JP3897430B2 - アクリル系バインダー繊維 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙、不織布に好適に用いることのできるアクリル系バインダー繊維に関する。更に詳しくは、単独あるいは他の素材と混合して、抄紙等により紙、不織布に加工するとき、優れたシート強力を発現することを可能にしたアクリル系バインダー繊維に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、汎用紙の分野では天然パルプをバインダー繊維として使用することが一般的であり、合成繊維からなるバインダー繊維は一部特殊な用途に使用される程度であった。
【0003】
ところが最近、用途の多様化により、高機能、高性能の紙が要求されるようになり、合成繊維の短繊維を抄紙素材として利用するケースが増加してきた。
【0004】
抄紙は湿潤条件で行われるため、バインダー繊維には湿潤下でのシート強力(以下、湿紙強力という。)を向上させることが求められる。湿紙強力は、主に繊維の交絡によるものであるから、繊維の形状としては枝状分岐のある構造、即ち一般的にパルプ形状やフィブリル形状と呼ばれる形態が必要と考えられている。例えば特開平9−242000号公報には、カナディアン・スタンダード・フリーネスが200mlより小さい、アクリル繊維からなるフィブリル化繊維が開示されている。そこに記載された繊維は湿紙強力の向上には有効であるが、最終製品の強力、即ち乾紙強力の点で満足いくものとはいえないものであった。
【0005】
また、特開昭54−93105号公報には、アクリロニトリルにエチレン系モノマーを共重合し、加水分解して紡糸することで、容易にフィブリル化し、かつ、熱接着性能を持つ繊維が得られることが開示されている。しかしながら、この方法で得られる繊維は、使用量によっては熱収縮が大きくなるという不具合が生じるものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはこれらの状況に鑑み、鋭意研究を続けた結果、紙や不織布に特殊な構成からなるアクリル繊維をバインダー繊維として使用したとき、十分な乾紙強力を発現し、実用上十分な紙、不織布を与えるアクリル系バインダー繊維を発明するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明の要旨は、アクリロニトリル単位を50〜100重量%含有するアクリロニトリル系ポリマーA、酸価が30〜250mgKOH/gのアクリル樹脂系ポリマーB、及び酸価が30mgKOH/g未満、ガラス転移温度Tgが30〜100℃のアクリル樹脂系ポリマーCとからなり、W、W及びWが下記式(1)及び(2)を満足するアクリル系バインダー繊維にある。
【0008】
A/WB =50/50〜90/10 (1)
C/(WA+WB)=25/100〜55/100 (2)
ただし、WA、WB及びWCは、それぞれアクリロニトリル系ポリマーA、アクリル樹脂系ポリマーB、及びアクリル樹脂系ポリマーCの重量を示す。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のアクリル系バインダー繊維を主に構成するアクリロニトリル系ポリマーAとしては、アクリロニトリル単位を50〜100重量%含有するアクリロニトリル系ポリマーである。アクリロニトリル単位の含有量が50重量%未満の場合は、バインダー繊維が本来のアクリル繊維としての特性を失い、本発明の目的には不適合となり、好ましくない。
【0010】
本発明に用いるアクリロニトリル系ポリマーAは、アクリロニトリル単位を50〜100重量%含有するアクリロニトリル単独重合体又は他のモノマーとの共重合体である。
アクリロニトリルと共重合するモノマーは、通常のアクリル繊維を構成する不飽和モノマーであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなどに代表されるアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルなどに代表されるメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。さらに、染色性改良などの目的で、p−スルホフェニルメタリルエーテル、メタリルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及びこれらのアルカリ金属塩などを共重合しても良い。
【0011】
