JP3530235B2 - 血液透析用剤 - Google Patents

血液透析用剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、炭酸水素イオンを含有
する透析液、すなわち重曹透析液を調製するための製剤
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、下記のような重曹透析液の需要が
増加している。 Na+ 120〜150 mEq/l K+ 0.5〜3.0 mEq/l Ca++ 1.5〜4.5 mEq/l Mg++ 0.5〜2.0 mEq/l Cl- 90〜135 mEq/l HCO3 - 20〜 35 mEq/l CH3CO2 - 5〜 10 mEq/l ブドウ糖 0〜2.5 g/l しかし、このような組成の透析液は、1人1回の血液透
析に大量(約350リットル)使用され、しかも製剤的
に不安定なことから、使用直前に調製せざるを得ず、各
種電解質の正確な秤量、溶解、pH調整など煩雑な作業
を要するものであった。
【0003】そこで前記作業を軽減するものとして、1
人1回分の包装単位で、必要な成分中の炭酸水素ナトリ
ウムを別にした濃厚原液(約11リットル)が市販され
るようになった。しかし、運搬、保管場所、透析液調製
時の取扱い等において十分改良されたとは言えず、その
後も種々の提案がなされている。例えば、特開平3−7
4331号公報には、重曹透析液調製に必要な成分を、
カルシウム成分を含み炭酸水素ナトリウムを含まない群
と炭酸水素ナトリウムを含みカルシウム成分を含まない
群とに分け、前者にはpH調製剤としての酢酸を含ま
せ、両群をそれぞれ造粒して混合した透析用剤が開示さ
れている。この発明は、所定量の透析用剤を単に計算量
の水に溶解するだけで重曹透析液の調製ができるように
したものであるが、pH調整剤として液体の酸が使用さ
れているため、たとえ少量であっても経時的に酸と炭酸
水素ナトリウムの反応が進み、炭酸水素イオン含量の減
少をもたらす虞があり、さらには、長期保存中に造粒物
の凝集が生じ、取扱いに不便を来す可能性があるなどの
問題点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、重曹
透析液を調製するために必要な電解質とpH調整剤とし
て酸を含む固形製剤であって、安定性に優れ、取り扱い
易く、用時、水に速やかに溶ける血液透析用剤を提供す
ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、血液透析
用剤に必要な各電解質、さらには必要に応じて添加する
ブドウ糖の安定性及び吸湿性について考慮しながら、p
H調整剤をも含めた安定な固形製剤の可能性について鋭
意研究した。その結果、pH調整剤として薬理学的に許
容される有機酸を使用し、相互に反応し易い成分を群分
けし顆粒剤とし、更にその顆粒剤の一方又は両方の表面
を配合変化を起こさない成分で覆うことにより前記課題
が解決できることを見出した。本発明はその知見に基づ
いて完成したものである。
【0006】すなわち、本発明は、少なくともNa+
Ca++、Cl-及びHCO3 -を含有する透析液の調製に
必要な電解質のうち、重炭酸塩以外の1種以上及びpH
調整剤としての薬理学的に許容される有機酸を含有する
第1剤と、重炭酸塩及び前記で使用された残りの電解質
を含有する第2剤との混合物である透析用剤において、
第1剤又は/及び第2剤が塩化ナトリウム、塩化カリウ
ム及びブドウ糖からなる群から選ばれた1種又は2種以
上との組み合わせからなる成分で被覆された血液透析用
剤を提供するものである。
【0007】前記有機酸として酢酸、乳酸、クエン酸、
酒石酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、イソクエン酸及び
リンゴ酸等を挙げることができ、なかでもクエン酸が好
ましい。これらの有機酸は1種のみならず2種以上使用
することができる。
【0008】本発明に用いられる電解質は、薬理学的に
許容されるものでなければならない。例えば、炭酸水素
ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、塩化
カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナ
トリウム、酢酸カリウム、グルコン酸カルシウム等をあ
