか1種類のポリマーを透過状態として回転、拡大、縮小等して観察すると、連続した状態を観察しやすく、好ましい。
また、炭素膜における共連続多孔構造とは、炭化可能樹脂が炭化して形成された枝部(炭素部)と消失樹脂Bが消失して形成された細孔部(空隙部)とがそれぞれ連続しつつ三次元的に規則的に絡み合った構造であり、具体的には図1に例示される通り、液体窒素中で充分に冷却した試料をピンセット等により割断した断面を走査型電子顕微鏡で表面観察した際に、奥行き方向に枝部と空隙部がそれぞれ連続した構造が観察されることをいう。このような構造を有することで、枝部がそれぞれ互いに構造体を支えあう効果が生じて応力を膜全体に分散させることができるため、圧縮や曲げなどの外力に対して大きな耐性を有し、耐圧性をより向上させることができる。炭素膜の鞘部が共連続多孔構造を有すると、良好な流体の透過性を発揮しつつ、枝部が高度に分岐した構造を持って互いに支えあうことにより同一の空隙率を持つ他の形態よりも力学的強度を高く保つことができる。
前駆体繊維の鞘部の共連続相分離構造の構造周期は0.005μm以上20μm以下であることが好ましい。また炭素膜の鞘部の連続多孔構造の構造周期は、0.002μm以上10μm以下であることが好ましい。ここで、共連続構造または連続多孔構造の構造周期とは、前駆体繊維または炭素膜に対してX線を入射し、散乱強度がピーク値を持つ位置の散乱角度θより、下記の式で算出されるものである。また構造周期が1μmを超え、X線の散乱ピークが観測できない場合には、適宜電子染色等を施した後、X線CT法によって前駆体繊維試料の共連続構造部分または炭素膜試料の連続多孔構造を三次元撮影し、フーリエ変換を行ってスペクトルを得て、同様に構造周期を算出する。つまり本発明でいうスペクトルとは、X線散乱法、またはX線CT法からのフーリエ変換によって得られる1次元の散乱角度と散乱強度の関係を示すデータである。
Figure 0007073748000001
構造周期:L、λ:入射X線の波長
共連続相分離構造または連続多孔構造の構造周期が0.005μm以上であれば、炭化可能樹脂と消失樹脂Bの特性をそれぞれ十分に引き出すことが可能になり、炭化後に得られる構造として多孔質で流体の透過性に優れ、かつ耐圧性に優れた炭素膜が得られるため好ましい。また、相分離部分が20μm以下の構造周期であれば、構造体として欠陥が少なく、力学的に優れた材料とすることが可能になる。共連続相分離構造の構造周期の値は、上記範囲の中で用途に合わせて任意に調整することができる。
構造周期の値は、共連続構造または連続多孔構造が配向している場合には、測定する方向によって変化する場合があるが、いずれかの方向で測定した際に、構造周期が上記範囲に入ることが好ましい。
炭化可能樹脂と消失樹脂Bの共連続相分離構造を形成させる具体的な方法の例としては、炭化可能樹脂と消失樹脂Bとをスピノーダル分解型相分離させる方法が挙げられる。スピノーダル分解型相分離を誘発する方法は特に限定されるものではなく、例えば温度変化によって相分離を誘発する熱誘起相分離法、非溶媒を添加することによって相分離を誘発する非溶媒誘起相分離法、化学反応を用いて相分離を誘発する反応誘起相分離法や、光、圧力、剪断、電場、磁場の変化を利用して相分離を起こす方法等が挙げられる。なかでも熱誘起相分離法、または非溶媒誘起相分離法が、相分離構造やサイズを制御することが比較的容易であるため好ましい。
また、前駆体繊維の鞘部は、前述の相分離構造とともに、消失樹脂Bと炭化可能樹脂とが実質的に相溶状態で固定化された相溶部分を含むことが好ましい。ここで、実質的に相溶状態で固定化されている、とは、消失樹脂Bと炭化可能樹脂が1nm以下の領域で混合され、分散された状態であることをいう。また、1nm以下の領域で混合され、分散された状態とは、適宜電子染色された前駆体繊維を超薄切片法またはFIB法で鞘部の透過型電子顕微鏡観察を行い、明確なコントラストが存在せず、1nmより大きいドメインが観察されない状態を言う。また相溶部分とは、後述の相分離部分の構造周期Lの3倍の長さを一辺とする正方形の領域以上の面積で、上記1nm以下の領域で混合され、分散された状態が存在する部分を意味する。
