JP4901887B2 - 水田作業機の整地フロート構造 - Google Patents

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Description

本発明は、全条に相当する横幅を有する整地フロートを設けてある水田作業機の整地フロート構造に関する。
整地フロートとして、全条に相当する横幅を備えたフロート本体部(公報内:フロート前部13)と、フロート本体部より後方に延出した3つの後方張出し部(公報内:フロート後部12)とからなるフロートを提示するものがあり、フロート本体部の後端部から後方張出し部に掛けて、底面部を、一連の板材を巡らせて平板状に構成していた(特許文献1)。
特許2641636号(段落番号〔0010〕〔0011〕、図1、図3)
したがって、フロート本体部から後方張出し部に掛けての広い範囲に亘って、板状の底面部が沈み込み状態で接地するので、板状の底面部に当接して泥土がその板状の底面部の前端に滞留し、滞留した泥土がその板状の底面部の前端に沿って横側方に流動すると、その流出した泥土が隣接する条に影響(例えば、既植え苗を押し倒す等)を及ぼす虞があった。
本発明の目的は、全条に相当する横幅を有する整地フロートであっても、泥押しを抑制できて、隣接条に対する影響を抑え、植付が良好に行われる水田作業機を提供することにある。
(構成)
請求項1に係る発明の特徴構成は、全条に相当する横幅を有する整地フロートが、全条に亘る横幅を備えたフロート本体部と、前記フロート本体部の横幅よりは細幅で、前記フロート本体部から前向きに突出する前方張出し部とを有し、前記フロート本体部の横幅方向全長に亘る底面に、整地面となる帯状の帯状整地部を形成すると共に、当該帯状整地部が、その後縁が前記フロート本体部の後縁に沿うと共に、前記整地フロートの最下方部位となるよう形成され、前記整地フロートを上下揺動自在に支持する支点が前記帯状整地部よりも後方側に設けられ、後方に泥土を誘導する泥逃がし凹入部を、前記フロート本体部の下面であって、前記前方張出し部の両横側方における前記フロート本体部の前縁から前記帯状整地部の後縁にかけて上方に凹入する状態に設けてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
(作用)
つまり、全条に亘る横幅を備えているフロート本体部に帯状整地部を設けているので、複数個のフロート部で全条をカバーするフロート構造を採るものに比べて、各フロート部の横側端部が圃面内に沈み込んで形成するフロート通過跡を少なくできるものである。
また、この帯状整地部で全条分の圃面を均して、その均した圃面上に例えば苗を植え付けることができるので、植付条が見栄え良く形成される。
発明を解決しようとする課題の項で、整地フロートの底面が全条に亘って同一平面に形成されている場合には、底面の前端に泥溜まりが生じ易く、かつ、溜まった泥土が帯状整地部の前端に沿って側端部より更に横側方に流動して、隣接する条に影響を与えることがある、点について説明した。
これに対して、本願発明においては、帯状整地部の一部に上方に凹入する泥逃がし凹入部を形成してあるので、泥逃がし凹入部を介して泥土を整地フロートの後方に流すことができ、帯状整地部の前端における泥土の滞留や隣接する条への影響を抑制することができる。
また、全条に亘る横幅を備えたフロート本体部から前方に向けて、そのフロート本体部より細い幅の前方張出し部を設けてあるので、フロート本体部に先行して前方張出し部が圃面の凹凸に起因する接地圧の変動を感知することができる。
しかも、前方張出し部は全条に亘るものではないので、畦際での作業を行っている場合にも、畦際の凹凸部分を感知する度合いが小さく、整地フロートのセンサ機能が安定する。
一方、前方張出し部を設けることによって、前方張出し部の側縁部に沿って流動する泥土がフロート本体部における前端部に滞留する可能性がある。
