JP4299551B2 - 複合繊維及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衣料用途、建寝装用途に適したアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの複合繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリロニトリル系繊維は、発色性、嵩高性、保温性、ソフトな風合に優れ、衣料分野、装寝具分野、インテリア分野、資材分野等で広く用いられている素材であり、主にステープルの形態にて展開されているが、近年、新しい風合や機能面の付与、特に消臭機能、吸保湿機能を有する新素材の開発が要求されている。このような機能性付与の技術手法の一つとしてポリマーの複合化があり、吸湿性を付与させる一例として、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの複合化が従来より知られている。
【0003】
アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとは、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド等の共通溶剤に溶解させることが可能であり、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとからなる混合溶液(例えばポリマー濃度20質量%)は、比較的安定性に優れ、相当長時間相分離しない安定な状態が保持される。
【0004】
この点を利用し、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースを共通溶剤に溶解してなる紡糸原液を繊維状に賦形され、得られた複合繊維は、涼感並びに吸湿性等の優れた性能を有するものとして知られている。しかしながら、異種ポリマーブレンド系の場合、両者の相溶性不足による繊維物性の低下や耐摩耗性が問題となり、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの場合もその混合溶液を400倍程度の光学顕微鏡にて微視的に観察すると、ポリマー相が分離しており、必ずしも相溶性のよいものではない。
【0005】
また、このような混合溶液を紡糸原液として用いて紡糸した繊維をエッチング加工したうえで500〜1000倍程度の走査型電子顕微鏡にて観察すると、紡糸原液における液滴状態を反映した繊維構造をとっていることが確認できる。このようなアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースの実質的な相溶性の低さは、繊維物性に大きく影響し、繊維強度や伸度等の基本物性を低下させるだけでなく、機械的抵抗、例えば擦過等によりフィブリル化し易くなり、耐摩耗性能に劣り、この複合繊維を用いた織編物等の布帛のフィブリル化した部分が外観上白っぽくなる傾向にあり、製品用途によっては実用に供し難いものとなる。
【0006】
かかる技術背景にあって、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースの双方に親和性のある二つのセグメントを有するブロックコポリマーをアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースを含む紡糸原液に添加することにより両ポリマーの相溶性を高め、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの複合繊維の機械物性を改善する試みがなされている(特許文献1参照)。しかし、このブロックコポリマーの添加による方法は、紡糸原液中の液滴サイズを微細安定化し、繊維の強度、伸度等の機械的物性を若干ながら改善する傾向にはあるが、擦過等による繊維のフィブリル化を抑制することは困難である。
【0007】
【特許文献1】
特開昭55−62953号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースからなる複合繊維の物性向上を目的に鋭意検討の結果なされたものであり、本発明の目的は、耐摩耗性の改善されたアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースを主体とする複合繊維を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(イ)アクリロニトリル系ポリマーと(ロ)酢酸セルロースの混合物を主成分とし、(ハ)酢酸セルロースに対し可塑化能力を有する可塑剤及び(ニ)水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基及びエポキシ基の群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