JP4903463B2 - 排版装置および孔版印刷装置 - Google Patents
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Description
マスタは、熱可塑性樹脂フィルム(以下、単に「フィルム」という)に、多孔質支持体(以下、単に「支持体」という)を構成する和紙繊維や合成繊維、あるいは和紙と合成繊維とを混抄したものを貼り合わせたラミネート構造を有している。フィルムの厚みは、大体1〜2μm程度のものが一般に用いられる。マスタのフィルム面をサーマルヘッドの発熱素子に接触させ、サーマルヘッドを主走査方向に作動させ、搬送手段としてのプラテンローラ等でマスタを副走査方向に移動させながら加熱穿孔製版するようになっている。
印刷に供された使用済みのマスタは、排版装置の排版ローラ対により挟持され、版胴の外周面から剥離されて排版ボックス内に収容されるようになっている。
この特許文献2(特開平6−247031号公報(=特許第2803954号公報))記載の技術によれば、クランパを給版および排版に必要な所定の角度にそれぞれ開くことができることにより比較的簡素な機構の自動給版および自動排版装置を使用することが可能となると共に、排版位置においてクランパが排版に必要な大きい角度に開かれ、クランパと連動して揺動する弾性薄板が凹部から印刷ドラム(版胴)の遠心方向へ突出する向きに揺動されるので、使用済みのマスタ(原紙)の確実な排版を実現することができ、加えてその機構の簡単化により装置の小型軽量化を図ることができ、信頼性が高く、廉価に生産できる原紙係止装置を提供することができるという効果を奏するものである。
そこで、近年、廃棄インキ等の低減を兼ねて多孔質支持体の厚み自体を薄くしたり、あるいは支持体繊維を細くしたりして繊維目による画質劣化を低減させる試みがなされている。
このように、マスタの強度を担っている支持体が薄くなったり、密度が下がってくると、マスタ自体の強度(剛性・剛度)が大幅に下がって従来よりも曲がりやすくなる。また、このようなマスタの製作は、技術的に高いレベルのものであることから、マスタ自体が高価なものとなる。
しかしながら、排版ローラに対する使用済みのマスタの巻き付きを完全に消滅するのは非常に困難であり、クランパから開放されたマスタの先端部が急激に回転し始める排版ローラに跳ね返され不安定な挙動になり、そのマスタの片側や局部だけが排版ローラ対に挟まれない状態になり、排版ローラ対に対するマスタの巻き付きが発生するという問題があった。特に、比較的支持体の厚みの薄い低強度のマスタを印刷ドラムの外周面から剥離排版する際には、上記弾性薄板(蹴り出し手段)を採用しても、マスタの腰の強さ(強度)が下がることにより、使用済みのマスタの先端部がクランパから開放された時のそのマスタ先端部の挙動が不安定になり、波打ちし易くなって排版装置への入り込みが不安定になってしまうという問題点があった。
しかしながら、特許文献3においても、排版ローラに対する使用済みのマスタの巻き付きを完全に消滅するのは非常に困難であり、クランパから開放された使用済みのマスタの先端部が回転する排版ローラに跳ね返され不安定な挙動になり、そのマスタの片側だけが排版ローラ対に挟まれない状態になり、排版ローラ対に対するマスタの巻き付きが発生するという問題点があった。