相溶部分が消失樹脂Bと炭化可能樹脂とを含むことは、相溶部分を表面とした試料を準備し、これにTOF-SIMSを用いてフラグメントを分析することで判断できる。予め単一の消失樹脂B又は炭化可能樹脂からなるフラグメントをそれぞれ分析しておき、相溶部分から得られるフラグメントから消失樹脂Bと炭化可能樹脂のセグメント由来の成分が検出された場合に、相溶部分が消失樹脂Bと炭化可能樹脂を含んでいると判断できる。
異種のポリマーは、通常はポリマーの界面において、単位面積当たりでは弱い相互作用しか示さないが、このように消失樹脂Bと炭化可能樹脂が相溶状態で固定化されていると、両者の界面積が非常に大きくなって全体として高い接着性を発揮し、材料全体の強度およびじん性を高めることが可能となるため、特に種々工程を通過する際の糸切れを防止することが可能になるため収率向上が期待できる。
前駆体繊維の鞘部に相溶部分を効率的に形成するためには、紡糸後に急激な場の変動に供することが好ましい。急激な場の変動に供することで、急速な相分離と固定化を誘発して、ポリマー材料中に高効率に相溶部分を形成させることが可能になる。ここで固定化とは、場の変動により樹脂の流動性を失った状態とすることを指す。具体的には、溶融紡糸法であればガラス転移点温度以下まで前駆体繊維の温度を下げて固定化する、溶液紡糸法であれば非溶媒と接触させて前駆体繊維を構成する樹脂の運動性を低下させることや溶媒を乾燥することで樹脂の運動性を低下させることなどを例示することができる。急速に相分離と固定化された前駆体繊維は、相分離に伴う相分離構造の発達前に樹脂の流動性を失った状態となるため、相溶部分を効率的に形成することが可能になる。
ここで、場の変動とは、相分離を誘発する温度、濃度(非溶媒、溶媒)、光、圧力、剪断、電場、磁場などの変化を指す。これらの変化は単独で行っても複数を組み合わせて行っても良い。場の変動は、例えば溶媒浴により引き起こすことができ、より具体的には高温で吐出された流動化されたポリマーアロイを冷却された溶媒浴に導入することや、逆に低温で吐出された流動化されたポリマーアロイを高温に保たれた溶媒浴に導入することが挙げられる。また溶媒浴以外には、キャスティングドラム、空気、窒素などの気体を吹き付ける方法なども好適に用いられる。
また、急激な場の変動とは、流動化されたポリマーアロイの流動方向に沿って、10cmの範囲である場の値が10%以上変化することを示す。例えば、温度であれば、0cmの位置で100℃であった場の温度が、10cmの位置で90℃以下または110℃以上変動することを言う。また同様に濃度であれば、0cmの位置で溶媒Aが0%、すなわち空気雰囲気であり、10cmで溶媒Aが100%の雰囲気である場合などが該当する。場の値の変化率は、大きいほど実質的に消失樹脂Bと炭化可能樹脂とが相溶した部分を形成させやすくなるため30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更に好ましい。
このようにして得られた前駆体繊維を、炭化処理と同時かまたはその前後に、消失樹脂Aおよび必要に応じ消失樹脂Bを消失させることにより中空糸状にする。消失樹脂を消失させる方法は特に限定されない。具体的には、酸、アルカリ、酵素を用いて消失樹脂を化学的に分解、低分子量化したり、溶媒への溶解性を変化させてから除去する方法や、消失樹脂Aを溶解する溶媒により溶解除去する方法、電子線、ガンマ線、紫外線、赤外線などの放射線や熱を用いて分解除去する方法などが挙げられる。
熱分解によって消失樹脂を除去することができる場合には、炭化処理の前に予め消失樹脂の80重量%以上が分解される温度で熱処理を行うこともできるし、炭化処理もしくは後述の不融化処理と同時に消失樹脂を熱分解、ガス化して消失させることもできる。特に、後者の方法は消失樹脂を除去するための追加工程の導入の必要がないことから、生産性が高くなるため好ましい。
