実施の形態1.
図1は実施の形態1の誘導加熱調理器における加熱コイルの概略構成を示す図である。
本実施の形態の加熱コイルは、図中に示すように、径の小さい渦巻状の内側加熱コイル1と、内側加熱コイル1の軸心を中心としてその内側加熱コイル1の外周側に巻回された渦巻状の外側加熱コイル2とで構成されている。
図2は実施の形態1に係る誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。
図2において、直流電源回路4は、商用電源3の交流電圧を整流するダイオードブリッジ回路9と、その整流した電圧を平滑するチョークコイル10および平滑コンデンサ11とから構成され、第1および第2インバーター回路5、7に直流電圧を供給する。
第1インバーター回路5は、直列に接続されたスイッチング素子12、13と、スイッチング素子13と並列に接続された第1スナバコンデンサ14と、スイッチング素子12、13にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード15、16とを有している。そのスイッチング素子12、13が交互にオン・オフされることによりその接続点に高周波電圧が発生し、第1負荷回路6に供給する。
第2インバーター回路7は、直列に接続されたスイッチング素子17、18と、スイッチング素子18と並列に接続された第2スナバコンデンサ19と、スイッチング素子17、18にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード20、21とを有している。そのスイッチング素子17、18が交互にオン・オフされることによりその接続点に高周波電圧が発生し、第2負荷回路8に供給する。
なお、以下、高電位側のスイッチング素子12、17を上スイッチ12、17、低電位側のスイッチング素子13、18を下スイッチ13、18と呼ぶ。また、高電位側のダイオード15、20を上ダイオード15、20、低電位側のダイオード16、21を下ダイオード16、21と呼ぶ。
第1および第2スナバコンデンサ14、19は、第1インバーター回路5の上・下スイッチ12、13が交互にターンオフする際、また、第2インバーター回路7の上・下スイッチ17、18が交互にターンオフする際に、ターンオフするスイッチに印加される電圧変動を緩やかにしてスイッチング損失を抑制するものであり、特に負荷電流が大きい場合に効果がある。なお、本実施の形態では、第1および第2スナバコンデンサ14、19をそれぞれ下スイッチ13、18に並列に接続した例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、上スイッチ12、17にそれぞれ並列に接続してもよく、また、上・下スイッチ12、13と上・下スイッチ17、18にそれぞれ並列に接続してもよい。
第1負荷回路6は、前述した内側加熱コイル1とその共振コンデンサ22の直列回路から構成され、第2負荷回路8は、前述した外側加熱コイル2とその共振コンデンサ23からなっている。そして、内側加熱コイル1および外側加熱コイル2に流れる高周波電流により生じる磁束が各加熱コイル1、2の上方に載置された鍋(図示せず)に渦電流を誘起して加熱する。内側加熱コイル1と外側加熱コイル2は、それらの上方を覆う大径鍋が載置された場合には、第1負荷回路6と第2負荷回路8のインピーダンスがつりあい、共振周波数も略同等となるように調整され、巻回されているものとする。
直流電源回路4の入力側に設けられた入力電流検出器24は、商用電源3からダイオードブリッジ回路9へ入力される入力電流を検出する。ダイオードブリッジ回路9の出力間に接続された入力電圧検出器25は、ダイオードブリッジ回路9の出力電圧を検出する。また、第1インバーター駆動回路26は、第1インバーター回路5の上・下スイッチ12、13を交互にオン・オフする駆動信号を出力する。第2インバーター駆動回路27は、第2インバーター回路7の上・下スイッチ17、18を交互にオン・オフする駆動信号を出力する。第1出力電流検出器28は第1負荷回路6に流れる電流を検出し、第2出力電流検出器29は第2負荷回路8に流れる電流を検出する。制御回路31は、操作入力回路30からの信号に基づいて本調理器を制御する。また、制御回路31は、操作入力回路30からの設定電力が所定電力以下のときには第1インバーター回路5のみを駆動し(第1動作モード)、設定電力が所定電力より大きいときには第1および第2インバーター回路5、7を同時に駆動する(第2動作モード)。
前述した第1インバーター回路5の上・下スイッチ12、13と上・下ダイオード15、16には、SiC等のワイドバンドギャップ半導体を用いたMOSFETとSBD(ショットキーバリアダイオード)が使用されている。また、第2インバーター回路7の上・下スイッチ17、18と上・下ダイオード20、21には、Si半導体を用いたIGBTとFRD(ファストリカバリダイオード)が使用されている。ワイドバンドギャップ半導体を使用したMOSFETはオン抵抗が低く、Si半導体のIGBTと比較して蓄積電荷量が少ないので、スイッチング損失が小さく、特に高周波動作におけるスイッチング損失の増加が抑制される。また、ワイドバンドギャップ半導体のSBDはSi半導体のFRDより逆回復電荷量が少なく、急激な印加電圧の変化に対しても逆回復電流を抑えることができるので、ハードスイッチングに対して損失の増大を抑制できる。