請求項1記載の発明は、製版済みのマスタの先端部を保持する保持手段を備えた印刷ドラムの外周面に巻き付けられた使用済みのマスタを挟持して剥離しながら引き込む排版ローラ対を有し、該排版ローラ対の一方のローラ側には該一方のローラと同期回転する羽根部材が設けられ、該羽根部材は上記一方のローラの外周面よりもその遠心方向へ延びる複数の弾性羽根を具備し、該弾性羽根は弾性変形しながら上記排版ローラ対の他方のローラの外周面に接触するようにした排版装置において、上記保持手段が使用済みのマスタの先端部を開放した後に、上記排版ローラ対をして回転開始させ、上記印刷ドラムから使用済みのマスタを剥離しながら引き込みする際の上記排版ローラ対の回転速度に関して、上記排版ローラ対により使用済みのマスタの先端が挟持されるまでの間は、剥離された使用済みのマスタの先端を挟持して剥離搬送する時の上記排版ローラ対の回転速度よりも低速の第1周速度で上記排版ローラ対を回転させ、該排版ローラ対により使用済みのマスタの先端部を挟持した後から上記排版ローラ対と上記印刷ドラムの外周面との間で使用済みのマスタを略均一に伸張する際には、第1周速度より徐々に速くして第2周速度で回転させ、使用済みのマスタを略均一に伸張した後、そのマスタを上記印刷ドラムから剥離搬送する際には、上記排版ローラ対を第2周速度よりも速い第3周速度で回転させることにより、第1周速度<第2周速度<第3周速度としたことを特徴とする。
ここで、「上記複数の弾性羽根の長さが、上記一方のローラの円周方向で異なるように形成され」とは、後述の実施形態や変形例等に示したように一方のローラの円周方向で1つずつ互い違いに形成されている状態、または複数本ずつ互い違いに形成されている状態を含む他、長い弾性羽根の間に複数の短い弾性羽根群が形成されている状態や、長い弾性羽根が一方のローラの円周方向に連続して複数形成された長い弾性羽根群同士の間に少なくとも1つの短い弾性羽根が形成されているような状態も含まれる。
また、「回転軸線方向で略等しく形成されている」とは、羽根部材の回転軸線方向において、弾性羽根の長さが等しいことを含む他、弾性羽根の長さが公差設定内にあることを意味する。換言すれば、弾性羽根の先端が同一の円周面上にある、すなわち弾性羽根の先端が揃っていることを意味する(以下、同様)。
請求項1記載の発明によれば、上記構成により、排版ローラ対の回転速度に関して、低速である第1周速度から徐々に第2周速度へと速くすることにより、使用済みのマスタの先端部の角部が排版ローラに跳ね返されて耳折れしたり破れてしまったりすることなく、使用済みのマスタの先端部を確実に挟持することができるとともに、印刷ドラムの外周面と排版ローラ対との間の使用済みのマスタを略均一に伸張することができる。これにより使用済みのマスタの片側とか局部が挟まれないまま弛んだ状態で排版収納動作が行われる場合と違って、マスタ幅方向に亘り略全面で一定した量のマスタを例えばマスタ収納部に送り込むことができ、使用済みのマスタの収納時の折り畳み動作が安定し、途中で折れたり引っかかり排版ジャムになってしまうことも防止できるようになる。
図1ないし図11を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
まず、図1に基づいて、本実施形態における孔版印刷装置100の構成の概要を説明する。孔版印刷装置100は、図示しない原稿の画像を読み取る周知構成の画像読取装置(スキャナ)50と、該画像読取装置50によって読み取られた画像情報または図示しないパーソナルコンピュータ等の外部接続機器により入力された画像情報に基づいてマスタ8を製版すると共に給版する製版装置51と、給紙台としての給紙トレイ58上の印刷用紙P(以下、「用紙P」という)を給紙する給紙装置52と、印刷ドラム1と、該印刷ドラム1から剥離された印刷済みの用紙Pを吸引搬送する排紙搬送装置53と、該排紙搬送装置53により搬送された用紙Pが排出収容される排紙台としての排紙トレイ54と、印刷ドラム1の外周面から使用済みのマスタ8を剥離し収納する排版装置55等を有している。
製版装置51は、図1に示すように、図示しないホルダ部材、プラテンローラ10、サーマルヘッド11、カッタ12、反転ローラ対13およびガイド板14を具備している。
