JPH11100717A - 高強力且つ繊維径の太い易フィブリル化繊維及びその製造方法 - Google Patents

高強力且つ繊維径の太い易フィブリル化繊維及びその製造方法

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JPH11100717A
JPH11100717A JP25627597A JP25627597A JPH11100717A JP H11100717 A JPH11100717 A JP H11100717A JP 25627597 A JP25627597 A JP 25627597A JP 25627597 A JP25627597 A JP 25627597A JP H11100717 A JPH11100717 A JP H11100717A
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solvent
polymer
bath
pva
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Masahiro Sato
政弘 佐藤
Hisashi Nakahara
寿 中原
Ichiro Hanamori
一郎 花森
Akio Omori
昭夫 大森
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高強力を有しかつ繊維径が太く、フィブリル化
時に分散性良好な親水性、耐熱溶融性、補強性に優れた
フィブリルを安定に、しかも安価に得ることができる繊
維を提供する。 【解決手段】ビニルアルコール系ポリマーとビニルアル
コール系ポリマーに非相溶なポリマーの重量比が80:
20〜50:50であり、繊維径が40〜150μm、
強度が7g/d以上、繊維1本当たりの引っ張り抵抗度
が2Kg以上、叩解性が15分以下であることを特徴と
する、フィブリル性と強度に優れ、しかも剛性の高い繊
維とすることにより、上記課題を達成することができ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、容易にフィブリル化可
能なビニルアルコール系ポリマー(以下PVAと略す)
とPVAに非相溶なポリマーよりなる繊維に関するもの
であり、化学的膨潤力と機械的応力の各々単独あるいは
組み合わせにより、容易に極細フィブリルとなり、摩擦
材、セメントやゴムなどの補強繊維などに好適に用いる
ことのできる繊維に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車のブレーキやクラッチ板などに使
用される種々の摩擦材の補強繊維としては、無機微粒子
の捕捉性、耐熱性、難燃性、補強性等の点より、従来か
らアスベストが多用されてきたが、アスベストが発癌性
物質であることから、その使用が厳しく制限され始めて
おり、最近では高価なアラミド繊維のパルプが代替され
つつある。しかし、アラミド繊維は高価であることよ
り、使用が限定されており、天然パルプなどの補強性の
不十分なものが増量材的に併用されており、これらが製
品性能を大きく低下させている。これらのことより、粒
子捕捉性を達成するためのフィブリル性、耐熱難融性お
よび補強性を兼備し、かつアラミド繊維より安価な易フ
ィブリル化繊維が切望されている。
【0003】さらに、スレート板に代表されるセメント
二次製品分野においても、基材補強用に使用されてきた
アスベストが前述の理由により、厳しく使用制限されて
いるため、アスベスト代替としてビニロン、アクリル繊
維などの汎用繊維が使用されているが、アスベストに比
べて繊維が太すぎるため、セメント微粒子を捕捉するた
め天然パルプなどのフィブリルを混合する必要があり、
強度の高いフィブリル化可能繊維の開発が切望されてい
る。また、ゴムなどの補強用にメタ系あるいはパラ系の
アラミド繊維やビニロンなどが使用されているが、接着
性向上のためRFL処理が必要であったり、マスターバ
ッチ作製時のゴム練り中での分散性が悪い等の問題があ
り、高接着、高比表面積、高強度、高引っ張り抵抗度で
しかも各種成形材中での分散性良好な易フィブリル化繊
維が要望されている。
【0004】上記要望に応えるべく、極細の合成繊維を
得る方法として、ブレンドポリマーの相分離現象を利用
する試みが数多くなされている。例えば、特公昭49−
10617号、特公昭51−17609号、特開昭48
−56925号、特開昭49−6203号等の各公報に
は、ポリアクリロニトリル(以下PANと略す)を海成
分とし、PVAにアクリロニトリルをグラフト共重合し
たものや、メチルメタクリレート系ポリマーを島成分と
する海島構造繊維を叩解するとフィブリルが得られるこ
とが記載されている。
【0005】しかし、これらの公報に記載されている技
術は、PANが海成分となっているため、固化浴として
水と原液溶媒の混合系や固化能のある有機溶剤の単独系
が使用されているが、その強い凝固作用により、均一な
