JP3861731B2 - 誘導加熱装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般家庭やオフィス、レストラン、工場などで使用される誘導加熱装置に関するものであり、さらに詳しくはアルミニウムや銅といった低透磁率かつ高電気伝導率なる特性の材料でできた被加熱物を加熱する誘導加熱調理器、誘導加熱式湯沸かし器、誘導加熱式アイロン、またはその他の誘導加熱式加熱装置等で、特にアルミニウムを加熱可能とする誘導加熱装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下従来の誘導加熱装置として、誘導加熱コイルから高周波磁界が発生し、電磁誘導による渦電流で鍋等の被加熱物が加熱される誘導加熱調理器について図9を用いて説明する。
【0003】
図9において1は鍋形状をした被加熱物である。2は加熱コイルで、図示しない高周波インバータから高周波電流を供給され高周波磁界を発生し、被加熱物1に磁界を照射する。3はフェライトなどの高透磁率の磁性体で、加熱コイル2からの高周波磁界を効率よく被加熱物1に伝達するために設けている。4は絶縁体で、具体的にはセラミック材の厚み4mmなるプレートであり、被加熱物1が載置される。また、絶縁体4の裏面には、コンデンサ7を介してアースあるいは整流器の入力または出力電位に接続されたカーボン製の導電性塗膜5が印刷され、さらに、加熱コイル2の周部にはリング状に加工された磁気シールドリング6が設けられている。
【0004】
この構成において、加熱コイル2から高周波磁界が発生すると、底部に誘起した電磁誘導による渦電流のために被加熱物1が加熱される。また、導電性塗膜5の静電シールド作用により、加熱コイル2に発生する高周波高電圧と浮游容量によって加熱コイル2から人体を介して大地へと漏洩する漏れ電流が抑制される。また、磁気シールドリング6には、加熱コイル2から発生する高周波磁界により、誘導電流が発生しその誘導電流が反磁界を発生し結果的に加熱コイル2周囲に漏洩する磁界を抑制することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の構成において、被加熱物1の底面には電流が誘起され、この電流は加熱コイル電流との相互作用で被加熱物1の底面に加熱コイル2から遠ざかろうとする反発力を生じる。一方被加熱物1が鉄などの高透磁率材料で、抵抗率がある程度大きい鉄製である場合には、所定の出力を得ようとする場合に、誘導される電流値が少なくてよく上記の反発力が小さいと同時に、磁束が被加熱物1に吸収されるので吸引力が働き、被加熱物1が浮き上がったりずれたりする恐れはなかった。
【0006】
一方、特に被加熱物1がアルミニウムや銅といった低透磁率かつ高電気伝導率なる材料製である場合には、所定の加熱出力を得るために加熱コイル2に流す電流を大きくして被加熱物1に電流を多く流す必要があり、反発力が大きくなると同時に、被加熱物1が鉄などの高透磁率材料である場合のような吸引力が働かない。従って、加熱コイル2の磁界と誘導電流の作用により被加熱物1に加熱コイル2から遠ざかる方向に浮力が強く働き、被加熱物1の重量が軽い場合には、被加熱物1が浮力によりずれたり、被加熱物1の戴置面からの浮きが生じるおそれがある。
【0007】
図10にこの時の加熱コイル2の電流の流れと被加熱物1に流れる渦電流のマクロ的な流れを示す。図10(ア)は加熱コイル2に流れる電流の向きを被加熱物1側からみた図である。同図(イ)は、被加熱物1に流れる渦電流を加熱コイル2と逆側((ア)と同方向側)から見た図である。図に示すように被加熱物1に流れる渦電流は加熱コイル2に流れる電流と逆向きかつ略同形状のループ状で流れる。従って同じ断面積(略加熱コイル2の面積)の永久磁石2つが異極(例えばN極とN極)で存在することとほぼ等価になって、大きな反発力となるものである。
【0008】
この現象は、被加熱物1の材料がアルミニウムや銅である場合に顕著である。すなわち同じ低透磁率材料であっても、非磁性SUSのようなアルミニウムや銅よりも電気伝導率が低い材料の場合は、加熱コイル2に流す電流が少なくても十分な発熱が得られるので、被加熱物1に誘導される電流が発生する反発磁界が小となるものである。
【0009】
