以下に本発明による車載制御装置を、車両のスロットルモータ電源のシステムに適用した実施形態について説明する。
本発明による車載制御装置7を、車両のスロットルモータ電源のシステムに適用した場合の機能ブロック構成は、図1に示すように、スロットルモータ7に電力を供給するためのバッテリ1と、イグニッションスイッチ2と、前記バッテリ1から前記車載制御装置7への電力の供給と遮断を切り替えるメインリレー3と、後述するスロットルモータ5等への過大な電力供給による破壊を防止するためのヒューズ4と、スロットルモータ5と、前記イグニッションスイッチ2の状態に係わらず動作する電子制御装置(ECU)である監視用制御装置6と、前記スロットルモータ5を制御する本発明による車載制御装置7等を備えて構成されている。
前記メインリレー3は、前記イグニッションスイッチ2のオンオフと連動してオンオフが切り替わる第一メインリレー31と、前記第一メインリレー31と並列に接続されており、前記監視用制御装置6または前記車載制御装置7によってオンオフ制御される第二メインリレー32と、前記第二メインリレー32のオンオフを切り替えるためのコイル321への電流の供給有無を切り替える第二メインリレースイッチ33とを備えて構成されている。
前記スロットルモータ5は、当該車両のエンジンの内燃部へ吸入する空気量を制御するスロットルバルブ(図示せず)を、車両の運転者のアクセルペダルの踏み込み量に基づいて駆動するように構成されている。
前記監視用制御装置6は、例えば、車両のエンジンキーが引き抜かれた状態においても起動していることが必要なセキュリティ等の用途に使用されるECUであり、本実施形態では、後述するように、車両のイグニッションスイッチ2がオフしている状態において、次段で説明する車載制御装置7のCPU78を定期的に起動するように構成されている。
前記車載制御装置7は、CPU78と、前記メインリレー3から前記スロットルモータ5への電力の供給と遮断を切り替えるスイッチ素子71と、前記スイッチ素子71の出力側電圧をアナログ値からデジタル値に変換して前記CPU78へ出力するA/D変換器72と、前記A/D変換器72へ入力するアナログ電圧に含まれるノイズ除去用のコンデンサ73と、前記バッテリ1の電圧をアナログ値からデジタル値に変換して前記CPU78へ出力する第二A/D変換器74と、前記スロットルモータ5を正逆駆動させるためのトランジスタブリッジ回路75を備えて構成されている。
前記スイッチ素子71は、前記イグニッションスイッチ2のオン時に前記バッテリ1から負荷への給電ラインを接続しオフ時から所定時間経過後に遮断する前記メインリレー3と直列に接続され、前記イグニッションスイッチ2のオンまたはオフに伴い前記メインリレー3から前記スロットルモータ5への給電ラインを接続または遮断するように構成されている。
詳述すると、前記スイッチ素子71は、ドレインソース間に形成されるボディダイオード711が逆方向となるように接続されたnチャネルのMOSFET712を備えて構成されており、前記MOSFET712は、ドレインが前記ヒューズ4に、ソースが前記トランジスタブリッジ回路75に、ゲートが前記CPU78に接続されている。そして、前記CPU78が前記MOSFET712のゲート電圧を制御することによって、前記MOSFET712の導通または遮断が切り替えられる。
つまり、前記イグニッションスイッチ2がオンまたはオフに切り替えられると、その切り替え情報を受け取った前記CPU78が、前記MOSFET712のゲート電圧を制御して、前記MOSFET712、つまり前記スイッチ素子71の導通または遮断が切り替えられる。
前記コンデンサ73は、例えば、前記スイッチ素子71の出力側電圧(図1の地点V1における電圧)に含まれるサージ電圧を吸収することでノイズを除去するように構成されており、前記コンデンサ73を用いることで、ノイズを除去して前記スロットルモータ5を良好に運転制御することができる。
前記トランジスタブリッジ回路75は、前記スイッチ素子71と前記スロットルモータ5との間に、4個のトランジスタQ1、Q2、Q3、Q4と4個のダイオードD1、D2、D3、D4とを備えて構成されており、前記CPU78が前記トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4のベースを制御することで前記トランジスタQ1、Q2、Q3、Q4のオンオフを制御し、前記スロットルモータ5の駆動を制御する。