そこで、本発明においては、フロート本体部における底面で前方張出し部の両横側方に、後方に泥土を誘導すべく上方に凹入する泥逃がし凹入部を形成した。このことによって、前方張出し部の側縁部に沿って流動する泥土は、泥逃がし凹入部からフロート本体部を通過するので、フロート本体部の前端での泥土の滞留は抑制される。
また、整地フロートを揺動可能に支持する後支点を、帯状整地部の後方に備えているので、整地フロートの後支点が、凹凸部が帯状整地部で均された後の圃面上を移動することとなり、後支点のガタツキが少なく、圃面の凹凸によって上下揺動する整地フロートの基準位置が安定している。
これによって、この整地フロートを植付に係る耕深を一定にするための自動制御に組み込み、整地フロートを接地センサとして利用する場合に、後支点のガタツキが少なくなる点は、制御の基準点が安定し、制御自体が安定したものとなる。
また、帯状整地部の後方に後支点を配置することにより、揺動に係る支点位置を十分に後方に配置することができ、後支点から整地フロートの前端までの間隔が大きく採れることとなり、同じ高さの凸部によって整地フロートの前端部が持ち上げられても、揺動角を小さくすることができ、外乱を受け難い整地フロートとなる。
(発明の効果)
全条に亘る横幅で帯状整地部を設けているので、フロートを複数個設けるものに比べて整地状態が全条に亘って一定したものにでき、複数個の整地フロートを有するものに比べて、フロート通過跡も付き難いという効果に加えて、次のような特有の効果を奏することができる。
帯状整地部の一部に泥逃がし凹入部を形成する改善を施すことによって、帯状整地部の前端における泥土の滞留や隣接する条への影響を抑制することができる水田作業機の整地フロートを提供できるに至った。
整地フロートを接地センサとしての機能を高める前方張出し部を設けることに起因して、フロート本体部の前端での泥土の滞留を抑制すべく、前記した泥逃がし凹入部を形成することによって、泥土の滞留を抑制でき、例えば植付作業時における浮き苗等が発生し難い整地フロート構造を設けた。
(構成)
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記整地フロートの側端部の底面を、側端がわ程フロート本体部の上面に近づく傾斜面に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
(作用効果)
つまり、整地フロートの側端部の圃面内への沈み込みが大きいと、泥押しが発生して整地フロートの横側方に位置する例えば植付作業時に既植え苗を押し倒すといった事態や、側端部の跡が圃面上に形成されるといったことがある。
これに対して、本願発明においては、前記整地フロートの側端部の底面に、側端がわ程フロート本体部の上面に近づく傾斜面に形成してあるので、整地フロートの側端部に形成した傾斜面で泥土が均されて、フロート通過跡として残ることが少ない。
(構成)
請求項3に係る発明の特徴構成は、前記フロート本体部から、前記フロート本体部の横幅よりは細幅で、かつ、後向きに突出する後方張出し部を形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
(作用効果)
つまり、前記フロート本体部から、前記フロート本体部の横幅よりは細幅で、かつ、後向きに突出する後方張出し部を形成してあるので、フロート本体部自体の前後長を余り長く採ることなく、整地フロート全体として必要な前後長を確保できるので、整地フロート全体が余り大型化せず、かつ、安定して作動するフロート構造を構築することができた。
(構成)
請求項4に係る発明の特徴構成は、前記帯状整地部に、前記泥逃がし凹入部とその泥逃がし凹入部より下方に位置する整地平坦部とを設け、前記泥逃がし凹入部と前記整地平坦部との境界位置を横幅方向に対して傾斜した傾斜面に形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
(作用効果)
帯状整地部に泥逃がし凹入部を形成すると、その泥逃がし凹入部とそれより下方に位置する整地平坦部との境界部位に段差できる。そうすると、その段差部分が圃面上にフロート通過跡となって形成される。
