図6にこの種の駆動装置の一例を示す。この駆動装置は、インジェクタを駆動する回路と、燃料ポンプを駆動する回路とからなる。ここでは、まずインジェクタを駆動する回路について説明する。
図示されるように、この回路は、バッテリBの電圧(例えば「12V」)を所定電圧(例えば「85V」)に昇圧する昇圧回路100を備えている。この昇圧回路100は、コイル102とスイッチング素子104との直列接続体を備えて構成されており、スイッチング素子104がインジェクタ駆動用IC106によりオン・オフ操作されることで、バッテリBの電圧を昇圧する。この昇圧回路100のコイル102とスイッチング素子104との間には、ダイオード108のアノードが接続されている。
ダイオード108のカソード側は、駆動開始スイッチ110を介してインジェクタの電磁ソレノイド112と接続されている。電磁ソレノイド112は、その一方の端子が駆動開始スイッチ110を介して昇圧回路100と接続されるとともに、他方の端子が選択スイッチ114を介して接地されている。
上記ダイオード108と駆動開始スイッチ110との間には、昇圧回路100の昇圧電力を蓄えるコンデンサ116が、その他方の端子が接地される態様にて接続されている。
上記駆動開始スイッチ110により、電磁ソレノイド112とコンデンサ116とが導通及び遮断される。このため、駆動開始スイッチ110の少なくとも1つがオンとされることで対応する電磁ソレノイド112の端子と昇圧回路100とが導通された状態で、選択スイッチ114を選択的にオンとすることで、コンデンサ116の昇圧電力を用いて、該当する電磁ソレノイド112を通電することができる。
上記駆動開始スイッチ110と電磁ソレノイド112との間には、コンデンサ116により開始される電磁ソレノイド112の通電を継続すべく、電流回路120が接続されている。この電流回路120は、バッテリBの電力を出力するダイオード122、ダイオード122とバッテリB間を導通及び遮断するスイッチング素子124、及び、接地から流出する方向を順方向とするダイオード126を備えて構成されている。
次に、燃料ポンプ駆動用の回路について説明する。
燃料ポンプ内の弁体(電磁弁)を駆動する電磁ソレノイド140の高電位側の端子は、バイポーラトランジスタからなるハイサイドスイッチ136を介してバッテリBと接続されている。また、高電位側の端子及びハイサイドスイッチ136間と接地との間には、ダイオード145が接続されている。一方、電磁ソレノイド140の低電位側の端子と接地との間には、この間の導通及び遮断を切り替えるローサイドスイッチ142(MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ)が接続されている。
ポンプ駆動用IC150は、外部から入力される駆動信号と、ローサイドスイッチ142及び接地間の電位とに基づき、上記ハイサイドスイッチ136及びローサイドスイッチ142のオン・オフ操作を行なう。すなわち、ローサイドスイッチ142をオンとした状態で、ハイサイドスイッチ136のオン・オフ操作によるチョッパ制御により、電磁ソレノイド140に流れる電流を所望の電流量に制御する。
ところで、上記インジェクタの電磁ソレノイド112や燃料ポンプの電磁ソレノイド140の高電位側の端子と接地とがショートする場合には、駆動開始スイッチ110やハイサイドスイッチ136に大電流が流れるおそれがある。そして、このように大電流が流れると、駆動開始スイッチ110やハイサイドスイッチ136が破損するおそれがある。
そこで従来は、例えば下記特許文献1に見られるように、電磁ソレノイド112が接地とショートしたときに流れる電流をコンデンサ116から放電される電流量の増大として検出する装置も提案されている。この装置によれば、コンデンサ116から放電される電流量が所定以上となったときに、上記駆動開始スイッチ110やスイッチング素子124をオフとすることで、駆動開始スイッチ110やスイッチング素子124の破損を回避することができる。
一方、上述したように、燃料ポンプの電磁ソレノイド140の高電位側の端子と接地とがショートする場合には、ハイサイドスイッチ136に大電流が流れるおそれがある。しかし、この電磁ソレノイド140は、バッテリBにて直接的に駆動されるものであるため、バッテリBの電圧の昇圧された電力を蓄えるコンデンサを用いない。このため、上記インジェクタの電磁ソレノイド112の高電位側の端子が接地とショートしたときと同様のフェールセーフ処理を行なうことはできない。
