JPH09268467A - ポリビニルアルコール系耐熱繊維 - Google Patents

ポリビニルアルコール系耐熱繊維

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JPH09268467A
JPH09268467A JP10403796A JP10403796A JPH09268467A JP H09268467 A JPH09268467 A JP H09268467A JP 10403796 A JP10403796 A JP 10403796A JP 10403796 A JP10403796 A JP 10403796A JP H09268467 A JPH09268467 A JP H09268467A
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JP
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fiber
resistant
heat
polymer
sea
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JP10403796A
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Ichiro Hanamori
一郎 花森
Eiichi Sasagawa
栄一 笹川
Kiyoto Otsuka
清人 大塚
Hisashi Nakahara
寿 中原
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Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【解決手段】ポリビニルアルコール系ポリマー(A) と水
不溶性ポリマー(B) の二つの部分からなる繊維で、その
断面は(A) が島(B) が海または (A)が海(B) が島である
構造を有し、(A)/(B) の重量比が95/5〜20/80 である該
繊維に、無機酸或いはその塩を加え加熱脱水処理せしめ
てなる融点 500℃以上の耐熱・耐炎繊維である。更に、
前述で得られた海島構造を有する繊維を叩解処理した
後、無機酸或いはその塩を加え加熱脱水処理せしめてな
る融点 500℃以上、平均繊維直径5μm 以下の耐熱・耐
炎繊維も本発明に含まれている。ここで、水不溶性ポリ
マー(B) としてはポリアクリルニトリル系ポリマーが好
ましい。 【効果】耐熱耐炎繊維は、コンクリート、プラスチッ
ク、ゴム等のマトリックスに対する補強効果の温度依存
性が極めて少ない補強材であり、また極細繊維径の耐熱
耐炎繊維は高温特性に優れたブレーキ用摩擦材、ガスケ
ット、電池セパレーター等に使用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐熱・耐炎繊維また
は直径5μm 以下の極細の耐熱・耐炎繊維に関するもの
である。更に詳しく述べると、ポリビニルアルコール系
ポリマーと水不溶性ポリマーの二つの部分からなる複合
繊維或いはその繊維をフィブリル化し、加熱・脱水して
得られたもので、耐熱・耐炎性に優れコンクリート補強
材またはブレーキ材、ガスケット、フィルター等に使用
できる。
【0002】
【従来の技術】有機繊維を焼結炭素化して高耐熱性の繊
維を生産する従来技術としては、加熱によって共役2重
結合構造が形成され、実質的な融点を示さなくなる性質
を付与し易い、ポリアクリルニトリル、セルロースおよ
びフェノール等の有機繊維が知られている。特にポリア
クリルニトリルは、耐炎化処理後に炭化処理及び黒鉛化
処理をすることにより、耐熱性と共に強度及び弾性率が
優れているため最も広く使用されている。しかしポリア
クリルニトリル繊維に代表される耐熱・耐炎繊維は、湿
式紡糸により生成された繊維を 200〜300 ℃の空気中で
酸化して、線状分子間に網目状結合を生成させた後、10
00〜1500℃の不活性ガス中で炭化し、更に2500〜2800℃
の不活性ガス中で処理し黒鉛化して得られている。
【0003】この様な過酷な製造条件が必要とされるた
め、著しくコストが嵩むことが避けられず、一般的な用
