JP4123965B2 - 混繊糸 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースエステルを主成分とする繊維とポリ乳酸からなる繊維を少なくとも含む混繊糸に関する。より詳しくは、従来の混繊糸よりも格段にソフト感に優れており、さらには混繊糸を構成する繊維の屈折率に乖離がないため、均染性に優れた混繊糸およびそれらからなる織物、編物などの布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】
単一の繊維では得られない複数の特徴を有する糸条を得るため、また単一の繊維の欠点を補うためなどの目的で複数の繊維を混合した混繊の技術は古くから使用されている。
【0003】
例えば、発色性や吸湿性に劣るポリエチレンテレフタレートを補うため、セルローストリアセテートやレーヨンなどを配した混繊糸が古くから知られている。例えば、セルロース系繊維と7,000m/分以上の紡糸巻取速度で紡糸したポリエステル繊維との複合混繊糸が提案されている(特許文献1)。また、アセテート繊維を表層部に、ポリエステル繊維を中心部に配置した複合糸が提案されている(特許文献2)。これらの混繊糸はポリエチレンテレフタレート繊維が主体となるものであって、混繊糸の引張抵抗度が一般に100cN/dtex以上となり、ソフト感に劣る欠点があった。さらには、セルローストリアセテート繊維やレーヨン繊維が溶剤を用いた乾式あるいは湿式紡糸によるものであるため、溶融紡糸法によるポリエチレンテレフタレートとは製糸方法が異なっており、紡糸時同時混繊が不可能であるという欠点も有している。
【0004】
一方、昨今の環境に対する意識の高まりから、自然界中で分解が可能なポリヒドロキシカルボン酸繊維が注目されている。ポリヒドロキシカルボン酸であるポリ乳酸繊維を用いた混繊糸については、ポリエチレンテレフタレート繊維との混繊が提案されている(特許文献3)。両者は同じ分散染料で染色することが可能ではあるものの、ポリエチレンテレフタレートの屈折率(1.6程度)と脂肪族ポリエステルの屈折率(ポリ乳酸の場合1.4程度)との違いが大きすぎて同色性が得られず、混繊糸を用いて染色した布帛には染め斑、イラツキが発生する欠点があった。また、混繊糸の引張抵抗度も一般に60〜100cN/dtex程度となり、ソフト感に劣る欠点があった。
【0005】
分散染料で染着ができる微粒子を含有したセルロース繊維(レーヨン)とポリ乳酸繊維とからなる混繊糸についても提案されている(特許文献4)。この場合、セルロース繊維は分散染料では染まらないことから、分散染料で染色が可能な部分はポリ乳酸繊維全体とセルロース繊維中の粒子のみということになり、深い発色、均一な発色が得られないという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭62−299527号公報
【0007】
【特許文献2】
特開平4−136227号公報
【0008】
【特許文献3】
特開2000−212844号公報
【0009】
【特許文献4】
特開2000−303284号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を解消し、これまで得られなかった均一染色性を有し、かつ格段にソフト感に優れた混繊糸およびそれらからなる織物、編物(織編物)などからなる布帛を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の本発明の課題は、屈折率が1.4〜1.5、置換度が2.5〜3.0であり、少なくとも一部のアシル基が炭素数3〜18であるセルロースエステルを主成分とする繊維と、屈折率が1.4〜1.5であるポリ乳酸からなる繊維とを少なくとも含んでなる混繊糸であって、該混繊糸の強度が1.2〜3.0cN/dtex、引張抵抗度が30〜50cN/dtexであることを特徴とする混繊糸によって達成することができる。
【0017】
本発明の別の課題は、上述の混繊糸を少なくとも用いてなる織編物などの布帛によって達成が可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の混繊糸は、屈折率が1.4〜1.5であるセルロースエステルを主成分とする繊維と、屈折率が1.4〜1.5であるポリ乳酸からなる繊維とを少なくとも含んでなることが重要である。
【0019】
