ところで、従来のパチンコ機では、前扉と上皿部材の閉止時に遮蔽板部を凹溝部に差し込み可能とするために、遮蔽板部と凹溝部が略同じ高さ位置に設けられると共に、遮蔽板部が凹溝部よりも前方に配置されている。こうした構造のため、前扉を開放して遮蔽板部を凹溝部の前方に退避させてからでなければ、上皿部材を開放できないようになっている。また、前扉と上皿部材の開放状態においても、遮蔽板部と凹溝部が衝突するため、前扉を上皿部材より後方には回動できないようになっている。それゆえに、従来のパチンコ機では、発射レールの角度調整や発射装置の修理作業等の際に、上皿部材を開放し、部材取付部を露出させて作業する必要があるが、この際に前扉も開放して遊技盤前面を露出させなければならない。
このため、かかる作業中に作業者が誤って遊技盤に接触して、遊技盤面上の遊技部品(入賞装置や演出用可動装置)や遊技釘の取付位置や角度が変化してしまう懸念がある。
また、上記作業中に作業者が作業場所を離れた場合に、作業者以外の者が、例えば遊技釘間を広げるなど、遊技盤上の遊技部品に対して不正に手が加えられる恐れもある。
また、発射レールの角度調整などの作業では、レールの角度を変更するたびに遊技球の試射を行う必要があるが、試射の際には前扉を閉止して発射した遊技球が遊技盤前面から零れ落ちるのを防止しなければならないため、レールの角度を変更する度に前扉と上皿部材を開閉しなければならない。
さらに、上記作業中は、上皿部材の前方で自由に回動可能となっているため、前扉がさらに開放して隣接するパチンコ機に衝突したり、営業中のパチンコ店では隣席の遊技の邪魔となる恐れがある。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、前扉と上皿部材の隙間を介した不正行為を防止しつつ、上皿部材の開放状態で、前扉を閉止し得るパチンコ機の提供を目的とする。
本発明は、略中央の開口部に遊技盤が装着された前枠体と、前枠体に片開き可能に取り付けられて遊技盤前面を覆う前扉と、遊技球を貯留可能な貯留皿を矩形の上皿パネルの前面に配設してなるものであって、前枠体の、前扉の直下位置に片開き可能に取り付けられる上皿部材とを備えてなり、前扉の下縁に、略全幅に亘って後方へ遮蔽板部が突成されると共に、上皿部材の上縁に、略全幅に亘って前方に開口する凹溝部が形成され、前扉と上皿部材の閉止状態において、遮蔽板部が凹溝部に差し込まれることとなるパチンコ機において、上皿パネルには、凹溝部が形成された可動部材が取り付けられており、該可動部材は、凹溝部を、遮蔽板部を差込み可能な高さとする定常位置と、凹溝部を遮蔽板部と当接しない高さとする退避位置とに変位可能となっていることを特徴とするパチンコ機である。
かかる構成にあっては、上皿部材の閉止状態において可動部材を定常位置に位置させ、凹溝部に遮蔽板部を差し込んで係合させることによって、前扉と上皿部材との隙間を介する不正行為を防止することができる。一方で、上皿部材の開放状態では、可動部材を退避位置に変位させて遮蔽板部と凹溝部の衝突を回避させることによって、前扉を上皿部材の後方に回動させることが可能となる。従って、本発明によれば、前扉と上皿部材の隙間を介した不正行為を防止しつつ、上皿部材の開放状態で前扉のみを閉止することが可能となる。
具体的には、可動部材は、回動可能となるように上皿パネルの上部に幅方向に軸支され、凹溝部を回動軸から起立させて、遮蔽板部を差込み可能な高さとする定常位置と、該凹溝部を回動軸の後方に傾倒させて、遮蔽板部と当接しない高さとする退避位置とに変位可能なものである構成が提案される。かかる構成によれば、作業者は、可動部材を回動させるだけで、可動部材を定常位置と退避位置とに簡単に移動させることができる。
上記構成のように、可動部材を回動可能とした場合には、前扉と上皿部材の閉止状態で遮蔽板部と凹溝部を係合させても、前扉と上皿部材の隙間に不正器具を押し入れることによって凹溝部が傾倒し、係合が解除されてしまう恐れがある。このため、可動部材を回動可能とした構成では、可動部材を定常位置に保持するための支持手段を設けることが望ましい。具体的な構成としては、前枠体に、上皿部材の閉止状態で可動部材に後方から当接し、可動部材を定常位置に支持する支持部材が配設されている構成が提案される。かかる構成にあっては、上皿部材の開放状態では、可動部材を定常位置と退避位置とに自由に回動させることができるが、上皿部材の閉止時に、可動部材を定常位置としておけば、可動部材は支持部材によって後方から支持されることとなり、定常位置に保持されることとなる。
