JP5854711B2 - 誘導加熱調理器 - Google Patents
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Description
しかしながら、このような従来の誘導加熱調理器においては、加熱動作中における鍋の置き換えや、加熱動作中に鍋温度が上昇することによる鍋の特性変化など、加熱動作開始後における負荷(鍋)の状態を正しく判断することが困難であった。このため、天板上に載置された鍋に適さない制御モードによってインバータ回路の駆動を継続してしまうことがあった。このような状態が継続すると、インバータ回路のスイッチング素子の損失増大、過温度上昇、並びに熱破壊が生じる可能性があった。
この特許文献1に記載の誘導加熱調理器は、加熱動作中における商用電源からの入力電流または加熱コイル電流の検出値から、負荷(鍋)の特性変化を検知している。
しかしながら、例えばアルミ鍋の底面に磁性ステンレスを貼り付けた鍋(貼り付け鍋)のように、磁性鍋と同等の抵抗値を示すものについては、判別が困難であった。ここで例示した貼り付け鍋は、磁性鍋と比較してインダクタンスが小さく、共振周波数が高いという特性を有する。このため、この貼り付け鍋を磁性鍋と同条件で駆動すると、ターンオン時に大きな電流が流れてスイッチング損失が大きい動作状態となることから、インバータ回路を構成するスイッチング素子の過温度上昇を引き起こすという課題があった。
図1は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の上面図である。
鍋を載置する耐熱性のトッププレート1は、右加熱口2、左加熱口3及び中央加熱口4の合計3口の加熱口を有している。右加熱口2及び左加熱口3の下部には加熱コイル5及び加熱コイル6が設置され(なお、加熱コイル5及び加熱コイル6は、便宜上、実線で図示されている)、加熱口上部に載置された鍋を加熱コイルから発生する高周波磁界で誘導加熱する。トッププレート1にはさらに、使用者によるスイッチの操作を受け付けるとともに、誘導加熱調理器の加熱条件や使用者に対する情報を表示する操作・表示部7が設けられている。この操作・表示部7の操作により火力の調整及び加熱口の選択等が行われ、加熱状態の表示が行われる。この操作・表示部7は、表示手段として、例えば液晶パネル等の表示デバイスを備えている。操作・表示部7を加熱口毎に設けてもよいし、各加熱口に対応する操作部と表示部を一箇所にまとめて設けてもよく、具体的な構成を特に限定するものではない。
誘導加熱調理器は、商用電源9に接続され、交流電力を整流して直流電力に変換する直流電源回路11と、インバータ回路12と、入力電流検知回路10と、加熱コイル電流検知回路15と、加熱コイル5とを有している。
図3に示すように、スイッチング素子であるIGBT24は、放熱フィン27に取り付けられている。放熱フィン27には、発熱部品としてはIGBT24のみが取り付けられている。すなわち、IGBT24は、インバータ回路12において低電位側に配置されたIGBT25や、直流電源回路11のダイオードブリッジ21に取り付けられる放熱フィン(図示せず)とは独立して、放熱フィン27に取り付けられている。すなわち、IGBT24は、IGBT25や他の発熱部品とは熱的に遮断されている。
図4に示す符号30は、周波数制御における入力電力と周波数の関係を示し、符号31は、デューティ制御における入力電力と通電比率の関係を示している。
加熱コイル5の巻線は、周波数が高いほど表皮効果や近接効果の影響が顕著となるため、周波数が高いほど巻線損失が増大する。このため、相対的に駆動周波数が低いディーティ制御(符号31。図4参照)の方が、周波数制御(符号30)よりも加熱コイル損失が小さくなる傾向を示す。
図6(b)は、トッププレート1に非磁性鍋を載置した場合の入力電力と高電位側IGBT24の損失の関係を示す図である。非磁性鍋を載置した場合は、デューティ制御(符号31)は、周波数制御(符号30)と比較してIGBT24の損失が大きく、また、相対的に入力電力が小さい範囲における損失が顕著に大きい。
許容損失32は、放熱フィン27や冷却風量により規定される冷却性能によって定まる値であって一概に規定できるものではないが、少なくとも、非磁性鍋に対してデューティ制御を行うと、IGBT24の損失が許容損失に近い値となるかこれを超える可能性が高いことが分かる。
まず、加熱コイル損失に着目すると、デューティ制御の方が、周波数制御よりも加熱コイル損失が小さい(図5参照)ことから、加熱コイル損失を抑えるという観点ではデューティ制御が好ましい。
一方、IGBT24の損失に着目すると、磁性鍋であればデューティ制御と周波数制御とでIGBT24の損失の差異が小さいが(図6(a)参照)、非磁性鍋の場合には、入力電力が小さい範囲において高電位側のIGBT24の損失が許容損失を超えうる(図6(b)参照)。
そして、デューティ制御を行っている場合において、高電位側IGBT24の損失が許容損失以下となる駆動状態では、デューティ制御でインバータ回路12の駆動を行い、一方、高電位側IGBT24の損失が許容損失を超える駆動状態では、周波数制御でインバータ回路12を駆動するという制御を行う。