なお、上記燃料ポンプの駆動装置に限らず、車載電気負荷の高電位側に、該電気負荷と電源との導通及び遮断を切り替えるハイサイドスイッチを備える車載電気負荷の駆動装置にあっては、電気負荷の高電位側の端子と接地とのショートに対処することが望まれるこうした実情も概ね共通したものとなっている。
特開2002−180878号公報
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、車載電気負荷の高電位側に、該電気負荷と電源との導通及び遮断を切り替えるハイサイドスイッチを備える場合であれ、電気負荷の高電位側の端子と接地とのショートに適切に対処することのできる車載電気負荷の駆動装置を提供することにある。
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
手段1は、車載電気負荷の高電位側に、該電気負荷と電源との導通及び遮断を切り替えるハイサイドスイッチを備える車載電気負荷の駆動装置において、前記電気負荷の高電位側の端子と前記電源との間に流れる電流を検出してその検出結果を出力する高電位側検出回路と、前記高電位側検出回路により検出される電流が所定以上となるとき、前記ハイサイドスイッチを強制的にオフとするフェールセーフ手段とを備えることを特徴とする。
上記構成において、電気負荷の高電位側の端子が接地とショートすると、電気負荷の高電位側の端子と電源との間に流れる電流が過度に大きくなるおそれがある。しかし、この際、電気負荷の高電位側の端子と電源との間に流れる電流が検出回路によって検出され、検出される電流が所定以上となるときにハイサイドスイッチが強制的にオフとされる。このため、電気負荷の高電位側の端子と電源との間に流れる電流が過度に大きくなることによるハイサイドスイッチ等の破損を回避することができる。したがって、上記構成によれば、車載電気負荷の高電位側に、該電気負荷と電源との導通及び遮断を切り替えるハイサイドスイッチを備える場合であれ、電気負荷の高電位側の端子と接地とのショートに適切に対処することができる。
手段2は、手段1において、前記高電位側検出回路は、前記電気負荷の高電位側の端子と前記電源との間に入力端子及び導通制御端子の接続されるトランジスタを備えて構成されることを特徴とする。
上記構成では、トランジスタの導通制御端子と入力端子とが電気負荷の高電位側の端子と電源との間に接続されている。トランジスタは、通常、導通制御端子及び入力端子間の電位差がトランジスタをオンさせる閾値電圧以上となることで、入力端子及び出力端子間に流れる電流量が大きく変化する。このため、上記構成では、電気負荷の高電位側の端子と電源との間に正常に電流が流れているときには、トランジスタの入力端子及び出力端子間の電流量を極力低減する構成とすることができる。すなわち、同正常に電流が流れているときの入力端子及び導通制御端子間の電位差が、トランジスタの上記閾値電圧未満となるように設定することで、同正常に電流が流れているときにはトランジスタをオフとする構成とすることができる。
更に、上記構成では、トランジスタの出力端子から出力される電流量の増大を通じて、電気負荷の高電位側の端子と電源との間に流れる電流量の増大を検出することができる。すなわち、例えば、電気負荷の高電位側の端子と電源との間に流れる電流量が所定以上となったときの入力端子及び導通制御端子間の電位差と、トランジスタの上記閾値電圧とを対応付けることで、電気負荷の高電位側の端子と電源との間に流れる電流量が所定以上となることを検出することができる。
手段3は、手段2において、前記電気負荷の低電位側の端子と接地との間に流れる電流を検出する低電位側検出回路と、該低電位側検出回路によって検出される電流が予め定められた閾値以上となると前記ハイサイドスイッチを強制的にオフとする強制手段とを更に備え、前記フェールセーフ手段は、前記強制手段を備えて且つ、前記低電位側検出回路と前記強制手段との間に前記トランジスタの出力端子が接続されてなることを特徴とする。
上記構成では、低電位側検出回路によって検出される電流量が閾値以上となると強制手段によりハイサイドスイッチが強制的にオフとされる。そして、この強制手段と低電位検出回路との間にトランジスタの出力端子が接続されることで、この強制手段を用いてフェールセーフ手段を構成することができる。すなわち、トランジスタの出力端子の出力により低電位側検出回路と強制手段との間の電気的な状態が変化する。このため、高電位側検出回路の検出結果に基づき強制手段によりハイサイドスイッチをオフとすることができる。
