JP4906020B2 - 含燐フェノール樹脂及び該フェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物 - Google Patents

含燐フェノール樹脂及び該フェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性を有する新規なリン含有フェノール樹脂及び該リン含有フェノール樹脂を硬化剤として配合した硬化性エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来技術】
エポキシ樹脂は接着性、耐熱性及び成形性に優れていることから、電気電子部品、自動車部品、宇宙航空機器部品、スポーツ用品、FRP等に広く使用されている。特に電気電子部品、自動車部品、宇宙航空機器部品に使用される半導体装置や積層板の火災時の燃焼防止と発煙の抑制をするため、難燃性の付与が強く要求されている。これまで半導体封止材料や積層板の難燃化には、一般的に臭素化エポキシ樹脂と難燃助剤の三酸化アンチモン化合物などが使用されている。しかし、臭素系難燃剤とアンチモンを使用した封止材や半導体装置や、臭素化エポキシ樹脂を使用した積層板等の信頼性に影響を与える。特にこれらの硬化物が高温に長時間さらされると臭素系難燃剤の臭素が脱離し、配線腐食が発生する恐れがある等の問題がある。また、臭素系難燃剤の比重が高いため、最近の移動通信体や液晶テレビ、モニターなどの電気製品、自動車部品、スポーツ用品等の軽薄短小化に不利益である。さらに、廃棄された電気電子製品を焼却処理する際、ハロゲン化物等の有害物質を発生し、焼却設備の破損や環境汚染等の問題がある。この様なことから、ハロゲン系難燃剤を使用せずに難燃付与できる材料の開発や難燃性組成物の研究等の要望が強くなってきている。
【0003】
ハロゲン系難燃剤の代わりに燐系化合物や水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が知られている。特開平5−179109号公報にはエポキシ樹脂組成物に水和アルミナの配合が提案されている。しかし、水和アルミナのような水酸化金属では、親水性であり、硬化物の吸水率が高くなる。また、大量に配合しないと効果が現れないので、硬化物の強靱性を損なう等の欠点がある。特開平8−188638号公報では燐含有エポキシ樹脂及びジフェニルホスフィニルハイドロキノン、ジフェニルホスフィニルナフタリン等の含燐ビスフェノール硬化剤が開示されているが、しかし、含燐ビスフェノール類の融点が高く、例えば、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスフェナントレン−10−オキシド(三光(株)社製のHCA−HQ 以下、HCA―HQと略す)の融点は256℃、ジフェニルホスフィニルハイドロキノン(以下、PPQと略す。)の融点は219℃であり、しかも各種のエポキシ樹脂との相溶性がないため、取り扱いが困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
かかる問題点を解決するために、本発明者は鋭意研究した結果、ハロゲン系難燃剤を用いずに、難燃性を付与することが可能な軟化点80〜150℃で燐含有量が2重量%以上で、しかも各種汎用エポキシ樹脂やフェノール樹脂硬化剤との相溶性を格段に改良した燐含有フェノール樹脂を見いだし、更に、該燐含有フェノール樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は優れた難燃性、耐熱性、耐加水分解性、低吸水性を有することを見いだし、本発明を完成するに至ったものである。本発明は難燃性を有し、硬化剤として有用な燐含有フェノール樹脂、及び、電子部品に用いる封止材、成形材、積層板、注型材、接着剤、絶縁塗料等に適した硬化性エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、2官能エポキシ樹脂1モルに対して、燐含有フェノール類を1.6〜2.2モルの範囲で反応させてなる末端フェノール性水酸基を有する軟化点80〜150℃の燐含有量が2重量%以上であることを特徴とする燐含有フェノール樹脂(A)、及び、この燐含有フェノール樹脂(A)を2官能以上のフェノール類で溶解した軟化点80〜150℃の燐含有量2重量%以上の非結晶性燐含有フェノール樹脂組成物(B)、更に、これら燐含有フェノール樹脂(A)又は非結晶性燐含有フェノール樹脂成物(B)を硬化剤成分として単独、又は他の硬化剤と共に、エポキシ樹脂組成物に対し、燐含有量が0.3〜5重量%になるように配合した難燃硬化性エポキシ樹脂組成物である。
【0006】
