JP2012035473A - 耐熱性有機材料、その製造方法および該耐熱性有機材料の用途 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 TG−DTA分析機器により測定される、質量残存率が10質量%減量した際の温度が500℃以下である有機材料の表面にリン酸塩被覆層を設けたことを特徴とする耐熱性有機材料である。
【選択図】 なし
Description
前記繊維補強材の分野においては、有機繊維の繊維補強材としてアラミド繊維が主に使用されている。アラミド繊維は有機繊維の中でも耐熱性が高いが、近年の自動車の高速化に伴い、アラミド繊維にかかる負荷が大きくなり、500℃以上ではその補強効果は充分に満足するものではなかった。
また、上記ゴムダスト金属複合体を作製するためには、シータコンポーザ等の粒子複合機による複合化処理が必要であり、表面改質処理として簡易的な方法ではなかった。
(1) TG−DTA分析機器により測定される、質量残存率が10質量%減量した際の温度が500℃以下である有機材料の表面にリン酸塩被覆層を設けたことを特徴とする耐熱性有機材料、
(2) 有機材料が、有機繊維、ゴムダストまたはカシューダトである上記(1)項に記載の耐熱性有機材料、
(3) リン酸塩を構成する金属が、周期表(長周期型)1族、2族、12族または13族に属する金属である上記(1)または(2)項に記載の耐熱性有機材料、
(4) TG−DTA分析機器により測定される、質量残存率が10質量%減量した際の温度が500℃以下である有機材料を、リン酸塩含有水性溶液中に浸漬処理したのち、乾燥処理することを特徴とする上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の耐熱性有機材料の製造方法、
(5)リン酸塩含有水性溶液中のリン酸塩濃度が、0.3〜1.3質量%である上記(4)項に記載の製造方法、
(6) 上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の耐熱性有機材料を含むことを特徴とするブレーキ摩擦材、および
(7) 上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の耐熱性有機材料を含むことを特徴とする摺動部品、
を提供するものである。
[耐熱性有機材料]
本発明の耐熱性有機材料は、TG−DTA分析機器により測定される、質量残存率が10質量%減量した際の温度が500℃以下である有機材料の表面にリン酸塩被覆層を設けたことを特徴とする。
本発明においては、原料の有機材料として、TG−DTA分析機器(示差熱−熱重量分析機器)により測定される質量残存率が10質量%減量した際の温度が500℃以下である有機材料(以下、低耐熱性有機材料と称することがある。)が用いられる。
本発明の耐熱性有機材料は、前述した低耐熱性有機材料の表面に、リン酸塩の被覆層を設けたものであって、該被覆層の形成に用いるリン酸塩としては、それを構成する金属が、周期表(長周期型)1族、2族、12族または13族に属する金属であるものが好ましい。具体的には1族に属するNa、K;2族に属するMg;12族に属するZn;13族に属するAl;などを好ましく挙げることができる。耐熱性有機材料の表面処理に用いるリン酸塩としては、例えばリン酸アルミニウム類、リン酸マグネシウム類、リン酸カルシウム類、リン酸カリウム類、リン酸ナトリウム類およびリン酸亜鉛類の中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。これらのリン酸塩は、水溶性やpHなどの観点から、リン酸水素塩が好ましい。
本発明はまた、耐熱性有機材料の製造方法をも提供する。
本発明の耐熱性有機材料の製造方法は、TG−DTA分析機器により測定される、質量残存率が10質量%減量した際の温度が500℃以下である有機材料を、リン酸塩含有水性溶液中に浸漬処理したのち、乾燥処理することを特徴とする。
本発明のブレーキ用摩擦材は、前述した本発明の耐熱性有機材料を含むことを特徴とする。
本発明のブレーキ用摩擦材は、バインダー樹脂、固体潤滑材、繊維状補強材、摩擦調整材およびその他フィラーなどを含む摩擦材形成用材料を用い、常法に従って成形することにより、得ることができる。
また、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化カルシウムなどを含有させることができる。