マスタ8は、芯材8bにロール状に巻成されたマスタロール8aから繰り出し可能になされている。マスタロール8aは、芯材8bを介して図示しないホルダ部材に回転可能に支持されている。マスタ8は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)系のフィルムに、支持体として和紙繊維や合成繊維、あるいは和紙と合成繊維とを混抄したものを接着剤で貼り合わせたラミネート構造を有しているものが用いられる。
マスタ8は、従来のマスタであれば、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)系等のフィルムの厚みが大体1〜2μm程度で、その支持体の厚みが45〜55μm程度で、トータルの厚み50〜60μm程度のものが使用される。これに対し、排版動作時における廃棄インキ等の低減を兼ねて多孔質支持体の厚み自体を薄くしたり、その支持体繊維を細くしたりして繊維目による画質劣化を低減させることが可能な高画質のマスタ8の場合は、例えばフィルム構成は前記従来のマスタと同じで、その支持体の厚みが25〜30μm程度で、トータルの厚み30〜35μm程度のものが使用される。このように、高画質のマスタ8は、従来のマスタと比較して、その厚みが比較的薄く、かつ、低強度となるため、高画質のマスタ8の腰の強さは、従来のマスタのそれと比較して、30〜50%程度低下している。
プラテンローラ10は、図示しないステッピングモータにより時計回り方向に回転駆動され、これによりマスタ8がマスタロール8aから繰り出されるようになっている。
プラテンローラ10のさらに下流側には、製版済みのマスタ8を所定の長さに切断するギロチンタイプのカッタ12が設けられている。カッタ12は、可動刃としての上刃12aと固定刃としての下刃12bとを有している。カッタ12としては、上記のものに限らず、回転刃移動タイプを採用してもよい。
図示しないが画像読取装置50の上部には、原稿を分離搬送する自動原稿搬送装置(ADF)が設けられている。画像読取装置50は、ADFにより搬送された原稿を順次自動的に搬送しながら読み取ったり、ADFを用いずに図示しないコンタクトガラス面に載置された原稿を読み取ることができる周知の構成・機能を有している。
開孔部1aおよび非開孔部1bを備えた上記支持円筒体は、例えばステンレススチール等の金属薄板で形成されている。開孔部1aは、図1および図2において梨地模様で示されており、クランパ7配置部の周辺を除くその円周上の所定の範囲にわたり形成されている。非開孔部1bは、図1および図2においてハッチングを施されて示されており、クランパ7配置部の周辺に形成されている。上記メッシュスクリーンは、上記支持円筒体の非開孔部1bに略対応した領域に巻装されていて、例えば樹脂あるいは金属製網体状のインキ通過性領域部と、このインキ通過性領域部に連結したインキ不通過領域としてのレザー部とを有する。
印刷ドラム1をホームポジション(排版位置)および給版位置に位置決め停止させる構成は、例えば本願出願人が提案した特開平6−247031号公報の図1に示されているものと同様のものを採用している。すなわち、上記公報の図1に開示されているように、印刷ドラム1(上記公報では版胴5)のドラムフランジ9に植設されたホームポジション(排版位置)を規定するための排版用位置決めピン(22)と、給版位置を規定するための給版用位置決めピン(21)と、孔版印刷本体側(上記公報の図2に示す側板23)に配設され排版用作動アーム(32)における他端側の折り曲げ(32a)部の裏側に固定された排版用位置決めピン(22)または給版用位置決めピン(21)と係合する排版および給版兼用の、らっぱ状の広い間口を持った開口部(37)およびこの開口部(37)に連通した位置決め溝(38)が形成された位置決めガイド(39)とから主に構成されている。
メインモータ15の出力軸には、多数のスリットを備えたエンコーダ板16が取り付けられている。エンコーダ板16近傍の孔版印刷装置本体側には、エンコーダ板16を所定の間隔をもって挾み付けるフォトインタラプタ(透過型の光学センサ)からなるエンコーダセンサ17が配設されている。メインモータ15の回転駆動によるエンコーダ板16の回転動作に協働して発生されたパルス数をエンコーダセンサ17で検出することにより、印刷ドラム1の回転角度や回転速度が検出されるようになっている。エンコーダ板16およびエンコーダセンサ17は、フォトロータリエンコーダであり、インクリメンタル型のパルスエンコーダを構成している。
一方、印刷ドラム1の図2に示す奥側のドラムフランジ9に対向した孔版印刷装置本体側の所定位置には、排版位置でもあるホームポジションを占めたときに、ドラムセンサフィラ18と係合することによってそのホームポジションを検知するためのドラムホームポジション検知手段としてのドラムホームポジションセンサ19が配置されている。ドラムホームポジションセンサ19は、透過型の光学センサからなる。
なお、メインモータ15側に配設した上記パルスエンコーダに代えて、これを印刷ドラム1側に配設してもよい。印刷ドラム1側に上記パルスエンコーダと同様のものを配設すれば、メインモータ15と印刷ドラム1との間を連結しているギヤやベルト等(回転駆動力伝達手段)のバックラッシュやベルトの伸びによる印刷ドラム1の回転角度のばらつき・変動等を排除して、印刷ドラム1の回転角度を直接的に正確に検出できる。
インキローラ2の外周面と僅かな隙間をおいてドクターローラ3が設けられており、該ドクターローラ3は、インキローラ2とドクターローラ3との間に形成される断面略楔状のインキ溜まり4のインキを計量しつつインキローラ2の外周面に薄膜状に供給する。インキ溜まり4のインキは、図示しないインキ供給装置により、印刷ドラム1の外部に設けられたインキパック等より吸引され、インキパイプ5の供給孔5aより滴下供給されてインキローラ2とドクターローラ3の回転により混練される。印刷ドラム1は、孔版印刷装置本体に対してその軸線方向に上記インキ供給装置および上記インキパック等と一体化されたドラムユニットを構成していて、孔版印刷装置本体に対して着脱可能となっている。
クランパ7は、図3ないし図7に詳しく示すように、弾性状の永久磁石(例えばゴム磁石)からできている磁石板7aと、クランプ板7bとから主に構成されており、ステージ6上に固定されたクランパベース48と対向して開閉自在になされている。クランプ板7bには、クランパ軸25方向の両端部において、クランク状に折り曲げ成形されたリフト爪7cと、垂下片7dとが一体的に成形されている。クランプ板7bは、例えばステンレススチール等の金属で一体成形されている。磁石板7aは、クランプ板7bに適宜の両面テープ等によって貼着・固定されている。
図1および図3は、クランパ7の閉じ動作によって、製版装置51から供給された製版済みのマスタ8の先端部がクランパベース48との間で挟持・クランプされている状態を表している。
一方、孔版印刷装置本体側には、上記特開平6−247031号公報の図1、図2、図6および図7に示されている原紙係止装置(60)と同様の、印刷ドラム1がホームポジション(排版位置)および給版位置を占めたときにクランパ7を開閉する給版用作動アーム(25)、排版用作動アーム(32)およびラック駆動モータ(45)と同じ図2に示すラック駆動モータ45等を具備した開閉装置(図示せず)が配設されている。
印刷ドラム1の両端部のドラムフランジ9における係合爪36cの近傍には、クランパ7の開閉時に、係合爪36cとの干渉を避けるための逃げ凹部9aが形成されている。なお、図4ないし図7では、ドラムフランジ9の形状、蹴り出し部材36やクランパベース48の厚み等を誇張・拡大して示している。
図1および図3に示すように、クランパ7が閉じられているとき、蹴り出し部材36の爪状部36a,36bは、クランパベース48の溝部48a,48b内に嵌入・収納されるようになっている。蹴り出し部材36の爪状部36a,36bは、後述するようにクランパ7が所定の角度θ2以上よりも大きく拡開される排版工程でのみ、クランパベース48から印刷ドラム1の略遠心方向に突出することで、使用済みのマスタ8の先端部を同方向へ蹴り出す動きを行うようになっている。