なお、第1インバーター回路5の上・下スイッチ12、13と上・下ダイオード15、16にワイドバンドギャップ半導体のMOSFETとSBDを用いて逆回復電荷量が少なく、大きなテール電流が流れないことから、第1スナバコンデンサ14の容量は第2スナバコンデンサ19の容量より小さいものでよい。第1インバーター回路5の上・下スイッチ12、13と上・下ダイオード15、16の損失が高出力状態においても第1スナバコンデンサなしで十分に小さい場合には、第1スナバコンデンサ14を用いなくてもよい。
次に、鍋との位置関係における内側加熱コイル1と外側加熱コイル2のインピーダンスについて図3を用いて説明する。
図3は実施の形態1において鍋との位置関係における内側加熱コイルおよび外側加熱コイルの通電状態を示す断面図である。なお、図中に示す天板32は誘導加熱調理器の筐体の上部に設けられており、その天板32の下方に図1に示す状態の内側加熱コイル1と外側加熱コイル2が配設されている。また、図3においては、内側加熱コイル1と外側加熱コイル2が通電状態にあることをハッチングで示している。
図3において、(a)は天板32上に載置された大径鍋33aに対し内側加熱コイル1と外側加熱コイル2に通電して誘導加熱している状態を示し、(b)は天板32上に載置された中径鍋33bに対し内側加熱コイル1と外側加熱コイル2に通電して誘導加熱している状態を示す。(c)は天板32上に載置された大径鍋33aに対し内側加熱コイル1のみに通電して誘導加熱している状態を示し、(d)は天板32上に載置された中径鍋33bに対し内側加熱コイル1のみに通電して誘導加熱している状態を示す。
内側加熱コイル1のインピーダンスは、大径鍋33aが載置されている場合も、中径鍋33bが載置されている場合にも、鍋との磁気結合の状態は略同等となるため、ほぼ同等の値となっている。一方、外側加熱コイル2のインピーダンスは、中径鍋33bが載置されている場合には大径鍋33aが載置されているときと比較して磁気結合が小さくなり、外側加熱コイル2の漏れインダクタンスが大きくなる。そのため、抵抗値は小さくなるがインダクタンスが大きくなって、全体として中径鍋33bが載置されている状態の方がインピーダンスは大きくなる。
次に、図3の通電状態における第1および第2インバーター回路の駆動時の各波形について図4乃至図14を用いて説明する。
図4は図3(a)の通電状態において第1および第2インバーター回路を周波数の低い駆動信号(高出力)で駆動したときの出力電圧、電流等の波形を示す図、図5は図3(a)の通電状態において第1および第2インバーター回路を図4より周波数の高い駆動信号(低出力)で駆動したときの出力電圧、電流等の波形を示す図である。なお、内側加熱コイル1に流れる高周波電流と外側加熱コイル2に流れる高周波電流の周波数差による鍋音の発生を防止するために、第1インバーター回路5と第2インバーター回路7を同一周波数で駆動する。
図4、図5において、第1および第2インバーター回路5、7のそれぞれの上スイッチ12、17と下スイッチ13、18が交互にオン・オフを繰り返す。その場合、一方のスイッチがオフした後、他方のスイッチがオンするまで両方のスイッチがオフするデッドタイム期間が上下のスイッチが同時にオンしないように設けられている。本実施の形態では、大径鍋33aが載置されている場合には、内側加熱コイル1を含む第1負荷回路6と外側加熱コイル2を含む第2負荷回路8が略同等のインピーダンスおよび共振周波数を有するので、第1インバーター回路5の駆動信号と第2インバーター回路7の駆動信号には、略同等の通電比率(例えば、上スイッチ12、17の通電比率が約50%)が用いられる。その場合、第1負荷回路6の共振周波数および第2負荷回路8の共振周波数よりも高い周波数の範囲で各インバーター回路5、7を駆動する。
その結果、各負荷回路6、8に流れる高周波電流が各負荷回路6、8に印加される高周波電圧よりも遅れ位相となるように制御することができる。図4や図5においては、各スイッチをターンオフするとデッドタイム期間中に負荷電流により第1および第2スナバコンデンサ14、19を充電あるいは放電し、それぞれ他方のターンオンするスイッチの逆並列のダイオードに電流が流れている状態でターンオンするので、ゼロボルトスイッチングが成立してスイッチング損失が小さくなる。
なお、図6に示すように、第1および第2インバーター回路5、7の駆動信号の周波数を高周波にしすぎると負荷電流が抑制される。その場合、一方のスイッチがターンオフした際に第1および第2負荷回路6、8に流れる電流が小さくなって、デッドタイム期間に第1および第2スナバコンデンサ14、19を充電あるいは放電することができなくなる。そのため、他方のスイッチがターンオンする際に第1および第2スナバコンデンサ14、19を充電あるいは放電する電流が流れ、スイッチング損失が大きくなる。その結果、加熱効率が低下するとともに入力電力を小さくすることができなくなる。所定電力以下に制御する場合には、図9あるいは図10に示すように、内側加熱コイル1のみに通電する。
図7は図3(b)の通電状態において第1および第2インバーター回路を周波数の低い駆動信号(高出力)で駆動したときの出力電圧、電流等の波形を示す図、図8は図3(b)の通電状態において第1および第2インバーター回路を図7より周波数の高い駆動信号(低出力)で駆動したときの出力電圧、電流等の波形を示す図である。なお、この状態においても鍋音の発生を防止するために、第1インバーター回路5と第2インバーター回路7を同一周波数で駆動する。