例えば、前記トランジスタQ1とQ4をオンとすると、電流が前記トランジスタQ1から前記スロットルモータ5を介して前記トランジスタQ4へと流れて、前記スロットルモータ5は正方向に回転駆動し、前記トランジスタQ2とQ3をオンとすると、電流が前記トランジスタQ2から前記スロットルモータ5を介して前記トランジスタQ3へと流れて、前記スロットルモータ5は逆方向に回転駆動する。
前記トランジスタブリッジ回路75は、前記スロットルバルブの開度をPWM(パルス幅変調)制御により所定の開度に制御する。つまり、前記スロットルバルブを所定の開度に維持させたい場合は、前記トランジスタQ1とQ4をオンとする時間と前記トランジスタQ2とQ3をオンとする時間の比を同一として前記スロットルモータ5を回転駆動させず、一方、前記スロットルバルブの開度を大きく又は小さくしたい場合は、前記トランジスタQ1とQ4をオンとする時間と前記トランジスタQ2とQ3をオンとする時間の比を大きくするか小さくして前記スロットルモータ5を正方向または逆方向に回転駆動させることによって開度を調整する。
前記トランジスタブリッジ回路75は、本発明における前記スロットルモータ5のように回転の向きを変える必要がある場合の制御回路として、好適な適用例となる。
ROM76記憶されている異常検出プログラムとRAM77に展開されている設定データと前記異常検出プログラムを実行する前記CPU78により、前記スイッチ素子71の仮異常を検出する第一異常検出手段と、本異常を検出する第二異常検出手段とからなる異常検出手段781が構成されている。
前記第一異常検出手段は、前記スイッチ素子71に対して、前記イグニッションスイッチ2のオフに伴う前記スイッチ素子71の遮断後であって前記メインリレー3が遮断される前(図2における仮異常検出期間t1)に前記スイッチ素子71の出力側電圧V1に基づいて前記スイッチ素子71の異常(仮異常)を検出するように構成されている。
また、前記第二異常検出手段は、前記イグニッションスイッチ2のオンに伴う前記スイッチ素子71の接続前(図2における本異常検出期間t2)に前記出力側電圧V1に基づいて前記スイッチ素子71の異常(本異常)を検出するように構成されている。
つまり、エンジンを停止して前記スイッチ素子71を遮断したにもかかわらず、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が低下しない場合を、前記スイッチ素子71が異常である可能性が高い状態として仮異常を検出する。
そして、エンジンの停止時に前記仮異常が検出された場合において、次回トリップで再びエンジンを作動させた時に、エンジンを作動させたが未だ前記スイッチ素子71を導通させていない状態にもかかわらず、前記スイッチ素子71の出力側電圧が上昇した場合、つまり、エンジン停止時とエンジン作動時の2回連続で異常が検出された場合は、前記スイッチ素子71は異常であるとみなして本異常を検出するのである。
以下、前記第一異常検出手段と前記第二異常検出手段について、図2に基づいて説明する。
前記第一異常検出手段と前記第二異常検出手段は、図中、一点鎖線で示すような第一閾値TH1を、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1の最小値0ボルトから最大値3.5ボルトの間に予め設定しておき、さらに、異常検出時間t3を、前記スイッチ素子71のオフまたはオン後の出力側電圧V1が低下または上昇を開始してから定常状態となった時以降の時間に予め設定しておく。
尚、本実施形態では、前記CPU78が前記出力側電圧V1を参照して出力するポートが、前記スイッチ素子71の入力側電圧V1を分圧して4分の1とした電圧を出力することから、図2に示すように、前記バッテリ1の出力電圧(図1の地点V2における電圧)の14ボルトに対して、前記出力側電圧V1は3.5ボルトと示されている。