なお、各例で得られた未処理有機材料及び処理有機材料の耐熱性は、下記の方法に従って評価した。
・分析装置: Mac Science社製 示差−熱重量分析装置「TG−DTA(2000S)」
・条件: 室温〜800℃、空気中10℃/minで昇温
上記の分析装置を用い、上記条件で耐熱性試験を行い、300〜600℃の温度範囲における質量残存率を測定した。
リン酸二水素アルミニウム[純正化学社製、試薬一級、形状:粉末]を、エタノールと蒸留水との質量比が1:10になるように混合した水性溶液2.5Lに溶解させて、リン酸アルミニウム水性溶液(リン酸二水素アルミニウム濃度:0.5質量%、水性溶液温度:50℃)を調製し、東レ・デュポン社製アラミド繊維10gを上記水性溶液2.5L中に浸漬し、マグネットスターラーで5分間攪拌後、該水性溶液からアラミド繊維を取り出し、110℃にて1時間乾燥させた。その後、200℃にて5分間熱処理することにより、繊維表面にリン酸アルミニウムで被覆された(被覆層の厚さ約20nm)処理有機材料である耐熱性アラミド繊維を得た。
表1に、リン酸塩の種類及びリン酸塩水性溶液の濃度を示すと共に、表2に各温度における質量残存率を示す。また、図1に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
実施例1において、リン酸アルミニウム水性溶液のリン酸二水素アルミニウム濃度を1.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、耐熱性アラミド繊維を得た。
表1に、リン酸塩の種類及びリン酸塩水性溶液の濃度を示すと共に、表2に各温度における質量残存率を示す。また、図1に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
実施例1において、リン酸二水素アルミニウムをリン酸二水素マグネシウム[純正化学社製、試薬一級]に変更した以外は、実施例1と同様な操作を行い、耐熱性アラミド繊維を得た。
表1に、リン酸塩の種類及びリン酸塩水性溶液の濃度を示すと共に、表2に各温度における質量残存率を示す。また、図1に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
実施例1で原料として用いたアラミド繊維を、比較例1の未処理アラミド繊維とした。
表2に各温度における質量残存率を示す。また、図1に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
リン酸二水素アルミニウム[純正化学社製、試薬一級、形状:粉末]を、エタノールと蒸留水との質量比が1:10になるように混合した水性溶液400gに溶解させて、リン酸アルミニウム水性溶液(リン酸二水素アルミニウム濃度:0.5質量%、水性溶液温度:50℃)を調製し、合成ゴムダスト10gを上記水性溶液400g中に浸漬し、マグネットスターラーで60分間攪拌後、吸引ろ過して表面処理したゴムダストを取り出し、110℃にて24時間乾燥させることにより、リン酸アルミニウムで被覆された(被覆層の厚さ約20nm)処理有機材料である耐熱性ゴムダストを得た。
表3に、リン酸塩の種類及びリン酸塩水性溶液の濃度を示すと共に、表4に各温度における質量残存率を示す。また、図2に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
実施例4において、リン酸アルミニウム水性溶液のリン酸二水素アルミニウム濃度を1.0質量%に変更した以外は、実施例4と同様な操作を行い、耐熱性ゴムダストを得た。
表3に、リン酸塩の種類及びリン酸塩水性溶液の濃度を示すと共に、表4に各温度における質量残存率を示す。また、図2に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
実施例4において、リン酸二水素アルミニウムをリン酸二水素マグネシウム[純正化学社製、試薬一級]に変更した以外は、実施例4と同様な操作を行い、耐熱性ゴムダストを得た。
表3に、リン酸塩の種類及びリン酸塩水性溶液の濃度を示すと共に、表4に各温度における質量残存率を示す。また、図2に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
実施例4で原料として用いたゴムダストを、比較例2の未処理ゴムダストとした。
表4に各温度における質量残存率を示す。また、図2に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
