JP4920639B2 - 誘導加熱調理器 - Google Patents

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Description

この発明は、アルミニウムまたは銅と略同等の電気伝導率且つ低透磁率材料の材料からなる被加熱物を誘導加熱する誘導加熱調理器に関する。
従来より、被加熱物を載置する天板と、天板の裏面に配置され、被加熱物を誘導加熱する加熱コイルと、天板と加熱コイルとの間に設けた電気導体とを備え、電気導体を、加熱コイル側から天板に当接させて被加熱物と熱的に接触する構成とした誘導加熱調理器がある(例えば、特許文献1参照)。低透磁率材料の被加熱物を誘導加熱した場合、被加熱物には加熱コイルに流れる電流と逆方向の渦電流が誘導されるため、磁気反発力が生じ、浮力が発生する。この浮力により被加熱物が動くのを防止する目的として、特許文献1では電気導体を設けている。
電気導体の働きは、加熱コイルから発生する磁束を電気導体で一部熱に変換することで被加熱物に到達する磁束を弱め、浮力を低減することにある。これにより、被加熱物の発熱量は小さくなるが、電気導体を加熱コイル側から天板に当接させて被加熱物と熱的に接続することにより、電気導体の熱を被加熱物へ伝達し、被加熱物の発熱量低下をカバーしている。
特許第3465712号公報(第9頁、第2図)
しかしながら、上記従来技術では以下のような課題がある。すなわち、調理終了後、加熱コイルへの通電を停止した後も電気導体の予熱で天板が加熱され続け、天板の高温状態が長時間続き、火傷やふきこぼれた油へ引火するなどの恐れがある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、調理終了後に速やかに天板の温度を下げることが可能な誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
この発明に係る誘導加熱調理器は、アルミニウムまたは銅と略同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からなる被加熱物を誘導加熱可能な加熱コイルと、加熱コイルの上部で被加熱物を積載する天板と、天板と加熱コイルとの間に設けられ、加熱コイルに対向して被加熱物を配置したときの加熱コイルの等価直列抵抗を大きくし、加熱コイルの発生する磁界によって被加熱物に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を持つ電気伝導性板と、電気伝導性板を上下可動させる上下可動機構と、誘導加熱調理器全体を制御する制御回路とを備え、制御回路は、加熱コイルによる加熱調理中は、電気伝導性板を上方に移動させて天板に熱的に接触させ、調理終了後は、電気伝導性板を下方に移動させて天板との熱的な接触を切り離すようにしたものである。なお、低透磁率材料とは、アルミニウムまたは銅と略同等以下の透磁率を有する材料である。
この発明は、調理中は電気伝導性板を熱的に天板と接触させるので、被加熱物の加熱効率を損なわない。また、調理終了後は、電気伝導性板を熱的に天板から切り離すので天板の温度を速やかに低下させることができ、安全な誘導加熱調理器を提供できる。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の概略ブロック図、図2は、図1の加熱コイル周辺を横から見た断面図である。
実施の形態1の誘導加熱調理器は、被加熱物である鍋11を誘導加熱可能な加熱コイル1と、加熱コイル1の上部で鍋11を積載する天板2と、交流電源3から供給される商用電力を高周波電力に変換して加熱コイル1に供給する駆動回路4と、鍋11の底面温度を天板2を介して検出する温度計測部としての温度センサ5と、ユーザからの操作入力を受け付ける操作部6と、制御回路7とを備えている。制御回路7は、鍋11の底面温度を天板2を介して温度センサ5により検出し、検出された温度が所定温度になるように、駆動回路4を制御するとともに、誘導加熱調理器全体を制御する。なお、鍋11は、アルミニウムまたは銅と略同等の電気伝導率且つ低透磁率の材料から構成されたものである。
そして、誘導加熱調理器はさらに、電気伝導性板8と、電気伝導性板8を上下可動させる上下可動機構9とを備えている。電気伝導性板8は、例えばアルミニウムの板により円盤状に構成され、中央に開口8aが設けられた形状を有し、天板2と加熱コイル1との間に上下動可能に配置されている。