手段4は、手段3において、前記低電位側検出回路は、直列接続された2つの抵抗体を備えて構成されるとともに、該2つの抵抗体間の電圧値を、前記電気負荷の低電位側の端子と接地との間に流れる電流の検出結果として前記強制手段に出力するものであり、前記強制手段は、前記低電位側検出回路から出力される電圧値が前記閾値と対応する所定の電圧値以上となるときに前記ハイサイドスイッチを強制的にオフとするものであり、前記フェールセーフ手段は、前記トランジスタの出力端子が前記2つの抵抗体間に接続されてなることを特徴とする。
上記構成では、低電位側検出回路によって所定以上の電流が検出されるときに上記2つの抵抗体間の電圧値が、上記所定の電圧値以上となる。このため、強制手段は、低電位側検出回路からの電圧信号と所定の電圧値との比較によって、電気負荷及び接地間に流れる電流が閾値以上であるか否かを判断することができる。
また、電気負荷の高電位側の端子と電源との間に流れる電流量が所定以上となるときに、トランジスタの出力によって強制手段に取り込まれる電圧値を閾値以上とすることもできる。このため、強制手段を用いてフェールセーフ手段を構成することができる。特に、フェールセーフ手段をこうした構成とすることで、フェールセーフ手段を、電気負荷の高電位側の端子及び電源間の電圧降下の検出結果に基づきハイサイドスイッチを強制的にオフとする構成とする場合と比較して、その構成が簡易化される。すなわち、この場合、電気負荷の高電位側の端子及び電源間における2箇所の電圧値を検出し、その電圧降下の度合いに応じてフェールセーフ処理を行なうか否かを決定することとなるため、フェールセーフ手段の構成が複雑なものとなる。しかも、電気負荷の高電位側の端子及び電源間の電圧を直接取り込む手段の場合、電源と直接的に接続されることに起因して、電源側からのサージノイズ対策をする必要も生じる。特に当該駆動装置から電源が外されたときには、瞬間的に大きな電圧(例えば「100V」程度)が駆動装置に印加されることがあるため、こうした大きな電圧に対する耐性を備える構成とすることも要求されることとなる。
なお、手段4は、前記高電位側検出回路は、そのトランジスタの入力端子及び前記導通制御端子間に設けられた第1の抵抗と、前記2つの抵抗体の接続箇所と前記高電位側検出回路の出力端子との間に設けられた第2の抵抗とを備えて且つ、前記電気負荷の高電位側の端子と前記電源との間に流れる電流が所定以上となるときに前記2つの抵抗体間の電圧値が前記所定の電圧値以上となるように前記第1の抵抗及び前記第2の抵抗の抵抗値が調整されてなるようにしてもよい。
手段5は、手段3又は4において、前記電気負荷の低電位側の端子及び接地間を接続するローサイドスイッチを更に備え、前記強制手段は、前記低電位側検出回路によって検出される電流が前記閾値以上となるとき、前記ローサイドスイッチを更にオフとすることを特徴とする。
上記構成において、電気負荷の高電位側の端子及び電源間を流れる電流が所定以上となると、強制手段では、ハイサイドスイッチのみならず、ローサイドスイッチをもオフとする。このため、電気負荷の高電位側の端子及び電源間を流れる電流が所定以上となるときに、電気負荷の電流の流れをより確実に遮断することができる。
更に、上記構成では、電気負荷の低電位側の端子と電源側とがショートするときにも、これに適切に対処することができる。すなわち、電気負荷の低電位側の端子と電源側とがショートすると、同低電位側の端子及び接地間に大きな電流が流れる。そして、この電流が低電位側検出回路によって検出され、強制手段によってローサイドスイッチが強制的にオフとされる。これにより、電気負荷の低電位側の端子と電源側とがショートした場合であれ、過度の電流が流れることを回避することができる。
このように、上記構成によれば、電気負荷の高電位側の端子と接地とがショートする場合と、電気負荷の低電位側の端子と電源側とがショートする場合との双方に、単一の強制手段により対処することができる。
手段6は、手段2〜4のいずれかにおいて、前記高電位側検出回路の前記トランジスタがバイポーラトランジスタであることを特徴とする。
