JP2009150006A - 織編物とその製造方法および衣料 - Google Patents

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Abstract

【課題】
高級感が求められるファッション用途に対応できる高質感、高感性を有する織編物を溶融紡糸により得られたセルロース脂肪酸混合エステルフィラメント糸を使用し、高品質、高生産性で生産し提供する。
【解決手段】
単糸繊度が0.5デシテックス以上、15デシテックス以下である単糸から構成されたトータル繊度が15デシテックス以上、300デシテックス以下である溶融紡糸により得られたセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸を含んでなり、該マルチフィラメント糸は交絡を付与されたものであることを特徴とする織編物。
【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース系脂肪酸混合エステルを溶融紡糸して得たフィラメント糸を用いた織編物とそれを製造する方法およびその生地を使用した衣料に関するものである。
二酸化炭素などの温室効果ガス排出増加による急激な地球温暖化の進行や有害化学物質による大気汚染の進行に対し、人間の生活スタイル、環境面からの課題への対応が急務となってきている。繊維産業におけるこれらに対する課題は、化石燃料系繊維の製造におけるCO2削減と再生繊維系繊維の製造における有害化学物質の排出削減に対する技術的対応である。
衣料用に使用される繊維は、天然繊維の綿繊維が最も多く、その次に合成繊維のポリエステル繊維である。綿繊維以外には麻、羊毛、絹等の天然繊維とビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン等の再生繊維、アセテート繊維等の半合成繊維などが用いられ、合成繊維ではナイロン、アクリル繊維などが用いられる。これらの繊維の原料や製造方法に関し、環境面では、天然繊維は問題が少ないが、再生繊維に関しては原料としては問題が無いものの製造時に化学薬品を使用するという問題があり、合成繊維では化石燃料を原料とすることによる問題がある。
ファッション衣料関係では、例えばポリ乳酸繊維のようにバイオマス系材料を原料として環境に有害な溶剤を用いない溶融紡糸法を用いて環境対応素材として開発された繊維はあるが、ファッション衣料として耐熱性他の物性面や高級感のある衣料に適応できる繊維という面では不十分であった。
この地球環境保全に対応する繊維素材の開発として、バイオマス原料であって、合成繊維技術である溶融紡糸法を適用可能な熱可塑性セルロースエステル系フィラメント糸の繊維製造に関する技術(特許文献1および特許文献2参照)、また当該溶融紡糸されたフィラメント糸を使用した織物が開示されているが、高度な風合い、高感性のファッション衣料に適応できるテキスタイルを得ることは不可能であった。
一方、従来からバイオマスを原料とするセルロース系繊維としてビスコースレーヨン、キュプラレーヨン等の再生繊維や、ジアセテート、トリアセテートの半合成繊維が生産化されファッション衣料分野に使用されている。ビスコースレーヨン、キュプラレーヨンやアセテート繊維は、マルチフィラメント糸を織編物の製造工程で使用するにあたって、単繊維が切断して毛羽やたるみが発生しやすいため、糸速度や糸張力を低くした条件で実施するか、サイジングあるいは追撚を低速で実施するなど、生産性の低い状況で行っているのが現状である。これは、単繊維の強伸度やせん断応力が小さいためである。またこれらの繊維は湿式紡糸により得られるため、マルチフィラメント糸の製造段階でフィラメント単糸間の収束性を上げるエアーノズルによる交絡処理が出来ないという問題もある(特許文献3および特許文献4参照)。
一報、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維フィラメント糸を使用して織編物を製造する高次加工工程においては、高品質のテキスタイルを生産性よく製造するため、準備工程、製織や製編工程での糸切れや、停台を極限に少なくするため原糸に交絡処理が行われている。
特開2003−13324 特開2006−118060 特開2005−336696 特開2006−45744
本発明は、上記バイオマス原料を使用し、従来の合成繊維の製造設備を用いた溶融紡糸法で製糸したセルロース脂肪酸混合エステル繊維のマルチフィラメント糸を用い、原料面、製造面から環境負荷を抑えることで環境影響を少なくし、高度な高質感が要求されるファッション衣料用途等に適用可能な素材として好適に用いられる織編物およびその製造方法、また、その織編物を用いた衣料を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明は下記の構成を有する。
(1) 単糸繊度が0.5デシテックス以上、15デシテックス以下である単糸から構成されたトータル繊度が15デシテックス以上、300デシテックス以下である溶融紡糸により得られたセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸を含んでなり、該マルチフィラメント糸は交絡を付与されたものであることを特徴とする織編物。
(2) 該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸に加え、天然繊維、再生繊維およびポリウレタン繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする上記1に記載の織編物。
(3) 該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸の交絡度が10個/m以上、100個/m以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の織編物。
(4) 該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸が、実撚りを付与されてなるものであり、その撚数が100T/m以上、3,000T/m以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の織編物。
(5) 該セルロース脂肪酸混合エステルがセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の織編物。
(6) 可塑剤を含む重合体を用いて溶融紡糸して得られた交絡数10個/m以上、100個/m以下のセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸を含む織編物の生機を、脱可塑剤処理し、次いで精練・リラックスを行い、常圧100℃以下で染色し、引き続いて乾熱処理することを特徴とする織編物の製造方法。
(7) 該織編物に、該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸に加え、天然繊維、再生繊維およびポリウレタン繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする上記(6)記載の織編物の製造方法。
(8) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載の織編物を縫製したことを特徴とする衣料。
(9) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載の織編物を染色した後、生地洗いし、次いで縫製したことを特徴とする衣料。
(10) 上記(1)〜(5)のいずれかに記載の織編物を染色した後、縫製し、次いで製品洗いをしたことを特徴とする衣料。