中径鍋33bが載置されている場合には、内側加熱コイル1のインピーダンスより外側加熱コイル2のインピーダンスの方が大きくなる(但し、外側加熱コイル2のインピーダンスの抵抗成分は磁気結合して誘導渦電流の流れる鍋底面積が小さくなるため小さくなる)。その場合、外側加熱コイル2より内側加熱コイル1に高周波電流が流れ易くなるため、図4乃至図6のように内側加熱コイル1と外側加熱コイル2に略同等の高周波電圧を印加すると、外側加熱コイル2と比較して内側加熱コイル1に大きな高周波電流が流れる。内側加熱コイル1と外側加熱コイル2に流れる高周波電流の大きさが大きく異なると、各加熱コイル1、2と磁気結合して誘導渦電流により加熱される鍋底部分の加熱密度も大きく異なり、加熱むらが大きくなって、調理上、好ましくない。そのため、第1インバーター回路5の上スイッチ12の通電比率を小さくする(同時に、下スイッチ13の通電比率を大きくする)ことにより、内側加熱コイル1と外側加熱コイル2に流れる高周波電流を所定の比率範囲(例えば略同等)にバランスさせ、鍋底の加熱むらの抑制を図っている。
なお、第1インバーター回路5の上スイッチ12の通電比率を小さくするので、上スイッチ12のターンオン時には負荷電流が転流しているおそれがあり、第1スナバコンデンサ14への充電電流を含めて大きな電流が流れて、スイッチング損失が大きくなり得る。しかし、第1インバーター回路5の上・下スイッチ12、13および上・下ダイオード15、16にSiC等のワイドバンドギャップ半導体のMOSFETとSBDが用いられている。そのため、第1スナバコンデンサ14の容量も小さくすることにより、上・下スイッチ12、13の導通抵抗を低減し、上・下ダイオード15、16の逆回復電流を小さくし、第1スナバコンデンサ14への突入電流を小さくできる。これにより、第1インバーター回路5のスイッチング損失を抑制することが可能になる。
図9は図3(c)又は図3(d)の通電状態において第1インバーター回路のみを周波数の低い駆動信号(高出力)で駆動したときの出力電圧、電流等の波形を示す図、図10は図3(c)又は図3(d)の通電状態において第1インバーター回路のみを図9より周波数の高い駆動信号で駆動したときの出力電圧、電流等の波形を示す図、図11は図3(c)又は図3(d)の通電状態において第1インバーター回路のみを図10よりさらに周波数の高い駆動信号(低出力)で駆動したときの出力電圧、電流等の波形を示す図である。
図3(c)に示すように大径鍋33aを加熱する場合、内側加熱コイル1と外側加熱コイル2の両方に通電すると、低火力の電力に抑制しようとしても所望の電力まで入力電力を下げることが容易ではない。しかし、図3(c)(d)に示すように内側加熱コイル1のみに通電した場合には、誘導渦電流の流れる鍋底面積が減って鍋へ伝達される電力が抑制し易くなるとともに、動作するインバーター回路も第1インバーター回路5のみとなるので、第1および第2インバーター回路5、7の両方を駆動したときと比べ損失も減らすことができる。特に、第1インバーター回路5はSiC等のワイドバンドギャップ半導体で構成されており、第1スナバコンデンサ14の容量も小さいため、導通損失やスイッチング損失が小さく、特に高周波動作におけるスイッチング損失の増大を抑制することができる。
なお、図11に示すように、第1インバーター回路5の駆動周波数を高周波にしたことにより、負荷電流が抑制され、上・下スイッチ12、13の何れか一方のスイッチがターンオフした際に第1負荷回路6に流れる電流(出力電流)が小さくなって、デッドタイム期間中に第1スナバコンデンサ14を充電あるいは放電することができなくなった場合には、他方のスイッチがターンオンする際に第1スナバコンデンサ14を充電あるいは放電する電流が流れ、スイッチング損失が大きくなり得る。
しかし、第1インバーター回路5の上・下スイッチ12、13および逆並列のダイオード15、16にワイドバンドギャップ半導体のMOSFETやSBDを用い、第1スナバコンデンサ14の容量を小さくすることにより、逆並列のダイオード15、16の逆回復電流は小さく、Si半導体のIGBTのような大きなテール電流は生じない。また、スイッチング損失が小さいことに加えて、デッドタイム期間中に第1スナバコンデンサ14の充電あるいは放電が完了しない機会が減少する。また、第1スナバコンデンサ14の充電あるいは放電が完了しない場合であっても、第1スナバコンデンサ14を充放電する電流は小さく、スイッチング素子の損失の増加は抑制される。
したがって、このような動作においても第1インバーター回路5にワイドバンドギャップ半導体のMOSFETやSBDを用いることにより、低加熱出力時における加熱効率の低下を抑制することができる。
次に、図12乃至図14を用いて説明する、前述の図9乃至図11は第1インバーター回路5の駆動信号の周波数を制御することによって出力を調整するものであったが、図12乃至図14は駆動信号の周波数は一定で、上・下スイッチ12、13の通電比率を制御することによって出力を調整するものである。