蹴り出し部材36は、図5および図7に示すように、図示しない排版用作動アーム(32)が第3の位置に揺動してクランパ駆動レバー26と係合することにより、クランパ7が所定の角度θ2以上に開いたとき、このクランパ7の開放動作と連動して揺動する。
ステッピングモータ75は、排版ローラ対30を回転駆動する駆動手段としての機能を有する。これにより、排版ローラ上31と排版ローラ下33とは、図2に示すようにステッピングモータ75により互いに反対向きに、ちなみに図2では排版ローラ上31が時計回りに、排版ローラ下33は反時計回りに回転駆動される。なお、上記駆動手段としては、DCモータ等でもよいが、回転速度の変更が容易で制御し易い比較的安価なステッピングモータ75を用いている。
排版ローラ対30は、図9に示すように、印刷ドラム1の軸線方向に間隔をおいて複数設けられており、各排版ローラ対30における排版ローラ上31の脇には該排版ローラ上31と同期回転する羽根部材としての羽根車32(以下、「羽根ローラ32」と言い替える)が設けられている。
弾性羽根32aの形状は、図8に詳しく示すように、回転軸38を含むローラ基部32bから遠心方向に延びた複数の弾性羽根32aの長さが、羽根ローラ32の円周方向で異なるように互い違いに形成されていて、かつ、回転軸38の軸線方向(以下、「回転軸線方向」という)で等しく形成、すなわちその先端が同一の回転軸線方向で揃って形成されている。この特有な弾性羽根32aの形状により、使用済みのマスタ8の先端部を引っ掛け易くなっている。
なお、弾性羽根32aの羽根の幅(図8では紙面奥行き方向、図9では左右方向の寸法)は、長・短羽根共に、3〜5mmに設定・形成している。
弾性羽根32aは、使用済みのマスタ8との接触を少なくした柱状形状を有しているので、特開2000−43394号公報の図3に示されている従来の弾性羽根(13)よりも使用済みのマスタ8の貼り付きを低減できる。
圧縮板34は、図示しないモータ等により所定のタイミングで駆動される。排版ボックス35は、図示しない排版装置本体に対して着脱自在に設けられており、満杯になった廃棄マスタ8dを適宜廃棄できるようになっている。
図2において、制御手段77は、本実施形態に係る孔版印刷装置100の主としてクランパ7の開閉制御および排版制御のうちの排版ローラ対30の駆動制御を行うためのものである。以下、説明の簡明化を図るため、孔版印刷装置100の上記制御以外の全体動作を制御するものとして図示しないメイン制御手段があり、このメイン制御手段と制御手段77とは互いに指令信号やオン/オフ信号あるいはデータ信号等を送受信しているものとして説明する。
制御手段77の上記CPUは、上記入力ポートおよび各センサ入力回路を介して、エンコーダセンサ17、ドラムホームポジションセンサ19と電気的に接続されていて、エンコーダセンサ17から印刷ドラム1の回転角度に係る出力信号(データ信号:パルス信号)、ドラムホームポジションセンサ19から印刷ドラム1のホームポジションを検出するための出力信号(オン/オフ信号)を受信する。これにより、制御手段77は、ドラムホームポジションセンサ19からの印刷ドラム1の回転角度の基準となるホームポジションに係る信号およびメインモータ15の回転量(回転数)に係るエンコーダセンサ17からのパルス数に基づいて、印刷ドラム1の回転位置を計算し、後述する排版ローラ対30の起動(回転駆動開始)タイミング等を判断する。
