JP4839816B2 - 編地 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロースエステル系繊維とポリエステル繊維が混用された編地に関し、更に詳しくは均一な断面形状を有するセルロース脂肪酸混合エステル繊維と、ポリエステル繊維からなる編地で、機械的特性、染色性、寸法安定性、表面品位および制電性に優れた編地に関する。
セルロース系長繊維は、吸湿、吸汗性に優れ、また制電性も低く柔軟な風合いであるために衣料用途を中心に多用されている。しかしセルロース系長繊維はこのような優れた特性を有しているが、合成繊維と比較すると強度が低いことや、シワになりやすいといった欠点がある。また、セルロース系繊維の長繊維製糸法には、セルロースを特殊な溶剤系で溶解させる湿式紡糸法、あるいはセルロースアセテートのようにセルロースエステルをアセトンや塩化メチレン/アルコール混合液などの有機溶剤に溶解させた後、この溶剤を蒸発させながら紡糸する乾式紡糸法が一般的で、溶媒の除去をしなくてはならない制約があり、セルロース系長繊維の断面形状を任意に設計することは困難であった。このため、セルロース系長繊維は繊度の均一性に欠け、染め差や透けムラ・染めムラ、イラツキ、表面品位不良等の懸念があった。このような欠点を改善するため、ポリエステル長繊維と複合もしくは交編、交織する試みが過去数多くなされている。ポリエステルと複合することで、機械的特性やシワは改善されるものの、セルロース系長繊維の染色温度は低いため、ポリエステル長繊維に必要な高温・高圧の条件下ではセルロース系繊維が大幅に劣化してしまい、機械的特性と品位・風合いが共に劣るものになってしまうという問題があった。また、セルロース系長繊維の染め差や透けムラ、染めムラ、イラツキ、表面品位不良等の懸念は残ったままであった。前者の問題は染色温度を低下させたポリエステルを用いることで改善が試みられているが(特許文献1)、後者の問題は依然として改善できていない。
また、前述したような一般的な製法により得られたセルロース系長繊維は、熱可塑性を有していないため、熱軟化挙動を利用しての延伸、仮撚加工などは困難であることに加え、湿式紡糸法あるいは乾式紡糸法は、紡糸速度が遅いため生産性が低いという問題がある。さらにこれらの紡糸法において使用するアセトン、塩化メチレン、二硫化炭素などの有機溶剤は環境に対して悪影響を及ぼす懸念がある。
一方、溶融紡糸法によるセルロースエステル繊維の製造に関しては、セルロースアセテート系組成物を利用する技術が特開昭56−91006号公報や特表平11−506175号公報などに開示されているが、いずれも大量の可塑剤を添加しているため、機械的特性不良、成型時の発煙、耐熱性不良、ヌメリ感などが問題となり、高品質の繊維を得ることが不可能であった。
特開平3−40880号公報 特開昭56−91006号公報 特表平11−506175号公報
本発明の目的は、従来技術の課題を解決し、製造時環境負荷が少なく、良好な染色性、表面品位、機械的特性等を備えたセルロース脂肪酸エステル繊維とポリエステル繊維よりなる編地を提供することである。
本発明の目的は、セルロース脂肪酸混合エステルを主体とし、かつ断面形状が均一な長繊維Aと、分散染料で常圧染色可能な、すなわち、重量平均分子量が500〜4000のポリアルキレングリコールを3〜10重量%共重合したポリエステル長繊維Bが含まれた編地によって解決できる。
本発明の環境負荷の少ないセルロース脂肪酸エステル繊維と、ポリエステル繊維からなる編地を用いて、染色性、表面品位に優れ、良好な制電性、機械的特性を得ることができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明でいうセルロース脂肪酸混合エステルを主体とし、かつ断面形状が均一な繊維Aについて詳細に説明する。本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステル長繊維Aは、セルロース脂肪酸混合エステル80〜98重量%および可塑剤2〜25重量%を少なくとも含んでなるセルロース脂肪酸混合エステル組成物より製造した物である。