本発明において、アクリロニトリル系ポリマーAの分子量は特に限定しないが、分子量5万〜100万が望ましい。分子量5万未満では紡糸性が低下すると同時に繊維の糸質も悪化する傾向にある。反対に、分子量100万を越えると紡糸原液の最適粘度を与えるポリマー濃度が低くなり、生産性が低下する傾向にある。
【0012】
本発明者らは、上記問題点を解決する策を鋭意検討する過程でアクリロニトリル系ポリマーAに添加する添加剤ポリマーとして以下の1〜4の性質を具備することが肝要であると考えるに至った。即ち、
【0013】
1.良好な紡糸性を保持し、かつ繊維の毛羽立ちを抑制するには、少なくとも繊維に賦形するまで、紡糸原液が安定に存在することが必要である。非相溶性の度合いが大きい場合、繊維が不均質となるとともに、紡糸時における糸切れの原因となる。
2.添加剤が水に溶解すると紡糸凝固槽での脱落が起こり、また繊維及び最終製品の品質にも悪影響を与えるため、添加剤ポリマーは水に難溶性であることが望ましい。
【0014】
3.紡糸工程の凝固浴で糸状が形成される際にミクロ相分離が生じ、繊維中に筋状構造が形成された場合、後の割繊処理により超極細繊維が得られる。
4.アクリロニトリル系ポリマーAと添加剤ポリマーとの混和性及び粘弾性の差は、添加剤ポリマーの各工程での脱落及び製品からの脱落にも関係し、重要である。
【0015】
本発明者らは、上記条件に照らし合わせて添加剤ポリマーを探索した結果、酸価が30〜250mgKOH/gのアクリル樹脂系ポリマーBが上記1〜4の条件に適合し、且つ、乾紙強力の向上に極めて有効であることを見出した。
【0016】
酸価が30〜250mgKOH/gのアクリル樹脂系ポリマーBの添加による乾紙強力の向上、熱接着性の向上は、添加剤ポリマーの酸性基に由来する親水性向上によるものと考えられる。即ち、湿潤状態で膨潤し、繊維間の接着性が向上するとともに、乾燥時に固化し、接着効果を発現するものと推定される。
【0017】
本発明において、アクリル樹脂系ポリマーとは、各種のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを主体として単独重合又は共重合して得られるポリマーのことである。
【0018】
本発明のアクリル系バインダー繊維は、アクリロニトリル系ポリマーAと酸価が30〜250mgKOH/gのアクリル樹脂系ポリマーBとが下記式(1)を満足するように構成されていることが必要である。上述の規定によるWA/WBが90/10を越える場合には十分な接着力が得られず乾紙強力が不足する傾向となり、又50/50未満の場合には紡糸工程で繊維の融着が起こるなど、工程通過性が低下する傾向となる。
A/WB =50/50〜90/10 (1)
【0019】
アクリル樹脂系ポリマーBの酸価は、アクリル系バインダー繊維の熱接着性や繊維の工程通過性を決定する上で重要な要素である。即ち、酸価が30mgKOH/g未満の場合は、十分な熱接着性が得られにくく、乾紙強力が十分でなくなり易い。逆に250mgKOH/gを越える場合は、紡糸の際、凝固が緩慢となるため、紡糸工程の凝固浴及び延伸工程での糸切れが顕著となり好ましくない。
【0020】
本発明に用いるアクリル樹脂系ポリマーBは、カルボン酸、またはスルホン酸等の酸性基を有する共重合体であり、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の一塩基、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸等の二塩基酸、及びこれらの部分エステル等が共重合されているものであり、これらが2種以上共重合されていてもよい。これらのモノマーを少なくとも5重量%共重合することで容易に酸価を30〜250mgKOH/gにできる。本発明に用いるアクリル樹脂系ポリマーBは、酸価が上記範囲にあればよく、上記のモノマーの他に、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等のモノマーが共重合されていてもよい。また、ポリマーの水溶性を抑制する等の別の目的で、更にスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、メタクリル酸ベンジルなどの芳香族ビニル化合物を共重合しても良い。
【0021】
本発明に用いるアクリル樹脂系ポリマーBの分子量は特に限定されないが、分子量1万〜100万が望ましい。分子量1万未満では、工程での脱落が問題になることがあり、逆に反対に分子量が100万を越える場合、十分な熱接着性が得られにくい。
【0022】
本発明に用いるアクリル樹脂系ポリマーBには、場合によって低分子量化合物を添加しても良い。更に場合によっては、無機物、金属などの微粒子を添加しても良い。