更に、上記燐含有硬化性エポキシ樹脂組成物は半導体装置や電子部品の製造時に使用する封止材、成形材、注型材、接着剤、絶縁材料等に用いられる組成物であり、電子回路基板用銅張積層板及びプリプレグに用いられるエポキシ樹脂組成物である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について述べる。本発明に於いて、燐含有フェノール類と反応させる2官能エポキシ樹脂とは、2官能のフェノール性水酸基を持つフェノール類とエピクロルヒドリン(以下ECHと略す)とを塩基性触媒存在下に製造されたフェノール類のジグリシジルエーテル、又は2個のアルコール性水酸基を持つジアルコール類とECHとを塩基性触媒存在下に製造されたジアルコール類のジグリシジルエーテル、又は2個の活性水素を持つアミン類とECHから製造されたジグリシジルエーテルなどがある。具体例としては、ヒドロキノン型、ビスフェノールA型、 ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビフェニル型、1,4−シクロオクチレンホスホニルー1,4−フェニルジオール、1,5−シクロオクチレンホスホニルー1,4−フェニルジオール等のビスフェノール型ジグリシジルエーテル、又はこれらのフェニル基が低級アルキル基を有する前記ビスフェノール型ジグリシジルエーテルである。更に、エチレングリコール型、プロピレングリコール型、ブチルービス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキサイド型、水素化ビスフェノールA型、1,4ーフェニルジメタノール型、1,4ーシクロヘキシルジメタノール型等のジアルコール型ジグリシジルエーテル、アニリン型、ピペラジン型等のアミノジグリシジルエーテル等の2官能エポキシ樹脂を挙げることができる。上記2官能エポキシ樹脂を単独用いてもよく、任意の混合物を使用しても可能である。
【0008】
本発明で用いる燐含有フェノール類としては、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスフェナントレン−10−オキシド(以下は三光(株)社の商品名HCA−HQと略す)、10−(1,4−ジオキシナフタリン)−10H−9−オキサ−10−ホスフェナントレン−10−オキシド(以下HCA−NQと略す)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン(PPQと略す)、ジフェニルホスフィニル1,4−ジオキシナフタリン(PPNQと略す)、1,4−シクロオクチレンホスホニル−1,4−フェニルジオール(CPHO―HQと略す)、1,5−シクロオクチレンホスホニル−1,4−フェニルジオール(CPHO−HQ)等の燐含有ビスフェノール類を挙げることができる。上記燐含有フェノール類を単独使用、もしくは混合して用いることも可能である。
【0009】
上記2官能のエポキシ樹脂1モルに対して、上記燐含有フェノール類を1.6〜2.2モル、好ましくは1.8〜2.1モル、更に好ましくくは1.9〜2.0モルの範囲で反応させて、本発明に係る燐含有フェノール樹脂(A)を得る。エポキシ樹脂1モルに対して燐含有フェノール類が2.2モル越えた場合は残存含燐フェノール類が多くなり、生成物と他の硬化剤との相溶性が劣ってしまう。又軟化点が高くなり、溶融が困難となってしまう。又、燐含有フェノール類が1.6モル以下で反応させた場合は、燐含有量が低下し、水酸基含有量が少なくなり、硬化剤としての添加量が増えてしまうのでコスト的に不利益である。本発明では上記のモル比範囲で非プロトン性溶媒の存在下に塩基性触媒を用いて、100〜230℃の範囲で反応させた後に、減圧して溶剤を除去する方法によって、製造することができる。無溶媒での製造方法も可能であるが、上記燐含有フェノール類の融点が210℃以上となるため、反応温度を高くする必要がある。
このようにして得られた燐含有フェノール樹脂(A)は軟化点80〜150℃で燐含有量は2重量%以上である。そして、この燐含有フェノール樹脂(A)はエポキシ樹脂及び他のフェノール樹脂に対して良好な相溶性を有する。即ち、得られた燐含有フェノール樹脂は各種エポキシ樹脂、特に特に封止材用途のクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂及びフェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂との相溶性に優れている。
【0010】
本発明は、又、上記燐含有フェノール樹脂(Aを2官能以上のフェノール類に溶解して非結晶性燐含有フェノール樹脂組成物(B)とする。2官能以上のフェノール類としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、フェノールアラルキル樹脂、グリオキサールテトラフェノール樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等が挙げられる。2官能以上のフェノール類に溶解する目的は、燐含有フェノール樹脂(Aをエポキシ樹脂に添加する際、燐含有量や軟化点を調整するためであって、特に、リン含有フェノール類は高融点であるためフェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂に溶解することによって取扱が容易となる。従って、燐含有フェノール樹脂(Aと2官能以上のフェノール類との量的割合は、添加するエポキシ樹脂中の燐含有量やエポキシ樹脂の軟化点、エポキシ基濃度等によって適宜変更する。