有するポリマーセグメントAとアクリロニトリルポリマーを主とするポリマーセグメントBからなるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーを含む組成物からなることを特徴とする複合繊維、及び、(イ)アクリロニトリル系ポリマーと(ロ)酢酸セルロースの混合物を主成分とし、(ハ)酢酸セルロースに対して可塑化能力を有する可塑剤及び(ニ)水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基及びエポキシ基の群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有するポリマーセグメントAとアクリロニトリルポリマーを主とするポリマーセグメントBからなるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーと共に、共通溶剤に溶解した紡糸原液を用いて紡糸することを特徴とする複合繊維の製造方法、にある。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の複合繊維を構成する組成物は、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースの混合物を主成分とするものであり、アクリロニトリル系ポリマーには、紡糸工程での安定性、紡績工程での可紡性、糸物性等の面から、アクリロニトリルが好ましくは50質量%以上、より好ましくは85質量%以上含有されるアクリロニトリルと共重合可能なビニル系モノマーとのコポリマーが用いられる。
【0011】
アクリロニトリルと共重合可能なビニル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸或いはこれらのアルキルエステル、酢酸ビニル、アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アリルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられ、特に酢酸ビニル、アクリル酸メチルが品質、コストの面から好ましく用いられる。これらは単独で或いは2種以上組み合わされていてもよい。
【0012】
アクリロニトリル系ポリマーと共に混合物を構成する酢酸セルロースは、溶剤への溶解性、繊維物性の面から、酢化度が好ましくは45〜62%、より好ましくは52〜58%の酢酸セルロースであることが望ましい。
【0013】
アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースの混合物は、アクリロニトリル系ポリマーが50〜80質量%、酢酸セルロースが50〜20質量%の範囲の構成比で含まれる混合物であることが望ましい。酢酸セルロースの量が20質量%未満の場合は、複合繊維としての特徴であるドライ感が得られ難く、また酢酸の消臭性能、吸湿性が得られ難くなる。また酢酸セルロースの量の上限は50質量%を超えないことが紡糸性、糸物性の低下を抑制するうえで好ましい。
【0014】
また、本発明の複合繊維を構成する組成物において、前記混合物の主成分以外に成分として含まれる可塑剤は、酢酸セルロースに対し可塑化能力を有するものであり、酢酸セルロースに対し可塑化能力を有する可塑剤としては、フタル酸ジメチル、リン酸トリフェニル、ビスフェノールA、テレフタル酸ビスヒドロキシエチル、トリアセチン、ポリエチレングリコール等が挙げられ、これらは単独或いは2種以上組み合わされていてもよい。可塑剤は、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの前記比の混合物中に含まれる酢酸セルロースの量に対し0.5〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%、換言すれば前記比の混合物に対し0.1〜20質量%、より好ましくは1〜17.5質量%、含まれることが望ましい。
【0015】
本発明における可塑剤は、酢酸セルロースの延伸性を向上させるものである。通常、酢酸セルロースは、延伸性がアクリロニトリル系ポリマーに比較して極めて劣るため、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとが溶解した紡糸溶液を、例えば湿式紡糸にて製糸する場合、繊維形成中にアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースの界面での剥離或いは酢酸セルロースの破断が起こり、結果的に擦過等によりフィブリル化し易い複合繊維となるが、本発明における可塑剤は、酢酸セルロースの可塑化により延伸性を向上させて複合繊維のフィブリル化を防止する機能を果たす。組成物における可塑剤の含有量が酢酸セルロースの量に対し0.5質量%未満では、延伸性の向上効果がなく、40質量%を超えると、紡糸性が低下する。