これに対して、泥逃がし凹入部と整地平坦部との境界部位に横幅方向に対して傾斜した傾斜面を形成してあるので、段差部分がなく、その傾斜面で均されるところから、フロート通過跡の形成は抑制される。
乗用型田植機を示す全体側面図である。 乗用型田植機を示す全体平面図である。 整地フロートを示す側面図である。 整地フロートを示す平面図である。 整地フロートを示す後面図である。 整地フロートを示す底面図である。 図6におけるVII―VII線断面図である。 図6におけるVIII―VIII線断面図である。 図6におけるIX―IX線断面図である。 図6におけるX―X線断面図である。 図6におけるXI―XI線断面図である。 図6におけるXII―XII線断面図である。 図6におけるXIII―XIII線断面図である。 図6におけるXIV―XIV線断面図である。
水田作業機の一例である乗用型田植機について説明する。図1及び図2に示すように、乗用型田植機は、推進車輪としての前後車輪1、2を装備した走行機体3の前部にエンジン4等を設け、運転操縦部5を挟んで後方に昇降リンク機構6を介して苗植付装置7を装備して、4条植えの田植機に構成されている。
苗植付装置7は、苗のせ台8、苗のせ台8の下方に位置する前後向き姿勢の植付伝動ケース9、植付伝動ケース9の後端部左右に装備されている苗植付機構10、植付伝動ケース9に後支点周りで上下揺動自在に整地フロート11を装備して、構成されている。
整地フロート11について説明する。図3〜図6に示すように、整地フロート11は、全植付条数の植付幅に相当する横幅Lを有する、横長長方形状のフロート本体部12と、フロート本体部12の左右中央位置から前方に向けて延出される前方張出し部13と、フロート本体部12の左右方向二箇所から後方に向けて延出される左右一対の後方張出し部14とで構成されている。
前方張出し部13は、フロート本体部12の前端の左右中央位置から前方に向かって張り出されたものであり、植付制御に使用されるセンサフロートとしての機能を有する。
前方張出し部13と後方張出し部14は、フロート本体部12の横幅の3分の1から4分の1の横幅を呈するものである。これらフロート本体部12と、前方張出し部13と、後方張出し部14とは、樹脂板を二枚重ねにして型内に載置し、二枚の樹脂板の間に圧縮空気を吹き込むブロー成形によって一体形成されている。使用される樹脂材としては、ナイロン、ポリエチレン、ABS、PET等のエンジニアリング樹脂が使用される。
図3〜図6に示すように、前方張出し部13とその前方張出し部13の後方に位置するフロート本体部12とは、側面視で、フロート本体部12の後端部分を基準にして、フロート本体部12の前端部側程、及び、前方張出し部13において上方に向けてやや湾曲する状態に形成されている。フロート本体部12における前方張出し部13の横側方に位置する横側部分12Aにおいても、後端部分を基準にして前端側程上方に向けてやや湾曲する状態に形成されている。
整地フロート11は、二枚の樹脂板を重ね合わせてブロー成形するので、成形後の形状としては、整地フロート11の厚さの中間位置にパーティングラインを明示するフランジ部11aが形成されており、フランジ部11aを基準に上下にフロートの外郭が膨出形成されている。
機体走行時には、圃面に接地する部分となる帯状整地部Aについて説明する。つまり、図3及び図6に示すように、フロート本体部12の後端部における底面には、全植付条に相当する横幅に亘って、フロート本体部12の前後方向における前後幅を短くした帯状を呈する帯状整地部Aを形成してある。帯状整地部Aは、図6において、二点鎖線でその領域を明示してある。帯状整地部Aについては、後述する。
〔整地フロートの上面構造〕
整地フロート11の上面の形状について説明する。図4、図5及び図9に示すように、前方張出し部13において、上面は前端側程上方に位置し緩やかに傾斜する傾斜平坦面13Aに形成してあり、傾斜平坦面13Aの前端から横側方にかけて前方下向きに傾斜する前方下向き傾斜面13Cが形成してある。図4及び図11、図12に示すように、前方下向き傾斜面13Cの前端近くに、下方に凹入する載置面13Bを設けてある。載置部13Bには、整地フロート11を機体フレーム側に吊り下げ支持する前ブラケット15を取り付けてある。