【0011】
本発明の燐含有フェノール樹脂(A)又は非結晶性燐含有フェノール樹脂組成物(B)を硬化剤の一部乃至全部として2官能以上のエポキシ樹脂に添加する。添加される2官能以上のエポキシ樹脂とは、通常封止材、積層板、絶縁塗料などに使用されているエポキシ樹脂である。例えば、ヒドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂、又は前記樹脂のフェニル基にアルキル置換基を持つものも包含する。フェノールノボラック型エポキシ樹脂 、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノルAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、イソシアヌ酸型エポキシ樹脂、パラアミノフェノール型エポキシ樹脂等の3官能以上のエポキシ樹脂、又は前記樹脂のフェニル基にアルキル置換基を持つものも包含する樹脂を使用することができる。本発明ではこれに限定するものではないが、上記エポキシ樹脂を単独使用してもよく、任意の種類や割合の混合物を用いることも可能である。また、流動性や粘度等を調整する時に、例えば、トリメチロルプロパン型エポキシ樹脂等の反応性稀釈剤を使用することが可能である。
【0012】
本発明の燐含有フェノール樹脂は硬化剤として単独使用してもよく、或いは他のフェノール系硬化剤と併用しても良い。、併用できる他のフェノール系硬化剤としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール等の2官能フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾルノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、グリオキサールテトラフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂等の多官能フェノール樹脂等を挙げることができる。又、アミン系硬化剤とも併用することも可能である。アミン系硬化剤として、例えば、ジシアンジアミド、イソホロンジアミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等が挙げることができる。更に、酸無水物系硬化剤との併用も効果的である。酸無水物系硬化剤として、例えば、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、水素添加フタル酸無水物、メチル化水添フタル酸無水物等挙げることができる。これらの硬化剤は樹脂組成物の燐含有量に応じて併用することができる。
【0013】
硬化性エポキシ樹脂組成物は上記エポキシ樹脂を主剤とし、燐含有フェノール樹脂を硬化剤の一部乃至全部として用い、エポキシ基1モルに対して、フェノール性水酸基0.5〜1.1モルの範囲で、好ましくは0.6〜1.0モル、更には0.8〜1.0モルで配合することが好ましい。燐含有フェノール樹脂とアミン系硬化剤併用する場合、同様にエポキシ基1モルに対して、フェノール性水酸基のモル数とアミンの活性水素モル数の和を0.5〜1.1モルの範囲で配合することができる。また、燐含有フェノール樹脂と酸無水物とを併用する際、エポキシ基1モルに対して、フェノール性水酸基のモル数とカルボン酸のモル数の和を0.5〜1.1モルの範囲で配合して使用することができる。主剤のエポキシ基1モルに対して、硬化剤の官能基モル数が0.5モル未満の場合、硬化物架橋度が低く、耐熱性が劣ってくる。硬化剤の官能基モル数が1.1モルを越えた時、硬化剤の残存量が多くなり、硬化物の吸湿性、耐熱性が低下する。硬化促進剤は塩基性化合物の使用が一般的であり、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機燐化合物、2−メチルイミタゾール、2−エチル4−メチルイミタゾール等のイミタゾール類、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン類が挙げられる。