上記構成では、高電位側検出回路のトランジスタとしてバイポーラトランジスタが用いられる。バイポーラトランジスタは、上記トランジスタをオンさせる閾値電圧が、MOSトランジスタ等と比較して大きな値としやすい。このため、電気負荷と電源との間に正常な電流が流れているときには、トランジスタをオンさせず、上記所定以上の電流が流れているときにトランジスタをオンさせる設定が容易となる。
なお、バイポーラトランジスタにおいて、導通制御端子とはベース端子のことをいう。また、上記トランジスタをオンさせる閾値電圧とは、入力端子及び出力端子間(エミッタ及びコレクタ間)に流れる電流が、入力端子及び導通制御端子間の電圧変化に対して急激に増加するときの入力端子及び導通制御端子間の電圧とする。
手段7は、手段1〜6のいずれかにおいて、前記ハイサイドスイッチは、電界効果トランジスタからなることを特徴とする。
上記構成では、ハイサイドスイッチが電界効果トランジスタからなるために、バイポーラトランジスタを用いた場合等と比較して、ハイサイドスイッチの入出力間の電圧降下を低く抑えることができる。このため、電気負荷に供給される電流の立ち上がり速度を大きくすることができ、電気負荷の駆動に際し、その応答性を高く維持することができる。
ただし、ハイサイドスイッチとして電界効果トランジスタを用いた場合、電気負荷の高電位側の端子と接地とがショートすると、ハイサイドスイッチを流れる電流も、同スイッチをバイポーラトランジスタとした場合等と比較して大きくなる。このため、ショートが生じたときには、ハイサイドスイッチが損傷しやすい。このため、上記構成は上記手段1〜6の作用効果を顕著に奏することができる構成ともなっている。
なお、手段1〜7のいずれかにおいては、手段8によるように、前記電気負荷が、燃料を昇圧して車載内燃機関の燃料噴射弁に高圧状態で供給する高圧燃料ポンプの電磁ソレノイドであるようにしてもよい。
以下、本発明にかかる電気負荷の駆動装置を、高圧燃料ポンプの駆動装置に適用した一実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1に、上記高圧燃料ポンプを搭載する内燃機関(筒内噴射式ガソリンエンジン)を含むエンジンシステムの全体構成を示す。
図示されるように、燃料タンク2から低圧燃料ポンプ4によって汲み上げられる燃料は、燃料フィルタ6、プレッシャレギュレータ8を介して高圧燃料ポンプ10に供給される。高圧燃料ポンプ10によって昇圧された高圧状態の燃料は、燃料噴射弁(インジェクタ12)に供給される。この高圧燃料ポンプ10は、内燃機関14から動力を付与される(ここでは、吸気系のカム軸から動力が付与される例を示す)機関駆動式のポンプである。
電子制御装置(ECU20)は、中央処理装置やメモリを備えて構成され、内燃機関14の出力を制御するものである。詳しくは、内燃機関14の出力を制御すべく、駆動装置22を介して高圧燃料ポンプ10やインジェクタ12への通電制御を行う。
ここで、上記駆動装置22のうち、特に高圧燃料ポンプ10に対する通電制御を行う回路部分について詳述する。
図2に、上記回路の構成を示す。
図示されるように、バッテリ30からの電力は、電源端子T1を介して駆動装置22に供給される。電源端子T1を介して供給されるバッテリ30の電力は、コイル32及びコンデンサ34からなるフィルタを介してPチャネルMOSトランジスタからなるハイサイドスイッチ36のソース端子に供給される。ハイサイドスイッチ36のドレイン端子から出力される電流は、ハイサイド端子T2を介して、高圧燃料ポンプ10内の弁体(電磁弁)を開閉する電磁ソレノイド40の高電位側の端子に供給される。電磁ソレノイド40の低電位側の端子は、ローサイド端子T3と接続されている。そして、ローサイド端子T3は、NチャネルMOSトランジスタからなるローサイドスイッチ42のソース及びドレインと、抵抗44とを介して接地されている。ちなみに、駆動装置22は、電磁ソレノイド40及びローサイドスイッチ42と並列に接続されたダイオード45を備えている。
上記抵抗44と並列に抵抗46,48の直列接続体が接続されている。そして、これら抵抗46及び抵抗48の接続点(ノードa)における電圧値が、電磁ソレノイド40の低電位側の端子(又はローサイド端子T3)と接地との間に流れる電流の検出結果として、制御回路50の入力端子TC1に出力される。