ゲル糸を得ることができず、高倍率な延伸が困難であ
り、したがって工業的に安定でかつ安価に高強度・高ヤ
ング率の補強性に優れた繊維を得ることが困難である。
また、グラフトポリマーを混合すると相溶性が良好とな
り、紡糸原液が透明となり相分離構造を形成し難いた
め、フィブリル化が困難となるばかりか、得られたフィ
ブリルがあまりにも細いため絡み易く、ファイバーボー
ルを形成し易いという問題点もある。また、特公昭47
−31376号公報には、完全ケン化PVAを海成分、
部分ケン化PVAを島成分とするPVA系の易フィブリ
ル化繊維が開示されているが、この繊維の場合には、水
中叩解処理時に部分ケン化PVAが溶出し、叩解に使用
した水の処理のために、特殊な装置や薬剤が必要となる
とともに叩解時に発泡が生じて叩解作業を妨げるという
問題が生じる。また、本発明者らは特願平8−1199
22号公報において、高強度を有し且つ親水性、耐熱溶
融性、拭き取り性、濾過性、微粒子捕捉性、補強性に優
れたフィブリルを安定に、しかも安価に得ることができ
る繊維を提案した。しかしながら、上記記載の繊維はど
れもフィブリル化する前の繊維径は25μm以下であ
り、25μm以上の繊維径を有するものは得られていな
い。
【0006】また、従来PVA繊維で得ることができな
かった高強力な太径繊維を得る方法に関して、特開平2
−300308号公報、さらに耐熱水性があり且つ高強
力な太径繊維については、特開平3−146704号公
報に開示されている。しかしながら、これらの紡糸方法
では、溶液紡糸でしかも太径繊維では重要な抽出方法の
記載がなく、従来の細径繊維と同様な抽出方法では、抽
出が不完全でまともな繊維を得ることができない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上のことより、繊維
径が太く、強度、ヤング率が高く、しかも容易にフィブ
リル化し、分散性に優れるとともに十分な補強効果を有
する繊維が強く望まれているが、未だ得られていない。
このような状況を鑑み、上記の要望されている性能を満
足する易フィブリル化繊維を得ることである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、これらの
課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成し
た。すなわち本発明は、PVAとPVAに非相溶なポリ
マーからなり、該PVAとPVAに非相溶なポリマーの
重量比が80:20〜50:50であり、繊維径が40
〜150μm、強度7g/d以上、繊維1本当たりの引
張り抵抗度2Kg以上及び叩解性15分以下であること
特徴とする高強力且つ繊維径が太い易フィブリル化繊維
である。このような易フィブリル化繊維は、PVAとP
VAに非相溶なポリマーを共通溶媒に溶解し、得られた
紡糸原液を上記両ポリマーに対して固化能を有する固化
溶媒と原液溶媒と同一の溶媒からなる固化浴に、湿式ま
たは乾湿式紡糸し、延伸して高強力を有する易フィブリ
ル化繊維を製造するに際し、以下の条件(1)〜(6)
を採用することにより得られる。 (1)原液が、10〜150μmの粒子径を有している
相分離構造であること、(2)固化溶媒が有機溶媒で、
かつ固化浴には15〜75重量%の原液溶媒が含まれて
いること、(3)固化浴出の糸篠の単糸が200〜77
0μmであること、(4)2倍湿延伸後の抽出滞留時間
が1分以上であること、(5)置換浴がアルコール類、
ケトン類、水の3成分系からなり、該アルコール類とケ
トン類の重量比が9/1〜1/9かつ水が全体の重量比
1〜30%からなること、(6)全延伸倍率が8倍以上
であること、を満足することを特徴とする高強力且つ繊
維径の太い易フィブリル化繊維の製造方法である。
【0009】以下に本発明を詳細に説明する。まず本発
明繊維はPVAとPVAに非相溶なポリマーからなり、
その重量比は80/20〜50/50でなければならな
い。強い極性基を有するPVAからは高強度、高引張り
抵抗度の繊維を得ることができ、かつセメントやゴム等
の接着性、耐アルカリ性が高く、補強材としては好適で
ある。
【0010】本発明でいうPVAとは、ビニルアルコー
ルユニットを70モル%以上有するポリマーを意味して
おり、従ってエチレン、酢酸ビニル、イタコン酸、ビニ
ルアミン、アクリルアミド、ピバリン酸ビニル、無水マ
レイン酸、スルホン酸含有ビニル化合物などのモノマー
が30モル%未満の割合で共重合されていても良い。ケ
ン化度は80モル%以上が好ましく、配向結晶化のため
にはビニルアルコールユニットが95モル%以上がより
好ましく、更に好ましくは98モル%以上、もっと好ま
しくは99モル%以上、最も好ましくは99.8モル%
以上である。PVAの重合度に関しては、特に限定はな
いが、高強度フィブリルを得るためには重合度500以
上が好ましく、1500以上であると更に好ましい。ま
た、耐熱水性改善のため、繊維化後の後反応によりPV
Aはホルムアルデヒドやグルタルアルデヒドなどによ