本発明は、セルロース原料を使用し溶融紡糸したセルロース脂肪酸混合エステル繊維フィラメント糸を使用し、織編物にすることにより、バイオマス原料を使用している点、製造工程で有害な薬品をしない点から、環境負荷低減を図ることができる。また、単繊維の間歇交絡を付与したマルチフィラメント糸を使用することによって、衣料用織編物の製造において従来の再生繊維、半合成繊維に比較して効率よく、高品質に生産ができる。さらには高感度が要求されるファッション産業の高質感テキスタイルの要望に応えるとともに、衣料の廃棄においても生分解が可能であることから地球温暖化低減にも貢献できる。
以下に本発明の織編物、その製造方法および衣料について詳細に説明する。
本発明の構成要件としてのセルロース脂肪酸混合エステルフィラメント糸は、セルロース脂肪酸混合エステルを主成分とするものである。具体的には、ポリエチレングリコールなどの水溶性可塑剤を含有させたセルロース混合エステル組成物を溶融紡糸法によって製造したフィラメント糸をもちいる。フィラメントの用語定義は、JISL0204−3、L0205に示されるが、連続したきわめて長い繊維をいい、単独に使用できる1本のフィラメントをモノフィラメント、2本以上から成るフィラメントをマルチフィラメントという。本発明では、フィラメント糸は1本以上のフィラメントからなるものを指し、交絡は1本のフィラメントでは不可能であるからマルチフィラメント交絡糸はフィラメントの長さ方向に間欠的にフィラメントが絡み合った複数本のフィラメットから構成されるフィラメント糸を言う。
セルロース脂肪酸混合エステルとは、セルロースのグルコースユニットに存在する水酸基が2種類以上のアシル基により置換されたものである。セルロース脂肪酸混合エステルの具体例としては、アセチル基とプロピオニル基によって置換されたセルロースアセテートプロピオネートやアセチル基とブチル基によって置換されたセルロースアセテートブチレートが適度な吸湿性や寸法安定に優れるため好ましく用いられる。また、これらのセルロース脂肪酸混合エステルは、溶融紡糸を可能にするため、添加する可塑剤と相溶性が良いことが好ましい。添加する可塑剤としてはポリアルキレン系化合物、具体的には重量平均分子量が200〜4000であるポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールから選ばれるものを好ましく使用することができる。可塑剤の種類と含有量は、セルロース脂肪酸混合エステル繊維の溶融紡糸による生産性に優れること、繊維が柔軟することにより、交絡処理で毛羽やフィブリル化が発生しにくいこと、またマルチフィラメント糸を織編物に製造する工程での整経工程、撚糸工程あるいは製織、製編工程でマルチフィラメント糸がパッケージから解除される時などに高速時でもマルチフィラメント糸に毛羽やたるみを発生させにくく耐せん断性に優れた繊維が得られるという観点から選択される。また、可塑剤は、織編物の染色加工工程で水系処理により容易に離脱されることが必要であることから、可塑剤の含有量は、全繊維重量に対し5〜30重量%であることが好ましい。
また、セルロース脂肪酸混合エステルを主たる構成成分とする組成物に対して、着色防止剤、酸化チタンなどの艶消剤などを含有させることも可能である。
本発明のマルチフィラメント糸への交絡付与は、紡糸口金から巻き取るまでの糸道で、公知の圧空を使用し、インターレースノズルを使用することで、交絡条件を設定して必要交絡数を付与することができるが、従来のナイロンやポリエステル等の合成繊維で実施されている公知の交絡付与技術では目的にあう交絡糸が得られない。すなわち、高紡糸速度で生産されるナイロンやポリエステルは高強度、高伸度、高せん断強度特性を有するのに比較し、本発明のフィラメント糸は、直紡方式の低紡糸速度1,500〜2,000mで繊維構造化され、強度、伸度、せん断性が低く毛羽や弛みの欠点になりやすいため、原糸への油剤や交絡付与方法の変更が重要である。
製糸段階にマルチフィラメント糸へ付与した交絡は、製糸巻き取りパッケージを使用して織編物を製造する種々の工程を通過する際に、解舒張力、緊張応力と弛緩の繰り返しを単繊維が受けることによって絡みが解けて減少する。従って、マルチフィラメント糸に付与する交絡数に比べて、織編物に残存する交絡数は少なくなるが、織編工程の生産工程通過性では、10〜120個/mに設定することが好ましい。
本発明の織編物におけるセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸が有する交絡度は10〜100個/mであることが必要である。生機および染色加工上がりの織編物において、サイジングされたタテ糸などでは、整経や製織工程ではほとんど交絡数が変化しないため、繊維が製造された際に付与された交絡数とほぼ同じレベルを維持することが可能である。一方、パーンワインダーやダウンツイスター等の巻き返し工程、追撚工程を通った糸は原糸段階に付与された交絡数のレベルよりも減少することとなる。生機と染色加工上がりでは、染色加工においてマルチフィラメントの収縮によって多少増加することがある。マルチフィラメント糸に存在する交絡の単繊維収束部はその数が多いと織編物の表面にイラツキとして見える場合に品位の低下となる。交絡数は、織編工程の通過性に大きく寄与するためある程度多い方が良いが、最終の染色加工後のテキスタイルにおいては表面品位に影響するので残存交絡数としては少ない方が良い傾向にある。すなわち、マルチフィラメント糸に付与した撚糸撚り数が少ない領域では工程通過性には寄与した交絡が、逆にイラツキ欠点になることがあるため、織編物を構成するマルチフィラメント糸の交絡数は、残存交絡数として10〜100個/mであることが必要である。マルチフィラメント糸の撚り数が100〜500T/Mの範囲において残存交絡数は、織物が平組織である羽二重やタテ糸浮きの多いサテン組織等においては10〜50個/m程度が好ましい。また、製糸したマルチフィラメント糸を無糊・無撚り製織で生産する織編物の場合の交絡数は、単繊維が太繊度の場合、比較的低い交絡数の原糸でも製織工程通過性は良く残存交絡数の織物品位に影響しないが、単繊維が1.5デシテックス以下の細繊度では、製織工程通過性を満足するには高交絡数の原糸が必要になり、残存交絡数が品位に影響しないようにするため交絡数10〜50個/mの原糸をサイジングしたタテ糸を使用することが望ましい。サイジングしたタテ糸の交絡は、工程で減少することなくそのまま最終織物に残存するので原糸の交絡は出来るだけ低い方が望ましい。また、マルチフィラメント糸の撚り数が500T/M以上の領域では、残存交絡数の影響は少ない。また、織編物を構成するマルチフィラメント糸の交絡は、織編物の表面を顕微鏡で見ると残存が確認されるものと撚糸がある場合に織編物を分解して得た構成糸を解撚することで確認可能である。解撚は、織編物からマルチフィラメント糸を取り出し、検撚機で確認できる。方法の一例として、JISL 1096一般織物試験方法における付属書13(規定)「繊維製品−織物−構造−分析法−第4部:生地から取り出した糸の撚り数の測定」に準じた条件で検撚機に試験長としてサンプルサイズから取り出した糸長の糸を初加重として0.5×(繊度デシテックス)cNで取り付けて解撚し、解撚においては分解用針を使用しないで拡大鏡で解撚されたことを確認し、解撚後のサンプルを顕微鏡で交絡を読みとることが出来る。
本発明においては、セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸が、実撚りを付与されてなるものであり、その撚数が100T/m以上、3,000T/m以下であることが好ましい。織編物の撚数は、生産工程通過性向上や、光沢などの表面効果、ソフト性、膨らみや反発性などの風合い効果、強力やピリングなどの物性等に寄与する。具体的に撚数を決めるにあったっては、目的とする効果や、マルチフィラメント糸のトータル繊度によって撚角度が異なるので同一の撚角度となる撚係数を計算し決定することができる。