図12は図3(c)又は図3(d)の通電状態において第1インバーター回路の上スイッチの通電比率を略50%としたときの出力電圧、電流等の波形を示す図、図13は図3(c)又は図3(d)の通電状態において第1インバーター回路の上スイッチの通電比率を図12より小さくしたときの出力電圧、電流等の波形を示す図、図14は図3(c)又は図3(d)の通電状態において第1インバーター回路の上スイッチの通電比率を図13よりさらに小さくしたときの出力電圧、電流等の波形を示す図である。
図12に示すように第1インバーター回路5の上スイッチ12の通電比率が略50%の駆動状態では出力が大きく、図14に示すように第1インバーター回路の上スイッチ12の通電比率が図13よりさらに小さくしたときには出力が小さくなる。ここで、図14に示すように、第1インバーター回路5の上スイッチ12の通電比率が小さい駆動状態では、上スイッチ12がターンオンする際には既に負荷電流が転流しているおそれがあり、第1スナバコンデンサ14への充電電流を含めて大きな電流が流れて、スイッチング損失が大きくなる場合がある。
しかし、第1インバーター回路5の上・下スイッチ12、13および逆並列のダイオード15、16にSiC等のワイドバンドギャップ半導体のMOSFETやSBDを用いることにより、従来のSi半導体のIGBTのような大きなテール電流が流れず、第1スナバコンデンサ14の容量を小さくすることができる。また、逆並列のダイオード15、16の逆回復電流を小さくすることができる。その結果、上・下スイッチ12、13はオン抵抗が低く、損失が少ない特性を有し、逆並列のダイオード15、16の逆回復電荷量も少ないのに加えて第1スナバコンデンサ14を充放電する電流も小さくすることができる。そのため、低加熱出力時の上・下スイッチ12、13における損失の増大を抑制して、加熱効率の低下を抑えることができる。
なお、図9乃至図11では、通電比率が一定で駆動周波数を制御することにより加熱出力を調整する駆動信号例を説明し、図12乃至図14では、駆動周波数一定で通電比率のみを制御することにより加熱出力を調整する駆動信号例を示したが、駆動周波数と通電比率とを同時に制御するようにしてもよい。
図15は実施の形態1に係る誘導加熱調理器の第1および第2インバーター回路の駆動信号および入力電力の相関を示す図である。なお、図15は、第1インバーター回路5と第2インバーター回路7を図4乃至図6で説明した通電比率で駆動する場合の駆動周波数と入力電力との関係を示している。
誘導加熱調理器は、保温や煮込み調理に適した低加熱出力状態(100W程度)から湯沸し等に適した高加熱出力状態(3kW程度)まで、入力電力を調整できることが色々な調理を行う上で望ましい。しかし、駆動周波数等のみを制御して加熱電力を制御する場合、調整可能な入力電力の範囲には限界があり、図15に示すように大径鍋が載置されているときに高周波としても鍋に入る電力を十分に抑えることは困難である。また、駆動周波数を高周波化すると第2インバーター回路7のスイッチング損失(特にIGBTのテール電流により生じるスイッチング損失)が増大するのに加えて、第2スナバコンデンサ19への突入電流(充電電流あるいは放電電流)も大きくなって、第2インバーター回路7における損失は増大する。その結果、鍋に入る加熱電力およびインバーター回路等における損失を合わせた入力電力を十分に小さくすることができず、低加熱出力時の加熱効率が低下する問題点がある。また、低加熱出力状態では、インバーター回路等で生じる損失の割合が増大するので、鍋に入る加熱電力が小さい小径鍋が載置された状態と無負荷状態との区別がつき難くなる問題点がある。
しかし、図9乃至図11や図12乃至図14に示したように、第1インバーター回路5のみを駆動して内側加熱コイル1のみに通電することとすれば、外側加熱コイル2と比較して鍋径によらず磁気結合の状態がよい内側加熱コイル1に集中して出力電流を流すことができる。そのため、第1インバーター回路5や内側加熱コイル1における損失が抑えられ、加熱効率の低下を抑制できる。また、外側加熱コイル2に高周波電流を流すことによる加熱出力や第2インバーター回路7における損失が生じなくなる分、内外の加熱コイルに同時に通電する場合と比較して入力電力を小さく抑えることが可能である。図16に、第1インバーター回路5のみを駆動した場合の駆動信号(駆動周波数)と入力電力との関係を示す。
次に、本実施の形態に係る誘導加熱調理器の制御回路31の動作について図17に示すフローチャートを用いて説明する。
図17は実施の形態1に係る誘導加熱調理器の制御回路の動作を示すフローチャートである。
まず、操作入力回路30は、火力の設定を検知すると加熱開始要求として制御回路31に出力する。一方、制御回路31は、加熱開始要求が入力されたか否かを判定しており(ステップ1)、加熱開始要求を検知しときにはその設定火力に対応する電力(以下、「設定電力」と記す)が所定電力aより大きいか否かを判定する(ステップ2)。制御回路31は、設定電力が所定電力aより大きいときには、第1および第2インバーター駆動回路26、27から第1インバーター回路5と第2インバーター回路7にそれぞれ所定の駆動信号(加熱開始直後は初期駆動信号、出力制御中は制御後の駆動信号)が出力されるように制御する(ステップ3)。その後、制御回路31は、入力電流検出器24および入力電圧検出器25により入力電流と入力電圧を検出し、第1および第2出力電流検出器28、29により内側加熱コイル1および外側加熱コイル2に流れる電流をそれぞれ検出する(ステップ4)。そして、制御回路31は、入力電流と入力電圧から入力電力を算出し、図15に示すように駆動信号と入力電力との関係を用いて、その入力電力が出力中の駆動信号に対して所定値以上か否かで鍋の有無を判定する(ステップ5)。