制御手段77の上記ROMには、上記CPUが後述する制御機能を発揮するための、「排版ローラ対30の起動(回転駆動開始)タイミングおよび回転駆動終了タイミングに係る、使用済みのマスタ8が伸張されるに要する時間排版ローラ対30を回転駆動するためのステッピングモータ75に供給するパルス数の関係データ」、「排版ローラ対30の周速度(回転速度)を変えるためのステッピングモータ75に供給するパルスの周波数と印刷ドラム1の回転角度に係るエンコーダセンサ17から出力されるパルス数との関係データ」や「ステッピングモータ75に供給するパルスの周波数を変えるためのプログラム」および「クランパ7の開閉動作および排版動作等に係るプログラム」等が予め記憶されている。
ここで、排版ローラ対30の回転速度(周速度)を徐々に速くさせる制御動作を所定時間継続することで、後述のように印刷ドラム1と排版ローラ対30のニップ部との間における使用済みのマスタ8が伸張されるに要する時間は、例えば排版ローラ対30を構成する構成部品等の寸法・形状や駆動される際の周速度、およびマスタ8の支持体の厚みによるマスタの強度(腰の強さ)等により変動するものであることはいうまでもない。
アーム軸22aの一端側には、図示しないカムフォロアが設けられており、印刷ドラム1と同期して回転する図示しないカムに沿って図示しない引張バネ等の付勢手段により、プレスローラ23が印刷ドラム1に対して接離するようになっている。プレスローラ23は、印刷時以外は図示しない係止手段により印刷ドラム1から離間した実線で示す位置に保持されている。なお、押圧手段としては、印刷ドラム1の外径と略同じ径を有する圧胴等を用いる場合もある。
印刷ドラム1の左下側には、印刷ドラム1に近接して用紙Pを印刷ドラム1の表面より剥離する軸部を中心に揺動自在な剥離爪62が設けられている。剥離爪62で剥離された用紙Pは排紙搬送装置53の搬送ローラ63によりファン64の吸引力で吸着されながら搬送され、排紙台としての排紙トレイ54へ排出される。
この初期状態で、図示しないADFに原稿がセットされて、図示しない操作パネルのテンキー等により印刷枚数が入力設定される。次いで、上記操作パネルに配設されているスタートボタン等が押されること等によりスタート信号が出され、これがトリガとなって、先ず排版工程が実行される。
すなわち、図5および図7に示すように図示しない排版用作動アーム(32)が第3の位置へ揺動され、クランパ7が給版に必要な所定の角度θ1よりもさらに大きい排版用の角度θ2に開かれる状態になることで、リフト爪7cの上昇と連動して係合爪36cが持ち上げられ、これにより蹴り出し部材36の爪状部36a,36bが溝部48a,48bから印刷ドラム1の略遠心方向へ突出する向きに揺動されることで、使用済みのマスタ8の先端部がその両側縁部を含めてマスタ幅方向Yの全体に亘って確実に蹴り上げられ開放されてフリーな状態となり、この状態での使用済みのマスタ8先端部の排版ローラ対30への受け渡しが確実に行われることとなる。これにより、より確実に排版ジャムの発生を防止することが可能となる。
図10および図11において、第1周速度とは、使用済みのマスタ8の先端を含む先端部を挟持・咥える時の排版ローラ対30の周速度(排版ローラ上31の外周面の速度をいう)を意味し、後述の第3周速度の0.1〜0.5倍に設定される。
第2周速度とは、使用済みのマスタ8の先端部を挟持・咥えた後、そのマスタ8を印刷ドラム1との間で略均一に伸張する時の排版ローラ対30の周速度を意味し、後述の第3周速度の0.5〜1.0倍に設定される。
第3周速度とは、第2周速度にて使用済みのマスタ8を略均一に伸張した後、そのマスタを印刷ドラム1から剥離搬送する時の排版ローラ対30の周速度、換言すれば使用済みのマスタ8を挟持し引き込み剥離搬送する時における引き込み時の排版ローラ対30の周速度を意味し、印刷ドラム1の周速度の1.0〜1.4倍に設定される。
また、使用済みのマスタ8の先端部を排版ローラ対30のニップ部に引き込んだ後、排版ローラ対30と印刷ドラム1の外周面との間の使用済みのマスタ8を略均一に伸張する際には、第1周速度より比較的速い速度であることが望ましく、第3周速度の半分ないし同等である比較的遅い第2周速度(具体的には、第3周速度の0.5〜1.0倍)に設定されている。