図8は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器における入力電流と加熱コイルの電流値の関係に基づく鍋負荷の判別特性図である。図8に示すように、トッププレート1に載置された鍋負荷の材質によって、入力電流と加熱コイルの電流値の関係が異なる。そして、制御回路8は、図8に示した関係をテーブル化して負荷判定テーブルとして内部に記憶している。
ステップS2において調理開始直後に行う負荷判定処理では、制御回路8は、負荷判定用の特定の駆動信号でインバータ回路12を駆動し、入力電流検知回路10の出力信号、及び加熱コイル電流検知回路15の出力信号を読み込む。そして、制御回路8は、図8に示す判別特性をテーブル化した負荷判定テーブルを参照し、入力電流及び加熱コイル電流ピーク値の読み込み値のマッピング状態から、載置された鍋種を判定する。本実施の形態1では、制御回路8が、本発明の鍋材質判別手段に相当する。
また、ステップS2にて高抵抗の非磁性鍋が載置されていることを検知すると、制御回路8は、インバータ回路12を周波数制御モードで電力制御して、設定された火力に相当する入力電力となるよう電力フィードバック制御を行い(S4)、加熱停止の指示があるまでこれを継続する(S5)。
また、ステップS2にて磁性鍋が載置されていることを検知すると、制御回路8は、インバータ回路12をデューティ制御(通電比率制御モード)で電力制御して、操作・表示部7にて設定された火力に相当する入力電力となるよう電力フィードバック制御を行う(S6)。
上述のようにステップS2にて負荷判定処理を行って鍋種を判定するのであるが、近年は、アルミなどの低抵抗非磁性材質の鍋の底面に磁性ステンレスを張り合わせたような貼り付け鍋が多く存在する。図8において符号20は、貼り付け鍋のマッピング状態を示している。これら貼り付け鍋は、等価インダクタンスが高抵抗非磁性鍋と同等程度、等価抵抗値が磁性鍋と同等程度、という特性を有し、非磁性鍋と磁性鍋の中間的な特性を有する。そのため、従来のように加熱コイル電流と入力電流のマッピング状態から鍋種を判定する方式では、貼り付け鍋を正確に検知することが困難であった。一般に、貼り付け鍋や高抵抗非磁性鍋は、磁性鍋と比較して加熱コイル上に載置した状態での等価インダクタンスが小さく、高抵抗非磁性鍋の共振周波数は磁性鍋の共振周波数に比べて高い。このため、貼り付け鍋に対してデューティ制御で電力制御を行うと、周波数制御で駆動する場合に比べて駆動周波数と共振周波数とが近い状態で駆動される傾向が強くなる。駆動周波数と共振周波数とが近い状態でインバータ回路12を制御すると、スイッチング素子の損失が増大し、破壊に至る可能性もある。
本実施の形態1の第二の負荷判定処理においては、スイッチング素子であるIGBT24の温度を検知することによって、IGBT24の損失を検知し、これによって鍋がデューティ制御に適さない鍋であるか否かを判断する。
図9は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱コイル電流ピークと高電位側IGBTの温度の関係を示す図である。図9において、符号33は、磁性鍋をデューティ制御した場合の高電位側IGBT24の温度特性を示すラインである。
仮に、ステップS2において磁性鍋であると判断しステップS6にてデューティ制御を行っている鍋が、実際に磁性鍋である場合には、IGBT24の温度は、加熱コイル電流のピークに応じて図9の符号33に示すラインのような値となる。
図10は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の、非磁性鍋載置状態におけるインバータ回路の駆動波形を示す図である。
図10(a)に示すT1期間は、IGBT24に内蔵された還流ダイオードに電流が流れ、ターンオンがゼロ電流スイッチングとなるため、IGBT24にはスイッチング損失が発生しない。図10(a)に示すT2期間には、IGBT24のコレクタからエミッタ方向に電流が流れ、IGBT24のコレクタ電流ピークIcpは、加熱コイル5の電流ピークIlpと一致する。ここで、加熱コイル電流検知回路15は、加熱コイル5に流れるピーク電流を検知している。このため、加熱コイル電流検知回路15が加熱コイルに電流ピークを検知することで、これと一致するコレクタ電流ピークIcpを検知することができる。
図10(b)に示すT1期間は、高電位側IGBT24のターンオン時はスナバコンデンサ14へ大きな突入電流が流れるため、IGBT24のターンオンはゼロ電流スイッチングとならず、周波数制御と比較して大きなスイッチング損失が発生する。
ここで、加熱コイル電流検知回路15は加熱コイル5に流れるピーク電流を検知しているが、T1期間にスナバコンデンサ14へ流れる突入電流は加熱コイル5に流れないため、加熱コイル電流検知回路15で検知した加熱コイル電流ピークIlpと、IGBT24に流れる電流ピークIcpは一致しない。