り、PVA分子内または分子間がアセタール化され架橋
されていても良い。
【0011】また、本発明で言うPVAに非相溶なポリ
マーとは、PAN、セルロースアセテート、コーンスタ
ーチ等があり、好適なポリマーとしてはPANが挙げら
れるPANは、アクリロニトリルユニットを70モル%
以上有していればよく、従って例えばメチルアクリレー
ト、エチルアクリレート、メチルメタクリレートなどの
(メタ)アクリル酸エステル類、酢酸ビニルや酪酸ビニ
ルなどのビニルエステル類、塩化ビニルなどのビニル化
合物類、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸な
どの不飽和カルボン酸類、スルホン酸含有ビニル化合物
などのモノマーが30モル%未満の割合で共重合されて
いても良い。原液溶媒に対する溶解性を向上させるため
には、PANホモポリマーよりも、他のビニルモノマー
を0.5〜10モル%、更に好ましくは2〜8モル%共
重合させたPANコポリマーが好ましい。
【0012】前記したように本発明においては、PVA
とPVAに非相溶なポリマーの組成比は80/20〜5
0/50であり、PVAが50重量%より少ない場合あ
るいは80重量%より多い場合には、固化浴へのPVA
およびPVAに非相溶なポリマーの溶出が大きくなり、
繊維間膠着を生じやすく、また明確な相分離状態が得ら
れずフィブリル化が困難な場合もある。強度、引張り抵
抗度、得られた繊維のフィブリル化、得られたフィブリ
ルの分散性の点より、PVA/PVAに非相溶なポリマ
ーが重量比70/30〜52/48が好ましく、60/
40〜55/45が特に好ましい。
【0013】本発明繊維は、繊維径が40〜150μm
と太いものでなければならない。本発明でいう繊維径と
は、光学顕微鏡よりスケールと繊維を写真撮影し、両者
を比較し読み取った径で、n=50の平均値である。繊
維径が40μm未満であるとゴムとの分散時に、分散性
が悪くファイバーボール状になり、150μmを超える
と繊維生産性の低下、繊維物性の低下が起こり好ましく
ない。本発明において繊維径が50μmから120μm
が好ましく、より好ましくは70〜100μmが好まし
い。
【0014】また、本発明繊維の強度は7g/d以上
で、繊維1本当たりの引張り抵抗度は2Kg以上でなけ
ればならない。本発明でいう強度及び繊維1本当たりの
引張り抵抗度は、それぞれJIS−L1015に準じて
測定したデニール当たりの引張り強度及び繊維1本当た
りの初期引張り抵抗度をいう。強度が7g/d未満ある
いは引張り抵抗度が2Kg未満であると、セメントやゴ
ム、樹脂に対する補強性が不十分となる。本発明におい
て強度10g/d以上が好ましい。また、引張り抵抗度
としては3Kg以上が好ましく、特に5Kg以上が好ま
しい。以上のように繊維径が大きく、強度、繊維一本の
引張り抵抗度が高いことで、繊維の剛性が良くなり、ゴ
ムなどと一緒に混練りすると分散性が良好となる。
【0015】更に本発明繊維の叩解性は15分以下であ
る。本発明で言う叩解性とは、20℃65%RH雰囲気
で放置した繊維サンプル4gを2mmにカットし、これ
に水400ccを加えて、松下電器産業製ミキサー(ナ
ショナルMX−X40)に投入し、11000rpmで
攪拌叩解する。所定時間攪拌叩解後に水分散叩解液をサ
ンプリングし、次に述べる方法で濾水時間を測定し、濾
水時間が60秒以上となる攪拌叩解時間をいう。本発明
でいう濾水時間とは、径が63mmのプラスチック製メ
スシリンダーの底をくり抜き、そこに350メッシュの
金網を取り付け、フィブリル0.5gを含む水分散叩解
液750ccを濾過するに要する時間をいう。なお、本
測定法で測定した単糸2drの未叩解繊維の濾水時間は
3秒以下である。叩解性が30分を越えると叩解性が不
十分で、実際に使用する際にフィブリル化しないことが
ある。また、叩解時間が長いと得られたフィブリルの分
散性が悪く、ファイバーボールを形成する傾向にある。
なぜ叩解時間が長いとフィブリルの分散性が悪化するか
は不明であるが、フィブリルが細くなって絡み易くなっ
たためと推測される。なお、ファイバーボールの形成の
有無は、叩解液40ccを300ccビーカーに採り、
粘剤(0.1%ポリエチレンオキサイド水溶液)2gと
水を加えて200ccとしたのち、ガラス棒で十分に攪
拌分散させたときに、この分散液においてフィブリル同
士あるいはファイバーとフィブリルろの絡み合いが形成
され、ガラス棒による攪拌操作だけでは解離することが
できない径3mm以上のファイバーボールの有無を観察
することにより判別できる。本発明の繊維は、ファイバ
ーボールが形成されにくいという特徴を有している。そ
の原因が固化、抽出浴として有機溶媒を用いていること
にあると推定している。
【0016】次に本発明繊維の製造方法について説明す
る。まずPVAとPANを共通溶媒に溶解し紡糸原液と
する。共通溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DM