前記仮異常検出期間t1において、前記異常検出時間t3を経過したときに、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が前記第一閾値TH1以上、つまり、図2の実線で示す電圧レベルであれば、前記第一異常検出手段は仮異常を検出し、一方、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が前記第一閾値TH1より小さい、つまり、図2の破線で示す電圧レベルであれば、前記第一異常検出手段は正常と検出する。
前記第一異常検出手段で仮異常が検出されている場合は、前記第二異常検出手段は、前記本異常検出期間t2において、前記第一閾値TH1を予め設定した所定値だけ低下させた第二閾値TH2によって本異常を検出する。前記所定値は前記第一閾値TH1と相対的に低くした異常判定し易い値であればよい。
つまり、前記第一異常検出手段により異常が検出されると、前記第二異常検出手段は前記スイッチ素子71の異常検出のための閾値を低下させるように構成されている。
従って、前記本異常検出期間t2において、前記異常検出時間t3を経過したときに、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が前記第二閾値TH2以上、つまり、図2の実線で示す電圧レベルであって、且つ、前記第一異常検出手段において仮異常が検出されている場合は、前記第二異常検出手段は本異常を検出し、一方、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が前記第二閾値TH2より小さい、つまり、図2の破線で示す電圧レベルであるか、または、前記第一異常検出手段において仮異常が検出されていない場合は、前記第二異常検出手段は正常と検出する。
前記第二異常検出手段は、本異常を検出すると前記RAM77等に設けられた故障情報記憶エリアに本異常が検出された旨をメンテナンス情報として記録する。
仮異常が検出された場合、前記スイッチ素子71が異常である可能性が高いが、バッテリ電圧が低い場合等に前記コンデンサ73の影響等によって前記スイッチ素子71の出力側電圧V1の立ち上がりが遅くなった場合に、本異常が検出できない可能性がある。そのような場合でも、上述の構成によれば、前記第一閾値TH1を低くした前記第二閾値TH2を用いることで、本異常を確実に検出することができる。
尚、以上の説明では、前記第一異常検出手段と前記第二異常検出手段で共通の異常検出時間t3を用いたが、夫々異なる異常検出時間に設定してもよい。例えば、前記第一異常検出手段では、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が低下を開始してから定常状態となった時以降の時間に設定して、前記第二異常検出手段では、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が上昇を開始してから定常状態となった時以降の時間に設定する。
また、前記第一異常検出手段は、前記イグニッションスイッチ2のオフに伴う前記スイッチ素子71の遮断後であって前記メインリレー3が遮断される前、つまり、前記仮異常検出期間t1において、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が前記バッテリ1の電圧を4分の1としたものとほぼ等しいときに前記スイッチ素子71が異常であると検出するように構成されている。
つまり、前記第一異常検出手段が、前記第一閾値TH1の設定値を前記バッテリ1の電圧を4分の1としたものとほぼ等しい電圧レベルTH3に設定している。
上述の構成のように前記第一閾値TH1を前記バッテリ1の出力電圧V2を4分の1としたものとほぼ等しい電圧レベルTH3とすることで、前記コンデンサ73の影響等によって前記スイッチ素子71の出力側電圧V1の立下がりが遅くなった場合に、前記第一異常検出手段が間違えて仮異常を検出することを回避することができる。