【0023】
なお、本発明において、酸価とは、1gの試料をエタノール/エーテル混合溶媒に溶解し、0.5Nの水酸化カリウムで滴定した際、中和に要した水酸化カリウムをmg数で表したものである。
【0024】
本発明のアクリル系バインダー繊維の単繊維繊度は特に限定されず、用途に応じて決めることができるが、割繊処理して使用する場合は0.5デニール以上とするのが効率的である。割繊処理せずに使用する場合には、1デニール以下とする方がシート状物の平滑性が優れる。
【0025】
次に本発明の第二の要旨について説明する。
本発明では、アクリロニトリル系ポリマーA、アクリル樹脂系ポリマーBに加え、酸価が30mgKOH/g未満で、且つガラス転移温度Tgが30〜100℃のアクリル樹脂系ポリマーCを特定量含有することにより、繊維内部に更に明確な筋状相分離構造を形成し、パルプと同等の叩解処理により割繊、極細化することが可能となる。そのため抄紙した際、さらに湿紙強度が向上するとともに、表面が平滑で肌理の細かいシート状物とを得ることができる。
【0026】
即ち、アクリロニトリル単位を50〜100重量%含有するアクリロニトリル系ポリマーA、酸価が30〜250mgKOH/gのアクリル樹脂系ポリマーB、及び酸価が30mgKOH/g未満で、且つガラス転移温度Tgが30〜100℃のアクリル樹脂系ポリマーCとからなり、WA、WB及びWCが下式(1)、(2)を満足する、アクリル系バインダー繊維である。
【0027】
A/WB =50/50〜90/10 (1)
C/(WA+WB)=25/100〜55/100 (2)
ただし、WA、WB及びWCは、それぞれアクリロニトリル系ポリマーA、アクリル樹脂系ポリマーB、及びアクリル樹脂系ポリマーCの重量を示す。
【0028】
本発明において、アクリロニトリル系ポリマーA、アクリル樹脂系ポリマーB及びその混合比WA/WB は上述の発明と共通である。
【0029】
本発明では、アクリル繊維内部に更に明確な筋状相分離構造を形成し、容易にフィブリル化して、湿紙強力の向上を可能とするため、添加するアクリル樹脂系ポリマーCとして、酸価が30mgKOH/g未満であり、且つガラス転移温度Tgが30〜100℃であるアクリル樹脂系ポリマーCを用いる。ガラス転移温度Tgが30℃未満の場合、凝固浴での糸切れ、紡糸機ロールへの付着、紡糸性の低下が起こり易い。ガラス転移温度Tgが100℃を越える場合、延伸が困難となり、工程通過性が低下するとともに製品の品質も低下する。
【0030】
ガラス転移温度Tgが30〜100℃のアクリル樹脂系ポリマーCは式(2)を満足するように添加することが必要である。WC/(WA+WB)が25/100未満では、アクリル繊維内部に十分な筋状相分離構造を形成することができなくなり、逆にWC/(WA+WB)が55/100を越えると乾紙強力が低下する傾向となり好ましくない。
【0031】
本発明において、ガラス転移温度Tgが30〜100℃のアクリル樹脂系ポリマーCを添加した紡糸原液が、少なくとも紡糸するまでの間、安定に存在することが望ましい。急激に相分離を起こし、目視レベルで判別できる液滴に成長する場合には、紡糸工程での糸切れ、繊維の毛羽立ち、繊維品質の不均一化などの不具合が発生する傾向が認められる。
【0032】
また、ガラス転移温度Tgが30〜100℃のアクリル樹脂系ポリマーCは、水に難溶性であることが望ましい。水への溶解性があると、紡糸凝固槽への脱落が生じると同時に繊維の毛羽立ち、糸切れにもつながり、工程通過性が低下する傾向にある。
【0033】
本発明においても、アクリル樹脂系ポリマーとは、各種のアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを主体とした単独重合体又は共重合体である。
アクリル樹脂系ポリマーCは、ガラス転移点Tgが30〜100℃であればよくその重合組成は特に限定しないが、共重合するモノマーとしては、例えば、、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル等が挙げられる。
【0034】
本発明に用いる、アクリル樹脂系ポリマーCの分子量は特に限定されないが、分子量1万〜100万が望ましい。分子量1万未満では、工程での脱落が問題になることがあり、逆に分子量が100万を越える場合、十分な熱接着性が得られない。
【0035】
本発明に用いるアクリル樹脂系ポリマーCには、低分子量化合物や無機物、金属などの微粒子を添加しても良い。
【0036】