げることができる。本発明を構成する製剤は、上記のよ
うな電解質と共に、血中に含まれるその他の成分、例え
ばブドウ糖を含むことができる。
【0009】本発明の第2剤に含まれる成分としては、
炭酸水素ナトリウム及び塩化ナトリウム、塩化カリウ
ム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム及びブドウ糖からな
る群から選ばれた1種又は2種以上との組み合わせが安
定性に優れ、好ましい。
【0010】本発明の透析用剤に含まれる成分の好まし
い配合範囲を、透析液調製後の組成範囲で示せば下記の
如くであり、そのpHは7.0〜8.0、より好ましく
は7.2〜7.6である。 Na+ 120〜150 mEq/l K+ 0〜 4 mEq/l Ca++ 1〜 6 mEq/l Mg++ 0〜 2 mEq/l Cl- 90〜135 mEq/l CH3CO2 - 0〜 15 mEq/l HCO3 - 10〜 40 mEq/l ブドウ糖 0.1〜 10 g/l
【0011】本発明の血液透析用剤を製造するに当た
り、電解質ないしブドウ糖等の配合量、あるいは第1剤
と第2剤との混合比は、例えば前記範囲内の各溶質濃度
を設定し、各成分を供給する電解質等の組み合わせを決
めることにより逆算することができる。
【0012】本発明に係る顆粒剤の造粒方法は、特に限
定されず、乾式造粒法、押出し造粒法、流動層造粒法又
は転動流動造粒法等の何れでもよく、また、幾つかの方
法を組み合わせてもよい。なお、配合する電解質等は造
粒前に粉砕し、粒子径が約250μm以下の粉末にして使
用することができ、好ましくは粒子径が約100μm以下
の粉末にして使用するのがよい。粉末の粒子径が250μ
mを超えると機械的強度が不十分な造粒物が得られ、更
に水に対する溶解速度が遅くなるので好ましくない。
【0013】本発明の血液透析用剤を製造する場合、例
えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩及び有機酸を含
み重炭酸塩を含まない群(第1剤)と重炭酸塩を含みマ
グネシウム塩、カルシウム塩及び有機酸を含まない群
(第2剤)の成分を各群毎にサンプルミル(不二パウダ
ル社製)等の粉砕機で微粉化し、混合、練合し、一般に
使用される造粒機及び整粒機を用いて顆粒を造粒及び整
粒し、乾燥する。次に、塩化ナトリウム、塩化カリウム
及びブドウ糖からなる群(被覆層)を前記と同様に微粉
化する。先に得られた第1剤又は第2剤の顆粒を遠心流
動造粒装置(フロイント産業社製)に入れ、回転させ、
結合剤として適量のブドウ糖を噴霧しながら前記微粉末
(被覆層)を添加し、被覆する。添加終了後、通常の方
法で乾燥することにより目的の顆粒剤を得る。また、第
2剤の造粒に関しては、サンプルミル(不二パウダル社
製)等の粉砕機で微粉化し、十分に混合した混合末をロ
ーラーコンパクター(ターボ工業社製)で造粒して得ら
れる顆粒を第2剤としてもよい。さらに必ずしも第2剤
は造粒する必要はなく成分の微粉末の混合物でも差し支
えない。次に、得られた第1剤と第2剤の計算量を混合
すればよい。
【0014】本発明の製造に用いられる結合剤は、成分
中のブドウ糖が使用されているため安全であり、また結
合力が強いので高強度で粉状化しにくい製剤を得ること
ができる。ブドウ糖は溶媒に適宜溶解して用いられる
が、好ましい濃度としては0.5〜55W/W%が適当で
ある。溶媒としては、水単独を用いる場合の他、水にエ
チルアルコールなどを加えた混合溶媒を用いても良い。
【0015】第1及び第2剤の混合は、必ずしも均一に
混合する必要がなく、例えば成人1人1回に使用する分
を包装容器に充填し、密封して供給される。
【0016】本発明の血液透析用剤の保存容器に用いら
れる素材としては、実質的に防湿性及びガス非透過性の
ものであれば特に限定されないが、例えば、アルミのよ
うな金属の他、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩
化ビニル等あるいはアルミニウムの如き金属箔、ナイロ
ン、セロファン等を、適宜二層ないし多層に積層したラ
ミネートフィルムがあげられる。
【0017】前記のような包装形態の気密性容器に、炭
酸ガス気流中乾燥剤と共に密封すると、より安定性を向
上させることができるので好都合である。乾燥剤として
はシリカゲル、塩化カルシウム、炭酸カルシウム等が用
いられる。
【0018】
【作用】このようにして得られる血液透析用剤は、有機