ここで、排版ローラ対30の周速度が一定速度で、上記引き込み時周速度の0.5倍未満である場合、上記FPTが余りにも長くなる点から、また、使用済みのマスタ8の先端部を排版ローラ対30のニップ部に引き込んだ後、排版ローラ対30と印刷ドラム1の外周面との間の使用済みのマスタ8を略均一に伸張する際の伸張力が弱くなってしまう点からも好ましくない。
第1に、図11(a)に示すように、第1周速度から第2周速度へと、直線的に変化させる場合が挙げられる。
第2に、図11(b)に示すように、一定時間t’(=t’’/3〜t’’/2)、第1周速度を維持した後、第2周速度まで直線的に変化させる場合が挙げられる。
第3に、図11(c)に示すように、一定時間t’(=t’’/3〜t’’/2)、第1周速度を維持した後、第2周速度まで急激に変化させt’’まで維持する場合が挙げられる。
第4に、図11(d)に示すように、カーブが曲線Rを描くように変化(例えばSinカーブ)変化させる場合が挙げられる。
なお、上記検知手段の一例としては、図2における排版ローラ対30のニップ部近傍(図2のニップ部を通って形成される排版経路の左上方近傍)に配設されている反射型の光学センサからなるマスタ検知センサが挙げられる。
ここで、排版ローラ周速度(引き込み時周速度)がドラム周速度の1.0倍未満であると、排版ローラ対30により挟持引き込み搬送される印刷ドラム1上の使用済みのマスタ8がだぶついて排版ジャムを生じたり、使用済みのマスタ8に付着しているインキが孔版印刷装置100の内部に有る構成部品や部材等に接触して印刷装置内部を汚してしまったりするという点から、また1.4倍を超えると印刷ドラム1上の使用済みのマスタ8を無理矢理引っ張ってしまうことで挟持搬送中のマスタ8が破れてしまう虞や、綺麗な蛇腹状に折り畳まれなくなる等の利点を得られなくなってしまう点から好ましくない。
用紙Pは、印刷ドラム1に接近・離間する剥離爪62により印刷ドラム1の表面から剥離され、排紙搬送装置53等により搬送されて排紙トレイ54に排出積載される。その後、設定された枚数の印刷が同じ動作で行われる。
同様に、第1の実施形態の孔版印刷装置100は、特許文献2(特開平6−247031号公報)記載の原紙係止装置をベースとして、これを後述する効果を奏するように改良したものであるから、上記従来の技術や特開平6−247031号公報に記載されている基本的な効果を奏することはいうまでもない(以下の変形例等でも同様)。
この変形例1は、図8および図9に示した第1の実施形態における排版ローラ対30の羽根ローラ32と比較して、羽根ローラ32に代えた羽根ローラ32Aを用いる点のみ相違する。羽根ローラ32Aは、羽根ローラ32と比較して、複数の弾性羽根32aの短羽根の厚みtではなく、図12(b)に示すように短羽根の回転軸線方向の幅bを長羽根のそれと比べて狭くした点のみ異なる。
例えば、長羽根の幅bが3〜5mmであるのに対して、短羽根の幅bを1.5〜2mm程度に設定・形成したものである。弾性羽根32aの厚みtは、長・短羽根共に1.5〜2mm程度に設定・形成されている。本変形例においても、弾性羽根32aにおける長・短羽根の遠心方向長さについては、第1の実施形態と同様に特有の形状に設定・形成されていて、その作用、利点は、図8(a)、図8(b)等に示したものと同様である。
この変形例2は、図8および図9に示した第1の実施形態における排版ローラ対30の羽根ローラ32と比較して、羽根ローラ32に代えた羽根ローラ32Bを用いる点のみ相違する。羽根ローラ32Bは、羽根ローラ32と比較して、複数の弾性羽根32aにおける長・短羽根の厚みtを共に0.5〜1.5mmと同等程度にした上で、長羽根の根元のみに10度(10°)程度のテーパを付けて長羽根の弾性力を高めるようにした点のみ異なる。なお、複数の弾性羽根32aにおける長・短羽根の図における紙面奥行き方向の幅は、共に同じに設定・形成されている。本変形例においても、その作用、利点は、図8(a)、図8(b)等に示したものと同様である。