また、可動部材を変位可能とする別の構成として、可動部材は、上皿パネルに対して昇降可能に取り付けられて、上方に変位した位置を定常位置とし、下方に変位した位置を退避位置とするものであり、さらに、上皿部材には、可動部材を定常位置に付勢する付勢手段が設けられている構成が提案される。かかる構成によれば、可動部材は通常は付勢手段によって定常位置に付勢されており、作業者は、可動部材を下方に押し下げて、退避位置に変位させることによって、前扉を上皿部材の後方に回動させることができる。また、可動部材は、上皿部材や前扉の回動方向と直交する方向に移動するため、遮蔽板部を凹溝部に差し込んだ状態で遮蔽板部が凹溝部から外れ難くなる。ここで、本構成では、可動部材を付勢手段に抗して退避位置に保持可能とする係止手段を備えることが提案される。かかる構成とすれば、作業者は、退避位置に変位させた可動部材を係止手段によって退避位置に留めておくことによって、可動部材を何度も押し下げることなく、前扉と上皿部材とを前後にすれ違わせることが可能となる。
また、上皿パネルには、凹溝部が形成された可動部材が係止されており、該可動部材は、上皿部材の開放状態において、上皿パネルに対して係脱可能となる構成も提案される。かかる構成によれば、通常は、凹溝部が形成された可動部材を上皿パネルに係止しておくことによって不正器具の侵入を防止すると共に、上皿部材の開放状態にあっては、作業者は、必要に応じて可動部材を取り外すことによって、前扉と上皿パネルを相互に衝突させることなく自由に回動可能となる。ここで、可動部材を係脱可能とする機構は、一方に形成した溝孔と他方に形成した突部とを係合させる程度の簡単な機構とし、作業者が、道具を用いることなく、可動部材を簡単に係脱できるようにすることが望ましい。なお、かかる構成の場合には、上皿部材の閉止状態で、可動部材の係止状態の異常を検知する取付検知手段と、該取付検知手段が係止状態の異常を検知した場合に、当該異常の発生を報知する異常報知手段とを備えることが提案される。かかる構成によれば、可動部材を上皿パネルから外したままで上皿部材を閉止すると、取付検知手段が、可動部材の係止状態が異常であると検知して、異常の発生が異常報知手段によって作業者に報知されることとなる。
以上に述べたように、本発明は、上皿パネルに、凹溝部が形成された可動部材が取り付けられ、該可動部材が、凹溝部を、遮蔽板部を差込み可能な高さとする定常位置と、凹溝部を遮蔽板部と当接しない高さとする退避位置とに変位可能となっているパチンコ機であるから、上皿部材の開放状態において、前扉を上皿部材の後方に回動させることができ、上皿部材を開放して発射レールの角度調整や発射装置の修理などの作業を行う際に、前扉を閉止しておくことが可能となる。従って、本発明のパチンコ機では、かかる作業中に、遊技盤上の遊技部品を保護することができ、また、前扉が隣のパチンコ機に衝突したり、隣席の遊技の邪魔をする恐れもない。さらには、発射レールの角度調整等の作業においては、上皿部材を開放したまま試射を行うことができるといった利点がある。また、本発明は、上記利点を有すると共に、前扉と上皿部材の閉止状態においては、従来構成同様に、遮蔽板部と凹溝部とを係合させて、前扉と上皿部材の隙間を介した不正行為を防止できるといった利点も併せ持つ。
ここで、可動部材は、回動可能となるように上皿パネルの上部に幅方向に軸支され、凹溝部を回動軸から起立させる位置を定常位置とし、凹溝部を回動軸の後方に傾倒した位置を退避位置とするものである場合には、簡易な構造によって可動部材を移動可能に保持できると共に、作業者が可動部材を容易に変位させることができるといった利点がある。
さらに、上記構成にあって、前枠体に、上皿部材の閉止状態で可動部材に後方から当接し、可動部材を定常位置に支持する支持部材が配設されている場合には、上皿部材の閉止状態で、可動部材を定常位置に確実に保持することができ、前扉と上皿部材の隙間を介した不正行為を確実に防止することができる。