図11に、アルミニウムで作られた被加熱物1を加熱時の入力電力と浮力の相関の一例を示す。図11のグラフにおいて、横軸は入力電力で、縦軸は浮力で示している。この図で分かるように、入力電力の増加に伴い、浮力も増加し、その浮力が被加熱物1の重量を超えると、被加熱物1のずれ、浮き等が生じることになる。
【0010】
こういった背景から昨今、特開昭61−128492号公報や、特開昭62−276787号公報で開示されているような重量センサを用いて被加熱物の移動を検出する技術、特開昭61−71582号公報で開示されているような磁気センサを用いて被加熱物1の位置を検出する技術、さらに特開平4−765633号公報で開示されているような共振周波数検出手段を用いて被加熱物1が浮力により移動したことを検出する技術等が開示されている。
【0011】
しかしながら、いずれの技術も被加熱物1に所定以上の浮力が作用したこと、あるいは被加熱物1が浮いたあるいは移動したことを検出した場合に、それ以上浮かないように、あるいは移動しないように被加熱物1を加熱するための加熱電力を抑制したりあるいは加熱動作そのものを停止するものであり、このような場合には、十分な火力が得られず、更には調理動作の継続が中断されるという状況に陥ってしまうという課題があった。
【0012】
例えば質量300gのアルミニウム製の雪平鍋で、200ccの水を加熱する場合、図11より約850W以上の入力電力で浮力が鍋と調理物(水)の合計質量を上回り、鍋が浮き上がってこの電力以上の入力電力で加熱することが困難となる。従って上記従来の方式においては、例えばアルミ負荷鍋と検知した場合に鍋の浮き上がる入力電力以下、例えば800Wに入力電力を抑制することが鍋浮きを生じない様にするための対策手段として想定できるが、発明者らの実験によれば、この様な入力電力で加熱しても上記の水を沸騰状態にすることは困難であり、アルミニウム製の鍋を加熱できる誘導加熱調理器としては加熱性能が極めて低いものとなる。また、入力1000W程度であれば200ccの水は沸騰状態とすることは可能であるが加熱速度は遅いものとなる。
【0013】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するもので、簡単な構成で被加熱物に働く浮力を低減し、被加熱物が軽量であっても十分な入力電力を確保できる、使い勝手の良い誘導加熱調理器、あるいはアルミニウム製の負荷を安定的に加熱することのできる誘導加熱装置を実現することを主たる目的とし、さらには加熱コイル2に高周波電流を供給する高周波回路のスイッチング素子の損失を同時に低減するとともに、浮力を低減する簡単な構成において発熱および損失を低減することで機器内部の温度上昇低減および被加熱物の加熱効率を高めることを目的としたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱装置は、アルミニウム若しくは銅又はこれらと略同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からなる被加熱物と、加熱コイルとの間に電気導体を設け、この電気導体は、加熱コイルの等価直列抵抗(被加熱物及び電気導体を加熱状態と同様の位置配置で、加熱周波数近傍の周波数を使用して測定した加熱コイルの入力インピーダンスにおける等価直列抵抗(以下単に加熱コイルの等価直列抵抗と呼ぶ))を前記電気導体がない時の前記加熱コイルの等価直列抵抗よりも大きくするものである。
【0015】
このような電気導体は、同一出力を得る場合の加熱コイルに流れる電流を低減して、加熱コイルの発生する磁界により前記被加熱鍋に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を有する。この結果アルミニウム若しくは銅又はこれらと略同等以上の電気伝導率を有しかつ低透磁率材料からなる被加熱物を加熱した時に浮き上がったりずれたりするのを防止するとともに、加熱コイルに高周波電流を供給するスイッチング素子や共振コンデンサ等の部品の損失を低減することができる。
【0016】
また、この電気導体の放射率を高める処理を施すことによって、電気導体の発熱および損失を低減することができる。この結果、機器内部の温度上昇を低減するとともに被加熱物の加熱効率を高めることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