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルとは、セルロースの水酸基が2種類以上のエステル結合によって封鎖されているものをいう。具体的にはセルロースアセテートプロピオーネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートバリレート、セルロースプロピオネートブチレート、セルロースアセテートラウレート、セルロースアセテートステアレート、セルロースアセテートオレートなどが例示でき、セルロースアセテートプロピオネートが好ましい。セルロースアセテートプロピオネートは、アセチル基以外にプロピオニル基を含有したものであり、炭素数の多いエステル結合を導入した他のセルロース脂肪族混合エステルと比較して、疎水性が低く、生分解性能を有するものである。そのためセルロース混合エステルとしてはセルロースアセテートプロピオネートが好ましい。
本発明において用いられるセルロースエステルの製造方法に関しては、従来公知の方法にて行えばよく、特に限定されない。アセチル基のみで置換されたセルロースアセテートはそれ自身の熱可塑性が不十分であるため、良好な熱流動性を有するためには可塑剤を添加する必要がある。プロピオニル基によりセルロースをアシル化することにより、セルロースエステルの製造時にブチリル基より長鎖のアシル基によってアシル化するよりも反応性が高いため生産性が良い。
セルロース脂肪酸混合エステルの製造方法は、2種の脂肪酸無水物の混酸でセルロースをエステル化してセルローストリエステルを作り、加水分解によって所定のエステル置換度にする方法などが知られている。
本発明における長繊維Aは、製糸時には可塑剤を2〜25重量%含有している。この範囲内であれば繊維中の可塑剤は染色加工時の精練工程でそのほとんど全量を除去することができる。可塑剤を2重量%以下にすると製糸性が不良になるが、2重量%以上にすることで、熱可塑性が付与されるため溶融形成性が良好になる。また25重量%以下とすることで、可塑剤の繊維表面への滲み出し(ブリードアウト)を防止して、繊度ムラ、染めムラなく、ヌメリ感等のない風合いの良好な品位に優れた繊維を提供する。20重量%を超えると精練で取り去ることができず、染めムラを発生させたり、風合いを粗硬化したりする。可塑剤の含有量は、好ましくは5〜22重量%である。
可塑剤は、繊維に熱可塑性を付与する重要な役目を果たすが、編地の繊維構造物中に残存してしまうと、耐熱性の低下や染色堅牢度の悪化などの望ましくない影響を及ぼす。そのため、編地の繊維構造物中に残存しないよう、本発明における可塑剤は水溶性であることが好ましい。可塑剤が水溶性であれば、精練時に脱落するため編地の繊維構造中には残存しない。ここで水溶性とは室温水あるいは加熱された水に対する溶解度が2wt%以上であることを意味している。
本発明で具体的に用いうる水溶性の可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールおよびこれらの変性体、共重合体などをあげることができる。水溶性可塑剤としてポリエチレングリコールを用いる場合には、その重量平均分子量は400〜2000であることが好ましく、500〜1500であることが最も好ましい。
本発明のセルロース脂肪酸混合エステルを主体とした長繊維Aには必要に応じて要求される性能を損なわない範囲内で、熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、エポキシ化合物、弱有機酸、ホスフェイト、チオフォスフェイト等を単独または2種類以上混合して添加されていてもよい。また、その他有機酸系の生分解促進剤、滑剤、耐電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、艶消剤等の添加剤が配合されていることは何ら差し支えない。
本発明で用いる長繊維Aの溶融紡糸法は、前記した組成物を公知の溶融紡糸機において、加熱溶融した後に口金から押し出し、紡糸し、必要に応じて延伸し、巻き取ることからできる。この際、紡糸温度は180℃から260℃が好ましく、さらに好ましくは190℃から250℃である。紡糸温度を180℃以上とすることにより、溶融粘度が低くなり溶融紡糸性が向上するので好ましい。また、260℃以下にすることにより組成物の熱分解が抑制されるため好ましい。