途へ適用が制約されている。また、前記のブレーキ材、
ガスケット、フィルター等の用途に使用するためには、
その繊維径を極細化する必要がある。このためには紡糸
で生成される繊維径を数μm 以内の極めて細いものとす
る必要があり、生産技術的には殆ど不可能な領域であ
る。
【0004】一方、ポリビニルアルコール系繊維を出発
原料とする耐熱・耐炎繊維に関する研究は、特公昭 54-
3973号及び特公昭 63-16485 号公報「活性炭繊維の製造
方法」で開示されている。これらの内容は、ポリビニル
アルコールに対してリン酸アンモニウムを3〜15%添加
した紡糸原液を乾式紡糸して得た、ポリビニルアルコー
ル繊維を重量収率が65〜85%になる迄空気中等の酸化性
ガス雰囲気中で脱水処理するか、或いは無機酸類または
そのアンモニウム塩を2〜20%付着させた後、150〜400
℃の空気中等の酸化性ガス雰囲気中で脱水処理して、
ポリビニルアルコール繊維に耐熱性を付与する方法であ
る。
【0005】耐熱・耐炎性を有する繊維を得るためには
PVAを脱水し、分子構造中に共役2重結合を形成させる
必要があるが、これらの従来技術における最大の難点
は、この工程は発熱反応であるため、繊維が高密度に充
填される状態或いは高温で処理すると急激に繊維組織の
内部に反応熱が蓄積されて、ポリビニルアルコールの発
火温度以上に達して燃焼することがしばしばある。
【0006】またこの反応には空気中の酸素ガスによる
酸化反応が含まれているため、比表面積が著しく大きい
極細繊維の場合には反応速度が急激に高まり易く、内部
の温度上昇が加速されるため生産条件の維持が困難とな
る。これを回避するためには生産効率を犠牲にして、低
温長時間の処理或いは少量づつ処理する方法をとらざる
を得ないのが現状である。またブレーキ材、ガスケッ
ト、フィルター等の用途に使用するため最初から極細の
繊維を生成させるためには、紡糸工程で極細繊維を紡糸
する必要があり、現状では生産技術的には殆ど不可能な
領域である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前述の様な高
耐熱・耐炎性繊維の生産技術上の問題点にかんがみ、PV
A 系及びポリアクリルニトリル系等の水不溶性ポリマー
から、技術的に容易で且つ生産性も優れた、高品質の高
耐熱・耐炎性繊維を開発すると共に、更に極細で同等の
品質を有するフィブリルを開発して、コンクリート補強
材またはブレーキ材、ガスケット、フィルター等の素材
に提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は水に対する
親和性が相反する、ポリビニルアルコール系及びポリア
クリルニトリル系等の水不溶性ポリマーの複合構造繊維
から高耐熱・耐炎性繊維を得る方法及び、その繊維の物
性について研究した。その結果、これらの2種類のポリ
マーより形成された断面が海島構造を有する繊維は、単
一構造の繊維よりも相当低温で耐熱・耐炎化することが
可能となるため、従来技術の様に処理中に燃焼する危険
が防止できると共に、品質的にも優れていることを見出
した。更に、海・島状繊維は叩解によるフィブリル化が
容易であるから、繊維径が5μm以下の極細の耐熱・耐
炎繊維が容易に得られることを知り、これに基づいて本
発明に到達した。
【0009】すなわち、ポリビニルアルコール系ポリマ
ー(A) と水不溶性ポリマー(B) の二つの部分からなる繊
維で、その断面は(A) が島(B) が海または (A)が海(B)
が島である構造を有し、(A)/(B) の重量比が95/5〜20/8
0 である該繊維に、無機酸或いはその塩を加え加熱脱水
処理せしめてなる融点 500℃以上の耐熱・耐炎繊維であ
る。
【0010】前述で得られた海島構造を有する繊維を叩
解処理した後、無機酸或いはその塩を加え加熱脱水処理
せしめてなる融点 500℃以上、平均繊維直径5μm 以下
の耐熱・耐炎繊維も本発明に含まれている。ここで、水
不溶性ポリマー(B) としてはポリアクリルニトリル系ポ
リマーが好ましい。
【0011】本発明の耐熱・耐炎繊維はポリビニルアル
コール系ポリマー(以下、PVA 系ポリマーという)と、
水不溶性ポリマーの二つの部分から構成されている複合