下方に凹入する状態で形成されている載置面13Bは、前方張出し部13の前端において前方空間に開放すべく、傾斜平坦面13A及び前方下向き傾斜面13Cの一部が切り欠かれている。このように、載置面13Bは前方空間と連通する状態にあるので、圃面上にある泥水を傾斜平坦面13Aの上に誘導することができる。
このような構成によって、泥水を傾斜平坦面13A上に導入することができるので、前方張出し部13の前端で泥水を押し退け、その押し退けられた泥水が隣接する既植え苗を押し倒したりすることを阻止できる。
また、前方張出し部13の前端に泥水が走行抵抗となって作用するので、その抵抗のために整地フロート11の上下揺動が安定せず、この整地フロート11の接地圧に基づく上下変動を利用して、植付高さを一定に維持する植付制御が安定しない点を、前記した切り欠きによって泥水の抵抗を軽減して、制御の安定を確保することができる。
図3に示すように、左右の後方張出し部14には、取付用孔等を形成した取付座14Aを形成してあり、整地フロート11の後支点aを形成する後ブラケット20を取付固定するように構成してある。
取付座14Aが後方張出し部14の後端近傍に設けてあるので、取付座14Aと後方張出し部14の後端とが極近接した位置にある。したがって、整地フロート11が後ブラケット20の後支点a回りで上方に回動しても、後方張出し部14の後端が圃面内に入り込む深さが余り大きくならず、帯状整地面Aが施した整地面を乱すことが少ない。
図4、図5、図10に示すように、フロート本体部12の後端における左右方向の4箇所に、下向きの凹入設置部12Cを形成してある。この凹入設置部12Cは、施肥装置(図示せず)を機体後部に搭載する際には、取付孔を介して作溝器(図示せず)を装着すべく構成してある。
図3〜図5に示すように、フロート本体部12の前方張出し部13を張り出した左右中央部位より左右横側方に位置する横側部分12Aの前端には、横側部分12Aの上面から一体的に縦壁21を立設してある。
縦壁21は、前方張出し部13のフロート本体部12との接続部位となる根元位置から左右横側端に向けて連続する状態で、かつ、横側部分12Aの上面からやや前方斜め上方に向けて突出する状態で設けてある。縦壁21は、横側部分12Aの前方に位置する後輪2が跳ね上げる泥土を受止め、横側部分12Aの上面に泥土が付着堆積することを抑制する機能を有する。
フロート本体部12の横側部分12Aにおける横側端12aは、前端に対して直角方向に形成されており、その横側端12aの端面は推進方向に沿った面に形成してある。
このように、横側端12aの端面が推進方向に沿った面に形成してあるので、横側端12aの端面に沿って流れる泥水土が横側方に押し流されることが少なく、隣接する苗を押し倒す等の不都合を抑制できる。
上記構成においては、横側端12aの端面を推進方向に沿った面に構成したが、横側端12aの端面を後端側ほど整地フロート11の左右中心側に近接するように、推進方向に対して傾斜する状態に構成してもよい。これによって、泥水土が隣接する既植え苗がわに流動することを抑制する機能を高めることができる。
〔整地フロートの底面構造〕
図6及び図11に示すように、前方張出し部13の底面と、フロート本体部12における前方張出し部13の後方に位置する部分の底面とに亘って、中央側泥取り込み凹入部23が形成してある。中央側泥取り込み凹入部23は、側面視で、前方張出し部13の前端位置から上方に凹入するものであり、底面の湾曲状態に沿って略一定の凹入深さを維持しながら、フロート本体部12の後端部近くに至るまで形成されている。
中央側泥取り込み凹入部23の底面視形状は、次のようになっている。中央側泥取り込み凹入部23は、前方張出し部13の前端位置から開口しており、開口部23aの横幅を徐々に狭める状態で後方側に入り込む扇状取り込み部分23Aと、前方張出し部13とフロート本体部12との接続部位に対応する位置で最小横幅となり、この最小横幅を維持する状態でフロート本体部12の後端部まで延出してある狭幅部分23Bとで構成してある。