本発明でいう長繊維Aの繊維断面形状に関しては特に制限はなく、真円状の円形断面であってもよいし、また三角、四角といった多角形、多葉型、扁平型、楕円型、W字型、S字型、X字型、H字型、C字型、田字型、井字型、中空などの異形断面糸でも良い。また芯鞘複合、偏心芯鞘複合、サイドバイサイド型複合、異繊度混繊などのように複合繊維であってもよい。特に好ましくは丸断面と三角断面である。丸断面とすると、ムラのないマイルドな光沢が得られ、また三角断面をとした場合、シルクライクな風合いが得られる。
さらに長繊維Aの糸条の形態としては、マルチフィラメント原糸、甘撚糸〜強撚糸、混繊糸、仮撚糸、いわゆるタスラン加工糸等の流体噴射加工糸等がある。
本発明でいう長繊維Aには、例えば、断面形状が丸、三角、その他の異なる断面形状のものが混繊されていてもよいが、単繊維1本においては、同一単繊維の長さ方向における任意の断面において断面形状の均一性が保持され、繊度の長さ方向の均一性と単繊維繊度の均一性が保持されるものである。これは溶融紡糸によって得られるものであり、本発明でいう断面形状が均一とは具体的には溶融紡糸で得たものを意味する。湿式紡糸によって製造される繊維は、脱溶剤工程を経るため、フィラメント断面は均一ではなく、自由に形成することもできない。さらには繊度バラツキが大きく、単繊維切れや透け感ムラ、さらには染めムラやイラツキなどが懸念されていた。一方、本発明におけるセルロース脂肪酸エステルを主体とした長繊維Aは溶融紡糸により製造され、その断面を自由にかつ均一に成形することができ、繊度バラツキも小さい。溶融紡糸によって得られる繊維は、該繊維の任意の箇所を切ってもほぼ同一形状であり、断面の大きさもほぼ均一になる。これは溶融紡糸特有のものである。ゆえに透け感ムラ、染めムラ、イラツキのない高品質な編地が得られる。本発明でいう、繊度の長さ方向の均一性が保持されているとは、長繊維Aを構成する単繊維の長さ方向の繊度バラツキがプラスマイナス2.0%の範囲内に入ることをいう。具体的には、任意の単繊維について繊度測定を5回繰り返し、それぞれの値が5回の平均値に対しプラスマイナス2.0%の範囲内に入る場合を、繊度の長さ方向の均一性が保持されているという。透け感ムラ、染めムラのない編地は、上記の繊度バラツキのない繊維を用いることで得られる。また、本発明でいう単繊維繊度の均一性が保持されているとは、長繊維Aを構成する各単繊維の繊度バラツキが、プラスマイナス5.0%の範囲内に入ることをいう。具体的には、任意の単繊維について繊度測定を5回繰り返し、その平均値をその単繊維の単繊維繊度とする。これを10本分繰り返す。10本の単繊維繊度の平均値をとり、その平均値に対して、10本の各単繊維繊度がプラスマイナス5.0%の範囲内に入る場合を、単繊維繊度の均一性が保持されているという。単繊維繊度の均一性も溶融紡糸法を用いることによって容易に得られる。
なお、本発明でいう単繊維についての繊度測定は、単繊維を小型検尺機で30cmの長さに切り取り、得られた重量を300倍することにより単繊維の繊度とした。
次に本発明のポリエステル長繊維Bについて詳細に説明する。
本発明でいうポリエステル長繊維Bは、重量平均分子量が500〜4000のポリアルキレングリコールを3〜10重量%共重合したポリエステルからなる長繊維であり、分散染料で常圧染色可能なポリエステル繊維である。常圧で染色可能なことにより、混用する長繊維Aにダメージを与えることなく編地を染色することが可能となる。本発明においては、分散染料で常圧染色可能であること、すなわち、常圧染色性について、後述する測定方法で測定した90℃染色時のL値(L90)と130℃染色時のL値(L130)の差(ΔL)で評価し、ΔLが1以下のものを常圧染色性があると定義する。