セルロースエステルの屈折率は、1.42〜1.48であることが望ましく、1.43〜1.47であることが最も好ましい。さらにはセルロースエステルの屈折率とポリ乳酸の屈折率との差の絶対値が0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることが最も好ましい
【0020】
本発明で屈折率とは、ポリマーをフィルム化した物を試料とし、自然光を採光できる室内に設置され恒温水の循環等の手段により23℃に調節された、プリズムを備えたアッベ式屈折計によりJIS−K7105記載の方法に基づいて3回繰り返して測定した平均値をいう。
【0021】
屈折率が1.4〜1.5であるセルロースエステルとしては、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートオレート、セルロースアセテートステアレートまたはこれらの混合物などが挙げられる。
【0022】
分散染料による可染性を担保するために、セルロースエステルの置換度は2.5〜3.0であることが重要である。ここでいう置換度とは、グルコース単位あたり3個ある水酸基のうち、エステル化されている水酸基の平均数をいう。その際、セルロースエステルが2種以上のアシル基による混合エステルである場合、本発明の置換度とは、構成する各々のアシル基に対応する置換度の総和を意味している。置換度の上限は、単位グルコースの水酸基の数にあたる3.0である。良好な曳糸性の観点から、置換度は2.6〜2.9であることがより好ましく、2.7〜2.8であることが最も好ましい。
【0023】
また、繊維のソフト感を発現させるためにセルロースエステルの少なくとも一部のアシル基が炭素数3〜18であることが重要である。炭素数3のアシル基すなわちプロピオニル基を少なくとも一部に有するセルロースエステルは、全てが炭素数2のアシル基すなわちアセチル基からなるセルロースエステルに比べて、格段に柔軟となり、初期引張抵抗度が十分に低くなる。同様に炭素数4のアシル基であるブチリル基を少なくとも一部に有するセルロースエステルも好ましく用いられる。少なくとも一部に導入されるアシル基の炭素数が18以下であれば、セルロースエステルの親水性が極端に失われることもなく、ヌメリ感を生じることもない。フィラメントを柔軟にする目的の観点から、炭素数3〜18のアシル基に対応する置換度は、1.0以上であることが好ましく、2.0以上であることがより好ましい。
【0024】
少なくとも一部のアシル基が炭素数3〜18であるセルロースエステルの具体例としては、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースバリレートなどの1種の長鎖アシル基を有するセルロースエステル類や、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートバリレート、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートオレート、セルロースプロピオネートブチレートなど2種のアシル基を有するセルロース混合エステルが例示できる。その中でも、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0025】
本発明においてセルロースエステルを主成分とする繊維は、溶融紡糸法によって製造されることが、製糸効率の面からも、製造時に有害な薬剤を使用しなくて良いという製糸環境の面からも、さらには混繊の相手であるポリ乳酸からなる繊維が溶融紡糸によって製造されるものであることからも、望ましい要件である。セルロースエステルを主成分とする繊維を溶融紡糸で得るためには、上述のセルロースエステルの置換度が2.5〜3.0であり、少なくとも一部のアシル基が炭素数3〜18のものであることが、良好な熱可塑性の観点から重要である。
【0026】
また、溶融紡糸法を適用するにあたっては、セルロースエステルの他に可塑剤を含有することができる。可塑剤については、公知の可塑剤を適宜用いることができ、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジメトキシエチルフタレートなどのフタル酸エステル類、テトラオクチルピロメリテート、トリオクチルトリメリテートなどの芳香族多価カルボン酸エステル類、ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ジエチルアゼレート、ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレートなどの脂肪族多価カルボン酸エステル類、グリセリントリアセテート、グリセリンジアセテートモノラウレート、グリセリンジアセテートモノパルミテート、グリセリンジアセテートモノステアレート、グリセリンジアセテートモノオレート、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラカプリレートなどの多価アルコールの脂肪酸エステル類、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのリン酸エステル類、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテルなどの芳香族エポキシ類、ノルボルネンモノエポキサイド、リモネンモノエポキサイドなどの脂環式エポキシ類、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどの脂肪族エポキシ類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン−プロピレン)グリコール、ポリエチレングリコール末端エステル封鎖物、ポリエチレングリコール末端エーテル封鎖物などのポリアルキレングリコール類などを一例として挙げることができる。可塑剤は、単独もしくは併用して使用することができる。
【0027】
これらの可塑剤は、溶融紡糸にあたって揮発しにくいことが重要であり、分子量が200以上であることが好ましい。しかし、分子量が高すぎる場合には可塑化効率が低下し、またセルロースエステルとの相溶性が不良となる場合があるので10000以下であることが好ましい。可塑剤の分子量は、より好ましくは300〜5000であり、最も好ましくは400〜2000である。
【0028】
可塑剤の含有量に関しては、セルロースエステルと可塑剤からなる組成物全体に対して2〜30重量%であることが好ましい。ソフト感の優れた布帛を得るためには、可塑剤は熱可塑性組成物全体に対して2重量%以上であることが好ましい。また、大量添加による耐熱性の低下を抑えるためには30重量%以下であることが好ましい。可塑剤含有率は、より好ましくは5〜20重量%であり、最も好ましくは8〜15重量%である。
【0029】
本発明のセルロースエステルを主成分とする繊維は、沸水収縮率が2〜5%であることが好ましい。沸水収縮率が5%以下であれば熱水処理時に大きく収縮することがなく、混繊糸構造としての外周を占めることとなり、セルロースエステル繊維の有する良好な風合いが混繊糸構造物の特性として発現することとなるので好ましい。また、2%以上であれば収縮不足に起因して布帛がペーパーライクとなることがないため好ましい。セルロースエステルを主成分とする繊維の沸水収縮率は、より好ましくは3〜4%である。
【0030】
また、本発明のセルロースエステルを主成分とする繊維の引張抵抗度は15〜35cN/dtexであることが好ましい。引張抵抗度が35cN/dtex以下であれば繊維として柔軟性に優れており、混繊糸としたときにもソフト感に優れた糸条を構成することができる。また、15cN/dtex以上であれば過度に柔軟すぎてヌメリ感を生じることがないため好ましい。セルロースエステルを主成分とする繊維の引張抵抗度は、より好ましくは20〜30cN/dtexである。
【0031】
本発明の混繊糸を構成するもう一方の成分である、ポリ乳酸の屈折率は、1.42〜1.48であることが望ましく、1.43〜1.47であることが最も好ましい。さらにはセルロースエステルの屈折率とポリ乳酸の屈折率との差の絶対値が0.5以下であることが好ましく、0.3以下であることが最も好ましい。屈折率の測定法については、前記したセルロースエステルを主成分とする繊維の屈折率の測定法と同じである。
【0033】
ポリ乳酸としては、L−乳酸を主たる繰り返し単位とする公知のものを使用できるが、沸水収縮率を高くする目的でD−乳酸を繰り返し単位の15モル%以下含有するものであってもよい。D−乳酸は10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが最も好ましい。
【0034】
D−乳酸を全く含まずL−乳酸のみからなるポリ乳酸の場合には、脆性が高くなりすぎる傾向があるので、繰り返し単位としてD−乳酸を少なくとも0.1モル%含有するものであることが好ましい。
【0035】
また、本発明におけるポリ乳酸は、染色時の強力低下を抑制するためにカルボキシル基末端の一部または全部を、カルボキシル基と反応しうる末端封鎖剤、たとえばカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などの添加によって封鎖したものであることが好ましい。
【0036】
