JP4932084B2 - 透析用緩衝化組成物 - Google Patents
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Description
(技術分野)
本発明は、治療用組成物、および詳細には、透析液組成物に関する。
【0002】
(発明の背景)
正しく機能する場合、腎臓は、身体が正常な内部環境(ホメオスタシスと呼ばれる)を維持するのを補助する。腎臓は、身体から過剰の液体および代謝的な老廃物(毒素)を取り除くことによって、ならびに、グルコースおよび電解質の的確なレベルを維持することによって、この正常なバランスを達成することを補助する。腎不全は、複数の要因によって引き起こされ得る。しかし、その人の腎不全の理由に関わらず、腎不全は、その人の身体において過剰の液体および毒性の老廃物の蓄積を生じる。この尿毒症性の中毒は、その老廃物が何らかの人工的な手段によって除去されない限りは、最終的には死を引き起こす。血液透析は、腎臓がもはやその血液浄化機能を行わない人にとって、最も一般的な治療的な手段である。別の共通な透析の型は、腹膜透析(PD)である。
【0003】
透析液は、腎不全の患者の血液を浄化させる役目を果たす、透析に使用される液体である。血液透析の間、患者の血液は、透析器、すなわち人工腎臓内の膜の片側を循環する。一方、透析液は、膜の反対側を循環する。半透膜により、血液と透析液が分離されるので、血液と透析液との間に分子の移動が生じ得る。膜孔は、小さすぎて、血球およびタンパク質が血液から分離しないが、膜孔は老廃物を血液から透析液に移行させる。
【0004】
腹膜透析は、透析膜として、患者の腹膜を利用する。腹膜透析液が腹膜腔に浸透していく際に、浸透圧は、腹膜を通過することによって、過剰の液体および老廃物を血液から出し、そして透析液を含む腹腔に蓄積させる。十分な休止時間後、蓄積された過剰の液体および老廃物とともに、使用済みの腹膜透析液は腹膜腔から排出される。
【0005】
今日、実質的にすべての血液透析用透析液は、処置の部位で(血液透析装置の中で)(1)処理水、(2)酸濃縮物、および(3)塩基濃縮物を混合することによって作られる。塩基濃縮物は、代表的には、主要な塩基物質として炭酸水素ナトリウム(重炭酸ナトリウム)を含んでいるから、これらの成分を混合することによって作られた透析液は、通常、バイカーボネート透析液として知られる。バイカーボネート透析液は、「3つの流れ」の比例ポンプメカニズムの使用を通して、殆ど普遍的に血液透析装置でつくられ、ここで、処理水、液体酸濃縮物、および液体バイカーボネート(塩基)濃縮物が合わされる。一人の患者は、代表的には、120L以上の透析液を一回の透析処理に用いる。慢性腎不全患者は週3回、年52週処置される。
【0006】
濃縮液は、2通りの形態で透析診療所に提供される。酸濃縮液は、一般的に液体として提供され、そしてバイカーボネートは乾燥粉末として出荷される。酸濃縮液は、代表的には、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、デキストロースおよびpH調製用として適当な酸(酢酸)を含む。特定の透析期間において、使用される酸濃縮物の正確な組成は、医師の処方によって決定される。
【0007】
患者の処置期間に先立って、液体酸濃縮物の水差し(jug)が得られる。一般に、この濃縮物の水差しは、この酸濃縮物のより大きなタンクまたはドラムから汲み出される。透析診療所のスタッフのメンバーはまた、特定量の処理水と共に一定量の粉末炭酸水素ナトリウムを混合することにより炭酸水素ナトリウム濃縮液の水差しを調製する。「酸」とバイカーボネートとの別々の濃縮液が必要である、なぜなら、濃縮された酸および塩基性溶液を組み合せることが炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウムの沈殿を起こすからである。適切な混合後、最終透析液は、内科医によって処方された濃度を有する。
【0008】
示されるように、腎不全患者は、血液中に過剰の液体および通常の排出物質(最も顕著には、血中尿素窒素(BUN)およびクレアチン)を蓄積する。事実、これらの2つの物質の血中レベルの減少は、一般的に透析の効率と全体の有効性を計るために使用される。しばしば、透析の効率は多くの要因により損なわれ得る。その一つは凝血塊による透析膜孔の遮蔽であり得る。
【0009】
さらに、多くの腎不全患者は慢性のアシドーシスに罹患する。なぜなら、彼らの腎臓は酸を除去できないからである。伝統的に、血液透析処置のいくつかの目的のうちの一つは、血液中で過剰の酸を緩衝するために、透析において、通常の量よりも多い量のバイカーボネートを供与することによるアシドーシスの修正である。しかし、血液透析の間、過剰のバイカーボネートの注入にもかかわらず、通常の血液バイカーボネートレベルは血液透析処置間の多くの患者において維持されない。
【0010】
従って、当該分野において、血液透析処理の効率を増加させる、改善された透析処方物について必要性が存在する。本発明は、この必要性を満たすことに関し、そして、本明細書中に開示されたさらなる関連した利点を提供する。
【0011】
(発明の要旨)
本発明は、水で希釈しかつ塩基と混合すると、それによって透析液組成物を形成し得る透析液前駆体組成物と呼ばれる組成物を提供する。透析液前駆体組成物は、それから調製される透析液組成物と同様に、クエン酸と、アセテートおよび/またはラクテートから選択される有効量の緩衝剤とを含む。緩衝剤は、透析液の所望のpHを維持するために生理学的に受容可能な量のシトレートを許容する。
【0012】
一つの実施形態において、本発明は透析液前駆体組成物を提供する。この組成物は、最低、水、約1000から約7000mEq/Lの濃度範囲のクロライド;約20から約900mEq/Lの濃度範囲のシトレート;約0.01から約150mEq/Lの濃度範囲のアセテートおよび/またはラクテートから選択される少なくとも一つの緩衝アニオン;および少なくとも一つの生理学的に受容可能なカチオンを含む。
【0013】
別の実施形態において、本発明は透析液組成物を提供する。この透析用組成物は、最低、処理された水、約20から約200mEq/Lの濃度範囲のクロライド;約0.5から約30mEq/Lの濃度範囲のシトレート;約0.01から約4.5mEq/Lの濃度範囲のアセテートおよび/またはラクテートから選択される少なくとも一つの緩衝アニオン;バイカーボネートを含む塩基;ならびに少なくとも一つの生理学的に受容可能なカチオンを含む。
【0014】
別の実施形態において、本発明は透析液前駆体組成物の形成方法を提供する。その方法は、処理された水、クロライド、シトレート、アセテートおよび/またはラクテートから選択される少なくとも一つの緩衝アニオン、ならびに少なくとも一つの生理学的に受容可能なカチオンをともに混合する工程を包含し、約1000から約7000mEq/Lの濃度範囲のクロライド、約20から約900mEq/Lの濃度範囲のクエン酸ならびに約0.01から約150mEq/Lの濃度範囲のアセテートおよびラクテートから選択される少なくとも1つの緩衝アニオンを有する組成物を提供する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は透析液組成物の形成方法を提供する。その方法は、水性バイカーボネート含有溶液で透析液前駆体組成物を混合する工程を包含する。透析液前駆体組成物は、最低、処理された水、クロライド、シトレート、アセテートおよびラクテートから選択される少なくとも一つの緩衝アニオンならびに少なくとも一つの生理学的に受容可能なカチオンを含み、約44から約143mEq/Lの濃度範囲のクロライド、約1.5から約30mEq/Lの濃度範囲のシトレート、ならびに約0.01から約3.6mEq/Lの濃度範囲のアセテートおよびラクテートから選択される少なくとも一つの緩衝アニオンを有する濃縮物を提供する。
【0016】
他の実施形態において、本発明は、前述の方法に従って調製された組成を提供する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、水、約1000から約7000mEq/Lの濃度のクロライド;約20から約900mEq/Lの濃度範囲のシトレート、および中性組成物を提供するための十分な生理学的に受容可能なカチオンを含む水性酸濃縮組成物を提供する。この酸濃縮組成物は、4未満のpHを有し、アセテート、バイカーボネートまたはラクテートのいずれも含まない。
【0018】
マグネシウム濃縮物は、好ましくは2mEq/L以下であり、カルシウム濃縮物は、好ましくは4.5mEq/L以下であり、バイカーボネート濃縮物は、好ましくは25〜40mEq/Lの範囲内である。クエン酸の血清カルシウムおよび/またはマグネシウムとの結合を補正するために、組成中でクエン酸量が増加するにつれて、カルシウムとマグネシウム濃縮物は、高い値に調整されるべきである。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、腹膜透析に特に適している無菌組成物を提供する。一つの実施形態によれば、本発明は、処理された水、約0.5〜30mEq/Lの濃度のクエン酸;約20〜200mEq/Lの濃度のクロライド;すべての炭酸塩を含む種はバイカーボネートの形になると仮定して約5〜100mEq/Lの濃度のバイカーボネート、約10〜100g/Lの濃度のグルコース;ならびにすべてのシトレート、クロライド、バイカーボネートおよびこの組成物中に存在し得るすべてのその他のアニオン種を中和するために十分な量の生理学的に受容可能なカチオンを含む、腹膜透析組成物を提供する。別の実施形態において本発明は、上記に記載されているが水を含まない腹膜透析用組成物を提供する。この実施形態は、このように、腹膜透析液を形成するために無菌水が添加され得る乾燥組成物を提供する。
(発明の詳細な説明)
一つの局面において、本発明は水、クロライド、シトレート、好ましくはアセテートおよび/またはラクテートから選択される少なくとも一つの緩衝アニオン、ならびに少なくとも一つの生理学的に受容可能なカチオンを含む組成物を含むかまたはその組成物から調製される、透析液前駆体組成物と呼ばれる組成物を提供する。塩基とのおよび希釈剤との混合の際に透析液前駆体組成物は、血液透析用または腹膜透析用のいずれかのために用いられ得る生体適合性組成物を形成する。
【0020】