上下可動機構9は、図2の円で囲った詳細図にあるように、上下に対向配置された一対の電磁石9a、9bと、電磁石9a、9bを内部に保持する電磁石保持筐体9cとから構成され、これらは底板10上に保持されている。上側の電磁石9aの上端は天板2に固定され、下端は電磁石9bと対向しており、また、下側の電磁石9bの上端は、電磁石9aと対向し、下端は底板10に保持されている。さらに、電磁石9a、9bは、互いに逆方向に電流が流れるように巻線の向きが設定されている。したがって、交流電源3から駆動回路4を介して給電されると、電磁石9a、9b間に反発力が生じ、この反発力により電気伝導性板8が持ち上げられて天板2に密着(熱的に接触)する。一方、給電が停止すると、前記反発力が消滅し、電気伝導性板8が自重により天板2から離れる。
以下、このように構成された誘導加熱調理器の動作を説明する。
操作部6からの指令により制御回路7が駆動回路4の動作を開始すると、交流電源3から加熱コイル1に給電が開始される。加熱コイル1から発生する磁束により鍋11に渦電流が誘起され、渦電流により鍋11は発熱する。このとき、電磁石9a、9bにも駆動回路4から給電される。電磁石9a、9bの巻線の向きは上述したように逆方向に電流が流れるように設定されているため、電磁石9a、9bに給電することで電磁石9a、9b間に反発力が生じる。これにより電気伝導性板8が持ち上がり、天板2に密着する。
低透磁率材料の被加熱物を誘導加熱した場合、加熱コイル1に流れる電流と逆方向の渦電流が被加熱物に誘導されるため、加熱コイル1と被加熱物である鍋11との間に磁気反発力が生じ、鍋11に浮力が発生する。しかしながら、電気伝導性板8を設けたことにより、加熱コイル1から発生する磁束が電気伝導性板8で一部熱に変換され、鍋11に到達する磁束が弱められ、鍋11に対する浮力を低減することができる。なお、電気伝導性板8を設けることにより、鍋11に対する浮力を低減できる効果がある一方で、鍋11の発熱量が小さくなるが、電気伝導性板8を天板2に当接させて鍋11と熱的に接続するようにしているので、電気伝導性板8で発生した熱が天板2を介して鍋11に伝えることができるため、加熱効率を損なうことはない。
そして、操作部6からの停止指令により制御回路7が駆動回路4の動作を停止すると、電磁石9a、9bへの給電も止まり、電気伝導性板8は自重により天板2から離れる。これにより、調理終了後は、電気伝導性板8が熱的に天板2から切り離され、天板2の温度を速やかに低下させることができ、安全な誘導加熱調理器を提供することができる。
実施の形態2.
実施の形態1では、電気伝導性板8を天板2から熱的に切り離すことにより天板2の温度低下を図っていたが、実施の形態2では、冷却ファン13による空冷により天板2の温度低下を図るようにしたものである。
図3は、この発明の実施の形態2における誘導加熱調理器を示す図である。図3において、図1及び図2と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
実施の形態2は、実施の形態1に対して、電気伝導性板8を上下に移動させる上下可動機構9が無く、冷却装置としての冷却ファン13と、この冷却ファン13のオン/オフを行なうスイッチ12とが追加された構成となっている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
このように構成された実施の形態2の誘導加熱調理器において、電気伝導性板8は常時、天板2に密着しており、実施の形態1と同様に、加熱コイル1から鍋11への磁束を弱めて鍋11が低透磁率材料の場合に鍋11に発生する浮力を弱める機能を果たしている。また、電気伝導性板8で発生した熱を天板2を介して鍋11に伝えて加熱効率の低下を防ぐ点も実施の形態1と同様である。そして、操作部6からの駆動停止指令があると、制御回路7は、駆動回路4を停止させるとともに、オン/オフスイッチ12をオンにして冷却ファン13を駆動して電気伝導性板8の冷却を開始する。そして、所定時間経過後に冷却ファン13の駆動を停止する。なお、電気伝導性板8の温度が所定温度以下になった場合に駆動停止するようにしてもよい。
このように、調理終了後、冷却ファン13を駆動して電気伝導性板8を冷却するようにしたので、天板2の温度を速やかに低下させることができ、安全な誘導加熱調理器を提供することができる。
実施の形態3.