前記第一異常検出手段の構成はこれに限られず、次のように構成してもよい。前記仮異常検出期間t1における、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が、前記バッテリ1の電圧を4分の1としたものよりも低く設定した閾値以上のときに前記スイッチ素子71が異常であると検知する。つまり、イグニッションスイッチ2のオフ後であっても前記スイッチ素子71の溶着または短絡により電圧が発生するので、異常と判断することができる。
また、第一異常検出手段は次のように構成してもよい。前記イグニッションスイッチ2のオフ前の前記スイッチ素子71の出力側電圧V1と、前記イグニッションスイッチ2のオフ後の前記スイッチ素子71の出力側電圧V1との差が所定範囲以内であれば、前記スイッチ素子71が異常であると検知する。この所定範囲とは、前記イグニッションスイッチ2のオフ前の前記スイッチ素子71の出力側電圧V1と、前記イグニッションスイッチ2のオフ後の前記スイッチ素子71の出力側電圧V1とがほぼ同じであるとみなされる範囲である。
なお、前記イグニッションスイッチ2のオフ前の前記スイッチ素子71の出力側電圧V1と、前記イグニッションスイッチ2のオフ後の前記スイッチ素子71の出力側に突発的に発生したノイズ電圧との差が前記所定範囲以内である場合には、ノイズ電圧であるにもかかわらず溶着または短絡による前記スイッチ素子71の異常であると誤検出してしまうので、前記差が前記所定範囲内にあるか否かの処理を、一定時間おきに所定回数繰り返し行なった結果、連続して前記差が前記所定範囲内であるときに、前記スイッチ素子71が異常であると検出するという構成を追加してもよい。
つまり、前記スイッチ素子71が溶着すると前記スイッチ素子71の出力側電圧V1の異常は定常的に発生するので、前記差が前記所定範囲内にあるか否かの処理を一定時間おきに所定回数繰り返し行なうと、連続して前記差が前記所定範囲内になる。従って、突発的に発生するノイズの電圧に基づいて前記スイッチ71の異常を誤検出することのない、精度の良い前記スイッチ素子71の異常を検出することができる。
さらに、前記第二異常検出手段は、前記イグニッションスイッチ2のオンに伴う前記スイッチ素子71の接続前、つまり、前記本異常検出期間t2において、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が前記バッテリ1の電圧(図1の地点V2における電圧)に所定のタイミングに所定の閾値以上となるか否かに基づいて前記スイッチ素子71の異常を検出するように構成されている。
詳述すると、前記第二異常検出手段は、前記本異常検出期間t2において、出力側電圧がゼロレベルL1から定常レベルL3に至るまでの過渡期L2の値を前記第二閾値TH2と比較するように構成されており、前記出力側電圧V1が前記ゼロレベルL1から前記定常レベルL3へ大きくなっていく過程で、前記異常検出時間t3経過後に、前記出力側電圧V1が前記第二閾値TH2以上であれば、前記第二異常検出手段は本異常を検出する。
前記スイッチ素子71に異常が発生している場合は、前記出力側電圧V1が立ち上がり、前記スイッチ素子71が正常である場合は、前記出力側電圧V1が立ち上がることがないので、上述の構成のように、前記出力側電圧V1が前記バッテリ1の電圧V2に所定のタイミングに所定の閾値以上となるか否かに基づいて異常検出することで、本異常を正確に検出できる。
以下、前記スイッチ素子71の異常検出動作を、図2のタイミングチャートと、図3のフローチャートに基づいて説明する。
尚、以下の説明において、「T」は図2のタイミングチャートにおけるタイミングを示し、「S」は図3のフローチャートにおけるステップを示す。また、図2のタイミングチャートにおける「メインリレー」は、第一メインリレー31または第二メインリレー32がオンとなることでオンとなり、前記第一メインリレー31と前記第二メインリレー32が両方共オフとなることでオフとなる。
イグニッションスイッチ2がオンされると、コイル311に電流が流れることから第一メインリレー31がオンとなり、前記第一メインリレー31を介して前記イグニッションスイッチ2がオンされたことを認識したCPU78は、第二メインリレースイッチ33をオンさせることで第二メインリレー32をオンさせる(T1)。
前記第二メインリレー32がオンとなると、前記CPU78はMOSFET712のゲート電圧を制御してスイッチ素子71をオンさせる(T2)。