また、可動部材は、上皿パネルに対して昇降可能に取り付けられて、上方に変位した位置を定常位置とし、下方に変位した位置を退避位置とするものであり、さらに、上皿部材に、可動部材を定常位置に付勢する付勢手段が設けられている場合には、作業者は、前扉と上皿部材の前後を入れ替える時に、可動部材を退避位置に押し下げ操作するだけで済み、可動部材を定常位置に復帰させる操作を要しない。
さらに、上記構成にあって、可動部材を付勢手段に抗して退避位置に保持可能とする係止手段を備えた場合には、作業者は、係止手段によって可動部材を退避位置に留めておくことによって、可動部材を何度も押し下げることなく、前扉と上皿部材とを繰返しすれ違わせることができる。
また、上皿パネルに凹溝部が形成された可動部材が係止され、上皿部材の開放状態において、該可動部材が係脱可能となるパチンコ機にあっても、上皿部材の開放時に可動部材を上皿パネルから取り外すことによって、前扉を上皿部材の後方に回動させて前扉のみを閉止することができる。特に、本構成では、凹溝部を移動可能とする構成よりも構造を簡略化でき、また、可動部材を一旦取り外せば、前扉と上皿パネルを相互に衝突させることなく自由に回動できるという利点がある。
さらに、上記構成にあって、上皿部材の閉止状態で、可動部材の係止状態の異常を検知する取付検知手段と、該取付検知手段の異常検知時に、当該異常の発生を報知する異常報知手段とを備える場合には、作業者は、上皿部材を閉じる際に、異常報知手段からの報知の有無によって、可動部材の係止状態の異常や可動部材の付け忘れがないか否かを確認することができ、上皿部材を適切に閉止することができる。
本発明の実施形態を、以下の実施例に従って説明する。
<第一実施例>
本実施例のパチンコ機1は、図1,図2に示すように、遊技島設備(図示省略)に固定される外枠2と、該外枠2の前面開口部を覆う遊技機本体3とからなる。
遊技機本体3は、前記外枠2に開閉可能に軸支された前枠体4と、該前枠体4に装着された各種遊技部材とにより構成されている。前枠体4の略中央には矩形の開口部8が形成されており、該開口部8を塞ぐように遊技盤5が装着される。また、開口部8の下方部位には部材取付部19が形成されており、その前面には、発射された遊技球を遊技盤面に案内する発射レール12や各種の効果音を発するスピーカ14が取り付けられる。また、遊技機本体3の下部には、図2に示すように、上皿部材7の下方に位置させて下皿部材9が前枠体4と一体に形成されており、該下皿部材9の右側方に発射ハンドル10が配設される。さらに、発射ハンドル10の背面側には、後述する整流器23から一個ずつ供給される遊技球を遊技盤面に打ち出す発射槌11(図1参照)を備えた球発射装置(図示省略)が配設されている。ここで、該発射槌11は発射レール12の始端の発射位置に臨ませて設けられており、該発射位置に供給された遊技球を打圧し得るようになっている。また、部材取付部19の上部両側には、後述する可動部材30を支持する支持部材16a,16bが配設される(図1,4,5参照)。この支持部材16a,16bは、本発明の要部に係るため詳細は後述する。
前枠体4の左側縁には、図1に示すように、遊技盤面を視認可能な状態で保護する前扉6がヒンジ部材(図示省略)を介して片開き可能に枢支される。この前扉6は、金属製のガラス枠41に矩形のガラス板40を嵌め込んでなるものであり、ガラス板40によって遊技盤5を前面から覆う閉止状態(図2参照)と、前方回動して遊技盤5を開放する開放状態(図1参照)とに変換可能となっている。ここで、前扉6は、通常状態では前枠体4に設けられた施錠機構15によって閉止状態で係止されており、保守点検等にのみ作業者が開放するようになっている。また、図3に示すように、前扉6のガラス枠41の下縁には、後方へ突出して、後述する上皿部材7の凹溝部31と係合する遮蔽板部42が略全幅に亘って形成される。なお、本実施例の遮蔽板部42の構造は、従来構成と同様であるため詳細な説明は省略する。
また、前扉6の直下位置には、発射用の遊技球を貯留するための上皿部材7がヒンジ部材(図示省略)を介して片開き可能に枢支される。この上皿部材7は、横長矩形状の金属板からなる上皿パネル20の前面に、遊技球を貯留可能な樹脂製の貯留皿21を配設してなるものであり、その閉止状態で、前枠体4の部材取付部19を前方から覆う閉止状態と、前方回動して部材取付部19を開放する開放状態とに変換可能となっている。