SO)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド
などの極性溶媒やロダン塩、塩化亜鉛などの膨潤性塩類
含有水溶液、硝酸、硫酸、塩酸などの鉱酸類などが挙げ
られる。特に低温溶解性、ポリマー低分解性などの点よ
りDMSOが好ましい。原液中のポリマー濃度として
は、10〜30重量%の範囲が好ましい。また、原液温
度としては、50〜140℃の範囲が好ましい。
【0017】本発明の製造方法において得られた紡糸原
液は、10〜150μmの粒子径を有している相構造で
あることが必要である。本発明で言う紡糸原液の相構造
とは、紡糸原液をスライドガラス上にのせ、100倍の
微分干渉顕微鏡で観察した場合に識別される構造であ
り、本発明においては、PVAとPVAに非相溶なポリ
マーが相分離して存在しており、一方の成分が分散成分
(島成分)となり、他方の成分が分散媒成分(海成分)
となっている。特に本発明において、PVAが分散媒成
分、PVAに非相溶なポリマーが分散成分となっている
のが強度や引張り抵抗度の点で、更にフィブリル化しや
すい点で好ましい。本発明でいう粒子径とは、上記した
ような100倍の微分干渉顕微鏡で観察した場合に、判
別できる大多数がその範囲の径を有していることを意味
している。粒子径の大多数が150μmを越える場合に
は、原液安定性および紡糸安定性の点で好ましくない。
また、大多数が10μm未満で10μmを越える粒子が
ほとんど存在しない場合には相構造が小さく、得られた
繊維の叩解性が悪くなり好ましくない。より好ましくは
20〜100μmの粒子径を有している相構造の場合で
ある。原液での相構造が固化時の核となり、フィブリル
化し易い繊維を形成するための重要なポイントである。
【0018】紡糸原液の相構造を決定する因子として
は、両ポリマーの相溶性、両ポリマーの組成比、原液中
のポリマー濃度、溶媒の種類、原液の温度などがある。
両ポリマーの相溶性に関しては、相溶性が悪くなるに従
って粒子径が大きくなり、組成比に関しては、両ポリマ
ーの混合重量比が50/50に近づくに従って粒子径が
大きくなる傾向にある。また、ポリマー濃度に関して
は、濃度が高くなるに従って粒子経は小さくなる傾向に
あり、原液溶媒に関しては、両ポリマーに対して相溶性
の高い溶媒ほど粒子径は小さくなる。更に原液温度に関
しては、前記したように通常50〜120℃の範囲が用
いられるが、温度が高くなるほど粒子径は大きくなる傾
向にある。従って粒子径を所望の大きさにするために
は、まず適当な条件で紡糸原液を作製して、その時の粒
子径を測定し、その結果を元に、上記の因子の少なくと
も一つを変更することにより、粒子径を所望の大きさに
変更できる。
【0019】このように粒子径を上記したような10〜
150μmの範囲とした紡糸原液の粘度としは、湿式紡
糸する場合には10〜400ポイズ、乾湿式紡糸する場
合には50〜2000ポイズの範囲が好ましく、溶融紡
糸の粘度よりかなり低い。
【0020】このようにして得られた紡糸原液を紡糸ノ
ズルを通して固化浴中に湿式紡糸、あるいは乾湿式紡糸
する。固化浴を紡糸ノズルに直接接触させる湿式紡糸方
法は、ノズル孔ピッチを狭くしても繊維同士が膠着せず
に紡糸できるため、多孔ノズルを用いた紡糸に適してお
り、一方固化浴と紡糸ノズルの間にエアギャップを設け
る乾湿式紡糸の場合は、エアギャップ部での伸びが大き
いことより、高速紡糸に適している。本発明において
は、湿式か乾湿式かは目的や用途に応じて適宜選択する
ことができる。
【0021】本発明において用いる固化浴は、固化溶媒
として有機溶媒を用いたもので、かつ固化浴中での固化
溶媒/原液溶媒の組成比は25/75〜15/85の混
合液を用いたものである。固化溶媒としては、メタノー
ル、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチル
エチルケトンなどのケトン類などのPVA及びPANの
いずれに対しても凝固能を有する有機溶媒を用いること
が本発明繊維を得る上で極めて重要である。従来PVA
/PAN系のフィブリル繊維はほとんどPANが主成分
となっており、工業的な固化浴としてはPANに対して
強力な凝固能を有する水を用いているが、水はPVAに
対して凝固能がなく、両ポリマーに対する凝固能が著し
く異なっており、バランスを欠いているのに対して、有
機溶媒系はいずれのポリマーに対しても凝固能を有して
おり、しかも原液溶媒を混合することによりバランスよ
く固化させることができ、このことが易フィブリル化繊
維の性能に影響を与える一つの要因である。
【0022】本発明において、固化レベルを適正に維持
するために、固化浴中の有機溶媒系固化溶媒と原液溶媒
の組成比は重要であり、本発明では重量比で25/75
〜85/15の範囲が採用される。固化浴中での原液溶
媒濃度が15重量%より少ないと凝固能が高すぎ、ノズ
ル切れとなり紡糸調子が不良となり、更に得られる繊維
の強度、引張り抵抗度等の性能が低下する傾向にある。