次に、織編物を構成するセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸の繊度、撚数と天然繊維、再生繊維、ポリウレタン繊維の要件に関し説明する。本発明のセルロース脂肪酸混合エステル繊維マルチフィラメント糸を使用した織編物は、天然繊維、再生繊維およびポリウレタン繊維から選ばれる少なくとも一種とともに好ましく用いられる。そして、従来の天然繊維、再生繊維、半合成繊維あるいは合成繊維を使用した織編物に対して差別化できる要素として、まず環境対応素材であることが挙げられる。従来の環境対応素材として天然繊維が相当するが当該セルロース系脂肪酸混合エステル繊維は、生分解性を有しており、また燃焼時の二酸化炭素の発生についても合成繊維と比較して低減されていることとなる。当該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸の繊度は、単糸繊度が0.5デシテックス〜15デシテックスで、トータル繊度は15デシテックス以上、300デシテックス以下である。衣料用織編物に適しており、織編物において当該繊維の特徴を表現するには、織物ではタテ糸に使用することが好ましく、編物では表面に当該マルチフィラメント糸が比較的多く配列される組織を選択することが好ましい。
現状の衣料用途テキスタイルは、使用する原料によって製織や製編、染色加工の設備、技術面から日本国内それぞれの産地で特徴を競い合っているのが現状である。従って、このマルチフィラメント糸および天然繊維、再生繊維と複合した織編物が両者の特長を活かすには、産地の特性を活用し、得意な分野、ハード、ソフトを活用することによって新しく開発されたセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸のポテンシャルを引きだすことが好適である。当該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸は溶融紡糸で得られることから、紡糸口金孔の形状を適宜採用することによって、従来の再生繊維では不可能であった繊維断面形状を有するマルチフィラメント糸が生産可能である。品種としては、単糸の細繊度化、断面形状が種々の異形、あるいは中空糸といった種類が可能であり、特徴ある織編物を作ることが可能となる。複合の方法としては、交織、交編が最適であり、交撚、交絡した複合糸においても可能である。従って、セルロース脂肪族混合エステルマルチフィラメント交絡糸を使用することによって各産地の従来の設備枠を用いた対応が可能となるのである。
天然繊維、再生繊維、ポリウレタン繊維を一部に含有する織編物について説明する。天然繊維絹の生糸や絹紡糸との組み合わせでは、本来絹織物は、京都、滋賀県長浜、群馬県桐生、山形県米沢が主産地で絹単独の和・洋装のテキスタイル生産地であるがほとんどがタテ糸、ヨコ糸生糸による織物が中心で染色加工場も製織工場に隣接した立地において実施されているが、時代の流れで生産量が減少しているのが現状である。これらの産地は生糸をタテ糸に使用することが基本であり、タテ糸は生糸であるためにノンサイジングの整経、製織のプロセスであるが、合繊フィラメント糸をタテ糸に使用する無撚りの場合フィラメント糸にサイジングが必要であるため使用されていない。
一方、福井、石川、富山産地では絹織物製織を合繊繊維の織物に応用しタテ糸をサイジングして実施しているが、近年で合成繊維の交絡糸を無撚・サイジングや有撚・ノンサイジングをタテ糸にテキスタイル生産を主力にしている。これらの産地に対応するため、タテ糸に当該セルロース脂肪族混合エステルマルチフィラメント交絡糸を無撚あるいは追撚使用しヨコ糸に絹を使用した交織では両者の風合いと光沢、発色性、異色による玉虫効果と独特のタッチに新しい質感のテキスタイルを実現できる。さらに品質、生産面での有効な効果として、生糸がタテ糸の場合は染色工程で擦れあたりによる生糸のフィブリル化が発生するため、染色加工はバッチ式のスター染色機での対応となるが、液流染色機でもヨコ糸の生糸に少しフィブリル化が見られる程度で、絹サイドの酵素処理で十分品位良好な物が得られ、生産性でも有利である。なお、セルロース脂肪族混合エステルマルチフィラメント交絡糸と絹の複合比率としてテキスタイルでそれぞれの繊維の効果を表現することが必要であるが、タテ糸あるいはヨコ糸に使用する状態において、絹は比較的繊度が小さいのでセルロース脂肪族混合エステル繊維マルチフィラメント糸の比率が高く、50〜8重量%とすることが好ましい。
次に、天然繊維である綿との組み合わせによる新規なテキスタイルに関し、従来の綿織物の洋装高級テキスタイルの開発産地として静岡浜松産地、大阪泉州産地、愛知県西尾産地等が代表的であり、綿単糸をタテ糸にサイジング整経で使用しているが、マルチフィラメント糸を使用しノンサイジングで実施する撚糸設備、技術は無くこの産地ではタテ糸綿糸、ヨコ糸マルチフィラメント無撚使いが基本となる。また、北陸地区ではマルチフィラメント糸のサイジングあるいは撚糸したタテ糸を使用した交織が得意になってきている。そこで、最近の中国等からの廉価商品の輸入激増により低付加価値素材では産地の存続が出来ない状況になってきている。後進国からの輸入に対抗するには、技術的に真似の出来ない商品を提供することが先決であり、当該セルロース脂肪酸混合エステル繊維のマルチフィラメント交絡糸を使用し綿糸との複合化により、組み合わせ効果による特徴あるテキスタイル、特に細繊度、細番手糸の高度なテキスタイルの生産が可能となる。タテ糸に当該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸を使用し、ヨコ糸に綿糸を使用した交織ではセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸の品種によって綿織物とは異なる質感が付与可能となる。基本的には当該繊維の高発色性や絹様の光沢、単糸細繊度のマルチフィラメント糸のソフトささらには低収縮性による寸法変化率改善と綿繊維の吸湿性によるタッチの良さ、快適性との優性結合特性を有するテキスタイルが可能である。たとえば、セルロース脂肪族混合エステルマルチフィラメント交絡糸15〜84デシテックスを無撚あるいは追撚し、細番手綿糸80番手以上の単糸の組み合わせテキスタイルが生産することに高度の技術を有し、染色加工面での種々の加工条件による高付加価値が可能なため極めて有効である。また、麻繊維は近年、麻繊維の生産、紡績とも日本の繊維産業として海外との競争が出来ないため高級洋装用に使用できる紡績糸は生産されておらず、原料を輸入して他繊維との混紡により細番手糸を生産している程度でほとんどが輸入糸に依存しており絹産地、綿産地、ウール産地で高付加価値テキスタイルに必要な糸とは市場から入手して実施できる。テキスタイルの例として、タテ糸に綿番手80番単糸の太さに相当する73デシテックス以下の当該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント交絡糸をサイジング整経あるいは追撚サイジング整経し、ヨコ糸に綿100%あるいは他の混紡単糸や双糸を使用することによって綿織物分野で新規な光沢、当該繊維の低屈折率による発色性や高発色玉虫効果と綿にないドレープ性、綿の優れた吸湿特性によるシャツ、ブラウス、ドレスの薄地からスーツ、ジャケット、ボトムさらにはフォーマルの広いアイテムに対応できる新しい付加価値素材として使用可能なテキスタイルを実現できる。
