JP2003272813A - 誘導加熱装置 - Google Patents

誘導加熱装置

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JP2003272813A JP2002298794A JP2002298794A JP2003272813A JP 2003272813 A JP2003272813 A JP 2003272813A JP 2002298794 A JP2002298794 A JP 2002298794A JP 2002298794 A JP2002298794 A JP 2002298794A JP 2003272813 A JP2003272813 A JP 2003272813A
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Atsushi Fujita
篤志 藤田
Takahiro Miyauchi
貴宏 宮内
Yuji Fujii
裕二 藤井
Akira Kataoka
章 片岡
Katsuyuki Aihara
勝行 相原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 低透磁率かつ高電気伝導率の材料で形成され
た被加熱物を加熱することができるとともに、被加熱物
に働く浮力を低減できる誘導加熱装置を提供すること。 【解決手段】 被加熱物及び電気導体27を加熱状態と
同様の位置配置で、加熱周波数近傍の周波数を使用して
測定した加熱コイル21の入力インピーダンスにおける
等価直列抵抗を大きくする機能を有する電気導体27を
加熱コイル21と低透磁率かつ高電気伝導率の材料でな
る被加熱物の間に設けることにより、加熱コイル21に
流れる電流の値を小さくして被加熱物に作用する浮力を
低減し、入力電力が大でも浮力による被加熱物のずれ、
浮きが少ない誘導加熱装置とすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般家庭やオフィ
ス、レストラン、工場などで使用される誘導加熱装置に
関するものであり、さらに詳しくはアルミニウムや銅と
いった低透磁率かつ高電気伝導率なる特性の材料ででき
た被加熱物を加熱する誘導加熱調理器、誘導加熱式湯沸
かし器、誘導加熱式アイロン、またはその他の誘導加熱
式加熱装置等で、特にアルミニウムを加熱可能とする誘
導加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】以下従来の誘導加熱装置として、誘導加
熱コイルから高周波磁界が発生し、電磁誘導による渦電
流で鍋等の被加熱物が加熱される誘導加熱調理器を図1
3を用いて説明する。
【0003】図13において1は鍋形状をした被加熱物
である。2は加熱コイルで、図示しない高周波インバー
タから高周波電流を供給され高周波磁界を発生し、被加
熱物1に磁界を照射する。3はフェライトなどの高透磁
率の磁性体で、加熱コイル2からの高周波磁界を効率よ
く被加熱物1に伝達するために設けている。4は絶縁体
で、具体的にはセラミック材の厚み4mmなるプレート
であり、被加熱物1が載置される。
【0004】また、絶縁体4の裏面には、コンデンサ7
を介してアースあるいは整流器の入力または出力電位に
接続されたカーボン製の導電性塗膜5が印刷され、さら
に、加熱コイル2の周部にはリング状に加工された磁気
シールドリング6が設けられている。
【0005】この構成において、加熱コイル2から高周
波磁界が発生すると、底部に誘起した電磁誘導による渦
電流のために被加熱物1が加熱される。また、導電性塗
膜5の静電シールド作用により、加熱コイル2に発生す
る高周波高電圧と浮游容量によって加熱コイル2から人
体を介して大地へと漏洩する漏れ電流が抑制される。ま
た、磁気シールドリング6には、加熱コイル2から発生
する高周波磁界により、誘導電流が発生しその誘導電流
が反磁界を発生し結果的に加熱コイル2周囲に漏洩する
磁界を抑制することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−211444号公報
【特許文献2】特開平6−310675号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の構成におい
て、被加熱物1の底面には電流が誘起され、この電流は
加熱コイル電流との相互作用で被加熱物1の底に加熱コ
イル2から遠ざかろうとする反発力を生じる。
【0008】一方被加熱物1が鉄などの高透磁率材料
で、抵抗率がある程度大きい鉄製である場合には、所定
の出力を得ようとする場合に、誘導される電流値が少な
くてよく上記の反発力が小さいと同時に、磁束が被加熱
物1に吸収されるので吸引力が働き、被加熱物1が浮き
上がったりずれたりする恐れはなかった。
【0009】一方、特に被加熱物1がアルミニウムや銅
といった低透磁率かつ高電気伝導率なる材料製である場
合には、所定の加熱出力を得るために加熱コイル2に流
す電流を大きくして被加熱物1に電流を多く流す必要が
あり、反発力が大きくなると同時に、被加熱物1が鉄な
どの高透磁率材料である場合のような吸引力が働かな
い。従って、加熱コイル2の磁界と誘導電流の作用によ
り被加熱物1に加熱コイル2から遠ざかる方向に浮力が
強く働き、被加熱物1の重量が軽い場合には、被加熱物
1が浮力によりずれたり、被加熱物1の戴置面からの浮
きが生じるおそれがある。
【0010】図15にこの時の加熱コイル2の電流の流
れと被加熱物1に流れる渦電流のマクロ的な流れを示
す。図15(ア)は加熱コイル2に流れる電流の向きを
被加熱物1側からみた図である。同図(イ)は、被加熱
物1に流れる渦電流を加熱コイル2と逆側((ア)と同
方向側)から見た図である。図に示すように被加熱物1
に流れる渦電流は加熱コイル2に流れる電流と逆向きか
つ略同形状のループ状で流れる。従って同じ断面積(略
加熱コイル2の面積)の永久磁石2つが異極(例えばN
極とN極)で存在することとほぼ等価になって、大きな
反発力となるものである。
【0011】この現象は、被加熱物1の材料がアルミニ
ウムや銅である場合に顕著である。すなわち同じ低透磁
率材料であっても、非磁性SUSのようなアルミニウム
や銅よりも電気伝導率が低い材料の場合は、加熱コイル
2に流す電流が少なくても十分な発熱が得られるので、
被加熱物1に誘導される電流が発生する反発磁界が小と
なるものである。図14に、アルミニウムで作られた被
加熱物1を加熱時の入力電力と浮力の相関の一例を示
す。図14のグラフにおいて、横軸は入力電力で、縦軸
は浮力で示している。この図で分かるように、入力電力
の増加に伴い、浮力も増加し、その浮力が被加熱物1の
重量を超えると、被加熱物1のずれ、浮き等が生じるこ
とになる。
【0012】こういった背景から昨今、特開昭61−1
28492号公報や、特開昭62−276787号公報
で開示されているような重量センサを用いて被加熱物の
移動を検出する技術、特開昭61−71582号公報で
開示されているような磁気センサを用いて被加熱物1の
位置を検出する技術、さらに特開平4−765633号
公報で開示されているような共振周波数検出手段を用い
て被加熱物1が浮力により移動したことを検出する技術
等が開示されている。
【0013】しかしながら、いずれの技術も被加熱物1
に所定以上の浮力が作用したこと、あるいは被加熱物1
が浮いたあるいは移動したことを検出した場合に、それ
以上浮かないように、あるいは移動しないように被加熱
物1を加熱するための加熱電力を抑制したりあるいは加
熱動作そのものを停止するものであり、このような場合
には、十分な火力が得られず、更には調理動作の継続が
中断されるという状況に陥ってしまうという課題があっ
た。
【0014】例えば、質量300gのアルミニウム製の
雪平鍋で、200ccの水を加熱する場合、図14より
約850W以上の入力電力で浮力が鍋と調理物(水)の
合計質量を上回り、鍋が浮き上がってこの電力以上の入
力電力で加熱することが困難となる。従って上記従来の
方式においては、例えばアルミ負荷鍋と検知した場合に
鍋の浮き上がる入力電力以下、例えば800Wに入力電
力を抑制することが鍋浮きを生じない様にするための対
策手段として想定できるが、発明者らの実験によれば、
この様な入力電力で加熱しても上記の水を沸騰状態にす
ることは困難であり、アルミニウム製の鍋を加熱できる
誘導加熱調理器としては加熱性能が極めて低いものとな
る(入力1000W程度であれば200ccの水は沸騰
状態とすることは可能であるが加熱速度は遅い)。
【0015】そこで本発明は、上記従来の課題を解決す
るもので、簡単な構成で被加熱物に働く浮力を低減し、
被加熱物が軽量であっても十分な入力電力を確保でき
る、使い勝手の良い誘導加熱調理器、あるいはアルミニ
ウム製の負荷を安定的に加熱することのできる誘導加熱
装置を実現することを主たる目的とし、さらには加熱コ
イル2に高周波電流を供給する高周波回路のスイッチン
グ素子の損失を同時に低減することを目的としたもので
ある。
【0016】
【課題を解決するための手段】前記従来の課題を解決す
るために、本発明の誘導加熱装置は、アルミニウム若し
くは銅又はこれらと略同等以上の電気伝導率を有する低
透磁率材料からなる被加熱物と、加熱コイルとの間に電
気導体を設け、この電気導体は、加熱コイルの等価直列
抵抗(被加熱物及び電気導体を加熱状態と同様の位置配
置で、加熱周波数近傍の周波数を使用して測定した加熱
コイルの入力インピーダンスにおける等価直列抵抗(以
下単に加熱コイルの等価直列抵抗と呼ぶ)を大きくする
ものである。
【0017】このような電気導体は、同一出力を得る場
合の加熱コイルに流れる電流を低減して、加熱コイルの
発生する磁界により前記被加熱鍋に対して働く浮力を低
減する浮力低減機能を有する。この結果アルミニウム若
しくは銅又はこれらと略同等以上の電気伝導率を有しか
つ低透磁率材料からなる被加熱物を加熱した時に浮き上
がったりずれたりするのを防止するとともに、加熱コイ
ルに高周波電流を供給するスイッチング素子や共振コン
デンサ等の部品の損失を低減することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】請求項1に記載の発明は、本発明
の誘導加熱装置は、アルミニウム若しくは銅又はこれら
と略同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からな
る被加熱物を誘導加熱可能な加熱コイルと、前記加熱コ
イルと前記被加熱物との間に設けられた電気導体とを備
え、前記電気導体は前記加熱コイルに対向して前記被加
熱物を配置した時の前記加熱コイルの等価直列抵抗を大
きくするとともに、前記加熱コイルの発生する磁界が前
記被加熱物に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を
有しかつ、前記電気導体は前記被加熱物と熱的に接続さ
れることにより、加熱コイルから発生する磁界は電気導
体の影響を受けて向き及び強度分布が変わる。
【0019】一方、電気導体がない場合には、加熱コイ
ルから発生する高周波磁界は、加熱コイルから発生した
磁界を相殺する様に被加熱物に誘導電流が誘起する。こ
の結果、加熱コイル電流と方向が逆で平行な誘導電流が
高電気伝導率の被加熱体に誘導され、その電流と加熱コ
イルから放射される磁界との相互作用により、被加熱体
に浮力が発生する。
【0020】しかしながら、当該電気導体が存在するこ
とにより、加熱コイルから発生する磁界は、電気導体と
被加熱物に鎖交するため、両者に誘導電流電流を発生す
ることになる。すなわち、電気導体に誘導された誘導電
流の発生する磁界と被加熱物に誘導された電流の発生す
る磁界の重畳磁界が、加熱コイルの発生する磁界の変化
を妨げるように電気導体及び被加熱物に誘導電流が流れ
ることになる。
【0021】つまり、被加熱物に誘導される電流の分布
が、電気導体に誘導電流が発生することにより変わるこ
とになる。この電流分布の変化で、加熱コイルの等価直
列抵抗が大きくなることにより、同一出力を得る場合の
加熱コイルに流す電流値を小さくすることができ、被加
熱物に作用する浮力が低減するとともに、電気導体が被
加熱物に働くべき浮力の一部を分担することで被加熱物
に作用する浮力が低減できることになるわけである。併
せて、加熱コイル、加熱コイルを駆動する共振電流を発
生するインバータに使用されるスイッチング素子、及び
共振コンデンサ等の高周波部品のスイッチング損失を低
減することができるという作用をも有するものである。
【0022】特に請求項1に記載の発明は、被加熱物と
電気導体を熱的に接続したことにより、電気導体の発熱
を被加熱物へ伝達することが可能となり、電気導体自身
が誘導加熱された結果発生する熱損失の一部を被加熱物
に移動させることができ、電気導体自身の発熱による被
加熱物の加熱効率の低下を抑制することができるもので
ある。
【0023】また、請求項2の発明は、前記電気導体が
前記被加熱物と熱伝達が為し得る状態に設置された誘導
加熱装置であって、前記電気導体の発熱を被加熱物へ伝
達することが可能となり、電気導体自身が誘導加熱され
た結果発生する熱損失の一部を被加熱物に移動させるこ
とができ、電気導体自身の発熱による被加熱物の加熱効
率の低下を抑制することができるものである。
【0024】
【実施例】以下本発明の実施例について、図面を参照し
ながら説明する。
【0025】(実施例1)図1は、本発明係る実施例1
の誘導加熱装置(誘導加熱調理器)の加熱コイル21及
びその周辺の構成を示す斜視図であり、図2は誘導加熱
装置本体(図示せず)に収納された加熱コイル21と、
前記本体上部に固定された天板28と、前記天板28に
載置される被加熱物29を示す断面図である。
【0026】図1及び図2において、加熱コイル21は
素線を束ねた撚り線を2層にして平板状に巻回され、保
持板22上部に載置される。保持板22は耐熱樹脂製で
4本の略直方体をした棒形状の強磁性体であるファライ
トコア23b〜26bを加熱コイル21の下部に位置
し、加熱コイル21の下面に略平行に、そしてそれらと
一体的に成形されている。
【0027】また、フェライトコア23b〜26bの両
端にはフェライトコア23a〜26aとフェライトコア
23c〜26cが接して設けられる。このためフェライ
トコアは全体として断面が被加熱物29に向けて開いた
コの字状に形成される。保持板22はファライトコアの
表面を覆うように(部分的に冷却のため覆っていない)
成形され加熱コイル21と電気的に絶縁される構成にな
っている。
【0028】加熱コイル21上部にはカーボン材料で形
成された導電塗膜32がマイカ製の絶縁板30、31の
間に形成されている。この導電膜32は端子33と接続
され、さらにコンデンサ34を介して商用電源電位ある
いは加熱コイル21に高周波電流を供給するインバータ
の入力する商用電源を整流した電位あるいは大地に接続
される。
【0029】電気導体27は、厚さが略1mmの材料が
アルミニウムの板により形成され、絶縁板31と天板2
8の間に設けられており、図1に示すように、外径及び
内径が加熱コイル21のものとほぼ同じの略ドーナツ状
をして、幅約6mmのスリット27aが外周から内周に
渡って設けられている。電気導体27の位置は3箇所あ
る脚部27bと保持板22により規制される。