【0014】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて、溶融シリカ、結晶性シリカ、ガラス繊維、ガラス織物、カーボン繊維、アラミド繊維、アルミナ、カーボンブラック、酸化チタン等の無機充填材、顔料,または、ワックス等の滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、エポキシシラン、アミノシラン等の安定剤、カップリング剤などを樹脂組成物に配合して使用することができる。硬化性エポキシ樹脂組成物の燐含有量は0.3〜5重量%の範囲で調整し、好ましくは0.5〜4重量%、1〜3重量%はさらに好ましい。燐含有量が0.3重量%未満では、硬化物の難燃効果が低下する。5重量%を越える場合、組成物の流動性が欠け、コスト的にも不利となる。又、燐含有量が高くすると硬化物の吸水率が高くなり、封止材や積層板、注型材、接着剤等の電気電子部品材料の耐半田リフロー性や信頼性が低下することになる。
本発明の硬化性樹脂組成物は公知な方法で配合することができる。例えば、封止材コンパウンドの場合、エポキシ樹脂とフェノール硬化剤、硬化促進剤、難燃剤、シリカ充填材、カップリング剤、離型剤、その他の添加剤を所定量配合し、十分混合した後、ニーダーや押し出し機や熱ロールを用いて混練し、冷却してから粉砕することによって製造できる。積層板はエポキシ樹脂と硬化剤、難燃剤、硬化促進剤を所定量で配合し、溶剤を用いてワニスを作成した後、ガラス布をワニスに含浸し、加熱によって溶剤を除去することでプリプレグができる。積層板の厚みにより所定枚数のプリプレグと表層銅箔を重ね、真空加熱圧着することにより、製造できる。また、ガラス布を含まない薄い絶縁膜として製造することもできる。
【0015】
本発明の燐含有フェノール樹脂及び該樹脂を含有する硬化性エポキシ樹脂組成物を使用して、得られた半導体封止材は、燐含有フェノール樹脂を硬化剤の一部ないし全部として含有し、他のフェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤と併用しても本発明を損なうことがなく、主剤は2官能以上のエポキシ樹脂であって、無機充填材、顔料、滑剤、安定剤、硬化促進剤等添加してもよい。燐含有量は0.3〜5重量%の硬化性エポキシ樹脂組成物の硬化物は、優れた耐熱性、難燃性が得られ、低吸水率であることが判った。該含燐フェノール樹脂を含有する硬化性エポキシ樹脂組成物は、電気電子部品に用いられる封止材、銅張り積層板、絶縁塗料、難燃塗料、絶縁難燃接着剤等の電気部品用材料として有用であることが判った。
【0016】
【実施例】
以下実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが,本発明はこれらに限定されるものではない。なお、合成したフェノール樹脂の軟化点はJIS−K7234に準じて測定した。燃焼性はATLAS社製燃焼試験器にて、UL−94規格に準じて測定した。ガラス転移温度(Tg)はセイコーインスツルメンツ社製Exster6000で測定した。吸水率は常温水中浸漬×24時間にて、重量変化の測定を行った。
【0017】
実施例1
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた4つ口のガラス製セパラブルフラスコ実験装置に、エポキシ当量167g/eq.のビスフェノルF型エポキシ樹脂(東都化成(株)製YDF−170)を167g(0.5 モル)と、融点256℃、燐含有量9.5%、水酸基当量162g/eq.の10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスフェナントレン−10−オキシド(HCA−HQ、三光(株)製)を324g(1モル)及びシクロヘキサノン(アノン)123gとを仕込み160℃に昇温し、触媒としてトリフェニルホスフィンを添加して、8時間反応を行なってから200℃減圧下にてアノンを除去した。得られた含燐フェノール樹脂は各種のエポキシ樹脂やフェノール樹脂との相溶性があり、軟化点は139℃、燐含有量6.3%、水酸基当量491g/eq.であった。このフェノール樹脂を(a)とした。
【0018】
実施例2
実施例1と同様にYDF−170を167g(0.5モル)と、融点296℃燐含有量8.2%、水酸基当量187g/eq.の10−(1,4−ジオキシナフタリン)−10H−9−オキサ−10−ホスフェナントレン−10−オキシド(HCA−NQ)を374g(1モル)、アノン135gとを仕込み、実施例1と同様操作を行い、各種エポキシ樹脂やフェノール樹脂との相溶性がある軟化点139℃、燐含有量5.6%、水酸基当量541g/eq.のフェノール樹脂が得られた。この樹脂を(b)とした。
【0019】
実施例3
実施例1と同様にYDF−170を167g(0.5モル)とHCA−HQ324g(1モル)とアノン123gとを仕込み、160℃で8時間反応させてから、水酸基当量105g/eq.軟化点85℃のフェノールノボラック樹脂 BRG−555B(群栄化学(株)製)を540g添加して、十分溶解した後に、170℃減圧下でアノンを除去した。得られたフェノール樹脂の軟化点は93℃、水酸基当量167g/eq.、燐含有量3%であった。この樹脂を(c)とした。
【0020】
実施例4