中央側泥取り込み凹入部23が設けられていない従来構成の場合には、前方張出し部13の前端に遮られた泥水土がフロート本体部12の横側部分12Aの前端側に流動しさらに隣接する植付領域にまで至ることを抑えることができなかった。そのことによって、隣接する既植え苗等を流入した泥土が倒したりすることがあった。
これに対して、本願発明においては、前方張出し部13に泥取り込み凹入部23を形成したので、前方からの泥水土を泥取り込み凹入部23内に誘導して後方に流動させることが可能になった。したがって、必要以上に横側部分12A側に流動させることがなく、既植え苗等を倒伏させることも抑制できた。
次に、推進車輪跡を均して行くフロート本体部12の横側部分12Aの底面に形成してある、泥土を取り込む側方側泥取り込み凹入部24について説明する。
図6及び図8に示すように、側方側取り込み凹入部24は、フロート本体部12の横側部分12Aの前端から開口し、側面視で、側方側取り込み凹入部24の天井面24bは、フロート本体部12の底面(後記する第1整地平坦部26A)の湾曲形状に沿った湾曲形状に形成されて後方に向けて延出してあり、第1整地平坦部26Aの後端部で同一の高さ位置となるように、後端側ほど徐々に浅くなり、第3整地部26Cの水平面26aに段差無く接続されている。このように、側方側取り込み凹入部24の後端部は、第3整地部26Cと段差なく繋がっており、この後端部を第4傾斜繋ぎ面24Dと称する。
側方側泥取り込み凹入部24の底面視形状は、次のようになっている。図6に示すように、側方側泥取り込み凹入部24は、フロート本体部12の横側部分12Aの前端から開口しており、開口部24aの横幅を徐々に狭める状態で後方側に入り込む扇状の凹入形状を呈する。
このような構成によって、前後輪1,2によって形成された車輪跡の両横側方に盛り上がった泥土を広い開口部24aで側方側泥取り込み凹入部24内に取り込み、横幅を徐々に狭めながらかつ側方側取り込み凹入部24の天井面24bによって下方に押し込み、取り込んだ泥土を車輪跡に寄せて、車輪跡を埋め戻すことができる。
図5、6、10に示すように、中央側泥取り込み凹入部23とその両側に位置する側方側泥取り込み凹入部24との間、及び、側方側泥取り込み凹入部24の横外側方側には、夫々、上面に向けて凹入する作溝器取り付け用の凹入設置部12Cと共に、作溝器の取付に使用される取付座25が形成されている。このように、取付座25が底面よりも上方に大きく凹入する状態に形成してあるので、取付座25に取付具を挿入しても整地面を荒らすことが少ない。
次に、底面における、中央側泥取り込み凹入部23と側方側泥取り込み凹入部24、作溝器の取付座25を除く、部分について説明する。
図6〜11に示すように、中央側泥取り込み凹入部23を囲む周囲に底面部26が形成してあり、側面視で、底面部26のうちの前方底面部26Eは前端側程上方に位置する湾曲形状に形成されている。中央側泥取り込み凹入部23の狭幅部分24Bを囲む後方底面部が、整地フロート11全体の底面において最も下方に突出する部分になっている。後方底面部のうち、狭幅部分24Bを左右両側から囲む部分を第2整地平坦部26Bと称し、狭幅部分24Bの後方に位置する部分を第4整地平坦部26Dと称する。
図6に示すように、第2整地平坦部26B及び第4整地平坦部26Dの両横側方には、第2整地平坦部26B及び第4整地平坦部26Dより上方に凹入する凹入部27が形成してある。凹入部27は、第2整地平坦部26B及び第4整地平坦部26Dから側方側泥取り込み凹入部24の近傍までの領域で形成されており、その前後幅は略フロート本体部12の前後幅に亘る幅で形成されている。