一方、固化浴中での原液溶媒濃度が75重量%より多い
と十分な凝固ができず、これまた紡糸工程通過性が悪
く、強度などの点で満足できる性能の繊維を得ることが
できない。より好ましい固化浴中の原液溶媒の濃度は2
0〜70重量%であり、25〜65重量%が最も好まし
い。なお本発明においては、固化浴は上記したように、
有機溶媒系固化溶媒と原液溶媒との混合液が用いられる
が、もちろん少量ならばこれら以外の液体や固体が溶解
されて存在してもよい。本発明において、固化溶媒と原
液溶媒の最も好ましい組み合わせはメタノールとDMS
Oの組み合わせである。
【0023】本発明太径繊維を得るには、固化浴中から
出てきた時点での紡糸原糸の単糸径を、固化性とさらに
次の工程である原液溶媒の抽出のバランスにより200
〜770μmに制御することが重要である。200μm
以下では太径繊維にはならず、770μm以上では固
化、抽出性が悪くなり好ましくは230〜700μm
で、より好ましくは240〜600μmに制御する。
【0024】次に得られた糸篠を、固化性有機溶媒また
はそれと原液溶媒の混合液からなる湿延伸浴中で2倍湿
延伸する。従来の細径繊維では、繊維径が25μm以下
と細いことから、糸篠から原液溶媒の抽出が速く、固化
が十分に進んでいるので2倍湿延伸する前に、容易に原
液溶媒が抽出される。それに対して、太径繊維では、固
化が十分でなく、湿延伸前の太い状態では、原液溶媒が
極めて抽出困難であることから、2倍以上湿延伸をかけ
細くしてから抽出させた方が、効率的に抽出しうること
がわかった。細径繊維では、湿延伸すると分子配向によ
る緻密化のため、抽出が著しく阻害されるのに対し、太
径繊維では固化が甘いことから湿延伸による緻密化が起
こらず、抽出阻害が抑制されるためだと推定される。湿
延伸浴に用いられる溶液としては、上記した固化浴溶媒
と同様のものが挙げられる。
【0025】湿延伸後の糸篠を、固化性有機溶媒を主体
とする抽出浴に接触させて、糸篠から原液溶媒を抽出除
去する。この抽出処理は、純粋な固化性有機溶媒を糸篠
の走行方向と向流方向で連続的に流すことで、抽出浴で
の滞留時間を短縮することができるが、本発明の太径繊
維では、2倍以上湿延伸して径を細くしてから抽出浴に
1分以上滞留させることが重要とわかった。この抽出処
理により、糸篠中に含まれている紡糸原液溶媒の量を糸
篠重量の1%以下、好ましくは0.2%以下にすること
ができる。接触させる時間としては好ましくは1.5分
以上、特に2分以上が好ましい。抽出速度を高め抽出を
向上させるためには、抽出浴溶媒の温度を沸点近くまで
昇温するのが好ましい。従来一般に、PVA系繊維を製
造する際には、湿延伸を行った後、原液溶媒を抽出除去
することなく直ちに乾燥する方法もあるが、本発明繊維
のように繊維径が大きい場合には、上記のような方法で
は、完全に原液溶媒を抽出することができない。従って
本発明繊維においては、湿延伸後の溶媒抽出処理は重要
な工程である。また、糸篠の膠着制御のため、毛羽の出
ない範囲で乾燥工程までの全湿延伸倍率を大きくするこ
とも重要である。全湿延伸倍率が2倍未満では膠着がし
易く、8倍を越えると毛羽が出易いので好ましくない。
【0026】上記のように固化浴を通過した糸篠は、湿
延伸、原液溶媒の抽出工程を経た後、置換、油剤付与、
乾燥へと経て行くが、この置換工程も重要である。すな
わち置換浴の組成がアルコール類とケトン類の重量比が
9/1〜1/9かつ水が全体の重量比1〜30%からな
ることにより易フィブリル化が促進される。この置換浴
の3成分の働きは、アルコール類、ケトン類はPVA、
PANの両方に対して凝固能がり、水はPVAに対して
は膨潤作用がありPANには強い凝固能がある。これに
よりゲル糸中にPVA相とPAN相に内部歪みが発生
し、この状態が乾燥工程を経ても維持されたままである
ことが、フィブリル化を著しく促進向上させるまた一つ
の要因である。本発明でいう置換浴の組成がアルコール
類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、
ブタノール等であり、ケトン類としてはメチルエチルケ
トン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチル
ケトン、メチルイソブチルケトン等を用いることができ
る。
【0027】本発明方法において、フィブリル化を適正
に維持するために、置換浴のアルコール類、ケトン類、
水の組成比は重要であり、アルコール類とケトン類の重
量比が9/1〜1/9かつ水が全体の重量比1〜30%
の範囲が採用される。アルコール類が90重量%より多
かったり、10重量%より少なかったりすると所望の叩
解性を得られない。水は30重量%より多いと原糸に膠
着が発生し、得られる繊維の強度、引っ張り抵抗度等の
性能が低下する傾向にある。また、1重量%より少ない
と所望の叩解性が得られない。より好ましい置換浴の組
成はアルコール類/ケトン類=7/3〜3/7かつ水が
全体の5〜20重量%であり、最も好ましいのは、アル