実施の形態3における誘導加熱調理器は、実施の形態2の誘導加熱調理器の電気伝導性板8の構造を一部変更し、冷却風による冷却効率を高めるようにしたものである。
図4は、この発明の実施の形態3における誘導加熱調理器の特徴部分を示す図であり、電気伝導性板8と冷却ファン13との位置関係を示す模式図である。実施の形態3における誘導加熱調理器は、実施の形態2の誘導加熱調理器の電気伝導性板8の構造のみが異なり、その他の構成は図3に示した実施の形態2と同様である。
電気伝導性板8は、その表面に、中央の開口8aを挟んで対向する一対の溝8bを有している。そして、この溝8bに対して平行に風を送ることが可能な位置に冷却ファン13が設けられている。これにより、調理終了後に冷却ファン13が駆動すると、その冷却風が一対の溝8bの方向に流れて電気伝導性板8自身の放熱を促進し、電気伝導性板8の温度を速やかに下げることができる。その結果、天板2の温度を速やかに低下させることができ、安全な誘導加熱調理器を提供することが可能となる。
実施の形態4.
上記実施の形態2の誘導加熱調理器では、冷却装置として冷却ファン13を用いていたが、実施の形態4では、冷却ファン13に代えて冷却液循環装置14を設けたものである。その他の構成は図3に示した実施の形態2と同様である。
図5は、この発明の実施の形態4における誘導加熱調理器を示す図である。図5において、図3と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
冷却液循環装置14は、内部に冷却液が循環するパイプを電気伝導性板8(または天板2)に熱的に接触させ、電気伝導性板8の熱を冷却液で吸収して電気伝導性板8(または天板2)を冷却するものである。熱を吸収した冷却液は放熱部分に送られ、再び冷却されて電気伝導性板8の冷却を行う。
冷却液循環装置14を備えた実施の形態4の誘導加熱調理器では、操作部6から調理終了を指示する駆動停止指令があると、制御回路7は、駆動回路4を停止させるとともに、オン/オフスイッチ12をオンにして冷却液循環装置14を駆動して電気伝導性板8の冷却を開始する。このように、調理終了後は、電気伝導性板8を冷却液循環装置14により冷却するので天板2の温度が速やかに低下するため安全な誘導加熱調理器を提供できる。
実施の形態5.
図6は、この発明の実施の形態5における誘導加熱調理器を示す図である。
実施の形態5の誘導加熱調理器は、実施の形態1〜4の誘導加熱調理器に、さらに電気伝導性板8の温度または周辺の温度を計測する温度計測部としての温度センサ15と、温度センサ15で計測した温度に基づいて、使用者に注意を促すための報知を行う報知部16とを設けたもので、その他の構成は実施の形態1〜4と同様である。なお、図6には、図2に示した実施の形態1の誘導加熱調理器に温度センサ15及び報知部16を設けた構成を図示している。
温度センサ15及び報知部16は、制御回路7に接続されており、温度センサ15の温度計測結果が制御回路7に入力されるようになっている。また、報知部16は、ディスプレイなどの表示手段や、スピーカーなどの音声出力手段で構成されている。
このように構成された実施の形態5の誘導加熱調理器では、温度センサ15で計測した温度をそのまま表示したり、計測温度が所定値以上であるときに、その旨を示す警報を報知部16により表示または音により外部へ報知するものである。
このように構成したことにより、使用者に天板2の温度や天板2が高温であることを使用者に通知して使用者に注意を促すことが可能となり、安全な誘導加熱調理器を提供することが可能となる。
実施の形態6.