本発明のアクリル系バインダー繊維の単繊維繊度は特に限定されず、用途に応じて決めることができるが、割繊処理して使用する場合は0.5デニール以上とするのが効率的である。割繊処理せずに使用する場合には、1デニール以下とする方がシート状物の平滑性が優れる。
【0037】
以下に、本発明のアクリル繊維を製造する方法について説明する。
本発明に用いる紡糸原液の溶剤としては、アクリロニトリル系ポリマーAとアクリル樹脂系ポリマーB、Cの共通溶剤であればどのようなものでも用いることができる。このような溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0038】
本発明のアクリロニトリル系ポリマーAとアクリル樹脂系ポリマーB、Cからなる紡糸原液を調製する方法については特に限定されないが、例えば溶剤に各ポリマーを投入しスラリーを調製した後に溶解する方法、各ポリマーを別個に溶解した原液をバッチ混合する方法、各ポリマーを別個に溶解した原液をスタティックミキサーなどを用いインライン混合する方法などが挙げられる。
【0039】
調製した紡糸原液は湿式法、乾湿式法、乾式法により紡糸されアクリル繊維に賦型される。中でも紡糸口金より紡糸原液を凝固浴に吐出し凝固糸とする湿式紡糸法が好ましく用いられる。紡糸口金の孔形状は特に限定されず、丸型、楕円型、扁平型、十字形、Y字型等が使用可能である。凝固浴としては、一般に紡糸原液溶剤と水から成る混合液を用いる。凝固糸は引き続き、洗浄、延伸を施すが、必要であれば、乾燥、熱処理などの工程を経てバインダー繊維となる。
【0040】
バインダー繊維は、通常1〜25mm長程度にカットされる。場合によっては、その後機械的叩解処理を受け、フィブリル化される場合もある。例えば、各種ミキサー、ウォータージェット、ディスクリファイナーなどを用いることができる。
【0041】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例及び比較例中、部は重量部を示す。
(実施例1)
アクリロニトリル系ポリマーAとして、アクリロニトリル/酢酸ビニル=92/8(重量%)の組成を有する分子量9万のアクリロニトリル系ポリマー50部、アクリル樹脂系ポリマーBとしてメタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸=35/30/35(重量%)の組成を有する分子量5万、酸価228mgKOH/g、Tg=60℃のアクリル樹脂系ポリマー50部を用意し、ジメチルアセトアミドに加熱溶解しポリマー濃度20%の溶液を得た。
【0042】
この溶液を紡糸原液として、ジメチルアセトアミド/水=40/60(重量%)の組成を有する40℃の凝固浴中で、孔径40μmの紡糸口金から上記の紡糸原液を吐出し、凝固糸を紡糸ドラフト1.4で引き取り、次いで沸水中で洗浄しながら8倍に延伸し、単繊維繊度0.2デニールの繊維を得た。
【0043】
熱接着性を評価するため、得られた繊維を5mmにカットし、乾燥重量比で該繊維を15部、単繊維繊度0.1デニール、繊維長3mmのアクリル繊維(三菱レイヨン株式会社製商品名「MVP」)を85部混合し、水を加えて繊維濃度1%とした後、1000cc計量し、家庭用ミキサー(三菱ミキサー JM−372形;三菱電機株式会社製)で30秒間攪拌混合した。ミキサーの回転数は、7500rpmであった。得られたスラリー状態の繊維を目付20g/m2で1辺が25cmの正方形に抄紙し、130℃のドラム式乾燥機で接触時間5分間で乾燥させた。アクリル樹脂系ポリマーBを含有する繊維の熱接着性により、シートが形成された。
【0044】
得られたシートを幅2cmにカットし、引っ張り試験器(テンシロンUTM−IIIL−100;株式会社オリエンテック製)で引張り強度を測定した。測定5回の平均値は、0.28kg/cmであった。
【0045】
(比較例1)
アクリロニトリル系ポリマーAとして、アクリロニトリル/酢酸ビニル=92/8(重量%)の組成を有する分子量9万のアクリロニトリル系ポリマー70部と、アクリル樹脂系ポリマーBとして、メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸=80/16/4(重量%)の組成を有する分子量1万、酸価28mgKOH/g、Tg=75℃のアクリル樹脂系ポリマー30部を用意し、ジメチルアセトアミドに加熱溶解し、ポリマー濃度20%の溶液を得た。該溶液を紡糸原液として、実施例1と同条件で紡糸して、単繊維繊度0.2デニールの繊維を得た。
【0046】