以下により詳細に議論されるように、透析液前駆体組成物中におけるいくつかの緩衝アニオン(例えば、アセテートおよび/またはラクテートから選択されるアニオン)の存在は、透析液前駆体組成物を標準の塩基(すなわちバイカーボネート)濃縮物と一緒に、標準的な3つの流れの透析装置における酸濃縮物として使用を可能にし、それによって透析処理の間、透析液のpHの変動に関連する問題を軽減する。緩衝アニオン無しであると、透析液は、健康管理の専門家に受容可能であるとみなされる範囲外のpHおよび/または導電性の特性を有し得る。本発明の組成物および、それの特性のより拡大した論議に先立ち、組成物の主要成分が記載される。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「クロライド」とはアニオン性クロライドをいう。このように、用語「クロライド」はアニオン性クロライドおよびその塩形態(例えばクロライドアニオン(単数および複数)および生理学的に受容可能なカチオン(単数および複数)から形成される)を含む。用語「クロライド」は、塩素原子が例えば、有機分子において炭素原子と共有結合している化合物を含むことを意図しない。代表的な生理学的に受容可能なカチオンは、水素イオン(すなわちプロトン)、金属カチオンおよびアンモニウムカチオンを含むが限定されない。金属カチオンが一般的に好ましく、ここで適切な金属カチオンには、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムのカチオン形態が含まれるが、これらに限定しない。これらのなかで、ナトリウムとカリウムが好ましく、ナトリウムがより好ましい。クロライド塩を含む組成物は、生理学的に受容可能なカチオンの混合物を含み得る。
【0022】
一つの実施形態において、前駆体透析液組成物中のクロライドは、約1000から約7000mEq/L、好ましくは、約2000から約5000mEq/Lの濃度範囲で存在する。一般的に、存在する前駆体透析液組成物の成分の濃度は、患者の血液、血漿、血清の種々の成分の濃度を減少、増加、標準化させるために内科医により個別に処方される。従って、前駆体透析液組成物中のクロライドの正確な濃度およびそれから調製される透析液組成物は、内科医によって、当該分野において公知の原理に従って決定される。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「シトレート」とは、クエン酸(3個のプロトンで複合体化したクエン酸アニオン)、クエン酸アニオンを含む塩、クエン酸アニオンの部分エステルを含むあらゆる形態のクエン酸アニオンをいう。クエン酸アニオンは、次の化学式で示される有機のトリカルボン酸である。
【0024】
【化1】
ケミカルアブストラクトNO.77−92−2に割り当てられるクエン酸は、HOC(CO2H)(CH2CO2H)2の分子式を有し、192.12g/molの式量を有する。クエン酸塩(すなわち、クエン酸アニオンを含む塩)は、1つ以上の生理学的に受容可能なカチオンと結合している1つ以上のクエン酸アニオンから構成される。代表的な生理学的に受容可能なカチオンは、プロトン、アンモニウムカチオンおよび金属カチオンを含む、がこれに限定されない。適切な金属カチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムを含むがこれに限定されずここで、ナトリウムとカリウムが好ましく、そしてナトリウムがより好ましい。クエン酸アニオンを含む組成物は生理学的に受容可能なカチオンの混合物を含み得る。
【0025】
クエン酸アニオンの部分エステルは、エステル型中(すなわち、−COO−R,ここでRは有機基である)にクエン酸アニオンのカルボキシル基(すなわち、−COO-)を1または2(しかし3ではない)を有する。1または2のR基に加えて、クエン酸アニオンの部分エステルは1または2個の生理学的に受容可能なカチオンを含む(その結果、R基およびカチオン(単数または複数)の合計は3に等しい)。R基は有機基、好ましくは低級アルキルである。
【0026】
シトレートは好ましくはプロトンおよび/または金属カチオンに結合している。そのようなクエン酸化合物の代表は、クエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸カルシウム、およびクエン酸マグネシウムである、がこれに限定されない。一つの実施形態において、クエン酸は、透析液前駆体組成物の中で、1以上のクエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸二水素カリウム、またはクエン酸水素二カリウムの形で存在する。
【0027】
好ましい実施形態において、クエン酸は、クエン酸アニオンの供給源を提供する。この実施形態においては、クエン酸は、前駆体組成物の主な酸性化薬剤として機能する。クエン酸は相対的に高価ではない生理的な酸であり、周囲の条件下で、乾燥化学物質粉体、結晶、ペレット、錠剤の形態をとる。クエン酸の生理学的に許容できる形態は、組成物にクエン酸アニオンを導入するために使用し得る。例えば、クエン酸は、一水和物を含む水和物の形態であり得る。
【0028】
クエン酸は、カルシウムを結合することにより血流において抗凝血剤として機能し得ることが以前に認識された。従って、透析液前駆体組成物のクエン酸濃度は、抗凝血特性の観点から選択されるべきである。他の基準が取られない限りは、クエン酸濃度は約900mEq/Lを超えないべきであり、好ましくは約200mEq/Lを超えない。クエン酸濃度が200〜900mEq/Lで使用される場合、透析液前駆体組成物のマグネシウムおよび/またはカルシウム濃度は、増加するに違いない。
【0029】
クエン酸濃度は、血液の凝血特性に有害な影響を与えるので、高すぎるべきではないが、クエン酸濃度は生理学的に受容可能なpHで最終透析液組成物のpHを達成および維持するのに有効であるように十分に高くあるべきである。代表的には、抗凝血を達成するのに十分な量の4分の1以下であるクエン酸濃度は、生理学的に受容可能なpHの透析液組成物を提供し得る。従って、本発明の透析液前駆体組成物は、所望の透析液のpHを提供するために、最低約20mEq/Lのクエン酸濃度であるべきである。1つの実施形態において、透析液前駆体組成物は、約20〜約900mEq/Lの範囲の濃度のクエン酸を含み、より好ましい実施形態では、この組成物は約70から約150mEq/Lの濃度範囲のクエン酸を含む。
【0030】
シトレートは、透析液組成物のpHを下げる酸性化薬剤として機能するが、1つの局面では、本発明では、最終の透析組成物のpHを生理学的に受容可能な範囲内に維持するために透析液前駆体組成物に緩衝アニオンを導入する。本明細書中で使用される場合、「緩衝アニオン」とは、組成物のpHを調整および調節する生理学的に受容可能なアニオンをいう。適切な緩衝アニオンは、例えば、透析液組成物の水素イオン濃度の変化を最小化する化合物である、アセテート、ラクテート、およびその混合物(すなわち、アセテートおよび/またはラクテート)を含む。本明細書中で使用される場合、「ラクテートおよび/またはアセテート」とは、ラクテート単独、アセテート単独、またはラクテートとアセテートとの混合物のいずれかが組成物において使用され得るかまたは存在し得ることを意味する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「アセテート」とは、酢酸および酢酸の塩を含むいかなる形態のアセテートアニオンをもいう。アセテートは式、H3C−COO-を有する有機物の、モノカルボン酸塩である。アセテート塩は、一つ以上の生理的に受容可能なカチオンと結合した一つ以上のアセテートアニオンから構成される。典型的な生理的に受容可能なカチオンは、プロトン、アンモニウムカチオンおよび金属カチオンを含むが、これらに限定されず、ここで金属カチオンが好ましい。適切な金属カチオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムを含むが、これらに限定されず、ここでナトリウムおよびカリウムは好ましく、そしてナトリウムはより好ましい。
【0032】
本発明の典型的なアセテート化合物は、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウム、および酢酸マグネシウム四水和物を含むが、これらに限定されない。一つの実施形態において、透析液前駆体組成物のアセテートは酢酸ナトリウムの形態、または、酢酸カリウムの形態で存在し、そして、好ましい実施形態においては、アセテートは酢酸ナトリウムの形態である。
【0033】
本明細書で使用される場合、「ラクテート」とは、乳酸および乳酸塩を含むいかなる形態のラクテートアニオンをもいう。ラクテート(lactate)は式、H3C−CH(OH)−COO-を有する有機物の、モノカルボン酸塩である。ラクテート塩は、一つ以上の生理的に受容可能なカチオンと結合した一つ以上のラクテートアニオンから構成される。典型的な生理的に受容可能なカチオンは、プロトン、アンモニウムカチオン、および金属カチオンを含むがこれらに限定されず、ここで金属カチオンが好ましい。適切な金属カチオンには、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムを含むが、これらに限定されず、ここでナトリウムおよびカリウムが好ましく、そしてナトリウムはより好ましい。
【0034】
本発明の典型的な乳酸化合物は、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウムおよび乳酸マグネシウム三水和物を含むが、これらに限定されない。一つの実施形態において、透析液前駆体組成物のラクテートは乳酸ナトリウムの形態、または、乳酸カリウムの形態で存在し、そして、最も好ましくは、ラクテートは乳酸ナトリウムの形態である。
【0035】
一般的に、透析液前駆体組成物は、代表的に緩衝アニオンの等価物よりもシトレートの等価物を含む。前駆体組成物は、好ましくは、アセテートの等価物、ラクテートの等価物、またはアセテート+ラクテートの等価物よりもシトレートの等価物を含む。一つの実施形態では、透析液前駆体組成物は、約0.01mEq/Lから約150mEq/Lの範囲の濃度でアセテートおよび/またはラクテートから選択された緩衝アニオンとともに、約20mEq/Lから約900mEq/Lの範囲の濃度でシトレートを含む。好ましい実施形態では、この組成物は、約70mEq/Lから約150mEq/Lの範囲の濃度のシトレート、および約0.3mEq/Lから約125mEq/Lの範囲の濃度のアセテートおよび/またはラクテートから選択された緩衝アニオンを含む。
【0036】