【0030】電気導体27は中央に開口部37を設け、
上部(被加熱物29側)から見て、外側の立ち上がり部
であるフェライトコア23a〜26aの上端面は電気導
体27の外周より外側に位置し、内側の立ち上がり部で
あるフェライトコア23c〜26cの上端面は開口37
の周部より内側に位置している。サーミスタ35はホル
ダー36にはめ込まれて、天板28裏面に当接される。
絶縁体である天板28は耐熱セラミックス製で、その上
にアルミニウム製の被加熱物29が加熱コイル22に対
向する様に載置される。
【0031】以下上記実施例の動作を説明する。加熱コ
イル21には約70kHzの高周波電流が供給される。
加熱コイル21は、高周波電流が供給されると磁界を発
生するが、加熱コイル21下方では高透磁率材料である
フェライトコア23b〜26bがあり磁束がフェライト
コアに集中するので、磁界が被加熱物29と反対側に膨
らむのを防止できる。
【0032】一方、加熱コイル21の上部に出た磁界は
電気導体27に鎖交するので電気導体27に誘導電流が
誘起される。電気導体27の厚みは約1mmで浸透深さ
以上の厚みを有するので電気導体に鎖交した磁界の大部
分はほとんど電気導体を通過せず外周側または内周側に
迂回してから被加熱物29方向に導かれる。フェライト
コア23a〜26a、23c〜26cは上方の被加熱物
の方向に磁界を効率良く導く作用する。
【0033】なお、フェライトコア23a〜23c、2
4a〜24c、またはフェライトコア25a〜25cは
それぞれ、別の3つのフェライトコアを接した状態で組
み合わせて配置しているが、それぞれ略同形状となるよ
うに一体に成形しても開磁路であるので同様の効果が得
られる。
【0034】被加熱物29に誘起された誘導電流は加熱
コイル21の発生する磁界分布と、電気導体27に誘起
された電流の発生する磁界分布の重畳した磁界分布が被
加熱物29に鎖交することにより発生するものである。
このように、電気導体27が介在することにより、被加
熱物29に誘導される電流分布が変化し、さらに電気導
体27に発生する電流分布が加わるということから、加
熱コイル21の等価直流抵抗が大きくなる。
【0035】等価直列抵抗が大きくなると、同じ加熱コ
イル電流でも被加熱物29における発熱量が大きくなる
ので同一消費電力を得ようとする場合には加熱コイル電
流を小さくすることができ、それに伴い浮力も低減する
ことができる。
【0036】図3に被加熱物がアルミニウム製の鍋の場
合の消費電力と浮力の関係を、アルミニウム製の電気導
体27がある場合(Bで示す)とその電気導体がない場
合(Aで示す)について、また、図4には、消費電力と
加熱コイル電流の関係を、電気導体27がある場合(B
で示す)と電気導体がない場合(Aで示す)について測
定結果の一例をしめしている。ただし、インバータの共
振周波数は約70kHzである。
【0037】これらの測定結果によると、電気導体27
を挿入することにより、等価直流抵抗(Rs)は1.0
9Ωから2.3Ωに増加し、消費電力が2kWに出力を
設定した場合に、鍋に働いた浮力は約900gから約5
00gに低減するとともに、加熱コイル21の電流も約
40Armsから約33Armsに低減した。
【0038】また、加熱コイル21の電流の低減に伴い
インバータを駆動するパワースイッチング素子の損失、
加熱コイル21の損失も大幅に低減する(なお、鉄系の
被加熱物の場合には電気導体27を挿入することによ
り、加熱コイルの等価直列抵抗大きくするという作用は
ほとんど得られない)。
【0039】また、電気導体27を設けることで、電気
導体の損失が発生する。発明者らの実験によれば、消費
電力が2kWであったとき、前記電気導体の損失は一例
として約270Wと推定された。この時、加熱コイル2
1を含めた誘導加熱装置内部の損失は加熱コイル電流低
減の作用により約210Wと推定された。このように、
電気導体27を挿入することにより、その発熱による損
失が発生するものの、内部損失が低減することにより、
その差は約60Wと大幅な加熱効率の低下を防止するこ
とができる。
【0040】また、図2のように電気導体27を天板2
8当接させて、電気導体27の熱を、熱伝導で天板28
を介して被加熱物29に与えれば、前記の加熱効率の低
下をカバーすることが可能である。このように、電気導
体27の発熱による損失の増加は、機器全体の加熱効率
でみれば、加熱コイル21の電流が低減するので、相当
な部分が他の部分の損失低下で相殺される。
【0041】また、電気導体27には、スリット27a
を設けている。このスリット27aを設け無いほうが等
価直流抵抗(Rs)を増加する作用が大きい。しかしな
がら、この場合には、電気導体27に誘導される電流量
が多いため発熱量が極めて大きく加熱効率の低下も大き
い。スリット27aを設けることで、このスリット27
aを設けない場合より等価直流抵抗は小さくなるが、電
気導体27に誘起される加熱コイル21の電流と逆方向
の略平行な加熱コイル21の中心の周りを周回するよう
に流れる周回電流が流れないようにし、分布の異なる誘
導電流を電気導体27内に分布せしめるものである。こ
れにより、電気導体27の発熱を抑制するとともに、等
価直流抵抗を増加させる作用を生じさせるものである。
【0042】導電膜32は加熱コイル22の上部に近接
して設けられ、コンデンサ34を介して、商用電源電
位、インバータの入力電位となる電源電流整流器の出力
電位、またはアース電位に接続されるので加熱コイル2
1から使用者に漏洩するリーク電流を低減することがで
きる。
【0043】しかしながら、この導電膜32は膜圧が薄
く電気伝導率も低いので、誘導電流の発生量が極めて少
なく、加熱コイル21から発生する磁界の分布を変える
作用はほとんどないので、電気導体27のような等価直
列抵抗の増加作用、加熱コイル電流の低減作用、そして
浮力低減作用はほとんど得られない。
【0044】図5は、上記第1の実施例における電気導
体の厚みと浮力に関する傾向である。加熱コイル21か
らの磁束を遮蔽する場合に必要な厚みは浸透深さ以上必
要であり、本実施例の場合加熱コイル21に流れる電流
の周波数は70kHzであり、材質をアルミニウムとし
た場合浸透深さはδ=0.3mm程度となる。従って電
気導体27の厚み浸透深さ以上にすることにより、浮力
低減の効果を大きく得ることが可能となる。発明者らは
実験により、浸透深さよりもやや大きく約1mm程度に
すると十分な浮力低減の効果が得られることを確認して
いる。
【0045】以上のように、本実施例によれば、アルミ
ニウム製の被加熱物29を誘導加熱可能な加熱コイル2
1と被加熱物29との間に設けられた電気導体27を有
し、電気導体27は加熱コイル21に対向して被加熱物
29を配置した時の加熱コイル21の等価直列抵抗を大
きくするとともに、加熱コイル21の発生する磁界が被
加熱物29に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を
有してなるので、所定の消費電力を得ようとする場合
に、加熱コイル電流値を低減することができ、被加熱物
29に働く浮力を低減するとともに、スイッチング素子
(図示せず)や加熱コイル21に発生する損失を低減し
て冷却が容易になり、アルミニウム、銅、または黄銅な
ど高電気伝導率低透磁率の被加熱物29を加熱できる安
全かつ低価格な誘導加熱調理器を提供することができ
る。
【0046】また、電気導体27は、加熱コイル21を
スリット27a部以外のほぼ全部に渡って上部で覆うよ
うに、すなわち、電気導体27は加熱コイル21におけ
る被加熱物29側の面の一部または全部と対向し板状に
形成されてなることにより、加熱コイル21から発生す
る磁界の一部を被加熱物29に到達する前に、電気導体
27に効率良く鎖交させ、電気導体27の周囲から迂回
して被加熱物29に加熱コイル21に磁界を鎖交させる
ことになる。電気導体27と加熱コイル21との間隔
は、電気導体27と被加熱物29との間隔よりも小さ
く、電気導体27と加熱コイル21との磁気結合が良い
ので、電気導体27に鎖交する磁束量が大きくなり、電
気導体27に誘導電流が分布し加熱コイル21の等価直
列抵抗を大きくするという作用がある。
【0047】また、加熱コイル21から出て、電気導体
27を迂回した、通り抜けた、あるいは鎖交しなかった
磁界が、被加熱物29に到達することにより、被加熱物
29を誘導加熱するので、加熱コイル21の等価直列抵
抗が増加し、加熱コイル電流低減作用と被加熱物に働く
浮力低減作用を大きくすることができる。
【0048】なお、本実施例では、加熱コイル21のほ
ぼ全部と対向するように電気導体27の大きさを決めた
が、電気導体27の板の面積は大きいほど、また電気導
体27が加熱コイル21に近いほど電気導体27に加熱
コイル21の磁束が多く通過し、等価直列抵抗増加作用
を大きくすることができることから、電気導体27の表
面積は、必要とする浮力低減効果を得るように、また、
電気導体27と加熱コイル21間の距離、電気導体27
の発熱等の条件を考慮して決めれば良い。
【0049】また、電気導体27に開口37を設けて、
加熱コイル21の中央部近傍を覆わないようにしたこと
により、中央部近傍を、加熱コイル21から発生して被
加熱物29へ鎖交させる磁界の経路とするよう集中さ
せ、当該電気導体を付設することに伴う加熱効率の大幅
な低下を抑制するものである。
【0050】また、電気導体板27にスリット27aを
設けてなることにより、加熱コイル21の発生する磁界
により電気導体27に誘導される電流の向き及び大きさ
を変え、被加熱物29に作用する浮力の低減効果をある
程度保持しながら、電気導体27に発生する発熱量を低
減することができる。
【0051】すなわち電気導体27に誘導される加熱コ
イル21に流れる電流と逆方向に流れる周回電流は、ス
リット27aにより遮断し電流分布を変えることが可能
なので大電流の発生が無くなり、発熱量を低減できる。
ただ、その場合に被加熱物29への浮力低減効果がある
程度低下する。スリット27aの形状、加熱コイルが鎖
交する面積、電気導体の材質などにより、等価直列抵抗
の大きさと電気導体27の発熱量が異なるので、これら
の要素の組み合わせで最適なものを選択して、浮力の低
減効果をできるだけ大きく、電気導体27の発熱量を許
容できるようなレベルとする組み合わせを決定すれば良
い。さらに、この電気導体27は複数の電気導体に分離
されないので組み立て時等の場合における取り扱いが容
易である。
【0052】また、電気導体27は、その厚みを加熱コ
イル電流により誘導される高周波電流の浸透深さよりも
大としてなるので、電気導体27に誘導電流が十分多く
発生し、加熱コイル21からの磁界が通過せず磁界分布
を大きく変える作用が得られることにより、形状を工夫
することにより上記の等価直列抵抗を増加させる作用を
確実に得ることができるものである。
【0053】また、電気導体27はアルミニウム製であ
るので、低透磁率であり磁束がその電気導体27に吸収
されにくく(被加熱物に到達しない磁束量が多くならな
い)、かつ電気導体に誘導された電流で磁界の向きが変
更されるので、電気導体27内を通過させ被加熱物29
に鎖交させるか、または電気導体27を迂回させ被加熱
物29に鎖交させるかのいずれかの経路で、磁束を効率
的に被加熱物29に鎖交させることができ、加熱効率の
低下を抑制しながら等価直列抵抗を大きくすることがで
きる。
【0054】また、電気導体27はアルミニウム製であ
り、高電気伝導率の材料であるので加熱コイル21の磁
束が鎖交することにより、誘導電流で磁界の向きや分布
が変更される程度が大きくなり、被加熱物29における
誘導電流の分布の変化および、電気導体27における電
流の発生による、等価直列抵抗を増加させる効果を大き
くし、かつ電気導体27自身の誘導電流による発熱を抑
制することができる。
【0055】また、加熱コイル21を収納する本体と、
加熱コイル21と被加熱物29との間に位置すべく前記
本体に固定された絶縁体28とを有し、電気導体27
は、前記絶縁体28の加熱コイル21側に設けたことに
より、電気導体27を加熱コイル21に近づけて、加熱
コイル21との磁気結合を大きくして、等価直列抵抗を
大きくし易い、動作中に加熱コイル21の磁界で電気導
体27に誘導される電流の作用により電気導体27が発
熱する場合があるが、絶縁体28表面に電気導体27が
露出せず、電気導体27に直接手が触れて火傷する恐れ
が少ない、あるいは絶縁体28の表面が凸凹しないこと
から見栄えが良いなどの効果を奏する。
【0056】また、加熱コイル21下方に放射状に設け
た高透磁率の磁性体であるフェライトコアを四本備え、
これらのフェライトコアは電気導体の外周より外側に被
加熱物の方向に立ち上がる立ち上がり部を設けたことに
より、加熱コイル21から出た磁束が加熱コイル21外
側周囲に広がらないようにして効率良く被加熱物29に
磁束が鎖交するようにして加熱効率を高めるとともに、
フェライトコア23a〜26aの立ち上がり部から出る
磁束が電気導体27に突き当たらないようにして電気導
体27の発熱を抑制するものである。
【0057】また、電気導体27は中央部に開口37を
設けるとともに、加熱コイル下方に設けた高透磁率の棒
状フェライトコア23b〜26bを設け、前記フェライ
トコア23b〜26bは電気導体27の開口37周部3
7aより中央側に被加熱物29の方向に立ち上がる立ち
上がり部23c〜26cを設けたことにより、フェライ
トコアの立ち上がり部23c〜26cから出る磁束が電
気導体27に突き当たらないようにして加熱コイル21
からの磁束を効率良く被加熱物29に導き加熱効率を高
めることができる。
【0058】また、サーミスタ35に鎖交する磁束を抑
制してサーミスタ35の検知回路にノイズを誘導しにく
くすることもできる。
【0059】なお、本実施例では、加熱コイル21下方
に設けた高透磁率の棒状フェライトコア23b〜26b
の両端をフェライトコア23a〜26a、及びフェライ
トコア23c〜26cにより略垂直に立ち上げている
が、この立ち上げ角度はこれにかぎるものではない。
【0060】また、電気導体27は、被加熱物29とセ
ラミック製天板28より電気的に絶縁されているが熱的
に接続されてなるので電気導体27が発熱する場合には
その熱の一部が天板28を介して被加熱物29に伝わり
電気導体27の発熱による加熱効率の低減を抑制するこ
とができる。
【0061】(実施例2)図6は、本発明に係る実施例
2の誘導加熱装置の断面を模式的に示す図である。
【0062】図で40は電気導体、41は約70kHz
の高周波電流が供給され、高周波磁界を発生する加熱コ
イル、42は加熱コイル41下面に対向して配置され、
加熱コイル40からの高周波磁界を効率よく被加熱物4
3へ供給するための磁性体で、具体的にはフェライトを
用いている。被加熱物43は、本実施例の場合、高電気
伝導率(高導電率)かつ低透磁率のアルミニウムまたは
銅としている。
【0063】電気導体40の形状を図7に示す。電気導
体40は、略円盤状で厚み約1mmのアルミニウム板を
ベースとし、さらに放射状に切り欠き40aを4箇所設
けている。このように電気導体40に切り欠き40aを
設けることにより、加熱コイル40の電流の流れに対し
て電気伝導率が不連続となるようにして、電気導体40
に加熱コイル41に周回するように流れる電流(図7の