また、本発明におけるポリ乳酸は、耐摩耗性を向上させるために滑剤化合物、たとえば脂肪族アミド、脂肪族エステル、パラフィンワックスなどを含有するものであることが好ましい。
【0037】
また、本発明のポリ乳酸は、その融点を向上させるためにL−乳酸を主たる繰り返し単位とするポリL−乳酸とD―乳酸を主たる繰り返し単位とするポリD−乳酸とのブレンドによってステレオコンプレックス結晶を生じさせたものであってもよい。
【0038】
ポリ乳酸からなる繊維の沸水収縮率は6〜30%であることが好ましい。沸水収縮率が30%以下であれば著しい収縮によって布帛が硬化してしまうことがないため好ましい。また、6%以上であれば熱水処理時に十分な収縮が生じて、混繊糸構造としての内層を占めることとなり、逆にセルロースエステル繊維を外周に押し出すこととなって、良好な風合いが混繊糸構造物の特性として発現することとなるので好ましい。
【0039】
本発明のセルロースエステルを主成分とする繊維およびポリ乳酸からなる繊維は、それぞれに要求される性能を損なわない範囲内で、熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、例えばホスフェイト、チオフォスフェイト、ラジカル補足剤等を単独または2種類以上含有してもよい。また、その他の滑剤、帯電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、艶消剤、難燃剤、糸摩擦低減剤、生分解促進剤等の有機系あるいは無機系の添加剤を配合することも可能である。
【0040】
本発明における混繊糸は、強度が1.2〜3.0cN/dtexであるものである。強度が1.2cN/dtex以上であれば低強度に起因する製織時の糸切れ等が抑制される。強度はより好ましくは1.5cN/dtex以上であり、最も好ましくは2.0cN/dtex以上である。強度は高ければ高いほど好ましいが、ソフト感を維持したまま3.0cN/dtex以上とすることは困難である。
【0041】
また、本発明における混繊糸はその引張抵抗度が30〜50cN/dtexであるものである。ソフト感を発現するために引張抵抗度が50cN/dtex以下であることは非常に重要である。また、最低限のハリ・コシを維持するために引張抵抗度は30cN/dtex以上あるものである。引張抵抗度は32〜45cN/dtexであることがより好ましく、35〜40cN/dtexであることが最も好ましい。
【0042】
混繊糸中におけるセルロースエステルを主成分とする繊維とポリ乳酸からなる繊維の比率は、任意に決定することができる。例えばセルロースエステルを主成分とする繊維の繊度DAとポリ乳酸からなる繊維の繊度DBの比率DA:DBが2:98〜20:80であれば、ポリ乳酸の特徴がより強くなり、ソフト感はやや劣るものの強度の高い混繊糸が得られる。逆に80:20〜98:2であればセルロースエステルの特徴がより強くなり、強度は低いもののソフト感に優れた混繊糸が得られる。20:80〜80:20の領域ではソフト感と強度特性のバランスのとれた混繊糸となる。
【0043】
本発明の混繊糸を製造する方法としては、従来より知られている後混繊方式および紡糸混繊方式のいずれもが適用できる。後混繊方式としては、撚糸工程で両方の繊維を供給して混繊する方法、延伸工程において両方の繊維を供給して混繊する方法、仮撚加工工程で両方の繊維を供給して混繊する方法、エアー交絡によって混繊する方法、タスラン加工によって混繊する方法、合撚や合糸、引き揃えによって混繊する方法、紡績工程において2種類のステープルを供給して紡績する混紡によって混繊する方法、交織によって混繊する方法、交編によって混繊する方法などが挙げられるがこれらに限定されない。また、紡糸混繊方式としては、孔形状や孔数の異なる2種以上の口金より糸条を吐出して巻き取り時に合糸して巻き取る方法や、複数の吐出孔を穿孔した一つの口金から複数の糸条を同時に吐出して巻き取る方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
また、本発明の混繊糸を用いた織編物や不織布などの布帛を製造する場合においても、織編機、織編組織、不織布形態などについてはなんら制約することはなく、公知の方法を利用することができる。
【0045】