制御回路31は、鍋が載置されていると判定したときには、内側加熱コイル1に流れる電流と外側加熱コイル2に流れる電流を比較する(ステップ6)。制御回路31は、内側加熱コイル1に流れる電流が外側加熱コイル2に流れる電流より大きいと判定したときには、設定電力と入力電力とを比較する(ステップ7)。制御回路31は、入力電力の方が小さいと判定したときには各インバーター回路5、7の通電比率はそのままにして、駆動周波数を下げて入力電力を増加させ(ステップ8)、ステップ2へ戻る。
制御回路31は、ステップ7において、入力電力が設定電力以上であると判定したときには、第1インバーター回路5の上スイッチ12の通電比率を小さくし、同時に下スイッチ13の通電比率を大きくして、内側加熱コイル1に流れる電流を抑制するとともに、入力電力を減少させ(ステップ9)、ステップ2へ戻る。また、制御回路31は、ステップ6において、内側加熱コイル1に流れる電流が外側加熱コイル2に流れる電流以下であった場合には、設定電力とステップ4で算出した入力電力とを比較する(ステップ10)。制御回路31は、入力電力の方が小さいと判定したときには第1インバーター回路5の上スイッチ12の通電比率が50%以上かどうかを判定する(ステップ11)。制御回路31は、上スイッチ12の通電比率が50%未満と判定したときには上スイッチ12の通電比率を大きくし、同時に下スイッチ13の通電比率を小さくして内側加熱コイルに流れる電流と入力電力を増加させる(ステップ12)。また、制御回路31は、ステップ11において、上スイッチ12の通電比率が50%以上と判定したときには各インバーター回路5、7の通電比率はそのままにして、駆動周波数を下げて入力電力を増加させ、(ステップ13)、ステップ2へ戻る。さらに、制御回路31は、ステップ10において、入力電力が設定電力以上と判定したときには各インバーター回路5、7の通電比率はそのままにして、駆動周波数を上げて入力電力を減少させ(ステップ14)、ステップ2へ戻る。
制御回路31は、ステップ2において、設定電力が所定電力a以下(但し、0以外)と判定したときには、第1インバーター駆動回路26のみを制御して第1インバーター回路5を駆動する(ステップ15)。また、制御回路31は、入力電流検出器24および入力電圧検出器25により入力電流と入力電圧を検出し、第1出力電流検出器28により内側加熱コイル1に流れる電流を検出する(ステップ16)。そして、制御回路31は、入力電流と入力電圧から入力電力を算出し、図16に示すように駆動信号と入力電力との関係を用いて、その入力電力が出力中の駆動信号に対して定める所定値以上か否かにより鍋の有無を判定する(ステップ17)。
制御回路31は、鍋が載置されていると判定したときには、設定電力と入力電力とを比較する(ステップ18)。制御回路31は、入力電力の方が小さいと判定したときには、第1インバーター回路5の駆動周波数を下げたり、あるいは上スイッチ12の通電比率を大きく(上限50%)したりして、入力電力を増加させ(ステップ19)、ステップ2へ戻る。また、制御回路31は、ステップ18において、入力電力が設定電力より大きいと判定したときには、第1インバーター回路5の駆動周波数を上げたり、あるいは上スイッチ12の通電比率を小さくしたりして、入力電力を減少させ(ステップ20)、ステップ2へ戻る。また、制御回路31は、ステップ18において、入力電力と設定電力がほぼ同等と判定したときにはステップ2へ戻る。
制御回路31は、ステップ2において、設定電力が0であった場合や、鍋の有無判定(ステップ5・ステップ17)で鍋が載置されていないと判定したときには、第1および第2インバーター駆動回路26、27を制御して、第1インバーター回路5と第2インバーター回路7の駆動を停止し(ステップ21)、ステップ1へ戻って、操作入力回路30から加熱開始要求が入力されるのを待つ。
以上のように本実施の形態においては、第1インバーター回路5にSiC等のワイドバンドギャップ半導体のMOSFETやSBDを使用しているので、高加熱出力時においても、また低加熱出力時においても第1インバーター回路5における損失を低減でき、加熱効率を改善することができる。
特に低加熱出力時には、ワイドバンドギャップ半導体で構成した第1インバーター回路5のみを駆動して、内側加熱コイル1のみに通電するようにしている。これにより、駆動周波数を高周波化してもスイッチング損失は小さく、また、接続されている第1スナバコンデンサ14の容量も小さいので、第1スナバコンデンサ14への突入電流が生じてもその電流は小さくなる。そのため、低加熱出力時におけるインバーター回路等で生じる損失は抑えられ、加熱効率の低下を抑制することができる。
また、インバーター回路等で生じる損失を低減したことで、小径鍋の載置状態の低加熱出力時においても、インバーター回路等で生じる損失に対して鍋底に生じる誘導渦電流による加熱電力が十分に大きくなり、小径鍋の載置状態と無負荷状態の入力電力の差異が大きくなっている。これにより、鍋を移動させて無負荷状態となったことを高い確度で検出することができる。
実施の形態2.