繊維を5mmにカットし、実施例1と同様に、乾燥重量比で該繊維を15部、単繊維繊度0.1デニール、繊維長3mmのアクリル繊維を85部混合し、水を加えて繊維濃度1%とした後、1000cc計量し、家庭用ミキサー(三菱ミキサー JM−372形;三菱電機株式会社製)で30秒間攪拌混合した。ミキサーの回転数は、7500rpmであった。得られたスラリー状態の繊維を目付20g/m2で1辺が25cmの正方形に抄紙し、130℃のドラム式乾燥機で接触時間5分間で乾燥させた。
得られたシートを幅2cmにカットし、テンシロンUTM−IIIL−100で引張り強度を測定した。測定5回の平均値は、0.17kg/cmであった。
【0047】
(実施例2)
アクリロニトリル系ポリマーAとして、アクリロニトリル/酢酸ビニル=92/8(重量%)の組成を有する分子量9万のアクリロニトリル系ポリマー80部、アクリル樹脂系ポリマーBとして、メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸=35/30/35(重量%)の組成を有する分子量5万、酸価228mgKOH/g、Tg=60℃のアクリル樹脂系ポリマー20部、及びアクリル樹脂系ポリマーCとして、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=90/10(重量%)の組成を有する分子量8.5万、酸価0mgKOH/g、Tg=90℃のメタクリル樹脂33部、を用意し、ジメチルアセトアミドに加熱溶解し、ポリマー濃度20%の溶液を得た。
【0048】
この溶液を紡糸原液として、実施例1と同条件で、単繊維繊度0.2デニールの繊維を得た。繊維の内部構造を調べるため繊維軸方向にカットし、カット面を酸素プラズマエッチング処理した。走査型電子顕微鏡による観察の結果、繊維内部には連続した筋状相分離構造が認められた。
【0049】
繊維の熱接着性を評価するため、繊維を5mmにカットし、乾燥重量比で該繊維を15部、単繊維繊度0.1デニール、繊維長3mmのアクリル繊維(商品名「MVP」三菱レイヨン(株)製)を85部混合し、水を加えて繊維濃度1%とした後、500cc計量し、家庭用ミキサー(三菱ミキサー JM−372形;三菱電機株式会社製)で1分間攪拌混合した。ミキサーの回転数は、10000rpmであった。得られたスラリー状態の繊維を目付20g/m2で1辺が25cmの正方形に抄紙し、130℃のドラム式乾燥機で接触時間5分間で乾燥させた。アクリル樹脂系ポリマーBを含有する繊維の熱接着性により、シートが形成された。
【0050】
得られたシートを幅2cmにカットし、実施例1と同様にして引張り強度を測定した。測定5回の平均値は0.35kg/cmであった。また、シート表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、繊維表面に0.01デニール以下に極細化した部分が認められ、湿紙強力も向上していることが判る。
【0051】
(比較例2)
アクリロニトリル系ポリマーAとして、アクリロニトリル/酢酸ビニル=92/8(重量%)の組成を有する分子量9万のアクリロニトリル系ポリマー80部と、アクリル樹脂系ポリマーBとして、メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸=35/30/35(重量%)の組成を有する分子量5万、酸価228mgKOH/g、Tg=60℃のアクリル樹脂系ポリマー20部、アクリル樹脂系ポリマーCとして、メタクリル酸n−ブチル100%よりなる分子量9.5万、酸価0mgKOH/g、Tg=20℃のアクリル樹脂系ポリマー25部を用意し、ジメチルアセトアミドに加熱溶解し、ポリマー濃度25%の溶液を得た。
【0052】
該溶液を紡糸原液として、実施例1と同条件にて湿式紡糸したが、凝固浴中での糸切れのため、繊維は得られなかった。
【0053】
(実施例3)
ポリマー濃度25重量%とした他は実施例2と同様にして紡糸原液を得た。この紡糸原液を、ジメチルアセトアミド/水=30/70(重量%)の組成を有する40℃の凝固浴中で、孔径76μmの紡糸口金から吐出し、凝固糸を紡糸ドラフト1.2で引き取り、次いで沸水中で洗浄しながら5倍に延伸して単繊維繊度1.5デニールの繊維とした。繊維の内部構造を調べるため繊維軸方向にカットし、カット面を酸素プラズマエッチング処理した。走査型電子顕微鏡による観察の結果、繊維内部には連続した筋状相分離構造が認められた。
【0054】