実施の形態6の誘導加熱調理器の構成は実施の形態5と同様であるので、ここでは図示及び説明は省略する。
実施の形態6の誘導加熱調理器は、電気伝導性板8の温度を温度センサ15で計測し、その計測結果を用いて、制御回路7が、調理終了時の電気伝導性板8の温度低下速度を算出する。そして、算出結果に応じた処理を行う。すなわち、温度低下速度が所定速度以下である場合は、上下可動機構9、冷却ファン13または冷却液循環装置14に異常が生じたと判定して、次回調理時に、加熱コイル1への供給電力を制限するか、または停止するかの制御を行う。具体的な動作としては、異常判定の結果を内部に記憶しておき、加熱調理開始時に、前回の調理時の記録結果を参照し、異常判定が下されていた場合には、供給電力を制限するか、または停止するかの制御を行うことになる。
これにより、経年劣化等で上下可動機構9、冷却ファン13または冷却液循環装置14に故障が生じたとしても、調理終了後に電気伝導性板8の熱により天板2の温度が高温状態を持続することは無く、安全な誘導加熱調理器を提供することができる。また、報知部16から、上下可動機構9、冷却ファン13または冷却液循環装置14に異常が発生した旨を使用者に通知するようにしてもよい。
なお、上述した実施の形態1〜6においてそれぞれ別の実施の形態として説明したが、各実施の形態を適宜組み合わせた誘導加熱調理器としてもよい。すなわち、例えば実施の形態1の誘導加熱調理器に、更に冷却装置を組み合わせた構成とするなどとしても良い。この場合、天板2の冷却効率をさらに高めることが可能となる。
この発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の概略ブロック図である。 図1の加熱コイル周辺を横から見た断面図である。 この発明の実施の形態2における誘導加熱調理器を示す図である。 この発明の実施の形態3における誘導加熱調理器の電気伝導性板8を示す図である。 この発明の実施の形態4における誘導加熱調理器を示す図である。 この発明の実施の形態5における誘導加熱調理器を示す図である。
符号の説明
1 加熱コイル、2 天板、3 交流電源、4 駆動回路、5 温度センサ、6 操作部、7 制御回路、8 電気伝導性板、8a 開口、9 上下可動機構、9a 電磁石、9b 電磁石、9c 電磁石保持筐体、10 底板、11 鍋、12 スイッチ、13 冷却ファン、14 冷却液循環装置、15 温度センサ、16 報知部。

Claims (6)

  1. アルミニウムまたは銅と略同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からなる被加熱物を誘導加熱可能な加熱コイルと、
    前記加熱コイルの上部で前記被加熱物を積載する天板と、
    前記天板と前記加熱コイルとの間に設けられ、前記加熱コイルに対向して前記被加熱物を配置したときの前記加熱コイルの等価直列抵抗を大きくし、前記加熱コイルの発生する磁界によって前記被加熱物に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を持つ電気伝導性板と、
    前記電気伝導性板を上下可動させる上下可動機構と、
    誘導加熱調理器全体を制御する制御回路とを備え、
    前記制御回路は、前記加熱コイルによる加熱調理中は、前記電気伝導性板を上方に移動させて前記天板に熱的に接触させ、調理終了後は、前記電気伝導性板を下方に移動させて前記天板との熱的な接触を切り離すことを特徴とする誘導加熱調理器。
  2. 前記上下可動機構は、巻線方向を逆とした一対の電磁石が対向配置され、且つ前記加熱コイルと並列に構成されており、前記加熱コイルの通電時は、前記一対の電磁石間に働く反発力により前記電気伝導性板を上方に移動させて前記天板に熱的に接触するようにし、非通電時は、前記電気伝導性板が自重により前記天板から離れることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
  3. 前記電気伝導性板の温度または前記電気伝導性板の周辺の温度を計測する温度計測部と、前記温度計測部で計測した温度に基づいて、使用者に注意を促すための報知を行う報知部とを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の誘導加熱調理器。
  4. 前記報知部は、前記温度計測部で計測した温度を表示すること、及び計測温度が所定値以上であるときに、その旨を示す警報を表示または音により外部へ報知すること、の少なくとも一方を行うことを特徴とする請求項3記載の誘導加熱調理器。
  5. 前記制御回路は、加熱調理終了後の前記電気伝導性板の温度または前記電気伝導性板の周辺温度の低下速度を算出し、その低下速度が所定速度以下の場合、前記上下可動機構に異常が生じた検出する異常検出部を有し、前回の加熱調理終了時に前記異常検出部によって異常が検出された場合、今回の加熱調理時に前記加熱コイルへの供給電力を制限するか、または停止することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の誘導加熱調理器。
  6. 前記異常検出部によって異常が検出された場合、その旨を外部に報知することを特徴とする請求項または請求項記載の誘導加熱調理器。
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