凹入部27は、左右二つの領域に区分され、底面の傾斜度合いが異なったものとなっている。つまり、凹入部27は、図6及び図10に示すように、中央側泥取り込み凹入部23の狭幅部分24Bを囲む第2整地平坦部26B及び第4整地平坦部26Dの両横側方に隣接位置する第2凹入部27Bと、図6及び図9に示すように、第2凹入部27Bに隣接する状態で配置され、側方側泥取り込み凹入部24に近接する第1凹入部27Aとで、構成されている。
第2凹入部27Bは、図6及び図10に示すように、側面視において、前端側程徐々に下方に位置するように傾斜する直線状の傾斜面27aに形成されており、前端位置で中央側泥取り込み凹入部23の扇状取り込み部分23Aを囲む前端底面部26Eに繋がっている。
一方、第1凹入部27Aは、図6及び図9に示すように、側面視において、前端側程上方に位置する湾曲面27bに形成されており、フロート本体部12の後端部において、直線状の平面27cに形成されている。
図5、図10及び図11に示すように、第1凹入部27A及び第2凹入部27B共に、フロート本体部12の後端まで形成されており、フロート本体部12の後端近くでは、前記したフランジ部11aの高さに揃えられている。
上記した第1凹入部27Aは、前方張出し部13の周縁部に沿って流れてきた泥水土を取り込み、後方に流動させるべく構成されている。ここに、この第1凹入部27Aを、請求項1に記載した、後方に泥土を誘導すべく上方に凹入する泥逃がし凹入部と称する。
図6〜図8に示すように、側方側泥取り込み凹入部24の周囲に第1整地平坦部26Aと第3整地平坦部26Cが形成してあり、第1整地平坦部26Aは、側方側泥取り込み凹入部24の両横側方に位置し、前記したように、側面視でフロート本体部12の底面の湾曲形状に沿って前端側程上方に位置する湾曲形状に形成されている。
図6〜8に示すように、第3整地平坦部26Cは側方側泥取り込み凹部24の後方側に設けてあり、第1整地平坦部26Aの後方には水平部26aが連続する状態で形成してあり、水平部26aは整地フロート11の最も下方に位置する部分となっている。水平部26aの後方側には、後方張出し部13の後端に近接する程上方に位置する後上がり傾斜面26bを形成してある。この水平部26aと後上がり傾斜面26bとで第3整地平坦部26Cを形成している。
側方側泥取り込み凹部24の後端は水平部26aの前端に段差なく接続されており、側方側泥取り込み凹部24に取り込まれた泥土が前記接続部位で滞留することなく水平部26a側に流動する。
また、水平部26aの後方側に後方側ほど上方に向けて傾斜する傾斜面26bを形成してあるので、傾斜面26bでの泥の滞留が抑制され、整地フロート11が後支点回りで上下揺動しても、傾斜面26b部分が圃面内に深く沈み込み難く、泥押しも少ない。
次に、中央側泥取り込み凹入部23及び側方側泥取り込み凹入部24と、底面部26との間に形成される傾斜繋ぎ面について説明する。
図6及び図13,14に示すように、中央側泥取り込み凹入部23の狭幅部分23Bと第2整地平坦部26Bとの境界部位に、横幅方向に沿った第2傾斜繋ぎ面23Cが形成されている。第2傾斜繋ぎ面23Cは、整地フロート11をブロー成形する際に使用される金型の抜け勾配より緩やかな傾斜面に形成されている。
第2傾斜繋ぎ面23Cが緩やかな傾斜面となっているので、中央側泥取り込み凹入部23の狭幅部分23Bと第2整地平坦部26Bとの境界面の跡が圃面に付き難い構成となっている。例えば、中央側泥取り込み凹入部23の狭幅部分23Bと第2整地平坦部26Bとの境界面が直角に近い角度で形成されている場合には、中央側泥取り込み凹入部23の狭幅部分23Bと第2整地平坦部26Bとの間に大きな段差ができて、その段差が圃面上に形成されて段差跡となって残ることとなり、植付作業の品質を低下させる。
したがって、本願発明においてはこのような段差跡が残り難い構成となっている。
泥逃がし凹入部27Aと第1整地平坦部26A及び第3整地平坦部26Cとの境界面に、横幅方向に沿った第1傾斜繋ぎ面27Cが形成されている。図5及び図6に示すように、第1傾斜繋ぎ面27Cは、整地フロート11をブロー成形する際に使用される金型の抜け勾配より緩やかな傾斜面に形成されている。