繊維である。ここで、PVA 系ポリマーとはビニールアル
コールユニットを70モル%以上含むポリマーをいう。ビ
ニールアルコールユニット含有率は、耐熱耐炎化処理時
の非溶融性を高めるため90モル%以上がより好ましい。
ビニールアルコールユニットの他、エチレン、イタコン
酸、ビニルアミン、アクリルアミド、ピバリン酸ビニル
無水マレイン酸、スルホン酸含有ビニル化合物等のモノ
マーが30モル%以下、好ましくは10モル%以下共重合さ
れているものも包含されている。
【0012】また、ケン化度は80モル%以上が好まし
く、更に耐熱耐炎化処理時の非溶融性を高めるため90モ
ル%以上がより好ましく、更に好ましくは98モル%以上
である。重合度については特に限定がないが高強度のフ
ィブリルを得るためには 500以上が好ましく、1500以上
がより好ましい。
【0013】水不溶性ポリマーには水中に溶解しない広
範囲のポリマーが含まれるが、例えば、ポリアクリルニ
トリル系ポリマー(以下、PAN 系ポリマーという)或い
はセルローズ系ポリマーが好ましく、ポリアクリルニト
リル系ポリマーは低温での脱水反応が可能となるためよ
り好ましい。
【0014】ここで、PAN 系ポリマーとはアクリルニト
リルユニットを70モル%以上含有したポリマーを言い、
その他、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレー
ト、メチルメタクリレート等のアクリル酸エステル類、
酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビ
ニル等のビニル化合物類、アクリル酸、メタクリル酸、
無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸類、スルホン酸含
有ビニル化合物等のモノマーが30モル%未満共重合され
ていてもよい。また、紡糸原液調製用の溶媒への溶解性
を高めるためには、PAN ホモポリマーよりもビニルモノ
マーを 0.5〜10モル%共重合させたポリマーが好まし
く、2〜8モル%がより好ましい。紡糸原液への溶解性
はフィブリル化する場合の繊度に影響を及ぼす重要な要
因である。
【0015】セルローズ系ポリマーとしてはセルローズ
ジアセテート、セルローズトリアセテート等の酢酸セル
ローズ類、メチルセルローズ、エチルセルローズの他低
置換度のヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチ
ルセルローズ等が使用可能であるが、これらの中酢酸セ
ルローズが好ましい。
【0016】本発明の耐熱・耐炎化繊維は PVA系ポリマ
ー(A) と、水不溶性ポリマー(B) の二つの部分から構成
されている複合繊維で、その断面は(A) が島(B) が海ま
たは(A) が海(B) が島である構造を有する必要がある。
その詳細な理由は明らかでないが、繊維に耐熱・耐炎性
を付与するために繊維の分子内脱水反応を起こさせるた
め必要な反応温度は、この様な構造を有する繊維の場合
にはPVA 繊維単独の脱水反応温度よりも低温側にシフト
し、100 °〜200 ℃の範囲で脱水反応が可能となるため
である。従って、繊維のこの複合構造は本発明の最も重
要な要件の一つである。ここでこの海島構造は、(A) が
島(B) が海である領域と(A) が海(B) が島である領域が
入り混じっていてもよく、また島の中に海があり更にそ
の海に島が含まれていてもよく、或いは明瞭な島と海を
形成せず、(A) の領域と(B) の領域が不規則に入り混じ
った構造も含まれている。
【0017】更に、本発明の PVA系ポリマー(A) と、水
不溶性ポリマー(B) の二つの部分から構成されている複
合繊維における(A)/(B) の重量比は95/5〜20/80 である
必要がある。紡糸工程でこの様な海島構造の複合繊維を
形成させ要すれば更に、叩解工程で充分フィブリル化さ
れた繊維を得るためには、(A) と(B) の組成が適当な比
率であること及び、耐熱・耐炎性を付与するための加熱
脱水工程における処理温度の、低温側へのシフト性を考
慮して設定されたものである。尚、(A)/(B) の重量比は
80/20〜40/60 の範囲が好ましい。