前記スイッチ素子71がオンとなり、A/D変換器72を介して前記CPU78に入力される前記スイッチ素子71の出力側電圧V1がゼロから上昇して(T3)、スロットルモータ5が駆動する。
タイミングT3の後、前記スロットルモータ5からの電源オフ要求によってイグニッションスイッチ2がオフされると(SA1、T4)、前記コイル311に電流が流れなくなることから前記第一メインリレー31がオフとなり、前記イグニッションスイッチ2がオフされたことを認識した前記CPU78は、前記MOSFET712のゲート電圧を制御して前記スイッチ素子71をオフさせて(SA2、T5)、以後、タイミングT5から前記第二メインリレー32をオフ制御する期間よりも短い期間である仮異常検出期間t1の間の所定タイミング、つまり、前記異常検出時間t3の経過後において、第一異常検出手段は仮異常の検出を行う。
前記スイッチ素子71が正常に機能している場合は、前記スイッチ素子71がオフとなり電力が遮断されることから、前記出力側電圧V1は図2の破線で示すように下降して、前記異常検出時間t3の経過時に、前記出力側電圧V1が前記第一閾値TH1より小さくなって、前記第一異常検出手段は正常と検出する(SA3)。
一方、前記スイッチ素子71に異常がある場合は、前記スイッチ素子71がオフとなっても電力が遮断されないことから、前記出力側電圧V1は図2の実線で示すように下降せず、前記異常検出時間t3の経過時に、前記出力側電圧V1が前記第一閾値TH1以上となって(SA3)、前記第一異常検出手段は仮異常を検出する(SA4、T6)。
タイミングT6の後、前記CPU78は前記第二メインリレースイッチ321をオフさせることで前記第二メインリレー32をオフさせる(T7)。
その後、前記イグニッションスイッチ2が再びオンされると(SA5、T8)、前記第一異常検出手段によって仮異常が検出されている場合であって(SA6)、本異常検出期間t2の開始から前記異常検出時間t3を経過しているときに(SA7)、第二異常検出手段は本異常の検出を行う。
前記スイッチ素子71が正常に機能している場合は、前記本異常検出期間t2の間は電力が遮断されていることから、前記出力側電圧V1は図2の破線で示すように上昇せず、前記異常検出時間t3の経過時に、前記出力側電圧V1が前記第二閾値TH2より小さくなって、前記第二異常検出手段は正常と検出する(SA8)。
一方、前記スイッチ素子71に異常がある場合は、前記本異常検出期間t2の間であっても前記スイッチ素子71が導通して電力供給状態となっていることから、前記出力側電圧V1は図2の実線で示すように上昇して、前記異常検出時間t3の経過時に、前記出力側電圧V1が第二閾値TH2以上となり(SA8)、前記スロットルモータ5からの電源オン要求によって前記スイッチ素子71がオンされると(SA9)、前記第二異常検出手段は本異常を検出する(SA10、T9)。そして、前記CPU78は電子スロットルシステムのダウン制御を実行する(SA11)。
前記ダウン制御は、車両が走行している場合における危険回避のために、前記スロットルバルブに対する前記スロットルモータ5の駆動を停止し、図示しないリターンスプリング及びデフォルトスプリングの間に前記スロットルバルブを連結して、前記スロットルバルブをこれらスプリングのバランスする所定のデフォルト開度に保持させて、最低限の出力で走行可能とする低速フェイルセーフ運転状態に切り替える処理等を行う制御である。
以上の説明では、異常検出手段781は、スイッチ素子71のオフ時に仮異常を検出した場合に、次回のトリップで再びエンジンを作動させた時の判定において、第一閾値を低下させた第二閾値にて本異常の判定を行う構成について説明したが、バッテリ電圧の変動に伴う異常検出精度の低下を回避すべく、前記異常検出手段781は、イグニッションスイッチ2のオフ時におけるバッテリ1の過去の出力電圧V2を学習し、当該学習値に基づいてスイッチ素子71の異常検出のための閾値を変化させる構成であってもよい。尚、当該学習値に基づいて閾値を変化させる構成であれば、前記第一閾値と前記第二閾値の何れかを変化させる構成であってもよいし、両方を変化させる構成であってもよい。