分散染料での常圧染色性を達成するため、ポリエステル長繊維Bは、ポリエステルに重量平均分子量500〜4000のポリアルキレングリコールを3〜10重量%共重合していることが必要である。さらには重量平均分子量800〜2000で5〜10重量%共重合していることがより好ましい。共重合するポリアルキレングリコールとしては、特にポリエチレングリコールが好ましい。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の公知のポリエステルが例示できるが、なかでもポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、本発明でいうポリエステル長繊維Bは、単繊維繊度が0.5〜10dtexである。単繊維繊度が0.5dtexよりも小さい場合には、毛羽やフィブリル化が発生しやすい傾向にある。また、10dtexよりも大きい場合には、得られる繊維を用いた布帛の柔軟性が劣る傾向にある。毛羽やフィブリル化などの欠点を回避して柔軟性の良好な繊維構造物を得るためには、繊維の単繊維繊度は、1〜8dtexであることがより好ましい。
なお、ポリアルキレングリコールを共重合することで、通常のポリエステルに比べ耐酸化分解性が低下するため、抗酸化剤を配合することが好ましい。抗酸化剤としてはヒンダードフェノール系化合物を例示できる。
また、ポリエステル長繊維Bは必要に応じて要求される性能を損なわない範囲内で、他の共重合成分を共重合させることや、紫外線吸収剤、耐電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、酸化チタン等の艶消剤、難燃剤といった添加剤を添加しても何ら差し支えない。
本発明で用いる長繊維Bは、前記した組成物を公知の溶融紡糸機において、加熱溶融した後に口金から押し出し、紡糸し、必要に応じて延伸し、巻き取ることからできる。
さらにポリエステル長繊維Bの糸条の形態としては、マルチフィラメント原糸、甘撚糸〜強撚糸、混繊糸、仮撚糸等が好ましく用いられ、特に限定するものではない。
本発明におけるセルロース脂肪酸混合エステルを主体とし、かつ断面形状が均一な長繊維Aと、分散染料で常圧染色可能なポリエステル長繊維Bが含まれた編地は、その表面の40%以上、好ましくは60%以上をセルロース系長繊維Aで占めていることが必要である。40%以上とすることで、セルロース系長繊維特有のソフト、ヌメリ感といった優れた表面感を得ることができる。表面の40%以上をセルロース系長繊維Aが占める編地を得るためには、総繊度がほぼ同じ長繊維Aとポリエステル長繊維Bを同比率で引揃えて構造体にすることや、例えば、天竺編機において、長繊維Aと長繊維Bを別の給糸ガイドから編針に供給することで達成できる。すなわち、編針の上部に長繊維Aを、下部に長繊維Bを供給することで丸編地の外部には長繊維Bが現れる比率が高くなり、内部には長繊維Aが高率で出るリバーシブル編地が得られる。
なお、編地表面中の面積比率は次の方法で求めた値をいう。すなわち、編地表面2cm四方の写真を撮影、拡大した後、長繊維Aの部分を切り取りその重量(a)および全体の重量(b)から下記式により求め、ランダムに10カ所測定した値の平均値で求める。
セルロース系長繊維Aの面積比率(%)=(a/b)×100
さらに、本発明の編地は破裂強力が0.3MPa以上であることが必要である。破裂強力を0.3MPa以上とすることで実用に耐えうる編地となる。セルロース脂肪酸混合エステルを主体とし、かつ断面形状が均一な長繊維Aのみからなる編地では、原糸の強力が小さいことに起因し、十分な破裂強力を得ることが困難であるが、ポリエステル長繊維Bと混用することにより、0.3MPa以上の破裂強力を得ることが可能となる。また、本発明の編地は、好ましくは総繊度が20〜200dtexの長繊維Aと、好ましくは総繊度が20〜200dtexであるポリエステル長繊維Bの糸条を混用したものであり、長繊維Aの混率は30〜70重量%が好ましい。セルロース系長繊維Aとポリエステル長繊維Bは、糸の段階で混繊されていてもよい。ここで、破裂強力は次の方法で測定した値をいう、すなわち、JIS L 1018(1999)に規定されている破裂強さ(ミューレン形法)を採用し、ミューレン形破裂試験機を用いて、ゴム膜が試験片を突き破った瞬間の圧力を測定し、続いて試験片を取り去ったときのゴム膜の圧力を測定し、両者の差を破裂強力(MPa)とする。