上述の図10(a)で示した周波数制御のようにターンオンがゼロ電流スイッチングとなる場合、導通損失とスイッチング損失はIGBT24の電流ピークIcpに依存する傾向を有する。そのため、ターンオンがゼロ電流スイッチングとなり、かつ、コレクタ電流ピークIcpが判っている場合、IGBT24で発生するIGBT損失もIGBT24の電流ピークIcpに依存する傾向を有するため、加熱コイル電流検知回路15で検知した加熱コイル電流ピークIlpから、IGBT24の損失を推定することができる。
そこで、本実施の形態1の誘導加熱調理器では、サーミスタ17で検出するIGBT24の温度に基づいてIGBT24で発生する損失を検知するという構成を採用している。
ステップS7の第二の負荷判定処理において、制御回路8は、サーミスタ17によるIGBT24の温度検知結果と、加熱コイル電流検知回路15の加熱コイル電流ピークの検知結果を読み込む。制御回路8は、加熱コイル電流ピークに対するIGBT24の温度と、予め定めた閾値34(制御切り替え閾値)とを比較することにより、想定されるIGBT24の損失よりも大きい損失が発生しているか否かを判定する(S7)。
また、デューティ制御での加熱動作中において、第二の負荷検知処理を行い、加熱コイル電流ピークに対するインバータ回路の温度を用いてスイッチング素子の損失を判定するようにした。このため、負荷検知処理にて判別できない貼り付け鍋については、第二の負荷検知処理においてこれを検知することができる。したがって、例えば貼り付け鍋等のデューティ制御に適さない鍋に対してデューディ制御での駆動を継続する、といったことを抑制することができる。これにより、スイッチング素子の過温度上昇や、スイッチング素子の破壊に至る事態を未然に防ぐことができる。
また耐熱性も高いため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化や、水冷部の空冷化が可能であるので、半導体モジュールの一層の小型化が可能になる。
さらに、電力損失が低いため、スイッチング素子の高効率化が可能であり、延いては半導体モジュールの高効率化が可能になる。
Claims (7)
- 鍋を誘導加熱する加熱コイルと、
交流電力を整流して直流電力に変換する直流電源回路と、
前記直流電源回路の直流電流を高周波電流に変換して前記加熱コイルに供給するインバータ回路と、
前記インバータ回路の温度を検知する回路温度検知手段と、
前記加熱コイルに流れる電流を検知する加熱コイル電流検知手段と、
前記鍋の材質を判別する鍋材質判別手段と、
前記インバータ回路の周波数を可変制御する周波数制御モード、及び前記インバータ回路の通電比率を可変制御する通電比率制御モードを含む制御モードのうちいずれかにより前記インバータ回路を駆動する制御回路とを備え、
前記制御回路は、
加熱開始の指示を受けて前記鍋材質判別手段により磁性鍋と判別された鍋を加熱するときには、前記通電比率制御モードにより前記インバータ回路の駆動を開始し、前記回路温度検知手段により検知された前記インバータ回路の温度が、前記加熱コイル電流検知手段により検知された電流値に対応する予め定められた閾値より高いときには、前記周波数制御モードに切り替えて前記インバータ回路を駆動する
ことを特徴とする誘導加熱調理器。 - 前記インバータ回路は、前記直流電源回路の出力に対して直列接続された2つのスイッチング素子を備え、
前記回路温度検知手段は、前記直流電源回路の出力の高電位側に配置されたスイッチング素子の温度を検知する
ことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。 - 前記高電位側に配置されたスイッチング素子は、前記直流電源回路の出力の低電位側に配置されたスイッチング素子とは熱的に遮断されている
ことを特徴とする請求項2記載の誘導加熱調理器。 - 前記高電位側に配置されたスイッチング素子は、前記直流電源回路の出力の低電位側に配置されたスイッチング素子とは独立して放熱フィンに取り付けられている
ことを特徴とする請求項3記載の誘導加熱調理器。 - 前記制御回路は、前記通電比率制御モードから前記周波数制御モードへの切り替え時において前記周波数制御モードで前記インバータ回路の駆動を開始する際には、前記周波数制御モードにおける最低入力電力となる駆動周波数で前記インバータ回路の駆動を開始する
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。 - 前記インバータ回路を構成するスイッチング素子の少なくとも1つは、ワイドバンドギャップ半導体により形成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。 - 前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、またはダイヤモンドである
ことを特徴とする請求項6記載の誘導加熱調理器。
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