【0016】
更にまた、本発明の複合繊維を構成する組成物において、前記混合物の主成分以外に成分として含まれるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーは、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基及びエポキシ基の中から選択される少なくとも一つの官能基を有するポリマーセグメントAとアクリロニトリルポリマーを主とするポリマーセグメントBからなるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーである。2種のセグメントよりなるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーは、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの前記比の混合物に対し1〜15質量%、より好ましくは2〜10質量%含まれることが望ましい。
【0017】
この2種のセグメントよりなるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーは、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの界面を安定化させ、この界面安定化によりアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースの接着力を高めるものであり、可塑剤と併存する場合には、より大きなフィブリル化防止効果を発揮する。ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーの含有量がアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースの混合物に対し1質量%未満では、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースの界面の安定化効果がなく、15質量%を超えると、紡糸性が低下する。
【0018】
本発明の複合繊維は、後述するフィブリル化の指標であるディスククリアランス0.05mmのディスクリファイナーにて繰り返し5回叩解処理した後の濾水度R1と叩解処理前の濾水度R0との差ΔRの値が400以下、更には100以下である。このΔR数値は、値が小さい程擦過等による繊維のフィブリル化が起こり難く、耐摩耗性が良好であり、ΔRが400を超えると、複合繊維からなる製品の耐摩耗性が不十分となり易い。
【0019】
また、本発明の複合繊維は、構成成分の酢酸セルロースに基因して、酢酸に対する消臭性能を有しており、その消臭率は後述する測定法にて95%以上である。この消臭率が95%未満では、複合繊維を繊維製品としたときの消臭能力が十分なものとは云えない。
【0020】
更に本発明の複合繊維は吸湿性を有し、その吸湿性能は、複合繊維の組成物中のアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの構成比率により任意に設定することが可能であるが、温度40℃、湿度90%RH雰囲気下における吸湿率Aaが3.0〜8.0%(天然繊維の代表である綿の公定水分率である8.5%以下)である。吸湿率Aaが3.0%未満では十分な吸湿性を得られなくなる傾向にある。また、温度20℃、湿度65%RH雰囲気下における吸湿率Abが2.0%を超え6.5%未満である。吸湿率Abが2.0%以下の場合、十分な吸湿性を得られ難くなる傾向にあり、6.5%以上の吸湿性を発現させようとする場合、セルロースアセテートの含有量を増加させる必要があり、繊維強力等の物性が低下する傾向にある。
【0021】
本発明の複合繊維を構成する組成物には、必要に応じ、耐候安定剤、抗菌剤、顔料、染料、制電剤、導電剤、防汚剤等の添加剤が更に成分としてアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースの混合物に対し30質量%を超えない範囲で加えられていてもよい。また、繊維の断面形状も、特に制限はなく、円形、空豆形、楕円形、ドックボーン、扁平等のいずれであってもよい。
【0022】
本発明の複合繊維は、(イ)アクリロニトリル系ポリマーと(ロ)酢酸セルロースを主体とし、(ハ)酢酸セルロースに対し可塑化能力を有する可塑剤又は更に(ニ)水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基及びエポキシ基の群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有するポリマーセグメントAとアクリロニトリルポリマーを主とするポリマーセグメントBからなるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーと共に、共通溶剤に溶解した紡糸原液を用いて紡糸することにより得られる。