透析液前駆体組成物におけるシトレートの量が増加するにつれて、前駆体を用いて作られる透析液のpHが低くなる傾向がある。より低い透析液のpHにを用いると、透析液のpHが生理的に許容できないレベルまで上がらないことを確実にするために前駆体を緩衝する必要はそれほどない。従って、一般的な規則として、より高い当量のシトレートが、透析液前駆体組成物において使用されるにつれて、より少ない当量の緩衝アニオンが要求される。逆に、より少ない当量のシトレートが透析液前駆体組成物において使用されるにつれて、当価以上の緩衝アニオンが要求される。
【0037】
本明細書中で使用される場合、句「生理的に受容可能なカチオン」とは、哺乳動物の血液中、血漿中、または血清中において通常見い出されるカチオン、または哺乳動物に導入した際に耐性であり得るカチオンをいう。適切なカチオンは、プロトン、アンモニウムカチオン、および金属カチオンを含む。適切な金属カチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムのカチオン形態を含むが、これらに限定されず、ここでは、ナトリウムおよびカリウムが好ましく、そしてナトリウムがより好ましい。アンモニウムカチオン(すなわちR4N+の式の化合物、ここでRは水素、または有機基である)は、それが生理的に受容可能である限り使用され得る。より好ましい実施形態においては、カチオンは水素(すなわちプロトン)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびそれらの組み合わせより選択される。
【0038】
透析処置の過程の間に、透析液組成物のpHが上昇し始めた際(すなわち、透析液がより塩基性になる)、緩衝アニオンが有効量で存在する場合、緩衝アニオンは透析液構成物のpHが生理的に受容可能な範囲を超えて上昇するのを防ぐ。上記のシトレートの濃度を有する組成物について、および所望の緩衝効果を提供するために、前駆体組成物は約0.01mEq/Lから約150mEq/Lの緩衝アニオンを含むべきであり、好ましくは、この緩衝アニオンは、アセテート、ラクテート、およびその混合物より選択される。より好ましい実施形態では、前駆体組成物は、約0.3mEq/Lから約125mEq/Lのアセテート、および/またはラクテートを含む。一つの実施形態では、緩衝アニオンはアセテートおよびラクテートの混合物である。別の実施形態では、緩衝アニオンは、アセテートであり、そしてラクテートは組成物中に存在しない。別の実施形態では、緩衝アニオンは、ラクテートであり、そしてアセテートは組成物中に存在しない。
【0039】
腹膜透析に伴い、血液と透析液の間の拡散を促進する目的で、拡散薬剤を透析液に添加することによって、液体間の浸透圧勾配を維持することは望ましい。腹膜透析における拡散薬剤の存在は、過剰の液体、および代謝的な老廃物の副産物が血液から透析液へ流れることを助長する。前駆型透析液組成物に対する適切な拡散薬剤は糖である。糖は好ましくは、グルコース(例えばブドウ糖)、ポリ(グルコース)(すなわち、グルコース残基の繰返しから作られるポリマー、例えばブドウ糖ユニットの繰返しから作られるイコデキストリン(icodextrin))、またはフルクトースより選択される。透析液組成物に糖を添加する場合、糖を有しない透析液前駆体を作ることは可能であるが、それは通常ブドウ糖である。等価物として機能する、生物適合性で非糖である任意の拡散薬剤が、実行できる代用品と成り得ることは、さらに理解される。代表的に、糖は透析液前駆体組成物中に、約2,700g/Lより低い濃度で存在する。
【0040】
患者の血液血清はいくつかの成分、例えば、タンパク質、炭水化物、核酸、および種々のイオンを含む。医師によって処方される透析液組成物は、代表的に、血清中の特定の成分の濃度を減少するか、増加するか、または規格化するために選択される。いくつかのカチオンは規定的に、前駆型透析液組成物の一部として、含まれ得る。適切なカチオンは、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、およびマグネシウムを含み得る。透析液前駆体組成物において、ナトリウムの好ましい濃度範囲は、約2,000mEq/Lから約5,000mEq/Lである。好ましいカリウムの濃度範囲は、約250mEq/Lより低い。好ましいカルシウムの濃度範囲は、約250mEq/Lより低い。好ましいマグネシウムの濃度範囲は、約100mEq/Lより低い。本明細書中で使用される場合、およその列挙された値のより低い濃度は、0を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、「mEq/L」とは、存在する水の量に準じた、存在する特定の透析液組成物(溶質)の濃度をいう。より特異的には、mEq/Lとは、水1リットルあたりのミリ当量の溶質の数をいう。1リットルあたりのミリ当量は、溶質1リットルあたりのモルを溶質の分子当たりの荷電した種(基)の数によって乗算することによって算出される。次いで、それは1,000の係数によって乗算される。例として、10グラムのクエン酸を1リットルの水に添加した際、クエン酸は、10g/Lの濃度で存在する。無水のクエン酸は、分子量192.12g/molを有する;従って、クエン酸の1リットルあたりのモル数、および結果的にクエン酸アニオン(クエン酸1モル当たり1モルのクエン酸アニオンが存在するから)は、192.12g/molによって除算された10g/Lであり、それは0.05mol/Lである。クエン酸アニオンはカルボン酸基の形態の3つの負に荷電した種を有する。したがって、0.05mol/Lのシトレート濃度は、3で乗算され、次いで、シトレートの濃度をmEq/Lという形で提供するために1,000で乗算される。それは提示する例では、156mEq/Lのクエン酸アニオンである。
【0042】
本発明の透析液組成物に対する好ましい水を、本質的に発熱物質を含まない(すなわち滅菌している)ように処理し、そして、透析組成物についてAssociation for the Advancement of Medical Instrumention(AAMI)によって確立された、要求純度を少なくとも満たすように処理した。その水をまた、処理された水、またはAAMI−品質の水と言及し得る。透析液のための水処理、水処理システムのモニタリング、および水処理システムの調節について記載する研究論文は、AAMI(Standards Collection,第3巻,Dialysis,Section 3.2 Water Quality for Dialysis,第3版,1998,AAMI,3330 Washington Boulevard,Arlington,VA 22201)またはインターネット(http://www.aami.com.)を通じて入手可能である。さらに、本発明の前駆型透析液組成物のすべての他の成分は、好ましくは、少なくともUnited States Pharmacopeia(USP)グレードの純度、(一般的に約95%の純度)である。成分の純度は、好ましくは、少なくとも約95%であり、より好ましくは、少なくとも約98%であり、そしてより好ましくは、少なくとも約99%である。
【0043】
本発明の透析液前駆体組成物は、透析液組成物を産出するために処理した水および塩基で希釈する前の、約15℃から約40℃までの温度において、代表的には、約1から約6.5、より代表的には、約1から約4までの、より代表的には約2から約4までの範囲のpHを有する。
【0044】
好ましい実施形態では、透析液前駆体組成物は、約2,000mEq/Lから約5,000mEq/Lの範囲の濃度のクロライド;約70mEq/Lから約150mEq/Lの範囲の濃度のシトレート;約0.3mEq/Lから約125mEq/Lの範囲の総濃度のアセテートおよび/またはラクテート;水素、ナトリウム(約2,000mEq/Lから約5,000mEq/Lの範囲の濃度)、カリウム(約250mEq/Lより低い濃度)、カルシウム(約250mEq/Lより低い濃度)、およびマグネシウム(約100mEq/Lより低い濃度)より選択される、少なくとも一つの生理的に受容可能なカチオン;ならびに、約2,700mEq/Lより低い濃度でグルコース(好ましくはブドウ糖)、を含む成分を含み、ここで組成物は、透析液に対するAAMI標準セットを満たすか、またはそれをしのぐ。一つの実施形態では、上記に列挙された成分は、組成物中の有効な成分だけである。
【0045】
本発明は、上記の前駆型透析液組成物を形成する方法を提供する。この方法において、成分は透析液前駆体組成物を供給するために互いに混合される。したがって、クロライドの原料、シトレートの原料、および緩衝アニオン(例えば、アセテートおよび/またはラクテートの原料は、処理水と共に混合され、総計で、それは究極的に、上記に示すように、所望の濃度のそれぞれを提供する。これらの成分の適切な原料は、当該分野で周知である。実際は、本発明において使用される化合物の、分子量、および溶解度のような化学的特性は、当業者が本発明の組成物の調製方法を知るように当該分野において利用可能である。例えば、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI;http://www.sial.com)からのSigma and Aldrichカタログを参照のこと。
【0046】
例えば、クロライド源は塩酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化アンモニウムなどのいずれかであり得る。シトレート源はクエン酸、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウムなどのいずれかであり得る。アセテート源は酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム四水和物などのいずれかであり得る。ラクテート源は乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム三水和物などのいずれかであり得る。所望の場合、USPグレード(USP−grade)の、これらのいずれかもしくは全ての化学物質は、例えば、Aldrich Chemical Co.Milwaukee WIを含む多くの化学物質供給業者から市販されている。処理水は、以下の標準的な精製法(例えば、蒸留および逆浸透法が挙げられる)によって得られ得る。あるいは、処理水は商業的に購入され得る。そのような処理水は全ての、もしくはほぼ全ての透析診療所において使用され、従って当業者には周知である。