破線Aで模式的に示す)の流れの向きと異なる(平行で
ない)方向に誘導電流が流れるようにしている。
【0064】加熱コイル41に高周波電流が供給された
時の電気導体40に誘導される大きな電流の流れを図7
の実線矢印Bに模式的に示す。図に示すように放射状切
り欠き40a部分に電流が誘導されないため、加熱コイ
ル41から発生する磁界が透過する。誘導された渦電流
の電流密度の大きい部分はこの部分を回避し、クローバ
ー状に蛇行したような分布(図7の実線Bで模式的に示
す)となる。
【0065】一方、電気導体40により、加熱コイル4
1の磁界は遮蔽され、迂回して被加熱物43に到達し、
切り欠き40aのところでは、加熱コイル41の磁界は
通過して被加熱物43に到達する。したがって、従来被
加熱物43において、加熱コイル41に流れる電流とほ
ぼ平行な向きに周回するように分布して発生し、大きな
反発力となっていた渦電流の分布と異なるものとなる。
【0066】上記のように、電気導体40に加熱コイル
41の磁界を照射し、一部の磁界を迂回させて被加熱物
43に鎖交させ、被加熱物43において加熱コイル41
電流に対向した誘導電流分布が発生することを抑制し
て、等価直流抵抗を増加させるとともに、電気導体40
においても、切り欠き40aを設けることにより発熱を
防止することができる。
【0067】切り欠き40aのある電気導体40を設け
た場合の等価直流抵抗の大きくなる度合いは、切り欠き
40aのない電気導体40を設けた場合に比して少なく
なるが、電気導体40がない場合に対する増加効果自体
は維持される。従って、同一消費電力を得る場合におい
て、加熱コイル41に流れる電流が減少して被加熱物4
3に作用する浮力が低減できるとともに、電気導体40
の発熱を抑制することができるものである。
【0068】以上のように、本実施例によれば、電気導
体40も誘導加熱され発熱するが、電気導体40の固有
抵抗や切り欠きの形状を最適化することにより、等価直
列抵抗を大きくし、電気導体40の発熱を低減しつつ、
被加熱物43への入力電力を大とすることが可能であ
る。
【0069】また、電気導体40を挿入した場合、加熱
コイル41の等価直列抵抗が上昇するため、同じ入力電
力を得る場合、加熱コイル41に流す電流が少なくする
こともできるので、加熱コイル41の損失が低減し、さ
らに図示しない高周波電流を供給するインバータ回路の
損失も低減することが可能となる。発明者らの測定によ
れば、被加熱物43が、φ240mmのアルミニウム鍋
とし、加熱コイル41の外径φ180mm、内径φ50
mm、加熱コイル41と被加熱物43との距離8mmの
条件において、等価直列抵抗は電気導体40がない場合
約1.0Ω程度、電気導体40がある場合、1.7Ω程
度であった。これにより加熱コイル41に流れる電流は
1600W入力で36Armsから29Armsに低減
できた。本実施例の場合加熱コイル41の高周波抵抗は
70kHz、常温0.16Ωであるので、損失は常温で
約207Wから135Wに低減したものと推定できる。
【0070】また、電気導体の切り欠き40aの形状を
放射状に電気伝導率が低くなるようなものとしたが、こ
の形状に限定されるものでなく、加熱コイルに流れる電
流に誘起して発生し周回するように流れる渦電流の分布
を阻害する作用のある形状であれば同様の効果が得られ
るものである。
【0071】また、被加熱物43がアルミニウムや銅の
単一材料で形成されず、一層目が例えば0.1mm厚み
の非磁性ステンレス、2層目が1mm厚みのアルミニウ
ムといった多層構造となっている場合においても、1層
目の非磁性ステンレスは薄いために実質2層目のアルミ
ニウムを加熱することと等価となるので、上記のように
電気導体40は同様な効果を奏することができる。
【0072】(実施例3)図8は、本発明に係る実施例
3の電気導体40と加熱コイル41を示す平面図であ
る。断面図は図6と同様である。図8で電気導体40は
厚み約1mm、幅約10mm、長さ約70mmのアルミ
ニウム板で形成され、これらを8枚、間隔を設けて放射
状に配置している。本配置により、電気導体40がない
部分の電気伝導率は略ゼロとなるため、加熱コイル41
の電流が流れる方向に電気伝導率が不連続な状態を簡単
に実現できるものである。
【0073】図8において電気導体(アルミニウム板)
40の存在する部分では、加熱コイル41から発生する
磁界が遮蔽され一部は電気導体40に吸収され電気導体
40に電流が誘導され、他は迂回して被加熱物43(図
6)に鎖交する。
【0074】以上のように本実施例においては複数の電
気導体40を配置することにより、電気導体40に誘導
電流を発生させるとともに、被加熱物43に流れる渦電
流(誘導電流)の向きや密度分布を加熱コイル41に流
れる電流と異なる形にすることが可能となる。この結
果、被加熱物43に鎖交する磁界分布を変更し加熱コイ
ルの等価直列抵抗大きくすることができるとともに、電
気導体40の温度上昇を抑制することができる。
【0075】尚、本実施例では放射状に電気導体40を
配置する構成としたが、これに限定されるものでなく例
えば図9に示すような電気導体である四角形状の板44
を4つ加熱コイル45上方に並べる構成などとしてもよ
い。
【0076】また、図8で電気導体40の本数を8本と
したが、本数を少なくすれば浮力低減の効果が小とな
り、多くすれば浮力低減の効果が大となる傾向にある。
また本数を増やすと電気導体のトータルの損失が大とな
るため、最適な本数に設計する必要があり、本実施例の
場合6〜8本程度が効果的である。材質はアルミニウム
としたがこれに限定されるものでなく、例えば銅、黄銅
といった材料でも同様の効果が得られる。
【0077】(実施例4)図10は、本発明を示す第4
の実施例における誘導加熱装置の要部断面図である。図
で電気導体49は絶縁体53と被加熱物52の間に設け
られている。絶縁体53は誘導加熱調理器であれば、例
えば、加熱コイル50、フェライトコア51、あるいは
これらを駆動するインバータ(図示せず)等を収納して
いる機器本体の上部に固定され、被加熱物52を加熱す
るために載置するために設けるセラミック製の天板に対
応する。
【0078】本実施例においては、電気導体49は任意
に取り外しが可能になるため、被加熱物52が、例えば
(浮力によるずれ、浮きの問題が発生しない程度に)充
分質量が大きい場合や、原理上浮力が問題とならない鉄
などの材料の時に電気導体49の設置が不要となり、か
つ電気導体49の発熱も発生しない。また電気導体49
と被加熱物52を接触させることにより、電気導体49
の発熱を被加熱物52へ効果的に伝達することが可能と
なり、この点においても効率よい加熱が可能となるもの
である。
【0079】(実施例5)図11は、本発明を示す第5
の実施例における誘導加熱装置の断面図である。図で天
板28上に載置される電気導体54と被加熱物55は機
械的に接続され、一体となっている。57はフェライト
コアである。
【0080】以上より本実施例においては使用時に電気
導体54と被加熱物55を別々に天板28上に載置する
必要がなく、より使い勝手の向上した誘導加熱装置を実
現することができる。尚電気導体54と被加熱物55は
任意に取り付け、取り外しできる構成としてもよい。
【0081】また、その時電気導体54を取り外した状
態で加熱して浮かないような重量に電気導体54及びそ
れに付設したものの合計重量を浮力より重くしておけ
ば、加熱しようとした時に電気導体54が被加熱物55
を押し上げる力が働かず被加熱物54がさらに浮きにく
くなり安全である。
【0082】(実施例6)図12は、本発明に係る実施
例6における誘導加熱装置の断面図である。図で58は
被加熱物59の温度を間接的に検出する温度検出手段
で、具体的にはサーミスタを用いている。
【0083】温度検出手段59は、絶縁体61と電気導
体60を介して被加熱物59の温度を検出するので、電
気導体60が集熱板の役割を果たすため、例えば被加熱
物59の底面が反っていた場合においても、応答性良く
被加熱物59の温度上昇を検出することができる。ま
た、電気導体60が発熱していても精度良く検知できる
ので、電気導体60が高温である旨の表示を精度良く行
うことができる。
【0084】以上のように、本実施例によれば、絶縁体
61の加熱コイル62側に温度検出手段を有し、電気導
体60は絶縁体60を介して温度検出手段と熱的に接続
されてなることにより、被加熱物59の底が平坦でない
場合にも電気導体60が被加熱物59の裏面の熱を効率
よく集めて温度検出手段に伝えることができるので、加
熱コイル電流低減効果及び浮力低減効果を奏するととも
に被加熱物59の温度制御性能、あるいは火傷防止表示
機能が良好となるものである。
【0085】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、アルミ
ニウムや銅など低透磁率かつ高電気伝導率の材質の被加
熱物を加熱可能で、加熱時における加熱コイル等の内部
部品損失及び被加熱物に働く浮力の低減が可能な誘導加
熱装置を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における誘導加熱装置の要部斜視図
【図2】同誘導加熱装置の要部断面図
【図3】同誘導加熱装置の加熱コイルの等価直列抵抗と
浮力の相関を示す図
【図4】同誘導加熱装置の加熱コイルの等価直列抵抗と
加熱コイル電流値の相関を示す図
【図5】同誘導加熱装置の電気導体の厚みと被加熱体に
作用する浮力の相関を示す図
【図6】実施例2における誘導加熱装置の要部断面図
【図7】同誘導加熱装置の電気導体に流れる電流を示す
【図8】実施例3における誘導加熱装置の電気導体を示
す要部平面図
【図9】同誘導加熱装置の他の電気導体を示す要部平面
【図10】本発明の第4の実施例における誘導加熱装置
の誘導加熱装置の要部断面図
【図11】本発明の第5の実施例における誘導加熱装置
の要部断面図
【図12】実施例6における誘導加熱装置の要部断面図
【図13】従来の誘導加熱装置の要部断面図
【図14】従来の誘導加熱装置の入力電力と浮力の相関
【図15】従来の誘導加熱装置の加熱コイルと被加熱物
に流れる電流を示す図
【符号の説明】
29、43、52、55、59 被加熱物 21、41、45、50、56、62 加熱コイル 27、40、44、46、49、54、60 電気導体 37 開口 28、53、61 天板(絶縁体) 58 温度検知手段
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成15年4月21日(2003.4.2
1)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 誘導加熱装置
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般家庭やオフィ
ス、レストラン、工場などで使用される誘導加熱装置に
関するものであり、さらに詳しくはアルミニウムや銅と
いった低透磁率かつ高電気伝導率なる特性の材料ででき
た被加熱物を加熱する誘導加熱調理器、誘導加熱式湯沸
かし器、誘導加熱式アイロン、またはその他の誘導加熱
式加熱装置等で、特にアルミニウムを加熱可能とする誘
導加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】以下従来の誘導加熱装置として、誘導加
熱コイルから高周波磁界が発生し、電磁誘導による渦電
流で鍋等の被加熱物が加熱される誘導加熱調理器を図1
3を用いて説明する。
【0003】図13において1は鍋形状をした被加熱物
である。2は加熱コイルで、図示しない高周波インバー
タから高周波電流を供給され高周波磁界を発生し、被加
熱物1に磁界を照射する。3はフェライトなどの高透磁
率の磁性体で、加熱コイル2からの高周波磁界を効率よ
く被加熱物1に伝達するために設けている。4は絶縁体
で、具体的にはセラミック材の厚み4mmなるプレート
であり、被加熱物1が載置される。
【0004】また、絶縁体4の裏面には、コンデンサ7
を介してアースあるいは整流器の入力または出力電位に
接続されたカーボン製の導電性塗膜5が印刷され、さら
に、加熱コイル2の周部にはリング状に加工された磁気
シールドリング6が設けられている。
【0005】この構成において、加熱コイル2から高周
波磁界が発生すると、底部に誘起した電磁誘導による渦
電流のために被加熱物1が加熱される。また、導電性塗
膜5の静電シールド作用により、加熱コイル2に発生す
る高周波高電圧と浮游容量によって加熱コイル2から人
体を介して大地へと漏洩する漏れ電流が抑制される。ま
た、磁気シールドリング6には、加熱コイル2から発生
する高周波磁界により、誘導電流が発生しその誘導電流
が反磁界を発生し結果的に加熱コイル2周囲に漏洩する
磁界を抑制することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−211444号公報
【特許文献2】特開平6−310675号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の構成におい
て、被加熱物1の底面には電流が誘起され、この電流は
加熱コイル電流との相互作用で被加熱物1の底に加熱コ
イル2から遠ざかろうとする反発力を生じる。
【0008】一方被加熱物1が鉄などの高透磁率材料
で、抵抗率がある程度大きい鉄製である場合には、所定
の出力を得ようとする場合に、誘導される電流値が少な
くてよく上記の反発力が小さいと同時に、磁束が被加熱
物1に吸収されるので吸引力が働き、被加熱物1が浮き
上がったりずれたりする恐れはなかった。
【0009】一方、特に被加熱物1がアルミニウムや銅
といった低透磁率かつ高電気伝導率なる材料製である場
合には、所定の加熱出力を得るために加熱コイル2に流
す電流を大きくして被加熱物1に電流を多く流す必要が
あり、反発力が大きくなると同時に、被加熱物1が鉄な
どの高透磁率材料である場合のような吸引力が働かな
い。従って、加熱コイル2の磁界と誘導電流の作用によ
り被加熱物1に加熱コイル2から遠ざかる方向に浮力が
強く働き、被加熱物1の重量が軽い場合には、被加熱物
1が浮力によりずれたり、被加熱物1の戴置面からの浮
きが生じるおそれがある。
【0010】図15にこの時の加熱コイル2の電流の流
れと被加熱物1に流れる渦電流のマクロ的な流れを示
す。図15(ア)は加熱コイル2に流れる電流の向きを
被加熱物1側からみた図である。同図(イ)は、被加熱
物1に流れる渦電流を加熱コイル2と逆側((ア)と同
方向側)から見た図である。図に示すように被加熱物1
に流れる渦電流は加熱コイル2に流れる電流と逆向きか
つ略同形状のループ状で流れる。従って同じ断面積(略
加熱コイル2の面積)の永久磁石2つが異極(例えばN
極とN極)で存在することとほぼ等価になって、大きな
反発力となるものである。
【0011】この現象は、被加熱物1の材料がアルミニ
ウムや銅である場合に顕著である。すなわち同じ低透磁
率材料であっても、非磁性SUSのようなアルミニウム
や銅よりも電気伝導率が低い材料の場合は、加熱コイル
2に流す電流が少なくても十分な発熱が得られるので、
被加熱物1に誘導される電流が発生する反発磁界が小と
なるものである。図14に、アルミニウムで作られた被
加熱物1を加熱時の入力電力と浮力の相関の一例を示
す。図14のグラフにおいて、横軸は入力電力で、縦軸