上皿パネル20の右端部には、図1に示すように、前枠体4と係合する上皿係止突片24が配設される。上皿部材7は、通常状態では、この上皿係止突片24によって閉止状態で係止されており、保守点検等にのみ作業者が開放するようになっている。前枠体4と上皿部材7の係合は、前扉6の開放状態で、上皿係止突片24の上部を押し下げることによって解除できる。
上皿部材7の左側部には、賞球や貸球等の遊技球を貯留皿21に排出するための球放出口13が形成される。また、貯留皿21の右奥には、貯留した遊技球を一列状に整列させる案内路27が形成される。貯留皿21に貯留される遊技球は、この案内路27で整列後、図示しない球出口から上皿パネル20の裏面側へ流出する。上皿パネル20の裏面右側には、案内路27から導出される遊技球を発射位置に供給する整流器23が配設される。貯留皿21から流出した遊技球は、この整流器23に流入し、発射槌11の動きに合わせて一球ずつ発射位置に送出されることとなる。
以下に、本発明の要部に係る構成を詳細に説明する。
本実施例の上皿部材7では、凹溝部31は、上皿パネル20に回動可能に軸支された可動部材30によって形成される。
可動部材30は、図6に示すように、上皿パネル20と略同幅の杆状の凹溝部31と、該凹溝部31の下部両端に設けられた回動軸32,32とで構成される。凹溝部31は、横長金属板片を成形加工してなるものであって、図6,7に示すように、前方に開口する断面略コ字状をなす。回動軸32は、凹溝部31の下部から延成された金属突部と、該金属突部に保持された円柱状の樹脂材とにより構成される。
また、図6に示すように、上皿パネル20の背面両側部には軸受部25,25が螺着されており、可動部材30の回動軸32は、この軸受部25を介して、上皿パネル20の幅方向に軸支される。また、上皿パネル20の背面中央部には、可動部材30の回動を規制する断面逆L字状のストッパ片26が固定される。
上皿パネル20に軸支された可動部材30は、図7に示すように、凹溝部31を回動軸32から起立させる定常位置αと、凹溝部31を回動軸32の後方に傾倒させる退避位置βとに変位可能となる。可動部材30の定常位置αでは、凹溝部31は、上皿パネル20の上縁より上方に突出し、開口を前方に向ける。一方、退避位置βでは、凹溝部31は上皿パネル20の上縁よりも下方に位置し、その開口を上方に向ける。なお、可動部材30は、上皿パネル20によって定常位置αから前方への回動を規制され、ストッパ片26によって退避位置βより下方への回動を規制される。
上述したように、上皿部材7の上方には前扉6が片開き可能に軸支されており、前扉6のガラス枠41の下縁に、後方へ突出する遮蔽板部42が略全幅に亘って形成される(図3参照)。ここで、図7(ロ)に示すように、前扉6の下縁は、上皿部材7の上縁より僅かに高い位置を回動するようになっており、可動部材30が定常位置αにある状態では、遮蔽板部42を凹溝部31内に前方から差込み可能となる。一方で、可動部材30が退避位置βにある状態では、凹溝部31は上皿パネル20の上縁よりも下方に位置するため、図7(ハ)に示すように、前扉6と上皿部材7を相対回動しても、遮蔽板部42と凹溝部31とは当接せず、図8に示すように、前扉6と上皿部材7とをすれ違わせることが可能となる。
また、上述したように、部材取付部19前面の上部両側には可動部材30を支持する支持部材16a,16bが配設される(図1参照)。この支持部材16a,16bの前面には、図4,5に示すように、略全幅に亘る収納支持部35が形成される。この収納支持部35は、図7(イ)に示すように、上皿部材7の閉止時に、定常位置αにある可動部材30に後方から当接するようになっており、これにより凹溝部31の後方への傾倒を規制して、可動部材30を定常位置αに保持する働きをする。また、収納支持部35の直下には前方に突出する衝突部36が形成される。この衝突部36は、可動部材30を退避位置βとしたままで上皿部材7を閉じようとした場合に、後方に傾倒した凹溝部31と衝突するようになっており、上皿部材7が不適切に閉止されるのを阻止する働きをする。