【0047】
1つの実施形態においては、本発明は透析液前駆体組成物の形成方法(水、クロライド、シトレート、アセテートおよび/またはラクテートから選ばれる少なくとも1種類の緩衝アニオン、ならびに少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオンを混合する工程を包含し、約1,000〜7,000mEq/Lの濃度範囲のクロライド、約20〜900mEq/Lの濃度範囲のシトレート、およびアセテートおよび/またはラクテートから選ばれる総濃度範囲が約0.01〜150mEq/Lの少なくとも1種類の緩衝アニオンを有する組成物を与える)を提供する。
【0048】
好ましい実施形態においては、水、約2,000〜約5,000mEq/Lの濃度範囲のクロライド、約70〜約150mEq/Lの濃度範囲のシトレート;約0.3〜約125mEq/Lの濃度範囲のアセテート;水素、約2,000〜約5,000mEq/Lの濃度範囲のナトリウム、約250mEq/L未満の濃度のカリウム、約250mEq/L未満の濃度のカルシウム、約100mEq/L未満の濃度のマグネシウムから選択される少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオン;および約2,700g/L未満の濃度のグルコース(ここで、組成物は、透析液のAAMI品質の標準の数値を満たすか、もしくは超える)を有する組成物を与えるために、水、クロライド、シトレート、アセテート、および生理的に受容可能なカチオンの源が混合された。
【0049】
別の局面においては、本発明は透析液組成物を提供する。透析液組成物は好ましくは、前駆体組成物に処理水および塩基(好ましくはバイカボネート)を添加することによって、上記の透析液前駆体組成物から調製される。塩基および水を添加する際に、透析液前駆体組成物は透析を行うのに適した組成物を与える。
【0050】
例えば、バイカボネート濃縮物もしくは希釈されたバイカボネート濃縮物は、本発明に従う透析液組成物を提供するために、透析液前駆体組成物もしくは希釈された透析液前駆体組成物に添加し得る。代表的には、透析液組成物を与えるために、1容量部(one volume part)の透析液前駆体組成物は33〜45部(parts)の間の希釈された塩基濃縮物で希釈される。透析液前駆体はシトレート(酸性濃縮物の主要な酸性成分として)、炭酸水素(塩基性濃縮物の主要な塩基成分として)および好ましくはアセテートおよび/またはラクテートから選択される緩衝アニオンを含む。
【0051】
1つの実施形態において、その透析液組成物は処理水;約20〜約200mEq/Lの濃度範囲のクロライド;約0.5〜約30mEq/Lの濃度範囲のシトレート;アセテートおよび/またはラクテートから選択される約0.01〜約4.5mEq/Lの濃度範囲の少なくとも1種類の緩衝アニオン;炭酸水素;および少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオンを含む成分を含む。
【0052】
1つの実施形態では、透析液組成物にはグルコース(好ましくはブドウ糖)、ポリ(グルコース)(好ましくはポリ(ブドウ糖)、例えばイコデキストリン(icodextrin))および約45g/L未満の濃度のフルクトースから選択される1つ以上の糖が挙げられる。そのかわりに(もしくは糖に加えて)、透析液組成物は1つ以上のアミノ酸を含み得る。好ましくは、透析液組成物は、透析液についてAAMIによって制定された純度条件を満たすか、もしくは超える水を含み、他の全ての成分は、少なくともUSPグレードの純度を有する。別の好ましい実施形態では、透析液組成物は約25℃〜約40℃の温度において、約5〜約8.5のpHを有し、より代表的には、この温度範囲において約6.4および7.6のpHを有し、そして好ましくは、約7.2〜約7.4のpHを有する。
【0053】
他の実施形態において、透析液組成物は水、約40〜約150(より好ましくは、約60〜約120)mEq/Lの濃度範囲のクロライド;約1.5〜約4.5(より好ましくは、約2〜約3)mEq/Lの濃度範囲のシトレート;総濃度範囲が約0.01〜約4.0(より好ましくは、約0.2〜約0.5)mEq/Lのアセテートおよび/またはラクテート;約25〜約45mEq/Lの濃度範囲の炭酸水素;水素、約60〜約190(より好ましくは、約70〜約150)mEq/Lの濃度範囲のナトリウム、約5mEq/L未満の濃度のカリウム、約5mEq/L未満の濃度のカルシウム、および約2mEq/L未満の濃度のマグネシウムから選択された少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオン;約45g/L未満(好ましくは8g/L未満)の濃度のグルコース(好ましくはブドウ糖)を含有する成分を含み、ここで組み合わされた組成物は透析液について設定されたAAMI品質の標準値を満たすか、もしくは超える。
【0054】
別の局面においては、本発明は透析液組成物の形成方法を提供する。好ましい実施形態において、この方法には上記と同様に透析液前駆体組成物と塩基濃縮物(好ましくは炭酸水素の塩基性濃縮物)および必要に応じて処理水との組み合わせが含まれ、透析液における溶質の所定の濃度を与える。塩基濃縮物は水、炭酸水素を含み、7より大きなpHを有する。濃縮物中の1つ以上の「塩基」の存在のために、pHは7より大きい。塩基濃縮物は現在ほとんどの透析診療所で使用されている。代表的な塩基濃縮物における塩基はHCO3の化学式を有するバイカーボネート(bicarbonate)(炭酸水素塩(hydrogen carbonate)としても公知)である。炭酸水素は正味の陰電荷を有し、したがって正電荷種と結合する。適切な正電荷種には、カチオン型のナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムのような生理的に受容可能な金属カチオンが挙げられる。
【0055】
一般に透析診療所で調製される塩基濃縮物に由来する塩基はほとんど炭酸水素ナトリウムであり、これは本組成物および方法において好ましい塩基である。透析液におけるバイカボネート濃濃縮物は約25〜40mEq/Lが好ましい。酢酸塩基は好ましい塩基ではない。
【0056】
必要に応じて、塩基濃縮物における炭酸水素ナトリウムは異なる生理的に受容可能な塩基と部分的に交換され得る。炭酸水素ナトリウムの適切な置換のアニオン部分は、例えば、炭酸、ラクテート、シトレートおよびアセテートであり得る。したがって、塩基濃縮物の塩基は、炭酸水素および必要に応じて炭酸、ラクテート、シトレート、およびアセテートのいずれかの塩形態から選択され得る。また、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムから選択された1つ以上の生理的に受容可能なカチオンも塩形態において存在する。これらの塩および酸は電気的に中性、すなわち、同じ数の陰電荷および正電荷がある。
【0057】
好ましくは、水、約40〜約150(より好ましくは約60〜約120)mEq/Lの濃度範囲のクロライド;約1.5〜約4.5(より好ましくは約2〜約3)mEq/Lの濃度範囲のシトレート;総濃度範囲が約0.01〜約4.0(より好ましくは約0.2〜約0.5)mEq/Lのアセテートおよび/またはラクテート;約25〜約45mEq/Lの濃度範囲の炭酸水素;水素、約60〜約190(より好ましくは約70〜約150)mEq/Lの濃度範囲のナトリウム、約5mEq/L未満の濃度のカリウム、約5mEq/L未満の濃度のカルシウムおよび約2mEq/L未満の濃度のマグネシウムから選択される少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオン;約45g/L(好ましくは約8g/L未満)の濃度のグルコース(好ましくはブドウ糖)を含む成分を含有する透析液組成物に到達するために透析液前駆体組成物および塩基濃縮物が混合され、ここで組み合わされた組成物は透析液について設定されたAAMI品質の標準値を満たすか、もしくは超える。患者に同時に過剰のカルシウムを注入した場合には、より高い濃度のシトレートが代表的に使われ得る。
【0058】
本発明の透析液組成物において、生理範囲である5〜8.5、好ましくは約7.2〜約7.4のpHを有する最終透析液組成物に到達するために、シトレートを含有する透析液前駆体組成物が塩基濃縮物と合わせられる。
【0059】
別の局面において、本発明は血液透析に有用な水溶性の酸性濃縮物組成物(最小限で水、クロライド、シトレート、およびカチオンを含み、中性(すなわち、正味の電荷がない)の組成物を与えるが、炭酸水素、アセテートもしくはラクテートのいずれも含まない)を提供する。水は本明細書で定義された「処理水」もしくはさらに高い純度を有する水であり、それぞれのクロライドおよびシトレートはUSPグレードもしくはそれより良い品質(例えば、好ましくは少なくとも99%の純度の試薬グレード)である。
【0060】
水溶性の酸性濃縮物組成物は約1,000〜約7,000、好ましくは約2,000〜約5,000mEq/Lの濃度のクロライド;約20〜約200、好ましくは約70〜約150mEq/Lの濃度範囲のシトレート;および中性(すなわち正味の電荷がない)の組成物を提供するための生理的に十分に受容可能なカチオンを含み、ここでこの組成物は4未満、好ましくは約2と約3との間、およびより好ましくは約2.2〜2.8のpHを有し、炭酸水素、アセテートもしくはラクテートのいずれも含まない。
【0061】
この水溶性酸性濃縮物組成物は炭酸水素、アセテートもしくはラクテートのいずれも含まないが、依然として透析液製造において有用に使用される。例えば、それは塩基および/または塩を添加し得る好都合なストック溶液を提供する。それが液体であるため、酸性濃縮物として伝統的な透析器(透析液製造のために三つの流れが釣り合った(three−stream proportionate)ポンプ機構を使用する)において都合よく使用される。しかし、最終透析液の所望のpHを得るために、炭酸水素のような塩基と水溶性の酸性濃縮物組成物を組み合わせるときには注意すべきである。
【0062】
関連した実施形態においては、本発明は透析液の調製方法を提供し、ここで水および少なくとも1種類の炭酸水素、炭酸、アセテート、ラクテートおよび7より大きなpHを有するシトレートを含むその塩基性溶液は上記の水溶性の酸性濃縮物組成物(すなわち、最小限でクロライド、シトレートおよびカチオン(カチオンは電気的に中性の組成物を提供する)を含み4より小さいpHを有する酸性溶液、ここでこの酸性溶液は炭酸水素、アセテートもしくはラクテートのいずれも含まない)と混合される。本方法にしたがって、組み合わされた塩基性および酸性溶液の相対量は、所望の透析液のpHに到達するように透析処置の間は常に慎重に調整されるべきである。代表的には、所望の透析液のpHは6.8〜7.8の範囲である。