【0018】紡糸工程で得られた海島構造を有する繊維
は要すれば、ディスクファイナー、ナイヤガラビーター
等で叩解処理をすることにより、フィブリル化した極細
繊維を得ることができる。
【0019】本発明の海島構造を有する繊維は更に無機
酸或いはその塩を加え、加熱脱水処理をして耐熱・耐炎
性を付与する必要がある。ここで使用される無機酸とし
ては硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、メタリン酸、ポリリン
酸等の無機酸、或いは塩化亜鉛 (ZnCl2)、塩化アルミニ
ウム (AlCl3)、塩化チタン (TiO2) 等のルイス酸も有効
である。また、これらの塩としては無機酸のソーダ、ア
ンモニウム等の塩、或いは硫酸水素化合物 (NaHSO4、NH
4HSO4)及びリン酸水素化合物〔NaH2PO4 、NH4H2PO4、(N
H4)2PO4 〕も使用可能である。
【0020】これらの化合物は加熱脱水工程において脱
水剤として使用されるもので、繊維に対し3〜15重量%
(以下、重量%は単に%と表示する)トウに練込むかま
たは付着させて使用される。更に加熱脱水処理により分
子内の脱水及びこれに伴って共役2重結合が高密度で形
成され、融点が 500℃以上の耐熱性及び耐炎性を有する
繊維または、耐熱性及び耐炎性を有する平均直径5μm
以下の極細繊維が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】PVA 系ポリマーと水不溶性ポリマ
ーである PAN系ポリマーまたは酢酸セルローズ等からな
り、その断面が海島構造を有する本発明の繊維は、次の
様にして得ることができる。先ずこれらのポリマーを両
成分に共通の溶媒に溶解した紡糸原液を調製する。共通
の溶媒としてはジメチルスルホキシド (以下、DMSOとい
う) 、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等
の極性溶媒やロダン塩、塩化亜鉛等の膨潤性塩類含有水
溶液、硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸が挙げられる。特に低
温溶解性、ポリマーの低分解性等の点から DMSO が好ま
しい。原液中のポリマーの濃度は10〜30%で、また原液
温度は50〜120 ℃の範囲が適当である。
【0022】前述の様にして得られた紡糸原液は、ポリ
マー分子が均一に分散した透明な溶液ではなく、直径1
〜20μm の粒子が液中に分散した相構造となっている必
要がある。紡糸原液の相構造は例えば、スライド上に原
液を 100μm の厚さに塗布し室温でメタノールによって
凝固させ、得られたフィルムを 500倍の光学顕微鏡で観
察した場合に識別することができる。
【0023】原液中では PVA系ポリマーと水不溶性ポリ
マー (例えば、PAN 系ポリマー) が相分離して存在し、
一方の成分が分散質成分 (島成分) となり、他方の成分
が分散媒成分 (海成分) となっている。本発明において
は PVA系ポリマーが分散媒成分、他の成分例えば PAN系
ポリマーが分散質成分となっている場合が強度や弾性率
の点で好ましく、更にフィブリル化し易い点でも好まし
い。
【0024】直径1〜20μm の粒子が液中に分散した相
構造とは、前述の様にして得られたフィルムを光学顕微
鏡で観察した場合、判別できる大多数の粒子がその範囲
内の直径を有することを意味している。この方法で観察
して大多数の粒子の直径が20μm 以上になると原液の安
定性及び紡糸性が低下し、また大多数の粒子が1μm未
満、すなわち、直径1μm 以上の粒子が殆ど観察できな
い場合は相構造が微細で、得られた繊維の叩解性が不良
となる。
【0025】相構造は粒子径が2〜10μm の範囲に分布
している場合がより好ましく、紡糸浴中でポリマーが固
化して繊維が生成する場合、原液中に存在した相構造が
核となって生成するため、フィブリル化し易い構造を有
する繊維が形成されるためには相構造の状態が重要であ
る。
【0026】紡糸原液の相構造を決定する因子は両ポリ
マーの相溶性及び組成比、原液のポリマー濃度、溶媒の
種類、原液の温度等である。両ポリマーの相溶性が悪く