【0023】
紡糸原液の調製には、組成物の構成成分を共通して溶解し得る溶剤が用いられ、共通溶剤としてジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド等の有機溶剤が好ましく用いられるが、これらに特に限定されることはない。紡糸原液としては、好ましくは、(イ)アクリロニトリル系ポリマー50〜80質量%と(ロ)酢酸セルロース50〜20質量%の混合物、(ハ)酢酸セルロースに対して可塑化能力を有する可塑剤、又は更に(ニ)水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基及びエポキシ基の群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有するポリマーセグメントAとアクリロニトリルポリマーを主とするポリマーセグメントBからなるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーとを共通溶剤に溶解した紡糸原液であって、(ハ)可塑剤をアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの前記比の混合物中に含まれる酢酸セルロースの量に対し0.5〜40質量%、換言すれば前記比の混合物に対し可塑剤を0.1〜20質量%、(ニ)ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーをアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとの前記比の混合物に対し1〜15質量%含む紡糸原液を用いる。また、紡糸原液には、必要に応じ、更に耐候安定剤、抗菌剤、顔料、染料、制電剤、導電剤、防汚剤等が加えられていてもよい。
【0024】
紡糸原液を調製方法としては、特に制限はなく、例えばアクリロニトリル系ポリマー、酢酸セルロース、酢酸セルロースの可塑剤、又は更にブロックコポリマー又はグラフトコポリマーと、共通溶剤とを室温又は必要に応じて40〜100℃に加温或いは−10〜15℃程度に冷却して同時に攪拌混合して溶解して調製する方法、アクリロニトリル系ポリマー、酢酸セルロース、可塑剤又は更にブロックコポリマー又はグラフトコポリマーをそれぞれ共通溶剤に溶解させた後、混合して調製する方法等が用いられる。紡糸原液中のポリマー濃度は、特に制限はないが、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースの混合物の固形分濃度で20〜24質量%の溶液とすることが好ましい。
【0025】
紡糸方法は、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法のいずれであってもよいが、湿式紡糸法が好ましく用いられる。湿式紡糸法にて製糸する場合は、共通溶剤と水とからなる凝固浴中へ吐出した後、凝固糸を湿熱延伸し、温度80〜100℃の熱水中で脱溶剤し、油剤付与、乾燥緻密化した後に、乾熱延伸する。
【0026】
本発明の複合繊維を湿式紡糸法にて得る紡糸工程においては、紡糸後の凝固糸の延伸は、得られる複合繊維の耐摩耗性の面から、浴中の湿熱状態での1次延伸と乾熱雰囲気下での2次延伸の2段階に分けて行うことが好ましく、その湿熱状態での1次延伸の倍率は4.0倍以下、乾熱雰囲気下での2次延伸の倍率は5.0倍以下であることが好ましい。更にはその湿熱延伸と乾熱延伸との総延伸倍率が3.0〜8.0倍であることが好ましい。総延伸倍率が3.0倍未満の場合は、製糸の際に凝固糸の洗浄性や乾燥の面で不利になるため生産性が低くなるだけでなく、繊維としての物性が十分なものとならない。また8.0倍を超える場合は、フィブリルが発生し易くなり、耐摩耗性が低下する傾向にある。湿熱延伸での延伸倍率が4.0倍を超える場合、また乾熱延伸の延伸倍率が5.0倍を超える場合には、耐摩耗性が劣るものとなり易い。
【0027】
本発明の複合繊維を乾湿式紡糸法又は乾式紡糸法にて得る紡糸工程においては、乾湿式紡糸法の場合は、湿式紡糸法の場合と同様に凝固浴にて凝固させた凝固糸を、また乾式紡糸法の場合は、乾熱雰囲気の紡糸筒内に吐出させ脱溶媒させた凝固糸を、湿式紡糸法の場合と同様に、熱水中等の湿熱状態で1次延伸を行った後、乾熱雰囲気下で2次延伸を行う。
【0028】
また、乾熱雰囲気下での延伸は、通常、蒸気又は電熱にて加熱されたロール間にて糸条を加熱、延伸させるものであるが、この乾熱延伸時の乾熱雰囲気温度は150〜200℃であることが好ましい。温度が150℃未満の場合は、延伸性が劣り、糸切れや毛羽の発生を招く傾向にあり、200℃を超える場合は、繊維の着色が著しくなり好ましくない。
【0029】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中の評価方法は下記の方法に拠った。
【0030】