入力端子TC1から制御回路50に取り込まれる検出結果は、定電流用比較器52と過電流用比較器54とに取り込まれる。定電流用比較器52のマイナス入力端子には、電磁ソレノイド40に定電流を流す際に所望される電流量に対応した基準電圧AVが印加されており、プラス入力端子には、上記検出結果が取り込まれる。一方、過電流用比較器54のマイナス入力端子には、電磁ソレノイド40に流れる電流として許容される上限値に対応した過電圧BVが印加されており、プラス入力端子には、上記検出結果が取り込まれる。
過電流用比較器54の出力は、RSフリップフロップ56のセット端子に取り込まれる。RSフリップフロップ56のリセット端子には、先の図1に示したECU20から出力される駆動信号の反転信号が取り込まれる。すなわち、駆動信号が駆動装置22の入力端子T4と、制御回路50の入力端子TC2を介して制御回路50内のインバータ58に取り込まれ、論理反転されてRSフリップフロップ56のリセット端子に取り込まれる。
RSフリップフロップ56の出力がインバータ60により論理反転された信号と、駆動信号とはAND回路62に取り込まれる。AND回路62の出力は、出力端子TC3、抵抗64を介してローサイドスイッチ42のゲート(導通制御端子)に印加される。
定電流用比較器52の出力がインバータ66により反転された信号と、RSフリップフロップ56の出力がインバータ68により反転された信号と駆動信号とはAND回路70に取り込まれる。AND回路70の出力は、エミッタが接地されたバイポーラトランジスタ72のベースに印加される。また、バイポーラトランジスタ72のコレクタは、出力端子TC4と接続されている。出力端子TC4は、コイル32及びハイサイドスイッチ36のゲート(導通制御端子)間に直列接続された抵抗74及び抵抗76の接続点と接続されている。
上記構成によれば、駆動信号が論理「H」である間、電磁ソレノイド40に定電流を流すことができるとともに、ローサイド端子T3及び接地間に流れる電流量が過度に大きくなるときには、ハイサイドスイッチ36及びローサイドスイッチ42を強制的にオフとすることができる。以下、これについて図3に基づき説明する。
図3に、電磁ソレノイド40に定電流を流す制御の態様を示す。詳しくは、図3(a)に駆動信号の推移を、図3(b)に定電流用比較器52の出力の推移を、図3(c)に過電流用比較器54の出力の推移を、図3(d)にRSフリップフロップ56の出力の推移を、図3(e)にハイサイドスイッチ36のオン・オフの推移を、図3(f)にローサイドスイッチ42のオン・オフの推移を、図3(g)に抵抗48を流れる電流の推移をそれぞれ示す。
図示されるように、時刻t1において駆動信号が論理「H」となるに伴い、ハイサイドスイッチ36及びローサイドスイッチ42がオンとされ、図4(a)に一点鎖線にて示すように、バッテリ30、ハイサイドスイッチ36のソース及びドレイン、電磁ソレノイド40、ローサイドスイッチ42のソース及びドレイン、及び接地間を電流が流れる。これにより、抵抗48に流れる電流量(電磁ソレノイド40を流れる電流量)が増大する。
そして、図3に示すように、上記電流が増大し、上記ノードaの電位が上記基準電圧AV以上となると(図中、電流量が目標電流値α以上となると)、定電流用比較器52の出力が論理「H」に反転するため、ハイサイドスイッチ36がオフとされる。これにより、図4(b)に一点鎖線にて示すように、ダイオード45、電磁ソレノイド40、ローサイドスイッチ42、及び接地間に電流が流れるため、抵抗48に減少しつつも継続して電流が流れることとなる。
そして、抵抗48を流れる電流量が目標電流値α未満となると、定電流用比較器52の出力が再度論理「L」となるため、ハイサイドスイッチ36がオンとされ、先の図4(a)に示した態様にて抵抗48に電流が流れる。このようにハイサイドスイッチ36のオン・オフに伴って増加減少しつつ抵抗48に電流が流れる制御は、駆動信号が論理「L」となるまで行なわれる。すなわち、バッテリ30、ハイサイドスイッチ36、ダイオード45、電磁ソレノイド40、接地により、チョッパ回路が構成されており、駆動信号が論理「H」である間、ハイサイドスイッチ36のオン・オフによりチョッパ制御が行われる。
上記態様にて、駆動信号が論理「H」とされる間、駆動装置22により電磁ソレノイド40の電流が所望の電流量(抵抗48の電流量が目標電流値α)に制御されることとなる。