また、左側の支持部材16aの前面上部には、前扉開閉スイッチ17が検知部を前方に突出するようにして配設される。この前扉開閉スイッチ17は、前扉6の閉止状態で遮蔽板部42によって検知部を押圧されて検知信号を出力する。一方、右側の支持部材16bの、収納支持部35の前面には、可動部材検出スイッチ18が検知部を前方に突出するようにして配設される。この可動部材検出スイッチ18は、上皿部材7の閉止状態で、収納支持部35に当接する可動部材30によって検知部を押圧されて検知信号を出力する。なお、これらのスイッチ17,18は、遊技を制御する遊技制御基板へ検知信号を出力するようになっており、遊技制御基板が、これらの検知信号によって、前扉6と上皿部材7の閉止状態とを判断するようになっている。ここで、本実施例では、遊技制御基板は、いずれかのスイッチ17,18から検知信号が出力されていない場合は、メンテナンス中また異常発生中とみなし、発射装置を停止させると共に入賞口への入賞を無効とし、遊技を強制的に停止させる。ただし、前扉開閉スイッチ17が検知信号を出力している場合は、遊技球の試射を可能とするために、可動部材検出スイッチ18が検知信号を出力していなくても、発射装置は作動可能とする。
次に、本実施例の前扉6と上皿部材7の開閉態様について説明する。
前扉6と上皿部材7を閉止した状態にあっては、図7(イ)に示すように、可動部材30は定常位置αに位置し、その凹溝部31には遮蔽板部42が差し込まれ、凹溝部31と遮蔽板部42が相互に係合する。このため、従来構成同様に、前扉6と上皿部材7との隙間は入り組んだものとなり、当該隙間への不正器具の侵入が困難となる。なお、かかる状態では、前記収納支持部35が可動部材30に後方から当接することによって、可動部材30は定常位置αに保持される。
前扉6と上皿部材7の閉止状態では、前扉6の施錠を解除すれば、上皿部材7を閉じたまま前扉6のみを開放できる。一方、上皿部材7の凹溝部31には、前扉6の遮蔽板部42が前方から差し込んでいるため、上皿部材7を開放する場合は、先に前扉6を開放しておかなくてはならない。従って、上皿部材7を開放した時には、図8(イ)に示すように、前扉6は上皿部材7より前方に回動した状態にある。この状態では、図7(ロ)に示すように、可動部材30が定常位置αにある限りは、遮蔽板部42が凹溝部31に衝突するため、前扉6を上皿部材7の後方に回動させることはできない。ただし、可動部材30は支持部材16a,16bと離間して退避位置βに変位可能であるため、作業者が手で退避位置βへ回動させれば、図7(ハ),図8(ロ)に示すように、遮蔽板部42を凹溝部31に衝突させずに前扉6を上皿部材7の後方に回動させることができる。従って、本実施例のパチンコ機1では、図9に示すように、上皿部材7を開放したまま前扉6のみを閉止できる。
なお、上述のように、上皿部材7を開放したまま前扉6を閉止可能であるが、前扉6と上皿部材7とを閉止する場合には上皿部材7を先に閉止する。前扉6を先に閉止すると、遮蔽板部42と凹溝部31を係合させることができないためである。
また、上皿部材7を閉止する際には、凹溝部31が遮蔽板部42と係合可能となるように、可動部材30を定常位置αに保持した状態で行う。なお、本実施例では、上述のように、可動部材30が退避位置βにある状態で上皿部材7を閉止しようとしても、可動部材30が支持部材16a,16bの衝突部36にぶつかって、上皿部材7を閉止できないようになっている。
このように、本実施例のパチンコ機1では、上皿部材7の開放状態において、可動部材30を退避位置βに変位させることによって、前扉6を上皿部材7の後方に回動でき、図9に示すように、前扉6のみを閉止することができる。これにより、上皿部材7を開放して発射レールの角度調整や発射装置の修理などの作業を行う際に、遊技盤5上の遊技部品を保護することができ、また、かかる作業中に開放状態の前扉6が、保守作業や隣席の遊技の邪魔となることもなくなる。さらには、図9の状態で、作業者が発射位置に遊技球を補充すれば、上皿部材7を開放したまま試射を行うこともできる。
また、本実施例では、前扉6と上皿部材7の閉止状態では、可動部材30を定常位置αに位置させることにより、凹溝部31と遮蔽板部42とを係合させることができ、従来構成同様に、前扉6と上皿部材7の隙間を介した不正行為を防止することができる。特に、前扉6と上皿部材7の閉止状態では、支持部材16a,16bによって可動部材30を定常位置αに支持しているため、不正器具等を押し入れたとしても凹溝部31は傾倒せず、遮蔽板部42と凹溝部31の係合が確実に維持されるようになっている。