本発明によって、分散染料による均染性に優れるだけでなく、格段に優れたソフト感を有する混繊糸およびそれを用いてなる布帛を提供可能である。そのため、本発明の混繊糸およびそれを用いてなる布帛は、衣料用途に特に好適であり、シャツ、ブラウス、スカート、スラックス、ジャケット、スーツ、コートなど衣料用途全般に好適に用いることができる。また、産業用途としても、混繊糸を構成するいずれの繊維もがバイオマス由来である観点から、農業用、土木用の不織布、水産資材、衛生資材などに好適に使用しうる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
【0047】
A.強度
オリエンテック社製引張試験器(テンシロンUCT−100型)を用い、試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を5回行い、破断点の応力の平均値を繊維の強度(cN/dtx)とした。
【0048】
B.沸水収縮率
糸条を98℃の沸水バス中で15分間処理し、処理によって収縮した長さの処理前繊維長に対する百分率を沸水収縮率(%)とした(測定のためのn数は5とした)。
【0049】
C.染色特性
得られた混繊糸を用いて丸編地を作成し、60℃×20分の熱水精練を行ったのち、乾熱100℃×2分のセットを行った。その後、分散染料であるMiketonFastBlueZを2%owf用い、浴比20、染色温度110℃、染色時間60分の条件で染色加工を行った。得られた丸編地の同色性および濃色性について目視による官能試験を実施した。「極めて優れている」は◎、「優れている」は○、「普通」は△、「劣っている」は×とし、「優れている」の○以上を合格とした。
【0050】
D.風合い特性
染色後の丸編地を用いて触手による官能試験を実施した。ソフト感および品位について評価し、「極めて優れている」は◎、「優れている」は○、「普通」は△、「劣っている」は×とし、「優れている」の○以上を合格とした。
【0051】
E.引張抵抗度
オリエンテック社製引張試験器(テンシロンUCT−100型)を用い、試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を5回行い、応力(cN/dtex)−伸長率(%)曲線を5本得た。得られたそれぞれの曲線に対して、初期直線部分と平行な伸度0%の点を通る直線を引き、伸度10%の時の接線上の応力を読みとって、これを10倍した値を引張抵抗度とした。なお、測定のn数は5とし、平均値をもって繊維の引張抵抗度とした。
【0052】
[実施例1〜4]
アセチル置換度が0.2、プロピオニル置換度が2.5(トータル置換度2.7)であるセルロースアセテートプロピオネート(イーストマン社製)と可塑剤としてポリエチレングリコール(PEG600(三洋化成工業(株)製))およびグリセリンジアセトモノオレート(理研ビタミン(株)製)を表1に示した配分で2軸エクストルーダーを用いて混練し均一なペレットとした。ポリマー屈折率はいずれも1.44であった。
【0053】
得られたペレットを80℃×12時間真空乾燥した後、プレッシャーメルター型溶融紡糸機にて、メルター温度230℃にて溶融し、紡糸温度230℃とした溶融パックへ導入して、0.23mmφ−0.30mmLの細孔を18ホール有する紡糸口金から紡出した。この紡出糸を20℃、30m/minのチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束した後、1000m/分で引き取って表1に示す繊度およびフィラメント数のセルロースエステル繊維(糸条A)を得た。表1にその強度、引張抵抗度、沸水収縮率を示す。
【0054】
ポリマー屈折率が1.45、L体比率が99%、重量平均分子量が12万のポリL−乳酸のペレットを、80℃×12時間真空乾燥した後、プレッシャーメルター型溶融紡糸機にて、メルター温度230℃で溶融し、紡糸温度230℃とした溶融パックへ導入して、0.3mmφ−0.45mmLの細孔を24ホールあるいは0.15mmφ−0.30mmLの細孔を6ホール有する紡糸口金から紡出した。この紡出糸を20℃、30m/分のチムニー風によって冷却し、油剤を付与して収束した後、3000m/分で引き取って未延伸糸を得た。これをホットローラー型延伸機を用いて、1HR温度85℃、2HR温度100℃、延伸倍率1.4倍、延伸速度800m/分の条件で延伸し、表1に記載の品種構成を持つポリ乳酸繊維(糸条B)を得た。表1にその強度、引張抵抗度、沸水収縮率を示す。
【0055】
これらのセルロースエステル繊維(糸条A)とポリ乳酸繊維(糸条B)をエアー交絡によって混繊し、均一な混繊糸とした後に丸編み機を用いて編み地にした。この編み地を前述の方法で精練、セット、染色を行った。得られた編み地の染色特性、風合い特性について評価した結果を表1に示す。
【0056】