また、電磁ソレノイド40の低電位側の端子がバッテリ30とショートするなどして、電磁ソレノイド40に過度に電流が流れるときには、過電流用比較器54の出力が論理「H」となるのに伴い、ハイサイドスイッチ36やローサイドスイッチ42がオフとされるためにバッテリ30から電磁ソレノイド40への電流の流れが阻止される。詳しくは、抵抗48の電流が過度に大きくなることでノードaの電位が上記過電圧BV以上となり、過電流用比較器54の出力が論理「H」に反転し、RSフリップフロップ56の出力が論理「H」となる。これに伴い、AND回路62,70の出力が論理「L」となり、ハイサイドスイッチ36及びローサイドスイッチ42が強制的にオフとされる。
このように本実施形態では、電磁ソレノイド40の低電位側の端子(ローサイド端子T3)及び接地間に流れる電流が過度に大きくなることに基づき、バッテリ30から電磁ソレノイド40への電流の流れを阻止するフェールセーフ処理を行なうことができる。
ただし、先の図2に2点鎖線にて示すように、電磁ソレノイド40の高電位側の端子が接地とショートする場合等、バッテリ30よりも低電位の部材とショートする場合には、電磁ソレノイド40の低電位側の端子(ローサイド端子T3)及び接地間の電流を検出することによっては、このショートを検出することができない。このため、電磁ソレノイド40の高電位側の端子がバッテリ30よりも低電位の部材(より正確には、ハイサイドスイッチ36のドレインの電位よりも低電位の部材)とショートする場合には、ハイサイドスイッチ36のソース及びドレイン間に過電流が流れ、ハイサイドスイッチ36が破損するおそれがある。ちなみに、ハイサイドスイッチ36の高電位側の端子と接地とのショートとしては、例えば同高電位側のハーネスの被覆が破れ、接地と接触した場合などが想定される。
そこで本実施形態では、図2に示すように、電磁ソレノイド40の高電位側の端子(ハイサイド端子T2)とバッテリ30との間に流れる電流が所定以上となると、上記ノードaの電位が上記過電圧BV以上となるように、抵抗80、バイポーラトランジスタ82、及び抵抗84を備える構成とした。ここで、抵抗80は、ハイサイドスイッチ36の高電位側の端子及びバッテリ30間に直列に接続されている。そして、バイポーラトランジスタ82のエミッタ及びベース間(入力端子及び導通制御端子間)に抵抗80の両端子が接続されている。このため、抵抗80の電圧降下がバイポーラトランジスタ82をオンさせる閾値電圧以上となることで、エミッタ及びコレクタ間に流れる電流量が大きく変化する。そして、バイポーラトランジスタ82のコレクタ(出力端子)からの出力は、抵抗84を介してノードaに供給される。こうした構成によれば、抵抗80及び抵抗84の抵抗値を調整することで、電磁ソレノイド40の高電位側の端子(ハイサイド端子T2)とバッテリ30との間に流れる電流が所定以上となるときに、ノードaの電位が上記過電圧BV以上となるように調整することができる。ちなみに、抵抗80の抵抗値は、ハイサイドスイッチ36に正常に電流が流れているときには、抵抗80による電圧降下がバイポーラトランジスタ82をオンとする閾値電圧よりも小さくなるように設定することが望ましい。
ここで、電磁ソレノイド40の高電位側の端子のショート時に駆動装置22によって行なわれる処理について、図5を参照して更に説明する。
図5(a)は駆動信号の推移を、図5(b)は定電流用比較器52の出力の推移を、図5(c)は過電流用比較器54の出力の推移を、図5(d)はRSフリップフロップ56の出力の推移を、図5(e)はハイサイドスイッチ36のオン・オフの推移を、図5(f)はローサイドスイッチ42のオン・オフの推移を、図5(g)はバイポーラトランジスタ82のエミッタ及びコレクタ間の電流の推移を、図5(g)は抵抗48を流れる電流の推移をそれぞれ示す。
電磁ソレノイド40の高電位側の端子とグランド等がショートすると、時刻t11に駆動信号が論理「H」に反転するのに伴いハイサイドスイッチ36がオンされることで、バッテリ30、ハイサイドスイッチ36、及び電磁ソレノイド40の高電位側の端子間に大きな電流が流れる。これにより、バイポーラトランジスタ82がオンするため、そのエミッタ及びコレクタ間に大きな電流が流れ、抵抗48に流れる電流も大きくなる。ただし、この電流量は、基準電圧AVに対応する目標電流値αと、過電圧BVに対応する過電流値βとを略同時に上回る(図中、時刻t12)。このため、過電流用比較器54の出力と、RSフリップフロップ56の出力とが論理「H」に反転し、AND回路70の出力が論理「L」に反転するに伴い、ハイサイドスイッチ36及びローサイドスイッチ42が強制的にオフとされる。これにより、バッテリ30からハイサイドスイッチ36を介して電磁ソレノイド40の高電位側の端子へ電流が流れることを阻止することができる。