また、本実施例では、支持部材16a,16bの前面下部に、前方に突出する衝突部36を設けることによって、可動部材30が退避位置βにある状態では上皿部材7を閉止できないようにしている。このため、前扉6と上皿部材7の閉止状態では、可動部材30は必ず定常位置αに保持され、遮蔽板部42と凹溝部31は確実に係合することとなる。
なお、本実施例は、可動部材30を手動で退避位置に変位させるものであるが、前扉を上皿部材の後方へ回動する際に、遮蔽板部を凹溝部に衝突させることによって、可動部材が自然に定常位置から退避位置に回動する構成としてもよい。具体的には、凹溝部の内側に円滑な湾曲面を形成し、該湾曲面に遮蔽板部が当接した際に可動部材を退避位置に回動させる案内作用が生じるようにすることが提案される。
また、可動部材30は、前扉6と上皿部材7をすれ違わせる時にのみ退避位置にあればよいから、バネ等の付勢手段によって可動部材30を定常位置に付勢しておくことも提案される。また、上記実施例では、凹溝部31が回動軸32の後方に傾倒した位置を可動部材30の退避位置βとしているが、回動軸の前方に傾倒した位置を退避位置としてもよい。
<第二実施例>
次に、上皿パネルに対して可動部材を昇降可能に取り付けた第二実施例について説明する。なお、本実施例は、上皿部材以外の構成は上記第一実施例と同じであるため、それらの説明は省略する。
本実施例の可動部材50は、横長金属板片を成形加工してなるものであり、図10,11に示すように、この可動部材50の上部には、第一実施例と略同形状をなし、前方に開口する断面略コ字状の凹溝部51が形成される。この凹溝部51の下方には、上皿パネル20aの背面に対して摺動する平板状の摺動部52が形成される。この摺動部52の両端部及び中央部には、逆L字形をなす摺動溝54が二箇所ずつ形成される。また、摺動部52の下端には、後述する板バネ体56と当接する当接部53が後方に延成される。
可動部材50は、上皿パネル20aの背面側に摺動部52を接するように取り付けられ、一対の保持板55a,55bによって保持される。この保持板55a,55bは、図10〜12に示すように、摺動部52の摺動溝54と上皿パネル20aとを貫通し、摺動部52と上皿パネル20aを挟み込むように螺着されるものであり、これにより可動部材50は摺動溝54の範囲内で昇降可能に保持される。
また、上皿パネル20a背面の、保持板55a装着部位の下方部位には、可動部材50を上方に付勢する板バネ体56が夫々取り付けられる。この板バネ体56は、可動部材50の下部に形成された当接部53に夫々圧接し、その弾性力によって可動部材50を上方へ付勢する。
本実施例では、図12(イ)に示すように、可動部材50を可能な限り上昇させた位置を可動部材50の定常位置γとする。この定常位置γでは、凹溝部51が上皿パネル20aの上方に突出し、遮蔽板部42を凹溝部51に差込み可能となる。一方、図12(ロ)に示すように、可動部材50を可能な限り下降させた位置を可動部材50の退避位置δとする。かかる退避位置δでは、凹溝部51が遮蔽板部42と当接しない高さに位置することとなる。なお、可動部材50は、板バネ体56により上方に付勢されるため、通常は定常位置γに保持される。すなわち、本実施例では、可動部材50を定常位置γに付勢する付勢手段は板バネ体56により構成される。従って、本実施例では、作業者が、板バネ体56の弾性力に抗して可動部材50を押し下げることによって、可動部材50を退避位置δに変位させる。ここで、本実施例では、摺動溝54は逆L字状に形成されており(図11参照)、可動部材50を退避位置δに押し下げた状態で、可動部材50を右方向にスライドすると、可動部材50と保持板55a,55bが係合して、可動部材50が退避位置δに係止されるようになっている。すなわち、本実施例では、可動部材50を付勢手段に抗して保持可能とする係止手段は、この逆L字状の摺動溝54と保持板55a,55bによって実現される。