(フィブリル化の評価手法)
ディスクリファイナーによる叩解処理後の濾水度評価:
得られたトウ状繊維を長さ3mmのフロック状にした後、そのカットフロックを固形分6質量%となるように水中に分散させ、この液をディスクリファイナー(熊谷理機工業(株)製KRK高濃度ディスクリファイナーNo2500−I型)を用い、ディスククリアランス0.05mm、ディスク回転数5000rpmにて処理した。これを数回繰り返し、処理毎に処理液をJIS P−8121のカナダ標準ろ水度試験方法に準じてその濾水度を測定し、この濾水度の処理前の数値をR0、5回繰り返し処理後の数値をR1とし、その差ΔR(R0−R1)を求めた。このΔRの数値が低いほど繊維が割繊し難くフィブリル化抑制効果が大きいことを表す。
【0031】
(耐摩耗性の評価手法)
マーチンデールによる耐摩耗性評価試験:
JIS L−1018、8.18.5E法に準拠した。
【0032】
(繊維風合い)
涼感(ドライ感)を触感による官能試験により評価した。
【0033】
(消臭性評価)
消臭評価の臭気成分として酢酸を選定し、その消臭性を測定した。
温度20℃、湿度65%RHの環境下に24時間静置した試料1gを、酢酸のガス濃度が50ppmになるように調整した370mlの三角フラスコの中に封入し、1時間放置後に検知管(北川式ガス検知器)にてフラスコ内のガス濃度を測定した。対象として、試料が未封入である以外は同様の測定を行い、1時間後のフラスコ内のガス濃度を求めた。消臭率は、対象ガス濃度に対する試料封入のガス濃度の割合から算出した。
【0034】
(吸湿性能評価)
試料約5gを、温度40℃、湿度90%RH雰囲気下に24時間放置後、採取し、その質量及び絶乾質量を測定し、下記式によって吸湿率Aa(%)を算出した。同様に温度20℃、湿度65%RH雰囲気下に24時間放置後、採取し、その質量及び絶乾質量を測定し、下記式によって吸湿率Ab(%)を算出した。
吸湿率Aa又はAb(%)=(採取時の質量−絶乾質量)/絶乾質量×100
【0035】
(実施例1〜4、比較例1〜4)
表1に示す構成のアクリロニトリル(AN)系ポリマーと酢酸セルロースの混合物を主体とする組成物を混合物固形分濃度22質量%になるようにジメチルアセトアミドに溶解して紡糸原液を調製した。この紡糸原液を孔径60μm、孔数1000のノズルを用い、浴温40℃、ジメチルアセトアミド40質量%水溶液の凝固浴中に吐出し、その凝固糸を湿熱下で3倍に延伸した後、洗浄、乾燥緻密化を行い、更に150℃の温度乾熱下で1.8倍に延伸し、135℃の加圧蒸気内で緩和処理を行い、単繊維繊度4dtexのトウ状繊維を得た。なお、AN系ポリマーとしてAN93質量%/酢酸ビニル7質量%のコポリマー、酢酸セルロースとしてダイセル(株)製MIフレーク(酢化度55.2%)を用いた。またブロックコポリマーは以下の方法で調製したものを用いた。
【0036】
(ブロックコポリマーの調製)
乳化剤(花王アトラス社(株)製レベノールWz)4g、ロンガリット1.2g、硫酸第一鉄0.003gを含む脱イオン水400gを反応容器に入れ、温度を40℃に保持し、窒素置換を行った。これにメタクリル酸メチル90gと2−ヒドロキシエチルメタクリレート10gにシクロヘキサノンパーオキサイド1.5gを溶解した溶液及び乳化剤(レベノールWz)6gを含む水溶液100gを別々に90分かけて滴下し、第一段重合を行った。次いで2段階目として得られた乳化液にAN90g、酢酸ビニル10gと脱イオン水700gを入れ、温度を70℃に上げて3時間攪拌した。得られた重合液を濾過、水洗、乾燥を行うことにより、官能基として水酸基を有するメチルメタクリレートポリマーセグメントと酢酸ビニル共重合ANポリマーセグメントからなるブロックコポリマーを得た。
【0037】
【表1】
【0038】
得られた繊維について、前記カナダ標準ろ水度試験方法に準じて処理前の濾水度(R0)と5回処理後の濾水度(R1)を測定し、その濾水度差ΔRを求め、その結果を表2に示した。その結果より、実施例1〜4の繊維は、比較例1〜4の繊維に比べ、ΔRの値が小さくフィブリル化抑制効果が高いことが判る。
【0039】
【表2】
【0040】
得られた繊維にて編地を作成し、前記マーチンデールによる耐摩耗性試験(摩擦回数:200回、300回、500回、1000回)を行い、その評価結果を表3に示した。なお、評価は判定員5名により目視判定を行い、判定員全員が毛羽発生がないと判断した場合を○、3名以上が毛羽発生ありと判断した場合は×、その他を△としたが、その評価結果より、実施例1〜4の繊維は、比較例1〜4の繊維に比べ、フィブリル化が発生し難く耐摩耗性がよいことが判る。
【0041】
【表3】
【0042】
(比較例5〜6)