請求項1に記載の発明は、本発明の誘導加熱装置は、アルミニウム若しくは銅またはこれらと略同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からなる被加熱物を誘導加熱可能な加熱コイルと、前記加熱コイルと前記被加熱物との間に設けられた電気導体とを備え、前記電気導体は前記加熱コイルに対向して前記被加熱物を配置した時の前記加熱コイルの等価直列抵抗を前記電気導体がない時の前記加熱コイルの等価直列抵抗よりも大きくするとともに、前記加熱コイルの発生する磁界により前記被加熱物に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を有してなることにより、加熱コイルから発生する磁界は電気導体の影響を受けて向き及び強度分布が変わる。
【0018】
一方、電気導体がない場合には、加熱コイルから発生する高周波磁界は、加熱コイルから発生した磁界を相殺する様に被加熱物に誘導電流が誘起する。この結果、加熱コイル電流と方向が逆で平行な誘導電流が高電気伝導率の被加熱体に誘導され、その電流と加熱コイルから放射される磁界との相互作用により、被加熱体に浮力が発生する。
【0019】
しかしながら、当該電気導体が存在することにより、加熱コイルから発生する磁界は、電気導体と被加熱物に鎖交するため、両者に誘導電流を発生することになる。すなわち、電気導体に誘導された誘導電流の発生する磁界と被加熱物に誘導された電流の発生する磁界の重畳磁界が、加熱コイルの発生する磁界の変化を妨げるように電気導体及び被加熱物に誘導電流が流れることになる。
【0020】
つまり、被加熱物に誘導される電流の分布が、電気導体に誘導電流が発生することにより変わることになる。この電流分布の変化で、加熱コイルの等価直列抵抗が大きくなることにより、同一出力を得る場合の加熱コイルに流す電流値を小さくすることができ、被加熱物に作用する浮力が低減するとともに、電気導体が被加熱物に働くべき浮力の一部を分担することで被加熱物に作用する浮力が低減できることになるわけである。併せて、加熱コイル、加熱コイルを駆動する共振電流を発生するインバータに使用されるスイッチング素子、及び共振コンデンサ等の高周波部品のスイッチング損失を低減することができるという作用をも有するものである。
【0021】
ここで、電気導体は被加熱物に働くべき浮力の一部を分担することによって発熱および損失を生じるものであるが、この電気導体の放射率を高めることによって、自身の発熱を放射して温度低減するとともに、放射伝熱によって被加熱物の加熱効率を高めるものである。
【0022】
ここで、放射率(放射率とは、ある一定の温度のもとにおいて、物体が放射する放射能のうち、完全黒体が出す放射能を最大限ととしたときの比で表したものである。)を高める方法としては、特に限定されるものではないが、電気導体自体を放射率の高い材料で構成することはいうまでもなく、他に例えば物理的な処理として塗装、印刷、接着、溶着、溶射、溶接、接合等によって放射率を高める方法や、化学的な処理にて電気導体に用いる基材自体を酸化あるいは腐食等を施すことによって放射率を高める方法等がある。
【0023】
請求項2に記載の発明は、特に、電気導体は加熱コイル側、あるいは被加熱物側のいずれか一方に放射率を高める処理を施してなることにより、片側は反射面、もう一方は放射面となり、他からの熱を受けたくない側と熱を放射したい側を限定することができるものである。特にアルミニウムは反射率が高いことから一般的に反射板として使用されることが多く、本発明に適する材料である。同時に、アルミニウムの場合は陽極酸化(アルマイト処理)によって放射率を高めることが容易であり本発明には最適と言える。
【0024】
請求項3に記載の発明は、特に、電気導体は物理的な処理によって放射率を高めてなるものであり、例えば塗装、印刷、接着、溶着、溶射等によるものである。この方法は、基材に用いる電気導体は一定で各種方法の取捨選択が自由であるという利点と、比較的安価において処理が可能であり量産性が高い。
【0025】
請求項4に記載の発明は、特に、電気導体は化学的な処理によって放射率を高めてなるものであり、例えば基材自体を酸化あるいは腐食等を施すことによって放射率を高めるものである。この方法は、基材自体に処理するため機械的な強度が高いとともに、物理的な処理のように付着物を伴わないため層間伝熱による損失が少なく放熱効率が高い。