このように、本実施例にあっても、可動部材50を定常位置γに位置させることにより、凹溝部51と遮蔽板部42を係合させて、前扉6と上皿部材7の隙間を介した不正行為を防止することができ、また、可動部材50を押し下げて退避位置δに変位させることにより、図12(ハ)に示すように、遮蔽板部42を凹溝部51に衝突させることなく、前扉6を上皿部材7aの後方に回動し、前扉6のみを閉止することが可能となる。
特に、本実施例では、可動部材50が付勢手段によって定常位置γに付勢されるため、可動部材50を退避位置δに変位させた後で、可動部材50を退避位置δに復帰させる操作が不要であるといった利点がある。一方で、可動部材50を退避位置δでスライドさせることにより、可動部材50を退避位置δに係止することもできる。このため、必要な時には、可動部材50を退避位置δに係止するようにすれば、可動部材50を一度押し下げるだけで、前扉6と上皿部材7を繰り返しすれ違わせることができる。また、本実施例では、図12(イ)に示すように、遮蔽板部42と凹溝部51の係合状態では、可動部材50は遮蔽板部42によって下降不能に規制されるため、上皿部材7aを定常位置γに支持する支持手段が必要ないといった利点もある。
<第三実施例>
次に、上皿パネルに対して係脱可能な可動部材に凹溝部を形成した第三実施例について説明する。なお、本実施例は、上皿部材7以外の構成は上記第一実施例と同じであるため、それらの説明は省略する。
本実施例の可動部材60は、図13,14に示すように、上皿パネル20bと略同幅の金属板片を成形加工してなるものである。この可動部材60は、第一実施例と略同形状の凹溝部61と、該凹溝部61の両側部及び中央部から下方に延成される断面L字状の差込突片62とで構成される。
一方、上皿パネル20bには、その上端に、可動部材60を係止するための載置部63が略全幅に亘って後方に延成される。この載置部63の両端部と中央部には、横長溝状の係合孔64が形成されており、可動部材60は、その差込突片62を各係合孔64に係入することによって、上皿パネル20bの上端に係止される。
可動部材60の係脱手順を説明する。まず、図13,15(イ)は、可動部材60を上皿パネル20bに係止した状態を示す。かかる状態では、凹溝部61は上皿パネル20bの載置部63上に保持されて前方に開口し、凹溝部61に遮蔽板部42を差込み可能となる。ここで、凹溝部61に遮蔽板部42を差し込んだ状態では、可動部材60は遮蔽板部42によって前方から支持されて、上皿パネル20cから取外し不能となる。従って、本実施例においても、前扉6と上皿部材7cとを閉止した状態で、凹溝部61と遮蔽板部42とを係合させておけば、前扉6と上皿部材7cの隙間を介した不正行為を確実に防ぐことができる。
一方、可動部材60を上皿パネル20bから取り外す場合は、図15(ロ),図16(ハ)に示すように、可動部材60を後転させるように移動させて、差込突片62を係合孔64から離脱させる。これにより、凹溝部61を上皿パネル20bから分離することができ、遮蔽板部42を凹溝部61と衝突させることなく、前扉6を上皿部材7の後方へ回動することができる。なお、可動部材60を再度取り付ける場合は、取り外す手順と逆の手順を行い、差込突片62を係合孔64に係入すればよい。
このように、本実施例の上皿部材7bによっても、上皿部材7bの開放状態で、可動部材60を取り外すことによって、遮蔽板部42を凹溝部61に衝突させることなく、前扉6を上皿部材7bの後方に回動し、前扉6のみを閉止することができる。特に、本実施例の可動部材60は、第一実施例や第二実施例よりも保持機構が簡単であるため、低廉に実現できるという利点がある。また、可動部材60を一旦取り外せば、前扉6と上皿部材7bとを相互に衝突させることなく自由に回動できるという利点もある。
また、本実施例では、図14に示すように、載置部63の、係合孔64形成部位の底面側に板状磁石65が固着されており、図16(ニ)に示すように、取り外した可動部材60の差込突片62を該磁石65に付着させることによって、可動部材60を保持可能としている。このため、本実施例では、取り外した可動部材60を載置しておく手間やスペースを要せず、作業を効率よく行えるといった利点がある。