実施例2と同様にYDF−170を167gとHCA−NQ374gとアノン135gとを仕込み、160℃で8時間反応させてから、BRG−555B(群栄化学(株)製)を487g添加して、十分溶解した後に、170℃減圧下でアノンを除去した。得られたフェノール樹脂の軟化点は101℃、水酸基当量182g/eq.、燐含有量3%であった。この樹脂を(d)とした。
【0021】
実施例5
実施例1のYDF−170の代わりに、エポキシ当量が186g/eq.のビスフェノールAタイプエポキシ樹脂(東都化成製YD−128)を186g使用する以外は、実施例1と同様に反応を行い、得られたフェノール樹脂の軟化点は143℃、水酸基当量510g/eq.、燐含有量6%であった。この樹脂を(e)とした。
【0023】
実施例10,比較例1〜2
実施例10及び比較例1〜2は実施例1〜より得られた燐含有フェノール樹脂(a)〜()を硬化剤として、主剤のオルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂YDCN−703(東都化成製)及びフェノールノボラックエポキシ樹脂YDPN−638(東都化成製)とを表1の様にそれぞれ配合し、栗本(株)社製のS1KRCニーダーを用いて、80℃〜120℃の範囲で混練してコンパウンドを作成した。得られたコンパウンドをKOHTAKI INC.,製5トンのトランスファー成型機にて、170℃×65Kg/cm2×10分の条件で試験片を作成し、オーブン中180℃にて、あと硬化後の試験片の物性測定を行い、その結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0004906020
TPP::トリフェニルホスフィン
*:HCA−HQ溶解しないため試験片の作成不能
【0025】
【発明の効果】
表1の比較例2に記載されている様に、HCA−HQの融点が256℃と高く、各種エポキシ樹脂との相溶性がないため、封止剤の硬化剤として使用するのは難しいことが明らかである。又比較例1では通常のフェノール樹脂硬化剤とクレゾールノボラックエポキシ樹脂との配合たけでは、難燃効果が得られない。本発明の2官能のエポキシ樹脂1モルに対して、燐含有フェノール類1.6〜2.2モルの範囲で、反応させてなる末端がフェノール性水酸基を有する燐含有フェノール樹脂、又は燐含有フェノール類を2官能以上のフェノール樹脂で溶解した非結晶性フェノール樹脂では、各種エポキシ樹脂及びフェノール樹脂との相溶性があり、軟化点150℃以下であるため、該樹脂を硬化剤の一部乃至全部として用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物のTgが高く、難燃性も優れている。特に半導体素子封止に用いられる封止材に最適であり、電気電子部品に用いられる積層板、注型材、接着剤に適しており、さらに電気絶縁塗料、難燃塗料用材料としても有用である。

Claims (8)

  1. ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂1モルに対して、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10H−9−オキサ−10−ホスフェナントレン−10−オキシド、10−(1,4−ジオキシナフタリン)−10H−9−オキサ−10−ホスフェナントレン−10−オキシド及びジフェニルホスフィニルヒドロキノンからなる群から選ばれた少なくとも1種の燐含有フェノール類を1.6〜2.2モルの範囲で反応させてなる末端フェノール性水酸基を有する軟化点80〜150℃の燐含有量が2重量%以上であることを特徴とする燐含有フェノール樹脂(A)。
  2. 請求項1記載の燐含有フェノール樹脂(A)を2官能以上のフェノール類で溶解した軟化点80〜150℃の燐含有量2重量%以上の非結晶性燐含有フェノール樹脂含有組成物。
  3. 請求項1記載の燐含有フェノール樹脂(A)が硬化剤成分としてエポキシ樹脂組成物に対し燐含有量を0.3〜5重量%になるように配合してなる難燃硬化性エポキシ樹脂組成物。
  4. アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤及び酸無水物系硬化剤から成る群から選ばれた少なくとも1種の硬化剤、無機充填剤、顔料、離型剤、安定剤、硬化促進剤の少なくとも1種を用いることを特徴とする請求項記載の難燃硬化性エポキシ樹脂組成物。
  5. 請求項又は請求項の何れかの項に記載のエポキシ樹脂組成物が電気電子部品封止用硬化性エポキシ樹脂組成物。
  6. 請求項又は請求項の何れかの項に記載のエポキシ樹脂組成物がプリプレグ用及び積層板用硬化性エポキシ樹脂組成物。
  7. 請求項又は請求項の何れかの項に記載のエポキシ樹脂組成物が絶縁塗料、難燃塗料用硬化性エポキシ樹脂組成物。
  8. 請求項又は請求項の何れかの項に記載のエポキシ樹脂組成物が絶縁、難燃接着剤用硬化性エポキシ樹脂組成物。
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