【0063】
クエン酸含有血液透析液組成物は当該分野において公知(Ahmadら、米国特許第5,252,213号を参照のこと)であるが、そのような組成物は水に溶解して血液透析液組成物を与える乾燥ペレット(もしくは固体の形態様の他のもの)として開示されている。これらの組成物は、血液透析液組成物の成分のすべての好都合な原料を提供し、血液透析処置で使用される前に、本質的には他の成分なしで水との組み合わせを意図する。したがって、それぞれのペレットは、得られる血液透析液のpHを保証する血液透析液組成物の酸性成分および塩基性成分の両方を含む。
【0064】
本発明は、血液透析液もしくは腹膜透析液のどちらの調製においても使用し得る水溶性の酸性濃縮物を製造する。クエン酸濃縮物は、現在透析診療所において慣例となっているように、透析液組成物を与えるために処理水および塩基濃縮物と組み合わせられることが意図される。診療所において、代表的に炭酸水素ナトリウムを含む塩基濃縮物のpHは広範に変化し得、そして得られる透析液のpHに影響を与え得る。したがって、本発明にしたがう方法でクエン酸含有酸性濃縮物を使用した場合には、濃縮物は、得られる透析液のpHを、透析処置の期間を通して所定の、生理的に受容可能な範囲に保つために緩衝試薬を含むべきである。クエン酸の量が増加して透析液のpHが低下することが血清カルシウムの濃度の有意な減少を引き起こし得るために、緩衝が必要である。クエン酸濃縮物の緩衝における必要性は、当該技術分野における慣例からの離脱である。
【0065】
今日使用される殆どの透析液は、最終透析液のpHを生理的に受容可能な範囲内に保つための酸性化剤として酢酸を使用している。上記に記述したように、今日ではほとんどの血液透析処置で使用されている「酸性濃縮物」は液体として輸送される。酢酸が液体の酸であるために、濃縮物は液体の形態を有する。この溶液は、実際に患者の血液を浄化するために用いられる最終透析液よりはるかに濃縮されている(事実上45倍まで濃縮され得る)が、まだその重量および体積の3/4が水である。本発明は酸性濃縮物における主な酸性物質として、酢酸ではなくむしろクエン酸を利用する。
【0066】
シトレートを含む酸性濃縮物において、シトレートは主にクエン酸の形態である。透析液の酸性濃縮物においてクエン酸を使うことで、特定の副産物が存在する。例えば、クエン酸は血液中においてクエン酸塩を形成し、それは遊離のマグネシウムおよびカルシウムと結合する。実際、カルシウムとシトレートとの強い結合は、提供された血液の凝固を防ぐために血液バンクで使われている。本発明の透析液において使用されるクエン酸のレベルが、測定可能な抗凝固を達成するのに必要な量のほんの一部(1/4未満)であるが、医療的な思慮が、血液中における所望でないカルシウムの結合を最小限にするために、透析液において可能な最少量のクエン酸の使用を決定する。透析液が前駆体透析液の45倍希釈から調製され、前駆体透析液が200〜900mEq/Lの濃度範囲内のシトレートを有する場合、前駆体は好ましくは、シトレートが血清カルシウムおよび血清マグネシウムに結合する程度を補填するために、増大したレベルのカルシウムおよび/またはマグネシウムを有する。
【0067】
本発明の酸濃縮液中に存在するシトレートの量は、7.2〜7.4の範囲内の最終透析液pHを達成するために必要な最小量であるべきである。本発明者らは、酸濃縮液中の水1リットル当たり約7グラムのクエン酸(2.4mEq/Lに等しい濃度を提供する)を用いることは、カルシウム結合を最小限度にし、かつ受容可能な透析液pHを達成することを見出した。
【0068】
しかし、酸濃縮液中でのシトレートの使用は、透析が臨床的な環境で用いられた場合に、断続的な問題を引き起こした。一般に、透析セッションの後期(通常は処置の最後の時間)には、いくつかの透析機械は高いpHのために警告音を発した。この問題は、塩基性溶液まで追跡された。
【0069】
バイカーボネートはほとんどの塩基性溶液中に存在する塩基性物質である。ほとんどの透析診療所においては、バイカーボネート溶液は診療所のスタッフにより使用される直前に作られる。その手順は、しばしば、予め決められた量の炭酸水素ナトリウム(典型的には1つのパッケージ)をビンに注ぐ工程、計られた量の水を加える工程および手で混合する(通常は容器を振ることによる)工程を包含し得る。以下の要因のいずれか、いくつか、または全ては、バイカーボネートのpHにおける期待される基準からの変動を引き起こし得る:加えられる水の量が規定された量より多く、もしくは少なくなり得る、混合する工程が全ての炭酸水素ナトリウム粉末を溶液に完全に溶解させるのに不十分であり得る、容器が使用前にある期間静置され得る、または患者が長期間透析処置を受けている。
【0070】
バイカーボネートを注意深く測り、そして十分に混合した場合は、濃縮溶液のpHは7.85(±0.05)であった。しかし、実際問題として、診療所のスタッフにより調製されるバイカーボネート濃縮物のサンプルは、7.78〜8.13のpH値の範囲を有していた。さらに、血液透析処置に使用されたばかりの、残留バイカーボネート濃縮物のpHは、7.9〜8.24の範囲であることが見い出された。本発明者らは、pHにおけるこの変動は、「消耗した」透析液において最も著しく観察されるが、以下の要因のうちのいずれか1つまたはその組み合わせに由来し得ると推測する:
・不十分な水が基礎濃縮液に加えられ、所望のバイカーボネートの濃度より高い濃度の原因となること。
・粉末と水の不十分な混合のため、いくらかの粉末の沈殿物を許容し、そしてそれゆえ、透析処置の後期において(その時には粉末は完全に溶解している)、より濃縮されたバイカーボネート溶液およびpHの上昇を許容すること。
・バイカーボネート濃縮物が時間の経過とともに二酸化炭素を放出し、それによってpHの緩やかな上昇を引き起こすこと。
【0071】
透析処置の間に警告許容限界までpHが上昇することから守るための1つの方法は、用いられる酸の量を増やすことであり、これはより酸性の透析液の原因となる。しかし、クエン酸の量を増やすことはまたカルシウム結合の量も増やす−従って、このアプローチは注意して用いられなければならない。本発明に従って利用される代替アプローチは、バイカーボネート濃縮液のpH上昇により引き起こされる透析液pHの上昇の効果を、酸濃縮物中の緩衝剤の含有によって緩和することである。
【0072】
アセテートおよび/またはラクテートは、本発明における好ましい緩衝剤として選択された。これらのアニオンはいずれも透析患者の血液中に自然に見出される。酢酸ナトリウムは、実質的に全ての現在の透析液(塩化ナトリウムと酢酸より提供される)中にあるものと同じ成分(ナトリウムおよびアセテート)を含有するため、好ましい緩衝剤である。
【0073】
驚くべきことに、酸濃縮物中に存在する酢酸ナトリウム緩衝剤の量と最終的な透析液溶液のpHとの間に直線関係はない。さらに多くの量のこの酸性緩衝剤を酸濃縮液に加えることは、最終溶液のpHの直線的減少を引き起こすことが予測され得る。しかし、これは実情ではない。狭い範囲内では、酢酸ナトリウムは透析液のpHの有意な減少を引き起こす。しかし、この酢酸ナトリウムの緩衝作用は、バイカーボネート濃縮液のpHが8.0を超える場合にのみ観察される。バイカーボネート濃縮物のより高いpH値では、アセテートの緩衝作用はより明白である。
【0074】
この効果は、図面中に示される。図面のチャートは、処理された水と合わせてpH8.14の比較的高いバイカーボネート濃度を用いて得られた透析液pHおよび2.4mEq.Lのシトレートを用いそして酢酸ナトリウム濃度を1リットル当たり0〜3.5グラムに増加させた本発明の透析液前駆物を図示する。図面中に示されるように、ある点を超えて酢酸ナトリウム濃度を増加させることは、酢酸ナトリウムの緩衝作用を増加させることも、バイカーボネートpHのより低い値での緩衝作用を明白にすることもない。理論によって拘束されることは望まないが、以下は、本発明の酸濃縮液中でアセテートを用いることの驚くべき効果を説明することが示唆される。
【0075】
クエン酸は、マルチプロトン酸である。これは、溶液の酸性度に寄与し得る3個の不安定な水素原子を含む。それぞれの水素イオンの遊離に関する別々の平衡がある:
【0076】
【数1】
ここで、Aはクエン酸アニオンを表わす。pHが7より大きい場合は、ほとんど全てのクエン酸は解離され、そして主な種はH+およびA3-である。
【0077】
酢酸はモノプロトン酸であり、すなわち、これはただ1つの不安定な水素原子を溶液に与え、そしてその平衡に対するただ1つの平衡定数がある:
【0078】
【数2】
ここで、Acは酢酸アニオンを表わす。酢酸ナトリウム(NaAc)が水溶液に導入される場合、これは完全に溶解してナトリウムイオン(Na+)および酢酸イオン(Ac-)になる。ナトリウムは、「傍観者(spectator)」イオンであると考えられる−それは、どの平衡にも関与しない。酢酸アニオン(Ac-)は、加水分解を受ける:
【0079】
【数3】
緩衝液は、pHの変化を妨げるようにその組成が設計されている溶液である。少量の酸または塩基が緩衝液に加えられ得、そしてそのpHはほんの僅かに変化する。これらの記載は、緩衝溶液がH+(一般に、H3O+とも書かれる)およびOH-イオンの両方と反応し得るということを意味する。2種類の一般的な緩衝溶液は、(1)弱酸およびその弱酸の塩、ならびに(2)弱塩基およびその弱塩基の塩を含む溶液である。より一般的でないタイプは、弱酸(例えば、クエン酸)および別の弱酸の塩(例えば、酢酸から誘導される酢酸ナトリウム)を含む。
【0080】
単純な水溶液に対しては、緩衝作用はしばしば入手可能なデータ、特に:酸の濃度、塩の濃度、温度、および適切な平衡定数、Ki、に基づいて計算され得る。本発明の酸濃縮液および透析液を伴う状態は、より複雑である。さらなる平衡はカルシウム(Ca)およびマグネシウム(Mg)の透析液への追加により導入される。これらの金属イオンは、炭酸イオン、酢酸イオン、およびクエン酸イオンとのそれら自身の平衡を有する。いくつかの平衡に対する平衡定数Kiは入手可能ではなく、そしてそれゆえ、それらの透析液処方物のpHへの影響は、絶対的に予想され得ない。滴定法による溶液pHの直接的な測定は、透析液の処方において使用され得る。溶液における主な平衡は、以下により与えられる(網羅的なリストではない):