なる(相溶性が小さくなる)に従って粒子径が大きくな
り、また組成比は両ポリマーの混合重量比が50/50 に近
づくに従って粒子径が大きくなる傾向がある。原液中の
ポリマー濃度が高くなるに従って粒子径は小さくなる。
また紡糸原液温度は高くなる程粒子径は大きくなる傾向
を示す、通常は前記の様に50〜120 ℃の範囲が適してい
る。従って、これらの条件を適当に組み合わせて紡糸原
液の粒子径が所望の大きさなる様に調整される。
【0027】この様にして得られた紡糸原液から繊維を
形成させるためには、紡糸ノズルを通して固化浴中に押
し出される湿式紡糸法、或いは乾湿式紡糸法が適用され
る。紡糸ノズルを固化浴に直接接触させる湿式紡糸法
は、ノズル孔ピッチを狭くしても繊維同士が膠着せずに
紡糸できるため、多孔ノズルを用いた紡糸に適してい
る。一方固化浴と紡糸ノズルの間にエアーギャップがあ
る乾湿式紡糸法は、エアーギャップ部分での繊維の伸び
が大きいため高速紡糸に適している。本発明では目的や
用途に応じて湿式法或いは乾湿式法が適宜選択される。
【0028】紡糸原液の粘度は湿式紡糸の場合は10〜40
0 ポイズ、乾湿式紡糸の場合は50〜2000ポイズの範囲が
好ましい。これは溶融紡糸の粘度よりかなり低い値であ
る。このためフィブリルの断面形状が非円形となり、鋭
利な側面を有するフィブリルが得易い傾向がある。鋭利
な断面形状を有するフィブリルはゴムやセメント等の補
強に用いられた場合それらの素材との接着力が高まり、
またワイパーに用いられた場合には拭き取り性に優れて
いるため好ましい結果が得られる。
【0029】本発明において固化浴の組成は固化溶媒と
しての有機溶媒と紡糸原液に使用された溶媒の混合物が
使用される。固化溶媒としては、 PVA系ポリマー及びPA
N 系ボリマー等のいずれに対しても凝固能を有する有機
溶媒が用いられ、例えば、メタノール、エタノール等の
アルコール類またはアセトン、メチルエチルケトン等の
ケトン類を使用することができる。これらの有機溶媒中
メタノールが最も好ましく、従って、凝固浴の組成はメ
タノールと DMSO の混合物が最も好ましい。
【0030】固化浴中の固化溶媒に対する原液溶媒の比
率が増加すると凝固能が低下し、また原液溶媒の比率低
下すると凝固能が高くなる。従って、固化浴の固化溶媒
/原液溶媒の比率を調節することによって、繊維の凝固
速度を適度に制御することが可能であり、ひいては生成
した繊維のフィブリル化性能を向上させることができ
る。固化浴の固化溶媒/原液溶媒の比率は25/75 〜75/2
5 の範囲が好ましい。また、固化浴の温度は0〜30℃の
範囲が適している。
【0031】凝固浴中で生成されたゲル状糸条は湿延
伸、原液溶媒の抽出洗浄、油剤付与、乾燥等の工程を経
た後、乾熱延伸工程に送られる。この工程は耐熱・耐炎
繊維を形成させるために重要であり、延伸倍率が低いと
得られた繊維の機械的性質が低下し、またフィブリル化
性が優れた繊維が得られない。1.5 〜4.5 倍の湿延伸も
含めた全延伸倍率は10倍以上が好ましく、12倍以上がよ
り好ましく、15倍以上が更に好ましい。また、乾熱延伸
温度は 210〜250 ℃、処理時間は5〜90秒の範囲が適当
である。
【0032】前述の様にして得られた断面が海島構造を
有する繊維は、化学的膨潤力或いは機械的応力またはそ
の両者の併用によりフィブリル化させることができる。
例えば、ディスクリファイナーまたはナイヤガラビータ
ー等で処理することにより、容易にフィブリル化され
る。
【0033】前述の繊維またはフィブリル化した繊維は
熱処理により、分子鎖中に高密度の共役2重結合構造を
形成されることにより、高度な耐熱性及び耐炎性が付与
される。熱処理温度はPVA 及びPAN 系ポリマーの海島構
造を有する繊維の場合、120℃、1時間程度の熱処理に
よって融点が 500℃以上であり、また500 ℃迄昇温して
も外観の変化が認められない耐熱・耐炎繊維が得られ
る。また、フィブリル化した繊維を使用すれば、平均繊
維径が5μm 以下の極細化した耐熱・耐炎繊維が得られ
る。
【0034】しかもこの耐熱・耐炎性を付与するための
熱処理温度は、単独のPVA 繊維に耐熱性を付与するため
の不融化処理で必要とされる温度よりも、かなり低温で