実施例1〜4ではセルロースエステルの屈折率とポリ乳酸の屈折率がほぼ同等のため、染色後の同色性に極めて優れていた。また、いずれもが分散染料によって十分染着されており、濃色性にも優れていた。実施例2ではセルロースエステル繊維(糸条A)の比率が高いため、濃色性が特に優れていた。
【0057】
実施例1,2,4では混繊糸の引張抵抗度が十分低く、ソフト感が特に優れていた。実施例1,3では混繊糸の強度が十分高く擦過等の発生は全く認められず、特に品位が優れていた。
【0058】
【表1】
【0059】
[比較例1〜3]
比較例1では糸条Bとして市販のポリエチレンテレフタレート繊維(84dtex−36fil)を用いる他は、実施例1と同様にして混繊糸を得、編み地を作成して染色加工を行った。ポリエチレンテレフタレートの屈折率が1.58と高すぎるために、同色性が得られず、さらにはポリエチレンテレフタレート繊維の低発色性に起因して混繊糸編み地の発色性も普通レベルであった。また、混繊糸の引張抵抗度が高すぎるため、粗硬な風合いでありソフト感は極めて悪いものであった。
【0060】
比較例2では糸条Aとして市販のレーヨン繊維(84dtex−33fil)を用いる他は、実施例1と同様にして混繊糸を得、編み地を作成して染色加工を行った。セルロースエステルではなく、セルロース水酸基の置換度がほぼ0であるレーヨン繊維を用いたため、混繊糸中のレーヨン繊維が分散染料によって染着されず、同色性の極めて悪い編み地となった。また、その結果発色性も極めて劣るものであった。また、混繊糸の引張抵抗度が高すぎるためソフト感の劣るものであった。
【0061】
比較例3では糸条Aとして表2に示す物性を有する、可塑剤としてPEGを40%含有するセルロースアセテートプロピオネート繊維を用いる他は実施例2と同様にして混繊糸を得、編み地を作成して染色加工を行った。同色性および濃色性には非常に優れていたが、強度が1.1cN/dtexと低すぎるため一部毛羽が発生して低品位となり、引張抵抗度が24.4cN/dtexと低すぎるため一部にヌメリが発生してソフト感とは異なる風合いのものとなった。
比較例1〜3の結果を表2に示す。
【0062】
【表2】
【0063】
[実施例5,6]
実施例5では、ポリ乳酸として、滑剤のエチレンビスステアロアミドを0.2wt%および末端封鎖剤のシクロヘキシルカルボジイミドを0.5wt%添加したポリL−乳酸を使用し、細孔を24ホール有する口金を使用する他は、実施例1と同様にポリ乳酸繊維(糸条B;100dtex−24fil)を得た。実施例1と同様にして混繊糸を得、編み地を作成して染色加工を行った。得られた編み地は同色性、深色性に優れており、良好な発色性を示した。また、ソフト感に優れており、末端封鎖剤を含有するため熱水処理時の強力低下もなく、滑剤を添加したため表面での擦過も全くなく、編み地の品位が極めて優れたものとなった。
【0064】
実施例6では、ポリ乳酸の延伸時における熱セット温度を60℃とする他は実施例6と同様にしてポリ乳酸繊維(糸条B;100dtex−24fil)を得た。糸条Bの沸水収縮率は25%であった。実施例1と同様にして混繊糸を得、編み地を作成して染色加工を行った。得られた編み地は同色性、深色性に優れており、良好な発色性を示した。また、ソフト感に優れており、編み地の品位も極めて優れたものとなった。さらには、糸条Aと糸条Bの沸水収縮率の違いによって生じた糸長差によってふくらみ感の感じられるものであった。
【0065】
実施例5、6の結果を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、引張抵抗度が低いため、従来の混繊糸よりも格段にソフト感に優れており、また混繊糸を構成する繊維の屈折率に乖離がないため、均染性に優れた混繊糸が得られる。そのため、この混繊糸を用いた布帛などの繊維構造物は良好な染色性とソフト感を併せ持つものとなり、特に衣料用途に好適に用いることができる。
Claims (1)
- 屈折率が1.4〜1.5、置換度が2.5〜3.0であり、少なくとも一部のアシル基が炭素数3〜18であるセルロースエステルを主成分とする繊維と、屈折率が1.4〜1.5であるポリ乳酸からなる繊維とを少なくとも含んでなる混繊糸であって、該混繊糸の強度が1.2〜3.0cN/dtex、引張抵抗度が30〜50cN/dtexであることを特徴とする混繊糸。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
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