次にウールのテキスタイル産地の代表は、愛知県尾州地区であり、製織、製編、染色加工の分業体制が確立している。綿の混用率としては、細番手糸を使用する方が効果的であり、20〜50%の範囲で特徴表現が出来る。すなわちウール織物は、タテ糸にウール紡績糸の双糸をノンサイジングで整経しタテ糸で織機に仕掛けて製織するのが基本である。タテ糸にフィラメント糸を使用することは殆ど実施されていない。特にタテ糸のサイジングについては、設備、技術が無く行われていない。従ってウールのテキスタイルは、タテ糸にウールやウールを使用した混紡糸の双糸を使用しており、梳毛番手60番手以上の梳毛糸の単糸による織物は生産できていない。ヨコ糸はフィラメント糸の撚糸付与で実施することが必要不可欠な状況から実施することが始まった。市場でウール細番手単糸がタテ糸に使用したテキスタイルは、ウール細番手紡績糸と水溶性ビニールアルコール繊維フィラメント糸と合わせて撚糸しタテ糸に使用製織した生機を染色加工で水溶性ポリビニルアルコールフィラメント糸を溶解して作られたものである。このように羊毛との複合織物は、タテ糸にマルチフィラメント糸単独で使用される例が少なく、あっても再生繊維を追撚あるいは複合合撚して使用することもあるが、設備、技術面から少ないのが現状である。そこで、細繊度セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント交絡糸を使用し、ウール紡績糸、特に細番手糸をヨコ糸に使用した従来全くない薄地織物やウール紡績糸の細番手双糸や製織可能な単糸をタテ糸としヨコ糸に細繊度セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸を無撚あるいは追撚しヨコ糸に使用した織物は好ましく用いられる。たとえば、タテ糸に当該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント交絡糸15〜300デシテックスの無撚あるいは追撚糸とし、ヨコ糸に梳毛紡績糸や混紡糸の単糸、双糸、特に60番手以上の単糸、双糸を使用したテキスタイルとすることによって、従来のウール織物で得られる領域では不可能な広範囲の衣料用服種に使用できるテキスタイルとして絹様の優雅な光沢、発色性と、高級感のある仕立て、また洗濯収縮が小さいので家庭洗濯対応可能な性能を有する衣料用テキスタイルの創出が可能となる。特にウール織物は洗濯における防縮性に問題があり、高級質感のテキスタイルでは実現されていないのが現状である。ウールの混用比率は、ウールは細番手としても単糸、双糸両方使用可能であり、混率としてはウールリッチの80重量%からセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸リッチの20重量%の広範囲で使用可能である。
次に、セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント交絡糸と再生繊維を複合した織編物について構成を説明する。現在、市場で入手可能な再生繊維はビスコースレーヨン、キュプラレーヨンの紡績糸およびマルチフィラメント糸とNメチルモルホリンNオキサイドを溶媒として繊維化される繊維の紡績糸であるが、これらの繊維は、当該セルロース脂肪酸混合エステル繊維マルチフィラメント交絡糸と混用できる。ビスコースレーヨンやキュプラレーヨン繊維の特性として、湿潤強力が低いことおよび収縮が大きいことがあり、そのためテキスタイルの引裂強度、水系洗濯における収縮に問題がある。この点、当該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸は問題なく複合により性能改善が可能となる。
テキスタイルの構成例として、セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント交絡糸15〜300デシテックスをタテ糸とし、ヨコ糸に再生繊維のフィラメント糸や紡績糸を使用した織物やタテ・ヨコ糸逆転の織物において、セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸の特性を活かすために再生繊維の混率は40重量%以下とすることが好ましい。
テキスタイルには最近機能特性としてストレッチ性の要求が高まっているが、天然繊維、再生繊維を使用する場合、ストレッチ性の付与には通常ポリウレタン系弾性繊維が使用される。当該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸との複合織編物には、セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸をポリウレタン系弾性繊維にカバリングし、またはインターレース混繊あるいはその追撚糸、通常の甘撚り合撚後追撚方式による複合糸として使用することが好ましい。また、天然繊維、再生繊維の長繊維は、セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸とポリウレタン系弾性繊維とともに複合するか、あるいは紡績糸の場合CSY方式あるいは紡績糸の合撚やプライヤーン方式で得られる複合糸いずれも使用可能である。ポリウレタン系弾性繊維は、22〜77デシテックスのものが適している。
次に、溶融紡糸して得られたセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸を使用した織編物、およびさらに天然繊維、再生繊維、ポリウレタン繊維などを用いた複合織編物の製造方法について説明する。
本発明においては、可塑剤を含む重合体を用いて溶融紡糸して得られた交絡数10個/m以上、100個/m以下のセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸を含む織編物の生機を、脱可塑剤処理し、次いで精練・リラックスを行い、常圧100℃以下で染色し、引き続いて乾熱処理することにより織り編み物を得る。
セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸は、可塑剤を含む組成物を溶融紡糸して得ることができ、紡糸口金からパッケージ巻き取りまでの位置でインターレースノズルによりマルチフィラメントを交絡して得られる。
天然繊維、再生繊維等との組み合わせによる織編物においては、交織あるいは交編することが好ましい。当該マルチフィラメント糸と天然繊維あるいは再生繊維と糸同士を引き揃えて合撚糸、インターレース複合、さらに撚糸することも行われるが、糸が太くなること、複合コストがかかることからコストを吸収でき、付加価値が期待される場合に使用されるが大抵の場合交織で行われることが多い。
編物の場合、丸編み、経て編み、横編みのいずれでも良い。複合はシングル編み機、ダブル編み機で異なるが、給糸配列、表面・裏面のリバーシブル組織等を用いることができる。織物は製織工程でタテ糸、ヨコ糸の素材組み合わせと組織によって種々の新規付加価値を実現できる。その生機は、産地の特性の中で商品コンセプトによる原糸と織物・編物の組織等の設計により実施出来る。ファッション用とのテキスタイル設計は、従来の太い原糸を使用した厚地織物の使用原糸量が目付により比率が高いと高コストとなり、販売値段に対して高く利益がとれない市場構造において生産は労務費用の低い東南アジアに生産移行しているので、細繊度の糸による生地目付の少ないテキスタイルで付加価値を必要とする。繊度の小さい原糸は、加工工程の生産設備の設計、条件、設計技術に高度な対応が要求される。
特に、最近はコンパクトな緻密感のあるテキスタイルが要求され、当該セルロース脂肪酸混合エステル細繊度マルチフィラメント交絡糸を使用し、天然繊維、再生繊維の高密度複合織編物設計、生産設備、条件等の設定は高度な技術が用いられる。織編物の生産に対応するハード面では、複合繊維に通常使用される準備機、織機、編み機で可能である。製織において、天然繊維、再生繊維は通常、水を使用しないレピア織機、エアージェット織機が中心であるが、セルロース脂肪酸混合エステル繊維マルチフィラメント交絡糸はウオータージェット織機でも製織可能であり、ヨコ糸に綿糸など可能な糸をヨコに使用して製織は可能である。