【0026】
【実施例】
以下本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例における誘導加熱装置の一実施例である誘導加熱調理器の加熱コイル21及びその周辺の構成を示す斜視図であり、図2は誘導加熱装置本体(図示せず)に収納された加熱コイル21と、前記本体上部に固定された天板28と、前記天板28に載置される被加熱物29を示す断面図である。
【0028】
図1及び図2において、加熱コイル21は素線を束ねた撚り線を2層以上にして平板状に巻回され、保持板22上部に載置される。保持板22は耐熱樹脂製で4本の略直方体をした棒形状の強磁性体であるフェライトコア23b〜26bを加熱コイル21の下部に位置し、加熱コイル21の下面に略平行に、そしてそれらと一体的に成形されている。また、フェライトコア23b〜26bの両端にはフェライトコア23a〜26aとフェライトコア23c〜26cが接して設けられる。このためフェライトコアは全体として断面が被加熱物29に向けて開いたコの字状に形成される。保持板22はフェライトコアの表面を覆うように(部分的に冷却のため覆っていない)成形され加熱コイル21と電気的に絶縁される構成になっている。
【0029】
加熱コイル21上部にはカーボン材料で形成された導電塗膜32がマイカ製の絶縁板30、31の間に形成されている。この導電膜32は端子33と接続され、さらにコンデンサ34を介して商用電源電位あるいは加熱コイル21に高周波電流を供給するインバータの入力する商用電源を整流した電位あるいは大地に接続される。
【0030】
電気導体27は、厚さが略1mmの材料がアルミニウムの板により形成され、マイカ製の絶縁板31と天板28の間に設けられており、図1に示すように、外径及び内径が加熱コイル21のものとほぼ同じの略ドーナツ状をして、幅約6mmのスリット27aが外周から内周に渡って設けられている。電気導体27の位置は3箇所ある脚部27bと保持板22により規制される。
【0031】
電気導体27は中央に開口部37を設け、上部(被加熱物29側)から見て、外側の立ち上がり部であるフェライトコア23a〜26aの上端面は電気導体27の外周より外側に位置し、内側の立ち上がり部であるフェライトコア23c〜26cの上端面は開口37の周部より内側に位置している。サーミスタ35はホルダー36にはめ込まれて、天板28裏面に当接される。絶縁体である天板28は耐熱セラミックス製で、その上にアルミニウム製の被加熱物29が加熱コイル22に対向する様に載置される。
【0032】
図3に電気導体として一般的なものの基材自体の放射率を示すとともに、図4に放射率を高めた場合の一例を示すものである。
【0033】
ここで、電気導体27は、放射率を高めたものであり、放射率を高める方法としては、特に限定されるものではないが、電気導体27自体を放射率の高い材料で構成することはいうまでもないが、図3に明らかなように電気導体27の一般的な放射率は低いため、例えば物理的な処理として塗装、印刷、接着、溶着、溶射、溶接、接合等によって放射率を高める方法があり、具体的にはフッ素やシリコーンあるいはアクリル等の黒色塗装あるいはシルク印刷やパット印刷による黒色化あるいはメッキ処理やゴムによるコート処理あるいは粉体溶射、クラッド材やロー付けあるいはブラスト処理等がある。また、化学的な処理として電気導体27に用いる基材自体を酸化あるいは腐食等を施すことによって放射率を高める方法があり、アルミニウムの陽極酸化(アルマイト処理)や電解着色あるいは鋼の酸化メッキ処理や銅のエッチング処理等がある。
【0034】
以下上記実施例の動作および作用について説明する。加熱コイル21には約70kHzの高周波電流が供給される。加熱コイル21は、高周波電流が供給されると磁界を発生するが、加熱コイル21下方では高透磁率材料であるフェライトコア23b〜26bがあり磁束がフェライトコアに集中するので、磁界が被加熱物29と反対側に膨らむのを防止できる。一方加熱コイル21の上部に出た磁界は電気導体27に鎖交するので電気導体27に誘導電流が誘起される。電気導体27の厚みは約1mmで浸透深さ以上の厚みを有するので電気導体に鎖交した磁界の大部分はほとんど電気導体を通過せず外周側または内周側に迂回してから被加熱物29方向に導かれる。フェライトコア23a〜26a、23c〜26cは上方の被加熱物の方向に磁界を効率良く導く作用する。
【0035】
なお、フェライトコア23a〜23c、24a〜24c、またはフェライトコア25a〜25cはそれぞれ、別の3つのフェライトコアを接した状態で組み合わせて配置しているが、それぞれ略同形状となるように一体に成形しても開磁路であるので同様の効果が得られる。
【0036】
被加熱物29に誘起された誘導電流は加熱コイル21の発生する磁界分布と、電気導体27に誘起された電流の発生する磁界分布の重畳した磁界分布が被加熱物29に鎖交することにより発生するものである。このように、電気導体27が介在することにより、被加熱物29に誘導される電流分布が変化し、さらに電気導体27に発生する電流分布が加わるということから、加熱コイル21の等価直流抵抗が大きくなる。
【0037】
等価直列抵抗が大きくなると、同じ加熱コイル電流でも被加熱物29における発熱量が大きくなるので同一消費電力を得ようとする場合には加熱コイル電流を小さくすることができ、それに伴い浮力も低減することができる。
【0038】
図5に被加熱物がアルミニウム製の鍋の場合における消費電力と浮力の関係を、アルミニウム製の電気導体27がある場合(Bで示す)とその電気導体がない場合(Aで示す)について、また、図6には、消費電力と加熱コイル電流の関係を、電気導体27がある場合(Bで示す)と電気導体がない場合(Aで示す)について測定結果の一例をしめしている。ただし、インバータの共振周波数は約70kHzである。
【0039】
これらの測定結果によると、電気導体27を挿入することにより、等価直流抵抗(Rs)は1.09Ωから2.3Ωに増加し、消費電力が2kWに出力を設定した場合に、被加熱物29に働いた浮力は約900gから約500gに低減するとともに、加熱コイル21の電流も約40Armsから約33Armsに低減した。また、加熱コイル21の電流の低減に伴いインバータを駆動するパワースイッチング素子の損失、加熱コイル21の損失も大幅に低減する。なお、鉄系の被加熱物29の場合には電気導体27を挿入することにより、加熱コイルの等価直列抵抗大きくするという作用はほとんど得られない。
【0040】
また、電気導体27を設けることで、電気導体27の損失が発生する。発明者らの実験によれば、消費電力が2kWであったとき、前記電気導体27の損失は一例として約270Wと推定された。この時、加熱コイル21を含めた誘導加熱装置内部の損失は加熱コイル電流の低減作用により約210Wと推定された。このように、電気導体27を挿入することにより、その発熱による損失が発生するものの、内部損失が低減することにより、その差は約60Wと大幅な加熱効率の低下を防止することができる。
【0041】
また、図2のように電気導体27を天板28に当接させて、電気導体27の熱を、熱伝導で天板28を介して被加熱物29に与えれば、前記の加熱効率の低下をカバーすることが可能である。このように、電気導体27の発熱による損失の増加は、機器全体の加熱効率でみれば、加熱コイル21の電流が低減するので、相当な部分が他の部分の損失低下で相殺される。
【0042】
また、電気導体27には、スリット27aを設けている。このスリット27aを設けないほうが等価直流抵抗(Rs)を増加する作用が大きい。しかしながら、この場合には、電気導体27に誘導される電流量が多いため発熱量が極めて大きく加熱効率の低下も大きい。スリット27aを設けることで、このスリット27aを設けない場合より等価直流抵抗は小さくなるが、電気導体27に誘起される加熱コイル21の電流と逆方向の略平行な加熱コイル21の中心の周りを周回するように流れる周回電流が流れないようにし、分布の異なる誘導電流を電気導体27内に分布せしめるものである。これにより、電気導体27の発熱を抑制するとともに、等価直流抵抗を増加させる作用を生じさせるものである。
【0043】
導電膜32は加熱コイル22の上部に近接して設けられ、コンデンサ34を介して、商用電源電位、インバータの入力電位となる電源電流整流器の出力電位、またはアース電位に接続されるので加熱コイル21から使用者に漏洩するリーク電流を低減することができる。しかしながら、この導電膜32は膜圧が薄く電気伝導率も低いので、誘導電流の発生量が極めて少なく、加熱コイル21から発生する磁界の分布を変える作用はほとんどないので、電気導体27のような等価直列抵抗の増加作用、加熱コイル電流の低減作用、そして浮力低減作用はほとんど得られない。