コール類/ケトン類=7/3〜6/4かつ水が全体の5
〜15重量%でありである。なお本発明において、置換
浴は上記したようにアルコール類、ケトン類、水との混
合液が用いられるが、もちろん少量ならばこれ以外の液
体や固体が溶解されて存在していても良い。本発明にお
いて、アルコール類、ケトン類、水の最も好ましい組み
合わせは、メタノールとメチルイソブチルケトン、水の
組み合わせである。
【0028】置換浴、油剤付与、乾燥工程を経たのち、
乾熱延伸工程に送られる。本発明方法においてはこの乾
熱延伸工程もまた重要であり、すなわち全延伸倍率が8
倍以上となるように乾熱延伸を行うことが必要である。
本発明でいう全延伸倍率とは、湿延伸倍率と乾熱延伸倍
率との積で表される倍率であり、全延伸倍率が8倍未満
の場合には強度、引っ張り抵抗度の優れた繊維を得るこ
とができないとともに易フィブリル化する繊維が得られ
ない。
【0029】全延伸倍率を8倍以上とするための因子と
しては、PVA/PVAに非相溶なポリマーの組成比、
固化浴組成比や固化浴温度などの固化浴条件、及び湿延
伸倍率などの湿延伸倍率条件、置換浴組成比などの置換
浴条件、乾熱延伸温度や乾熱延伸雰囲気での滞留時間
(延伸速度)等の乾熱延伸条件が挙げられる。PVA/
PVAに非相溶なポリマーの組成比に関しては、PVA
の重量比を高めると全延伸倍率を高くすることができ、
固化浴中の原液溶媒の割合が増加するに従って全延伸倍
率が低くなり、固化浴の温度が高くなると全延伸倍率が
高くなる。なお、本発明において固化浴温度としては、
0〜30℃の範囲が好ましい。また、全湿熱延伸倍率を
高くすると全延伸倍率が高くなる傾向にあり、乾熱延伸
温度を高くすると全延伸倍率が高くなり、さらに滞留時
間を長くすると全延伸倍率が高くなる。なお、本発明の
方法において全湿延伸倍率としては、1.5〜4.5倍
の範囲、また乾熱延伸温度としては210〜250℃の
範囲、更に滞留時間としては5〜90秒の範囲が好まし
い。従って全延伸倍率を所望の値にするためには、まず
適当な条件で紡糸、延伸を行い、その時の全延伸倍率を
元に、上記の因子の少なくとも一つを変更することによ
り、全延伸倍率を所望の値に容易に変更できる。
【0030】本発明方法において、全延伸倍率は10倍
以上であるとより好ましく、更に好ましくは12倍以上
である。乾熱延伸後の繊維に、必要に応じて乾熱処理
や、更に耐熱水性改善のためホルマールやアルデヒド等
によりアセタール化処理や長鎖アルキルリン酸等による
架橋処理等を施しても良い。なお、本発明繊維には、P
VAとPVAに非相溶なポリマー以外にも本発明の目的
を逸脱しない範囲内において、無機顔料、有機顔料、耐
熱老化防止剤、pH調整剤、架橋剤、油剤、各種安定剤
などを含有していてもよく、これらは目的に応じて原液
工程、固化工程、抽出工程、置換工程、乾燥直前、乾熱
延伸前、乾熱延伸後、後反応後などの各製造プロセス段
階で付与することができる。
【0031】以上、有機溶媒系紡糸原液を、固化性有機
溶媒を含有する固化浴に、上述の条件で紡糸すると均一
に固化するため、繊維断面が円形のものが得られる。繊
維断面が円形であることから、均一な構造となり強度、
引張り抵抗度が高いものが得られる。
【0032】このようにして得た繊維から、化学的膨潤
力と機械的応力の各々単独あるいは両者の併用により、
1μm程度の太さのフィブリルが得られる。フィブリル
化方法に関しては、代表的な方法として、繊維をフィブ
リル化後シート状に形成する方法と、シート状に形成後
にフィブリル化する方法とがあるが、本発明繊維のよう
な繊維径が太いものにはこれらの方法は適さない。本発
明の繊維は機械的せん断力のみで分散性良好でかつフィ
ブリルに分割されるため、フィブリル化の方法として、
ローラーやミキサーによるゴム素練りにも好適である。
【0033】
【実施例】以下本発明を実施例によりさらに具体的に説
明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約を受けるも
のではない。実施例中の%は特に断りがない限り重量に
基づく値である。 実施例1 重合度1750、ケン化度99.8モル%のPVAと、
酢酸ビニル5モル%共重合したPANをDMSOに溶解
し、100℃で10時間窒素気流下で攪拌溶解し、PV
A/PANの重量比が50/50でポリマー濃度が20
重量%の混合紡糸原液を得た。この原液は、肉眼で観察
すると不透明であり、また前記した方法で相構造を観察
すると50〜90μmの粒子径を有する相構造であり、
熱水処理によりPVA成分が分散媒成分(海成分)でP
AN成分が分散成分(島成分)となっていることを確認
した。この紡糸原液を8時間静置脱泡したが、2層に分
離する気配は全くなく極めて安定した相構造を有してい
ることを確認した。この100℃の紡糸原液を、孔数5
0ホール、孔径0.5mmの紡糸口金を通して、DMS
O/メタノールの重量比が30/70、温度が5℃の固
化浴中に湿式紡糸した。固化浴出の糸篠の単糸の大きさ