また、本発明の編地は洗濯時の寸法変化率がタテ、ヨコ共に−1.0を超え+1.0%以下であることが必要である。寸法変化率がこの範囲にあることで実用に耐えうる編地となる。従来の湿式紡糸法や乾式紡糸法で得られるセルロースの場合、原糸の収縮が大きく、十分な寸法安定性は得られなかった。しかしセルロース脂肪酸混合エステルを主体とし、かつ断面形状が均一な長繊維Aは、可塑材によって熱流動性が高く、溶融固化過程における内部ひずみが小さくなるため原糸の収縮が小さくなり、このセルロース脂肪酸混合エステルを主体とし、かつ断面形状が均一な長繊維Aを用いることによって、洗濯時において寸法変化率がタテ、ヨコ共に−1.0を超え+1.0%以下とすることが可能となる。ここで、寸法変化率とは、JIS L 1018(1999)に規定されている寸法変化率(洗濯機法)における洗濯前後のタテ、ヨコについての寸法変化率をいい、伸びる方向が+、縮む方向が−である。なお、洗濯時の寸法変化率がタテ、ヨコ共に−1.0を超え0%以下であることがより好ましい。
本発明において、編地の組織としては、ハーフトリコット、ラッセルなどの経編、天竺、スムース、ゴムなどの丸編および横編のいずれでもよく、ゲージは経編で14〜40G、丸編で14〜40G、横編で3〜22Gであることが好ましい。
本発明の編地は、20℃×40%RH環境下での摩擦帯電圧は3.0kV以下であることが好ましい。摩擦帯電圧が3.0kV以下とすることで、冬季や乾燥環境下における静電気の発生によるほこり付着や衣服のまつわりつきを抑えることができる。
また、本発明の編地は必要に応じては、吸湿率を8.0%以上にすることが可能である。この編地は前述のセルロース脂肪酸エステル繊維を用いた布帛にアルカリ処理を行い、側鎖を脱離させることで得られる。吸湿性があることにより、上述の摩擦帯電圧を3.0kV以下とすることができる。
本発明の編地の用途は特に限定されるものではなく、インナー、スポーツニット等に好ましく使用することができる。
次に、本発明の編地の染色加工に用いる装置としては、液流染色機、ウインス、ジッカー、ビーム染色機、ガーメント染色を行うドラム染色機といった通常使用されている公知の染色機を用いて良い。また、染色に用いる分散染料としては通常使用されている公知のアセテート用分散染料やポリエステル用分散染料を任意に用いることができる。さらに染色加工後に発色性向上やその他の機能付与のために制電剤、難燃剤、抗菌・防臭剤、撥水・防汚剤などを添加した仕上げ加工剤や公知の樹脂をコーティングしてもよい。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何等制限されるものではない。なお、本発明における各種測定法は下記の通りである。
(1)ΔLの測定方法
ポリエステル長繊維Bを筒編とし、次いで常法により90℃で20分間精練処理し、風乾後、180℃で3分間乾熱セットを実施した。この筒編を下記の染色条件で、染色温度90℃と130℃でそれぞれ染色を行い、水洗、還元洗浄した。
<染色条件>
染料 : Dianix Black BG−FS(三洋化成(株)製)
染色浴比 : 1/30
次いでこれらの編地を4つ折りとし多光源分光測色計((株)ミノルタ製、CM−3600d)を用いてL値を測定し、130℃染色時のL値(L130)から90℃染色時のL値(L90)を差し引いた値をΔLとした。ΔLが0.5以下のものを合格:○、0.5以上のものを不合格:×とした。
(2)摩擦帯電圧
JIS L 1094(1997)に準じ、摩擦布の洗濯を行った。詳細は以下の通り。
I.前処理
45×45cmの試験試料を1枚採取した。自動反転渦巻き式電気洗濯機の洗濯槽に40℃±2℃の水25リットルを入れ、さらに弱アルカリ性合成洗剤(JIS K 3371(1994) 弱アルカリ性・第1種)を入れ、あらかじめ準備した試験試料と追加布を合わせて840gになるように調整する。
(i)洗濯機の強条件で試験試料と追加布を5分間洗濯する。
(ii)試験試料と追加布を洗濯機付属の遠心脱水機で約30秒間脱水する。
(iii)常温水を浸した洗濯機の洗濯槽に試験試料と追加布を移し、水をオーバーフローさせながら2分間すすぎを行う。
(iv)(ii)および(iii)を再度繰り返す。
(v)(i)から(iv)を5回繰り返す。