【0044】
また、ここで図7に電気導体27に放射率を高める処理を施したときの電気導体27の温度上昇について、基材はアルミニウムにて黒色陽極酸化処理(放射率0.90)を施したときと施してないときの測定結果を一例として示す。また、図8に電気導体27の加熱コイル21側を反射面(放射率0.04)、被加熱物29側を放射面として、基材はアルミニウムにて被加熱物29側のみ黒色陽極酸化処理を施したときの加熱コイル21と被加熱物29(水負荷時)の底面の温度上昇並びに被加熱物29の加熱効率の測定結果を一例として示す。ここで、被加熱物29はアルミニウム製とし、インバータの共振周波数は約70kHz、消費電力は2kWである。
【0045】
これらの測定結果によると、アルミニウムに黒色陽極酸化処理を施すことによって、自身の発熱は61K低減することになり、ワットに換算すると約33Wの低減効果が得られるものである。この結果、機器の内部温度上昇は低減するとともに加熱効率にすると約1.7%の改善効果が得られるものである。
【0046】
また、加熱コイル21側を反射面にし、被加熱物29側を放射面として黒色陽極酸化処理を施すことによって、加熱コイル21の温度上昇を低減するとともに被加熱物29への放射伝熱効果によって、加熱効率で約4.6%の改善効果が得られるものである。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、アルミニウムや銅など低透磁率かつ高電気伝導率の材質の被加熱物を加熱可能で、加熱時における加熱コイル等の内部部品損失及び被加熱物に働く浮力の低減および浮力を低減する簡単な構成における発熱および損失を低減することで、機器内部の温度上昇低減および被加熱物の加熱効率を高めることが可能な誘導加熱装置を実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例における誘導加熱装置の要部斜視図
【図2】 本発明の第1の実施例における誘導加熱装置の要部断面図
【図3】 本発明の第1の実施例における誘導加熱装置の電気導体として一般的な放射率を示す図
【図4】 本発明の第1実施例における誘導加熱装置の電気導体に放射率を高める処置を施したときの放射率を示す図
【図5】 本発明の第1の実施例における誘導加熱装置の加熱コイルの等価直列抵抗と浮力の相関を示す図
【図6】 本発明の第1の実施例における誘導加熱装置の加熱コイルの等価直列抵抗と加熱コイル電流値の相関を示す図
【図7】 本発明の第1実施例における誘導加熱装置の電気導体に放射率を高める処置を施したときの測定結果を示す図
【図8】 本発明の第1実施例における誘導加熱装置の電気導体に被加熱物側のみ放射率を高める処置を施したときの測定結果を示す図
【図9】 従来の誘導加熱装置の要部断面図
【図10】 (ア)従来の誘導加熱装置における加熱コイルに流れる電流の向きを被加熱物側から見た図
(イ)同、誘導加熱装置における被加熱物に流れる渦電流を加熱コイルと逆側から見た図
【図11】 従来の誘導加熱装置の入力電力と浮力の相関図
【符号の説明】
29 被加熱物
21 加熱コイル
27 電気導体
37 開口
28 天板(絶縁体)
Claims (4)
- アルミニウム若しくは銅またはこれらと略同等以上の電気伝導率を有する低透磁率材料からなる被加熱物を誘導加熱可能な加熱コイルと、前記加熱コイルと前記被加熱物との間に設けられた電気導体とを備え、前記電気導体は前記加熱コイルに対向して前記被加熱物を配置した時の前記加熱コイルの等価直列抵抗を前記電気導体がない時の前記加熱コイルの等価直列抵抗よりも大きくするとともに、前記加熱コイルの発生する磁界により前記被加熱物に対して働く浮力を低減する浮力低減機能を有し、前記電気導体の放射率を高める処理を施した誘導加熱装置。
- 電気導体は加熱コイル側あるいは、被加熱物側のいずれか一方に放射率を高める処理を施してなる請求項1に記載の誘導加熱装置。
- 電気導体は物理的な処理によって放射率を高めてなる請求項1ないし2に記載の誘導加熱装置。
- 電気導体は化学的な処理によって放射率を高めてなる請求項1ないし2に記載の誘導加熱装置。
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