また、鞘部に消失樹脂Bを含む場合は、消失樹脂Aと同時に同じ方法で除去しても良いし、別々の方法で除去してもよいが、消失樹脂Aと同時に同じ方法で除去すると、工程を単純化できるため好ましい。
前駆体繊維は、炭化処理に供される前に不融化処理を行うことが好ましい。不融化処理の方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。具体的な方法としては、酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法、電子線、ガンマ線などの高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法、反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法などが挙げられ、中でも酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法は、プロセスが簡便であり製造コストを低く抑えることが可能である点から好ましい。これらの手法は単独もしくは組み合わせて使用してもよく、それぞれを同時に使用しても別々に使用してもよい。
酸素存在下で加熱することで酸化架橋を起こす方法における加熱温度は、架橋反応を効率よく進める観点から150℃以上が好ましく、炭化可能樹脂の熱分解、燃焼等による重量ロスからの収率悪化を防ぐ観点から、350℃以下が好ましい。
また処理中の酸素濃度については特に限定されないが、18体積%以上の酸素濃度を持つガスを供給することが製造コストを低く抑えることが可能となるため好ましい。ガスの供給方法については特に限定されないが、空気をそのまま加熱装置内に供給する方法や、ボンベ等を用いて純酸素を加熱装置内に供給する方法などが挙げられる。
電子線、ガンマ線などの高エネルギー線を照射して架橋構造を形成する方法としては、市販の電子線発生装置やガンマ線発生装置などを用いて、炭化可能樹脂へ電子線やガンマ線などを照射することで、架橋を誘発する方法が挙げられる。照射による架橋構造の効率的な導入から照射強度の下限は1kGy以上であると好ましく、主鎖の切断による分子量低下から多孔質炭素繊維の強度が低下するのを防止する観点から1,000kGy以下が好ましい。
反応性基を持つ物質を含浸、混合して架橋構造を形成する方法は、反応性基を持つ低分子量化合物を樹脂混合物に含浸して、加熱または高エネルギー線を照射して架橋反応を進める方法、予め反応性基を持つ低分子量化合物を混合しておき、加熱または高エネルギー線を照射して架橋反応を進める方法などが挙げられる。
こうして得られた前駆体繊維を炭化することで、流体分離用炭素膜とすることができる。
前駆体繊維を炭化して炭素膜とするためには、不活性ガス雰囲気で焼成することが好ましい。ここで不活性ガスとは、加熱時に化学的に不活性であるものを言い、具体的な例としては、ヘリウム、ネオン、窒素、アルゴン、クリプトン、キセノンなどである。中でも窒素、アルゴンを用いることが、経済的な観点から好ましい。炭化温度を1,500℃以上とする場合には、窒化物形成を抑制する観点からアルゴンを用いることが好ましい。
不活性ガスの流量は、加熱装置内の酸素濃度を充分に低下させられる量であればよく、加熱装置の大きさ、原料の供給量、加熱温度などによって適宜最適な値を選択することが好ましい。流量の上限についても特に限定されないが、経済性や加熱装置内の温度変化を少なくする観点から、温度分布や加熱装置の設計に合わせて適宜設定することが好ましい。また炭化時に発生するガスを系外へ充分に排出できると、品質に優れた多孔質炭素繊維を得ることができるため、より好ましい。このことから系内の発生ガス濃度が3,000ppm以下となるように不活性ガスの流量を決定することが好ましい。