染色加工工程において、生機をまず、薬品・助剤を含まない水あるいは温水浴を通して脱可塑剤処理を行う。温度は季節の使用する常温水あるいは季節間を通して変動のない条件、例えば40、50℃の一定条件でも良く、後の工程で繊維収縮を必要とする場合や熱セット効果を上げたいといった繊維特性を使いたい場合繊維に影響しない条件で行う。処理形態は、ソフサーやオープンソーパー型の拡布状が望ましく、処理時間は1〜3分で実施することが好ましい。当該処理を行うことによって次の工程からは複合する天然繊維や再生繊維の加工に適した工程、条件を組み入れることが可能になる。ただし、アルカリ濃度、温度は、セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸のアルカリ鹸化が起こらない条件すなわち、アルカリ濃度1.5%以上で温度50℃以上の条件は避けることが好ましい。絹繊維複合は、絹の加工条件で精練・リラックスを行うことによってセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸サイドも処理される。綿繊維は、綿・麻の発色性等を向上するためシルケット加工を実施しても良いが、常温より高い温度にならないことが重要である。その後の工程としては付加価値加工としての工程を組み込むことが出来る。また、シルケット加工を行わずに絹と同程度の条件で精練・リラックスし綿の付加価値付与加工を行うことが出来る。
ウールは、アルカリに弱いので精練・リラックスはウールの条件で実施することが重要で、その後の工程もウールの質感を活かす加工が必要である。再生繊維のビスコースレーヨン、キュプラレーヨンは、やはりアルカリ処理条件を適切に設定することが重要であり、常温領域の温度で高濃度のアルカリ処理は禁物である。染色加工工程では、質感を左右するのは前工程であり条件管理をきめ細かに行う。ポリウレタン弾性繊維を使用した織編物の加工においては、脱可塑剤処理、乾燥後、乾熱温度170〜180℃でピンテンターによる弾性糸の熱セットをすることが好ましい。当該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸は、脱可塑剤がされないまま120℃以上の乾熱処理が施されると、強度が極端に低下するため好ましくない。当該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸は、脱可塑剤によりガラス転移点温度が160℃以上となるため、その後、精練・リラックスを行う。脱可塑剤をすることにより、ガラス転移温度が上がり、その後に精練、染色等を行うことで、織編物の傷みが少なく、高強度を保つことができる。リラックス・精練では、タテ糸をサイジングした場合に糊や油剤の落とし工程が必要であるが、天然繊維、再生繊維との複合に使用する糊剤は通常ポリビニルアルコールをベースとするものを使用し、精練浴は天然繊維、再生繊維織編物の通常の条件を用いることができる。精練・リラックスに引き続いて乾燥・セットを行い、加工反のしわ、幅長さのセットを実施し、染色加工に投入する。染色温度は常圧100℃以下で実施する。100℃を越えると単繊維の強度低下が起こるので好ましくない。染料は、ポリエステル、アセテート繊維と同じ分散染料を用いることができる。複合織編物の場合は、分散染料での染色後に、天然繊維、再生繊維の染色を行う。染色後の乾燥、幅・長さセットは180℃以下、好ましくは170℃以下とすることが望ましい。また、乾燥・後加工により付加価値加工を実施することができる。
セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸は綿・麻、ビスコースレーヨン、キュプラレーヨン等のセルロース繊維に比べて、熱可塑性があり、乾・湿繊維収縮が低く、熱セットによる形態セットが可能である。熱カレンダー加工により天然繊維、再生繊維との組み合わせで新しい光沢、表面感を表現することができる。染色後タンブラー乾燥条件を選ぶことにより、表面に天日干し風の表面感とまろやかな膨らみを有する風合い感が得られ、またエアーフロー加工によって表面のセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸の微細なたるみの変化による表面感と風合いが得られる。
次に、セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント交絡糸を使用した織編物を使用した衣料について説明する。従来の織編物において、天然繊維や再生繊維を単独あるいは混紡、交織して用いると湿潤状態で寸法変化率が大きいため、洗濯はドライクリーニングで行うのが普通であり、家庭用品品質表示法(絵表示)でドライ指定され、商業クリーニングへ出しているのが現状である。本発明の溶融紡糸したセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸は、可塑剤を含有し製糸された繊維の収縮が低く、染色工程で脱可塑剤処理、染色、仕上げセットを経ても変化が少なく、また水系処理を行っても膨潤・収縮は小さく、熱収縮は3%以下である。織編物中の当該繊維の含有率が50%以上であれば、織編物の洗濯収縮率は小さく、家庭用品洗濯等の取り扱いとして、JISL 2017における103法(液温は40℃を限度とし、洗濯機による洗濯が出来る)に対応可能である。また、織編物を染色した後に、生地洗いし、次いで縫製することも、織り編み物を染色した後、縫製し、次いで製品の状態で洗うこともできる。従来の天然繊維、再生繊維を使用した織編物は、水系洗いで残留収縮が大きいため縫製する場合のパターニングの困難さが指摘されているが、本発明の織編物は,水系残留収縮率を3%以下にすることが可能であることから、縫製品の寸法変化率を低くすることができる。
本発明の織編物は、ブラウス、スーツ等の婦人衣料などとして好適に用いられる。
以下に、具体的に実施例により説明する。
本発明に使用するセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸および織編物での測定法、評価法は以下の方法を使用した。
1.セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸
A.交絡度
ロッシールド社(Rothschild社、スイス)製のエンタングルメントテスター(Entanglement Tester Type R2702)を用い、以下のように行った。
糸状に針を刺したままで初張力10gを掛けて一定速度5m/minで走行させ、交絡点で張力が規定値(トリップレベル)の15.5gまで達する長さ(開繊長)を30回測定し、その平均した長さ(平均開繊長)に基づいて糸長1m当たりの交絡数を求めたものを交絡度(=1000/平均開繊長)とした。
B.繊度、強度、伸度、沸水収縮率
繊度、強度、伸度は、JIS L 1013(化学繊維フィラメント糸試験方法)に準ずて測定した。
沸水収縮率はかせ収縮率(A法)を適用し、巻数10回、加重(g)=表示繊度(デシテックス)×1/9g×10(巻数)×2(かせ折り重ね数)を四捨五入して求めた。処理温度99.8±0.2℃、処理時間15分とした。
2.織編物
A.織編物工程通過性
a.原糸パッケージからの解舒性
撚糸工程のパーンワインダー糸速450m/分における定量巻き時の糸切れ比率(糸切れ数/使用錘)(%)で比較した。
b.撚糸糸切れ
村田機械(株)社製ダブルツイスターにおける、糸切れ比率(糸切れ数/使用錘)(%)で比較した。
c.マルチフィラメントの毛羽発生
パーンワインダー、撚糸上がりのパッケージの端面を目視にて確認毛羽の有・無を確認した。
B.品質
a.寸法変化率
JIS L 1909(繊維製品の寸法変化測定方法)による、布地の試験片を用いて測定した。