これによって、段差跡が残り難い構成となっており、植付面の凹凸が均されるので、苗の植付姿勢が乱れず、植付深さが安定し、苗の生育が良好になる。
次に、図6及び図11に示すように、中央側泥取り込み凹入部23の狭幅部分23Bの後端部と第4整地平坦部26Dとの境界部位に、前後方向に沿った第3傾斜繋ぎ面23Dが形成されている。第3傾斜繋ぎ面23Dは、整地フロート11をブロー成形する際に使用される金型の抜け勾配より緩やかな傾斜面に形成されている。
このような構成によって、前方張出し部13の前端に到達した泥水土を中央側泥取り込み凹入部23内に取り込んで、前方張出し部13の横側方に流動させることを抑制することができるとともに、中央側取り込み凹入部23内に取り込んだ泥水土を第3傾斜繋ぎ面23Dより円滑に第4整地部26D側に流動させることができる。第3傾斜繋ぎ面23Dが傾斜度の大きな段差状のものであれば、その段差部分で泥土が滞留する欠点があるが、その滞留を第3傾斜繋ぎ面23Dの傾斜度を緩やかなものとすることによって、解消したものである。
図13及び図14に示すように、フロート本体部12の左右側端部12aにおける底面には、左右方向に沿った傾斜面12bが形成してある。この傾斜面12bは、フロート本体部12の横側端に近接する程上面に近接する傾斜姿勢に形成してある。
このようにフロート本体部12(整地フロート11)の横側端の底面に上向き傾斜面12bを形成することによって、整地フロート11の横側端部位の圃面内への沈み込みを抑制し、かつ、横側方への泥の押し出しを軽減できるものである。
図6及び図7に示すように、フロート本体部12における側方側泥取り込み凹部24の形成位置より更に横側端側部分においては、側方側泥取り込み凹部24を囲む湾曲形状の第1整地平坦部26Aが連続する状態で形成されている。第1整地平坦部26Aの後方には前記した水平部26aが連続する状態で形成してあり、第3整地平坦部26Cの一部を形成している。
〔帯状整地部〕
フロート本体部12の後端部に帯状整地部Aを形成してある。図6に示すように、帯状整地部Aは、フロート本体部12の後端部の底面における横幅方向の全長又は略全長に亘って、横幅方向に沿った帯状を呈する面である。帯状整地部Aは、中央側泥取り込み凹部23の後端部に形成される第4整地平坦部26D、中央側泥取り込み凹部23の両横側方に形成される第2凹入部27Bの後端部に形成されている前後向き傾斜面27a及び第2凹入部27Bに隣接する第1凹入部27Aの後端部に形成されている平面27c、平面27cの横側方に隣接する横幅方向に対して傾斜する第1傾斜繋ぎ面27C、凹入部27の更に横側方に位置する側方側泥取り込み凹部24の後端に形成されている水平面状の第3整地平坦部26Cとで構成される。第3整地平坦部26Cは、側方側取り込み凹部24からフロート本体部12の横側端部に至る状態で形成されている。
図5及び図6に示すように、上記した帯状整地部Aを構成するもののうち、中央側泥取り込み凹部23の後方に位置する第4整地平坦部26D、及び、側方側泥取り込み凹部24の後端に形成される第3整地平坦部26Cが、最も下方に突出する平坦面に形成されている。一方、第3整地平坦部26Cと第4整地平坦部26Dに挟まれている、凹入部27を形成する傾斜面27aと平面27cはやや上方に位置し、前記したフランジ部11aと略同一の高さ位置にある。
第3整地平坦部26Cは、前方側張出し部13とフロート本体部12における前方側張出し部13の後方に位置する部分とを含む領域内においては、最も下方に位置しかつ水平面を形成するものであり、整地機能の高い部分である。
第4整地平坦部26Dは、後方側張出し部14とフロート本体部12における前方側張出し部13の後方に位置する部分とを含む領域内においては、最も下方に位置しかつ水平面を形成するものであり、整地機能の高い部分である。
中央側泥取り込み凹部23と側方側泥取り込み凹部24との間に形成されている凹入部27が存在する意味合いは、帯状整地部Aが植付幅の全長に亘って同じ平面上にあるならば、整地機能を大きく向上させるものにできると考えられるが、その場合には、帯状整地部Aで泥溜まりや泥押しが発生しやすく、整地機能の向上と泥押し等を回避する機能を満足させるものではない。