上述の不活性ガスと併せて活性ガスを少量導入することで多孔質炭素繊維の表面を化学的にエッチングし、多孔質炭素繊維表面の細孔直径を制御することが可能である。活性ガスとしては、酸素、二酸化炭素、水蒸気、空気、燃焼ガスを用いることができる。
焼成時の加熱温度は、炭化可能樹脂が炭化する温度を以上であれば特に限定されないが、300℃以上が好ましく、400℃以上がより好ましい。また、加熱温度の上限は限定されないが、1,500℃以下であれば設備に特殊な加工が必要ないため、経済的な観点から好ましい。
連続的に炭化処理を行う場合の加熱方法については、一定温度に保たれた加熱装置内に、前駆体繊維をローラーやコンベヤ等を用いて連続的に供給しつつ炭素膜として取り出す方法であることが、生産性を高くすることが可能であるため好ましい。
加熱装置内にてバッチ式処理を行う場合の昇温速度や降温速度は限定されず、昇温や降温にかかる時間を短縮することで生産性を高めることができるため、1℃/分以上の速度が好ましい。また昇温速度、降温速度の上限は特に限定されず、クラックなどの欠陥が生じない範囲で適宜設定することができる。また炭化温度の保持時間についても任意に設定することが可能である。
以下に本発明の好ましい実施の例を記載するが、これら記載は何ら本発明を制限するものではない。
評価手法
〔共連続構造〕
前駆体繊維を超薄切片法により電子顕微鏡観察が可能な状態とし、必要に応じて電子染色を施した。得られた観察用試料について、電子線トモグラフィー法により三次元構造を観察した。
〔共連続相分離構造または連続多孔構造の構造周期〕
前駆体繊維または炭素膜を試料プレートに挟み込み、CuKα線光源から得られたX線源から散乱角度10度未満の情報が得られるように、光源、試料及び二次元検出器の位置を調整した。二次元検出器から得られた画像データ(輝度情報)から、ビームストッパーの影響を受けている中心部分を除外して、ビーム中心から動径を設け、角度1°毎に360°の輝度値を合算して散乱強度分布曲線を得た。得られた曲線においてピークを持つ位置の散乱角度θより、共連続相分離構造または連続多孔構造の構造周期を下記の式によって得た。
Figure 0007073748000002
構造周期:L、λ:入射X線の波長
〔相溶部分〕
前駆体繊維を超薄切片として、必要に応じて電子染色を施し、これを透過型電子顕微鏡で観察した。得られた画像から、1nmより大きい消失樹脂Bと炭化可能樹脂との相分離状態が観察されない部分が、一辺が相分離部分の構造周期Lの3倍となる領域以上にわたって観察される部分を、相溶部分と判断した。
またTOF.SIMS 5(ION-TOF社製)を用いて1次イオンとしてBi3 2+を相溶部分に照射し、正負の2次イオンを分析して、あらかじめ分析しておいた消失樹脂B及び炭化可能樹脂の、それぞれに由来する成分が検出されることで、相溶部分であることを確認した。
〔柔軟性〕
得られた炭素膜を直径20mmの金属丸棒に1周回巻き付け、これを別のサンプルでn=10繰り返し測定して、全て破断しなかったものを◎、破断が20%以下であったものを○として評価し、○以上を合格とした。
〔ガス透過速度〕
10本の炭素膜を束ねてステンレス製のケーシング内に収容し、束ねた炭素膜の端をエポキシ樹脂系接着剤でケーシング内面に固定するとともにケーシングの両端を封止して、ガス分離用炭素膜モジュールを作製し、ガス透過速度を測定した。測定ガスは二酸化炭素を用い、ガス分離用炭素膜モジュールは外圧式モジュールとした。測定ガスを外圧式モジュール内に流し、二酸化炭素の単位時間当たりの流量を測定した。流量、膜面積、時間、圧力から計算される膜透過速度が、0.001(nmol・m・s・Pa)以上であるものを○、0.01(nmol・m・s・Pa)以上であるものを◎として、○以上を合格とした。
〔耐圧性〕
上記ガス分離用炭素膜モジュールに外圧式で0.3MPaまでの圧力をかけ、0.1MPaまでリークが発生しないものを○、0.3MPaまでリークが発生しないものを◎として、○以上を合格とした。