は浮力で示している。この図で分かるように、入力電力
の増加に伴い、浮力も増加し、その浮力が被加熱物1の
重量を超えると、被加熱物1のずれ、浮き等が生じるこ
とになる。
【0012】こういった背景から昨今、特開昭61−1
28492号公報や、特開昭62−276787号公報
で開示されているような重量センサを用いて被加熱物の
移動を検出する技術、特開昭61−71582号公報で
開示されているような磁気センサを用いて被加熱物1の
位置を検出する技術、さらに特平4−75633号公
報で開示されているような共振周波数検出手段を用いて
被加熱物1が浮力により移動したことを検出する技術等
が開示されている。
【0013】しかしながら、いずれの技術も被加熱物1
に所定以上の浮力が作用したこと、あるいは被加熱物1
が浮いたあるいは移動したことを検出した場合に、それ
以上浮かないように、あるいは移動しないように被加熱
物1を加熱するための加熱電力を抑制したりあるいは加
熱動作そのものを停止するものであり、このような場合
には、十分な火力が得られず、更には調理動作の継続が
中断されるという状況に陥ってしまうという課題があっ
た。
【0014】例えば、質量300gのアルミニウム製の
雪平鍋で、200ccの水を加熱する場合、図14より
約850W以上の入力電力で浮力が鍋と調理物(水)の
合計質量を上回り、鍋が浮き上がってこの電力以上の入
力電力で加熱することが困難となる。従って上記従来の
方式においては、例えばアルミ負荷鍋と検知した場合に
鍋の浮き上がる入力電力以下、例えば800Wに入力電
力を抑制することが鍋浮きを生じない様にするための対
策手段として想定できるが、発明者らの実験によれば、
この様な入力電力で加熱しても上記の水を沸騰状態にす
ることは困難であり、アルミニウム製の鍋を加熱できる
誘導加熱調理器としては加熱性能が極めて低いものとな
る(入力1000W程度であれば200ccの水は沸騰
状態とすることは可能であるが加熱速度は遅い)。
【0015】そこで本発明は、上記従来の課題を解決す
るもので、簡単な構成で被加熱物に働く浮力を低減し、
被加熱物が軽量であっても十分な入力電力を確保でき
る、使い勝手の良い誘導加熱調理器、あるいはアルミニ
ウム製の負荷を安定的に加熱することのできる誘導加熱
装置を実現することを主たる目的とし、さらには加熱コ
イル2に高周波電流を供給する高周波回路のスイッチン
グ素子の損失を同時に低減することを目的としたもので
ある。
【0016】
【課題を解決するための手段】前記従来の課題を解決す
るために、本発明の誘導加熱装置は、アルミニウム若し
くは銅又はこれらと略同等以上の電気伝導率を有する低
透磁率材料からなる被加熱物と、加熱コイルとの間に電
気導体を設け、この電気導体は、加熱コイルの等価直列
抵抗(被加熱物及び電気導体を加熱状態と同様の位置配
置で、加熱周波数近傍の周波数を使用して測定した加熱
コイルの入力インピーダンスにおける等価直列抵抗(以
下単に加熱コイルの等価直列抵抗と呼ぶ)を大きくする
ものである。
【0017】このような電気導体は、同一出力を得る場
合の加熱コイルに流れる電流を低減して、加熱コイルの
発生する磁界により前記被加熱鍋に対して働く浮力を低
減する浮力低減機能を有する。この結果アルミニウム若
しくは銅又はこれらと略同等以上の電気伝導率を有しか
つ低透磁率材料からなる被加熱物を加熱した時に浮き上
がったりずれたりするのを防止するとともに、加熱コイ
ルに高周波電流を供給するスイッチング素子や共振コン
デンサ等の部品の損失を低減することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】請求項1に記載の発明は、本発明
の誘導加熱装置は、アルミニウム若しくは銅又はこれら
と略同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からな
る被加熱物を誘導加熱可能な加熱コイルと、前記加熱コ
イルと前記被加熱物との間に設けられた電気導体とを備
え、前記電気導体は前記加熱コイルに対向して前記被加
熱物を配置した時の前記加熱コイルの等価直列抵抗を大
きくするとともに、前記加熱コイルの発生する磁界が前
記被加熱物に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を
有しかつ、前記電気導体は前記被加熱物と熱的に接続さ
れることにより、加熱コイルから発生する磁界は電気導
体の影響を受けて向き及び強度分布が変わる。
【0019】一方、電気導体がない場合には、加熱コイ
ルから発生する高周波磁界は、加熱コイルから発生した
磁界を相殺する様に被加熱物に誘導電流が誘起する。こ
の結果、加熱コイル電流と方向が逆で平行な誘導電流が
高電気伝導率の被加熱体に誘導され、その電流と加熱コ
イルから放射される磁界との相互作用により、被加熱体
に浮力が発生する。
【0020】しかしながら、当該電気導体が存在するこ
とにより、加熱コイルから発生する磁界は、電気導体と
被加熱物に鎖交するため、両者に誘導電流電流を発生す
ることになる。すなわち、電気導体に誘導された誘導電
流の発生する磁界と被加熱物に誘導された電流の発生す
る磁界の重畳磁界が、加熱コイルの発生する磁界の変化
を妨げるように電気導体及び被加熱物に誘導電流が流れ
ることになる。
【0021】つまり、被加熱物に誘導される電流の分布
が、電気導体に誘導電流が発生することにより変わるこ
とになる。この電流分布の変化で、加熱コイルの等価直
列抵抗が大きくなることにより、同一出力を得る場合の
加熱コイルに流す電流値を小さくすることができ、被加
熱物に作用する浮力が低減するとともに、電気導体が被
加熱物に働くべき浮力の一部を分担することで被加熱物
に作用する浮力が低減できることになるわけである。併
せて、加熱コイル、加熱コイルを駆動する共振電流を発
生するインバータに使用されるスイッチング素子、及び
共振コンデンサ等の高周波部品のスイッチング損失を低
減することができるという作用をも有するものである。
【0022】特に請求項1に記載の発明は、被加熱物と
電気導体を熱的に接続したことにより、電気導体の発熱
を被加熱物へ伝達することが可能となり、電気導体自身
が誘導加熱された結果発生する熱損失の一部を被加熱物
に移動させることができ、電気導体自身の発熱による被
加熱物の加熱効率の低下を抑制することができるもので
ある。
【0023】また、請求項2に記載の発明は、特に、本
体上部に固定された天板を備え、電気導体を前記天板に
当接させたことにより、電気導体の熱を、熱伝導で天板
を介して被加熱物に与えるので、電気導体自身の発熱に
よる被加熱物の加熱効率の低下を抑制することができる
ものである。
【0024】
【実施例】以下本発明の実施例について、図面を参照し
ながら説明する。
【0025】(実施例1)図1は、本発明係る実施例1
の誘導加熱装置(誘導加熱調理器)の加熱コイル21及
びその周辺の構成を示す斜視図であり、図2は誘導加熱
装置本体(図示せず)に収納された加熱コイル21と、
前記本体上部に固定された天板28と、前記天板28に
載置される被加熱物29を示す断面図である。
【0026】図1及び図2において、加熱コイル21は
素線を束ねた撚り線を2層にして平板状に巻回され、保
持板22上部に載置される。保持板22は耐熱樹脂製で
4本の略直方体をした棒形状の強磁性体であるファライ
トコア23b〜26bを加熱コイル21の下部に位置
し、加熱コイル21の下面に略平行に、そしてそれらと
一体的に成形されている。
【0027】また、フェライトコア23b〜26bの両
端にはフェライトコア23a〜26aとフェライトコア
23c〜26cが接して設けられる。このためフェライ
トコアは全体として断面が被加熱物29に向けて開いた
コの字状に形成される。保持板22はファライトコアの
表面を覆うように(部分的に冷却のため覆っていない)
成形され加熱コイル21と電気的に絶縁される構成にな
っている。
【0028】加熱コイル21上部にはカーボン材料で形
成された導電塗膜32がマイカ製の絶縁板30、31の
間に形成されている。この導電膜32は端子33と接続
され、さらにコンデンサ34を介して商用電源電位ある
いは加熱コイル21に高周波電流を供給するインバータ
の入力する商用電源を整流した電位あるいは大地に接続
される。
【0029】電気導体27は、厚さが略1mmの材料が
アルミニウムの板により形成され、絶縁板31と天板2
8の間に設けられており、図1に示すように、外径及び
内径が加熱コイル21のものとほぼ同じの略ドーナツ状
をして、幅約6mmのスリット27aが外周から内周に
渡って設けられている。電気導体27の位置は3箇所あ
る脚部27bと保持板22により規制される。
【0030】電気導体27は中央に開口部37を設け、
上部(被加熱物29側)から見て、外側の立ち上がり部
であるフェライトコア23a〜26aの上端面は電気導
体27の外周より外側に位置し、内側の立ち上がり部で
あるフェライトコア23c〜26cの上端面は開口37
の周部より内側に位置している。サーミスタ35はホル
ダー36にはめ込まれて、天板28裏面に当接される。
絶縁体である天板28は耐熱セラミックス製で、その上
にアルミニウム製の被加熱物29が加熱コイル22に対
向する様に載置される。
【0031】以下上記実施例の動作を説明する。加熱コ
イル21には約70kHzの高周波電流が供給される。
加熱コイル21は、高周波電流が供給されると磁界を発
生するが、加熱コイル21下方では高透磁率材料である
フェライトコア23b〜26bがあり磁束がフェライト
コアに集中するので、磁界が被加熱物29と反対側に膨
らむのを防止できる。
【0032】一方、加熱コイル21の上部に出た磁界は
電気導体27に鎖交するので電気導体27に誘導電流が
誘起される。電気導体27の厚みは約1mmで浸透深さ
以上の厚みを有するので電気導体に鎖交した磁界の大部
分はほとんど電気導体を通過せず外周側または内周側に
迂回してから被加熱物29方向に導かれる。フェライト
コア23a〜26a、23c〜26cは上方の被加熱物
の方向に磁界を効率良く導く作用する。
【0033】なお、フェライトコア23a〜23c、2
4a〜24c、またはフェライトコア25a〜25cは
それぞれ、別の3つのフェライトコアを接した状態で組
み合わせて配置しているが、それぞれ略同形状となるよ
うに一体に成形しても開磁路であるので同様の効果が得
られる。
【0034】被加熱物29に誘起された誘導電流は加熱
コイル21の発生する磁界分布と、電気導体27に誘起
された電流の発生する磁界分布の重畳した磁界分布が被
加熱物29に鎖交することにより発生するものである。
このように、電気導体27が介在することにより、被加
熱物29に誘導される電流分布が変化し、さらに電気導
体27に発生する電流分布が加わるということから、加
熱コイル21の等価直流抵抗が大きくなる。
【0035】等価直列抵抗が大きくなると、同じ加熱コ
イル電流でも被加熱物29における発熱量が大きくなる
ので同一消費電力を得ようとする場合には加熱コイル電
流を小さくすることができ、それに伴い浮力も低減する
ことができる。
【0036】図3に被加熱物がアルミニウム製の鍋の場
合の消費電力と浮力の関係を、アルミニウム製の電気導
体27がある場合(Bで示す)とその電気導体がない場
合(Aで示す)について、また、図4には、消費電力と
加熱コイル電流の関係を、電気導体27がある場合(B
で示す)と電気導体がない場合(Aで示す)について測
定結果の一例をしめしている。ただし、インバータの共
振周波数は約70kHzである。
【0037】これらの測定結果によると、電気導体27
を挿入することにより、等価直流抵抗(Rs)は1.0
9Ωから2.3Ωに増加し、消費電力が2kWに出力を
設定した場合に、鍋に働いた浮力は約900gから約5
00gに低減するとともに、加熱コイル21の電流も約
40Armsから約33Armsに低減した。
【0038】また、加熱コイル21の電流の低減に伴い
インバータを駆動するパワースイッチング素子の損失、
加熱コイル21の損失も大幅に低減する(なお、鉄系の
被加熱物の場合には電気導体27を挿入することによ
り、加熱コイルの等価直列抵抗大きくするという作用は
ほとんど得られない)。
【0039】また、電気導体27を設けることで、電気
導体の損失が発生する。発明者らの実験によれば、消費
電力が2kWであったとき、前記電気導体の損失は一例
として約270Wと推定された。この時、加熱コイル2
1を含めた誘導加熱装置内部の損失は加熱コイル電流低
減の作用により約210Wと推定された。このように、
電気導体27を挿入することにより、その発熱による損
失が発生するものの、内部損失が低減することにより、
その差は約60Wと大幅な加熱効率の低下を防止するこ
とができる。
【0040】また、図2のように電気導体27を天板2
8当接させて、電気導体27の熱を、熱伝導で天板28
を介して被加熱物29に与えれば、前記の加熱効率の低
下をカバーすることが可能である。このように、電気導
体27の発熱による損失の増加は、機器全体の加熱効率
でみれば、加熱コイル21の電流が低減するので、相当
な部分が他の部分の損失低下で相殺される。
【0041】また、電気導体27には、スリット27a
を設けている。このスリット27aを設け無いほうが等
価直流抵抗(Rs)を増加する作用が大きい。しかしな
がら、この場合には、電気導体27に誘導される電流量
が多いため発熱量が極めて大きく加熱効率の低下も大き
い。スリット27aを設けることで、このスリット27
aを設けない場合より等価直流抵抗は小さくなるが、電
気導体27に誘起される加熱コイル21の電流と逆方向
の略平行な加熱コイル21の中心の周りを周回するよう
に流れる周回電流が流れないようにし、分布の異なる誘
導電流を電気導体27内に分布せしめるものである。こ
れにより、電気導体27の発熱を抑制するとともに、等
価直流抵抗を増加させる作用を生じさせるものである。
【0042】導電膜32は加熱コイル22の上部に近接
して設けられ、コンデンサ34を介して、商用電源電
位、インバータの入力電位となる電源電流整流器の出力
電位、またはアース電位に接続されるので加熱コイル2
1から使用者に漏洩するリーク電流を低減することがで
きる。
【0043】しかしながら、この導電膜32は膜圧が薄
く電気伝導率も低いので、誘導電流の発生量が極めて少
なく、加熱コイル21から発生する磁界の分布を変える
作用はほとんどないので、電気導体27のような等価直
列抵抗の増加作用、加熱コイル電流の低減作用、そして
浮力低減作用はほとんど得られない。
【0044】図5は、上記第1の実施例における電気導
体の厚みと浮力に関する傾向である。加熱コイル21か
らの磁束を遮蔽する場合に必要な厚みは浸透深さ以上必
要であり、本実施例の場合加熱コイル21に流れる電流
の周波数は70kHzであり、材質をアルミニウムとし
た場合浸透深さはδ=0.3mm程度となる。従って電
気導体27の厚み浸透深さ以上にすることにより、浮力
低減の効果を大きく得ることが可能となる。発明者らは
実験により、浸透深さよりもやや大きく約1mm程度に
すると十分な浮力低減の効果が得られることを確認して
いる。
【0045】以上のように、本実施例によれば、アルミ
ニウム製の被加熱物29を誘導加熱可能な加熱コイル2
1と被加熱物29との間に設けられた電気導体27を有