【0081】
【数4】
ここで、Aはクエン酸アニオンを表わす。
【0082】
【数5】
ここで、Acは酢酸アニオンを表わす。
【0083】
【数6】
A3-種は、7.0を超えるpHにおいて優勢であるため、より低い価数のクエン酸イオン(HA2-およびH2A-)とのカルシウムおよびマグネシウム平衡は考慮されない。
【0084】
【数7】
全ての定数および濃度が37℃について知られている場合、上記の等式はマトリックスに設定され得、そしてpHおよび緩衝作用は計算により得られ得る。pHを生理学的な範囲に保つこと(特にバイカーボネート濃縮物のpHが上昇する傾向にある透析の終わりごろに)の必要性により、状況はより制限される。通常、これはより多くの(クエン)酸の追加により達成され得るが、これは、(クエン酸由来の)クエン酸イオンの濃度を出来るだけ低く保つことの必要性により妨げられる。以下に議論されるように、これは、カルシウムおよびマグネシウムの、クエン酸イオンと結合し、それによりカルシウムとマグネシウムの血清レベルを臨床的に受容不可能なレベルに低下させるという傾向のために必要とされる。この問題の解決法は、本出願人らの緩衝剤の選択において見出される。
【0085】
クエン酸ナトリウムは、受容可能なほど低い総クエン酸イオン濃度を維持するという上述の必要性のため、緩衝剤中には用いられない。アセテートまたはラクテートは、以下の理由から用いられ得る:(1)これらの適切な緩衝作用、(2)費用、(3)酢酸イオン(これが好ましい)は、透析処方物に既に(酢酸由来で)用いられており、そしてそれゆえ透析液の化学に何ら新しい変化は導入されない。
【0086】
緩衝作用は、バイカーボネートのpHが高い場合に(それは、不正確な混合または混合後の時間の経過のいずれかによる)、透析液のpHを、生理学的な、不安のない(non−alarm)レベルに下げることにより、それ自体を明らかにする。バイカーボネートpHが適切な場合、緩衝は存在するが、これは透析液の作用に認識されない。<8.0のpHのバイカーボネート濃縮溶液が用いられた場合、緩衝作用は明らかではなかった。8.1<pH<8.3のバイカーボネート濃縮溶液が用いられた場合、緩衝作用は明らかであった(図を参照のこと)。緩衝作用は、酢酸ナトリウム濃度が酸濃縮液1リットル当たり0.5gと3.0gとの間で特に明らかであり、ここでこれは本発明の酸濃縮液にとって好ましい範囲である。
【0087】
別の局面においては、本発明は、腹膜透析(PD)に対して特に適するクエン酸塩含有組成物を提供する。これらの組成物は固体または液体のいずれかの形態、すなわち、腹膜透析液の前駆物である乾燥成分の混合物、またはそれ自体が腹膜透析液である様々な溶質の溶液のいずれか、であり得る。乾燥成分の混合物は、最低限、クロライド、シトレート、バイカーボネートおよびデキストロースを、中性の(すなわち、正味電荷のない)組成物を提供する1以上のカチオン種とともに含む。PD組成物の溶液形態は、最低限、上記に列挙される乾燥組成物に必要とされる最低限の成分に加えて水を含む。固体または液体形態のいずれにおいても、腹膜透析に適するクエン酸含有組成物は滅菌されている。
【0088】
本発明の腹膜透析液(すなわちPD溶液透析液)は、以下の、PD溶液1リットル当たりのmEqの形で表される指定された量の成分に加え、水を含む:シトレート(0.5〜6、好ましくは1.5〜4.5、より好ましくは2〜3);クロライド(20〜200、好ましくは40〜150、より好ましくは60〜120);およびバイカーボネート(5〜100、好ましくは10〜70、より好ましくは30〜40)。さらに、PD組成物の溶液形態は、グルコースを液体形態1リットル当たりgの形で10〜100、好ましくは20〜80、より好ましくは40〜60の濃度で含む。さらに、PD組成物の溶液形態は、シトレート、クロライド、バイカーボネート、および組成物中に存在し得るあらゆる他のアニオン種の全てを中和するのに十分な数の生理学的に受容可能なカチオンを含む。このPD溶液透析液は滅菌されているが、それは米国食品薬品管理局により腹膜透析のために認可された全ての透析液に必要とされるからである。
【0089】
好ましい実施形態においては、PD組成物の溶液形態はアセテートおよび/またはラクテートを含み、ここでこれら2つのアニオンは総計で、PD溶液1リットル当たりのmEqの形で表される以下の量で存在する:0.01〜10、好ましくは0.1〜1、より好ましくは0.25〜0.75。PD溶液中に存在するカチオン種は、血液透析組成物中のカチオン種(すなわち、ナトリウム、マグネシウム、カルシウムおよびカリウム)に対して本明細書中で上記に記載されるのと本質的に同じ濃度範囲内にある。
【0090】
本発明は、滅菌水との組み合わせで上記のPD溶液透析液を生成する乾燥組成物を提供する。この乾燥組成物は、それ自体、滅菌されている。1つのアプローチによると、このような乾燥組成物は、シトレート各(1)グラム当たりの特定の成分のグラムの形で述べられ得る。これらの形を用いると、乾燥組成物は、クロライドを5〜50、好ましくは10〜40、より好ましくは20〜30の量;バイカーボネートを1〜50、好ましくは5〜30、より好ましくは10〜20の量;そしてグルコースを100〜600、好ましくは150〜500、より好ましくは200〜350の量含み、ここでこれらの値はそれぞれシトレート1グラムあたりのグラムである。これらの量を計算する場合、シトレート、クロライド、およびバイカーボネートの式量は、それぞれ189.1g/mol、35.5g/molおよび61.0g/molであり、ここでクロライドおよびバイカーボネートの各々は1価の電荷を保有し、一方、シトレートは3価の電荷を保有する。乾燥PD組成物は、中性の(正味電荷のない)組成物を提供するのに十分なカチオン種を含む。さらに、得られる溶液のpHは、生理学的に耐容可能な範囲内、好ましくは6.4〜7.6の範囲内にある。
【0091】
別のアプローチによると、乾燥PD組成物の含有量は、組成物中に存在するシトレート各(1)ミリ当量当たりの組成物中に存在する特定の荷電種のミリ当量の数の形で述べられ得る。これらの形においては、乾燥組成物は、クロライドを1〜200mEq、好ましくは10〜100mEq、より好ましくは30〜50mEqの範囲の量で含み;そしてバイカーボネートを1〜50mEq、好ましくは5〜30mEq;より好ましくは10〜20mEqの範囲の量で含む。さらに、乾燥PD組成物はグルコースを100〜600;好ましくは150〜400、より好ましくは200〜300の量で含み、ここで、これらの値はそれぞれシトレート1グラム当たりのグラム数である。
【0092】
腹膜透析液およびそれに対する乾燥前駆物の両方は、腹膜透析において有用であるために必ず滅菌されている。従って、それぞれの調製は必ず、滅菌条件下で行われ、そして/または得られる組成物は適切な滅菌処理により滅菌される。1つの実施形態によれば、乾燥PD組成物は、塩化ナトリウム(5.67g)、塩化カルシウム二水和物(0.26g)、塩化マグネシウム六水和物(0.10g)、炭酸水素ナトリウム(2.94g)、無水クエン酸(0.15g)、酢酸ナトリウム三水和物(0.041g)およびデキストロース(42.5g)を組み合わせることにより調製され、ここで、列挙された化学物質はそれぞれ滅菌された形態であり、そして組み合わせる手順は滅菌環境において行われる。この乾燥組成物は、0.15gのシトレート、3.6gのクロライド、2.1gのバイカーボネートおよび42.5gのグルコースを含み、これはシトレートの各グラム当たりの形では、24gのクロライド、14gのバイカーボネートおよび283gのデキストロースであり、そしてシトレートの各ミリ当量当たりの形では、42mEqのクロライドおよび14.5mEqのバイカーボネートである。
【0093】
乾燥PD組成物、およびそれから調製される腹膜透析液はアニオン種の形で述べられる。なぜなら、それぞれのアニオン種が、生理学的に受容可能であり、かつ目的のアニオン種を含む任意の乾燥形態で組成物中に導入され得るからである。従って、例えば、「シトレート」はシトレートを含む任意の乾燥形態で乾燥組成物中に導入され得る。例としては、クエン酸(無水物)、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二ナトリウム塩三二水和物、クエン酸一ナトリウム塩、クエン酸三カリウム塩一水和物などがある。同様に、バイカーボネートおよびクロライドのそれぞれは、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムから選択されるカチオンと同時に導入され得、そして無水または水和形態であり得る。従って、乾燥組成物は、任意の特定の塩またはそれらのプロトン化された形態を具体化することよりむしろ、「クロライド」、「シトレート」、および「バイカーボネート」の用語で記載される。
【0094】
クロライドは乾燥組成物中に塩の形で存在する。適切な塩化物塩としては、限定はないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および塩化マグネシウムが挙げられる。好ましい塩化物塩は塩化ナトリウムである。
【0095】
シトレートは乾燥組成物中に酸および/または塩の形で存在する。クエン酸はシトレートの適切な酸形態である。クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウムおよびクエン酸カルシウム(すなわち、二クエン酸三カルシウム)は全てシトレートの適切な塩形態である。シトレートは、混合酸/塩基形態、すなわち、1以上のプロトンおよび1以上の金属カチオンが同時に複合される形態であり得る。混合酸/塩基形態のシトレートの典型的な例としては、限定はないが、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、およびクエン酸水素二ナトリウムが挙げられる。好ましいシトレートはクエン酸である。
【0096】
バイカーボネートは乾燥組成物中に塩の形で存在する。適切な炭酸水素塩としては、限定はないが、炭酸水素ナトリウム、および炭酸水素カリウムが挙げられる。好ましい炭酸水素塩は炭酸水素ナトリウムである。
【0097】