(vi)40℃の水を洗濯槽に入れ、10分間ためすすぎを行う。
(vii)(vi)を2回繰り返す。
(viii)試験試料を取り出し、風乾を行う。
II.測定
前処理の試料より、8×5cmの試験片をそれぞれ5枚採取する。試験片と摩擦布を70±2℃で1時間予備乾燥した後、ポリ袋に試験片と摩擦布を入れ、速やかに20±2℃×40±2%RHの雰囲気中に運び開封後、24時間以上放置する。ロータリースタチックテスターを次のように調整する。
回転ドラムの回転数:400rpm
校正印加電圧 :100Vまたは1000V
摩擦布の荷重 :4.9N
摩擦布接触距離 :2mm
受電部電極盤と試験片取り付け面との距離 :15mm
所定の雰囲気中で除電装置を用いて、試験片と摩擦布の表裏を十分除電する。ロータリースタチックテスターの回転ドラムの試験片取り付け枠部の長辺方向の両辺に試験片の測定面を上にして取り付け、試験片押さえ枠で固定する。摩擦布を取り付けた後、回転ドラムを回し、60秒後の摩擦帯電圧(V)を測定する。試験片と摩擦布を取り除いた後、同様の操作で残りの試験片について摩擦帯電圧を測定し、5枚の平均値を求めた。
(3)セルロース系長繊維Aの編地表面中の面積比率
編地表面2cm四方の写真を撮影、拡大した後、長繊維Aの部分を切り取りその重量(a)および全体の重量(b)から下記式により求め、ランダムに10カ所測定した値の平均値で求めた。
セルロース系長繊維Aの面積比率(%)=(a/b)×100
(4)破裂強力
JIS L 1018(1999)に規定されている破裂強さ(ミューレン形法)を採用し、ミューレン形破裂試験機を用いて、ゴム膜が試験片を突き破った瞬間の圧力を測定し、続いて試験片を取り去ったときのゴム膜の圧力を測定し、両者の差を破裂強力(MPa)とした。
(5)寸法安定性
JIS L 1018(1999)に規定されている寸法変化率(洗濯機法)を採用し、洗濯前後におけるタテ、ヨコについての寸法変化率を測定した。
(6)染めムラ
染めムラの判定は、次の方法で評価した。均染性染色布帛の外観を検反機上で熟練者の肉眼判定により次の4段階で判定し、○以上を合格とした。◎:染めむらが全くなくきわめて良好、○:染めムラがほとんど見られない、△:染めむらが僅かに発生、×:染めむらが著しく発生。
(7)風合い
得られた編地の風合いを、イラツキ、ソフト感、ヌメリ感の観点から、熟練者が官能評価し、総合的に以下のように判断した。○:優れている、×:不良。
(実施例1)
<セルロース系長繊維Aの製造>
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製)80部と平均分子量1000のポリエチレングリコール(三洋化成(株)製PEG600)20部を二軸エクストルーダーで混練し、ペレットを得た。このペレットを棚式乾燥機で80℃×8hrの条件で真空乾燥を行って絶乾状態とした後、溶融紡糸機にて紡糸温度240℃、紡糸速度750m/分の条件で溶融紡糸を行い、105dtex−24fの長繊維を得た。本組成物の製糸性は非常に良好であった。
<ポリエステル長繊維Bの製造>
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール80部、抗酸化剤IR1010(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.3部の混合物を130℃〜230℃に加熱しエステル交換反応をさせた後、平均分子量1000のポリエチレングリコールを8.3部添加し、280℃に徐々に昇温するとともに、減圧して重縮合させ、ポリエステルペレットを得た。このペレットを棚式乾燥機で150℃×5hrの条件で真空乾燥を行って絶乾状態とした後、溶融紡糸機にて紡糸温度290℃、紡糸速度1450m/分の条件で溶融紡糸を行い、延伸倍率3.4倍で延伸して、84dtex−24fのポリエステル長繊維を得た。製糸性は非常に良好であった。また、該ポリエステル長繊維Bの常圧染色性を確認した結果、ΔLは0.2であり、良好な染色性を示した。
<編成および染色>