前記バッテリ1の過去の出力電圧の学習としては、前記イグニッションスイッチ2のオフ時、つまり、図2でのタイミングT1以前の期間またはT4からT8の期間における前記バッテリ1の出力電圧V2を過去の出力電圧V2として算出する。
CPU78内の異常検出手段781は、上述した過去の出力電圧V2を参照して前記RAM77に格納しておき、格納された出力電圧V2の値に基づいて、適用する閾値の算出を行う。例えば、格納された出力電圧V2の値が、劣化等による電圧降下で低下している場合は、算出する閾値を、前記出力電圧V2の値の低下率に基づいて低下させるのである。
上段で説明したような閾値は、例えば、図4(b)に示すように、前記バッテリ1の出力電圧V2の値を複数回検出して統計的に分析することによって導出したマップに基づいて算出する。
また、図4(b)で示したマップに代えて、前記バッテリ1の出力電圧V2の値のみに限らず、前記出力電圧V2の値とエンジンの吸気温とを複数回検出することによって導出された二次元マップを採用するものであってもよいし、前記出力電圧V2の値とエンジンの水温とを複数回検出することによって導出された二次元マップを採用するものであってもよい。
ところで、前記バッテリ1の過去の出力電圧V2の算出は、前記イグニッションスイッチ2のオフ時に行われることから、前記CPU78は、前記イグニッションスイッチ2のオフ時においても起動している必要がある。
そこで、エンジンが停止状態(前記イグニッションスイッチ2がオフ)であってもバッテリ1から給電されるタイマICである図1において破線で示すソークタイマ61を、前記監視用制御装置6に内蔵または外部接続して、前記ソークタイマ61が一定時間毎にメインリレースイッチ33をオンさせてメインリレー3をオンさせることで前記車載制御装置7、つまり、前記CPU78に電力を供給するように構成している。
尚、前記ソークタイマ61が前記バッテリ1から前記CPU78に電力を供給させる時間は、前記イグニッションスイッチ2がオフしている間に前記CPU78が前記バッテリ1の出力電圧V2を参照して前記RAM77に格納して、格納された出力電圧V2の値に基づいて閾値の算出を行うために十分な時間を確保するように設定されている。
以下、異常検出手段781による過去の出力電圧V2の学習動作を、図4(a)に示すフローチャートと図4(b)に示すマップに基づいて説明する。
ソークタイマ61がメインリレースイッチ33をオンさせてメインリレー3をオンさせることでバッテリ1からCPU78に電力を供給させると、前記CPU78が起動して、異常検出手段781がバッテリ1の出力電圧V2の検出を開始する(SB1)。
出力電圧V2の検出は、図2に示すタイミングT1の期間またはT4からT8の期間における予め設定された検出期間中に、前記異常検出手段781が前記バッテリ1の出力電圧V2の値を検出することによって行う。そして、前記検出期間を経過すると(SB2)、前記異常検出手段781は前記検出期間中に検出した前記バッテリ1の出力電圧V2の値を参照して、図4(b)に示すマップに基づいて閾値を算出する(SB3)。
前記ソークタイマ61による前記CPU78の起動時間が、前記ソークタイマ61において予め設定されている一定時間を経過していると(SB4)、前記CPU78が停止して処理を終了する(SB5)。
このようにして学習された閾値により仮異常が検出されたときに、第二異常検出手段による本異常の検出閾値を当該閾値より設定レベルだけ低下させた値とすることにより、学習されていない閾値を設定レベルだけ低下させた値とするよりも本異常をさらに確実に検出することができる。
以下、別実施形態について説明する。
上述の実施形態では、イグニッションスイッチ2のオフ時におけるバッテリ1の過去の出力電圧を学習し、当該学習値に基づいてスイッチ素子71の異常検出のための電圧レベルの閾値を変化させる構成について説明したが、前記電圧レベルの閾値を変化させる代わりに、前記イグニッションスイッチ2のオフ時における前記バッテリ1の過去の出力電圧を学習し、当該学習値に基づいて前記イグニッションスイッチ2のオン時点から前記スイッチ素子71の異常検出までの時間(異常検出時間t3)を変化させる構成であってもよい。