酸を含む第1剤又は重炭酸塩を含む第2剤の少なくとも
一方の顆粒を被覆することにより、成分間の反応を防ぐ
ことができ、該製剤を混合しても変質や含量変化を来す
ことの無い安定な血液透析用剤が得られる。従って、使
用に際し必要なすべての成分を含む製剤として提供で
き、取り扱い易く、しかも長期保存が可能である。ま
た、水にすみやかに溶解することから、調製が容易であ
る。
【0019】
【実施例】以下、実施例及び試験例に基づいて、本発明
をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に
限定されるものではない。 〔実施例1〕サンプルミル(不二パウダル製、粉砕機K
IIW-1)で粉砕した塩化マグネシウム99.1g、塩化
カルシウム214.8g、塩化カリウム144.8g、塩化ナトリ
ウム4860g、クエン酸194.4g及びブドウ糖486gを混合
し、さらに270gの水を加えて練合した。この練合物を
押出し造粒機を用いて造粒し、顆粒を得た。次に、常法
に従い顆粒を乾燥した。一方、塩化ナトリウム122.1g
及びブドウ糖45.4gを万能攪拌機(品川工業製、SD-02
型)で攪拌し、サンプルミル(不二パウダル製、粉砕機
KIIW-1)で粉砕して微粉末を得た。先に造粒した
顆粒700gを遠心流動造粒コーチング装置(フロイント
産業社製、CF-360S型)に入れ、回転させ(回転数200rp
m)、ブドウ糖溶液を噴霧しながら微粉末を添加し造粒
後乾燥し、第1剤の顆粒を得た。
【0020】次に炭酸水素ナトリウム285.8g及び酢酸
ナトリウム55.7gをサンプルミル(不二パウダル製、粉
砕機KIIW-1)で粉砕し混合後、6.0gの水を加えて
練合した。この練合物を押出し造粒機を用いて造粒し、
顆粒を得た。次に、常法に従い乾燥し、第2剤の顆粒を
得た。
【0021】〔実施例2〕 第1剤の顆粒は実施例1と同様にして、塩化マグネシウ
ム99.1g、塩化カルシウム214.8g、塩化カリウム144.8
g、塩化ナトリウム4860g、クエン酸194.4g及びブド
ウ糖486gから頼粒を得たのち、ブドウ糖溶液を噴霧し
ながら塩化ナトリウム122.1g及びブドウ糖45.4gから
得た微粉末を添加し造粒後乾燥して得た。次に炭酸水素
ナトリウム285.8g及び酢酸ナトリウム55.7gをサンプル
ミル(不二パウダル製、粉砕機KIIW-1)で粉砕し十分混合
した後、得られた混合物をローラーコンパクター(ター
ボ工業社製、WP90×30型)で造粒した後、ロールグラニ
ュレーター(日本グラニュレータ製、GRN-1031型)で整粒
し、第2剤の顆粒を得た。
【0022】〔実施例3〕サンプルミル(不二パウダル
製、粉砕機KIIW-1)で粉砕した塩化マグネシウム9
9.1g、塩化カルシウム214.8g、塩化カリウム144.8
g、塩化ナトリウム4860g、クエン酸194.4g及びブド
ウ糖486gを混合し、さらに270gの水を加えて練合し
た。この練合物を押出し造粒機を用いて造粒し、顆粒を
得た。次に、常法に従い乾燥し、第1剤の顆粒を得た。
【0023】次に炭酸水素ナトリウム285.8g及び酢酸
ナトリウム55.7gをサンプルミル(不二パウダル製、粉
砕機KIIW-1)で粉砕し混合後、6.8gの水を加えて
練合した。この練合物を押出し造粒機を用いて造粒し、
顆粒を得た。次に、常法に従い顆粒を乾燥した。一方、
塩化ナトリウム122.1g及びブドウ糖45.4gを万能攪拌
機(品川工業製、SD-02型)で攪拌し、サンプルミル
(不二パウダル製、粉砕機KIIW-1)で粉砕して微
粉末を得た。先に造粒した顆粒700gを遠心流動造粒コ
ーチング装置(フロイント産業社製、CF-360S型)に入
れ、回転させ(回転数200rpm)、ブドウ糖溶液を噴霧し
ながら微粉末を添加し造粒後乾燥し第2剤の顆粒を得
た。
【0024】〔比較例1〕サンプルミル(不二パウダル
製、粉砕機KIIW-1)で粉砕した塩化マグネシウム9
9.1g、塩化カルシウム214.8g、塩化カリウム144.8
g、塩化ナトリウム5907g、クエン酸194.4g、ブドウ
糖972.16g、炭酸水素ナトリウム2449.6g及び酢酸ナト
リウム477.3gを混合し、さらに470.6gの水を加えて練
合した。この練合物を押出し造粒機を用いて造粒し、顆
粒を得た。得られた顆粒を常法により乾燥し、比較製剤
を得た。
【0025】〔試験例1〕実施例1で得られた透析用剤
を、1)乾燥剤及び炭酸ガス置換なし、2)乾燥剤とし