し、電気導体27は加熱コイル21に対向して被加熱物
29を配置した時の加熱コイル21の等価直列抵抗を大
きくするとともに、加熱コイル21の発生する磁界が被
加熱物29に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を
有してなるので、所定の消費電力を得ようとする場合
に、加熱コイル電流値を低減することができ、被加熱物
29に働く浮力を低減するとともに、スイッチング素子
(図示せず)や加熱コイル21に発生する損失を低減し
て冷却が容易になり、アルミニウム、銅、または黄銅な
ど高電気伝導率低透磁率の被加熱物29を加熱できる安
全かつ低価格な誘導加熱調理器を提供することができ
る。
【0046】また、電気導体27は、加熱コイル21を
スリット27a部以外のほぼ全部に渡って上部で覆うよ
うに、すなわち、電気導体27は加熱コイル21におけ
る被加熱物29側の面の一部または全部と対向し板状に
形成されてなることにより、加熱コイル21から発生す
る磁界の一部を被加熱物29に到達する前に、電気導体
27に効率良く鎖交させ、電気導体27の周囲から迂回
して被加熱物29に加熱コイル21に磁界を鎖交させる
ことになる。電気導体27と加熱コイル21との間隔
は、電気導体27と被加熱物29との間隔よりも小さ
く、電気導体27と加熱コイル21との磁気結合が良い
ので、電気導体27に鎖交する磁束量が大きくなり、電
気導体27に誘導電流が分布し加熱コイル21の等価直
列抵抗を大きくするという作用がある。
【0047】また、加熱コイル21から出て、電気導体
27を迂回した、通り抜けた、あるいは鎖交しなかった
磁界が、被加熱物29に到達することにより、被加熱物
29を誘導加熱するので、加熱コイル21の等価直列抵
抗が増加し、加熱コイル電流低減作用と被加熱物に働く
浮力低減作用を大きくすることができる。
【0048】なお、本実施例では、加熱コイル21のほ
ぼ全部と対向するように電気導体27の大きさを決めた
が、電気導体27の板の面積は大きいほど、また電気導
体27が加熱コイル21に近いほど電気導体27に加熱
コイル21の磁束が多く通過し、等価直列抵抗増加作用
を大きくすることができることから、電気導体27の表
面積は、必要とする浮力低減効果を得るように、また、
電気導体27と加熱コイル21間の距離、電気導体27
の発熱等の条件を考慮して決めれば良い。
【0049】また、電気導体27に開口37を設けて、
加熱コイル21の中央部近傍を覆わないようにしたこと
により、中央部近傍を、加熱コイル21から発生して被
加熱物29へ鎖交させる磁界の経路とするよう集中さ
せ、当該電気導体を付設することに伴う加熱効率の大幅
な低下を抑制するものである。
【0050】また、電気導体板27にスリット27aを
設けてなることにより、加熱コイル21の発生する磁界
により電気導体27に誘導される電流の向き及び大きさ
を変え、被加熱物29に作用する浮力の低減効果をある
程度保持しながら、電気導体27に発生する発熱量を低
減することができる。
【0051】すなわち電気導体27に誘導される加熱コ
イル21に流れる電流と逆方向に流れる周回電流は、ス
リット27aにより遮断し電流分布を変えることが可能
なので大電流の発生が無くなり、発熱量を低減できる。
ただ、その場合に被加熱物29への浮力低減効果がある
程度低下する。スリット27aの形状、加熱コイルが鎖
交する面積、電気導体の材質などにより、等価直列抵抗
の大きさと電気導体27の発熱量が異なるので、これら
の要素の組み合わせで最適なものを選択して、浮力の低
減効果をできるだけ大きく、電気導体27の発熱量を許
容できるようなレベルとする組み合わせを決定すれば良
い。さらに、この電気導体27は複数の電気導体に分離
されないので組み立て時等の場合における取り扱いが容
易である。
【0052】また、電気導体27は、その厚みを加熱コ
イル電流により誘導される高周波電流の浸透深さよりも
大としてなるので、電気導体27に誘導電流が十分多く
発生し、加熱コイル21からの磁界が通過せず磁界分布
を大きく変える作用が得られることにより、形状を工夫
することにより上記の等価直列抵抗を増加させる作用を
確実に得ることができるものである。
【0053】また、電気導体27はアルミニウム製であ
るので、低透磁率であり磁束がその電気導体27に吸収
されにくく(被加熱物に到達しない磁束量が多くならな
い)、かつ電気導体に誘導された電流で磁界の向きが変
更されるので、電気導体27内を通過させ被加熱物29
に鎖交させるか、または電気導体27を迂回させ被加熱
物29に鎖交させるかのいずれかの経路で、磁束を効率
的に被加熱物29に鎖交させることができ、加熱効率の
低下を抑制しながら等価直列抵抗を大きくすることがで
きる。
【0054】また、電気導体27はアルミニウム製であ
り、高電気伝導率の材料であるので加熱コイル21の磁
束が鎖交することにより、誘導電流で磁界の向きや分布
が変更される程度が大きくなり、被加熱物29における
誘導電流の分布の変化および、電気導体27における電
流の発生による、等価直列抵抗を増加させる効果を大き
くし、かつ電気導体27自身の誘導電流による発熱を抑
制することができる。
【0055】また、加熱コイル21を収納する本体と、
加熱コイル21と被加熱物29との間に位置すべく前記
本体に固定された絶縁体28とを有し、電気導体27
は、前記絶縁体28の加熱コイル21側に設けたことに
より、電気導体27を加熱コイル21に近づけて、加熱
コイル21との磁気結合を大きくして、等価直列抵抗を
大きくし易い、動作中に加熱コイル21の磁界で電気導
体27に誘導される電流の作用により電気導体27が発
熱する場合があるが、絶縁体28表面に電気導体27が
露出せず、電気導体27に直接手が触れて火傷する恐れ
が少ない、あるいは絶縁体28の表面が凸凹しないこと
から見栄えが良いなどの効果を奏する。
【0056】また、加熱コイル21下方に放射状に設け
た高透磁率の磁性体であるフェライトコアを四本備え、
これらのフェライトコアは電気導体の外周より外側に被
加熱物の方向に立ち上がる立ち上がり部を設けたことに
より、加熱コイル21から出た磁束が加熱コイル21外
側周囲に広がらないようにして効率良く被加熱物29に
磁束が鎖交するようにして加熱効率を高めるとともに、
フェライトコア23a〜26aの立ち上がり部から出る
磁束が電気導体27に突き当たらないようにして電気導
体27の発熱を抑制するものである。
【0057】また、電気導体27は中央部に開口37を
設けるとともに、加熱コイル下方に設けた高透磁率の棒
状フェライトコア23b〜26bを設け、前記フェライ
トコア23b〜26bは電気導体27の開口37周部3
7aより中央側に被加熱物29の方向に立ち上がる立ち
上がり部23c〜26cを設けたことにより、フェライ
トコアの立ち上がり部23c〜26cから出る磁束が電
気導体27に突き当たらないようにして加熱コイル21
からの磁束を効率良く被加熱物29に導き加熱効率を高
めることができる。
【0058】また、サーミスタ35に鎖交する磁束を抑
制してサーミスタ35の検知回路にノイズを誘導しにく
くすることもできる。
【0059】なお、本実施例では、加熱コイル21下方
に設けた高透磁率の棒状フェライトコア23b〜26b
の両端をフェライトコア23a〜26a、及びフェライ
トコア23c〜26cにより略垂直に立ち上げている
が、この立ち上げ角度はこれにかぎるものではない。
【0060】また、電気導体27は、被加熱物29とセ
ラミック製天板28より電気的に絶縁されているが熱的
に接続されてなるので電気導体27が発熱する場合には
その熱の一部が天板28を介して被加熱物29に伝わり
電気導体27の発熱による加熱効率の低減を抑制するこ
とができる。
【0061】(実施例2)図6は、本発明に係る実施例
2の誘導加熱装置の断面を模式的に示す図である。
【0062】図で40は電気導体、41は約70kHz
の高周波電流が供給され、高周波磁界を発生する加熱コ
イル、42は加熱コイル41下面に対向して配置され、
加熱コイル40からの高周波磁界を効率よく被加熱物4
3へ供給するための磁性体で、具体的にはフェライトを
用いている。被加熱物43は、本実施例の場合、高電気
伝導率(高導電率)かつ低透磁率のアルミニウムまたは
銅としている。
【0063】電気導体40の形状を図7に示す。電気導
体40は、略円盤状で厚み約1mmのアルミニウム板を
ベースとし、さらに放射状に切り欠き40aを4箇所設
けている。このように電気導体40に切り欠き40aを
設けることにより、加熱コイル40の電流の流れに対し
て電気伝導率が不連続となるようにして、電気導体40
に加熱コイル41に周回するように流れる電流(図7の
破線Aで模式的に示す)の流れの向きと異なる(平行で
ない)方向に誘導電流が流れるようにしている。
【0064】加熱コイル41に高周波電流が供給された
時の電気導体40に誘導される大きな電流の流れを図7
の実線矢印Bに模式的に示す。図に示すように放射状切
り欠き40a部分に電流が誘導されないため、加熱コイ
ル41から発生する磁界が透過する。誘導された渦電流
の電流密度の大きい部分はこの部分を回避し、クローバ
ー状に蛇行したような分布(図7の実線Bで模式的に示
す)となる。
【0065】一方、電気導体40により、加熱コイル4
1の磁界は遮蔽され、迂回して被加熱物43に到達し、
切り欠き40aのところでは、加熱コイル41の磁界は
通過して被加熱物43に到達する。したがって、従来被
加熱物43において、加熱コイル41に流れる電流とほ
ぼ平行な向きに周回するように分布して発生し、大きな
反発力となっていた渦電流の分布と異なるものとなる。
【0066】上記のように、電気導体40に加熱コイル
41の磁界を照射し、一部の磁界を迂回させて被加熱物
43に鎖交させ、被加熱物43において加熱コイル41
電流に対向した誘導電流分布が発生することを抑制し
て、等価直流抵抗を増加させるとともに、電気導体40
においても、切り欠き40aを設けることにより発熱を
防止することができる。
【0067】切り欠き40aのある電気導体40を設け
た場合の等価直流抵抗の大きくなる度合いは、切り欠き
40aのない電気導体40を設けた場合に比して少なく
なるが、電気導体40がない場合に対する増加効果自体
は維持される。従って、同一消費電力を得る場合におい
て、加熱コイル41に流れる電流が減少して被加熱物4
3に作用する浮力が低減できるとともに、電気導体40
の発熱を抑制することができるものである。
【0068】以上のように、本実施例によれば、電気導
体40も誘導加熱され発熱するが、電気導体40の固有
抵抗や切り欠きの形状を最適化することにより、等価直
列抵抗を大きくし、電気導体40の発熱を低減しつつ、
被加熱物43への入力電力を大とすることが可能であ
る。
【0069】また、電気導体40を挿入した場合、加熱
コイル41の等価直列抵抗が上昇するため、同じ入力電
力を得る場合、加熱コイル41に流す電流が少なくする
こともできるので、加熱コイル41の損失が低減し、さ
らに図示しない高周波電流を供給するインバータ回路の
損失も低減することが可能となる。発明者らの測定によ
れば、被加熱物43が、φ240mmのアルミニウム鍋
とし、加熱コイル41の外径φ180mm、内径φ50
mm、加熱コイル41と被加熱物43との距離8mmの
条件において、等価直列抵抗は電気導体40がない場合
約1.0Ω程度、電気導体40がある場合、1.7Ω程
度であった。これにより加熱コイル41に流れる電流は
1600W入力で36Armsから29Armsに低減
できた。本実施例の場合加熱コイル41の高周波抵抗は
70kHz、常温0.16Ωであるので、損失は常温で
約207Wから135Wに低減したものと推定できる。
【0070】また、電気導体の切り欠き40aの形状を
放射状に電気伝導率が低くなるようなものとしたが、こ
の形状に限定されるものでなく、加熱コイルに流れる電
流に誘起して発生し周回するように流れる渦電流の分布
を阻害する作用のある形状であれば同様の効果が得られ
るものである。
【0071】また、被加熱物43がアルミニウムや銅の
単一材料で形成されず、一層目が例えば0.1mm厚み
の非磁性ステンレス、2層目が1mm厚みのアルミニウ
ムといった多層構造となっている場合においても、1層
目の非磁性ステンレスは薄いために実質2層目のアルミ
ニウムを加熱することと等価となるので、上記のように
電気導体40は同様な効果を奏することができる。
【0072】(実施例3)図8は、本発明に係る実施例
3の電気導体40と加熱コイル41を示す平面図であ
る。断面図は図6と同様である。図8で電気導体40は
厚み約1mm、幅約10mm、長さ約70mmのアルミ
ニウム板で形成され、これらを8枚、間隔を設けて放射
状に配置している。本配置により、電気導体40がない
部分の電気伝導率は略ゼロとなるため、加熱コイル41
の電流が流れる方向に電気伝導率が不連続な状態を簡単
に実現できるものである。
【0073】図8において電気導体(アルミニウム板)
40の存在する部分では、加熱コイル41から発生する
磁界が遮蔽され一部は電気導体40に吸収され電気導体
40に電流が誘導され、他は迂回して被加熱物43(図
6)に鎖交する。
【0074】以上のように本実施例においては複数の電
気導体40を配置することにより、電気導体40に誘導
電流を発生させるとともに、被加熱物43に流れる渦電
流(誘導電流)の向きや密度分布を加熱コイル41に流
れる電流と異なる形にすることが可能となる。この結
果、被加熱物43に鎖交する磁界分布を変更し加熱コイ
ルの等価直列抵抗大きくすることができるとともに、電
気導体40の温度上昇を抑制することができる。
【0075】尚、本実施例では放射状に電気導体40を
配置する構成としたが、これに限定されるものでなく例
えば図9に示すような電気導体である四角形状の板44
を4つ加熱コイル45上方に並べる構成などとしてもよ
い。
【0076】また、図8で電気導体40の本数を8本と
したが、本数を少なくすれば浮力低減の効果が小とな
り、多くすれば浮力低減の効果が大となる傾向にある。
また本数を増やすと電気導体のトータルの損失が大とな
るため、最適な本数に設計する必要があり、本実施例の
場合6〜8本程度が効果的である。材質はアルミニウム
としたがこれに限定されるものでなく、例えば銅、黄銅
といった材料でも同様の効果が得られる。
【0077】(実施例4)図10は、本発明を示す第4
の実施例における誘導加熱装置の要部断面図である。図
で電気導体49は絶縁体53と被加熱物52の間に設け
られている。絶縁体53は誘導加熱調理器であれば、例
えば、加熱コイル50、フェライトコア51、あるいは
これらを駆動するインバータ(図示せず)等を収納して
いる機器本体の上部に固定され、被加熱物52を加熱す
るために載置するために設けるセラミック製の天板に対
応する。
【0078】本実施例においては、電気導体49は任意
に取り外しが可能になるため、被加熱物52が、例えば
(浮力によるずれ、浮きの問題が発生しない程度に)充
分質量が大きい場合や、原理上浮力が問題とならない鉄
などの材料の時に電気導体49の設置が不要となり、か
つ電気導体49の発熱も発生しない。また電気導体49
と被加熱物52を接触させることにより、電気導体49
の発熱を被加熱物52へ効果的に伝達することが可能と
なり、この点においても効率よい加熱が可能となるもの
である。