詳述すると、CPU78は、上述の実施形態と同様の方法で算出したバッテリ1の過去の出力電圧V2を参照して前記RAM77に格納しておき、格納された出力電圧V2の値に基づいて、異常検出時間t3の代わりに適用する異常検出までの時間である収束時間t4の算出を行う。
例えば、格納された出力電圧V2の値がバッテリ1の劣化等による電圧降下で低下している場合は、前記出力電圧V2の値の低下率が大きければ大きい程、算出する収束時間t4を長くするのである。
上段で説明したような閾値の算出は、例えば、図5(a)に示すように、前記バッテリ1の出力電圧V2の値を多数検出して統計的に分析することによって導出したマップに基づいて当該収束時間t4を算出する。
上述の構成によれば、例えば、図2の破線円部分の拡大図である図5(b)に示すように、スイッチ素子71の出力側電圧がLaからLbに低下していた場合に、異常検出時間t3では異常検出が不可能な状態(前記異常検出時間t3において出力側電圧Lbが第一閾値TH1より小さい)に陥っても、異常検出手段781が事前にバッテリ1の出力電圧V2が低下していることを検知して、前記異常検出時間t3を収束時間t4へと長く変化させるので、前記出力側電圧Lbが前記第一閾値TH1より大きくなり、適正に異常検出ができるのである。
上述の実施形態では、前記イグニッションスイッチ2のオフ時における前記バッテリ1の過去の出力電圧V2を学習し、当該学習値に基づいて前記イグニッションスイッチ2のオン時点から前記スイッチ素子71の異常検出までの時間(異常検出時間t3)を変化させる構成について説明したが、前記イグニッションスイッチ2のオン時における前記スイッチ素子71の出力側電圧V1を学習し、当該学習値に基づいて前記異常検出時間t3を変化させる構成であってもよい。
以下に詳述する。前記イグニッションスイッチ2がオンに制御されてから所定の時間が経過するとスイッチ素子71がオンに制御されて、前記スイッチ素子71の出力側電圧V1が立ち上がるが、このときの前記出力側電圧V1の立ち上がり特性に基づいて収束時間t4を算出する。
前記収束時間t4の算出後にエンジンを停止させて、次回トリップで再びエンジンを作動させた時の、異常検出手段781における本異常の検出においては、前回トリップで算出した前記収束時間t4を異常検出時間t3として本異常の検出を行うのである。
本実施形態における収束時間t4の算出方法について図6のフローチャートに基づいて説明する。
前記収束時間t4の算出は、未だ前記収束時間t4が算出されていない場合で(SC1)、且つ、スイッチ素子71が異常でない場合、つまり、異常検出手段781において仮異常または本異常が検出されていない場合の所定の期間内において行われる(SC2)。
前記所定の期間内とは、前記スイッチ素子71がオフからオンに切り替わってから定常状態になるまでの間の期間であり、例えば、図2では、タイミングT2からT2aの期間である。
前記スイッチ素子71がオンに切り替わっていない場合は(SC3)、CPU78は、前記CPU78に設けられた収束時間カウンタ(図示せず)のカウンタをクリアして処理を終了する(SC4)。
一方、前記スイッチ素子71がオンに切り替わった場合は(SC3)、前記CPU78は前記収束時間カウンタを動作させつつ、一定時間毎に前記スイッチ素子71の出力側電圧V1を検出して、検出した電圧のうち直近の数回(例えば3回)分の電圧値をRAM77に格納する(SC5)。
つまり、一定時間が経過して新たな出力側電圧V1の値が前記RAM77に格納されると、3周期前の出力側電圧V1の値が破棄されていくのである。
そして、今回の出力側電圧V1の値が前記RAM77に格納されると(SC6)、これら4個の出力側電圧V1の値に基づいて以下に説明する収束判定を実行する(SC7)。
前記収束判定は、以下の条件を満足している場合に出力側電圧V1は収束していると判断し、満足していない場合に前記出力側電圧V1は収束していないと判断する。
前記条件とは、1つ目の条件として、今回の出力側電圧V1の値と過去の出力側電圧V1の値の差分が、予め設定された所定差分値(差分Gとする)以下であること、2つ目の条件として、今回の出力側電圧V1の値がバッテリ1の出力電圧V2に基づいて設定しておいた所定値以上であることの2条件である。