また、本実施例では、遊技制御基板は、前扉開閉スイッチ17から検知信号が入力されており、且つ、可動部材検出スイッチ18から検出信号が入力されていない場合には、可動部材60の係止状態が異常であると判定し、スピーカ14に警告音を出力させて、かかる異常を作業者に報知するようになっている。これにより、本実施例では、可動部材60を取り外した状態でも上皿部材7bを閉止可能であるが、可動部材60の付け忘れを確実に防止できると共に、作業者は、上皿部材7bを閉止した状態で可動部材60が適切に取り付けられているか否かを、報知の有無によって確認できる。
なお、本実施例では、可動部材60を、上皿パネル20bの載置部63に形成した係合孔64に係入するようにしているが、可動部材60と上皿パネル20bとの係脱機構は様々に変更可能である。また、本実施例では、本発明に係る取付検知手段を、可動部材検出スイッチ18及び遊技制御基板によって構成し、また、係止状態の異常を報知する異常報知手段をスピーカ14によって構成しているが、異常報知手段は液晶表示器やランプ等によって構成することもできる。
<第四実施例>
次に、第三実施例から、取付部材の係止機構を変更した第四実施例について、図17〜20を参照して説明する。なお、本実施例は、上皿部材以外の構成は上記第三実施例と同じであるため、それらの説明は省略する。
本実施例の上皿パネル20cと可動部材70は、上記第三実施例と略同形をなす。すなわち、可動部材70は、断面略コ字状の凹溝部71と、該凹溝部71の両側部及び中央部から下方に延成される断面L字状の差込突片72とで構成される。そして、その差込突片72を、上皿パネル20cの載置部73に形成された係合孔74に係入するようになっている。
ここで、上記第三実施例(図15参照)と比較して、本実施例では、図19に示すように、凹溝部71の前後幅が狭くなっており、また、差込突片72の上下幅が広くなっている。さらに、上皿パネル20cの係合孔74は、その前後幅が狭くなっている。これにより、本実施例では、以下のような可動部材70の係脱態様が実現される。
図19,20に、可動部材70の係脱態様を示す。19(イ)は、可動部材70を上皿部材7cに係止した状態を示す。かかる状態では、凹溝部71が上皿パネル20cの載置部73上に保持されて前方に開口し、該凹溝部71に遮蔽板部42を差込み可能となる。そして、この可動部材70を上皿パネル20cから取り外す場合は、可動部材70を一旦上方に引き上げて(図19(ロ))、その状態から可動部材70を後方に傾倒させる(図20(ハ),(ニ))。さらに、この状態から可動部材70を引き上げることによって、差込突片72を係合孔74から離脱させ、凹溝部71を上皿パネル20cから分離することができる。可動部材70を再度取り付ける場合は、取り外す手順と逆の手順を行い、差込突片72を係合孔74に係入すればよい。
このように、本実施例の上皿部材7cによっても、上皿部材7cの開放状態で、可動部材70を取り外すことによって、前扉6を上皿部材7bの後方に回動し、前扉6のみを閉止することができる。なお、本実施例では、図20(ニ)に示すように、可動部材70を後方に傾倒させた状態で、上皿パネル20cの載置部73に保持可能となっており、また、かかる状態で、凹溝部71は遮蔽板部42と当接し得ない高さとなる。従って、本実施例では、可動部材70をわざわざ取り外すことなく、図20(ニ)のように後方傾倒させるだけで、前扉6を上皿部材7cの後方に回動できるといった利点がある。
尚、本発明のパチンコ機は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
また、上記実施例では、上皿部材の凹溝部を、可動部材に形成することによって上皿パネルに対して移動可能又は係脱可能とした構成であるが、これ以外に、凹溝部を、従来通り上皿パネルに一定形成すると共に、前扉の遮蔽板部を、ガラス枠に対して移動可能又は係脱可能とする構成も提案される。具体的には、前扉のガラス枠に、遮蔽板部が形成された移動部材が取り付けられており、該移動部材は、遮蔽板部を凹溝部に差込可能な高さとする定常位置と、遮蔽板部を凹溝部と当接しない高さとする退避位置とに変位可能となっている構成が提案される。なお、かかる移動部材をガラス枠に対して回動可能とする場合には、遮蔽板部が回動軸から垂下する位置を定常位置とし、遮蔽板部が回動軸の後方に変位した位置を退避位置とすることが望ましい。移動部材を前扉の前方に傾動可能とすると、前扉の閉止状態で、遊技者が移動部材を回動操作可能となり、不都合が生じるためである。