得られたセルロース系長繊維Aとポリエステル長繊維Bを用いて、28Gダブル丸編機を使用し構成比が2:1になるようにリバーシブル(表メッシュ、裏フラット)編地を編成した。この編地を熱水精練、乾熱セットを行ったのち、分散染料であるMiketonFastBlueZを使用し、2%o.w.f.で浴比1:20、染色温度90℃で60分間染色加工を実施した。
得られた編地について各種測定を行ったところ、摩擦帯電圧はタテ:2.1kV、ヨコ:2.5kVであり、破裂強力0.4MPa、寸法変化率は−0.3%×−0.3%(タテ×ヨコ)であり、染めムラ、イラツキ等無く、風合いも良好な高品質な編地であった。性能評価結果を表1に示した。
(実施例2)
実施例1で合成したセルロースアセテートプロピオネートを80重量%、可塑剤としてポリエチレングリコール(重量平均分子量600)を20重量%用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを製造し、溶融紡糸により繊維を得た。さらに実施例1と同様に製織、染色を施し布帛を得た。得られた布帛の摩擦帯電圧はタテ:2.5kV、ヨコ:2.8kVであり、風合いも良好であった。性能評価結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1で合成したセルロースアセテートプロピオネートを99重量%、可塑剤としてポリエチレングリコール(重量平均分子量600)を1重量%用いた以外は実施例1と同様にしてペレットを得た。しかし、製糸性不良であり、繊維を得ることができなかった。性能評価結果を表1に示した。
(比較例2)
実施例1で合成したセルロースアセテートプロピオネートを70重量%、可塑剤としてポリエチレングリコール(重量平均分子量600)を30重量%用いた以外は実施例1と同様にして布帛を得た。得られた布帛は染めムラが酷く、また風合いも好ましいものではなかった。性能評価結果を表1に示した。
(比較例3)
実施例1で合成したセルロースアセテートプロピオネートを80重量%、可塑剤としてポリエチレングリコール(重量平均分子量1000)を20重量%用いたペレットを製造し、溶融紡糸により繊維を得た。この繊維を100%用いる以外は実施例1と同様に製織、染色を施し布帛を得た。しかし得られた布帛は寸法変化率が大きく、タテ:−2.0%、ヨコ:+5.0%と劣るものであった。
(比較例4)
市販されているキュプラ裏地を実施例1と同様に評価した。摩擦帯電圧、風合い良好であったが、洗濯による寸法安定性がタテ:−3.6%、ヨコ:−3.8%と劣るものであった。性能評価結果を表1に示した。
Figure 0004839816

Claims (5)

  1. セルロース脂肪酸混合エステルを主体とし、かつ断面形状が均一な長繊維Aと、単繊維繊度が2.4dtex以上でかつ重量平均分子量が500〜4000のポリアルキレングリコールを3〜10重量%共重合したポリエステル長繊維Bが含まれた編地であって、該長繊維Aの総繊度が20〜200dtexであり、該長繊維Bの総繊度が20〜200dtexであり、該編地の表面の40%以上の面積を該長繊維Aが占めており、かつ該編地の破裂強力が0.3MPa以上、洗濯時の寸法変化率がタテ・ヨコ共に−1.0を超え+1.0%以下であることを特徴とする編地。
  2. 前記セルロース脂肪酸混合エステルがセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする請求項1記載の編地。
  3. 前記長繊維Aが、繊度の長さ方向の均一性と単繊維繊度の均一性が保持された長繊維であることを特徴とする請求項1または2に記載の編地。
  4. 20℃×40%RH環境下での摩擦帯電圧が3.0kV以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の編地。
  5. 前記長繊維Aが、セルロース脂肪酸エステル80〜98重量%と重量平均分子量600〜1000の可塑剤2〜25重量%を少なくとも含んでなる組成物を溶融紡糸法により繊維化し製造した長繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の編地。
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