1つ目の条件について詳述すると、今回の出力側電圧V1の値の前回の出力側電圧V1の値の差分(差分Aとする)と、今回の出力側電圧V1の値の2周期前の出力側電圧V1の値の差分(差分Bとする)と、今回の出力側電圧V1の値の3周期前の出力側電圧V1の値の差分(差分Cとする)とを算出して、差分A<差分B<差分C<差分Gの式を満たせば条件を満足していると判断する。
収束判定において上述の2条件を満足した場合は(SC7)、条件を満足した瞬間の収束時間カウンタを参照して、参照した収束時間を前記RAM77に格納して処理を終了する(SC8)。
上述の構成によれば、例えば、図2の破線円部分の拡大図である図5(b)に示すように、スイッチ素子71の出力側電圧がLaからLbに低下していた場合に、異常検出時間t3では異常検出が不可能な状態(前記異常検出時間t3において出力側電圧Lbが第一閾値TH1より小さい)に陥っても、異常検出手段781が事前に前記スイッチ素子71の出力側電圧V1の立ち上がり特性に基づいて、前記異常検出時間t3を収束時間t4へと長く変化させるので、前記出力側電圧Lbが前記第一閾値TH1より大きくなり、適正に異常検出ができるのである。
上述の実施形態では、学習値に基づいてスイッチ素子71の異常検出のための電圧レベルの閾値を変化させる構成と、学習値に基づいて前記スイッチ素子71の異常検出までの時間を変化させる構成とについて説明したが、これら二つの構成を組合せた構成であってもよい。
つまり、バッテリ1の劣化等による電圧降下が発生したときに、電圧レベルの第一閾値TH1を低下させつつ、収束時間t4を大きくすることで、上述の何れかの構成のみを使用した場合と比較して、さらに、正確に異常検出ができるのである。
上述の実施形態では、バッテリ1の過去の出力電圧V2の学習としての前記バッテリ1の出力電圧の算出は、イグニッションスイッチ2のオフ時に行う構成について説明したが、前記バッテリ1の出力電圧V2の算出は、イグニッションスイッチ2のオン時に行うものであってもよい。
上述の実施形態では、スイッチ素子71とバッテリ1との間にメインリレー3が設けられており、前記メインリレー3がイグニッションスイッチ2、車載制御装置7、監視用制御装置6によって制御されている構成について説明したが、メインリレー3が設けられていない構成であってもよい。
例えば、図7に示すように、前記スイッチ素子71と前記バッテリ1との間に前記イグニッションスイッチ2が設けられており、前記イグニッションスイッチ2がオフされても前記車載制御装置7のCPU78に給電されるように、前記監視用制御装置6によって制御されるスイッチ8を備えた構成であってもよい。
上述の実施形態では、エンジン停止時に第一異常検出手段において仮異常が検出された場合に、次回トリップのエンジン作動時に第二異常検出手段において本異常が検出される構成について説明したが、前記第一異常検出手段と前記第二異常検出手段の異常検出順序が逆である構成であってもよい。
つまり、前記第一異常検出手段において異常が検出されていない場合において、エンジン作動時に前記第二異常検出手段において異常が検出されると検出された異常を仮異常として、前記仮異常が検出されたトリップと同一のトリップのエンジン停止時に第一異常検出手段において異常が検出されると検出された異常を本異常とする構成であってもよい。
尚、本実施形態においては、上述の実施形態で用いられていた構成や機能が、本実施形態の動作に矛盾を生じない範囲においてそのまま用いられる。
上述の実施形態では、車載制御装置7は、スイッチ素子71としてMOSFET71で構成された半導体リレーを使用した構成について説明したが、前記車載制御装置7は、前記スイッチ素子71としてメカリレーを使用して、前記メカリレーの溶着異常を検出する構成であってもよい。
上述した何れかの実施形態を、本発明による作用効果が奏される範囲において適宜組合せて構成してもよい。
尚、上述した実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等を適宜変更設計できることは言うまでもない。