熱接着性を評価するため、繊維を5mmにカットし、乾燥重量比で該繊維を15部、単繊維繊度0.1デニール、繊維長3mmのアクリル繊維(商品名「MVP」三菱レイヨン(株)製)を85部混合し、水を加えて繊維濃度1%とした後、500cc計量し、家庭用ミキサー(三菱ミキサー JM−372形;三菱電機株式会社製)で10分間叩解処理した。ミキサーの回転数は、10000rpmであった。得られたスラリー状態の繊維を目付20g/m2で1辺が25cmの正方形に抄紙し、130℃のドラム式乾燥機で接触時間5分間で乾燥させた。アクリル樹脂系ポリマーを含有する繊維の自己接着性により、シートが形成された。得られたシートを幅2cmにカットし、実施例1と同様にして引張り強度を測定した。測定5回の平均値は0.30kg/cmであった。また、シート表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、熱接着性繊維は0.01デニール以下に極細化しており、湿紙強力も向上していることが判る。
【0055】
(実施例4)
アクリロニトリル系ポリマーAとして、アクリロニトリル/酢酸ビニル=92/8(重量%)の組成を有する分子量9万のアクリロニトリル系ポリマー77部、アクリル樹脂系ポリマーBとして、メタクリル酸メチル/スチレン/アクリル酸n−ブチル/メタクリル酸=18/30/25/27(重量%)の組成を有する分子量3万、酸価176mgKOH/g、Tg=63℃のアクリル樹脂系ポリマー23部、及び、アクリル樹脂系ポリマーCとして、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=90/10(重量%)の組成を有する分子量8.5万、酸価0mgKOH/g、Tg=90℃のアクリル樹脂系ポリマー33部をジメチルアセトアミドに加熱溶解し、ポリマー濃度20%の溶液を得た。
【0056】
この溶液を紡糸原液として、実施例3と同条件で、単繊維繊度1.5デニールの繊維を得た。繊維の内部構造を調べるため繊維軸方向にカットし、カット面を酸素プラズマエッチング処理した。走査型電子顕微鏡による観察の結果、繊維内部には連続した筋状相分離構造が認められた。
【0057】
繊維の熱融着性を評価するため、該繊維を15部、単繊維繊度0.1デニール、繊維長3mmのアクリル繊維を85部を混合し、実施例1と同条件で抄紙した。得られたシートを幅2cmにカットし、実施例1と同様にして引張り強度を測定した。測定5回の平均値は0.32kg/cmであった。繊維は0.01デニール以下に極細化しており、湿紙強力も向上していることが判る。
【0058】
【発明の効果】
特定量比のアクリロニトリル系ポリマーAと酸価が30〜250mgKOH/gのアクリル樹脂系ポリマーBとから構成される、アクリル系バインダー繊維は、単独あるいは他の素材と混合し紙や不織布に加工したとき、十分な繊維間接着力を発現し、実用上十分な乾紙強力を発現することができる。
【0059】
また、特定量比のアクリロニトリル系ポリマーA、酸価が30〜250mgKOH/gのアクリル樹脂系ポリマーB、及び、酸価が30mgKOH/g未満であり、且つガラス転移温度Tgが30〜100℃のアクリル樹脂系ポリマーCとから構成される、アクリル系バインダー繊維は繊維内部に更に明確な筋状相分離構造を有し、パルプと同等の叩解処理により割繊、極細化することが可能であり、抄紙した際、湿紙強力が向上するとともに、表面が平滑で肌理の細かいシート状物が得られる。

Claims (2)

  1. アクリロニトリル単位を50〜100重量%含有するアクリロニトリル系ポリマーA、酸価が30〜250mgKOH/gのアクリル樹脂系ポリマーB、及び、酸価が30mgKOH/g未満、ガラス転移温度Tgが30〜100℃のアクリル樹脂系ポリマーCとからなり、W、W及びWが下記式(1)及び(2)を満足するアクリル系バインダー繊維。
    /W =50/50〜90/10 (1)
    /(W+W)=25/100〜55/100 (2)
    ただし、W、W及びWは、それぞれアクリロニトリル系ポリマーA、アクリル樹脂系ポリマーB、及びアクリル樹脂系ポリマーCの重量を示す。
  2. アクリロニトリル単位を50〜100重量%含有するアクリロニトリル系ポリマーA、酸価が30〜250mgKOH/gのアクリル樹脂系ポリマーB、及び、酸価が30mgKOH/g未満、ガラス転移温度Tgが30〜100℃のアクリル樹脂系ポリマーCとからなり、WA、WB及びWCが下記式(1)及び(2)を満足するアクリル系バインダー繊維。
    A/WB =50/50〜90/10 (1)
    C/(WA+WB)=25/100〜55/100 (2)
    ただし、WA、WB及びWCは、それぞれアクリロニトリル系ポリマーA、アクリル樹脂系ポリマーB、及びアクリル樹脂系ポリマーCの重量を示す。
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