ただし、製品からの採取等でサンプルの採寸が不足の場合、サンプルから測長可能な長さで行う。
i) 織物生機、染色加工上がり生地:JIS L 1096織物の寸法変化B法(沸
水浸せき法)30分間浸せきによった。ただし、ウール混用はC法によった。
ii) ニット生機、染色加工上がり生地:JIS L 1018B法に準じた。
b.洗濯処理による寸法変化
JIS L L0217の付表(記号別の試験方法−洗い方(水洗い))の番号103法に規定する試験装置、試験方法によった。
ただし、評価サンプルは採寸が不足の場合、可能なサンプルから採寸で行う。
c.タンブル乾燥処理による寸法変化
織物:JIS L 1096I−2法(高温タンブル乾燥法)によった。
ニット:JIS L 1018の中温タンブル乾燥法によった。
d.撚り数
織編物の生機、加工上がり、縫製品で必要な場合、サンプルから採取した測定可能な寸法の試料をJISL 1096(一般織物試験方法)付属書13に規定の方法により測定した。
e.表面イラツキ
生機、染色加工上がり生地の検反機の反射光による目視判定を行い、無し、やや有り、やや目立つ、有り(目立つ)の判定を行った。なお、無し、ややありを合格とする。
[実施例1、比較例1]
溶融紡糸セルロース脂肪酸混合エステル繊維フィラメント糸を以下のとおりに作った。
セルロースアセテートプロピオネート82重量%と、平均分子量600のポリエチレングリコール(PEG600)17.9重量%およびホスファイト系着色防止剤としてビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.1重量%を混合し、二軸エクストルーダーを用い230℃で混練し、5mm程度にカッティングしてセルロース脂肪酸混合エステル組成物ペレット(Mw16.0万)とし紡糸温度260℃で紡出し、1500m/分の速度で引き取って、丸断面100デシテックス−72フィラメントおよびY断面100デシテックス−36フィラメントの繊維を作成し、それぞれ交絡の有、無のものを4品種作った。
マルチフィラメント糸の特性は、丸断面糸が強度1.1cN/dtex、伸度22.5%、沸収率3.1%、交絡度57個/m、Y断面糸が1.1cN/dtex、伸度21.5%、沸収率2.8%、交絡度30個/mの特性を有していた。
(1)100T−72−丸 交絡有り
(2)100T−72−丸 無し
(3)100T−36−Y 交絡有り
(4)100T−36−Y 無し
まず、4品種のマルチフィラメント糸が、それぞれ外形12cm、長さ15cmの紙管にトラバース11.5cm幅で巻き取られた4kg/ドラムのパッケージを、パーンワインダにより糸速450m/分で、パーンに、0.5kgのワープワインドで、48錘分巻き返した。工程通過性としてパーンワインダ巻き返しにおける糸切れは、交絡無し原糸の場合丸断面糸が5本、Y断面が2本で交絡有りは2品種共に0本であった。各48錘のパーン糸層の毛羽発生を確認したところ交絡無しは、糸切れのあったパーンに短い毛羽が存在することが確認され、交絡あり原糸のパーンでは毛羽の確認は出来なかった。
パーンワインダで巻き上げたパーンをダブルツイスターで回転数9,000r.p.m、撚り数250t/mで追撚を行い、巻き上がりのチ−ズ端面の毛羽発生状況を確認した結果ほとんどなく、撚糸糸切れは、2品種の交絡無し3本、2品種の交絡有りは0本で良好であった。
引き続いて撚糸上がりの糸に、糊付け、部分整経を行い、タテ糸を準備した。タテ糸を津田駒製エアージェットルームに仕掛け、ヨコ糸にそれぞれタテ糸に用いた糸の無撚の糸を使い、村田機械(株)ダブルツイスターを用い、500r.p.mの織回転数で平組織を製織した。製織の生機密度はタテ110本/2.5cm、ヨコ密度は80本とした。
製織性は、交絡付与原糸では、停台回数は30当たり、それぞれ1回、2回、交絡付与無し原糸では、停台回数は30当たり、それぞれ5回、7回であった。
製織した生機を染色加工工程に投入した。
まず、3槽のオープンソーパー型を使用し50℃温水で拡布により脱可塑剤処理を実施した。約2分処理後、生機重量と、処理/乾燥後の重量比で脱可塑剤を確認したところ17%であった。
引き続き、液流型染色機に炭酸ソーダを0.5%の濃度で投入し、90℃まで昇温し精練・リラックスを行った。その後排水し分散染料で通常の昇温速度で常圧型液流染色機を使用し、100℃でブラックに染色した。染色完了後エアーフロー処理、制電防止剤、仕上げ剤を付与し、170℃でタンブラー乾燥した。
加工完了のテキスタイルは、100デシテックス72フィラメント使用のものについては、タテ糸密度は115本/2.5cm、ヨコ糸密度は84本となり、生地の寸法変化率は、タテ、ヨコそれぞれ0.5%、0.3%であった。100デシテックス36フィラメント使用のものについては、タテ糸密度は114本/2.5cm、ヨコ糸密度は83本となり、生地の寸法変化率は、タテ、ヨコそれぞれ0.7%、0.4%であった。
染色堅牢度は、いずれも湿摩擦堅牢度が4級レベルであった。
仕上げ反の外観は、丸断面糸使用品はマイルドな光沢のソフトタッチの風合いで、交絡有り、無し、共に表面いらつきはなかった。Y断面使用品はシルク様のマイルドな光沢を有し、きしみ、張り腰のある風合いであった。
4品種ともエアーフロー及びタンブラー乾燥により新しい天日干し風の表面感が得られ、新規な質感としてファッション面から高感度素材として評価されるものであった。
生地物性について、洗濯評価を実施した結果、JIS L 0217による水系家庭洗濯103法で寸法変化率が丸断面,Y断面それぞれ+0.3%、+0.4%、表面変化がいずれも4.5級と、マシンウオシャブル可能な結果であった。
比較として公知のセルロース系繊維としてドイツのエンカ社製ビスコースレーヨンマルチフィラメント糸84デシテックス−31フィラメントの2.0kg巻チーズ、1ケースを使用し、実施例1と同様にして、織物の試作と工程の通過性、品質を確認した。
当該糸は、湿式連紡ビスコースレーヨンで、マルチフィラメント糸に交絡付与はされていない。
まず、織物の試作に当たり、パーンワインダで分割を450m/分で実施したところ、紙管から解舒の際、マルチフィラメント糸の単糸がばらけて引っかかり毛羽となり、糸切れが多発したので巻き返し速度を250m/分に落として実施した。
引き続いて村田機械(株)ダブルツイスターで実施例1と同様に撚糸したが、糸切れが多く、回転数を7,000r.p.mに落として実施した。
製織は、エアージェットで実施例1と同様の密度設定により、整経、サイジングを行い織機に掛けた。織機回転数が500回では、ヨコ糸の解舒速度が広幅160cmの2給糸供給で無撚り、交絡無し原糸のため糸速が400m/分を超え、製織停台が多く回転数を落とさざるを得なかった。得られた生機をビスコースレーヨン織物の加工条件で実施し検反の結果、タテ糸のレーヨン連紡糸の錘間差に起因すると見られるタテ筋とヨコ段があり、品質が極めて悪いものであった。
また、染色加工反の物性評価においても黒の染色堅牢度において、湿摩擦堅牢度が1級の不良、また湿潤収縮もタテ、ヨコそれぞれ−8%、−7%と悪く防縮性樹脂加工を必要とするレベルであった。
[実施例2]
実施例1と同様の溶融紡糸セルロース脂肪酸混合エステル繊維フィラメント交絡糸を用い、溶融紡糸により、84dtex−24F−Y型断面糸を作成した。この原糸にダブルツイスターでSおよびZ方向の撚りとして、1,600T/mで撚糸し、80℃でより止めセットを行いニット用に原糸を準備した。ダブルニット丸編み機32GでS撚り,Z撚りを交互に給糸し、クリールに立て両面スムース組織で編み立てを行い、生機を作成した。 染色加工工程は、丸編み地を開反することなく筒状そのままで常圧型液流染色機に投入し、まず50℃の水で脱可塑剤処理を行い、炭酸ナトリウム0.5g/Lを添加し精練・リラックスを昇温80℃で行った。排水し昇温100℃で、分散染料で染色を行い、洗浄後仕上げ剤を付けてタンブラー乾燥を行った。開反し、仕上げセットを行い幅160cm、48コース/2.5cm、目付210g/mの仕上げ反を得た。JISL 1018B法(沸騰水浸せき法)による生地の寸法変化率はタテ、ヨコそれぞれ−1.0%、−2.5%であり、また103法洗濯寸法変化率は、+1.5%、−2.5%で再生繊維のビスコースレーヨンに対し、優れるものであった。加工反は、シルキーな光沢と合繊には無いしっとり滑らかなタッチで、低屈折率効果による高鮮明な発色性を有していた。