【0079】(実施例5)図11は、本発明を示す第5
の実施例における誘導加熱装置の断面図である。図で天
板28上に載置される電気導体54と被加熱物55は機
械的に接続され、一体となっている。57はフェライト
コアである。
【0080】以上より本実施例においては使用時に電気
導体54と被加熱物55を別々に天板28上に載置する
必要がなく、より使い勝手の向上した誘導加熱装置を実
現することができる。尚電気導体54と被加熱物55は
任意に取り付け、取り外しできる構成としてもよい。
【0081】また、その時電気導体54を取り外した状
態で加熱して浮かないような重量に電気導体54及びそ
れに付設したものの合計重量を浮力より重くしておけ
ば、加熱しようとした時に電気導体54が被加熱物55
を押し上げる力が働かず被加熱物54がさらに浮きにく
くなり安全である。
【0082】(実施例6)図12は、本発明に係る実施
例6における誘導加熱装置の断面図である。図で58は
被加熱物59の温度を間接的に検出する温度検出手段
で、具体的にはサーミスタを用いている。
【0083】温度検出手段59は、絶縁体61と電気導
体60を介して被加熱物59の温度を検出するので、電
気導体60が集熱板の役割を果たすため、例えば被加熱
物59の底面が反っていた場合においても、応答性良く
被加熱物59の温度上昇を検出することができる。ま
た、電気導体60が発熱していても精度良く検知できる
ので、電気導体60が高温である旨の表示を精度良く行
うことができる。
【0084】以上のように、本実施例によれば、絶縁体
61の加熱コイル62側に温度検出手段を有し、電気導
体60は絶縁体60を介して温度検出手段と熱的に接続
されてなることにより、被加熱物59の底が平坦でない
場合にも電気導体60が被加熱物59の裏面の熱を効率
よく集めて温度検出手段に伝えることができるので、加
熱コイル電流低減効果及び浮力低減効果を奏するととも
に被加熱物59の温度制御性能、あるいは火傷防止表示
機能が良好となるものである。
【0085】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、アルミ
ニウムや銅など低透磁率かつ高電気伝導率の材質の被加
熱物を加熱可能で、加熱時における加熱コイル等の内部
部品損失及び被加熱物に働く浮力の低減が可能な誘導加
熱装置を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における誘導加熱装置の要部斜視図
【図2】同誘導加熱装置の要部断面図
【図3】同誘導加熱装置の加熱コイルの等価直列抵抗と
浮力の相関を示す図
【図4】同誘導加熱装置の加熱コイルの等価直列抵抗と
加熱コイル電流値の相関を示す図
【図5】同誘導加熱装置の電気導体の厚みと被加熱体に
作用する浮力の相関を示す図
【図6】実施例2における誘導加熱装置の要部断面図
【図7】同誘導加熱装置の電気導体に流れる電流を示す
【図8】実施例3における誘導加熱装置の電気導体を示
す要部平面図
【図9】同誘導加熱装置の他の電気導体を示す要部平面
【図10】本発明の第4の実施例における誘導加熱装置
の誘導加熱装置の要部断面図
【図11】本発明の第5の実施例における誘導加熱装置
の要部断面図
【図12】実施例6における誘導加熱装置の要部断面図
【図13】従来の誘導加熱装置の要部断面図
【図14】従来の誘導加熱装置の入力電力と浮力の相関
【図15】従来の誘導加熱装置の加熱コイルと被加熱物
に流れる電流を示す図
【符号の説明】 29、43、52、55、59 被加熱物 21、41、45、50、56、62 加熱コイル 27、40、44、46、49、54、60 電気導体 37 開口 28、53、61 天板(絶縁体) 58 温度検知手段 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成15年6月26日(2003.6.2
6)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 誘導加熱装置
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一般家庭やオフィ
ス、レストラン、工場などで使用される誘導加熱装置に
関するものであり、さらに詳しくはアルミニウムや銅と
いった低透磁率かつ高電気伝導率なる特性の材料ででき
た被加熱物を加熱する誘導加熱調理器、誘導加熱式湯沸
かし器、誘導加熱式アイロン、またはその他の誘導加熱
式加熱装置等で、特にアルミニウムを加熱可能とする誘
導加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】以下従来の誘導加熱装置として、誘導加
熱コイルから高周波磁界が発生し、電磁誘導による渦電
流で鍋等の被加熱物が加熱される誘導加熱調理器を図1
3を用いて説明する。
【0003】図13において1は鍋形状をした被加熱物
である。2は加熱コイルで、図示しない高周波インバー
タから高周波電流を供給され高周波磁界を発生し、被加
熱物1に磁界を照射する。3はフェライトなどの高透磁
率の磁性体で、加熱コイル2からの高周波磁界を効率よ
く被加熱物1に伝達するために設けている。4は絶縁体
で、具体的にはセラミック材の厚み4mmなるプレート
であり、被加熱物1が載置される。
【0004】また、絶縁体4の裏面には、コンデンサ7
を介してアースあるいは整流器の入力または出力電位に
接続されたカーボン製の導電性塗膜5が印刷され、さら
に、加熱コイル2の周部にはリング状に加工された磁気
シールドリング6が設けられている。
【0005】この構成において、加熱コイル2から高周
波磁界が発生すると、底部に誘起した電磁誘導による渦
電流のために被加熱物1が加熱される。また、導電性塗
膜5の静電シールド作用により、加熱コイル2に発生す
る高周波高電圧と浮游容量によって加熱コイル2から人
体を介して大地へと漏洩する漏れ電流が抑制される。ま
た、磁気シールドリング6には、加熱コイル2から発生
する高周波磁界により、誘導電流が発生しその誘導電流
が反磁界を発生し結果的に加熱コイル2周囲に漏洩する
磁界を抑制することができる。
【0006】
【特許文献1】特開平7−211444号公報
【特許文献2】特開平6−310675号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の構成におい
て、被加熱物1の底面には電流が誘起され、この電流は
加熱コイル電流との相互作用で被加熱物1の底に加熱コ
イル2から遠ざかろうとする反発力を生じる。
【0008】一方被加熱物1が鉄などの高透磁率材料
で、抵抗率がある程度大きい鉄製である場合には、所定
の出力を得ようとする場合に、誘導される電流値が少な
くてよく上記の反発力が小さいと同時に、磁束が被加熱
物1に吸収されるので吸引力が働き、被加熱物1が浮き
上がったりずれたりする恐れはなかった。
【0009】一方、特に被加熱物1がアルミニウムや銅
といった低透磁率かつ高電気伝導率なる材料製である場
合には、所定の加熱出力を得るために加熱コイル2に流
す電流を大きくして被加熱物1に電流を多く流す必要が
あり、反発力が大きくなると同時に、被加熱物1が鉄な
どの高透磁率材料である場合のような吸引力が働かな
い。従って、加熱コイル2の磁界と誘導電流の作用によ
り被加熱物1に加熱コイル2から遠ざかる方向に浮力が
強く働き、被加熱物1の重量が軽い場合には、被加熱物
1が浮力によりずれたり、被加熱物1の戴置面からの浮
きが生じるおそれがある。
【0010】図15にこの時の加熱コイル2の電流の流
れと被加熱物1に流れる渦電流のマクロ的な流れを示
す。図15(ア)は加熱コイル2に流れる電流の向きを
被加熱物1側からみた図である。同図(イ)は、被加熱
物1に流れる渦電流を加熱コイル2と逆側((ア)と同
方向側)から見た図である。図に示すように被加熱物1
に流れる渦電流は加熱コイル2に流れる電流と逆向きか
つ略同形状のループ状で流れる。従って同じ断面積(略
加熱コイル2の面積)の永久磁石2つが異極(例えばN
極とN極)で存在することとほぼ等価になって、大きな
反発力となるものである。
【0011】この現象は、被加熱物1の材料がアルミニ
ウムや銅である場合に顕著である。すなわち同じ低透磁
率材料であっても、非磁性SUSのようなアルミニウム
や銅よりも電気伝導率が低い材料の場合は、加熱コイル
2に流す電流が少なくても十分な発熱が得られるので、
被加熱物1に誘導される電流が発生する反発磁界が小と
なるものである。図14に、アルミニウムで作られた被
加熱物1を加熱時の入力電力と浮力の相関の一例を示
す。図14のグラフにおいて、横軸は入力電力で、縦軸
は浮力で示している。この図で分かるように、入力電力
の増加に伴い、浮力も増加し、その浮力が被加熱物1の
重量を超えると、被加熱物1のずれ、浮き等が生じるこ
とになる。
【0012】こういった背景から昨今、特開昭61−1
28492号公報や、特開昭62−276787号公報
で開示されているような重量センサを用いて被加熱物の
移動を検出する技術、特開昭61−71582号公報で
開示されているような磁気センサを用いて被加熱物1の
位置を検出する技術、さらに特公平4−75633号公
報で開示されているような共振周波数検出手段を用いて
被加熱物1が浮力により移動したことを検出する技術等
が開示されている。
【0013】しかしながら、いずれの技術も被加熱物1
に所定以上の浮力が作用したこと、あるいは被加熱物1
が浮いたあるいは移動したことを検出した場合に、それ
以上浮かないように、あるいは移動しないように被加熱
物1を加熱するための加熱電力を抑制したりあるいは加
熱動作そのものを停止するものであり、このような場合
には、十分な火力が得られず、更には調理動作の継続が
中断されるという状況に陥ってしまうという課題があっ
た。
【0014】例えば、質量300gのアルミニウム製の
雪平鍋で、200ccの水を加熱する場合、図14より
約850W以上の入力電力で浮力が鍋と調理物(水)の
合計質量を上回り、鍋が浮き上がってこの電力以上の入
力電力で加熱することが困難となる。従って上記従来の
方式においては、例えばアルミ負荷鍋と検知した場合に
鍋の浮き上がる入力電力以下、例えば800Wに入力電
力を抑制することが鍋浮きを生じない様にするための対
策手段として想定できるが、発明者らの実験によれば、
この様な入力電力で加熱しても上記の水を沸騰状態にす
ることは困難であり、アルミニウム製の鍋を加熱できる
誘導加熱調理器としては加熱性能が極めて低いものとな
る(入力1000W程度であれば200ccの水は沸騰
状態とすることは可能であるが加熱速度は遅い)。
【0015】そこで本発明は、上記従来の課題を解決す
るもので、簡単な構成で被加熱物に働く浮力を低減し、
被加熱物が軽量であっても十分な入力電力を確保でき
る、使い勝手の良い誘導加熱調理器、あるいはアルミニ
ウム製の負荷を安定的に加熱することのできる誘導加熱
装置を実現することを主たる目的とし、さらには加熱コ
イル2に高周波電流を供給する高周波回路のスイッチン
グ素子の損失を同時に低減することを目的としたもので
ある。
【0016】
【課題を解決するための手段】前記従来の課題を解決す
るために、本発明の誘導加熱装置は、アルミニウム若し
くは銅又はこれらと略同等以上の電気伝導率を有する低
透磁率材料からなる被加熱物と、加熱コイルとの間に電
気導体を設け、この電気導体は、加熱コイルの等価直列
抵抗(被加熱物及び電気導体を加熱状態と同様の位置配
置で、加熱周波数近傍の周波数を使用して測定した加熱
コイルの入力インピーダンスにおける等価直列抵抗(以
下単に加熱コイルの等価直列抵抗と呼ぶ)を電気導体が
設けられていない時の加熱コイルの等価直列抵抗より
きくするものである。
【0017】このような電気導体は、同一出力を得る場
合の加熱コイルに流れる電流を低減して、加熱コイルの
発生する磁界により前記被加熱鍋に対して働く浮力を低
減する浮力低減機能を有する。この結果アルミニウム若
しくは銅又はこれらと略同等以上の電気伝導率を有しか
つ低透磁率材料からなる被加熱物を加熱した時に浮き上
がったりずれたりするのを防止するとともに、加熱コイ
ルに高周波電流を供給するスイッチング素子や共振コン
デンサ等の部品の損失を低減することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】請求項1に記載の発明は、本発明
の誘導加熱装置は、アルミニウム若しくは銅又はこれら
と略同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からな
る被加熱物を誘導加熱可能な加熱コイルと、前記加熱コ
イルと前記被加熱物との間に設けられた電気導体と、本
体上部に固定されて前記被加熱物を載置する天板とを備
え、前記電気導体は前記加熱コイルに対向して前記被
加熱物を配置した時の前記加熱コイルの等価直列抵抗を
前記電気導体が設けられていない時の前記加熱コイルの
等価直列抵抗より大きくするとともに、前記加熱コイル
側から前記天板に当接して前記被加熱物と熱的に接続さ
てなる誘導加熱装置とするものである。
【0019】請求項2に記載の発明は、アルミニウム若
しくは銅またはこれらと略同等以上の電気伝導率を有す
る低透磁率材料からなる被加熱物を誘導加熱可能な加熱
コイルと、前記加熱コイルと前記被加熱物との間に設け
られた電気導体と、本体上部に固定されて前記被加熱物
を載置する天板とを備え、前記電気導体は、前記加熱コ
イルに対向して前記被加熱物を配置した時前記加熱コイ
ルの発生する磁界と前記被加熱物に誘導される誘導電流
の作用により前記被加熱物に対して働く浮力を低減する
浮力低減機能を有するとともに、前記加熱コイル側から
前記天板に当接して前記被加熱物と熱的に接続されてな
る誘導加熱装置とするものである。
【0020】請求項1または請求項2に記載の発明の構
成とすることにより、加熱コイルから発生する磁界は電
気導体の影響を受けて向き及び強度分布が変わる。
【0021】一方、電気導体がない場合には、加熱コイ
ルから発生する高周波磁界は、加熱コイルから発生した
磁界を相殺する様に被加熱物に誘導電流が誘起する。こ
の結果、加熱コイル電流と方向が逆で平行な誘導電流が
高電気伝導率の被加熱体に誘導され、その電流と加熱コ
イルから放射される磁界との相互作用により、被加熱体
に浮力が発生する。
【0022】しかしながら、当該電気導体が存在するこ
とにより、加熱コイルから発生する磁界は、電気導体と
被加熱物に鎖交するため、両者に誘導電流を発生するこ
とになる。すなわち、電気導体に誘導された誘導電流の
発生する磁界と被加熱物に誘導された電流の発生する磁
界の重畳磁界が、加熱コイルの発生する磁界の変化を妨
げるように電気導体及び被加熱物に誘導電流が流れるこ
とになる。
【0023】つまり、被加熱物に誘導される電流の分布
が、電気導体に誘導電流が発生することにより変わるこ
とになる。この電流分布の変化で、加熱コイルの等価直
列抵抗が大きくなることにより、同一出力を得る場合の
加熱コイルに流す電流値を小さくすることができ、被加
熱物に作用する浮力が低減するとともに、電気導体が被
加熱物に働くべき浮力の一部を分担することで被加熱物
に作用する浮力が低減できることになるわけである。併
せて、加熱コイル、加熱コイルを駆動する共振電流を発
生するインバータに使用されるスイッチング素子、及び