てシリカゲルを収納、3)容器を炭酸ガス置換、4)乾
燥剤としてシリカゲルを収納し、かつ容器を炭酸ガス置
換の4条件で、それぞれガラス瓶に入れ、密封して40℃
に4週間保存し経時的にサンプリングして、色差(△
E)、凝集の有無、溶解後の炭酸水素イオン濃度及びp
Hを測定した。なお、試料は、第1剤の顆粒を7.749
g、第2剤の顆粒を3.011gを混合してガラス瓶に入れ
保存した。また、色差は初期値を対照とし、色差計(日
本電色工業社製、Σ80型)を用いて測定した。炭酸水
素イオン及びpHは、試料10.76gを精製水に溶かして1
000mlとし、それぞれイオンクロマトグラフィー(横河
電機社製、IC-500S型)及びpHメータ(堀場製作所
製、F-16型)を用いて測定した。それらの結果を、表1
に示した。
【0026】
【表1】
【0027】以上の結果から、シリカゲルと共に収納す
ることにより着色が抑制され、炭酸ガスで置換すること
により炭酸水素イオン含量が安定に維持されることが明
らかとなった。また、いずれにおいても凝集は認められ
ず、数分以内に速やかに溶解した。
【0028】〔試験例2〕実施例1〜3及び比較例1で
得られた透析用剤を、乾燥剤としてシリカゲルを収納
し、かつ容器を炭酸ガス置換した条件で、それぞれガラ
ス瓶に入れ、密封して40℃に4週間保存し経時的にサン
プリングして、色差(△E)、凝集の有無、溶解後の炭
酸水素イオン濃度及びpHを測定した。なお、実施例1
及び2では第1剤の顆粒を7.749g、第2剤の顆粒を3.0
11g、実施例3では第1剤の顆粒を6.172g、第2剤の
顆粒を4.588g、比較例1では10.76gをそれぞれガラス
瓶に入れ保存した。また、色差は初期値を対照とし、色
差計(日本電色工業社製、Σ80型)を用いて測定し
た。炭酸水素イオン及びpHは、試料10.76gを精製水
に溶かして1000mlとし、それぞれイオンクロマトグラフ
ィー(横河電機社製、IC-500S型)及びpHメータ(堀
場製作所製、F-16型)を用いて測定した。それらの結果
を、表2に示した。
【0029】
【表2】
【0030】以上の結果から、有機酸と重炭酸塩を直接
接触しないようにすることにより、長期間保存後も炭酸
水素ナトリウム含量及びpHに変化がなく安定であっ
た。また、いずれにおいても凝集は認められず、数分以
内に、速やかに溶解した。
【0031】
【発明の効果】本発明の血液透析用剤は、前記のように
第1剤又は第2剤の少なくとも一方の顆粒が被覆層によ
り分離されているので、長期間の保存が可能な製剤であ
り、一包装中に必要な成分をすべて含んでいることから
取扱いが容易である。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平3−275626(JP,A) 特開 平6−237991(JP,A) 特開 平3−103265(JP,A) 特開 平3−74331(JP,A) 国際公開93−024108(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 9/24 A61K 9/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともNa+、Ca++、Cl-及びH
    CO3 -を含有する透析液の調製に必要な電解質のうち、
    重炭酸塩以外の1種以上の電解質、pH調整剤としての
    薬理学的に許容される有機酸及びブドウ糖を粒状にした
    第1剤と、重炭酸塩及び前記で使用された残りの電解質
    粒状にした第2剤を含有し、第1剤又は/及び第2剤
    が塩化ナトリウム、塩化カリウム及びブドウ糖からなる
    群から選ばれた1種又は2種以上との組み合せからなる
    被覆層で覆われ、かつこのような第1剤と第2剤の混合
    物からなる血液透析用剤。
  2. 【請求項2】 前記有機酸が酢酸、乳酸、クエン酸、酒
    石酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、イソクエン酸及びリ
    ンゴ酸からなる群から選ばれた1種又は2種以上である
    請求項1に記載の血液透析用剤。
  3. 【請求項3】 炭酸ガスで置換された防湿容器に乾燥剤
    と共に収納されることを特徴とする請求項1又は2に記
    載の血液透析用剤。
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