[実施例1]
消失樹脂Aとして75gのポリビニルアルコール(PVA)(MW2.5万)と425gのジメチルスルホキシド(DMSO)を混合し、均一かつ透明な溶液Aを調製した。
また消失樹脂Bとして37.5gのポリビニルピロリドン(PVP)(MW4万)、炭化可能樹脂として37.5gのポリアクリロニトリル(PAN)(MW15万)と、溶媒として425gのDMSOとをセパラブルフラスコに投入し、攪拌および還流を行いながら均一かつ透明な溶液Bを調製した。溶液Bにおけるポリアクリロニトリルの濃度、ポリビニルピロリドンの濃度はそれぞれ7.5重量%であった。
得られた溶液Aを芯部、溶液Bを鞘部として、溶液Aと溶液Bの吐出比を1:1として口金から凝固浴へ吐出して導き、その後ロールにて引き取り、バット上に堆積させることで原糸を得た。得られた原糸は半透明であり、相分離を起こしていた。
得られた原糸を適宜水洗して乾燥することで、前駆体繊維を得た。
得られた前駆体繊維は透明であり、柔軟性を保っていた。また、繊維の表面全体に相溶部分が形成されており、その最大厚みは6μmであった。更に三次元構造を観察した結果、鞘部には共連続相分離構造が形成されていた。また、共連続相分離構造の構造周期は0.23μmであった。また相溶部分をTOF-SIMS分析したところ、炭化可能樹脂であるポリアクリロニトリルと、消失樹脂Bであるポリビニルピロリドンのそれぞれに由来する成分が検出された。
得られた前駆体繊維を、250℃に保持した熱風オーブン内で熱処理を行い、不融化処理を実施した。不融化処理を行った前駆体繊維は、茶色に変色した。
その後前駆体繊維を600℃に保持した窒素雰囲気の炭化炉へ投入し、炭化を行った。得られた炭素膜は、平滑な中空部を有し、柔軟であり、また耐圧性とガス透過速度に優れていた。
[実施例2]
消失樹脂Aをポリビニルピロリドン(PVP)(MW4万)へ変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体繊維及び炭素膜を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[実施例3]
消失樹脂Aをポリエチレングリコール(PEG)(MW4万)へ変更した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体繊維及び炭素膜を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[比較例1]
溶液Aを用いず、溶液Bのみを用いて紡糸を行った以外は、実施例1と同様の方法で前駆体繊維及び炭素膜を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[実施例4]
消失樹脂Bを用いず、炭化可能樹脂として75gのポリアクリロニトリル(MW15万)を用いて溶液Bを作製した以外は、実施例1と同様の方法で前駆体繊維及び炭素膜を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[実施例5]
消失樹脂Aをポリビニルピロリドン(MW4万)へ変更した以外は、実施例4と同様の方法で前駆体繊維及び炭素膜を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[実施例6]
消失樹脂Aをポリエチレングリコール(MW4万)へ変更した以外は、実施例4と同様の方法で前駆体繊維及び炭素膜を得た。得られた繊維の物性を表1に示す。
[実施例7]
消失樹脂Aとして75gのポリビニルアルコール(PVA)(MW2.5万)と425gのジメチルスルホキシド(DMSO)を混合し、均一かつ透明な溶液Aを調製した。
また消失樹脂Bとして10.0gのポリビニルアルコール(PVA)(MW4万)、炭化可能樹脂として60.0gのポリアクリロニトリル(PAN)(MW15万)と、溶媒として425gのDMSOとをセパラブルフラスコに投入し、攪拌および還流を行いながら均一かつ透明な溶液Bを調製した。