なお、ハイサイドスイッチ36及びローサイドスイッチ42が強制的にオフとされる状態は、駆動信号の論理「L」への反転に伴いRSフリップフロップ56がリセットされる時刻t13以降であって且つ駆動信号が再度立ち上がるときまで継続される。
このように本実施形態によれば、バイポーラトランジスタ82と抵抗80と抵抗84とを新たに追加するのみで、電磁ソレノイド40の高電位側の端子が接地とショートしたときに、ハイサイドスイッチ36及びローサイドスイッチ42を強制的にオフとするフェールセーフ処理を行なうことができる。すなわち、もともと電磁ソレノイド40の低電位側の端子とバッテリ30とのショート等によって電磁ソレノイド40に過電流が流れるときにハイサイドスイッチ36及びローサイドスイッチ42を強制的にオフとするための制御回路50を用いて上記高電位側の端子と接地とのショートに対処することができる。
このため、例えば電磁ソレノイド40の高電位側の端子(ハイサイド端子T2)及びバッテリ30間の電圧降下を検出する回路と、該回路によって検出される電圧降下に基づきハイサイドスイッチ36及びローサイドスイッチ42を強制的にオフとする専用の制御回路等を用いる場合と比較して、その構成が簡易となる。すなわち、この専用の制御回路等を設ける場合には、電磁ソレノイド40の高電位側の端子及びバッテリ30間における2箇所の電圧値を検出し、その電圧降下の度合いに応じてフェールセーフ処理を行なうか否かを決定する回路を構成する必要があるため、制御回路の構成が制御回路50と比較して複雑なものとなる。しかも、電磁ソレノイド40の高電位側の端子及びバッテリ30間の電圧を直接取り込む制御回路の場合、バッテリ30と直接的に接続されることに起因して、バッテリ30側からのサージノイズ対策をする必要も生じる。特に電源端子T1からバッテリ30が外されたときには、瞬間的に大きな電圧(例えば「100V」程度)が電源端子T1に印加されることがあるため、こうした大きな電圧に対する耐性を備える構成とすることも要求されることとなる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)電磁ソレノイド40の高電位側の端子とバッテリ30との間に流れる電流が所定以上となるとき、ハイサイドスイッチ36を強制的にオフとするフェールセーフ処理を行なった。このため、電磁ソレノイド40の高電位側の端子とバッテリ30との間に流れる電流が過度に大きくなることによるハイサイドスイッチ36等の破損を回避することができる。
(2)電磁ソレノイド40の高電位側の端子とバッテリ30との間にバイポーラトランジスタ82のエミッタ及びベースを接続し、そのコレクタから出力される電流に基づき、電磁ソレノイド40及びバッテリ30間の過電流を検出するようにした。これにより、エミッタ及びベース間の電位差がバイポーラトランジスタ82をオンとする電圧値となるまでは、コレクタを介して電流が出力されない(より正確には、コレクタを介して出力される電流は極わずかである)。このため、電磁ソレノイド40及びバッテリ30間に正常な電流が流れているときには、電磁ソレノイド40及びバッテリ30間に流れる電流を検出するために、同電流をノードaに供給することを極力回避することができる。
また、バイポーラトランジスタは、上記トランジスタをオンさせる閾値電圧を、MOSトランジスタ等と比較して大きな値としやすい。このため、電磁ソレノイド40とバッテリ30との間に正常な電流が流れているときには、トランジスタをオンさせず、正常時よりも大きな電流が流れているときにトランジスタをオンさせる設定が容易となる。
(3)バイポーラトランジスタ82及び抵抗80,84を備え、バイポーラトランジスタ82のコレクタから出力される電流によってノードaの電位を変化させる構成とした。これにより、電磁ソレノイド40の低電位側の端子及びバッテリ30等とのショート時にフェールセーフ処理を行なう制御回路50により、電磁ソレノイド40の高電位側の端子と接地とのショートに適切に対処することができる。