グルコースは、ほとんどの現在用いられている腹膜透析液の構成成分であり、そしてグルコースが腹膜透析液を提供することが公知であるという利点を提供するために、本発明の腹膜透析液(およびその前駆物)に含まれる。例えば、前記で議論されるように、グルコースは浸透圧剤として主に有用であり、そしてまた、腹膜透析の望まない副作用のいくつかを和らげることが認識されている。グルコースはまた、透析処置を受ける被験体にいくつかの栄養補給剤を提供し得る。腹膜透析液に現在用いられている最も典型的なグルコース異性体は、デキストロース、すなわち、α−D−グルコースである。これは一般に公知の商業原料であり、そして水和物および無水物の形態の両方で入手可能である。いずれの形態も本発明のPD組成物に用いられ得る。
【0098】
乾燥組成物は触感は乾燥しているが、多少の水を含み得る。例えば、乾燥PD組成物に適した成分として上述した塩および酸のいくつかは、水和された形態で一般に入手可能である。このような水和された形態は、本明細書中で提供される乾燥PD組成物を調製するのに適して用いられる。乾燥PD組成物の上述の成分のいずれも、多くの商業的な供給会社から入手可能である。例えば、Sigma−Aldrich(http://www.sail.com)を参照のこと。好ましくは、成分は、米国薬局方(USP)等級純度以上であり、これば、少なくとも約95%純粋であると一般に認識されている。
【0099】
乾燥PD組成物中には任意成分が存在し得る。適切な任意成分としては、限定はないが、アミノ酸が挙げられる。
【0100】
乾燥PD組成物は、計量された分量の様々な乾燥滅菌成分を、滅菌条件下で供に単に混合することにより容易に調製される。混合は、成分の組み合わせを均一な混合物となるまで攪拌することにより容易に達成される。予め計量された乾燥混合物は、輸送における簡便さのため、そして技術者がより簡単に乾燥組成物の溶液形態を調製することを可能にするため、密封されたパッケージに包装され得る。
【0101】
本発明の乾燥透析液粉末技術は、腹膜透析液の調製を可能にする。本発明のこの局面は、好ましい実施形態において、クエン酸を酸性化剤として、デキストロースを2.0%を超える濃度で、そしてバイカーボネートを塩基性アニオンとして用いる独特の腹膜透析液を作製する。他の成分は、水ならびにクロライド、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウムを含み、これらはすべて血液透析透析液のために特定された濃度範囲で含まれ得る。腹膜透析は、1回の処置当たり用いられる透析液の容量が血液透析において用いられる量のほんの小さな一部分であるため、(乾燥粉末以外の)前駆物を何ら必要としない。使用の直前に腹膜透析液を作ること(すなわち、滅菌乾燥PD粉末に滅菌水を加えることによる)は、バイカーボネートの塩基性アニオンとしての使用を可能にする。一般に、バイカーボネートは、そのクエン酸との溶液が、貯蔵を可能にするのに十分な長時間の安定性を有していないためPDには用いられ得ない。この安定性の問題を克服するため、現在用いられているPD組成物は典型的に(バイカーボネートよりむしろ)ラクテートを塩基性アニオンとして含む。しかし、ヘルスケア専門職には塩基性アニオンとしてバイカーボネートを好む者もおり、そして本発明はその必要性を検討する。
【0102】
滅菌水および乾燥成分が組み合わされる正確な順番は重要ではない。1つの選択肢としては、滅菌水は上記の乾燥PD組成物に加えられ得る。別の選択肢としては、所望の容量の滅菌水が提供され得、そしてこれに、様々な他の(滅菌した)溶液PD組成物の成分のそれぞれが加えられ得る。典型的には、最終溶液はかき混ぜられるかまたは別の方法で攪拌され(例えば、振とうされ)、均一な組成物を形成するべきである。「Handbook of Dialysis」第2版、Dangirdas,J.T.およびIng T.S.著(Little,Brown,Boston,1994年)は、腹膜透析(および血液透析)の広範な考察を提供する。
【0103】
(生理学的効果)
クエン酸は、安価な生理的な酸であるため、透析液のための潜在的な酸性化剤として認識されていた。さらに、それは血液バンクにおける使用の広範な歴史を有しており、そしてまた血液透析における局所的な抗凝血のために首尾良く用いられている。これらの先の使用は両方とも、クエン酸のカルシウム結合効果に基づく。血液中の遊離カルシウムの濃度がある臨界の濃度より高い場合に血液が凝固するということは、経験的に認められている。クエン酸が血液に加えられると、シトレートは遊離カルシウムと結合し、その濃度を減少させる。遊離カルシウム濃度がある点まで減少される場合、血液はもはや凝固しない。
【0104】
本発明においては、クエン酸は、透析液のpHを下げる酸性化剤として透析液中に使用される。しかし、約2.4mEq/Lより多いクエン酸を透析液中に使用することは、血清カルシウム濃度の著しい減少を引き起こし得、これは臨床的に望ましくないかもしれない。透析液中のクエン酸の2.4mEq/Lのレベルでは、血液中のシトレート濃度の増加は、血液の凝血挙動にいかなる注目すべき有害な効果も引き起こさないのに十分に典型的に小さい。実際に、患者の通常の抗凝血薬ヘパリンにより既に達成された凝血時間を超える、彼らの凝血時間の測定可能な増加は典型的には存在しない。
【0105】
一般に、腎不全患者は慢性的にアシドーシスを患う。彼らの腎臓は、身体から通常の代謝の間に生成されるH+イオンを取り除くことができない。結果として、彼らの身体は、過剰のH+イオンを緩衝するために過剰な量のバイカーボネートを用いる。酸を中和するためのバイカーボネートの定常的な使用により、これらの患者は、彼らが透析処置のために到着する時には通常のレベルより低いバイカーボネート(二酸化炭素)を有している。伝統的に、透析処置は、通常の血清濃度よりも高い濃度のバイカーボネートを含む透析液を使うことによるアシドーシス問題を矯正することを求める。従って、処置の間、血中のバイカーボネートはこの過剰なバイカーボネートのいくらかが血中へ拡散することにより増加し、これは全身のバイカーボネートの回復を助ける。しかし、約37mEq/Lのバイカーボネート濃度の透析液を用いる伝統的な透析は、しばしば透析セッションの間、通常の血中バイカーボネートを維持するために十分ではない。結果的に、患者が次の透析セッションに来る時までに、血中バイカーボネートは再び正常以下になる。本発明の緩衝されたシトレート透析液は、身体のバイカーボネートレベルを補給する際にいくつかの効果を示し、それゆえ慢性的なアシドーシスを処置するのを助ける。
【0106】
以下の実施例は、説明の目的で提供され、限定の目的で提供されるのではない。
【0107】
(実施例)
(実施例1 酸濃縮処方物)
以下の量の、指示されたUSP等級の化学薬品を注意深く計量した:262.0gの塩化ナトリウム(FW58.45)、9.70gの塩化カルシウム(二水和物、FW147.02)、3.40gの塩化マグネシウム(六水和物、FW203.3)、90.0gのデキストロース(FW180.16)、7.0gのクエン酸(無水物、FW192.12)および1.75gの酢酸ナトリウム(三水和物、FW136.08)。化学薬品を大きな目盛り付きビーカーに入れ、そしてAAMI品質の水を900mlの印まで加えた。そのビーカーを攪拌板の上に置き、そして化学薬品と水を攪拌するために攪拌子を用いた。約10分間攪拌後、化学薬品は完全に溶解し、そして溶液は「水晶のように透明(crystal clear)」であった。攪拌子を取り除き、溶液を、さらなるAAMI品質の水でビーカーの1リットルの印まで「一杯に」した。攪拌子を再び投入し、そして溶液をさらに3分間攪拌した。
【0108】
(実施例2 血液透析)
実施例1で調製された溶液のビーカーを、テスティング(バイパス)モードで使用準備のできたFresenius血液透析機に使用した。この構成において、この機械は、患者が透析処置を受けている場合と同じ様式で透析液を作製する。処理された水供給ラインをこの機械に接続し、そして1容器分のバイカーボネート濃縮液を注意深く調製した。次いで、全ての溶液を機械に接続し、そしてスイッチを入れた。
【0109】
この機械を、調製した溶液がその機械を通る適切な経路に完全に満たされることを確保するため、800ml/分の透析液流速で10分間作動させた。さらに、その機械の伝導率メーターおよび透析液流出ラインに接続された補助伝導率モニターの両方を、示度が受容可能な範囲(1310ミリシーメンスと1330ミリシーメンスの間)にとどまるようにモニターした。機械で混合された透析液のpHを、平均10分間の間隔で数回、排液管流出液をサンプリングすることによりモニターした。pHは7.4であり、これは7.3〜7.5の目標範囲内であった。流出液のサンプルは、最終透析液中の濃度が全て血液透析のために受容可能な範囲内にあることを確認するため、University of Washington Medical Center’s laboratoryにおいて分析された。
【0110】
最後に、適切な認可を受けた後、この透析液前駆物および血液透析機より産生されて得られた透析液は、新しい透析液の臨床試験の間、実際の患者の処置において反復して試験された。試験を通じて、5時間以上続いた透析セッションにおいてさえも、pH警告が示された例はなかった。
【0111】
(実施例3 透析液組成物)
1リットルの透析液組成物は、炭酸水素ナトリウムを除き、以下を単位mEq/Lで含む:ナトリウム、100.3;クロライド、104.25;カルシウム、2.5;カリウム、1.0;マグネシウム、0.75;アセテート、0.3;クエン酸、2.4;およびデキストロース、2.0g/l。この透析液組成物の全ての化学薬品の組成(これは炭酸水素ナトリウムを含まない)は(グラムで)以下であった:NaCl(5.822);CaCl2 2H2O(0.139);KCl(0.074);MgCl2 6H2O(0.036);NaC2H3O2(0.039);C6H8O7(0.155)およびC6H12O6 H2O(2)。
【0112】
前述より、本発明の特定の実施形態が例示の目的で本明細書中に記載されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく様々な改変がなされ得ることが理解される。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲による限定を除いて限定されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図は透析液のpH(y軸)対酢酸ナトリウム濃度(x軸)のプロットであり、そして、バイカーボネート濃縮物溶液が初期pH8.14を有した場合、酢酸ナトリウムの透析液への添加の、pHに対する効果を示す。
Claims (22)