[実施例3、比較例2]
実施例1に使用したと同じセルロースエステル繊維マルチフィラメント100デシテックス−36フィラメント−Y断面交絡糸2糸条と、ポリウレタン系弾性糸として旭化成(株)製のロイカ高セットタイプ糸33デシテックス1糸条とを用い、複合糸を試作した。柿木製作所製リング撚糸型ダウンツイスターのクリールから100デシテックス−36フィラメント交絡マルチフィラメント糸をガイドに沿って引きだし、撚糸機のネルソン型ローラーに別のローラー間で2.5倍のドラフトを掛けて引き延ばしたロイカと計3本のフィラメントを引き揃え、スピンドル回転数7,000回で糸速350m/分の速度で合糸、パーンに巻き取った。セルロースエステル繊維のマルチフィラメント糸はマルチフィラメントの交絡により解舒がスムースで糸切れの発生は無く工程通過性良好であった。引き続いて、合撚パーンを村田機械(株)製ダブルツイスターに掛け、S撚り800T/mを追撚糸したカバリーングタイプの複合糸を作った。引き続いて、当該複合糸をサンプル整経機でタテ糸用ビーム準備し、ピカノール社製レピア織機に仕掛けヨコ糸を変更し織物を製織した。ヨコ糸品種として、(1)タテ糸に使用したものと同一糸、(2)低粘度ポリマーであるポリエチレンテレフタレートと、高粘度ポリマーであるポリトリメチレンテレフタレートとを用い、ポリエステル複合紡糸機で紡糸した56デシテックス−24フィラメントのコンジュゲートマルチフィラメント糸を2本引き揃えてS撚り800T/mで合撚した糸、(3)市販されている綿とロイカ78デシテックスの精紡機によるCSYの3品種を使用しそれぞれ2/1ツイル組織で生機を作成した。
当該生機2点を染色加工した。染色加工工程および条件は次の通り実施した。まず、生機を50℃水温に調整したオ−プンソーパ型精練・リッラクス機で精練剤等の助剤、薬剤を全く添加しない純粋な水だけの水槽で脱可塑剤処理を行い、溶融紡糸時に添加した低分子エチレングリコールを17重量%除去した。引き続き拡布状で乾燥し、次工程の精練・リラックスでポリウレタン弾性糸の収縮によって織物にシボが発現することを防止するためポリウレタン弾性糸のパワーを消すべくピンテンター機による180℃乾熱で幅、長さ方向の熱セットを実施した。続いて、常圧タイプの液流染色機で昇温による助剤として炭酸ナトリウムによる精練とリラックスを行い、廃液後引きついて染料助剤を入れて昇温し分散染料によるセルロースエステル繊維マルチフィラメント糸の染色を100℃で行った。ヨコ糸(2)のポリエステル系コンジュゲート糸も100℃で染色したものはタテ糸より淡染傾向にあるが色相として段落ちで問題はなかった。また、ヨコ糸(3)の綿・ポリウレタン弾性糸のCSY使用品は、ワインレッド中濃色で分散染料染色を行い、80℃で反応染料による染色を実施した。
染色後、通常のピンテンターによる制電防止剤、風合い調整剤処理でセットするものと、エアータンブラー処理し、ドラム乾燥によるタンブラー乾燥を実施する2種の加工を行った。染色・セット、染色・タンブラー乾燥実施の生地はいずれも従来の同用途のテキスタイルの中心であるポリエステル長繊維使いに比較して発色面でセルロースエステル繊維の低屈折率特性の効果で非常に高鮮明発色性を示し、表面感はY断面効果によるシルキーな艶感に優れる上品な光沢を有するものが得られた。
加工後の織物品位は、脱可塑剤処理、乾燥、熱セットによるポリウレタン弾性糸の収縮制御により、シボ発生が無く高級感要件として問題なかった。
加工工程による生機、仕上げセット後の幅は、ヨコ糸(1)使いはそれぞれ144cmが92.5cmに、ヨコ糸(2)使用はそれぞれ135.5cmが106cmに、ヨコ糸(3)使いは129cmが84cmになった。
タンブラー乾燥品は、ピンテンターセットより若干幅は入っていたが、表面表情が手洗い、天日で吊り干しした感覚のカジュアル感豊かな商品が得られた。
染色加工の比較として、脱可塑剤処理の後、乾燥・ピンテンターセットを行わず、直接精練リラックスを実施したものは、シボ発生のため表面不良のため加工を中止した。
[実施例4]
実施例1の溶融紡糸マルチフィラメント糸100デシテックス−36フィラメント−Y断面交絡糸に加え、84デシテックス−24フィラメント−Y断面交絡糸を用い、交絡度60個/mの糸を作成した。
タテ糸に生糸(絹)30デシテックスが掛けられているレピア織機のヨコ糸として100デシテックス−36フィラメント−Y断面交絡糸を使用し、平織り物生機を製織した。
製織性は、停台が無く生糸より製織性良好との評価を得た。
生機を合成繊維織物の加工設備を使用し染色加工を実施した。
比較のためタテ・ヨコ糸に生糸30デシテックスを使用した生機も同時に加工した。まず脱可塑剤をソフサーで助剤、薬品のない水50℃で行った後、石鹸添加による生糸サイドの脱精練加工を行い、引き続いて液流染色機で分散染料によるセルロースエステル繊維サイドの染めを常圧100℃で行い廃液後酸性染料により絹サイドの染色を行った。染色機から取り出すと生糸がフィブリル化し表面が微細起毛で追われていたため生糸の微細毛羽を酵素処理により加工した結果、セルロースエステル繊維をヨコ糸に使用した生地は、ヨコ糸に加工段階でフィブリル化が無くきれいで、タテ糸の生糸のフィブリル化も押さえられているため酵素処理で表面が均一に処理され、光沢、艶、発色性等品位として優れていた。生糸100%についてはロープ状の液流シワが残り、フィブリル化毛羽も十分に処理されず、品質的に問題があった。
次いで、タテ糸に27デシテックスの生糸(絹)、ヨコ糸に84デシテックス−24フィラメント−Y断面交絡糸を使用し、平織物を作成した。また、タテ糸に16デシテックスの強撚生糸、ヨコ糸に84フィラメント−24フィラメント−Yフィラメント糸を使用したジョーゼット織物を作成した。得られた2つの生機について、拡布状で絹繊維の精練後単繊維が擦れてフィブリル化現象を起こさない条件で染色したところ、仕上がった生地の表面は毛羽が無く非常に鮮明なものであった。染め上がった生地は、Y断面の効果と相まって独特の光沢陰影感のある玉虫効果のあるものが得られた。また、セルロースエステル繊維を用いているため、絹100%と比較してプリーツ加工でのヨコ糸セット効果が得られ、従来のセルロース繊維では得られない特徴を有するものであった。そして水系洗濯においても絹100%に比較して優れるものであった。
[実施例5]
実施例1に使用のセルロースエステルマルチフィラメント交絡糸100デシテックス−36フィラメント−Y型断面に実施例1に示す方式で撚り数S撚り800T/mで追撚しタテ糸とした。この糸を津田駒(株)製エアージェットに無糊でタテ糸に仕掛け、ヨコ糸にインド綿100%を使ったコーマ糸の単糸60番手を用い、3/2ツイル組織を製織し生機を得た。生機密度は、タテ177本/2.5cm、ヨコ108本/2.5cmとし、生機幅は163cmであった。
織機回転数550r.p.mで製織したがタテ糸、ヨコ糸の製織性は量産可能レベルであった。また、タテ糸とヨコ糸種逆転のタテ糸にインド綿100%コーマ糸単糸80番手を仕掛けて、ヨコ糸に実施例1で使用した溶融紡糸セルロースエステル繊維マルチフィラメント交絡糸100デシテックス−36フィラメント−Y断面を用い、紡糸巻き取りパッケージを織機に掛け織機回転数500r.p.mで2ピック給糸製織した。組織は5枚サテンで、生機密度はタテ215本/2.5cm、ヨコ93本/2.5cmで生機幅173cmであった。セルロースエステル繊維マルチフィラメント糸の解舒速度は450m/分であったが、原糸の交絡効果により単糸の割れによる解舒不良もなくスムースに製織出来た。生機品として、欠点の判定は合格であった。得られた生機を、助剤、薬剤を添加しない50℃水の浴槽に、拡布状で通して脱可塑剤処理し17%の重量減で加工した。