(4)ハイサイドスイッチ36を、MOSトランジスタにより構成した。このため、バイポーラトランジスタを用いた場合等と比較して、ハイサイドスイッチ36の入出力間の電圧降下を低く抑えることができる。このため、電磁ソレノイド40に供給される電流の立ち上がり速度を大きくすることができ、電磁ソレノイド40の駆動に際し、その応答性を高く維持することができる。
ただし、ハイサイドスイッチ36としてMOSトランジスタを用いた場合には、電磁ソレノイド40の高電位側の端子と接地とがショートするときには、ハイサイドスイッチ36を流れる電流量も、同スイッチをバイポーラトランジスタとした場合等と比較して大きくなる。このため、ショートが生じたときには、ハイサイドスイッチ36が損傷しやすい。このため、上記構成は上記(1)〜(3)の作用効果を顕著に奏することができる構成ともなっている。
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・電磁ソレノイド40の高電位側の端子及びバッテリ30間に入力端子及び導通制御端子の接続されるトランジスタとしては、バイポーラトランジスタに限らない。例えばPチャネルMOSトランジスタとしてもよい。ただし、この際、電磁ソレノイド40の高電位側の端子及びバッテリ30間に正常に電流が流れているときには、ソース及びゲート間の電圧降下が、PチャネルMOSトランジスタをオンとする閾値よりも小さくなるような調整をすることが望ましい。
・ハイサイドスイッチとしては、PチャネルMOSトランジスタに限らず、任意のスイッチング素子でよい。ただし、このハイサイドスイッチを電界効果トランジスタにて構成することで、その入力端子及び出力端子(ソース及びドレイン)間の電圧降下を低く抑えることが望ましい。
・電磁ソレノイド40及びバッテリ30間に過電流が流れるときにローサイドスイッチ42を強制的にオフとする処理をしなくても、ハイサイドスイッチ26を強制的にオフとする処理を行なうなら、この過電流を阻止することはできる。
・例えばバイポーラトランジスタ82のソース及びドレイン間の電圧降下を調整することにより、電磁ソレノイド40及びバッテリ30間に所定以上の電流が流れるときにノードaの電位を過電圧BV以上とすることができるなら、抵抗80や抵抗84を備えなくてもよい。
・制御回路50としては、入力端子TC1から入力される電圧が過電圧BV以上となるときにハイサイドスイッチ36等を強制的にオフとするものに限らない。例えば入力端子から入力される電流が予め定められた閾値以上となるときにハイサイドスイッチ36を強制的にオフとする処理を行なうものであってもよい。この場合であっても、電磁ソレノイド40の高電位側の端子及びバッテリ30間に入力端子及び導通制御端子の接続されるトランジスタの出力端子からの出力信号が制御回路の入力端子に取り込まれる構成は有効である。すなわち、電磁ソレノイド40の高電位側の端子及びバッテリ30間に所定以上の電流が流れるときに制御回路の入力端子に取り込まれる電流量が上記予め定められた閾値以上となるように調整することで、上記実施形態に準じたフェールセーフ制御を行なうことができる。
・電磁ソレノイド40の高電位側の端子及びバッテリ30間に流れる電流を検出する高電位側検出回路と、該高電位側検出回路により検出される電流が所定以上となるとき、ハイサイドスイッチ36を強制的にオフとするフェールセーフ手段としては、上記実施形態やその変形例で例示した構成に限らない。例えば、バッテリ30及び電磁ソレノイド40の高電位側の端子(ハイサイド端子T2)間に流れる電流を検出する回路と、該回路によって検出される電流に基づきハイサイドスイッチ36及びローサイドスイッチ42を強制的にオフとする専用の制御回路とから構成してもよい。また、先の図2において、バイポーラトランジスタ82のコレクタをハイサイドスイッチ36のゲートに接続することで、これら高電位側検出回路とフェールセーフ手段とを構成してもよい。すなわち、この場合、バイポーラトランジスタが高電位側検出回路を構成するとともに、電磁ソレノイド40の高電位側の端子及びバッテリ30間に所定以上の電流が流れるときに、ハイサイドスイッチ36を強制的にオフとするフェールセーフ手段をも構成している。
・車載電気負荷としては、高圧燃料ポンプの電磁ソレノイドに限らず、任意の電磁ソレノイド等の電磁負荷でよい。更に、電磁負荷に限らず、ピエゾアクチュエータ等、バッテリに対して電気的な負荷となるものであればよい。また、車載電気負荷に対して電力を供給する電源としては、バッテリに限らず、例えばバッテリの電圧を蓄える蓄電手段等でもよい。