表4に示す構成の組成物を混合物固形分濃度22質量%になるようにジメチルアセトアミドへ溶解して調製した紡糸原液を用いる以外は、実施例1〜4と同様にして紡糸し、単繊維繊度4dtexのトウ状繊維を得た。得られたトウ状繊維及び実施例1〜4で得られたトウ状繊維を、それぞれ51mmにカットし開綿した後、それらの原綿の酢酸消臭能並びに吸湿性能の評価を行い、その評価結果を表5に示した。得られた繊維は、実施例1〜4での繊維に比較し、酢酸に対する消臭性能、吸湿性能に劣るものであった。
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
(実施例5〜6、比較例7〜8)
AN93質量%/酢酸ビニル7質量%のAN系ポリマー67質量%と酢酸セルロース(ダイセル(株)製MIフレーク)33質量%の混合物、酢酸セルロースに対しリン酸トリフェニル33.3質量%(AN系ポリマー/酢酸セルロース混合物に対し11質量%)からなる組成物を混合物固形分濃度22質量%になるようにジメチルアセトアミドに溶解し紡糸原液を調製した。この紡糸原液を孔径60μm、孔数1000のノズルを用い、浴温40℃、ジメチルアセトアミド40質量%水溶液の凝固浴中に吐出し、その凝固糸を表6に示す延伸条件にて紡糸し、更に135℃の加圧蒸気内で緩和処理を行い、単繊維繊度4dtexのトウ状繊維を得た。
【0046】
得られた繊維について、前記カナダ標準ろ水度試験方法に準じて処理前の濾水度(R0)と5回処理後の濾水度(R1)を測定し、その濾水度差ΔRを求め、その結果を表7に示した。
【0047】
(実施例7〜8、比較例9〜10)
AN93質量%/酢酸ビニル7質量%のAN系ポリマー67質量%と酢酸セルロース(ダイセル(株)製MIフレーク)33質量%の混合物、酢酸セルロースに対しリン酸トリフェニル16.7質量%(AN系ポリマー/酢酸セルロース混合物に対し5.5質量%)、AN系ポリマー/酢酸セルロース混合物に対しブロックコポリマー5.6質量%からなる組成物を混合物固形分濃度22質量%になるようにジメチルアセトアミドに溶解し紡糸原液を調製した。この紡糸原液を孔径60μm、孔数1000のノズルを用い、浴温40℃、ジメチルアセトアミド40質量%水溶液の凝固浴中に吐出し、その凝固糸を表6に示す延伸条件にて紡糸し、更に135℃の加圧蒸気内で緩和処理を行い、単繊維繊度4dtexのトウ状繊維を得た。なお、ブロックコポリマーは実施例1で調製したと同じものを用いた。
【0048】
得られた繊維について、前記カナダ標準ろ水度試験方法に準じて処理前の濾水度(R0)と5回処理後の濾水度(R1)を測定し、その濾水度差ΔRを求め、その結果を表7に示した。
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
【発明の効果】
本発明の複合繊維は、アクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースとを主体とすることから涼感並びに吸湿性等の優れた性能を有すると共に機械的抵抗、例えば摩擦に対する耐摩耗性に優れるものであり、ニット、ジャージ等の衣料分野、カーテン、ハイパイル、ボア、毛布、マット、カーペット等の建寝装分野等における素材繊維としてに好適なるものであり、また本発明の製造方法によれば、酢酸セルロースの可塑剤又は更にアクリロニトリル系ポリマーと酢酸セルロースと親和性のあるブロック又はグラフトコポリマーの存在により、かかる複合繊維を製糸性よく得ることができる。

Claims (3)

  1. (イ)アクリロニトリル系ポリマーと(ロ)酢酸セルロースの混合物を主成分とし、(ハ)酢酸セルロースに対し可塑化能力を有する可塑剤及び(ニ)水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基及びエポキシ基の群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有するポリマーセグメントAとアクリロニトリルポリマーを主とするポリマーセグメントBからなるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーを含む組成物からなることを特徴とする複合繊維。
  2. (イ)アクリロニトリル系ポリマーと(ロ)酢酸セルロースの混合物を主成分とし、(ハ)酢酸セルロースに対して可塑化能力を有する可塑剤及び(ニ)水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基及びエポキシ基の群から選ばれる少なくとも一つの官能基を有するポリマーセグメントAとアクリロニトリルポリマーを主とするポリマーセグメントBからなるブロックコポリマー又はグラフトコポリマーと共に、共通溶剤に溶解した紡糸原液を用いて紡糸することを特徴とする複合繊維の製造方法。
  3. 紡糸後、湿熱状態にて4.0倍以下で1次延伸した後、更に乾熱雰囲気下にて5.0倍以下で2次延伸し、湿熱延伸と乾熱延伸との総延伸倍率を3.0〜8.0倍とする請求項2に記載の複合繊維の製造方法。
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