その目的が達成される点が注目される。これは工業的規
模で生産する場合極めて重要な性質であり、本発明の耐
熱・耐炎繊維の最も大きな特徴の一つである。
【0035】本発明の耐熱・耐炎化繊維はコンクリー
ト、プラスチック、ゴム等のマトリックス補強材、ブレ
ーキ材、ガスケット等を生産する場合における予備成型
性と耐熱性を兼備する補強用繊維、またはフィルターと
して使用される。また、フィブリル化した極細の耐熱・
耐炎化繊維は摩擦材、耐熱・ガスケット、フィルター用
資材として使用可能である。例えば、摩擦材としては炭
カル、ガラス繊維、ロックウール、フェノール等の組成
物中に混合分散させ、その成型加工における加熱処理工
程を利用して耐熱・耐炎化することも可能であり、生産
性の面からも好ましい。
【0036】本発明の耐熱・耐炎繊維は更に完全炭化、
耐高熱(黒鉛)繊維、或いは 800〜1200℃で賦活して、
各種のガス、液中溶解物の吸着性能を有する活性炭繊
維、イオン交換樹脂としても使用することができる。
【0037】
【実施例】以下実施例を挙げて、本発明を更に具体的に
説明する。
【0038】(実施例1)重合度 1750 、ケン化度 99.
9 モル%の PVAとメチルメタクリレートを5モル%共重
合した PANを表1に示す重量比となる様に計量、ポリマ
ー総濃度が20%となる様に DMSO を添加し、80℃で10時
間窒素気流下攪拌溶解した。この溶液を紡糸原液とし、
孔数 1000 、孔径 0.06 mmφの紡糸口金を通じて DMSO/
メタノールの重量比 75/25で、温度 10 ℃の固化浴中に
湿式紡糸し、3倍の湿延伸を行い糸中の DMSO をメタノ
ールで完全抽出後、225 ℃で全延伸倍率 13 倍の乾延伸
を行い 1200 デニール/1000fの PVA/PANブレンド繊維を
得た。
【0039】次いで、得られた繊維を 10 %硫酸水素ナ
トリウム液に浸漬、液ピックアップ100 %で搾液し、10
0 ℃の熱風乾燥機で30分処理して乾燥した。この処理糸
を表1の条件で乾熱処理した後、5 時間の流水洗を実施
し、60℃で24時間乾燥した。得られた糸について、窒素
気流中の示差熱分析装置 (DSC)による融点測定及び、Z
方向に 80 t/m の撚をかけた後、その強度を JIS -L101
3 により測定した。
【0040】その結果を表1に示す。尚、(A) はPVA
を、(B) はポリアクリルニトリルを示す。
【0041】尚、ここで融点は下記の様な方法で測定し
た。耐熱・耐炎化繊維をソックスレー抽出器に入れ、水
を抽出剤として8時間以上処理し、付着している無機酸
またはその塩を完全除去し、50℃で真空乾燥により絶乾
する。これをサンプルとして窒素気流下で示差熱分析装
置(DSC) を用い、5℃/min の昇温速度条件で室温〜50
0 ℃まで測定し、吸熱ピークが存在する温度を測定す
る。
【0042】この温度範囲に吸熱ピークが存在した場合
は、別途に微量融点測定装置 (柳本製作所製、MP-S3 型
等) を用い、プレート上に同上サンプルを載せて顕微鏡
で観察しながら、約5℃/minの速度で昇温、DSC で生じ
た温度ピーク付近で溶融するか否かを検証する。この両
法で評価し、DSC での吸熱ピークの存在と微量融点測定
装置で、そのピークを示した温度が溶融点であることを
確認できた場合、この温度を融点とした。
【0043】(実施例2)実施例1のNo4の原糸をギロ
チンカッターを用いて、長さ3mmにカット後、カット繊
維:水の浴比1:20として熊谷理器製の KRK型ディスク
リファイナーを用い、ディスク間隔 0.2 mm 、回転速度
2000 rpm の条件で15分間水中叩解した。この叩解水溶
液を遠心脱水した後、繊維膠着防止のためブリアンNS-1
70K-2(松本油脂製) を0.5 % owf付着後、80℃で1時間
乾燥させて平均繊維径1μm のパルプを得た。
【0044】このパルプを10%硫酸水素ナトリウム液に
浸漬、液ピックアップ100 %で搾液し、100 ℃の熱風乾
燥機で30分処理して乾燥した後、120 ℃×1時間の2段
処理して、実質的に融点がない本発明の耐熱繊維パルプ
を得た。この耐熱パルプ60重量部、フェノール樹脂粉末
(群栄化学工業製 PGA-2473)40重量部、ロックウール10