共振コンデンサ等の高周波部品のスイッチング損失を低
減することができるという作用をも有するものである。
【0024】また、本体上部に固定された天板を備え、
電気導体を前記天板に当接させたことにより、電気導体
の熱を、熱伝導で天板を介して被加熱物に与えるので、
電気導体自身の発熱による被加熱物の加熱効率の低下を
抑制することができるものである。
【0025】
【実施例】以下本発明の実施例について、図面を参照し
ながら説明する。
【0026】(実施例1)図1は、本発明係る実施例1
の誘導加熱装置(誘導加熱調理器)の加熱コイル21及
びその周辺の構成を示す斜視図であり、図2は誘導加熱
装置本体(図示せず)に収納された加熱コイル21と、
前記本体上部に固定された天板28と、前記天板28に
載置される被加熱物29を示す断面図である。
【0027】図1及び図2において、加熱コイル21は
素線を束ねた撚り線を2層にして平板状に巻回され、保
持板22上部に載置される。保持板22は耐熱樹脂製で
4本の略直方体をした棒形状の強磁性体であるファライ
トコア23b〜26bを加熱コイル21の下部に位置
し、加熱コイル21の下面に略平行に、そしてそれらと
一体的に成形されている。
【0028】また、フェライトコア23b〜26bの両
端にはフェライトコア23a〜26aとフェライトコア
23c〜26cが接して設けられる。このためフェライ
トコアは全体として断面が被加熱物29に向けて開いた
コの字状に形成される。保持板22はファライトコアの
表面を覆うように(部分的に冷却のため覆っていない)
成形され加熱コイル21と電気的に絶縁される構成にな
っている。
【0029】加熱コイル21上部にはカーボン材料で形
成された導電塗膜32がマイカ製の絶縁板30、31の
間に形成されている。この導電膜32は端子33と接続
され、さらにコンデンサ34を介して商用電源電位ある
いは加熱コイル21に高周波電流を供給するインバータ
の入力する商用電源を整流した電位あるいは大地に接続
される。
【0030】電気導体27は、厚さが略1mmの材料が
アルミニウムの板により形成され、絶縁板31と天板2
8の間に設けられており、図1に示すように、外径及び
内径が加熱コイル21のものとほぼ同じの略ドーナツ状
をして、幅約6mmのスリット27aが外周から内周に
渡って設けられている。電気導体27の位置は3箇所あ
る脚部27bと保持板22により規制される。
【0031】電気導体27は中央に開口部37を設け、
上部(被加熱物29側)から見て、外側の立ち上がり部
であるフェライトコア23a〜26aの上端面は電気導
体27の外周より外側に位置し、内側の立ち上がり部で
あるフェライトコア23c〜26cの上端面は開口37
の周部より内側に位置している。サーミスタ35はホル
ダー36にはめ込まれて、天板28裏面に当接される。
絶縁体である天板28は耐熱セラミックス製で、その上
にアルミニウム製の被加熱物29が加熱コイル22に対
向する様に載置される。
【0032】以下上記実施例の動作を説明する。加熱コ
イル21には約70kHzの高周波電流が供給される。
加熱コイル21は、高周波電流が供給されると磁界を発
生するが、加熱コイル21下方では高透磁率材料である
フェライトコア23b〜26bがあり磁束がフェライト
コアに集中するので、磁界が被加熱物29と反対側に膨
らむのを防止できる。
【0033】一方、加熱コイル21の上部に出た磁界は
電気導体27に鎖交するので電気導体27に誘導電流が
誘起される。電気導体27の厚みは約1mmで浸透深さ
以上の厚みを有するので電気導体に鎖交した磁界の大部
分はほとんど電気導体を通過せず外周側または内周側に
迂回してから被加熱物29方向に導かれる。フェライト
コア23a〜26a、23c〜26cは上方の被加熱物
の方向に磁界を効率良く導く作用する。
【0034】なお、フェライトコア23a〜23c、2
4a〜24c、またはフェライトコア25a〜25cは
それぞれ、別の3つのフェライトコアを接した状態で組
み合わせて配置しているが、それぞれ略同形状となるよ
うに一体に成形しても開磁路であるので同様の効果が得
られる。
【0035】被加熱物29に誘起された誘導電流は加熱
コイル21の発生する磁界分布と、電気導体27に誘起
された電流の発生する磁界分布の重畳した磁界分布が被
加熱物29に鎖交することにより発生するものである。
このように、電気導体27が介在することにより、被加
熱物29に誘導される電流分布が変化し、さらに電気導
体27に発生する電流分布が加わるということから、加
熱コイル21の等価直流抵抗が大きくなる。
【0036】等価直列抵抗が大きくなると、同じ加熱コ
イル電流でも被加熱物29における発熱量が大きくなる
ので同一消費電力を得ようとする場合には加熱コイル電
流を小さくすることができ、それに伴い浮力も低減する
ことができる。
【0037】図3に被加熱物がアルミニウム製の鍋の場
合の消費電力と浮力の関係を、アルミニウム製の電気導
体27がある場合(Bで示す)とその電気導体がない場
合(Aで示す)について、また、図4には、消費電力と
加熱コイル電流の関係を、電気導体27がある場合(B
で示す)と電気導体がない場合(Aで示す)について測
定結果の一例をしめしている。ただし、インバータの共
振周波数は約70kHzである。
【0038】これらの測定結果によると、電気導体27
を挿入することにより、等価直流抵抗(Rs)は1.0
9Ωから2.3Ωに増加し、消費電力が2kWに出力を
設定した場合に、鍋に働いた浮力は約900gから約5
00gに低減するとともに、加熱コイル21の電流も約
40Armsから約33Armsに低減した。
【0039】また、加熱コイル21の電流の低減に伴い
インバータを駆動するパワースイッチング素子の損失、
加熱コイル21の損失も大幅に低減する(なお、鉄系の
被加熱物の場合には電気導体27を挿入することによ
り、加熱コイルの等価直列抵抗大きくするという作用は
ほとんど得られない)。
【0040】また、電気導体27を設けることで、電気
導体の損失が発生する。発明者らの実験によれば、消費
電力が2kWであったとき、前記電気導体の損失は一例
として約270Wと推定された。この時、加熱コイル2
1を含めた誘導加熱装置内部の損失は加熱コイル電流低
減の作用により約210Wと推定された。このように、
電気導体27を挿入することにより、その発熱による損
失が発生するものの、内部損失が低減することにより、
その差は約60Wと大幅な加熱効率の低下を防止するこ
とができる。
【0041】また、図2のように電気導体27を天板2
8当接させて、電気導体27の熱を、熱伝導で天板28
を介して被加熱物29に与えれば、前記の加熱効率の低
下をカバーすることが可能である。このように、電気導
体27の発熱による損失の増加は、機器全体の加熱効率
でみれば、加熱コイル21の電流が低減するので、相当
な部分が他の部分の損失低下で相殺される。
【0042】また、電気導体27には、スリット27a
を設けている。このスリット27aを設け無いほうが等
価直流抵抗(Rs)を増加する作用が大きい。しかしな
がら、この場合には、電気導体27に誘導される電流量
が多いため発熱量が極めて大きく加熱効率の低下も大き
い。スリット27aを設けることで、このスリット27
aを設けない場合より等価直流抵抗は小さくなるが、電
気導体27に誘起される加熱コイル21の電流と逆方向
の略平行な加熱コイル21の中心の周りを周回するよう
に流れる周回電流が流れないようにし、分布の異なる誘
導電流を電気導体27内に分布せしめるものである。こ
れにより、電気導体27の発熱を抑制するとともに、等
価直流抵抗を増加させる作用を生じさせるものである。
【0043】導電膜32は加熱コイル22の上部に近接
して設けられ、コンデンサ34を介して、商用電源電
位、インバータの入力電位となる電源電流整流器の出力
電位、またはアース電位に接続されるので加熱コイル2
1から使用者に漏洩するリーク電流を低減することがで
きる。
【0044】しかしながら、この導電膜32は膜圧が薄
く電気伝導率も低いので、誘導電流の発生量が極めて少
なく、加熱コイル21から発生する磁界の分布を変える
作用はほとんどないので、電気導体27のような等価直
列抵抗の増加作用、加熱コイル電流の低減作用、そして
浮力低減作用はほとんど得られない。
【0045】図5は、上記第1の実施例における電気導
体の厚みと浮力に関する傾向である。加熱コイル21か
らの磁束を遮蔽する場合に必要な厚みは浸透深さ以上必
要であり、本実施例の場合加熱コイル21に流れる電流
の周波数は70kHzであり、材質をアルミニウムとし
た場合浸透深さはδ=0.3mm程度となる。従って電
気導体27の厚み浸透深さ以上にすることにより、浮力
低減の効果を大きく得ることが可能となる。発明者らは
実験により、浸透深さよりもやや大きく約1mm程度に
すると十分な浮力低減の効果が得られることを確認して
いる。
【0046】以上のように、本実施例によれば、アルミ
ニウム製の被加熱物29を誘導加熱可能な加熱コイル2
1と被加熱物29との間に設けられた電気導体27を有
し、電気導体27は加熱コイル21に対向して被加熱物
29を配置した時の加熱コイル21の等価直列抵抗を大
きくするとともに、加熱コイル21の発生する磁界が被
加熱物29に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を
有してなるので、所定の消費電力を得ようとする場合
に、加熱コイル電流値を低減することができ、被加熱物
29に働く浮力を低減するとともに、スイッチング素子
(図示せず)や加熱コイル21に発生する損失を低減し
て冷却が容易になり、アルミニウム、銅、または黄銅な
ど高電気伝導率低透磁率の被加熱物29を加熱できる安
全かつ低価格な誘導加熱調理器を提供することができ
る。
【0047】また、電気導体27は、加熱コイル21を
スリット27a部以外のほぼ全部に渡って上部で覆うよ
うに、すなわち、電気導体27は加熱コイル21におけ
る被加熱物29側の面の一部または全部と対向し板状に
形成されてなることにより、加熱コイル21から発生す
る磁界の一部を被加熱物29に到達する前に、電気導体
27に効率良く鎖交させ、電気導体27の周囲から迂回
して被加熱物29に加熱コイル21に磁界を鎖交させる
ことになる。電気導体27と加熱コイル21との間隔
は、電気導体27と被加熱物29との間隔よりも小さ
く、電気導体27と加熱コイル21との磁気結合が良い
ので、電気導体27に鎖交する磁束量が大きくなり、電
気導体27に誘導電流が分布し加熱コイル21の等価直
列抵抗を大きくするという作用がある。
【0048】また、加熱コイル21から出て、電気導体
27を迂回した、通り抜けた、あるいは鎖交しなかった
磁界が、被加熱物29に到達することにより、被加熱物
29を誘導加熱するので、加熱コイル21の等価直列抵
抗が増加し、加熱コイル電流低減作用と被加熱物に働く
浮力低減作用を大きくすることができる。
【0049】なお、本実施例では、加熱コイル21のほ
ぼ全部と対向するように電気導体27の大きさを決めた
が、電気導体27の板の面積は大きいほど、また電気導
体27が加熱コイル21に近いほど電気導体27に加熱
コイル21の磁束が多く通過し、等価直列抵抗増加作用
を大きくすることができることから、電気導体27の表
面積は、必要とする浮力低減効果を得るように、また、
電気導体27と加熱コイル21間の距離、電気導体27
の発熱等の条件を考慮して決めれば良い。
【0050】また、電気導体27に開口37を設けて、
加熱コイル21の中央部近傍を覆わないようにしたこと
により、中央部近傍を、加熱コイル21から発生して被
加熱物29へ鎖交させる磁界の経路とするよう集中さ
せ、当該電気導体を付設することに伴う加熱効率の大幅
な低下を抑制するものである。
【0051】また、電気導体板27にスリット27aを
設けてなることにより、加熱コイル21の発生する磁界
により電気導体27に誘導される電流の向き及び大きさ
を変え、被加熱物29に作用する浮力の低減効果をある
程度保持しながら、電気導体27に発生する発熱量を低
減することができる。
【0052】すなわち電気導体27に誘導される加熱コ
イル21に流れる電流と逆方向に流れる周回電流は、ス
リット27aにより遮断し電流分布を変えることが可能
なので大電流の発生が無くなり、発熱量を低減できる。
ただ、その場合に被加熱物29への浮力低減効果がある
程度低下する。スリット27aの形状、加熱コイルが鎖
交する面積、電気導体の材質などにより、等価直列抵抗
の大きさと電気導体27の発熱量が異なるので、これら
の要素の組み合わせで最適なものを選択して、浮力の低
減効果をできるだけ大きく、電気導体27の発熱量を許
容できるようなレベルとする組み合わせを決定すれば良
い。さらに、この電気導体27は複数の電気導体に分離
されないので組み立て時等の場合における取り扱いが容
易である。
【0053】また、電気導体27は、その厚みを加熱コ
イル電流により誘導される高周波電流の浸透深さよりも
大としてなるので、電気導体27に誘導電流が十分多く
発生し、加熱コイル21からの磁界が通過せず磁界分布
を大きく変える作用が得られることにより、形状を工夫
することにより上記の等価直列抵抗を増加させる作用を
確実に得ることができるものである。
【0054】また、電気導体27はアルミニウム製であ
るので、低透磁率であり磁束がその電気導体27に吸収
されにくく(被加熱物に到達しない磁束量が多くならな
い)、かつ電気導体に誘導された電流で磁界の向きが変
更されるので、電気導体27内を通過させ被加熱物29
に鎖交させるか、または電気導体27を迂回させ被加熱
物29に鎖交させるかのいずれかの経路で、磁束を効率
的に被加熱物29に鎖交させることができ、加熱効率の
低下を抑制しながら等価直列抵抗を大きくすることがで
きる。
【0055】また、電気導体27はアルミニウム製であ
り、高電気伝導率の材料であるので加熱コイル21の磁
束が鎖交することにより、誘導電流で磁界の向きや分布
が変更される程度が大きくなり、被加熱物29における
誘導電流の分布の変化および、電気導体27における電
流の発生による、等価直列抵抗を増加させる効果を大き
くし、かつ電気導体27自身の誘導電流による発熱を抑
制することができる。
【0056】また、加熱コイル21を収納する本体と、
加熱コイル21と被加熱物29との間に位置すべく前記
本体に固定された絶縁体28とを有し、電気導体27
は、前記絶縁体28の加熱コイル21側に設けたことに
より、電気導体27を加熱コイル21に近づけて、加熱
コイル21との磁気結合を大きくして、等価直列抵抗を
大きくし易い、動作中に加熱コイル21の磁界で電気導
体27に誘導される電流の作用により電気導体27が発
熱する場合があるが、絶縁体28表面に電気導体27が
露出せず、電気導体27に直接手が触れて火傷する恐れ
が少ない、あるいは絶縁体28の表面が凸凹しないこと
から見栄えが良いなどの効果を奏する。
【0057】また、加熱コイル21下方に放射状に設け
た高透磁率の磁性体であるフェライトコアを四本備え、
これらのフェライトコアは電気導体の外周より外側に被
加熱物の方向に立ち上がる立ち上がり部を設けたことに
より、加熱コイル21から出た磁束が加熱コイル21外
側周囲に広がらないようにして効率良く被加熱物29に
磁束が鎖交するようにして加熱効率を高めるとともに、
フェライトコア23a〜26aの立ち上がり部から出る