図18は実施の形態2に係る誘導加熱調理器の制御回路の動作を示すフローチャート、図19は実施の形態2に係る誘導加熱調理器の制御回路において適正鍋の有無を判定する際に使用する入力電流・出力電流の相関を示す図、図20は実施の形態2に係る誘導加熱調理器の制御回路において鍋径を判定する際の入力電流・出力電流の相関を示す図、図21は実施の形態2において鍋との位置関係における内側加熱コイルおよび外側加熱コイルの通電状態を示す断面図である。なお、本実施の形態における回路構成は、実施の形態1と同様である。
操作入力回路30は、火力の設定を検知すると加熱開始要求として制御回路31に出力する。一方、制御回路31は、加熱開始要求が入力されたか否かを判定しており(ステップ101)、加熱開始要求を検知しときには第1インバーター回路5のみを所定の駆動信号で駆動して内側加熱コイル1とその共振コンデンサ22に高周波電圧を印加する(ステップ102)。制御回路31は、入力電流検出器24および第1出力電流検出器28により入力電流と内側加熱コイル1に流れる電流を検出して(ステップ103)、適正な鍋が載置されているか否か判定する(ステップ104)。図19に示すように、アルミ鍋等の低インピーダンス鍋が載置されている場合には内側加熱コイル1に大きな電流が流れ、また、無負荷状態やフォーク・ナイフ等の小物が載置されている場合には内側加熱コイル1に流れる電流や入力電流は小さくなる。
制御回路31は、入力電流と内側加熱コイル1に流れる電流とから適正な鍋が載置されていると判定したときには、今度は第2インバーター回路7のみを所定の駆動信号で駆動して外側加熱コイル2およびその共振コンデンサ23に高周波電圧を印加する(ステップ105)。そして、制御回路31は、入力電流検出器24および第2出力電流検出器29により入力電流と外側加熱コイル2に流れる電流を検出し(ステップ106)、外側加熱コイル2とも磁気結合する大径鍋が載置されているか否か判定する(ステップ107)。
図20には、第2インバーター回路7のみを所定の駆動信号で駆動した際の入力電流・外側加熱コイル2の電流と、第1インバーター回路5のみを駆動した際の入力電流・内側加熱コイル1の電流との関係に基づく、大径鍋が載置されているか、小径鍋が載置されているかの判定基準を示す。小径鍋が載置されている場合には、その鍋底が内側加熱コイル1とは磁気結合しているが、外側加熱コイル2とはあまり磁気結合していない状態となる。一方、大径鍋が載置されている場合には、その鍋底が内側加熱コイル1と磁気結合しているとともに、外側加熱コイル2とも磁気結合している状態となる。
したがって、外側加熱コイル2の鍋との磁気結合の状態は、内側加熱コイル1の鍋との磁気結合の状態と比較して鍋径により大きく変動する。第1インバーター回路5を所定の駆動信号で駆動した場合の入力電流や、内側加熱コイル1に流れる電流に対する第2インバーター回路7を所定の駆動信号で駆動した場合の入力電流や、外側加熱コイル2に流れる電流の大きさは、大径鍋が載置された状態と比較して小径鍋が載置された状態では小さくなる。そこで、第1インバーター回路5の駆動時の入力電流に対する第2インバーター回路7の駆動時の入力電流が所定値以上であり、第1インバーター回路5の駆動時の内側加熱コイル1の電流に対する第2インバーター回路7の駆動時の外側加熱コイル2の電流が所定値以上である場合に、大径鍋が載置されていると判定する。
制御回路31は、ステップ107において、図21(a)に示すような大径鍋33aが載置されていると判定したときには、第1および第2インバーター回路5、7へ駆動信号を出力して内側加熱コイル1を含む第1負荷回路6および外側加熱コイル2を含む第2負荷回路8に高周波電圧を印加する(ステップ108)。なお、図21(a)において、内側加熱コイル1および外側加熱コイル2のハッチング表示は、両加熱コイルが通電状態にあることを示している。
制御回路31は、入力電流検出器24および入力電圧検出器25により入力電流と入力電圧を検出し、第1および第2出力電流検出器28、29により各加熱コイル1、2に流れる電流を検出する(ステップ109)。そして、制御回路31は、入力電流と入力電圧から入力電力を算出し、図15に示すように駆動信号と入力電力との関係を用いて、その入力電力が出力中の駆動信号に対して定める所定値以上か否かにより鍋の有無を判定する(ステップ110)。
制御回路31は、鍋が載置されていると判定したときには、設定電力と入力電力とを比較する(ステップ111)。制御回路31は、入力電力の方が小さいと判定したときには各インバーター回路5、7への駆動信号の周波数を下げる等して入力電力を増加させ(ステップ112)、ステップ114へ移行する。制御回路31は、ステップ111において、入力電力が設定電力より大きいと判定したときには、各インバーター回路5、7への駆動信号の周波数を高くする等して入力電力を減少させ(ステップ113)、ステップ114へ移行する。また、制御回路31は、ステップ111において、入力電力と設定電力とが略同等であると判定したときにはそのままステップ114に移行し、操作入力回路30からの設定電力が0(加熱停止指示)となったか否かを判定し(ステップ114)、加熱継続の場合にはステップ109へ戻る。
制御回路31は、ステップ107において、図21(b)に示すような小径鍋33cが載置されていると判定したときには、第1インバーター回路5のみへ駆動信号を出力して内側加熱コイル1を含む第1負荷回路6に高周波電圧を印加する(ステップ115)。なお、図21(b)において、内側加熱コイル1のハッチング表示は、内側加熱コイル1が通電状態にあることを示している。制御回路31は、入力電流検出器24および入力電圧検出器25により入力電流と入力電圧を検出し、第1出力電流検出器28により内側加熱コイル1に流れる電流を検出する(ステップ116)。そして、制御回路31は、前述したように駆動信号と入力電力との関係を用いて、その入力電力が出力中の駆動信号に対して定める所定値以上か否かにより鍋の有無を判定する(ステップ117)。