0 重量部および炭酸カルシウム400 重量部を計量添加し
た配合物を市販のジューサーミキサーで10分間攪拌混合
した。この混合物は、本発明の微細な繊維径のパルプが
フェノール樹脂および炭酸カルシウム粉末を捕捉してい
るため、振動等の外力が加わっても、繊維/粉末の分離
が殆どない良好な粉体保持性を有していた。
【0045】この混合物を金型に入れ、室温で予備プレ
ス加工(実圧25kg/cm2・サンプル)し、金型より成型物
を取り出し、180 ℃×5Hrs のアフターキュアーを実施
して成型物を製造した。この成型物を電気炉中で700 ℃
×30分間処理しても、何らの外観変化がない優れた耐熱
性を有していた。
【0046】(比較例)実施例2の耐熱化処理しないパル
プを用いて、実施例2と同様な方法で成型物を得、電気
炉中で700 ℃×30分間処理したところ、表面にタール状
の付着物が観察される異常が認められた。尚、実施例2
の耐熱化処理をしないパルプの DSCによる融点測定値は
255℃であり、また微量融点測定装置でそれが融点であ
ることを確認した。
【0047】
【発明の効果】本発明の耐熱・耐炎繊維はPVA 系及びポ
リアクリルニトリル系等の水不溶性ポリマーの海島構造
を有する繊維を脱水熱処理して得られたもので、融点 5
00℃以上の耐熱・耐炎性を有し、フィブリル化して得ら
れた繊維径5μm 以下の極細繊維も含まれている。この
様な断面構造を有する繊維を使用したため、比較的に低
温における加熱脱水処理により得られた耐熱・耐炎繊維
である点に特徴がある。本発明の耐熱耐炎繊維は、コン
クリート、プラスチック、ゴム等のマトリックスに対す
る補強効果の温度依存性が極めて少ない補強材であり、
また極細繊維径の耐熱耐炎繊維は高温特性に優れたブレ
ーキ用摩擦材、ガスケット、電池セパレーター等に使用
できる。
【表1】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中原 寿 岡山県岡山市海岸通1丁目2番1号 株式 会社クラレ内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリビニルアルコール系ポリマー(A) と
    水不溶性ポリマー(B) の二つの部分からなる繊維で、そ
    の断面は(A) が島(B) が海または (A)が海(B) が島であ
    る構造を有し、(A)/(B) の重量比が95/5〜20/80 である
    該繊維に、無機酸或いはその塩を加え加熱脱水処理せし
    めてなる融点 500℃以上の耐熱・耐炎繊維。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコール系ポリマー(A) と
    水不溶性ポリマー(B) の二つの部分からなる繊維で、そ
    の断面は(A) が島(B) が海または (A)が海(B) が島であ
    る構造を有し、(A)/(B) の重量比は95/5〜20/80 である
    該繊維を叩解処理した後、無機酸或いはその塩を加え加
    熱脱水処理せしめてなる融点 500℃以上、平均繊維直径
    5μm 以下の耐熱・耐炎繊維。
  3. 【請求項3】 水不溶性ポリマー(B) がポリアクリルニ
    トリル系ポリマーである請求項1または請求項2記載の
    耐熱・耐炎繊維。
JP10403796A 1996-03-29 1996-03-29 ポリビニルアルコール系耐熱繊維 Pending JPH09268467A (ja)

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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012035473A (ja) * 2010-08-05 2012-02-23 Akebono Brake Ind Co Ltd 耐熱性有機材料、その製造方法および該耐熱性有機材料の用途
CN111704417A (zh) * 2020-07-21 2020-09-25 潘辉 一种超高强混凝土的制备方法

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