リン酸二水素アルミニウム[純正化学社製、試薬一級、形状:粉末]を、エタノールと蒸留水との質量比が1:10になるように混合した水性溶液400gに溶解させて、リン酸アルミニウム水性溶液(リン酸二水素アルミニウム濃度:0.5質量%、水性溶液温度:50℃)を調製し、フルフラール変性カシューダスト10gを上記水性溶液400g中に浸漬し、マグネットスターラーで60分間攪拌後、吸引ろ過して表面処理したカシューダストを取り出し、110℃にて24時間乾燥させることにより、リン酸アルミニウムで被覆された(被覆層の厚さ約20nm)処理有機材料である耐熱性カシューダストを得た。
表5に、リン酸塩の種類及びリン酸塩水性溶液の濃度を示すと共に、表6に各温度における質量残存率を示す。また、図3に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
実施例7において、リン酸アルミニウム水性溶液のリン酸二水素アルミニウム濃度を1.0質量%に変更した以外は、実施例7と同様な操作を行い、耐熱性カシューダストを得た。
表5に、リン酸塩の種類及びリン酸塩水性溶液の濃度を示すと共に、表6に各温度における質量残存率を示す。また、図3に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
実施例7において、リン酸二水素アルミニウムをリン酸二水素マグネシウム[純正化学社製、試薬一級]に変更した以外は、実施例7と同様な操作を行い、耐熱性カシューダストを得た。
表5に、リン酸塩の種類及びリン酸塩水性溶液の濃度を示すと共に、表6に各温度における質量残存率を示す。また、図3に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
実施例7で原料として用いたフルフラール変性カシューダストを、比較例3の未処理カシューダストとした。
表5に各温度における質量残存率を示す。また、図3に、温度と質量残存率の関係をグラフで示す。
また、比較例3は、600℃にて質量残存率が0.0質量%になるが、実施例7〜9は、600℃で質量残存率が4.9〜5.2質量%であり、リン酸塩被覆による酸素侵入抑制効果が確認できた。
表7〜表9に示す配合組成に従って、各成分をミキサーにより混合することにより、各摩擦材形成用材料を調製した。
この各摩擦材形成用材料を、それぞれ予備成形型に投入し、常温、30MPaで加圧して予備成形を行った。ついで、各予備成形体と予め接着剤を塗布したプレッシャプレートを熱成形型にセットし、200℃、50MPa、600秒で加熱加圧成形を行った。熱成形後300℃、3時間加熱を行い摩擦材試料とした。
この摩擦材試料について、表10に示すJASO C403に準拠した試験条件で摩耗試験を行い、摩擦材摩耗量およびロータ摩耗量を測定した。結果を表11に示す。
摩擦材を製造し、その耐熱性を評価した結果、アラミド繊維、ゴムダストおよびカシューダスト全てにおいて、リン酸塩被膜層を設けたことにより、摩擦材摩耗量が未処理品に比べて低減した。また、ロータ摩耗量は同等であり、問題はなかった。
Claims (7)
- TG−DTA分析機器により測定される、質量残存率が10質量%減量した際の温度が500℃以下である有機材料の表面にリン酸塩被覆層を設けたことを特徴とする耐熱性有機材料。
- 有機材料が、有機繊維、ゴムダストまたはカシューダトである請求項1に記載の耐熱性有機材料。
- リン酸塩を構成する金属が、周期表(長周期型)1族、2族、12族または13族に属する金属である請求項1または2に記載の耐熱性有機材料。
- TG−DTA分析機器により測定される、質量残存率が10質量%減量した際の温度が500℃以下である有機材料を、リン酸塩含有水性溶液中に浸漬処理したのち、乾燥処理することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性有機材料の製造方法。
- リン酸塩含有水性溶液中のリン酸塩濃度が、0.3〜1.3質量%である請求項4に記載の製造方法、
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性有機材料を含むことを特徴とするブレーキ摩擦材。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性有機材料を含むことを特徴とする摺動部品。
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