制御回路31は、鍋が載置されていると判定したときには、設定電力と入力電力とを比較する(ステップ118)。制御回路31は、入力電力の方が小さいと判定したときには第1インバーター回路5への駆動信号の周波数を下げる等して入力電力を増加させ(ステップ119)、ステップ121へ移行する。制御回路31は、ステップ118において、入力電力が設定電力より大きいと判定したときには、第1インバーター回路5への駆動信号の周波数を高くする等して入力電力を減少させ(ステップ120)、ステップ121へ移行する。また、制御回路31は、ステップ118において、入力電力と設定電力とが略同等であると判定したときにはそのままステップ121に移行し、操作入力回路30からの設定電力が0(加熱停止指示)となったか否かを判定し(ステップ121)、加熱継続の場合にはステップ116へ戻る。
制御回路31は、ステップ104において、適正な鍋が載置されていないと判定したときや、ステップ110・117において、鍋がないと判定したとき、ステップ114・121において、操作入力回路30からの加熱停止指示(設定電力:0)の入力を検知したときには、第1および第2インバーター回路5、7あるいは第1インバーター回路5への駆動信号を停止し(ステップ122)、ステップ101へ戻って、操作入力回路30からの加熱開始要求が入力されるのを待つ。
以上のように実施の形態2においては、小径鍋に対しては、第1インバーター回路5のみを駆動して内側加熱コイル1のみに高周波電流を供給して漏れ磁束を低減し、大径鍋に対しては、第1および第2インバーター回路5、7を駆動して内側加熱コイル1および外側加熱コイル2に高周波電流を供給して高加熱出力を可能としている。その場合、小径鍋の加熱時にも大径鍋の加熱時にもワイドバンドギャップ半導体のMOSFETやSBDを使用した第1インバーター回路5を使用することでインバーター回路における損失を低減でき、加熱効率を改善することができる。
特に小径鍋の加熱時には、ワイドバンドギャップ半導体で構成した第1インバーター回路5のみを駆動して、内側加熱コイル1のみに通電するようにしている。これにより、駆動周波数を高周波化してもスイッチング損失は小さく、また、接続されている第1スナバコンデンサ14の容量も小さいので、第1スナバコンデンサ14への突入電流が生じてもその電流は小さくなる。そのため、特に低加熱出力時におけるインバーター回路等で生じる損失の増大は抑えられ、加熱効率の低下を抑制することができる。
また、インバーター回路等で生じる損失を低減したことで、小径鍋の載置状態の低加熱出力時においても、インバーター回路等で生じる損失に対して鍋底に生じる誘導渦電流による加熱電力が十分に大きくなり、小径鍋の載置状態と無負荷状態の入力電力の差異が大きくなる。これにより、鍋を移動させて無負荷状態となったことを高い確度で検出することができる。
実施の形態3.
図22は実施の形態3に係る誘導加熱調理器の制御回路の動作を示すフローチャートである。なお、本実施の形態における回路構成は、実施の形態1と同様である。また、図22に示すフローチャートにおいて、ステップ201〜207は、実施の形態2の図18のフローチャートのステップ101〜107と同等であるため動作の説明を省略する。
制御回路31は、ステップ207において、大径鍋が載置されていると判定すると、操作入力回路30からの設定電力が所定電力a以上か否かを判定する(ステップ208)。制御回路31は、設定電力が所定電力a以上と判定したときには、内側加熱コイル1と外側加熱コイル2の両方に高周波電流を流すべく、第1インバーター回路5および第2インバーター回路7を駆動して(ステップ209)、ステップ211へ移行する。制御回路31は、ステップ208において、設定電力が所定電力a未満であると判定したときには、内側加熱コイル1にのみ高周波電流を流すべく、第1インバーター回路5のみ駆動して(ステップ210)、ステップ211へ移行する。
その後、制御回路31は、入力電流検出器24および入力電圧検出器25により入力電流と入力電圧を検出し、第1および第2出力電流検出器28、29により内側加熱コイル1および外側加熱コイル2に流れる電流をそれぞれ検出する(ステップ211)。そして、制御回路31は、入力電流と入力電圧から入力電力を算出し、図15あるいは図16に示すように駆動信号と入力電力との関係を用いて、その入力電力が出力中の駆動信号に対して所定値以上か否かで鍋の有無を判定する(ステップ212)。
制御回路31は、鍋が載置されていると判定したときには、設定電力と入力電力とを比較する(ステップ213)。制御回路31は、設定電力の方が大きいと判定したときには、入力電力が増加するように第1および第2インバーター回路5、7への駆動信号の周波数を低くし(ステップ214)、ステップ208へ戻る。また、制御回路31は、ステップ213において、入力電力と設定電力が略同等であると判定したときにはそのままステップ208へ戻る。また、制御回路31は、入力電力の方が設定電力より大きいと判定したときには、入力電力が減少するように第1および第2インバーター回路5、7への駆動信号の周波数を高くし(ステップ215)、ステップ208へ戻る。
なお、ステップ207で小径鍋33cが載置されていると判定した場合のステップ216〜222の処理は、実施の形態2のステップ115〜121の処理と同等である。
制御回路31は、ステップ204において、適正な鍋が載置されていないと判定したときや、ステップ212・218において、鍋がないと判定したとき、ステップ208・222で操作入力回路30からの加熱停止指示(設定電力:0)の入力を検知したときには、第1および第2インバーター回路5、7あるいは第1インバーター回路5への駆動信号を停止し(ステップ223)、ステップ201へ戻って、操作入力回路30からの加熱開始要求が入力されるのを待つ。
以上のように実施の形態3においては、小径鍋に対しては、第1インバーター回路5のみを駆動して内側加熱コイル1のみに高周波電流を供給して漏れ磁束を低減し、大径鍋に対しては、高加熱出力状態においては第1および第2インバーター回路5、7を駆動して内側加熱コイル1および外側加熱コイル2に高周波電流を供給して高加熱出力を可能としている。また、低加熱出力状態においてはワイドバンドギャップ半導体のMOSFETやSBDを使用した第1インバーター回路5のみを使用することでインバーター回路における損失を低減でき、加熱効率を改善することができる。