- 緩衝透析液を調製するための前駆体組成物であって、該前駆体組成物が、20〜200mEq/Lの濃度範囲のシトレート;アセテート塩の形態のアセテートおよび/またはラクテート塩の形態のラクテートから選択される緩衝アニオン;水;1,000〜7,000mEq/Lの濃度範囲のクロライド;および少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオンを含む、前駆体組成物。
- 請求項1に記載の組成物であって、ここで前記緩衝アニオンが、0.01〜150mEq/Lの範囲の濃度である、組成物。
- 請求項1または2に記載の前駆体組成物であって、グルコース、ポリ(グルコース)、およびフルクトースから選択される、2,700g/L未満の濃度の糖をさらに含む、前駆体組成物。
- 請求項2または3に記載の前駆体組成物であって、ここで前記シトレートが、クエン酸、ならびにクエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸カルシウム、およびクエン酸マグネシウムからなる群から選択されるクエン酸塩の少なくとも1つの形態であり;ここで前記アセテート塩が、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウムおよび酢酸マグネシウム四水和物からなる群から選択され;そしてここで前記ラクテート塩が、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウムおよび乳酸マグネシウム三水和物からなる群から選択される、前駆体組成物。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の前駆体組成物であって、15℃〜40℃の温度で、1〜6.5の範囲のpHを有する、前駆体組成物。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の前駆体組成物であって、該組成物が2,000〜5,000mEq/Lの濃度範囲のクロライド;70〜150mEq/Lの濃度範囲のシトレート;0.3〜125mEq/Lの濃度範囲のアセテート塩;水素、2,000〜5,000mEq/Lの濃度範囲のナトリウム、250mEq/L未満の濃度のカリウム、250mEq/L未満の濃度のカルシウム、および100mEq/L未満の濃度のマグネシウムから選択される少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオン;ならびに2,700g/L未満の濃度のグルコースを含み、ここで該組成物が少なくとも透析液のAAMI標準値を満たす、前駆体組成物。
- 緩衝透析液組成物であって、
処理水;
40〜150mEq/Lの濃度範囲のクロライド;
1.5〜4.5mEq/Lの濃度範囲のシトレート;
アセテート塩の形態のアセテートおよび/またはラクテート塩の形態のラクテートから選択される、0.2〜0.5mEq/Lの範囲の濃度の緩衝アニオン;
25〜45mEq/Lの範囲の濃度のバイカーボネート;ならびに
水素、60〜190mEq/Lの濃度範囲のナトリウム、5mEq/L未満の濃度のカリウム、5mEq/L未満の濃度のカルシウム、2mEq/L未満の濃度のマグネシウム、および45g/L未満の濃度のグルコースからなる群より選択される少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオンを含み、
前記組成物が、透析液について定められたAAMI品質の標準値を満たすか、または超える、透析液組成物。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の前駆体組成物、または請求項7に記載の透析液組成物であって、ここで前記水が、透析液について医科機械振興協会(AAMI)によって制定された純度要求を満たすか、または超え、そして他の全ての成分が少なくとも米国薬局方(USP)等級の純度を有する、前駆体組成物または透析液組成物。
- 請求項7または8に記載の透析液組成物であって、ここでpHが、25℃〜40℃の温度において、5〜8.5である、透析液組成物。
- 請求項7または8に記載の透析液組成物であって、該組成物が、60〜120mEq/Lの濃度範囲のクロライド;2〜3mEq/Lの濃度範囲のシトレート;アセテート塩の形態である、0.2〜0.5mEq/Lの濃度範囲のアセテート;25〜45mEq/Lの濃度範囲のバイカーボネート;水素、70〜150mEq/Lの濃度範囲のナトリウム、5mEq/L未満の濃度のカリウム、5mEq/L未満の濃度のカルシウム、および2mEq/L未満の濃度のマグネシウムから選択される少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオン;ならびにデキストロースの形態である、8g/L未満の濃度のグルコースを含み、ここで該透析液組成物が透析液のAAMI標準値を満たすか、または超える、透析液組成物。
- 透析液前駆体組成物を形成する方法であって、該方法が、1,000〜7,000mEq/Lの濃度範囲のクロライド、20〜200mEq/Lの濃度範囲のシトレート、ならびにアセテートおよびラクテートから選択される0.01〜150mEq/Lの濃度範囲の少なくとも1種類の緩衝アニオンを有する組成物を与えるために、処理水、クロライド、シトレート、アセテート塩の形態であるアセテートおよび/またはラクテート塩の形態であるラクテートから選択される少なくとも1種類の緩衝アニオン、ならびに少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオンを混合する工程を包含する、方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の前駆体組成物、または請求項11に記載の方法であって、70〜150mEq/Lの濃度範囲のシトレートを含む、方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の前駆体組成物、または請求項11もしくは12に記載の方法であって、ここで前記緩衝アニオンが、0.3〜125mEq/Lの濃度範囲の、アセテート塩の形態のアセテートまたはラクテート塩の形態のラクテートである、方法。
- 請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法であって、前記透析液前駆体と、グルコース、ポリ(グルコース)およびフルクトースから選択される糖を2,700g/L未満の濃度で混合する工程をさらに包含する、方法。
- 請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法であって、シトレートが、クエン酸、またはクエン酸二水素ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム二水和物、クエン酸二水素カリウム、クエン酸水素二カリウム、クエン酸カルシウム、およびクエン酸マグネシウムからなる群から選択されるクエン酸塩の少なくとも1つの形態にある、方法。
- 請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法であって、前記アセテート塩が、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム一水和物、酢酸マグネシウム、および酢酸マグネシウム四水和物からなる群から選択される、方法。
- 請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法であって、前記ラクテート塩が、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、および乳酸マグネシウム三水和物からなる群から選択される、方法。
- 請求項11〜17のいずれか一項に記載の方法であって、前記透析液前駆体組成物と処理水を混合し、ここで該処理水はAAMIによって制定された透析液について純度要求を満たすか、または超えて、他の全ての成分は少なくともUSPグレードの純度を有する工程をさらに包含する、方法。
- 請求項11〜18のいずれか一項に記載の方法であって、前記組成物が、処理水;2,000〜5,000mEq/Lの濃度範囲のクロライド;70〜150mEq/Lの濃度範囲のシトレート;アセテート塩の形態である、0.3〜125mEq/Lの濃度範囲のアセテート;水素、2,000〜5,000mEq/Lの濃度範囲のナトリウム、250mEq/L未満の濃度のカリウム、250mEq/L未満の濃度のカルシウム、100mEq/L未満の濃度のマグネシウムから選択される少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオン;および2,700g/L未満の濃度のデキストリンを含み、ここで前記組成物は透析液について定められたAAMI品質の標準値を満たすか、または超える、方法。
- 緩衝透析液組成物を形成する方法であって、
透析液前駆体組成物をバイカーボネート含有水溶液と混合する工程を含み、
該透析液前駆体組成物は、透析液組成物を与えるために、処理水、クロライド、シトレート、アセテート塩の形態のアセテートおよびラクテート塩の形態のラクテートから選択される少なくとも1種類の緩衝アニオン、ならびに少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオンを含み、
前記透析液組成物は、60〜120mEq/Lの濃度範囲のクロライド;1.5〜4.5mEq/Lの濃度範囲のシトレート;アセテート塩の形態のアセテートおよびラクテート塩の形態のラクテートから選択される0.2〜0.5mEq/Lの濃度範囲の少なくとも1種類の緩衝アニオン;25〜45mEq/Lの範囲の濃度のバイカーボネート;水素、60〜190mEq/Lの濃度範囲のナトリウム、5mEq/L未満の濃度のカリウム、5mEq/L未満の濃度のカルシウム、2mEq/L未満の濃度のマグネシウム、および45g/L未満の濃度のグルコースからなる群より選択される少なくとも1種類の生理的に受容可能なカチオンを有し、かつ透析液について定められたAAMI品質の標準値を満たすか、または超える、透析液組成物である、
方法。 - 前記透析液組成物が、25℃〜40℃の温度で、7.2〜7.4の最終pHを有する、請求項20に記載の方法。
- 請求項11または20に記載の方法にしたがって調製される組成物。
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