は240μmであった。その後固化浴出の糸篠を2倍の
湿延伸を施し、その後抽出浴を3分滞留させ糸中のDM
SOを0.2%以下にメタノールで抽出し、最後の抽出
洗浄を重量比がメタノール/MIBK/水=32/48
/20の置換浴を通過し、抽出、置換浴中でも湿延伸処
理を施し、全湿延伸倍率を3倍までかける。置換浴後さ
らに油剤付与、80℃の熱風で乾燥し紡糸原糸を得る。
その後、得られた紡糸原糸を230℃で全延伸倍率14
倍の乾熱延伸を行い(乾熱延伸機中での滞留時間30
秒)、1000dr/50fのPVA/PANブレンド
繊維を得た。この繊維の断面は円形で繊維径は50μ
m、強度は10g/d、繊維1本当たりの引張り抵抗度
は3Kgであった。
【0034】この繊維を2mmに切断して水分散し、前
述したミキサーで5分間叩解し、叩解液を光学顕微鏡で
観察したところ、大部分の繊維が1μm程度の太さのフ
ィブリルに分かれていた。また、この叩解液の濾水時間
を測定したところ、270秒であった。この繊維の本発
明で規定する叩解性は2分以内であった。この叩解液の
分散性は良好で、フィブリル同士が絡まりあったファイ
バーボールは全く見られなかった。本実施例で得た繊維
を4mmにカットし、FRRのマスターバッチ用とし
て、ゴム素練り中に一緒に混練りすると、分散性良好な
マスターバッチが得られた。
【0035】比較例1 実施例1と固化浴出の糸篠の単糸径を75μmとした以
外は同一条件で繊維を製造することを試みた。得られた
繊維の繊維径は15μmであり、繊維強度は11g/
d、繊維1本当たりの引っ張り抵抗度は、0.4Kgで
あった。
【0036】比較例2 実施例1と同様な紡糸方法で、固化浴出の糸篠を2倍の
湿延伸を施し、その後単糸2デニールのような細径繊維
を作る場合と同様に、置換浴に入るまでの抽出浴を20
秒間と短時間しか滞留させなかった。そうすると糸篠中
のDMSOは2.0%となり、最後の抽出洗浄を重量比
がメタノール/MIBK/水=32/48/20の置換
浴を通過し、抽出、置換浴中でも湿延伸処理を施し、全
湿延伸倍率を3倍までかけ、置換浴後さらに油剤付与、
80℃の熱風で乾燥し紡糸原糸を得た。その後、得られ
た紡糸原糸を230℃で全延伸倍率14倍の乾熱延伸を
行い(乾熱延伸機中での滞留時間30秒)、1010d
r/50fのPVA/PANブレンド繊維を得た。しか
しながら、この繊維は置換浴入り直前までに、原液溶媒
が抽出されていなかったことから、置換浴で十分に液置
換が行われず、延伸糸中にも原液溶媒が0.8%存在
し、前述した濾水時間を測定すると3.1秒であり、全
くフィブリル化しなかった。
【0037】比較例3 実施例1と固化浴出の糸篠の単糸径を800μmとした
以外は同一条件で繊維を製造することを試みた。繊維径
が大きすぎて固化が不十分で、紡糸調子が悪く湿延伸、
抽出後の糸篠中にDMSOが2%も残存しており、まと
もな紡糸原糸を得ることができなかった。
【0038】比較例4、5 実施例1と置換浴組成をメタノールのみ(比較例3)及
びMIBKのみ(比較例4)にした以外は同一条件で繊
維を製造することを試みた。得られた繊維強度、繊維1
本当たりの引っ張り抵抗度は実施例とほぼ同じで9.5
g/d、3.2Kg(比較例1)、9.7g/d、3.
1Kg(比較例2)であった。しかし比較例3、4とも
に叩解性が悪く、60分間攪拌叩解してややフィブリル
化する程度であった。
【0039】実施例2 PVA/PANの重量比を60/40に変更する以外は
実施例1と同様にして紡糸原液を得た。この原液は、肉
眼で観察すると不透明であり、また前記した方法で相構
造を観察すると30〜60μmの粒子径を有しており、
PVAが分散媒分(海成分)でPAN成分が分散成分
(島成分)となっていることを熱水処理により確認し
た。この紡糸原液を8時間静置脱泡したが、2層に分離
する気配は全くなく極めて安定した相構造を有している
ことを確認した。この紡糸原液を100℃に保ち、孔数
50ホール、孔径0.5mmの紡糸口金を通して、DM
SO/メタノールの重量比が30/70、温度5℃の固
化浴中に湿式紡糸した。固化浴出の糸篠の単糸の大きさ
は、580μmであった。固化浴出の糸篠を2倍の湿延
伸を施し、抽出浴中を滞留時間5分かけ糸篠中のDMS
Oを0.15%にメタノールで抽出し、重量比がメタノ
ール/MIBK/水=32/48/20の置換浴を通過
し、抽出浴から置換浴中で全湿延伸倍率を3倍までかけ
た。さらに、油剤付与、80℃の熱風で乾燥し紡糸原糸
を得る。その後、得られた紡糸原糸を230℃で全延伸
倍率14倍の乾熱延伸を行い(乾熱延伸機中での滞留時
間30秒)、6000dr/50fのPVA/PANブ
レンド繊維を得た。この繊維の断面は円形で繊維径は1
20μm、強度は7.5g/d、繊維1本当たりの引張
り抵抗度は18Kgであった。この繊維の叩解液の濾水
時間は220秒、叩解性は3分であり、ファイバーボー
ルの生成が見られなかった。
【0040】比較例6、7 実施例2と置換浴組成をメタノールのみ(比較例5)及