特に小径鍋の加熱時や低加熱出力状態では、ワイドバンドギャップ半導体で構成した第1インバーター回路5のみを駆動して内側加熱コイル1のみに通電するようにしている。これにより、駆動周波数を高周波化してもスイッチング損失は小さく、また、接続されている第1スナバコンデンサ14の容量も小さいので、第1スナバコンデンサ14への突入電流が生じてもその電流は小さくなる。そのため、特に低加熱出力時におけるインバーター回路等で生じる損失の増大は抑えられ、加熱効率の低下を抑制することができる。
また、インバーター回路等で生じる損失を低減したことで、小径鍋の載置状態と無負荷状態の入力電力の差異が大きくなり、鍋を移動させて無負荷状態となったことを高い確度で検出することができる。
なお、実施の形態1乃至3に係る誘導加熱調理器の回路構成を図2に示したが、図23や図24に示すように、第1負荷回路6または第2負荷回路8の共振コンデンサ22、23の何れかと並列にクランプダイオード34、35を接続した構成としてもよい。
図23に示す誘導加熱調理器では、ワイドバンドギャップ半導体のMOSFETとSBDで構成された第1インバーター回路5の出力に接続された第1負荷回路6の共振コンデンサ22と並列にクランプダイオード34を接続している。下スイッチ13が導通して共振コンデンサ22に充電された電荷の放電が完了するとクランプダイオード34が導通するため、共振コンデンサ22に逆方向の充電状態が生じず、循環電流の流れる状態となる。そのため、下スイッチ13の導通時間を長くしても負荷電流(コイル電流)の転流は生じず、下スイッチ13の導通状態から上スイッチ12の導通状態へとスイッチングを行う際にハードスイッチングとならず、大きなスイッチング損失を回避できる。
したがって、第2インバーター回路7の駆動周波数に合わせて第1インバーター回路5を駆動することとしても、その下スイッチ13の導通状態において負荷電流が転流することはないので、その上スイッチ12の導通時間を負荷電流が転流しない範囲で調整すれば、インバーター回路における損失を抑制し、加熱効率の低下を抑えることができる。
また、図24に示す誘導加熱調理器では、第1および第2インバーター回路5、7の出力に接続された第1および第2負荷回路6、8の共振コンデンサ22、23と並列にクランプダイオード34、35を接続しているため、いずれのインバーター回路5、7の下スイッチ13、18の導通時間を長くしても負荷電流の転流は生じない。そのため、第1および第2インバーター回路5、7の上スイッチ12、17の導通時間を負荷電流の転流しない範囲で調整すれば、駆動周波数は一定で動作させたりすることもできる。
実施の形態4.
図25は実施の形態4に係る誘導加熱調理器の加熱コイルの構成を示す図である。
本実施の形態の加熱コイルは、図中に示すように、内側加熱コイル1と、その外周側に配置された複数の外側加熱コイル2a、2b、2c、2dとから構成されている。内側加熱コイル1は、図示していないが、天板に設けられた円形状の加熱口の軸心を中心としてその天板の下方に設けられている。そして、外側加熱コイル2a、2b、2c、2dは、前述したように内側加熱コイル1の外周に配置されている。
図26は実施の形態4に係る誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。なお、実施の形態1と同様の部分には同じ符号を付している。
本実施の形態の誘導加熱調理器における第2負荷回路8aは、内側加熱コイル1の外周に配置された複数の外側加熱コイル2a、2b、2c、2dが互いに並列に接続され、その共振コンデンサ23aと直列に接続されている。
図27は実施の形態4の変形例である誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。なお、実施の形態1と同様の部分には同じ符号を付している。
本実施の形態の誘導加熱調理器における第2負荷回路8bは、内側加熱コイル1の外周に配置された複数の外側加熱コイル2a、2b、2c、2dが直列に接続され、その共振コンデンサ23bと直列に接続されている。
これの実施の形態においても、小径鍋が載置された状態や低加熱出力状態においては、ワイドバンドギャップ半導体で構成した第1インバーター回路5のみを駆動して内側加熱コイル1のみに電流を供給する。これにより、加熱口周辺に漏洩する磁束を低減でき、インバーター回路等における損失を抑制でき、低入力電力を実現できる。
また、大径鍋が載置された状態や高加熱出力状態においては、第1および第2インバーター回路5、7を駆動して内側加熱コイル1と外側加熱コイル2a、2b、2c、2dに高周波電流を供給することにより、広く加熱することで加熱むらを改善でき、高入力電力を実現できる。
そして、小径鍋の載置状態においても、大径鍋の載置状態においても、低加熱出力状態においても、高加熱出力状態においても、内側加熱コイル1に高周波電流を供給する第1インバーター回路5にSiC等のワイドバンドギャップ半導体のMOSFETやSBDを使用しているので、インバーター回路における損失を低減でき、加熱効率を改善することができる。
特に小径鍋の載置状態かつ低加熱出力状態では、ワイドバンドギャップ半導体で構成した第1インバーター回路5のみを駆動して、内側加熱コイル1のみに通電するようにしている。これにより、駆動周波数を高周波化してもスイッチング損失は小さく、また、接続されている第1スナバコンデンサ14の容量も小さいので、第1スナバコンデンサ14への突入電流が生じてもその電流は小さくなる。そのため、低加熱出力時におけるインバーター回路等で生じる損失は抑えられ、加熱効率の低下を抑制することができる。
また、インバーター回路等で生じる損失を低減したことで、小径鍋の載置状態の低加熱出力時においても、インバーター回路等で生じる損失に対して鍋底に生じる誘導渦電流による加熱電力が十分に大きくなる。また、小径鍋の載置状態と無負荷状態の入力電力の差異を大きくすることができたので、鍋を移動させて無負荷状態となったことを高い確度で検出することができる。