磁束が電気導体27に突き当たらないようにして電気導
体27の発熱を抑制するものである。
【0058】また、電気導体27は中央部に開口37を
設けるとともに、加熱コイル下方に設けた高透磁率の棒
状フェライトコア23b〜26bを設け、前記フェライ
トコア23b〜26bは電気導体27の開口37周部3
7aより中央側に被加熱物29の方向に立ち上がる立ち
上がり部23c〜26cを設けたことにより、フェライ
トコアの立ち上がり部23c〜26cから出る磁束が電
気導体27に突き当たらないようにして加熱コイル21
からの磁束を効率良く被加熱物29に導き加熱効率を高
めることができる。
【0059】また、サーミスタ35に鎖交する磁束を抑
制してサーミスタ35の検知回路にノイズを誘導しにく
くすることもできる。
【0060】なお、本実施例では、加熱コイル21下方
に設けた高透磁率の棒状フェライトコア23b〜26b
の両端をフェライトコア23a〜26a、及びフェライ
トコア23c〜26cにより略垂直に立ち上げている
が、この立ち上げ角度はこれにかぎるものではない。
【0061】また、電気導体27は、被加熱物29とセ
ラミック製天板28より電気的に絶縁されているが熱的
に接続されてなるので電気導体27が発熱する場合には
その熱の一部が天板28を介して被加熱物29に伝わり
電気導体27の発熱による加熱効率の低減を抑制するこ
とができる。
【0062】(実施例2)図6は、本発明に係る実施例
2の誘導加熱装置の断面を模式的に示す図である。
【0063】図で40は電気導体、41は約70kHz
の高周波電流が供給され、高周波磁界を発生する加熱コ
イル、42は加熱コイル41下面に対向して配置され、
加熱コイル40からの高周波磁界を効率よく被加熱物4
3へ供給するための磁性体で、具体的にはフェライトを
用いている。被加熱物43は、本実施例の場合、高電気
伝導率(高導電率)かつ低透磁率のアルミニウムまたは
銅としている。
【0064】電気導体40の形状を図7に示す。電気導
体40は、略円盤状で厚み約1mmのアルミニウム板を
ベースとし、さらに放射状に切り欠き40aを4箇所設
けている。このように電気導体40に切り欠き40aを
設けることにより、加熱コイル40の電流の流れに対し
て電気伝導率が不連続となるようにして、電気導体40
に加熱コイル41に周回するように流れる電流(図7の
破線Aで模式的に示す)の流れの向きと異なる(平行で
ない)方向に誘導電流が流れるようにしている。
【0065】加熱コイル41に高周波電流が供給された
時の電気導体40に誘導される大きな電流の流れを図7
の実線矢印Bに模式的に示す。図に示すように放射状切
り欠き40a部分に電流が誘導されないため、加熱コイ
ル41から発生する磁界が透過する。誘導された渦電流
の電流密度の大きい部分はこの部分を回避し、クローバ
ー状に蛇行したような分布(図7の実線Bで模式的に示
す)となる。
【0066】一方、電気導体40により、加熱コイル4
1の磁界は遮蔽され、迂回して被加熱物43に到達し、
切り欠き40aのところでは、加熱コイル41の磁界は
通過して被加熱物43に到達する。したがって、従来被
加熱物43において、加熱コイル41に流れる電流とほ
ぼ平行な向きに周回するように分布して発生し、大きな
反発力となっていた渦電流の分布と異なるものとなる。
【0067】上記のように、電気導体40に加熱コイル
41の磁界を照射し、一部の磁界を迂回させて被加熱物
43に鎖交させ、被加熱物43において加熱コイル41
電流に対向した誘導電流分布が発生することを抑制し
て、等価直流抵抗を増加させるとともに、電気導体40
においても、切り欠き40aを設けることにより発熱を
防止することができる。
【0068】切り欠き40aのある電気導体40を設け
た場合の等価直流抵抗の大きくなる度合いは、切り欠き
40aのない電気導体40を設けた場合に比して少なく
なるが、電気導体40がない場合に対する増加効果自体
は維持される。従って、同一消費電力を得る場合におい
て、加熱コイル41に流れる電流が減少して被加熱物4
3に作用する浮力が低減できるとともに、電気導体40
の発熱を抑制することができるものである。
【0069】以上のように、本実施例によれば、電気導
体40も誘導加熱され発熱するが、電気導体40の固有
抵抗や切り欠きの形状を最適化することにより、等価直
列抵抗を大きくし、電気導体40の発熱を低減しつつ、
被加熱物43への入力電力を大とすることが可能であ
る。
【0070】また、電気導体40を挿入した場合、加熱
コイル41の等価直列抵抗が上昇するため、同じ入力電
力を得る場合、加熱コイル41に流す電流が少なくする
こともできるので、加熱コイル41の損失が低減し、さ
らに図示しない高周波電流を供給するインバータ回路の
損失も低減することが可能となる。発明者らの測定によ
れば、被加熱物43が、φ240mmのアルミニウム鍋
とし、加熱コイル41の外径φ180mm、内径φ50
mm、加熱コイル41と被加熱物43との距離8mmの
条件において、等価直列抵抗は電気導体40がない場合
約1.0Ω程度、電気導体40がある場合、1.7Ω程
度であった。これにより加熱コイル41に流れる電流は
1600W入力で36Armsから29Armsに低減
できた。本実施例の場合加熱コイル41の高周波抵抗は
70kHz、常温0.16Ωであるので、損失は常温で
約207Wから135Wに低減したものと推定できる。
【0071】また、電気導体の切り欠き40aの形状を
放射状に電気伝導率が低くなるようなものとしたが、こ
の形状に限定されるものでなく、加熱コイルに流れる電
流に誘起して発生し周回するように流れる渦電流の分布
を阻害する作用のある形状であれば同様の効果が得られ
るものである。
【0072】また、被加熱物43がアルミニウムや銅の
単一材料で形成されず、一層目が例えば0.1mm厚み
の非磁性ステンレス、2層目が1mm厚みのアルミニウ
ムといった多層構造となっている場合においても、1層
目の非磁性ステンレスは薄いために実質2層目のアルミ
ニウムを加熱することと等価となるので、上記のように
電気導体40は同様な効果を奏することができる。
【0073】(実施例3)図8は、本発明に係る実施例
3の電気導体40と加熱コイル41を示す平面図であ
る。断面図は図6と同様である。図8で電気導体40は
厚み約1mm、幅約10mm、長さ約70mmのアルミ
ニウム板で形成され、これらを8枚、間隔を設けて放射
状に配置している。本配置により、電気導体40がない
部分の電気伝導率は略ゼロとなるため、加熱コイル41
の電流が流れる方向に電気伝導率が不連続な状態を簡単
に実現できるものである。
【0074】図8において電気導体(アルミニウム板)
40の存在する部分では、加熱コイル41から発生する
磁界が遮蔽され一部は電気導体40に吸収され電気導体
40に電流が誘導され、他は迂回して被加熱物43(図
6)に鎖交する。
【0075】以上のように本実施例においては複数の電
気導体40を配置することにより、電気導体40に誘導
電流を発生させるとともに、被加熱物43に流れる渦電
流(誘導電流)の向きや密度分布を加熱コイル41に流
れる電流と異なる形にすることが可能となる。この結
果、被加熱物43に鎖交する磁界分布を変更し加熱コイ
ルの等価直列抵抗大きくすることができるとともに、電
気導体40の温度上昇を抑制することができる。
【0076】尚、本実施例では放射状に電気導体40を
配置する構成としたが、これに限定されるものでなく例
えば図9に示すような電気導体である四角形状の板44
を4つ加熱コイル45上方に並べる構成などとしてもよ
い。
【0077】また、図8で電気導体40の本数を8本と
したが、本数を少なくすれば浮力低減の効果が小とな
り、多くすれば浮力低減の効果が大となる傾向にある。
また本数を増やすと電気導体のトータルの損失が大とな
るため、最適な本数に設計する必要があり、本実施例の
場合6〜8本程度が効果的である。材質はアルミニウム
としたがこれに限定されるものでなく、例えば銅、黄銅
といった材料でも同様の効果が得られる。
【0078】(実施例4)図10は、本発明を示す第4
の実施例における誘導加熱装置の要部断面図である。図
で電気導体49は絶縁体53と被加熱物52の間に設け
られている。絶縁体53は誘導加熱調理器であれば、例
えば、加熱コイル50、フェライトコア51、あるいは
これらを駆動するインバータ(図示せず)等を収納して
いる機器本体の上部に固定され、被加熱物52を加熱す
るために載置するために設けるセラミック製の天板に対
応する。
【0079】本実施例においては、電気導体49は任意
に取り外しが可能になるため、被加熱物52が、例えば
(浮力によるずれ、浮きの問題が発生しない程度に)充
分質量が大きい場合や、原理上浮力が問題とならない鉄
などの材料の時に電気導体49の設置が不要となり、か
つ電気導体49の発熱も発生しない。また電気導体49
と被加熱物52を接触させることにより、電気導体49
の発熱を被加熱物52へ効果的に伝達することが可能と
なり、この点においても効率よい加熱が可能となるもの
である。
【0080】(実施例5)図11は、本発明を示す第5
の実施例における誘導加熱装置の断面図である。図で天
板28上に載置される電気導体54と被加熱物55は機
械的に接続され、一体となっている。57はフェライト
コアである。
【0081】以上より本実施例においては使用時に電気
導体54と被加熱物55を別々に天板28上に載置する
必要がなく、より使い勝手の向上した誘導加熱装置を実
現することができる。尚電気導体54と被加熱物55は
任意に取り付け、取り外しできる構成としてもよい。
【0082】また、その時電気導体54を取り外した状
態で加熱して浮かないような重量に電気導体54及びそ
れに付設したものの合計重量を浮力より重くしておけ
ば、加熱しようとした時に電気導体54が被加熱物55
を押し上げる力が働かず被加熱物54がさらに浮きにく
くなり安全である。
【0083】(実施例6)図12は、本発明に係る実施
例6における誘導加熱装置の断面図である。図で58は
被加熱物59の温度を間接的に検出する温度検出手段
で、具体的にはサーミスタを用いている。
【0084】温度検出手段59は、絶縁体61と電気導
体60を介して被加熱物59の温度を検出するので、電
気導体60が集熱板の役割を果たすため、例えば被加熱
物59の底面が反っていた場合においても、応答性良く
被加熱物59の温度上昇を検出することができる。ま
た、電気導体60が発熱していても精度良く検知できる
ので、電気導体60が高温である旨の表示を精度良く行
うことができる。
【0085】以上のように、本実施例によれば、絶縁体
61の加熱コイル62側に温度検出手段を有し、電気導
体60は絶縁体60を介して温度検出手段と熱的に接続
されてなることにより、被加熱物59の底が平坦でない
場合にも電気導体60が被加熱物59の裏面の熱を効率
よく集めて温度検出手段に伝えることができるので、加
熱コイル電流低減効果及び浮力低減効果を奏するととも
に被加熱物59の温度制御性能、あるいは火傷防止表示
機能が良好となるものである。
【0086】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、アルミ
ニウムや銅など低透磁率かつ高電気伝導率の材質の被加
熱物を加熱可能で、加熱時における加熱コイル等の内部
部品損失及び被加熱物に働く浮力の低減が可能な誘導加
熱装置を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における誘導加熱装置の要部斜視図
【図2】同誘導加熱装置の要部断面図
【図3】同誘導加熱装置の加熱コイルの等価直列抵抗と
浮力の相関を示す図
【図4】同誘導加熱装置の加熱コイルの等価直列抵抗と
加熱コイル電流値の相関を示す図
【図5】同誘導加熱装置の電気導体の厚みと被加熱体に
作用する浮力の相関を示す図
【図6】実施例2における誘導加熱装置の要部断面図
【図7】同誘導加熱装置の電気導体に流れる電流を示す
【図8】実施例3における誘導加熱装置の電気導体を示
す要部平面図
【図9】同誘導加熱装置の他の電気導体を示す要部平面
【図10】本発明の第4の実施例における誘導加熱装置
の誘導加熱装置の要部断面図
【図11】本発明の第5の実施例における誘導加熱装置
の要部断面図
【図12】実施例6における誘導加熱装置の要部断面図
【図13】従来の誘導加熱装置の要部断面図
【図14】従来の誘導加熱装置の入力電力と浮力の相関
【図15】従来の誘導加熱装置の加熱コイルと被加熱物
に流れる電流を示す図
【符号の説明】 29、43、52、55、59 被加熱物 21、41、45、50、56、62 加熱コイル 27、40、44、46、49、54、60 電気導体 37 開口 28、53、61 天板(絶縁体) 58 温度検知手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮内 貴宏 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 藤井 裕二 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 片岡 章 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 相原 勝行 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 3K051 AA07 AB06 AD03 AD09 CD43

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム若しくは銅またはこれらと
    略同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からなる
    被加熱物を誘導加熱可能な加熱コイルと、前記加熱コイ
    ルと前記被加熱物との間に設けられた電気導体とを備
    え、前記電気導体は前記加熱コイルに対向して前記被加
    熱物を配置した時の前記加熱コイルの等価直列抵抗を大
    きくするとともに、前記加熱コイルの発生する磁界が前
    記被加熱物に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を
    有し、かつ前記電気導体は前記被加熱物と熱的に接続さ
    れる誘導加熱装置。
  2. 【請求項2】 アルミニウム若しくは銅またはこれらと
    略同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からなる
    被加熱物を誘導加熱可能な加熱コイルと、前記加熱コイ
    ルと前記被加熱物との間に設けられた電気導体とを備
    え、前記電気導体は前記加熱コイルに対向して前記被加
    熱物を配置した時の前記加熱コイルの等価直列抵抗を大
    きくするとともに、前記加熱コイルの発生する磁界が前
    記被加熱物に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を
    有し、前記電気導体は前記被加熱物に対して熱伝達が成
    し得る状態に設置されたことを特徴とする誘導加熱装
    置。
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