びMIBKのみ(比較例6)にした以外は同一条件で繊
維を製造することを試みた。得られた繊維強度、繊維1
本当たりの抵抗度は実施例とほぼ同じで7.3g/d、
16Kg(比較例5)、7.2g/d、17Kg(比較
例4)であった。しかし比較例4、5ともに叩解性が悪
く、60分間攪拌叩解してややフィブリル化する程度で
あった。
【0041】実施例3 実施例1の原液ポリマー組成PVA/セルロースアセテ
ート=6/4にした以外は同一条件で繊維を製造するこ
とを試みた。得られた繊維の繊維径は50μm、強度は
7g/d、繊維1本当たりの引っ張り抵抗度は3Kgで
あった。この繊維の叩解液の濾水時間は280秒、叩解
性は2分であり、ファイバーボールの生成が見られなか
った。
【0042】比較例8、9 実施例1において、固化浴のDMSO濃度を10重量%
にしたところ(比較例7)、ノズル部分での糸切れが多
発した。またDMSO濃度を80重量%に変更したとこ
ろ(比較例8)、固化不良となり、紡糸調子が不良とな
りまともな紡糸原糸を得ることができなかった。
【0043】比較例10 PVAグラフトPAN(アクリロニトリルをPVAの存
在下でラジカル重合したもの、グラフト率75%)とP
VAをグラフトPAN/PVAの重量比40/60にし
て実施例2と同様に紡糸、延伸した。紡糸・延伸調子は
良好であった。得られた繊維の繊維径は120μm、強
度は7.3g/d、繊維1本当たりの引っ張り抵抗度は
17Kgと実施例2のものと遜色なかったが、叩解性は
50分以上と叩解し難いものであった。PVAグラフト
PANはPVAとの相溶性が良好で、紡糸原液段階で相
構造を形成せず、繊維内でPANがあまり均一に分子分
散に近い状態で微分散したため、フィブリル化し難くな
ったものと判断される。
【0044】
【発明の効果】本発明は、ビニロン繊維の原料として大
量に使用されているPVAとPAN、セルロースアセテ
ート等PVAに非相溶な汎用性ポリマーをブレンド使用
することにより、フィブリル化前の繊維径が40〜15
0μmと太いにも関わらず、フィブリル化後には、約1
μm(デニール換算約0.01dr)の細さの極細フィ
ブリルに容易に分割可能な易フィブリルの特徴を併せ持
つ繊維を工業的に安定かつ安価に製造することができ
る。本発明のフィブリル繊維は、上記したように、ゴム
素練り前に本発明繊維を添加し、素練りなどの機械的せ
ん断力を加えると、ゴム中で分散性良くフィブリル化
し、ポリマー自体のゴムに対する高接着性とフィブリル
化による比表面積が極端に大きいことにより、RFL処
理しなくてもゴムに対する十分な補強効果を得ることが
できる。更に本発明の繊維は、当然のこととして、それ
以外のゴム、セメント、樹脂等の補強用繊維としても用
いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大森 昭夫 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビニルアルコール系ポリマーとビニルア
    ルコール系ポリマーに非相溶なポリマーからなり、該ビ
    ニルアルコール系ポリマーとビニルアルコール系ポリマ
    ーに非相溶なポリマーの重量比が80:20〜50:5
    0であり、繊維径が40〜150μm、強度7g/d以
    上、繊維1本当たりの引張り抵抗度2Kg以上及び叩解
    性15分以下であることを特徴とする高強力且つ繊維径
    の太い易フィブリル化繊維。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の繊維から得られた平均径
    0.5〜3μmよりなるフィブリル。
  3. 【請求項3】 ビニルアルコール系ポリマーとビニルア
    ルコール系ポリマーに非相溶なポリマーを共通溶媒に溶
    解し、得られた紡糸原液を上記両ポリマーに対して固化
    能を有する固化溶媒と原液溶媒と同一の溶媒からなる固
    化浴に、湿式または乾湿式紡糸し、延伸して高強力且つ
    繊維径の太い易フィブリル化繊維を製造するに際して、
    以下の条件(1)〜(6)を満足することを特徴とする
    請求項1に記載の高強力且つ繊維径の太い易フィブリル
    化繊維の製造方法。 (1)原液が、10〜150μmの粒子径を有している
    相分離構造であること、(2)固化溶媒が有機溶媒で、
    かつ固化浴には15〜75重量%の原液溶媒が含まれて
    いること、(3)固化浴出の糸篠の単糸が200〜77
    0μmであること、(4)2倍湿延伸後の抽出滞留時間
    が1分以上であること、(5)置換浴がアルコール類、
    ケトン類、水の3成分系からなり、該アルコール類とケ
    トン類の重量比が9/1〜1/9かつ水が全体の重量比
    1〜30%からなること、(6)全延伸倍率が8倍以上
    であること、
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