タテ糸にセルロースエステルマルチフィラメント交絡糸を用いた方の織物について、常圧タイプの液流染色機により炭酸ナトリウム1g/Lの低濃度、昇温80℃で精練・リラックスを行い、引き続いて酵素処理により綿糸の毛羽を処理した。染色は100℃分散染料、綿サイドを60℃反応染料で染色し、樹脂加工170℃ピンテンターでセットし、カレンダーローラ180℃で加圧熱処理による光沢処理を行った。仕上がりの織物の質感は、シルキー光沢に異色、段落ちの玉虫効果と綿のタッチが活かされた新規な織物が得られた。当該加工織物の103法洗濯寸法変化率はタテ−1.8%、よこ−0.5%で綿使用織物としては低い特性を有し、家庭選択可能なレベルであった。
一方、タテ糸にインド綿100%コーマ糸単糸を用いた方の織物について、脱可塑剤処理に引き続いて、綿加工条件常温で苛性ソーダによるシルケット加工し水洗、乾熱幅セット後、常圧100℃分散染料、80℃反応染料染色を行い、ロータリータンブラー乾燥し、仕上げた。仕上がりは、タテ綿シルケットの上品でタンブラー加工の膨らみとまろやかな感覚の表面シワ感が得られ、ヨコ糸のフィラメントの張り感と裏シルキー光沢によるリバーシブル効果のあるものが得られた。この織物の洗濯寸法変化は2%以下で取り扱いに問題ないレベルであった。
[実施例6]
実施例5で用いたセルロースエステルマルチフィラメント交絡糸100デシテックス−36フィラメント−Y型断面に撚り数S撚り800T/mで追撚糸としタテ糸とした。これにヨコ糸としてウール100%梳毛糸60番手単糸を打ち込み3/2ツイルの生機を製織し、染色加工した。セルロースエステル繊維の脱可塑剤処理をウール織物の前工程で使用される多層の洗浄機で50℃の水で行い、17%の減量を行った。引き続いてウールサイドの精練・リラックスをウール織物加工の標準条件で行い、次いで乾熱セットを行って、常圧型液流染色機で分散染料、酸性染料でベージュの同色で染色した。洗浄、乾燥、セミデカ加工し、仕上げ剤処理しピンテンター170℃で仕上げセットを行った。
JIS L 1096織物の寸法変化C法(浸透浸せき法)によるによる測定、評価を実施した結果、寸法変化率はタテ、ヨコ方向それぞれ−0.9%,−0.1%で低い値であった。また、JISL 1096織物のプレス寸法変化H−1法(乾熱加圧法)では、寸法変化率−0.5%、−0.8%と低いレベルであった。加工上がりの生地は、タテ糸浮き構造の3/2綾組織であるため、タテ糸セルロースエステル繊維Y型断面マルチフィラメント糸の練り絹調艶のある光沢と、光の屈折率が小さいことによる透明感によってヨコ糸ウール紡績糸の糸ムラ感が透けて極めて新しい独特の表面感がえられた。風合いは、マルチフィラメントの張り感とヨコ糸の紡績糸の膨らみによる滑らかなタッチ、さらにバイアス方向の伸縮性から縫製仕立て映えのする高質感素材であった。
[実施例7、比較例3]
実施例5と同様のタテ糸を用い、ヨコ糸にインド綿100%のコーマ糸50番手単糸を使用し、織物組織カルゼを製織し、染色加工を行った。工程は、脱可塑剤処理、精練・リラックス、酵素毛羽処理、染め前セット、染色、エアータンブラー加工、仕上げセットの順で縫製用に加工反を作成した。タテ、ヨコ密度それぞれ250本/2.5cm、104本/2.5cmであった。
JIS L 1096織物の寸法変化B法(沸騰水浸せき法)による洗濯寸法変化率はタテ−1.5%、よこ−2.9%であった。この生地を使用し、縫製後製品洗い、タンブラー乾燥を行い最終製品としたが生地収縮による問題はなかった。
比較品として、上記のタテ糸を実施例1で使用した市販されているドイツ国エンカ社製ビスコースレーヨンマルチフィラメント糸84デシテックス−31フィラメントを使用した以外は同様に製織した。染色加工は、タテ糸、ヨコ糸の加工工程に順次実施し、タテ糸、ヨコ糸密度それぞれ253本/2.5cm、108本/2.5cmの縫製用生地を作成した。
JIS L 1096織物の寸法変化B法(沸騰水浸せき法)による洗濯寸法変化率はタテ−8.5%、よこ−8%であった。当該の寸法変化率は大きすぎ、縫製パターンで調整できるレベルでなく、寸法変化率を3%にすべく加工条件を検討したが湿潤収縮が大きいビスコースレーヨンでは不可能であった。
溶融紡糸して得られるセルロースエステルフィラメント糸、マルチフィラメント交絡糸を使用する織編物は、従来のセルロース系再生繊維や半合成繊維に比較して高感性、高品質が要求されるファッション市場に高質感、高品質テキスタイル素材を提供でき、高生産性によるコスト面でも有利であり、また環境対応可能なことから今後の衣料用素材として有用である

Claims (10)

  1. 単糸繊度が0.5デシテックス以上、15デシテックス以下である単糸から構成されたトータル繊度が15デシテックス以上、300デシテックス以下である溶融紡糸により得られたセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸を含んでなり、該マルチフィラメント糸は交絡を付与されたものであることを特徴とする織編物。
  2. 該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸に加え、天然繊維、再生繊維およびポリウレタン繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の織編物。
  3. 該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸の交絡度が10個/m以上、100個/m以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の織編物。
  4. 該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸が、実撚りを付与されてなるものであり、その撚数が100T/m以上、3,000T/m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の織編物。
  5. 該セルロース脂肪酸混合エステルがセルロースアセテートプロピオネートであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の織編物。
  6. 可塑剤を含む重合体を用いて溶融紡糸して得られた交絡数10個/m以上、100個/m以下のセルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸を含む織編物の生機を、脱可塑剤処理し、次いで精練・リラックスを行い、常圧100℃以下で染色し、引き続いて乾熱処理することを特徴とする織編物の製造方法。
  7. 該織編物が、該セルロース脂肪酸混合エステルマルチフィラメント糸とともに、天然繊維、再生繊維およびポリウレタン繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項6記載の織編物の製造方法。
  8. 請求項1〜5のいずれかに記載の織編物を縫製してなることを特徴とする衣料。
  9. 請求項1〜5のいずれかに記載の織編物を染色した後、生地洗いし、次いで縫製したことを特徴とする衣料。
  10. 請求項1〜5のいずれかに記載の織編物を染色した後、縫製し、次いで製品洗いをしたことを特徴とする衣料。
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