そこで、前方に突出して設けられている前方張出し部13の横側縁に沿って、凹入部27が形成されているフロート本体部12の前端まで流動してくる泥水土を、フロート本体部12の前端で受け止めるのではなく、凹入部27を介して後方に誘導することによって、泥溜まりを回避して、それら泥水土がフロート本体部12の横側方に流出することを抑制するものである。
図3〜図6に示すように、左右の後方張出し部14には、整地フロート11の後支点aを形成する後ブラケット20を取付固定するように、取付用孔等を形成した取付座14Aを形成してある。この取付座14Aは、左右張出し部14の表面に設けてある貫通孔14aと、底面側には上方に向けて大きく凹入する取付孔14bが形成してある。
この取付孔14bは、帯状整地部Aに形成した泥逃がし凹部27Bの平面27cより上方に大きく凹入する形状に形成してある。これによって、支点としての機能だけを発揮させるものであり、帯状整地部Aによる整地面をこの取付孔14bが乱すことはない。
整地フロート11の帯状整地部Aは、苗植付機構10の前方に位置している。これによって、帯状整地部Aによって植付面に対する整地機能が十分に施されて、浮き苗等がなく植付苗の姿勢が倒れなく維持される。
帯状整地部Aは、植付幅の中央に位置する前方張出し部13の後方部分にも形成してあり、前の工程で圃面に施されたマーカー跡を均していくことができる。
〔別実施の形態〕
(1)帯状整地部Aにおいて左右一対の泥逃がし部27Bを形成したが、泥逃がし部27Bの個数または形状、幅等については任意に設けることができる。
また、設ける位置は、前方張出し部13の横側方に限定されない。
(2)泥取り込み凹部23、24、第1〜第3傾斜繋ぎ面27C、23C、23Dについては、特に、設けなくてもよい。
本願発明は、乗用型田植機以外に、歩行型田植機、及び、直播機、藺草移植機等の水田作業機に適用できる。
11 整地フロート
12 フロート本体部
12a 側端部
12b 傾斜面
13 前方張出し部
14 後方張出し部
26A 第1整地平坦部(整地平坦部)
26C 第3整地平坦部(整地平坦部)
27A 第1凹入部(泥逃がし凹部)
A 帯状整地部
L 横幅

Claims (4)

  1. 全条に相当する横幅を有する整地フロートが、全条に亘る横幅を備えたフロート本体部と、前記フロート本体部の横幅よりは細幅で、前記フロート本体部から前向きに突出する前方張出し部とを有し、
    前記フロート本体部の横幅方向全長に亘る底面に、整地面となる帯状の帯状整地部を形成すると共に、当該帯状整地部が、その後縁が前記フロート本体部の後縁に沿うと共に、前記整地フロートの最下方部位となるよう形成され、
    前記整地フロートを上下揺動自在に支持する支点が前記帯状整地部よりも後方側に設けられ、
    後方に泥土を誘導する泥逃がし凹入部を、前記フロート本体部の下面であって、前記前方張出し部の両横側方における前記フロート本体部の前縁から前記帯状整地部の後縁にかけて上方に凹入する状態に設けてある水田作業機の整地フロート構造。
  2. 前記整地フロートの側端部の底面を、側端がわ程フロート本体部の上面に近づく傾斜面に形成してある請求項1記載の水田作業機の整地フロート構造。
  3. 前記フロート本体部から、前記フロート本体部の横幅よりは細幅で、かつ、後向きに突出する後方張出し部を形成してある請求項1又は2記載の水田作業機の整地フロート構造。
  4. 前記帯状整地部に、前記泥逃がし凹入部とその泥逃がし凹入部より下方に位置する整地平坦部とを設け、前記泥逃がし凹入部と前記整地平坦部との境界位置を横幅方向に対して傾斜した傾斜面に形成してある請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の水田作業機の整地フロート構造。
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