なお、変形例1、2においても、第1の実施形態における排版ローラ対30の回転速度制御動作等を含む制御動作を適用して、上述の効果を奏することができることはいうまでもない。
7 保持手段としてのクランパ
8 マスタ(孔版原紙)
25 クランパ軸
26 クランパ駆動レバー
30 排版ローラ対
31 一方のローラとしての排版ローラ上
32、32A、32B 羽根部材としての羽根ローラ(羽根車)
32a 弾性羽根
33 他方のローラとしての排版ローラ下
34 圧縮部材としての圧縮板
35 排版ボックス
36 蹴り出し手段としての蹴り出し部材
36a,36b 爪状部
37 揺動支点としての回転軸
38 回転軸
45 ラック駆動モータ
48 クランパベース
48a、48b 溝部
55 排版装置
75 ステッピングモータ
77 制御手段
100 孔版印刷装置
t 弾性羽根の厚み
b 弾性羽根の幅
Y マスタ幅方向
Claims (4)
- 製版済みのマスタの先端部を保持する保持手段を備えた印刷ドラムの外周面に巻き付けられた使用済みのマスタを挟持して剥離しながら引き込む排版ローラ対を有し、該排版ローラ対の一方のローラ側には該一方のローラと同期回転する羽根部材が設けられ、該羽根部材は上記一方のローラの外周面よりもその遠心方向へ延びる複数の弾性羽根を具備し、該弾性羽根は弾性変形しながら上記排版ローラ対の他方のローラの外周面に接触するようにした排版装置において、
上記保持手段が使用済みのマスタの先端部を開放した後に、上記排版ローラ対をして回転開始させ、上記印刷ドラムから使用済みのマスタを剥離しながら引き込みする際の上記排版ローラ対の回転速度に関して、上記排版ローラ対により使用済みのマスタの先端が挟持されるまでの間は、剥離された使用済みのマスタの先端を挟持して剥離搬送する時の上記排版ローラ対の回転速度よりも低速の第1周速度で上記排版ローラ対を回転させ、該排版ローラ対により使用済みのマスタの先端部を挟持した後から上記排版ローラ対と上記印刷ドラムの外周面との間で使用済みのマスタを略均一に伸張する際には、第1周速度より徐々に速くして第2周速度で回転させ、使用済みのマスタを略均一に伸張した後、そのマスタを上記印刷ドラムから剥離搬送する際には、上記排版ローラ対を第2周速度よりも速い第3周速度で回転させることにより、第1周速度<第2周速度<第3周速度としたことを特徴とする排版装置。 - 請求項1記載の排版装置において、
上記複数の弾性羽根の長さが、上記一方のローラの円周方向で異なるように短い羽根と長い羽根とが互い違いに形成されていることを特徴とする排版装置。 - 請求項1記載の排版装置において、
上記複数の弾性羽根の長さが、上記一方のローラの円周方向で異なるように形成され、かつ、上記回転軸線方向で略等しく形成されており、
上記長さの相違する上記複数の弾性羽根に対応して、該羽根の厚みを含む形状が異なっていることを特徴とする排版装置。 - 製版済みのマスタの先端部を保持する保持手段を備え該製版済みのマスタを外周面に巻き付ける印刷ドラムと、上記保持手段の近傍に揺動可能に配設され、上記印刷ドラムの外周面に巻き付けられた使用済みのマスタの先端部を上記印刷ドラムの略遠心方向へ蹴り出す爪状部を上記印刷ドラムの軸線方向に沿って複数備えた蹴り出し手段と、上記印刷ドラムの外周面上の使用済みのマスタを剥離し排版する排版装置とを具備する孔版印刷装置において、
上記排版装置は、請求項1ないし3の何れか一つに記載のものであることを特徴とする孔版印刷装置。
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