得られた溶液Aを芯部、溶液Bを鞘部として、溶液Aと溶液Bの吐出比を1:1として口金から凝固浴へ吐出して導き、その後ロールにて引き取り、バット上に堆積させることで原糸を得た。得られた原糸は半透明であり、相分離を起こしていた。
得られた原糸を適宜水洗して乾燥することで、前駆体繊維を得た。
得られた前駆体繊維の表面全体には、相溶部分が形成されておらず、ポリアクリロニトリルが主成分であった。更に三次元構造を観察した結果、鞘部には共連続相分離構造が形成されておらず、海島相分離構造が観察された。
得られた前駆体繊維を、250℃に保持した熱風オーブン内で熱処理を行い、不融化処理を実施した。不融化処理を行った前駆体繊維は、茶色に変色した。
その後前駆体繊維を600℃に保持した窒素雰囲気の炭化炉へ投入し、炭化を行った。得られた炭素膜は、平滑な中空部を有し、柔軟であり、また耐圧性とガス透過速度に優れていた。
各実施例、比較例における前駆体繊維の構成および作製した流体分離用炭素膜評価結果を表1に示す。
Figure 0007073748000003

Claims (10)

  1. 中空糸状の流体分離用炭素膜の製造方法であって、後に選択的に消失させることが可能な消失樹脂Aから本質的になる芯部と、炭化処理により炭化する炭化可能樹脂と後に選択的に消失させることが可能な消失樹脂Bを含む鞘部とからなる芯鞘構造を有する前駆体繊維を紡糸し、その後、炭化処理と同時かまたはその前後に前記消失樹脂Aおよび前記消失樹脂Bを消失させて中空糸状にすることを特徴とする流体分離用炭素膜の製造方法。
  2. 前記前駆体繊維として、鞘部に炭化可能樹脂と消失樹脂Bとの相分離構造を少なくとも一部に有する前駆体繊維を作製し、前記消失樹脂Bを消失させることで鞘部に多孔構造を形成する、請求項に記載の流体分離用炭素膜の製造方法。
  3. 前記相分離構造が共連続相分離構造であり、前記消失樹脂Bを消失させることで鞘部に共連続多孔構造を形成する、請求項に記載の流体分離用炭素膜の製造方法。
  4. X線散乱法またはX線CT法により測定される前記前駆体繊維の前記共連続相分離構造の構造周期が0.005μm以上20μm以下である、請求項に記載の流体分離用炭素膜の製造方法。
  5. 前記炭化可能樹脂と前記消失樹脂Bとして、特定の条件において相溶状態となる組み合わせの樹脂を用いる、請求項またはに記載の流体分離用炭素膜の製造方法。
  6. 前記共連続多孔構造を、前記炭化可能樹脂と前記消失樹脂Bとのスピノーダル分解型相分離により形成する、請求項のいずれかに記載の流体分離用炭素膜の製造方法。
  7. 前記前駆体繊維の鞘部が前記消失樹脂Bと前記炭化可能樹脂との相溶部分を含む、請求項のいずれかに記載の流体分離用炭素膜の製造方法。
  8. 前記消失樹脂Aまたは前記消失樹脂Bとして熱分解によって除去できる樹脂を用い、前駆体繊維の炭化処理と同時に前記消失樹脂Aまたは前記消失樹脂Bを消失させる、請求項1~のいずれかに記載の流体分離用炭素膜の製造方法。
  9. 前記炭化可能樹脂が、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリルおよび全芳香族ポリエステルからなる群より選択される樹脂である、請求項1~のいずれかに記載の流体分離用炭素膜の製造方法。
  10. 前記消失樹脂Aおよび前記消失樹脂Bが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール、ポリビニルピロリドン、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリアミドおよびポリカーボネートからなる群より選択される樹脂である、請求項1~のいずれかに記載の流体分離用炭素膜の製造方法。
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